2023年3月アーカイブ

東芝は元役員に対し損害賠償の訴訟を行っていたが、東京地裁は3月28日、判決を言い渡した。


東芝は当時の西田厚聰社長(故人)、佐々木則夫社長、田中久雄社長、村岡富美雄副社長、久保誠副社長に対し、合計32億円を連帯して支払うよう求めていた。

同社は本件に関し金融庁に課徴金73億7350万円を支払い、過年度決算の修正に係る監査作業で監査法人に20億7153万の監査報酬を支払った。

このうち、課徴金分で29億円、監査報酬分で3億円、合計32億円を連帯して支払うよう求めた。

別途、株主代表訴訟で個人株主がインフラ事業グループ担当だった北村秀夫副社長と真崎俊雄副社長など他の歴代幹部10人を訴え、合わせて審理された。

これに対し旧経営陣側は、会計処理の違法性を否定し、「注意義務違反はなかった」と争う姿勢を示していた。

京地裁は元役員のうち佐々木、田中両社長、久保北村、真崎副社長の5名に3億860万円の支払いを命じる判決を言い渡した。不正会計問題で旧経営陣の個人責任が認められた判決は初めて。

会社提訴のうち佐々木氏と田中氏の認容額は各1億円、久保氏の認容額は2億円で4億円だが、連帯負担のため合計2億円となる。代表訴訟での2人が1億860万円となる。

西田氏、村岡氏に対する請求は棄却された。

判決はインフラ工事での損失引当金の過少計上などを米国会計基準に反する違法な会計処理だったと認定し、田中元社長や佐々木則夫元社長ら5人は「違法な処理を認識でき、是正する義務を怠った」などと結論付けた。 久保氏については1件で「引当金の先送りを提案した」、田中氏は2件で「違法処理を助長する指示をした」と認定した。

しかし、パソコン事業での利益のかさ上げなどは会計基準違反に当たらないと判断、西田厚聡元社長らの賠償責任は認めなかった。
東芝は同日、「今後の対応は判決内容を精査し、代理人と協議のうえ決定する」とのコメントを出した。

東芝による損害賠償の請求は下記の通り。 黒塗り部分は対象外で、それ以外は各金額を連帯で負担することを求めた。

2015117日 提訴 

2016年1月27日付 追加   

判決
連帯して3億円 課徴金分対応追加 26億円 監査報酬対応 3億円
西田厚聰 部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上

連帯

請求
棄却

佐々木則夫 地下鉄向け電車用電機品の納入受注損失引当金計上
部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上
不適切な
経費計上時期
1
田中久雄 WECの発電所建設における損失引当金の計上 
ETC 設備更新工事における損失引当金の計上
部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上
不適切な
経費計上時期
1億
村岡富美雄 部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上 請求
棄却
久保誠
WECの発電所建設における損失引当金の計上 
地下鉄向け電車用電機品の納入
受注損失引当金計上
ETC 設備更新工事における損失引当金の計上
部品取引(Buy-Sell取引)における利益の計上
不適切な
経費計上時期
2億
15億円 8億円 2億円 1億円 1億円 2億円 連帯
4億円


上限
2億円  
対象事案により嵩上げされた営業利益額の割合を勘案 事案数にそれぞれの事案の修正年度数を乗じた数の合計を監査のために要した総工数で割った。

東芝は少なくとも2009年3月期から、7年間にわたり巨額の利益をかさ上げしてきた。累計額は2306億円にのぼる。

東芝では2008年ころから「チャレンジ」と呼ばれる経営陣の無茶な業務目標の強要が始まった。各部署に、短期間ではおおよそ達成不可能な利益目標を示し、圧力をかけた。下請けや関連会社にも「チャレンジ」を押し付け、協力金を要求した。

Lehman shock での大赤字で西田社長が 赤字の映像事業撤退却の脅しをかけ、「テレビ事業の黒字化は社長の公約、あらゆる手段で黒字化を」と述べ、パソコン部品の押し込みで黒字化 したのが始まりとされる。

Buy-Sell取引で、部品供給価格で利益を計上、押し込み販売を行った。 

2012年には佐々木社長がパソコン責任者に「3日間で120億円の営業利益改善」を要求した。ノーマル化の提案に対し、「会社が苦しいときにノーマルにするのは会社にとって良くない」 と述べたとされる。

小笠原 啓 東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇

2015年1月に社員が証券取引等監視委員会に内部告発し、不正会計問題が明らかになった。

粉飾額は最終的に2306億円となった。 (下表の「修正前」は粉飾決算の数字)

2015年5月に発足した第三者委の調査によって、コーポレートガバナンス(企業統治)が骨抜きにされ、「チャレンジ」という名のパワーハラスメントが横行していたこと が浮き彫りになった。

内部統制すべき経理部がチャレンジ原案作成していたこと、取締役会、監査役会、会計監査人がチェック機能 を果たしていなかったことが分かった。上司の意向に逆らえない企業風土であった。

2015年12月に金融庁が新日本監査法人に行政処分を行った。法人に21億円の課徴金に新規契約業務の3カ月間停止、担当公認会計士に6ヶ月~1ヶ月の業務停止命令が出た。


東芝は2016年12月27日、
前年末のStone & Webster (S&W) 買収で数十億ドル規模の「のれん」計上の可能性が生じたことを明らかにした。

2016/12/30 東芝、Stone & Webster買収で数十億ドル規模の「のれん」計上の可能性

日本産業パートナーズによる東芝TOBにつながる。

ソニーグループとパナソニックホールディングスの有機EL事業を統合して設立されたJOLEDは3月27日、東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てを行ったと発表した。

負債総額は約337億円。

JOLEDが培った有機発光ダイオード(OLED)ディスプレーの技術や知的財産権を継承することなどで、ジャパンディスプレイと基本合意した。

ジャパンディスプレイはJOLEDの設立時に株式15%を取得したが、2020年3月に全株式を譲渡し、現在は資本関係がない。

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同社は有機 EL ディスプレイの量産開発加速及び早期事業化を目的として、ソニー及びパナソニックの有機 EL ディスプレイの開発部門を統合して、2015 年1 月に事業を開始した。

官民ファンドの産業革新機構は東芝とソニー、更に日立ディスプレイズ中小型の液晶パネル事業を統合させ、機構が2000億円を出資して「ジャパンディスプレイ」を設立した。最大顧客の米アップルが iPhone の新モデルで初めて有機ELを採用したことから、ジャパンディスプレイも有機EL事業の進出を図り、2015年1月にソニーとパナソニックの有機ELディスプレイパネルの開発部門を統合し発足したJOLEDに15%を出資した。
ジャパンディスプレイは2016年12月にJOLEDに51%の出資とすることを決めた。


経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は2020年1月31日、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントから最大1008億円の出資を受け入れる方向で最終契約を結んだと発表した。

2020/2/3 JDI、いちごアセットマネジメントと最終契約

ジャパンディスプレイ(JDI)は2023年2月10日、筆頭株主のいちごトラストの支援をうけ、借入金1016億円を圧縮し、ゼロにすると発表した。

2023/2/13 ジャパンディスプレイ、株式転換や債権放棄で無借金会社へ 

JOLEDは、RGB印刷方式による21.6型4K高精細の有機ELパネルを世界で初めて製品化し、2017年12月5日より出荷を開始した。
大画面に均一に一括塗布する設備技術・プロセス技術の実用化とともに、光取り出し効率が高い独自の「トップエミッション構造」により、優れた色再現性や広視野角を実現した。

住友化学が開発した高分子発光材料を使用する。印刷方式は蒸着よりコストが安い半面、パネルが大型になるほど均一に材料を塗布するのが難しかったが、これを使えば塗布のムラができにくくなる。 

ジャパンディスプレイは2016年12月にJOLEDに51%の出資とすることを決めたが、中期経営戦略の見直しに伴い、2018年3月30日、JOLEDへの51%出資方針を取り消した。

JOLEDは2018年8月23日、第3者割当増資により、総額470億円を調達したと発表した。引受先の内訳はデンソーが300億円、豊田通商が100億円、住友化学が50億円、SCREENファインテックソリューションズが20億円。

  当初 増資
産業革新機構 75% 196億円  
ジャパンディスプレイ 15% 39億円  
Sony 5% 13億円  
Panasonic 5% 13億円  
デンソー     300億円
豊田通商     100億円
住友化学     50億円
SCREEN     20億円
合計   262億円 470億円

2018/3/24 デンソー、JOLEDに300億円出資

その後、ジャパンディスプレイの経営悪化に伴い、2019年に447億円の支援と引き換えにジャパンディスプレイの持つJOLEDの全株式が産業革新機構から新設分割されたINCJに譲渡された。

JOLEDは2020年6月、中国ハイテク企業TCL Tech傘下のディスプレイパネルメーカー、TCL華星光電技術(TCL CSOT)と資本業務提携契約を締結した。華星光電日本を引受先とする第三者割当増資により200億円を調達するとともに、独自の印刷方式有機ELディスプレイ製造技術を活用し、TCL CSOTとテレビ向け大型有機ELディスプレイの共同開発を開始した。

今回、ジャパンディスプレイが発表した同社株主は下記の通り。

INCJ:56.8%  2018年9月、産業革新機構から新設分割
デンソー:16.1%

華星光電日本:8%

産業革新機構→INCJは設立前から支援しており、支援総額は約1390億円。さらなる支援が必要だが、「追加出資は望めない事態に至った」としている。

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JOLEDは2019 年11 月には、能美事業所において、世界初の印刷方式有機 EL ディスプレイ量産ラインの稼働を開始し、高性能・高品質な有機 ELディスプレイを、ハイエンドモニター、医療用モニター、車載向け等に生産するとともに、フレキシブルディスプレイやフォルダブルディスプレイの実用化に向けた研究開発も進めてきた。

しかしながら、安定した生産に想定以上のコスト・時間を要したほか、世界的な半導体不足による影響に加え、高性能・高品質ディスプレイ需要の伸び悩みや価格競争の激化により同社を取り巻く状況は厳しさを増した。

2020年6月、中国ハイテク企業TCL Tech傘下のディスプレイパネルメーカー、TCL華星光電技術(TCL CSOT)と資本業務提携契約を締結したが、収益が伸び悩むとともに、資金流出が続いた。

JOLEDの業績推移
売上高営業利益純利益利益乗余金
2018/3 5600万円 -149.19億円 -147.84億円
2019/3 14.42億円 -247.53億円 -259.04億円
2020/3 18.57億円 -284.07億円 -372.53億円
2021/3 59.08億円 -310.65億円 -877.85億円
2022/3 56.55億円 -211.18億円 -239.26億円 -1197.87億円


量産ラインを本格稼働した2021年3月期には年売上高約59億800万円を計上した。しかし、量産ラインの立ち上げが想定よりも遅れ、稼働率は低位にとどまっていた。

加えて中型有機EL自体が新しく、既存の液晶と比較して価格が高いこともあって、顧客側の本格採用の意思決定にも時間を要し、2022年3月期の年売上高は約56億5500万円に減少した。
損益面も量産稼働による労務費負担等もあって、赤字計上が続き、債務超過に転落していた。

同社は2021年3月、資本金をそれまでの877億円から1億円に減資した。資本金1億円以下の企業は税制上、中小企業とみなされることから、税負担を軽くする事が目的で、悪化する財政の健全化に向けた判断とした。

今回、このまま自力で事業継続した場合、能美事業所や千葉事業所の撤退費用を捻出することも困難となるため、裁判所の関与の下で当社の事業の再生を図ることがもっとも適切であると判断し、民事再生手続開始の申立てを行うに至った。

今後、技術開発ビジネス事業については、ジャパンディスプレイの支援の下、再建を図る。他方、製品ビジネス事業(製造・販売部門)については、維持・継続に多大なコストを要する一方、早期かつ抜本的な収益改善の道筋がたっておらず、同事業をこれ以上継続することは困難であることから、能美事業所(石川県能美市)、千葉事業所(千葉県茂原市)は閉鎖し、同事業から撤退することとした。

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半導体もそうだが、液晶ディスプレイ(ジャパンディスプレイ)も有機EL(JOLED)も日本の家電メーカーが自社の原料の自製でスタートした。外部の需要家を対象としないため、小規模のまま行き詰まり、政府の支援を受けた。
これに対し、インテルやTSMC、サムスン等は世界の需要家を相手に、事業家であるトップの判断で積極的に大規模投資を早期に行い、事業を拡大している。

幸いにもジャパンディスプレイは、日本開発銀行客員研究員やモルガン・スタンレー証券の株式統括本部長を務めたScott Callon 氏が2006年5月に設立した「いちごアセット」が救済に乗り出したが、日本的経営ではこの種の事業はやっていけないのは明白である。

韓国のLG Energy Solutionは3月24日、米アリゾナ州での工場建設計画を再始動すると発表した。

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同社は2022年3月24日、1兆7000億ウォン(約1700億円)を投じて米アリゾナ州に電池工場を建設すると発表した。2024年の稼働を目指す。

生産能力は11 GWhで同社の米工場として初めて円筒形電池を手掛ける。Teslaと米新興EVメーカーのLucid MotorsはEVに円筒形電池を搭載している。

しかし、同社は2022年6月29日、この計画について査定し直すとした。米国の異例な経済情勢と投資環境によりさまざまな投資の選択肢を見直しているとした。

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今回同社は、米アリゾナ州Queen Creek の電池工場建設について、投資規模を7兆2000億ウォン(55億ドル、約7200億円)と大幅に増やし、計画を進めると発表した。

建設費高騰などで計画をいったん止めていたが、需要の高まりやInflation Reduction Act での補助金支給の動きも踏まえ、生産規模を増やして再起動させる。

車載用の円筒型電池生産棟(投資額4兆ウォン)と、エネルギー貯蔵装置(ESS)向けパウチ型リン酸鉄リチウムイオン電池生産棟(投資額3兆2000億ウォン)を建設する。

2023年着工で、それぞれ2025年と2026年の稼働見込み。生産能力は車載向けにEV35万台分に相当する27GWh、ESS向けに16GWhを確保する。

世界の電池メーカーの中でESS向け専用の電池工場を建設するのは同社が初めてという。

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TeslaのEVには、パナソニック製の円筒型セルが採用されてきた。
「Roadster」や「モデルS」、「モデルX」にはノートパソコンなどに使われていた直径18mm×長さ65mmの「18650」と呼ぶセルが、モデル3には直径21mm×長さ70mmの「2170」と呼ぶ電気自動車向けセルが採用された。

