2014年4月アーカイブ

JXエネルギーと韓国のSK Innovationは2011年8月5日、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立製造に係る合弁会社を設立することで合意したと発表した。

  パラキシレン製造JV 潤滑油ベースオイル製造JV
1.社名 未定→2012/6/8 Ulsan Aromatics 未定
2.所在地 蔚山広域市(SK Energy 蔚山コンプレックス内) 蔚山広域市(SK Energy 蔚山コンプレックス内)
3.設立時期 未定→2012/6/8 未定
4.出資比率 JXエネルギー       50%-1株
SK Global Chemical 50%+1株
JXエネルギー    28%
SK Lubricants 72%
5.事業内容 パラキシレンの製造 潤滑油(ベースオイル)の製造
6.生産能力 約100万トン/年 (世界最大) 約135万kl/年
7.商業生産 2014年予定  
8.総投資額 約1兆ウォン(約800億円) 約3,500億ウォン(約280億円)


2011/8/9  JXエネルギーとSKグループ、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立

Ulsan Aromatics は2012年11月6日、パラキシレン製造工場の建設に着手した。2014年8月の商業運転開始を予定した。
JX日鉱日石は日本国内の製油所より新工場にパラキシレン原料を供給する。

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Ulsan Aromatics は2012年6月に設立され、同年11月に工場の建設に着工したものの、その後に独禁法の改正があり、現在は施行前の猶予期間だが、法施行後はUlsan Aromatics へのSK Global Chemical の出資が違法とされることとなった。

韓国の公正取引法に持株会社規制が追加され、「持株会社の孫会社が子会社を設立する場合、持分100%を保有しなければならない」こととなった。
財閥がタコ足式に事業を拡張し、他の財閥と相互に結びつくのを防止するための規定である。

上図のとおり、SK Global はSKの孫会社であり、この規定によりUlsan Aromatics はSK Global 100%でなければならなくなり、JXとのJVは認められなくなる。
これは潤滑油ベースオイルのJVにも当て嵌まる。

韓国の財閥は、財閥本社の下に分野別持株会社があり、その下が事業会社となっており、実際に事業をおこなう事業会社は財閥本社の孫会社となるため、外国企業とのJVが出来なくなる。このため、本件のほか、既に契約を締結している多くのJVが頓挫することとなる。

韓国の石油化学業界を初めとする産業界では、大規模な投資は外国企業とのJVの形でないとやれないとして、この規定の改正を強く要請した。

日本企業は、2011年の東日本大震災直後には、「韓国投資ラッシュ」と呼べるほど韓国に対する投資を増やした。しかし、2012年をピークにして一変した。
一つはアベノミクスによる円安であるが、この規定も影響している。

このため、産業通商資源部は2013年5月の貿易投資振興会議で外国人投資促進法を改正し、外国企業との合同投資に限り孫会社の義務持分比率を50%に下げることを決め、2013年6月に国会に外促法改正案を提出、これが2014年1月に国会本会議を通過した(3月11日施行)。

当初の案ではUlsan Aromaticsへの出資比率は、JXエネルギーが  50%-1株、SK Global が 50%+1株となっていたが、JXエネルギーとSK Global が交渉の結果、改正法の規定を考慮し、JXエネルギーが 44.1%、SK Global が 55.9%に変更した。

産業通商資源部は4月24日、外国人投資委員会を開き、改正法の適用第1号として、SK Global のUlsan Aromaticsへの出資を承認した。
Ulsan Aromatics は本年6月に生産を開始する予定である。

潤滑油ベースオイル製造のJVも前向きに動くこととなる。

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昭和シェル石油と太陽石油は2012年4月13日、韓国GS Caltexとの間で韓国でのパラキシレン事業に関わる新規プロジェクト基本覚書を締結した。
麗水市のGS Caltexの年産能力135万トンのPXプラントを2014年末に年産235万トンまで増強し、PXの単一工場として世界最大とする。

2012/4/13   昭和シェル・太陽石油・GS Caltex、韓国でのパラキシレン事業で基本覚書締結

実は、このJVも同じ問題を抱えていた。

GSグループは、2005年にLGグループから分離独立した。
GSの下にGS Holdings があり、その子会社がChevronとのJVのGS Caltex (旧称 LG Caltex)  で、孫会社に当たるため、規定では昭和シェル・太陽石油とのJVは設立できないこととなっていた。

今回の法改正で障害が無くなった。

 

韓国政府は、外国人投資促進法案の可決で、2兆3000億ウォン(約2,300億円)の直接投資誘発、5兆8,000億ウォンの売り上げ増加、1万4000人分の雇用創出 などの効果があると分析している。
 


 


 

京都大学・物質-細胞統合システム拠点(中辻憲夫教授)と日産化学は4月22日、ヒト多能性幹細胞(ES/iPS 細胞)の新たな三次元培養法の開発に成功したと発表した。

http://www.nissanchem.co.jp/news_relese/news/n2014_04_25.pdf

この成果は4月25日付けの米科学誌 Stem Cell Reports(電子版)に掲載された。
   A 3D Sphere Culture System Containing Functional Polymers for Large-Scale Human Pluripotent Stem Cell Production
 

再生医療や創薬研究への実用化のためには、高品質の iPS 細胞を安定的に大量供給する必要があるが、今までの方法では困難であった。

 ・接着培養法(培養皿):大量生産には不向き
 ・浮遊培養法:細胞塊の大きさのコントロールや撹拌による細胞ダメージなどの問題
 ・スピナーフラスコ等を用いて撹拌する三次元浮遊培養法:力学的ストレスによる細胞ダメージがあるため実用化には適さない。

今回、最適な三次元培養による大量生産を可能にするために、次の方法による新たなスフェア(球状の細胞塊)培養法を確立した。

  細胞解離酵素を使わない機械的処理による継代法の確立
    メッシュフィルターを用いた機械的処理による細胞株の継代法を確立

 ②高分子ポリマー・メチルセルロース(MC)の添加によって自発的なスフェア融合の大幅な減少に成功
       メチルセルロースを培養液中に添加することで、細胞塊の自発的融合を大幅に減少し、
        細胞塊の大きさを均一にすることに成功

 ③高分子ポリマー・Gellan Gum(GG)の添加によって撹拌が不要な三次元的浮遊培養法を開発
        Gellan Gum (水溶性多糖類)の添加で、撹拌することなく浮遊させる

 

     朝日新聞の図を一部手直し

 

この方法でニプロが開発した200mL 容量のガス透過性培養バッグを用いた培養では、10の8乗個の細胞数を獲得でき、多能性幹細胞を効率的に増殖生産できるシステムの開発が可能であることを実証した。

これにより、従来の10分の1のコストで治療に使う量のiPS細胞を確保できるとされる。

今後の実用化研究では数リットル規模の培養タンクなどを富士フイルムが中心になって開発する。

 



 

信越化学の2014年3月期決算は、塩ビ・化成品部門が好調で、増収増益となった。
塩ビは日本は厳しい状況が続くが、米国のシンテックは過去最高益を計上、欧州も堅調であった。

但し、過去最高益の2008年3月期(半導体シリコンの利益が最高であった)からは大きく下回っている。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益

 配当

中間 期末
2008/3 13,764 2,871 3,000 1,836 40 50
2013/3 10,254 1,570 1,702 1,057 50 50
2014/3 11,658 1,738 1,806 1,136 50 50
前年比 1,404 168 104 79 - -
(2008/3比) (-2,105) (-1,133) (-1,194) (-700)    
2015/3予

未定


営業損益推移 (単位:億円)

  12/3 13/3 14/3 増減
塩ビ・化成品 237 456 602 146
シリコーン 337 286 318 32
機能性化学品 147 145 128 -17
半導体シリコン 343 219 245 25
電子・機能材料 382 409 410 1
その他 50 56 37 -19
全社 1 -0 -0 0
合計 1,496 1,570 1,738 168

2010年3月期からセグメントが変更となった。
それ以前は、
  塩ビ・化成品は現在は「その他」にある信越ポリマーを含み、化成品は含まれていない。
  シリコーンは信越ポリマーを含んでいる。
  半導体シリコンは希土類磁石、電子産業用有機材料、フォトレジスト製品等を含んでいる。

このため2009年までと2010年以降の各セグメント実績は直接対比はできないが、傾向は表す。
  塩ビは一旦減少したが、その後回復、当期は過去を上回った。
  シリコーンの損益は安定
  半導体シリコンは2008年3月期を最高に、2010年3月期に激減、その後も余り増加していない。


Shintechは米国内の住宅需要の回復に加え、中南米などへの輸出も伸び、過去最高益となった。

塩ビでは他の米国企業も業績が好調で、日本企業との違いが目立つ。

Georgia Gulf は2013年1月にPPG Industriesのcommodity chemical divisionと合併し、Axiall Corp.となった。


TPPを巡る日米協議は予想通り難航し、4月25日、決着を見ずに交渉を終えた。

特に問題となったのが、豚肉と自動車である。

豚肉については、日本は差額関税制度を設けており、課税方式は3段階になっているが、米国はすべての段階で大幅引き下げを要求しており、受け入れると壊滅的な打撃を受けるとされる。

自動車については、米国は日本の安全基準に適合しない米国車に一定台数の枠内で輸入を認めるよう要求、日本側は「安全基準を緩めることは国の主権にかかわる」と強く反発した。

ーーー

豚肉の差額関税制度は1971年に貿易自由化が実施された際、外国から国内価格より安いものが輸入されて供給過剰になったり、逆に供給不足によって価格が高騰したりするのを防止するために導入された制度。

主としてロース・ヒレなど高級豚肉の「部分肉」と、主としてハム、ソーセージ、餃子・チャーシューなどの材料の「枝肉」に区分される。

部分肉の場合、輸入価格が
64.53円/kg以下の場合は482円/kgの重量税
64.53円/kg~524円/kgの場合は、国産品の平均的な流通価格を参考に決めた「基準輸入価格」との差額を関税として徴収
524円/kg以上の場合は4.3%の従価税となる。

なお、ハム、ベーコン等の豚肉加工品についても差額関税制度が導入されている。

農林水産省は「豚肉の差額関税制度は、
輸入品の価格が低いときには、基準輸入価格に満たない部分を関税として徴収し 、国内養豚農家を保護する一方、
価格が高いときには、低率な従価税を適用することにより 、関税負担を軽減し、消費者の利益を図る
という仕組みになっており、需要者と国内生産者のバランスを図ることとしているとする。

しかし、実際には一般家庭向けの低価格の豚肉(バラやこま切れなど)には高率関税、イベリコ豚など高級豚肉や高価格の豚肉(ヒレ・ロースなど)には低率関税となっており、結果的には金持ち優遇制度だとも言われている。

ーーー

先に大筋合意をみた日豪EPA交渉では、分岐点以上の場合の従価税率を割当数量に限り引き下げることとしている。

豚肉  従価税4.3%→2.2%
加工品     8.5%→4.3%

割当数量 合計で初年度5,600トン、5年間かけて14,000トンへ




中国の上海海事法院(裁判所)は4月19日夜、上海沖合の浙江省嵊泗列島に停泊していた商船三井の鉄鉱石運搬船「Baosteel Emotion」を差し押さえた。

1930年代の船の賃借を巡る裁判で商船三井側が敗訴し、和解もまとまらないまま、商船三井が賠償金を支払わないためとしており、商船三井が損害賠償の支払いに応じなければ、「法に従い船舶を処理する」として競売などの措置に出る可能性を示した。


鉄鉱石運搬船は2011年建造で積載量22万トン、豪州やブラジルから中国へ鉄鉱石を運ぶもので、今回は豪州から宝鋼集団上海製鉄所に鉄鉱石を運んでいた。日本人乗員はいない。

新造時の価格は70億~80億円とみられ、「中古で売却しても50億円近いのでは」とされる。

経緯は以下の通り。

商船三井の前身の一社である大同海運は、1936年6月及び10月に中威輪船公司から順豊号及び新太平号を定期傭船する契約を締結した。

1937年7月 盧溝橋事件で日中が全面戦争に突入

傭船期間未了のまま、1937年8月に日本政府が徴用、両船とも徴用中に沈没或いは消息不明になった。

1964年、中威輪船公司代表者の子が日本政府を相手として東京簡易裁判所に調停を申し立てたが、1967年不調に終わった。
1970年には原告は東京地方裁判所に損害賠償請求を提訴したが、東京地裁は1974年に消滅時効の成立を理由として棄却した。

1988年12月(中国民法の時効制度での損害賠償の提訴の期限)に創業者の孫が、大同海運の後継会社のナビックスラインを被告として、上海海事法院に定期傭船契約上の債務不履行等による損害賠償請求を提起した。

原告は、大同海運が契約満了後も沈没するまで船舶を使用し続けたとして、未払いの賃貸料や船舶の補償など約20億元(現在のレートで約330億円)の賠償を請求 した。
商船三井は「船は軍に徴用されたもので、賠償責任はない」と主張した。

2007年12月7日上海海事法院にて、 未払いのリース料金、営業損失の補填、船舶の受けた損害の補償、発生した利息などとして商船三井に対して29億1600万円の損害賠償を命ずる一審判決が出された。

商船三井は、同判決を不服として上海市高級人民法院(第二審)に控訴した。

2010年8月6日、上海市高級人民法院より第一審判決を支持する第二審判決が出された。
商船三井は、最高人民法院に本件の再審申立てを行ったが、2011年1月17日に、同申立てを却下する旨の決定を受けた。

上海海事法院は2011年12月28日、法律に基づいて商船三井に「執行通知書」を送付。この後、当事者の間で和解に向けた話し合いが何度か行われたが、和解には至らなかった。

商船三井によると、上海海事法院と連絡を取りつつ、和解解決を実現すべく原告側に示談交渉を働きかけていたが、今般、突然差し押さえの執行を受けたという。


 

菅官房長官は4月21日の記者会見で、本件について、「極めて遺憾だ。1972年の日中共同声明に示された国交正常化の精神を根底から揺るがしかねず、中国でビジネス展開する日本企業に萎縮効果を生むことになりかねない」と不快感を示した。また、日本政府は中国側に遺憾の意を伝えた。

