2023年8月アーカイブ

米保健福祉省は8月29日、高齢者向け公的医療保険「メディケア」の対象となる医療用医薬品(処方薬)の価格を交渉で決める制度を最初に適用する10品目を発表した。

米国の法律は従来、約20年前に始まった処方薬制度の一環としてメディケアの対象となる処方薬の価格交渉は禁止していた。メディケアが決める医薬品価格は民間保険会社の多くが参考にしており、米国では事実上の標準薬価になっている。

一部製薬企業による薬価の吊り上げが米国で社会問題となった。2015年には、チューリング・ファーマシューティカルズが感染症治療薬「ダラプリム」の価格を突如55倍に引き上げたことに批判が噴出。2016年夏には、マイランがアナフラキシーショックの応急処置に使われる「エピペン」の価格を5倍に引き上げ、非難を浴びた。

トランプ大統領も薬価引き下げに努力した。

2018/7/16 Pfizer、トランプ大統領の批判受け、医薬品値上げを先送り 

2020/7/28 トランプ大統領、処方箋薬の価格引き下げへ大統領令 

バイデン大統領が昨年署名して成立したインフレ抑制法(Inflation Reduction Act:IRA)では、65歳以上の米国人を対象とし、約6600万人に適用されているメディケアに関し、最も高額な医薬品の一部の薬価引き下げ交渉を認めた。

製品が対象に選定された製薬企業は、10月1日までに交渉に同意しなければならない。もし拒否すれば重い罰金が科せられる。企業は10月2日までに、価格決定に必要な広範なデータを提出する。

交渉は2023~2024年に行われ、新たな価格は2024年9月に公表し、2026年1月から導入する。

この仕組みにより、2031年までに年間250億ドルの薬価削減を目指している。

今回の医薬品10品はメディケアにとって最も負担が大きい50製品のなかから選んだ。保健福祉省によると、過去1年間に10品だけで505億ドルの負担となっていたという。

バイデン大統領は声明で「製薬大手の懐を潤すためだけに、米国人が救命処方薬に先進国のどの国よりも高い支出を強いられる理由はない」とし、価格交渉によって現在は最大で年間6497ドル(約94万円)もの自己負担を強いられている最大900万人の高齢者の薬価が下がることになると訴えた。

価格交渉の第2弾は2025年2月に開始され、メディケアは15の高額な医薬品を対象に選定する。第2弾の新価格は2027年に適用される予定。翌年には、さらに15の処方薬や医師が管理する医薬品(薬局で調剤されない医薬品)が追加される。その後、メディケアは毎年20品目ずつ価格交渉を行うことになる。

今回の10品目は下記の通り。

製品名 一般名 用途 メーカー
Eliquis アポキサバン 血栓塞栓症の治療・予防に用いられる経口投与が可能な抗凝固剤の1つ。 Bristol Myers Squibb
Pfizer
Jardiance エンパグリフロジン ナトリウム・グルコース共輸送体-2 阻害作用を有する糖尿病治療薬 Boehringer Ingelheim
Eli Lilly
Xarelto リバロキサバン 経口抗凝固薬の一つ Bayer
Janssen Pharmaceuticals
Januvia シタグリプチン 経口血糖降下薬、2型糖尿病の治療薬 Merck & Co.
Farxiga ダパグリフロジン 2型糖尿病治療薬の内、SGLT-2阻害薬に分類される医薬品 AstraZeneca
Entresto サクバトリル/
バルサルタン
心不全・高血圧症治療のための合剤 Novartis
Enbrel エタネルセプト 分子標的治療薬の一つで関節リウマチなどの膠原病・自己免疫疾患の治療薬 Amgen
Imbruvica イブルチニブ B細胞性腫瘍の治療に用いられる抗がん剤 Pharmacyclics
Janssen Biotech
Stelara ウステキヌマブ ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤
日本では乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎に対して適応
Janssen Biotech
Fiasp;
NovoLog 等
インスリンアスパル 1型および2型糖尿病の治療に使用される超速効型インスリン Novo Nordisk


MerckやJohndon & Johnsonなどの製薬大手は収益減への懸念から、メディケアの薬価交渉をめぐって米国政府を提訴している。インフレ抑制法の薬価交渉に関連する部分が米憲法違反だと主張している。

Merckは、「正当な補償なしに私有財産を公共のために徴収しない」と定める米国憲法修正第5条の違反だと主張している。交渉後に設定された価格が「公平である」とする文書に署名する必要があるのは言論の自由を保障する米国憲法修正第1条にも違反しているという。

米国商工会議所は、10月1日までに価格交渉の差し止め命令を裁判所から得たいと考えている。

商工会議所は政権による最初の提案時に、「価格統制は、新型コロナウイルスワクチンのような画期的な製品開発を可能にした研究投資に対する課税であることにほかならない」と指摘するとともに、「価格統制は、研究開発投資の減少と米国内の雇用の減少を招く。米国は次の公衆衛生上の危機への備えができなくなり、がんやアルツハイマー病など、その他多くの疾患の治療法開発を遅らせることになる」と批判の声を挙げた。

これに対し政府は、メディケアが価格交渉を行うことができないという憲法上の規定はないと反論している。

人民網日本語版によると、中国の呉駐日大使は8月28日、岡野外務事務次官と会談し、日本側に対して、福島原発汚染水の海洋放出問題についての厳正な立場をさらに明らかにした。

日本側の申し入れに対して以下の通り述べた。

日本は国内外の強い疑問と反対の声を顧みず、頑なに福島原発汚染水の海洋放出を開始して、全世界の海洋環境と全人類の健康及び安全に多大なリスクと予測不可能な危害をもたらし、中国を含む国際社会の憤りを招いた。これが現在の事態の根本的原因だ。

日本は以下の質問に真剣に答えるべきだ。

第1に、なぜ日本はトリチウムを希釈処理したことを意図的に強調しながら、他の放射性核種については常に言葉を濁すのか?

第2に、なぜ日本は全面的かつ体系的な海洋環境モニタリングを行わないのか?
日本の現行のモニタリング計画は体系的でも全面的でもなく、放出した全ての核種をモニタリングしているわけではなく、またモニタリングの対象となる海洋生物の種類も少なく、海洋生態系への長期的影響評価のニーズを満たしていない。

第3に、なぜ日本は国際的なモニタリング・メカニズムの構築に他の利害関係者が参加することを拒否するのか?
もし日本が安全性に十分な自信を持っているのであれば、他国が独自に実施する第三者モニタリングを含め、各利害関係者が十分かつ効果的に参加する長期的モニタリングのための国際的な取り決めの確立を積極的に支持するはずだ。


前回(8/28)のブログのとおり、放射性物質を含む廃水の海洋放出を問題視しているようだ。トリチウム以外の放射線核種についてのモニタリングが十分でなく、かつモニタリングに第三者を入れないことへの不満を表明している。



環境省では、ALPS処理水に係る海域モニタリングを実施している。ALPS処理水の放出開始後、8月25日朝に採取した海水試料を分析した結果、トリチウムの濃度は11か所全てで検出下限値未満(7~8Bq/L未満)であり、人や環境への影響がないことを確認した。γ線核種についても念のため測定を行ったが、全て検出下限値未満であった。

なお、海洋生物については東京電力が福島県沖の近海に生息しているヒラメ、アワビ、海藻を飼育対象として選定しているが、トリチウム濃度を測定しているだけである。 

魚類 ヒラメ(幼魚)800尾程度
貝類 アワビ(稚貝)800個程度
海藻 アオサ、ホンダワラ 数kg程度

今回の放出開始後の結果は出ていないが、これまでの測定では、ヒラメ体内において、トリチウムが蓄積・濃縮されないと考えているとしている。

東京電力は福島第一原発にたまる処理水について、大量の海水を加えてトリチウムの濃度を測定した結果、想定どおり薄められていることや気象条件に問題がないことが確認できたとして、8月24日午後1時ごろに海への放出を始めた。

中国政府はこれまで、日本から輸出される食品などについて、福島県など10都県産のものは輸入停止、それ以外については日本の政府機関による証明書を求めていたが、放出を受け、24日から全面的禁輸とした。さらに、8月25日には、食品生産事業者に対して日本産の水産物を使った加工食品の製造や調理や販売を禁止すると発表した。さらに、食品の安全に関する検査を強化し、違反があれば厳重に対処するとしている。

福島原発からの放射性物質を含む廃水の海洋放出による食品の放射性汚染リスクを防ぐためとしている。


トリチウムを含む水は薄めて海に流すことが国際的に認められている。中国も韓国も大量のトリチウムを液体及び気体で放出している。


https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/007_09_00.pdf


今回の中国の措置について、自国では大量のトリチウムを放出しながら、福島での放出を理由に日本品の輸入禁止をすることに対する批判が強い。

しかし、今回の放出と中国での放出は異なる。

中国や各国が放出しているのは核燃料に汚染された水ではない。福島では核燃料に接触した汚染水であり、トリチウムだけでなく、ヨウ素129、セシウム135、セシウム137をはじめとする12核種が含まれる。濃度は低いが、総量としては大量の放射線物質を海に流し込むことになる。トリチウムとは異なり、これは国際的に認められたことではない。

中国が問題にするのは、世界中の原発が放出しているトリチウム水の放出でなく、放射性物質を含む廃水の海洋放出である。

政府や東電は、隠している訳では無いが、取り切れない放射性物質を薄めて放出することを説明せず、無害のトリチウムを薄めて放出するだけとの印象を与え、他方でマスコミは中国が大量のトリチウムを放出していると説明している。その結果、中国は自国の原発は大量のトリチウムを放出しながら云々との中国批判を引き起こしている。国民に実情を十分説明すべきである。

中国に対しては、説明、説得を繰り返すしかないだろう。

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水素や炭素などのさまざまな原子は、陽子や中性子でできた「原子核」と「電子」で構成されている。普通の水素原子を構成しているのは、陽子1個でできた原子核と、電子1個だが、 中性子1個がついたのが重水素で、ごくたまに、原子核が陽子1個+中性子2個でできた水素原子があり、これがトリチウム(tritium:三重水素)である。

水素原子の同位体は、陽子1個でできた原子核を持つ普通の水素原子と、ほとんど同じ化学的性質を持っている。「三重水素」の原子核は不安定な状態にあり、原子核は、その不安定さを解消するため、陽子と中性子の個数を変えてバランスを取り、異なる原子核へと変化しようとし、放射線を出す。

トリチウムが放出する放射線の種類はβ線のみで、薄い金属板などでさえぎることができる。さらに、トリチウムが放出するβ線はエネルギーが弱いため、空気中を約5mmしか進むことができず、紙1枚あればさえぎることが可能。

皮膚も通過できないため、外部被ばくによる人体への影響はない。また、体内に入っても水と一緒に最終的に排出されるため、体内で蓄積・濃縮されることはない。

他の水素と同じように酸素と結びつき、「水」の形で存在しており、雨水、水道水にも含まれている。

トリチウムは、宇宙空間から地球へ常に降りそそいでいる「宇宙線」と呼ばれる放射線と、地球上の大気がまじわることで、自然に発生する。

天然のトリチウムは年に約7京(7万兆)ベクレル発生し、地球上には100京~130京(100万兆~130万兆)ベクレルが存在している。


トリチウムは、原子力発電所の原子炉の中でもつくられる。主として、下図のように、原子炉の冷却に用いている水にわずかに含まれる重水素(存在比:0.015%)が中性子を吸収してつくられる。

PWR(加圧水型原発)の場合は主に、原子炉の冷却に用いている水に添加しているほう素(B)やリチウム(Li)が中性子を吸収することで生成される。

世界中の原発(中国や韓国も含む)が大量のトリチウムを液体及び気体で放出しているのはこれであり、原子炉そのものとは隔離されている。中性子を吸収したというだけのものである。

日本の原発も同様である。日本全国の原発等で、事故前5年平均で合計約380兆ベクレル/年を放出していた。BWRは0.02~2兆ベクレル/年と少ないが、PWRは18~87兆ベクレル/年と多い。(JNES「原子力施設運転管理年報」)

今回の放出はこの種のトリチウムではなく、核燃料に接触した汚染水に含まれていたトリチウムであり、他に若干だがヨウ素129、セシウム135、セシウム137をはじめとする12核種が含まれる。

