2008年12月アーカイブ

原油のバブルがはじけた。

ニューヨーク原油先物市場でWTI原油は本年の取引初日(1月2日)に一時 100.00ドル/バレルをつけた。

その後、7月11日には一時147.27ドルの過去最高を記録した。

しかし、その後は急落、11月19日には一時 32.40ドル、12月26日終値は37.71ドルとなった。
たったの半年で115ドルの値下がりである。
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付記
12月31日は上昇し、終値は44.60ドルとなった。
年間の平均価格は99.63ドル。

2006年7月から年末にかけて、原油価格は値下がりした。

2006/9/25付けの ナフサ価格 急落 で以下のように述べた。

昨年(2005年)まで上昇を続けてきた米国の住宅建設は、金利上昇を背景に1月から減少に転じ、8月の着工件数が2003年4月以来の低水準となったように、米経済の減速が明らかになった。

原油に投じられていた投資マネーが天然ガス価格の急落でヘッジファンドが破綻したことや米国景気の減速を材料に、リスクの高い原油先物から安全な米国債に逃避する動きが加速し始めた。

米ヘッジファンドのアマランス・アドバイザーズ(Amaranth Advisors)が50億ドルの損失を計上して事実上解体を余儀なくされ、マザーロック(MotherRock) も解散に追い込まれた。
天然ガスは原油などに比べ流動性に乏しいが、両社は借入金を増やして購入額を膨らませていた。
NYMEXの天然ガス先物は昨年12月に百万BTU(英熱量単位)当たり
15ドルと最高値を付けたが、最近になって下げ足を加速、先週は一時4ドル台に下がった。この結果、先物投資で大量の買い持ちのある両社は相場急落の局面で大きな損失を出した。

この報道を受け、原油を含む商品先物全般で売り優勢になった。

これまでの原油高を支えていた投機マネーが原油から逃げ出せば、原油価格やナフサ価格は更に下がる可能性がある。

しかし、この予想は外れ、2007年に入り原油価格は上昇に転じた。
2007年夏にはサブプライムローンの
問題を引き金にした世界的な信用収縮不安で、幅広い層の投資家がリスク資産から資金を引き揚げる動きが続いた。
その資金は原油や希少金属、穀物など現物に回り、原油価格も急上昇した。

本年の夏に、米国政府が先物市場の監視を強めたため、今度は原油など現物取引からのファンド資金の流出が始まった。
7月31日に米ベアー・スターンズ傘下のファンドが破綻してサブプライムローンの
影響が甚大であることが明らかになり、その後は金融危機が広がった結果、原油市場から資金が流出して原油価格は急落した。

サブプライム問題の影響は金融から実物経済に広がり、世界経済に大きな影響を与えている。

原油価格は需要と供給の関係(中国需要の増大はあった)だけではなく、ヘッジファンドや年金資金が大量に入り込んで暴騰し、それらが一斉に引き上げて暴落した。まったくのバブルであった。

東京市場の動きは下記の通り。

 

ーーー

本年のブログは今日で終わります。

ーーー

2006年2月15日にスタートしたが、この12月29日で、949回となった。まもなく1000回目を迎える。

昨年末には「平日は1,000人近くの人が訪問している」としたが、最近は2,000人近くとなった。

コメント、ご意見、記事の希望など、お送りください。
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25日に、ダウのAsset Light 戦略(JV化による資本・資産負担の軽減戦略)の最終章となるK-Dow Petrochemicals に対し、反対運動が強まっていることについて報告した。
  
2008/12/25 K-Dow Petrochemicals の危機

ダウは28日、クウェートの最高石油評議会が、来年1月1日に発足が予定されていたダウとPICの50/50の合弁会社 K-Dow Petrochemicals 設立承認を取り消したとの連絡を受けたと発表した。
非常に残念で、対応を検討中でが、同社の中東戦略は不変であるとしている。

契約では契約キャンセルの場合、PICは25億ドルの違約金を支払う義務がある。

最高石油評議会はクウェートの第1副首相兼外務大臣を議長とし、石油大臣をはじめとする関係閣僚、中央銀行総裁および民間の代表者達から構成されており、石油政策に関する最高責任を有している。

ダウにとってはAsset Light 戦略の再検討が必要になるほか、この収入を来年早々に実現するRohm & Haas 買収に伴う借入金返済に予定していたため、影響は大きい。

Rohm & Haas 買収資金は188億ドル。(全株式買収 153億ドル+R&H 借入金肩代わり 35億ドル)

ダウはつなぎ融資 130億ドル、著名な株式投資家 Warren Buffett Berkshire Hathaway Inc. からの投資 30億ドル、Kuwait Investment authorirty からの投資10億ドルでこれを賄うことにしており、PICへの売却資金でつなぎ融資の一部を返済する予定であった。

一部には、ダウが別途この資金を調達することは難しく、R&H 買収を諦める可能性もあるとしている。
この場合、違約金 750百万ドルの支払いが必要。
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付記

Rohm and Haas は12月28日、K-Dow Petrochemicals の設立はダウと同社の統合の前提条件ではないとし、2009年初めの取引完了を目指し、作業を進めていくとの声明を発表した。


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日本では水銀法電解は1986年までに隔膜法やイオン交換膜法に転換された(1999年にはすべてイオン交換膜法に)が、欧州ではいまだに多数の水銀法プラントが稼動している。

2007年にイオン交換膜法の能力は初めて水銀法能力を上回った。

  イオン交換膜法 45.6%
  水銀法 37.7%
  隔膜法 13.6%
  その他  3.1%

欧州の塩素の業界団体Euro Chlor は20032月の総会で、2020年までに水銀法の能力を全廃する目標を決めた。

2008/10/8 Solvay、フランスの水銀法電解をイオン交換膜法に転換 

ーーー

欧州委員会は水銀のグローバルな供給を減らし、それにより水銀の環境への排出を制限する方針を採ったが、2008年9月に、EU全体からの水銀の輸出を2011年7月1日に禁止するとともに、輸出禁止後は、クロルアルカリで使用されなくなったり他の産業で出てくる水銀が放出されないよう、安全に貯蔵することを求めた。

これを受け、欧州の塩素の業界団体 Euro Chlor は法が求めている以上の対策を自主的に採ることを決めた。

使わなくなった水銀は停止した電解工場から取り出し、認定を受けたスチールの容器に密封して最終処理地に輸送し、地下深くの岩塩坑に貯蔵する。岩塩坑では湿度がなく、腐食の可能性はない。

欧州委員会は12月22日、Euro Chlor のこの自主対策を歓迎するコメントを発表した。
委員会では、最終処理地の技術面での基準と、そこで採用する安全基準を決める。

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参考

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欧州や米国には多くの岩塩鉱があり、ソーダ業界はこれを溶解して原料としている。
Shintech もルイジアナ州で電解からの一貫製造を始めたが、原料の塩については工場近辺でボーリング調査を行い、地下の塩を取り出す権利を取得している。
(日本は海外から工業塩を輸入しており、コスト差は大きい)

米国では塩を溶解して吸い上げた後の巨大な穴を石油の貯蔵のために使用している。


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世界の主要な天然ガス生産国が参加するGas Exporting Countries Forum (GECF) が12月23日、モスクワで第7回閣僚級会議を開き、原油価格が急落する中で、天然ガス生産国による公式な国際機関を発足させることで合意した。
憲章が合意され、カタールの首都ドーハに本拠を置くことが決まった。

ロシアが主導するもので、OPECにならったガス版カルテルの創設もちらつかせている。

GFCFはメンバー諸国の協力強化のために設立され、2001年にイランで第1回会合を開いた。
正式メンバーは14カ国で、他に赤道ギニアとノルウェーがオブザーバーで入っているが、今回赤道ギニアがメンバーに認められた。
なお、今回の会議からカザフスタンがオブザーバーとして認められた。

メンバー諸国の天然ガス埋蔵量及びシェアは以下のとおり。(2007年末、単位:trillion cubic feet

    埋蔵量     %
(Members)      
  Russia 1,576.75   25.17
  Iran 981.75   15.67
  Qatar 904.06   14.43
  UAE 215.07   3.43
  Nigeria 186.99   2.99
  Algeria 159.45   2.55
  Indonesia 105.94   1.69
  Malaysia 87.40   1.40
  Venezuela 81.87   1.31
  Egypt 72.85   1.16
  Libya 52.80   0.84
  Bolivia 26.13   0.42
  Tri nidad & Tobago 16.95   0.27
  Brunei 12.11   0.19
  Equatorial Guinea N.A.   0.00
  小計 4,480.12   71.53
(Observers)      
  Norway 104.57     1.67
  Kazakhstan 67.20   .07
  合計 4,651.89    74.27
         
World Total 6,263.34   100.00
         
(参考)      
  Saudi Arabia 253.03   4.04

ソース:BP statistical review of world energy 2008 

メンバー諸国の発言は慎重で、
会合の目的は憲章の承認であり、OPECのような価格カルテルをつくることではない
ガス生産量のレベルを話し合うのではなく、もっと広い観点の議論をしている
主な目的はガス市場をモニターしたり、共同研究を行うことだ
OPECは「今日」を見ているが、我々は将来を見ている。ガスは長期契約で、価格も石油と結びついており、今後10年間は数量や価格をコントロールできない
などとしている。

しかし、ロシアのPutin 首相は会議の席で、「ガス田開発の費用は急増しており、安いエネルギー、安いガスの時代は終わった」と述べた。

Putin 首相のこの発言は、ロシアのGazprom とウクライナとの間の天然ガス代金支払いに関する争いの最中になされた。

Gazprom はウクライナの国営ガス会社Naftogazがガス料金を滞納しており(累積債務は24億ドル)、支払いがない場合、来年1月1日からガス供給を停止する考えを明らかにしている。

Gazprom はEUのガスの1/4を供給しており、ほとんどがウクライナを経由している。
EU向けの供給に支障が出るのではとの懸念も出ている。

専門家の間では、原油と異なり、天然ガスは膨大なコストがかかるパイプラインが必要であり、長期契約が通常であるため、カルテルはうまく機能しないだろうと見ている。しかし、中期的には価格上昇につながる可能性はある。


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ダウとクウェートの Petrochemicals Industries Co. PIC)は12月1日、50/50の合弁会社 K-Dow Petrochemicals の設立契約と付随契約に調印したと発表した。2009年1月1日に営業を開始する。   

2008/12/3  ダウとクウェートのPIC、石油化学合弁契約締結

これに対して、クウェートの国会の会派 Popular Action Bloc の議員が問題視し、反対運動を展開しており、政権の維持も疑問視されるようになった。

設立契約ではPICは持分取得で75億ドルを支払うこととなっているが、反対派は、グローバルな経営危機により、ダウの市場価値は昨年の510億ドルから170億ドルに下落しており、対象となる K-Dow Petrochemicals の事業の価値も低下しているとし、この取引は国の資金の浪費であると主張する。

K-Dow Petrochemicals や新製油所計画のような大規模プロジェクトについては、十分なFSを実施しprofessionalism)、すべての情報を公開(transparency)すべきだとする。

「首相を問い詰め、責任を取らす」としており、正式発足の来年1月1日までに契約を取り消すことを要求している。

契約では、契約取り消しの場合は25億ドルのペナルティが求められる。
   

ーーー

クウェートでは国営石油会社(KNPC)が、クウェート市の南85kmの Al-Zour 地区に日産615千バレルの製油所を建設することを決めたが、同じ反対派がこれにも反対しており、会計検査院がfeasible ではないと述べたことから、キャンセルされる可能性が強い。       

2008/5/22 中東で2つの大型製油所計画

   

K-Dow Petrochemicals に関しては石油相がクウェートの石油化学産業にとって戦略的重要性を持つものと反論した。十分な検討の後に適正な手続きで決定しており、契約を実行すると述べた。

しかし多くの議員がPopular Bloc の意見に賛同し、今やJVを進めるか、取りやめるかの選択となった。
クウェート政府は23日、この問題で臨時閣議を開いたが、最終結論は出ていない。

    付記 ダウとクウェートの石油化学合弁、一転破談 

ーーー

ダウのCEO Andrew Liveris 24日、声明を発表した。
http://news.dow.com/dow_news/corporate/2008/20081224a.htm

2005年にダウのトップとなって以来、最も誇りに思うのはクウェートのパートナーとの間の友好的関係だ。
1990年代以降、4つのJVを設立したが、すべて成功した。

最近、5つ目のJVK-Dow Petrochemicalsが長期的にクウェートにとり利益があるかどうかに関し、議論をよんでいる。
これに関して以下のとおり、回答したい。

1)交渉は完全に、公正に行われた。
2)取引は十分に価値のあるもの。
   
SABICGE Plastics 買収よりも約30%安い。
   
PICの支払いは60億ドル(75億ドル マイナス 第1四半期の配当15億ドル)で、当初(1年前)の発表より35億ドル安い。
   現在の金融危機ではどの会社の市場価値は減っているが、市場価値と資産価値は異なり、
K-Dowの資産価値は大きい。
3)
K-Dow Kuwait にとって価値あり。
4)ダウと
Kuwait の友好関係
5)
K-Dowの製品は日常生活に役立つもの


