2023年6月アーカイブ

生成AI(生成的人工知能)を活用した臨床段階のバイオテクノロジー企業で、香港に本社を置き、世界6カ所に開発拠点を持つInsilico Medicineは6月28日、生成AIを用いて発見・設計された世界初の抗線維化小分子阻害剤であるINS018_055の第II相臨床試験において、患者への初回投与が完了し、さらなる評価のための第II相臨床試験を開始したことを発表した。INS018_055は特発性肺線維症の治療薬として2023年2月にFDAより希少疾病用医薬品指定を受けた。

肺の難病「特発性肺線維症(IPF)」は 肺胞の壁(間質)に線維化が起こって肺が固くなり,十分に膨らみにくくなるために,呼吸が上手くできなくなる原因不明の病気である。患者数は世界で300万〜500万人とされるが、これまで効果的な薬は見つかっていなかった。

Insilico MedicineはAIを駆使して膨大な医療データを解析。IPFの発症や進行に関わるたんぱく質などを見つけ、その働きを抑える物質を治療薬候補として選び出した。省力化できるため、コストや時間を大幅に短縮できる 。

INS018_055は、Insilicoが開発したターゲットを同定するエンジンPandaOmicsによって発見された新規ターゲットと、生成的化学エンジンChemistry42によって設計された新規分子構造を持つ、ファーストインクラスの可能性を有する低分子阻害剤である。

ニュージーランドと中国で実施された第I相試験において、INS018_055は、78名と48名の被験者(健常者)を対象に、単回投与漸増試験と反復投与漸増試験を中心としたコホートに分けて試験が行われた。国際共同第I相試験では、INS018_055の安全性、忍容性、薬物動態プロファイルが良好であることを示す一貫した結果が得られ、第II相試験の開始を後押しした。

Insilico Medicineの共同CEO兼CSOは、「INS018_055は、線維症と炎症の両方に対する可能性が実証されており、世界中の患者に新たな選択肢を提供できる可能性があ る。INS018_055の第II相臨床試験における初回投与の実施は、Insilicoにとって重要なステップというだけではなく、AIを活用した創薬開発のマイルストーンでもあ る。 我々は、世界のアンメット・メディカル・ニーズに対して、AIを活用したさらなる成果を期待している」と述べた。

さらに幅広い患者群で本候補薬を評価するため、米国と中国合わせて約40施設で60名の 特発性肺線維症(IPF)患者を募集する予定。

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Insilico Medicineは商業的に利用可能な統合AIプラットフォームPharma.AI を採用し、2021年以降、社内の創薬プログラムとして 肝臓がんや乳がんなど12の前臨床候補化合物を指名・発表し、うち3件がヒト臨床試験に進んでいる。

同社は2016年、新規分子の設計に生成AIを利用するというコンセプトを初めて査読付きの学術論文雑誌で発表した。その後、生成的敵対ネットワークベースのAIプラットフォーム向けに複数のアプローチと機能を開発・検証し、そのようなアルゴリズムを、生成生物学、化学、医学を含む市販のPharma.AI プラットフォームに統合した。

同社には中国複合企業の復星国際や米投資会社のWarburg Pincusが出資しているほか、米ベンチャーキャピタルのB Capital Groupも投資している。

中国のイノベーション主導の国際ヘルスケアグループの国際医薬健康産業集団上海復星医薬とInsilico Medicineは2022年1月、AIテクノロジーを用いて、世界中の複数のターゲットを対象とした創薬の発見と開発を進めるための共同開発契約を締結した.

複星医薬がInsilicoに出資するとともに、Insilicoは共同開発に対して1,300万ドルの前払い金と、マイルストーンベースの支払いおよび商業化利益を受領する予定。

製薬大手の仏Sanofiや米 Johnson & Johnsonとは、将来的にインシリコの技術をライセンス供与するとの協定を結んだ。

Insilico Medicineは2022年11月8日、Sanofiと複数年、複数標的の戦略的研究提携契約を締結したと発表した。InsilicoのAIプラットフォーム「Pharma.AI」を活用し、最大6つの新たな標的用の医薬品開発候補を提案する。

契約一時金および標的推薦料として最大2150万ドル、さらに1桁台半ばから2桁台前半のロイヤリティが含まれる

Insilico Medicineは2020年11月10日J&JのJanssen Pharmaceutica N.V. とのマルチターゲット創薬に関する契約を締結した。

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Insilico Medicineは 独自のAI駆動型標的同定エンジンPandaOmicsで膨大なデータセットを精査し、ALS関連遺伝子を発見した。

PandaOmicsは、AIを活用した生物学的標的探索プラットフォームで、高度な深層学習モデルとAIアプローチを活用し、Omics AIスコア、テキストベースのAIスコア、財務スコア、キーオピニオンリーダースコアを組み合わせることで、与えられた疾患に関連する標的遺伝子を予測するもので、現在、学術・産業の両分野で採用されている。同アルゴリズムは、新規性、信頼性、商業的扱いやすさ、創薬可能性、安全性など、標的選択の判断材料となる重要な特性に基づき、タンパク質標的に優先順位を付けることもできる。

世界中で70万人以上の人々が、ルー・ゲーリッグ病としても知られるALSに苦しんでいる。ALSの患者は、自発的な筋肉の動きが失われていくため、歩く、話す、食べる、そして最終的には呼吸をすることもできなくなる。ALSの進行は概して早く、患者の平均余命は発症から2-5年である。現在承認されているALS治療薬では、機能の喪失を食い止めたり、元に戻したりすることはできない。


研究者チームは、膨大なデータセットを活用し、新しい治療薬用の標的となり得る疾患関連遺伝子を発見した。 同社独自のAI駆動型標的発見エンジンPandaOmicsは、公開データセットの中枢神経系(CNS)サンプルやAnswer ALSから直接提供を受けたiPS細胞由来の運動ニューロン(diMN)の発現プロファイルの分析に役立てられた。

CNSとdiMNのサンプルから17の信頼性の高い標的と11の新規治療標的が同定された。これらの標的は、ALSの最も一般的な遺伝的原因を模倣したモデルでさらに検証され、そのうち18の標的(64%)がALSと機能的相関を持つことが確認された。

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Insilico Medicineは2022年3月、PandaOmicsにより、老化および加齢に伴う疾患に対する潜在的な両用治療標的を特定する独自のアプローチを確立した。このアプローチを裏付ける研究が、Aging(2022年3月号)に掲載された。

PandaOmicsプラットフォームを活用し、複数の疾患領域にわたる14の加齢関連疾患と19の非加齢関連疾患についてターゲット同定を行い、加齢関連疾患のターゲットを同定した。

包括的な評価の一環として、145の遺伝子が加齢に関連する潜在的な標的として考慮され、更には、加齢の特徴に対して、マッピングをした。その中には、 高い薬物投与能力を示す69の標的、 潜在的に中~高程度の薬物投与能力を持つ、48の中位の新規標的、潜在的に中程度の薬物投与能力を持つ28の高度新規標的が含まれていることが同定できた。

同社のCEOは、「複数の加齢関連疾患と加齢そのものを標的とした薬剤を開発することで、疾患の治療だけでなく、寿命の延長や新たな薬剤再利用の候補を提供し、前例のない健康利益をもたらすことができる可能性がある。今回の研究は、PandaOmics AI搭載ターゲット発見プラットフォームが、特定の疾患だけでなく、複数の種類の疾患にわたる新規の多目的ターゲットを特定する力を実証した。生物学者や臨床医にとって、コスト削減と時間効率の良い方法で、その治療可能性 をさらに調査できるようになると考えている」と述べた。

https://www.aging-us.com/article/203960/text





塩野義製薬は6月26日、国連が支援する公衆衛生機関であるMedicines Patent Pool(MPP)との間で2022年10月に締結されたヘッドライセンス契約に基づき、ライセンス先であるMPPが、塩野義製薬が開発したCOVID-19治療薬ゾコーバ®錠125mg(エンシトレルビル)の製造に関するサブライセンス契約を、ジェネリック医薬品メーカー7社と締結したと発表した。

塩野義製薬と、国連が支援する公衆衛生機関であるMedicines Patent Poolは2022年10月4日、塩野義製薬が開発中のCOVID-19治療薬エンシトレルビル フマル酸について、薬事承認を取得した後に、低中所得国に広く提供することを目的としたライセンス契約を締結した。


両者で合意された本契約に基づき、Medicines Patent Poolは低中所得国へのCOVID-19治療薬を広く提供することを目的に、適格な品質で本薬を製造可能なジェネリック医薬品メーカーに対して、本薬の生産および供給に関するサブライセンスを付与することができ、117ヵ国に本薬を供給することが可能となる。

塩野義製薬は、世界保健機関(WHO)がCOVID-19を国際保健上の緊急事態に指定している期間は、本契約の対象となる国で発生する売上に対するロイヤリティの受領を放棄する。

Medicines Patent Pool代表は「今回の公衆衛生に配慮したライセンス契約によって、低中所得国に住む人々がCOVID-19と戦うための適正な価格での治療選択肢を拡大することは、多くの死者数を生んでいるパンデミックに終止符を打つための我々の取り組みを後押ししてくれるものです。
塩野義製薬の関係はこれが初めてではありません。Medicines Patent PoolとViiV(塩野義、Pfizer、GSKのJV)の契約を通じて低中所得国に広く提供されているHIV治療薬のドルテグラビルは、塩野義製薬からViiVにライセンス供与されたものです。
今回の塩野義製薬との提携は、MPPにとって初の日本企業とのパートナーシップです。このパートナーシップが、今後、他の企業との提携を加速するきっかけになることを期待しています」と述べた。

Medicines Patent Pool(MPP)は国連が支援する公衆衛生団体で、低・中所得国の人々の生命を救う医薬品へのアクセスを向上させ、その開発を促進するために活動している。現在までにMPPは18のパテントホルダーと契約を締結している。
(HIV抗レトロウイルス薬13件、HIVテクノロジープラットフォーム1件、C型肝炎直接作用型抗ウイルス薬3件、結核治療薬1件、がん治療薬1件、長時間作用型技術4件、COVID-19経口抗ウイルス治療薬3件、COVID-19テクノロジー12件)

*COVID-19ではMerckの経口治療薬モルヌピラビル、PfizerのNirmatrelvir、塩野義の本件が対象である。
なお、Gilead Sciencesの抗ウイルス薬レムデシビル やAbbvie(特許権者Abbott)のカレトラ(LPV/r+Ritonavir) はMPPを通さずに多数の国に無償ライセンスしている。


今回、サブライセンス契約を締結したジェネリック医薬品メーカー7社は以下の通り。

中国の3社(Zhejiang Charioteer Pharmaceutical / Zhejiang Lepu Pharmaceutical / Shanghai Fosun Pharmaceutical Industrial Development )
インドの2社(Hetero / Laurus Labs Limited)
ウクライナの1社(Joint Stock Company Lekhim)
ベトナムの1社(Stellapharm J.V. )

Medicines Patent Poolが日本の製薬企業との間で初めて締結したヘッドライセンス契約で、7社は今後117の低中所得国でエンシトレルビルの製造・供給が可能となる。

JSRは6月26日、産業革新投資機構が自社にTOBを実施すると発表した。JSR株を100%取得する。JSRはTOBへの賛同方針を表明した。

2023/6/26 政府系ファンドの産業革新投資機構、JSRを1兆円で買収

価格は1株あたり4350円で総額9065.4億円となる。6月26日の終値は3934円だった。報道前の6/23終値の3,234円に対し34.5%のプレミアム。

JSRは主要株主の米投資ファンド、Value Act Capital (6.2%保有)から社外取締役を受け入れているが、Value ActはJSRがTOBに賛同する方針を示したことについて「歓迎する」と表明した。「半導体、ディスプレー技術およびライフサイエンス分野におけるグローバルチャンピオンになる目的に沿ったものである」とした。