今回、トリチウム以外の放射性物質が規制基準を超えているものは再度ALPSで浄化し、安全に関する規制基準を確実に下回る(ゼロではない)ようにした上で、海水で大幅(100以上)に希釈するため、トリチウム以外の告示濃度比総和は、0.01満となる。しかし、濃度は低いが、総量としては大量の放射線物質を海に流し込むことになる。

トリチウムとは異なり、これは国際的に認められたことではない。これが海の生物に長期的にどのような影響を与えるか不明である。


福島原発の汚染水は多核種除去設備(ALPS)で前処理設備、吸着塔の順に汚染水を通し、62種類の放射性物質を除去する。 しかし、トリチウムは一般の水と同じ水(H2O)を構成しており、ろ過したり吸着して取り除くことができず、巨大タンクに貯水されている。

なお、ALPSではトリチウム以外は除去することとなっていたが、2018年に2017年度にヨウ素129が法律で定められた放出のための濃度限度(告示濃度限度)を60回、超えていたと報じられた。

東京電力はこれを明らかにしていなかったが、2018年9月28日に汚染水を浄化した後にタンクで保管している水の約8割に当たる75万トンで、トリチウム以外の放射性物質の濃度が排水の法令基準値を超過しているとの調査結果を明らかにした。

原子力規制委員会から「タンクから出る放射線が『敷地境界』に与える影響をなるべく早く低減するように」と求められ、2015年度まではALPSの吸着材の交換にかかる時間を節約するため、取り除く能力が落ちるのに目をつぶり、交換頻度を下げた。 さらに2013年には、ALPS本体の部品の腐食による水漏れが起きたという。

しかも、原子力規制委員会の更田豊志委員長はALPSの運用開始当初から残留を認識していたとし、トリチウム以外についても希釈して法令基準濃度を下回れば海洋放出を容認する考えまで示した。

さすがにこんな話は通るはずがなく、今後、海洋放出など処分をする場合には、多核種除去設備(ALPS)などで再浄化することとなった。

2018/8/29 福島原発のトリチウムを含む低濃度汚染水を巡る問題 

今回、放出する前にはトリチウム以外の放射性物質の濃度が国の基準を下回る濃度になるまで処理を続ける(二次処理)。


2020年9月から東京電力により、多核種除去設備等処理水の二次処理の性能確認試験が行われた。
この結果、二次処理前後で放射性物質の濃度が低減され、トリチウムを除く核種の告示濃度比総和が1未満に低減できることが確認された。

除去対象核種(62種)+炭素14の告示濃度比総和:J1-C群;処理前 2,406 → 処理後 0.35

https://fukushima-updates.reconstruction.go.jp/faq/fk_270.html

南アフリカで首脳会議を開催中のBRICS 5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は8月24日、新たに6カ国がメンバーとして加入すると発表した。2024年1月付で正式なメンバーとなる。

加入を申請している国のうち、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国を正式に招待する ことが決まった。

BRICSは「Global South」と呼ばれる新興国・途上国を結集し、欧米主導の国際秩序に挑む狙い。

産油国のサウジとUAEには豊富な資金力があり、BRICSが独自に進める途上国向けの開発融資を強化できる。
エジプトとエチオピアは人口が1億人を超える地域大国であり、
アルゼンチンは隣国のブラジルが加盟を強く後押ししていた。
核開発を巡り欧米と対立が続くイランの加盟もあえて認めた。


2009年にブラジル、ロシア、インド、中国のBRICs 4か国の第一回の首脳会議がロシアで開催された。第二回首脳会議は20104月にブラジルの首都ブラジリアで開催された。

2011年の第三回会議に先立ち、2010年12月に南アフリカをグループに正式加入させることで合意した。BRICsがBRICSになった。

2011/4/23 BRICsからBRICSへ 

本年のBRICSの首脳会議は南アフリカの最大都市ヨハネスブルクで8月22日に開かれ、2日目は首脳らによる全体会議が開かれた。

今回の会議では加盟国の拡大が大きな焦点となっており、中国の習近平国家主席は「BRICSの拡大のプロセスを加速し、より多くの国を参加させて知恵を集め、国際秩序をより公正な方向に発展させていかなければならない」と述べた。オンラインで出席したプーチン大統領も、「BRICSの戦略的な方向性は将来を見据えたもので、世界の多数派の期待に応えている」と述べ、BRICS各国との連携と枠組みの強化を進めていきたい考えを示した。

南ア政府当局者によると、BRICS参加に関心を示している国は40カ国を超え、うちイラン、ベネズエラ、アルジェリアなど23カ国は正式に加盟を打診したという。(下図:南ア情報)
れは世界経済の4分の1、人口にして計30億人以上に相当する。

加盟申請23カ国・地域全てを受け入れれば統率が取れない「バベルの塔」(ブラジルのルラ大統領)になる恐れもあり、首脳会議で議論していた。

ブラジルのルラ大統領は、新加盟国はイデオロギーに関係なしに地政学的な重要性で選ばれるとの認識を示した。「(新加盟国の資格として)大事なのは誰が統治しているかではなく、その国の重要性だ。BRICSに合流するイランやその他の国の地政学的な重要性は否定できない」と強調した。

またルラ氏は、今後ブラジルはナイジェリアやアンゴラ、モザンビーク、コンゴ民主共和国の参加も後押ししていくと述べた。


南アは24日の拡大会合にアフリカや中南米などの首脳 67人を招待していた。会合では、
新興国や発展途上国の立場にたった貿易や投資、それに開発の促進などで連携を図っていくことを確認した。


拡大BRICSは世界人口の46%(G7は9.7%)、GDPで世界の28%(G7は43%)を占める。

東京電力は福島第一原発にたまる処理水について、海への放出に向けて大量の海水を加えてトリチウムの濃度を測定した結果、想定どおり薄められていることや気象条件に問題がないことが確認できたとして、政府の方針に基づき、8月24日午後1時ごろに放出を始めた。

政府は8月22日の関係閣僚会議で、基準を下回る濃度に薄めた上で、24日にも海への放出を開始することを決めた。

東京電力は放出に向けた準備作業を始め、大量の海水と混ぜ合わせた処理水を「立て坑」と呼ばれる設備にためた上で、トリチウムの濃度を確認した。分析の結果、トリチウムの濃度は1リットルあたり43から63ベクレルと、国の基準の6万ベクレルを大きく下回り、放出の基準として自主的に設けた1500ベクレルも下回っていて想定どおり薄められていることが確認できたと発表した。

放出の完了には30年程度という長期間が見込まれ、安全性の確保と風評被害への対策が課題となる。

福島第一原発では、事故の直後から発生している汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含む処理水が1073基のタンクに保管され、容量の98%にあたる134万トンに上っている。

原子炉建屋への地下水・雨水の流入量を減らすため、地下水のくみ上げや凍土壁(陸側遮水壁)等、重層的な取組みを実施してきた結果、汚染水発生量は、対策前の約540m3/日(2014年5月)から、約140m3/日(2020年平均)まで低減している。

実際には、敷地内のタンクに保管されている処理水のうち、およそ7割は、トリチウム以外の放射性物質を除去しきれておらず、放出するための基準を満たしていない。

原子力規制委員会が認可した福島第1原発の実施計画では、ALPSの設置目的はトリチウム以外の放射性物質の濃度を基準値未満に下げることと明記している。

2018年8月に河北新報が、2017年度にヨウ素129が法律で定められた放出のための濃度限度(告示濃度限度)を60回、超えていたと報じた。

それまで東京電力はこれを明らかにしていなかったが、2018年9月28日、汚染水を浄化した後にタンクで保管している水の約8割に当たる75万トンで、トリチウム以外の放射性物質の濃度が排水の法令基準値を超過しているとの調査結果を明らかにした。今後、海洋放出など処分をする場合には、多核種除去設備(ALPS)などで再浄化するとした。

政府は2021年4月13日、関係閣僚会議を開き、福島第1原発の汚染処理水の放射性物質の濃度を国の放出基準より下げた後、海に流す方針を決めた。

タンクの水の7割は、放射性物質の濃度が国の放出墓準を超えているため、放出前に、濃度が基準未満になるまでALPSに通す。その後、技術的に取り除けないトリチウムについて、福島第1原発の地下水の放出基準(1リットルあたり1500ベクレル)を下回るよう、海水で100~1700倍に薄める。

2020/10/28 福島原発、汚染処理水の処分問題 

このため、放出する前にはトリチウム以外の放射性物質の濃度が国の基準を下回る濃度になるまで処理を続ける(二次処理)。

二次処理した水はタンクに入れてかき混ぜ、均質にした上で、基準を満たしているか実際に測定して確認する。

この作業には1回あたり2か月程度かかることから、作業は3つのタンク群に分けて行われ、連続して放出できるようにする。

放出作業は、原発内の免震重要棟にある集中監視室から遠隔で行われ、作業員が画面を操作してポンプを動かし、処理水を海水と混ぜたうえで「立て坑」に流し込む。

「立て坑」からあふれ出ると、沖合1キロの放出口につながる海底トンネルに流れ込んで海に放出される。

今回の放出は、7800トンの処理水を海水で薄めた上で17日間の予定で連続して行うとしており、今年度全体の放出量はタンクおよそ30基分の3万1200トンを予定している。放出期間は30年程度に及ぶ見込みで、長期にわたって安全性を確保していくことが重要な課題になる。

東電は、放出後の風評対策については、「政府とともに風評影響を最大限抑制すべく取り組んでいきたい。特に安全と品質を確保した上で海洋放出し、科学的根拠に基づき迅速で的確な情報発信を行っていきたい。そして、こうした対策を取っても風評被害が発生した場合は適切に賠償していきたい」と述べた。

漁業関係者は放出決定に、2015年の約束を破ったとして不満を表している。処理水の安全性については理解したということで、海洋放出を理解して受け入れたわけではないというのが全漁連・県漁連の考えである。

2015年にサブドレン計画が出された。第一原発の山側からは地下水が建屋側へ流れ込み、これが内部の溶融燃料に触れて汚染水が増える要因となっている。「サブドレン計画」は、建屋内に流れ込む地下水を減らし高濃度汚染水の増加を抑えることなどが目的で、原子炉建屋を囲む41本の井戸から地下水をくみ上げ、浄化装置で処理し、放射性物質の濃度を基準以下にして海に放出する。地下水を150トンに半減できると試算した。

これについていろいろあったが、最終的に福島県漁連は2015年8月11日、条件付きで計画を容認する文書を国と東電に提出した。

東電は2015年8月25日付で廣瀬直己社長名で回答している。

東京電力(株)福島第一原子力発電所のサブドレン水等の排水に対する要望書に対する回答について
 
4 建屋内の水は多核種除去設備等で処理した後も、発電所内のタンクにて責任を持って厳重に保管管理を行い、漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わない事
   
(回答)
 ・ 建屋内の汚染水を多核種除去設備で処理した後に残るトリチウムを含む水については、現在、国(汚染水処理対策委員会トリチウム水タスクフォース)において、その取扱いに係る様々な技術的な選択肢、及び効果等が検証されております。また、トリチウム分離技術の実証試験も実施中です。
   
 ・ 検証等の結果については、漁業者をはじめ、関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うこととしており、 こうしたプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします。

      https://www.tepco.co.jp/news/2015/images/150825a.pdf


香港政府は8月22日、処理水の放出が始まる24日から、福島など10都県の水産物を禁輸にすると発表した。禁輸対象は福島のほか、東京、千葉、栃木、茨城、群馬、宮城、新潟、長野、埼玉の10都県で、中国本土がすでに実施している規制にあわせた。

中国政府は福島原発事故の発生にともない、日本から輸出される食品などについて、福島県など10都県産のものは輸入停止、それ以外については日本の政府機関による証明書を求めている。
さらに、7月のALPS処理水放出に関する国際原子力機関(IAEA)の報告書公表を受け、水産品を中心とする日本からの輸入食品に対する税関での検査を強化している。7月の日本からの生鮮の魚の輸入額(ドルベース)は前年同月比 56.8%減となった。

今回の放出を受け、中国政府はこれまでの10都県の水産物の輸入禁止を、24日から全面的禁輸とする。

税関総署告示2023年第103号(日本産水産物の輸入全面停止)