パナソニックはTeslaからの要請で新型電池「4680」を開発中で、「技術的な面ではほぼ完成した」としている。「4680」は直径46mm、長さ80mmの円筒形電池で、「2170」から電池容量を5倍に高めることができる。

LG Energy Solutionは2022年6月にTesla向けに新型4680円筒形バッテリーを生産する同社の梧倉第2工場の生産容量を9GWh分増強すると発表している。

韓国紙によると、LG Energy Solutionが今回、一旦中止したアリゾナ州での工場建設計画を再始動すると発表したのは、LGとTesla とのバッテリー供給協議がまとまったからではないかという。

別途、 LG Energy Solutionはトヨタとの間でも電池供給の交渉をしていることを明らかにしている。

Teslaは1月24日、巨大電池工場を運営する米西部ネバダ州Renoに36億ドルを追加投資すると発表した。新バッテリー工場では最新のバッテリーセル「4680」を製造し、生産能力は年間で最大200万台分となる予定。この工場ではパナソニックとTeslaのJVが電池を生産しているが、今回の増設はTeslaが単独で実施するとみられる。
Teslaは2022年2月にFremontのパイロットプラントで4680の電池を生産したことを発表している。

Teslaが電池を自製する理由としては、バイデン政権が決めたインフレ抑制法が考えられる。条件を満たした車載電池メーカーに対し「先進製造業生産控除」と呼ばれる補助金が1キロワット時当たり35ドル割り当てられる。

JV方式では、Teslaとパナソニックはこれを折半することとなる。今後、Teslaが単独で生産する場合、利益は大きい。

2023/1/31 テスラ、米ネバダ州でEV電池増産 36億ドルを追加投資

さらに、Teslaは将来的には航続距離が標準的なモデルの車載用電池については、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池に世界的に移行する計画だとしている。Teslaは現在、米国ではパナソニックのNCM(ニッケル・コバルト・マンガン)電池を使用しているが、中国では寧徳時代新能源科技(CATL)から供給されるLFP電池を使用している。

LG Energy SolutionがTeslaを主な供給先として投資を決めたとしても、パナソニックと競合するうえ、Tesla自身とも競合することになる。

ただでさえEVメーカー自身による電池生産計画が相次ぐ中、車載電池メーカーに多額の補助金が支払われることとなり、この動きはひろまるだろう。電池メーカーの立場は苦しいものになる可能性が強い。

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LG Energy Solutionの北米での電池工場は下記のとおりとなる。

単独:Michigan、Arizona(今回)
GMとのJV:Tennessee、Ohio、Michigan
StellantisとのJV:カナダOntario
ホンダとのJV:Ohio

2023/3/7 ホンダとLGの米バッテリー工場 起工式 

日本産業パートナーズは3月23日、東芝を株式公開買い付け(TOB)で非公開化することを目指すと発表した。

東芝もTOBを受け入れると発表したが、価格が想定より低かったことから、現時点で応募を推奨するか否かについては意見を表明せず、TOB開始までに方針を決める。

付記

東芝は6月8日、日本産業パートナーズなど国内連合による東芝へのTOBについて、株主に対して応募を推奨すると発表した。


また東芝側は他陣営からの、より有利な買収提案を引き続き受け付けるとしている。

日本産業パートナーズは、発行済株式全て(自社株を除く)の買収を目指す。買付の下限を66.7%に設定した。1株4620円の買付で、総額は約1兆9987億円となる。     

買付予定株数 432,630,045株
下限(66.7%) 288,564,300株

  TOBが成立しても100%でない場合は、完全子会社とするためのスクイーズアウト手続を実施する。

TOB価格4620円は 、3月23日の終値4213円に9.7%のプレミアムを乗せた水準となる。

日本産業パートナーズが優先交渉権を得た2022年11月に提示した価格は5200円だった。
その後、東芝が業績見通しを下方修正したことを受け、2023年2月に4710円に引き下げた。
東芝は再度見通しを下方修正したため、3月に4610円に下げた。

単位:億円 2021年度実績

2022年度予想

2022/5/13 2022/11/11 2023/2/14
売上高 33,370 33,000 33,500 33,200
営業損益 1,589 1,700 1,250 950
当期純損益 1,947 1,750 1,900 1,300


その後の交渉で10円を上積みし、4620円とした。

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2021年4月7日に英投資ファンドのCVC Capital Partnersが買収を提案した。前日6日の終値3830円に31%のプレミアムを加え、1株5000円での買い取り価格を提案した。
東芝は4月19日に
CVCから新たな書面を受領したもののなんら具体的な詳細情報が記載されておらず、東芝は買収交渉の中断を発表した。

2021/4/14 英投資ファンド、東芝に買収提案 

今回のTOB価格4620円は3月23日の終値4213円に9.7%のプレミアムを乗せた水準となるが、現在の株価は既に買収を折り込んでいる。

2021年のCVC Capital の買収提案前の株価との対比では20.6%の上乗せとなる。

今回の発表を受け、3月24日の東芝株は一時前日比6.4%高の4483円を付けた。

日本産業パートナーズは、出資金1兆円、銀行融資1兆2000億円の合計2兆2000億円を集めたとされる。このほか、新東芝が運転資金を引き出せる2000億円のコミットメントライン(融資枠)も得ている。

関係者の話では、参画する企業は下記のとおりとされる。

オリックスが出資と融資で最大3000億円程度
中部電力が1000億円弱を出資
JIP自身も1000億円を出資
ロームの投資額は最大で3000億円規模と参加企業で最大級  半導体の原材料調達や生産での協業を探る
スズキも数百億円を出資  東芝から車載リチウムイオン電池を調達
大成建設も出資する見通し

付記

オリックスは5月10日、東芝買収について2000億円を拠出すると明らかにした。内訳はエクイティ出資を1000億円、劣後ローンなどを1000億円としている。同社は「東芝の企業価値と経営改善計画の実効性を評価」とコメントした。


東洋経済によると、融資の内訳(融資枠を含む)は次のとおり。合計1兆4000億円のうち、三井系の2行が過半数を負担することで、折り合いがついた。

三井住友銀行(主力行) 5,150億円
三井住友信託(準主力) 2,200億円
(三井系 合計) 7,350億円 52.5%
みずほ銀行 (主力行) 4,600億円 33%
三菱UFJ銀行 1,600億円
あおぞら銀行 450億円
合計 14,000億円 100%

2023/2/14 日本産業パートナーズ、東芝買収の最終提案を提出

今回、2兆円を新東芝への出資に充てるが、出資社は、国内・海外のファンドのほか、国内事業会社17社、国内金融機関6社としている。海外事業会社も出資する。


日本産業パートナーズは7月下旬をめどにTOBを開始する見込みだが、競争法に関連した各種認可が一つ目の壁になり得る。

国外では、米国、カナダ、ドイツ、チェコ、ルーマニア、英国、モロッコ、モンテネグロ、ポーランド、スペイン、ベトナム、インド、サウジアラビア、エジプト、メキシコ、トルコ、オーストリアにおいて競争法上の手続が必要になる。

東芝は原子力事業や防衛事業など国の重要政策に関わる複数の事業を手がけていることから、外国為替法に基づいて国が外資による買収などを規制する対象となっているが(東芝は改正外為法で国が特に重要な「コア業種」として位置付ける原子力事業を抱えている)、今回は日本連合のため、問題はないとみられる。


焦点は、株主の約3割を占める物言う株主らがTOBに応じるかどうかである。

大量保有報告書によると、下記各社を含め全株主の3割強となるとされる。

Effissimo Capital Management 9.9% 筆頭株主
Farallon Capital Management (Chinook Holdings との共同で)5.37%(うちFarallonは2.12%)
3D Investment Partners (Singapore) 2.5% → 7.2% 2位株主に
Elliott Investment Management  買い増しで5%

付記 本発表前に3D Investment Partnersが株式の一部を売却、4.9%になっていたことが判明した。本TOB価格より低価格での売却。

東芝は2022年6月の総会で、Farallon CapitalElliott Investment から1名ずつ、社外取締役を受け入れた。

彼らは2017年12月5日払込の6000億円の第三者割当で株主となった。(その後の買い増しも)

東芝の将来に期待して株主になったのではなく、早期に高値で売りぬくことを目指している。後記のとおり、そのために東芝は振り回された。

この際の払込価格は(その後の株式併合の結果)2628円で、当時のレート(112.59円/$)で換算すると23ドル程度となる。

その後の買い増しなどで簿価は変わっていると思われるが、今回の4620円は130円/$ベースで35.5ドルとなり、損はしていない。 東芝の現状からみて、これよりも有利な案が出るとは考えにくい。多数が応じると思われる。

TOBで発行済株式の2/3以上を取得できれば、株主総会の特別決議で残りの株主から強制的に株式を買い取ることができる。(スクイーズアウト手続 )

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2015年4月に東芝の不正会計問題が発覚した。

2016年12月には米の原発事業で巨額損失が発覚した。当初の見通しよりさらにおよそ2000億円拡大し、7000億円規模に上る可能性があるという見通しを取りまとめた。

2017/1/24 東芝の原子力事業の損失の実態

東芝株式は2017年8月1日、東京証券取引所の第1部から第2部に「降格」となった。2017年3月末時点で債務超過となり、1部上場基準に抵触した。来年3月末までに債務超過の解消、2017年3月期有価証券報告書での適正意見、特定注意市場銘柄指定解除の3つのハードルの全てをクリアできないと上場廃止となる。

2017/8/2 東芝、東証2部降格

東芝は2017年9月20日の取締役会で、東芝メモリの売却先について、Bain Capital が率いる「日米韓連合」にすることを決議した。

売却額は2兆円、税引前利益で1兆800億円を見込む。メモリ事業承継に係る課税影響を加味しても約7400億円の増益が見込めるため、2017年度末には債務超過状態を解消できるとみた。

2017/9/22 東芝、東芝メモリの「日米韓連合」への売却発表 

しかし、各国の独禁法当局の承認が2018年3月末までに取得できなければ、売却益を計上できず、2期連続の債務超過となり、上場廃止となる。

中国の独占禁止法当局が売却案を承認したことが2018年5月17日に分かった。既に日米欧など他の全ての国の独禁法当局の承認は得ている。2018年6月1日に譲渡が完了した。(増資がなければ上場廃止となっていた。)

このため、東芝は11月19日開催の取締役会において、第三者割当による新株式の発行を決議した。新株式の発行総額は約 6000億円で払込みは12月5日に完了する予定。

経営再建の途上にある東芝が、公募増資を実施するのは事実上 困難なため、第三者増資を行う。旧村上ファンド出身者が設立したシンガポールのEffissimo Capital Management や米King Street Capital Managementなど、Goldman Sachs が集めた海外約60社の投資家に割り当てた。

2017/11/24 東芝、増資を決定 

東芝の将来に期待して株主になったのではなく、早期に高値で売りぬくことを目指している。これ以降、東芝は「物言う株主」対策に振り回されることとなった。

2021年4月7日に英投資ファンドのCVC Capital Partnersが買収を提案した。前日6日の終値3830円に31%のプレミアムを加え、1株5000円での買い取り価格を提案した。

2021/4/14 英投資ファンド、東芝に買収提案 

東芝の車谷社長兼CEOが4月14日付で辞任した。

CVCによる買収は車谷社長兼CEOが持ちかけたとみられ、永山治・取締役会議長らは、こうした動きを「私物化」と判断し、取締役会に車谷氏の解任動議を提出する予定だったとされる。

2021/4/14 東芝 車谷社長辞任

東芝は2021年6月、前年7月の株主総会に関する調査報告書を公表し、同株主総会では、経済産業省と一体となって筆頭株主Effissimo の株主提案権の行使を妨げようと画策したなどと指摘されたことを明らかにした。報告書は、株主総会は「公正に運営されたものとはいえない」と結論付けている。

東芝は6月13日に臨時取締役会を開き、6月25日に開催する定時株主総会に諮る取締役選任案や、その後に開催する取締役会で正式に決める執行役選任案の変更を決定し、計4人が退任すると発表した。

2021/6/15 東芝、異例の取締役候補者変更 

6月25日の定時株主総会で、永山治取締役会議長と監査委員会の小林伸行委員の再任案が否決された。当初の13人の候補のうち、2人を事前に下したが、更に2人が否決された。
会長兼社長CEOと副社長1人以外は全て社外取締役となった。

2021/6/26 東芝、株主総会

東芝は2021年11月12日、事業をスピンオフし、3つの独立会社とする方針を決定した。

インフラサービス Co.デバイス Co. をスピンオフし、残る東芝は事業は営まず、キオクシアと東芝テックの株式を保有するというものであった。

2021/11/15 東芝、3つの独立会社に戦略的再編

しかし、「モノ言う株主」から3分割案に反対意見が出るなか、2022年2月7日に「会社を3つに分割する」という方針を一転して見直し、半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とすると発表した。

2022/2/8 東芝 「3分割」を「2分割」に見直し

しかし、3月24日の東芝の臨時株主総会で会社を2分割にするという会社提案は反対多数で否決された。

「2分割案」でビルソルーション3社と東芝テックを「非注力事業」とし、早期の売却対象としたのは、実は、物言う株主(アクティビスト)を満足させようと編み出された側面が強かった。

2022/3/25 東芝株主総会、2分割案を否決 

東芝は2022年4月7日、取締役会を開き、社外取締役で構成する特別委員会を設置し、株式非公開化を含む戦略的選択肢を検討することを決めた。買収を検討する投資家との交渉にも関与し、最良の非公開案を特定するという。

2022/4/8 東芝、2分割案の検討中断、非公開化も検討 エレベーター事業等の売却を再検討

東芝は2022年7月19日の取締役会で、複数のパートナー候補を選定した。非公開化関する提案と、上場維持を前提とした戦略的資本業務提携に関する提案が含まれている。

報道では、下記の各社が選ばれたとされる。

1.産業革新投資機構(JIC) / 日本産業パートナーズ(JIP)

その後、産業革新投資機構(JIC)が日本産業パートナーズ(JIP)との連携を解消する方針であることがわかった。

日本産業パートナーズ(JIP)は国内企業の出資を募り2次入札に臨む方針で、オリックスなどの10社超に対し、東芝への出資に参加するよう打診し、日本企業を交えた連合体での落札を目指している。これに対し、産業革新投資機構(JIC)は、事業会社の参加に消極的で、国内外のファンドとの連携を模索しており、同じく2次入札に進んでいる米Bain Capital と連合を組む方向で調整しているという。

2. 米大手投資ファンド Bain Capital

3. 欧州拠点のCVC Capital Partners

4. カナダのBrookfield

2022/7/22 東芝再編、4陣営に絞り込み? 