JSRは業界再編を推進するために「短期的な業績への影響にとらわれない」と判断し、非上場化を受け入れた。TOB後は業革新投資機構が指名する役員を選任することも検討している 。

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産業革新投資機構によると、「2022年11月ごろ、JSRから相談があった。JSRは半導体素材で世界的にも高い競争力を持つ。そんな企業が危機感を抱き再編を検討していることは、企業として健全だと思った。日本企業の競争力向上につながり、JICのビジョンとも合致した」 。

JSRは、半導体の性能を高める微細化の難易度が年々増し、研究開発投資もより一層欠かせなくなるが、単独では投資規模の拡大についていけないと判断し、同業他社との事業再編を目指す。

JSRのエリック・ジョンソン社長は「中長期な価値の創出が目的だ」と述べ、産業革新投資機構の傘下に入り、国内に有望なメーカーが多い半導体素材業界で、「再編を先導したい」と述べた。
「基本的に日本の半導体材料業界を対象にしている。(国内企業は)能力は優れているが、プレーヤーの数が多く、各社が重複した投資をしている。効率向上によるメリットが大きいと考えた。同時に(事業の)規模を拡大するのは不可欠な課題だ。日本における(再編の)機会が大きいと考えた」

産業革新投資機構では、買収後にJSRの強みの半導体材料に重点的に経営資源を投じることで、政府が力を入れる半導体供給網の強化につなげることができると判断した。 「日本の半導体素材は欧米と違ってプレーヤーが分散しており、産業としての投資効率がよくない。事業再編で欧米と戦える強者連合を作りたい。JSRは半導体の前工程から後工程まで幅広い強みがあり、手を組める企業の選択肢は多い。半導体素材産業の再編実現に100%コミットしたい」としている。

JSRは医薬品受託製造などのライフサイエンス事業にも注力しているが、引き続き成長を目指し、産業革新投資機構の支援を受ける 。

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これまでの政府系ファンドの案件は順調だったとは言いがたい。JDI (Japan Display)は産業革新機構から派遣された役員が(「社内の反対を押し切って」とされる)白山工場(液晶ディスプレイ)の建設を決め、これが命取りとなった。産業革新機構(INCJ)時代に投資した有機ELディスプレーパネルのJOLEDは破綻した。

    官民ファンドの功罪:産業革新機構、シャープ、JDI、ルネサスの事例分析

これについて聞かれたJSRのJohnson社長は、「我々は明確な戦略があり、これから業界再編の機会を模索していく。同じような考えを共有するパートナーと取り組んでいきたい。多くのパートナーが、いまこそ我々のR&D(研究開発)投資の効率を高める場面だと言っており、 産業革新投資機構がその戦略を実現するための、いい『てこ』になる」と述べた。

買収後のJSRの意思決定がどのような形でなされるかによると思われる。

米エネルギー省の Loan Programs Officeは6月22日、Fordと韓国のSK InnovationとのJVのBlueOval SK LLCが建設する3つの電池工場 92億ドルを融資すると発表した。JVはFord MotorのFord とLincoln電気自動車用の電池を生産する。

バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環である。

バイデン大統領は、何十年もの間、米国は雇用を輸出し、製品を輸入してきた一方、インフラ、クリーンエネルギー、半導体、バイオテクノロジーなどの重要な分野では他国が米国を追い越してきたとし、国内製造業の活性化、サプライチェーンの強化、米国の競争力向上、高報酬雇用の創出を目指している。

国のインフラの再構築、民間製造業への4350億ドル(約62兆円)以上の投資、高収入の雇用創出、気候危機に対処し地域社会をより強固にするクリーンエネルギー経済の構築を通じて、アメリカ経済をボトムアップとミドルアウトから成長させることを目的としている。

今回のは先端技術を使った車の生産を支援する低利融資プログラムで、案件ベースでの融資規模は過去最大とみられる。

米国 電池の国内生産拡大は、2030年までに米国の新車販売の少なくとも50%をEVにし、2035年までに電力のCO2排出をネットゼロに、2050年までにネットゼロ社会にするという政権の目標達成のために必須である。

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Ford Motorは2021年9月27日、114億ドルを投資し、米国に電動ピックアップトラック F-150 Lightning Electric Truck の組立工場と、3つの電池工場を新設すると発表した。

3つの電池工場についてはFord とSK InnovationのJVのBlueOvalSKが建設、運営する。バッテリー工場に両社がそれぞれ44億5000万ドルずつを投資し、組立工場にはFord単独で25億ドルを投資する。

テネシー州Stanton にBlue Oval Cityを建設する。電動ピックアップトラック「F-150 Lightning Electric Truck」の組立工場と、新JVのBlueOvalSKのリチウムイオン電池工場及び主要サプライヤーの拠点とリサイクル施設が建設される。投資額は56億ドル。

ケンタッキー州Glendale には58億ドルを投じてBlueOvalSK Battery Parkを建設する。新JVのBlueOvalSKが2つの電池工場をつくる。

電池工場の年間能力はテネシー工場が43GWh、ケンタッキー工場が86GWhで、合計129GWhとなる。フル稼働時にEV約220万台のバッテリーを供給できる。

2025年に操業を開始する予定。

2021/10/1 Ford Motor、114億ドルを投じ、電動ピックアップトラックと3つの電池工場を建設


米エネルギー省は2022年12月12日、GMとLG ChemのJVの
Ultium Cells LLCののオハイオ州とテネシー州、ミシガン州のリチウムイオンバッテリーセル製造施設の建設資金として、最高25億ドルの融資を承認したと発表した。

この融資は、融資プログラム局(LPO)が「先端技術車両製造(ATVM)ローンプログラム」(2007年のエネルギー独立安全保障法(EISA)によって認められた融資プログラム)の下で、米国内のバッテリーセル製造計画に融資を実行した最初の例となる。

2022/12/16 米政府、GMとLGのバッテリー合弁会社に25億ドルの融資

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GMとLG Chemは2019年12月5日、オハイオ州Lordstown の近辺に23億ドルを投資してEV用バッテリー工場を建設する計画を発表した。
折半出資の合弁会社を通じて最大で総額23億ドルを投資する。

GMは2020年5月1日、JVの"Ultium Cells LLC"が当局の承認を受け、スタートしたと発表した。

Ultium Cells LLCは2021年4月16日、テネシー州スプリングヒルに約23億ドルを投資し、新型電池Ultiumバッテリーの工場を建設すると発表した。

GMは2022年1月25日、EVの生産能力の強化に向けて、米国で3つ目となる新たな電池工場の建設を発表した。

LG Energy Solution との50/50 JVのUltium Cells LLCが26億ドルを投じ、ミシガン州 Lansing に第3工場を建設する。

本年夏に土地の整備を始め、電池生産の開始は2024年後半となる。

2022/1/28 GM、米国で3つ目の電池工場を建設、電気自動車生産投資も


電池関連事業では、2022年4月にオーストラリアの鉱物探査会社SYLA Technologiesがリチウムイオン電池材料のルイジアナ州での生産拡大に対して最大1億700万ドルの承認を受けた。

2023年2月には、カナダの Li-Cycle Holdingsが、「先進技術車両製造(ATVM)ローンプログラム」を通じて、3億7500万US$の条件付き融資を受けることを発表した。バッテリー材料リサイクル企業に対する初の融資である。
同社は、NY州Rochester近郊に北米初の商業用湿式製錬の資源回収施設であるRochester Hubを開発する。

官民ファンドの産業革新投資機構は、半導体素材大手のJSRを買収する方針を固めた。買収額は1兆円規模になる見込みで、株式の上場を廃止し、半導体事業への集中的な投資や事業再編をやりやすくし、国際的な競争力を高めるねらい。

機構がおよそ5000億円を出資するほか、みずほ銀行がおよそ4000億円を融資、優先株や劣後ローン計1000億円を複数の銀行が引受け、あわせて1兆円規模の資金を投じる。

JSRの株式時価総額は6740億円である。(208,400千株 6/23終値@3,234 )
なお、年度末の借入金が長短合計1,582億円ある。

海外を含めた競争当局の審査を経て、年内にもTOBを行って買収する方針で、手続きが順調に進めばJSRは来年中にも上場廃止となる見込み。

JSRは6月24日、本件について「検討していることは事実だが、本日現在決定している事実はない」とのコメントを発表した。26日に開く取締役会に付議する予定とした。

付記

JSRは6月26日、産業革新投資機構が自社にTOBを実施すると発表した。JSR株を100%取得する。JSRはTOBへの賛同方針を表明した。

価格は1株あたり4350円で総額9065.4億円となる。6月26日の終値は3934円だった。報道前の6/23終値の3,234円に対し34.5%のプレミアム。

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米国や欧州、韓国など世界主要国は半導体を戦略物資と位置づけ、開発・生産拠点の誘致に動く。半導体メーカーのサプライチェーン(供給網)が各地に分散するなか、素材メーカーの投資も増す。

バイデン大統領は2022年8月9日、国内半導体産業支援法「CHIPS法」案に署名し、同法が成立した。中核的要素は、半導体産業向けインセンティブ制度のCHIPSに527億ドルの予算を充当することにある。

2022/7/29 米議会、「CHIPS法」を可決 

韓国政府は2021年5月13日、ソウル南方にあるサムスン電子の平沢事業所で「K(韓国型)半導体戦略」の報告会を開き、「総合半導体強国」の実現に向けた戦略を発表した。

半導体メモリだけではなくシステム半導体(非メモリであるシステムLSI 製造やファウンドリサービス)でも世界一を目指す。

2021/5/20  韓国、官民協力で「K半導体ベルト」構築 


経産省は2022年11月11日、2020年代後半の次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けた取組について公表した。次世代半導体は、量子・AIなど大きなイノベーションをもたらす中核技術で、海外の研究機関や産業界とも連携しながら、国内のアカデミアと産業界が一体となって取り組むことで、我が国全体の半導体関連産業の競争力強化を目指す。

トヨタなど国内8社は同日、先端半導体の国産化に向けた新会社Rapidusを共同で設立したことを発表した。

2022/11/14 次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けた取組、先端半導体の国産化へ新会社  

経済産業省が2023年6月に公表した国内の半導体産業などの強化に向けた新たな戦略(半導体・デジタル産業戦略)では、先端半導体の技術開発を加速させ2030年には国内の関連事業の売上を今の3倍程度の15兆円に拡大させる目標を掲げている。

売上高の増加目標
2030年に国内で半導体を生産する企業の合計売上高(半導体関連)として、15兆円超を実現し、我が国の半導体の安定的な供給を確保する。


JSRは「フォトレジスト」(詳細後記)では世界シェアがトップクラス。


フォトレジストはシリコンウエハーに回路パターンを転写する際に必要な液体樹脂で、半導体の製造に欠かせない。

素材メーカーが今後、直面するのが難易度が増す微細化への対応で、一段の微細化の実現には研究開発の資金が必要となる。

世界各国は半導体を戦略物資と位置づけ、技術や生産拠点の囲い競争が激しくなっている 。

JSRは 「現状の会社の規模では生き残れない」とし、これまで水面下で非上場化を検討してきた。JICの買収を受け入れる判断を後押ししたのは、半導体の競争環境の激変である。

機構はJSRの非上場化によって半導体事業への集中的な投資や事業再編をやりやすくし、国際的な競争力を高めるねらいがある。

豊富な資金力を背景に半導体素材分野で規模を追求したM&Aも実行に移せる。

限られた資金を株主還元でなく成長投資に集中させる狙いもあるとみられる。JSRの外国人保有比率は54%で、経営効率化に向けた外圧が強まっていた。

機構の傘下に入り、中長期の視点で腰を据えた改革が可能となる。

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JSRは旧称日本合成ゴムで、日本における合成ゴム事業育成のために1957年12月に「合成ゴム製造事業特別措置法」により設立された。合成ゴム事業は完全に創業の事業である。

