2011年6月アーカイブ

公取委は6月22日、納入業者に対し従業員を無償で派遣させたなどとして、スーパー「マルナカ」を経営する「山陽マルナカ」(岡山市)に、2億2216万円の課徴金納付と排除措置を命じた。

優越的地位の乱用は、2010年1月施行の改正独禁法で課徴金の対象となったが、命令が出たのは今回が初めて。

ーーー

改正独禁法では課徴金の適用範囲が拡大、以下が追加された。

排除型私的独占  他の事業者の事業活動を排除することによる私的独占
不当廉売、差別対価、共同の取引拒絶、再販売価格の拘束

(それぞれ同一の違反行為を繰り返した場合)
 正当な理由がないのに、競争者と共同して、ある事業者に対し供給を拒絶し、・・・
 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもって、・・・
 費用を著しく下回る対価で継続して供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせる・・・
 購入する相手方に対し、当該商品の販売価格を定めてこれを維持させること、・・・
優越的地位の濫用  自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、継続して取引する相手方に対し当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させる等の行為
・押し付け販売、経済上の利益を提供させる行為(協賛金・従業員派遣)、受領拒否、不当返品等

課徴金(違反行為に係る売上額に対する率)は以下の通り。

    製造業等 小売業  卸売業 
現行 不当な取引制限
 (中小企業)
 10%
 (4%)
 3%
(1.2%)
 2%
(1%)
支配型私的独占  10%  3%  2%
追加 (ア)排除型私的独占   6%  2%  1%
(イ) 不当廉売等
  (繰り返し)
  3%  2%  1%
(ウ)優越的地位の濫用       1%

   2009/6/5   独禁法改正案成立

ーーー

公取委によると、違反行為は以下の通り。

 

付記

公取委は2011年12月13日、日本トイザらスに対し、優越的地位の濫用で排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。
課徴金は3億6908万円。

違反行為は以下の通り。
(1) 売上不振商品等の返品
(2) 自社が割引販売を行うこととした売上不振商品等を納入した業者に対し、割引予定額に相当する額の一部又は全部を代金から減額。

 

付記

公取委は2011年12月、家電量販大手のエディオンが納入業者に無報酬で店舗業務を手伝わせたとして、同社に約40億円の課徴金納付命令と再発防止を求める排除措置命令を出す方針を固め、同社に事前通知した。

優越的地位の乱用に課徴金が認められた2010年1月施行の改正独禁法の適用は3例目で、課徴金は最高額になる。

エディオンは新規出店や店舗改装時に家電のメーカーなど納入業者に従業員の派遣を要請。「デオデオ」や「エイデン」など傘下の店舗で、無報酬または交通費だけを支給し、商品の陳列や他社製品の搬入を手伝わせた疑いが持たれている。 

公取委は2012年2月16日、エディオンに対し、40億4796万円の課徴金を納付するよう命じた。再発防止を求める排除措置命令も出した


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Eastman Chemical は622日、Sterling Chemicalsを現金1億ドルで買収する契約を締結したと発表した。

Sterling はTexas City のBPのプラント(PX及びMXプラント)に隣接し、酢酸と可塑剤のプラントを持っている。

酢酸は年産能力58万トンで、全量をBPに供給している。
可塑剤は全量を
BASFに供給していた。しかしBASF2010年末で購入契約を終結させた。このため、現在は休止中。

Eastman ではSterling の現在休止中の可塑剤設備を再稼働し、Eastman168などを含む非フタル酸系可塑剤を製造する計画で、非フタル酸系可塑剤の需要の伸びに対応する。

フタル酸エステル系可塑剤は各国で規制されている。
米国では、
 
DEHPDBPBBPはおもちゃと育児用品に使用禁止
 
DINPDIDPDNOPは子供の口に含まれる可能性があるおしゃぶりと育児用品に使用禁止
   おもちゃは
12 歳以下
   育児用品は
3 歳以下の子供を意図した製品

 DEHP:フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、 DBP :フタル酸ジブチル、BBP :フタル酸ブチルベンジル
 DINP :フタル酸ジイソノニル、DIDP :フタル酸ジイソデシル  DNOP:フタル酸ジノルマルオクチル

付記

Eastman Chemical は9月1日、ブラジルの可塑剤メーカーのScandiflex do Brasil S.A. Indústrias Químicasを買収したと発表した。
ラテンアメリカでの非フタル酸系可塑剤の需要増大に対応する。 

同社はまた、EstoniaのKohtla-Järve工場で可塑剤Benzoflexの11千トン増設を発表。更にChestertown, MDとKingsport, TNでのBenzoflex及び高分子可塑剤Admex の合計9千トンの増設計画も発表した。

ーーー

Sterling はMonsanto のTexas Cityの工場を買収し、運営するため、1986年に設立された。

工場では、スチレンモノマー、アクリロニトリル、酢酸、可塑剤、ターシャリブチルアミン、シアン化ナトリウムの6製品を生産していた。

Sterling は1992年に Tenneco Canadaからパルプケミカル部門を買収した。パルプの漂白剤の塩素酸ナトリウムの工場をカナダに4つ所有している。
同社はその後、ジョージア州Valdostaに年産
11万トンの塩素酸ナトリウム工場を建設した。
更に、豪州New South Walesでの工場建設を発表した。(実現せず)

しかし、同社は経営が悪化、20017月にChapter 11を申請した。

同社は再建のため、カナダとValdostaの塩素酸ナトリウム工場を売却した。
カナダはCanexus (旧称 Nexen Chemicals)に、
Valdosta工場はErco Worldwideに売却。

アクリロニトリル事業については赤字が続き、2005年に撤退した。

ターシャリブチルアミンはMonsantoのゴムの生産に使用されていたが、1995年にMonsantoから分離したSolutia Akzo Nobelが両社のゴム薬品事業を統合して、50/50JVFlexsysを設立した際に、Solutiaがこの事業を買い戻した。
(その後、
2007年にSolutiaAkzo持分を買収し、現在はSolutia100%子会社となっている。)

スチレンモノマープラント(775千トン)は2007年のINEOS NOVA発足に当たり、NOVA Chemicalsがスチレンモノマーの独占権を取得したが、米国のスチレン過剰対策として、同年10月にプラントを買い取ったうえで、停止した。

シアン化ナトリウムについては全量をDuPontに供給していたが、2005年に契約を打ち切り、停止した。

この結果、現在は酢酸と可塑剤だけで、可塑剤は停止している。

 


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公取委は621日、平成22年度における主要な企業結合事例を発表した。
  
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/11.june/110621zirei.pdf

事例1としてBHP Billiton Rio Tintoによる鉄鉱石の生産JVの設立について説明している。

Rio Tinto BHP Billiton200965日、両社の西豪州の鉄鉱石資産を包含する製造JVの設立の基本契約に調印、同年125日に本契約に調印した。

両社の西オーストラリアにおける鉄鉱石の生産事業についてジョイントベンチャーを設立し、管理運営を委託するもので、販売は従来通りとした。

契約調印後、各国の独禁法当局に認可の申請をしていたが、認可を得るのが難しい状況となったため、20101018日、鉄鉱石統合の断念を発表した。

2010/10/18 Rio Tinto BHP Billiton、鉄鉱石の製造JVを断念

公取委は、両社から本件JVの設立についての事前相談を受け、20106月に第1次審査を開始、同年7月に第2次審査に移行した。

同年9月に両社に対し、世界海上貿易によって供給される鉄鉱石の塊鉱及び粉鉱の生産・販売事業について競争が実質的に制限されることとなると考える旨の問題点の指摘を行った。