福島原発からの放射性物質を含む廃水の海洋放出による食品の放射性汚染リスクを防ぐため、中国の消費者の健康を守り、輸入食品の安全を確保するために、『中華人民共和国食品安全法』およびその施行規則、『中華人民共和国輸入・輸出食品安全管理規定』の関連規定、および世界貿易機関の『衛生および植物防疫措置に関する協定』の関連規定に基づき、2023年8月24日以降、中国税関総署日本産の水産物(食用水生動物を含む)の輸入を全面的に一時停止することを決定した。

付記

中国の国家市場監督管理総局は8月25日、食品生産事業者に対して日本産の水産物を使った加工食品の製造や調理や販売を禁止すると発表した。さらに、食品の安全に関する検査を強化し、違反があれば厳重に対処するとしている。
また、中国各地で塩の買占めが発生していることを受け、関係各所と連携して異常な価格変動や違法行為に関する監視を強化すると発表した。

2023年8月25日 水産物の食品安全監視および食塩価格監視の取り組みを強化

8月24日、日本政府は国際社会の強い疑念と反対を無視し、一方的に福島の核汚染水の海洋放出を強行した。これは極めて自己中心的で責任を持たない行動である。

市場監督総局は、日本産の水産物(食用水生動物を含む)を原料とした加工食品や調理済み食品の販売(オンライン販売を含む)を厳しく禁止し、市場で販売される輸入水産物の食品安全抽出検査を強化し、関連する違法行為が発見された場合には法律に基づき厳正に対処する。



韓国の韓悳洙首相は「基準に合わない放流をした場合、中断および説明を要求して二国間協議違反と判断されれば国際的提訴を行う」と明らかにした。

DuPontは8月21日、ポリアセタール樹脂 Delrin事業の80.1%をプライベート エクイティ会社のTJC(旧Jordan Company)に18億ドルで売却する契約を締結したと発表した。年末には取引が完了する見込み。

ホルムアルデヒドを原料としたポリアセタール樹脂 (POM) Delrin®は1952年頃にDuPontにより初めて合成され、1956年に特許取得、1960年にWest Virginia州のParkersburg工場が完成した。

TJC(旧Jordan Company)は 1982 年に設立された中間市場のプライベート エクイティ会社で、41 年にわたる投資と成長への貢献の実績を持 つ。テクノロジー、通信、電力、物流とサプライ チェーン、消費者製品、ヘルスケアなど、幅広い業界にわたる多くのビジネスを行っている。

DuPontは税引前で12.5億ドルの利益を計上する見込みで、引き続き事業の19.9%を保有する。

DuPontのCEOは「当社が計画していた旧M&M部門からの撤退がほぼ完了する」と述べた。

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DuPontは2021年11月2日に「戦略的レビュープロセス」を発表した。

1)Rogers Corporation 買収

DuPontはエンジニアリング素材メーカーの米Rogers Corporation を約52億ドルで買収することで合意した。

Rogersは電気自動車(EV)や高速通信規格「5G」関連機器向けの高周波用プリント基板材料など、高機能・高付加価値の先端電子部材に特化し、北米、欧州、アジアに計14カ所の生産拠点を持つ。2021年通期の売上高見通しは約9億5000万ドル。

DuPontはEV向け部材など高付加価値製品を成長分野と見なし、事業シフトを進めている。

2) Mobility & Materials segmentの大半の事業の売却

3) これらにより、electronics, water, protection, industrial technologies and next generation automotiveに焦点を当てた高成長、高収益市場での位置を高め、収益向上を図る。

DuPontは2022年2月18日、Celanese Corporationとの間でMobility & Materials (M&M) segment の大半を売却する契約を締結したと発表した。

売却対象は、Engineering Polymers 事業と、Performance Resins and Advanced Solutions business lines のなかの特定の製品ラインで、売却額は現金で110億ドルとしている。

これらの事業の2021年の売上高は約35億ドルで、EBITDA(税引前利益+支払利息、減価償却費)は8億ドルであった。

Mobility & Materials segmentのなかの Auto Adhesives, Multibase and Tedlar® product lines は対象に含まれていない。

この時点で、DuPont は、別某社とアセタールホモポリマーのDelrin® businesss の売却を進めているとしていた。これが今回発表の取引である。

Mobility & Materials segment の製品で売却対象と対象外は下図のとおり。

2022/2/22 DuPont、Mobility & Materials Segment の大半をCelaneseに売却 

なお、上図ではDuPont Teijin Films JV も売却対象に挙がっている。

帝人は2017年10月10日、DuPontと共同で、米国、英国、ルクセンブルグ及び中国のポリエステルフイルム事業の合弁会社4社の所有持分全てをIndorama Netherlands B.V.に売却することを決定したと発表した。

実際には、この売却が頓挫した。この結果、Indoramaに売却する予定であった4か国のJVだけが、いまだに帝人とDuPontの事業として残った形となっている。

2020/2/1 デュポンと帝人、フィルム合弁を再び売却へ

厚労省の専門部会は8月21日、エーザイと米 Biogenが共同開発したアルツハイマー治療薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」について、国内での製造販売承認を了承した。今後、厚労相が正式承認する。正式に承認されれば、認知症の原因物質を除去する初めての治療薬となる。

付記

武見厚生労働相は9月25日、アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」を正式に承認した。進行を遅らせる効果を証明した国内初の薬となる。薬価の決定を経て、年内にも医療現場で使えるようになる見込み。

付記

中央社会保険医療協議会は12月13日、「レカネマブ」を保険適用する薬価を承認した。

1瓶200ミリグラムは4万5777円、500ミリグラムは11万4443円で、12月20日から保険適用される。

体重1㌔あたり10ミリグラムを2週間に1回、1時間程かけて点滴する。使用期間は原則1年半となる。体重が50キロの人の場合、年間費用は298万円になる見込み。

実際の患者の負担額は「高額療養費制度」が適用され、数万円程度に抑えられる。

アルツハイマー型認知症は脳内にベータ・アミロイド(Aβ)が凝集し、中間体(Aβプロトフィブリル)が神経変性過程を誘発・促進すると示唆されている。

アルツハイマー病免疫療法には、Aβを投与して生体内でAβに対する免疫反応を惹起させるワクチン療法や、Aβをターゲットとしたモノクローナル抗体を投与する抗体療法がある。

LECANEMABは、アルツハイマー病に対する免疫療法剤創製を目的としたヒト化モノクローナル抗体で、ベータ・アミロイド(Aβ)を分解除去する。

既存の認知症薬は神経の働きを活発にして症状の緩和を図るが、レカネマブは病気の原因となるAβを除去し、進行を抑えることを狙う。

対象は、軽度認知症と、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の人。壊れた神経細胞の再生は難しいため、症状が進んだ人は対象となっていない。

投与前に脳内にAβがたまっていることを検査で確認。2週間に1回、静脈内に点滴で投与する。

ベータ・アミロイド(Aβ)蓄積の検査方法

(現状) PET検査 (高価)

体にPET診療用放射性薬剤を注射する。
・投与後約90分で検査薬が異常蛋白と結合する。
・その後、PET装置にて頭部を撮影し、脳内の異常蛋白の蓄積をカラー画像で診断する。

シスメックスは微量の血液からAβの蓄積状態を調べる検査試薬について製造販売承認を取得


約1800人が参加した国際的な臨床試験(治験)では、18カ月の投与で、偽薬と比べて記憶力や判断力などの程度を評価するスコアの悪化が27%抑えられた。一方で、薬を使った人の12.6%に脳内の浮腫、17.33%に微小出血が報告されるなど副作用も確認された。

エーザイとBiogen, Inc.は2022年11月30日、LECANEMABについて、大規模なグローバル臨床第Ⅲ相Clarity AD検証試験の結果を第15回アルツハイマー病臨床試験会議において発表した。

プラセボとの比較で認知機能の低下を27%抑制したことを報告した。

2022/9/29 エーザイ、アルツハイマー病の新薬で "症状悪化抑える効果確認"  


米国では、レカネマブを使う前に、検査で副作用が出やすいとされる遺伝子型かどうかを調べることが推奨された。

この日の部会では、国内では遺伝子検査は求めないが、投与後に脳内の出血を調べることや、血栓を溶かす薬を飲んでいる人への注意喚起を確認した。
 

8月中に厚労相が承認した場合、実際に日本の医療現場で使えるようになるのは早くて10月、遅くとも11月になる見通し 。

承認後に実際の医療現場で使用するには、 健康保険などの公的医療保険の適用対象とするため薬価を決める必要がある。算定議論は製造販売承認より原則60日から90日ほどかかる。

米国での発売価格 は年間 26,500 ドルで、高齢者向け公的医療保険 Medicare の適用対象になれば、自己負担額は1日あたり14.5ドルになると推定している。

ーーー

エーザイとBiogenは2014年3月に提携を開始した。

現状は次の通りで、アリセプトを除き、開発で提携している。

エーザイ アリセプト〈提携対象外〉
(donepezil)
エーザイの杉本八郎博士らが開発
アルツハイマーでは、神経伝達物質のアセチルコリンが脳内で減少している。

アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、アセチルコリンの濃度を高める。

新規ヒト化モノクローナル抗体
「BAN2401」
LECANEMAB  

今回厚労省が承認へ

2007/12 スウェーデンのBioArctic Neuroscience ABから全世界の研究・開発、製造、販売の独占ライセンスを受ける。 アルツハイマー病の原因と考えられるベータ・アミロイド成分を除去
βサイト切断酵素(BACE)阻害剤
elenbecestat「E2609」 
 
x試験中止
エーザイが創製

 

アミロイド前駆体タンパク質のβサイト切断酵素であるBACEを阻害することでβアミロイドの総量を低下させる。
Biogen 抗アミロイドβ(Aβ)抗体  
aducanumab
(ADUHELM)

Neurimmune社より共同開発およびライセンス契約締結のもとに導入 アミロイド斑(プラーク)は、アミロイドβ蛋白が蓄積したもので、アルツハイマー病患者の脳にみられる。
aducanumab 投与でアミロイドプラークのレベルを下げる

  

抗アミロイドβ(Aβ)抗体 aducanumab(ADUHELM)

米国
 → 申請→FDA優先審査

 2021/6/7 FDA 迅速承認  
2021/6/8 エーザイとバイオジェンのアルツハイマー新薬、米で承認 (迅速承認)

 監査部門に調査を要請...........2022/4/11 バイオジェンのアルツハイマー薬、米 Medicareが給付対象を大幅制限   

日本
 
厚労省 継続審議     
2021/12/24 エーザイのアルツハイマー新薬、再審議 

「常温常圧で超電導性を示す物質を合成した」とする論文が韓国の高麗大学の付属研究機関「Quantum Energy Research Centre (Q-Centre)」に所属する研究チームによって7月22日に公開された。

The First Room-Temperature Ambient-Pressure Superconductor by Sukbae Lee、Ji-Hoon Kim、Young-Wan Kwon

同論文は査読前だが、科学雑誌「Science」も「事実なら即ノーベル賞モノの大発見」と期待感を示した。

超電導は特定の物質を冷却すると、一定の温度以下で電気抵抗がゼロになる現象のこと。これまでは、比較的高い温度で超電導性を示す「高温超電導体」でもマイナス170度以下まで冷却する必要があった。

超伝導状態下では、マイスナー効果(完全反磁性)により外部からの磁力線が遮断され(磁石と超伝導体との間には反発力が生ずる)、電気抵抗の測定によらなくとも、超伝導状態であることが判別できる。


 

研究チームは、銅を添加した鉛ベースの合成物質「LK-99」を開発した。


論文では、ラナルカイト:Pb2(SO4)O とリン化銅:Cu3P をモル比1:1の割合で粉砕して混合物を真空排気した石英管に密封した上で925℃まで加熱すると化学式Pb10-xCux(PO4)6OのLK-99が形成されるとしている。

