2009年7月アーカイブ

世界の化学工業を代表する国際化学工業協会協議会(ICCAInternational Coucil of Chemical Associations) はこのたび、

 "Innovations for Greenhouse Gas Reductions
   A life cycle quantification of carbon abatement solusions enabled by the chemical industry"

と題する報告書を発表した。 
  
http://www.icca-chem.org/ICCADocs/ICCA_A4_LR.pdf

気候変動という地球規模の課題について、グローバルな視点で化学品の低炭素化社会への貢献を定量的に検証した。
化学品の製造過程では温室効果ガス(GHG)が排出されるが、同時に、化学品の使用によりGHGの著しい削減が可能となるとしている。

化学品のライフサイクル全体にわたるGHG排出量と、化学品を使用した8分野102製品について化学品使用の場合と化学品を使用しない場合のライフサイクル全体にわたるGHG排出量の差を計算した。

米国、欧州、日本のメーカー、化学団体が作業に協力、計算をMcKinsey & Co. に委託した。
LCAはすべてOko Institutにより外部検証が行われた。

対象製品
 輸送:自動車軽量化、潤滑剤、摩擦低減、エンジン効率、航空機軽量化、船舶燃料軽減、ほか
 断熱:建築物断熱、冷蔵庫断熱、ほか
 建築物:建設資材、配管、窓、ほか
 農業:栄養補助飼料、肥料・農薬、保存、食糧生産効率、ほか
 包装:食品包装、買物袋、ほか
 消費者製品:電子部品、家庭用品、作業用ウエア、繊維、低温合成洗剤、ほか
 電力:地域暖房、太陽光発電、風力発電、ほか
 照明:電球型蛍光灯、LED照明

2030年では、現状延長の場合で化学品のGHG排出量はCO2換算65億トンだが、化学品の使用によりネットで137.5億トンの排出減になり、最大努力ベースでは50億トンの排出に対し、ネットで184.5億トンの排出減になる。


1)化学品のライフサイクルGHG排出量 (2005年ベース)

  CO2換算
  億トン
原燃料採取    3
生産 燃料消費    6
外部での発電    8
製造中の排出    7
小計  (21)
廃棄    5
High GWPガス*    4
合計   33
    ↓  
2030年(現状延長)   65
2030年(最大努力)   50

* Global Warming Potential Gases  主に最終利用者により排出される。


2)化学品使用によるGHG排出削減(CO2換算億トン)

  化学品の
GHG排出
化学品使用
による削減
ネット
削減
肥料・
農薬
除外
具体例
化学品使用効果の計算可能分   14.5   74.6  60.1  44.1  
同上 計算困難分   10   10   -  - 食品保存料、石油精製の触媒
代替品存在せず計算不能分    8.5    0  -8.5  -8.5 溶剤、産業ガス、医薬原体
2005年 合計   33.0   84.6 (68.6)  51.6  35.6  
  ↓          
2030年現状延長   65   202.5 (177.5)  137.5  112.5  
2030年最大努力   50   234.5 (209.5)  184.5  159.5  

   対比困難分は±0 と想定、代替品が存在しない場合は削減をゼロとした。

肥料・農薬については、それらを使用しない場合は作物の収量が大幅に低下し(計算では50%減とした)、同じ作物量の生産には耕地面積を倍にする必要がある。これによる植生と土壌からの固定炭素の放出を計算すると、GHG排出削減効果は2005年で16億トンと大きい。

これについては不確実性とさまざまな異論の存在のため、この削減効果を含める場合と除外する場合の計算を行った。

上表のGHG化学品使用による削減の( )は、肥料・農薬の効果の除外ケース

肥料・農薬の効果を除外した場合でも、削減比率(排出量:削減量)は以下の通り、大きい。
    2005年 1:2.1
    2030年現状延長 1:2.7
    2030年最大努力 1:4.2

3)ネット削減の内訳 (CO2換算億トン)

  2005年   2030年
現状延長
2030年
最大努力
断熱  24.0     56.0   68.0
照明    7.0     34.0   41.0
バイオ燃料   -     5.0   10.0
包装    2.2     4.5   3.0
船舶防汚   1.9     4.0   4.0
合成繊維   1.3     3.0   3.5
自動車軽量化   1.2     2.5   3.0
低温合成洗剤   0.8     1.0   1.0
エンジン効率化   0.7     1.5   1.0
配管   0.7     1.0   1.0
風力発電     0.6     4.5   7.0
CO2回収・貯留   -     -   6.0
地域暖房    0.6     0.5   0.5
グリーンタイヤ    0.4     1.0   1.0
太陽光発電    0.4     7.0   20.0
その他    2.3     4.0   2.0
肥料及び農薬   16.0     25.0   25.0
小計   60.1    154.5  196.5
代替品なし  -8.5    -17.0  -12.0
合計  51.6    137.5  184.5
         
肥料及び農薬除外  35.6    112.5  159.5


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財務省が730日に発表した輸入通関速報によると、6月のナフサ輸入価格は33,544円/kl となった。また、5月の金額も修正された。

この結果、2四半期のナフサの平均輸入価格は 31,283円/kl となり、これを基にした国産ナフサ基準価格は33,300円/kl となる。

計算根拠は以下の通り。(単位:円/kl)

  輸入平均   基準価格     修正後
輸入平均   基準価格
4Q平均  50,162  52,200  50,047  52,000
09/1  21,462      21,500    
09/2  23,717      23,836    
09/3  28,632      28,632    
1Q平均        24,970  27,000
09/4        29,628    
09/5  30,753      30,783    
09/6        33,544    
2Q平均        31,283  33,300

基準価格は平均輸入価格に諸掛 2,000円/kl を加算(10円の桁を四捨五入)


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韓国のPOSCOSK Energy は、石炭から合成天然ガス(SNG)、ガソリン、化学品の製造を行うためのノウハウ創出で協力する覚書を締結した。韓国政府もこれを支援する。

POSCO1968年に国営の浦項綜合製鉄として設立された。
日韓基本条約に伴う対日請求権資金などによる資本導入と、 旧八幡製鉄、富士製鉄、日本鋼管の3社からの技術導入により、慶尚北道浦項市に浦項総合製鉄所を建設した。現在は光陽製鉄所が主要拠点になっている。
2000年に完全民営化された。

両社は合計3.35兆ウオン(27億ドル)を投じて、韓国で初めて、石炭から合成天然ガス、化学品、ガソリンを生産する。
韓国政府も研究開発を支援するため、
250億ウオンを用意している。

POSCO2013年までに1兆ウオンを投じて、技術開発を行い、光陽製鉄所に石炭を原料に年産50万トンの合成天然ガス工場を建設する。同社ではこれを 2000億ウオン分の輸入LNGを置き換える。

SK Energyは先ず2013年までに5500ウオンを投じ石炭液化技術の開発を行い、蔚山に年産20万トンの化学品(メタノールや水素など)の製造工場を建設し、ナフサ代替とする。

更に2014年から2018までに18000ウオンを投じ、年産630バレルのガソリン製造工場を建設する。
これは韓国の
2008年の輸送用燃料需要の2.5%に相当する。
この工場は海外の低コストの炭鉱の近くに建設する。

政府では、クリーンな石炭技術が国のエネルギー安全保障を高め、環境保護を促進すると期待している。

 


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SABICの第2四半期業績

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SABICは719、第2四半期の業績の速報を発表した。

純損益は18SRとなり、第1四半期の974百万SRの赤字からは黒字転換したが、前年同期比では 76%もの下落となった。
本年上半期の純損益は、前年比で94%の下落となった。
(1サウジリアルは約25円)

但し本年第1四半期の営業損益、純損益には GE Plastics のノレン償却 1,181百万SRを含む。
企業価値が減少したと判断した。

2009/4/23 SABICの第1四半期の損益、赤字に 

SABICは2007年8月にGE Plastics を116億ドル(+借入金)で買収したが、ノレン代は29.6億ドル(111億SR)であったとされる。Basellとの競争で買収価格が引き上げられた。

SABICでは第2四半期にはノレン償却はないとし、もし状況が悪化すれば、公認会計士が第3四半期にノレン償却を求めるだろうとしている。

            単位:百万SR
  09/2Q 09/1Q 前月比   08/2Q  前年比      
Gross Profit 6,218 3,622 2,596   14,853 -8,635 -58.1%
ノレン償却        0    -1,181          
Operating Income 4,080 381 3,699   12,141 -8,061 -66.4%
同上(除 ノレン償却) 4,080 1,562 2,518  
Net Icome 1,800 -974 2,774   7,548 -5,748 -76.2%
 
  09/上 08/上  前年比
Gross Profit 9,840 28,642 -18,802 -65.6%
Operating Income 4,461 23,031 -18,570 -80.6%
同上(除 ノレン償却) 5,642 23,031 -17,389 -75.5%
Net Icome 826 14,472 -13,646 -94.3%
 

  注 09/1QのOperating Income はノレン償却を除いたもの。

第2四半期の純損益の前年同期比の大幅減は売価ダウンによるもの。第1四半期からの増益は製品により価格が回復したため。

SABICによると、世界的な金融危機、経済危機のなかで、生産販売活動そのものは高水準を維持している。
本年上半期の生産数量は2850万トンで前年比で1%の増となっており、販売数量は2290万トンで同じく2%の増となっている。

ーーー

同社では間もなくYANSAB (新設)と SHARQ(増設)が稼動する。

YANSAB SHARQ(増設)
Ethylene 1,300
Propylene 400
BTX 250
Buten-1,-2 100
MTBE 25
LLDPE 500
HDPE 400
Ethylene Glycol 770
Ethylene 1,300
LLDPE  400
HDPE 400
Ethylene Glycol 700

YANSABSABIC 55%、IBN RUSH & TAIF 10%、一般公開 35%

またSinopec の天津計画への参加も決まった。

2009/7/13 中国、シノペック天津石化計画へのSABICの参加を承認

ーーー

同社の連結対象会社は以下の通り。(社名のリンクは同社のホームページ)

出資比率 備考
石油化学) 石油化学
Petrochemya 100.00  石化
Jubail United 75.00  石化
Yansab 55.95  石化
Yanpet 50.00  石化 ExxonMobil
Sadaf 50.00  石化 Shell
Sharq 50.00  石化 ブログ サウジ石油化学
Kemya 50.00  石化 ExxonMobil
Saudi Kayan 35.00  石化 ブログ
Saudi European Petrochemical (Ibn Zahr) 80.00 PPMTBE
Arabian Industrial Fiber (Ibn Rushd) 47.26  合繊原料・合繊 ブログ
National Industrial Gases 70.00  産業ガス
Saudi Methanol (Ar-Razi) 50.00  メタノール ブログ 日本サウジメタノール
National Methanol (Ibn Sina) 50.00  メタノール ブログ Hoechst
SABIC Luxembourg 100.00
  子会社 SABIC Innovative Plastics (100)  石化 ブログ
  子会社 SABIC Europe (100)  石化 ブログ
(肥料)
National Chemical Fertilizer 71.50
Al-Jubail Fertilizer 50.00
Saudi Arabian Fertil.izer 42.99
Metal
Saudi Iron and Steel (Hadeed) 100  鉄鋼
(その他)
SABIC Industrial Investments 100
SABIC Asia Pacific 100
SABIC Antilles 100
SABIC Sukuk (SUKUK) 100
SABIC Capital 100

何故か連結対象に含まれていないが、他に下記の子会社がある。
   
National Plastic (IBN HAYYAN) (塩素、VCM、PVC)
   
Ibn Hayyan Plastic Products (TAYF) (可塑剤、加工製品)


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塩野義製薬は518日、米国の関連会社 Sciele Pharma, Inc.(サイエル・ファーマ)を通じて、米国で疼痛とその関連疾患に対する治療薬の導入、開発および販売に特化した医薬メーカーVictory Pharma, Inc.を買収するで合意したと発表した。

塩野義製薬は2008年10月、米ナスダック上場の中堅製薬会社Sciele Pharmaを総額で14億2400万ドルを投じ、完全子会社にした。
全米に約800人の従業員を持つサイエルを傘下に収め、世界最大の医薬品市場である米国での販売体制を強化する。

塩野義は米国子会社を通じ抗肥満薬やアトピー性皮膚炎治療薬などの新薬候補物質を開発、2012年前後に発売を期待できる薬が3種類ある。米国での売 り上げを最大化する販売網の構築を行うもの。

サイエル社では「この買収は製品ポートフォリオの拡大戦略を実行する重要な過程であり、また、買収により、米国における疼痛治療薬市場への速やかな展開が可能になると共に、今後も疼痛治療薬の導入を積極的に進めていくことにより、塩野義製薬の重点領域である疼痛領域へのサイエル社の貢献を確実なものにしていきたい」とした。

塩野義製薬は、疼痛領域を重点領域の一つと位置づけ、研究開発に積極的に取り組んでおり、今後、開発中のオピオイド副作用緩和薬および今後臨床開発を予定している化合物のグローバルな開発をより一層加速させていくとしている。