日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明
五 中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。

一方、商船三井がこれまで示談交渉を働きかけていた経緯もあり、外務省幹部は「金銭による解決も選択肢の一つ」と指摘する。「今回の件は一連の戦後補償問題とは切り離してとらえる向きもある。同様の差し押さえが多発するとは限らない」と語る。

中国外務省の秦剛報道局長は21日の定例会見で「この案件は戦争賠償の問題とは関係ない」と強調。戦争賠償の請求放棄で合意した1972年の日中共同声明に触れ、 以下のように述べた。

「中日共同声明」の諸原則を堅持し、守る中国政府の立場は変わっていない。中国は引き続き日本を含む外資系企業の中国における合法的権益を法に従って守る。一部の日本のメディアや関係者の報道、説明、発言は事実と合致していない。

2010年の上海市高級人民法院の二審判決は、戦争賠償とは区別し、商業上の契約違反事件として判決を下している。

商船三井側が賃料を支払わず船を返さなかったのは船が日本軍に徴用されたためで「不可抗力」だったと主張したのに対し、裁判所は、「大同海運が『政府などに拘留される恐れのある航行は行わない』との契約条項に違反していた」と指摘 し、軍による徴用の前に大同海運側の契約義務の不履行があったとし、「戦争賠償の問題ではない」とする原告の主張を支持した。

商船三井も「あくまでも民間同士の案件」という意識があったとされ、示談交渉をすすめてきており、事前に政府を相談していた様子はない。

ーーー

商船三井は4月23日、差し押さえの状態が続けば業務への支障が大きいと判断、裁判所が決定した29億円余りに金利を加えた約40億円を供託金として支払った。

上海海事法院は4月24日、「判決が定めた義務を完全に果たした」として貨物船の差し押さえ措置を解除する決定を行い、同船は同日午後3時前に出航した。

ーーー

日本経済新聞(4/25)によると、中国国営の新華社は、中国政府が日中共同声明で放棄した戦争賠償の請求について「民間・個人の請求権は含まない」と明言する論評記事を配信した。これまで個人請求権の問題に曖昧な立場を示してきた政府の方針転換を公に示したもの。


 

Novartisは4月22日、大規模な事業再編を発表した。

GlaxoSmithKline (GSK) から抗がん剤製品群を買収するとともに、大衆薬事業はGSKの事業と統合し、GSK主体のJVとする。更にインフルエンザ以外のワクチン事業をGSKに売却する。
これとは別にインフルエンザワクチンの売却を進めており、動物薬事業はEli Lillyに売却する。

これにより、Novartisは事業を医薬品、Eye care製品、Generics の3つに絞り込む。

1.抗がん剤製品

GSKの抗がん剤製品を買収し、この分野でのNovartisの主導的地位を更に強化する。
対価は145億ドルのほか、今後の成果に応じ最高15億ドルのMilestoneが付く。

GSKの現在開発中および今後開発する抗がん剤について商業化の権利(opt-in rights) を持つ。

2.大衆薬事業

Novartisの大衆薬(OTC)事業とGSKのConsumer Healthcareを統合し、JVを設立する。
JVは売上高が約100億ドルで、中心となる4分野、健康、口腔衛生、栄養、皮膚の健康において主導的地位を占める。
先進国のみでなく、ブラジル、中国、メキシコ、ロシア等の成長著しい途上国にも拠点を持つ。


NovartisはこのJVに36.5%を出資し、市場株価を基準にする事前に決められた方式に基づく株価で持株を売却する権利を持つ。

3.ワクチン

インフルエンザを除くワクチン事業をGSKに71億ドル(52.5億ドル+18億ドルのMilestone)+ ロイヤリティで売却する。

インフルエンザワクチンについては別途、売却を進めている。

4.動物薬

別件で、Eli Lillyに54億ドルで売却する。

ーーー

Novartisは1997年にSandoz とCiba Geigyが統合して設立された。

Sandozの化学品は1995年にClariantとして、Ciba Geigyの化学品は1997年にCiba Specialtyとして、それぞれ独立している。
種子事業は2000年にAstraZenecaの農薬部門から独立したSyngentaに売却した。

このほか、2007年に医療用栄養食品のMedical Nutrition とベビーフードのGerberをNestleに売却している。
逆に、NestleからEye care 製品(医薬品、手術製品、コンタクトレンズ、OTC製品)のAlconを買収した。(2008年に25%、2010年に52%で、合計77%)

 

2013年の同社の部門別業績は下記の通り。(百万米ドル)

  Sales Operating Income



Pharmaceuticals 32,214 9,376
Alcon (Eye care) 10,496 1,232
Sandoz (Generics) 9,159 1,028

Vaccines and Diagnostics 1,987 -165
Consumer Health 4,064 178
Others - -739
Total 57,920 10,910

   


 

資生堂は4月22日、毛髪再生医療の事業化に向け、研究開発の中核となる「資生堂細胞加工培養センター」を5月1日に神戸・ポートアイランドの神戸医療産業都市に開設すると発表した。


神戸医療産業都市は、国が産業育成地域に指定した関西イノベーション国際戦略特区の拠点のひとつで、生命・医療科学に関する日本最大級の集積地区。

資生堂の細胞加工培養センターは、神戸バイオメディカル創造センター(BMA)のCPC棟に入る。

CPC棟は、GMP基準に基づいた医薬品等を研究開発・生産するために必要な、品質と人体への安全性を確保するための指針に則った施設で、ヒト細胞等を安全に処理するための無菌培養室や細胞の品質保証をするための検査室が設置可能な独立区画型の賃貸ラボ施設。

資生堂は毛髪再生医療の早期実現に向け、カナダのバンクーバーのバイオベンチャーのRepliCel Life Sciences Inc. の毛髪再生医療技術(RCH-01) について、2013年7月に日本・中国・韓国を含むアジアを対象とした技術提携契約を締結した。
両社は技術改良で協力し、商業化に向け、それぞれのテリトリーでのヒトでの臨床試験を行う。

資生堂はRepliCel に対し、技術料として4億円を支払う。

RepliCel は自家細胞・再生医療技術を研究開発しており、研究中の他の技術は下記の通り。

 RCT-01 腱の再生
 RCI-02 
Dermatology Injector Device
 RCS-01 
肌の若返り術

資生堂が導入したRCH-01技術は、RepliCel が10年以上、基礎研究や臨床研究を行い、安全性を担保した毛髪再生・特許技術で、毛髪の成長に重要な役割を果たすとされる毛球部毛根鞘細胞を患者の頭皮から採取し、培養した後、脱毛部位に注入し、退縮した毛包を再活性化させ、脱毛部位の健康な毛髪の成長を促すもの。

まず、患者の後頭部(有毛部)から約20個の毛包を含む頭皮(直径5mm前後の円形)を切除し、そこから底部毛根鞘細胞だけを取り出し、RepliCelが開発した細胞培養プロセスで培養した後、患者の脱毛部位に注入し、脱毛部位における健康な頭髪の成長を促進させる。

同社のホームページのRCH-01 - Hair Regeneration の下部のLearn About the Procedure をクリックするとYouTube で手順が見られる。

植毛のように広範な頭皮の切除は不要なため、外科施術における身体的負担が小さいほか、患者自身の細胞の移植であるため、リアクション(移植後の拒絶反応など)のリスクが小さい、育毛料と比べ、一度の施術で効果の持続が期待できる、男女問わず応用が期待できるといった特長があるとされる。

資生堂では、今後、RepliCelの毛髪再生医療技術と自社の技術を組み合わせ、専門医とも連携することで、脱毛症や薄毛に悩む人に美容と医療を融合した安全で有効な毛髪再生医療の事業化を5年をめどに目指していく計画としている。

 

 

 

日東電工は2008年から札幌医科大学の新津洋司郎特任教授と共同で、肝硬変をはじめとする臓器線維症治療薬の開発を進めてきたが、2013年6月から米国で開始した治験第相試験で、このたび健常人に対する投与を完了した。引き続き第Ⅰ/Ⅱ相試験で患者への安全性と薬効の検証を行う。

相試験後半以降は製薬企業との連携も視野に入れ、最終的には2018年度以降の実用化を目指す。

医薬品の承認を得るための臨床試験(治験)では先ず第相試験で、自由意思に基づき志願した健常成人を対象とし、被験薬を少量から段階的に増量し、被験薬の薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)や安全性(有害事象、副作用)について検討する。

その結果を受け、第相試験では比較的軽度な少数例の患者を対象に、有効性・安全性・薬物動態などの検討を行う。
その後、第
III相試験で、実際にその化合物を使用するであろう患者を対象に有効性の検証や安全性の検討を主な目的として、より大きな規模に行う。

肝硬変や脳梗塞などに代表される臓器線維症は、ウィルス感染などで臓器中のある細胞が活性化 してコラーゲンを過剰につくりだし、線維化して硬くなってしまうもので、これまで根本的な治療法がほとんどなかった 。(活性化の原因となる遺伝子に作用する核酸医薬品は見つかっていたが、体内で分解されやすいため、実用化に至っていなかった。)

今回の治療は、線維化の原因を選択的に抑えるsiRNA(核酸医薬品の一つ)を薬物として用い、ビタミンA誘導体を標的化剤として患部にのみ選択的に送達するもの(DDS:Drug Delivery System)で、線維症の根本的な治療に繋がる世界初の薬であり、肝硬変のみならず各種の臓器線維症に展開することが可能とされる。

この治療方法に関する基本特許については、日本、中国、豪州、米国、カナダに次いで、欧州と韓国でも取得し、更に治療薬の構成(siRNA、DDS)に関する特許も成立している。

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核酸医薬は、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)の働きを利用して、病気を引き起こす遺伝子やタンパク質に作用するタイプの医薬品で、低分子医薬(化学合成により作られる一般的な医薬品)、抗体医薬に続く、第三世代の医薬品として、近年注目されている。

核酸医薬品は遺伝子にじかに働きかけるため、従来型の医薬品と比べて治療効果が高く、副作用が少ないとされる。

ただし、病気を起こす遺伝子まで到達させるため、体内での安定性やDrug Delivery System(DDS)などの課題を解決する必要がある。今回、日東電工はこれを解決した。

核酸医薬品にはいろいろの種類があり、世界の多くの企業が開発に当たっている。(主としてsiRNAを開発している)
 
しかし、現状では市販されているのは3品目しかない。

核酸医薬品の原料は、日東電工の米子会社Nitto Denko Avecia と米 Agilent Technologiesが合計8割程度の世界シェアを持つ。
2013年11月に住友化学がこれに加わった。

2013/11/28   住友化学、核酸医薬原薬の受託製造開始 

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日東電工は2008年5月から札幌医科大学に下記の研究を行う分子標的探索講座(新津洋司郎 特任教授)を寄付した。

  1. 臓器線維症(肝硬変、慢性膵炎、腎硬化症、骨髄線維症、肺線維症など)に対するsiRNAHSP47を用いた治療法の開発
  2. 1.のテーマを発展させ、組織にもともと存在する固有の幹細胞を活性化する再生医療を確立
  3. がん細胞特にK-ras変異、B-raf変異がん細胞に基づく、新規分子標的薬の開発(合成致死作用を示す薬剤の開発)
  4. 細胞の運動シグナルを解明する事により、がんの転移や炎症細胞の浸潤を抑制する新薬の開発
     

日東電工は新津特任教授と共同で、2008年より肝硬変をはじめとする臓器線維症治療薬の開発に向けて取り組んだ。

その結果、新津特任教授のグループが開発した線維症の治療戦略に、日東電工のキャリア技術を組み合わせ、分子標的DDS(Drug Delivery System)を用いた臓器線維症治療に関する基本特許を、日本・中国・豪州に次いで2012年に米国でも取得した。

この特許は抗線維症薬物を含むキャリア材の表面に、線維症の原因細胞への標的化剤を結合させたDDSとそれを用いた治療に関するものであり、その際、様々な薬物やキャリア材を使用することが可能である。
分子標的DDSは、病気の原因となる細胞にのみ直接薬物を届けるシステムで、従来治療が困難な疾患に対し、副作用が少なく高い治療効果を期待できる。

日東電工では、薬効と安全性を両立させた薬物(線維化の原因を選択的に抑えるsiRNA)、新規キャリア材、標的化剤(ビタミンA誘導体)が完成したため、まずは、肝硬変を対象に実用化を目指し、2013年6月から米国で臨床試験を開始した。
今後は、臓器線維症をはじめとする難治性疾患の治療薬に取り組む。
 

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日東電工は2011年2月に、今後成長が期待される核酸医薬の分野において事業基盤の強化を目的に、米国マサチューセッツ州にある核酸医薬の製造受託分野でトップのAvecia Biotechnologyを買収した。(→Nitto Denko Avecia Inc.)