設立12年後の1969年4月に「日本合成ゴム株式会社に関する臨時措置に関する法律を廃止する法律」が第61国会で可決成立、即日公布施行、純民間会社となった。 略称はJSR(=Japan Synthetic Rubber Co.,Ltd.)である。

今回、政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)の傘下に入ると、約55年ぶりに「国策会社」に回帰する ことになる

1979年に フォトレジスト、1988年に液晶ディスプレイ材料を発売するなど、多角化を進めたが、創立40周年を期に1997年、現在の社名であるJSR㈱ に変更した。
社名から「合成ゴム」を外し、化学技術をベースにしたエクセレントカンパニーでありたいという意志を表現したとした。

JSRは2021年5月11日、合成ゴム事業をENEOSに売却することを発表した。合わせて韓国のEPDM製造販売のJVの錦湖ポリケムをJV相手のKumho Petrochemicalに譲渡すると発表した。
エラストマー事業全体の公正価値評価を実施して減損損失を認識、2021年3月期に772億円を減損損失として計上した。

2022年4月1日、ENEOSによる買収が完了、 ENEOSマテリアルが事業を開始した。

2021/5/13 JSR、合成ゴム事業をENEOSに売却、韓国の合成ゴムJVも相手先に売却  

他方でJSRは2021年9月17日、米国の次世代EUV用メタルレジストメーカーであるInpriaの79%分の株式を追加取得し、従来取得済みの21%と合わせて完全子会社化することを発表した。

半導体製造工程のなかで、微細な素子形成や配線加工にはフォトリソグラフィー技術が使用されている。その時に用いられるマテリアルがフォトレジストで、シリコンウエハ上に塗布して、レーザー光で露光することにより、露光部と未露光部との現像液への溶解速度差を利用して微細なパターンを形成することが出来る。


JSRでは、高感度汎用品から超高解像度品まで、g線、i線、KrF、ArF、EUVなどの様々な波長の光源に対応した、高性能なフォトレジストを取り揃えている。現在、JSRはこれらの製品においてグローバルシェアトップクラスで、世界中の半導体製造には、JSRのフォトレジストが幅広く使用されている。

半導体製造に使用される最先端リソグラフィー工程では、EUV技術の活用が広がっている。今後の半導体製造においては、3nm、2nm世代など微細化がさらに進み、高解像度のEUVフォトレジストが必要とされている。
JSRでは以前からEUV向けフォトレジストで高い信頼性により採用を広げていたが、今後の微細化に向けた有望素材として注目されるメタルレジストの強化に向けてインプリアの買収を決めた。

半導体は小さなチップに非常に細かい配線が描かれており、その配線パターンを「光照射」によってつくるのが「露光」プロセス。
光照射によって変化する材料(レジスト)の膜をウェハー上につくった状態で露光した後、光が当たった部分のレジストを除去するエッチングと呼ばれる工程にかけることで、パターンが形成される。

光を照射するパターンを規定するのが「マスク(フォトマスク)」と呼ばれる板で、ここに描かれた配線がウェハー上に投影される。微細なマスクを透過し、細かいパターンをつくるため、照射する光の波長が短いことが求められる。

「ArF液浸露光」は光源として波長193nmの「ArF(Argon fluoride)光源」を用い、ウェハーに光を照射する手前で純水などの「液体」を通す(ウェハーを液に浸す)。

「EUV露光」はEUV(extreme ultraviolet 極端紫外線)光源から照射された光が複数の反射鏡を介してレチクル(反射型のマスク)に照射され、レチクルに反射した光がさらに複数の反射鏡を介してウェハーに投影される。

Inpria は、2007 年の設立以来、メタルEUV レジストの開発に取り組んでおり、主要製品であるスズ酸化物を主成分とするメタルレジストは、EUV 露光系で世界最高性能の限界解像度を達成している。さらに、従来のレジストに比べドライエッチング時のパターン転写性能が高く、半導体の量産プロセスに対しても優れた適正を有している。



現在の社長は Eric Johndon氏で、2011年にJSRに移り、2019年6月に社長に就任している。今後の成長に向けての合成ゴム事業売却や米国の次世代EUV用メタルレジストメーカーであるInpriaの100%子会社化は同氏が決めた。
合成ゴム事業は創業事業ではあるが、将来性を勘案し、デジタルソリュージョン事業等に経営資源を投入している。合わせてライフサイエンス事業も重視している。

週刊エコノミスト2022年11月15日で次のように述べている。

売却した合成ゴム事業は非常に潜在力のある事業だが、核として成長させていきたい事業と戦略が一致していなかった。

半導体事業は激しいサイクルの中で動いている。急激に市場が拡大しており、成長軌道にしっかり乗っていけるように引き続き投資をしていくことが重要。最先端のEUV(極端紫外線)露光向けのフォトレジスト(感光性樹脂)は、特に高い競争力を維持している。今後、微細化がさらに進み、より高解像度のEUVフォトレジストが必要とされる。そこで有望なのが金属酸化物のフォトレジストで、の技術に強みを持つ米インプリア社を2021年に完全子会社化したのは、最先端の競争力を維持するために必要だと考えたから。さらに、半導体チップの積層化に使われるCMP材料や洗浄剤は高い技術力が必要で、当社が得意とする製品だ。

半導体の微細化はいずれ限界を迎え、複数のチップを積み重ねて性能を高める三次元(3D)化が進む。それに対応する材料も技術革新が必要で、顧客企業により早く、必要な先端材料を提供できるよう技術開発に注力し、生産能力の増強もしていく。

ライフサイエンス事業では、CRO(医薬品の開発受託)やCDMO(医薬品の受託製造)を手掛けているが、半導体と同じビジネスモデル(技術力や品質で高い価値を達成)に基づいて進めている。米KBIバイオファーマを買収した。(バイオ医療に必要な)たんぱく質を分析する技術を持っており、最先端の治療のためのプロセスに道筋を付けるのを得意としており、KBIの技術により、顧客の新薬候補を次々とつくることができている。


現在のJSRの事業は次の通り。


売上高(億円)

20/3 21/3 22/3 23/3 24/3予想
エラストマー 1,788 1,432
合成樹脂(ABS等) 951 791 906 958 1,075
デジタルソリューション 1,448 1,514 1,650 1,704 1,750
ライフサイエンス 505 552 725 1,265 1,425
その他 28 177 129 162 170
合計 4,720 4,466 3,410 4,089 4,420

損益(億円)

20/3 21/3 22/3 23/3 24/3予想
エラストマー -18 -114
合成樹脂 62 44 53 19 40
デジタルソリューション 309 346 390 278 270
ライフサイエンス 36 35 32 85 160
その他 -3 11 10 4
全社 -59 -62 -52 -45 -50
営業損益合計 329 260 433 340 420
株主帰属損益 226 -552 373 158 250


QatarEnergy は6月20日、中国石油天然気集団(CNPC)との間で大型LNG供給契約を締結した。年間400万トンのLNGを27年間にわたり供給する。

CNPCはまた、カタールのNorth Field LNG projectの拡張計画 North Field East 計画(4系列計3200万トン/年)の1系列800万トン/年に5%出資する。

QatarEnergyは既存の計画について63~70%の権益を保有しているが、拡張計画については75%の権益を保持する意向を示している。

North Field East については、系列ごとにExxonMobil、Shell、Totalが各25%、ConocoPhillipsとEniが各12.5%の権益を取得、QatarEnergyがそれぞれについて75%の権益を保有している。
今回、CNPCに例外的に5%の権益を分けたと思われる。

North Field South では、Totalが9.375%、Shellが9.375%、ConocoPhillipsが6.25%、QatarEnergyが75%となっている。

これは中国国有企業との間では過去1年弱で2件目となる大型LNG契約である。

Sinopec は2022年11月21日、QatarEnergy との間で年400 万トン、27 年間にわたる LNG売買契約を締結したと発表した。これは Sinopec と QatarEnergy の 2 件目の長期LNG 取引(Sinopecは2021年3月にQatarEnergy との間で2022 年1 月から年間200 万トンを10 年間購入する LNG 売買契約を締結している)で、カタールの North Field 拡張プロジェクトでは初の長期LNG 売買契約である。

North Field拡張プロジェクトが出荷を開始する2026年から引き渡しが始まる見込みで、中国にある Sinopec の受入基地に供給される予定である。

中国はLNG輸出国である米国、オーストラリアとの関係が緊張しており、中国の国有エネルギー会社の間ではカタールへの投資が相対的に安全との見方が広がっている。

ーーー

カタール政府は2017年7月、液化天然ガス(LNG)の大増産計画を発表した。凍結していたNorthfield の南部の新しいガス田を開発する。

Qatar Petroleumは2021年2月8日、North Field East Project の最終投資計画を決定したと発表した。LNG拡張計画の第一弾で、QatarのLNG生産能力を年産77百万トンから110百万トンに引き上げる。

第二弾のNorth Field South ProjectではLNG能力を110百万トンから126百万トンに拡大する。

既存能力    78 百万トン
North Field East   32 百万トン(800万トン x 4系列)
合計      110 百万トン 

North Field South 16 百万トン
最終      126 百万トン


世界最大級のNorth Fieldガス田から産出する天然ガスをRas Laffanで液化する。

2021/9/1 Qatar PetroleumのNorth Field East Project

米半導体大手Intel は6月19日、 同社がドイツ東部Magdeburgに新設する半導体工場に300億ユーロ(約4兆6500億円)超を投資することでドイツ政府と合意したと発表した。2基の先端半導体設備(Fab)を建設する.

2022年3月に工場の建設計画を発表した際の投資額は170億ユーロだった。政府の補助金の増額と引き換えにインテルが投資規模を拡大した。関係者によると、ドイツ政府から100億ユーロ(約1兆5500億円)相当の補助を受けることで双方が合意した。

2022年11月に土地を取得済み。工場は2つ建設する計画で、うち一つは 欧州委員会によるドイツ政府の支援策承認後、4年~5年で最初の設備が生産を開始する見込み。

同社はこのスケデュールを勘案し、当初検討していたよりも進んだ「The Angstrom Era(オングストローム世代)」技術を採用することを検討している。

Intelはプロセス表記ルールの刷新を発表している。Intel 3 の次はIntel 20Aとなる。因みに1A(オングストローム)は0.1ナノメートルだが、Intel 20Aは、サイズが20オングストローム(2ナノ)とは意味しない。  



Intelは6月16日にポーランドのWrocław近辺に最新の半導体組立工場とテスト設備を建設すると発表した。46億ドルを投じる。

既存のアイルランドの Leixlipにあるウェーハ製造施設、今回発表したドイツ東部Magdeburgに新設する半導体工場と組み合わせることで、欧州としては初のエンドツーエンドの最先端半導体製造バリューチェーンを構築する。


Intelはまた、イスラエルに新しい製造工場を建設することで原則合意した。6月18日にイスラエル財務省とネタニヤフ首相によって発表された。

Intelは同社が活動を展開しているイスラエルで「生産能力を拡大する意向」について確認したが、具体的な条件やその他の詳細を明らかにしなかった。

ネタニヤフ首相は、この合意の価値を250億ドルとし、外国からの最大規模の投資であり、イスラエル経済への「信頼の表明」であると述べた。ただ、事情に詳しい関係者1人によれば、この総額には2021年に発表された100億ドルの投資も含まれる。

新工場はテルアビブの南、キリヤットガットにある既存の工場に追加され、2027年までに操業を開始し少なくとも2035年まで継続の予定だと財務省は説明。合意の一環として、インテルのイスラエルでの税率は現在の5%から7.5%になるという。