その後、両当事会社からの意見の提出がないまま、撤退の発表が行われ、事前審査を打ち切った。

今回、問題点の指摘を行った時点における公取委の考え方を以下の通り説明している。

ーーー

1.本件の概要

両社の西オーストラリアにおける鉄鉱石の生産事業について、両社出資の管理会社に管理運営を委託する。

生産能力の拡張については、他方が希望しないときは、一方が単独で生産能力の拡張を行うことが可能。

JVにより生産された鉄鉱石は、次の方法で各当事会社に配分される。

JVは、銘柄ごとに、各期(6か月間)の最大生産能力の見積りを両当事会社に通知
② 各社は、通知を受けて、当該期間に引受けを希望する銘柄ごとの最大生産能力に対する割合を管理会社に通知
JVは、各社からの通知に基づき、一定のルール(両社がともに50%以上の引受けを希望する場合は50%ずつを配分)に従って銘柄ごとの鉄鉱石を各当事会社に配分

各社への配分比率にかかわらず、各社は生産に要する費用を
50%ずつ負担

2.公取委の判断

1)一定の取引分野

 商品範囲:

 需要の代替性及び供給の代替性がないため、下記3つをそれぞれを別個の商品範囲として画定。
 ただし、ペレットは、両社のシェアが低く、競争に及ぼす影響は小さいと考えられるため、塊鉱及び粉鉱を検討対象とした。

  塊鉱:高炉に直接投入
  粉鉱:石灰石等と一緒に焼き固めて焼結鉱と呼ばれる塊にして高炉に投入
  ペレット:微粉状の鉄鉱石を石灰石等と混合し、球状に成形して焼き固めたもの

 地理的範囲:
 
 鉄鉱石の供給者は、海上貿易で鉄鉱石を調達する世界中の需要者に対して、ほぼ同一の価格水準で商品を供給する。
 海上貿易における鉄鉱石の価格は世界中で連動しており、地域的に差別された価格は観察されない。
 従い、世界海上貿易市場とする。

2)シェアと判断

 塊鉱

順位 会社名 市場シェア
1 Rio Tinto 3035
2 BHP Billiton 2530
3   1015
(1) 当事会社合算  5560

行為後のHHI 3,7503,850
HHI
増分     1,7501,850

* HHIは業界内の全企業のそれぞれのシェアを二乗して足し合わせるもの。
 競争を実質的に制限することとならない範囲(セーフハーバー)の指標は
 
HHI 2,500超の場合はHHIの増分150以下

塊鉱の世界海上貿易市場において、両社に対する有効な牽制力となる供給者は存在しない。
他の供給者は需要の大半を占める東アジアから遠く、両社と比較して海上輸送費の面で不利な状況にあるほか、供給余力を有していない状況にある。

両社はこれまで、異なる販売戦略を採り競争を行ってきているが、JVの設立で両社間に協調関係が生じることが、塊鉱の世界海上貿易市場の競争に与える影響は大きい。

近年の鉄鉱石需要の急増に伴う需給のひっ迫及び供給側の寡占化により、需要者からの競争圧力が働いている状況には無い。

結論:塊鉱の世界海上貿易市場における競争が実質的に制限されることとなる。

 粉鉱

順位 会社名 市場シェア
1 Vale do Rio Doce  
2 Rio Tinto 2025
3 BHP Billiton 1520
(1) 当事会社合算  4045

行為後のHHI 2,4502,550
HHI
増分      750~ 850

両社にとって有力な競争事業者が1社存在するが、東アジアから遠く、海上輸送費の面で不利な状況にある。
十分な供給余力を有していないと考えられ、両当事会社に対する有効な牽制力となっていない。

両社とその競争事業者が協調的行動を採ることにより、粉鉱の価格等をある程度自由に左右することが容易に現出し得る。

結論:粉鉱の世界海上貿易市場における競争が実質的に制限されることとなる。    

参考
三井物産資料

3)両社主張についてのコメント

両社主張

本件JVの下で生産能力の拡張が行われるものの、単独拡張の仕組みが存在することから、生産能力の拡張において両当事会社間の競争は維持される
   
各期の生産量については、両社は生産費用の50%を負担する仕組みのため、ほとんどのケースで最大生産能力まで生産が行われる。
   
両当事会社の販売部門は独立しており、各種の情報遮断措置が設けられていることから、販売面の競争は維持される。
   

公取委コメント

JVは両社の意向を汲んで、両社に通知する最大生産能力を決定することとなると考えられる。
   
両社の鉄鉱石事業の費用構造の大部分が共通化するため、両社が望ましいと考える価格水準が一致しやすくなると考えられ、どのような価格計算方法を用いるべきかについて、両社の利害が一致し、本件JV設立前と比較して、各社が競争的な行動を採るインセンティブが著しく減退する。
   
JVの設立によって、両社間では、競争的行動を採るインセンティブが減退し、両社間に協調関係が生じる。
   

4)結論

本件JVの設立により、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるおそれがある。

ーーー

このほか、下記の事例が説明されている。

北越紀州製紙による東洋ファイバーの株式取得
旭化成ケミカルズ及び三菱化学による水島地区におけるエチレン等製造事業の統合
東洋アルミニウムによる昭和アルミパウダーの株式取得
JX日鉱日石エネルギー及び三井丸紅液化ガスによる液化石油ガス事業の統合
その他
   

http://www.jftc.go.jp/pressrelease/11.june/110621zirei.pdf


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IEAが石油備蓄放出

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国際エネルギー機関(IEA)は623日、加盟28カ国がリビアからの石油供給が絶えていることに対応して6000万バレルの石油備蓄を放出することで合意したと発表した。

リビアからの石油途絶の継続で影響が出てきているとし、夏の季節需要により不足が深刻になり、世界の景気回復の支障となるとしている。

加盟国は日量200万バレルを30日間、計6000万バレル放出する。
うち、米国の放出量が全体の
50%、欧州が約30%、アジアが残り20%となる。

日本は民間備蓄義務量を国内消費の70日分から67日分に引き下げ、27日から1か月間実施する。
合計
790万バレルの放出で、加盟国全体の13%に相当する。

IEAではリビアの輸出減は日量150万バレルだが、リビア危機により5月末までに合計で13200万バレルが輸出減となったとしている。

IEAメンバー国の石油備蓄は合計41億バレルで、そのうち約16億バレルが緊急目的用に国により備蓄されている。
ネット輸入国はネット輸入量の
90日分の備蓄義務を有するが、現状は最低量をはるかに超える約146日分を備蓄している。
http://www.iea.org/netimports.asp

IEAルールのルールでは、放出は、
1)加盟各国が協調する場合
2)石油供給途絶またはその恐れがある場合
となっており、価格対策のための放出は行わない。

IEAの緊急石油備蓄放出は1974年の設立以来3回目で、最初は1990/91年の湾岸戦争時、2回目は2005年にHurricane Katrinaによりメキシコ湾岸の石油設備が破壊された時で、2001年の米同時テロ時も検討されたが見送られた。

IEAの発表を受け、北海ブレント先物は約5%安の1バレル=108ドル近辺に下落。米原油先物も5%近く下げて91ドルを割り込み、2月以来の低水準となった。

石油価格引き下げのためではないのかとの質問に対し、IEAでは、リビアの輸出減と石油の需要増が、回復途上にある世界経済にダメージを与えるのを避けるのが目的であり、価格問題ではないとしている。

現実には投機筋をけん制し、価格引き下げにつながっているが、逆に年金資金などを運用するファンドが原油価格急落の損失補てんのため株を売る可能性も指摘されている。株安が進み、消費が一段と冷え込む可能性もある。

オバマ大統領は、石油市場のひっ迫は世界経済を圧迫する可能性があるとし、今回のIEA決定を歓迎すると表明した。

一方、米石油業界とOPEC加盟国は、供給をめぐる非常事態はないとしてこれを批判した。
米石油協会は、「戦略石油備蓄は供給の非常時に利用することを意図しているが、非常事態は存在しない」としている。

イランなどOPEC加盟国も備蓄放出は正当化できないとしている。ある湾岸国のOPEC代表は「1バレル150ドルに上昇したわけでもなく、このような動きにでる理由はない。市場は供給不足に陥っていない。クウェートやサウジはこれまでも増産しているが、買い手はそれほど多くない。IEAは米国とともに政治的に動いているだけだ」と述べた。 

