2022年8月アーカイブ

英BBCは8月26日、ロシアがフィンランドとの国境近くにあるGazprom のPortovaya LNGプラントで、大量の天然ガスを焼却処分していると報じた。

Portovaya LNGプラントはNord Stream 1 pipelineの出発点 Vyborg のコンプレッサーステーションの近くにある。

専門家は1日に434万m3のガスが燃やされていると見ている。

1日に焼却されたガスを金額に換算すると、1000万ドルに上る。処分しているのはドイツに供給されるガスだったとみられ、他に売れずに焼却していると見られる。

Gazprom は6月14日、天然ガスパイプラインNordstream 1 の供給量を40%減らすと発表、翌15日、さらに33%削減すると発表した。従来の日量最大1億6700万立方メートルから60%カットし、最大6700万立方メートルになる。


その後、Gazpromは7月27日から供給量を日量3300万立方メートルに落とした。従来の供給量の2割程度である。


このプラントでは6月頃から大量の天然ガスの焼却が確認されていた。焼却により排出されるCO2などの環境への影響が懸念されている。

   フィンランド側から7月24日に撮影   source, Ari Laine


TotalEnergiesは8月26日、ロシアで天然ガスを生産するTerneftgasの持分49%をパートナーで51%を保有するNovatekに売却すると発表した。

TotalEnergies2016年520日、ロシアのヤマロ・ネネツ自治管区で天然ガスとコンデンセートの生産を開始すると発表した。生産を開始したのは Termokarstovoye オンショア油田で、1日当たりの生産能力は天然ガスが 660 万立方メートル、コンデンセートが 2 バレル。総生産能力は石油換算で 1 日当たり 6 5,000 バレルとなる。

運営はTotalが 49%、ロシア 2 位の天然ガス会社Novatek 51%出資して設立した合弁会社Terneftegas が担当する。

Total とNovatek は7月18日に合弁解消で合意、ロシア当局に承認を求めていたが、8月25日に認可が下り、譲渡契約に調印した。「投資残高を回収できる条件」で合意したとしている。

Totalは7月に、ロシアのハリヤガ油田(Kharyaga)で保有している権益(20%)の全てをロシア国営の石油会社ザルベジネフチ(Zarubezhneft)に譲渡することで合意したと明らかにしている。

ハリヤガ油田事業は生産分与契約で運営しており、この契約の一環でTotalは毎月約10万トンの輸出用石油を受け取っていた。

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Terneftgasに関してはルモンド紙の報道で騒ぎとなっていた。

仏紙ルモンドが8月24日に報じたところによると、ロシア空軍の2カ所の基地に供給されたジェット燃料は、TotalEnergies とロシアのNovatekの合弁会社Terneftegas(Novatek 51%、Total 49%)が供給するガスコンデンセートから製造された。

フランスのボーヌ交通担当相は8月25日、この報道を巡り、Totalの関与があったか検証が必要との認識を示した。

交通担当相は「これは極めて深刻な問題だ」と述べ、ロシアに対する制裁を回避する行為があったか検証する必要があると主張した。

これを受け、TotalEnergiesはNovatekに問い合わせたうえで、下記の発表を行った。

Terneftegasを含むNovatekの子会社や他の合弁会社で生産される不安定なコンデンセートは、すべてNovatekのPurovsky コンデンセート処理プラントに送られる。 Purovsky プラントでは、ロシアの他の生産者からのコンデンセートも処理しているが、その比率は20%を超えていない。

Purovsky コンデンセート処理プラントで生産された安定コンデンセートは、すべてレニングラード地域のUst-Luga工場に納入される。 Ust-Luga工場で加工される製品にはジェット燃料(Jet A-1)が含まれるが、これはロシア国外に輸出され、国内での販売許可を得ていない。

TotalEnergies はロシア空軍にケロシンを供給していないことを確認した。ルモンドの批判は根拠のないものと考える。記事に怒りを感じる。

TotalEnergies はTerneftgasの少数株主(49%)であり、運営はNovatek が行なっている。2015年以降、追加出資をしておらず、2022年2月以降、配当を受け取っていない。

現在、Terneftgasの持分の売却手続きに入っている。

そもそも、特殊な部品が軍事用に使われたら問題であるが、天然ガスからのケロシンはどこの天然ガスからでもつくられるもので、(そうではなかったが)Total出資のJVの天然ガスが使われたと問題にすること自体がおかしい。ロシアの企業に出資していることを問題にするなら別であるが。

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TotalEnergiesはTerneftgasやハリヤガ油田権益を売却したが、ロシアからの撤退ではない。

TotalEnergiesはNovatek に19.4%出資している。

NovatekのYamal LNG計画に出資している。

Novatek 50.1%  
Total 20.0% 2011/3/2 調印 ロシアの天然ガス開発ーBP撤退、Total進出
CNPC 20.0% 2013/9 参加合意、2014/1/14 株式買収完了
絲路基金 9.9%  

同じくNovatekのArcticLNG2プロジェクトに出資している。

Novatek 60%
Total 10%
CNODC 10%
CNOOC 10%
三井物産/JOGMEC
(25%) (75%)
10%


2019/4/30 北海LNG計画に中国2社が参加 

バイデン米大統領は8月24日、学生ローンを抱える数百万人の借り手に対し1人当たり1万ドルの返済を免除すると述べた。

2020年の大統領選挙で公約 していた。

パンデミック下で特に大きな打撃を受けた労働者や中流階級の人々のための措置だとし、高所得世帯 (所得上位5%)は対象外とする。

延長を繰り返し、8月末としていた学生ローンの返済猶予措置を年末まで延長するほか、年収125千ドル以下、夫婦の場合は合計25万ドル以下の世帯に対し1万ドルの学生ローンの返済を免除する。

低所得者層の学生を対象とするPell Grantsと呼ばれる連邦補助金の受給者に対しては最大2万ドルの免除を行う。

学生ローンの対象は約43百万人で、うち20百万人が債務全額免除となる。

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米国の学生ローンは1兆7500億ドルで、大半が連邦政府のローンである。

連邦学生ローンは民間の学生ローンに比べて低金利で借りられ、返済プランが柔軟であるなど、民間の学生ローンよりも有利な点が多いが、全期間にわたって金利は定率であり、低利子のローンに借り換えすることが困難である上に、破産免責されないことが通常であるといった不利な点がある。

自己破産の場合、連邦政府の資金が返済されないことから、これを防ぐため、1998年10月8日以降、連邦学生ローンは自己破産した後も免責とならない厳しい措置がとられている

破産しても、取り立て業者から返済を迫られる。

John Grishamの小説 The rooster bar はこの問題を扱っている。

悪質業者が多くの法律大学を設立し、学生を集めるが、一流大学でないこれらの大学の学生は卒業しても高収入を得られず、借金まみれになって破産に追い込まれる状況を描いている。

一般的な米大学の1年当たりの学費は1万~7万ドルで、大卒者は社会人になると同時に多額の債務を負い、返済に数十年かかることもある。政府の推計によると、約2万5千ドルの負債を抱えて大学を卒業する。大統領は、「負債が重すぎて大学を卒業しても中間層の生活が送れない。多くの人が住宅ローンを組めない」とし、返済免除を労働者階級に資する政策とした。

低所得者層の学生を対象とするPell Grantsと呼ばれる連邦補助金がある。これは返済不要である。これは1965年に設立されたが、時間の経過で教育費が大幅に増加したが、補助金の額はわずかに増加しただけである。

以前は4年制の公立大学の費用の80%を占めたが、現在では約30%とされる。追加で一般の連邦学生ローンを借りざるを得ない。

今回、Pell Grantsと呼ばれる連邦補助金の受給者に対しては、連邦学生ローンについて最大2万ドルの免除を行う。


今回の発表を受け、米上院共和党トップのマコネル院内総務は、学生ローン返済免除は「犠牲を払って大学資金を貯めた全ての家庭、負債を返済した全ての卒業生、そして負債を背負わないために特定のキャリアパスを選んだり、軍隊に志願したりした全ての米国人に対する平手打ちだ」と非難 した。

政府は8月24日の脱炭素社会の実現に向けた「グリーントランスフォーメーション実行会議」で、電力の需給がひっ迫する状況やエネルギー安全保障に対応するため、来年の夏以降、原発7基の再稼働を追加で目指す方針を確認した。また、安全第一での運転期間延長次世代の原子炉の開発や建設を検討することを明らかにした。

首相は、「今日の会議では、再稼働にむけた関係者の総力の結集、安全性の確保を大前提とした運転延長など原発の最大限の活用、次世代革新炉の開発建設など、今後も政治判断が必要な項目が示された。あらゆる方策について、年末に具体的な結論を出せるよう検討を加速してもらいたい」と述べ、次世代の原子炉の開発や建設などを年末までに検討するよう指示した。


次世代革新炉については、小型モジュール原子炉など革新的原子炉に注目している。建設に当たっては国が前面に立って地元理解の醸成に取り組むなど、環境整備に万全を期す考え。

2021/5/31 日揮とIHI、小型モジュール原子炉事業に参画 

2021/12/9 カナダ社、日立ニュークリア・エナジーの「BWRX-300」小型モジュール式原子炉技術を採用

参考 池田信夫 「次世代革新炉」でエネルギー問題は解決するか



この中で、これまでに再稼働した原発10基に加え、来年の夏以降、追加で7基の再稼働を目指す方針を確認した。


原発の再稼働には、「特定重大事故等対処施設」が完成すること、地方自治体の同意が得られることが必要である。

テロ対策施設は「特定重大事故等対処施設」と呼ばれ、2011年の福島第一原発事故後にできた新規制基準で設置が義務付けられた。
原子炉から離れた場所に建て、遠隔制御で原子炉を冷やす設備を備える。原子炉が航空機の衝突などによる攻撃を受けても、電源や冷却機能などを失わないようにする。

テロ対策施設の設置期限は、当初は新基準の施行から5年の2018年7月だった。
規制委は2015年、原発本体の審査が長引いていたことをふまえ、「工事計画の審査終了後 5年」に先延ばしを決めた。

原子力規制委員会は2019年4月24日の定例会合で、原発に設置が義務付けられているテロ対策施設が期限内に完成しない場合、期限の延長を認めないことを決めた。原則として原発の運転停止を命じる。

