イラン、イラク、シリア3国の石油相は7月25日、イランのSouth Parsガス田からイラク、シリア、レバノンを経由し、地中海の海底を通って欧州まで通じるガスパイプラインの建設の覚書を締結した。
1か月内に3つのワーキンググループが技術面、資金面、法律面の検討を開始する。年内に最終契約の締結を目指す。
実際のルートは不明 |
2008年から検討が続けられてきたもので、総投資額は100億ドル程度と見積もられている。資金の確保後、3~5年が必要とみられている。
Islamic Pipelineと呼ばれる56インチのパイプラインは延長5600kmで、完成すれば日量110百万m3(年間400億m3)の天然ガスを輸送できる。
イランのガス生産量は2~3年内に倍増し、日量250百万m3のガスの輸出が可能となる。
イラクの必要量は10-15百万m3、シリアは15-20百万m3、レバノンは5-7百万m3とされる。
イランとイラクはこのパイプラインを通して欧州にイランのガスを送ることでの協力を決めている。
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イランはまた7月23日に、トルコに天然ガスを送る660kmのパイプラインを建設する契約を締結した。
3年以内に建設され、日量50~60百万m3のガスを輸送できる。
全体の23%はイランが建設し、残りはトルコ側(Som Petrol)が建設する。
イランは欧州へのガス輸出のため、トルコを横断するパイプラインの使用料を支払う。
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欧州の天然ガス需要を満たすため、現在、Nabucco、South Stream、Nord Streamの3つのパイプラインが計画されている。
これらについての詳細は下記参照。
2010/9/22 カスピ海の天然ガス、黒海経由で輸出へ
2011/3/30 BASFがロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加
Nabuccoガスパイプラインの建設・運営会社はこのほど、着工時期を2011年末から 13年に延期し、2014年末に予定していた稼働時期も2017年に先延ばしした。「カスピ海地域と中東からの供給時期の変更」を理由に挙げた。
South Streamでは2011年5月中旬、投資計画決定が12年末に延期された。通過国の許可取得やルート選定で調整が遅れている。稼働時期は15年末から変更せず、Nabuccoに先行したい考え。
Nord Streamはシベリアの天然ガスであるが、他は全て、中央アジアの天然ガスを狙ったもので、量的にも全てが実現することはないとみられている。
このため、米国による制裁にもかかわらず、イランの天然ガスの重要度が増大している。
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