ーーー

OPEC20091月から生産枠を、イラクを除く「11カ国の20089月の生産量2,904.5万バレルから420万バレルカット」する2484.5万バレルとしている。(200811月時点の枠 2730万バレルからは245万バレルの減となる)

2008/12/18 OPEC 大幅減産決定

その後、相場は回復し、実際の産油量も今年4月にはイラクも含めて日量2880万バレルまで増えていた。
(イラクの生産量は250万バレル程度)

今年6月のOPEC総会で、サウジ、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦の4カ国はアジアの需要増などを理由に、さらに150万バレル多い日量3030万バレルへの引き上げを提案した。
「石油離れ」を加速しかねない1バレル100ドル超の原油価格は望まないと考えた。

しかし、議長国であるイランが他の6カ国とともに増産を拒否した。

サウジは総会に先んじて静かに増産に乗り出しており、生産量は2008年以降初めて日量900万バレルを超えていた。
サウジは第
3四半期までに生産量を日量1000万バレルまで増やす可能性がある。
(2008年末までのサウジの生産枠は847.7万バレル)

この結果、1986年以降のOPECの生産枠制度が事実上、なくなり、サウジは好きなだけ原油できることとなった。

サウジのヌアイミ石油鉱物資源相は総会後に、「市場では不足が生じない」と述べた。

しかし、IEAはサウジによる増産のスピードと、リビアが供給していた軽質原油を確保できるかといった点に疑問を呈しており、これが今回の備蓄放出の理由とされている。

JPモルガンは、「今戦略備蓄を放出すれば、消費国は生産国の増産余力をほとんど信用していないというメッセージや、OPECの短期的・長期的な価格戦略への懸念を表明することになる」とし、懸念を表している。


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欧州の原発の状況

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European Nuclear Societyによると、20111月現在の欧州の原子力発電所は以下の通り。

  操業中
MWe
Belgium 7 5,926
Bulgaria 2 1,906
Czech Repuplic 6 3,722
Finland 4 2,716
France   58 63,130
Germany 17 20,490
Hungary 4 1,889
Netherlands 1 487
Romania 2 1,300
Slovakian Republic 4 1,792
Slovenia 1 666
Spain 8 7,516
Sweden 10 9,303
United Kingdom 19 10,137
EU 合計 143  130,978
Switzerland 5 3,238
Russia 32 22,693
Uklaine 15 13,107
Armenia 1 408


これらのうち、フランスとイギリスは原発推進派で、ドイツは、2022年までにすべて閉鎖することを閣議決定した。

2011/6/15 イタリア、国民投票で原発反対

このうち、イギリスは日本と同様、海岸立地だが、フランスとドイツは内陸の川沿いが多い。
その他の国でも内陸立地が多い。

以下、国別の所在地の地図は高度情報科学技術研究機構の「原子力百科事典ATONICA」による。
但し、資料が若干古く、表の数値(
EU発表ベース)と若干異なる。  

フランス

稼働中 廃止 建設中
Belleville 2基 
Bugey 4基  1基 
Cattenom 4基 
Chinon 4基  3基 
Chooz 2基  1基 
Civaux 2基 
Cruas 4基 
Dampierre 4基 
Fessenheim 2基 
Flamnville 2基  1基 
Golfech 2基 
Gravelines 6基 
Le Blayais 4 
Monts D'arree 1基 
Marcoule 4基 
Nogent Sur Seine 2基 
Paluel 4基 
Penly 2基 
St.Alban-St.Maurice 2基 
St.Laurent-Des-Eaux 2基  2基 
Super Phenix 1基 
Tricastin 4基 
合計 58基  13基  1基 

ーーー-

ドイツ

稼働中 廃止 建設中
Avr Juelich 1基 
Biblis 2基 
Brokdorf 1基 
Brunsbuettel 1基 
Emsland 1基 
Grafenrheinfeld 1基 
Greifswald 5基 
Grohnde 1基 
Grosswelzheim 1基 
Gundremmingen 2基  1基 
Isar 2基 
KNK 2基 
Kruemmel 1基 
Lingen 1基 
Muelheim-Kaerlich 1基 
MZFR 1基 
Neckarwestheim 2基 
Niederaichbach 1基 
Obrigheim 1基 
Philippsburg 2基 
Rheinsberg 1基 
Stade 1基 
THTR-300 1基 
Unterweser 1基 
Vak Kahl 1基 
Wuergassen 1基 
合計 17基  20基 

ーーー

英国

稼働中 廃止 建設中
Berkeley 2基 
Bradwell 2基 
Calder Hall 4基 
Chapelcross 4基 
Dounreay DFR 1基 
Dungeness 2基  2基 
Hartlepool 2基 
Heysham 4基 
Hinkley Point 2基  2基 
Hunterston 2基  2基 
Oldbury 2基 
Sizewell 1基  2基 
Torness 2基 
Trawsfynydo 2基 
Windscale 1基 
Winfrith SGHWR 1基 
Wylfa 2基 
合計 19基  25基 


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会期末を迎えた通常国会は6月22日の衆院本会議で、会期を8月31日まで70日間延長することを民主党などの賛成多数で議決したが、ここに至るまで、菅首相と民主党幹部との間で猛烈なやり取りがあった。

首相は第2次補正予算案と特例公債法案に加え、再生可能エネルギー法案の成立を求め、野党の反対に備え、60日ルール適用を前提に70日延長で押し切った。

この法案は正式には「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」で、震災当日の3月11日午前に閣議決定した。

 1.法案の背景・目的

エネルギー安定供給の確保、地球温暖化問題への対応、経済成長の柱である環境関連産業の育成のためには再生可能エネルギーの利用拡大が急務であり、昨年6月に閣議決定された「エネルギー基本計画」、「新成長戦略」に盛り込まれている再生可能エネルギーの固定価格買取制度を導入する。

  2.法律案の概要

再生可能エネルギー源を用いて発電された電気について、国が定める一定の期間・価格で電気事業者が買い取ることを義務付ける。

また、買取に要した費用に充てるため各電気事業者がそれぞれの需要家に対して使用電力量に比例した賦課金(サーチャージ)の支払を請求することを認めるとともに、地域間でサーチャージの負担に不均衡が生じないよう必要な措置を講じる。

* 現行の余剰電力買取制度で既に電気代のうちに「太陽光発電促進付加金」が含まれている。

自然エネルギー普及を目指す超党派議員や民間人による集会が、6月15日、衆院議員会館大会議室で開かれた。

孫社長は、「再生可能エネルギー法案成立に向けて」のプレゼンテーションを行い、法案成立を強く要請した。

孫社長の大規模太陽光発電所(メガソーラー)計画はこの法律を前提にしている。

菅首相も出席し、「私の顔を本当に見たくないなら、早くこの法案を通した方がいい」と述べた。

谷垣自民党総裁は、首相が退陣時期を明確にすれば特例公債法案と2次補正の成立に協力する構えであったが、再生エネルギー法案に関しては首相発言を「立法府を侮辱する発言だ」と批判した。

ーーー

太陽光発電については、既に2009年11月から余剰電力買取制度が開始されている。

買取期間は10年で、余剰分買取
概要は以下の通り。( )は2011年度契約申込みの場合

  10kW未満 10~500kW 500kW以上
住宅用 48円/kWh
(42円)
24円/kWh 買取なし
非住宅用 24円/kWh
(40円)
24円/kWh 買取なし
発電用 買取なし 買取なし 買取なし

新しい再生可能エネルギー法案では、住宅用の10kW未満については現行通りの余剰買取とし、その他については全量買取とする。

  10kW未満 10~500kW 500kW以上
住宅用 現行通り
余剰買取
全量買取 全量買取
非住宅用 全量買取 全量買取 全量買取
発電用 全量買取 全量買取 全量買取