2019/4/25 テロ対策施設未完成の原発、運転停止へ 

これまでに再稼働した10基のうち、美浜3号、大飯3号、玄海3号、玄海4号が工事中である。美浜3号は放射性物質を含んだ水が漏れ、8月12日の再稼働を延期した。

現在 運転
再開
特定重大事故等対策 運転再開 2023/2までの稼働期間 次期定検 政府案
完了済 期限
停止
完了
関電 高浜 3号 定検 8月 8月~
4号 定検 10/21 10/21~
美浜 3号 特定 2021/10 7月下旬 8/12→延期
大飯 3号 8/24 12月 12月~
4号 定検 8月 (8/24) 8月 8/15
四国 伊方 3号 ~2023/2/23 2023/2/23
九州 玄海 3号 定検
特定
8/24 2023/1/20 2023/1/20~
4号 定検 8月 9/13 2023/2

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川内 1号 2月中旬まで 2023/2月中旬
2号 通期 2023/5
合計 10基 4基 9基

これ以外で認可済みだが稼働をしていない原発は下記の通り。

特定重大事故等対策 運転再開 政府方針
期限
停止
完了
 認

 可

 済
東電 柏崎
刈羽
6号 2022/7 地元の理解を得るため、国が前面に立って対応
7号
原電 東海 2号 2024/9
関電 高浜 1号 2023/5 2023/6 安全確保の工事完了待ち
2号 2023/7
東北 女川 2号 2023/11 2024/2
中国 島根 2号   今年度中
合計 7基


原子力規制委員会は7月13日、柏崎刈羽原発6、7号機のテロ対策施設「特定重大事故等対処施設」について、「新規制基準に適合している」とした審査書案を了承した。

柏崎刈羽原発と東海第二原発は、地元からの同意が得られていない。

新潟県の花角知事は原発の安全性に関する県独自の「三つの検証」が終わるまでは再稼働を「議論しない」としており、再稼働の時期は見通せない。


東海第二原発は、安全対策工事を2024年9月に終える予定だが、周辺自治体の避難計画の策定が終わっておらず、再稼働の時期が見通せない。

原子力規制を監視する市民の会は、「東海第二原発の再稼働に反対するこれだけの理由 」として以下を挙げている。

1.危険な老朽・被災原発を動かす理由がない
2.「経理的基礎」がない/東電からの資金支援は論外

2012年以降、発電量はゼロだが、各電力から毎年1,000億円以上 、総額7,350億円にものぼる(2012~2017年度)電気料金収入を得て、延命

3.「債務保証」?

規制委は、日本原電に対して、債務保証の枠組みを質問したが、東京電力と東北電力の2社が、債務保証のみならず「電気料金前払」という言葉を入れた。

4.事故の際の賠償は?

5. 設置変更許可申請を何度も何度も出し直し

6. 懸念だらけの安全対策

7.避難計画の実効性は誰も審査しない

原発30km圏には96万人が居住


加えて、柏崎刈羽原発は去年、テロ対策上の重大な不備が相次いで発覚し、原子力規制委員会による検査が現在も継続している。

原子力規制委員会は2021年4月14日、柏崎刈羽原発のテロ対策の不備を問題視し、原発再稼働に必要な核燃料の移動や装塡を禁じる行政処分の是正措置命令を決定した。事態が改善されたと判断されるまでは再稼働ができない状態が続くことにな る。

2021/3/29 柏崎刈羽原発の再稼働、見通しつかず


今回、政府は
地元の理解を得るため、国が前面に立って対応 するとしている。なにかあれば、国の責任となる。

他の原発でも反対が強い。

東北電力女川原発2号機の再稼働を巡り、石巻市の住民が2021年5月28日、東北電の再稼働の差し止めを求める訴えを仙台地裁に起こした。重大事故を想定した広域避難計画の実効性を問う。

原告は原発から16~25キロの緊急防護措置区域に住む男女17人。住民らは「女川地域原子力防災協議会は避難計画の実効性を調査、確認していない」と主張し、「交通渋滞で30キロ圏内を脱出できない」「病院や高齢者・障害者施設の入院患者や入所者は避難困難」と計画の問題点を列挙。計画の実行可能性や実施体制を疑問視し「住民らの生命や身体を侵害する具体的危険性がある」と訴えた。

全国で唯一、県庁所在地にある中国電力島根原発所(松江市)をめぐり、島根県の丸山達也知事は6月2日、2012年から定期検査のため運転を停止している2号機(出力82万キロワット)の再稼働に同意を表明したが、再稼働をめぐり、残された課題の一つは重大事故が発生した際の避難計画の実効性だ。

原発30キロ圏にある島根、鳥取両県の6市には計約46万人が暮らす。これは日本原子力発電東海第二の約94万人、中部電力浜岡原発の約83万人に次ぎ、全国3番目に多い。

高齢化も進み、自力で避難することが困難な「避難行動要支援者」は約5万8千人にのぼる。

東日本大震災のような大地震と原発事故が複合して起きた場合、中国山地を越える道路は通行できるのか、5万人を超える要支援者を支えきれるかなどの疑問は根強い。

政府は、「地元の理解を得るため、国が前面に立って対応する」としている。現在、避難計画は地方任せだが、政府が避難計画に責任をもつのだろうか。

付記 

使用済み核燃料の処理の問題も未解決である。特に関西電力は大変である。

関電は2015年以降、使用済み燃料を一時保管する中間貯蔵施設を県外に建設する方針を示してきた。

2017年11月、福井県知事が関電大飯原発3、4号機の再稼働に同意する際、関電は2018年に県外候補地を示すと約束した。だが選考は難航し「2020年を念頭に」と先送りしたが、まだ「関電から報告はない」。

知事は2020年12月2日、「提示が既に2年遅れ、地元と関電の信頼関係が崩れている」とし、40年超原発(高浜3、4号、美浜3号)の同意判断に当たり、年内提示が「全ての条件に先んじる」と踏み込んだ。

結局、関電は年内に県外候補地を示せなかった。

知事は、「(再稼働の)議論の入り口には入れない」とする一方、「最大限努力するということなので、それを待ちたい」とも述べた。

県幹部は「関電が『早く報告に来る』というから了とした。貯蔵プールの満杯も迫っているので、今回は期待もしていたが......」と話した。

電気事業連合会は12月18日、経済産業省の幹部とともに、むつ市役所に市長を訪ね「中間貯蔵施設」について、電力各社との共同利用に向けて検討に入りたいとする考えを伝えた。

これに対し市長は「青森県やむつ市は核のごみ捨て場ではない。中間貯蔵場所は全国で探すべきなのに、それがないまま突然『むつ市でお願いします』とはならない」と述べ、強い不快感を示した。

むつ市に拒否されると、高浜3、4号、美浜3号の再稼働の同意が得られなくなる。

福井県がこれまで関西電力に求めていた使用済み燃料の中間貯蔵施設県外候補地選定について、関西電力はたびたび延期していた回答期限を2023年に再延期し、福井県はこれを了承。40年超運転となる美浜3号、高浜1・2号の再稼働を容認した。

関電は2023年末までに確定できない場合、稼働停止を約束しているが、県外移転先が見つかる可能性はない。

2020/12/21 日本の原発の最近の諸問題

韓国のバイオ医薬品メーカーのSK BioScienceは、新型コロナウイルスの国産ワクチン スカイコビワン(SKYCovione)の量産を始めた。韓国防疫当局と供給契約を結び、8月末に出荷する。

東部の安東市で生産し、今後2年間で1000万回分を供給する契約を政府と結んだ。

欧州当局にも承認を申請しており、国際的な枠組み「COVAX」を通じ、世界各地への供給を目指す。

満18歳以上の成人4037人を対象にしたグローバル臨床3相の結果、ワクチン接種後、中和抗体が4倍以上上昇した対象者の割合を意味する抗体転換率が98%以上であることが確認された。 中和抗体も接種前に比べて33倍増加し、対照ワクチンと比べて3倍高い中和抗体が形成された。

安全性の側面でも対照ワクチンに比べ、類似した水準で異常反応率を示し、臨床試験期間中に特別な安全性問題が報告されなかった。

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韓国のバイオ製薬企業Celltrion グループは2021年11月、同社のモノクローナル抗体治療薬「レッキロナ:Regkirona」(Regdanvimab)が新型コロナ治療薬として欧州委員会から承認されたと発表した。

第3相臨床試験で、入院または死亡のリスクを72%低減することが示された。

既に韓国でも承認済みで、インドネシアとブラジルで緊急使用認可を得ている。同社は現在、世界30カ国以上の規制当局とも協議中で、世界市場での提供を進めている。


SK BioScienceは7月13日、SKY Covioneを追加接種(ブースターショット) した時、オミクロン(BA.1)に対する免疫反応が現れたと明らかにした。

健康な成人81人を対象に基礎接種(2回)後、7ヵ月が過ぎた時点で、追加接種した結果、オミクロン株を中和して予防効果を誘導できる中和抗体価が2回接種直後と比べ、25倍増加した。
また、2回接種後、7ヵ月経過時点(ブースターショット接種直前)に比べ、72倍高かった。

バイデン米大統領は8月16日にインフレ対策法案:Inflation Reduction Act of 2022 に署名し、成立した。大統領は「気候変動に関するこれまでで最大の前進だ」と強調した。

エネルギーコスト引き下げ、クリーンな生産、2030年までにカーボン排出の40%削減を狙い、3,690億ドルを投じる。

2022/7/30 米民主党のインフレ対策法案:Inflation Reduction Act of 2022

新法では、

低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に1台当たり最大7500ドルの税控除を受けられる。

既存のEV減税は適用対象を自動車メーカーごとに20万台と定めていたが、台数の上限を撤廃する。  

ただ、EV減税の対象となる新車について、北米地域での最終組み立てを義務付けた。さらにEV用電池の原材料である重要鉱物の調達先を、米国か、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に事実上制限する。世界シェアの高い中国製品をサプライチェーン(供給網)から排除する狙い。

米国政府は法律が成立した8月16日から北米での組み立てでない電気自動車へのエコカー補助を中断した。

米自動車イノベーション協会は声明を出し、新法の成立により、米市場で販売されているEV72モデルの約7割が、直ちに減税の対象外になると警告した。

EUや韓国は、米産品を優遇するEV減税について、内外無差別をうたったWTOルールに反すると主張している。

エネルギー省は法案成立に伴い、北米での組み立て電気自動車のリストを発表した。Manufacturer sales cap metと注意書きがあるのは「累計20万台まで」との現在の制限にかかるもの。2023年からは制限が外れるとされる。