日本産業パートナーズ(JIP)などの連合が2023年2月9日、東芝に買収の最終提案を提出した。

2023/2/14 日本産業パートナーズ、東芝買収の最終提案を提出


今回のTOBは、「物言う株主」から株を買い戻すためのものである。

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なお、三菱ケミカル元会長の小林喜光氏は東芝の不正会計が発覚した2015年9月に社外取締役就任、2017年10 月から2020年7月末に退任するまで取締役会議長も務めた。
6000億円増資を決め、後に社長CEO解任直前に辞職した車谷氏を会長として招聘した2017年11月の取締役会では議長であった。

2020年7月の退任会見で「会社が存続するかどうかの中でよくここまで回復した」と語った。

2020年9月の日経ビジネスは「東芝復活までの5年、社外取退任の小林喜光氏が明かす真実」というインタビュー記事を載せている。

6000億円の増資:「債務超過2年で上場廃止になるという制度には問題があると思う。」
 「海外投資家が6割以上を占める状況になり、いい影響もありました。経営が極めてサイエンティフィックになった。」

車谷会長招聘:「議論を進める中で、金融出身者にCEOを担ってもらい、株主との対話を重視しながらも成長戦略を実行できる人物がいいという話になった。」


 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00112/090200015/


米連邦準備理事会(FRB)は3月21~22日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ 4.75~5.00%とした。

一部では、米銀2行(3月10日のSilicon Valley Bank、12日のSignature Bank)の経営破綻を受け、追加利上げを一時停止する可能性も噂されていたが、金融システム不安がくすぶるなかでも、インフレを抑えこむ決意を打ち出した。

11 w
2018/12 2.25%~2.50% +0.25%
2019/7 2.00%~2.25% -0.25%
2019/9 1.75%~2.00% -0.25%
2019/10 1.50%~1.75% -0.25%
2020/3 1.00%~1.25% -0.50%
2020/3 0.00%~0.25% -1.00%
2022/3 0.25%~0.50% +0.25%
2022/5 0.75%~1.00% +0.50%
2022/6 1.50%~1.75% +0.75%
2022/7 2.25%~2.50% +0.75%
2022/9 3.00%~3.25% +0.75%
2022/11 3.75%~4.00% +0.75%
2022/12 4.25%~4.50% +0.50%
2023/2 4.50%~4.75% +0.25%
2023/3 4.75%~5.00% +0.25%

決定は全会一致。ただ、金融市場が混乱する中、利上げが近く一時停止される可能性があることを示唆した。

インフレを抑制するために今年あと1回の利上げが必要と想定、2023年末の政策金利の予想中央値は5.1%で、昨年12月時から変わらなかった。

しかし、2022年3月のゼロ金利解除以降の声明に「継続的な利上げが適切」との文言を含めていたが、今回、この文言を削除し、代わりに「幾分の追加的な金融政策引き締めが適切になるかもしれない」との文言を採用した。

あと1回の0.25%ポイントの利上げ後は、利上げがいったん停止される可能性があることが示唆された。

物価情勢について「インフレ率は引き続き高止まりしている」と指摘し、インフレ率を2%に引き下げることに引き続き強くコミットすると述べた。但し、「重要なことはインフレ率を2%に引き下げるのに十分な引き締め政策を取ることだ」と強調し、引き締めは利上げだけでなく、金融環境の引き締まりによってももたらされる可能性があるとした。

労働市場については「雇用の伸びはここ数カ月間で上向き、堅調なペースで進んでいる」としている。


パウエル議長は記者会見で金融システム不安に言及し、「この問題がどれだけ深刻で持続的かを検証する」とし、「マクロ経済に重大な影響を及ぼす可能性は十分にあり、それを政策に踏まえることになる」と述べた。

一方で、米金融システムの安定性について繰り返し自信を表明した。

Silicon Valley Bankの経営は大失敗だった。この銀行は非常に急速に事業を拡大させ、流動性リスクと金利リスクにさらした上、そのリスクを回避することをしなかった。保険で保護されない預金の割合や国債などの金利リスクを抱えた有価証券の保有量が異常に高く、アメリカの銀行システム全体の問題ではない。」 

Silicon Valley Bankはスタートアップ業界を顧客としているが、ここ数年で預金残高を急増させ、2018年の約4倍にあたる約27兆円の預金残高となっていた。
同行は2022年からこれを長期債を中心に投資したが、FRBによる繰り返しの利上げで価値が下がり、含み損が増大した。

満期までもっておれば損失は発生しないが、顧客からの解約を受け、売却せざるを得なくなり、巨額の損失を出した。

これが明らかになり、不安を感じた顧客による預金の引き出しが相次ぎ、破綻した。「過度な短期調達、長期運用」が破綻の原因で、事前に問題が指摘されていたが、同行は対策を打たなかった。

「FRBは財務省などと協力して、断固とした行動を取った。これらの行動はすべての預金が安全であることを示す」とし、Silicon Valley Bankの破綻は経営が「ひどく失敗」していたことが原因で、銀行部門の全般的な脆弱性を示すものではないと強調した。

米国では金融機関が加盟する連邦預金保険公社(FDIC)が1口座あたり25万ドルを上限に保護する仕組みがあるが、 Silicon Valley Bank2022年末の預金残高の89%は預金保護の対象外だった。

今回、米規制当局は金融システムの不安を払拭するため、Silicon Valley BankとSignature Bank両行の預金を全額保護する措置をとった。


なお、イエレン米財務長官は3月22日の上院小委員会公聴会で、銀行破綻時の預金の全額保護は検討していないと述べた。

今回の2行の全額保護は例外的な措置であり、今後も個別の影響を踏まえて判断する。

NVIDIAは3月22日、三井物産と協業して、高解像度分子動力学シミュレーションやジェネレーティブAIモデルなど創薬を加速するテクノロジーで日本の製薬業界をさらに発展させるためのAI スーパーコンピュータ「Tokyo-1」を発表した。

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NVIDIA Corporationは、カリフォルニア州サンタクララにある半導体メーカー。1993年に米半導体製造会社のAMD(Advanced Micro Devices)を辞職したJen-Hsun Huang氏(社長兼CEO)等によって設立された。

コンピュータのグラフィックス処理や演算処理の高速化を主な目的とするGPU(Graphics Processing Unit)を開発し販売する。

デスクトップパソコンやノートパソコン向けのGPUであるGeForce
プロフェッショナル向けでワークステーションに搭載されるQuadroやNVS
スーパーコンピュータ向けの演算専用プロセッサであるTesla
携帯電話やスマートフォン・タブレット端末向けのSoC(システム・オン・チップ)であるTegra

また近年は、自動運転技術の開発にも力を入れている。

ソフトバンクグループは2020年9月13日、傘下の英半導体設計 Arm Limited の全株式をNVIDIA Corporation対して最大400億米ドルと評価した取引売却することについて、最終的な契約の締結に至ったと発表した。

しかし規制上の制約が大きく、2022年2月8日、契約を解消したと発表した。

2022/2/9 ソフトバンク、Arm Limited のNVIDIA への売却を断念、Armの株式上場に変更

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「Tokyo-1」は、NVIDIA DGXで構築されたスーパーコンピュータ。NVIDIA DGX™ H100は、第4世代のNVIDIA DGXシステムで、NVIDIA H100 Tensor コア GPU とNVLink Switch System、NVIDIA ConnectX®-7を組み合わせた世界最速のAIシステム。

三井物産は数十億円を投じて複数台購入した。10月にも創薬向けに国内に設置する。三井物産が2021年に設立した創薬支援子会社のゼウレカ(Xeureka)が運営する。

第一段階として、TensorコアGPU「NVIDIA H100」を8基搭載したシステム「NVIDIA DGX H100」が10台以上導入される予定。
DGX H100は、GPUアーキテクチャー「NVIDIA Hopper」をベースとしており、生物学や化学のための生成系AIモデルを含むTransformerモデルの学習を加速させるために設計された「Transformer Engine」を搭載する。

Tokyo-1上でソフトウェア「NVIDIA BioNeMo」を使用することにより、研究者はタンパク質構造の予測、低分子化合物の生成、骨格推定などの用途で、最先端のAIモデルを数百万、数十億のパラメーターに拡張できるようになるとのこと。

まずアステラス製薬、第一三共、小野薬品工業など国内6社が利用料を支払って使えるようにする。2024年3月までに10社まで増やす。

ユーザー企業に「NVIDIA DGX H100」ノードへのアクセスを提供し、分子動力学シミュレーション、大規模言語モデルのトレーニング、量子化学、潜在的な薬剤の新規分子構造を生成するジェネレーティブAIモデルなどをサポートする。

また、ユーザーは生成系AIクラウドサービス「NVIDIA BioNeMo」創薬サービスおよびソフトウェアを通じて、化学物質、タンパク質、DNA、RNAの一般的なファイル形式の大規模言語モデルを活用することもできる。


日本の製薬業界は、COVID-19ワクチンでみられるように、開発競争で遅れをとっている。この問題を解決するための施策の一つとしてAIの導入がある。

新薬の候補となる化合物を絞り込む「創薬研究」では、従来は実際に化合物を合成することを繰り返すため、2〜3年かかっている。スパコンは膨大なデータを使ってオンラインで絞り込むことが可能で、期間を2〜3カ月とこれまでの10分の1以下に縮められる。

しかし、現在の日本では、製薬会社が十分にスパコンを活用する環境が整っていない。マイクロソフトやアマゾンもクラウド上で創薬関連ツールを提供しているが、「空き容量が足りない、利用料が高額になりやすいなどの課題がある」(三井物産)。

三井物産は、英国でのCambridge-1 を参考にした。

NVIDIA は2021年7月、英国で最もパワフルなスーパーコンピュータ Cambridge-1 を発表した。これにより、トップ サイエンティストやヘルスケアの専門家がAI とシミュレーションのパワフルな組み合わせを利用し、デジタル バイオロジーの革命を加速し、世界をリードする英国のライフサイエンス産業を強化する。

設立パートナーである AstraZeneca、GSK、Guy's and St Thomas' NHS Foundation Trust、King's College London、Oxford Nanopore などの英国組織と共に、デジタル生物学によって英国のヘルスケア研究を推進し、疾病のより深い理解と医療の飛躍的進歩を実現することを目指している。


AstraZenecaは
ディープラーニングと AI で新薬の開発を加速、GSKはCambridge-1 の計算リソースを利用して、大規模データベースの遺伝学根拠を活用し、世界を変える医薬品を開発している。

King's College London は人間の脳の人工 3D MRI 画像を合成可能なディープラーニング モデルを作り、さまざまな要因が脳、解剖学的構造、病状に影響を与える仕組みを研究している。

Guy's and St Thomas' NHS Foundation Trust は異種システムから大量の患者データを処理、取り扱い、対応する。

NHS はスーパーコンピューティングのパワーを必要とする AI テクノロジを利用し、データを分析し、クリーンアップしている。

Oxford Nanopore はゲノミクス研究を加速している。

https://www.nvidia.com/ja-jp/industries/healthcare-life-sciences/cambridge-1/



今回、日本で参加する各社の狙いは次の通り。

アステラス製薬: AI や大規模シミュレーションは、低分子化合物の研究以外にも、抗体、遺伝子治療、細胞医療、標的タンパク質分解誘導、次世代ファージセラピー、mRNA 医薬の研究などに幅広く活用できると考えている。

第一三共:AIおよびTokyo-1の最先端のGPUリソースを駆使することで、大規模演算を行い、創薬活動を加速させることができる。医薬品デリバリーの改善、個別化医療など、新たな価値を患者に提供できる可能性に期待。

小野薬品工業:高品質なシミュレーション、画像解析、映像解析、言語モデルなど、利用範囲は非常に広い。

三井物産:製薬業界が計算創薬のための最先端のツールでこの状況を一変させることができるイノベーションハブを構築する。


米エネルギー大手Sempraは3月20日、同社とKKRが70%出資するSempra Infrastructure Partners, LP がテキサス州Jefferson CountyのPort Arthur LNG Phase 1 の投資を決定したと発表した。2027年の稼働を目指す。

Port Arthur LNG Phase 1 プロジェクトは認可済で、2 系列 年間約1,300 万トンの天然ガス液化トレイン、2 つのLNG 貯蔵タンクを持つ。設備投資総額は130億ドル。

ConocoPhillips(500万トン)、RWE Supply and Trading(225万トン)、INEOS(140万トン)、ポーランドのPKN ORLEN S.A.(100万トン)、ENGIE S.A. などと 約1050万トンの長期契約を結んでいる。

ConocoPhillipsは30%を出資する。同社は年間500万トン、20年間の購入契約を締結している。

KKRが運営するインフラファンドGlobal Infrastructure Investors IV fund が25%~49%を出資する。

Sempra Infrastructure Partnersは、KKRの出資比率次第で、20%~30%を出資する。

Sempra Infrastructure は、Port Arthur LNG Phase 2(申請中、2028年稼働予定)のマーケティングと開発を積極的に行っている。ConocoPhillipsはこれについても出資と引取の権利を得ている。

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本事業には当初、Saudi Aramco が参加する予定であった。

Saudi Aramco と米国のSempra Energyは2020年1月6日、Aramco Services Company が Sempra LNG がテキサス州で開発中のPort Arthur LNG export projectに参加する Interim Project Participation Agreement に調印したと発表した。

AramcoがPort Arthur LNG の第1期分 年間1100万トン(その後、1350万トン)のうち500万トンのLNGを20年間引き取るとともに、第1期計画に25%出資する。今後、最終確定し、正式契約を結ぶ。