Victoryの主力製品であるNAPRELANは、NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)である塩酸ナプロキセンで唯一の一日一回投与を可能とする徐放製剤であり、他の製剤に比べ消化器等への安全性に優れた製剤。

しかし同社は7月10日に、この買収契約を解消することで双方共に合意したと発表した。

契約解消についての詳細は開示せず、「本買収契約が締結された時点では予期し得ない事態が買収契約締結後に生じたことによるもの」としている。

買収のための費用は一切支払っておらず、今回の契約解消に伴う、サイエル社および塩野義製薬の今年度の業績への影響は軽微としている。

ーーー

Victory Pharma 疼痛治療薬市場に特化したスペシャルティ・ファーマ。

 創業 2004年
 代表者 President and CEO Matt Heck
 本社所在地
米国カリフォルニア州サンディエゴ
 従業員数
182名(MR120名、2009年5月1日現在)
 売上高
年間57百万ドル(2008年)

 製品 販売中の製品は、NAPRELAN(R) を中心とする疼痛治療薬
     
NAPRELAN(R) (naproxen sodium) 除放性疼痛治療薬 
      
Fexmid(R) (cyclobenzaprine hydrochloride) 筋肉けいれん治療薬
          XODOL(R) Hydrocodone bitartrate/ Acetaminophen) 疼痛治療薬
          Dolgic(R) Plus (Butalbital/ Acetaminophen/Caffeine)緊張性頭痛治療薬

     開発中の製品としてはオピオイド副作用緩和薬(MGX001)と、めまい・吐き気治療薬(MGX006)があり、
     後者はFDAの認可を受けて2010年上半期にも発売を期待するとしている。

ーーー

「予期し得ない事態」が何であるかは全く不明だが、米紙は次の点を可能性として挙げている。

同社の販売中の製品4品目のうち、2品目(XODOLDolgic Plus)にアセトアミノフェンが含まれている。

アセトアミノフェンはMcNeil 社が鎮痛と解熱効果を見出し、1955年に解熱鎮痛薬「小児用Tylenol」 を発売した。
1959年に Johnson and Johnson がMcNeil を買収した。

このアセトアミノフェンに関しては、過量服用に伴う重篤な肝障害が問題となっており、米FDAは6月29日・30日の2日にわたって、35人の専門家を集めて、アセトアミノフェンの安全対策に関する諮問委員会を開催した。

同委員会では、1日及び1回の量の制限、他の成分を配合したOTC及び処方箋製品の取り止め、他の成分を配合した処方箋製品販売の場合の条件などの勧告をまとめた。

三級指定麻薬であるHydrocodone との合剤(同社のXODOL )などは事実上の販売禁止を求めた。

10代の若者の間でHydrocodone 中毒者が増えており、これらの処方薬を悪用して、多量の合剤を服用し、結果としてアセトアミノフェンによる肝不全を招いていると言われている。

この勧告について、業界団体のConsumer Healthcare Products Association は「アセトアミノフェン過量服用と関連がある有害事象は処方薬によるものが大部分であり、成人が通常に使用する場合には安全である。私たちは、過量服用防止のために、ラベルの変更とともに教育による介入が適切だと考えている。」 としたステートメントを発表すると共に、適正使用のための包括的な教育プログラムの開発を行っていることを明らかにしている。

合併取り止め発表はこの委員会の直後であり、同社の4品目のうちの2品目が勧告対象となったのが響いた可能性があるとしている。


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6月の石化製品の生産や出荷実績が発表された。

1)エチレン

6月は三菱化学の鹿島1号機と水島、三井化学の千葉の2社3プラントで定修があったため生産量は前年比3.0%減の555,400トンとなった。

平均稼働率は95.6%となり、昨年7月以来11ヶ月ぶりに採算ラインとされる95%を上回った。
昨年の下期以降、稼働率は下落が続いていたが、この3ヶ月上昇が続いている。

<p><p>HTML clipboard</p></p>         注 能力は定修なしケース


2)ポリオレフィン

いずれも年初には輸出が増大したが、最近は輸出は若干減少している。(なお高水準にある)

しかし、国内出荷が6月に前月比2桁の増加となり、内需込みでほぼ前年並みにまで回復した。

2)PS、ABS、SM

同様に、PS、ABSともに内需は増加している。

PSは安価な輸出を控える姿勢をとっているが、海外進出メーカー向けが中心のABSの輸出は増加している。

SMの生産増は輸出の増加に依存するところが大きい。

ーーー

ポリオレフィン、スチレン系を含め、6月の内需増が今後も続くのか、又は一時的なものなのか、今後が注目される。

石化協会長は「中国の内需拡大が牽引役だが、中国の対米輸出が回復しておらず、先行きは慎重にみる必要がある」としている。

   参考  2009/6/29 中国の現状

 

3)PVC、VCM

PVCは住宅着工件数の減少が続いている影響などで、内需は減少を続けている。(6月は若干増加)

本年に入り増加に転じた輸出も、このところ減少に転じており、余剰能力は拡大している。

VCMの輸出も同様。


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LG Chem 721日、中国での新しいABS計画を発表した。

中国海洋石油(CNOOC)との50/50 JV CNOOC & LG Petrochemicals Co を設立し、370百万ドルを投じて広東省恵州市にABS工場を建設する。
2011年に先ず15万トンをスタート、2013年に倍増して計30万トンを生産する。

広東省恵州市にはCNOOCの12百万トンの製油所と、Shell/CNOOCの50/50JVの中海シェル石油化学がある。
ABSプラントの原料はCNOOCがここから供給する。

製品は全国 340万トンの半分を消費する南中国で販売する。
販売目標を
2012年に3億米ドル、2014年に6億ドルとしている。

ーーー

LG Chemは中国では既に、浙江省寧波市に寧波LG甬興化工(LG Chem 75%/甬興化工 25%)を有している。

1996年に設立し、当初60千トンでスタート、2001年に150千トンに、2002年に300千トンに増設(その後手直しで330千トン)、2006年9月には480千トンとした。

その後の手直しで現在能力は580千トンとなっているが、2012年にはこれを700千トンにする予定。

このため、恵州プラントが完成すれば、中国の能力は100万トンとなり、韓国の麗川工場の60万トンと合わせ、LG Chemの全体能力は160万トンとなる。

能力で世界トップの台湾のChi Mei は、台湾に100万トン、江蘇省鎮江に70万トン、合計170万トンの能力で、LG Chemはこれにほぼ肩を並べることとなる。

 

ーーー

吉林省吉林のPetroChina Jilin Petrichemical は7月17日、製油所とSM、ABSプラントの増設工事の起工式を行った。

現在の製油能力700万トンを1000万トンに、SM 14万トンを48万トンに、ABSを現行の19万トンに対し、20万トン2基を増設して59万トンにする。(公称は58万トンとしている)
製油所増設は2010年10月にスタート、SMとABSは2011年10月スタートの予定。

同社の現在のエチレン能力は85万トンになっている。

増設が完成すれば、同社のABS能力はLG、奇美に次ぎ第三位となる。

ーーー

なお、中国のABSメーカーは下記の通りで、台湾と韓国勢が中心となっている。

   詳細は 2009/2/26  中国のABSメーカー 

単位:千トン
メーカー 能力 計画 立地  
Zhenjiang Chi Mei  700   江蘇省鎮江 台湾 奇美実業
LG Yongxing LG甬興化工)  580  120 浙江省寧波 韓国 LG Chem
CNOOC & LG Petrochemicals  -  300 広東省恵州
Ningbo Formosa  250   浙江省寧波 台湾 Formosa Plastics
Sinopec Gaoqiao  200   上海  
PetroChina Jilin  190  400 吉林省吉林  
PetroChina Daqing  105   黒龍江省大慶  
Shinho Changzhou 新湖(常州)石化   70   江蘇省常州 韓国 SH Energy & Chemical
Huajin Group (華錦化工集団)  50   遼寧省盤錦  
PetroChina Lanzhou  50   甘粛省蘭州  
Total  2,195  820    

現在の中国の需要は340万トン


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非上場会社の2009年3月決算の発表(決算公告)が出揃った。
各社とも、大きな減益となっている。

参考  2009/5/6  非上場会社 2008年12月決算

各社とも本年1-3月の損益の落ち込みが大きいため、3ヶ月のずれで12月決算企業よりも悪化している。

ーーー

出光興産の石化製品セグメント 

               単位:百万円
売上高       営業損益
合計 上期 下期
08/3   709,132   18,665
09/3   571,623  -21,325  - 2,962  -18,363
増減 - 137,509  -39,990

  

ーーー

丸善石油化学

                      単位:百万円 配当:円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
08/3 496,707   16,623  16,106   9,595  100
09/3 404,911   -8,881 -  7,567  -8,652   50
増減 -91,796  -25,504 - 23,673  -18,247  -50

ーーー

プライムポリマー (PE/PP)

  
三井化学 65%/出光興産 35%

                      単位:百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/3  375,399    3,704   3,055   1,960
09/3  338,228  -16,278 -16,045 -20,136
増減  -37,171  -19,982 -19,100 -22,096

ーーー

大洋塩ビ(PVC)

  
東ソ- 68%/三井化学 16%/電気化学 16%

                      単位:百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/3  62,966    524    518   221
09/3  57,543   -488   -502  -377
増減  -5,423  -1,012  -1,020  -598

ーーー

新第一塩ビ (PVC)

  
トクヤマ 71%/日本ゼオン 14.5%/住友化学 14.5%

                      単位:百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益
07/12  29,043   1,044    650    342
08/12  23,297   - 554  - 755  -1,166
増減  -5,746  -1,598  -1,405  -1,508

ーーー

PSジャパン (PS)

  
 旭化成 45%/出光興産 27.5%/三菱化学 27.5%
    (三菱化学が離脱の交渉中) 

                      単位:百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/3   77,167   1,851   1,846   933
09/3   64,260   1,073   1,251   724
増減  -12,907   -778    -595  -209

ーーー

日本ポリスチレン (PS)

住友化学 50%/三井化学 50%

                      単位:百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/3   24,248   919   902    675
09/3   20,714   483   472  -2,681
増減   -3,534  -436  -430  -3,356

同社は2009年9月末で操業を停止し、その後解散すると発表している。

このため本3月期で特別損失(減損損失と思われる) 2,941百万円を計上した。

この結果、3月末の累積損失は 2,372百万円となっている。(資本金:2,000百万円)

 

ーーー

以下を追加

東洋スチレン (PS)

    電気化学 50%/新日鉄化学 35%/ダイセル化学工業 15%

                    単位:百万円
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/3   56,423   829   813   471
09/3   46,005   514   506    253
増減  -10,418  -315  -307   -218

 

ーーー

テクノポリマー(ABS)

     当初 JSR 60%/三菱化学 40%
           
     2009/3/31に三菱化学撤退、JSR 100%

                     単位:百万円
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/3   53,676   1,872   1,712   711
09/3   48,266    655   1,467   790
増減   -5,410  -1,217   -245    79


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Rio Tinto の上海事務所の社員4名が7月5日に上海の国家安全局に拘束された。
4名のうち、3名は中国人で、残り1名は中国系で豪州国籍を有している。いずれも鉄鉱石部門で中国を担当している。

2009/7/10 Rio Tinto 社員、中国で拘束

国営企業の首都鋼鉄の役員も拘束された。

その後の報道では、China Iron and Steel Association (CISA)とRio Tinto との鉄鉱石価格交渉に参加している中国鉄鋼メーカー16社全てがRio Tintoから賄賂を受け取っており、このうち5社の役員が調査を受けている。

中国政府は正式にはどういう理由での拘束かを明らかにしていない。

報道では、Rio Tinto社員はスパイ行為を行って、国家機密を盗み、中国の経済的利益を害したとされる。
具体的には、価格交渉を進めるため、国営鉄鋼会社の生産量や在庫量を表した秘密の政府資料を入手しようとしたとされ、これらの資料により、Rio Tinto は価格交渉上で有利な立場になるとしている。
Rio Tinto の上海事務所から押収されたコンピューターに政府の秘密データがあったとされる。

中国は近年、産業スパイの摘発に向けた動きを強化している。中国側には、経済開放が進むにつれて外国企業に「食い物にされている」といった感情が強まっていることなども背景にある。

7月13日のSydney Morning Heraldは北京情報として、胡錦濤主席自身ががこの捜査を承認したと伝えた。

しかし、こんな情報が国家機密だろうか?