BMW・アウディ・ベンツや日産、ボルボは電気自動車とPHEVのうち1-2車種が補助金の対象となるが、米国で自動車を組み立てていない韓国の現代自動車は、電気自動車5車種のほかプラグイン・ハイブリッド(PHEV)の5車種もエコカー補助金の支給対象から外される。

現代自動車グループが米国で販売中のトゥサン、サンタフェ、スポーティジ、ソレント、ニロのPHEVは全て16日からエコカー補助金支給対象から外れた。米国の消費者が現代自のPHEVを購入する際に受け取っていた6587ドル(約90万5000円)を上限とする補助金が全てなくなった。今回補助金の支給対象から外れた現代自グループのエコカー10車種は今年上半期の米国での販売台数が5万台近くに達していた。

日産はNissan Leafが対象となる。トヨタは含まれていない。

逆にテスラやGMは、「1ブランド当たりの補助金支給は累計20万台まで」という従来の規制が2023年からなくなり、米国市場でさらに有利な立場に置かれるようになった。

テスラは2019年、GMは2020年に電気自動車とPHEVの補助金支給台数が累計で20万台を上回ったため、ここ2-3年は米国で両社の電気自動車を購入しても補助金は受けられなかった。

GMなど米国の自動車メーカー各社はインフレ削減法が成立する直前まで「補助金対象上限20万台」の規制撤廃に向けロビー活動に力を入れていたが、これを最後まで貫徹した形だ。

一方で、中国製バッテリーと中国産のレアメタルを使用した電気自動車は税控除の対象外になるということで、米国で生産設備を増やしてきたLGエネルギーソリューションとSKオン、サムスンSDIなど韓国のバッテリー企業は、補助金の支給による市場拡大と、中国へのけん制による反射的利益を得ることになる。

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なお、現代自動車は5月21日、米ジョージア州に電気自動車(EV)の専用工場を新設すると発表した。

投資額は55億ドルで、2025年の稼働を目指す。生産能力は年産30万台規模で、車載電池工場も併設する。

2022/5/24 現代自動車、米にEV工場  

米ジョージア州経済開発省長官は8月18日、現代自動車の同州におけるEV工場が目標時期を前倒しし、2年以内に稼働できるよう全力を尽くしていると述べた。「今年10月25日に着工し、2024年10月に稼働することが目標だ」と表明した。

ロシア国営 Gazprom は6月14日、天然ガスパイプラインNordstream 1 の供給量を40%減らすと発表、翌15日、さらに33%削減すると発表した。従来の日量最大1億6700万立方メートルから60%カットし、最大6700万立方メートルになる。


ドイツ重電大手Siemens Energyなどによると、パイプライン内のガス圧力を高めるために使われるガスタービン 1基をカナダで修理したが、カナダ政府の制裁措置によってGazpromに提供できなくなったという。Siemens Energyではドイツとカナダ政府に事態を連絡し、解決策を協議していると発表した。

カナダ政府は7月9日、修理したタービンをドイツに返却すると発表した。

2022/6/17 Gazprom、ドイツ向けの天然ガス供給を削減

その後、Gazpromは7月27日から供給量を日量3300万立方メートルに落とした。従来の供給量の2割程度である。
タービンについては、5月の時点でシーメンスから修理済みのエンジンを受け取る予定だったが、7月末時点でエンジンを受け取っていないとした。

Gazprom は8月19日、定期メンテナンスのためNordstream 1を8月31日から3日間停止すると発表した。点検終了後に故障などがなければ、日量3300万立方メートルの供給を再開する計画としている。

供給停止の発表後、ヨーロッパのガス価格は7%跳ね上がった。

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この状況を受け、ドイツと南欧を結ぶ新たな天然ガスのパイプライン敷設計画が浮上している。2019年に一度中断したが、ロシアからのガス供給が削減されるなか、 スペイン政府が再提起した。

アルジェリアは天然ガスと石油を多く産し、天然ガスは地中海の海底パイプライン4本でイタリア、スペインに送られており、欧州の経済を支えている。

他に、ナイジェリアのガスをこれらのパイプラインで欧州に輸出するために、ナイジェリアとアルジェリアを結ぶパイプラン建設の計画がある。


2013/1/21 アルジェリアの石油と石油化学産業

今回の計画は、アルジェリアからスペインに海底トンネルで送られる天然ガスを、ピレネー山脈を貫くパイプライン約200キロメートルを新設して既存のフランス・ドイツ間のパイプライン経由でドイツに送るもの。

同区間がつながれば、スペインが海底パイプラインで輸入するアルジェリア産ガスをドイツなどへ送れる。さらにスペインとポルトガルが米国などから輸入している液化天然ガス(LNG)の大量供給も可能になる。


ピレネー山脈を貫く建設費の試算は4億4000万ユーロ(約600億円)で、環境保護団体の反発もあり、2019年に計画は頓挫していたが、 スペイン政府が提案した。ショルツ独首相は8月11日、関係する3カ国、欧州連合(EU)の首脳と協議したうえで「現在の厳しい供給状況を大幅に改善できる」と計画推進の考えを示した。

スペインのリベラ環境保護相は「協力を得られれば8~9カ月で稼働可能」としており、EUも資金支援に前向きとみられる。

ガス依存度が低いフランスはこれまで計画に否定的だったが、現在は水不足や定期修繕の影響で全体の半分の原発が稼働を制限されている。ドイツから大量の電力供給を受けており、方針を変える可能性がある。

なお、下記の通り、アルジェリアとモロッコの国交断絶によりパイプライン2本のうち、モロッコ経由の1本が使えなくなり、十分な量が追加で送れるかどうかが問題となる。

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アルジェリアからスペインには2本のパイプラインが通っている。

Maghreb Burrop Gas Pipeline (MEG)はアルジェリアからモロッコを経由し、スペインと結ぶ。

2011年完成のMedgaz Pipelineは、アルジェリアのBeni-SafからスペインのAlmeriaまで地中海の深さ2160mの海底200kmを結ぶ。

アルジェリアは2021年8月24日、モロッコ政府との国交断絶を発表した。モロッコが同国に対して敵対的な行動を続けているとして、パレスチナ人の権利支援や西サハラ問題解決への努力などをうたった両国間の国交正常化の下での1988年5月の共同コミュニケにモロッコが違反していると説明した。
  • モロッコがイスラエルとの国交正常化を積極的に進める中、イスラエルのヤイル・ラピッド外相が2021年8月11日にモロッコを訪問した際に、アルジェリアに対して敵対的な発言をした。
  • モロッコ政府がアルジェリア北東部カビール地方の独立派テログループを支援し、8月上旬に同地域で多数の死者を出した大規模な山火事の発生に関与した。
  • モロッコ政府が、イスラエル企業が開発したスパイウェア「ペガサス」をアルジェリアの当局者および国民に対して広く使用した。
  • モロッコ政府が西サハラ問題の解決への取り組みを拒否している。

アルジェリアのエネルギー鉱業相はスペイン向けガス輸出について、モロッコ領内を経由する「マグリブ・ヨーロッパ・ガスパイプライン」を2021年10月末で停止し、全てのガス輸出はスペイン・アルジェリア間を直接結ぶ「メドガス・ガスパイプライン」を介して行う方針を発表した。

また、炭化水素公社「Sonatrach」によると、北西部ベニー・サーフでの新たなガス圧縮機の運転に伴い、メドガス・ガスパイプラインの年間輸送量が現在の80億立方メートルから105億立方メートルまで増加する見通しを発表した。

アルジェリアのガス供給網の変更により、モロッコはアルジェリアからガス供給を受けられなくなり、ガスパイプラインの通過料収入も失う 。

モロッコ政府は、当面はスペインの受け入れ基地を通じてLNGを輸入して再ガス化した上で、同パイプライン経由でスペインからモロッコに逆送するかたちで供給を受ける。

太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題で、韓国の最高裁判所は、三菱重工業が韓国国内にもつ資産の売却命令に対する会社側の再抗告について、再抗告の受理から4か月にあたる8月19日にこれを退けて売却命令を初めて確定させることになるのではないかという見方が出ていた。

しかし、最高裁はひとまず判断を見送った。審理は継続される。三菱重工業の訴訟を担当する大法院判事が9月4日に任期満了で退任予定とされており、「遅くとも8月中に決定が出る見通し」とされる。

資産を売却する「現金化」の前に韓国政府が打開策を打ち出せるのかが引き続き焦点となるが、時間は余りない。

付記

特許権売却事件の主審であるキム・ジェヒョン大法官(最高裁判事)が結論を出せないまま9月2日に任期を終えて退任式を行った。後任の裁判部がいつ構成されるかも分からない状況。

大法院側はこれに先立って「大法院がこの事件をいつまでに決めると方針を固めたり、大法官の間で合意されたものはない」とし「キム・ジェヒョン大法官退任前までに決定するよう方針を固めたわけではない」と説明していた。

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韓国大法院(最高裁判所)は2018年11月29日、三菱重工業に対し、第2次世界大戦中に同社の軍需工場で労働を強制された韓国人の元徴用工らに対する賠償支払いを命じる判決を下した。大法院は、損害賠償訴訟2件について、三菱重工業の上告を棄却し、2件の訴訟の原告に対し、1人あたり最大で1億5000万ウォン(約1500万円)の支払いを命じた。

韓国の大田地裁は2019年3月25日、三菱重工業の韓国内資産の差し押さえを決定した。

原告側が裁判所に強制執行を申請していたのは三菱重工業の商標権2件と 、三菱重工業が韓国国内に保有中の770件余りの特許権のうち発電技術特許などの特許権6件で、現金換算で8億400万ウォン(約7200万円) に相当する。三菱重工業は同資産の使用、売買や譲渡ができなくなる。

三菱重工業が資産売却に関する関連書類の受け取りを拒否しているため、大田地裁は9月7日に三菱重工側から意見を聞くための「審問」に関してウェブサイトに「公示送達」を掲載した。「公示送達」は12月30日に効力が発生するとしており、地裁は、双方の公示送達の効力が生まれる12月30日以降、現金化に向けた次の判断を下すとみられた。