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2008年1月2日、本年のニューヨーク原油先物市場の取引初日にWTI原油は史上初めて100.00ドル/バレルを記録した。
その後、ヘッジファンドなどの資金が投入され、原油価格は急上昇、7月11日には一時147.27ドルをつけた。

しかし、米国政府が先物市場の監視を強めたためファンド資金の流出が始まり、7月31日に米ベアー・スターンズ傘下のファンドが破綻してサブプライムローンの問題点が明らかになり、その後は金融危機が広がった結果、原油市場から資金が流出して原油価格は急落した。

1219日のニューヨーク原油先物市場でWTI原油は急落し、一時、2004年2月以来、ほぼ4年10カ月ぶりの安値水準となる32.40ドル/バレルまで下がった。終値は前日比2.35ドル安の33.87ドルとなった。
OPEC12月17日の臨時総会で、来年1月1日からの日量220万バレル減産で合意したが、価格下落を止められなかった。
<p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p>年初からの平均価格は100.8ドル/バレルとなった。

米国の住宅着工件数は2006年1月に過去最高の年換算2,273千戸を記録した後、下降に転じ、2008年3月には1,000千戸を割り、11月は625千戸となった。まだ下げ止まる気配はない。

住宅価格も2006年から下落が続いており、まだ底を打っていない。

「NINJA ローン」と称され、所得も収入も資産もない(No Income, No Job, No Assets)人に住宅の値上がりを前提に融資を行い(融資に際し、資産状況などを誤魔化すよう指導したといわれる)、そのローンを証券化して世界中にバラ撒き、格付け会社はそれに高い格付けを与えた。それを信用して、世界中の金融機関がこれを購入した。
住宅価格が値下がりすることを全く考えない典型的なバブル現象である。

その破綻の結果、金融危機だけでなく、実態経済にも大きな影響を与えている。

その影響はこれまでは米国の住宅産業に止まっていたが、欧州や中国の住宅産業にも広がり、更に自動車産業、周辺産業、家電、IT関連、原料業界と、全世界、全産業に広がりつつある。

 

世界各国が金融危機の影響を大きく受けるなかで、比較的影響の少ない日本の円が消去法で急激に上昇した。

この結果、輸出産業は軒並み痛手を蒙った。

自動車産業は米国での自動車販売不振と円高が重なり、トヨタは2009年3月期は、前期の最高益から一転、戦後初の営業赤字になるとの予想を発表した。電機業界など他の産業もすべて影響を受けている。

ーーー

海外では大型買収が影をひそめた。

多額の借入金で買収を行なってきたIneosは銀行に金利支払い停止を要請した。

バブルの真っ最中に決めたHexionによるHuntsman買収は、Hexionが一旦取り止めを主張、裁判で不利が分かり、買収を進めようとしたが、銀行が融資を取り止め、結局契約は破棄された。融資を断った銀行との間では裁判になっている。

BHP Billiton もRio Tinto 買収を諦めた。

BASF、Dow、DuPont など各社が減産を決め、人員整理も行なっている。米国では多くのエチレンプラントが停止した。

 

Dowは市況の変動を受けやすい石化事業について Asset Light(JV化による負担削減)戦略を進めてきたが、PICとのJVのK-Dow Petrochemicals 2009年1月にスタートさせ、この戦略を完結させる。<p>HTML clipboard</p>(運営開始間際にKuwait 側で反対運動が起こっている)
逆にスペシャルティが中心のRohm and Haas を買収している。

ーーー

北京五輪のあと、中国も急速に力を失った。

世界中の石油化学会社は中国の膨大な需要に期待して設備を増強した。
根拠の一つには13億人という膨大な潜在需要の存在である。

しかし本ブログで以前に指摘したように(2006/2/21  中国バブル説)、実際には三大成長エリアの約3億人を現在のマーケットと考えるべきで、これと残りの10億人の所得格差は著しく大きい。
現在の中国の供給能力は既に当面の需要量に達している。

しかも実際には中国の需要のかなりの部分は米国向けを中心とする輸出用である。
米国向けの輸出がなくなると、国内需要増でそれを補うことは出来ず、一気に失速した。

当初の期待通り、もし13億人の需要が顕在化すれば、米国の需要が減退しても、それほど影響は受けなかったであろう。
そうではないため、中国向け輸出は激減、中国自体でも減産や操業停止が広がっている。

ーーー

これまで日本の石油化学は3つのバブルで高収益をあげてきた。中国需要、原油価格、ハイテク材料である。

2003年頃からの中国の需要の急増で、輸出が増え、フル稼働となった。
中国の需要の増も原因の一つである原油価格の上昇で、海外市況が上がり(中国が値上げを呑んだ)、フル稼働状況のなかで国内での価格転嫁が可能となった。
石化不振時に各社が取り組んだハイテク材料が、薄型テレビを初めとする家電その他の好況で大きな利益を生むようになった。

今年後半になり、これが一転した。

中国の需要は激減、輸出は減少し、国際価格は数ヶ月のうちに急下落した。

2008年上半期のエチレンセンター11社の石化部門の経常損益は前年同期比で激減、ほぼゼロとなった。



原料ナフサは下がったが、転嫁のズレのため、最高価格となった7-9月の高値分はおそらく転嫁が出来ず、需要減と国際価格の暴落で需要家からはコスト下落以上の値下げを要求されることとなる。

各社は中間決算時に、下期に転嫁ズレ分を転嫁し、年間では原料価格差=売価差とみて、年間決算予想はかなりよい数字を出している。しかし価格問題に加え、需要の激減で各製品で減産を始めていることもあり、赤字転落企業は増えるであろう。

株価下落による年金関係費用の追加や、持株の評価損もある。

ハイテク材料も、最終製品の価格下落と需要減は激しく、様相は一変した。

ーーー

問題はこの後である。米国の住宅産業はまだ回復の見通しはなく、自動車その他の産業でも、今後更に悪化すると思われる。回復が1年後なのか、2年後なのか、分からない。

しかし、仮に景気が回復しても、日本の石油化学が回復する保証はない。

日本の石油化学の不振は金融危機のためだけではない。
日本の石油化学独自の構造問題(と中国の需要の限界)により、当然起こるはずのもので、金融危機でこれが加速されたものである。
従って、金融危機が収まり、世界経済が回復しても、日本の石油化学は今のままでは回復しない。

昨年の「回顧と展望」では「ガラバゴス鎖国論」との副題をつけ、海外の大規模化、統合の動きに対して以前の小規模多数プラント体制を維持したままであることは、まさに進化の止まった「ガラパゴス鎖国」状況であるとし、日本の石化事業もガラパゴスのように「危機遺産」とならなけばよいがとした。

2007/12/26 2007年 回顧と展望 「ガラパゴス鎖国」論

日本のエチレンセンター

立地 エチレンセンター 能力
(千トン)
定修なし
LDPE HDPE PP VCM
鹿島 三菱化学 410
516
日本PE 日本PE 日本PP 鹿島塩ビモノマー
(信越、カネカ)
千葉 丸善石化   525 宇部丸善PE
丸善ポリマー 日本PP
(チッソ)
京葉モノマー
(旭硝子)
チッソ
京葉エチレン
(丸善/三井/住友)
  768        
三井化学 提携   612 Prime Prime Prime  
出光興産   413 Prime Prime Prime  
住友化学   415 住友化学   住友化学  
川崎 東燃化学   540 日本PE 日本PE 日本PP  
日本ユニカー 日本ユニカー
新日本石油   443 日本PE 日本PE サンアロマー  
四日市 東ソー   527 東ソー 東ソー 日本PP
(チッソ)
東ソー
三菱化学   停止        
大阪 大阪石油化学
(三井化学)
  500     Prime カネカ(高砂)
水島 三菱化学   496 日本PE 日本PE 日本PP ヴィテック
山陽石化
(旭化成)
  504 旭化成 旭化成    
徳山 出光興産   688 東ソー   徳山PP 東ソー
トクヤマ
大分 昭和電工   691 日本PE 日本PE サンアロマー  

<p><p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p>

1980年代以降、日本の石油化学がよかったのは80年代後半のバブル時代と、2003年以降の中国バブル時代だけである。
前者は国内需要増で、後者は中国需要増でフル稼働が可能となり、後者では原料ナフサの大幅アップも転嫁でき、利益を上げた。
3度目のバブルは考えられないため、現状のままの姿で、今後儲かる時代が来ることは考え難い。

中国の需要が復活しても、中国や中東で建設中の大規模設備が完成し、競争力のない日本の企業に出番はないであろう。

輸出に期待できなくなり、国内需要のみが対象となれば、過剰能力のもとで過当競争が再燃し、値下げ競争となるのは必至である。需要家も事情は分かっているため、値下げを条件に引き取り量を増やすなど、攻勢に出よう。

「需要に合わせた生産を」との声があるが、いつまでも操業度を落とした生産を続け、赤字を続けることは出来ず、各社が歩調を合わせることなど出来ない。価格を下げてでも多く売り、操業度を上げたいとする企業が出てくる。<p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p>エチレンの操業の面からも、誘導品の減産に限度がある。

当然、産構法のような合法カルテルはあれが最後であるし、価格や数量のカルテルは、レニエンシー制度のできた今はあり得ない。

このままでは、各社ともに赤字となり、それも回復の可能性のないものとなる。

ーーー

過去は、「他社も同じ」ということで、赤字を続けた時期があった。

今は Robert B. Reich が近著「Supercapitalism」で述べているように、株主を満足させない限り、企業はやっていけない。

「ガラバゴス鎖国」の日本の化学会社も、株主に関しては「フラットな世界」にあり、多くの海外株主を抱えている。

石油化学の赤字が続いた場合、石油化学の継続の意義の説明が出来なければ、海外株主は石油化学からの撤退を求めるか、それが行なわれない場合は持ち株を売却するであろう。

三菱ケミカルは7月の欧米での会社説明会で、「石油化学をなぜやっているのか」と聞かれたという。
赤字が続けば、「なぜ石油化学をやめないのか」と問われることとなる。

他方で医薬メーカーや信越化学のように高配当の企業がある中で、減配や無配になれば、国内投資家も持ち株の売却をするだろう。

大量の株式が売却されれば、企業の存続も危なくなる。

ーーー<p><p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p>

日本の石油化学業界はいよいよ、「ガラバゴス鎖国」体制の「終りの始まり」を迎える。迎えざるを得なくなった。

「需要に合わせた生産」ではなく、「国内需要に合わせた能力」とし、儲かる事業にする必要がある。

そのためには、多数のエチレンセンターを潰さない限り、問題は解決しない。
過去に行なわれた事業統合や、企業の合併は、エチレンセンターの廃棄に結びつかない限り、意味はないといえる。

例えば丸善石化の場合、旭硝子が京葉モノマーを、宇部興産がLDPEを止めようとしたが、エチレン操業に影響するとし、丸善とのJV(VCMは当初から)で操業を続けている。(たまたま中国バブルのために操業継続ができた)

9月7日の日本経済新聞記事で三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長が大胆な発言をしている。
「そういう意味で
は日本の石化コンビナートは歴史的使命をほぼ終えた。現在14カ所あるコンビナートは将来は2-3カ所あればいいのではないか。」

三菱化学の高下常務は12月9日の事業説明会後、記者団に対し、「旭化成と再編について検討している」と語った。
水島のいずれかのエチレン生産設備を停止してエチレンの相互供給を検討すると見られる。

エチレンセンターは「将来」ではなく、早急に整理する必要がある。
しかし、実際にはエチレンセンターの廃棄は非常に難しい問題を抱えている。

従来の個々のプラント閉鎖の場合は対象の従業員もそれほど多くはない。
エチレンセンターを止める場合、製造、補助部門、営業と一部の管理部門など、多数の従業員が関係する。
事業のほとんどがなくなる企業さえも出る。
非石油化学事業にこれらの全てを配転することはほとんどの企業で無理であり、人員整理が必要となる。

三菱化学と旭化成のように、配管でつながっている同一地区のセンター同士で提携するのは最も合理的だが、どちらを止めるかは、人員整理がからむ場合は非常に難しくなるであろう。

企業の合併は余剰人員の整理が前提とならなければ意味がない。

日本の化学産業が「ガラパゴス鎖国」体制を取らざるを得なかったのは、まさにこの点にある。
欧米の企業は簡単に人員整理を行なってリストラをすることが出来た。
日本の終身雇用体制が、企業が時代の変化に対応した体制を取るのを妨げてきた。

しかし、その体制を続けていけない。

過去にはアルミ精錬業界の例があった。
1978年に日本全体6社164万トンの能力があったが、第二次石油ショックで「電気の缶詰」といわれるアルミ精錬が日本でやっていけなくなり、79年に110万トン、82年に70万トン、86年に35万トンとなり、その後、日軽金の蒲原の1万トンを除き、全てが廃棄された。
http://f56.aaa.livedoor.jp/~knak/25/aluminium.htm

多数の従業員が解雇されたが、この場合は誰がみても日本での事業継続は不可能であり、人員整理は止むを得ないものであった。

しかし、今回の場合は日本の石油化学が全てやっていけなくなる訳ではないという点がアルミとと異なる点である。

輸出はなくなるが、国内の需要は残る。国内需要分に関しては、価格は国際価格に合わせる必要はあるものの、輸入品に取って代わられる可能性は少ない。

合成樹脂をとってみると、日本のメーカーは単にレジンを販売するというのではなく、需要家のニーズを満たす機能を果たしている。需要家のニーズに合ったグレードをつくり、技術サービスを行なっている。
また、カンバン方式の納入など、物流面でのサービスも強みである。
輸入品ではこれらの機能を満たすことは出来ない。