LK-99は常温かつ常圧であれば超電導性を維持でき、水が沸騰する温度以上(127度まで)でも超電導性を示すという。

また、LK-99は、磁場を打ち消すマイスナー効果を発現し、近くの磁石と反発して浮遊することができた。但し、完全な浮遊ではなく、部分的な浮遊である。

LK-99の臨界温度は127℃(261°F)で、これが確認されれば、LK-99は唯一の常温超伝導体となる。

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しかし、世界中の研究者たちによる追試により、常温・常圧超電導物質ではないこと、および、常温・常圧超電導物質と思わせるような振る舞いをした理由が、わずか2週間強で判明した。

決定打となったのは、以下の中国の2つの論文。

1.First order transition in Pb10-xCux(PO4)6O (0.9<x<1.1) containing Cu2S 

   by Shilin Zhu, Wei Wu, Zheng Li, Jianlin Luo (Beijing National Laboratory for Condensed Matter Physics and Institute of Physics )

2.Ferromagnetic half levitation of LK-99-like synthetic samples 

   by Kaizhen Guo, Yuan Li, Shuang Jia(Peking University)

論文1 では純粋なPb10−xCux(PO4)6Oで追試したところ、転移温度以下でのゼロ抵抗は観測されなかったとしている。

報告のLK-99は純粋なPb10−xCux(PO4)6O に不純物のCu2Sが混じっており、CU2S(硫化銅)は、385K付近で相転移を起こし、それ以下の温度で電気抵抗が大きく下がるが(ただし、ゼロではない)、論文の研究者たちはそれを超電導と勘違いしたと結論付けている。

論文2でも、粉末X線回折により不純物のCu2Sが含まれていることを確認している。

そして、一部の小さな薄片状の断片では、Nd2Fe14B磁石(ネオジム磁石)の上で「ハーフ浮上」と呼ばれる現象を成功裏に観察した。この小さな断片と浮上しなかった大きな断片における磁化測定を使用して、サンプルが弱いながらも明確な軟強磁性成分を普遍的に含んでいることが分かった。

小さな断片の顕著な形状異方性と共に、軟強磁性が強力な垂直磁場中で観察されるハーフ浮上を説明するのに十分であると考える。

論文2の研究者のサンプルにはメイスナー効果や零抵抗の存在は示されておらず、超伝導を示していないと考える。

ちなみに、LK-99が超電導物質であれば、完全に浮いて、空中にピン留めされるはずだが、その現象は、元の論文でも観測されていない。磁石の上を浮遊する本物の超伝導体は、空中でクルクル回転させることが可能で、逆さまに保持することさえできる。

また、アメリカとヨーロッパの研究者による別の研究では、実験的証拠と理論的証拠を組み合わせて、LK-99が超伝導体として実現不可能なものであることが実証された。さらに、別の研究グループはLK-99のサンプルを合成し、この物質が超伝導体ではなく絶縁体であることを証明した。

なお、これら2つの論文を含め、追試論文の大半が中国の研究者によるものであるという。中国全体がこの手の基礎研究に大きな力を注いでいることが分かる。

韓国電池大手のSK Onは8月17日、米Ford、韓国のカソード(正極材)メーカーのEcoProBMと合弁でカナダにEV向けの電池材料工場を建設すると発表した。投資金額は12億カナダドル(約1300億円)。

カナダのケベック州で27万平方メートルの敷地にリチウムイオン電池部材の正極材工場を建設する。2026年前半稼働で、量産時には年産4万5000トン(EV22万5000台に相当)を生産する。

新会社の名称はEcoPro CAM Canada LPで、EcoProBMのcore shell gradient (CSG) technologyを使い、NCM(ニッケル・コバルト・マンガン)正極材を生産する。

EcoPro CAM Canada LPはEcoProBMが本年2月に設立した。これにFordとSK on が出資する。日常業務はEcoProBMが担当する。EcoProにとってはハンガリーに続く海外進出となる。

EcoProBMは韓国で主に二次電池材料を生産するEcopro Co Ltd から正極材に特化した部門として分社化された。

2021年12月にEcoProBMがハンガリー東部のデブレツェン市にEV搭載用リチウムイオンバッテリーの正極材工場を建設することが発表された。同社にとって国外初の製造拠点となる。投資額が7億2,800万ユーロで、EV約135万台分に相当する年間10万8,000トンの正極材を生産する。

2022年10月、サムスンの電池部門のサムスンSDIとEcoPro BMの合弁会社は、韓国南東部の港町ポハンに生産能力で世界最大となるカソード材工場を完成させた。

新工場の建設プロジェクトにはカナダ連邦政府とケベック州政府が6億4400万カナダドルを財政支援して電池産業の誘致につなげる。


SK On は現在、
EcoProBMの韓国の既存工場から正極材を調達して車載電池を生産しているが、Fordと組んで現地化を進める。

「この工場により、3社は素材(カソード)-部品(バッテリー)-最終製品(EV)のバリューチェーンを強化するとともに、核となるバッテリー素材の安定供給と価格競争力を確保することができる。北米での主要なバッテリー素材の安定供給を確保する取り組みの一環です」としている。

SK On は2022年7月に Ford とのEV用バッテリーのJV Blue Oval SK を発足させた。

テネシー州Stantonに1工場、ケンタッキー州Glendale に2工場を持つ。

電池工場の年間能力はテネシー工場が43GWh、ケンタッキー工場が86GWhで、合計129GWhとなる。フル稼働時にEV約220万台のバッテリーを供給できる。

2022/7/16 SKとFordのバッテリーJV 発足

SK Onはこのほか、北米に自社で2工場(合計21.5GWh)と現代自動車とのJV(35GWh )を持ち、北米での年間能力は180GWhを超える。(EVで約170万台)

2023/5/31 現代自動車、SK On とのJV 及び LG Energy SolutionとのJVで米国にバッテリー工場建設  

 

商船三井が出資する米エネルギー会社 Delfin Midstream, Incが事業費約52億ドルの洋上LNG生産プラント2基について年内にも事業化を目指す方針を明らかにした。2027年にも生産を開始する。陸上型に比べて環境への負担が軽く、低コストな海上型でLNGの生産を増やす。

商船三井は6月9日、米国のシェールガスを原料とした浮体式LNG生産設備(Floating LNG)の開発を行う Delfin Midstream, Incへの出資を決定し、同社と戦略的出資契約を締結した。これまでに培ってきたLNG船の建造や運航ノウハウを活かして、Delfin Midstreamのプロジェクト推進を支援するとしている。まずは最初のFLNGの最終投資判断(FID)に向けて共同で取り組む。

Delfinでは、「Delfinには長年、LNG輸送船を 浮体式LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU:Floating Storage and Regasification Unit)や浮体式LNG生産設備(FLNG:Floating LNG)へ改造してきた実績がある。それらのスキルを商船三井のノウハウと組み合わせることで、Delfinは北米からのクリーンで低コストなLNG輸出を促進することができる」と述べている。

洋上プラントの場合、アジアの造船所で建造し、現場まで曳航すれば建設コストを10~15%削減できるという。



ルイジアナ州 Grand Chenier 付近に天然ガスパイプラインのStation44 とGrand Chenier Station があり、そこから沖合にUTOS PipelineとGrand Chenier Pipelineがつくられている。

Delfin Midstreamの100%子会社のDelfin LNG LLCは、2014年にUTOS pipelineを購入した。その先の HIOS pipelineの長期access契約を結んでいる。

更にDelfin Midstreamの子会社Avocet LNGは Grand Chenier pipelineを所有している。

Delfin LNG はDepartment of Energy から米国とFTAを締結していない国々への年間1330万トンのLNGの長期契約での輸出の承認を得ている。

Delfin LNGはまずHIOS pipelineに2基の洋上LNG生産プラントを建設する。1基当たり能力は350万トン。

2022年から各社とLNG供給契約を結んでおり、1基分はほとんど確保した。

2022/7 Vitol Inc. 年間 50万トン
2022/8 Centrica plc    100万トン
2022/9 Devon Energy    100万トン
2023/4 Hartree Partners Power & Gas (UK)    60万トン

既に約4基分1330万トンの輸出承認を得ており、3-4基目も計画している。

ーーー

Delfin Midstreamは他にカナダ西岸のCedar LNG計画に参加している。(FEED phase段階)

Cedar LNG は カナダ西岸のBritish Columbia 州 Kitimat の先住民族 Haisla Nation の領土内に浮体式 LNG 施設(液化能力 年間 300 万トン)を建造、設置する計画である。天然ガスは Montney から調達することとなっており、Coastal GasLink パイプラインと送ガスに関し長期契約を締結済みである。また、Coastal GasLink パイプラインから Kitimat までは約 8km の新規パイプラインを敷設する。2027 年の稼働開始を予定している。

先住民族 Haisla Nation と Pembina Pipeline は 2021 年6 月8 日、Pembina が Haisla Nation のパートナーとなり、Cedar LNG プロジェクトの開発を共に行うというパートナーシップ契約を締結した。Pembina はそれまでPTE Cedar LP と Delfin Midstream Inc.が保有していたCedarLNG の持分を取得し、その結果、Haisla Nation と Pembina の所有権はそれぞれ 50%となった。

Delfin Midstreamはその後もテクニカルアドバイザーとして引き続き関与している。

近くでLNG Canadaが建設中  2018/10/5 三菱商事、LNGカナダプロジェクトに最終投資決定

完成予想図

ベトナムの複合企業ビングループ(Vingroup)傘下のEVメーカー ビンファスト(VinFast LLC)が8月15日、特別買収目的会社(SPAC)のBlack Spade Acquisition Co. との合併を通じて米ナスダック市場に上場した。

評価額は1株当たり10ドルで230億ドルだったが、初値は22ドルで倍以上、その後さらに上昇し37.06ドルで取引を終了した。時価総額は850億ドルとなり、米自動車大手 Ford Motorの480億ドル、GMの460億ドルを上回ったが、比亜迪(BYD)の時価総額は下回った。

同社の2022年の損益は21億ドルの赤字。時価総額は上場初日の時価によるものであり、これが維持できるかどうかは不明。他社の時価総額とは区別する必要がある。

Vingroup創業者のPham Nhat Vuong が自身の旗艦会社と関連会社を通じて合併後のVinFast の99%を実質的に保有し、市場に出回る株数が極端に少ないことも影響する。

VinFast は米ノースカロライナ州で40億ドル規模の工場建設に着手している。

同社は今後1年半の間に戦略的投資家や機関投資家から資金を調達する見通しを示したほか、海外市場では直販ではなく、ディーラーと提携する方針を明らかにした。

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VinFast LLC は、ベトナムの電気自動車およびバイクメーカーで、ベトナム最大の財閥のVingroupの自動車部門。2017年に参入を発表して2019年6月には年産25万台のEV、50万台の電動スクーターを生産する工場を立ち上げた。一時はガソリンエンジン自動車を製造したが、2022年にはガソリン車から撤退し、以降の製品はEVと電動バイクである。目標は東南アジア最大のの自動車メーカーになることで、2025年までに年間50万台を製造する計画である。

2022年11月25日、北部ハイフォンの工場で製造した自社ブランドのEV 999台を米国向けに初めて輸出した。式典にはファム・ミン・チン首相ら政府要人も出席、首相は「歴史上初めて、ベトナムで製造されたEVがベトナムのブランドとして世界の自動車市場に参入する重要な節目だ」と、VinFast の事業をたたえた。

輸出されたのは、5人乗りスポーツ用多目的車(SUV)タイプのバッテリー電気自動車「VF8」で、最高出力は260kW、フル充電で約420キロ走行できるという。米国ではバッテリー込みで5万7千ドルから販売される。

同社は海外市場で、VF8と7人乗りのBEV「VF9」を合わせて6万5,000台の予約を確保しているという。今回の米国向け輸出に続き、カナダと欧州向けにも輸出し、2023年頭に納車を開始する。

個人顧客に加え、法人顧客への販売にも力を入れており、11月には米国最大級の自動車サブスクリプションサービス会社のAutonomyから2,500台を受注した。


米国ノースカロライナ州の知事は2022年3月29日、ベトナム唯一の自動車メーカーである
VinFast が同州にEV生産工場を建設すると発表した。投資額は最大20億ドルで、初めて自動車生産工場を迎え入れる同州にとって史上最大の経済開発となる。7人乗りのスポーツ用多目的車(SUV)タイプのEVのVF9 と、5人乗りの同種EVのVF8 が生産される予定で、年間15万台の生産を見込んでおり、今後も複数の段階に分けて投資し続ける。