三菱重工業は、「公示送達」成立を受け、差し止めを求める即時抗告を行なった。

2020/11/3 韓国地裁、朝鮮女子挺身隊訴訟で 三菱重工資産の売却へ手続き

2021年8月には水原地裁安養支部が、韓国企業との取引で発生した三菱重工の物品代金債権に対する差し押さえと取り立て命令を決定した。しかし、韓国企業が「当社の取引企業は三菱重工業ではなく三菱重工業エンジンシステム」と説明、命令が取り消された。

2021/8/20 三菱重工の韓国内現金資産、初の差し押さえ

三菱重工業の差押えの差し止めを求める即時抗告は棄却され、資産売却の可能性が強まった。

三菱重工業は2022年4月15日に特許権の売却命令に対して、4月26日に商標権に関わる資産売却命令を不服とし、大法院(最高裁)に再抗告した。

2022年4月29日に、元女子勤労挺身隊員らへの賠償を命じた判決をめぐり、韓国の大田地裁が同社の差し押さえ資産のうち、さらに特許権2件の売却命令を出した。裁判所が差し押さえた同社の特許権6件と商標権2件のすべてに、売却命令が出たことになる。

上告審手続きに関する特例法によると、大法院は再抗告を受け付けてから4か月以内であれば理由を示さずに「審理不続行」との判断で棄却できる。
4か月の期限にあたるのが8月19日で、大法院の判断が注目されていた。

韓国外務省は7月26日、元徴用工問題の解決に向けた外交的な努力を説明する意見書を韓国大法院(最高裁)に提出した。

公益に関連する事項について、国と地方自治体は意見書を提出できると定めた最高裁の民事訴訟規則に則るもの。

「韓日の共通利益に合致する合理的な解決策」を探るため、外交協議を続けているとの立場を強調する内容で、解決策を協議するため同省が7月に設けた官民協議会について「原告側や各界各層の意見を集めるなど、多角的な外交努力を傾けている」と説明した。

尹錫悦政権は、資産の現金化によって日韓関係が一段と悪化する事態を懸念している。現金化の判断を先延ばしできれば、その間に原告を交えた国内の意見集約や日本との外交協議を前進させられると考えている。

文在寅前政権は司法判決を尊重する立場をとり、現金化を回避するための具体的な行動は取らなかった。


韓国の尹錫悦大統領は8月17日、日韓の懸案になっている戦時中の元徴用工の訴訟をめぐる問題について、「日本が憂慮する主権問題に抵触することなく、債権者(の原告)が補償を受けられるような案を、十分に考えている。合理的に導き出す」と述べた。

日本企業の資産を売却する「現金化」の手続きが近く終わる可能性もあり、日韓関係がさらに悪化するとの懸念が出ている。  

尹氏は会見で、徴用工問題などについて「両国が未来志向的な協力関係を強めた時、譲歩と理解を通じて円満に解決できる」と述べた。厳しさを増す安全保障環境や経済協力の必要性にも触れ、日韓が「未来のために緊密に協力しなければならない」と語った。そのうえで、徴用工問題などの解決に向けて「合理的な案を導き出すことができる」と説明した。

「判決の(強制)執行の過程で、日本政府が憂慮する主権問題と衝突することなく、原告が補償を受けられるようにする解決案を検討している」と述べ、敗訴した日本企業の資産の現金化に伴う実害が出ない措置を準備していることを示唆した。

これを受け、韓国最高裁は8月19日にひとまず判断を見送った。審理は継続されるため、資産を売却する「現金化」の前に韓国政府が打開策を打ち出せるのかが引き続き焦点となる。

韓国の体外診断用製品メーカーのSD Biosensor Inc.は8月18日、日本政府に1483億ウォン(約150億円)規模の新型コロナウイルス診断キットを供給する契約を結んだと発表した。


供給する製品は、新型コロナとインフルエンザを一度に診断する同時診断キットと、新型コロナの自己検査キット で、年内に納品が完了する。

同社は、日本政府が新型コロナとインフルエンザを同じレベルで管理することを検討しているため、同時診断キットの需要が増加したと説明し ている。

日本政府の発表はないが、これはスイスのRoche による製造販売承認に基づくものと思われる。

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Rocheの日本法人ロシュ・ダイアグノスティックスは2020年10月に新型コロナウイルスの簡易型迅速抗原検査キットについて、体外診断用医薬品の製造販売承認を厚生労働省に申請した。

SARS-CoV-2 抗原を、鼻咽頭ぬぐい液を用いて迅速に検出する検査薬で、専用の装置は必要なく、約 15 分で陽性/陰性の検出結果を判定する。

本検査キットは、Rocheがグローバルで販売代理店契約を締結している SD Biosensor Inc.との提携により販売するとしていた。

詳細は不明だが、韓国のSD Biosensor Inc に製造委託をしているものとみられ、それを前提とした製造販売承認申請とみられる。

ロシュ・ダイアグノスティックスは「SARS-CoV-2 ラピッド抗原テスト」の製造販売承認を2021年2月9日に取得した。

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Rocheは2020年9月4日、検体から新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスA型・B型を検出する検査薬「cobas SARS-CoV-2 & Influenza A/B」が、米食品医薬品局(FDA)より緊急使用許可(EUA)を取得したと発表した。

同検査薬は、EUでもCEマークを取得したため、EU加盟国でも使用可能となる。

同検査薬は、最短時間での新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスA型・B型の判別が可能。インフルエンザC型の判別はできない。

新型コロナウイルス感染症とインフルエンザは症状が似ているケースがあり、一度の検査で双方の可能性を調べることができるようになる。


ロシュ・ダイアグノスティックスは、一つの検体から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)、A型インフルエンザウイルスおよびB型インフルエンザウイルスを検出する体外診断用医薬品「コバス® SARS-CoV-2 & Flu A/B」の製造販売承認を2020年11月13日に取得し、同日付けで保険適用されたと発表した。

今回、日本政府はロシュが製造販売承認を取得したこれらの製品を、Rocheの製造委託先の韓国のSD Biosensor Inc.から買い上げたものとみられる。

英政府は8月15日、新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」に対応したワクチンを承認したと発表した。米Moderna製で、成人のブースター接種(追加接種)に用いる。

英メディアによると、従来型とオミクロン型の両方に対応する「2価ワクチン」("bivalent" vaccine)が承認されるのは世界初という。

英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は今回の承認について、追加接種によって従来株とオミクロン株「BA.1」の両方に対して「強い免疫反応」が見られたことを示す臨床試験のデータを基に判断したと説明している。

また、現在主流となっているオミクロン株の派生型「BA.4」と「BA.5」に対しても「良好な免疫反応」が見られることが予備的な分析で示されているとしている。

Modernaによると、オーストラリア、カナダ、欧州連合(EU)で同じワクチンの承認を申請しており、数週間程度で複数の承認を得られる見通しという。

付記

米国 FDAは8月31日、Moderna とPfizerがそれぞれ開発した「2価ワクチン」(従来の新型コロナウイルスに対応する成分と、オミクロン株の「BA.4」と「BA.5」に対応するワクチンの2種類を含む)について、追加接種に対する緊急使用の許可を出した。

Modernaのワクチンについては18歳以上、Pfizerワクチンについては12歳以上で、ワクチンを2回接種したり、さらにブースター接種をしたりしてから少なくとも2カ月経過した人が対象。

副反応については、これまでのワクチンと同様の症状が出るとみられるという。

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厚生労働省は8月8日、高齢者の重症化を防ぐとともに若い世代も含め社会全体の免疫をあげるため、新型コロナウイルスのオミクロン株に対応したワクチンの接種を、2回目までのワクチン接種を終えたすべての人を対象に、10月中旬以降に開始する方針を決めた。

新しいワクチンは、従来株に由来する成分とオミクロン株のひとつ、「BA.1」の2種類を組み合わせた「2価ワクチン」と呼ばれるもの。

使用を想定しているのはPfizerとModernaが開発中のワクチンで、薬事承認されれば来月にも輸入し、自治体への配送を開始する。


PfizerとBioNTech は 、オミクロン株対応のCOVID-19ワクチンを日本の厚生労働省に承認事項一部変更申請した。


新型コロナウイルス(SARS-CoV 2)の起源株とオミクロン株BA.1系統のスパイクタンパク質をそれぞれコードする2種類のメッセンジャーRNAを含む2価ワクチンであり、生理食塩水での希釈が不要な製剤(RTU製剤)になる。

本剤は、BioNTech が所有するmRNAワクチン技術に基づき、BioNTech とPfizerが共同開発している。

Moderna日本法人は8月10日、追加接種用 2価ワクチンを、18 以上を対象とした追加接種用ワクチンとして厚生労働省に承認事項一部変更申請を行った。

従来のワクチンのmRNA-1273 オミクロン株対応のmRNA でいる。



付記

新型コロナウイルスのオミクロン株に対応したPfizer/BioNTechとModernaの2価ワクチンについて、厚生労働省は9月12日、専門家部会の審議を経て、国内での製造販売を特例承認した。
9月19日の週にも、4回目接種の対象となっている60歳以上の高齢者、持病のある18歳以上、医療従事者から接種を始める。

ファイザー製は12歳以上、モデルナ製は18歳以上に使う。

第一三共は4月9日、テキサス州東部地区連邦地方裁判所の陪審が、同社の抗がん剤 ENHERTU ®(トラスツズマブ デルクステカン) Seagen Inc.の米国特許No.10,808,039'039 を侵害しているとの評決を下したと発表した。

陪審員は'039特許の故意侵害があったと認定、陪審審理に至るまでの期間のSeagen社の損害額が41,820千ドルであると判断した。Seagen社は2024年の'039特許の期間満了までの売上に対するロイヤリティ支払い命令を出すよう、裁判所に求めている。

これについて、テキサス州東部地区連邦地方裁判所は7月20日 、Seagen社の主張を認める判決を下した。

他方、デラウェア州連邦地方裁判所へのSeagenを被告とした確認訴訟で裁判所は仲裁による解決を指示したが、第一三共は8月13日、仲裁廷が Seagenの主張を全面的に否定する判断を下した と発表した。