逆に、これまでは過当競争の結果、これらにかかる追加コストを上乗せすることが出来ていない。「国内需要に合わせた能力」になれば、これの求償も可能となり、「儲かる事業」とすることも不可能ではない。

撤退するのか、生き残りを賭けるのか、人員整理をどのようにやるのか、それぞれの企業にとって苦しい判断が求められるときが来た。

 


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三井化学は12月19日、来年4月1日付けで、100%子会社の共同モノマー(MMA製造)、同じく三井化学ポリウレタンを吸収合併すること、同社が53.39%出資する東セロを株式交換により完全子会社とすることを発表した。

1)共同モノマー

共同モノマーは直酸法MMAモノマーの製造会社で、1988年10月に三井東圧が設立、高石市(三井東圧大阪工場内)に40千トンのプラントの建設を決めたが(運転開始は1991年)、1989年6月に協和ガス化学が参加、50/50JVとなった。

協和ガス化学は1989年10月にクラレに吸収合併された。

三井東圧は茂原にACH法プラント(15.7千トン)を持っていたが、1996年9月に停止した。
協和ガス化学(→クラレ)は中条にACH法プラントを持っている。(現在 67千トン)

20057、三井化学とクラレは共同モノマーの合弁を解消し、同社のクラレ持分全株式を三井化学が譲り受けることに合意したと発表した。同年9月末に三井化学の100%子会社となった。

今回、これを吸収合併するもの。

日本のMMA業界については 2006/4/13  MMA事業の拡大

ーーー

2)三井化学ポリウレタン

三井化学と武田薬品工業は2000年9月、両者のウレタン及びその誘導品、複合材料等に係わる事業を統合することで合意、三井化学 51%、武田薬品工業 49%で三井武田ケミカルを設立した。
これに先立ち2000年6月末に、武田薬品はBASFジャパンとの50/50の武田バーディシェウレタン工業の合弁契約を解消した。

これは武田薬品の武田國男会長が、医療用医薬品に経営資源を集中して、医薬主体の『研究開発型国際企業』として世界競争を勝ち抜こうとして行った抜本的改革の一環であり、当初から、営業開始5年後には、合弁会社の武田薬品持分全株式を三井化学が取得する予定が決まっていた。

新会社の能力は、TDI 175千トン、MDI 60千トン、PPG 135千トン、ウレタン樹脂 30千トン、複合材料 70千トン、有機酸 40千トンであった。

設立当初の契約に従い、2006年4月1日に、三井化学が武田薬品持分全株式(株式総数の49%)を取得して同社を100%子会社とし、「三井化学ポリウレタン」と改称した。

三井化学は平成20 年度中期経営計画において機能材料事業本部の基本戦略に「機能性ポリマーズの拡大」を掲げており、機能性ポリマーズの一つであるポリウレタン事業をコア事業と位置付けている。

市場拡大が継続するポリウレタン事業の競争力を強化するため、迅速かつ集中的な経営資源の投入による事業規模の拡大とグループシナジー効果の最大化を図ることを目的として、三井化学ポリウレタン株式会社を吸収合併することとした。

ーーー

3)東セロ子会社化

東セロは1929年にセロハンの製造販売のため、東京セロファン紙㈱として設立された。

1961年にビニロンフィルム、64年に無延伸PPフィルム、70年にフィルムのコート加工、71年に延伸PPフィルムの製造を開始した。

1971年の増資で三井石油化学が筆頭株主となった。(現在、三井化学が53.39%出資)
1993年に東セロと改称。

現在、国内食品包装向けを主とする包装用フィルム事業とシリコーンコートフィルムや耐熱離型フィルムを中心とする産業用フィルム事業を車の両輪と位置づ けている。

三井化学の機能材料事業本部では、機能フィルム・シート事業を成長の核として、樹脂事業から一貫で同事業の強化拡大を図っている。

東セロを完全子会社化することで、1)樹脂からフィルムまで一貫した体制による製品開発力・コスト競争力強化、2) 迅速な意思決定と経営戦略の共有による柔軟かつ効率的な経営の実施、3) 東セロを中心としたグループ内フィルム・シート事業のシナジー最大化による事業強化拡大を図る。

東セロの株式は来年3月26日に上場廃止となる。

参考

三菱ケミカルホールディングスは2007年2月、機能材料事業の再編に関して発表した。

三菱化学が52.61%を保有する三菱樹脂をTOBを行って100%取得した上で、三菱ケミカルホールディングスに移管し、2008年4月1日付けで、同社、三菱化学ポリエステルフィルム、三菱化学産資、三菱化学エムケーブイ及び三菱化学の機能材料分野の事業も含めて、三菱ケミカルホールディングスの全額出資子会社として再編・統合する。

2007/2/12 三菱ケミカルホールディングス、機能材料事業を再編

 


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宇部興産は12月18日、タイのPTTとの間で、カプロラクタム、合成ゴムなど化学事業についてタイにおける共同事業化を検討する覚書を締結したと発表した。

豊富な化学原料を持ち、川下製品への進出によりチェーンの強化を図っているPTTと、原料の確実な確保とタイでのさらなる事業拡大を行いたい宇部興産のニーズが一致したもので、宇部興産が既にタイに拠点を持つカプロラクタム・ナイロン・合成ゴムに限らず、幅広い化学事業を対象としてタイでの事業化の検討を行う。

宇部興産のタイでの事業は以下の通り。

事業 カプロラクタム ナイロン 合成ゴム ファインケミカル
社名 Thai Caprolactam UBE Nylon (Thailand) Thai Synthetic Rubbers UBE Fine Chemicals (Asia)
出資 宇部 91%、
丸紅 7%、その他 2%
宇部 100% 宇部 73.1%、
台湾(台湾合成ゴム)13%、
丸紅 13%、その他 0.9%
宇部 100%
能力 カプロラクタム:110千トン
硫安:460千トン
ナイロン6:25千トン
(50千トン増設決定)
ポリブタジエン:72千トン 1,6へキサンジオール:6千トン
(1,5ペンタンジオール含む)

   他に、UBE Technical Center (Asia)〔UBE Nylon (Thailand) 100%〕

<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>宇部はこの10年間ほど、原料のシクロヘキサンやブタジエンをPTTから供給を受けている。


宇部興産はカプロラクタムとナイロン樹脂は日本・タイ・スペインの三極体制で生産、世界のビッグ3に数えられてる。

2006/5/18  ナイロンと原料カプロラクタム業界

ーーー

PTTは、1978年にタイ工業省傘下に設立された政府全額出資の国営企業を前身とし、2001年に上場、現在の社名となった。

タイにおける最大の民間会社で、天然ガス・石油関連を主なビジネスとし、天然ガス開発(PTT Exploration and Production Public Co., Ltd.)、芳香族系石油化学及び石油精製(PTT Aromatics and Refining Public Co., Ltd.)、オレフィン系石油化学(PTT Chemical Public Co., Ltd.)などの事業を、関連会社を通じて展開している。

タイの石油化学は、PTTグループ、サイアムセメントグループと、TPI グループがあったが、2006年にTPIの創始者が追放された。
TPI は社名を
IRPC Public Company と改称、PTTが31.5% を所有し、関係会社としている。
(宇部興産の
Thai Caprolactam は当初、TPI グループに属していた。)

この結果、タイの石油化学業界はPTTとサイアムセメントグループの二大勢力に分かれる。

2006/6/8 タイの石油化学の現状

2006/10/6 タイで年産100万トンエチレン建設

 

同社のオレフィン系石油化学は以下の各社から成る。

1)PTT Chemical Public Company Limited (PTTCH)
   
2005年にオレフィンメーカーのNPCとTOCが合併
   
オレフィン、HDPE
   100%子会社のPTTPEがエチレン100万トン、LDPE40万トン(
メタロセン触媒)を建設中。

2) IRPC Public Company Limited
   旧TPI
   PTTが31.5%保有
   オレフィン、芳香族、HDPE、PP、ABS、EPS、PS、石油製品

3) HMC Polymers Company Limited
   Basell とのJV
   PP

4) PTT Phenol Company Limited

5) PTT Asahi Chemical Company Limited
   旭化成とのJV
   AN、MMA (2010年スタート)

2006/4/13  MMA事業の拡大

6) その他

三菱化学は、2008331日にタイの全額出資子会社のHMT Polystyrene を解散することを発表した。
HMT社は、PS 2系列合計9万トンの生産能力を有している。

PTTPEの子会社 Thai Styrenics Co., Ltd. がこの製造設備を買収した。

芳香族系石油化学及び石油精製PTT Aromatics and Refining Public Co., Ltd.Aromatics (Thailand) Public Company Rayong Refinery Public Company が統合したもの。
芳香族系製品の能力は
1189千トンとなっている。


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合成樹脂の国内の需要は11月中旬以降一段と縮小している。
自動車とデジタル家電の2大需要分野及び日用雑貨やパレット・コンテナーの加工企業からの受注が縮小しているという。

各樹脂の国内出荷は大幅に下落した。特にPPの下落幅が大きい。

輸出も本年に入り減っているが、特にPPとPVCの輸出の減が大きい。

この結果、モノマーの生産量も減少している。

11月のエチレンの生産量は前月比1.1%増の535,900トンで前年同月比では17.8%のマイナスとなった。
定修プラントはなく、稼動プラントの平均稼働率は80.6%で、1996年の調査開始以来の最低水準となった。

ーーー

米国でもエチレンの休止が相次いでいる。

米国のエチレン能力は2860万トンだが、このうち、690万トンが秋以降停止している。
このうち
ExxonMobil DuPont のテキサス工場は9月のハリケーン襲来で停止し、その後再開していない。

このほか、減産プラントも多い。Dowはテキサス工場の2系列を40%以下にまで落とすと発表している。

  立地  能力 トン 発表 停止期間
Westlake Chemical Lake Charles, Louisiana  544,000 12/17  
Chevron Phillips Chemical Port Arthur, Texas  803,000 12/15 2ヶ月停止
Sweeny 22, Texas  295,000 11/21 期間未定
Flint Hills Resources Port Arthur, Texas  621,000 12/1 期間未定
Odessa, TX  348,000 11/6 2009年上半期中
Chevron Phillips Chemical Cedar Bayou, Texas  803,000 12/1 定修、30日以上
Formosa Point Comfort I, Texas  680,000   定修終了後もそのまま
Equistar La Porte, Texas  789,000 10/31 23ヶ月
Chocolate Bayou,Texas  544,000 12/18 需要回復まで停止
ExxonMobil Beaumont, Texas  826,000 9月のハリケーンで停止、再開未定
DuPont Orange, Texas  680,000 同上
(小計)   ( 6,933,000)  
Dow Freeport, Texas  1,600,000 12/4 操業度40%以下に

 


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1219日のニューヨーク原油先物市場でWTI原油は急落し、一時、2004年2月以来、ほぼ4年10カ月ぶりの安値水準となる32.40ドル/バレルまで下がった。終値は前日比2.35ドル安の33.87ドルとなった。

17日にOPECが大幅減産を発表したが、世界経済の先行き不安を背景にエネルギー需要が大幅に落ち込むとの懸念が強まり、その後も下げ基調は止まらず、6営業日続落となった。(6日間の値下がりは14.11ドルにもなった。)

     ドル/バレル
12/11  47.98  
  12  46.28  
  15  44.51  
  16  43.60  
  17  40.06  OPEC大幅減産発表
  18  36.22  
  19  33.87  一時、32.40ドル


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大陸部側の海峡両岸関係協会と台湾側の海峡両岸基金委員会が11月4日に締結した海運直行便・直行チャーター便・直接郵便の「三通」が今月15日から正式にスタートした。

直行チャーター便
従来は週末チャーター便が香港飛行情報区を経由して大きく回り道をしなければならなかった。
しかし15日からは毎日直行便が運航する。北京から台北へのルートだと、1100キロ短縮される。
これにより、「両岸1日生活圏」が現実のものとなる

従来の週末チャーター便は大陸部の5都市で週に18便しか就航されていなかった。
今後は21都市で週54便が運航し、離着陸空港は4倍以上、便数は3倍に増えた。

しかし21都市のうち、直線の「北ルート」を飛行できるのは12都市のみで、廈門など華南地区の9都市は依然として香港を経由しなければならない。

直接郵便
大陸部と台湾の郵便物については、これまで直接郵送ではなく、香港や日本などを経由する必要があった。
台北から北京や上海へは速達で 5~7日、普通郵便だともっと時間がかかった。

今後は空輸や海運により郵便物が互いの郵送処理センターに直接輸送されるようになる。直接郵便の実施によって郵便物の輸送時間だけでなく、コストも節約できるようになる。

従来大陸部と台湾間では書簡しか取り扱っていなかったが、今後は書簡のほかにも小包やEMS、郵便為替の業務も行われる。

海運直行便
大陸部と台湾を往来する船は日本の石垣島など第三の地に寄港する必要があったが、海運直行便が始まれば、大陸部と台湾を往来する船は第三の地を経由する必要がなくなる。