2020/1/14 Saudi Aramco、米国でPort Arthur LNG計画に参加

しかし、2021年6月に双方が本件を取りやめることで合意した。 この後、KKRが参画した。

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Sempra LNGは北米の5か所でLNGプラントを建設し、グローバルなLNG市場に年間45百万トンのLNGを輸出する目標を立てており、Port Arthur LNGはその一つである。

現在具体化しているのは、次の3つ。

1) CAMERON LNG (Hackberry, Louisiana)

第1期 3基計 1200万トンは昨年出荷を開始した。

同社は次の液化設備(2基)とLNGタンクの承認手続きを開始した。

2019/6/4 キャメロンLNG、出荷開始

2) 本件 Port Arthur LNG (Port Arthur, Texas)

3)ENERGIA COSTA AZUL LNG (Ensenada, Baja California, Mexico)

Sempra LNG とメキシコ子会社 IEnova が既存の輸入LNGのガス化ターミナル(Energía Costa Azul )に液化設備の建設を計画している。

1期は1系列で年間能力 240万トン。LNGタンクやバースは既存のものを利用する。2期では液化設備2系列とタンクを新設する。

Sempraは2019年3月31日、同地での液化のため、天然ガスをメキシコに輸出する連邦政府の認可を取得したと発表した。
TransCanada所有のNorth Baja Pipelineがアリゾナ州ーカリフォルニア州を結んでおり、メキシコ国境でSempra Energyのメキシコのパイプラインに接続する。

2020年11月17日、最終投資決定を行ったと発表した。

Sempraは中国へのLNG輸出を考えている。

2022年12月22日、米国エネルギー省から、米国産のLNG をメキシコから非自由貿易協定 (FTA) 諸国に再輸出する許可を受けた。

 

3月10日に米国でSilicon Valley Bankが、12日にSignature Bankが破綻した影響で、欧米に金融不安が広がり、世界的に金融株が売り込まれた。

米国では金融機関が加盟する連邦預金保険公社(FDIC)が1口座あたり25万ドルを上限に保護する仕組みがあるが、Silicon Valley Bankはスタートアップ業界を顧客としており、2022年末の預金残高約1750億ドルのうち89%に当たる約1560億ドル(約21兆円)は預金保護の対象外だった。

今回、米規制当局は両行の預金を全額保護する措置をとった。

欧州では、かねてより経営不安がうわさされていたクレディ・スイス(Credit Suisse)の株価が急落した。3月15日に筆頭株主(10%出資)の Saudi National Bankの会長がクレディ・スイスに追加出資しないと述べたと伝わると、クレディ・スイス株を一段と売り込む動きが出た。

スイス当局は、スイス第二位の銀行であるクレディ・スイスを救済するためにすぐに動いた。

スイスの投資銀行大手UBSは3月19日、クレディ・スイスを約32億3,000万ドルで買収すると発表した。

買収は株式交換の形で行われ、2023年末までに完了する。3月17日時点でクレディ・スイスの市場価値は約80億ドルとされていたが、これを大きく下回る額となった。

今回の買収取引には、スイス連邦財務省、スイス金融市場監督機関(FINMA)、スイス国立銀行(中央銀行)も協力している。

スイスの財務省は金融最大手UBSによるクレディ・スイス買収をめぐって、リスクを軽減するための支援策を講じると発表した。

具体的にはUBSがクレディ・スイスから引き継ぐ資産の価値が下がり、将来の損失が一定の額を超えた場合、政府がUBSに90億スイスフラン(約1.3兆円)余りの政府保証を行う。

スイス国立銀行は、UBS に1,000億スイスフラン(約14兆円)の流動性支援を行う。

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クレディ・スイスは3月19日、UBSによる買収の一環としてスイス当局の指示の下、160億スイスフラン(172億4000万ドル)相当のAT1債を無価値化すると発表した。スイス金融市場監督機構がAT1債の減損を決めて同社に通知をしたという。

発行体の経営破綻時に借入金や通常の社債などと比べて弁済される順位が低い劣後債のうち、償還期限がない債券を「永久劣後債」と呼ぶが、AT1債は金融機関が発行する永久劣後債を指す。一般に発行から一定期間後に買い戻す条項をつけることが多い。弁済順位が低い分、通常の社債に比べて高い利回りを得られる。

自己資本に算入できるため、国際的な自己資本規制「バーゼル3」の導入以降、発行が相次いだ。米ブルームバーグ通信によると、AT1債の市場規模は世界で約2750億ドルに達するという。

自己資本比率が一定水準を下回るなど銀行が資本不足に陥った場合に金融機関の自己資本に組み入れられる。AT1債の元本は削減され保有する債券投資家は損失を被る。

通常は、AT1 債で損失が生じる前に株主が最初に痛手を受ける。クレディ・スイスも先週の投資家向けプレゼンテーションで言及していた。このため、株式ではなくAT1債の評価をゼロにするという決定に、同行のAT1債保有者の一部から猛反発が起きた。

スイス金融市場監査局は、この決定がクレディ・スイスの資本増強につながると説明、民間投資家に痛みの分担を求めた。

AT1債が無価値となる一方で、返済の優先順位が社債より下位となる株式の保有者は、UBSによる株式交換方式の買収で総額32億3000万ドルを受け取ることになる。

日本の金融庁は「今回は必ずしも破綻処理ではないので株主責任を国が問うた訳ではない。AT1債には『国からの支援策があった場合、元本割れとなる』という趣旨の契約条項が入っており、今回はAT1債のみ抵触した」と説明する。

付記 スイス金融当局の説明 (3/23)

・AT1債の契約上、「存続に関わるイベント」など特別な政府支援が認められた場合には無価値にすると定めている。

・スイス政府は3月19日、流動性支援に関する緊急法令を制定した。これにより金融市場監督機構は銀行に対して評価減を命じる権限を与えられた。これに基づき、全額毀損とするよう通知した。


バーゼルIは、国際的な銀行システムの健全性の強化と、国際業務に携わる銀行間の競争上の不平等の軽減を目的として策定された。これにより、銀行の自己資本比率の測定方法や、達成すべき最低水準(8%以上)が定められた。

バーゼルIIでは、達成すべき最低水準(8%以上)はバーゼルIと変わらないものの、銀行が抱えるリスク計測(自己資本比率を算出する際の分母)の精緻化が行われた。

「その他 Tier1」がAT1 債(Additional Tier 1 債)と呼ばれ、「生き残るための資本」であるゴーイング・コンサーン・キャピタルと定義され、Tier2 は「秩序ある破綻のための資本」と定義された。

リーマンショックをきっかけに再度内容の見直しが行われ、2017年に新しい規制の枠組みである「バーゼルⅢ」の最終的な合意が行われた。 具体的には、銀行が想定外の損失に直面した場合でも経営危機に陥ることのないよう、自己資本比率規制が厳格化された。将来の経済危機などの非常時に備え、取り崩しが可能な資本を一律に積み上げておくことが規定されている。

米国と中国など各国は半導体などの先端産業をめぐり競争力確保と企業誘致戦を展開しているが、韓国では、韓国企業の世界最高水準の製造能力と技術力に比べて韓国政府の支援水準と規制環境が不足しており、世界的競争でタイミングを逃せば先進国との格差が広がりかねないという危機意識が高まった。

韓国科学技術情報通信部がサプライチェーン・通商、新産業、外交・安保など技術主権観点からの戦略的重要性を根拠に12大国家戦略技術を選定し、2022年10月28日の国家科学技術諮問会議で「国家戦略技術育成方案」を発表した。

韓国国会は本年1月11日、経済安全保障の確保および先端産業競争力の強化のため、「国家先端戦略技術」を指定し、関連産業を育成・保護することを目的とする「国家先端戦略産業競争力強化および育成に関する特別措置法」(国家先端戦略産業特別法) を議決した。


韓国産業通商資源部と国土交通部は3月15日、尹錫悦大統領主宰で開かれた非常経済民生会議で、国家先端産業育成戦略、国家先端産業ベルト造成計画などを発表した。

尹大統領は「先端産業は核心成長エンジンであり、安保戦略資産で、雇用・民生とも直結する。半導体で始まった経済戦場がバッテリーと未来自動車など先端産業全体に拡張された。さらに成長するための民間投資を政府が確実に支援しなくてはならない」と話した。大統領室の報道官は「尹大統領が現在の先端産業の世界的競争状況は生きるか死ぬかの問題で急がなくてはならないと迅速な育成推進の必要性を強調した」と伝えた。

(国家先端産業育成戦略)

韓国政府はこれら産業の超格差技術力確保に向け2027年までに量子と人工知能(AI)など12大技術研究開発に予算25兆ウォンを投じる。( 1 ウオンは約0.1円)

https://spap.jst.go.jp/korea/experience/2022/topic_ek_22.html

最先端設備を備えた「韓国型 IMEC」を構築し先端技術開発空間に世界の人材を誘致することにした。半導体IMEC を先に作り、二次電池・バイオなどに拡張する。

IMEC (Interuniversity Microelectronics Centre) はベルギーに本部を置く1982年創設の国際研究機関で96カ国の専門家が参加している。リソグラフィ技術や太陽電池技術、有機エレクトロニクス技術など次世代エレクトロニクス技術の開発に取り組んでいる。

これを通じて半導体、未来自動車、二次電池、ディスプレー、バイオ、ロボットの6大産業で2026年までに民間主導で550兆ウォンの投資を引き出す。

半導体 340兆ウォン 約34.6兆円 電力・車両など次世代半導体技術を育て、優秀人材を育成  
うち、サムスン電池の投資は300兆ウォン(下記)
ディスプレー  62兆ウォン 約6.3兆円
二次電池  39兆ウォン 約4兆円 2030年までに世界1位への跳躍。韓国で生産する二次電池の生産容量を60ギガワット時以上に。
バイオ 13兆ウォン 約1.3兆円
次世代自動車 95兆ウォン 約9.7兆円 電気自動車生産規模を5倍に拡大し、センサーや二次電池など核心技術を確保して世界3強に跳躍
ロボット 1.7億ウォン 約0.2兆円
合計 550.7兆ウォン 約56兆円



(国家先端産業ベルト造成計画)

合わせて、 韓国政府は先端産業を育てるために地域別に生産拠点を確保するという計画も発表した。
全国に国家産業団地15カ所、総面積4076万平方メートルを構築するというもので、尹錫悦政権で初の国家産業団地候補地選定である。

国土部は「先端システム半導体クラスター」向けに龍仁市処仁区南四邑一帯の710万平方メートルを国家産業団地の候補地に選んだ。

半導体クラスターのほか、地方14カ所にも国家産業団地を新たに指定することにした。具体的な候補地は下記の通り。

大田 ナノ・半導体、宇宙航空
天安 未来モビリティ、半導体
清州 鉄道
洪城 水素・未来車、二次電池
光州 2ヵ所の完成車生産工場を基盤に未来車の核心部品
高興 ナロ宇宙センターと連携し、宇宙発射体
益山 情報通信技術(ICT)と食品加工を融合
完州 水素貯蔵・活用製造業
昌原 防衛・原子力産業の輸出を促進
大邱 未来車・ロボット
安東 バイオ医薬
慶州 小型モジュール原発
蔚珍 原発を活用した水素生産産業
江陵 天然物バイオ
植物・鉱物・微生物などから抽出した物質を健康食品・医薬品・化粧品に活用

国家産業団地に指定されると、許認可の迅速な処理と基盤施設の構築、税額控除などの特典が与えられる。
政府は新規産業団地を作るため、開発制限区域(グリーンベルト)と農地規制はできるだけ緩和する。
関係機関の事前協議と予備妥当性の調査もできるだけ速やかに進める。

ここに入居する企業は取得税と財産税の減免と容積率引き上げ、迅速許認可などの恩恵を得られることになる。

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先端半導体クラスターは総面積710ヘクタールで、完成すれば世界最大規模の半導体団地になる。

サムスン電子は龍仁市に2042年までの20年間、300兆ウォンを投資し、次世代半導体製造工場5カ所など生産施設を建設する。

2042年までにファウンドリー(半導体受託生産工場)と先端メモリー半導体工場計5カ所を建設し、ファブレス(半導体設計)、素材、部品、設備企業も最大150社を誘致する。現在、世界最大であるサムスン電子の京畿道平沢半導体団地(289ヘクタール)の2.5倍に達する規模となる。

同社は「新しいクラスターが構築されれば竜仁市器興区や華城市、平沢市、(SKハイニックスの)利川市など半導体生産団地と、近隣の材料・部品・装備企業、ファブレスなどを連係した世界最大の『半導体メガクラスター』が完成する」とし、「300兆ウォンが投資されれば直接・間接的な生産誘発効果は700兆ウォン(約70兆5千億円)、雇用誘発効果は160万人に達するだろう」と予想した。



https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2110/22/news034_4.html を補正

2021/5/20 韓国、官民協力で「K半導体ベルト」構築

TSMCを追撃しているサムスン電子は現在、ファウンドリー生産ラインの規模がTSMCの3分の1にすぎず、世界で初めて3ナノメートル製造プロセスによるファウンドリーの量産に成功したにもかかわらず、両社のシェアには3倍以上の格差(TSMC 58.5%、サムスン 15.8%)があり、なかなか縮まっていない。竜仁クラスター構築によって、サムスン電子がTSMCを本格的に追撃する体制が整う。

現在、竜仁市にはSKハイニックスが120兆ウォンを投資し、415ヘクタール規模の先端メモリー半導体クラスターを建設している。

半導体クラスター構築で韓国の半導体生産能力自体が25%以上拡大する見通し。同時に試作品研究開発用ラインも拡充され、国内のファブレス企業、学界との協業もさらに活性化する 。

尹錫悦大統領は「現在のグローバル競争の状況は生きるか死ぬかの問題になっており、急がなければならない」とし、「半導体メガクラスターを世界最大規模に育てていく」と述べた。

日本はどうするのだろうか。

参考  「半導体戦略」(経済産業省 20216

   2021/10/18 半導体大手、台湾のTSMCが日本で工場建設 に記載

ドイツの自動車大手Volkswagen (VW) は3月13日、同社として初めてとなる欧州以外のEV用バッテリーセル工場を建設する場所としてカナダを選んだと発表した。