中国の国家機密に関する法律は曖昧で、専門家によると、国営企業の商業上の情報でも適用される可能性がある。
賄賂が事実なら問題だが、相手企業の状況を調べること自体がスパイ行為として摘発されるなら、中国での事業活動は難しいこととなる。

Rio Tinto717日声明を発表、「Rio Tinoは従業員が中国の鉄鋼会社の役員に賄賂を渡したという報道は全く事実でないと信じる。常にRio Tinto の厳格な、公表された倫理コードに従って行動していると信じる」としている。

同社は何も述べていないが、Rio Tintoは外国籍のスタッフに中国から出国し、中国に戻らないよう指示したと報道された。

ーーー

豪州では反中感情が高まり、中国との関係を重視してきたラッド政権をも揺さぶり始めている。

政府は本事件は両国の貿易には影響しないとしているが、野党は外国の国営企業による豪州資源企業への投資を制限する法律を作るべきだと主張している。

ーーー

中国の鉄鋼産業と国際的な鉄鉱石メーカーとの間の2009年度の価格交渉はまだ続いている。

CISAはRio Tinto が日本や韓国のメーカーと妥結した前年比33%ダウンの価格を拒否し、40%ダウンを主張している。

景気悪化を背景としたものだが、中国の鉄鋼産業は非常に好調で、鉄鉱石輸入は増えている。

鉄鋼メーカーは鉄鋼製品の値上げを行った。CISAでも中国の鉄鋼事業は過去7ヶ月は赤字であったが、5月から黒字に転じたとしている。

鉄鋼メーカーの中には33%ダウンを受け入れたいとするメーカーも出ている。

ーーー

この事件が契機となり、中国の鉄鋼業界の問題点が明らかになってきた。

国営の大鉄鋼メーカーが鉄鉱石輸入ライセンスを悪用して必要量以上の鉄鉱石を購入し、輸入ライセンスを持たない中小のメーカーに違法に販売して儲けていた。

中国では112社の大メーカーと40社の商社がライセンスを持っているが、中国全体では1200の中小メーカーがある。

ライセンスのある大メーカーは大量購入の長期契約で安価に購入できるが、ライセンスのない中小メーカーは大メーカーからの購入は出来ず、変動する市場価格で購入することとなっている。

中小メーカーはこの制度は国営の大企業を利するものとの不満があり、大メーカーに賄賂を払って余剰品を購入するケースが増えてきた。大メーカーにはこれを専門とする子会社を設立しているところもある。

特に、20072008年に価格が急上昇したが、大メーカーは長期契約で100ドル/トンで購入したものを、市場価格より若干低い200ドル程度で横流しした。中小メーカーはこれを購入するために賄賂を払った。

大メーカーはライセンスを紙幣印刷機とみなしているという。転売で稼げるため、輸入価格上昇を気にしていない会社もある。

Rio Tinto事件を契機に、政府の調査はこの問題にまで拡大している。
輸入ライセンスの廃止にについての議論も起こっている。


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CNPC716日、ロシアからの原油処理のため、遼陽市の製油所の拡大(11%) を開始したと発表した。

100万トンの水素化分解設備、200万トンの水素化精製設備、硫黄除去・回収設備やタンクなどを増設する。
ディーゼルのほか、ナフサその他の石油化学原料も生産する。
2010年末の完成後は年間10百万トンの原油の処理が可能となる。

ーーー

中国は本年2月、ロシアとの間で政府間協定を結んだ。

中国開発銀行がロシア国営石油会社 Rosneft に150億ドル、東シベリア太平洋パイプラインを運営するTransneftに100億ドルを低利で融資する見返りに、Rosneft は2011から20年間、毎年15百万トンの原油の供給を行い、Transneftはパイプラインを中国に延長する。

太平洋パイプラインのうち、Taishet から極東アムール州のSkovorodino まではほぼ完成している。
Skovorodinoから中国の大慶を結ぶパイプラインは4月27日に起工式が行われた。2010年末に完成する。

日本などへの輸出用に、Skovorodino からVladivostok、Nakhodka までの太平洋岸まで延長するパイプライン本線の完成は早くても2012年ごろになる見通し。

ーーー

中国は2008年度に179百万トンの原油を輸入した。輸入は需要の51%にのぼる。

ロシアからの輸入は11.6百万トンで、前年比20%減となっている。大半は鉄道で輸入された。

 


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LG Chem は7月16日、2009年第2四半期の業績を発表した。
前期(第1四半期)比でも前年同期比でも増収増益となっている。

参考 2009/5/22  韓国LG Chem の業績

同社は二次電池、液晶ディスプレー用部品を生産する情報電子素材部門が需要期に入っていることから、7-9月期も好業績を達成可能とみている。

日本や欧米、SABICまでもが本年は前年比で大幅減益となるなかで、石油化学が中心の同社の好業績は目立つ。

                       単位:10億ウォン
  09/2Q 09/1Q 増減   08/2Q 前年比
 増減
連結売上高  3,921  3,400   521    3,749   172
  Petrochemicals  2,884  2,587   297    3,131   -247
I & E Materials  1,015   786   229     654   361
連結営業損益   660   487   173     484   176
  Petrochemicals   531   374   157     393   138
I & E Materials   130   114    16     102    28
連結純損益   467   289   178     356   111

連結売上高

ナフサの大幅値下がりによる売価ダウンで石油化学が前年同期比ではマイナスになっているが、情報電子材料部門の増収により、全社では前年同期比でも増収となった。

後記の通り、ウォン安も影響している。

   (NCC/PO はナフサ分解製品/ポリオレフィン)

連結営業損益 

増収とウォン安の影響で大幅増益となった。

同社では石油化学の業績について、下記の通り分析している。

・中国の景気刺激策による需要増
  「家電下郷」策でABSの需要が増加、利益率も向上
・中東の新設遅れによるポリオレフィンの需給逼迫
・中国のカーバイド法PVCのコスト競争力低下、北米の減産でPVC価格がアップ
・自動車の回復で合成ゴムの利益率向上
・アクリル酸/可塑剤が需給バランス維持で堅調
<見通し>
・原油や資源価格のアップで製品価格維持
・中東や中国の新しいポリオレフィンは影響が限られる。

ーーー

前期比で大きな影響を与えているのがウォン安である。

2008年の8月までは1ドル=1000ウォン前後で推移していた。
8月末ころから下落に転じ、一時は1600ウォンに近づいた。

ーーー

なお、LG Chem は上記の発表の際に、大山のナフサクラッカー実質 80万トン(公称76万トン)を10万トン増強する計画があることを明らかにした。近く正式決定する。

同社はまた、麗川の90万トンのクラッカーを増設中で、2010年4月に100万トンとする。


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Ineosは7月16日、75億ドルの借入契約の条件変更で債権者の了承を得たと発表した。230社強の債権者のうち2/3の賛成を必要とするが、96%が賛成した。

Jim Ratcliffe会長は「条件変更により現在進めている戦略に必要な余裕と柔軟性を確保できた。これは投資家がIneosとその戦略、経営陣を信頼してくれていることを示している」と述べ、感謝した。

Ineos によると、20091-5月のEBITDA (総平均法ではなく再調達原価ベースによるもの)は314百万ユーロで計画を上回っており、2009予算の売上高152ユーロ、EBITDAは11ユーロで、元利返済に十分なキャッシュフローが期待できるとしている。
 (
EBITDA=税引前利益+支払利息+有形・無形固定資産減価償却費)
  注)期首在庫の影響を避けるため、再調達原価ベースで計算し直した。

ーーー

Ineosは2008年11月に銀行団に対し、借入契約を2009年5月末まで免責するよう要請し、銀行はこれを受け入れた。
   2008/11/19 
Ineos の状況悪化

同社は本年5月末の期限の延長を債権者に要請していたが、5月27日、債権者の2/3以上の賛成で7月までの延長の承認を得た。

この後、Ineosは5カ年計画を作成し、銀行やそのアドバイザーにより詳細にチェックされ、いくつかのリスクシナリオごとにリスク量の計測がなされた(ストレステスト)。
4月には本年第1四半期の結果を元に、本年度の予算が債権者に提示された。
本年予算には大きなリストラや事業売却は含んでいない。

ーーー

借入契約に折り込まれている借入契約条項(Debt covenants)は、健全性の維持のため、現金残高と Interest coverageの最低レベル、借入金と資本支出の最高レベルを規定しており、これを破ると債務不履行となり、債権者は融資額の返還を要求できる。

今回、これら条件の緩和で債権者の了承を得た。

従来より緩和された新しいLeverage、 Interest coverage、Debt serviceなどのレベルは9月から適用される。
  
Interest coverage:営業利益/支払利息
  
Leverage:借入金/自己資本
  
Debt service:元利返済前cashflow/元利返済額 

債権者は5ヵ年計画も承認した。

賛成した債権者は見返りに、直ちに50 basis points、1年後に更に50 basis points の同意手数料を受け取る。
1 basis point =0.01%)

債権者はまた、200 basis points の金利上乗せを受けるが、これはPIK(payment-in-kind:現物支給)債券で受け取る。
(現金支払いでなく、後払いの債券で受け取る)

また、欧州銀行間取引金利(EURIBOR)を下限とする条件も了承した。

ーーー

なお、同社は引き続き、PetroChina 等との間でGrangemouth 製油所売却の交渉を続けている。隣接する石油化学プラントは同社が保持を続けると見られている。

2009/6/24 PetroChina Ineos の製油所を買収?


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米商務省は7月17日、6月の住宅着工件数を発表した。

季節調整済みの年率換算で582千戸となり、2カ月連続で増加した。
先行指標となる住宅着工許可件数も前月比8.7%増の563千戸と2カ月連続のプラスとなった。

しかし前年同月比で見ると、着工件数が46%減とほぼ半減に近い状態が続いている。


米国 住宅着工件数推移(季節調整済み年換算:千戸)

  2008 2009 前月比 前年同月比
1月  1,083   488  -12.2%  -54.9%
2月  1,100   574   17.6%  -47.8%
3月   993   521  - 9.2%  -47.5%
4月  1,001   479  - 8.1%   -52.1%
5月   971   562  17.3%  -42.1%
6月  1,078   582   3.6%  -46.0%
7月   933      
8月   849      
9月   822      
10月   763      
11月   655      
12月   556      
年合計   905.5      

注) 数値は過去2ヶ月分を常時見直している。
   このため、本年
4月及び5月は前回発表から変わっている。

   なお、理由は不明だが、本年に入り、2007年と2008年の月別数字が全て変更されている。(年計は変わらず)
   今回の2008年は変更後の数値。


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BASFは7月8日、中国(Greater China area、香港・台湾を含む)での活動についての最初の年次報告を発表した。

中国での活動の透明性を高めるため、毎年、次の7つの項目について最新情報を発表することにしたもの。

売上高、従業員数、職場の安全、水、廃棄物、大気汚染、エネルギー消費

「持続性(Sustainability)がすべてのことのコアであり、社会と環境に責任をもって初めて、継続して利益ある成長を続けることが出来る。この年次報告により、BASFがグローバルスタンダードを一貫して中国での活動に適用していることを示したい」としている。

BASFは1990年代以降で中国に20億ユーロ以上を投資してきた。2005年からの南京と上海のプロジェクトがメインである。

2006/7/10 BASFの中国戦略

2009/7/9   中国政府、BASF-YPCの増設計画承認

2008/10/13 BASFの重慶MDI計画,進展か
  2009年1月に環境保護省の承認を得た。NDRCの認可待ち

過去10年で売上高は毎年20%程度伸びている。

2008年の実績は以下の通り。

中国での活動拠点 100%子会社 19、JV 10
売上高 約42億ユーロ
従業員 約6,300人
職場の安全 負傷による休業  0.4時間/100万時間(前年比50%減)
水の消費 12.9百万m3(2007年の13.5百万m3に比して4.4%減) 主に冷却用
廃棄物 排水(BASFの世界規準、地方の規準を満たす) 7.3百万m3(前年比37%減)
有機物(水への) 456トン(前年比42%減)
窒素(水への) 80トン(前年比11%減)
重金属 1トン(前年比83%減)
固形廃棄物
 66%はリサイクル又は熱回収
 31%は焼却
 1%は埋め立て
42,200トン(前年比25%減)
大気汚染 Greenhouse gas 180万トン(前年比 5.2%減)
大気汚染物質 
COSOxNOxammonia and other inorganic compounds
dust
heavy metalsvolatile organic compounds
950トン(前年比10%)
エネルギー消費 製品トン当たりの燃料・電力・蒸気使用量は2002年から2008年の間に50%向上

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シーメンスやドイツ銀行など欧州の大手企業12社は7月13日、アフリカ北部のサハラ砂漠などに大型の太陽熱発電施設を設置し欧州に送電するDESERTEC Industrial Initiative の実施で合意した。総事業費は4千億ユーロ。将来は欧州の電力需要の15%をまかなう計画。
10月までにドイツ法人を設立する。

参加企業は次の各社

ABBABENGOA SolarCevitalDeutsche BankE.ONHSH NordbankMAN Solar MillenniumMunich ReM+W ZanderRWESCHOTT SolarSIEMENS

Siemens は太陽熱発電、太陽光発電、風力発電タービン、高圧電力輸送技術など幅広い環境技術を提供する。

2003年、ローマクラブは再生可能エネルギーの利用を目指すコンソーシアムTREC:The Trans-Mediterranean Renewable Energy Cooperationを設立した。
中東や北アフリカなど地中海周辺の国々の政府系機関や産業界が参加し、これらの地域で再生可能エネルギーによる発電をして、送電ロスが無い直流送電網で
EUに供給するという計画。太陽熱発電がその主軸を担う。