工場は許可が下り次第、建設され、2024年7月の稼働を目指すとした。

VinFastは2022年7月14日、米国ノースカロライナ州で建設を予定しているEV生産工場について、州政府から受け取るインセンティブが総額12億ドル相当に上ることを明らかにした。

インセンティブパッケージには、32年間にわたって支払われる3億1,600万ドルの雇用開発投資補助金(JDIG)のほか、工場建設予定地の用地、道路、上下水道インフラ整備費用(4億5,000万ドル相当)やコミュニティーカレッジでの人材トレーニング費用(3,800万ドル相当)も含まれている。また、工場が立地するチャタム郡から提供される4億ドルのインセンティブも盛り込まれている。

VinFast は2023年7月19日、米国ノースカロライナ州 Chatham CountyのTriangle Innovation Pointに設立するEV組み立て工場の起工式を7月28日に行うと発表した。当初、2024年7月稼働としていたが、今回の発表によると、工場は第1段階で年間15万台の生産能力を持つように設計されており、2025年に稼働する予定。



VinFastは2023年5月12日
、マカオカジノ界の大物ローレンス・ホーの持つ特別買収目的会社(SPAC)Black Spade Acquisition Coとの合併を通じて米国で上場すると発表した。2023年後半の手続き完了をめざし、合併後の企業価値は270億ドルと評価された。

同社は2年ほど前から、世界での事業拡大に向けた資金を調達するため、米国での新規株式公開(IPO)を模索してきた。

Vingroupと、グループの総帥Pham Nhat Vuongは最近、VinFastの世界展開を加速させるため、同社に新たに25億ドルを注入する方針も示した。

ウクライナは穀物輸出で2つの種類の問題を抱えている。 黒海経由のアフリカ、中近東その他向けの輸出と、 近隣のEU各国向けの輸出である。

EU各国には陸路で運び、アフリカや中近東には黒海経由で運んでいる。

ロシア外務省は7月17日、黒海を通じたウクライナ産穀物輸出に関する合意「黒海穀物イニシアチブ」に関し、同日に期限を迎えたイニシアチブの延長に反対するとし、合意当事国のトルコ、ウクライナと国連事務局に通知した。これにより7月18日にイニシアチブの効力が停止し、黒海経由の輸出が出来なくなった。

2023/8/14 黒海穀物イニシアチブ」 破綻の一因

対策として、ウクライナはドナウ川沿いの港を代替ルートにしようとしている。

ドナウ川はルーマニアとブルガリアの国境を西から東に流れ、黒海の近くで北上し、ウクライナとの国境で東に折れ、黒海に注いでいる。

オデーサからドナウ川沿いの港のレニやイズマイールまで穀物を陸路で運び、ここから船に乗せかえて、黒海の端などを通して輸出するもの。

但しロシアは、ドナウ川沿いの港までも標的にし始めた。7月24日、レニの港が攻撃されたのに続き、8月2日にはイズマイールの港が無人機で攻撃され、港の施設が損壊した。 

ウクライナ政府はドナウ川河口付近に停泊地をつくり、そこで別の船に積み替えて輸出する計画に着手した。

ウクライナは現在、黒海経由に代わり、陸路でのEU各国経由の代替ルートに依存している。ウクライナ産穀物輸出の3分の1は黒海に面したルーマニアのコンスタンタ港から出荷されている。 最近はドナウ川を経由でコンスタンタ港に送られる量が増加している。

ーーー

ウクライナは現在、穀物の輸出を近隣各国を経由して行っているが、これら各国との間で問題が発生している。

戦争が始まった2022年から2023年初頭にかけて、近隣5カ国:ブルガリア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア向けのウクライナ産穀物の輸出は過去に例のない増加を見せた。これらの国でウクライナ産穀物はEUによる関税を免除されており、国内産穀物よりも割安になっている。

このため、ウクライナ産の穀物が大量に流入し、価格が下落し、5カ国で生産される穀物が国内市場および一部の輸出市場から締め出され、各国農家の抗議を招いた。

2023年4月にポーランドとハンガリーが一方的にウクライナ産穀物その他の食料の輸入を禁止した。ルーマニアはルーマニア経由の他国向け輸出のみ認め、国内での輸送は封印した状態で行うものとした。

EUは2023年5月、ポーランド、ルーマニア、ハンガリー、スロバキア、ブルガリアに対し、これら諸国を経由した輸出は継続する条件で、ウクライナ産小麦、トウモロコシ、油糧種子の国内販売を6月5日まで禁止することを認めた 。(その後9月15日まで延長)

7月19日、5カ国は輸入禁止措置について、少なくとも今年末までの延長を要請した。10月15日に総選挙のあるポーランドは強硬である。

ロシア外務省は7月17日、黒海を通じたウクライナ産穀物輸出に関する合意「黒海穀物イニシアチブ」に関し、同日に期限を迎えたイニシアチブの延長に反対するとし、合意当事国のトルコ、ウクライナと国連事務局に通知した。これにより7月18日にイニシアチブの効力が停止した。

2022年7月22日、トルコ、ウクライナ、ロシア及び国連は、ウクライナのオデッサ港、チェルノモルスク港、ユージヌイ港から、 穀物とアンモニアを含む肥料の安全な輸出に関するイニシアチブに署名した。

外交関係者らによると、主な合意内容は次の通り。

  • 農産物を載せた貨物船が航行中は、ロシア軍は黒海に面したウクライナの港を攻撃しない
  • 機雷が敷設された水域では、ウクライナ艦艇が貨物船の安全航行を誘導する
  • 密輸に対するロシアの懸念に対応するため、トルコは国連の支援を受けて貨物船を検査する
  • 黒海からのロシア産穀物や肥料の輸出も可能にする

 対象輸出品については、実際の条項は次の通り。

 3. The purpose of this Initiative is to facilitate the safe navigation for the export of grain and related foodstuffs and fertilizers, including ammonia from the Ports of Odesa, Chernomorsk and Yuzhny ("the Ukrainian ports").

ウクライナの3港からの輸出であり、ロシア産穀物は対象とならないが、ロシア産のアンモニアはOdesa港までパイプラインで運ばれており、対象になる。

しかし、ウクライナがロシアのアンモニアが領内を通過するのを認めない。このため、国連は米国のトレーダーのTramoがロシアとウクライナの国境でアンモニアを買い取り、自社品としてウクライナ領内を運び、輸出させる案を検討した。Tramoも前向きであったが、実施されていない。

2022年10月30日、ロシア政府は、黒海穀物イニシアティブの履行を無期限で停止するとの声明を発表した。ロシアは、履行停止の理由として、クリミア半島のロシア海軍基地にある黒海艦隊の艦船が穀物輸出船からのドローン攻撃を受けた可能性があることを挙げた他、同攻撃への英国の関与を主張した。

11月1日、トルコのエルドアン大統領はプーチン大統領との電話会談において、合意への復帰を求めた。ウクライナ・インフラ省は11月17日、黒海を経由するウクライナ産穀物輸出に関する合意が120日間延長されると発表した。

ロシア外務省は2023年3月14日、3月18日に期限を迎える穀物合意「黒海イニシアティブ」の再延長に合意するも、その期間を60日に限定すると発表した。

期限前日の5月17日、ロシアが60日間の延長に合意した。

今回の効力停止について、ロシア外務省は声明の中で、2022年7月のイニシアチブ締結の際に、ロシアと国連事務局との間で締結したロシア産農産物と肥料輸出の正常化に関する覚書の実施に前進がないことを挙げたほか、ウクライナが人道的海上輸送路を隠れみのに、ロシアの民間および軍事施設を攻撃していると批判した。

プーチン大統領は7月19日、ロシアが延長に合意しなかった黒海イニシアティブについて、西側諸国が自らの目的達成のために歪めていたと非難した。同時に、ロシアが提示している5つの重要な条件の全てが満たされれば、ロシアは「直ちに」復帰すると改めて表明した。

プーチン大統領は「黒海イニシアティブには当初は極めて重要な人道的意義があったが、西側諸国はこの本質を完全に骨抜きにし、変質させた。困窮している国々を支援する代わりに、西側諸国は穀物取引を政治的な恐喝の手段として利用しただけでなく、世界の穀物市場で投機を行う多国籍企業を富ませる道具にした」と述べた。 

プーチン氏が挙げた要求は、
1)ロシア農業銀行の国際銀行間通信協会(SWIFT )決済システムへの再接続
  2022/3/4 EU、ロシア7銀行をSWIFTから排除
2)ロシアへの農業機械とスペア部品の禁輸措置の解除
3)ロシアの船舶と貨物に対する高額の保険料設定の見直しと港湾施設へのアクセス制限の撤廃
)ロシアのトリヤッチとウクライナのオデーサをつなぐアンモニア輸出パイプラインの復旧
5)ロシアの肥料会社の口座と財務活動の遮断解除。

アンモニア輸出パイプラインは2022年2月のウクライナ戦争勃発後、稼働を停止しているが、この再起動がウクライナの数百万トン穀物の輸出同意の交渉条件であったにも拘らず、アンモニア・パイプラインが破壊されたと伝えている。

パイプライン爆破は 本年6月5日の夜間、ウクライナ北東部ハルキフ州、マシウトフカ村近くで発生した。 ロシア防衛省は、6月7日、ウクライナのテロ破壊グループが、ロシアが再稼働を強く希望していたアンモニア・パイプラインをダイナマイト爆破したと発表し、ウクライナを強く非難した。 ウクライナ側のハリコフ州知事は、ロシア軍が州内でパイプラインに繰り返し砲撃を行ったと主張した。


他の項目については、ロシアへの追加経済制裁として実施されているもので、欧米がこの要求に応じる見込みはほとんどない。

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アンモニアは窒素肥料の原料で、2022年2月のウクライナ侵攻以前はこのパイプラインがロシアの主要な輸出ルートだった。

ロシア内陸部のサマラ州トリヤッチから、黒海に面したウクライナ・オデッサ州のピウデンヌィ港まで、全長2,471kmに及ぶパイプラインが伸びている。

パイプラインの起点になっているトリヤッチ市にUralchemの子会社の「トリヤッチアゾト (Togliattiazot )」という窒素肥料工場であり、ここで生産された液化アンモニアがパイプラインに注入され 、その終点に当たる「オデッサ臨港工場」のターミナルでタンカーに積み込まれて輸出されていた。


このパイプラインでは、年間250万tあまりの液化アンモニアの輸送が可能。

プーチンはこのパイプラインの復旧を「黒海穀物イニシアチブ」延長の条件の一つにしている。

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1970年代に「デタント(緊張緩和)」の時代が訪れ、米ソの経済協力が行われた。その機会を捉え、Armand Hammerが経営するOccidental社は1973年にソ連との間で、トリヤッチアゾトとオデッサ臨港工場という2つの工場と、両者を結ぶアンモニアパイプラインの建設プロジェクトの契約を締結した。単にインフラを建設するだけでなく、生産されたアンモニアをOccidental社が買い取るというスキームである。

その当時、アメリカではリン酸肥料は潤沢だったが、アンモニアおよび窒素肥料は輸入に依存していた。一方、天然ガス大国であるソ連ではアンモニアおよび窒素肥料のポテンシャルが大きい一方、当時はリン酸肥料が不足していた。
そこでHammerは、アメリカから資金と技術を提供してソ連に窒素肥料工場とパイプラインを建設し、アンモニアをアメリカが引き取る一方、米フロリダのOccidentalの工場で生産したリン酸肥料をソ連に供給するという契約をまとめた。 期間20年、200億ドルという大型契約である。

トリヤッチアゾトとオデッサ臨港工場の建設は1974年に始まり、前者は1978年に、後者は1979年に稼働。パイプライン全体が開通したのは1981年で ある。

1991年暮れにソ連邦が崩壊し、アンモニアパイプラインはロシアとウクライナという2つの独立国にまたがることになったが、パイプラインの利用は続いた。液化アンモニアは鉄道での輸送も可能だが、出来合いのパイプラインで港まで運んだ方が、コスト的にメリットが大きい。