前者は第一三共がSeagenの'039 許侵害を判断、後者は'039 許侵害はないとの判断である。

本来、仲裁が最終の筈だが、Seagenは法的アクションを継続するとしている。

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本剤は、新規の薬物トポイソメラーゼI 阻害剤を、独自のリンカーを介して、HER2発現がん(乳がん、胃がん、非小細胞肺がん及び大腸がんなど)を対象とする抗HER2抗体に結合させた抗体薬物複合体ADCである。

がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高める。

トポイソメラーゼI 阻害剤は、癌細胞のDNAの2重らせん構造のうち1本を切断し、異常な細胞増殖を抑えることでがん細胞を殺す。

第一三共はこのADCについて、抗HER2抗体とリンカー、ペイロード(トポイソメラーゼI 阻害剤)のすべてを自社技術で構築した。

第一三共は、2008年7月からSeattle Genetics, Inc.(現在のSeagen)抗体薬物複合体(「ADC」)の共同研究を実施したが、新薬開発の成果がでないとして2015年6月に関係を解消していた。

2019年にSeattle Geneticsから第一三共のADC品に関する特定の知的財産権の帰属を主張して異議の通知をうけた。しかし、ADCの共同研究は現在の第一三共のADC品とは全く異なるため、同社の主張は根拠がないと考えており、デラウェア州連邦地方裁判所に同社を被告として確認訴訟を提起した経緯がある。

2022/4/13 第一三共の抗がん剤に米連邦地裁で陪審が「特許侵害」の評決

本件については3つの案件が進行していた。

1)  ENHERTU ® Seagen Inc.'039 許侵害

このENHERTUの米国特許('039 特許)をめぐる侵害訴訟で、テキサス州東部地区連邦地方裁判所は7月20日、Seagen社の主張を認める判決を下した。

裁判所の今回の判決は、今年4月8日の陪審評決を確認したものとなっている。ただ、第一三共の発表によると、陪審が故意侵害であると認定したにもかかわらず、同裁判所は、状況を総合的に判断し、損害賠償額を増額しなかったとしている。

裁判所は、2024年に期間満了を迎える'039特許の存続期間中の本剤の将来売上に対するロイヤルティ支払について、まだ判断してい ない。

第一三共は同日、「今回の判決及びSeagen社への損害賠償等に対し、引き続き当社の権利を守るべく判決後の申立て等のあらゆる法的措置を検討する」とのコメントを発表した。


2)第一三共側の'039 特許の無効の訴え

第一三共は20201223日、'039特許が無効であるとして米国特許商標庁に同特許の有効性を審査する特許付与後レビュー(PGR:Post Grant Reviewの開始を請求した。

米国特許商標庁は202247日に、PGRの開始を決定した。

しかし、米国特許商標庁は 本年7月、Seagenの再審理請求を認め、PGR手続きを進めないことを決定した。
当該決定は、米国特許商標庁が
'039 特許の有効性について判断したものではない。

第一三共は、米国特許商標庁が、PGRを開始した後にSeagen社の再審理請求を認めたことに不服で、米国特許商標庁がPGR手続きを完了するよう、今後あらゆる法的手段等を検討するとしている。


3) 
デラウェア州連邦地方裁判所へのSeagenを被告とした確認訴訟

2019年にSeattle Genetics(現在のSeagen )から第一三共のADC品に関する特定の知的財産権の帰属を主張して異議の通知をうけた。しかし、ADCの共同研究は現在の第一三共のADC品とは全く異なるため、同社の主張は根拠がないと考えており、2019年11月にデラウェア州連邦地方裁判所に同社を被告として確認訴訟を提起した。

裁判所は仲裁による解決を指示、Seagenが同月に当該主張に関して米国仲裁協会 に仲裁を申立てた。

第一三共は8月13日、仲裁廷が Seagenの主張を全面的に否定する判断を下した と発表した。

仲裁判断により、Seagen の主張は退けられ、第一三共は係争対象となった ADC 技術に関する当該知的財産権をこれまでどおり保持し、今後も計画通りにADC 製品の開発および商業化を進めていくことにな るとしている。

これに対しSeagenは、仲裁判断には失望するが、法的アクションは継続すると述べた。

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現在、裁判所は第一三共がSeagen特許を侵害していると見做している。

特許商標庁は、第一三共が '039特許が無効であるとして同特許の有効性を審査する特許付与後レビューを進めないこととした。

仲裁廷 Seagenの主張を全面的に否定する判断を下した 。

裁判所が仲裁による解決を指示、Seagenが申し立てた仲裁で仲裁廷がSeagenの主張を全面的に否定する判断を下した のであれば、第一三共がSeagen特許を侵害していないこととなる。

Seagenが法的アクションは継続するとしているが、裁判所が仲裁による解決を指示した際に、仲裁が最終としていなかったのだろうか?


仲裁判断は、外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(通称、ニューヨーク条約)により、160を超える締約国の裁判所を通じて、その国の裁判所の確定判決と同一の効力を有するものとして取り扱われ、その内容を強制執行することができます。
(JCAA 日本商事仲裁協定)

ペロシ米下院議長の台湾訪問に対抗して8月4日から軍事訓練を実施した中国は8月11日、1993年と2000年に続いて3度目となる台湾白書を発表した。

「台湾問題と新時代の中国統一事業」という白書で、中国は「一国二制度と平和統一」を戦略として前に出した。

白書はまず、「台湾は中国の一部だという歴史的、法的事実に疑いの余地はない」とし、台湾統一の歴史的正当性を強調した。

中国は1971年の第26回国連総会で「中華人民共和国は中国政府を代表する唯一の法的代表者」という2758号決議案を通過させた。

続いて1978年に「外交関係樹立に関する共同コミュニケ」で「米国は中国が唯一の法的政府であることを認め、台湾とは文化、商業、その他の非公式的関係を維持」することにした。

白書は、「事実を歪曲し、一つの中国の原則を否定するすべての行動は失敗に終わるだろう」と警告した。

白書は統一の正当性を前提にした後、「平和統一と一国二制度」を戦略として強調した。核心は、両岸(中国と台湾)の長い間の政治的違いを認めながら統一を推進するというもので、「統一を促進するために両岸の多様な政党と各界要人の民主的協議を推進する用意がある」とした。

一国二制度は「中国特色社会主義の偉大な構想であり、中国共産党が平和統一を達成するために用意した重要な制度的装置」と強調した。

「これは台湾の現実を十分に考慮すると同時に、統一後の台湾の長期的な安定に寄与する」とし「統一以降、台湾が本土と異なる社会制度を施行することが可能で、法に基づき高度な自治権を行使できる。2つの社会制度が長く共存発展するだろう」とした。

なお、1993年と2000年の過去2回の白書は、統一後に「台湾に駐留軍や行政官を派遣しない」とし、台湾が中国の特別行政区となった後も自治を認める方針を示していたが、最新の白書にはそのような文章は消えている。
また2000年の白書は、台湾が一つの中国の概念を受け入れ独立を追求しない限り「何でも交渉できる」としていたが、今回の白書からはそれも消えている。

白書は「それぞれ異なる体制は統一の障害物でも分断の口実でもない」とし「時間が経過するにつれて多くの台湾同胞が『一国ニ制度』を理解することになる」と断言した。

統一を妨害するのは政治制度の差でなく外部勢力の介入のためという認識で、「米国の一部の勢力が中国を統制するために意図的に『台湾カード』を使用し、『台湾独立』勢力を刺激している」とし「これは中国政府の平和統一努力を妨害するだけでなく、中米関係を転覆させ、米国の利益に深刻な被害をもたらすだろう」と指摘した。

台湾の対中国政策を主管する大陸委員会は、白書は「希望的観測の嘘に満ち、事実を無視している」と非難した。

中華民国は主権国家であり、中共政権は1日たりとも台湾・澎湖・金門・馬祖を統治したことがない。その事実を捻じ曲げた「一つの中国原則」は国連憲章を誤って引用することで台湾に対する主権をでたらめに主張し、国際ルールに挑戦している。

中国共産党第20回全国代表大会を控えて国内に向けたものであり、嘘でかためた宣伝工作に過ぎない。

台湾は主権国家であり「台湾の将来を決める権利があるのは2300万人の住民だけで、独裁政権が決めた結果を受け入れることは決してない。

韓国政府は8月12日、朴槿恵元大統領らへの贈賄罪などで有罪判決を受けたサムスングループ経営トップの李在鎔サムスン電子副会長らを8月15日の光復節(日本による植民地支配からの解放記念日)に特別赦免(恩赦)し、減刑や復権の対象にすると発表した。

中小企業家・小商工人など庶民生計型刑事犯、主要な経済界関係者、労使関係者、特別配慮受刑者など1693人が対象となった。

主要な人物としてはサムスン電子の李在鎔副会長、ロッテグループの辛東彬(重光昭夫)会長、東国製鋼の張世宙会長、元STXグループ会長の姜徳壽の経済界関係者4人だけを赦免した。

政府は、経済活性化による経済危機克服のため、最近刑執行を終了した李在鎔副会長を復権し、執行猶予期間中の辛東彬会長を特別赦免(刑宣告失効)および復権したと説明した。
さらに、再び経済発展に参加する機会を与えるため、張世宙会長と姜徳壽元会長も赦免対象に含まれた。

「国を挙げての経済危機の克服が切実に求められる状況を勘案し、積極的な技術投資と雇用創出で国の成長エンジンを主導する主要経済人を厳選し、赦免の対象に含めた」と説明した。

尹大統領は「今回の赦免は何より国民生活と経済回復に重点を置いた」と述べた。

サムスン電子の李在鎔副会長は2年6カ月の実刑が確定し服役したが、昨年8月に仮釈放された。刑期は先月に満了したが、特定経済犯罪加重処罰法上、5年間は就業が制限されていた。恩赦を受けて自由な経済活動ができるようになる。

2021/8/14 サムスン副会長、仮釈放

ロッテの辛東彬(重光昭夫)会長が被告となっている2つの裁判を併合して審理が行われた控訴審で、ソウル高裁は2018年10月5日、懲役2年6月、執行猶予4年(求刑は懲役14年)を宣告した。
実刑を免れた辛被告は同日、保釈された。ロッテの経営に復帰する。