法案の概要は以下の通り。

1. 買取対象
 太陽光、風力、水力(3万kW未満の中小水力)、地熱、バイオマスを用いて発電された電気。

2.買取義務の内容
 一般電気事業者等が、買取義務(買取に必要な接続・契約の締結に応じる義務)を負う。

3.買取期間・価格
   以下の点を勘案して、経済産業大臣が定める。
    買取期間:再生可能エネルギーの発電設備が設置されてから設備の更新が必要になるまでの標準的な期間
    買取価格:再生可能エネルギーの発電設備を設置し電気を供給する場合に通常必要となる発電コスト

   制度開始時点においては、以下の買取価格と買取期間を定めることを想定。

  太陽光発電以外 太陽光発電
住宅用     左記以外の事業所用、発電事業用等
買取価格 15~20円/kWhの範囲内 当初は高い買取価格を設定。
太陽光発電システムの価格低下に応じて、徐々に低減させる
買取期間 15~20年の範囲内 10年 15~20年の範囲内

4.買取費用の負担方法
  買取に要した費用に充てるため、使用電力量に比例したサーチャージの支払を請求することを認める。

  地域間でサーチャージ単価が同額となるよう、サーチャージ単価は国が定める。
  電気事業者の買取費用の負担の不均衡を解消するため、国が指定する費用負担調整機関を通じて調整する。

5.その他

  少なくとも3年ごとに、再生可能エネルギーの導入量、サーチャージの負担の影響等を勘案し、制度の見直しを行う。
  2020年度を目途に廃止を含めた見直しを行う。

付記

同法案は与野党協議を経た修正案が8月23日の衆院経済産業委員会で可決され、同日中に衆院を通過、参院審議を経て8月26日に成立する。

修正案のポイントは以下の通り。

  政府案 修正案
産業用電気料 一律上乗せ 電気使用量が製造業平均の8倍を超える企業は負担を8割以上緩和
買い取り価格 経産相諮問機関が決定 調達価格等算定委員会(国会同意人事)の意見を聴取
被災地電気料 特措法施工時から上乗せ 2013年3月まで上乗せせず。

 

ーーー

問題点

1.基本となる「エネルギー基本計画」は見直しが決まっており、基本がないままで、計画のみ先行。

2.自然エネルギー推進のため高値での全量買取となる。
  結果としてサーチャージが高くなり、電力使用の高い事業の採算が悪化する。家計にも影響。

  


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田辺三菱製薬と日本赤十字社は6月17日、田辺三菱製薬の子会社血漿分画製剤の製造販売会社のベネシスと日本赤十字社のそれぞれの血漿分画事業部門を2012年4月1日を目途に統合する検討を開始することに合意した。

新法人は、献血者の善意に基づき無償で得られた血液を原料とした血液製剤の国内自給の達成という公益性の高い目標のために取り組む営利を目的としない法人とする。

血漿分画製剤の国内必要原料を一括して処理できる能力を持つ大規模
アルコール分画工場の新設を行い、効率的な生産体制によって血液製剤の国内製造における中核的役割を担うことを目指す。

血漿分画製剤は 、献血で得られた血漿成分をプールして、治療に有益なタンパク質を取り出し、高純度に精製したもので、以下のものがある。

 ・アルブミン製剤:
出血性ショック、熱傷、難治性ネフローゼ、低蛋白血症
     (血液中の水分などを血管内に保持、種々の物質を運搬)

 ・免疫グロブリン製剤:先天性無γ-グロブリン血症、川崎病
     (ウイルスなどの病原体の感染を予防、免疫機能調整)

 ・血液凝固因子製剤(第Ⅷ因子、
第Ⅸ因子、フィブリノゲン、アンチトロピンなど):出血の際の止血、血友病

これらの製造は、ハーバード大学のEdwin J. Cohn 教授が開発した低温エタノール分画法で行われる。
低温下でエタノー ル濃度、pH等を調整することにより血漿から、グロブリン、アルブミンなどの血漿タンパク質を次々に分離させていくもの。

   日本血液製剤協会資料 http://www.ketsukyo.or.jp/glossary/ka14.html

2003年7月施行の「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(血液法)では、基本理念の一つとして血液製剤の国内自給の確保と安定供給が定められている。

また世界保健機関は加盟国に対して国内自給の達成を目的とした国家的、効率的かつ持続可能な血液事業を求めている。

しかし、現状では、国内各メーカーの生産規模が海外競合メーカーに比べて小さく、製造コストを含め事業の効率化にも限界があることから、国内自給は達成されておらず、特にアルブミン製剤については58.7%で、国内製造が全く行われていない製剤もある。

このため、両社は事業統合により、スケールメリットを生かして生産および供給段階でのコストを低減し、事業の健全性を確保することによって、血液製剤の国内自給達成をめざす。

平成21年度薬価ベースでの両社の血漿分画製剤売上高の合計は約370億円となっている。

ーーー

ベネシスは、田辺製薬と合併前の三菱ウェルファーマが2002年10月に血漿分画製剤の製造部門を会社分割し、新設した。
(その後、R&D、営業企画・学術機能などを移管)

血液分画製剤事業の元はミドリ十字の事業である。

ミドリ十字は過去に、この事業で薬害エイズ事件、薬害肝炎事件を起こしている。

2008/1/24 資料 薬害エイズ事件

2008/1/16 薬害肝炎救済法 成立


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原発の安全対策

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共産党の小池晃氏のツイッター(6月20日)が話題になっている。

共産党が今日、原子力安全保安院から受けた説明によれば、原発の安全対策が十分だと判断した理由のうち、水素爆発対策ができたと判断したのは、「原子炉建屋に穴を開けるドリル」が揃ったからだそうです。

ーーー

これは事実である。

原子力安全・保安院は6月7日、シビアアクシデントが発生した場合でも迅速に対応する観点から措置すべき事項のうち、直ちに取り組むべき措置として、福島第一以外の原子力発電所においてシビアアクシデントへの対応に関する事項について実施するとともに、その状況を報告することを求め、原子力保安検査官が立入検査等を行い、シビアアクシデントへの対応に関する措置の実施状況について厳格な確認を行った。

これについて6月18日に発表した。
  
他の原子力発電所におけるシビアアクシデントへの対応に関する措置の実施状況の確認結果について

海江田万里経済産業相は6月18日、シビアアクシデント対策について「安全性について厳しいチェックをし、着実に実施されていることを確認した」として、安全確認が完了したと宣言した。

確認事項は以下の通り。

① 中央制御室の作業環境の確保
② 緊急時における発電所構内通信手段の確保
③ 高線量対応防護服等の資機材の確保及び放射線管理のための体制の整備
水素爆発防止対策
⑤ がれき撤去用の重機の配備

④ 水素爆発防止対策は、
炉心損傷等により生じる水素の爆発による施設の損壊を防止するため、緊急時において炉心損傷等により生じる水素が原子炉建屋等に多量に滞留することを防止するための措置が講じられていることを確認する。

これについての確認結果(沸騰水型原子炉:BWRの場合)は以下の通りとなっている。

全ての交流電源が喪失した時において、炉心損傷等により発生した水素が原子炉建屋内に漏れ出した場合、原子炉建屋内への多量の水素の滞留を防止するため、原子炉建屋屋上に穴あけにより排気口を設けることとし、穴あけ作業に必要な資機材(ドリル等)を配備し、または手配済みであることを確認した。また、水素が滞留する前に作業が完了できること等、作業の安全性や確実性を十分に考慮した手順書を整備するとともに、訓練等を通じ継続的に改善することを確認した。
穴あけ作業に関する訓練への立会い等により、原子炉建屋屋上に梯子を通じて登り作業資機材を運び上げる作業、建屋天井を模擬したコンクリートに資機材を用いて穴を開ける作業が実施可能(事例として、事務所出発から穴あけ完了までに約80分)であることを確認した。
中長期的措置として、原子炉建屋の頂部に水素ベント装置を設置するとともに、原子炉建屋内に水素検知器を設置する計画であることを確認した。

ーーー

あるブログでは次のように述べている。

福島事故でもドリルで穴を開けて水素ガスを逃がす議論があって、電気ドリルでやれば引火するとして避けられたと記憶します。だから「ガスが溜まる前に行って、穴を開けてこい」になっているのですが、全電源喪失で過酷重大事故が進行している混乱の最中に、誰が適切なタイミングで指示を出せるのでしょうか。行かせるタイミングを誤れば爆発させに行くことになるのですよ。