Avecia Biotechnologyは、核酸医薬の製造受託分野でトップシェアを誇り、前臨床段階から商業的製造までのステージにおいて、 世界最大のcGMP製造能力をベースに、分析方法開発、プロセスバリデーション、安定性試験、品質管理及び薬事面サポートと幅広いサービスを提供している。

日東電工は2012年11月、Nitto Denko Aveciaを通して、 核酸医薬の分野において更なる事業拡大を目的に、核酸医薬の受託製造において主要な製薬会社やバイオテック会社へのサービス提供の経験を有し、またRI標識能力及び有機合成能力を有するGirindus America Incと資産買収契約を締結した。




米財務省は4月15日、半期に一度の主要貿易相手国の為替政策に関する報告書( Semi-Annual Report to Congress on International Economic and Exchange Rate Policies)を公表した。

中国を為替操作国と認定することは見送ったが、人民元はなお「著しく過小評価」されているとし、今後の相場動向を注視する姿勢を示した。

報告概要は以下の通り:

人民元は2013年には ドルに対し2.9%上昇したが、円や開発途上国通貨の下落で、貿易の加重平均ベースでは名目で7.2%、実質で7.9%上昇した。
2013年では毎日、基準値の上限の1%近くで推移し、更に上昇すると期待された。

しかし、2014年に入り、方向が逆転し、現在まで2.68%下落している。交換レートの調整プロセスが不十分で、元は均衡点に達するまでに更に下落する兆候が多い。

中国は経常収支の黒字を続け、外国からの直接投資の誘致を続けている。人民元は今も著しく過小評価されている。

中国政府は3月17日に変動幅を上下 1%から上下 2%に拡大した。直前に中央銀行は大幅介入して元を下落させた。これまでにない大幅な下落である。

変動幅の拡大は介入を減らし、交換レートを決めるのに際し市場の役割を広める。中国は今後、介入を止め、市場に任せるべきだ。

最近の人民元の推移が、もし、中国が人民元の上昇に再び抵抗したり、あるいは介入の度合いを弱めて市場主導の相場形成を目指すとした中国政府の方針の後退を示唆している場合は、深刻な懸念となる。

今後もこの問題を注意深く監視する。

他のG-20諸国のように、中国は市場への介入を公開し、金融政策のフレームワークの信頼性を高め、金融透明性を高めるべきだ。

人民元の推移は下記の通り。

本年1月14日には、2010年6月18日の弾力化前に比べ、終値で12.99%、一時的には13.01%高の最高値を更新したが、その直後、下落に転じた。

人民銀行は1月14日に基準値を過去最高値の6.0930人民元に設定した後、低目の設定をしていたが、2月中旬以降、 基準値を急に下げた。

人民銀行が基準値を元安方向に設定して、下落を誘導しており、大手国有銀行も人民銀行の要請で元を売っているとされた。

この結果、旧正月の連休直前に下落に転じ、2月20日頃からは急落、2月末には終値は基準値を下回るに至った。

2014/3/1   人民元が急落 

その後の推移は下記の通り。


 

中国は3月17日に変動幅をこれまでの±1%から2%に変更した。

その直後の終値は6.2275人民元/$と大幅下落し、その後も低迷している。4月21日には6.2274人民元/$となった。
人民銀行もは基準値を下げ続け、4月21日には6.1591人民元
/$と昨年9月11日以来の低い水準に設定した。

中国への資本流入が再び増加していることが先週末の統計で示唆されたことを受け、人民銀行が元相場を押し下げる市場介入を実施したとの観測が広がった。



中国国有資源大手の中国五砿集団(China Minmetals Corp.) は4月14日、同社を中心とするコンソーシアムがスイスの資源商社Glencore Xstrata plc からペルーのLas Bambas 銅鉱山を58億5000万ドルで買収すると発表した。2014年第3四半期末までに売買手続きが完了する予定。

国営新華社によると、中国企業による金属資源分野の買収では過去最大となる。

コンソーシアムには五砿集団の子会社のMMG(五礦資源有限公司)が62.5%、1999年に国家発展改革委員会(NDRC)が設立したGuoxin Group(國信招標集團)のGUOXIN International Investment Corporation (國信國際投資) が22.5%、中国の国有複合企業のCITIC(中信集団)のCITIC Metal Co. (中信金属公司) が15.0%出資する。

Las Bambas 銅鉱山は2015年から年間40万トンの生産が予定され、これは世界最大の銅消費国である中国の2013年の輸入の12.5%に相当する。

2017年には世界のトップ3鉱山の一つになるとされ、埋蔵量は0.73%純度で9億5千万トンとされる。

鉱山の開発は昨年末時点で約56%進捗しており、全体の開発費59億ドルのうち、あと24億ドル程度が残っている。


スイスの商品取引大手Glencore は2012年2月7日、同国の資源大手Xstrataを買収し、対等合併すると発表した。
その後、Xstrataの株主のカタールの政府系ファンド Qatar Holdingなどの合併条件見直し要請を受け入れた結果、2012年11月にそれぞれの株主総会で合併案が承認され、2013年5月にGlencore Xstrata Plc となった。

2012/11/26 Glencore とXstrataの合併

EUはこの合併を欧州の資産を売却して事業を縮小することを条件に2012年11月に承認、南アも2013年1月に条件付きで承認したが、中国商務部は合併会社が世界最大の銅の生産者になるため、中国企業が値上げを呑まされるのを恐れ、審査が長引いた。

このため、Glencore側からXstrataのペルーのLas Bambas 銅鉱山を売却する案を提示し、2013年4月22日、中国商務部は合併を承認した。

承認に当たり、この鉱山の売却の手続きが細かく決められている。
このほか、
Glencoreは中国のメタル不足の懸念を緩和するため、2020年12月31日まで中国企業に対し最低量の銅、亜鉛、鉛を供給する。

2013/4/26    中国、丸紅の米穀物大手Gavilon買収を条件付きで承認、GlencoreとXstrataの合併も

今回の買収はこれに基づくもの。

対価の58億5000万ドルは売買手続き完了時に現金で払われる。このほかに、2014年1月1日から売買手続き完了時までの間の投資額と費用(3月末時点で約4億ドル)もコンソーシアムが負担する。

 


 

シリコーンと石英事業のMomentive Performance Materialsは資金繰りに困り、債権者とリストラクチャリングの協議を行っていたが、60百万ドルの金利支払日の前日の4月13日にChapter 11を申請した。

今後、これまで協議してきた案に沿って、30億ドル以上の債務をカットする予定としている。
当面、J.P. Morgan Securities から570百万ドルのDIP(Debtor In Possession:占有継続債務者)ファイナンスを受け、事業を継続する。


同社は2006年にApollo Management, L.P.
がGEのシリコーン事業を38億ドルで買収して設立した会社であるが、多額の負債を抱えての出発となり、その後の金融危機と景気後退で痛んだ。

GEは2006年9月、シリコーン事業のGE Advanced Materials を38億ドルで売却すると発表した。
GE1971年に東芝と設立したGE Toshiba Silicones1998年にBayerと設立したGE Bayer Silicones 2つのJVを持つが、両社からJV持分を買い取ってGE 100%とした上で、本体とともにApollo に売却する。なお、GEApollo の新会社に10%出資する。

その後、この新会社はMomentive Performance Materialsと命名された。

2006/9/21 GE、シリコーン事業を売却

なお、同グループの熱硬化性樹脂メーカーのMomentive Specialty Chemicals(旧称 Hexion Specialty Chemicals) は資本金・借入金は別構造となっており、今回のChapter 11の対象外である。

Momentive Performance Materials Hexion Specialty Chemicalsは2010年101日合併した。

Hexion2005年設立で、Apollo Management100%子会社であったBorden Chemical(接着剤等)、Resolution Performance Products(エポキシ、バーサチック酸等)、Resolution Specialty Materials(塗料、接着剤等)と、Bordenが買収したBakelite AG(フェノール、エポキシ樹脂)を統合した。

2010/9/16  Apollo Management傘下のMomentive Performance Materials とHexionが合併

現在の体制は下記の通り。

 

 

 

 

世界貿易機関(WTO)が4月14日発表した2013年の貿易統計によると、中国のモノの取引に限った貿易総額は4兆1600億ドルとなり、初めて米国(3兆9100億ドル)を抜いて世界一になった。

中国税関総署が2014年1月10日に発表した2013年の中国の貿易統計によると、貿易総額は前年比7.6%増の4兆1603億ドルと初めて4兆ドルを突破した。
2013年の輸出入はいずれも過去最高を記録し、貿易総額で米国を抜いて世界貿易で首位に立ったと見られたが、これが確認された。

2014/1/13 中国の貿易統計

WTOの発表では、中国の輸出は2兆2100億ドル、輸入は1兆9500億ドルで、合計4兆1600億ドル。
これに対し、米国は輸出が1兆5790億ドル、輸入が2兆3310億ドルで、合計3兆9100億ドル。

2012年は若干の差で米国が上回ったが、2013年には中国が輸出、輸入ともに前年を7-8%上回ったのに対し、米国はともに前年並みであったため、逆転した。

3位がドイツで、日本は4位となった。日本は輸出も輸入も前年を下回った。


詳細は下記の通り。(単位:10億ドル)

  2012年 2013年 前年比伸び率 % 2013年シェア %
輸出額 輸入額 合計 輸出額 輸入額 合計 輸出 輸入 合計 輸出 輸入 合計
2,049 1,818 3,867 2,210 1,950 4,160 7.9 7.3 7.6 11.8 10.3 11.0
USA 1,547 2,335 3,882 1,579 2,331 3,910 2.1 -0.2 0.7 8.4 12.4 10.4
ドイ 1,407 1,167 2,574 1,453 1,187 2,640 3.3 1.7 2.6 7.7 6.3 7.0
799 886 1,685 715 833 1,548 -10.5 -6.0 -8.1 3.8 4.4 4.1
フラン 569 674 1,243 580 681 1,261 1.9 1.0 1.4 3.1 3.6 3.3
オランダ 656 591 1,247 664 590 1,254 1.2 -0.2 0.6 3.5 3.1 3.3
468 680 1,148 541 654 1,195 15.6 -3.8 4.1 2.9 3.5 3.2
548 520 1,068 560 516 1,076 2.2 -0.8 0.7 3.0 2.7 2.9
その他 10,282 9,894 20,176 10,482 10,132 20,614 1.9 2.4 2.2 55.8 53.7 54.7
18,325 18,565 36,890 18,784 18,874 37,658 2.5 1.7 2.1 100.0 100.0 100.0

 

WTOは同時に、2014年、2015年の世界貿易の伸び率の予想を発表した。

輸出・輸入の合計で、2013年は前年比2.1%の伸びであったが、2014年は4.7%の伸び、2015年は5.3%の伸びと予想した。

輸出、輸入とも途上国の伸びが大きい。地域別ではアジアの伸びが大きい。

  輸出   輸入
2013年 2014年予 2015年予 2013年 2014年予 2015年予
開発国 1.5 3.6 4.3 -0.2 3.4 3.9
途上国&CIS 3.3 6.4 6.8 4.4 6.3 7.1
             
北米 2.8 4.6 4.5 1.2 3.9 5.1
中南米 0.7 4.4 5.5 2.5 4.1 5.2
欧州 1.5 3.3 4.3 -0.5 3.2 3.4
アジア 4.6 6.9 7.2 4.5 6.4 7.0
その他 0.3 3.1 4.2 2.9 5.8 6.6


 

 

 

 

 

信越化学は4月15日、米国子会社のShintech がPVCの主原料の一つであるエチレンを生産する工場の建設許可(Air Permit application)をルイジアナ州の環境庁(Louisiana Department of Environmental Quality)に申請したと発表した。

この申請におけるエチレンの生産能力は年産50万トンで、工場の立地はShintechが既に所有している工業用地が有力候補となる。
申請から許可までは1年ほどかかるため、並行して、工場建設に係る投資額及び採算性や、建設時期などの検討を進めた上で、最終決定を行う 。

日本の化学会社が米国でエチレン生産に踏み込むのは初めて。
シェールガス由来の原料から大幅にコストを低減してエチレンを生産する体制を整え、PVCの競争力を高める。

  LyondellBasell 資料

立地は未定だが、ルイジアナ州環境庁への申請書では、ルイジアナ州Plaquemineの近くのShintechのコンプレックスになるだろうとしている。

別の発表では、投資の最終決定は数ヶ月先とし、所有している4箇所を立地として評価していると述べている。
但し、現在のところ、テキサス州でのAir Permit application は出されていない。

 ・ルイジアナ州 AddisのPVC 58万トンプラント
 ・ルイジアナ州 Plaquemine の電解・VCM・PVCのコンプレックス

   ・上記の近く

 ・テキサス州 Alvin (ShintechのFreeportのPVCプラントから数マイル北)

 

 


信越化学は2013年6月、Shintech がルイジアナ州(Addis or Plaquemine) での電解、塩ビモノマーおよび塩ビ樹脂の生産能力の増強を決定したと発表した。

増強する生産能力はVCM 約30万トン/年、カ性ソーダ 約20万トン/年、PVC 約30万トン/年で、完成は2015年頃を目指す。投資額は5億ドル。

増設後のシンテックの塩ビ樹脂の生産能力は、ルイジアナ州の工場の既存分とテキサス州の工場を併せて295万トン/年となる。

                        単位:万トン
立地 PVC VCM カ性ソーダ
Texas州 Freeport  145   -   -
Louisiana州 Addis   58   -   -
Plaquemine   60   160  106
今回増設 32 30 20
合計  295  190   126


2013/6/21 Shintech、生産能力拡大を決定 


エチレンが完成すると、原料からPVCまでの一貫体制が完成、一層のコストダウンが期待出来る。

米国でのエチレンはシェールガスからのエタンを利用することで低コストが期待できる。
工業塩は工場近辺の土地の地下の岩塩層から採取でき、電解の電力料も安い。

ーーー

Shintechは当初、Dow Chemical と提携し、FreeportでPVCの生産を開始した。

ダウは電解~VCM事業、シンテックはPVC事業に専従して共存共栄体制をとり、VCM価格の決定にはPVC価格を反映させた。PVC価格が暴落した場合は値下がり損の半分をVCM価格引下げでダウが負担、逆にPVC価格が上がれば値上がり分の半分がVCM価格に反映されるというものである。

1996年にシンテックはルイジアナ州コンベントに工場用地を取得、電解、VCM(50万トン)、PVC(50万トン)の一貫生産体制をつくる構想であったが、グリーンピースの反対に会い1998年に立地をAddisに変更し、一貫生産を棚上げしてPVC 58万トンのみの生産とした。VCMは 隣接のDowから購入する。

2004年12月、信越化学は新計画を発表した。
総額10億ドルをかけて塩素 45万トン、VCM 75万トン、PVC 60万トンの一貫生産を行うという
もので、第一段階として、塩素 30万トン、VCM 50万トン、PVC 30万トンを2006年末に完成させ、残りを2007年末に完成させる。
立地はPlaquemineの
  Ashland Chemical の工場敷地である。

2006/5/16 世界一の塩ビ会社 信越化学

ShintechのVCM進出とDow Chemical の汎用品見直しに伴い、紆余曲折を経て、両社の共存共栄体制はつぶれ、Dow は塩素事業からの撤退を決めた。

2013/12/5 Dow Chemical、塩素事業からの撤退を発表


 