近年アメリカではシェール革命を受けアンモニア輸入需要が縮小しているため、オデッサからの輸出もアメリカ以外の国向けが多くなってきている。

2019年にパイプラインは251万tのロシア産液化アンモニアを輸送し、これは史上最高記録である。

  以上 https://globe.asahi.com/article/13613073 から

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化学肥料の三要素である窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)は生産地が偏っているが、ロシアはそれら全てを産出する世界最大の肥料輸出国である。2021年の世界輸出量でロシア産は全体の17%、ベラルーシ産は6%を占める。とくにカリウムは両国が42%の世界シェアを握っている。(下の農水省資料では34%)

詳細は 農林水産省 我が国と世界の肥料をめぐる動向


ロシアはトリヤッチ~オデーサのアンモニアパイプラインが使えないが、ベラルーシもEUがルカシェンコ大統領の人権侵害に対して、2021年にカリウムなどの輸出を規制する経済制裁を決めたため、隣国リトアニアなどEU加盟国を経由してバルト海から肥料を輸出するルートは閉ざされている。

このため、両国は肥料の迂回輸出に動いている。

「ロシアは黒海から輸出していた肥料のほとんどをバルト海経由(北西部ウスチ・ルガ港や北極圏のムルマンスク港など)に切り替え、中国に向かう国内鉄道でも輸送している」(IFAの市場戦略情報ディレクター)。

黒海に面するタマン半島ではアンモニアなど肥料の積み替え施設の建設が進んでいる。 (ずっと以前に計画されたが、 買収した農地の所有権問題で裁判沙汰になり、長らく中断していたもの)

Taman港まで鉄道を延長、港に貯蔵・出荷設備を建設する。 建設費は約8億米ドル。第一段階として2023年12月に年間200万トンのアンモニア輸出を開始、2025年12月には更に年間150万トンのアンモニア(合計年間350万トン)と年間150万トンの尿素を輸出する。これにより既存のウクライナ経由のパイプラインは不要となる。(その場合、プーチンのその他の要求が重要となる。)

Togliattiazot 親会社Uralchemの会長のインタビュー 

Togliattiazot:アンモニア、尿素

OTEKO Group (Tamanneftegas):石油製品、LPG

Pischevye ingredienty:
 grains and grain meal (年間1000万トン)
 vegetable oil (年間300万トン)
 
 輸出能力は出来るが、代金決済問題、保険問題が障害
  (プーチンが解決を要求)

ベラルーシは「ロシアの鉄道網を使って中国にカリウムを輸出している。今のところ数量は限られるが、いったんロシアに輸出してバルト海から海上輸送するルートもある」。

ロシアやベラルーシが肥料の輸出先を中国やインド、ブラジルなどにシフトしている。国際取引の急激な変化は肥料供給のバランスを崩しかねない。

米政府は8月9日、特定のハイテク分野における米国の企業・個人による中国への投資を規制する新制度を導入すると発表した。中国の軍事力近代化に結び付く技術開発に米国の資本が投じられるのを阻止する狙いがある。

バイデン大統領は、「懸念のある国々における特定の国家安全保障技術および製品への米国の投資に対処する行政命令」に署名した。

財務長官に対して、懸念のある国々のセキュリティに重要な敏感な技術を含む活動に従事する機関への、特定の米国の投資を規制する権限を与えている。 大統領令の付属書で、中華人民共和国、香港特別行政区、マカオ特別行政区を懸念すべき国として指定した。

具体的には、①半導体およびマイクロエレクトロニクス、②量子情報技術、③人工知能の3つの分野において、国家安全保障に重要な技術を扱う活動に従事するエンティティへの投資に関して規制が行われる。

半導体はスーパーコンピューターなどの高度技術の開発につながる先端分野は投資を禁じる。比較的、先端ではない分野でも届け出を義務付ける。

先端半導体は2022年10月に人材も含めて輸出禁止措置を導入した。モノやヒトに加えて、カネの流れも制限する。

2022/10/10 米国、半導体の対中輸出制限を拡大

量子技術は原則認めない見通し。


AIは軍事技術やスパイ活動に使用されうる技術が届け出の対象になる。投資禁止も検討する。

この計画は、米国の国家安全保障を危険にさらす軍事、諜報、監視、サイバー対応能力の開発を支援するために重要なこの一連の技術への米国の投資を懸念国が悪用することを防ぐことを目指すものとしている。

具体的には、最も深刻な国家安全保障上のリスクを引き起こすこれらの技術分野に関連する特定の活動に従事する企業への特定の投資を禁止し、その他の機密性の高い投資については通知を義務付ける。

プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、合弁事業による投資や、工場などを一から立ち上げる「グリーンフィールド投資」が規制を受けることになる。

財務省は、規制は将来の投資のみに適用され、既存のものは適用外だと説明しているが、過去の案件の情報開示を求める可能性があるとした。


中国商務部は、これに「重大な懸念」を示し、措置を講じる権利を有すると表明した。米国が市場経済の法律と公正な競争の原則を尊重し「世界経済・貿易における交流と協力を人為的に妨げる」ことを控えるよう望むとした。

投資規制は米中対立の新たな火種となる可能性があるが、米政府当局者は国家安全保障上の「最も重大な」リスクに対応して投資を禁止する内容で、強く相互依存する両国経済の分断を狙ったものではないと述べた。


今後、複数回の意見公募を経て来年発効する見込みである。

米国は、EUや日本を含む先進7カ国(G7)などとも協議し、足並みをそろえて中国に対抗したい考えで、日本も対応を迫られる可能性がある。

半導体の輸出規制については、米国は2022年10月に人材も含めて輸出禁止措置を導入したが、日本とオランダにも協力を求めていた。

西村経済産業相は3月31日、最先端の半導体製造装置23品目について輸出規制を強化すると発表した。改正省令を5月に公布、7月に施行する。

2023/4/4 最先端の半導体製造設備の輸出規制強化

政府は6月30日、先端半導体の製造装置の輸出管理を9月1日から強化すると発表した。 これを受け、オランダの露光装置大手ASMLは同社が手掛ける最先端の液浸DUV(深紫外線)露光装置を輸出する際は、同国政府の許可が必要になると説明した。

日本経済新聞によると、ソフトバンクグループ傘下の英半導体設計大手Arm Limited は9月に米ナスダック市場に上場する方針を固めた。4月の準備申請に続き、8月中にも米証券取引委員会(SEC)に正式に申請する。

付記 8月21日に申請した。

付記 9月14日、ナスダックに新規上場し、63.59ドルで初日の取引を終えた。売り出し価格51ドルを25%上回った。時価総額は652億ドル(約9兆6100億円)となった。

上場と同時に米アップルや韓国サムスン電子など複数の事業会社がArm に投資する。上場時の時価総額は600億ドル超が見込まれているが、ナスダック上場で80~100億ドル の調達を目指しているとされる。


別途ロイターによると、Amazonが株式公開(IPO)に先立ち、Arm支援者となるための話し合いを進めているという。Amazonのクラウド部門であるAmazon Web ServicesがArmグループのデザインをGraviton処理チップに活用している。

ArmはAmazonのほか、Intel、Googleの持株会社のアルファベット、Samsung、Nvidia Corporationを含む約10社のテックジャイアントにIPO前の投資を持ちかけたとされる。

ただし、これらの投資家は取締役会の席やコントロールを確保することはなく、この戦略の目的は、Armと主要なクライアントとの関係を強化し、IPOの魅力を高めることであるという。

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ソフトバンクグループは20169月に日本企業の海外買収案件としては過去最大の240億英ポンド(310億米ドル)英半導体設計会社 Arm Limited を買収した
このうち24.99%をソフトバンク・ビジョン・ファンドに移管した。

ソフトバンクグループは2020年9月13日、傘下の Arm Limited
の全株式を米国の半導体メーカーであるNVIDIA Corporation対して最大400億米ドルと評価した取引売却することについて、最終的な契約の締結に至ったと発表した。
取引は、英国、中国、EU及び米国を含む必要な規制当局の承認、その他の一般的なクロージング要件の充足を条件とし、完了までに18カ月かかる見込んでいる。

Armの事業のうちIoTに関連するサービス事業のInternet-of-Things Services Group本取引の対象外で本取引の完了までにArmから分離され

2020/9/15 ソフトバンク、Arm LimitedをNVIDIA に売却

これを受け、Google、Microsoft、Qualcomm などが規制当局に苦情を申し立てたと報じられた。

EUの欧州委員会は2020年10月27日、本買収について競争法(独占禁止法)に基づく本格調査に入ったと発表した。ArmがNVIDIAの傘下に入ることで価格の上昇などを招く可能性があると懸念している。

米FTCは2020年12月2日、反トラスト法に基づき、買収差し止めを求める訴訟を起こした。「この垂直取引により、最大のチップ企業の1社が、競合企業が独自の競合チップを開発するために依存する技術と設計を制御できるようになる」としている。NVIDIAの競合企業もArmの技術に依存しており、買収を認めれば、技術支配力を利用して競合他社を弱体化させるとした。裁判は2022年8月9日に開廷の予定であった。

ソフトバンクグループとNVIDIA Corporationは2022年2月8日、NVIDIAがArm Limitedの株式を取得する契約を解消したと発表した。
取引完了のために誠意を持って取り組んできたが、これを阻む規制上の大きな課題があったため、契約の解消に至ったとしている。

当初の契約の条項に基づき、ソフトバンクグループはNVIDIAが前払いした12.5億米ドルを保持し、利益計上する。NVIDIAは20年間のArmライセンスを保持する。

ソフトバンクグループはArmの技術やIPが今後もモバイルコンピューティングと人工知能の発展の中心であり続けると確信しており、2023年3月期中に同社の株式上場の準備に入る。「ナスダックを中心に米国での上場を考えている」としていた。

2022/2/9 ソフトバンク、Arm Limited のNVIDIA への売却を断念、Armの株式上場に変更

Armについては、英国単独上場ないし英米重複上場の観測が出ていたが、同社は2023年3月3日、株式上場計画について本年は米国のみの上場を目指すと表明し、4月29日に米証券取引委員会(SEC)に米国での上場を申請したと発表した。

台湾積体電路製造(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company: TSMCは2023年8月8日、ドイツ東部Dresdenに欧州初の半導体工場を建設すると発表した。

同社はドイツ東部ザクセン州のドレスデンに製造工場を建設する可能性について2021年から同州と協議していた。

ドイツの大手自動車部品メーカー Robert Bosch、ドイツの半導体メーカー Infineon Technologies、フィリップスの半導体部門から独立したオランダの半導体メーカー NXP Semiconductorsと合弁でEuropean Semiconductor Manufacturing Companyを設立する。

合弁会社の出資比率はTSMCが70%、Bosch、Infineon、NXPの3社がそれぞれ10%で、規制当局の承認やその他の条件が満たされることを条件とする。TSMCはこの日開催した取締役会で、ESMCへの最大34億9993万ユーロの投資を承認した。これを超えない範囲で出資する。

工場はTSMCが運営する。

予定されているファブ(半導体製造工場)は、TSMCの28/22ナノメートルプラナーCMOSおよび16/12ナノメートルFinFETプロセス技術を使用し、1ヶ月当たり約40,000枚の300mm(12インチ)ウェハを生産する見込み。TSMCは、「高度なFinFETトランジスタ技術で欧州の半導体製造エコシステムをさらに強化する」としている。なお、同工場によって、約2000人のハイテク専門職の直接雇用が創出される見込み。

2024年下半期にファブの建設を開始し、生産を2027年末までに開始する予定。

投資総額は100億ユーロを超える見込みで、EUやドイツ政府からの支援も見込む。

米国が自国の半導体産業振興策を打ち出す中、EUも2030年までに半導体生産能力を2倍にすることを目指しEU半導体法を承認。米インテルなども助成を受けて欧州に生産拠点を設けようとしている。

EU理事会は、2023年7月25日、「EU半導体法」として知られている欧州の半導体エコシステムを強化する規則案を承認した。EU半導体法」は、半導体分野における欧州の産業基盤の発展のための条件を整備し、投資を呼び込み、研究・イノベーションを促進し、将来の半導体の供給危機に備えることを目的としている。同計画では、2030年までに世界の半導体市場におけるEUのシェアを現在の10%から20%以上に倍増させることを目標に、公的・民間部門で430億ユーロの投資(EU予算から33億ユーロ)を動員する。

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米半導体大手Intel は2023年6月19日、同社がドイツ東部Magdeburgに新設する半導体工場に300億ユーロ(約4兆6500億円)超を投資することでドイツ政府と合意したと発表した。2基の先端半導体設備(Fab)を建設する.