付記

6月22日付の河野太郎議員ブログ「ごまめの歯ぎしり」は、全ての原発がシビアアクシデントへの対応を終えていないとして、問題点を列挙している。
水素対策については、水素放出用穴あけ作業必要機材配備でさえ、志賀原発では6月末、女川原発、浜岡原発では7月末完了予定となっている。


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ベルギーのTessenderloに本拠を置くTessenderlo Group614日、塩ビ関連事業をIneosグループのKerlingに売却すると発表した。

Kerlingは旧称 Hydro Polymerで、Ineos2007年にNorsk Hydro から買収した。
    
2007/5/25 INEOSNorsk Hydro からポリマー事業を買収

今回Tessenderlo Groupが売却するのは次の事業:

  ・クロルアルカリ  ベルギー・Tessenderlo  塩素 400千トン
  ・VCM (子会社LVM) Tessenderlo  550千トン
  ・PVC (元DSM) オランダ・Beek
(元SAV) フランス・Mazingarbe

合計
480千トン 
  ・有機塩素誘導品  主としてトルエン系  

同社の塩ビ事業は元はDSMとフランスのSAV(Société Artésienne de Vinyle)の事業。
Tessenderlo 1976年にSAVを買収、Tessenderlo市にクロルアルカリを建設した。
DSMSAV1983年に塩ビ事業を統合してLVM(Limburgse Vinyl Maatschappij)としたが、1989年にTessenderloDSMの持分(50%)を買収し、LVM100%子会社とした。
現在は
VCMプラントをLVMの名前で運営している。

塩ビパイプ事業やプロファイル(塩ビ窓枠、ドア材など)は継続するため、今後はPVCを購入する。

ーーー

Tessenderlo Group19世紀末に設立され、現在下記の6つの事業を行っている。

1)無機  硫酸カリ(肥料)、燐鉱石(家畜飼料)
   
2)クロルアルカリ、塩ビ  上記
   
3)Tessenderlo Kerley  硫黄ベースの液体肥料
   
4)塩ビパイプ、プロファイル  
   
5)ジェラチン  
   
6)その他  医薬品、有機塩素誘導品、コンパウンド

同社は今回の売却で汎用品事業から離れ、スペシャルティ事業に専念する。
今後の中心は、
 食品、農業関連 (
Tessenderlo Kerley
 ジェラチン関連
 塩ビパイプ、水処理事業

ーーー

Ineos2001年にEVCICIEniChem50/50JV)の過半を取得、2005年に100%子会社とした。
   
2006/6/14 事業買収で急成長した化学会社

2007年にKerling(旧称 Hydro Polymer)をNorsk Hydro から買収した。
    
2007/5/25 INEOSNorsk Hydro からポリマー事業を買収

今回の買収でIneosの欧州の塩ビ事業は更に増大する。  

欧州のPVC能力
Norsk Hydro 2007/2報告 単位:千トン)
EVC  1,340
Solvin  1,195
Atofina  905
Hydro PolymerKerling  625
Vinnolit  620
LVMTessenderlo  450
Shinetsu  400
Vestolit  360
Cires(信越 100%)  200
Aragonesas  190
Hellenic Petrol  100

 


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公正取引委員会は6月14日、企業合併の新たな審査指針(ガイドライン)を公表した。

政府は昨年6月に、合併審査の迅速性、透明性を高めるために基準を見直す方針を決定。公取委はパブリックコメントを募集し、最終案作りを進めていた。

2011/3/8 公取委、企業結合規制の見直し案に対する意見募集

1)手続き

公取委は、「企業結合審査の手続に関する対応方針」を決め、従来の「企業結合計画に関する事前相談に対する対応方針」を廃止する。(7月1日適用)

審査期間において、届出会社から説明を求められた場合又は必要と認める場合には、その時点における論点等について説明する。また、届出会社は、審査期間において、いつでも意見書又は必要と考える資料(問題解消措置含む)を提出することができる。

2011/2/26 公取委、合併の事前審査を廃止 

2)運用指針

公取委は、「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」を見直し、審査の目安となるシェアについて、国内だけでなく世界的な競争状況を勘案する。

また、市場規模が縮小している場合は合併を認めやすくすることも明記した。企業合併で値上げしようとしても需要家が調達先を別の競争相手の企業に乗り換えることが可能なため、合併が競争を制限するとは考えにくいと判断する。

主なポイントは以下の通り。青字部分が追加)

1)「一定の取引分野」の「地理的範囲」で以下を追加

国境を越えて地理的範囲が画定される場合についての考え方

前記(1)の基本的考え方は、国境を越える場合にも当てはまる。すなわち、ある商品について、内外の需要者が内外の供給者を差別することなく取引しているような場合には、日本において価格が引き上げられたとしても、日本の需要者が、海外の供給者にも当該商品の購入を代替し得るために、日本における価格引上げが妨げられることがあり得るので、このような場合には、国境を越えて地理的範囲が画定されることとなる。
例えば、内外の主要な供給者が世界(又は東アジア)中の販売地域において実質的に同等の価格で販売しており、需要者が世界(又は東アジア)各地の供給者から主要な調達先を選定しているような場合は、世界(又は東アジア)市場が画定され得る。

2)単独行動による競争の実質的制限についての判断要素

(1) 当事会社グループの地位及び競争者の状況

逆に、当該商品の需要が継続的構造的に減少しており、競争者の供給余力が十分である場合には、当事会社グループの価格引上げに対する牽制力となり得る。

(2) 輸入

輸入圧力が十分働いているか否かについては、現在輸入が行われているかどうかにかかわらず、次の①~④のような輸入に係る状況をすべて検討の上、商品の価格が引き上げられた場合に、輸入の増加が一定の期間に生じ、当事会社グループがある程度自由に価格等を左右することを妨げる要因となり得るか否かについて考慮する。

(4) 隣接市場からの競争圧力

隣接市場において十分に活発な競争が行われている場合や、近い将来において競合品が当該商品に対する需要を代替する蓋然性が高い場合には、当該一定の取引分野における競争を促進する要素として評価し得る場合がある。

需要の減少により市場が縮小している商品について、競合品が当該商品に対する需要を代替する蓋然性が高い場合も同様である。

(5) 需要者からの競争圧力

市場の縮小
当該商品の需要が減少して継続的構造的に需要量が供給量を大きく下回ることにより、需要者からの競争圧力が働いている場合には、当事会社グループが価格等をある程度自由に左右することをある程度妨げる要因となり得る。

ーーー

公取委は現在、新日本製鉄と住友金属工業の合併計画の1次審査を6月30日まで行っているが、これには改正後の基準を前倒しで適用する。

2012年10月の合併を目指す新日鉄と住友金属の粗鋼生産シェアは、国内で合計40%だが、世界では3%強にとどまる。
東アジアでのシェアは国内に比べて大幅に下がる。

なお、本年度の「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」改正(5月成立、7月施行)では、「公正取引委員会との協議制度」が創設された。

「主務大臣が計画を認定をしようとするに際して、当該計画に従って行おうとする措置が、事業者の営む事業の属する事業分野における適正な競争が確保されないおそれがある場合として政令で定める場合に該当するときは、あらかじめ公正取引委員会に協議するものとすること」

新日本製鉄と住友金属工業は7月に改正産活法の適用を経産省に申請する。

経産相と公取委の協議により合併審査の透明性・迅速性の向上が期待できる。
改正後は、公取委は経産相の意見に回答しなればならない。

 


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人民元 弾力化1周年

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中国の中央銀行である中国人民銀行は20106月19日、「人民元相場の弾力性を強化する」との声明を発表、 2008年8月から固定していた人民元を再び管理フロート制に戻した。

それから1年が経過した6月17日、中国人民銀行は人民元の対ドル基準値を6.4716元と、最高値に設定した。
これを受け、人民元は一時1ドル=6.4634人民元の最高値を記録、終値も前日同値の6.4744人民元で最高値となった。