台湾の「大陸委員会」の統計によると、海運直行便は毎年約8億2千万台湾ドルの輸送コストと、約半分の輸送時間を節約できる。
今回開放される港湾は、大陸部では大連、上海などの63カ所、台湾では高雄、基隆の11カ所にのぼる。


但し、市民の期待する双方向の、全面的かつ直接的な「三通」とはまだ隔たりがある。
専門家は、「まず航空チャーター直行便は非商業的な運航で、過渡期の特殊な状態にある。次に双方の通商には大陸部の企業が台湾に投資できないなど、依然として非合理的な数多くの制限がしかれている。こういった点を今後双方が話し合いで解決していく必要がある」と指摘している。

ーーー

台湾のFPCは、浙江省寧波市の北崙経済技術特区で石油精製10百万トンとエチレン120万トン、プロピレン60万トンを建設するという悲願を持っているが、政府から、台湾海峡横断のエチレン等の直接輸送を認めるとの約束が得られたことから、この計画を取り止め、原料を麦寮のコンプレックスから送ることにする可能性がある。

2008/4/16  台湾プラスチック、寧波エチレン計画取り止めか

 


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米国の石油会社 Sunoco は12月15日にアナリスト説明会を開催したが、その中で、能力で北米3位のPP、北米1位のフェノールを含む化学品部門の売却を考えていることを明らかにした。

http://library.corporate-ir.net/library/99/994/99437/items/318512/8396E9FB-DBFC-4B97-9232-E78749AA1C0B_121508.pdf

化学品部門についての説明は以下の通り。

・利益は計上しているが、投資に見合った目標利益率は達成していない。

・世界経済の悪化で今後の市場見通しは明るくない。
・事業売却を積極的に進めていく。リーズナブルな価額で売却できれば実行する。

ーーー

同社は1886年に設立され、その後買収を通じ、事業を拡大してきた。

化学品部門:

2001年に三菱商事からAristech Chemical を買収した。

Aristech Chemical 化学品(フェノール、アセトン他)、ポリマー製品(ポリプロピレン他)の製造販売を行っていた。

1989年にHuntsmanAristech の買収を計画した。Aristech はこれを拒否、一時は住友化学にもPPを分離してJVにする 提案もしたが、1990年に三菱商事が買収提案を行い、Huntsmanが買収を諦めたため、三菱商事による買収が確定した。買収額は850百万$だが借入金の 引継ぎなどをいれると10億$以上となるといわれた。

当初同社には三菱化成、三菱油化、三菱瓦斯化学、三菱レ-ヨンが各4.48%出資して三菱グループ総力を挙げて取り組む姿勢を見せたが、その後、 三菱商事100%となった。

三菱商事は石油化学品事業の戦略において、北米の橋頭堡として位置づけてきたが、原料価格の上昇を製品価格に転化しきれず、採算が 大幅に悪化し、売却した。

2003年にEquistar Lyondell 子会社)からBayport 18万トンのPP設備を買収した。同立地のLDPEEquistar に残したが、操業はSunoco が受託する。
PP原料のプロピレンはEquistar が長期契約で供給する。

2004年に無水フタル酸、オキソ、エステル、2-エチルヘキサノールなどの可塑剤事業をBASFに売却した。

ーーー

現在の化学品事業の内容は以下の通り。

  能力
Polypropylene  1,150千トン
Phenol   930千トン
Acetone   580千トン
BPA    98千トン
Nonene    73千トン
Alpha-methylstyrene    55千トン
Propylene Tetramer    41千トン
Orthoxylene    27千トン
Toluene / Xylene  277百万ガロン
Benzene  111百万ガロン
Cyclohexane   46百万ガロン

同社によれば、PPでは北米で第3位、フェノールでは第1位となっている。

北米の能力(単位:10億ポンド:同社推定) 
             
PP     フェノール      
  Lyondell 3.2     Sunoco 1.8
  ExxonMobile 2.7     Shell 1.3
  Sunoco 2.5     Ineos 1.3
  Total 2.5     Mount Vernon   0.7 (Sabic/Citgo/JLM)
  Ineos 2.3     Dow/Carbide 0.6
  Formosa 1.8     Georgia Gulf 0.5
  Dow 0.9     Others 0.2
  Others 5.1        
             
  合計 21.0     合計 6.4

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OPEC 大幅減産決定

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OPECは12月17日、アルジェリアのOranで臨時総会を開き、過去最大級となる日量220 万バレルを来年1月1日から減産することで合意した。

OPECは11月から150万バレルの減産を実施。9月にも52万バレルの実質減産を発表しており、累計の減産量は420万バレルとOPEC非加盟国も含めた世界全体の生産量の約5%に達する。

OPEC発表では「11カ国の9月の生産量 2,904.5万バレルから420万バレルカット」のみとなっている。
しかし、海外を含め各紙が「
9,11月に200万バレル、今回220万バレル」としており、会見で説明したと思われる。

9月の生産量 2,904.5万バレルからの420万バレルカットで、生産目標は2,484.5万バレルとなる。

なお、OPEC生産枠推移は以下の通りIraq を除く)で、11月末の生産枠から220万バレルを引くと2,510万バレルとなり、上記と差がある。  (今回の総会の決議は2009年1月17日に発表される)

  2007/2 2007/11 2008/1 2008/9 2008/11 増減
Algeria 794 1,357 1,357 1,357    1,286    -71
Indonesia 1,370 865 865          離  脱
Iran 3,788 3,817 3,817 3,817    3,618   -199
Kuwait 2,065 2,531 2,531 2,531    2,399   -132
Libya 1,371 1,712 1,712 1,712    1,623    -89
Nigeria 2,123 2,163 2,163 2,163    2,050   -113
Qatar 663 828 828 828     785    -43
Saudi 8,399 8,943 8,943 8,943    8,477   -466
UAE 2,257 2,567 2,567 2,567    2,433   -134
Venezuela 2,970 2,470 2,470 2,470    2,341   -129
Angola     ー     ー 1,900 1,900    1,801    -99
Equador     ー     ー 520 520     493    -27
Total 25,800 27,253 29,673 28,808   27,300  -1,500
(増減) (-500) (1,450) 2,420 -865〕   (-1,500)  

注 20089月総会では枠は据え置き(インドネシア離脱での減のみ)で、
   日量約52万バレルの実質的な減産を決めた。

臨時総会に参加したロシアは、日量32万バレルの協調減産に応じる用意があると表明。アゼルバイジャンも30万バレル前後の減産を示唆した。

世界の原油生産に占めるOPECの割合は約43%。約13%のロシアと合わせるとシェアは55%を超える。

サウジアラビアのアブドラ国王は11月末、原油価格は75ドル/バレルが適正だと述べていた。

次回の通常総会は2009年3月15日にウイーンで開催される。

ーーー

しかしながら、17日のニューヨーク原油先物市場でWTI原油の終値は前日比3.54ドル下落し、40.06ドル/バレルとなった。
OPECやロシアの減産発表はあったが、下落基調を支えられなかった。
一時は39.88ドルまで下落し、期近物として2004年7月以来の安値を付けた。


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経済産業省化学課は1216日、エチレンセンター11社の今年度上期の収益状況の集計結果を発表した。

それによると、11社の石油化学部門の単独ベースの総売上高は、ナフサ等の原料価格の高騰に対処して製品価格の改訂を実施したため、前年同期比11.4%増の2兆8,611億円となった。

しかし営業損益は、前年同期1,056億円の利益から一転して209億円の損失となった。
11社の連結ベースの営業利益は432億円(前年同期 1,944億円)となっている。

また経常利益は、前年同期の1,286億円から98.8%減の15億円へと大幅に縮小した。

集計区分
  単独ベース
  エチレンセンター
連結ベース 
三井化学 三井化学、大阪石油化学 基礎化学品、機能材料部門
丸善石化 丸善石油化学 単独
旭化成 山陽石油化学 ケミカルズ部門
出光興産 出光興産(石油化学部門) 石油化学製品部門
東燃ゼネラル 東燃化学 石油化学製品部門
昭和電工 昭和電工 石油化学部門
住友化学 住友化学 石油化学部門
東ソー  東ソー 石油化学部門
三菱化学 三菱化学 石化部門
新日本石油 新日本石油(石油化学部門) 石油化学製品部門

本年下期の損益は上期よりも悪化するのは確実で、2008年度の経常損益は1993年以来の赤字になると思われる。


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米国のPVCメーカーGeorgia Gulf 128日、カナダの Sarnia 工場を閉鎖すると発表した。
同社の4つのPVC工場(合計能力164万トン)の一つで、能力は205千トン、昨年からスイングプラントとして時々操業するという状況であったが、需要不振のため、永久停止に踏み切った。

米国のPVC需要は2006年からの住宅着工件数下落を受け、同年後半から減少が始まり、本年に入り激減している。



<p><p>HTML clipboard</p></p>

米商務省が16日発表した11月の住宅着工件数は、季節調整済みの年率換算で625千戸となり、5ヶ月連続の減少で、1959年の統計開始以来の過去最低水準を更新した。

先行指数の許可件数は前月比15.6%減となっており、まだ底を打っていない。

既報の通り、Shintechはずっと以前に輸出用の荷造設備を作っていたため、内需の減を輸出でカバーし、大きな減益にはなっていないが、他社は設備を持たず、輸出が出来ない状況にあった。

Georgia Gulf は今年になってようやく輸出を開始、上期は全体の20%を輸出したが、下期に入り輸出市場も激減したとしている。

また、本年央からの国内及び輸出の値下がりは著しい。

Plattsによると、米国のPVC市況は10-12月の3ヶ月で40-44セント/kgの値下がりで、限界利益がほぼゼロとなり、多くのメーカーが減産している。
Formosa Plasticsでは「赤字で工場を動かす意味がない」として、需要減のなかで
<p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p>ヤケクソ気味に1月の11セントの値上げを発表した。

今後も設備廃棄の動きが出てくると思われる。

ーーー

Georgia Gulf 1985年に製紙・製材業大手のGeorgia-Pacific からPVC関連とキュメン関連の事業を買収してスタートした。<p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p>

Georgia-Pacific は建材事業拡大のため、1975年にPVC生産を始めたが、PVC成形品はコスト高で木製品と競合できなかった。

その後、景気悪化でPVCの販売が減少、売却した。

同社は1998年に軟質コンパウンドのメーカーのNorth American Plastics を買収した。
更に
1999年、ドイツのRWEから塩ビメーカーのCondea Vista を買収した。
(Condea Vista はConocoのPVC部門がスタートで、その後、DuPontが、更にVistaが買収し、RWEが手に入れたもの)

逆に1996年にデラウエア州のペースト工場を鐘淵化学に売却している。
(その後、この鐘化デラウエア社は、
安定的収益確保が困難として2003年に解散)

2006年にはカナダに本社を置く塩ビ建材大手のRoyal Group Technologies を買収し、川下に進出した。

取得した事業は以下の通り。

 PVC:Sarnia, Ontario PVCプラント(205千トン)
 PVCコンパウンド:545千トン
 添加剤:74千トン
 窓枠・ドア材
 建材:サイディング、パイプ・継手、デッキ・フェンス、物置

これにより、同社の製品体系は以下の通りとなった。

 

能力推移(年末能力、千トン)

  2005   2006   2007
既存 Vista NAP 合計   既存 Royal 合計
VCM  715  695    1,410        1,410    1,410
PVC  530   695    1,225    1,205  205  1,410    1,635
Compound  215  135   85   435     455  545  1,000     680
Caustic Soda  500       500     500     500     500
Chlorine  450       450     450     450     450
添加剤               74    74      74
Phenol  300       300     300     300     300
Acetone  185       185     185     185     185
Cumene  818       818     818     818     818

 注 PVCのうち、今回停止のSarniaを含め、430千トンが休止中。
    Acetoneのうち73千トン、Cumeneのうち45千トン(いずれもPasadena, TX)は休止中

同社の2007年決算は以下の通り。(百万ドル)

  Net sales Operating
income
Chlorovinyls  1,409.1    52.1
Window and door profiles and mouldings   508.0   -54.5
Outdoor building products   573.3   -50.9
Aromatics   666.9    10.5
全社     -40.9
合計  3,157.3   -83.7


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三菱化学は12月5日、自社開発した触媒を用いてブテン類からブタジエンを製造する新技術を開発、工業化技術確立の目処が付いたと発表した。

ブタジエンの主な用途は合成ゴム原料などで、最近、自動車タイヤ用途を中心としてその需要は拡大している。

通常、ブタジエンはナフサ分解から得られるC4 留分から抽出する。

C4留分 ブタジエン
Return C4 イソブチレン
ブテン-1
ブテン-2
ブタン

ブタジエン抽出後のC4留分の約30%を占めるブテン類は種々の用途に使用されるが、燃料やナフサクラッカー原料として消費される量も少なくない。(イソブチレンは直酸法MMAの原料として使われている)

新技術は、このブテン類を原料としてブタジエンを製造するもの。
ナフサ分解によって得られるブテン類だけでなく、石油精製におけるFCC(流動接触分解)設備(次世代FCC設備を含む)から得られるブテン類にも適用可能。