DESERTEC Industrial Initiative はローマクラブのドイツ支部が中心にまとめた。(砂漠のDesert とtechnology の合成語)

今回の合意で、今後具体的な事業計画や資金計画を立て、MENA(中東・北アフリカ)に張り巡らす太陽熱発電所、風力発電所のネットワーク建設の準備を行う。
目的は2050年までに欧州の電力需要の15%と、発電する現地の電力需要の大半を賄うというもの。
(欧州の残りの電力は下図の通り現地での太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス発電などで賄う)

このほか、次の目的を持つ。
・欧州、MENA諸国のエネルギー安全保障の拡大
・MENA諸国の成長、発展
・MENA諸国の将来の水供給の確保(余剰電力による海水の淡水化)
・CO2の削減

構想は以下の通り。

太陽熱発電所と風力発電所を北アフリカ、中東各地に建設する。
砂漠地帯で発電した電力は高圧直流(
HVDC)送電技術で欧州の需要家まで約2000kmにわたって送電する。

発電所建設に3500億ユーロ、送電網整備に500億ユーロを見込んでいる。

地図のはそれぞれの所要電力確保のために必要太陽熱発電の面積を示す。
EUの場合は130km四方の面積が必要)

太陽熱発電は鏡やレンズを使って太陽光を1点に集中させて熱を発生させ、集めた熱で蒸気を発生させてタービンを回し電力を生み出す。

太陽熱発電の利点は24時間送電が可能なこと。
日中に熱貯蔵タンク(溶融塩タンクかコンクリートブロック)に熱を貯め、夜間にその熱で発電することが出来る。曇りや悪天候の時には石油、天然ガス、バイオ燃料などでタービンを動かすことも出来る。

太陽光発電の場合は、太陽熱発電よりも建設に金がかかり、電力貯蔵には揚水システムなどの高価な設備が必要となる。
欧州で揚水システムを利用する場合、1日数時間のためだけに余分の送電線が必要となる。

HVDC送電技術は既にSiemensが中国で実施しており、三峡ダムの5000MWの電力を1400km離れた上海まで送電しているが、電力ロス5%に過ぎない。(交流の場合ならは400MWがロスとなる)

MENAから欧州までのHDVC送電のロスは15%程度となるが、MENAでの太陽熱レベルは南欧のレベルよりも2倍程度あり、またMENAでは季節による変動も少ないため、十分ペイするとしている。

本計画の詳細は以下を参照
   
http://www.desertec.org/fileadmin/downloads/DESERTEC-WhiteBook_en_small.pdf

ーーー

以前から西澤潤一・東北大学名誉教授が地球温暖化・エネルギー対策の切り札として「世界の電力需要は水力発電と直流送電で賄える」と主張している。

交流送電では200
kmが限界だが、直流なら、電線を少し太くすれば、2万kmまでも可能であり、地球上のどこへでも電力を送電できる。
そこで、豊富な水力資源のある場所(国、地域)で発電した電力を、世界中の消費地に運んで使うことが可能になる。
消費地では、同氏が開発した静電誘導サイリスタ(Thyristor)を使えば、直流を効率よく交流に変換できる。

同氏によると、直流送電は交流送電に比べてはるかに長距離伝送が可能であるが、直流は変圧器が使えないというのが欠点であった。
発電所を作り、電線でいつでも電気を使えるようにしたのはエジソンだが、直流で送ったため、エジソンの会社は直ぐにつぶれ、交流送電を推進したウイリアム・スタンレー、ニコラ・テスラらのウェスティングハウスに敗退した。

同氏が開発したサイリスタ半導体が直流を交流に変換できることが分かると、GEから飛んできて、直流送電をやりたいと述べたという。

日本ではこの案は無視されているが、DESERTECの発想は同氏の考えを元にしていると思われ、メンバーのABBは地球の周りに直流送電線を巻くという構想を立てているといわれる。


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シノペックの陳同海・元会長(60歳)に対し、北京市中級第二裁判所は15日、収賄で2年の猶予付きの死刑の判決を下した。
政治的権利は剥奪され、全ての財産は没収される。
法律では10日のうちに控訴できる。

1999から20076月までの間に、シノペックでの地位を利用して、2860万米ドル相当の賄賂を受け取り、見返りに土地売買やプロジェクトの契約などで不当な利益を与えていた。

中国政府は閣僚相当の高官であっても容赦はしないとの姿勢を示したものとされている。

通常、猶予付き死刑判決の場合、2年間の態度により終身刑に減刑される。
新華社通信は、彼は莫大な賄賂を受け取り、死刑に値するが、自白し後悔しており、検察側の知らなかった他の犯罪者の行動の情報を提供し、賄賂を返却しており、このため猶予付きとなったとしている。

以前に雲南省の元省長が多額の賄賂を受け取っていたが、調査に貢献したとして、2年の猶予付きの死刑判決を受けている。
逆に、有罪を認めず、収賄が非常に重要な社会的インパクトを与えたとして死刑になった高官もいる。

ーーー

陳・元会長は、寧波市の市長を勤めた後、現在の国家発展改革委員会の副委員長も勤め、1998年にシノペックに移り、2003年に会長となった。

2007年6月に突然辞任し、10月に逮捕され、共産党から除名された。

 


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EUは7月8日、ドイツの Ruhrgas AG とフランスのGDF Suez SA にそれぞれ、553百万ユーロ、合計1,106百万ユーロの制裁金を課した。
(1社での過去最大は
自動車用板ガラスカルテルでのフランスのSaint-Gobain 896百万ユーロで、今回の両社はこれに次ぐもの)

Ruhrgas AG Gaz de France1975年にロシアのガスをドイツとフランスに送る MEGAL pipelineを共同で建設することとし、パイプラインで送ったガスを相手の国の市場では売らないことで合意した。両社はそれぞれ、ドイツとフランスにおける天然ガスの最大手。

Ruhgasは、2003年にRAGE.On所有のDegussa株を購入、見返りにRuhgas株をE.onに譲渡し、E.On group に入った。
Gaz de Franceは
2008年にSuezと合併し、GDF Suez となった。

MEGAL pipeline (Mittel-Europaische-Gasleitungsgesellschaft)はロシアの天然ガスをドイツ・チェコ、ドイツ・オーストリア国境からドイツ・フランス国境まで送る2本のパイプライン。
現在、
E.On51%、GDF Suez44%、OMVが5%出資する。
チェコ国境の
Waidhausから独仏国境のMedelsheimまでのMEGAL Nord(北MEGAL)と、ドイツ・チェコ・オーストリア国境のOberkappel とドイツのSchwandorfまでのMEGAL Sud (南MEGAL)から成り、両パイプラインは Rothenstadt Schwandorf で接続されている。

両社は1975年にMEGAL建設を決めた際に、MEGALで運んだガスをGDFはドイツで売らないこと、Ruhrgasはフランスで売らないことで合意し、レターで交わした。

当時はGDFはフランスの輸入天然ガスを法的に独占していた。
Ruhrgas
の天然ガスも他のメーカーとの間のDemarcation Agreement 独占的な供給区域を設定する境界設定契約)で実質的に独占であった。(他に、排他的なパイプライン敷設権を認めるConcession Agreement もあった。)

GDF独占は2000年に廃止され、ドイツのDemarcation Agreement も19984月に違法とされた。

しかし両社は2000年8月にEC指令により欧州ガス市場が競争市場になった以降も、1975年のレターが違法であることを認識しながらも、市場分割を続けた。
定期的にいろんなレベルで会合を持ち、協定を確認し、相手の行動を監視した。

2004年には以前から協定は無効であると考えていたと説明したが、2005年9月に廃棄するまで協定を実行してきた。

EUは市場分割協定は独禁法の重大な違反であり、協定により、両社は自由化された両国のガス市場で強い地位を築いたとしている。


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韓国とEUは7月13日、FTAの締結交渉が妥結したと発表した。
欧州訪問中の韓国の李明博大統領とEU議長国のスウェーデンのラインフェルト首相との首脳会談で決着した。
今後、双方が承認手続きを経て協定に署名、それぞれの議会の批准により発効する。

本年3月24日に事実上妥結しながらも、いくつかの問題で最終的な妥結に至らず、その後双方で交渉を続けていた。

EU執行委員会が7月10日、加盟27カ国で構成される通商政策諮問機構(133条委員会)に韓国とEUのFTA交渉の最終案を報告し、加盟各国がこれを受け入れることとしたもの。これまで韓国とのFTAに消極的だったドイツが賛成に回り、ポーランドなど一部の東欧諸国も肯定的な立場に変わったものと見られる。

韓国とEUがFTAを締結・発効して韓国企業の欧州市場への輸出に伴う関税がゼロになれば、競合関係にある日本の自動車や電機メーカーなどは価格競争上のハンディを負うことになる。

韓国・米国間のFTAについては200742日に交渉が妥結したが、特に米国内での反対が強く、発効に至っていない。

2007/4/4 米韓FTA妥結

ーーー

韓国とEUは本年3月24日、自動車・ワイン・豚肉の関税など自由貿易協定(FTA)交渉の中核争点について合意し、1年10カ月間かけて行われた交渉が事実上妥結した。

2009/3/27  韓国とEU、FTA交渉が事実上妥結

双方は、相手地域で生産した自動車・冷蔵庫・カラーTVなど工業品に対しFTA発効5年以内に全関税を撤廃すると基本合意した。
EUの関税は、自動車で10%、テレビで14%と高率で、関税撤廃による韓国企業の輸出拡大が予想される。
見返りとして、農業品などの関税撤廃についても大部分は合意した。

工業製品関税については、原則 5年間で関税を完全撤廃。
  自動車部品は協定発効と同時に関税を撤廃、
  中大型乗用車は3年、小型自動車は5年内に撤廃
韓国は例外として40余りのセンシティブ品目について7年内の関税撤廃。
 (関税率が16%のその他機械類、純毛織物など)

EU産ワインは、直ちに撤廃
EU産豚肉に対する関税は、冷蔵肉全体とバラ肉冷凍肉は10年以内に、その他の部位の冷凍肉は5年以内に撤廃。
但し、韓国のコメ市場は開放しない。トウガラシ、ニンニク、タマネギも「主要調味料」として関税を据え置く。

現在、EU産農産物のうち輸入トップは「冷凍豚肉」だが、FTA妥結以降、韓国市場シェアをさらに拡大する可能性が高い。
ワインもEUの対韓主要輸出品目で、EU産チーズも消費が増えるとみられる。

双方は、G20首脳会議(金融サミット)が開かれる4月2日にロンドンで通商相会談を開き、関税引き下げ・原産地決定基準・農産物関税撤廃といった残りの争点を最終的に妥結する見通しだった。

しかし、最終的な妥結に至らなかった。

争点は、「関税の払い戻し」。

韓国は中国などから部品を輸入し完成品を輸出する場合、部品輸入については関税を払い戻している。
EU側は韓国・EU間FTAの利益が第三国に向かいかねないとして、これに反対している。
特に欧州自動車産業界は、韓国メーカーが安価な中国製部品を使った自動車を輸出できるのは不公平とした。

他方、韓国政府はFTA交渉初期から、関税還付問題は決して譲れないとの姿勢。

4月の通商相会談では、「韓国の関税還付制度を維持してほしい」という韓国側の要求は受け入れられなかった。

今回、本件については、韓国製品に外国産部品の使用が「著しく増える場合」、EUはこれを規制する「セーフガード(緊急輸出入制限措置)」を適用できる、とする保護措置を取ることで妥協した。

ーーー

韓国の外交通商部の李恵民FTA交渉代表は今回の協定には今後議論になるような「毒素条項」はないと強調した。

特に韓米FTA締結時に韓国に一方的に不利な内容だと指摘された「逆進防止条項」(合意された水準を後退させる措置を取らないこと)や、「投資者・国家提訴条項」(韓国の政策が外国人投資家の利益に反する場合、外国人投資家が韓国政府を提訴できるもの)などは含まれなかった。

しかし「未来の最恵国待遇」条項は今回の協定にも含まれた。FTAが発効した後、どちらか一方が他の国とより有利な条件でFTAを締結する場合、以前に締結された当事国にも同じ優遇を与えなくてはならないというもの。


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中国投資有限責任公司(CIC) 73日、100%子会社の Fullbloom Investment Corporation を通じて、資金難のカナダの資源大手Teck Resources Limited の株17.2%を現金15億米ドルで購入することで合意したと発表した。

CICは最低1年間は株を保有する。

ーーー

CICは中国政府が2007年9月に、外貨資産のうちの2000億米ドルを資本金とし、海外での運用を目的として設立した。

中国の外貨準備は、2002年末の2864億ドルから2007年末の15283億ドルまでに膨らんだ。
中国は為替市場安定や対外支払準備のため流動性の高い外貨準備7000億ドルを必要としているが、外貨準備はこれを超えて増え続け、人民元の切り上げ圧力となっており、超過部分約8000億ドルの運用が課題となっていた。