安倍晋三首相と豪州のアボット首相は4月7日、経済連携協定(EPA)で大筋合意した。来年初めにも発効させることを目指す。

豪州は日本にとって第4位の貿易相手国(中国、米国、韓国に次ぐ)で、これまで日本が締結した二国間EPAのパートナーとして最大の貿易相手国である。
また、農業大国と結ぶ初の本格的なEPAである。

往復貿易額の約95%を協定発効後10年間で関税撤廃するもので、日本は10年以内に88%超の貿易品目で輸入関税を撤廃する。

豪州の市場開放は以下の通り。

鉱工業品  大部分の品目で即時関税撤廃
自動車 現状:5%
完成車輸出額の約75%が即時関税撤廃
主力の1500cc超3000cc以下のガソリン車は即時関税撤廃
残りの完成車も3年目での関税撤廃
自動車部品 即時を含む主に3年目以内の関税撤廃
鉄鋼 即時又は5年目での関税撤廃
一般機械
電気機械
(除 自動車部品)
即時関税撤廃
農林水産品 全ての品目で即時関税撤廃


日本の市場開放は以下の通り。

鉱工業品 ほぼ全ての品目で即時から10年間で関税撤廃
農林水産品 コメ 関税撤廃対象外
食糧用麦 将来の見直し
飼料用麦 政府による管理貿易を廃し、関税ゼロ
砂糖 将来の見直し
脱脂粉乳・バター 将来の見直し
牛肉 現状は38.5%
冷凍牛肉:1年目に30.5%に、段階的に18年目に19.5%まで削減
冷蔵牛肉:1年目に32.5%に、段階的に15年目に23.5%まで削減



但し、セーフガードを導入(一定量を超えた分は38.5%に戻す)
 冷凍牛肉:初年度 19.5万トン、10年目 21万トン
 冷蔵牛肉:初年度 13万トン、10年目 14.5万トン
チーズ 原料用ナチュラルチーズ:無税枠設定(5,250トン、20年で16,100トン) 
ブルーチーズ:10年で関税 2割削減
粉チーズ:低関税枠設定
フローズンヨーグルト 低関税枠設定
アイスクリーム 低関税枠設定
ワイン 7年間で段階的に関税撤廃


付記 

牛タンを含む「牛内臓・調製品」:輸入枠設定(協定発効時 22,300トンから10年間かけて29,300トンに)
                    枠内関税は牛タンで12.8%が7.6%に

「豚肉等」(含 ベーコン、ハム):輸入枠設定(協定発効時 6,700トンから5年間かけて16,700トンに)
                     現行の差額関税制度(基準価格より高い場合 4.3%)で枠内関税は2.2%になる。


日本(及び韓国)にとって輸出の最重要事項は、自動車及び自動車部品の輸出の関税撤廃である。

韓豪FTAでは日豪EPAとほぼ同じ結果を得ている。

中型車(1500~3000cc)と小型車(1000~1500cc)の即時撤廃
自動車部品は3年以内に撤廃

実は、これについては豪州の立場は米国と異なる。
米国は日韓からの輸出を出来るだけ抑えたいとの姿勢だが、豪州の場合は2017年末には製造メーカーがなくなるため、自動車輸入を制限する必要は無く、実際には豪州からの農産品輸出を増やすための交渉材料に過ぎない。

トヨタ自動車は4月10日、オーストラリアでの車両・エンジン生産から2017年末までに撤退すると発表した。

Toyota Motor Corporation Australiaは1959年に設立され、カムリやカムリハイブリッド、オーリオンなどの生産を行ってきた。
トヨタの新車販売台数は221千台強とシェア首位。
生産撤退の理由としてトヨタでは「厳しい市場環境や豪ドル高の他、今後、オーストラリア自動車産業全体において生産規模の縮小が見込まれること」を挙げている。

同国での販売は日本やアジアからの輸出に切り替えて継続する。

2008年には三菱自動車が現地生産から撤退米フォードモーターも2016年10月までにオーストラリア2工場を閉鎖すると発表した。2013年12月にはGMが2017年末での生産撤退を発表したばかり。
トヨタの生産撤退で、同国で自動車生産するメーカーはなくなる。

ーーー

今回の日豪EPAにおける牛肉の扱いは、今後の日米のTPP交渉に影響を与えるとともに、2014年4月8日に署名された韓豪FTAの批准にも影響を与える可能性がある。

韓豪FTAでは韓国は、
牛肉などの492品目の関税は10年以上かけて撤廃となっている。

牛肉、精製糖、麦、トウモロコシなどの品目にはセーフガード措置を導入
コメ、粉乳、果実(リンゴ、梨、柿など)、大豆、ばれいしょ、水産物(カキ、明太子など)など171品目 (1.4%分)は除外   

また、韓米FTAでは牛肉は40%の関税を15年で撤廃することとなっている。

韓国が最終的に牛肉の関税を撤廃するのに対し、日豪EPAでは現状38.5%の関税を冷凍牛肉は18年目に19.5%に、冷蔵牛肉 は15年目に23.5%まで削減するというもので、かつ、セーフガードがついている。

米国は4月9-10日のTPP交渉で、関税撤廃の要求を断念したが、数%にまで下げる「実質的な関税撤廃」を要求、日本は拒否して合意に至らなかった。

自民党は、米国とのTPP交渉にあたって、日豪EPAの大筋合意を「ぎりぎり越えられない一線」とする決議を採択した。

日本の牛肉の供給ソースは下図のとおりで、豪州と米国が二大輸入元であるが、豪州産が減少傾向にあるのを利用し、豪州の譲歩を確保した。
更にこれを基にして、米国に対し同様の結果を呑ませる作戦である。

 

しかし、米国にとっては原則が関税撤廃のTPP交渉での譲歩は難しいと思われ、TPP交渉が短期にまとまる可能性は少ない。
更に、韓国内で日本との違いが大きいことに関して不満が出る可能性もある。




 

BASFとPetronasは4月9日、パハンのGebeng工業団地の両社のJV、BASF-Petronas Chemical(BASF 60%, PETRONAS 40%)で5億米ドルを投資して、香料原料を製造する工場を建設すると発表した。

生産するのはシトラールやシトロネロール、L-メントールなどで、fragrance & flavor産業における世界的な需要の高まり、特にアジア太平洋地域における需要に対応できるようになる。

開発は段階的に行われ、統合プロジェクトの最初のプラント群は2016年に稼働の予定。

ーーー

BASFとPetronasは1997年に、BASFが60%、Petronasが40%の合弁企業としてBASF-Petronas Chemicals を設立した。

Gebeng工業団地では、PetronasのMTBE MalaysiaとPP Malaysia 及びBASF-Petronas が下記の製品を生産している。

 

今回の香料原料はイソブチレンとホルマリンを原料とする。

ーーー

BASFは香料原料製造におけるリーディングカンパニーとして、幅広い製品を提供している。
これらは、主にホーム&パーソナルケア製品、高級香料に用いられるほか、食品産業や医薬品にも応用されている。

シトラール(citral)はレモングラスなどから採れる精油の主成分で、fragrance & flavor 製品においてフレッシュな柑橘類の香りやフルーティー感を出すために用いられが、ビタミンAやビタミンEの製造にも用いられる。
シトロネロール(
citronellol)はフレッシュで強力かつ持続性の高いローズの香りを表現するために使用され、L-メントールはオーラルケア、ボディケア、香味料製品、医薬品に使用される。

BASFはシトラールの合成法を完成させ、1981年に製造を開始した。
2004年に年産4万トンの連続生産工場を完成した。

イソブチレンとホルマリンからシトラールを生産する。

BASFはその後、シトラールのvalue chain を拡大し、種々の製品を開発した。L-メントールの生産能力は2万トンである。

製法はシトラールをキラル触媒で不斉水素化してシトロネロールの光学異性体をつくり、これからL-メントールを生産するもの。
これを連続製法で行うため、速く生産できるとともに、純度99.7%以上のL-メントールが生産できる。

 


 

住友商事は4月11日、スペインの大手石油化学会社 CEPSA Química S.A.が中国で展開するフェノール製造事業に参画すると発表した。

CEPSA Químicaの中国子会社 CEPSA Chemical Shanghai 上海ケミカルパークでフェノール製造工場を建設中だが、住友商事はCEPSA QuímicaとのJV(CEPSA Quimica China) を設立し、これに参加する。

能力は中間体のキュメンが年産36万トン、製品のフェノールが25万トン、アセトンが15万トンで、2014年末には本格稼動する予定。

CEPSA Quimicaにとっては本事業が初めてのアジア進出で、同社の高い製造技術力と、住友商事の中国での事業経営ノウハウとマーケティング力を組み合わせることで、中国における石油化学品の製造・販売基盤を確立する。

住友商事はCEPSAグループと約25年間の取引関係があり、これを機会に、更なる取引拡大を計画している。

ーーー

CEPSA(Compañía Española de Petróleos S.A.)はスペインの石油・石油化学の総合メーカーで、石油の探鉱・開発から精製、輸送、販売と合成樹脂、合成繊維、洗剤原料等の生産販売を行っている。現在、アブダビ国営の投資会社 IPIC(International Petroleum Investment Company )の100%子会社となっている。

IPICは1988年に初めてCEPSAに出資、2009年に47.1%まで増やし、2009年8月にTotal 所有の48.83% を買収、最終的に100%をおさえた。

石油化学事業については、子会社Ertisa(フェノール)、Petresa(アルキルベンゼン)、Interquisa (PTA)で製造販売し、製油所で生産したプロピレンやBTXなどの石化製品についてはPetrocepsa で販売していたが、2008年5月、これらを1社にまとめ、CEPSA Quimica とした。

CEPSA Quimica (Ertisa)はスペインのHuelvaに年産60万トンのフェノール、37万トンのアセトンのプラントを持っている。

同社は上海ケミカルパークでUOP のキュメン法によるフェノール/アセトン プラント建設を決めた。

同社は2008年6月にBayerとの間でフェノールとアセトンの供給契約を締結した。
Bayerの欧州、タイ、中国の工場に供給するもので、Bayerは現在、上海ケミカルパークではBPA 20万トン、PC 20万トンを稼動中。

2008/8/19 スペインのCEPSA、上海でフェノール/アセトン生産を計画

中国国家発展改革委員会(NDRC)は2010年7月30日、CEPSAの子会社Ertisa(→CEPSA Chemical Shanghai)の上海ケミカルパーク(SCIP)でのフェノール/アセトン計画を承認した。
環境面の承認は2008年に受けており、当初は2009年スタートを予定したが、グローバルな経済危機で延期されていた。

2010/8/9 スペインERTISAの上海フェノール計画、NDRCが承認

ーーー

中国では、三井化学が2009年4月15日にシノペックとの間で協力関係拡大の覚書を締結、その一環として2010年8月にフェノール事業の合弁事業化で合意した。
50/50出資で上海中石化三井化工を設立し、既存プラントを継承するとともに、フェノール25万トンプラントを新設するもので、新プラントは本年5月に稼動する予定。

1. 所在地   上海市・上海化学工業区
2. 出資比率 50:50
3. 生産能力
   フェノール  アセトン  BPA
今回新設  25万トン  15万トン  
既設(上海中石化三井化工)      12万トン
既設(上海中石化高橋分公司)  12.5万トン   7.5万トン  
合計  37.5万トン  22.5万トン  12万トン
4. 新プラントプロセス 三井化学技術
5. 営業運転開始時期 2014年5月稼動


2009/11/4  三井化学、シノペックとの合弁事業の基本合意

2011/9/8   三井化学、フェノール・チェーンを強化・拡大

 

現在、フェノール及びビスフェノールA事業は、中国での新増設ラッシュによる市況悪化のため収益が低迷している。

三井化学は、2011年頃にはフェノール・チェーンをグローバルに拡大させる競争優位5事業の1つと位置付けていたが、本年2月6日、再構築を発表、千葉フェノールを停止し、中国市場については上海の新プラントでカバーすることとした。

2014/2/10 三井化学の事業構造改善計画 

 


 

ポーランドの石油化学会社 Synthos は3月31日、ブラジルの Rio Grande do Sul のTriunfo石化コンプレックスでネオジウム触媒ポリプタジエンゴム(Nd-BR) の製造工場を建設する計画を明らかにした。

2013年に締結したBraskemとの間の原料ブタジエンの供給契約が発効次第、自動車やトラックの高機能タイヤや多くのゴム製品に使用されるNd-BRプラントの建設を開始する。
能力は年産8万トンで、輸入品を代替する。

本計画はMichelinからライセンスされた技術を使用する。
Synthosはタイヤメーカーの
Michelin 及びPirelli との間で、ブラジルの両社のタイヤ工場にNd-BR を供給する契約を締結している。

Synthosは以前から成長の著しい南米市場に注目しており、2012年の南米向け輸出は3.3%であったが、2013年には6.3%に上っている。
2013年の1-9月に、ブラジルの新車向けタイヤの売上は前年同期比で9%増え、交換タイヤは11%増えており、ブラジルと他の南米諸国は極めて魅力的な市場であるとしている。

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Synthosは旧称 Firma Chemiczna Dwory S.A で、ポーランド最大の化学品メーカーである。

2007年にチェコの化学会社 Kaucuk s.a を買収し、同年10月にSynthosに改称した。

主製品は合成ゴムとPSである。

PS部門ではPS、発泡ポリスチレン、押出発泡ポリスチレンを生産している。

合成ゴム部門では、乳化重合法SBR (E-SBR)、溶液重合法SBR (S-SBR)、Nd-BR、HSR(high styrene rubber)、NBR などを生産している。
このうち、S-SBRとNd-BRが
省燃費型高性能タイヤ(いわゆる Green Tire)用に使われており、各地で増設されている。

2010/12/27 溶液重合法SBRの増設相次ぐ

Dowから分離したStyronもドイツのSchkopauでS-SBRを生産しているが、同社は2014年4月、Schkopauの高シスBRプラントをNd-BRに転換すると発表した。

2011/6/6 Lanxess、シンガポールでポリブタジエンゴムを生産


2008年10月に
MichelinからNd-BRの技術を導入した。
同時に両社の間で、生産開始後少なくとも7年間、製品をMichelinに供給する契約が締結された。