参考 

新日本石油化学(現 新日本石油精製)はナフサ分解及びFCCからのブテンをOCT設備でプロピレンに変換している。

  2006/9/15 
新日本石油化学、OCTプロピレン設備完成

ブタジエンをナフサ分解C4留分からの抽出以外の方法で製造する技術で現在商業的に実施されているものはほとんどなく、同社では自らブタジエンの製造を行うことを検討するとともに、国内外の多くのナフサ分解炉、FCC 設備からのブテン類を利用してブタジエンを製造することを企図する会社への技術供与も併せて検討する。

同社はブタジエンを原料とする1,4-ブタンジオールとその誘導品(C4 ケミカル製品)事業を成長戦略のための集中事業の一つに位置付けている。浙江省寧波でのPTMG 2.5 万トン計画は予定通り2009年3Qに完成する。

ーーー

1,4-ブタンジオールは通常、アセチレンをホルムアルデヒドと反応させて1,4-ブチンジオールとし、これを水素化して生産する。

最近は、下記のようにブタン→無水マレイン酸から作る。

    SABICOSOS PetrochemicalとのJVケース

三菱化学は1982年にブタジエンを原料とする製法を工業化した。
パラジウム触媒と酢酸で 1,4-ジアセトキシ化した後、還元、加水分解を経て 1,4-ブタンジオールを得るもの。

同社は四日市に同法での1,4-ブタンジオール 11万トンと、PTMG 3.5万トン、PBT 7万トンのプラントを持つ。

同社は1997年にブタジエン法の技術をBASFにライセンスした。
BASFは蔚山工場に1.4BG/THF併産の製造設備(年産能力50,000トン)を建設、三菱化学は1万トンの引取権を有している。

BASFは、ドイツ(Ludwigshafen)とアメリカ(Geismar)でアセチレン法で生産している。(生産能力合計 255,000トン)
また、出光とのJVのBASF出光(BASF67%/出光33%:千葉)で25千トンの生産を行なっている。

なおBASFは上海で、テトラヒドロフラン(THF)を、1,4-ブタンジオールを通さずに、直接ブタンから製造するプラントを建設したが、技術的理由で停止し、1,4-ブタンジオールも使用できるように改良した。
  当初 ブタンTHF
  改善 
ブタン→無水マレイン酸→1,4-ブタンジオール→THF

三菱化学はまた、台湾の南亜プラスチックに技術ライセンスを行い、1,4-ブタンジオール3万トンの引取権を有している。


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Huntsmanは12月15日、Hexion Specialty Chemicals との合併契約を破棄したと発表した。

Hexion と親会社のApollo Managementは解決金として10億ドルを支払う。
    

Apollo は Huntsman に250百万ドルを投資(10年の転換社債)
Hexionは違約金325百万ドルを支払う。(買収資金を約束したCredit Suisse Group Deutsche Bank が融資)

残り425百万ドルはApolloが支払うが、Huntsmanが銀行から賠償金を取れれば、一部は返却される。
Apollo
の支払いの一部は保険でカバーされる。

別途、Apollo の関係会社がHexionの親会社Hexion LLC 2億ドルを投資する。Hexionはこれを一般の事業に使用する。

2007年7月、Hexion Specialty Chemicals (投資会社Apollo Management の100%子会社)が、借入金込みで106億ドルで Huntsman を買収する契約を締結した。BasellによるHuntsman買収契約を破棄しての契約締結であった。

しかし、これはバブル絶頂期の取引で、その後ハンツマンの株価は大幅に下がった。

このためHexionは本年6月、この買収契約が実行不能であると宣言する訴えを裁判所に提出した。損害賠償や違約金の義務がないという決定を求めた。

しかし、裁判でHexionは敗訴、このため同社は合併に踏み切ったが、合併資金の融資を約束した銀行がこれを拒否しており、実現が困難になっている。

2008/10/30 Hexion Huntsman、合併合意、銀行は融資拒否

このため、両社は10億ドルの和解金で契約を破棄することとしたもの。
Huntsman は当初、Hexion に対して30億ドルの損害賠償(+懲罰賠償、弁護士費用、金利)を求めていた。
今回、Huntsman と Apollo のトップ同士の会談で決着した。

なお、Huntsman 銀行との裁判は継続する。

Huntsmanは930日、買収資金を供給する契約を結んでいたCredit Suisse Deutsche Bank を訴えた。
両行が
Apollo と組んで、Huntsmanがその前にBasell と締結した買収契約を邪魔し、更にHexion との間の買収契約も邪魔して、自らの利益のためにHuntsman の権利を侵害したというもの。

裁判は来年5月11日に予定されており、今回の和解のなかに、Apolloがこの裁判でHuntsmanに協力するという項目が入っている。


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Bayer、来年も増益

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世界経済の悪化で、Dow やDuPont などで人員整理が行なわれる中、Bayerが気を吐いている。<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>

同社は10月29日の第3四半期業績説明で2008年及び2009年に前年比増益となる予想を発表しているが、今回これを再確認した。

Bayer 12月12日、 Leverkusenの本社に130人の記者を集め、同社のイノベーションをPRするためのNews Forum "Bayer's Perspective on Innovation 2008"を開催した。

Werner Wenning 会長は同社の状況を以下の通り説明した。

この数週間で経済状況は著しく悪化した。
しかし、
Bayerでは相変わらず自信を持っている。こんな時こそ、長期的は企業戦略が成果を生む時である。

売上高の70%を占める HealthCare 部門と CropScience 部門は、不況の影響を受け難い。目標達成は可能である。

MaterialScience 部門は売上高、損益とも悪化しており、11月は10月より更に悪化している。
しかし既に、製品によっては減産で対応しており、来年も一時休止や労働時間短縮のような方策をとる準備をしている。(それ以上のことは考えていない。)
部門全体では今年も来年も成長を達成し、損益
(EBITDA) を向上させる。

(事業撤退を考えているのかとの質問に対して)
Bayer の3つの部門のみんながコア事業であり、素晴らしい成長の可能性を持っている。

ーーー

参考 同社の2007年業績 (百万ユーロ)
  Sales EBIT before
special items
EBITDA before
special items
HealthCare  14,807 45.7%  2,492 58.1%  3,792 56.0%
 Pharmaceuticals  10,267    1,641    2,807  
 Consumer Health  4,540    851    985  
             
CropScience  5,826 18.0%  786 18.3%  1,324 19.5%
 Crop Protection  4,781    632    1,093  
 Environmental Science, BioScience  1,045    154    231  
             
MaterialScience  10,435 32.2%  1,117 26.1%  1,606 23.7%
 Materials  3,041    100    273  
 Systems  7,394    1,017    1,333  
             
Reconciliation  1,317    -108    55  
             
Continuing operations  32,385    4,287    6,777  
 EBITEarnings Before Interest and Taxes
 EBITDAEarnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization

ーーー

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News Forum: "Bayer's Perspective on Innovation 2008"の概要は以下の通り。

RDを更に強化する。Innovationによってのみ、成長が維持できる。 

  2008年の研究開発費は28億ユーロ。
   うち、
HealthCare 66%
            CropScience  24%
       MaterialScience 8%

将来のグローバルな問題点の解決を目指す。
・医薬: 50 の新製品が臨床試験の IIII のフェースにある。
・農薬:10新原体を2008~2012年に上市する。

・研究開発費の減税措置等が必要

詳細は下記参照。
 http://www.press.bayer.com/baynews/baynews.nsf/id/BC8D688DC9071811C125751C00591FD6?Open&ccm=000&presskit=1

 http://www.press.bayer.com/baynews/baynews.nsf/id/2008-1524-e

 

 


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信越化学は12月10日、ポルトガルの塩ビ製造販売の関連会社・CIRES (Companhia Industrial de Resinas Sinteticas) の完全子会社化の手続きに入ったと発表した。
  
CIRES 同社の海外進出の第1号で、1960年に設立された。

当時ポルトガルでは合成樹脂について国内に原料のあるPVC計画のみが検討されおり、その認可を受けた同国最大の電力会社で傘下にカーバイド製造会社を持つウニオン・エレクトリカ・ポルトゲーザ(UEP)が提携先を探していた。
三井物産のアレンジで信越化学の参加が決まった。
三井物産と信越化学がそれぞれ25%出資、現地側はUEP 12.5%、市中銀行2行で35%、機械商社2.5%の出資比率であった。

1963年に年産3,600トンでスタートした。(現在の能力は20万トン)

その後長期間、三井と信越は26%ずつの出資を続けたが、1992年にNorsk Hydroが26%の出資を行った。
2007年にINEOSが
Norsk Hydroのポリマー事業を買収した
     
2007/5/25 INEOS、Norsk Hydro からポリマー事業を買収

今回の完全子会社化の目的は、CIRESを信越化学と一体化させることで、同社の事業運営のスピードアップを図り、欧州における塩ビ事業の一翼を担う存在として事業を拡大させて行くこと。

買収は先ず、Shin-Etsu International Europe INEOS Chlor Vinyls の保有全株式を買収し、過半数(52.31%)とした後、ポルトガルの法律に基づき、株式公開買付を行なう。
全株式取得に必要な資金は、約19百万ユーロ(約22億円)の予定。

   手続前  08/12/9契約  09/3開始
Shin-Etsu International Europe  26.07%    52.31%    100%
INEOS Chlor Vinyls  26.23%  売却   -     -
三井物産グループ  26.07%    26.07%  TOB   -
その他現地資本  21.63%    21.63%   -

同社の業績は以下の通り。(単位:千ユーロ)

  07年12月期 06年12月期
売上高  176,195  158,175
営業利益    2,363    2,575
当期純利益    1,289    1,229


信越化学の塩ビ事業は、アメリカのシンテック社を中核とし、欧州、日本と併せた3極体制で世界中の顧客に安定供給を行っている。

信越グループの能力千トン)
  場所 PVC  VCM 塩素  備考  
現状 計画 現状 計画 現状 計画
日本 信越化学 鹿島   550            
鹿島塩ビ 鹿島      492/600       残りはカネカが引取り
米国 Shintech Freeport, Texas  1,450       825    500  
Addis, Louisiana   590            
Addis, Louisiana  (270)           Bordenから購入、廃棄
Plaquemine, Louisiana  300  300  500  250  300  150  
欧州 CIRES ポルトガル   200            
信越PVC オランダ   450     620        
フィンランド   (90)           製造委託契約終了
合計  3,540  300  1,612  1,075  300  650  
注) Freeport のVCM/塩素計画はダウ・ケミカルが2008年1月に同事業の縮小方針を転換して信越化学への長期供給を決めたため、自社生産の緊急性が薄らいだ。
白紙撤回はしない考えだが、稼働時期は状況に合わせて見直すことにした。

2006/5/16  世界一の塩ビ会社 信越化学

2007/6/1   シンテック、テキサス州にVCM工場の建設許可を申請


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米司法省は2007年5月、原油を海上のタンカーから陸地の貯蔵施設に石油を移すときに使うマリンホースの販売で国際的な価格カルテルに関与した疑いがあるとして日欧企業の幹部8人を逮捕したと発表した。
逮捕されたのは日本のブリヂストンの1名と英国のコンサルタント、英社の2名、仏社の2名、伊2社の各1名の合計8名。その後追加の逮捕があった。

米司法省は、カルテルに入っていたが自主申告した横浜ゴムの担当者になりすまし、そのメールアドレスを使ってコンサルタントらとやりとりを開始し、その結果開かれた会合で逮捕が行なわれた。

2007/12/18 マリーンホース国際カルテル事件のその後

日本の公取委は2008年2月、マリンホースを巡り国際カルテルを結んでいたとして、独占禁止法違反(不当な取引制限)で英仏伊のメーカー4社とブリヂストンに排除措置命令を出した。ブリヂストンには課徴金納付命令も出された。

2008/2/25 公取委、マリンホース国際カルテルで排除命令

ブリヂストンは2008年2月、マリンホース事業で中南米や東南アジアなどの外国公務員に対する不適切な支払いが少なくとも 1億5千万円あったと発表した。
同社はマリンホース事業からの撤退を明らかにした。

同上 付記

ーーー

米司法省は12月10日、ブリヂストン社員が有罪を認め、2年の禁固刑と8万ドルの罰金を課せられたと発表した。
http://www.usdoj.gov/opa/pr/2008/December/08-at-1084.html

カルテルへの参加のほか、ラテンアメリカその他で公務員に不適切な支払いをした連邦海外腐敗行為防止法FCPA)違反でも訴えられていた。FCPA違反は彼のみ。

これで、個人としての結審は9人目となる。あと、2が残っている。

判決は以下の通りで、いずれも長期の禁固刑となった。
なお、A、B、Cの3人はいずれも英国で同期間の禁固刑を受けており、米国での禁固刑は免除となる。

    禁固 罰金
Dunlop Oil & Marine A  24 month $100,000
B 20 months $ 75,000
PW Consulting (Oil & Marine) C 30 months $100,000
Manuli Rubber Industries SpA D 14 months $ 75,000
E 12 months and one day $ 20,000
Trelleborg Industrie S.A.S F 14 months $ 75,000
G 14 months  $100,000
Parker ITR S.r.l. H six months 自宅監禁 $ 20,000
Bridgestone I two years $ 80,000

企業としては、Dunlop Oil & Marine$4.54 millionManuli Rubber Industries $2 million の罰金を課せられている。