ルーマニア原子力公社(Nuclearelectrica)は6月13日、米国で小型モジュール式原子炉(SMR)の技術開発を行うNuScale Power 及びルーマニアのインフラ企業のE-INFRA、ルーマニアの電力・ガス企業のNova Power & Gas、米国のFluor Enterprises、韓国のSamsung C&T Corporationとの間で、中東欧とルーマニアに462メガワット規模のSMR建設での協力の覚書を締結した。三星は設計・調達・施工(EPC)などを担当する。

ルーマニア原子力公社は2022年9月27日、国内で米NuScale Power の小型モジュール炉(SMR)を建設するため、民間エネルギー企業のNova Power & Gasと の50/50合弁で、同計画のプロジェクト企業「RoPower Nuclear」を設立したと発表した。
今後、米国の.バイデン大統領が2022年6月にルーマニアへの提供を約束した支援金1,400万ドルを使って、この計画の予備的な基本設計(FEED)調査を実施する。具体的には、設計・エンジニアリング活動や建設サイトの詳細な技術分析、国内外の基準に適合する許認可活動を行う。 

NuScale Power は4月25日、韓国の重電大手の斗山エナビリティー(旧称 韓国斗山重工業)と韓国輸出入銀行との3社間の協力関係を強化し、SMR導入を加速するための覚書を締結したと発表 した。米国内と世界中でSMRを建設するためNuScale Power と斗山の既存の関係を活用し、強化するものとしている。具体的には、斗山はNuScale Power のSMRの生産能力拡大と製造技術の向上を通じて、米国を拠点とするサプライチェーンの確立を支援するという。

ルーマニアではDoicesti にある13年前に閉鎖された石炭火力発電所跡地にNuScale Power の技術で出力7.7万kWのNPMを6基備えた「VOYGR-6」(合計出力46.2万kW)を建設する。2028年頃の完成、2029年の商業運転を目指す。同発電所では、出力約8万kWの再生可能エネルギー源も併設する。

NuScale では、ほかにルーマニア、カザフスタン、ポーランドでの建設を計画している。

米国務省は5月20日、米国が日本と韓国、およびUAEの官民パートナーとともに、ルーマニアが進めているNuScale Power 製小型モジュール炉(SMR)の導入計画に共同で最大2億7,500万ドルの支援を提供すると発表した。

これは2022年6月のG7ドイツサミットの際、設立された発展途上国へのインフラ投資を促す枠組み「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」に基づく具体的な活動で、PGIIでは2027年までに世界中で6,000億ドル規模のインフラ投資を目指している。

米国では今回、輸出入銀行(US EXIM)が「エンジニアリング波及プログラム(EMP)」の中から、最大9,900万ドルの支援をルーマニアに提供するという「意向表明書」を発出。米国からはこれに加えて、EXIMがさらに30億ドル、および政府の独立機関として民間の開発プロジェクトに資金提供を行っている国際開発金融公社(DFC)が10億ドルの資金提供を行う可能性に向けて、LOIを発出している。

米国の EXIM、DFCとともに同計画への支援を表明したのは、日本国際協力銀行、韓国の資産運用会社であるDSプライベート・エクイティ、UAEの原子力導入計画を主導している首長国原子力会社(ENEC)、およびルーマニアのEXIMと ルーマニア原子力公社、Nova Power & Gasである。

米国務省によると、安全・確実な民生用原子力技術に対する今回の多国間の支援協力によって、世界規模のクリーン・エネルギーへの移行と地球の気温上昇を1.5℃に抑える上で、原子力が果たす重要な役割が明確に示された。米国としては、脱炭素化への世界的な動きに力を与える革新的なクリーン・エネルギー技術の活用を引き続き支援し、世界中のパートナー国にエネルギーの供給保証と自立をもたらしたいとしている。

ーーー

NuScale Powerが開発を進めてきた次世代原子炉の小型モジュラー炉(SMR)の仕組みは以下の通り。

核反応によるエネルギーで一次冷却水が熱せられ、対流と浮力で上昇する。

上昇した熱は、蒸気発生器の数百本のチューブの壁を通して二次冷却水を熱し、蒸気にする。この蒸気がタービンを回し、発電する。 (リアクター1基に発電機1基)

冷たくなった一次冷却水は重力で落下し、再度熱せられる。(繰り返し)

モジュールの冷却には自然対流と伝導によるので外部配管やポンプ、駆動用の電源を必要としない。

各モデュールは24カ月に一度、10日ほどかけて核燃料が補給されるが、その間、他のモデュールは稼働している。

事故で原子炉が運転停止すると 、外部電源無しに、冷却水の補充なしに、オペレータの作業なしに、自動的に無期限に冷却され炉心溶融を防ぐ。

 

NuScale Power は2017年1月12日、開発を進めてきた次世代原子炉の小型モジュラー炉(SMR)を使った初めての発電所を建設・運転するための認可申請を米原子力規制委員会(NRC)に提出した。

発電所の所有者は
Utah Associated Municipal Power Systems で、アイダホ国立研究所(Idaho National Laboratory )内に建設され、操業はEnergy Northwestが担当する。



リアクターと容器は地下につくられたプールの水のなかに置かれる。

2017/1/17 米国で次世代原子炉申請

NuScale Power は2022年12月22日、SMRの標準プラント設計(SPD)プロジェクトを完了したと発表した。これにより、ニュースケールが手掛ける「VOYGR SMR発電プラント」の導入が加速されるとしている。

出力合計308メガワット(MW)の「VOYGR-4」、出力合計462MWの「VOYGR-6」、出力合計924MWの「VOYGR-12」からなる3つのモデルがある。

SMRの標準プラント設計の活用により、「VOYGR SMR発電プラント」の汎用設計を顧客に提供したり、顧客の許認可や導入を支援したりすることが可能になるとしている。また、同プラントに関する包括的な3Dモデルの活用により、潜在的な顧客がニュースケールの技術の適合性評価を実施することが可能になるという。

米原子力規制委員会は2023年1月19日、NuScale Power Corpのアイダホ国立研究所で建設する小型モジュラー炉の設計を承認した。6基合計462MWで、2030年にフル稼働の予定。

日揮ホールディングスは2021年4月6日、海外における小型モジュール原子炉(SMR:Small Modular Reactor)プラントのEPC(設計・調達・建設)事業への進出を目指し、SMRの開発を行っている米国NuScale Power, LLCへの出資を決定したと発表した。40百万米ドルの出資を行う。

IHIは5月27日、NuScale Power, LLCへ出資し、日揮とともに SMR事業に参画すると発表した。

国際協力銀行(JBIC)は2022年4月4日、NuScale Powerの発行済み株式を米国のFluor Corporationから取得したと発表した。出資額は約110百万米ドル。

日本勢3社を合計すると出資比率は8~9%となり、最大株主のFluor Corporationに次ぐ。

2021/5/31 日揮とIHI、小型モジュール原子炉事業に参画 

NuScale Power, LLCは2022年5月2日、特別買収目的会社のSpring Valley Acquisition Corpとの企業結合を完了したと発表した。

今回の企業結合によって設立する新会社の企業価値は19億ドルに上る見込みで、ニューヨーク証券取引所への上場、株式取引は5月3日開始としている。 有力投資家からの2億3,500万ドルの私募増資を含む3億8,000万ドルの資金を得るとしている。

この資本を元手に、自社のSMR技術の商業化を加速させる。

米財務省は6月16日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表した。2022年12月31日までの4四半期の外国為替動向を対象としている。

      https://home.treasury.gov/system/files/136/June-2023-FX-Report.pdf

「為替操作国」基準にかかった貿易相手国・地域はなかった。

2019年8月に中国が、2020年12月にスイスとベトナムが「為替操作国」となった。それ以降、2022年11月までの間は、基準では対象となる国があったが、米財務省の判断で実際は非認定となった。
今回は基準でも対象となる国はなかった。

米財務省は為替操作国に指定する条件として(1)対米貿易黒字の規模(2)経常黒字の規模(3)継続的な通貨売り介入――を掲げている。

  従来の基準 2019/5より改正
①重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 同左
②実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 GDPの2.0%以上
③外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入
(12カ月のうち、8カ月
同左
(12カ月のうち、6カ月


3基準全てに該当すれば「為替操作国」となる。

次の場合、「監視リスト」に入る。
  2基準に該当 & 1基準だが、前年「監視リスト」の場合
  なお、中国は常時、「監視リスト」

日本は永く2項目でひっかかり、「監視リスト」に入っていた。前回(2022年11月)に1項目だけとなったが上記のルールにより「監視リスト」のままであった。今回は引き続き1項目だけとなり、「監視リスト」から外れた。

今回は、2項目の台湾、ドイツ、マレーシア、シンガポールと、1項目の韓国とスイス、1項目だが常時「監視リスト」の中国の合計7カ国が「監視リスト」に載った。スイスは過去2回にわたり3項目で問題となったが、今回は1項目だけとなった。

なお、③「外為市場に対する介入」でひっかかったのはシンガポールだけであった。

操作国
3基準  
監視国
2基準  
監視国
1つだが前年に監視対象+中国 丸数字は問題となった項目
                 
  日本 中国 韓国 台湾 ドイツ スイス インド アイルランド ベトナム イタリア マレーシア シンガポール タイ メキシコ
2016/4
2016/10
2017/4
2017/10
2018/4
2018/10
2019/5
 

①②



①②

 

 

①②

①②

①②

①②

②③
2019/8   操作国  
2020/1
①②


①②

①②

①②

 



①②

①②

②③
2020/12
①②


①②

①②

①②
操作国
①③
操作国
①②

①②

②③

①②
2021/4
①②


①②
操作国非認定
①②
操作国非認定
①③

①②
操作国非認定
①②

①②

②③

①②

①②
2021/12
①②

①②

①②
操作国非認定
①②

①③

①③

操作国非認定
①②

①②

②③

①②

①②
2022/6
①②


①②

①②

①②
操作国非認定



①②

②③


2022/11


①②

①②

①②
操作国非認定




②③


2023/6



①②

①②






①②

②③


 

米連邦準備理事会(FRB)は6月13~14日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、 全会一致で利上げを見送り、政策金利を据え置くことを決定した。現在の5.00%~5.25%の幅を維持する。

FRBが金利を据え置くのは昨年年3月に利上げを開始して以降初めて。「FRBは金利を据え置くことで今後の追加の経済データと金融政策の影響を評価することができる」とした。

参加者18人による政策金利の見通しが示され、2023年末時点の金利水準の中央値は5.6%で、年内にあと2回の利上げ(0.25% x 2)が想定される。

11
2019/7 2.00%~2.25% -0.25%
2019/9

1.75%~2.00%

-0.25%
2019/10

1.50%~1.75%

-0.25%
2020/3

1.00%~1.25%

-0.50%
2020/3

0.00%~0.25%

-1.00%
2022/3 0.25%~0.50% +0.25%
2022/5 0.75%~1.00% +0.50%
2022/6 1.50%~1.75% +0.75%
2022/7 2.25%~2.50% +0.75%
2022/9 3.00%~3.25% +0.75%
2022/11 3.75%~4.00% +0.75%
2022/12 4.25%~4.50% +0.50%
2023/2 4.50%~4.75% +0.25%
2023/3 4.75%~5.00% +0.25%
2023/5 5.00%~5.25% +0.25%
2023/6 5.00%~5.25%


5月の消費者物価指数(CPI)は+4.0% (コアは+5.3%)で、上昇率が11か月連続で前の月を下回っているが、当局の物価目標の2%には遠い。

ガソリン価格や新車価格、生鮮食品など振れやすい品目を集めた物価指標のFlexible CPIは急低下しマイナスとなったが、家賃や外食料金、公共交通、医療関係など、あまり変化しないものの物価指標のSticky CPIは高値止まりである。 インフレの要因となる人手不足は続いていて企業の間で賃金の上昇分を物価に転嫁する動きが収まらない。