2022年3月に工場の建設計画を発表した際の投資額は170億ユーロだった。政府の補助金の増額と引き換えにインテルが投資規模を拡大した。関係者によると、ドイツ政府から100億ユーロ(約1兆5500億円)相当の補助を受けることで双方が合意した。

2023/6/22 Intel、ドイツ・ポーランド・イスラエルに新工場建設

ドイツのハーベック経済・気候保護相は「ドイツとヨーロッパへの重要な貢献になる」と歓迎する声明を発表し、建設を支援する考えを表明した。ドイツの商業経済紙Handelsblattは投資額のおよそ半分にあたる50億ユーロをドイツ政府が支援する見込みだと伝えている。


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TSMCは半導体の受託生産で世界シェア6割を占める。

TSMCは米アリゾナ州に先端半導体の工場を建設中で、熊本には旧世代半導体工場を建設中。

台湾 中国 USA
12-inch GIGA FABs
  (300mm)
本部/R&D:Fab 12A/B(新竹Science Park) TSMC Nanjing Company, Fab 16
(南京)
建設中
アリゾナ州 Phoenix
Fab 14(台南Science Park)
Fab 15(中部Science Park:台中市)
Fab 18(台南Science Park)
8-inch Fabs
  (200mm)
Fab 3(新竹Science Park)  TSMC China Company, Fab 10
(上海)
WaferTech L.L.C., Fab 11 
(ワシントン州 Camas) 
Fab 5(新竹Science Park) 
Fab 6(台南Science Park) 
Fab 8(新竹Science Park) 
6-inch Fabs
  (150mm)
Fab 2(新竹Science Park)
Backend Fabs Advanced Backend Fab 1(新竹Science Park)
Advanced Backend Fab 2(台南Science Park)
Advanced Backend Fab 3(桃園市)
Advanced Backend Fab 5(中部Science Park:台中市)
 Backend Fab:半導体製造における2番目の工程で、それぞれのデバイス(トランジスタ、キャパシタ、抵抗など)がメタル層によって配線される。

TSMCは2021年10月14日、日本に新工場を建設すると発表した。日本で生産するのは、演算用のロジック半導体で22~28nmの前世代型技術を想定している。

2021/10/18 半導体大手、台湾のTSMCが日本で工場建設

国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)が主導する連合は8月7日、東芝株を8日から公開買い付け(TOB)すると発表した。買い付け期限は9月20日まで。

条件としていた「国外の競争法令等及び投資規制法令等上の手続が全て完了していること」が確実となったことから実行に移す。

東芝は6月8日に日本産業パートナーズなど国内連合による東芝へのTOBについて、株主に対して応募を推奨すると発表していたが、今回、改めてTOBに賛同するとともに、株主に応募を推奨することを取締役会で決議した。

JIP連合は計画通り1株4620円で買い付ける。東芝株は上場廃止になる見込み。買付予定数を取得した場合の買付代金は約2兆円となる。

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日本産業パートナーズは3月23日、東芝を株式公開買い付け(TOB)で非公開化することを目指すと発表した。


発行済株式全て(自社株を除く)の買収を目指す。買付の下限を66.7%に設定した。1株4620円の買付で、総額は約1兆9987億円となる。     

買付予定株数 432,630,045株
下限(66.7%) 288,564,300株

  TOBが成立しても100%でない場合は、完全子会社とするためのスクイーズアウト手続を実施する。

TOB価格4620円は 、3月23日の終値4213円に9.7%のプレミアムを乗せた水準となる。

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今回発表した必要資金の出資者/融資者概要は以下の通り。

形態 出資・融資者

出資/融資額

普通株式 組合(JIP国内ファンド/国内事業会社/国内金融機関) 3900億円
海外ファンド(JIP海外ファンド/海外事業会社/国内金融機関) 1300億円
優先株式 国内事業会社 2000億円
劣後ローン 国内金融機関・事業会社 2355億円
シニアローン 国内金融機関 1兆2000億円
合計 2兆1555億円

約2兆円での買収にはJIPのほか国内20社超が出資し、メガバンクなどが融資する。これまでロームが3000億円、オリックスが2000億円、日本特殊陶業が500億円を拠出することと発表している。

オリックスは5月10日、東芝の買収について2000億円を拠出すると明らかにした。内訳はエクイティ出資を1000億円、劣後ローンなどを1000億円としている。同社は「東芝の企業価値と経営改善計画の実効性を評価」とコメントしている。

ロームは7月18日、日本産業パートナーズが運営する投資ファンドに1000億円を出資すると発表した。同出資とは別に、東芝のTOBを目的として設立する公開買い付け者TBJH合同会社の親会社TBJホールディングスが発行する2000億円の無議決権優先株を引き受けることを予定している。

日本特殊陶業は7月19日、日本産業パートナーズ(JIP)を中心とする企業連合に参画し、計500億円を拠出すると発表した。JIPが運営する投資ファンドに250億円を出資するほか、劣後社債250億円分を引き受ける。

日本産業パートナーズは銀行融資1兆2000億円のほか、新東芝が運転資金を引き出せる2000億円のコミットメントライン(融資枠)も得ているとされる。

東洋経済によると、融資枠を含む1兆4000億円の内訳は次のとおり。東芝の主力行の三井系の2行が過半数を負担することで、折り合いがついた。

三井住友銀行(主力行) 5,150億円  
三井住友信託(準主力) 2,200億円  
(三井系 合計) 7,350億円 52.5%
みずほ銀行 (主力行) 4,600億円 33%
三菱UFJ銀行 1,600億円  
あおぞら銀行 450億円  
合計 14,000億円 100%

2023/2/14 日本産業パートナーズ、東芝買収の最終提案を提出

アステラス製薬の米国子会社 IVERIC bio,Inc.は8月4日、地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性の治療薬として開発中の IZERVAY™ (一般名:avacincaptad pego )硝子体内注射液について米国食品医薬品局(FDA)から承認を得た。

米国における適応症は地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性で、この適応症に対して唯一承認されている補体因子C5 阻害剤である。欧州でも承認申請中。

補体因子C5 阻害剤は、免疫系の一部である補体系を標的とする薬物であり、炎症や組織損傷を制御するために使用される。IZERVAY™は、硝子体内注射液として投与され、加齢黄斑変性症の進行を抑制することが期待されている。

アステラス製薬では、年間売上高10億ドルを超える大型薬「ブロックバスター」になることを期待している。


2023年2月,FDAはApellis Pharmaceuticals Inc
のSYFOVRE™(ペグセタコプラン注射)を加齢黄斑変性症に続発する地図状萎縮の治療薬として承認した。SYFOVREは補体C3 を標的とするペグ化ペプチドで、加齢黄斑変性症(GA)に伴う二次性地理的萎縮の治療薬として承認された。成分薬剤のペグセタコプランは、発作性夜間ヘモグロビン尿症に対する皮下注薬剤としてもFDAに承認されている。

しかし、発売後に重度の目の炎症や視力喪失の症例が出現、世界最大の網膜専門医の組織である米国網膜専門医協会は、医師らが閉塞性網膜血管炎の複数の症例を報告したことを受けて、安全性に関する通知を発表した。

これらの副作用のためにApellisの株価は3分の2 以上下落した。

IZERVAY™は、アステラス製薬が2023年7月11日に買収完了(4月29日に買収契約を締結)、同社の子会社となった米国のバイオ医薬品企業 IVERIC bio, Inc.が開発したもの。

IVERIC bio, Inc.は眼科領域において新規治療薬の研究開発に注力しており、
IZERVAY™について米国食品医薬品局(FDA)から優先審査指定を受け、8月19日がFDAによる審査終了目標日であった。


黄斑は網膜の中心部にあるわずかな領域で、中心視力をつかさどっている。

加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration: AMD)は、高齢者における中等度から重度の中心視力低下の主な原因であり、患者の大半は両目を侵されている。
滲出型加齢黄斑変性と萎縮型加齢黄斑変性がある。

AMD が進行すると黄斑部の網膜色素上皮細胞とその下部にある血管が失われ、網膜組織が著しく薄くなったり、萎縮したりする地図状萎縮(GA)を伴う 萎縮型AMD は、患者の視力を不可逆的に低下させる。


   . https://www.kurachi-ganka.com/disease/age-related-macular-degeneration


    .... https://www.healios.co.jp/development/ipsc/amd/

地図状萎縮(GA)は米国で約150 万人に影響を及ぼしているが、米国で GA を患っている人の約75%は未診断と考えられている。適切なタイミングでの治療がなければ、GA 患者の推定 66%が失明または重度の視覚障害になる可能性がある。

今回の承認取得は、GA を伴う AMD 患者を対象に、IZERVAY を毎月 2 mg ずつ硝子体内投与し、安全性と有効性を評価した 2 つのピボタル試験の結果に基づいている。投与後 12 カ月時点での一次解析では、偽処置対照群と比較して、IZERVAY 投与群で GA の進行速度が統計学的に有意に抑制していることが示された。GA の進行速度の抑制は、早ければ投与後 6 カ月時点で見られ、最初の 1 年間で最大 35%抑制した。

GATHER 試験における ACP 2 mg 投与群で投与 12 カ月後に報告された最も一般的な有害事象(発生率 5%以上)は、結膜出血(13%)、眼圧上昇(9%)、かすみ目(8%)で、眼圧の上昇は一過性であり、次の診察までに投与前の水準に回復した。

なお、滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)には抗VEGF薬の硝子体注入が標準治療である。

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アステラス製薬IVERIC bio, Inc.との間で1株当40.00米ドル、総額約59ドルの現金を対価としてIVERICを買収することで合意し、429日に契約を締結した。(2023/7/11 買収

合意した取得価格はIveric Bio株式の2023331終値(24.33米ドル/株)に対して64%同日から過去30日間の売買高加重平均価格に対しては75%のプレミアムを加えた価格となる。

アステラス製薬は、VISION「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの『価値』に変える」の実現に向け、最先端の「価値」駆動型ライフサイエンス・イノベーターを目指している。研究開発戦略であるFocus Areaアプローチとして、多面的な視点でバイオロジーとモダリティ/テクノロジーの独自の組み合わせを見出し、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいる。

本買収は、アステラス製薬が掲げる重点領域における製品ポートフォリオ構築のための重要なステップとなる。

Iveric Bio社のリードプログラムである IZERVAY™を獲得することが、アステラス製薬の経営計画2021で定める2025年度までの売上目標に貢献するだけでなく、IZERVAY™は fezolinetant(閉経に伴う中等度から重度の血管運動神経症状の治療薬)やPADCEV(抗体-薬物複合体)とともに収益を生み出す柱として、2020年代後半に控える前立腺がん治療剤 XTANDI ®の独占期間満了による売上減少を補うことが期待されている。

また、IVERIC bio社の買収により、アステラス製薬は、コマーシャルチームや、専門家との広範なネットワーク、医療機関とのパートナーシップを含む、眼科領域における基盤ケイパビリティを獲得する。このようなケイパビリティ獲得を通じて、アステラス製薬は、Primary Focus「再生と視力の維持・回復」における目標達成に向け、臨床開発・市場アクセスを加速させていく。

格付け会社フィッチは8月1日、米国の外貨建て長期債格付けを「AAA」から「AAプラス」に引き下げた。見通しは安定的。

フィッチは格下げの理由について、「今後3年で予想される財政状況の悪化、高水準で拡大しつつある一般政府債務負担、過去20年間の他のAAおよびAAA格付け諸国・地域と比較したガバナンスの低下を反映している。この間、債務上限の対立と土壇場での解決が繰り返されてきた」と発表資料で説明した。

フィッチによれば、米国の一般政府債務のGDP比率は2025年までに118.4%に達すると予想されており、これはAAA格付けの中央値(39.3%)の3倍近い。

フィッチは少なくとも1994年から米国のAAA格付けを続けてきた。米政府の借り入れを巡る大掛かりな政治闘争と、連邦債務上限を引き上げるかどうかで対立を繰り返す状況を受け、格下げが発表された。