一時最高値は弾力化後 5.61%の上昇となる。

中国政府はインフレ対策のため、人民元の緩やかな上昇を容認している。

市場では中国政府が、元相場の1日の値幅制限を緩和し、基準値からの変動幅を現在の±0.5%から±1.0%に広げるのではないかと取沙汰されている。

元相場の対ドル上昇は輸出企業に悪影響を与えている。
但し、対ユーロ、対日本円では1年前に比べ下落しており、EUや日本向け輸出条件は好転している。

 


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米国の未来予測専門誌The Futurist (May-June 2011)のカバーストーリーは「Solar Power from the Moon」で、月面に太陽光パネルベルトを設置して電力を生産する「月太陽発電 Luna Ring」プロジェクトを紹介した。  

これは清水建設の技術研究所が推進する7つの未来型メガプロジェクト「シミズ・ドリーム」の一つ。

月太陽発電 Luna Ring  
Green Float 環境アイランド 「植物質な都市」の提案
Try 2004 ピラミット型 空中立体都市構想
インターセルシティ 持続可能な環境調和型都市
宇宙ホテル 宇宙観光旅行
月面基地 月の資源を利用した基地計画
アーバン・ジオ・グリッド構想 地上と地下の共存
デザート・アクア・ネット 砂漠に湖を。運河ネットワークによる新しい地球利用の提案。

月太陽発電 Luna Ringは清水建設の20余年にわたる宇宙建設研究をべスに、夢のある将来像を描いたもの。

エネルギーを化石燃料に依存するパラダイムから月からの無限に近いクリーンエネルギーを自由に使うという発想へ転換するもので、月の赤道を周回する太陽電池を設置し発電した電力をマイクロ波などで地上へ伝送する
人類が使うエネルギーの全部の量を月から送り、電力供給と水素製造を行う
食糧・水の確保や水素社会が促進されると同時に化石燃料の燃焼を停止させ、炭酸ガスの排出を低下させる

・絶え間なく太陽光発電をするため月赤道上の全周11,000km、幅数kmから最大400kmに成長する太陽電池群を設置。

・月が地球に向いている「月の表側」にエネルギー伝送施設を配置、
 「月の裏側」に太陽光が当たる場合は、このケーブルで伝送施設まで送電。


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SABIC615日、イタリアのMontefibreとの間でカーボンファイバーの技術導入契約を締結したと発表した。

SABIC及び全世界の子会社で技術を使用できるが、まず、サウジに建設するカーボンファイバー工場に適用する。

両社はまた、Montefibreのスペインの既存のアクリル繊維製造工場に隣接して、新しくカーボンファイバー工場を建設するFSを実施する覚書も締結した。これによりサウジプラントの製品開発を早め、需要家に先行販売を行うもの。

サウジの計画は能力は年産3,000トンで、中東及び国際市場での販売を目指す。

SABIC2009年にSipchemとの間で新プロジェクトでの相互協力覚書を締結したが、その中に、この計画が含まれている。

その後、MMA関連については三菱レイヨンと、アクリロニトリルについては旭化成と契約を締結している。

SABICの計画:投資額 32億ドル

 MMA  250千トン  三菱レイヨンとJV Saudi Methacrylates Company 
 PMMA  30千トン
 アクリロニトリル  200千トン  旭化成とJV Saudi Japanese Acrylonitrile Company
 青酸ソーダ  40千トン
 ポリアクリロニトリル  50千トン  
 ポリアセタール  50千トン  
 カーボンファイバー  3千トン  

2009/5/11  サウジのSABICSipchem、新プロジェクトで相互協力の覚書

ーーー

Montefibre1972年にMontedison の繊維関連企業を統合して設立された。

その後、順次事業を分離し、現在はアクリル繊維のみを扱っている。

工場は2か所
①スペインの
100%子会社Montefibre Hispania 
  年産
95千トン
②中国の吉林市 
Jilin Qifeng Chemical Fiber (吉林奇峰化繊)との50/50JVのJilin Jimont Acrylic Fiber
  年産100千トン

ーーー

これとは別に、Dow Chemical 66日にトルコのアクリル繊維メーカーのAksa Akrilik Kimya Sanayiiとの間で、カーボンファイバーと誘導品を製造するJV設立の覚書を締結したと発表した。

Aksa のアクリル繊維の製造能力は年産308千トンで、1プラントでは世界最大。

Aksa1968年に設立され、トルコのYalova市に1971年に年産5千トンのアクリル繊維プラントを建設、1986に100千トンに、1997に200千トンに拡大、2007年に現在の能力に引き上げた。

カーボンファイバーの能力は年産1,500トンで、現在倍増中とされる。

付記 下記の通り修正

ーーー

PAN系炭素繊維では東レ、東邦テナックス、三菱レイヨンの3社が海外の拠点を持ち、世界市場のほとんどを押さえている。

    現在の能力

東レ  17,900トン
東邦テナックス 13,500トン
三菱レイヨン 8,150トン
3社 計 39,550トン

2006/9/9 炭素繊維

なお、東レは2011年1月に、韓国で年産2,200トンの量産工場を建設し、2013年に稼働すると発表している。

これに対し、韓国の暁星は6月14日、韓国企業で初めて炭素繊維の開発に成功したと発表した。
2013年までに2500億ウォン(約186億円)を投じ、全羅北道全州市の親環境複合産業団地に年産2
,000トン規模の炭素繊維工場を建設する。
2020年までに総額1兆2000億ウォンを投じ、年産17,000トンを確保する計画という。


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東京電力は6月14日、福島第1原発で放射性物質を高濃度に含む汚染水を浄化するシステムの一部の試運転を始めた。

水漏れや流量不足が見つかったが、その後の補修や点検で改善した。

先ず、放射性セシウムなどを取り除く米 Kurion社の装置で動作を確認したところ、セシウムの量を最大3300分の1にできた。

15日午後からストロンチウムなどを処理するフランスのAreva製の装置に低濃度の汚染水を流し、性能をチェックする。
次にKurionの装置と組み合わせた最終試験も実施し、高濃度汚染水の処理を17日から行う。

すべての装置が順調に動けば、1日1,200トンの高濃度汚染水を流して浄化、放射線物質の濃度を1000分の1から1万分の1まで下げられるという。

6月末~7月初めには原子炉の冷却水として再利用する「循環注水冷却」を始める。

高濃度汚染水はタービン建屋などに10万トン以上たまっており、日々増え続けている。来年3月末までに計25万トンを処理する計画。

費用は年末までに合計で531億円となる。

汚染水浄化装置の概要は以下の通り。

1.油分離装置 (東芝)  

滞留水に含まれる油分及びスラッジを自然浮上分離により除去する。

2.セシウム吸着塔 (米 Kurion社)

3種類の吸着剤を装填した吸着塔で放射性セシウムやヨウ素を除去する。

Kurionが独占権を持つ無機吸着媒体 "Ion Specific Media"によって水から放射性物質を取り除き、ガラス固化により容量を減らして永久的に固定化する。
これは、スリーマイル島原子力発電所における汚染水除去の手法を改良したもの。

他の基材の場合は海水ではうまく機能しないが、これは、pH、海水、表面活性剤に対してほとんど問題なく利用できるという。

Kurion社は3月29日にこの媒体の供給が可能なことを発表、東電が交渉して決定した。
決定後、わずか5週間で主要機器と媒体が到着した。

Kurion発表 http://www.businesswire.com/news/home/20110606005809/ja/

Kurion社は2008年創業で、名前は Marie Curie からのKur Ion を合わせた造語。

3.除染装置 (仏 Areva社)

汚染水を攪拌しながら特殊な薬剤を注入、沈殿を生成させて浄化された上澄みを抜き取る。
セシウムのほかストロンチウムなどを砂に吸着させる。

4.淡水化装置

海水の塩分を除去(①逆浸透膜、②蒸発濃縮)