税優遇などで気候変動対策に動く企業を支援する米国のインフレ抑制法(IRA)を受け、欧州で6つの電池工場をつくる従来の計画を保留し、北米投資に傾斜する。IRAは米国のほかカナダやメキシコでの投資も対象となる。

新工場の投資額は非公表であるが、VWは最大100億ユーロ(約1.4兆円)の優遇措置を見込む。

デトロイトから北東へ約195km 離れたカナダのオンタリオ州 St. Thomasに建設する。2027年の生産開始を目指す。

VW傘下のScout Motorsは3月3日にオフロードモデルの「スカウト」の電動車ブランドとしての復活に向けて、米国サウスカロライナ州コロンビア近辺に最初の工場を建設すると発表しており、これに次ぐ北米での電気自動車関連事業となる。

「スカウト」はInternational Harvesterがかつて販売していたピックアップトラックのオフロードモデルで、2021年にVWグループのトラック・バス部門が買収した。米国で電動車ブランドとして復活させ、まず、ピックアップトラックとSUVの2車種のEVを米国市場で発売する。

投資額は20億ドルだが、IRAによる優遇措置で投資額を抑えられるとしている。

また2020年代後半にもメキシコのエンジン車工場でも新たにEVを製造できるようにすることも検討する。VWは2030年までに25車種以上のEVを米国で発売する予定で、IRAを追い風に投資を加速している。

VWは2022年7月、バッテリー攻勢を開始するために、新しいバッテリー会社「PowerCo」を立ち上げ た。グループの 世界的なバッテリー事業の責任は「PowerCo」が負うこととなり、セル生産に加えて、バッテリー バリューチェーン全体に沿った活動を担当する。同社はパートナーと共に、2030年までにバッテリー関連事業の開発に200億ユーロ以上を投資する。

カナダのギガ計画もPowerCoが担当する。

VWは2022年8月22日、カナダ政府との間でバッテリーのサプライチェーンを強化することなどを目指した覚書に署名した。EV電池の材料であるリチウム、ニッケル、コバルトの安定調達に向けてカナダと協力することで合意した。VWはカナダ国内の鉱山会社に出資し、安定的な供給を確保する 。メルセデス・ベンツも同様の覚書をカナダ政府と締結した。

参考 2023/2/20 LG Chem、北米産リチウム精鉱購買契約を締結

今回はバッテリーセル工場の詳細を発表していないが、昨年8月の時点でPowerCoの会長は、2022年内に北米工場の場所と、採掘、製錬のパートナー候補を発表することを目指していると話し、北米の生産能力は20GWhを目指していることも明らかにしている。

ーーー

VWは2021年3月、2030年までのEVなどの電動車向けバッテリーとその充電に関する技術ロードマップを発表した。

遅くとも2025年までに世界EV市場のリーダーになることを目指すとし、最重要部品となるバッテリーについて、電池メーカーとの合弁などを通じて40 GWh の工場を2030年までに欧州で6カ所設ける。規格を統一した電池("Unified Cell")を大量生産しコストを半減、ガソリン車より安いEVを目指す。

これまでにドイツのザルツギッター、スウェーデン、スペインのバレンシアの3カ所の建設を決めていた。

VWはスウェーデンのバッテリーメーカー Northvoltとの間で、今後10年にわたるバッテリー製造で140億ドルの契約を結んだ。提携の一環として、Northvoltのスウェーデンのプラントは拡張し、40 GWh とする。

VWはNorthvoltとのJV(16GWhのリチウムイオンバッテリー工場)を南ドイツのSalzgitterに設立しているが、これをVW 100%子会社とし、ここも40 GWh に増強する。

VWは2022年3月、スペインのバレンシアに40GWのバッテリーセル工場を建設すると発表した。2026年の稼働開始を予定。

2021/3/23 VWグループ、EV向け次世代電池を大量生産

2027年には東欧(ポーランドかスロバキアかチェコ)に1工場、2030年までにあと2工場を建設し、合計6工場 240GWh の能力とする予定であった。

「4カ所目となる東欧での工場立地がまもなく決まる」。2022年12月の臨時株主総会でオリバー・ブルーメ社長はこう語ったが、VW社内でその後、欧州での電池計画の「保留」が決まった。

「欧州の投資環境は不透明感が強まり、状況を見定めるまで待つことが重要。意思決定を急ぐ必要はまったくない」としている。

欧州で2030年までに計240ギガワット時の電池生産量が必要だとの方針は変えていないが、2026年以降に4カ所目の投資決定を先延ばしすると示唆、工場の数についても「必ずしも6カ所になるとは限らない」と表現を改めた。

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VWだけではなく、多くの企業が昨年8月のIRA成立以降、米国投資に踏み切った。

BMWグループ:

2022年10月19日、サウスカロライナ州スパータンバーグの工場において、10億ドルを投じて新たにBEVを生産するほか、7億ドルを投じてスパータンバーグ近郊のウッドラフに高電圧バッテリー組立工場を新たに建設すると発表

2023年2月3日、メキシコ中央部サンルイスポトシ州の既存工場に8億ユーロを投じて、高電圧バッテリーとEV「Neue Klasse」を生産すると発表

Stellantis:

2023年2月28日、EV用の電気駆動モジュール(EDM)を生産するため、米国インディアナ州の3つの工場に合計1億5500万ドルを投資すると発表

ドイツ自動車部品大手Bosch

2020年8月31日、サウスカロライナ州の工場を拡張し、2億ドルを投じて燃料電池車向けの燃料電池スタックを生産すると発表

本田技研工業と韓国のLG Energy Solution:

2022年8月29日、北米で生産販売されるHondaおよびAcuraのEV用リチウムイオンバッテリーを米国で生産する合弁会社の設立に合意したと発表。

2022/9/2 ホンダとLG Energy Solution、米国にEV用バッテリー生産合弁会社設立に合意

Pfizer Inc.は3月13日、がん治療の次世代薬開発で先行する米新興企業 Seagen Inc. を430億ドルで買収すると発表した

「コロナ特需」が減り、中期では大型薬の特許失効も控えるため、がん治療薬を新型コロナ感染収束後の新たな成長分野に育てる。

2022年7月に米製薬大手MerckがSeagenの買収に向けた交渉を行っていることが報じられた。Merckのがん治療薬KEYTRUDA® の特許が2028年に切れる。
Merckは2020年にSeagenに出資、一部のSeagen製品をKEYTRUDAと併用する試験も既に実施している。

交渉は進んだ段階にあり、買収総額はおよそ400億ドルかそれ以上となる可能性があると報じられた。最終的に価格で折り合わなかったと見られる。

Seagen Inc.は抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれる医薬品の開発で知られる。高い効果が期待できる一方、副作用が少ないとされ、次世代のがん治療薬として期待されている。

Pfizerはコロナワクチンや治療薬(Primary care部門)の販売増で、2022年の売上高は1003億ドル、最終利益は313億ドルと、いずれもコロナ前の2019年から大きく伸びたが、2023年はコロナ関連の売上高の減少が見込まれている。

さらに、Pfizerの場合、主力の医薬品で得られる約170億ドルの売上高が2020年代後半には特許切れによる危険にさらされる。

(単位:百万ドル) 2022 2021
売上高 Biopharma

Primary care
うちコロナワクチン
コロナ治療薬リトナビル
73,023
(37,806)
(18,933)
52,029
(36,781)
( 76)
Specialty care 13,833 15,194
Oncology 12,132 12,333
Total 98,988 79,557
Pfizer CentreOne (CDMO) 1,342 1,731
合計 100,330 81,288
Net Income 31,372 21,979


2022年の売上高 1003億ドルに対し、2023年の売上高予想は670~710億ドルとみている。

Pfizerでは、特許切れ対策として2030年までに企業買収による年間売上高250億ドルの達成を約束しているが、Seagenの「抗体薬物複合体(ADC)」の買収がPfizerのがん治療薬での地位を高めるとし、2030年で100億ドル以上の貢献を期待している。

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抗体薬物複合体(ADC)の仕組みは下図の通り。

第一三共の抗がん剤 ENHERTU ®(トラスツズマブ デルクステカン)が日本で販売されている。新規の薬物トポイソメラーゼI 阻害剤を、独自のリンカーを介して、HER2発現がん(乳がん、胃がん、非小細胞肺がん及び大腸がんなど)を対象とする抗HER2抗体に結合させたものである。

Seagen Inc.はこれについて第一三共と争っている。

Seagen Inc.は旧称Seattle Genetics, Inc.で、第一三共は2008年7月からSeattle Genetics抗体薬物複合体の共同研究を実施したが、新薬開発の成果がでないとして2015年6月に関係を解消していた。

最終的に第一三共は抗HER2抗体とリンカー、ペイロード(トポイソメラーゼI 阻害剤)のすべてを自社技術で構築した。

2019年にSeattle Geneticsから第一三共のADC品に関する特定の知的財産権の帰属を主張して異議の通知をうけた。しかし、ADCの共同研究は現在の第一三共のADC品とは全く異なるため、同社の主張は根拠がないと考えており、デラウェア州連邦地方裁判所に同社を被告として確認訴訟を提起した経緯がある。

テキサス州東部地区連邦地方裁判所は7月20日、Seagen社の主張を認める判決を下した。
他方、デラウェア州連邦地方裁判所へのSeagenを被告とした確認訴訟で裁判所は仲裁による解決を指示したが、仲裁廷 Seagenの主張を全面的に否定する判断を下した。

Seagenは2022年11月10日、ワシントン州西部地区連邦地方裁判所に仲裁判断の取消を求める申立てを提出した。

米国特許商標庁は2023年2月、第一三共が請求していたSeagen Inc.の米国特許 10,808,039の有効性を審査する特許付与後レビュー請求を認め、再度、特許付与後レビューの開始を決定した。

2022/8/16 第一三共の抗体薬物複合体技術に関する Seagen Inc.との紛争

バイデン米政権は3月13日、アラスカ州北部の連邦政府所有地(National Petroleum Reserve-Alaska)でConocoPhillipsが計画する石油開発を許可した。ロシアのウクライナ侵攻も背景に燃料の安定供給を確保する狙い。


アラスカ州の地元当局と多くの先住民団体は税収に期待して開発に賛成する一方、温暖化防止と野生動物保護を求める環境団体は反対し、バイデン大統領の判断に注目が集まっていた。

許可されたのは同社がNational Petroleum Reserve-Alaskaで進めるWillow project。最大で日量18万バレルを生産する計画で、事業規模は70億〜80億ドルと伝えられている。

The Bureau of Land Management の発表によると、承認されたのは3つの掘削箇所(BT1, BT2 and BT3)、合計199の井戸、付属のインフラ。

Conocoは5カ所での掘削に加え、周辺地域の道路や複数の橋梁、パイプラインの整備を計画していたが、政府は環境破壊の懸念に配慮して掘削は3カ所だけを承認し、インフラ整備計画も縮小した。

https://www.nativefederation.org/wp-content/uploads/2019/01/ScottJepsen_ConocoPhillipsAlaska_Jan16_2019AlaskaDay_Presentations-3.pdf


このプロジェクトはトランプ前政権が2020年末に承認していたが、
米連邦地方裁判所は2021年8月に、環境アセスメントが不十分と判断、ライセンス許可を取消す判決を下した。

バイデン大統領は、連邦の土地での新たな石油・ガス掘削を認めないことを約束して就任した。

しかし、バイデン政権は2021年5月、この油田開発プロジェクトを支持する方針を示した。


今回の承認と同時に、バイデン政権はNational Petroleum Reserve-Alaska における将来の産業発展を制限するための重要な措置を発表した。

内務省は、特別エリアを最大限に保護するための規則作りに着手しており、特別地域として指定された 1,300 万エーカー以上の追加保護を検討する。特別地域での将来の石油とガスのリースと産業開発を制限することになる。

バイデン大統領は、NPR-A に近い北極海の約 280 万エーカーを、将来の石油とガスのリースの立ち入り禁止として無期限に指定する措置を講じる。

韓国LGグループ具光謨会長の義理の母と妹2人が2月28日、ソウルの裁判所にLGグループの具本茂前会長の2018年5月の逝去に伴う相続の取り消しを求める訴えを行った。

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LGグループの具本茂前会長は2018年5月20日に死去した。73歳だった。具会長は3代目で、LGを20年余りでテクノロジーおよび化学分野の世界的企業に育て上げた。

グループの持ち株会社・LGは6月29日、臨時株主総会で具光謨・LG電子常務を取締役に選任し、総会後の取締役会で代表取締役会長に選出した。

具光謨氏は具本茂会長の弟の具本綾氏の長男で、事故で息子を亡くした具本茂氏が2004年に養子に迎えた。 初代以降、長男がグループの会長を引き継ぐことになっており、後継者として養子に迎えた。
グループの中核会社・LG電子で常務として、B2B(企業間取引)事業本部の Information Display事業部長を務めていた。

2018/7/7 韓国のLG、具光謨氏が4代目の会長就任 


今回、訴訟を行ったのは具本茂前会長の妻の金英植と長女と次女の3人。

具本茂前会長はLG Groupの株の11.28%を所有していた。

逝去に伴い、具光謨現会長はこのうちの8.76%を相続し、保有の 6.24株と合わせ15%とし、最大株主となった。現在の持株は15.95%である。

長女が2.01%(3300億ウオン相当)、次女が0.51%(830億ウオン相当)を相続した。妻の金英植は株は相続していない。

LGによると、数回の交渉の結果、妻と2人の娘は上記のLG株式のほか不動産や美術品など合計5000億ウォン相当の遺産を相続した。(1ウオンは約0.1円)

遺産総額は2兆ウオンとされ、現会長はそのうち1兆5000億 ウオン、他3人が合計5000億ウオンを相続したとみられる。

現会長は、相続税7200億ウオンを6年分割で支払っており、最終分を本年末に支払う。 (全体の相続税は9215億ウォン)

2020年10月に死去したサムスン電子の李健熙前会長の相続税は12兆ウォンである。

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今回、3人は遺産を法律に基づき遺産の再配分を求める訴訟を起こした。 訴訟の理由については明らかでない。