韓国大法院(最高裁)は2019年10月17日、二審判決を支持、有罪が確定した。収監には至らず、引き続きグループの経営を主導する。

2018/10/9 ロッテグループの辛東彬(重光昭夫)会長 保釈、経営に復帰へ

鉄鋼大手の東国製鋼の3代目会長である張世宙会長は、常習賭博と背任、横領で起訴され、1審判決で背任、横領で実刑判決を受けた。


一方、李明博元大統領と金慶洙元知事、南在俊、李丙ギ元国家情報院長、崔ギョン煥元議員、田炳憲・元青瓦台政務首席など政治家は「国民生活と経済回復に重点を置く」との恩赦の原則に基づき、対象から除外された。

李元大統領はサムスンなどから巨額の賄賂を受け、会社の資金の横領した罪などで懲役17年、罰金130億ウォン(約13億円)を言い渡され服役したが、今年6月、健康問題を理由に刑の執行が一時的に停止され、釈放されている。

2020/10/30 韓国の李明博元大統領に懲役17年の実刑確定

付記 

韓国の尹政権は12月27日、懲役17年の実刑判決を受けた李明博元大統領(81)の特別赦免を決めた。28日付で実施され、残りの15年の刑期は免除される。

韓国政府は赦免の理由を「国民統合の観点」と、李氏の健康状態の悪化と説明した。

なお、朴槿恵元大統領については、収賄などの罪で懲役22年(20年と別件2年)の実刑が確定し服役中であったが、2021年12月31日付で赦免された。健康状態の悪化などを考慮して、文在寅前大統領による新年の特別恩赦の対象者に含まれた。2021年に入り、慢性的な肩の疾患や椎間板ヘルニアなどのため、3回入院を重ねていた。

2021/1/15 朴槿恵・韓国前大統領、懲役20年が確定


この日、政府は建設業、自家用貨物車・旅客運送業、公認仲介業、生計型漁業人漁業免許・許可、運転免許など行政制裁対象者の合計59万3509人に対する特別減免措置も施行した。また、政府は模範囚649人を仮釈放したと発表した。



現場は、チリのアタカマ州にあるカナダの採鉱企業 Lundin Miningの所有地で鉱山に近い。

Lundin Mining は8月1日、同社のOjos del Salado 銅鉱山の近くで穴が発見されたと発表した。

Ojos del SaladoはSantos 銅山とAlcaparrosa銅山から成り立っており、Lundin Mining 主導のCandelaria mining complexの一部である。

Lundin Mining はCandelaria銅鉱山の権益の80%を所有、残りの16%を住友金属鉱山、4%を住友商事が所有している。いずれも2014年にFreeport-McMoRan Incから買収した。

Lundin Mining はすぐに関係官庁に連絡、被害は見つかっていないとし、Minera Ojos del Salado の一部である Alcaparrosa 銅山は連続して監視されているが、表面の穴に関連した動きは見つかっていないとしている。

同社は、「鉱業規制当局が報告した過剰採掘の仮説は、陥没穴の直接原因とは断定されていないことを強調したい。水理地質や鉱山の調査によって答えが明らかになるだろう」とした上で、7月の記録的な異常降雨が引き起こした可能性も調査されていると指摘した。

チリのエルナンド鉱業相は8日、「責任を負うべき者たちには罰金だけでなく、厳しい制裁措置を適用する」と発表した。制裁措置も取る判断が鉱山企業に対する今後の「モデル」になるに違いないと指摘した。

鉱山規制当局の7月の現地調査では「過剰採掘」は検知できなかったとし、調査方法を変える必要を指摘した。当局側は原因調査の詳細を明らかにしていない。

当局は銅山を運営するLundin Miningに対し、すべての作業中止を命令。穴の調査を継続している。

韓国の科学技術情報通信部は8月5日、 韓国初の月軌道衛星「タヌリ」(Danuri) が米フロリダ州のケープ・カナベラル宇宙軍基地でスペースXのファルコン9 ロケット により打ち上げられ、高度703キロメートルの地点でロケットから分離され、月の遷移軌道(トランスファ軌道)進入に成功したことを確認したと発表した。地上局との初交信に成功し 、太陽電池パネルを広げて電力生産を開始した。各装置が正常に作動しているこを確認した。

月の探査までの任務を成功させれば日本や米国、ロシア、中国、インド、欧州連合に続き7番目になる。

タヌリは韓国航空宇宙研究院とハンファ、韓国航空宇宙産業、韓国電子通信研究院など韓国内産·学·研59ヶ所が開発した。

ハンファが推進システムを開発し、韓国航空宇宙産業が構造体試験製作、組立試験などを支援した。搭載体開発には、デッキ航空、グリーン光学、未来技術、センサーピアなど中小企業が参加した。

タヌリは韓国語で月を意味する「タル」と、享受する・楽しむを意味する「ヌリダ」の合成語で、一般公募から選ばれた 。

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韓国は6月21日に、独自開発した国産ロケット「ヌリ」(KSLV-Ⅱ:Korea Space Launch Vehicle-2)を南部の全羅南道・高興の羅老宇宙センターから打ち上げ、人工衛星を高度700kmまで運び、宇宙空間の目標軌道に乗せることに初めて成功した。

2022/6/25 韓国、国産ロケットで実用衛星打ち上げに成功 

今回は月軌道衛星の打ち上げだが、打ち上げそのものは米国のスペースXのロケットに依存している。

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今後、太陽と地球の重力が釣り合うラグランジュL1 地点(地球から約150万キロの距離)を経て最大156万キロ離れた太陽側の遠い宇宙まで飛行した後、太陽と地球の重力を活用して地球側に方向を変える。

太陽側の宇宙に飛行後、最大9回の軌道修正起動をした後、地球の重力に引かれて戻りながら月に近づき、12月16日に月の周囲を回る軌道に入る。

その後は5回の減速機動を経て正確な目標軌道に入った後、12月31日に任務遂行を始める。

来年からの1年間で月面上100キロメートルの円軌道を一日12回まわり、月着陸候補地探索、月資源研究、宇宙インターネット技術検証などさまざまな科学任務を遂行する予定。

タヌリは韓国電子通信研究院が開発した宇宙インターネット機器を活用し、世界で初めて深宇宙探査用宇宙インターネット試験を行う予定。

従来の宇宙インターネットは低軌道で衛星を打ち上げて地球全域にインターネットサービスを供給するものだが、タヌリが試みる宇宙インターネットは「惑星間通信」で、成功すれば、先進国間で開発競争が繰り広げられている惑星間通信技術において韓国がリードすることになる。

英紙 Financial Timesは7月18日、 米国のペロシ下院議長が8月におけるアシア歴訪の一環として「台湾訪問を予定している」と報じた。

バイデン大統領は7月20日、ペロシ氏の訪台について「軍は良い考えであるとは思っていないようだ」と発言し、訪台に対する否定的な態度を示した。

中国の習近平国家主席は7月28日、米国のバイデン大統領と電話会談を行った。
席上、習主席はペロシ下院議長の訪台中止を求め、「もし中国の民意に逆らって火遊びをすれば、大やけどを負うことになるだろう(「玩火自焚」)」と述べた。

しかし、ペロシ議長は8月2日夜、マレーシアから台湾に入った。
中国の妨害を避けるため、大迂回する航路をとった。(Flightradar 24)



習主席からバイデン大統領への直接の訪台中止要請を無視された中国は猛反発した。

中国軍は8月3日、8月4日から7日までの4日間、台湾を取り囲むように6カ所の空海域を設定し、実弾射撃を伴う「重要軍事演習行動」を実施すると発表した。

8月4日、台湾沖に弾道ミサイル「東風」 11発を発射した。日本の防衛省は9発を確認、うち5発 (下図⑤~⑨)が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと発表、中国側に抗議した。
下図の
与那国島からわずか80キロの場所に落下した。

防衛省は4発(⑥~⑨)が台湾上空を通過したと推定している。

これに対し、中国外務部の報道官は、「両国は関連海域で境界を画定しておらず、演習区域に日本のEEZが含まれるという見解は存在しない」と主張した。



中国政府は8月5日、米国への対抗措置を発表した。

①中米両軍幹部の電話協議の手配取り消し
②中米国防当局の実務者会合の取り消し
③中米海上軍事安全協議メカニズム会議の取り消し
④不法移民者の送還に関する協力の一時停止
⑤刑事司法協力の一時停止
⑥国際犯罪取り締まりにおける協力の一時停止
⑦麻薬禁止における協力の一時停止
⑧気候変動問題に関する話し合いの一時停止――の8項目。

また、ペロシ下院議長とその直系親族に「制裁措置を取ることを決めた」とも発表した。具体的な制裁内容は明かしていない。

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中国の海関総署は8月1日、台湾の食品輸入に関する規制の対象を広げた。水産品をはじめ、ビスケットなどの菓子類、茶葉、蜂蜜関連商品などを扱う複数企業の商品が、新たに輸入を一時停止された。

「ビスケット、ケーキ、パン」の項目に登録されている台湾企業107社のうち、35社が「輸入一時停止」とされた。

茶葉業者3社や水産品を扱う漁船約700隻も同様の措置となった他、ドライフルーツや蜂蜜関連商品、カカオ豆、野菜などでも影響を受けている企業がある。

中国商務部は8月3日、台湾向けの天然砂(岩石を風化させた製品)の輸出を同日から停止したと発表した。建設業、ガラス工業、金属洗浄に使用されるケイ砂(シリカ)や石英砂 が対象。

中国 国務院の台湾事務弁公室は8月3日、「関連規定と食品安全要求・基準に基づき、台湾地域から大陸に運ばれるグレープフルーツ、レモン、オレンジなどかんきつ類の果物や、チルド品のタチウオ、冷凍マアジについて、本日から輸送を一時停止すると述べた。

グレープフルーツ、レモン、オレンジについては、害虫のコナカイガラムシや、フェンチオンとロイコナゾールの過剰な残留農薬が検出 されたとしている。

チルド品のタチウオ、冷凍マアジについては、包装材から新型コロナの陽性反応が出たための新型コロナ予防を理由としている。

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中国は2021年3月1日には、台湾産パインの輸入を禁止した。2020年以降に何度も害虫が検出された とし、国内の生態系を守るためとしている。