CICの設立直前の2007年6月に中国政府は30億ドルで米国の投資会社Blackstone groupの筆頭株主となった。(CICに移管)

CIC2007年12月にMorgan Stanley の転換社債56億ドルを購入し、9.86%の株主となった。Morgan Stanley には2008年に三菱UFJが投資したためCICの比率は7.68%に下がったが、本年62日、12億ドルで株式を購入し、持株比率を9.86%に戻した。

真山仁の小説「ハゲタカ」シリーズの第三部「レッドゾーン」は中国の国家ファンドによる日本の自動車メーカー買収を扱っている。

その中で主人公は国家ファンドの目的を、「ドルを無駄使いすること。下手に利益を上げれば外貨準備高を増やしてしまい、人民元切り上げの圧力が高まる」とし、短期的には損をするが、長期的にはノウハウ(金融)や技術(自動車)を獲得することを狙っているとしている。

一般の企業では決して太刀打ちできない存在である。

金融危機の影響で評価損が膨らみ、昨年は大規模投資を控えていた。

CICはこれまで主として金融機関に投資してきたが、資源権益の獲得を目指したものと見られている。
中国の企業は政府の支援を受け、石油、石炭、鉄鉱石、その他、資源権益の獲得に積極的である。

ーーー

Teck Resources はカナダの資源大手で、石炭・銅・鉛・亜鉛・モリブデン・金を扱っており、亜鉛では世界最大級、原料炭の海上輸送シェアは世界2位。

同社は1913年に金鉱山生産のため設立されたTeck-Hughes Gold Mines と、銀・亜鉛・鉛鉱山開発を主体とした1906年設立のComincoが2001年に合併してできた。(当初名はTeck Cominco)

2008年には石炭事業のJVパートナーである
Fording Canadian Coal Trustを98億ドルで買収して石炭資産を拡大した。

Teck Fording Canadian Coal 買収後、コモディティの価格は暴落し、カナダ経済も不況に陥った。

Teck は本年初めには借入金の一部の支払猶予を受けたが、借入金返済のため、資産売却、コストカットを行っている。

この一環として金資産のJV権益の売却を進めており、カナダの金鉱山の権益を2008年にJV相手のBarrick Goldに売却、本年4月にはアラスカのPogo鉱山の権益をJVパートナーの住友金属鉱山2億4500万米ドルで売却した。

Pogo金鉱山は住友金属鉱山の海外での初の主導的な開発プロジェクトで、1991年に探鉱を開始、1997年にTechと提携し、探鉱及び企業化調査を進めた。

1)位置:米国アラスカ州フェアバンクスの南東約145キロ
2)権益比率:住友金属鉱山アメリカ社(住友金属鉱山100%子会社) 51%→85%
        Teck Resources 40%→ 0
        SC Minerals America(住友商事100%子会社) 9%→15%
3)埋蔵金量:109t(2008年末鉱量計算結果)
4)年間生産金量:11~12t/年
5)開発投資額:約378百万ドル(出資比率で負担)

採掘後、選鉱→青化浸出→電解採取を経てドーレ(金品位約94%、銀品位約6%)として回収している。

CICへの株式売却収入15億米ドルは主に借入金返済に回される。

 


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参院は13日午後の本会議で、脳死後の臓器提供の年齢制限を撤廃し、本人の意思表示がなくても家族の承諾で提供を可能とする臓器移植法改正案(A案)を賛成多数で可決、成立した。
賛成138票、反対82票、欠席・棄権は21人だった。

1997年の施行から12年ぶりの改正となる。

現行法の付則第二条の規定は以下の通り。

この法律による臓器の移植については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況を勘案し、その全般について検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとする。

採決は、A案修正案、A案、子どもの脳死臨時調査会設置法案の順で行われた。

現行法の脳死の定義を維持するA案修正案は先立って採決されたが、賛成72票、反対135票、欠席・棄権は34人で否決。
子どもの脳死判定基準などを議論する「子どもの脳死臨時調査会」の設置を盛り込んだ対案は採決されず廃案となった。

ーーー

衆院は6月18日の本会議で、臓器移植法改正案を採決し、原則「脳死は人の死」とし、臓器提供の拡大をめざすA案を賛成多数で可決し、参院に送付した。

2009/6/19 臓器移植法改正、A案が衆院通過 

参院では衆院から送られたA案に加え、参院で提出された修正A案、子どもの脳死臨調設置法案の3案が審議された。

  現行法 A案 修正A案 子どもの脳死臨調
設置法案
脳死位置づけ 提供時に限り
人の死
人の死
(現行法規定削除)
         現行法と同じ
臓器提供の条件 本人の書面同意と
家族の同意
     家族の同意
     本人が生前に拒否可能
現行法と同じ
提供可能年齢 15歳以上          0歳以上 内閣府に「子ども脳死
臨調」を設置
その他 移植術を受ける機会は、
公平に与えられるよう配慮
親族への優先提供 提供者の家族への
精神的支援検討など
付則に明記
生体移植のルール検討

自民、公明、民主の有志議員は7月7日、現行法の通り「脳死は臓器提供の場合のみ人の死」とするA案の修正案を、参議院に提出した。

野党議員有志は6月23日、A案の対案として、子どもの脳死臨調設置法案(子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討等その他適正な移植医療の確保のための検討及び検証等に関する法律案)を提出した。

・脳死の定義を現行法と同様に臓器摘出時に限って人の死とする
・子供からの臓器摘出の課題を検討する「子どもの脳死臨調」を内閣府に設置する。
 検討するのは
 (1)子供の脳死判定基準
 (2)本人の意思確認や家族の関与
 (3)虐待された児童からの臓器摘出防止策--など。
 法施行後1年以内に結果をまとめ、首相に意見を述べる。

法律案を提出する理由として以下のように述べている。

臓器の移植及びこれに使用されるための臓器の摘出が人間の尊厳の保持及び人権の保障に重大な影響を与える可能性があること等にかんがみ、子どもに係る脳死及び臓器の移植に関する検討並びに当該検討に係る臨時子ども脳死・臓器移植調査会の設置について定めるとともに、適正な移植医療の確保のための検討及び検証等について定める必要がある。

 


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SABIC711日、中国国家発展改革委員会(NDRC)が、現在建設中のシノペックの天津石化計画へのSABICの参加を承認したと発表した。

昨年の6月にシノペックとSABICは戦略的協力契約を調印し、シノペックが建設中の天津の新しい石化コンプレックスを50/50JVとし、新たにSABIC技術によるポリカーボネートの生産を追加することを検討することとした。

ーーー

シノペックは既に天津の大港石化基地にエチレン20万トンのコンプレックス(PE12万トン、PP30万トンほか)を持っている。

シノペックと天津市は大規模石化計画をたて、1997年頃にダウケミカルと中国側(SINOPEC/天津市)の50/50 JV検討された。
しかし、
ダウが経済性を理由に撤退した。

その後、天津市は外資企業の参加を求め、
サウジアラムコとの合弁の報道もあった。またSABICも2004年4月にシノペックに対して本計画に関心ありとの意向を示したが、そのときは進展はなかった。

シノペックは2005末に単独での拡張計画の承認を受け、20066月に着工した。本年9月に建設が完成する予定。

既存の500万トンの製油所を1250万トンに拡張し、エチレン100万トンを新設するもので、誘導品は以下の通り。
 LDPE 30
トン
 HDPE 30
トン(INEOS Innovene S Process
 PP   45
万トン(LyondellBasell Spherizone PP) 
 EOG  42
万トン(Dow 技術)
 フェノール 35万トン
 SM   50万トン
 ブタジエン、ブテン
-1
 PC   (FS中)

2006年1月のサウジのアブドゥッラー国王の最初の公式訪中を機に、SABICがシノペックとの交渉を再開した。

2006/7/3 SINOPEC天津分公司の100万トンエチレン計画着工

 


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中国企業が世界の鉄鉱石会社に相次ぎ出資している。

豪州の資源会社 Emergent Resources7月3日、西豪州のBeyondie Iron project の開発のため、中国冶金科工(China Metallurgical Investment)とJVを設立すると発表した。

同鉱山は当面、年間300万トンの磁鉄精鉱生産を目標としているが、JVで2億豪ドル(159百万米ドル)を集める。

Emergent はまた、中国冶金科工に対し新株860万株(@45セント、387万豪ドル)を発行、490万株(@27セント、116万豪ドル)のオプションを与える。増資資金はBeyondie Iron project の運転資金になる。

Emergent は西豪州に下記の権益を有している。

Beyondie Iron Project 磁鉄鉱
Glengarry Mt Bartle Project base metals
North Pool Project base metals, gold
Diamond Well Project base metals
Rainbow Bore, Clarrie Well and Fenceline base metals, uranium
Mt Narryer Project gold, uranium
Marble Bar Project gold, copper
Paterson / Rudall River Project gold, copper, uranium

 

   ---

中国冶金科工は2008年8月にCape Lambert Iron Ore Ltd. から4億豪ドルで同社のCape Lambert Iron Ore Project を買収している。

Cape Lambert Iron Ore Project は西豪州の Pilbara 地区のプロジェクト。

看板鉄鉱石プロジェクトを売却し4億豪ドルを取得した Cape Lambert は、新たな買収の機会を探っている。

ーーー

Cape Lambert の南西のCape Preston では香港のCITIC Pacific の子会社のCITIC Pacific Mining Management が35億米ドルの鉄鉱山開発を行っている。これには中国冶金科工が20%を出資している。

20億トンの磁鉄鉱を開発し、高グレードの磁鉄精鉱とペレットを25年間、毎年27.6百万トンを輸出する計画。

これに加え、40億トンの鉱山の権利を得るオプションを持っており、その場合、年間生産量は70百万トンに達する。

ーーー

鞍山鋼鉄集団(AnSteel )は6月25日、豪州の鉄鉱石生産会社Gindalbie Metalsヘの出資比率を12.6%から36.28%に高め最大株主になることについて中国政府の承認を得た。昨年8月にGindalbie Metalsから提案のあったもので、Gindalbieの株主総会は本年2月にこれを承認している。

Gindalbie は新株発行で162百万豪ドルを集める。

この後、両社は144百万豪ドルずつを西豪州のKarara iron ore project 開発のための50/50 JV(Karara Mining Limited)出資する。
両社による出資総額
はこれで534百万豪ドルとなる。

残りの開発資金(12億米ドルまで)は中国開発銀行によるプロジェクトローンで賄われる。

Karara は2010から年間10百万トンの鉄鉱石を生産する。磁鉄鉱工が800万トン、赤鉄鉱が200万トンとなっている。

ーーー

中国鉄鋼大手の武漢鋼鉄集団(Wuhan Iron & Steel )は本年6月、ブラジルの鉄鉱石生産会社 MMX(Mineração e Metálicos S.A)グループに9.09%(120百万米ドル)を、MMX の子会社 MMX Sudeste に23%(280百万米ドル)を出資することを提案、MMX側も「武漢の提案を受諾する方向で進める」と表明した。

武漢はMMXへの9.09%の投資を通じ、実質的にMMX Sudeste 30%を出資することとなる。
これは、MMX
の借入金返済、Sudesteの開発、拡張の資金となる。

MMXは現在、2つの子会社MMX Corumba and MMX Sudesteで操業している。
MMX Sudeste Minas Gerais州で2つの孫会社 AVG Minerminas で操業している。

   ---

カナダのConsolidated Thompson Iron Mines (CLM) 69日、武漢鋼鉄集団が同社に240百万米ドルを投資する契約に調印したと発表した。

武漢は105百万カナダドルでCLMの19.99%を取得する。
更に武漢は残額で 武漢25%/CLM75% 出資の
limited partnership を設立し、CLMBloomLake鉄鉱山(QC州)をこれに移管する。
この運営は
CLMが引き受ける。

武漢はBloomLake鉄鉱山の存続期間にわたり、毎年の生産物の出資比率分を市場価格で購入する義務を負う。
武漢はまた、
CLMの他の鉱山の生産物の長期引取権を一定条件で持つ。

なおCLMはより有利な提案があれば、200万ドルの解約料の支払いで解約する権利を持つ。

 


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Rio Tinto の上海事務所の社員4名が7月5日に上海の国家安全局に拘束され、調べられている。
4名のうち、3名は中国人で、残り1名は中国系で豪州国籍を有している。いずれも鉄鉱石部門で中国を担当している。

国家安全局では拘束の事実は認めているが、理由は明らかにしていない。

Rio Tinto は中国側の調査には完全に協力するとし、何が起こったのかを問い合わせているとしている。
豪州政府は領事館による面会を要請した。

拘束の理由として、いろいろ噂されている。

豪州の外務相は8日、拘束された豪州人は国家機密を盗んだとしてスパイ容疑で調べられていると述べた。

鉄鋼メーカー筋は中国の鉄鋼メーカーへの贈賄容疑ではないかとしている。

豪州のメディアは鉄鉱石市場を操作した疑いではないかとし、中国のメディアはRio Tinto が価格引き上げのためスポット市場に製品を出すのを控えたと批判している。