年産8万トンのNd-BRの生産が2011年にチェコのKralupy で開始された。

参考 Michelinはインドネシアで合成ゴムの生産を計画している。    

2013/6/26   Michelin とChandra Asri 、インドネシアに合成ゴム製造JV設立


2012年6月、SynthosはThe Goodyear Tire & Rubber CompanyからS-SBRの技術を導入した。
2015年にポーランドのKrakow で年産10万トンプラントが生産開始の予定。


 

 

武田薬品工業は、米ルイジアナ州の連邦地裁の陪審が4月7日に糖尿病治療薬「アクトス」に関して、武田に60億ドルの懲罰的損害賠償の支払いを命じる評決を出したと発表した。

2014年2月3日から続いていたルイジアナ州西部連邦裁判所で行われた2型糖尿病治療剤「アクトス®」に起因する膀胱癌を主張する製造物責任訴訟において、原告の主張を認める陪審評決があった。
原告はTerrence Allenで、被告は武田薬品及び米国でアクトスを共同で販売しているEli Lilly である。

  総額 武田薬品 Eli Lilly
補償的損害賠償   1475千米ドル 75% 25%
懲罰的損害賠償 90億米ドル 60億米ドル 30億米ドル

武田薬品は、原告の膀胱癌はアクトスによるものではなく、また、この医薬品のリスクについては適切に注意書きをしているとし、「このたびの評決は大変遺憾であり、到底承服できない」としている。

Eli Lilly も、アクトスは2型糖尿病には重要な治療薬であり、アクトスが原告の膀胱癌を起こしたとの証拠は無く、徹底的に争うとしている。


最終的には90億ドルの懲罰的賠償は大幅に引き下げられると見られている。

これまでの高額懲罰的賠償の10例では全てが破棄または大幅減額となっており、陪審の決定どうりのものはない。
米国の最高裁は、懲罰的賠償は補償的損害賠償や実際の被害額に見合ったものでないといけないとしており、いくつかのケースでは補償的損害賠償額の10倍なら認められるとした。

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アクトスは糖尿病治療剤で、糖質の消化・吸収を遅らせる作用があり、2型糖尿病において、食事療法・運動療法を行っていても十分な効果が得られない場合の食後の過血糖を改善する薬。

糖尿病には2種類ある。
1型糖尿病はインスリン欠乏による糖尿病で、すい臓がインスリンをほとんど、またはまったく作ることができないため、インスリンの注射が必要。

2型糖尿病はすい臓がインスリンを作り出すが、量が十分ではない(インスリン分泌不全)か、インスリンが十分作用しない(インスリン抵抗性)場合で、10人に9人以上はこのタイプ。

2型糖尿病の薬は武田が開発したアクトスのみで、ピークの2007年度には世界で3962億円を売り上げた。2011年に特許が切れるまで収益の屋台骨であった。

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フランスの医薬品規制当局は2011年6月、 武田薬品の糖尿病治療薬アクトスとコンペタクト(アクトスとメトホルミンの配合剤)の新規患者への投与を禁止したと発表した。
当局が独自に行った疫学調査で、アクトス投与群は非投与群に比べ膀胱がんリスクが有意に高いことが確認されたためで、投与中の患者については、医師が個別に判断する。

2011年6月の厚労省の発表は以下の通り。

フランスの疫学研究の結果では、膀胱癌発生リスクは、非使用者と比較して約1.2倍増で、総投与量・期間の増加によるリスクが増加する傾向が認められた。

米国の疫学研究の結果では、膀胱癌発生リスクは、非使用者と比較して約1.2倍増で、全体解析では統計学的な差が認められなかったが、治療期間が長い場合にリスクが上昇する傾向が認められた。

一方、膀胱癌のリスクを上げないとする疫学研究等も複数報告されている。

以上の通り、わずかであるが、アクトス使用者において、投与期間に依存して膀胱癌の発生リスクが上昇する可能性があるため、当面の対応として、以下の内容の使用上の注意の改訂を指示する。

 ・ 膀胱癌治療中の患者等には使用を控える。
 ・ 膀胱癌のリスクについて患者への説明を行う。
 ・ 血尿等の兆候について定期的に検査する。

米国FDAは、「膀胱癌の患者にアクトスを使用しないこと」等の勧告を行った。

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米国では、アクトスの長期服用が原因で膀胱癌が発症したり、悪化したとの訴訟が約6000件起きている。
原告男性の弁護側は、アクトスと膀胱癌との関連性を示す研究結果について、武田が7年以上も具体的な警告を発するのを怠ったのは偶然や過失ではないと述べた。

これまで3件の州裁判所で判断が出ているが、カリフォルニア州とメリーランド州の州裁判所では陪審員が合計820万ドルの支払いを命じたが、裁判長がこれを却下、ラスベガスの州裁では本年、陪審員が原告の訴えを却下している。

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この裁判では武田薬品が関連書類を意図的に破棄したとする原告側の主張 が取り上げられた。

判事によると、武田の関係者は、アクトスの開発とマーケティング、販売に関わった現職および元従業員46人がまとめたファイルが見つからないことを認めた。
幹部がアクトス関連資料を保持するよう従業員に指示したにもかわらず、一部のファイルは同社のコンピューターから削除されたという。

判事はファイルの削除・破棄は憂慮すべきことだと述べ、原告の弁護士が書類破棄について陪審の前で陳述することを認めた。

 

第一三共は4月7日、子会社 Ranbaxy Laboratories をインドのSun Pharmaceutical Industries Ltd. (Sun Pharma) が株式交換により吸収合併することでSun Pharmaと合意したと発表した。2014年12 月末迄に完了する予定。

Lanbaxyの2013年の売上高は18億ドル、Sun Pharmaの売上高は25億ドルで、統合後のSun Pharmaは売上高43億ドルで世界5位の後発薬メーカー、インド最大の医薬品メーカーとなる。

株式交換比率は、Ranbaxy株式 1に対し、Sun Pharma株式 0.8で、第一三共はRanbaxy株式の約63.4 %を保有しているが、合併により Sun Pharma株式の約9%を取得し、取締役1 名を派遣する権利を有する。
この交換比率はRanbaxy 1株を457ルピーで評価したもので、過去30日の加重平均株価に18%、過去60日の加重平均株価に24.3%のプレミアムを乗せたもの。

但し、ほぼ同規模の会社が統合し、Ranbaxyの63%株主の第一三共が新会社の9% しか得られないというのは理解しにくい。
入手しうる資料からは下記の通り第一三共の比率は15.6%となる。(同社に確認を求めている最中)

全くの推測だが、これでは連結対象となる(取締役派遣の場合は15%以上の出資で持分法連結対象となる)ため、一部を売却した可能性もある。

  株数 第一三共 比率
Ranbaxy (2012/12) 422,913,803 268,711,323 63.4%
 
Sun Pharma (2013/3) 1,035,581,955    
Ranbaxyへ割当 338,331,042 214,969,058  
割当後 1,373,912,997 214,969,058 15.6%

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第一三共は2008年11月7日、Ranbaxy株の63.9%を取得したと発表した。 公開買付けを行ったうえ、創業家一族からの取得、第三者割当増資、新株予約権の引受けを行ったもので、取得価格は1株当たり 737ルピーで、総額4,950億円になる。

この買収の最中の2008年9月16日に、米国FDAは品質管理等に問題があるとして、Ranbaxyの医薬品30種以上の輸入を一時停止した。

第一三共は2009年1月、2009年3月期第3四半期に、連結子会社であるRanbaxyに関し、連結決算において3,540億円ののれん一時償却の特別損失を計上すると発表した。

2009/1/8 第一三共、ランバクシーの評価損計上

Ranbaxyは 、製品の米国向け輸出が出来なくなったため、インドで生産した原薬を米国で製剤する方策を採ったが、その後も品質問題は解決せず、原薬工場も禁止対象となった。

2011/12/28 ランバクシー、米FDAと同意協定書締結
2013/9/21  米FDA、第一三共子会社Ranbaxyに再び輸入差し止め
2014/1/18      第一三共のRanbaxy、原体製造工場も問題か?

第一三共は経営陣を送り込み、品質問題に対処してきたが、「現場レベルまで行き届いた指導がなされなかった」という。
日経によると、現地では、「窓からハエが飛来している」「錠剤に異物が入っている」など、工場の品質問題を巡る報道が続いているという。

第一三共はRanbaxyの米国事業の早期解決が難しいと判断、Sun Pharma に売却することとした。

なお、第一三共は2013年5月に「当社は、Ranbaxyの特定の以前の株主が、DOJおよびFDAの調査に関する重要な情報を隠蔽したものと判断し、現在、法的な措置を講じております」と述べている。

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日経は第一三共の社内事情も報じている。

第一三共は2005年に「対等の精神」で統合したが、旧第一製薬と旧三共の勢力争いが今も続いているという。
「旧三共案件」のランバクシーが窮地に陥り、今回のサンファーマとの合併は旧第一が主導し、旧三共を排除して行われたという。

いまだに全社一体での対応がなされていないのは問題である。

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Sun Pharmaはインドのムンバイに本社を置くジェネリックメーカーで、1983年に設立後、ICNのハンガリー事業、Caraco Pharmaceutical、Taro Pharmaceutical などの買収、MSD(Merck)とのJV設立などで拡大、ジェネリック医薬品やノーブランド医薬品を中心に 米国やヨーロッパおよびアジアなど世界中に輸出している。

武田薬品は2012年にURL Pharmaを買収したが、その後同社の後発品事業をSun Pharmaの100%子会社のCaraco Pharmaceutical に譲渡し ている。

武田薬品とURL Pharmaは2012年4月、武田がURL Pharmaを800百万米ドルで買収することについて合意した。買収完了後、武田ファーマシューティカルズUSAに統合した。
URL Pharmaの2011年の売上高は約600百万米ドルで、そのうち痛風の予防および治療薬であるColcrysの売上高が430百万米ドル強を占めている。

武田薬品は2013年6月、Sun Pharma 及びイスラエルのTeva Pharmaceutical と特許侵害訴訟で和解している。

2013/6/19  武田薬品、米国での医薬品特許侵害訴訟で和解、但し和解金は収益にならず



統合後のSun Pharmaは売上高43億ドルで世界5位の後発薬メーカー、インド最大の医薬品メーカーとなる。
 


 

  ソース: http://www.sunpharma.com/Media/Press-Releases/Sun-Ranbaxy Investor Presentation.pdf

 

BASFと戸田工業は4月3日、日本を拠点にリチウムイオン電池用正極材を展開する合弁事業に向けた独占交渉を開始したと発表した。

日本において、NCA(ニッケル系正極材)、LMO(マンガン系正極材)、NCM(三元系正極材)といったさまざまな正極材料の製造、マーケティング、販売に注力する予定で、両社はそれぞれの正極材ビジネス、知的財産権、日本における製造設備・拠点などを結集し、バッテリー産業における正極材のポートフォリオを拡大する。

合弁事業ではBASFが過半数の株式を保有する予定。

戸田工業の久保田社長は、「リチウムイオン電池市場における成長の鍵は、製品開発、性能、コスト、供給規模・能力の4つで、BASF との合弁事業のシナジー効果として、この4つのすべてが強化でき、その結果今後拡大する市場に的確に対応できる、望ましい提携である」としている。

戸田工業は負極材の事業を行っており、また、正極材事業では米国に進出している。ドイツ、中国、韓国にも販売拠点がある。
これらの事業がどうなるのか、不明である。

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戸田工業はベンガラ製造業としての創業から、およそ2世紀にわたる長い歴史をもつ企業で、現在は、金属酸化物の湿式合成技術を基盤とし、リチウムイオン電池正極材、顔料・トナーなどの各種着色材料、磁性体粉末材料・フェライト材料などの磁性体の多様な商品を製造している。

電子部品用材料(磁性材料等)
EMC/EMI電磁対策部品
顔料(コンクリート用、アスファルト用、CSファルト用着色材料)
デジタル記録材料(タル磁気記録材料、磁気記録用下層材料)
環境機能材料(ダイオキシン制御材料、土壌・地下水浄化、重金属不溶化剤)
電子印刷材料(カラープリンター用キャリア及びトナー材料)

リチウムイオン電池用材料

 

リチウムイオン電池の構成は以下の通り。

正極材としては、コバルト産リチウム(LiCoO2)以外に、3元系(LiNiMnCoO2)、マンガン系(LiMn2O4)、ニッケル系(LiNiCoAIO2)、鉄系(LiFePO4などがある。


戸田工業の電池事業の歴史は以下の通り。

1990's 正極材研究に着手  
2000 LiCoO2事業開始  
2002 LiNiCoAlO2事業化 富士化学工業から複数の特許を引継ぎ
2007 Ni(OH2)/LiNiCoMO2/CoOx事業化 HC.Starckより事業買収、カナダの正極材料および正極材料前駆体製造工場も。
→Toda Advanced Materials Inc.(カナダオンタリオ州Sarnia、年産4,000 トン)
2008 LiMn2O4事業化  
三成分系(LiNiMnCoO2)事業化 Argonne National Laboratories からライセンス受け
2009 米国工場建設開始 Toda America、立地:Battle Creek, Michigan
エネルギー省のAmerican Recovery and Reinvestment Act of 2009による助成金交付
ニッケル系、三元系を中心とした正極材、及びマンガン系(LiMn2O4)、年産4,000 トン
2010 米・加子会社を伊藤忠とのJV化 戸田50%、伊藤忠 50%
米国:Toda America
カナダ:Toda Advanced Materials
2011 正極材用リン酸鉄リチウム生産設備建設 M&Tオリビン(三井造船51%、戸田49%)が三井造船千葉事業所に年産2100トンプラント建設
2013 負極用炭素材料マーケティング開始 三菱商事とのJV MTケミカル(煆焼石油コークス製造のSGケミカル:旧三井鉱山化成の敷地内で生産)

  

H.C. Starck

H.C. Starck はタングステン、モリブデン等の希少金属の粉末及びコンパウンド、セラミック粉末、エレクトロニクス用スペシャリティケミカル等のメーカーで1986年にBayerグループに入った。