パウエル議長は「インフレ率は去年の半ば以降、いくぶん落ち着きつつあるがインフレ圧力は引き続き高く、物価目標である2%までの道のりは遠い」と述べた。エネルギーや食品を除く物価の抑制に大きな進展が見られないとして、「考えていたよりも、もっと抑制が必要になる」と現状の認識を説明した。

そのうえで、「今回の会合では、これまでの利上げの速度を考慮して、インフレ率を目標の2%に戻すのにさらなる政策が必要かどうか決定するために追加の経済データと金融政策の影響を評価できるよう金利据え置きを判断した。金融不安がもたらす影響をわれわれは完全にはわかっておらず、それを見極めるのは時期尚早だ。影響を把握するにはより時間がかかる。利上げの『見送り』とは呼びたくないが、今回の政策金利据え置きは理にかなっている」と述べた。

ーーー

金利を上げても物価がさがらないとする一つの考えは、渡辺務 東京大学大学院経済学研究科教授の「世界インフレの謎」に示されている。

今回のインフレは、ロシアのウクライナ侵攻の前に起こった。原因は新型コロナの蔓延であると推測する。

これによる3つの事態で供給不足が起こったとみる。これにウクライナ問題が加わった。

各国の中央銀行はこれまで、需要過多によるインフレに対し、金利アップで対処してきた。金利アップで需要を抑えれば対応できた。

しかし、中央銀行は供給不足によるインフレには対応策を持たない。金利をアップすれば需要は抑えられるが、供給は増えない。

それでも、現在のFRBの対応のように金利を上げるしかないが、その結果、不況に陥るおそれもある。

いずれにせよ、金利を上げていけば早期にインフレが収まるとは期待できないと思われる。

福岡県久留米市荒木町のJR荒木駅前にある住宅地や商店街の井戸水から、環境基準の数倍にあたる高濃度のダイオキシンが検出されている。

住民は、近くの農薬工場跡地の土からしみ出していると訴え、敷地を調査して汚染土を廃棄するように求めているが、工場側は拒んでいる。

荒木町周辺では、上水道が整備された今も日常生活に井戸水を使っている住民も多い。市は年に2回、地区ごとに井戸水の水質のサンプル調査を実施。この検査で2020年12月、1本の井戸水から基準値を超すダイオキシンが検出された。

2022年8月には同じ地点で基準値の約6倍、近くの別の地点でも3倍と住宅街から相次いでダイオキシンが検出された。以来、この2本の井戸で超過検出が続いている。濃度は最大で1リットル当たり1兆分の6.1グラムに達し、環境基準の「1兆分の1グラム」の6倍を超えた。

駅を挟んだ反対側では1983年まで、三井化学の子会社の三西化学工業の農薬工場が稼働していた。

九州新幹線の建設に伴う調査で2007年、荒木駅構内で土壌や地下水から最大で基準の95倍のダイオキシンが検出された。

調査の結果、

(1) 三西化学工業の農薬の埋設が推定される箇所(3箇所)のうち、埋設A地点で、基準値等を超えるダイオキシン類、BHC、PCPが検出された。
  埋設B・C地点では、基準値を超えるダイオキシン類は検出されず、BHC、PCPが基準値等を超えて検出された。

(2)住民からの要請箇所の13箇所のうち、ダイオキシン類が6箇所、BHCが7箇所、PCPが9箇所、CNPが3箇所、基準値等を超えて検出された。

地元の抗議を受けて、同社と三井化学は2009年、住民側と覚書を交わして対策にあたり、工場敷地内の汚染土を囲って漏れ出しを防ぐ「遮水壁」を地下に設ける工事などをしてきた。

2009年2月23日 三西化学工業 / 三井化学 三西化学工業(株)工場跡地のダイオキシン類等土壌汚染対策計画(骨子)及び荒木校区住民との覚書の締結について

これにより、ダイオキシンは一旦、検出されなくなった。

なぜ、いまになって再び基準値を超えるダイオキシンが検出されているのか。

環境保全課では「地下水の流れは非常に遅い。1年間に20メートルくらいしか進まない。取り残された汚染地下水が今になって駅西側の住宅街に流れたんだろう。基準超過したものが出ているので対策をと再三、工場側に話しているが『いったん広まってしまった汚染地下水に何かするのは非常に難しい』という回答 で、直接的な対策は難しい」としている。

地元の自治会長(ダイオキシン等対策委員長) は、「この遮水壁が16年の熊本地震で壊れ、新たな汚染が出ているのでは」と話す。

これまでに周辺住民の健康被害は確認されていない。 環境保全課では「今検出されているのは飲み水ではありません。生活用水、庭のまき水。庭の撒き水につかったとしても、健康への影響はありません」としている。

住民組織「校区まちづくり振興会」は昨年11月、両社に「汚染土壌廃棄要求書」を提出し、遮水壁では効果に限界があるとして、汚染土をすべて廃棄処分することを求めた。

米連邦最高裁判所は6月8日、共和党が策定したアラバマ州の選挙区割りを退け、黒人が多い地域に2つ目の選挙区を割り当てるよう求めた下級裁の決定を支持した。


同州の有権者の4分の1以上は黒人だが、2021年に改定された区割りで黒人有権者が過半数を占めた選挙区は7つのうち1つだけだったため、黒人やリベラル派の有権者らが違法だとして提訴していた。

最高裁は保守派の判事が9人中6人を占め、近年は1965年の「投票権法」の権利保障対象を限定的に解釈する傾向があったため、米メディアは「予想外の判決」と報じた。バイデン大統領は「投票を巡って人種差別があってはならないとする基本原則が確認された」と歓迎する声明を出した。

決定は5対4だった。ここ10年で2度、投票権法に関して否定的な判断を示した最高裁にとって、大きな方針転換となる。今回の決定ではリベラル派3人に保守派のロバーツ長官とカバノー判事が賛成した。

性別 born 人種背景

指名した大統領

就任日 判断傾向
Clarence Thomas 男性 1948/6 アフリカ系 George H. W. Bush 1991年10月23日 保守
John Roberts  (長官) 男性 1955/1 白人系 George W. Bush 2005年9月29日 保守
Samuel Alito 男性 1950/4 イタリア系 2006年1月31日 保守
Sonia Sotomayor 女性 1954/6 ヒスパニック系 Barack Obama 2009年8月8日 リベラル
Elena Kagan 女性 1960/4 ユダヤ系 2010年8月7日 リベラル
Neil Gorsuch 男性 1967/8 白人系 Donald Trump 2017年4月10日 保守
Brett Kavanaugh 男性 1965/2 白人系 2018年10月6日 保守
Amy Coney Barrett 女性 1972/1 白人系 2020年10月26日 保守
Ketanji Brown Jackson 女性 1970/9 アフリカ系 Joe Biden 2022年6月30日 リベラル

ーーー

米国では10年に1度の国勢調査を踏まえ、連邦議会下院選の新しい選挙区割りが適用される。

アラバマ州は、2020年の国勢調査後に、共和党が多数派の州議会が新しい選挙区割りを決め、2022年11月の下院選に適用された。

アラバマ州選出の下院議席は7席で、州人口のうち黒人が全体の27%を占める。 下図の通り、黒人の居住地区は限定されている。


それに対し、従来の選挙区、改定後の選挙区は下図の通りで、あまり変わらない。

登録有権者のグループは、異議を申し立て、裁判となったが、最終結論は未定のまま、2022年11月の選挙はこれによることとなった。(2022年2月に最高裁で、保守派の判事5人の賛成で現行の区割りで11月の下院選を実施するよう命じた。)

選挙結果は黒人の支持する民主党が当選したのは7区の1人だけである。共和党が6人を確保した。

登録有権者の60%近くが黒人の黒人居住区(Blackbelt) のうちの東側が白人層の多い2区、3区、6区に分散され、各地区の黒人有権者は31%未満になり、共和党が当選している。


黒人区を1つだけは認めるが、他の選挙区では黒人が多数派にならないように分散させる「人種的ゲリマンダー」だと指摘された。

1812年のマサチューセッツ州のGerry知事による選挙区割りが、架空の火竜「salamander」に似ていることから、Gerrymanderと命名された。

民主党関係者や公民権活動家は投票権法(特に南部における人種的少数者の投票権を確保)を根拠に同州で黒人が多い地域に2つ目の選挙区が割り当てられるべきだと主張した。

立法府は黒人が多数を占める第2選挙区を創設することができたはずであり、そうすべきであり、州がそうしなかったのは第2条に違反すると主張した。


下級審は、現行の区割りは違法である可能性が高いとした。

厚生労働省は5月26日に薬事・食品衛生審議会再生医療等製品・生物由来技術部会を開き、遺伝性網膜ジストロフィー(IRD)に対するノバルティスファーマの遺伝子治療「ルクスターナ」(Luxturna、一般名:voretigene neparvovec)の承認を了承した。 6月中にも正式承認される見通し。

眼科領域の遺伝子治療薬は初の承認で、「両アレル性RPE65 遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィー」を効能・効果または性能とする。

RPE65という遺伝子には、網膜の視細胞が光を感じるのに必要な物質を作る際に働く酵素の情報が載っている。この酵素が遺伝的に欠損していたり、働きが悪かったりすると、視細胞が光を感じるのに必要な物質を作ることできず、視細胞の光感受性能が著しく低下する。 (RPE65 は,網膜視細胞の光受容に必要なビタミン A 代謝産物である 11- シスレチナールの合成に必要な酵素をコードするため、この酵素が遺伝的に欠損すると,眼内で 11 シスレチナールの生成ができなくなり,視細胞の光感度の大幅な低下が生じる。)

「ルクスターナ」はヒトRPE65 遺伝子を搭載した非増殖性組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を成分とする再生医療等製品で、網膜下にある網膜色素上皮(RPE)細胞に感染することにより、搭載された遺伝子発現構成体が細胞の核内にエピソーム (細胞が本来もっている染色体とは別に,比較的短い環状DNAが独立した染色体として安定的に維持されたもの)として留まり、ヒトRPE65遺伝子は長期間安定して発現する。

遺伝学的検査によりRPE65 遺伝子の両アレル性の変異が確認されたIRD患者が投与対象となる。

用法・用量または使用方法は「通常、1.5×1011 ベクターゲノム(vg)/ 0.3mLを各眼の網膜下に単回投与する。各眼への網膜下投与は、短い投与間隔で実施するが、6日以上あけること。同一眼への本品の再投与はしないこと」となっている。

海外では、2017年に米国で、2018年に欧州で承認されており、2022年8月時点で40 以上の国または地域で承認されている。

承認されれば、
アンジェスの「コラテジェン」(べぺルミノゲンペルプラスミド)、
ノバルティスファーマの「ゾルゲンスマ」、
第一三共の「デリタクト」(テセルパツレブ)
に次いで国内4番目のin vivo(生体内)遺伝子治療で、眼科領域の遺伝子治療としては国内初となる。
In Vivo遺伝子治療は直接生体内に遺伝子を導入する方法。

他に、ex vivo(生体外)遺伝子治療としてノバルティスファーマの「キムリア」が承認されている。Ex vivo遺伝子治療は体の外で遺伝子導入する方法

ーーー

キムリア点滴静注(一般的名称:チサゲンレクルユーセル、申請企業:ノバルティスファーマ)CAR-T細胞治療

キムリア(CAR-T細胞療法)は、患者の血液中の免疫細胞(T細胞)を取り出して外部で遺伝子導入することでT細胞を強力にし、さらにそれを培養して増やした後患者の体の中に注射して戻す治療法

「再発または難治性CD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)」と「再発または難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」を効能・効果とする。
希少疾病用再生医療等製品。厚労省によると、推定される投与対象患者数はピーク時で年間250例程度。

2019/2/22 厚労省部会、国内初の遺伝子治療2品目の承認を了承 

コラテジェン筋注用4mg(一般的名称:ベペルミノゲン ペルプラスミド、申請企業:アンジェス)