首都鋼鉄の役員も拘束されたとの報道もある。

ーーー

Rio Tinto 526日に新日鉄との2009年度価格交渉を終えた。粉状鉱の価格を前年度比 33%値下げすることで合意したもので、日本と韓国のメーカーはこれを受け入れた。

価格推移(単位:cent/dry metric ton unit
  2007 2008 2009 2008 2007
Pilbara Blend Fines粉状鉱   80.42  144.66   97  -33%  +21%
Pilbara Blend Lump塊状鉱  102.64  201.69  112  -44%   +9%

    2009/5/27 2009年度鉄鉱石価格

中国鋼鉄工業協会や中国の鉄鋼会社にとってはこれは受け入れがたい値段で、中国鋼鉄工業協会は緊急会議を開き、対策を協議し、Rio Tinto に対して45%の値下げを要求した。

Rio はこれを拒否し、まとまらないまま、7月1日からはスポット価格での取引に移行することとなった。

しかし、7月8日の中国紙は、中国側が Rioと日本側の上記の価格をそのまま受け入れると報道した。
また、従来の1年契約から、半年契約への切り替えも受け入れたという。

スポット価格が4月の安値から32%も上がっているのが理由で、このままでは日本や韓国の価格よりも高くなる。

但し、Rio Tinto は何も発表しておらず、中国の鉄鋼メーカーも、これが誤りで交渉は続いているとしている。

上記の、「鉄鉱石市場の操作」、「スポット市場・・」はこれを指している。
中国に値下げをすれば、日本や韓国にも波及するため、これを防ぐためにスポット価格を引き上げたのではないかというもの。

付記

その後の情報では、鉄鉱石価格交渉に関して、国家機密を盗んだという疑惑の模様。
中国側は中国鋼鉄工業協会が業界を代表してRio Tinto との交渉に当たっているが、役員が拘束された首都鋼鉄は国営企業で、鉄鉱石価格交渉での中国側の落とし所(これが国家機密か?)を知る立場にある。
この役員に賄賂を渡して情報を得ようとしたとされる。

ーーー

Rio Tinto 本年2月12日、中国国有アルミ大手、中国アルミ業公司(Chinalco)から現金で195億ドルの出資を受けると発表したが、6月5日、Rio Tinto は中国アルミの出資取り止めを発表した。違約金として195百万米ドルを支払う。

中国勢の豪州進出が相次ぎ、これに不安を感じる反対派と中国との関係強化を図る賛成派が互いを攻撃し、政治問題化した。

2009/6/6  中国アルミのRio Tinto への出資 取り止め

新華社通信はこれをRioの背信行為であると批判している。


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中国政府7月1日付で、シノペックとBASFが2008年3月に提出した両社の50/50JVの南京のエチレンコンプレックス BASF-YPCの増設計画のFSを承認した。

BASF-YPC2000年に50/50JVとして設立され、シノペック揚子石化に隣接して建設された。
第一期(投資額 29億ドル)は2005年6月に商業生産を開始した。

約14億ドル(当初計画では9億ドル)を投じて、既存のエチレンを60万トンから74万トンへ増強するとともに、新しく10基のプラントを建設、既存3基のプラントを増強する。

2010年のエチレン定修時に繋ぎこみを行い、2011年に稼動する。

また、シナジー効果を高めるため、隣接するBASFとシノペックのJVのYangzi-BASF Styrenics をBASF-YPCに統合する。

Yangzi-BASF Styrenics SINOPEC揚子石化が40%、BASFが50%、BASF (China)が10%を出資して199410に設立され、1997末に生産を開始した。

SM、PS、EPSを製造販売している。

計画は次の通り。(単位:千トン)

製品 既存   増設計画
チレン エチレン  600 増設(→740
C4 complex  - Butadiene
2-propylheptanol
Isobutene
Polyisobutene.
EO EG  300 EO 増設 
EO Derivatives  - Butyl glycol ether
Non-ionic surfactants
Amines complex  - Ethanolamines
Ethyleneamines
Dimethylethanolamine
   - DMA3
LDPE  400  
Acrylics value chain アクリル酸  160  
アクリル酸エステル  215  
   - Super-absorbent polymer (SAP)
C4オキソアルコール  250 増設
蟻酸  50  
プロピオン酸  30 増設
メチルアミン  30  
ジメチルホルムアミド(DMF  40  
Yangzi-BASF Styrenics Ethylbenzene  130 BASF-YPCに統合
Styrene monomer  120
Polystyrene  200
EPS  52

参考  2006/7/10 BASFの中国戦略


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EU裁判所は7日、反応してポリマーになったモノマーも登録が必要とするREACH規定は有効と判断した。

REACH規則では、ポリマーは登録と評価は除外されている。
しかし、ポリマーを構成する
2wt%以上のモノマーが年間1t以上の場合は登録が必要としている。(article 6 (3)

EUは当初、ポリマーも登録対象としたが、化学業界のロビー活動の結果、最終的にポリマーは対象外となった。

化学会社4社(フランスのS.P.C.M. SA、ドイツのC.H. Erbsloeh KG、英国のLake Chemicals and Minerals、米国のHercules )が、反応済のモノマーはポリマーの部分であり、ポリマーである以上は規定により登録の対象外であるとし、この規定を除外することを求めていた。
(手続き上、直接
EU裁判所に訴えることは出来ないため、英国環境省を通じて、英国最高裁からEU裁判所に判断を仰ぐ形式をとった)

EU裁判所は、REACH規定のモノマーには反応してポリマーになったモノマーも含まれると判断した。


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帝人は米国Cargill との合弁会社のNatureWorks LLCの保有持分50%全てをCargillに譲渡し、6月30日を以って合弁契約を解消した。
今後は、
Cargill が全持分を保有することになり、将来の成長を目指してポリ乳酸ポリマーの生産・販売事業を継続して運営する

NatureWorks は、1997年に Cargill Dow 50/50JVCargill Dow LLC して設立された。
2005年1月にCargill
Dow の持分を買収、100%子会社となった同社をNatureWorks LLC に改称した。
2007年10月、帝人が同社に50%出資した。

2007/10/6 帝人、Cargill NatureWorks に出資 

世界最大である年産14万トン規模のポリ乳酸ポリマー(PLA)の商業生産施設を有し、「Ingeo」ブランドのバイオポリマーを製造・販売してきた。

ーーー

今回、帝人は、事業の「選択と集中」を徹底する中で、独自開発の「バイオフロント(BIOFRONT)に経営資源を集中し、技術開発・市場開拓をさらに加速していくこととした。既に2008年度にNatureWorks 出資に関わる損失処理を実施している。

帝人は2006年3月、武蔵野化学研究所と共同で新型耐熱性バイオプラスチックの開発に成功したと発表した。

ポリ乳酸(PLA)をはじめ、バイオプラスチックは耐熱性や耐衝撃性などの性能面において石油由来のプラスチックに及ばないが、新型耐熱性バイオプラスチックはポリ乳酸に使用されるL乳酸と、その光学異性体であるD乳酸を原料とし、両者のユニークな結晶構造が高耐熱性を生み出している。

・使用する原料が植物由来であるため、生分解性がある。
・融点は約210℃で、ポリ乳酸の融点を40℃も上回る。
 (代表的な耐熱性プラスチックのPBTに匹敵)
・高耐熱特性により、既存のバイオプラスチック製の繊維では不可能であったアイロンがけも可能。
 また、フィルムや樹脂の高温成型プロセスへの適合性も有している。
・透明性においても、PETを上回る高透明性を有する。

帝人は20079この耐熱性バイオプラスチックに帝人グループとして統一ブランドを「バイオフロントとし、グループを挙げて具体的に市場展開を図っていくと発表した。

繊維  :帝人ファイバー
フィルム:帝人
樹脂  :帝人化成

その市場展開の第一弾として、帝人ファイバーがマツダと共同で、自動車内装に使用可能な品質と耐久性を有する「バイオフロント繊維を100%使用した自動車用シートファブリックの開発に成功した。

本年6月、帝人は「バイオフロント」について、高温・高湿度下での耐久性を大幅に向上させることが可能な「加水分解防止技術」の開発に成功したと発表した。

バイオフロントは他のバイオプラスチックと同様に、高温・高湿度の環境においてはポリマーが加水分解を起こしやすく、PETなどに比べて使用条件に制限を受ける場合があった。

帝人では得意とするポリマー基盤技術の駆使と、分子レベルでの反応をコントロールする革新的な技術の創生により、 「バイオフロント」の本来有する耐熱性を損なうことなく、加水分解の原因となる要素をコントロールすることにより、それらの作用を極限まで抑制することに 成功したもの。

従来品と比較して10倍以上の耐加水分解性が発現することが確認されており、PETとほぼ同等の耐久性を 実現した。

これにより、既に採用されているカーシート用繊維として耐久性が向上することはもとより、電気・電子分野や自動車分野などにおいて、より高温・高湿度の厳しい環境にさらされる部品や部材として使用することが可能となる。

帝人は2008年7月に岩国事業所に年産200トンの実証プラントを稼動させたが、同時にトヨタから豊田市にある年産能力1,000トンの実証プラントを譲り受けた。(トヨタは実証実験にメドがつき、稼動を停止していた。)

解体して松山事業所に移設し、改造、本年8月から立ち上げるが、今回の改良技術を生かす。

同社は2011年度にも、年間3,000~5,000トンの生産規模で事業化する方針といわれている。

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付記

NatureWorksは7月9日、オランダに本拠を置く Avantium との提携を発表した。

Avantium は20002にシェルからスピンオフして設立された。PfizerGSKEastman ChemicalWR GraceAkzo Nobel などのコンソーシアムが出資し、戦略的パートナーとなっている。

同社は糖質からバイオ燃料、プラスチックを生産する技術を開発した。(製品名 Furanics

Avantiumの製造技術とNatureWorksの市場開発技術を統合するもので、AvantiumのバイオプラスチックをNatureWorksがいろいろの分野でテストを行う。



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中国商務部は6月24日、輸入メタノールのダンピング調査を開始すると発表した。サウジアラビア、マレーシア、インドネシア、ニュージーランドの4カ国原産のものを対象としている。 

上海焦化(Shanghai Coking Chemical)、内蒙古遠興エナジー(Yuanxing Energy)、エン礦國泰(Yankuang Cathay)、Yankuang Lunan、Pingmei Lantian などの中国メーカーからダンピング調査の申請を受理し、その後検討してきたもの。 

過去1年で中国東部のメタノール価格は劇的に下落した。
昨年第2四半期にトン当たり4930人民元であったのが、最近は1900人民元になっている。
これは経済危機の影響とともに、安価な海外のメタノールの流入によるもので、国内メーカーは輸入数量の増加と価格の低下の被害を受けたとして、メタノール市場の安定化のため政府にダンピング調査を要請した。
   

中国のメタノールのバランスは以下の通り。(千トン)

  生産 輸入 輸出 消費
2007  10,760    845   563  11,042
2008  11,120   1,434   368  12,186
2009
(1-5)
  3,910   2,906    1   6,815

本年の輸入数量は年換算で6,974千トンとなる。   

ーーー

サウジ政府はダンピングを否定し、今回の措置に遺憾の意を表した。
これを受け、中国の大使館スポークスマンは、調査の段階であり、調査完了まではダンピング課税をしないと説明し、サウジ政府の懸念を考慮すると述べた。

National Centre for the Development of Saudi Exports の会長でサウジ商工会議所会頭(メタノールメーカーの1社の株主のSipchem の取締役)は74日、サウジの輸出業者は中国が検討している間に被害を受けるのを心配していると述べ、サウジ政府は報復措置として中国からの鉄や化学品などの輸入品に対して関税を課するよう主張した。
「中国の鉄やプラスチックや電機産業がダンピングで我国の産業に害を与えている」としている。

これに対しては昔のサウジのWTO交渉チームのヘッドは、感情を持ち込まず、中国でダンピングをしていないことを立証すればよい、としている。商工会議所にWTOのルールを教育すると。

サウジの中国へのメタノール輸出はサウジの石化製品の10-15%になり、2008年では20億ドルに達するという。
2008年のサウジの生産量は620万トンで、うち中国に84万トンを輸出した。

SABIC74日、中国市場でダンピングをしていないとの声明を発表した。

サウジの石化メーカーは低コストの原料を入手できるため、競争上、不公平なメリットを受けているとの批判を受けてきた。

サウジは2005年12月にWTOに加盟したが、最後まで問題になったのが政府の決めたエタンとメタンの固定価格(75cent/百万BTU)で、WTOは最終的にこれを承認した。(サウジ政府は天然ガス輸出用の液化費用を勘案すれば安くはないと説得した)

GCC 6ヶ国のうちクウェート、UAE、カタール、バーレンは1998年以前に加盟済みであり、オマーンも2000年末に139番目のメンバーとして正式加盟を果たしており、残る未加盟国はサウジのみであった。