ーーー

カルテル容疑で日本人が米国で禁固刑に服するのは、これが2人目。

これまで何人もの人が米国で起訴されているが、日本在住の場合には犯罪人引渡し条約が適用されず、時効の中断の状況のままである。(米国や米国との犯罪人引渡し条約が適用される国に入国すれば逮捕されることとなる)

今回は現地で逮捕されたため、逃れられなかった。

1人目はダイセルの若い担当者。
防カビ剤のソルビン酸価格カルテルで、ダイセル、上野製薬、日本合成の3社の役員等が起訴されたが、チッソ(免責)の提出した詳細情報のためにダイセルの若い担当者が起訴された。
彼の場合は今後一切、海外に行けないのでは仕事にならないため、自ら渡米し、3ヶ月の禁固刑に服した。

2006/2/16  独禁法改正 


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三菱ケミカルホールディングスは9日、事業説明会を開き、2008-10年度の中期経営計画の見直しの説明を行なった。

3年間の設備投資額(投融資含む)を、当初の5900億円から1600 億円減額し、4300億円にする。世界景気の減速が顕著になり、計画の見直しを迫られた。

研究開発費は当初計画比200億円減の4050億円とする。市場の成長が見込める白色発光ダイオード(LED)とリチウムイオン電池材料に研究開発費を優先的に配分するとしている。

詳細 http://www.mitsubishichem-hd.co.jp/ir/pdf/20081209-2.pdf 

 なお、合わせて炭素事業と電池材料事業の説明が行なわれた。

同社の中期経営計画については 2008/9/10 三菱化学の石油化学事業の将来

 

今回の見直し内容は以下の通り。

石化事業全般として、C3/C4誘導品は戦えるが、C2誘導品は厳しいとの見方を示した。

このため、C2系については中期経営計画期間で以下の施策を加速する。

・C2系の弱い事業の撤退(収益悪化リスクを約100億円軽減)
・PE事業基盤強化(設備集約と高付加価値化)
・ユーティリティ設備削減と最適化
・アセットライト(資産・資本の軽減)
  2010年に2000億円削減(在庫削減、持株譲渡、事業撤退ほか)

  アルファオレフィンとエトキシレートは2009年に停止
  ABSはテクノポリマー持分をJSRに譲渡
    2008/11/28 
三菱化学、ABS事業から撤退
  その他のC2誘導品についても、今後対応を検討する。

今後は強みのある誘導品を中心とした事業展開を図る。

鹿島コンビナート 競争力あるオレフィン・アロマティックスセンター化
水島コンビナート 競争力ある誘導品に特化
四日市事業所   自動車向け高付加価値製品に特化
海外拠点      競争優位の事業に特化

また、コンビナート各社と連携し、プラント統廃合を検討する。(海外では各エリアで強い企業と提携)
更に、ナフサ依存型脱却に向け、原料転換の技術開発を加速する。
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付記   

三菱化学の高下常務は9日の事業説明会後、記者団に対し、「旭化成と再編について検討している」と語った。
水島のいずれかのエチレン生産設備を停止してエチレンの相互供給を検討すると見られる。

集中事業として、C4ケミカルとポリカーボネートを挙げた。

C4ケミカル:1,4-ブタンジオールPTMG→(ポリウレタン繊維)

 ・浙江省寧波でのPTMG 2.5 万トン計画 予定通り2009年3Q完成
 ・ブタジエン新製法の確立
      C4留分からの抽出に加え、残りのブテン(FCCからのブテンも)からのブタジエン製法
 ・GS PLA(コハク酸と1,4-BGの共重合ポリエステル)向け原料供給

ポリカーボネート及び原料ビスフェノールA

 ・黒崎 2010年4月スタート
   溶融法PC、現行20千トンに加え、2期60千トン 
   原料ジフェニルカーボネート 100千トン(うち50千トン 中国JVへ供給)
 ・Sinopec とのJV(北京) 2010年2Qスタート
   BPA 150千トン(自消及び外販)
   溶融法 PC 60千トン

テレフタル酸は徹底したコスト削減とアライアンスを検討する。

インド、インドネシア、中国では海外企業との提携による販売・生産体制再構築
コスト競争力(合理化によるコスト削減、不採算工場の撤退検討)
海外Global Head Quarters による購買/販売/技術面での機動力あるマネジメント

資源配分計画を見直す。

設備投資・投融資を重点化により1600億円削減(2008-10年度)

 機能商品  2100億円  1500億円  
 ヘルスケア   750     750  
 化学品  1550    1000  うち700億円は石化の保安・安全・合理化投資
 その他  1500    1050  
 合計  5900    4300  
         
 戦略的投資  2500億円  +α  
         
 R&D費用  4250億円  4050億円  重点化(メリハリ)
         

七大育成事業は白色LEDとリチウムイオン電池材料に優先配分する。

  七大育成事業
    
白色LED
    HEV用リチウムイオン電池材料

    自動車用ケミカルコンポーネント
    サステイナブルリソース
    次世代ディスプレイ
    有機太陽電池
    個別化医療/創薬支援  

 


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サウジアラムコが石油開発計画を次々に延期している。

同社は10月末には非常に強気であった。

Refining, Marketing and International 部門のトップは1028日の業界の会合で、自己資金での事業のため、金融危機には無縁であり、経済情勢の悪化でアラムコのメガ計画が影響を受けることはないとし、逆に建設資材の需給が緩和しメリットがあると述べた。

但し、原油の需給には注意する必要があるとはしている。

Aramco 11月初めに、同社の短期的な計画は予定通り進めており、2009年末までにサウジの能力を日量1,250万バレルに増やす計画には変わりはないとした。

ーーー

116日、Saudi Aramco ConocoPhillips Yanbuの日量40万バレルの輸出用製油所建設の入札を停止することで合意したと発表した。
当初は
12月の入札を予定していたが、来年の第2四半期に延期する。

Saudi Aramco ConocoPhillips も、この計画をやることには変わりはないとしており、準備作業は進める。

ーーー

SaudiAramco 11月に、 Manifa 油田の開発計画(2011年までに日量90万バレル追加)に関してイタリアのSaipem 7月に結んだ契約をキャンセルする意向を明らかにした。<p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p>
Manifa 油田はサウジアラビア北部、アラビア湾沖の
油田で、埋蔵量は200億バレルと推定されており、1980年に生産停止となる前は、15バレルの生産の実績がある。三菱重工が<p><p>HTML clipboard</p></p>今回の開発計画で15万kW級ガスタービン2式を受注している。

原油価格下落と金融危機で資源を巡る競争が緩和しており、いろいろの契約を再交渉して、コストダウンを図りたいとしており、他社も入れて再入札を行なうと見られている。

ーーー

Total Aramco 11月末に、金融市場の不安定を理由に、100億ドルの Jubail の製油所計画の入札を延期すると発表した。

Aramco 62.5%Total 37.5% JVで、日量40万バレルの製油所を建設する計画で、来年第1四半期に入札の予定であったが、最低3ヶ月は延期する。

上記のManifa 油田の原油の7080%がここで処理される予定となっている。

ーーー

Aramco はこのたび、古い Dammam 油田を再スタートさせる12億ドルの計画を延期した。

同油田は人口の多いDhahran市の地下にあり、開発コストは非常に高くなることも影響している。

同油田は1938年に発見され、これまで日量1万バレル以上の生産はなかったが、最近の地質調査で日量10万バレルの原油と日量100 百万立法フィート の天然ガスの生産を見込んでいた。<p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p>

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しかしながら、Aramco の石油開発部門副社長は、最近の業界会合で、「石油価格は1年以内に回復すると見ており、石油価格下落で計画を止める考えはない」と述べた。むしろ、鉄鋼価格の下落等でコストダウンが可能になるとしている。

業界アナリストも、上流や下流で投資を止めると、世界経済が回復しエネルギー需要が戻った際に、石油価格暴騰を引き起こすと警告している。


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ダウは自動車や他の消費財の需要の激減を受け、主力のテキサス州Freeport 工場で減産を行い、契約工をレイオフする。地元紙が伝えた。

工場では12月15日から1月5日までコンプレックスの生産を35%に落とし、メンテナンス及び操業の契約工約4000人のかなりをレイオフする。
一部のプラントはフル稼働するが、完全停止するプラントもある。
フルタイムの4500人の従業員はレイオフされないが、非重要部門の従業員には減産期間中、自宅勤務や休暇を取るなどを求める。
需要に対応した人員で操業を行なう考え。
1月5日以降どうするかは今後考えるとしている。

Texas City工場についても同様の措置を取る模様。

Freeport工場は、エチレン 155万トン、プロピレン 58万トン、LLDPE/HDPE 25万トン、LDPE 30万トン、MEG 42万トン、SM 64万トンの能力を持つ。

Texas City工場は、VAM 33万トン、プロピレン 7万トンの能力を持っている。
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付記   

ダウは12月8日、現下の経済情勢に鑑み、「変身戦略」を加速するための合理化策を発表した。
   
来年1月付けで、約5000人のフルタイムの社員を削減、高コスト地区の20のプラントを閉鎖、いくつかの非戦略事業から撤退する。
人員削減は全世界の従業員の約11%に達する。
これらの施策がフルに実施されると、2010年までに年間営業コストを8億ドル削減することとなり、ロームアンドハース合併での8億ドルのコスト面でのシナジーに加算される。
   
更に、現在の製品市場の状況を勘案し、一時的に180のプラントを休止し、世界で約 6000の契約社員を減らす。
   
変身戦略では、現在の中央集権的な組織から、小さな本社の下での次の3つの異なるビジネスモデルでの運営に変える。
    1)JV・アセットライト=石化事業
       石化事業をJV化し、資本負担を減らす。
    2)機能製品事業
    3)健康・農業、先端材料、その他市場志向事業
   
これらの詳細は来年早々に発表される。
   

ーーー

DuPont は12月5日、競争力強化のためのアクションを発表した。

建設業界と自動車業界の不振、消費者の消費の減少の結果、サプライチェーンでの在庫の縮小で、需要の減少が予想されるとし、コスト削減、投資の縮小によるキャッシュフロー強化のための積極的な行動を取るとしている。

リストラ計画として、主として欧米の自動車、建築業界の事業でおよそ2500人を削減する。将来の競争力強化のため、資産の合理化も行なう。リストラのため第4四半期に税引前で5億ドルの費用を計上する。

これらの処理で2009年に税引前で130百万ドル(年率では250百万ドル)の利益を生むと期待している。

また、年初に始めた生産性計画(2009年に6億ドルの固定費減、10億ドルの運転資金減)を早める。
計画では年末までに4000人の下請けを減らし、2009年には更に減らす。<p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p>

ーーー

化学業界では全世界で減産が行なわれており、BASFも11月19日に、世界の80 程度のプラントを停止し、更に100 程度のプラントで減産すると発表している。   

2008/11/24 BASF、全世界で減産 

SABICもSABIC Europe が減産に入ったことを明らかにした。(詳細は不明)
但し、サウジでは自前の安い原料のため、フル稼働を続けている。


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国内石油元売り最大手の新日本石油と同6位の新日鉱ホールディングスは12月4日、経営統合すると発表した。

経営統合は次の3点を基本コンセプトとして行う。

(1) 石油精製販売、石油開発および金属の各事業を併せ持つ世界有数の「総合 エネルギー・資源・素材企業グループ」へと発展することを目指す。
(2) 「ベストプラクティス」をキーワードとして、収益性の高い部門に経営資源を優先配分することにより企業価値の最大化を図る。
(3) 石油精製販売事業については、経営統合により初めて可能となる劇的な事業変革を早期に実現する。

統合手続は以下の通り。なお、経営統合比率(株式移転比率)は、今後、両社で協議の上、決定する。

(1)2009年10月に共同持ち株会社を設立して両社を傘下に入れる。

(2)2010年4月に双方の事業を分野別に完全統合する。
 1)石油精製販売:新日石とジャパンエナジーの石油精製販売事業を統合
 2)石油開発事業:新日本石油開発とジャパンエナジーの石油開発事業を統合
 3)金属事業:日鉱金属を中核事業会社と位置付ける。

両社の合併で、年間売上高13兆円強、国内ガソリン販売シェア36.5%を握る世界8位の石油会社が誕生する。

国内のガソリン販売量シェア
   
新日石+ジャパンエナジー 36.5%
①新日石 25.7%
②エクソンモービル 17.7%
③昭和シェル石油 16.7%
④出光興産 14.7%
⑤コスモ石油 11.6%
⑥ジャパンエナジー(新日鉱HD)  10.8%
 * 新日石は今年10月に合併した九州石油を含む

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石油精製販売事業を中心として、全ての事業部門において公平かつ客観的な観点からあらゆるコストを点検し、聖域なき合理化・効率化を推進するとともに、経営統合によるシナジーを発揮して、少なくとも年600億円以上の統合効果を実現、継続的にその上積みを図って年1,000億円以上を目指すとしている。

統合後に計10カ所になる製油所や、約1万3千カ所のガソリンスタンド網を統廃合し、余剰設備を解消して収益力拡大を目指す。
西尾・新日石社長は「2年内に石油の精製能力を40万バレル(両社の能力の2割に相当)削減する」と述べた。
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国内の石油事業の経営基盤を強化すると同時に、新エネルギー事業や海外での資源開発を加速し、総合エネルギー企業を目指す。