BayerはH.C. Starck を入札方式により売却先を選定していたが、2006年12月に投資会社の Advent International とCarlyle Group に売却することに決めた。

2006/12/2 Bayer、子会社 H.C. Starck を売却

H.C.Starck の電池材料事業部門は、ドイツに経営・開発拠点を置き(主な商品はLi-ion電池用正極材料の前駆体、Ni-MH電池正極材料 及び 触媒,メッキ用特殊Ni材料など)、カナダ、オンタリオ州 サーニャ市に年間4000トンのNi系電池用の正極材料および正極材料前駆体の工場を有していた。

戸田工業は2007年にH.C.Starckの電池材料事業部門を買収する契約を締結した。

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BASFはHED™ブランドでいろいろな正極材を扱っている。

同社は戸田工業と同じく、ニッケル・コバルト・マンガンの3元系技術のグローバルリーダーのArgonne National Laboratories からライセンスを受けている。
更に、燐酸鉄リチウム技術のリーダーのLiFePO4+C Licensing からもライセンスを受けている。

 

 

Kolonは1979年にアラミドの基礎研究を開始、1994年に完成させ、2005年末から商業生産を開始した。

DuPont2007年に、同社を2006年初めに退職し、その後Kolon のために Aramid Fiber Systems LLC を設立した技術者の行動に疑念を持ち、FBIと商務省に懸念を伝え、共同で調査を続けた。

DuPont20092月にKolon を商業秘密盗用で訴えた。
これに対し、
KolonDuPont技術の盗用を否定、自社技術で生産していると反論していた。

バージニア州Richmondの連邦裁判所の陪審は2011年9月、Kolonに対し、DuPontのアラミド繊維(Kevlar)に関する商業秘密を盗んだとして、919.9百万ドルの損害賠償を支払うよう命じた。

 2011/9/21  DuPont、アラミド繊維の技術盗用裁判で韓国のKolonに勝訴 

DuPontは判決後、裁判長に対し、追加の懲罰賠償と裁判費用の支払い、Kolonの米国資産の凍結、DuPont技術の使用禁止の命令を求めた。

米地裁は2011年11月、懲罰賠償として35万ドル、合計920.3百万ドルの支払いを命じ、2012年8月にはKolonに対し Heracron® Aramid Fiber の20年間の製造停止を命じた。

 但し、製造停止命令は控訴審で差し止められ、実施されていない。

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今回、控訴裁判所は、Richmondの連邦裁判所の裁判長が、問題となった商業秘密が無効であるとの証拠を採用しなかったこと、商業秘密の一部をDuPontが以前のAkzo Nobelとの裁判で開示しているとのKolonの主張を受け入れなかったことは、思慮を欠く独断的な行為であるとし、再審を命じた。

どの証拠を認めるべきであったとするのではなく、証拠の全面除外("blanket exclusion")は著しく差別的であるとした。

Kolonとその5人の役員が、FBIが入手したKolonの明らかな違法行為の証拠に基づき、2012年8月に商業秘密盗用で起訴されたことを指摘し、しぶしぶ("with reluctance")この判断を下したとしている。

Kolonの勝訴ということではなく、手続き上の誤りで再審を命じたと見られる。
但し、Kolonは新しい裁判で、過去に提示できなかった証拠を提示し、主張を述べることが出来ることとなった。

Kolon 側が当初の裁判長を利害相反で忌避したため、再審は異なる裁判長の下で行われる。

当初の裁判長は、DuPontとAkzo との間の裁判の当時、DuPont側に立っていたMcGuireWoods法律事務所のパートナーであった。
但し、2011年の裁判時にはKolonは裁判長忌避を行わなかった。


DuPontがアラミド繊維で米国で70%以上のシェアを持ち、大需要家に需要の80%以上を同社から買うよう求めているというKolon側からの独禁法 違反の訴えについては、控訴裁判所は、DuPontのシェアは2006年から2009年の間に60%以下に低下し、日本の帝人に着実にシェアを奪われつつあるとした。

そして、DuPontがシェアを失いつつあること、長期の市場支配力を欠いていることから、DuPontが価格を支配したり、競争を排除したりする能力は持たず、市場を支配しているとは言えないとした。

 



 

麻生副総理の3月25日の会見での発言が問題となった。

キエフ公国というのはロシアのもとですよ。ロシアというのはここから始まったんだから。そのキエフ公国がロシアのもとなんだから、キエフがバルカンだのクリミア半島と別れて、キエフだけヨーロッパに行っちゃうみたいな話は、ロシアとしてはなかなか、日本で言えば宮崎県が独立して高天原がいなくなっちゃうみたいな話なんじゃないの。知らないけど。よくあの辺のことはわからないけど。そんな簡単な話ではないんだという話ですし。

これについてはHenry Kissinger も 3月6日付けのWashington Post でこう述べている。

ウクライナが生き残り、繁栄するためには、ウクライナはロシア側、西欧側のどちらかに立って相手側に立ち向かうべきでなく、双方の間の架け橋となるべきだ。

西側は、ロシアにとってウクライナは単なる外国の一つではあり得ないことを理解しなければならない。ロシアの歴史はKievan-Rus と呼ばれるところに始まった。ロシア正教はそこから広がっていった。ウクライナは数世紀にわたってロシアの一部だったし、その以前にもロシアとウクライナの歴史は絡み合っていた。1709年の Poltavaの戦いに始まるロシアの自由にとってもっとも重要ないくつかの戦いはウクライナの地で戦われた。黒海艦隊は長期のリース契約に基づきクリミアのSevastopolに基地を置いている。Aleksandr Solzhenitsyn やJoseph Brodskyのような反体制派ですら、ウクライナはロシアの歴史、というよりロシアそのものの不可欠な一部だと主張した。


ウクライナ問題はもっと複雑である。

ウクライナのデシツァ外相は4月1日、「法制上、現時点でNATO加盟を申請することはできない」とする一方、国会が法制を変更すれば「他の選択肢も議論になる」と述べ、将来についてはNATO参加に含みを残した。

NATOは、ソビエト連邦との冷戦が激しさを増す中で、英仏が主体となり、1949年4月4日に締結された北大西洋条約により誕生した。
結成当初は、ソ連邦中心とする共産圏に対抗するための西側陣営の多国間軍事同盟であった。

1990年10月にドイツが再統一され、NATOは旧東独に進出した。

1991年12月にソ連が崩壊した。その後、旧ソ連諸国が相次いでNATOに加盟した。

1999年 チェコ、ハンガリー、ポーランド
2004年 エストニア、ラトビア 、リトアニア、ブルガリア、ルーマニア、スロバキア、スロベニア
2009年 アルバニア、クロアチア  

NATOの東進には複雑な背景がある。

Oliver StoneとPeter Kuznickの共著の"The Untold History of the United States"によると、ドイツ再統一にあたり、以下のような交渉があった。

1990年2月、Bush大統領とBaker国務長官、Helrmut Kohl西独首相は、Gorbachev に東独駐在の38万人のソ連軍を撤退させ、1945年のドイツ敗戦に伴う駐留権を放棄させるのに苦慮した。

Bakerは2月9日にGorbachevと会見し、「統一ドイツがNATOから外れるのと、統一ドイツがNATOに残るが、NATOは現状から1インチたりとも東に入らないのと、どちらを好むか?」と質問した。BakerはGorbachevの「NATOの地域の拡大は受け入れられない」との答えを記録している。

Helmut Kohl は翌日Gorbachev と会い、「当然、NATOは領域を東独に拡大しない」と述べた。

2月10日にはドイツのGenscher外相がEduard Shevarnadze外相に同じことを伝え、「統一ドイツのNATO加盟は複雑な問題を生むが、一つだけ確実なことは、NATOは東に拡大しないということだ」と述べた。
これがドイツだけではなく、全ての東欧諸国に適用されることを理解させるため、Genscherは「NATOが拡大しないことに関しては、全般に適用される」と付け加えた。

Kohlの保証を受け、Gorbachevはドイツ再統一を認めた。しかし、法的文書のサインはなく、言葉だけであった。

Gorbachev は同年9月、どうしても必要であったドイツからの資金援助と見返りに、東独へのNATOの進出に同意し、問題を複雑化した。

Gorbachev は明らかに合意があったと考えており、米国と西独はNATOを一歩たりとも東に拡大しないと約束した、と述べた。

プーチン大統領はGorbachev が米国に騙されたと考えている。

現在、ロシアの西側でNATOに参加していないのは、ウクライナ、ベラルーシ、モルドバだけとなり、ウクライナが加盟すると、NATOがロシアの隣に進出することとなる。
(例えて言えば、ソ連が西欧を制覇し、カナダとメキシコを同盟に入れようというようなものである。)

プーチンにとってみれば、旧東独は別として、他の旧ソ連諸国へのNATOの進出そのものが約束違反ということになる。


今回、ヤヌコビッチ大統領が独仏ポーランドの3カ国外相と危機の打開策を協議し、2月21日に野党3党の代表と政治危機の解決に向けた合意文書に署名し、大統領選の年内前倒し実施や大統領権限を大幅に議会に移す憲法改正を9月までに行うことなどを決めた。

しかし、その直後に野党が政権を打倒、欧米諸国は新政権を支持した。

これについてプーチン大統領は、「憲法に反するクーデターが起きた」とし、新政権を法的な正統性がないとして否定する立場を表明している。


ーーー

クリミア半島も複雑な歴史を持つ。

戦後、クリミア半島はロシアに帰属する自治共和国であった。

1954年、クリミアはロシアからウクライナへ移管された。
当時のフルシチョフ書記長の決定で、公式には「ロシアとウクライナの友好のため」だったが、フルシチョフがクリミアを自分の生まれ故郷のウクライナに与えたかったからという話もある。
当時はソ連内部での移管であり、問題にはならなかった。

1992年1月にロシア議会が「ソ連がクリミアをロシアからウクライナへ移管したことは違法だ」と決議し、同年5月にクリミア議会がウクライナから独立を宣言し、クリミア共和国憲法を制定 したが、ロシアは軍事介入もクリミア共和国の承認もしなかったため、クリミヤ議会が独立宣言を取り消 した。

1994年の初代クリミア大統領選で、独立を主張するメシコフが当選し、議会も再度独立を決定した。
しかし、ウクライナはクリミアへの武力介入を構えを見せつつ、大統領と独自憲法を廃止させ、クリミアは1995年3月、ウクライナの統治下に戻った。

 

ソ連崩壊の過程で、主要基地であったセヴァストポリ軍港がウクライナ領になったことから、長らく二国間で協議が進められ 、艦隊の分割と基地の使用権に関する協定が結ばれた。この協定により、ロシア海軍は2017年までセヴァストポリに駐留することが認められた。

しかし、2004年にウクライナで親欧米派のユーシェンコ政権が誕生、EUやNATOへの接近を図る同政権は、黒海艦隊の早期撤退を求めた。
これに対し、ロシアはウクライナへの天然ガスの大幅値上げで応じた。

2010年の選挙で親露派と目されるヴィクトル・ヤヌコーヴィチ政権が成立、同年4月、ヤヌコーヴィチはクリミアに駐留するロシア黒海艦隊の駐留を25年間延長することに合意した。

ティモシェンコ前首相は、ヤヌコーヴィチ大統領は外国の軍事基地駐留を認めない憲法17条を侵害したと非難した。
しかし、憲法裁判所長官は、ユーシチェンコ前大統領による合憲判断要請を法的根拠がないとして却下した。


プーチンは1954年のフルシチョフによるクリミア移管を批判しており、ウクライナの政変でウクライナがNATOに加盟し、黒海艦隊の早期撤退を求められることを恐れたと見られる。

ーーー

Kissingerは上記の寄稿のなかで、以下の通り述べている。

1. ウクライナは経済的、政治的な協力関係をどこと結ぶのか、自分で選択する権利がある。

2. ウクライナはNATOに参加すべきでない。(7年前からの主張である)

3. ウクライナは国民の意思に合った政権を創る自由がある。賢明なリーダーなら自国内の各層の間の調和を図るべきだ。
  フィンランドがよい手本となる。独立心を持ち、多くの分野で西側と協力するが、ロシアとの敵対は注意深く避けている。

4. ロシアのクリミア併合は国際ルールに違反する。
  ロシアはクリミアに対するウクライナの主権を認め、ウクライナはクリミアの自治権を強めるべきだ。

  黒海艦隊の駐留に関しては曖昧な表現は排除すべきだ。  

 


欧州委員会は4月2日、欧州内で日本メーカーを含む企業が、10年近くにわたって電力網の構築などに使う地下及び海底の高圧電力ケーブルでカルテル行為を実施したとして、総額で3億164万ユーロの制裁金を科したと発表した。

欧州6グループ (ABB、Brugg、Nexans、NKT、Prysmian、Silec)、日本3グループ(J-Power、ビスキャス、エクシム)、韓国2社(LS Cable、大韓電線)の11グループが1999年から2009年1月(調査開始時)までの間、カルテルを結び、欧州メーカーと日韓メーカーが相手のホームテリトリーに入らないこと、その他の市場を分け合うことを決めていた。

欧州メーカーは欧州経済領域(European Economic Area:EEA)内でプロジェクトを分け合っていた。日韓メーカーが欧州需要家から要請を受けた場合は、欧州メーカーに連絡した上で断った。各社は価格情報を交換し、決められたメーカーが受注できるようにし、他のメーカーは入札を取り止めるとか、受けられない高い価格を提示した。

ABBはカルテルの存在を通知し、 33百万ユーロの制裁金を免除された。

J-Power Systems と株主の住友電工、日立金属は調査に協力し、制裁金の45%を免除された。
3社はまた、最初に証拠を提出したため、カルテルの最初の2年間については制裁金を免除された。

ーーー

日本企業が取り決めに従って欧州で応札せず、直接的に欧州での競争を制限したとして、多額の制裁金を課せられたのには、電力用ガス絶縁開閉装置のケースがある。

2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金

欧州企業は日本での競争を制限しているため、日本で課徴金を課せられる筈だが、この例では、欧州委からの通報がなかったために、時効により公取委はカルテルの調査に入れなかった。