韓国では下記による相続が可能である。

1. 指定分割 遺言書による分割
2. 協議分割 相続人全員で協議
3. 調停分割 家庭裁判所の調停
4. 審判分割 裁判官による決定

韓国の相続法では相続者は下記のとおりとなっている。

第一順位 配偶者と直系卑属 配偶者は常に他の相続人より1.5倍 
第二順位 配偶者と直系尊属  直系卑属のいない場合
  直系卑属、直系尊属がいない場合は全額を配偶者が相続 する。
第三順位 兄弟姉妹 配偶者も直系卑属、尊属もなしの場合
第四順位 四親等内親族

韓国紙は、原告が「養子は相続権無し」としていると報じているが、これは誤りで、養子も相続権を持つ。

相続法に基づけば、相続人は配偶者と子供3人(養子1、実子2)のため、配偶者が3/9、子供3人は各2/9 となる。

今回、3人は相続法の規定どおりの遺産相続を要求したとみられる。

これによると、グループ株式(11.28%)も配偶者に3.76%分、娘2人にも各2.51%分が相続され 、養子の現会長の相続は2.51%分にとどまることになる。

亡くなった具本茂前会長は、長子相続の原則維持のために養子を迎え入れたのであり、当然、LGの株式を養子に譲る遺言書を残したと思われる。

しかし、この場合、配偶者と娘2人は遺留分の請求ができる。

配偶者と直系卑属の遺留分は相続財産の1/2であり、これにより、配偶者は全体の1/6、娘2人は各1/9ずつ権利を持つ。

グループ株式(11.28%)も配偶者に1.88%分、娘2人にも各1.25%分が相続される。相続税の支払いのため売却されることも考えられる。


LGグループではグループの会長は具一族の長子が相続することとしており、後継者はグループ企業の株式の最大株主である必要がある。

このため、グループとして3人と5ヶ月にわたって交渉を重ね、上記の案(協議分割)で合意を得たと思われる。


LGでは、「相続が完了して4年も経った今、なぜこんなことを言い出したのか理解できない。LGグループの伝統と経営権をゆるがす試みは我慢できない」と述べた。

法的に認められた協議分割に合意し、相続財産分割協議書に署名し、既に4年も経ち、3年の除斥期間も過ぎているため、裁判所が取り上げることはないと思われる。

但し、協議の過程で錯誤・強要・詐欺のような契約無効、取り消しの理由があったとすれば、除斥期間が過ぎても合意無効・取り消しを主張することができるとなっており、除斥期間が過ぎた後も相続回復請求訴訟を認めた前例があるという。

米国商務省は2月28日、The CHIPS and Science Act(CHIPSプラス法)に基づく、半導体産業に対する第1弾の資金援助申請の受け付けを開始すると発表した。


申請は3段階に分かれ、第1弾となる今回は商業用の半導体製造施設の建設、拡張、現代化が資金援助の対象となる。今春後半には素材や製造装置施設、今秋には研究開発施設に関する申請を受け付ける。

今回、米政府は補助金支給の条件を明らかにした。


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米議会下院は2022年2月4日、中国に対抗するため先端技術の競争力向上をめざす包括法案 The America COMPETES Act of 2022 を賛成多数で可決した。

国内の半導体生産支援に約520億ドルを充てる。半導体製造・組み立て・試験・先端パッケージ・研究開発のための施設・装置の建設・拡充などを財政支援する。

上院は2021年6月8日に同様の法案 United States Innovation and Competition Act を異例の超党派で可決している。

2022/2/7 米下院、「対中競争法案」可決 

しかし、上下両院の法案の調整に手間取った。

バイデン米大統領は2022年7月25日、経済安全保障の観点から半導体の国内生産を補助金で後押しする超党派の法案について、「議会は一刻も早く通過させなければならない」と述べた。大統領は半導体供給に関するオンライン会合を開き、「米国は半導体で世界をリードする必要がある」と強調、巨額補助金をつぎ込んで国産半導体の育成を加速させる中国に対抗する構えを見せた。

台湾積体電路製造(TSMC)のアリゾナ州の120億ドルの設備、Intel のオハイオ州の200億ドルの設備など、これの対象となる新設備は補助金を前提に既に着工されている。

2022/7/27 バイデン大統領、半導体法案の早期成立訴え 
米上院は2022年7月27日、国内半導体産業向けの527億ドルの補助金を含む「The CHIPS and Science Act of 2022」(CHIPSプラス法)を64対33の賛成多数で可決した。

国内半導体メーカーやその声を受けたバイデン政権からの強い後押しがあり、通商条項などを削除したかたちで上院可決に至った

下院は翌28日、これを可決した。バイデン大統領は8月9日、国内半導体産業支援法「CHIPSプラス法」案に署名し、同法が成立した。

2022/7/29 米議会、「CHIPS法」を可決 

バイデン政権はCHIPSプラス法を活用して、2030年までに次の事項を達成する。

  • 先端ロジック半導体の工場を中心とした新たな大規模クラスターを少なくとも2つ形成する。
  • 複数の先端パッケージング施設を開設し、同技術の世界のリーダーとなる。
  • 経済的に競争力あるかたちで、先端のメモリー半導体を製造する。
  • 自動車や医療機器、防衛装備品に搭載されるレガシー半導体の製造能力を増強する。

CHIPSに関する527億ドルの予算の内訳は次のとおり。

  1. 商務省製造インセンティブ(390億ドル):半導体の設計、組み立て、試験、先端パッケージング、研究開発のための国内施設・装置の建設、拡張または現代化に対する資金援助。
       うち、60億ドルは直接融資または融資保証に使用可能。
  2. 商務省研究開発(110億ドル):商務省管轄の半導体関連の研究開発プログラムへの予算充当。
  3. その他(27億ドル):労働力開発や国際的な半導体サプライチェーン強化の取り組みへの予算充当。

また、上記のほか、半導体製造に関する投資に対して25%の税額控除を導入するとしている。

ーーー

今回、米政府は半導体産業に対する第1弾の資金援助申請の受け付けを開始するにあたり、そのための条件を明らかにした。

申請者は次の6点を説明する。
 (1)経済や国家安全保障への影響 (最重要)
 (2)商業的な実行可能性
 (3)財政面での強靭性
 (4)技術的な実現可能性と即応性
......
core underlying technology and manufacturing processes の詳細を含む( 技術が米企業に漏れる懸念)
 (5)労働力の開発
 (6)幅広い影響(米国半導体産業への将来的な影響など)

全ての受益者に課される条件:

 1. 自社株買いへの資金利用が禁止

「補助金は、米国の国家安全保障に対する投資であり、企業が自社の利益を増やすためのものではない」

 2. 懸念国(中国)での半導体製造能力の拡張を伴う重要な取引を10年間行わないことを商務省と合意する必要
  (安全保障上のガードレールと呼ばれる条項)

「CHIPS法の補助金を受領する企業は、受け取ってから10年の間、懸念される外国において、自社の半導体生産能力を拡充することが制限されるという契約を締結しなければならない」

1億5,000万ドルを超える直接の資金援助の受益者に課される条件:

 1. 施設の従業員や建設労働者に対して安価で質の高い児童ケアを提供する計画の提出

 2. 政府と合意した収益見込みを超えたキャッシュフローの一部を政府に償還
   ("Upside Sharing" of a portion of "excess profits" with the U.S. government)

事業が大成功であった場合、申請書に記載した額を超える部分(最大は補助金の額の75%)を政府に償還

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特に問題なのは、懸念国での半導体製造能力の拡張を伴う重要な取引を10年間行わないという条件である。

2021/11/26 サムスン電子、米テキサス州に半導体工場新設  

2022/1/31  インテル、米に世界最大級の半導体工場新設

サムスン電子はNAND型フラッシュメモリーの40%、SKハイニックスはDRAMの40%とNAND型フラッシュメモリーの20%を中国で生産している。サムスン電子とSKハイニックスはこれまでに中国に合計で68兆ウォン(約7兆800億円)を投資した。 (サムスンが33兆ウォン、SKが35兆ウォン)

現在、サムスンは西安で128層NAND型フラッシュメモリー、SKハイニックスは無錫と大連でそれぞれ10ナノメートル台後半のDRAMと96・144層のNAND型フラッシュメモリーを生産しているが、「先端製造プロセスへの転換が不可能になれば、サムスン電子とSKハイニックスが中国で生産する半導体は来年から20%程度減る」とされる。

特にSKハイニックスはインテルから買収したNAND型フラッシュメモリーの大連工場が問題となる。インテルに昨年、買収代金の第1期分として70億ドルを支払い、2025年に残る20億ドルを支払うことになっているが、工場をアップグレードできない場合、相当な被害を受けることになる。

2020/10/22 SK Hynix、IntelのNAND事業買収

韓国では、1986年の日米半導体協定を通して米政府が日本の半導体産業を押さえ込んだ経緯を踏まえ、米政府の手段を選ばぬ自国中心の産業保護策に警戒感を抱いている。レモンド長官が「最先端の半導体企業にとって米国が研究開発と量産において存在感を持つ唯一の国になることを望んでいる」と述べたことも簡単に聞き流せない発言でもあるとしている。

Intel が米政府による対中制裁方針を事前に察知して大連工場を売却したのではないかという「Intel 陰謀論」も出ている。

付記

米商務省は3月21日、懸念国での半導体製造能力の拡張を伴う重要な取引を10年間行わないという条件の詳細を発表した。

懸念国=中国、ロシア、イラン、北朝鮮

  • 最新鋭設備の禁止:10万ドル以上で、生産能力を5%以上増やすもの。違反すれば資金援助全額取り消し。
  • 最新鋭でない旧式設備であっても、新設または10%以上の増設の禁止

  https://www.commerce.gov/news/press-releases/2023/03/commerce-department-outlines-proposed-national-security-guardrails

旭化成は3月8日、2023 年3月期通期の連結業績予想を修正すると発表した。

リチウムイオン電池のセパレーター生産の米子会社Polyporeで減損損失 1,850 億円を計上、株主帰属当期純損益をこれまでの700億円の利益から、1050億円の損失に修正した。

ーーー

旭化成は2015年2月23日、米国のバッテリーセパレータメーカーのPolypore International, Inc.を約22億ドルで買収すると発表した。8月26日に買収を完了した。


Polyporeは
車載用途を中心に強みを持ち、グローバルな供給体制と高度な製品開発力を有する企業である。

Polypore買収により、下記の効果が期待できるとした。

1) 車載用途を中心に強みをもつPolypore社との共同研究開発、相互技術提供等を通じて、多様な分野で用いられるより革新的な製品開発を実現する

旭化成 リチウムイオン二次電池用湿式セパレータ「ハイポア™」 スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコン用
Polypore リチウムイオン二次電池用乾式セパレータ「Celgard™」 電気自動車用
鉛蓄電池用のセパレータ「Daramic™」 自動車や産業向け用途等で広く普及


2) 車載用途を含め、今後成長が期待されるリチウムイオン二次電池用セパレータ事業で、より幅広い製品・技術の提供が可能になる。

3) 中長期にわたって安定的な収益貢献が期待できる鉛蓄電池用セパレータ市場への参入を果たす。

4) Polyporeのグローバルな製品供給体制及び販売網等の活用によって、「ハイポア」のグローバル展開の一層の加速を図る。

買収により、セパレーター世界首位の旭化成は現状で35%のシェアを約50%に引き上げ、2位の東レを引き離す。

2015/2/26 旭化成、米電池素材会社Polypore International を買収


旭化成は、同社の買収後、環境対応車等の車載用途の需要が高まると想定されていたリチウムイオン電池用乾式セパレータ「セルガード」、幅広い用途で安定的な需要が見込める鉛蓄電池用セパレータ「ダラミック」と、電子機器等の民生用途で成長していたリチウムイオン電池用湿式セパレータ「ハイポア」事業と共に、一体のバッテリーセパレータ事業として運営してきた。

セパレータはLIBの正極・負極間に位置する多孔質膜で、正極・負極間でリチウムイオンを透過させる機能を有するとともに、正極と負極の接触を遮断し、ショートを防止する部材である。

PPを主原料として製造工程で溶剤を使用しない乾式法と、PEを主原料として製造工程で可塑剤・溶剤を使用する湿式法の2つの製法がある。

グループの能力は、2021年度に湿式膜が約10億m2/年、乾式膜が約5.5億m2/年、合計約15.5億m2/年となった。

しかし、Polypore 買収後、車載市場の状況が大きく変わった。

車載LIB市場は湿式+塗工が主流となった。ハイポアは需要が拡大、逆にCelgardは需要が低迷した。

なお、鉛蓄電池用の湿式セパレータ「Daramic™」は原料コスト高で収益が伸び悩んだ。

これに伴い、日向工場の能力を拡大し、2023年度上期に2工場の生産能力を13.5億m2/年とし、電気自動車(EV)など向けの需要拡大に対応する。

ハイポア事業とPolypore事業をそれぞれ独立運営するよう転換することとした。

なお、米国ではインフレ抑制法」で自動車用電池の生産が増えるが、北米地域に存在するセパレータの量産工場はPolyporeのCelgardのみであり、旭化成にとって大きな事業機会のある市場となる。

して、Polyporeの減損テストを実施した結果、買収時の広義の「のれん」(買収関連無形固定資産を含む)相当の1850億円を減損損失に計上した。

付記  ディールラボによると、2021年のセパレータのシェアは下図の通り。(日本メーカーの製法は他ソースから)

韓国の朴振外相は3月6日、元徴用工問題の解決策を正式に発表した。韓国最高裁が日本企業に命じた賠償金の支払いを韓国の財団が肩代わりする。

骨子:

・ 韓国政府傘下の公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」が原告に判決金相当の金額を支払う。

新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業を相手取った3件の訴訟で判決が確定している。韓国外務省によると賠償対象となる元徴用工は故人を含め15人いる。