また、2021年9月20日は台湾産の果物の釈迦頭とレンブ(蓮霧) について、何度も害虫が検出された として輸入を禁止した。

本年6月13日には、海水魚ハタ について、禁止薬物の検出や抗生物質の基準超過を理由に、輸入を禁止している。

田辺三菱製薬の連結子会社のカナダのMedicagoが開発しているCOVID-19の植物由来のウイルス様粒子ワクチン(商品名 :COVIFENZ)は2月にカナダで承認を取得したが、米国工場で商用規模への量産に課題が見つかり、事業計画を見直す。

たばこ属の葉に遺伝子を組み込んで抗原を作るが、段階的に生産を引き上げる「スケールアップ」に課題が見つかり、計画通りに量産できない状況という。

最大7600万回分の契約を結ぶカナダ政府への供給ができない状態で、9月までに承認申請する計画だった日本の実用化も遅れる。

原因究明と並行し、21%出資する米たばこ大手Phillips Morrisなどと協議し、事業計画を修正する。

Medicagoのこれまでの計画では、2024年までにカナダと米国で合計年10億回分の生産能力を確保する。カナダ政府と最大7600万回分を供給する契約を結んでおり、2021年末までの実用化をめざすとしてていた。

日本でも需要を見極めたうえで国内生産を検討する。

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Medicagoは植物由来のウイルス様粒子(VLP:Virus Like Particle)技術を用いた新規ワクチンの研究開発に特化したバイオ医薬品会社で、遺伝子操作によって植物の細胞内にVLPを生成させ、効率的に抽出・精製する独自技術を有している。

田辺三菱製薬は2013年7月12日、Philip Morrisと共同で、カナダのMedicago Inc.の全株式を取得することで同社取締役会と合意したと発表した。
両社は買収後のMedicagoを、田辺三菱60%、Philip Morris 40%のJVとして運営する。

2013/7/19 田辺三菱製薬、カナダ医薬品会社Medicagoを子会社化

報道では現在の出資比率は田辺三菱が79%、Philip Morrisが21%となっている。

Medicagoは下記の技術を持つ。

 Proficia™  植物の葉でのワクチン製造 
         
2016/2/26 田辺三菱製薬、タバコの葉からインフルエンザワクチン
 
 VLP    遺伝子情報を持たないウイルス様粒子(
体内でウイルスの増殖がなく安全性に優れる)


 VLPExpress™  新ワクチンを早く見つける手法


田辺三菱製薬は2021年9月30日、連結子会社のカナダのMedicagoが開発しているCOVID-19の植物由来のウイルス様粒子ワクチン(開発番号:MT-2766)について、10月2日より日本において第1/2相臨床試験を開始すると発表した。2022年3月までに日本での承認申請をめざすとした。

国内の承認申請時までに米国、英国、カナダ、ドイツ、フランスのいずれかで承認又は緊急使用許可(EUA)が取れていると「特例承認」が得られる。

田辺三菱製薬は2022年2月24日、カナダで承認を取得した。商品名:COVIFENZ)

なお、MedicagoはWHOに承認申請したが、WHOの関係者は2022年3月16日、Medicagoが開発した植物由来の新型コロナウイルスワクチンは、同社がタバコメーカーのPhilip Morrisからの出資(Philip Morris 21%)を受けていることを理由に、WHOの緊急使用承認を「受けられない可能性が非常に高い」と発表した。

タバコや武器会社との提携に関するWHOの「非常に厳しい」ポリシーに抵触する恐れがあるため、緊急使用承認が一時停止されているという。

Medicago はWHOへの申請を取り下げたと報じられている。

三菱ケミカルホールディングスは5月13日、Medicago が開発する植物由来の新型コロナウイルスワクチンに関して、今年度中の国内への承認申請のスケジュールに変更はないとの見通しを示した。

世界保健機関(WHO)への緊急使用許可手続きが受け入れられていないが、三菱ケミカルは「日本への承認申請への影響はない。この件についてカナダ政府と協議を続けているが、詳しいことは申し上げられない」としている。

2021/10/3 田辺三菱製薬、カナダ子会社のCOVID-19ワクチン候補の日本における臨床試験開始

大阪ガスは8月1日、2023年3月期の第1四半期決算を発表した。(単位:億円)

売上高 営業利益 経常利益 株主帰属
損益
2022/3実績 15,869 949 1,105 1,283
2021/4-6 3,135 367 410 307
2022/4-6 4,671 74 134 112
2023/3当初予想 18,530 1,065 1,150 820
   今回予想 21,710 430 460 315

米国テキサス州のLNG製造施設のFreeport LNGで6月8日、火災事故が発生した。

大阪ガス液化加工契約に基づ年間約232万トンのLNG(同社グループLNG扱量の約19)調達を計画していたが今回の操業停止を受、LNGの代替調達のLNG調達に付随する契約の変更等を進めている。

加え当プロジェクトにおいて設備等の復旧に係る費用を含む損失が発生同社の出資比率に応じた損失を計上する可能性がある。

これらに関連する収益の費用及び損失原油価格為替レート等を一定の前提を置いて見直2023年3月期の連結業績予想を修正した。

2023年3月期予想で、経常損益は690億円の悪化となっている。Freeport火災関連損失は795億円

JERAも大阪ガスと同量を引き取っており、同様の影響を受けると見られる。 第1四半期には全社としてLNGスポット調達影響として320億円の悪化を折り込んでいるが、このうちFreeport LNGの影響がいくらかは不明。また、2022年度の業績見通しは未定としている。

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米国テキサス州のLNG製造施設のFreeport LNGで6月8日、火災事故が発生した。

火災事故による人的被害はなく、LNGによる発火は、常に液化施設のフェンスライン内に収まり、約10秒間継続した。その後、配管の断熱材やケーブルなど、事故が発生した場所とその周辺の資材の燃焼が発生したものの、約40分後に鎮火した。

6月14日の発表では、規制当局の許可が得られ次第、約90日後に部分的な操業再開を目標としており、プラントが完全稼働に戻るのは2022年後半になる。

米国のLNG輸出の20%を担うFLNGでの稼働の遅れは、欧州を中心とするLNGの需給動向に大きな影響を与えそうだ。

Freeport LNGの第1系列は440万トンで、大阪ガスとJERAがそれぞれ220万トンを引き取っている。(現状は各232万トン)

大阪ガスは2008年に出資、JERAは2021年11月に出資を発表している。

2021/11/18 JERA、Freeport LNG に出資

三井物産と三菱商事は、2022年6月末で、権益を持つサハリン2の資産価値を合計2,177億円減額したと発表した。2022年3月末でも合計938億円の減額をしており、累計で両社で3,115億円の減額となる。

両社とも、2021年12月末時点での評価に対し、2022年6月末時点での評価は1/3となっている。  

出資比率 2021/12価値 2022/3

2022/6

合計評価損
評価額 評価損 評価額 評価損
三井物産 12.5%出資 2,709億円 2,268億円 -441億円 902億円 -1,366億円 -1,807億円
三菱商事 10.0%出資 1,930億円 1,433億円 -497億円 622億円 -811億円 -1,308億円
合計 4,639億円 3,701億円 -938億円 1,524億円 -2,177億円 -3,115億円

  
なお、両社ともIFRS
の「その他の包括利益 」のうちFVTOCI(その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産での減額で、当期損益には反映されない。

三井物産は、「大統領令が出たことで将来得られる見込みの配当について不確実性が高まった。資産評価を保守的に見積もった」としている。

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日本はサハリン2から年間約600万トンのLNGを輸入している。日本のLNG輸入量の約10%を占める。

サハリン2プロジェクト

事業主体 Shell 55%→27.5%-1株
・Gazprom 0%→
50%+1株
・三井物産 25%
12.5%
・三菱商事 20%
10%
投 資 額 200億ドル
開発鉱区 ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
①原油 10億バレル
②天然ガス 4,080億立方メートル

<石油>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬後、新設港湾よりタンカーで日本等へ輸出
<ガス>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬、液化後、LNGをタンカーで輸出
 



2007/1/9 
サハリン2計画 再スタートとその背景

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Shellは2022年2月28日、主要な液化天然ガスプラントを含むロシアの全事業から撤退すると発表した。

サハリン沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」からも手を引き、「ノルドストリーム2」への関与も終了する。

ロシアからの撤退により減損が発生する見込みで、ロシアの事業に関連する非流動性の保有資産は2021年末で約30億ドルという。

Shellは3月8日、ロシア事業を全面的に終了すると発表した。

2022/3/1 Shell、サハリン2から撤退 

岸田首相は3月31日の衆院本会議で、「サハリン2」から撤退しないと明言した。日本のエネルギー安全保障上、「きわめて重要なプロジェクト」だと語った。

プーチン大統領は6月30日、「サハリン2」の運営会社「サハリンエナジー社」の外国企業が保有する資産を、今後新設するロシア企業に無償で引き渡すように命ずる大統領令に署名した。

サハリンエナジー社の株式は、現在、ロシアの国営天然ガス企業ガスプロムが50%、英石油大手シェルが27.5%、日本の三井物産が12.5%、三菱商事が10%を保有している。

ガスプロムの出資は今後も維持されるが、その他の外国株主は、新会社の株式取得に同意するか否かを1か月以内に決定することが求められる。同意しない場合には資産を失い、保有する株式はロシア企業に売却される。同意する場合には、ロシア政府に申請を行って、認められれば出資を維持できるとしている。 現時点でどんな条件なのかわかっていない。)

大統領令では、今回の決定は、ウクライナ侵攻に伴い対ロ制裁を発動した日本などを念頭にした「米国や追随する国の非友好的行動」に対応した措置、と説明されている。

日米の外務、経済閣僚が経済分野の議論を行う経済版「2プラス2」の初会合が7月29日、ワシントンで開かれ、萩生田経済産業大臣は、日本の大手商社が権益を持つロシア極東の天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」について、権益の維持を目指す方針をアメリカ側に伝えたことを明らかにした。

萩生田大臣は、日本の大手商社が権益を持つ「サハリン2」について議論があったことを明らかにし、「撤退を求める声もあるが、撤退すれば第三国に権利を譲ることになって、ロシアはばく大な利益を得ることになる」と述べ、そのうえで、「アメリカ側に現状維持したいと説明し、理解してもらったと思っている」と述べた。