EUはサウジがWTOに加盟した場合、これまでサウジの石化製品に課していた関税障壁を撤廃しなければならず、EU内の石化産業が打撃を受けることは必至である。このため、上記のエタン価格問題や、サウジ国内の工業所有権等の法制度の未整備、商慣習が透明性に欠ける等の点をあげ、反対していたが、米国が説得したといわれている。

サウジのエコノミストは、サウジのWTO加盟の際に他の加盟国はこれに同意しており、サウジの石化製品は輸出のためのインセンティブを与えられているとはいえないと述べている。

ーーー

中国はこれまでサウジ製品に対しては2件、ダンピング調査を行った。

2005年9月にオクタノールについて、日本、韓国、EU、インドネシア品とともに調査を開始したが、これについては2007年1月に「損害なし」との結論で、調査を終結した。

2008年9月に1,4ブタンジオールについて、台湾品とともに調査を開始、2009年5月にクロの仮決定を行い、現在調査を継続している。
この際には、影響が少ないためか、サウジ側に動きはない。
サウジでは Sipchem がマジョリティのInternational Diol Company がブタンから無水マレイン酸→ブタンジオール→テトラヒドロフラン、ガンマブチロラクトンを生産している。)

ーーー

サウジのメタノールに関して(仮にダンピングの事実があった場合)、中国政府がサウジとの政治的関係を考慮するかどうか、見ものである。

これまでの中国のアンチダンピング措置のうちに、政治的配慮がなされたと見られるのが1件だけある。

中国商務部は2004年3月に、米国・韓国・タイ・台湾原産の無漂白クラフト紙についてダンピング調査を開始し、2005年5月にクロの仮決定、2005年9月にクロの最終決定を行った。

ところが2006年1月9日、国務院決定でこれが取り消された。理由は挙げていない。
(中国の反ダンピング法50条では、商務部が決定の変更や取り消しを提案し、関税委員会がこれを決定できるとなっている)

米政府は2007年2月、「企業に不当な補助金を与えて輸出を促進、輸入を阻害して米国企業に被害を与えている」として中国をWTOに提訴した。
USTRはその発表の中で、過去の米中間のWTOを巡る3つの問題点を挙げている。
その第3が無漂白クラフト紙のダンピング問題で、米国が本件でWTOに提訴すると伝えると、中国側が決定を取り消したとしている。 

ーーー

今回の中国のダンピング調査の対象は、サウジアラビア、マレーシア、インドネシア、ニュージーランドの4カ国原産のものである。

各国のメーカーは以下の通り。

  社名 能力 出資
ウジアラビア AR-RAZI
(Saudi Methanol)
490万トン SABIC 50%/日本・サウジアラビアメタノール(JSMC) 50%
 JSMCは三菱ガス化学 47%/海外経済協力基金 30% ほか
IBN SINA
National Methanol Company)
110万トン SABIC 50%/
CTE (Hoechst-Celanese Duke and Energy) 50%
International Methanol Company 100万トン Sipchem 65%/Japan-Arabia Methanol (JAMC)35%
 JAMCは三井物産55%/三菱商事15%/
 ダイセル
15%/飯野海運15%
マレーシア Petronas 66万トン
170万トン
 
インドネシア Pertamina 33万トン  
PT Kaltim Methanol Industri 66万トン 双日 85%/ダイセル 5%/ PT Humpuss 10%
ニュージーランド Methanex 240万トン  


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合成ゴム100年

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本ブログは2006年2月15日に始まった。

第1号のタイトルは「プラスチック100周年」であった。

「来年2007年はプラスチックが初めて誕生してから100周年に当たる。
1907年、ベルギー系アメリカ人のベークランド博士がフェノール樹脂(商品名:ベークライト)を開発した。・・・・」

本年は「合成ゴム100周年」である。

バイエル(当時の社名はElberfelder Farbenfabriken vormals Friedrich Bayer & Co.)のFritz Hofmann が1909年9月12日、「合成ゴム製造過程」に関する特許第250690号を取得した。

天然ゴムは10万~100万のイソプレン分子からなる付加重合体(cis-1,4-ポリイソプレン)であることは1905年に解明されたが、誰も重合することが出来なかった。

Hofmann isoprene の代わりに methyl-isoprene を使用した。

彼は原料をスズ製容器にいれ、熱して、待った(時には数ヶ月も)。温度により軟らかさは異なったが、常に弾力性があった。
最初の合成ゴム(メチルゴム)である。

Continental Tireは、早くも1910年に、これを使った最初の自動車用タイヤの生産を始めた。

Hofmann1866年にWeimarの近くで生まれた。薬学と化学を勉強し、2年間大学で教えた後、1897年にBayerに入社した。
1956年に90歳で死亡。

その後の研究で、ナトリウムを加えることで速く、効率的に生産できることが分かった。

Hoffmanの後継者は1920年にブタジエンとナトリウムから別の合成ゴムの製造に成功した。このブタジエンゴムは(Butadien + Na から) Buna と名付けられた。

その後、Walter Bock Eduard Tschunkurがブタジエンとスチレンからスチレン・ブタジエンゴム Buna S を開発、19294月に特許を取得した。

更にEduard TschunkurHelmut KleinerErich Konrad がニトリルゴム Buna N (その後Perbunan に変更)を開発、19304月に特許を取得した。

その後、ナイロンの発明者デュポンのWallace Carothers がクロロプレンゴムを、IG Farben (1925年にBayer, BASF, Hoechst, Agfa 等8社が統合)のOtto Bayer がウレタンゴムを、GE社がシリコーンゴムを、戦前から戦中にかけて次々に開発していった。
第二次大戦後は1954年チーグラー・ナッタ触媒によって天然ゴムと同一構造のシスポリイソプレンの合成天然ゴム(イソプレンゴム)が完成した。
その後、EPDMやTPE(熱可塑性エラストマー)が開発されて現在に至っている。

ーーー

Bayerは2003年末までに、Bayer CropScienceBayer HealthcareBayer PolymersBayer Chemicalsの4社と、サービス会社3社の合計 7社を分社化したが、2004年7月にBayer Chemicalsの大半とBayer Polymersの一部を新会社 Lanxess として分離し、2005年に上場した。

RubberやRubber chemicals 事業はLanxess に移された。

2006/9/6 Bayer と Lanxess 

Lanxess は合成ゴムの世界トップメーカーである。(単位:千トン)

会社名 能力 製品
Lanxess 独、仏、ベルギー、米、加  1,043 ESBR, BR, EPDM, IIR, NBR, CR, SSBR
Goodyear   775 SSBR, BR, IR, ESBR
Kumho   713 ESBR, BR, NBR, SSBR, SBC
ExxonMobil 米、仏、英   592 EPDM, IIR
Polimeri 伊、英   553 EPDM, NBR, ESBR, BR, SSBR, SBC, SSBR
JSR   453 BR, IR, EPDM, NBR, SBC, ESBR
Petroflex ブラジル   401 SSBR, BR, NBR, ESBR, SBC
日本ゼオン 日、米、英   363 SBR, BR, IR, NBR 

 資料:日本ゼオン ファクトブック 2009 

Lanxess は2007年にブラジルのBraskem Unipar などからブラジルの合成ゴムメーカー Petroflex の株式の70%を購入、2008年に残りの株式についてTOBを行い、100%を買収した。

Lanxessは2008年2月、シンガポールに年産10万トンのブチルゴム生産拠点を新設すると発表した。2010年稼動の予定であった。

しかし、昨年12月にこれを2012年に延期したが、本年6月29日、需要の減少を受け、2014年稼動に再延期すると発表した。
この期間を利用し、製造技術の更なる改良を行う。

同社では計画の延期はあるが、アジア重視は変わらないとしており、将来的にブチルゴム事業の世界本部をシンガポールに置く方向でシンガポール開発庁と交渉をしている。

また同社は最近、韓国No.1のハンコックタイヤとの間でブチルゴムの5年間の供給契約を結んだ。SBRとポリブタジエンゴムに関しては既に2007年に同社と長期供給契約を締結している。


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これまで何度か、日本のバイオガソリンの動きについて述べてきた。

1) バイオエタノール・ジャパン・関西が環境省の補助を受けて建設した廃木材からエタノールを製造する世界で初めての商業プラントが竣工した。大都市でのエタノール3%混合ガソリン(E3)大規模供給実証のためのエタノール供給元となる。

日本エタノール販売とペトロブラスの50/50JVの日伯エタノール(Brazil-Japan Ethanol)は3月初めから東京でエタノール3%混合ガソリン(E3)の試験販売を開始。

   
2) 他方、石油連盟は「バイオマス燃料供給有限責任事業組合」を設立、バイオエタノールを石油系ガスと合成し、バイオETBE としてガソリンに混合して利用する。

新日本石油は6月1日、関東1都6県のガソリンスタンド(計861カ所)で、バイオエタノールを混ぜたバイオガソリンの販売を開始した。
コスモ石油も5
13日から埼玉、千葉、東京、神奈川の9カ所のセルフスタンドで販売を開始している。

石油連盟では(1) 大気環境への悪影響、(2) 車の安全性や実用性能から、バイオエタノールをそのままガソリンに混入するのではなく、バイオETBE のガソリン混合を主張している。

2009/3/5  日本のバイオガソリンの動き-2 

2009/6/4 バイオガソリン販売開始

2009/3/5のブログでは以下の通り述べた。

政府(経産省、環境省)と石油業界の対立が続き、別々の方向で動いているのは問題で、普及促進のためには早急に方向をまとめる必要がある。

正当な理由なしに直接添加を妨げた場合、独禁法上は問題にならないのだろうか。

ーーー

公正取引委員会は7月3日、「ガソリンにおけるバイオマス由来燃料の利用について」という発表を行った。

2008年12月から2009年3月にかけて、ガソリンにおけるバイオマス由来燃料の利用の実態について、関連事業者及び関係省庁に対して行ったヒアリング等による調査に基づく。

調査の結果、公取委では直接混合方式ETBE方式が、市場における競争を通じて評価・選択される環境を整備するという観点から、以下の対応が必要であると考えた。

1)独占禁止法上の考え方の明確化(対石油元売会社)

石油連盟が各石油元売会社に対して直接混合方式による製品の製造又は販売に協力しないようにさせること及び各石油元売会社が共同して直接混合方式による製品の製造又は販売に協力しないことを決定することは、独占禁止法に違反する行為である。

さらに、石油連盟が二つの混合方式の一方についてだけ、否定的な見解を表明し続けることは、石油連盟の会員である各石油元売会社の間に、一方の混合方式を採用しないとする共通の認識を醸成するおそれもある。

石油元売会社の行為は、不当に、その取引の相手方に対して、競争者と取引しない条件を付して取引するものであって、競争者の取引の機会を減少させるおそれがある行為であり、不公正な取引方法第11項等に該当し、独占禁止法上問題となるおそれがある。

石油元売会社が、その系列特約店等に対して、他社製品を当該石油元売会社の商標を付さないで販売することを禁止する行為は、独占禁止法第21条(知的財産権の行使行為に対する適用除外)の問題ではない。

少なくとも、系列特約店等が一部の給油機を直接混合方式の製品専用のものとして、給油機を地下タンクとともに分け、当該給油機から給油する商品がサインポール の石油元売会社の製品でないことを明確に認識できるように表示してこれを販売するのであれば、その販売を禁止する行為は独占禁止法に違反しないとすることはできない。

2)関係省庁において必要な対応

独占禁止法違反行為が行われないような環境を整備するためにも、また、2つの混合方式の双方の促進を確保するためにも、関係省庁において次のような措置を採ることが必要である。

環境省及び経済産業省は、今後のガソリンにおけるバイオマス由来燃料の普及について、連携協力して必要な情報提供を行うこと。
   
環境省は、標準的な仕様のレギュラーガソリンを直接混合方式に用いることについて、環境に与える影響との比較考量を十分に行いつつ、蒸気圧に係る基準について、必要な見直しの可否を検討すること。
   
経済産業省は、バイオエタノールの混合方式について、ETBE方式、直接混合方式の双方について制度的な手当てがなされており、事業者が自由な選択を行うことができる旨を石油連盟及び各石油元売会社に周知すること。

 


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水俣病の未認定患者を救済するための特別措置法案が7月3日午後の衆院本会議で、自民、公明、民主、国民新の各党の賛成多数で可決され、参院に送られた。チッソ分社化を容認しない共産、社民の両党は反対した。
来週中に参院でも可決、成立する見通し。

付記

8日午前の参院本会議で与党や民主党などの賛成多数で可決、成立した。
一時金の額など具体策は今後、環境省、チッソ、被害者団体などで協議する。秋ごろの施行を目指す。

与党と民主党は衆院、参院にそれぞれ別の法案を出していたが、2日の修正協議で特措法案に合意し、3日の衆院環境委員会に委員長提案の形で再提出した。

法案の主な内容は以下の通り。 2009/5/4 水俣病 53年 参照

  与党案 民主党案 2009/7/2 自民・公明/民主 合意、7/3 衆院可決
対象疾病 1)四肢末梢優位の感覚障害 1)四肢末梢優位又は全身性の触覚又は痛覚の感覚障害
2)口の周囲の触覚又は痛覚の感覚障害
3)舌の二点識別覚の障害
4)求心性視野狭窄
5)大脳皮質障害による知的障害、精神障害又は運動障害
1)四肢末梢優位又は全身性の触覚又は痛覚の感覚障害
2)口の周囲の触覚又は痛覚の感覚障害
3)舌の二点識別覚の障害
4)求心性視野狭窄