2008/4/19 電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルの日本での扱い 

ーーー

今回の制裁金は以下の通り。

 

Leniency

Fine (€)

ABB 100% 0

Brugg Cables

 

8,490,000

Nexans

 

70,670,000

NKT Cables

 

3,887,000

Prysmian Group

 

104,613,000

(内 Pirelli Group)  

 

(67,310,000)

(内 Goldman Sachs)
2005年 Pirelli Cable & System買収、改称、
調査開始後に売却した。

 

(37,303,000)

Silec Cable 

 

1,976,000

(内 General Cable)

 

(1,852,500)

(内 Safran) 

 

(123,500)

 Safran 
   2005年、Silec Cable をGeneral Cable に売却
  8,567,000
J-Power Systems
 2001/10住友電工、日立電線 50/50
 2014/4 住友電工100%
45 %

20,741,000

 住友電工

45 %

2,630,000

 日立電線(現 日立金属)

45 %

2,346,000

ビスキャス(VISCAS)
 2001/10 古河電工、フジクラ 50/50 
  34,992,000

 古河電工

 

8,858,000

 フジクラ

 

8,152,000

エクシム(EXSYM)
 2012/4 昭和電線 60%、三菱電線 40%
  6,551,000

 昭和電線

 

844,000

 三菱電線 

 

750,000

LS Cable

 

11,349,000

大韓電線Taihan Electric Wire)

 

6,223,000

TOTAL

 

301,639,000



欧州委員会は3月19日、自動車向けのベアリングで、日本企業と欧州企業 5社に9億5300万ユーロの制裁金を科したが、この際は全社がカルテルへの参加を認め、責任を認めて示談制度による10%減額を受けている。

   
2014/3/22 EU、ベアリングカルテルで制裁金

今回はどの社も減額を受けていない。

日本の公取委による解説では以下の通り。

和解手続は,審査手続の迅速化・簡略化を目的としていますが、すべてのカルテル事件に適用されるわけではありません。欧州委員会は、事業者との間で事件についての共通理解が得られるか、手続をどの程度効率化できるかといったことを踏まえて、和解手続を適用するかどうかを判断します。

本件の場合、この決定が不服で、裁判で争うとする企業が多い。

このうち、特に問題となるのは「投資会社」のGoldman Sachsである。

Goldman Sachs では、カルテル行為は同社がPrysmian を買収する数年前に始まっていたが、そういう行為を全く気がつかなかったとし、裁判で争うとしている。

これに対し欧州委員会は、Goldman Sachs はPrysmian に 5~6名の取締役を派遣しており、定期的に戦略的決定についての報告を受けているとし、投資会社であっても法令順守のカルチャーを維持する義務があるとしている。


ーーー

日本では、発電所から変電所に高圧電力を送る電力ケーブルを巡るカルテルについては、2000年1月に下記の3社に排除措置命令と課徴金納付命令を出した。

3社は2005年以降、国内の電力会社が発電所から変電所への送電に用いる高圧電力ケーブルについて、担当者が受注割合や価格などを話し合って決めていた。

課徴金(千円)
  東京電力
電源開発
東北
電力
中部
電力
北陸
電力
中国
電力
九州
電力
沖縄
電力
合計
エクシム 100,070 12,600 30,010 29,220 9,060 62,400 8,210 251,570
J-Power Systems 128,580 5,610 14,940 15,220 22,530 33,600 7,620 228,100
ビスキャス 54,680 17,680 34,440 2,470 9,370 25,130 9,570 153,340
課徴金合計 283,330 35,890 79,390 46,910 40,960 121,130 25,400 633,010


報道によると、公取委は2009年1月、欧州企業を含めた国際的な受注調整が行われていたとみて欧州委員会や米司法省と同時に調査を開始したが、証拠が足りないため国際カルテルの解明は断念したとされる。

今回、欧州委員会は証拠をもとに欧州で販売していない日本企業にも多額の制裁金を課したが、日本の公取委は日本で販売しないことで日本での競争を制限した欧州企業及び韓国企業に対し、措置を取るのであろうか。

同じ事件で欧州と日本で扱いが異なるのはおかしい。


なお、日本市場での電線カルテルについては、他に下記のものがある。

2010/5/26  光ファイバーケーブルのカルテルで過去最高の課徴金

2010/11/30 公取委、建設・電販向け電線カルテルで排除措置命令及び課徴金納付命令




 ロシアの政府系天然ガス大手Gazpromは4月1日、ウクライナ向けのガス価格を40%以上引き上げ 、1000m3当たり385.5ドルにすると発表した。

 4月3日には更に485ドルに引き上げた。これまでの価格の1.8倍となる。 (付記 輸出関税割引制度の撤廃)

現状: 268.5$/1000m3 6.7125$/MMBTU)
2014/4-6: 385.5$/1000m3 9.6375$/MMBTU)
    → 485.0$/1000m3  (12.125$/MMBTU)
     注) 天然ガス 1,000m3=40MMBTU

アレクセイ・ミレルCEOは、ウクライナのガス料金未払い分が17億ドルに達しているため、値上げは必要だとの見解を示し、「2013年12月合意の割引はもはや適用できない」と述べた。

GazpromのEU向けの平均ガス価格は370$/1000m3 (9.25$/MMBTU) となっている。

ウクライナは旧ソ連ということで国際価格よりもはるかに安い価格で天然ガスの供給を受けてきた。
今回も大幅値上げといっても、EU並みの国際価格であり、日本のLNGでの購入価格(16ドル前後)よりもはるかに安い。

仮に将来、米国からのLNG輸入が可能となっても、これより大幅に安くなることはないと思われる。
   
2014/4/1 米国からの欧州向けLNG輸出

ーーー

2013年のウクライナ向け天然ガス価格は401$/1,000m3(10.025$/MMBTU)であった。

ウクライナは2013年に欧州連合との政治・貿易協定の仮調印を済ませたが、ロシア寄りの姿勢を見せるヤヌコビッチ大統領は2013年11月、EUとの関係を強化する「連合協定」の締結を見送り、ロシアとの協力関係を密にする方針に転換した。

ヤヌコビッチ大統領は2013年12月17日にモスクワでプーチン大統領と会談、ロシアはウクライナに対し150億ドルの金融支援を実施し、天然ガスの価格を2014年1月から約3分の1引き下げることで合意した。

2013年: 401   $/1000m3 (10.025$/MMBTU)
2014年: 268.5$/1000m3 6.7125$/MMBTU)

EUから親ロへの転換で、欧州連合寄りの野党勢力から強い反発が起こり、ウクライナ国内は大規模な反政府デモが発生するなど騒乱状態に陥った
事態収拾のためヤヌコビッチ大統領は2014年2月21日には挙国一致内閣の樹立や大統領選挙繰り上げなどの譲歩を示したがデモ隊の動きを止めることはできず、2月22日に首都キエフを脱出、政権は崩壊した。

2014年3月、ロシア軍はクリミア半島の一部の施設を占拠して半島を実効支配、3月16日にクリミア自治共和国およびセヴァストーポリ特別市で、ロシアへの編入を問う住民投票が行われ、96.77%がロシアへの編入への賛成を示した。
翌17日、クリミア最高会議はウクライナからの独立とロシア連邦への編入を決議した。

ーーー

ロシアは天然ガスを武器に旧ソ連各国をロシア圏にとどめようとしている。

ベラルーシとの間でも2007年に紛争が起こった。同国は現在は親ロであり、安い価格で天然ガスの供給を受けている。
  2007/1/15 ロシア・ベラルーシ石油抗争 解決

ベラルーシやウクライナ向けのパイプラインは欧州につながっており、欧州各国も紛争の余波を受けた。

ウクライナ向け天然ガス価格は2006年以降、下図のような推移をたどっている。

    JOGMEC資料を補正


1)2006年

ウクライナは2004年暮の「オレンジ革命」以来、親ロシア政策を放棄して、EUとNATOへの加盟を志向する親自由主義国家となった。

2005年4月、ガスプロムがウクライナ政府に対し、それまでの1,000立方メートルあたり50ドルから160ドルへの値上げを提示、後に更に230ドルに引き上げた。

交渉は紛糾し、2006年に入り、
ガスプロムはがウクライナ向けのガス供給を停止した。
(EU向けと同じパイプのため、ウクライナ向け対応の30%を削減した)

しかしウクライナ側は、これを無視してガスの取得を続けたため、パイプライン末端のEU諸国のガス圧が低下し、各国は大混乱となった。

問題が二国間の問題に止まらず国際問題となったため、両者は急速に歩み寄りを見せ、1月4日に
期間5年、95ドルで妥協した。

2005年:   50$/1000m3 (1.25$/MMBTU)
2006年ロシア要求: 230$/1000m3 5.75$/MMBTU)
     決着:   95$/1000m3 (2.375$/MMBTU)

2) 2009年

ロシアの独占天然ガス会社 Gazprom は2009年1月1日、ウクライナへの天然ガス供給を完全に停止した。

両国は、20億ドル以上とする天然ガス供給の代金未払いや債務、滞納の罰金支払いの調整及び2009年からの価格について年末から協議していたが、31日までの交渉が不調に終わったため、強硬措置に訴えた。

2008年のウクライナ向け天然ガス価格は179$/1000m3 だが、両国は今後段階的に引き上げることで合意、ガスプロムは250ドルを提案したが、ウクライナは201ドルを主張してこれを拒否した。ガスプロムは1月4日、価格を450ドルに引き上げると発表した。

1月18日、ロシアのプーチン首相とウクライナのティモシェンコ首相がガス価格の引き上げに大筋で合意、19日に今後10年間のヨーロッパ向けガス輸送と、ウクライナへのガス供給を確認する合意文書に調印した。

 ・2009年のガス料金は欧州向け価格より20%割り引く。
 ・2010年以降のガス料金は欧州並とする。(石油価格と連動)

2009/1/2 ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止
 

3) 2010年

2010年4月21日、ウクライナのヤヌコビッチ大統領はロシアのメドべージェフ大統領と会談し、焦点のウクライナ向け天然ガス輸出価格の引き下げで合意した。ロシアは見返りにクリミア半島の黒海艦隊の基地貸与の延長を取り付けた。

天然ガス価格は既存の契約(1000立方メートルあたり 330ドル)から3割引き下げとなる。総額では年40億ドルに達する見込み。ウクライナはガス価格の引き下げで財政負担を軽減し、中断している国際通貨基金からの融資再開に弾みを付ける。

市場価格に連動した現行協定を踏まえつつ、1000m3あたり330ドルを超えた場合には100ドル分を値引き、それ以下の場合には3割値引きする。

ロシアは価格引き下げと引き換えにクリミア半島に駐留するロシア黒海艦隊への基地貸与を期限の2017年から、最大30年間延長することで合意した。ユーシェンコ前大統領は延長を認めない構えだった。

旧ソ連の黒海艦隊は、ソ連崩壊後、ロシアとウクライナに分割され、1997年の協定でロシア艦隊の20年間駐留が決まった。
2010年に25年間延長が決まった。

4)2013年

2013年に入り、ロシアのGazprom はウクライナのNaftogaz に対し、70億ドルの請求を行った。
2009年の売買契約での"Take or Pay" 条項に基づくとしている。

これに対しNaftogasは、以前から2009年の契約が価格その他の条項がアンフェアだとして再交渉を要求している。

ウクライナの姿勢は価格面でロシアから譲歩を引き出す戦術とも見られるが、これに対しロシア側は、値引きの条件として、ウクライナが関税同盟(ロシア、ベラルーシ、カザフスタンが加盟)に参加するか、欧州に通じるパイプラインの経営権を渡すことを挙げた。

2013/2/19 ロシアとウクライナ、天然ガス で再び抗争

最終的には上記の通り、ヤヌコビッチ大統領はEUとの関係を強化する「連合協定」の締結を見送り、ロシアとの協力関係を密にする方針に転換し、ロシアはウクライナに対し150億ドルの金融支援を実施し、天然ガスの価格を2014年1月から約3分の1引き下げることで合意した。

しかし、ヤヌコビッチ政権の倒壊、クリミアのウクライナからの独立とロシア連邦への編入で、ロシアにとってはウクライナは同盟国扱いの対象ではなくなった。

ロシアは2010年4月の値下げの見返りにクリミア半島の黒海艦隊の基地貸与の延長を取り付けたが、本年3月下旬に、クリミアが自国の一部になったとして、黒海艦隊の駐留に関する契約を破棄をウクライナに通告している。
 4月2日、プーチン大統領は、ロシア艦隊の駐留に関する全ての合意を破棄する法案に署名した。年間1億ドルの基地使用料支払いもなくなる。

ーーー

ウクライナ新政権は3月27日、IMFとの交渉で140億ドル以上の金融支援融資を受けることで基本合意した。
これには、電気、ガス料金の大幅引き上げ、年金改革や公務員の給与凍結等の厳しい条件がついている。

ウクライナ政府は長年にわたってガスを低価格で国民に供給するため年間100億ドル規模の巨額の補助金を投入しており、財政悪化やエネルギー産業の非効率の一因となってきた。

ウクライナ最大の国営ガス会社ナフトガスは3月26日、一般家庭向けのガス料金を5月1日から5割値上げすると発表した。

今回のロシアによる天然ガスの大幅値上げ通告で値上げ幅は更に拡大する。新政権は近く社会保障給付の削減にも踏み切る方針で、生活水準悪化に対する国民の不満が高まることが予想される。

 



水俣病被害者互助会の8人が、国と県、原因企業チッソに総額2億1200万円の損害賠償を求めた訴訟で、熊本地裁は3月31日、3人の損害を認め、被告に賠償を命じる判決を言い渡した。5人については棄却した。

重症で介護が必要な男性1人には、認定患者がチッソと交わす補償協定の慰謝料(1600万〜1800万円)を大きく超える額が認められた。

症状を訴えて県に水俣病認定申請をしたが、認められず棄却されたり、結論の出ていない9人が、2007年10月に提訴したもので、うち1人は2013年11月に国の公害健康被害補償不服審査会の逆転裁決を受けて熊本県から患者認定され、訴えを取り下げた。