 ②は8月及び10月に稼働の予定。

ーーー

東電ではこの処理で発生する汚泥の1cm3あたり1億ベクレルという高濃度の放射性廃棄物が2000m3(ドラム缶1万本)発生するとみている。
そこに含まれる放射性物質は20京ベクレルに達する。

この高濃度放射性廃棄物は、一時的に敷地内に保管する計画は示されているが、最終処分までの道筋は未定となっている。

現行の原子炉等規制法では今回の廃棄物を処理するための規定がなく、保安院は専門家の意見を聞きながら基準作りを進める。 


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原子力発電再開の是非などを問うイタリアの国民投票は6月13日に締め切られ、成立条件の過半数を上回る投票率に達し成立した。国内投票分の開票で原発反対票が94.53%となり、同国の原発建設は将来的にも不可能になった。
原発を推進してきたベルルスコーニ首相は敗北を認め、「イタリアは原発にさよならを言わなければならないだろう」と述べた。

イタリアは1986年のチェルノブイリ事故をきっかけに原発に反対する世論が高まり、1987年行われた国民投票の結果、原発の建設や運転が禁止された。
1990年に原発を全廃し、現在、原発はゼロ。

その後、慢性的な電力不足を抱えながら、フランス、スイス、スロベニアなど隣国からの輸入で、かろうじて電力需要をまかなってきた。

ベルルスコーニ首相は脱原発政策を転換、2009年2月にフランスと協力協定を結び、イタリア国内で原子力発電所を4基建設し2020年までに運転を始めると発表した。

これに対し、再開に反対する野党などが署名を集め、国民投票の実施を求めて憲法裁判所に提訴、憲法裁判所は本年1月、原子力発電所の再開について、国民投票で是非を問うことを認める判決を下した。

その後に起こった福島原発事故が今回の結果に与えた影響は大きいと思われる。

ーーー

欧州各国の状況は以下の通り。なお、日本には現在54基ある。

フランス:59基 推進

原発による電力供給の比率が世界一の75.1%(日本は29%、アメリカ20%)という原発大国。
ドイツ、英国、イタリアなどの近隣諸国にも電気を輸出している。

英国:19基 推進

英国の公共放送TV Channel 4 の長編ドキュメンタリー「The Global Warming Swindle(地球温暖化詐欺)」では、炭鉱ストに怒ったサッチャーが原子力への移行を狙い、CO2温暖化仮説を利用したとしている。

政府は2008年、今後予測されるエネルギー需要を満たすため、2025年まで原発建設を推進する計画を発表した。
7カ所で原子炉12基を建設する。

ドイツ:17基 閉鎖へ

2002年に原子力法改正で脱原発を決定。
  脱原発期限は2021~23年

政府は2010年秋、原発全廃方針を転換し、原発延命に転じていたが、福島第一原発の事故を受け、本年3月に原発の運転を延長する政策を3カ月間凍結した。

2011年6月、2022年までにすべて閉鎖を閣議決定した。
 運転一時停止中の8基はそのまま閉鎖。うち1基は「予備機」として2013年まで温存
 残る9基は、2015年、17年、19年に1基ずつ、2021年に3基、22年に最後の3基を閉鎖する。
メルケル首相は、「フクシマが私の考えを変えた」と述べた。

なお、ドイツは原発停止で不足する電力を隣のフランスから輸入する。

スウェーデン:10基 廃止方針を修正

1980年に国民投票で世界初の脱原発を決めた。 
   2010年までに原子力発電所を段階的に廃止する。

2009年2月、政府が1980年の方針を修正。
  エネルギー構造の転換は今後も続けていく。
  既存の10基の原子炉の寿命が来た際に必要なら(代替不能なら)更新を認める。

スペイン:8基 維持

1983年に左派ゴンザレス政権が原発の建設凍結(モラトリアム)を宣言、9基の建設計画が凍結された。

政府は老朽化したガロナ原発を2013年に閉鎖することも決めている。
残り7基については2020年まで運転を続ける方針だが、コフレンテス原発の10年間延長で反対運動が起こっている。

ベルギー:7基 維持

1999年6月に連立政権が発足し、2003年1月には脱原子力法が成立した。
  運転中の7基が2015年から2025年にかけて順次閉鎖、新規建設も禁じた。

しかし、電力の安定供給への懸念、地球温暖化ガス削減目標の達成や代替エネルギー確保に伴う電気料金の高騰などにより、2009年10月に政府は2015年閉鎖予定のドール1、2号機、チアンジュ1号機の運転を条件つきで10年間延長することを発表した。

チェコ:6基 推進

国営電力CEZはテメリンに2基、南東部ドゥコバニー(Dukovany)で1基、スロバキアで最大2基を増設する計画で、原子力安全局は福島第1原発の事故を受けても、原発拡大計画の見直しを直ちには行わない方針を明らかにしている。

スイス:5基 閉鎖へ

脱原発法は、1979年、1984年、1990年の各国民投票ですべて否決されたが、1990年の国民投票で「今後10年間の新規原発建設凍結、原発の存続と効率的なエネルギー政策推進」が可決した。

福島原発事故後、ドイツに続き「脱原発」政策にかじを切った。
政府は5月25日、国内に5基ある原発を、寿命を迎える2034年までに廃炉とし、改修や新規建設はしないとの国家目標を決めた。

オランダ:1基 維持

1995年に政府が原発新設計画を無期延期、1997年には28年間運転した原発1基を閉鎖した。

残る1基は1994年に「30年運転後の2003年末に閉鎖する」と議会決定したが、高等行政裁判所が議会決定を違法と裁定、新政権が40年運転を認める方針を決めた。

政府は2005年9月、原発の寿命を60年に延長、2033年まで運転継続することを公式発表した。

政府は原発増設を進めているが、経済大臣は新原発建設には日本での事故を当然考慮にいれると述べた。

オーストリア:0 禁止

1971年には原発の導入を決定、翌年、同国初の原発が着工され、1976年にはさらに国内3カ所で原発が計画された。

しかし、1978年11月、完成していた原発1号機の稼動開始の可否を問う国民投票で、「反対」が過半数を獲得、稼動が見送られた。

1999年、連邦憲法に「オーストリアで核兵器を製造したり、保有したり、実験したり、輸送したりすることは許されない。原子力発電所を建設してはならず、建設した場合にはこれを稼動させてはならない」の項が盛り込まれた。

ポーランド:0 推進

政府は1980年代初期に、2000年完成を目標に原子力発電所の建設に踏み切った。

このあと1990年11月、議会が旧ソ連型炉の安全性に対する懸念や資金問題、住民の反対運動などを理由に「2010年まで原子力発電所を導入しない」ことを決定し、建設中の原発を解体・整地することを決めた。

政府は、2005年1月に、2021~2025年の運転開始を目指したポーランド初の原子力発電所の建設計画を了承した。

福島原発事故を受け、中道右派政権は、原発計画を中断しない方針を明らかにしているが、連立政権を組むポーランド農民党が、原発導入の是非を問う国民投票の実施を求めている。

 


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Shell66日、Appalachia地方でエチレンクラッカーと誘導品プラントの建設を検討していることを明らかにした。

エチレンは豊富なMarcellus Shaleガスからのエタンを原料とする。
誘導品としては
PEを第一候補としている。今後も米国北東部のPE需要は伸びるとみている。

Shellではまた、この地域での雇用拡大も狙っている。

対象となるのはWest Virginia州やPennsylvania州、Ohio州などで、今後の検討の結果で立地が決まる。
ShellMarcellus70万エーカーの天然ガスの権利を有しており、大部分はPennsylvania州にある。

完成時期は明らかにしていないが、「通常、構想から商業運転まで5年程度かかる」としている。
規模についても、ワールドクラスのクラッカーは一般的には年産
100万トン程度だとし、規模や誘導品については今後の検討次第としている。

また、誘導品について単独でやるのか(Shellはポリオレフィン事業をBasellに譲渡した)、又はPEメーカーなどと組むのか、幅広く検討するとしているが、米国市場を狙っているSABICやブラジルのBraskemと組む可能性を指摘する筋もある。