5)全身性感覚障害

(胎児性水俣病患者に多い「大脳皮質障害による知能障害」は法案への明記を見送り)

救済を受けるには、国や原因企業を相手取った訴訟や、認定申請を取り下げることが条件。

診断 公的医療機関限定 主治医の診断を尊重 主治医の診断を活用
被害者給付金 150万円 300万円 別途協議
医療費等
 
療養費
療養手当:月額10,000円
医療費:
 自己負担分相当額
 療養手当:公健法の療養手当と同等額
 特別療養手当:月額10,000円
 
最終解決に向けた取組 公害健康被害補償法
 
地域指定等の解除
    
     ー
地域指定継続
事業再編計画
 事業譲渡(チッソ分社化)
「チッソが一時金支払いに同意するまで凍結」の条件を加え、容認
(チッソが一時金の支払いに同意するまで、環境相が分社化の前提となる事業再編計画を認可しない)

斉藤環境相は3日の閣議後記者会見で、別途協議されることになった一時金の額や救済対象となる症状の診断方法などについて、「(環境省として)関係議員や被害者団体と相談していく」と述べ、法案成立後に具体化を急ぐ考えを示した。

法案では民主党の要求で、「政府が住民の健康などに関する調査研究を実施する」ことが盛り込まれたが、事業の一環としての全戸調査は「考えていない」と述べた。

ーーー

1995年の村山内閣に続く「第2の政治決着」で、県内の患者団体からは「全員救済にならず、最終解決にはならない」と疑問や批判の声が上がった。

水俣病不知火患者会など患者団体やノーモア・ミナマタ国賠訴訟原告団など5団体は2日、「チッソが水俣病の加害責任から逃れることを容認し、被害者の大量切り捨てによる幕引きを行うものだ」とする「緊急声明」を発表し、抗議した。

日本共産党の志位和夫委員長は2日の記者会見で「加害企業の免罪になる内容であり、到底認められない」と強調した。

修正案は「チッソ分社化」の環境相認可について、同社が「一時金の支払いに同意するまで」と条件をつけましたが、多額の債務がある加害企業チッソの会社清算・消滅などによる責任逃れの歯止めにならないものです。

修正案は、与党案にあった「3年」という期限つき救済が「当分の間」とますます不透明になりました。法案は公害健康被害補償法にもとづく国の判断条件をみたさない被害者の救済を対象としています。手足や全身の感覚障害がある人や、口・舌の感覚障害・視野狭窄などの症状はメチル水銀が原因である場合が「救済」対象と、一部修正されました。与党は1995年の政治決着の2倍以上に広がるなどと説明していますが、救済される被害者の実数はまったく不透明で、すべての水俣病被害者の救済とはいえない内容です。支給する一時金の額は同法成立後に政令で示すとしています。

環境省の有識者会議の元委員で作家の柳田邦男氏らは記者会見で、チッソから事業部門を分社化すれば、将来、チッソ本体が清算されることになり、水俣病を発生・拡大させた国とチッソの責任をあいまいにするとして、法案から分社化を削除するよう求める声明を発表した。

また柳田氏は、今回の法案が一定の期限を設けることについて、恒久対策を求めた有識者会議の提言を無視していると指摘したうえで、「加害者が救済を永続的に行う仕組みを作るべきだ」と述べた。


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ダウは6月30日の取締役会で石化事業のリストラ計画を承認した。

今回のリストラ計画は、状況の変化に応じ、素早く積極的に製造体制を見直すというダウの方針に基づくものであるとともに、機能製品や先端材料分野に優先的に投資するという変身戦略にも合致するものとしている。

今回の設備停止で年間1億ドルの節約となる。(特別損失としては7億ドルを計上する)
ダウはRohm and Haas との合併で13億ドルのシナジー効果を出すとしている。

今回、下記の設備を停止する。

  立地 能力
エチレン Hahnville, Louisiana  409千トン
EO/EG Hahnville, Louisiana  385/330千トン
EDC/VCM Plaquemine, Louisiana  970/590千トン

同社では昨年、以下の設備の停止を発表している。

  立地 能力
EPDM Seadrift, Texas  
LDPE(The Poly 2 line) Freeport, Texas  100千トン
塩素化ポリエチレン Plaquemine, Louisiana  
Styrene monomer Freeport, Texas  

ーーー

ダウは6月29日、Algenol Biofuels, Inc.と共同で藻からバイオ燃料をつくるパイロットプラントを建設・運営すると発表した。

同社の Freeport, Texas に建設する。

Algenol の技術はCO2、海水、日光、非耕作地を使用してエタノールをつくるというもの。
ダウと、
National Renewable Energy LaboratoryGeorgia Institute of TechnologyMembrane Technology & Research, Inc. が技術や知見を提供する。

Algenol は藻類の細胞からエタノールを取り出す技術を開発した。藻類を乾燥・加圧してバイオディーゼル用の油を抽出するというコストのかかる工程を省略できる。

ハイブリッドの藻をシールした透明なプラスチック製の光バイオリアクターに入れ、 Direct to Ethanol(TM) 技術で日光とCO2と海水から低コストでエタノールを生産する。  光合成と天然の酵素の働きで糖分を直接エタノールに変換する。

コーンではエーカー当たり年間 400ガロンのエタノールが取れるが、Algenol 技術では6,000ガロンが取れるという。
2009年末にはこれを10,000ガロンにアップする計画で、将来は20,000ガロンまでアップする。

 


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Basell 20077月、 Lyondell の全株式を127億ドル(借入金込み 190億ドル)で買収することで合意し、LyondellBasell が誕生した。
148ドルでの買収で、45%のプレミアムとなっている。

しかし、世界経済の悪化により化学品の需要が減少、LyondellBasell 借入金負担に耐えられず、260億ドルの債務の整理のため、本年1Chapter 11 を申請した。

2009/1/7 LyondellBasellChapter 11 申請

この買収に直接関係する多くの人が大変なことになると指摘していたが、高収益と莫大な手数料に目がくらんで、これらの声に耳をかさなかったーーー。
New Yorkの破産裁判所での LyondellBasellChapter 11 の審議で、債権者が提出した資料で明らかになった。

関係者は、借入金100%での買収により統合会社は莫大な債務を負うこと、統合会社の損益予想は意識的に水増しされていることを懸念していた。しかし、統合会社の長期的な健全性よりも、取引が成立すれば得られる利益をより重視するトップにより、無視されたという。

ーーー

2006年4月にBasell の親会社の Access Industries Lyondell に対し12427ドル(10%のプレミアム)での買収提案をした。
しかし、
Lyondell は真面目に検討するには少なくとも20%のプレミアムが必要として拒否した。

Access の要請を受け、投資銀行のMerrill Lynch 28ドルという数字を出した。買収はよいタイミングだとしている。

しかし、Access内部では懸念が出た。
CEO Lincoln Benet Blavatnik 会長に対して、石油・石油化学事業が下降すれば(既にその可能性が出ていた)、合併会社の事業運営、借入金返済に支障が出る可能性があるとした。

しかし、Blavatnik はこれを無視し、8月には Access は正式に26.5028.50ドルでのオファを行った。Lyondell はこれを拒否した。

2007年初めにLyondell 株価は30ドルを超え、Blavatnik 3538ドルでの買収提案を行った。

Merrill Lynch38ドルでもやっていけるとの計画を出したが、Access 社内では買収に対する懸念と懐疑の声が再び出た。
資金がついてくるというだけで、莫大な負債を抱え込むのは長期的にまずいとしている。

しかしBlavatnik は、 Huntsmanや他の化学会社の買収失敗で、どうしてもLyondell を買収するとの強迫観念に取り付かれていたとされる。

同社の株価は更にアップし、Lyondell48ドルという株価を逆提案、Blavatnik は社内の反対を無視し、これを受け、717日に合併が発表された。

Lyondell2007年下期の利益予想も後押ししたが、後になって余りにも高すぎることが分かった。"Reverse engineering"手法(逆算手法)を使ったとされている。

合併は同年12月に行われたが、これにより Blavatnik3億ドル以上、Lyondell社長は56百万ドル以上を得たとされる。
裁判では、
Merrill や他の投資銀行が数億ドルの顧問料を得るために積極的に取引を推し進めたことを明らかにしている。


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プラスチックの成形加工事業分野のリーディング企業として国内、海外に広く事業を展開している天馬株式会社は6月29日、株式会社アークの所有するタクミック・エスピーの発行済み株式全てを取得し、買収(子会社化)することを決めた。

同社は東アジア及び東南アジア地域は、中長期的には世界の成長センターとして今後大いに発展が期待できることから、これらの地域を重視している。
このため、①東アジア・東南アジア地域の生産拠点ネットワークの拡充、②海外での取引基盤の強化、③輸出向け製品のみならず国内向け製品の製造販売の拡大、等が喫緊の課題となっている。

タクミック・エスピーは、タイ、インドネシア、ベトナムの子会社を通じてプラスチック成形加工事業を行っており、双方にとり大きなシナジー効果が期待できる上、天馬にとっては一挙に生産拠点ネットワークの拡大及び事業領域を広げることとなる。

タクミック・エスピーの海外事業を以下の通り。

インドネシア P.T. Showpla Indo 射出成形機 合計57台、熱硬化性射出成形機、塗装ライン、印刷ライン、組立ライン、等
ベトナム Showpla Vietnam 射出成形機 合計30台、ブロー成形機、塗装ライン、印刷ライン、等
タイ S.P.Evolution Thailand 射出成形機 合計44台塗装ライン、印刷ライン、組立ライン(10)、等

Showpla Vietnamには住友商事が15%出資している。

ーーー

天馬株式会社は1949年に太洋商事として創業したが、1954年にプラスチックへの特化を図り、天馬合成樹脂に社名変更した(1987年に天馬株式会社に変更)

1961年にプラスチック産業の飛躍的な発展による業容拡大にともない、埼玉県川口市に最新鋭工場を建設、その後、各地に工場を建設した。

1988年にグローバルな展開を目指す第一歩として英国スコットランドに子会社を設立した。
その後、1992年に中国における現地日系メーカー向け部品供給を目的に、広東省中山市に子会社を設立したのを皮切りに、上海市、深セン市などに子会社を設立している。

2007年にはベトナムのハノイ郊外に天馬ベトナムを設立している。

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今回買収したタクミック・エスピーは株式会社アークの100%子会社。

アークは1948年に荒木製作所として創業、木製品の製造を主とした。
現在は新製品開発に関するトータルサービスを主たる事業とし、工業デザインモデルの製造・販売、商品開発および企画・デザイン・設計、各種金型の設計・製造及び少ロット成形品の生産・販売などの事業を行っている。

アークは2003年にタクミック・エスピーをユニゾン・キャピタル・パートナーズから買収した。

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タクミック・エスピーの元は昭和プラスチックである。上記のインドネシア、ベトナム、タイの事業会社は昭和プラスチックが創業したもの。

1937年に筒中セルロイド(その後、筒中プラスチック)の加工部門が独立して設立されたが、日本で最初に社名に「プラスチック」を使用したものとされている。

筒中セルロイドは井、川両家が経営したため、この名が付けられた。  
筒中プラスチックは住友ベークライトの子会社であったが、2007年3月1日付で株式交換により同社の完全子会社となったうえで2007年7月に同社に合併した。

昭和プラスチックは日本のほか、インドネシア、ベトナム、タイなど海外12カ国19拠点に手を広げた。

日本拠点が保有するデザイン・設計・試作・金型起工等のノウハウと、海外拠点が保有する樹脂の成形・塗装・印刷・サブアセンブリーに至るまでのノウハウを武器に、製造工程の上流から下流までの技術・サービスを提供することで日系企業を中心に高い評価を得ていた。

海外統括会社のショープラ・アジアは1996年にシンガポール証券取引所に上場し、1997年には大阪証券取引所の外国部への上場第1号となり話題を呼んだ。

しかし、1998年にアジアでの金融不安をきっかけに財務が悪化、1998年に会社更生法を申請した。
金融機関の貸し渋りなどを受け、予定していたメキシコ工場の建設資金の調達が難しくなり、資金繰りに行き詰まった。

その後、同社の日本及び上記3カ国の事業はキョウデンが引き継いだ。
他の海外事業は売却された。 

2003年5月にユニゾン・キャピタルと経営陣グループが共同でマネジメントバイアウトを実施した。

共同でタクミック・エスピーを設立、これを通じてキョウデンから事業を買収した。
対象事業の日本拠点、海外生産拠点双方の人員・ノウハウを完全に引き継ぐことで、従来からの業務を中断することなく、企業価値向上を目指した。

同年、ユニゾン・キャピタルはタクミック・エスピーをアークに売却した。


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