ーーー

新日鉱ホールディングス

1929年                          日本鉱業設立
1965年 日本鉱業、アジア石油、東亜石油の民族系3社の
販売部門を集約、共同石油設立
 
1992年 日本鉱業と共同石油が合併、日鉱共石が発足 日本鉱業から金属部門を分離、日鉱金属設立
1993年 日鉱業共石をジャパンエナジーと改称、
JOMOブランド展開
 
1999年   日鉱マテリアルズ設立
(ジャパンエナジーの電子材料事業再編)
2002年  新日鉱ホールディングス設立
2003年   日鉱金属加工設立
(日鉱金属から金属加工・精密加工事業を継承)
2006年   新「日鉱金属」設立
(日鉱金属、日鉱マテリアルズ、日鉱金属加工
を統合)

ジャパンエナジーは鹿島石油70.675%を所有(コスモ石油から17.15%を譲受)
ジャパンエナジーは富士石油の
25%を所有していたが、AOCホールディングス(アラビア石油+富士石油)設立で売却

新日鉱ホールディングスは昭和シェル石油と「JSイニシャティブ」を結び、統合を検討していた。

新日本石油

1888年 日本石油設立  
1999年 三菱石油と合併、日石三菱スタート コスモ石油と業務提携
2001年 「ENEOS」ブランド  
2002年 新日本石油に改称 日石三菱精製、興亜石油、東北石油の3社が合併、
新日本石油精製がスタート
2006年   ジャパンエナジーと業務提携
2008年   <p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p>新日本石油精製が新日本石油化学を統合
九州石油を統合
(新日鐵、丸紅、昭電その他から持株を買収)

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日本海石油の66%を所有
和歌山石油精製の50%を所有していたが、2001年に停止

ーーー

新日本石油および新日鉱ホールディングス社の概要は以下の通り。

商 号 新日本石油 新日鉱ホールディングス
上流 生産量 4.5万BD (2007年平均) 1.6万BD (2007年平均)
埋蔵量 708百万Bbl (2007年12月末現在) 110百万Bbl (2007年12月末現在)
原油輸送 タンカー隻数 VLCC 22隻(2008年12月1日現在) VLCC 9隻(2008年12月1日現在)
精製供給 グループ製油所
原油処理能力
(2008年12月1日現在)
               (千BD)
室蘭製油所          180
仙台製油所          145
根岸製油所          340
大阪製油所          115
水島製油所          250
麻里布製油所         127
大分製油所          160
富山製油所(日本海石油㈱) 60
合計             1,377
               (千BD)
水島製油所          205
鹿島製油所(鹿島石油㈱) 270






合計              475
製品輸出数量
(外貨ジェット、ボンド重油を除く)
425万KL(2008年3月期)※ 51万KL(2008年3月期)
物流 油槽所数 49ヶ所 (2008年12月1日現在) 15ヶ所 (2008年12月1日現在)
販売 燃料油国内販売量
販売シェア
5,613万KL(2008年3月期)※
25.7%※
2,276万KL(2008年3月期)
10.8%
特約店数
SS数
635社 (2008年9月末現在)※
10,242ヶ所 (2008年9月末現在)※
320社 (2008年9月末現在)
3,441ヶ所 (2008年9月末現在)
石油化学 パラキシレン生産能力
ベンゼン生産能力
プロピレン生産能力
160万㌧/年(2008年12月1日現在)
80万㌧/年(2008年12月1日現在)
90万㌧/年(2008年12月1日現在)
102万㌧/年(2008年12月1日現在)
52万㌧/年(2008年12月1日現在)
9万㌧/年(2008年12月1日現在)

                      ※2008年10月に統合した九州石油分との単純合算ベース

(金属)

  新日鉱ホールディングス
上流                        (万㌧/年)
エスコンディーダ銅鉱山(チリ) 2.0%  2.1
コジャワシ銅鉱山(チリ)     3.6%   1.8
ロス・ペランブレス銅鉱山(チリ)15.0%  5.1
                      ーーー
グループ権益生産量(銅量)        9.0
 ※%は日鉱金属出資比率
中流(銅製錬)                        (万㌧/年)
パンパシフィック・カッパー
 佐賀関製錬所および日立精銅工場  45
 玉野製錬所 ※              16
LS-ニッコー・カッパー(韓国)
 温山工場                  51
                       ーーー
グループ製錬諸能力            112
 ※パンパシフィック・カッパー出資分
下流 電材加工事業
 磯原工場(半導体用・FPD用ターゲットなど)
 白銀工場(圧延銅箔、電解銅箔など)
 倉見工場(コルソン合金など)

環境リサイクル事業
 日立工場

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石油開発:
 新日本石油開発
   

 ジャパンエナジー石油開発   

ーーー

日本の石油産業の再編の歴史

第1波 1985 昭和シェル石油発足(昭和石油とシェル石油が合併)
     1986 コスモ石油発足(大協石油、丸善石油、旧コスモ石油が合併)
     1992 日本鉱業と共同石油が合併、日鉱共石(のちジャパンエナジー) 

第2波 1999 日本石油と三菱石油が合併、日石三菱に
     2000 東燃とゼネラル石油が合併、東燃ゼネラル石油に
     2002 エッソ石油とモービル石油が合併、エクソンモービルに

第3波 2007 アブダビ首長国の投資機関がコスモ石油筆頭株主に     
     2008 ペトロブラス(ブラジル)が東燃シェル傘下の南西石油を買収 
     2008 新日石が九州石油を吸収合併 
     2008 新日石と新日鉱が統合発表 

ーーー

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日本経済新聞によると、今回の合併の経緯は以下の通り。   

新日石は統合による規模拡大を検討していた。   

当初、同社はコスモ石油を統合相手として検討した。
      2位のエクソンモービルは大きすぎ、公取委の承認を得られない。
      3位の昭和シェルはシェルが離さないだろう。
      4位の出光は独立志向
   

しかし、コスモ石油はアブダビの出資を受け入れた。   

このため、相手は新日鉱のみとなった。
新日鉱も国内市場の急速な縮小を前に、単独での生き残りが難しいとの認識は強めていた。
   

「エクソンモービルが日本事業を手放したがっている」との情報が業界を駆け巡った。
公取委は2007年春に合併審査の新指針を施行。審査で重視する指標を「寡占度指数」に変えた。
他社が先に再編を仕掛けて市場の寡占度が上がると、残る企業はM&Aのハードルが高くなる。
このため、新日石は合意に向けた作業を加速した。

 


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「両高一資」とは、エネルギー消費・汚染・源消費型産業のことで、中国政府は少し前から、これを抑える方向で政策を進めてきた。

2007年7月1日から一部商品の輸出増値税還付政策を調整したが、調整の狙いの一つとして
「エネルギー消費量、汚染度が高い商品、資源性商品(材料となるもの)の輸出を抑制する」ということを上げた。
そして、エネルギー消費量、汚染度が高い商品、資源性商品(材料となるもの)553品目の輸出増値税還付を取り消した。

2007/6/28 中国、輸出抑制のため輸出増値税還付率を引き下げ

本年3月、中国政府は中国環境保護局を中国環境保護部への昇格を決定した。

過去30年間で、中国の経済発展モデルは、もともと破壊されやすい自然環境をさらに破壊しただけでなく、中国経済自身を侵食してきた。「局」が「部」に昇格することで、以前より影響力の強い発言権と、予算の増加によって従来よりも環境活動への取り組みは拡大される。

環境保護部はエネルギー消費量や汚染物質排出量が多く、資源消費型の「両高一資」建設プロジェクトを厳格に取り締まり、経済発展のバランスを高める方針を決めている。

環境保護部は各地域と企業から提出された環境評価報告を集中的に整理・審査を行なっており、この過程でエネルギー消費量と汚染物質排出量の大きいプロジェクトが厳格に排除され、産業構造の調整と遅れた生産設備の淘汰が推進された。

同部は最近、化学工業と火力発電所の計6件総額394億元のプロジェクトの審査を一時停止した。

ーーー

中国大手銀行の一つ、招商銀行の社長は本年1月、「人民日報」に寄せた文章の中で、中国の銀行が注意を払うべき4大リスクを指摘した。
グローバル化における金融リスク、マクロ調整によるリスク、突発事件や操作上のリスク、「両高一資」業界のリスクで、「両高一資」業界については、国内の環境保護基準および産業参入基準がいっそう厳しくなるにつれて、これらの業界の売り上げは落ち込むとし、これらの業界に対する貸付にも、かなり大きな不確定要素が出てくると指摘、銀行は「両高一資」業界に対する融資をさらに抑え、「グリーン融資」を前向きに押し進め、エコ社会の建設に貢献すべきだとしている。
 


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トクヤマは多結晶シリコンの事業拡大のため、第二製造拠点として、マレーシアに絞り、基本設計を開始することを決定した。

同社は多結晶シリコンを戦略的成長素材と位置づけ、積極的に事業の強化を図っている。

徳山製造所に
年産5,200 トンの能力を持つが、現在、半導体用2,500トン、太陽電池用500トンの計3,000トンの増設中で、完成後は8,200トンになる。

多結晶シリコンの需要は、太陽電池向けなどで急拡大しており、トクヤマの製造拠点は徳山のみであることから、リスク分散の面からも第二製造拠点の建設が急がれていた。

新立地はマレーシア、サラワク州ビンツル市北東のサマラジュ工業団地で、2012年に半導体・太陽電池向け多結晶シリコン 3,000トンのスタートを目指している。今後、需要動向を注視し、増設も検討する。<p>HTML clipboard</p>

マレーシアの工場の完成後の同社の能力は11,200トンとなる。

ーーー

シリコンは酸素に次いで地殻中に豊富にある元素で、地殻を構成する元素中の約28%を占める。

多結晶シリコンは、金属シリコンに水素および四塩化珪素を反応させ三塩化シラン(トリクロロシラン)とし、これを蒸留精製後、反応炉で水素と反応させて還元し、太い棒状に析出させて製造する。
還元工程で副生される四塩化珪素や水素は、回収し、再利用する。

多結晶シリコンは半導体用と太陽電池用に使用されるが、太陽光発電は世界的に普及が進んでおり、世界的に需給が逼迫している。

このため、多くの会社が新増設を計画している。

ーーー

三菱マテリアル

四日市工場の能力を増強する。

同社は四日市に1,800トン、米国の100%子会社 Mitsubishi Polycrystalline Silicon America 1,500トン、合計3,300トンの能力を有する。

四日市工場に335億円を投じ、20101月に1,000トン増強する。
将来的には同地で
3,0004,000トンの増設を考えている。

ーーー

大阪チタニウムテクノロジーズ

2008年8月、大阪府岸和田市に半導体材料である多結晶シリコンの新工場を建設すると発表した。
投資額は450億円。

半導体ウエハー大手のSUMCO(同社と関係は下記参照)との間で,2011年4月から年間2000トンの長期引取契約が成立したのを受け,年産能力を約2.6倍に拡大する。

生産能力増強推移(出荷開始時期別)

増強時期 2007/7 2008/10 2011/4
本社尼崎工場 900→1,300t →1,400t  1,400t
岸和田製造所      2,200t
合計     1,300t   1,400t  3,600t

同社は1937年、大阪特殊製鉄所として設立された。

1952年に住友金属工業が資本参加、大阪チタニウム製造株式会社が発足、1960年に多結晶シリコンの製造を開始した。

1993年に住友シチックス社名変更。

1997年に多結晶シリコン部門が住友シチックス尼崎となり、本体の住友シチックスは翌年、住友金属工業に合併された。

住友シチックス尼崎は2002年に住友チタニウムに社名変更、2005年に東証1部上場、住友金属工業と神戸製鋼所が筆頭株主となった。

2007年に大阪チタニウムテクノロジーズに社名変更した。

なお、住友金属工業のシチックス事業本部となった本体は、三菱住友シリコンマテリアルに営業譲渡し、同社はSUMCOとなっている。

三菱金属の日本電子金属と、チッソの日本シリコンが三菱マテリアルシリコンとなり、
シリコン ユナイテッド マニュファクチュアリング(住友金属工業・三菱マテリアル・三菱マテリアルシリコンのシリコンウェーハの開発・製造JV)と合併、三菱住友シリコンマテリアルになった。

ーーー

<p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p>コマツの子会社で半導体用シリコンウェーハのメーカーのコマツ電子金属は、 2006年にTOBでSUMCOの子会社となり、2007年にSUMCO TECHXIVと改称、2008年にSUMCOの完全子会社となった。

同社は1960年に多結晶シリコンの外販を開始し、1963年には多結晶シリコンからシリコンウェーハまでの一貫体制を確立した。<p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p>(1993年に平塚工場での多結晶シリコンの製造を停止。)

1990年にアメリカのUCC&P社の多結晶シリコン事業部門を買収、Advanced Silicon Materials を設立した。
しかし、コマツは2005年にAdvanced Silicon Materialsの75%をノルウェーのRenewable Energy に売却した。
(25%はコマツが所有するが、議決権、配当受領権はなく、Renewable Energyが予め決めた価格で買収するオプションを持っている。)

ーーー

新日鐵製鉄

2006年6月、多結晶シリコン製造技術の研究開発の目処がついたことから、事業会社を設立し、実機プラントの建設に着手すると発表した。

社名はNSソーラーマテリアルで、新日鐵・八幡製鐵所内に約40トン/月の工場を建設、2007年度下期からせ遺贈開始する。
同社には新日鉄マテリアルズ51%、シャープが44%出資する。