「標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症及びバージャー病)における潰瘍の改善」

2019/2/22 厚労省部会、国内初の遺伝子治療2品目の承認を了承 

アンジェスは2023年5月31日、「コラテジェン筋注用4mg」について、厚生労働省に、慢性動脈閉塞症の下肢潰瘍の改善を効能、効果又は性能として、改めて製造販売の承認申請を行った。2019年3月に条件及び期限付製造販売承認を取得しているが、承認期限内に承認条件評価の結果を改めて承認申請することになっている。本件が承認された場合、再生医療等製品の条件及び期限付承認制度の導入後、初めて条件解除の承認を受ける製品となる。

ゾルゲンスマ(一般的名称:オナセムノゲンアベパルボベク、申請企業:ノバルティスファーマ)脊髄性筋萎縮症

脊髄性筋萎縮症は遺伝的要因により、脊髄等の運動神経細胞が変性・脱落することで、筋収縮刺激がうまく伝達できなくなる疾患。
ゾルゲンスマはウイルスを利用して静脈注射で患者に正常な遺伝子を導入する。
厚生労働省の専門部会は2020年2月26日、世界一高い薬とされる脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」の国内での製造販売を了承した。

2019/5/29 米 FDA、世界一高額の難病治療薬を承認 

デリタクト:世界初の脳腫瘍ウイルス療法

東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍外科の藤堂具紀教授らの研究グループは、単純ヘルペスウイルス1型(口唇ヘルペスのウイルス)に人工的に3つのウイルス遺伝子を改変した第三世代のがん治療用ヘルペスウイルス G47Δ の臨床開発を進めてきた。

第一三共は、藤堂教授と共同で開発しているがん治療用ウイルスG47Δについて、 脳腫瘍の一種の膠芽腫の患者を対象に実施した医師主導治験において有効性と安全性が確認されたため、2020年12月28日、悪性神経膠腫に係る再生医療等製品製造販売承認申請を国内で行った。

2021611悪性神経膠腫を適応症とした再生医療等製品(一般名 テセルパツレブ、製品名 デリタクト注)として承認された。
補正加算として市場性加算Iの10%、先駆け審査指定制度加算10%がつけられ、薬価は1mL1瓶143万1918円に設定した。市場規模はピーク時の10年目に208人、販売額は12億円と予測している。

神経膠腫(グリオーマ)は、原発性脳腫瘍のおよそ4分の1を占める。悪性度に従って4段階に分けられるが、治験の対象となった膠芽腫(グリオブラストーマ)は、最も頻度が高く予後も悪い悪性度4の神経膠腫で、手術をしてから放射線治療と化学療法を行っても、平均余命は診断から18カ月、5年生存率は10%程度とされる。G47∆(デリタクト注)の適応対象となるのは、悪性度3と4の悪性神経膠腫である。

がんのウイルス療法とは、がん細胞のみで増えることができるウイルスを感染させウイルスが直接がん細胞を破壊する治療法。

遺伝子工学技術を用いてウイルスゲノムを「設計」して、がん細胞ではよく増えても正常細胞では全く増えないウイルスを人工的に造って臨床に応用する。がん細胞だけで増えるように工夫された遺伝子組換えウイルスは、がん細胞に感染するとすぐに増殖を開始し、その過程で感染したがん細胞を死滅させる。

増殖したウイルスはさらに周囲に散らばって再びがん細胞に感染し、ウイルス増殖、細胞死、感染を繰り返してがん細胞を次々に破壊してい く。一方、正常細胞に感染した遺伝子組換えウイルスは増殖できないような仕組みを備えているため、正常組織は傷つかない。

G47Δは、口唇に水疱ができる口唇ヘルペスの原因ウイルスとして知られている単純ヘルペスウイルス1型の3つのウイルス遺伝子を改変して、藤堂教授らが作製した世界初の第三世代のがん治療用遺伝子組換えヘルペスウイルス 。

単純ヘルペスウイルス1型は、がん治療に有利な特長を多く備えている。

 1)ヒトのあらゆる種類の細胞に感染できること
 2)細胞を殺す力が比較的強いこと
 3)抗ウイルス薬が存在するため治療を中断できること
 4)患者がウイルスに対する抗体を持っていても治療効果が下がらないこと

単純ヘルペスウイルス1型のゲノムから、がん細胞だけで増えるウイルスを造ることができた。

単純ヘルペスウイルス1型の3つのウイルス遺伝子を改変した。これにより、
がん細胞では、増殖したウイルスはウイルス増殖、細胞死、感染を繰り返してがん細胞を次々に破壊していく。
正常細胞に感染した遺伝子組換えウイルスは増殖できない。

3つのウイルス遺伝子を改変したG47Δは、既存のがん治療用ウイルスに比べて安全性と治療効果が格段に高くなっている。
また、大きな特徴として、複製した増えたG47Δが、破壊したがん細胞とともに免疫に排除される過程で、がん細胞が免疫に非自己として認識されて、抗がん免疫が惹起されるため、G47Δを投与した部位のみならず、遠隔のがんに対しても免疫を介して治療効果が期待できる。さらに、G47Δは、がんの根治を阻むとされるがん幹細胞をも効率よく破壊することが判っている。


ウイルスの ヒトの正常細胞 ヒトのがん細胞
「γ34・5」遺伝子 ヒトの体には、ウイルスに感染した細胞が自滅し、ウイルス増殖を防ぐ仕組みがある。
ウイルスのγ34・5遺伝子はこれを食い止め、宿主である細胞を生き続けさせようとする。
遺伝子改変でこの働きをなくせば、ウイルス増殖を防ぐ仕組みは維持できる。 がん細胞ではウイルスに感染したら自滅する機能がそもそも壊れているため、ウイルスのγ34・5遺伝子が働かなくても、がん細胞内では増殖が可能。
「ICP6」遺伝子 ウイルスのDNAを合成する酵素を作る遺伝子 この働きを阻害すれば、ウイルスは正常細胞で増殖できなくなる。 がん細胞はそれ自体の増殖が活発でDNA合成に必要な酵素が多く存在する。
そのため、ウイルスはICP6の働きがなくても、がん細胞では増えることができる。
(2遺伝子により) 正常細胞ではウイルスは増殖しない。 がん細胞ではウイルスは増殖
(問題点) (「ヒトの免疫が邪魔し、がん細胞を破壊する能力が落ちてしまうのでは?)
「α47」遺伝子 ウイルスを人体の免疫システムに見つかりにくくする「隠れみの」のような機能を持つ。 この機能を人工的になくし、逆に免疫が強く働く。 がんは患者自身の細胞なので、免疫システムに敵だと認識されない。
しかし、隠れみのを失ったウイルスが感染して「目印」となることで、がん細胞が見つかりやすくなり、免疫の攻撃対象となった。

壊れたがん細胞に特有のたんぱく質も免疫は異物と認識し、攻撃がさらに増すことも分かった。

米政府は4月17日、Inflation Reduction Actにより、消費者が電気自動車(EV)を購入する際に税優遇の対象となる車種の新たなリストを明らかにした。

米政府は自国市場のEVについて、消費者が最大7500ドルの税額控除を得られる販売支援策を採っている。4月18日から 昨年に成立したInflation Reduction Actに含まれた電池材料についての新たな要件を適用するのにあわせ、対象車種を更新した。

低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に、下記の条件を満たした場合、1台当たり3,750ドルか、7,500ドルのいずれかの税控除を受けられる。

北米以外で組み立てられたEVについて、同月以降税控除の対象外とした。

主な要件(控除額は個人の場合)
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -
電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%(2027年から80%)が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること どちらか
必須
3,750ドル
電池用部品の50% (2029年から100%) が北米で製造されていること 3,750ドル


発表された対象車種は全て米国メーカーのものである。(Stellantisは多国籍企業だが、対象は元々米国車である。)

最大の控除額7500ドルが適用されるEVとPlug-in Hybridは合計でわずか10車種にとどまる。バッテリーの構成部品や重要鉱物の調達先に関する要件が厳格化され、Plug-in Hybridの車種は大半が対象外となった。

Stellantis、Ford、Teslaが生産する別の計7車種には、最大額の半分となる3750ドルの控除が適用される。

日欧韓メーカーの車はすべて対象外となった。

2023/4/19 米国の電気自動車税額控除の新しい対象発表 


対象外となった日欧韓メーカーは大幅に売上を減らすと予想された。

しかし、現代自動車によると、現代自動車と傘下の起亜自動車は5月に米国市場で昨年同期より20.8%増の14万7103台を販売した。両社とも昨年8月から10ヵ月連続で前年比販売台数が伸びており、昨年11月以降は7ヵ月連続で2桁の伸び率である。
低迷が予想されていた電気自動車は、米国で前年比48.5%増の計8,105台を販売した。

現代自動車グループは 米国で生産されなくても補助金の恩恵が与えられるレンタルやリースなどの商業用車両市場を攻略し、成長の勢いを牽引した。

本ブログでは見逃していたが、米財務省は2022年12月29日、消費者がリース契約した電気自動車(EV)も2023年1月1日から最大7500ドルの商用EV向け税額控除の適用対象にする方針を明らかにした。北米以外で組み立てられたEVも控除が受けられるようになる。

財務省は、「北米で組み立てられた」という税額控除の規定は変更せず、「長年の課税原則」の解釈に基づいてリース車両を控除対象とする判断を下したと説明している。

Internal Revenue Serviceによれば、Honda, Audi, Volkswagen, BMW, Hyundai, Jaguar Land Rover, Kia, Mazda, Mercedes-Benz, Mitsubishi, Nissan, Porsche, Subaru, Toyota, Volvo その他のメーカーのEVが対象となる。

米国のリースマーケットは非常に大きく、ドイツのStatistaの報告では、2022年に米国の消費者が得た新車の約1/5 がリースされたものである。

インフレ抑制法に盛り込まれたEV促進策は、北米以外で組み立てられたEVの購入は税額控除が適用されない形となり、EUや日本などのメーカーから不満が噴出。韓国などの一部外国自動車メーカーは、商用EVの税額控除拡充を要望し、この控除を活用すればリース価格を引き下げられると主張していた。

自動車業界団体の米国自動車イノベーション協会の代表は「米国でのEV普及にとって前向きな展開」と評した。

医学研究所北野病院歯科口腔外科で、先天的に永久歯の数が少ない人に対し、薬を投与して歯を生やすことを目指した治験を2024年7月から始める。2030年の実用化を目標とする。

公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院は、大阪市北区扇町にあり、急性期総合病院としての機能を有している。

大阪の実業家 田附政次郎氏が、京都帝国大学(現 京都大学)医学部で胸の病を癒されたことに感謝、同大学の学術研究に資することを目的に提供された寄付金に基因する。

1925年、同大学医学部内に財団法人田附興風会医学研究所が設立され、1928年、研究事業遂行のための臨床医学研究用病院が大阪に付設された。

ーーー

京都大学医学研究科口腔外科学分野の高橋克准教授(当時)が、永久歯の次に生える歯(第3生歯)を成長させることによって歯の再生の実現が可能なことを発見した。

ヒトでは大臼歯が1生歯性(永久歯)、それ以外は2生歯性(乳歯+永久歯)で、歯数は厳密に制御されている。

実際には、乳歯と永久歯のあとに第3歯堤という歯の原器があるが、骨形成タンパク質(BMP)等の働きを阻害する拮抗分子USAG-1遺伝子の働きによって第3生歯は消失してしまう。

橋克准教授による長年の研究により、この拮抗分子USAG-1遺伝子を抑制する中和抗体やsiRNA2本鎖RNAが遺伝子の発現を抑えてしまうRNA干渉に関与するRNA)によって無歯症モデル動物で欠損歯が歯槽骨と共に回復することが分かった。
マウスやビーグル犬、フェレットなどの動物に歯生え薬の候補となる中和抗体を投与したところ、歯が欠如していた箇所から歯が生えることが確認できている。