ロシア政府は8月2日付政令で、運営会社を設立することを決定した。事業を引き継ぐ新会社の本社はサハリン州のユジノサハリンスクに設置する。現在の運営主体であるサハリンエナジーの代表が、新会社の経営を引き継ぐ。

ガスプロムが約50%の出資を従来の運営会社と同様に維持する。残りの出資は当面の間、新会社が保有する。

既存株主は設立から1カ月以内に、従来の出資比率に応じた株式取得に同意するかどうかを通知する必要がある。出資に合意した場合は、ロシア政府が株式を外国企業に譲渡するかどうかを判断する。拒否した場合はロシア企業に売却される。

今後はロシア側からどのような条件が示されるかが焦点となる。




ロシアが欧州への天然ガス供給を止めるとの懸念が高まる中、ドイツ政府は今年末までに稼働停止を決めていた国内の原発3基を来年以降も稼働させるかの検討に入った。

一貫して稼働延長に反対してきた連立与党の「緑の党」からも、延長容認とも取れる声が出始めているとされる。

付記

ドイツ政府は9月5日、国内にある3基のうち2基の原子力発電所を2023年4月まで稼働できるようにすると発表した。

南部にある「イザール2」と「ネッカーベストハイム2」の原発2基を非常用の予備電源として利用できるようにする。
西部にある「エムスラント」は予定通り22年末に稼働を終える予定。

脱原発の方針そのものは堅持し、新たな燃料は投入せず、2023年4月中旬に原発ゼロを完了させる方針。

付記

ショルツ首相は10月17日、国内で現在稼働している原子力発電所3基すべてが2023年4月15日まで稼働できる準備をするよう、関係閣僚に命じた。これまで2基だけが4月まで稼働できるようにし、1基は年内に止める方針だった。

ロシア国営 Gazprom は6月14日、天然ガスパイプラインNordstream 1 の供給量を40%減らすと発表、翌15日、さらに33%削減すると発表した。(合計60%カット)

従来の日量最大1億6700万立方メートルであったが、16日午前1時半をもって供給量は最大6700万立方メートルになる

Gazpromは7月25日、Nordstreamについて、新たに送ガス用タービン1台の修理を始めると発表。27日から供給量を6月中旬までの約2割に減らす。

ドイツはロシアの天然ガスに大きく依存している。侵攻前、ドイツはガスの55%をロシアからの輸入に頼っていた。

来冬の需要に備え、天然ガスの貯蔵が必要だが、現時点ではドイツのガス貯蔵量は最大能力の5~6割程度にとどまっている。

ドイツのハベック経済・気候相は6月19日、ロシアからの天然ガス供給が大幅に減る事態に備え、発電に利用するガスの消費量を減らし、石炭火力発電の稼働を拡大させる法整備を進めると発表した。

2022/6/21 ドイツ、ロシア天然ガス減で、石炭火力を拡大

欧州連合(EU)は7月26日、ブリュッセルでエネルギー相理事会を開き、ロシアが欧州へのガス供給を一段と減らし、欧州のガス在庫が枯渇する懸念が強まっているのを受け、8月から2023年3月までの天然ガスの消費を過去5年の平均に比べて15%減らすことで合意した。

2022/7/29 EU、ガス消費15%削減で合意

この状況下で、公約であった本年末の原発完全停止を改め、来年以降も残る3基を稼働させる検討に入ったもの。

ーーー

ドイツでは、電力会社4社が17基の原発を運営していた。

2002年に当時のSchröder政権(ドイツ社会民主党と緑の党の連立政権)が原子力法を改正し、原発の運転年数を32年と定めて順次停止し、2022年までに原発を廃止すること、原発の新規建設は認めないことを決定した。

しかし、2009年にMerkel 政権(キリスト教民主・社会同盟と自由民主党の連立政権)が成立し、方向転換した。

ところが、2011年3月11日の福島第一原発事故で、この決定が覆ることになった。
メルケル政権は、福島原発事故後のドイツ国内の反原発運動の圧力に抗いきれずに、すべての原発を2020年までに廃止するという以前の決定を受け入れることになった。

2011年6月末のドイツ連邦議会で、この決定が513対79で可決された。
この決定で、8基の旧型の原発が2011年に廃止され、9基の原発は2022年までにすべて廃止されることが確定した。

9基のうち、6基については2021年までに停止した。残る3基(Emsland、Neckarwestheim 2、Isar-2)が2022年12月31日に稼働を停止し、脱原発が完了する予定であった。

原子力発電所 業者

停止時期

2011年 2015年 2017年 2019年 2021年 2022年
Kruemmel Vattenfall
Brokdorf E.On
Brunsbuettel Vattenfall
Unterweser E.On
Emsland RWE / E.On
Grohnde E.On
Grafenrheinfeld E.On
Biblis RWE 2基
Philippsburg EnBW
Neckarwestheim EnBW
Gundremmingen RWE/E.On
Isar E.On
合計  17基 8基 1基 1基 1基 3基 3基
停止済み




INEOSは7月28日、中国SINOPECとの間で総額70億ドルに達する3つの石化事業での提携契約に調印したと発表した。

1) Shanghai SECCO Petrochemical Company(上海赛科石油化工)に50%出資

Shanghai SECCO Petrochemical は、BP 50%、SINOPEC 30%、上海石化 20% のJVとして上海市漕涇地区の上海ケミカルパークに設立され、2005年3月に商業生産を開始した。

原料はナフサで製品は以下の通りであった。

その後、能力は下記のようになった。
 エチレン 109万トン、BTX 65万トン、SM 65万トン、PS 30万トン、PE 60万トン、PP 25万トン、ANM 52万トン。

https://www.knak.jp/ichiran/china/secco.htm


BPは2017年4月27日、
上海SECCOの持分(50%) を、上海SECCOのパートナーのSinopecの子会社
上海高橋石化 に16.8億ドルで売却することで合意したと発表した。

2017/5/1 BP、上海SECCO石油化工の持分をSinopecに売却 

今回、INEOSが旧BP持分を引取り、JV当事者として参加する。


なお、BPは上記の上海SECCO持分の売却の3年後の2020年6月29日に、
世界中の石油化学事業をINEOSに売却することで合意したと発表した。売却価額は総額50億ドル。

2021年1月1日、取引を完了した。

中国関連では下記事業を含んでいる。SINOPECとのJV(BP YPC Acetyls)を含む。

Zhuhai, China BP Zhuhai Chemical PX 90万トン BP 91.9%
(当初、BP85% / Zhuhai Port 15%)
MX 10万トン
酢酸 60万トン
Chongqing, China Yangtze River Acetyls 酢酸 BP枠 20万トン BP 51%/Sinopec Sichuan Vinylon Works 44%/Chongqing Energy Investment Group 5%
エステル BP枠 10万トン
Nanjing, China BP YPC Acetyls 酢酸 BP枠 30万トン BP 50%/Sinopec 50%
2020/7/2 BP、石油化学事業をINEOSに売却    

2) ABS JV

両社はINEOSのABS技術に基づき、ABSの50/50JVを設立する。

現在、INEOSが寧波に建設中の60万トン設備を含めるとともに、別途60万トンの設備を建設する。

INEOS Styrolutionは2020年1月、寧波にWorld class のABSプラントを建設すると発表した。能力は60万トンで、2020年に建設を開始、2023年完成を目指す。

なお、INEOSは2014年に、ABS原料のアクリロニトリル技術供与契約違反でシノペックに法的アクションをとったことがある。

2014/3/31 INEOS、アクリロニトリル技術供与契約違反でシノペックに法的アクション 

3) HDPE JV

両社はHDPEの50/50JVを設立する。

天津に新しく50万トンのHDPE設備を建設する。

さらに将来、HDPEのパイプグレード生産のため、INEOSの技術供与で、50万トンのHDPE設備を少なくとも2基 建設する。総能力は150万トンとする。


これにより、INEOSはSINOPECとの関係を強化し、中国における存在感を高める。

2022年7月28日、新疆ウイグル自治区の烏魯木斉(ウルムチ)国際陸港エリアで、布地や綿糸などの貨物204トンを満載したコンテナ専用列車、中国・キルギス・ウズベキスタン Road and Rail 国際貨物便の列車が出発した。

同便は南疆鉄道経由で新疆ウイグル自治区のカシュガル駅に到着すると、鉄道輸送から道路輸送に切り替わり、キルギスとの国境の伊爾克什坦(イルケシタム)通関地から出国し、最終的にウズベキスタンのタシケントに到着する。

 1) 烏魯木斉→Kashghar   南疆鉄道


ソース: http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col86892..html

 
2) Kashghar→Tashkent   道路輸送

(ウズベキスタンのAndizhanとTashkent間は鉄道が通じている。これを利用するのかどうかは不明)

同便は全行程にわたりコンテナが鉄道と道路を移動する国際複合一貫輸送方式を採用している。

国際定期貨物列車「中欧班列」の複合一貫輸送という新ルートをめぐる新たなブレークスルーを実現したもので、1回の貨物の依託、1回の料金支払い、1枚の書類、1件の保険で、道路区間と鉄道区間の輸送引受人がそれぞれに貨物を運んで、輸送の全行程を完了させる。

鉄道輸送と道路輸送の優位性を結びつける上で効果的であり、輸送の時間的効率を大幅に向上させ、中国と中央アジア諸国との商業貿易往来により便利でスピーディなルートを提供することになった。

ーーー

KashgharとAndizhanを鉄道で結び、既存のAndizhanーTashkent間の鉄道と接続する計画は25年以上前からあった。 ロシア案と中国案があり、それぞれに問題があって、永く棚上げになっていた。

Tashkentから西は、トルクメニスタンとの国境近くのBukharaでトルクメニスタンの鉄道と接続し、カスピ海岸のトルクメンバシに至っている。

この鉄道路線計画がようやく動き始めたきっかけは、5月16日にモスクワで開催された集団安全保障条約機構首脳会合で、キルギスのザパロフ大統領がプーチン大統領を説得したからだという。 プーチン大統領は中国案を承認したとされる。

これを受け、中国の王毅外相は6月8日、カザフスタンの首都ヌルスルタンで開催された「中国+中央アジア5カ国」外相の第3回会合に出席し、中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道着工を約束した。

同路線が設置されれば、「欧州までの路線距離はロシア経由に比べ900キロ短縮され、輸送時間は7~8日間短くなる」という。

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