生産コストを最大5割低減できる製法を開発したとしており、年産2000トン規模の新工場を2010年にも建設する方向。

ーーー

JFEスチール

2006年7月に、太陽電池向けシリコン原料製造技術の確立および実機プラント建設を発表した。

太陽電池向けインゴット(ウエハー)製造に用いるシリコン原料(SOGシリコン)の製造技術を確立し、実機プラント(年産100トン)の建設に着手する。また、量産プラントの設計も開始した。

SOGシリコン(Solar gradeシリコン)は、シーメンス法により化学プラントで CVDプロセス(化学的気相成長法)を用いて製造され半導体用ウエハーとして使用されるポリシリコンに対し、冶金法により太陽電池用にのみ対応可能な品質レベルのシリコン原料。

同社は2004年にシーメンス法での太陽電池用多結晶シリコンインゴットの生産能力を800トン/年に倍増している。

2001年4月に200トンで製造開始、太陽電池市場の拡大により2002年に400tに拡大した。

ーーー

2008年5月、チッソ、新日鉱ホールディングス、東邦チタニウムの3社は、新日本ソーラーシリコンを設立し、総額約240億円を投じて茨城県鹿島コンビナート内に太陽光発電用ポリシリコンの量産工場を建設すると発表した。

2007年1月から共同で独自の亜鉛還元法(JSS法)による太陽光発電用途ポリシリコン製造技術の実証化に取り組んできたもの。

チッソ 50%、新日鉱ホールディングス 30%、東邦チタニウム 20%の出資で、第一期 400トンを2010年に稼動させ、第二期として2010年以降 3,000トンまで増設する。

亜鉛還元法(JSS法)はシーメンス法と同じ塩化法によるもので、太陽光発電用途に十分な性能である8N~9Nの高純度ポリシリコンを生産することができる。

 


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三菱商事と三井物産は本年6月30日、西豪州LNG事業に関し移転価格税制に基づく更正通知(2002年3月期分)を東京国税局より受領したと発表した。

両社は2005年に、2000年3月期から2005年3月期の6事業年度について東京国税局から移転価格税制に係る調査を受け、除斥期限(時効)が到来する期の更正通知を順次受けている。

問題になっているのは、両社が共同出資したオーストラリアの合弁会社に対する情報提供や経営指導などに関する取引。

両社の50/50出資の豪州法人 Japan Australia LNG (MIMI) は日本の買主へLNGを、豪州国内向けに天然ガスを、また国際市場にコンデンセート、原油、LPGを販売している。

この法人の販売損益そのものは豪州に帰属し、日本には(配当送金があるまでは)課税権がないため、情報提供や経営指導料を査定して課税するものと思われる。

2008/7/3 三菱商事と三井物産、移転価格税制で更正通知

ーーー

両社はこの処分を不服とし、東京国税局に異議申立を行うと共に、二重課税の排除を求めて日豪租税条約に基づく相互協議の申立を行った。

12月3日、両社は、相互協議が合意に達した旨の通知を国税庁より受領したと発表した。

この結果、両社は東京国税局から過年度の更正について一部減額更正を受ける一方で、豪州の関係会社は、豪州税務当局から一定の税還付を受けることになるとしている。

詳細の発表がないので不明だが、おそらく、両国の税当局が情報提供・経営指導料で合意したものと思われる。

日本では一定の収益を計上、それに基づく税額と更正額との差額が減額更正される。
豪州ではその分の費用計上を新たに認め、減益分相当の税還付を受ける。

これにより、残りの年度のものについても、事前価格確認制度に基づく相互協議を通じて、二重課税の回避を図る。

 


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原油価格下落続く

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12月2日のニューヨーク原油先物市場のWTI原油価格終値は46.96ドル/バレルと、今年の最安値となった。

12月1日夜の時間外取引で今年最安値の47.48ドル/バレルをつけたが、2日の取引では一時46.82ドルまで下がり、期近物では2005年5月以来約3年半ぶりの安値となった。
7月11日に一時つけた最高値147.27ドルからは100ドル以上の値下がりとなる。

2日の東京市場のドバイ原油はWTI原油の時間外取引の安値を受けて、前日の48.35ドル/バレルから6ドルも下がる42.35ドルとなり、3年10ヶ月ぶりの安値となった。

 


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ダウとクウェート石油子会社PICは12月1日、合弁会社設立契約と付随契約に調印したと発表した。

両社は昨年12月に計画を発表している。

2007/12/19 ダウとPIC のグローバル石化JV 詳報

設立する合弁会社はK-Dow Petrochemicals で、出資比率は50:50。2009年1月1日に営業を開始する。
ダウの既存事業を移し、ポリエチレン、エチレンアミン、エタノールアミン、ポリプロピレン、ポリカーボネートを製造販売し、ポリプロピレンの技術ライセンス、関連触媒の販売を行なう。

新会社は今後の中国、ベトナム、インドなどでの新計画でクウェートの安い石油を、また、クウェート、エジプト、リビヤ、ロシアなどで天然ガスベースのエタンを利用する。

事業価値は当初190億ドルと評価していたが、情勢の悪化を受け、174億ドル(運転資金等を含む)に引き下げた。

新会社は設立後に、両社に15億ドルずつの特別配当を支払う。

PICは新会社参加で75億ドルを支払い、配当15億ドルを受け取るため、ネットで60億ドルの支払いとなる。
ダウは事業売却額マイナス出資で75億ドル、配当15億ドルで、合計90億ドルを受け取る。
税引後では70億ドルとなる。

新会社は借入金33億ドルでスタートする。

ダウとPICは2004年に2つの50/50JV、MEGlobal(エチレングリコールの製造販売)、Equipolymers(PETレジン製造販売)を設立しているが、これらは新会社に移される。

新会社の予想売上高は110億ドルで、MEGlobal とEquipolymers の売上高を加えると、150億ドルとなる。

新会社設立については、既に米国とEUの独禁法当局、米国の対米海外投資委員会の承認を得ている。
Kuwait 政府のSupreme Petroleum Council
もこれを承認している。

ダウのAndrew N. Liveris は、これはダウを収益力ある成長企業に変身させる大きな一歩とした。基礎化学品事業をJVを通じて成長させる戦略(Asset light strategy)の大きな一歩であり、投資額を減額し、税引前90億ドルの収入を得て機能化学事業に投資を回すことが出来ると述べた。
2009年初めにはRohm and Haas
買収を完了し、次の一歩に踏み出す。

実際にはダウは今回の収入を、Rohm and Haas 買収(153億ドル)に伴う130億ドルの借入金の返済に充てる。

なお、ダウは最近の需要減退を受け、年末までにリストラ計画を発表するとしている。


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INEOS は200610、欧州でバイオディーゼル事業を積極的に展開する戦略を発表した。

第一段階として、2012年までに200万トン、うち2010までに120万トンを生産する。
これは欧州各国のグリーン燃料を増やすという方針に合致したもの。

INEOSは欧州で予想されるバイオディーゼルの需要の急増に対応する最初の全欧州のサプライヤーになるとし、最新の技術で高品質で競争力のあるワールドスケールの工場を建設するとした。

スコットランドではGrangemouth90百万ドルを投じて最低50万トン/年の工場を2008年までに稼動させる。
このほか、ベルギーのAntwerp 、フランスのLavera、ドイツのWilhelmshaven 又はCologne での投資を考えている。
これは
消費地の近くで生産を行なうという方針に基づくもの。

同社は既にフランスのBaleycourt (菜種油の産地)で10年以上、バイオディーゼルを生産しており、2008年にこれを増設する。

Grangemouth Lavera にはINEOS製油所があり、Grangemouth では超低硫黄のディーゼルとガソリンをスコットランドとイングランド北部に供給しており、Lavera の石油製品はフランス、スイス、ドイツ南部に供給している

ーーー

2006年12月には同社はAntwerp での建設計画を発表した。
90百万ユーロを投じ、少なくとも50万トン/年のプラントを建設する。
工場ではバイオディーゼルの副産品のグリセリンを使用する。また、第三者による新しい食用油抽出工場を近くに建設する計画で、同地をバイオの中心地(Bio-hub)とする。

ーーー

しかし、同社は本年11月28日、現下の経済情勢のため、上記の欧州でのバイオディーゼル4工場の建設を棚上げすると発表した。
今後も景気後退が続くと考え、全事業にわたり、コストと投資の管理を厳しくする。

Ineos ではバイオディーゼル計画をやめるのではなく、経済情勢をみて延期するだけだとし、既存のフランス Baleycourt の増設は予定通り進めており、年末には22万トンになるとしている。

借入金で買収を行い拡大を続けてきたIneos は金融危機で格付けが引き下げられ、需要の激減の結果、金利の支払いにも苦しんでおり、銀行団に半年間の金利支払停止を要請した。

2008/11/19 Ineos の状況悪化

ここにきて、従来の既存事業を担保にした借入金での買収・新増設による拡大という事業モデルは破綻した。
拡大をやめるだけではなく、多くの事業の売却が必要とする見方が多い。

ーーー

EurObserv'ER の「Biofuel Barometer 2007」によると、2006年の欧州のバイオ燃料の消費量(石油換算)は以下の通りで、バイオディーゼルは前年比で80%増となっている。

うち、ドイツが63%を占めている。
ドイツではバイオ燃料への完全な免税措置が実施されているのが大きな理由。(フランスでは一部免税)

                         単位:千トン(石油換算)
  2006   2005
合計 うち
ドイツ

フランス
  合計 うち
ドイツ

フランス
バイオエタノール   872   306   149     556   145     75
バイオディーゼル  4,045  2,532   589    2,247  1,548    344
その他   664   638       0     190   173     0
合計  5,581  3,475   739    2,993  1,866   419
 
http://www.energies-renouvelables.org/observ-er/stat_baro/barobilan/barobilan7.pdf

 * 欧州委員会の換算率:
    バイオエタノール
  1 トン=0.64 石油換算トン
    バイオディーゼル 
1 トン=0.86石油換算トン

全燃料のうち、バイオ燃料の比率は2005年が1%2006年が1.9%となっている。

但し、EUのうち2006年のバイオ燃料の消費量が10万トンを超えるのはドイツ、フランスのほかは、オーストリア(285千トン)、スウェーデン(229)、イタリー(177)、英国(177)、スペイン(169)の合計7カ国に過ぎず、1万トン未満が10カ国もある。

EU2010年の輸送用燃料のバイオ燃料の占める割合の目標を5.75%としているが、目標達成には多くの難関がある。

現在のEU 最大のバイオディーゼル生産企業は、フランスのDiester Industrie で、2006年の生産能力は約71 万トンだったが、2008 年末には総計200 万トンあまりの生産能力を持つことになる。

EU のバイオディーゼルの原料として主に菜種油で、80%を超えている。


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中国の反壟断法(独占禁止法)は本年81日施行された。

2008/8/4 中国、独占禁止法施行

独禁法では国内の競争を制限する独占は、国外での合併でも規制の対象となる。
買収や統合にかかわる企業の売上額が「経営者統合の申請基準に関する国務院規定」で示された一定の基準を超えていた場合、法第21条により、申告をする必要がある。

BHP Billiton Rio Tinto 合併に関して、7月初めに商務部に申請を行なっている。

これに対して日本の公取委は8月以来、領事送達や郵送による書類の送付で報告命令を出しているが、BHP Billton は受領を拒否していた。

このため公取委は9月に公示送達の手続を採ることとしたが、1114日になって、ようやくBHP から資料を受け取った。(提出がない場合は罰金などの処分を科す可能性もあった。)

BHP Billiton 1125日、買収断念を発表、独禁法問題も終息する。

ーーー

本年6月にベルギーのビール会社 InBev Budweiser で知られる世界3位のAnheuser Busch に買収を提案した。

InBev 2004年にベルギーのInterbrew とブラジルのAmBev が合併してできた。
2007年売上高は144億ユーロ。

Anheuser Busch は米市場で48.5%のシェアを持ち、中国の青島ビールにも出資している。
2007年売上高は167億ドル。

InBev は1118、買収完了を発表した。買収総額は520億ドルであった。
InBev は同日付で社名をAnheuser-Busch InBev
と改称した。
年間売上高は約
360億ドルに達する。

10月27日、中国商務部は InBevによるAnheuser Busch 買収の反壟断法による申告を受理した。

商務部は11月18日、これを以下の条件付きで許可する通告を出した。

 (1)青島ビールに対するAnheuserの株式保有率27%を増加してはならない。

 (2)
InBev の主要株主もしくは主要株主の株主に変化が発生した場合には、ただちに商務部に通告すること。

 (3)珠江ビールに対する
InBevの株式保有率28.56%を増加してはならない。

 (4)華潤雪花ビールと北京燕京ビールの株式保有を求めてはならない。
     華潤雪花は華潤創業と米
Miller の合弁会社で中国販売量ナンバーワンビール(シェア15%)

 (5)上述の条件に反する業務を求める場合、商務部が認可するまで実施してはならない。

中国には多くの海外ビールメーカーが進出していることもあるが、かなり厳しい制限である。
今後のケースのモデルになると思われる。


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