歯の再生を促す新規医薬品を開発する歯科領域の創薬ベンチャー、
トレジェムバイオファーマ(Toregem BioPharma)は2020年5月12
日に設立された。
Toregemの社名は Tooth Regeneration Medicine(歯の再生薬)から採った。

京都大学医学研究科口腔外科学分野の喜早ほのか氏がCEOを務め、高橋氏が共同創業者のトレジェムでは、USAG-1中和抗体のヒト化に向けた開発を進めており、中和抗体とsiRNAの化合物を新規医薬品として上市することを目指している。

2020/12/2 歯の再生を促す医薬品を開発する トレジェムバイオファーマ

トレジェムバイオファーマは2022年3月8日、第三者割当増資で4億5000万円を調達したと発表した。この資金調達により、USAG-1 中和抗体の非臨床安全性試験と治験用製剤の製造準備を進めた。

2022/3/11「歯生え薬」の安全性試験実施 

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橋克准教授は現在、医学研究所北野病院歯科口腔外科の主任部長として、歯の再生治療薬の治験を進めている。

日本医療研究開発機構(AMED)による支援の下、医学研究所北野病院を中心とする全国の10以上の医療機関、研究機関とトレジェムバイオファーマ社によって産官学連携プロジェクト:「先天性無歯症患者さんへ、治療薬をお届けすることを目指している」を行っている。

歯の再生治療薬の治験を計画しています

ご本人あるいはご家族の方で、次に当てはまる方は先天性無歯症かもしれません。
ー15歳になっても乳歯が残っている。
ー乳歯が抜けたのに永久歯が生えてこない。
ー歯の数が6本以上少ないと言われたことがある。

2030年に患者さんへ治療薬をお届けすることを目指しています。
上記に心当たりのある方は担当医にお尋ねください。


まずは、生まれつき歯が生えない先天性無歯症のうち、永久歯が育たずに6本以上の永久歯が欠如している場合を適応疾患として想定している。


ヒトの永久歯が先天的に欠如する原因となっているのは、骨形成たんぱく質であるBMPやWntの働きを「USAG-1」と呼ばれる分子が阻害しているためで、USAG-1の働きを抑制する成分を体内に投与することで、歯の芽(歯胚)の発達を助け、歯を生やそうと考えている。

具体的には、薬を全身投与すると、歯堤があるところに歯が生えてくる。現在は、新薬候補物質である中和抗体を使って、マウスとサルを対象に臨床試験の前段階である非臨床安全性試験を行っている。

2024年から先天性無歯症の治療薬として臨床試験を開始する。



参考 別のアプローチ

  2020/6/29  エア・ウォーター、「歯髄幹細胞を用いた再生医療」を世界で初めて実用化

中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカでつくるBRICS=新興5か国の外相会議が、南アフリカのケープタウンで6月1日から開かれた。

6月2日にはサウジアラビアやイラン、それにキューバなどBRICSへの加盟に関心を示している国々の代表も参加した会合 ("Friends of BRICS" talks)が開催され、加盟国の拡大について意見を交わした。

出席:Iran, Saudi Arabia, UAE, Cuba, Democratic Republic of Congo, Comoros, Gabon, and Kazakhstan
オンライン参加:Egypt, Argentina, Bangladesh, Guinea-Bissau and Indonesia

中国が加盟国の拡大を積極的に推し進めるなか、これまでにおよそ20か国が加盟に関心を示しているとされている。

南アのパンドール国際関係・協力相は、BRICS拡大の指針を文書にまとめる作業を実務者レベルで続け、「8月の首脳会議で提示したい」と述べた。

ロシアは、ロシアに制裁を行っている国の加盟には反対する立場を示している。

8月の首脳会議はことしの議長国の南アフリカで行われるが、南アは国際刑事裁判所の加盟国であり、逮捕状が出ているプーチン大統領が自国内に入った場合には拘束する義務を負う。南アフリカ政府は「様々な法的選択肢を検討している」としており、どのような対応をとるのかが焦点となっている。

南ア政府は今年1月にはラブロフ露外相の訪問を受け入れて友好関係を確認している。

ーーー

ブラジル、ロシア、インド、中国の四か国の第一回の首脳会議は2009年にロシアで開催された。主に通貨問題が話し合われ、新興市場と発展途上国の国際金融機関における発言権と代表性を高めることを求めた。

この新興4か国の総称の"BRICs"は投資銀行Goldman SachsのエコノミストのJim O'Neillが書いた20011130日の投資家向けレポートで初めて用いられ、世界中に広まった。

2011年4月にBRICsに南アを新たに加えた新興5カ国(BRICS)の首脳会議が中国海南省の三亜市で開かれ、「三亜宣言」を採択した。

2011/4/23 BRICsからBRICSへ 


2022年のBRICSの人口は世界人口77億74百万人の42%を占める。

.インド 14億23百万人、中国 14億13百万人、ブラジル 2億14百万人、ロシア 1億43百万人、南ア 61百万人、合計 32億54百万人

2022年に議長国を務めた中国がBRICSの拡大を仕掛けた。激化する米中対立やロシアのウクライナ侵攻で、世界の二分化が深まったが、中立的な立場にとどまろうとするグローバルサウスをうまく取り込めば、有利な状況を築けると中国は読んだ。

これに真っ先に名乗りを上げたのは中東のイランと、南米のアルゼンチン で、両国は2022年6月に加盟を申請している。

イランはロシアに攻撃用ドローンを供給し、中国とも25年間と長期の経済協定を結ぶなど中露両国と関係が深い。反米路線をとるイランのライシ大統領はBRICS加盟を最優先課題に位置づける。

昨年夏時点では、この2カ国が新規加盟し、G7に対抗した「A7」Alternative 7)が結成されるとの観測も高まった。

しかし、加盟希望国は2国にとどまらない。本年の議長国である南アのスークラルBRICS担当大使は、13カ国から正式申請を受けており、非公式を含めると19カ国に達しているとしている。

加盟が噂される国は下記の通り。  

OPEC  OPEC+ その他
既存メンバー ロシア ブラジル、インド、中国、南ア
中東・北アフリカ イラン、サウジ、UAE、
アルジェリア
バーレーン エジプト、トルコ
アフリカ ナイジェリア セネガル
中南米 メキシコ アルゼンチン、ニカラグア
アジア インドネシア タイ、カザフスタン、
バングラデシュ

サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、ナイジェリアなどの産油国が加盟すれば、世界の石油・ガス資源の過半数を押さえることとなる。

「OPECプラス」は6月4日、協調減産の枠組みを2024年末まで延長すると決めた。サウジアラビアは独自に日量100万バレルを7月に追加減産すると表明した。下落基調にある原油価格を下支えする姿勢を示した。

ーーー

OPECプラスは2022年12月4日、前回会合で決定した日量200万バレルの減産を維持することで合意した。

サウジアラビアのエネルギー相は2023年3月14日、OPECプラスが昨年10月に合意した減産方針を2023年末まで継続すると述べた。

OPECプラスは4月2日、5月から日量116万バレルの減産を実施すると発表した。市場の安定を維持するために供給を据え置くとこれまで約束していたため、協調減産は意表を突く格好となった。

サウジアラビアは5月から日量50万バレルの供給削減を表明、クウェートやアラブ首長国連邦(UAE)、アルジェリアなども同様に減産を発表した。

ロシアが3月から単独で実施している減産を加えると、昨年末比で日量 166万バレルの減産となる。ロシアは6月までの減産としていたが、これを更に延長する。(当初報告にガボンを追加)

従来までの200万バレル減産に加え、合計で365万バレルの減産となる。

2023/4/3 サウジ、日量50万バレルの減産を表明、クウェートやUAEも追随、OPECプラスとして昨年末比 165万バレル(計365万バレル)の減産

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「OPECプラス」は6月4日、OPECの本部があるオーストリアのウィーンで今後の原油の生産量を決める会合を開 いた。当初は現在の枠組みを2023年末まで維持する方針だったが、7時間におよぶ今回の協議の結果、これを2024年末まで延長することで合意した。

サウジアラビアは自主的に7月に日量100万バレルを追加で削減すると表明した。5月からの50万バレル減産に追加するもので、これにより4月の生産の日量1050万バレルが約900万バレルとなり、2021年6月以来の低水準となる。

わずか1カ月で追加措置を打ち出したのは、弱含む原油相場への警戒感からで、国際指標の北海ブレント原油先物は1バレル76ドル台と、世界景気減速への懸念から4月の高値より1割以上安い。

サウジは100万バレルの減産について7月以降も続ける可能性があるとした。

ロシアも「ロシアは今後も合意事項を順守していく」と述べたうえで、1日あたり50万バレルの自主的な減産を来年末まで延長する考えを示した。

追加減産は次の通り。(千バレル)

2023/5 2023/7
サウジアラビア 500 +1,000
イラク 211
UAE 144
クウェート 128
カザフスタン 78
アルジェリア 48
オマーン 40
ガボン 8
小計 1,157
ロシア 500
合計 1,657 2,657
総計 3,657 4,657

OPECプラスは声明で、協調減産に加わる国々の2024年の生産量を1月からさらに日量140万バレル引き下げ、合計で日量4,046万バレルに設定したと発表した。 大部分はロシア、ナイジェリア、アンゴラの目標を現在の生産水準に合わせて引き下げたものであり、実際の削減にはならない見通し。ロシアやナイジェリア、アンゴラの割り当てを減らす一方、 生産能力を増強してきたUAEは約20万バレル引き上げた。

次回の閣僚級会合は11月26日にウィーンで開く。

トヨタは6月1日、米国でのバッテリーEV(BEV)生産と電池工場への追加投資で電動化への取り組みを強化すると発表した。

・Toyota Motor Manufacturing Kentucky, Inc.(TMMK)で2025年からバッテリーEVのSport Utility Vehicle(3列シートSUV)を生産開始する。
  
  トヨタが米国でBEVを生産するのは初めてで、Toyota Battery Manufacturing, North Carolinaで生産する電池を搭載する。

・Toyota Battery Manufacturing, North Carolina

  2021/11、ノースカロライナ州のGreensboro-Randolph Megasiteでの建設決定、投資額 12.9億ドル

  2022/8、25億ドルの追加投資発表

  今回、21億ドルを追加投資し、インフラ整備 (総投資額は59億ドル) 
  
  拡大する電動車の需要に必要なリチウムイオン電池を生産・供給
    2025年稼働予定、ハイブリッド車(HEV)、バッテリーEV(BEV)用電池を生産

トヨタの米国での電池製造の動きは下記の通り。

ーーー

米国ではホンダはLG Energy Solutionと組んでいる。

2023/3/7 ホンダとLGの米バッテリー工場 起工式 

日産自動車は日米英のバッテリー事業(NECとのJV)を中国のエンビジョンAESCに売却した。

2017/8/15 日産自動車とNEC、バッテリー事業を譲渡

日産は現在もエンビジョンAESCから電池を購入するとともに、英国での同社の増設に協力している。ただし、中国企業が80%出資するエンビジョンAESCの電池を採用した場合、米国で昨年8月に成立した「インフレ抑制法」で税制優遇を受けられない懸念があり、2つめの電池調達先を検討している。


EV減税の対象となる新車について、北米地域での最終組み立てを義務付け、さらにEV用電池の原材料である重要鉱物の調達先を、米国か、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に事実上制限する。

主な要件(控除額は個人の場合) 
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -
①電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%(2027年から80%)が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること どちらか
必須
3,750ドル
②電池用部品の50% (2029年から100%) が北米で製造されていること 3,750ドル