債務上限問題を巡りバイデン政権と議会共和党の対立が続く一方、財務省が特例措置を使い切り、支払い義務を履行できなくなる「Xデー」を迎える危険が取り沙汰された今年5月の段階で、フィッチは格付け引き下げを検討していると警告していた。

2023/5/24 米債務上限協議、合意に至らず → 2023/6/2 米の債務上限法案 下院で可決、上院へ送付

イエレン米財務長官は格下げが「恣意的」であり「最新でない」として、「フィッチの決定に強く異議を唱える」と声明で反論。「世界中の人々と投資家、米国民が既に知っている通り、財務省証券は引き続き世界的に見て卓越して安全な流動性資産であり、米経済は基本的に健全だ。フィッチの決定はそれを変えるものではない」と主張した。

S&Pは2011年に、債務上限危機を受け、AA+に引き下げた。Moody'sは最上級の「Aaa」を維持している。



2023年8月時点

S&P Moody's- Fitch
AAA
ドイツ
ルクセンブルク
オランダ
豪州
スイス
デンマーク
スウェーデン
ノルウェー
シンガポール
カナダ
 
 
Aaa
ドイツ
ルクセンブルク
オランダ
豪州
スイス
デンマーク
スウェーデン
ノルウェー
シンガポール
カナダ
米国
NZ
AAA
ドイツ
ルクセンブルク
オランダ
豪州
スイス
デンマーク
スウェーデン
ノルウェー
シンガポール
 
 
AA+
米国
NZ
オーストリア
フィンランド
香港
台湾
Aa1
 
 
オーストリア
フィンランド
AA+
米国 (2023/8/1) ↓
カナダ
オーストリア
フィンランド
NZ (2022/9) ↑
AA
フランス
韓国
ベルギー
英国
Aa2
フランス
韓国
 
 
AA
台湾
 
 
AA-
チェコ
エストニア
スロベニア
 
 
Aa3
台湾             
香港
ベルギー
英国
チェコ
 
AA-
フランス 2023/4 ↓
韓国
香港
ベルギー
英国
チェコ
A+
ラトビア
中国
日本
リトアニア
スロバキア
A1
エストニア
中国
日本
サウジ
 
A+
アイルランド
中国
エストニア
サウジ
A
スペイン
サウジ ↑
 
 
A2
スロバキア
ポーランド
リトアニア
 
A
日本
スロベニア
リトアニア
スロバキア
A-
ポーランド
A3
スロベニア
ラトビア
 
A-
ラトビア 
ポーランド
スペイン

米国の電力会社 Southern電力の子会社 Georgia Power は7月31日、Georgia州WaynesboroのVogtle原子力発電所の3号機(出力1,117MW)が商業運転を開始し、ジョージア州内で電力を供給することを発表した。


Vogtle原子力発電所では、1号機が1987年から、2号機が1989年から商業運転を行っている。米国では30年以上、原子力発電所が新設されてこなかったが、ここに3号機が加わることとなる。

Georgia Power は2023年7月28日、4号機について、原子力委員会(NRC)から103(g)認定を受けたと発表している。

103(g)認定は、新しい発電設備が複合ライセンスおよびNRCの規制に準拠して建設され、運転されることを示すもので、認定後は燃料装填や試験運転が可能となる。

4号機の運転開始時期は2023年第4四半期後半から2024年第1四半期を予定しており、今後、燃料装荷の最終準備を行い、その後、数カ月間にわたる起動試験と試験運転が行われる。

Georgia Powerは声明で「Vogtle 3号機は今後60~80年間、顧客にクリーンで信頼性の高いエネルギーを届ける」と強調した。

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1979年のスリーマイル島での原発事故、1986年のチェルノブイリでの原発事故を受けて、アメリカの原子力産業は停止状態になってい た。

スリーマイル島での原発事故以降で運転開始したものは次の通り。

1)スリーマイル事故以前に建設が開始されたもの

 1996年にテネシー川流域開発公社(TVA)のWatts Bar 原発1号機(1,121MW)が運転開始した。

 その後、
2007年10月にWatts Bar 原発2号機の建設が再開され、同機(1,218MW)は2016年10月に商業運転を開始した。

 いずれもウェスティングハウス製の加圧水型原子炉(PWR)で、1970年代に建設が開始していたため、第2世代の原子炉である。

Watts Bar 2号機は1973年に建設認可を得たが、79年のスリーマイル島原発事故の影響で85年に建設を中断、2007年に建設再開に乗り出し、完成にこぎ着けた。

2015/10/31 米国、19年ぶり原発稼働認可 

2)1979年のスリーマイル島原発事故後、米国で新規着工したもの

 今回のVogtle原発3号機の稼働が初めて のもの。4号機の運転開始時期は2023年第4四半期後半から2024年第1四半期を予定している。

 安全性を高めたWestinghouse製の「革新軽水炉」(AP1000)としても米国初の稼働となる。
 事故や災害で原子炉が停止した場合でも、運転員の操作や電源なしに重力による水の落下で自動的に冷却できる仕組みを持つ。



東芝傘下の
Westinghouseは4基の原発を受注していた。

 Vogtle 3、4号機(ジョージア州) Southern電力

 V.C. Summer 2、3号機(サウスカロライナ州)South Carolina Electric & Gas 及びSantee Cooper

しかし、米国ではスリーマイル島事故後、原発の建設工事が途絶えたことから熟練の作業員が不足。工期が大幅に延びた結果、建設費も増えた。

Westinghouseが米連邦破産法11条を申請したのに伴い、2017年に東芝が親会社保証として 両電力に対し計6561億円(当時のレート)を補償することが決まった。

Vogtle 3、4号機 3,680百万ドル 4,129億円
V.C. Summer 2、3号機 2,168百万ドル 2,432億円
合計 5,848百万ドル 6,561億円

South Carolina Electric & Gasは2017年7月31日、V.C. Summer 2、3号機の建設を断念すると発表した。完成を目指せば追加コストが膨らみすぎること、税額控除制度の延長が不明なこと等を勘案して決定した。

South Carolina Electric & Gas(60%出資)は事業継続も考えたが、共同事業者のSantee Cooper (40%出資)が撤退を決めたため、断念した。

既に90億ドルを投じているが、工事は40%以下しか進んでいない。3年以上遅れる見通しとなり、建設費も250億ドル以上と、当初の115億ドルの予想から2倍以上となる。

South Carolina Electric & Gasは、解体などにかかる費用約49億ドル (同社持ち分)を考慮しても現時点で建設中止したほうが、株主や顧客などにとってダメージは少ないと判断したという。

2017/7/31 東芝、米原発の保証債務 6561億円で確定 

東芝は2018年1月18日、元子会社のWestinghouse(WH)関連の株式と債権の売却が決まったと発表した。

2018/1/19 東芝、Westinghouse関連の株式と債権を売却

「2023世界人工知能大会」が7月に上海市で開催され た。上海市政府が国家発展改革委員会、工業・情報化部、科学技術部、国家インターネット情報弁公室、科学院、工程院、科学技術協会などと共催した。

工業・情報化部の徐副部長は開幕式で、中国はAIインフラの整備を加速させ、世界2位の計算力規模を形成しているとし、 東部地域のデータを西部地域で演算処理する国家プロジェクト「東数西算」などの重点プロジェクトが加速度的に進み、第5世代移動通信システム(5G)基地局が280万カ所を超え、2500カ所以上のデジタル工場とスマート工場が完成していると語った。

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2022年2月17日、中国国家発展・改革委員会ハイテク局は、8カ所の国家コンピューティング中枢拠点と10カ所の国家データセンタークラスターの全体的なレイアウト設計を終え、「東数西算」プロジェクトとしての全面的な実施を承認したとの発表を行った。

中国においても年々コンピューティング需要とそれに伴う電力需要が増大しており、それは特に中国沿岸部(東部)に偏在している。これを比較的再生エネルギー電力(風力・太陽光・水力発電等)が豊富な内陸部(西部)で分担することにより、コンピューティング電力の需給バランスを改善するとともに、カーボンニュートラルへの対処・国土の均衡ある発展を両立することを目的としている。

中国では広大な国土に偏在する需給バランスを解消するため、これまでも以下のような国家級プロジェクトが実施されてきた。

「南水北調」:南部(主に長江)の水を北部に移動。
「西電東送」:西部の電力を東部に送電。
「西気東輸」:西部の天然ガスを東部に輸送。

今回:
「東数西算」:東部の
数」(デジタルデータ )を西部で演算


東数西算の概要は以下の通り。

全国8カ所にコンピューティングに求められるネットワーク資源およびエネルギー資源を集約させた中枢拠点を設け、省エネと東西のデータ流通を促進させる。 東部地区のデータ処理業務を西部地区へ移転し、データセンターの配置を最適化することで、両地区の連携を促進する。データの長距離伝送にはタイムラグが伴うため、タイムラグを許容できない高度な演算業務については東部地域に建設する中枢拠点が担い、タイムラグの影響を受けないバックグラウンド処理やデータのバックアップなどの業務を優先して西部の中枢拠点に移す。

8地域・省区のハブ・ノードに10カ所のデータセンターのクラスターを形成する。データ処理の規模を拡大し処理効率を高めるとともに、川上から川下までの関連産業の発展を目指す。

今後は、ハブ・ノード間のデータネットワーク強化や再生可能エネルギーを利用した電力の活用、イノベーションの促進のほか、産業エコシステムを育成し、西部地区ではデータ加工やデータクレンジングなどの労働集約的産業の発展を支援する。

分担 8大ハブ(Computing Hub) 10大集積地 (Data Center)
東部 工業インターネット、金融証券、災害予測・警報、遠隔医療、ビデオ通話、AI等のタイムラグを許容できない業務を処理 京津冀(北京・天津・河北) 張家口
長江デルタ地域 長江デルタ生態緑色一体化発展モデル区
蕪湖
粤港澳大湾区
(Greater Bay Area)
韶関
中部 東部と西部両方の役割を担う。 成渝(成都・重慶) 重慶
天府
西部 バックグラウンド加工、オフライン分析、ストレージバックアップ等の業務 内モンゴル 和林格爾
寧夏 中衛
甘粛 慶陽
貴州 貴安

 



積水化成品工業は7月31日、神戸大学大学院工学研究科の南秀人教授らの研究チームと共同で、ポリイミドをシェルにした中空微粒子の量産が可能な製法を世界で初めて見いだし、「テクポリマー ポリイミド中空微粒子」の商業化技術を開発したと発表した。

今後、5G(第5世代移動通信システム)において、高速伝送回路の伝送損失抑制が見込める高耐熱な低誘電素材として期待される。

ーーー

積水化成品の「テクポリマー」は、独自の重合技術を用いたポリマー微粒子で、液晶ディスプレイの光拡散材や化粧品の添加剤、塗料の艶消し材など、さまざまな用途で使用されている。

同社はアクリル系中空微粒子として「テクポリマー NH」を市場投入している。

ーーー

ポリイミドは、高耐熱性に加えて機械強度・化学安定性・絶縁性に優れ、電気・電子材料や宇宙航空など幅広い分野で応用されている。

粒子内部に空気層を持つポリイミド中空微粒子は、絶縁性に優れ、軽量なため「高速大容量」「低遅延」「多数接続」などを特徴とする5G分野でも高い需要の伸びが期待されている。

しかし、ポリイミドは高耐熱であるがゆえに加工性に乏しく、特に中空粒子の作成報告例はこれまでほとんどなかった。

今回、研究チームはポリイミドをシェルにした中空微粒子の量産化技術を世界で初めて見いだし、絶縁性・耐熱性に優れた球状のポリイミド中空微粒子を開発した。

ポリイミド中空微粒子は絶縁性や軽量性、低密度、低屈折率などの特徴を有し、第5世代移動通信システムにおいて、低誘電素材として有望視されている。また化学的、機械的に安定であり、高耐熱性である特徴から、これまで中空粒子が使用不可能であった分野においても応用可能であると期待され、今後、実用化に向けてさらに開発を急ぐ。

この研究成果は、第72回高分子学会年次大会、IPCG2023(International Polymer Colloids Group Conference、June18-23、2023)にて発表された。

   "化学イミド化法によるポリイミド中空粒子の作製"


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