概要は下記の通り。

1人   (2013年11月 行政認定→訴え取り下げ) 1600万円 (チッソと補償協定)
1人 請求 1億円
(
全身の機能障害)
手足のしびれ(感覚障害)などの症状とメチル水銀との因果関係を認定
 ・同居家族や出生地周辺で認定患者がいること
 ・残されていた臍の緒のメチル水銀値など
1億500万円 介護費用や後遺症への慰謝料など
2人 請求
 各1600万円
 (チッソ慰謝料
        最低額)
220万円 控訴する方針
440万円
5人 各症状は心因性や他の病気が原因の可能性が高い
 ・家族に認定患者がいないこと
 ・家族の水銀摂取状況など

  棄却


原告は熊本、鹿児島両県に住む54~61歳の男女8人。
1953~1960年(水俣病公式確認は1956年)に水俣市、津奈木町、芦北町、鹿児島県長島町で出生した。

胎児期・小児期からチッソの排水でメチル水銀に汚染された魚介類を食べた影響で、水俣病の典型症状である手足の感覚障害や、頭痛、めまい、こむら返りなどがあり、肉体的・精神的な苦痛を受けていると訴えた。
「ほかに原因を証明できなければ水俣病と判断できる」と主張した。

うち7人は、認定患者がチッソとの協定に基づいて受け取る慰謝料の最低額と同じ1600万円、全身の機能障害がある1人は1億円を請求した。

被告側は、原告がメチル水銀を摂取した客観的証拠は乏しく、症状は別の病気などが原因と反論。
仮にメチル水銀中毒が原因としても、2001年の関西訴訟大阪高裁判決が認めた損害額と比べ、「原告7人の症状は特に強いとも言えず、1600万円は高額すぎる」と主張した。

2001年の高裁判決は、排水規制をしなかった国と県の過失を指摘、水俣病の認定基準も間違っているという判断を下し、「汚染された魚介類を多く食べ、指先や舌先の感覚に障害があれば認定できる」との基準を示し、女性ら37人を水俣病と認定、国と県、チッソに原告1人あたり障害の程度を考慮して400万円、600万円、800万円の賠償責任があることを認めた。

2004年10月の最高裁判決は二審・大阪高裁判決が示した基準を支持し、高裁判決が確定した。

ーーー

水俣病を巡っては、最高裁が2013年4月、複数症状を要件とした現行の認定基準よりも幅広く患者認定する道筋を示した。

・司法が独自に患者認定審査審査しうる。
・環境庁の「手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせ」を条件とするという「52年判断条件」に基づく高裁判決を破棄。

   「52年基準」に合うものは個別的な因果関係について立証の必要がないとするものにすぎない。
   それ以外でも諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、水俣病と認定する余地を排除するものとはいえない。

2013/4/17  水俣訴訟、最高裁判決

これを受けて環境省が2014年3月に打ち出した新指針は、「水俣病を発症するに至る程度のメチル水銀」の摂取を証明する客観的な資料の提出を求めている。

2013/1/14  水俣病認定基準 

今回の判決は「汚染された魚を多食した」という証言だけでは証明が不十分との立場を示した。

 

 

 

大阪大学発ベンチャーのマイクロ波化学株式会社は4月、マイクロ波を使った世界初の化学品量産工場を大阪市で稼働させる。工場廃油などを原料に環境負荷の低い脂肪酸エステルを製造、東洋インキなどに供給する。マイクロ波を使うと、熱と圧力で化学反応を起こす従来の製造法に比べ、エネルギー消費量を約3分の1に減らせるという。
    (2014/3/31  日本経済新聞)


脂肪酸エステルは、インキやプラスチックなど幅広い用途で製品の原料となるが、石油や大豆油などを原料としている。

マイクロ波化学では、工場から排出される動植物系の工業廃油から脂肪酸エステルを製造するプロセスを開発した。

動植物系の工業廃油には遊離脂肪酸が多く含まれており、従来法では2段階反応が必要であった。
反応性の高いマイクロ波プロセスを用いることでワンポット合成が可能となり、商業レベルでの製品供給を実現した。

生産される脂肪酸エステルは、超低エネルギー反応で、 高純度の特性を有している。

マイクロ波化学は2013年2月、世界初となる量産型マイクロ波化学プロセスを本格稼働させ、東洋インキ向けに、商業化ベースで環境対応型化成品である脂肪酸エステルの出荷を開始した。

このたび、年産3200トンの大規模マザー工場を立ち上げ、試運転中で、4月下旬にも出荷を始める。


ーーー

マイクロ波化学は2007年8月に設立された(当初名はマイクロ波環境化学)。

大阪大学工学研究科マイクロ波化学共同研究講座と共同で、「省エネ・高効率・コンパクト」 な革新的技術であるマイクロ波プロセスの開発を進めてきた。

取締役CSOの塚原保徳氏は大阪大学大学院工学研究科特任准教授で、マイクロ波化学、光化学専攻。


マイクロ波はレーダーや加速器、電子レンジなど幅広く利用されている。

化学反応にマイクロ波を適用した場合、革新的な新規反応場を用いた魅力的な化学プロセスとなることは知られている。

   
マイクロ波利用で期待できる効果
 ・急速・選択加熱
 ・内部均一加熱
 ・非平衡局所過熱


化学プロセスでの利点
 ・反応温度の低下
 ・反応時間の短縮
 ・消費エネルギーの削減
 ・装置の小型化

これまで化学プロセスにおいて実用化されてこなかったのは、スケールアップが困難であったことが一因である。


同社では2009年春に世界初となる日産2トンレベルの燃料製造用の 完全フロー型マイクロ波リアクター(1号機)の開発に成功、2011年には化成品製造用の日産2トンレベルの大規模完全フロー型マイクロ波リアクター(2号機)を立上げた。

同社はさらに、化学反応をより効率よく促進させるため、マイクロ波に適したハイブリッド触媒を開発した。


同社では、将来的にはエステル化反応を核として、油脂化学の上流から下流までの各種プロセスにマイクロ波を用いて天然資源から燃料からプラスチックまで製造することのできるバイオリファイナリーの実現を目指す。

1) 基礎化成品 〜石油由来のガスやポリマー

マイクロ波化学プロセスは、ガスやポリマーの製造プロセスにおける気固反応系や液固反応系において、マイクロ波に適した触媒を用いることにより、反応温度低下、反応時間短縮が可能になる。

それに伴い、製品の高純度化、触媒の長寿命化を実現する。

2) 機能性化成品 〜ナノ粒子の製造

電子材料を構成する化成品においても高純度化、ナノ粒子化が求められている。

マイクロ波利用の利点
 ・反応溶液の急速加熱
 ・均一な粒子が合成可能
 ・内分均一加熱
 ・選択加熱が可能
 ・短時間で反応終了

3) 未利用資源の活用 〜バイオディーゼル燃料

エネルギー源として期待されているのが、油脂を細胞内に含み「石油を作る藻」と言われる微細藻類だが、細胞内に油脂があるため細胞壁を壊し油脂を抽出しないとバイオ燃料として利用できなかった。

デンソーとマイクロ波化学は共同で、マイクロ波を用いて、世界で初めて藻から抽出したクルードオイルをバイオ燃料( 脂肪酸メチルエステル:FAME)へ変換することに成功した。
 

 

 

2014/3/27の記事米エネルギー省、西海岸からの非FTA締結国向けLNG輸出を承認)で以下の通り付記した。

米議会は3月25日、ウクライナ情勢を受け、米同盟国がロシアの天然ガスに依存しなくても済むよう、WTO加盟国に政府の許可なしでLNG輸出を認める法案の審議を開始した。但し、仮にこの法案が通っても、実際の輸出には5~6年かかる。

この法案はH.R. 6(Domestic Prosperity and Global Freedom Act)で、3月6日にコロラド州出身の下院議員Cory Gardner その他により下院 Energy and Commerce Committeeに超党派で提出された。

ロシアにエネルギー供給を依存し翻弄されているウクライナや他の東欧諸国を含む世界の同盟国に米国のLNGを輸出するのが目的で、内容は以下の通り。

  LNGの輸出を規制しているNatural Gas Act を下記の通り修正する。

・現在は「FTA締結国」向けにはLNGの輸出は認められているが、これを「WTOメンバー国」向けに変更する。

・現在、輸出承認を待つ全ての申請(3月6日までのFederal Register記載=24件)について遅滞無く承認する。
 

Gardner議員は、「この法案は、東欧及び世界の同盟国を支援するとともに、コロラドで雇用を生み、経済繁栄をもたらすものだ」としている。

Energy and Commerce CommitteeのFred Upton委員長も、「この法案を通すことは、米国が米国のエネルギー資源を活用し、自国のためだけでなく同盟国にも供給し、Putin大統領に断固として譲らず、ロシアの影響力を抑えるという明確なシグナルを送ることとなる」と述べた。

ーーー

既報のとおり、この法案が通っても、実際の輸出には5~6年かかり、当面の解決策にはならない。

WTOメンバー国に認めるように変更すると、中国等も対象となる。これは米国内で問題となるのは必至である。
 しかし、中国のみ除外することはWTOの規定で認められない。
 従来どおり「FTA締結国」向けとし、 EUとのFTAを早期に締結する方がよいかも分からない。

なお、米国の天然ガス輸出規制そのものがGATT違反との説がある
    2013/2/5 米国の天然ガス輸出規制はGATT違反? 

欧州向けの輸出が認められた場合、欧州着の価格の試算は次の通り。(百万BTU当たり)

米国天然ガス価格(仮)    6ドル
液化費用                  3ドル
運賃                      1ドル (Platts LNG Forum, Tokyo 2012/9/25資料では東海岸→西欧は1.05ドル) 
再ガス化費用(既存設備) 0.5ドル
合計                    10.5ドル

欧州での天然ガス価格は以下の通りで、米国のガス価格が6ドルであれば、ほぼ見合うこととなる。

但し、LNG輸出が自由となった場合(環境規制でシェールガスの新規採掘が難しくなる可能性もあり)、Dow Chemical が懸念するように天然ガス価格がもっと上昇し、米国産LNGを使用するメリットが減る恐れがある。天然ガス価格上昇は日本にも影響する。

ソース:http://ecodb.net/pcp/imf_usd_pngaseu.html

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現在、米国で非FTA国向け輸出の承認を待っているのは、下記の24件。

  Docket No. 名称 運営企業 立地 数量 期間 備考
1 12-77-LNG Oregon LNG Leucadia National Corporation Warrenton, Oregon 1.3bcf/d  25年  カナダ産天然ガスが主体
2 12-97-LNG Corpus Christi Liquefaction Project Cheniere Marketing, LLC Corpus Christi 2.2 Bcf/d 22年  
3 12-146-LNG ELS Project Excelerate Liquefaction Solutions I, LLC Calhoun County, Texas 1.33 Bcf/d
(1000万トン/y)
22年  
4 11-141-LNG Carib Energy (USA) LLC EFG Industries 未定 3.44 Bcf/d 25年 中南米、カリブ向け輸出
5 12-05-LNG Gulf Coast LNG Export, LLC 個人企業 Brownsville, TX 2.8Bcf/d 25年  
6 12-100-LNG Southern LNG Company, L.L.C.   Savannah, Georgia 0.5Bcf/d
(400万トン/y)
20年  
7 12-101-LNG Gulf LNG Liquefaction Company, LLC   Pascagoula, Mississippi 1.5 Bcf/d
(1150万トン/y)
20年  
8 12-123-LNG CE FLNG, LLC Cambridge Energy Group Plaquemines Parish, LA 1.07 Bcf/d
(800万トン/y)
   
9 12-156-LNG Golden Pass Products LLC   Sabine Pass, TX 1560万トン/y 25年  
10 12-184-LNG South Texas LNG Export Project Pangea LNG (North America) Corpus Christi 800万トン/y 25年  
11 13-04-LNG Trunkline LNG Export, LLC TLNG Export Lake Charles 1500万トン/y 25年  
12 13-26-LNG Freeport-McMoRan Energy LLC McMoRan Exploration Co. Main Pass Energy Hub Deepwater Port,  LA 2400万トン/y 30年  
13 13-30-LNG Sabine Pass Liquefaction, LLC Cheniere Energy Cameron Parish,
Louisiana
0.28Bcf/d 20年 Total Gas & Power North America向け
14 13-42-LNG Sabine Pass Liquefaction, LLC Cheniere Energy Cameron Parish,
Louisiana
0.24Bcf/d 20年 Centrica plc向け
15 13-69-LNG Venture Global LNG, LLC   Cameron Parish,
Louisiana
500万トン/y 25年  
16 13-116-LNG Eos LNG LLC   Brownsville, TX 1.6Bcf/d 25年 African American minority-owned business
17 13-118-LNG Barca LNG LLC   Brownsville, TX 1.6Bcf/d  25年  
18 13-121-LNG Sabine Pass Liquefaction, LLC Cheniere Energy Cameron Parish,
Louisiana
0.86Bcf/d 20年  
19 13-132-LNG Magnolia LNG, LLC Liquefied
Natural Gas Limited
Lake Charles, Louisiana 1.08Bcf/d 25年  
20 13-147-LNG Delfin LNG LLC Fairwood Group floating liquefaction project
West Cameron Block 167 of Gulf of Mexico
1.8Bcf/d
(1300万トン/y)
20年  
21 13-153-LNG Waller LNG Services, LLC   Cameron Parish,
Louisiana
0.19Bcf/d
(150万トン/y )
25年  
22 13-161-LNG Gasfin Development USA, LLC   Cameron Parish,
Louisiana
0.2Bcf/d
(150万トン/y )
20年  
23 13-160-LNG Texas LNG LLC   Brownsville, TX 0.27Bcf/d
(200万トン/y )
25  
24 14-29-LNG Louisiana LNG Energy LLC   East Bank of the Mississippi River down-river from the Port of New Orleans 200万トン/y 25年  


注 Sabine Pass Liquefaction, LLC は承認第1号として
2.2 Bcf/d(年間1600万トン) の輸出を認められている。



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