2023年3月28日に「重要鉱物のサプライチェーンの強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(日米重要鉱物サプライチェーン強化協定:日米CMA)が署名され、即日発効となった。米国は、同協定をインフレ抑制法(IRA)上のFTAとみなす。



米民主党上院トップのシューマー院内総務は6月1日、債務上限停止法案を通過させるまで会期を続けるとし、同日中に法案可決に向けたプロセスを開始すると言明した。

政府の資金繰りが行き詰まるとされる6月5日までに残された時間はわずか4日で、その間に上院は可決し、署名のためにバイデン大統領の送付する必要がある。

両党の多くの議員が5月31日に下院を通過した法案への反対を表明していた。このため10本の修正条項を投票にかけた。(11本とされているが、記録では10本)
修正が可決されると下院に戻す必要があり、間に合わなくなるが、これらの修正条項に可決の見込みはなく、迅速に法案自体の採決に進む見通しになっていた。

(議員が特定項目について修正を提案したという証拠作りのためだけのもので、国家の緊急時にこんなことをやるのは理解し難い。)


修正提案の議決は次の通り。

投票時間 賛成 反対 棄権 結果
No.1 07:30 pm 21 75 4

否決

可決には60票の賛成が必要

2 08:22 pm 35 62 3
3 08:38 pm 46 51 3
4 08:53 pm 49 48 3
5 09:05 pm 17 81 2
6 09:22 pm 46 51 3
7 09:36 pm 48 51 1
8 09:49 pm 47 52 1
9 10:01 pm 48 51 1
10 10:18 pm 30 69 1


その後、6月1日10:37pmにThe Fiscal Responsibility Act of 2023を投票した。可決には
フィリバスター(議事妨害)を阻止するために60票が必要であるが、超党派の議員が賛成し、63票の賛成で辛うじて可決した。

共和党 民主党 民主系
無所属
無所属 合計
賛成 17 44 1 1 63
反対 31 4 1 36
棄権 1 1
合計 49 48 2 1 100


民主党系では無所属のBernie Sanders などが反対した。

Biden大統領は議会のタイムリーな行動を称賛し、できるだけ早くサインすると述べた。6月2日の午後7時(日本時間3日朝8時)に声明を発表する。

6月3日にバイデン大統領が署名し、成立した。署名が3日になった理由は、議会が法案の詳細を確定する作業が残っていたため。

アメリカ政府の債務上限の引き上げをめぐり、バイデン大統領と野党・共和党のMcCarthy下院議長が基本合意した。

今後は最終的に法案として上下両院で可決する必要がある。

McCarthy下院議長は5月28日に法案を完成させて大統領と再び協議し、正式に合意したうえで、5月31日に採決を行う方針を表明した。

Yellen財務長官は、債務上限の引き上げを行わなければ6月5日にもデフォルトに陥る恐れがあると指摘している。

それまでに下院と上院で可決し、大統領がサインする必要がある。

2023/5/28  米債務上限引き上げで基本合意


議会に提案された法案 The Fiscal Responsibility Act of 2023 の主な内容は下記の通り。

 債務上限を2025年まで凍結

2023年1月19日に債務は31兆4000億ドルの上限に到達した。

下院議会は4月26日、連邦債務上限を最大1兆5,000億ドル引き上げ、連邦政府の支出を4兆5,000億ドル削減する法案を賛成217、反対215で可決した。

しかし今回、上限は変更せず、2025年1月1日まで凍結する。 (現在の上限を超えての借り入れが可能)

 国防費以外の歳出制限

2024年度は2023年度と同レベルとし、2025年度は1%だけ増やす。それ以降は制限なし。

国防予算は3%増とする。

 未使用のCovid 19 予算の返還  約300億ドル

 福祉予算

Medicaid(医療扶助)は変わらず。
Supplemental Nutrition Assistance Program (=Food Stamp) で就業が求められる年齢を50歳から54歳に引き上げ

 IRS予算

Inflation Reduction Actで決まった最富裕層への課税推進のためIRS予算(10年間800億ドル)から、2024年度と2025年度にそれぞれ100億ドルを他の予算に振り向ける。

 エネルギー計画認可

化石燃料と再生可能エネルギー計画の認可を容易にする。環境レビュープロセスの簡素化


下記テーマについてはいずれか一方が希望したが、今回の合意に含まれなかった。

 奨学金免除

   共和党はバイデンによる奨学金免除の取り消しを求めていたが、生き残った。

 増税

   民主党は富裕層への増税を図ったが、含まれず。

 クリーンエネルギー

   共和党はInflation Reduction Actのなかのクリーンエネルギーや気候変動に関する主部分の削除を狙ったが、実現せず。

ーーー

法案をめぐっては、双方の一部の議員からは反対の声が上がっており、共和党の強硬派の委員は「法案を阻止するために何でもする」と述べた。

共和党保守強硬派の議員連盟「Freedom Caucus」メンバーの下院議員は、McCarthy議長の今回の動きは議長解任の理由になると述べた。メンバーは次々に法案への反対を同僚に訴えた。

下院が4月26日に通した法案では、連邦債務上限を最大1兆5,000億ドル引き上げる代わりに、連邦政府の支出を4兆5,000億ドル削減するもので、今回の法案は削減がゼロであり、あまりにも異なることを問題視している。

McCarthy 院内総務を下院議長に選ぶ際に「Freedom Caucus」のメンバーが反対し、過半数を取れないまま、何日もかかった。McCathyは反対派の説得のため、多くの妥協をした。議長解任動議の提出条件は会派の半数の賛成であるが、 最終的に1人で動議を出せることを承認した。

大統領と議長は29日のメモリアルデー(戦没者追悼記念日)の祝日もそれぞれの党の議員に法案を支持するよう働き掛け、可決に十分な票の確保に努めた。

McCarthy下院議長は5月31日の下院本会議で採決を行う方針で、まず5月30日に下院の議事運営委員会で審議した。同委メンバー13人中9人が共和党議員で、そのうち最右翼の3人がMcCarthy議長に批判的である が、賛成7(共和党7)、反対6(共和党2、民主党4)の賛成多数で本会議審議に進めることを可決した。


下院本会議は5月31日夜(日本時間6月1日朝) 投票を行った。その結果、賛成多数で可決し、上院に送付された。

共和党 民主党 合計
賛成 149 165 314
反対 71 46 117
棄権 2 2 4

合計

222 213 435


法案は上院で審議・採決される。6月5日(月)以前に債務上限が引き上げられるか適用停止とされなければ、前代未聞のデフォルトに陥る可能性があり、それまでに上院で可決し、大統領がサインする必要がある。

上院ではフィリバスター(議事妨害)を阻止するために60票が必要であるが、上院での法案可決はほぼ確実視されている。

議員の中には法案の一部修正を求める声もあるが、仮に修正すれば、再度下院で議決する必要があり、時間がない。

上院勢力図  無所属は元民主党員

共和党 民主党 民主系
無所属
無所属 合計
49 48 2 1 100

共和党のスーン上院院内幹事は6月2日夜までの法案可決で与野党が一致する可能性に言及した。

原子力発電所の運転期間の60年超への延長を盛り込んだGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法は5月31日の参院本会議で可決、成立した。既存の原発を可能な限り活用し、電力の安定供給と温暖化ガスの排出削減を目指す。

60年超の場合は、予見しがたい休止期間の範囲で操業を認める。(運転期間累計は60年が限度)

ーーー

原子力規制委員会は2022年12月21日、原子力発電所の運転開始から30年以降10年以内ごとに繰り返し運転を認可する新ルール案を了承した。現行ルールを上回る「60年超」運転が可能になる。 

現行ルールでは、運転開始から40年を迎える原発は、規制委の運転延長の審査に合格した場合に限り1回のみ最長20年の延長が認可される。また、これとは別に、運転開始から30年以降の原発は、10年ごとに「高経年化対策」も実施されている。

新ルールはこれらを一本化する内容で、規制委は電力会社に対し、施設の劣化を管理する長期計画の作成を義務づけ、安全性を確認すれば運転延長を繰り返し認可する。福島原発事故以前の規制に戻すこととなる。

2023/1/4 原発運転期間延長 


2023年2月10日、「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定された。

気候変動問題への対応に加え、ロシア連邦によるウクライナ侵略を受け、国民生活及び経済活動の基盤となるエネルギー安定供給を確保するとともに、経済成長を同時に実現するため、主に以下二点の取組を進める。

①エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再エネや原子力などのエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換などGXに向けた脱炭素の取組を進めること。

②GXの実現に向け、「GX経済移行債」等を活用した大胆な先行投資支援、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、新たな金融手法の活用などを含む「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行を行うこと。

政府は2月28日、エネルギー関連の5つの法改正案を閣議決定。これらをまとめた束ね法案「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(GX脱炭素電源法)として、通常国会に提出された。

GX脱炭素電源法のうち、原子力に関しては、

原子力発電の利用に係る原則の明確化(原子力基本法)
高経年化した原子炉に対する規制の厳格化(原子炉等規制法)
原子力発電の運転期間に関する規律の整備(電気事業法)
円滑かつ着実な廃炉の推進(再処理等拠出金法)

――が柱となっている。

原子力基本法の改正では、従前の条文に対し、目的、基本方針の中に、それぞれ「地球温暖化の防止」、「福島第一原子力発電所事故を防止できなかったことを真摯に反省」との文言が追加され、安全最優先、原子力利用の価値を明確化。さらに、廃炉・最終処分などのバックエンドプロセスの加速化、自主的安全性向上・防災対策に係る「国・事業者の責務」について、新たに条文立てされている。

高経年化炉の規制については、関連法案の成立を前提として既に原子力規制委員会で技術的検討が開始されているが、事業者に対し、①運転開始から30年を超えて運転しようとする場合、10年以内ごとに設備の劣化に関する技術的評価を行う、②その結果に基づき長期施設管理計画を作成し、規制委員会の認可を受ける――ことを義務付ける。

運転期間については、原子炉等規制法から経済産業省が所管する電気事業法に移され、これまで通り「運転期間は40年」、「延長期間は20年」の原則を維持。安定供給確保、GX(グリーントランスフォーメーション)への貢献、自主的安全性向上や防災対策の不断の改善につき、経済産業相の認可を受けた場合に限り延長を認め、「延長しようとする期間が20年を超える」場合は、事業者が予見しがたい事由(東日本大震災以降の安全規制に係る制度・運用の変更、司法判断など)に限定して運転期間のカウントから除外することで、実質的に60年超運転を可能とする。

(原子炉等規制法)規制委員会は10年ごとに検査(60年超も)
(電気事業法)原則は「運転期間は40年、延長期間は20年」、経産省は60年超の場合、予見しがたい休止期間の範囲で操業を認める。

また、再処理等拠出金法では、経済産業省の認可法人「使用済燃料再処理機構」の業務に、「各地の廃炉作業の統括」を追加している。


原子力規制委員会は2023年2月13日夜に臨時の委員会を開き、運転開始から60年を超える原子力発電所の安全規制の新たな制度案と原子炉等規制法の改正条文案を多数決で了承した。

石渡明委員が反対するなか、山中伸介委員長と他の委員の計4人が賛成した。政府は今国会に関連法案の提出をめざす。

2023/2/10 原子力規制委員会、原発60年超運転に向けた規制制度案の承認持ち越し→承認 

ーーー

衆議院は4月27日の本会議で、電気事業法、原子炉等規制法、再処理等拠出金法、再エネ特措法および原子力基本法の改正案を束ねたGX脱炭素電源法案(脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案)を賛成多数で修正可決した。

同法を巡っては自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党が衆院通過前に規制委の審査の効率化を求める文言を付則に加えた。

原発の立地地域だけでなく「電力の大消費地である都市の住民」の信頼を確保し、協力を得ることを国の責務とする内容も修正して盛り込んだ。

5月31日の参院本会議で可決、成立した。

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