聯合ニュースによると15人分の判決金と利子の総額は40億ウォン(約4億円)規模になる。遺族を含む原告に支給する。

・ 係争中の訴訟も、原告の勝訴が確定した場合は財団から支給する。

韓国の裁判所では、元徴用工らが日本企業に賠償などを求めた同様の訴訟が多数、係争中。

・ 肩代わりの財源は民間の自発的貢献により調達

1965年の日韓請求権・経済協力協定に基づく日本の経済協力で恩恵を受けた韓国鉄鋼大手ポスコなどが想定されている。

付記 韓国鉄鋼大手ポスコは3月15日、元徴用工を支援する韓国政府傘下の財団に40億ウォン(4.1億円)を拠出すると表明した。

被告の日本企業の資金拠出は前提としていない。日本政府は、元徴用工問題は1965年の協定で最終的に解決済みとの立場で一貫し、大法院判決は国家間の約束を覆す「国際法違反」と主張してきた。被告の日本企業の拠出がなければ、日本側も受け入れが可能となる。

別途、経団連と、韓国側のパートナーとなる全国経済人連合会は共同で「未来青年基金」(仮称)を設立する予定で、基金は留学生への奨学金支給など若者世代の交流増進に活用されるという。

・ 原告に判決金の受け取りに理解・同意を求める努力を継続する。

・ 歴史問題の真の解決に向けた研究と、未来世代に対する教育を強化


朴外相は「膠着した日韓関係をこれ以上放置せず、国益の次元で悪循環の輪を断ち切る」と話した。「これが最後の機会だと思う」と強調した。小渕恵三首相と金大中大統領による1998年の日韓共同宣言を「発展的に継承する」と言及した。

日本側には「日本政府の包括的な謝罪、日本企業の自発的な寄与で呼応することを期待する」と求めた。経団連と韓国の全国経済人連合会(全経連)による共同事業を念頭に「両国の経済界の自発的な寄与を検討中と聞いている。日本政府も反対しないという立場と理解している」と明らかにした。

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新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業 とを相手取った3件が韓国最高裁で判決が確定している。

韓国大法院は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で日本製鉄の上告を棄却(原告の請求認容、当社敗訴)した。日本製鉄(旧新日鉄住金)に対し、戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者に1人あたり 1億ウオン(約1000万円)の賠償を命じたソウル高裁判決が確定した。

原告側は2019年1月と3月の2回にわたり、日本製鉄とPOSCOのJVのPOSCO-NIPPON STEEL RHF JV の株式9億7300万ウォン(約8700万円)相当を差し押さえた。

大邱地裁浦項支部は2021年12月30日、日本製鉄が韓国内に所有する資産、POSCOとの合弁会社「PNR」の株式の売却命令を出した。

韓国大法院は2018年11月29日、三菱重工業の上告を棄却し、同社に対し、第2次世界大戦中に同社の軍需工場で労働を強制された韓国人の元徴用工らに対する賠償支払いを命じる判決を下した。

1件は、元女子勤労挺身隊員の女性4人と親族1人に対し、それぞれ最大で1億5000万ウォン(約1500万円)の賠償を命じ た。この女性らは1944年、名古屋市にあった三菱重工の航空機製作工場で、無償労働を強制されたと話している。
もう1件の訴訟では、原告6人(うち生存者2人)にそれぞれ8000万ウォン(約800万円)の賠償支払いが命じられた。

韓国の大田地裁は2019年3月25日、三菱重工業の商標権2件と、三菱重工業が韓国国内に保有中の770件余りの特許権のうち 発電技術特許などの特許権6件の差し押さえを決定した。

韓国大法院は2022年8月にも三菱重工業が韓国国内にもつ資産の売却命令を確定させる予定であったが、(恐らく韓国政府の介入で)最終判断をしないまま、現在に至っている。

日本政府は、元徴用工問題は日韓請求権協定によって「請求権問題は完全かつ最終的に解決された」という立場で一貫している。

第一条 日本が韓国に対して無償3億ドル(生産物、役務を10年にわたり供給)、有償2億ドル(長期低利の貸付)を供与する

第二条
 1 両締約国は,両締約国及びその国民(法人を含む) の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が,1951年9月8日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて,完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。 (中略)

 3 2の規定に従うことを条件として,一方の締約国及びその国民の財産,権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくものに関しては,いかなる主張もすることができないものとする。

新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業は、日本政府の見解をもとに、支払いに応じていない。

それに対し、大法院判決は「請求権協定は植民地支配の不法性を前提としていないから不法性を前提とする損害賠償請求権は協定の対象外であり、成立する」という論理を展開している。

日本は、植民地支配の不法性を否定、大韓帝国は1910年8月の韓国併合条約によって大日本帝国に合法的に併合され、植民地となったとしてきた。

日本の外交上の立場と韓国司法の判断が相反し、関係悪化の要因となっていた。

なお、中国については状況が異なる。

三菱マテリアル(旧三菱鉱業)と中国人元労働者側の2016年6月の和解合意に基づき、「歴史・人権・平和」基金を通じて、2022年10月までに元労働者側の1290世帯に1億2900万元(約25億円)の「謝罪金」が支払われた。

サンフランシスコ平和条約では、連合国の日本への戦後補償請求権は放棄されることとなった。放棄された「請求権」の主体は個人も含む。しかし、当時、中華民国、中華人民共和国いずれを中国とするのか国際的に定まっていなかったため、中国(中華民国と中華人民共和国)は同会議に招請されず、上記放棄条項を批准していない。

中国については、1972年9月の日中共同声明で、「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」としているが、個人の請求権の扱いについては触れていない。

中国の強制連行被害者が西松建設を相手におこした裁判では、日本の最高裁が2007年4月、裁判上の個人の請求権は日中共同声明により失われたとしながらも、「個人の実体的な請求権までは消滅していない」と判断、「被害者らの苦痛は極めて大きく、西松建設を含む関係者に被害救済の努力が期待される」として日本政府や企業による被害の回復に向けた自主的解決の期待を表明した。その後、2010年4月に西松建設は被害者らと正式に和解、謝罪し、記念碑を建立、和解金を支払っている。

2022/11/30 三菱マテリアル、中国人元労働者側に「謝罪金」計25億円支払い

韓国の文在寅前政権は日本との交渉に動かず、現金化に向けた司法手続きが進んだ。日本側は現金化されれば国交正常化の前提が崩れ、関係修復が困難になると警鐘を鳴らしてきた。

尹錫悦現政権は2022年5月の発足後、日本との外交対立を避けながら補償を進める解決策づくりに取り組んだ。同年11月に岸田文雄首相と正式な首脳会談を3年ぶりに開き、早期解決で一致した。

韓国外務省は2023年1月、公開討論会で今回の案を有力案として示し、原告の説得を続けている。韓国政府は原告の納得を広げるため、一連の交渉の過程で日本に「誠意ある呼応」を求めた。過去の植民地支配や侵略に対する「反省とおわび」の表明や、日本企業による自発的な寄付を求めて交渉してきた。

林芳正外相は3月6日、韓国政府が発表した元徴用工問題の解決策について、「非常に厳しい状態にあった日韓関係を健全な関係に戻すものとして評価する」と述べた。

「日韓共同宣言を含めて歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」と強調した。日本政府は資金を出さないものの、過去の政権が表明した「反省とおわび」を継承する 。

日本企業による自発的な寄付活動については「政府は特段の立場を取らない」と語り、容認する姿勢を示した。 聯合ニュースによると、被告の日本企業が加盟する経団連と、韓国側のパートナーとなる全国経済人連合会(全経連)は共同で「未来青年基金」(仮称)を設立する予定で、基金は留学生への奨学金支給など若者世代の交流増進に活用されるという。

今回の韓国政府案で問題がすべて解決するかどうかは疑問である。

最大野党の「共に民主党」の代表は発表について、「外交史上最大の恥辱だ」と述べた。

被害者の支援団体と原告代理人は、「韓国の行政部が日本の加害企業の司法的な責任を免責するもの」と批判した。勝訴が確定した3件の訴訟の原告のうち、存命中の3人はいずれも解決策に反対しているという。 解決策に同意しない被害者は、被告の日本企業の韓国内資産を売却する現金化を引き続き進める方針を明らかにした。   

日韓両政府が2015年に結んだ慰安婦合意では、日本が基金を設立して、「最終的かつ不可逆的な解決」で一致をみたが、元慰安婦の支援団体が反対したままで、前政権が合意の欠陥を訴え基金を解散した。 

自民党の一部議員は、韓国側の解決策について、政府は反対の立場を取るべきだと主張している。敗訴した日本企業の賠償を韓国政府傘下の財団が肩代わりするのを受容すれば、日本政府は朝鮮半島の人々を強制労働させたという話に乗ることになるとしている。徴用はごく一部で、それ以外は応募して働いていたとしている。


日本政府は2019年7月、安全保障上の懸念が拭えないとして半導体材料3品目で輸出管理を強化。翌月には、貿易管理手続きを簡素化する「ホワイト国」から韓国を除外した。

2019/7/3  政府、半導体材料の対韓輸出規制を発表

これに対し、韓国は徴用工問題を巡る報復措置だと強く反発し、撤回を求めている。

岸田首相は3月6日午前の参院予算委員会で、韓国に対する半導体素材などの輸出規制について「労働者(元徴用工)問題とは別の議論だ。日韓当局間の政策対話が困難な状況になっている。韓国側に適切な対応を求めていく」と述べた。

北陸電力の志賀原発2号機の再稼働の前提となる審査で、原子力規制委員会は3月3日、敷地内の断層は活断層ではないとする北陸電力の主張を妥当と判断した。

2016年に規制委の有識者調査団によって「活動性を否定できない」とされた判断を転換した。

原発の耐震設計指針では、12万~13万年前以降に動いた断層を活断層と定義し、その上には原発を建てないことになっている。

規制委は陸地にある6本と、海岸や海辺にある4本の計10本を調べた。敷地内には原子炉から約200メートルの位置に「福浦断層」という、議論の余地のない活断層も見つかっている。

2016年の調査では、1号機の原子炉直下を通る「S―1断層」は、有識者調査団が「12万~13万年前以降の活動が否定できない」と結論づけた。また、同1・2号機タービン建屋直下のS-2、S-6断層も地層に変形を生じた可能性を否定できないとしている。


ホンダとLG Energy Solution のEV用リチウムイオンバッテリーの生産合弁会社であるL-H Battery Company, Inc.は2月28日、米国オハイオ州Jeffersonville の工場建設予定地 で鍬入れ式を行い、工場の建設に着工した。

新工場は年間生産能力40GWhで、2024年末までの建設完了を目指す。その後、2025年中に北米で生産・販売されるEV用にポーチ型バッテリーセルとモジュールの量産を開始し、全量を北米にあるHondaの四輪車生産工場へ供給する。約2,200人の雇用を創出する 。

 

本田技研工業と韓国のLG Energy Solution は2022年8月29日、北米で生産販売されるHondaおよびAcura(プレミアム・ブランド)のEV用リチウムイオンバッテリーを米国で生産する合弁会社の設立に合意したと発表した。
韓国のバッテリー・メーカーが日本の完成車メーカーと合弁するのは今回が初めて。

新たな合弁会社は2022年中に設立される予定で、出資比率はLGが51%、ホンダが49%とされる。

両社は総額約44億USドルを投資し、米国に生産工場を建設する。今後、建設地の確定を経て、2023年初頭に着工し、2025年中の量産開始を予定している。

両社は、急速に成長する北米の電動化市場において、タイムリーで安定的にバッテリーを現地調達することが重要との共通認識に基づき、今回の合意に至った。韓国バッテリーメーカーが日本の完成車メーカーと合弁会社を設立する最初の事例となる。

2022/9/2 ホンダとLG Energy Solution、米国にEV用バッテリー生産合弁会社設立に合意

両社は2023年1月13日、EV用リチウムイオンバッテリー生産の合弁会社を正式に設立したと発表した。

社名:L-H Battery Company, Inc.
所在地:オハイオ州Jeffersonville
資本金:2億1千万USドル(出資比率:LGES 51%、Honda 49%)

年間生産能力:40GWh

2024年末までの建設完了を目指す。その後、2025年中に北米で生産販売されるEV用にリチウムイオンバッテリーの量産を開始し、全量をHondaの北米工場へ供給する予定。

LG Chemは2023年2月17日、ノースカロライナ州に本社を置く鉱山会社Piedmont Lithiumとの間で計20万トン規模のリチウム精鉱"SC6" (含有量6%のリチウムを含むリシア輝石) 購買契約を締結した発表した。

Piedmont LithiumはカナダQuebecの鉱山から出るリチウム精鉱を今年3四半期から年間5万トンずつ4年間、LG化学に供給する。 これはリチウム約3万トンを抽出できる量で、高性能電気自動車約50万台相当の規模である。

韓国電池素材メーカーの中で北米産リチウムを確保したのはLG化学が初めてで、北米産リチウム精鉱を使えば、米政府のインフレ削減法(IRA)による税制優遇基準(新車購入税控除、電池製造の先進製造業生産控除を満たす。

2023/2/20 LG Chem、北米産リチウム精鉱購買契約を締結



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LG の拠点

2023/2/24 Ford、トルコでの電池JVの相手をSKからLGに変更

米電気自動車(EV)大手テスラは3月1日に開いた投資家向けの説明会で、メキシコに新たな工場を建設する方針を発表した。

メキシコのロペスオブラドール大統領が前日の2月28日、テスラがメキシコ北部のMonterreyに新工場を建設すると発表したが、これを確認した。

米南部テキサス州と国境を接しており、テスラが進出するとされる場所は国境まで車で3〜4時間の距離にある。

テスラの新EV工場はカリフォルニア州Fremont、テキサス州Austin、中国・上海、ドイツ・ベルリン に続く、海外3箇所目、世界で5箇所目の自動車生産工場となる。(ほかに、電池工場のNevada Gigafactory でEVトラック「Semi」を生産している。)

EVの生産コスト半減に向けて開発中の次世代プラットホーム(車台)に対応し、米国などへの輸出拠点とする。

主要部品ごとに塗装や内装を施してから完成車に組み立てる新たなプラットホームを採用する。車載電池や駆動装置など主要部品の生産自動化も推し進め、EV1台当たりの製造コストを従来の半分以下に抑えることを目指すという。

投資額や生産開始時期は明らかにしていない。メキシコ政府高官によると投資額は50億ドルを超える見通し。

同社は2030年までに年間2千万台のEVを生産する目標を掲げており、Elon Musc CEOは「全ての工場で生産を拡大していく」と強調した。グローバル生産責任者に就任したTom Zhu氏は、テスラの全世界の年間生産能力が200万台になったと明らかにした。

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Tesla の既存工場は下記の通り。

1) Fremont, California

 Model S、Model 3、Model X、Model Y 生産

 GMが利用していた工場を2010年に取得し、規模を拡大して2012年からModel Sの生産を開始した。


2) Gigafactory Texas (Austin, TX)   2022年4月7日開所式

 Model Y 生産、将来 Cybertruck を生産予定



3) Gigafactory Shanghai

 Model 3、Model Y 生産

2018/7/14 Teslaが上海にEV工場建設へ

2019/10/25 Tesla、中国工場の試運転開始


4) Gigafactory Berlin - Brandenburg  2022/3/22 開所式

Model Y 生産  将来は電池なども生産

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Gigafactory Nevada 電池工場  EVトラック「Semi」も生産

2017/1/11 Tesla Motors とパナソニック、「Gigafactory」でバッテリーの生産開始

2023/1/31 テスラ、米ネバダ州でEV電池増産 36億ドルを追加投資  単独投資


Gigafactory New York 太陽光発電

パナソニックとテスラは2016年12月に同工場での共同生産を発表し、2017年夏からバッファロー工場での太陽電池セルとモジュールの生産を 開始した。テスラは2016年8月にSolarCityを買収し太陽光発電事業に参入しており、米国ネバダ州の「ギガファクトリー」における電気自動車用電池の生産と同様、太陽電池でも両社による共同展開を狙いとしていた。

しかし、パナソニックは2020年2月26日、Teslaと共同で運営していた米国バッファロー工場での太陽電池セルおよびモジュールの生産を2020年5月までに停止し、2020年9月に撤退すると発表した。

スナク英首相とEUのフォンデアライエン欧州委員長は2月27日、英国のEU離脱(Brexit)を巡る争点となってきた英領北アイルランドの物流規則を巡り合意したと発表した。

スナク首相は記者会見で、英国とEU間の「国境という感覚」を排除することで合意したと述べた。離脱協定を一部見直し、北アイルランドでの物流・関税規則を緩和する。

ブレグジットに伴い締結された「北アイルランド議定書」は、北アイルランド紛争の再発を避けるためアイルランドと北アイルランドに厳格な国境管理を設けず、EU単一市場を保護することを目的とし、2021年の発効以来、北アイルランドと英本土間の貿易に支障をきたしていた。

同じ英国内であるにもかかわらず、北アイルランドに入る品物には通関検査が必要となり、英本土との間に経済上の国境が生まれていた。

英は2021年1月にEUを離脱、北アイルランドとアイルランド間の貿易に関しては、2019年に英とEU間で交わされた「北アイルランド議定書」が発効した。この議定書では、北アイルランドとEU間の通商に支障が出ないよう、税関など国境管理措置を設けないと定められているが、これにより、北アイルランドと残りの英との間にEU法にのっとった税関が必要になっていた。

現在、議定書にのっとって検査や規制が行われており、北アイルランドへ物品を輸入している企業は、追加コストや手続きの煩雑さといった問題に直面している。特に規制の厳しい食品や園芸といった分野で苦労が多いという。

一方で北アイルランドからアイルランドへの輸出では、EU市場への摩擦のないアクセスが維持されているため、食品を含む輸出業者は恩恵を受けている。

英政府は2021年7月21日、北アイルランドで起きている物流などの混乱をおさめるため、英領北アイルランドでの通商ルールについてEUに再交渉を求めると発表したが、EUは再交渉に応じなかった。

2021/7/24 英、EU離脱ルール再交渉を要求、EUは拒否

英政府は2022年6月13日、2019年に欧州連合(EU)と交わしたEU離脱後の通商協定の「北アイルランド議定書」を破棄する計画を発表した。国益を守るために「ほかに道がない」としている。今回の「北アイルランド議定書法案」は今後、英議会で審議・採決される。 (現時点では採決されていない。)

この案では、英本土から北アイルランドに入る貨物の扱いについて、次のように改定する。

北アイルランドにそのまま留まる貨物はグリーンレーンを使い、チェック無し、書類も簡単。

北アイルランドを通ってアイルランドや他のEU諸国に運ばれるものはレッドレーンを使い、北アイルランド港湾でチェックを受ける。

物品検査に関する「不必要な」事務処理をなくし、北アイルランドの企業が英の他の地域の企業と同様の税制優遇措置を受けられるようにする。

また、あらゆる貿易紛争を欧州司法裁判所(ECJ)ではなく、「独立した仲裁」によって解決する。

2022/6/20 英政府、北アイルランド議定書の一部を破棄する法案を発表


今回、英本土から北アイルランドへの品物の輸送に関しては、最終目的地別に品物を分類し、北アイルランドにとどまる商品の通関上の手続きをほぼ廃止する。密輸を防ぐための最低限の検査だけを残す。

北アイルランドを経由してEU加盟国のアイルランドに向かう商品は、英EU間の通常の通関手続きや商品検査を行う。

実質的には、上記の英国政府案と余り変わらないように見える。

合意が受け入れられれば、新しい変更点は今後数年間で段階的に導入されることになる。議会採決は全ての政党が検討する時間を持った後に行われる。

英・EUの合意を受け、英政府は、北アイルランドの物流規則の一方的な変更を目指したアイルランド議定書変更に向けた法案を前進させないと明らかにした。さらに、EUは英国に対する全ての法的措置を撤回するとした。

北アイルランドの親英派の最大政党、民主統一党のドナルドソン党首は英・EU間の合意について「特筆すべき進展」と評価しつつも、党としての決定は急がないとし「経済の特定の分野において、EUの法律が北アイルランドでも適用されるという事実を覆すことはできない」と述べた。

政府は2月29日、通称 グリーントランスフォーメーション(GX)脱炭素電源法案(「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」)を閣議決定、第211回通常国会に提出した。

「GX実現に向けた基本方針」に基づき、安全確保を大前提とした原子力の活用と再生可能エネルギー最大限導入に向けた方策が柱で、原子力発電の価値を明確化するとともに、東日本大震災以降の停止期間を最大60年の運転期間から除外する。廃炉資金の外部拠出方式も新たに始める。

再エネでは北海道~本州間の海底直流送電線を念頭に、着工段階で再エネ賦課金が受け取れるようにする。再エネ事業の規律強化も盛り込んだ。

2月10日に「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定された。

気候変動問題への対応に加え、ロシア連邦によるウクライナ侵略を受け、国民生活及び経済活動の基盤となるエネルギー安定供給を確保するとともに、経済成長を同時に実現するため、主に以下二点の取組を進める。

①エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再エネや原子力などのエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換などGXに向けた脱炭素の取組を進めること。

②GXの実現に向け、「GX経済移行債」等を活用した大胆な先行投資支援、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、新たな金融手法の活用などを含む「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行を行うこと。

GX実現に向けた基本方針

GX実現に向けた基本方針の概要

GX実現に向けた基本方針参考資料

原子力については、下記の通り。

 原子力の活用

安全性の確保を大前提に、廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えを具体化する。その他の開発・建設は、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していく。

厳格な安全審査を前提に、40年+20年の運転期間制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認める。その他、核燃料サイクル推進、廃炉の着実かつ効率的な実現に向けた知見の共有や資金確保等の仕組みの整備や最終処分の実現に向けた国主導での国民理解の促進や自治体等への主体的な働き掛けの抜本強化を行う。

同法案をめぐっては、原発の60年超の運転を事実上認める改正案に原子力規制委員会の1人が反対を表明、規制委員会の中で意見が割れた状況を踏まえ、岸田首相が国会審議などでしっかり説明できる準備を進めた上で閣議決定を行うよう指示、当初予定より閣議決定が遅れていた。西村経済産業相は、首相の指示を踏まえ、法案内容を国民にしっかり理解してもらえるよう、「国会での議論をはじめ、様々な場で丁寧な説明を行っていく」と語った。


1.法律案の趣旨

2月10日に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」に基づき、
(1)地域と共生した再エネの最大限の導入促進、
(2)安全確保を大前提とした原子力の活用に向けて、関連する下記の法律を改正する。

電気事業法、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法)、原子力基本法、
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(炉規法)、
原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律(再処理法)

2.法律案の概要

(1)地域と共生した再エネの最大限の導入促進

再エネ導入に資する系統整備のための環境整備(電気事業法・再エネ特措法)

送電線の整備計画を経産大臣が認定
再エネの利用の促進に資するものについては、工事に着手した段階から系統交付金を交付
認定を受けた整備計画に係る送電線の整備に向け、電力広域的運営推進機関から貸付け

既存再エネの最大限の活用のための追加投資促進(再エネ特措法)

地域共生や円滑な廃棄を前提に、追加投資部分に、既設部分と区別した新たな買取価格を適用する制度を新設

地域と共生した再エネ導入のための事業規律強化(再エネ特措法)

違反事業者に対して支援を一時留保
違反が解消されない場合は支援額の返還命令

(2)安全確保を大前提とした原子力の活用・廃炉の推進

原子力発電の利用に係る原則の明確化(原子力基本法)

安全を最優先、原子力利用の価値の明確化(安定供給、GXへの貢献等)
国・事業者の責務の明確化(廃炉・最終処分等のバックエンドのプロセル加速化、自主的安全性向上・防災対策等)

高経年化した原子炉に対する規制の厳格化(原子炉等規制法

運転開始から30年を超えて運転しようとする場合、10年以内毎に、設備の劣化に関する技術的な評価を行う。
その結果に基づき、劣化に関する技術評価、長期施設管理計画作成、原子力規制委員会の認可を受ける。

2023/2/10 原子力規制委員会、原発60年超運転に向けた規制制度案の承認持ち越し → 承認  (委員1名が反対)

原子力発電の運転期間に関する規律の整備(電気事業法)

原子炉等規制法の「原子力発電の運転期間は原則40年、最長60年」を削除、電気事業法に下記を追加。

運転期間は40年とし、安定供給確保、GXへの貢献、自主的安全性向上や防災対策の不断の改善について経産大臣の認可を受けた場合に限り、運転期間の延長を認める。
延長期間は20年を基礎とし、予見し難い事由による停止期間(安全規制に係る制度・運用の変更、仮処分等)による停止期間を考慮した期間に限定。
原子力規制委員会による安全性確認(
原子炉等規制法)が大前提。


注)
原子力規制委員会の管轄の
原子炉等規制法では、「30年を超えて運転しようとする場合、10年以内毎に、設備の劣化に関する技術的な評価を行い」認可するとだけ記載。
METI所管の電気事業法で、60年超は「予見し難い事由による停止期間」のみ、原子力規制委員会による安全性確認(
原子炉等規制法)を大前提に延長を認めるとした。

円滑かつ着実な廃炉の推進(再処理法)

使用済燃料再処理機構による全国の廃炉の総合的調整、R&Dや共同調達等の共同実施l,廃炉に必要な資金管理等
原子力事業者に対し、使用済燃料再処理機構への廃炉拠出金の拠出の義務付け

公取委は2月28日、東京五輪・パラリンピックの運営業務をめぐる談合事件で、電通グループ、博報堂など6社と、各社の担当幹部と大会組織委員会元次長の計7人を独禁法違反容疑で検事総長に刑事告発した。

森元次長と電通など6社の幹部らは2018年2~7月、組織委が競争入札や随意契約で競技会場ごとに発注するテスト大会や本大会の運営業務について、受注予定業者をあらかじめ決めるなどして競争を制限した疑いが持たれている。

テスト大会の計画立案業務を落札した企業はその後、随意契約の形で同じ競技の本大会の運営業務なども受注しており、公正取引委員会は東京地検特捜部と連携して、各社がより金額が大きい本大会の業務の受注を視野に談合を行っていた疑いがあるとみて実態解明を進めていた。

公取委は、談合の対象となる市場規模は437億円に上ることを明らかにした。

東京地検特捜部はこれを受け、同日、起訴した。

告発した法人は、電通、博報堂、東急エージェンシー、イベント制作会社の「セレスポ」と「セイムトゥー」、番組制作会社「フジクリエイティブコーポレーション(FCC)」の計6社。

業務を受注した9社・1共同事業体のうち、広告3位「ADK」(アサツー ディ・ケイ)も談合への関与を認定されたが、課徴金減免制度(リーニエンシー)に基づいて違反行為を最初に公取委に申告したため告発を免れた。残る広告大手「大広」と電通のグループ企業「電通ライブ」の2社は、談合に関与しなかったとして告発対象から外れた。


個人では、特捜部が今月8日に同容疑で逮捕した組織委大会運営局の元次長・森泰夫(56)、電通の元スポーツ局長補・逸見晃治(55)、セレスポ専務の鎌田義次(59)、FCC専務の藤野昌彦(63)の4容疑者と、在宅で捜査してきた博報堂DYメディアパートナーズの横溝健一郎元スポーツビジネス局長(55)、東急エージェンシーの安田光夫執行役員(60)、セイムトゥーの海野雅生社長(56)の3人の合計7名を告発した。 

公正取引委員会の奥村豪第二特別審査長は「本件は発注者である組織委員会側の容疑者と、広告代理店業界の売上高第1位の電通が主導していた。巨大な国家的プロジェクトである東京2020大会の運営業務などを対象とした入札談合で、社会的な影響が大きい。市場規模も大きく、国民生活に広範な影響を及ぼす悪質かつ重大な事案に該当すると判断した」と述べた。

同罪の法人に対する罰則は5億円以下の罰金。個人は5年以下の懲役か500万円以下の罰金となる。


公取委による刑事告発は、2020年12月の医薬品納入をめぐる入札談合事件以来、約2年2カ月ぶり。

公取委は2020年12月9日、医薬品卸大手4社「地域医療機能推進機構」が全国で運営する57の病院の医薬品入札で談合したとされる事件で、アルフレッサ、東邦薬品、スズケンの3社と、各社の幹部ら7人を、検事総長に告発したと発表した。メディセオも談合に関与していたが、課徴金減免制度(リーニエンシー)で事前に違反を自主申告しており、告発されなかった。

3社は2021年6月独占禁止法違反の罪で、東京地裁からそれぞれ罰金2億5000万円の有罪判決を受け、公取委からアルフレッサに1億7500万円余り、東邦薬品に1億6100万円余り、スズケンに8600万円余りの課徴金納付命令を受けた。

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