実現すれば米国では2001年以来の新クラッカーとなる。また、シェールガスの産地でのクラッカーも初めて。

 

Dow421日に、エチレンとプロピレンの能力増強を発表したが、Marcellusや南テキサスのEagle Ford などのシェールガスから価格面で競争力のあるエタンとプロパンを確保する目処がついたとしている。

2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表 

 


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原発の再稼働問題

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5月7日の記事で、54の原発のうち、稼働中22基、定期検査等での停止中21基、震災で停止中11基と伝えた。

2011/5/7 菅首相、浜岡原発の全炉の運転停止を要請 

その後の状況は以下の通りで、稼働中は19基、停止中は35基である。

  稼働中 22基→19基(22-5+2)

首相の要請を受けて浜岡④、⑤が停止した。
美浜③、川内①が定期検査入りした。
敦賀②が1次冷却水へ燃料漏れで5月7日に手動停止した。

逆に、定期検査中の2基(泊③、大飯①)は法律的には定期検査の期間内だが、調整運転に入っており、定格出力で送電しているため、稼働中に振り替えた。

  定期検査等での停止 21基→21基(21+5-2-3)

上記の追加停止分 5基
調整運転中で「稼働中」へ -2基
柏崎刈羽②③④は中越沖地震による停止のため、「震災で停止中」に。 -3基

このうち、トラブル停止は志賀①(2月28日 手動停止)、敦賀②(上記)の2基。

  震災で停止中 11基→14基

柏崎刈羽②③④ (中越沖地震による停止)

  なお、東電は福島第一①~④の廃炉と⑦⑧の中止を決定した。

各原発の状況と、稼働中原発の今後の定期検査の時期は以下の通り。(*は調整運転中)検査月 一部修正

発電所名 電力会社 能力(万KW)
稼働中 定期検査 定期検査
等で
停止中
震災で
 停止中
廃炉   建設中   計画
2011 2012
北海道電力 ②57.9   8月 / ①57.9
/ / / /
③91.2 * /  ○
東通 東北電力 / / / ①110 / / / ②138.5
東京電力 / / / / / ①138.5 ②138.5
女川 東北電力 / / / / 52.4
82.5
82.5
/ // //
福島第一 東京電力 ④78.4
⑤78.4
⑥110
①46.0
②78.4
③78.4
廃炉決定 ⑦138
⑧138
中止決定
福島第二 東京電力 / / / / ①110
②110
③110
④110
/ / /
東海 日本原子力発電 / / / / 110.0 ①16 / /
柏崎刈羽 東京電力 ①110 8月 / / 中越沖地震
②110
③110
④110
/ / /
⑤110 / 3月
⑥135.6 / 4月
⑦135.6 8月 /
浜岡 中部電力 ③110
要請
④113.7
⑤138
①54
②84
⑥138
志賀 北陸電力 / / / 54
(
トラブル)
②135.8
/ / / /
敦賀 日本原子力発電 / / / ①35.7
②116

(
トラブル)
/ / / ③153.8
④153.8
美浜 関西電力 ②50
12月 / ①34
③82.6
/ / / /
大飯 関西電力 ①117.5* /  ○ ③118.0 / / / /
②117.5 12月 /
④118.0 7月 /
高浜 関西電力 ②82.6 11月 / ①82.6 / / / /
③87.0 / 2月
④87.0 7月 /
島根 中国電力 ②82.0 / 1月 ①46.0 / / 137.3
(2012/3予定)
/
伊方 四国電力 ①56.6 9月 / ③89.0 / / / /
②56.6 / 1月
玄海 九州電力 ①55.9 12月 / ②55.9
③118.0
/ / / /
④118.0 12月 /
川内 九州電力 ②89.0 9月  / ①89.0 / / / ③159
合計 19
(調整運転
2を含む)
12基 7基 21 14

 

付記 2011/10/4 玄海4号機自動停止

原子力発電所は、電気事業法に基づき、13か月ごとに原子炉を止めて定期検査を行う。
定期検査期間は、標準的には約3ヶ月程度となっている。

現在稼働中の原発19基のうち、年内に12基が定期検査に入る予定で、残りも2012年中に定期検査に入る。

本来、定期検査後の再開には地元の了承は必要ないが、福島の事故を受け、各電力会社は地元の理解を優先している。

地元の了解を得られない場合、2012年5月に日本の原発は全て停止する。

日本経済新聞 2011/6/8

ーーー

福島原発で原発安全神話は壊れた。

原子力安全委員会の班目春樹委員長は6月9日の衆院復興特別委員会で、福島第一原子力発電所の事故について「まさに人災である」と述べ、これまでの国の原子力行政や東京電力の対応に落ち度があったと認め、「津波が想定を超えたからといって、第2、第3の防護手段がなければいけない。実際にそういう手段を講じていなかった」と反省の弁を述べた。

津波対策の設計ミス(予備電源と給水ポンプを屋上に設置すべきであった)であり、原子炉の耐震性には問題なかったとの説がある。

池田信夫ブログ
「東日本大震災は世界史上にもまれな大地震だったが、福島第一原発の最大加速度は448ガルと新耐震基準の想定内だった。1号機は1967年に建設されて老朽化した原子炉だったが緊急停止し、配管の破断も起こらなかった。だから前にも書いたように、今度の事故で日本の原子炉本体の耐震性はむしろ証明されたのだ。」

しかし、津波以前に原子炉が破損したとの推測も多数ある。

電源が喪失した場合でも原子炉内に7~8時間は注水を続けられる冷却機能を原発に備えているとされていたが、1号機では非常用復水器が停止、3号機の高圧注水系も地震でパイプが破損した可能性が大きいとされる。

なお、非常用発電機が水につかり全電源を失ったのは設計ミスではなく、竜巻やハリケーンに備えて非常用発電機を地下に置く「米国式設計」をそのまま採用したためであることが分かった。

1号機はGEなど米国企業が「フル・ターン・キー」で工事を仕切った。国産メーカーの役割が増した2号機以降の設計も、ほぼ1号機を踏襲したという。「米側の仕様書通りに造らないと安全を保証しないと言われ、言われるままに造った」とされる。

浜岡原発で中部電力が津波対策の柱に位置付ける砂丘について、中部電力が、東海地震時の津波にどの程度えぐられ耐えられるのか、具体的な検証をしていないことが分かった。中電土木建築部幹部が中日新聞に「どの程度砂丘が削られるか計算はしていない」と証言した。中部電力ホームページでは以下の説明をしている。

津波に対する安全性

痕跡高などの文献調査や数値シミュレーションの結果、敷地付近の津波の高さは、満潮を考慮しても、最大でT.P.+6m程度です。
これに対して、敷地の高さは津波の高さ以上のT.P.+6~8mであり、津波に対する安全性を確保しています。
さらに、敷地前面には、高さがT.P.+10~15m、幅が約60~80mの砂丘が存在してます。また、安全上重要な施設を収容している原子炉建屋などの出入口の扉は防水構造にしています。
これらのことから、浜岡原子力発電所は、津波に対する安全性を十分に確保しています。

原子力安全・保安院は6月9日、電源が多重化されていないため外部電源が喪失すると復旧に時間がかかる原子力関連6施設を報告した。

対象となった施設は敦賀原発、四国電力の伊方原発1、2号機、東北電力の東通原発、Jパワーの大間原発、日本原燃の六ケ所再処理施設、日本原子力研究開発機構の東海再処理施設で、それぞれ1カ所の変電所から送電線を引くため、地震などで変電所が長期停電すると早期に復旧できない恐れがある。

このような状況下で原発の稼働という決断を自治体に押しつけるのには無理がある。

ーーー

関西電力は6月10日、企業や家庭にピーク時(7月1日から9月22日の平日9時から20時までの間)、最大消費電力を前年比15%削減するよう要請すると発表した。合わせて要請期間中は東京電力などへの電力融通をやめることも表明した。

これに対し、大阪府の橋下徹知事は、関電の姿勢を激しく批判。「根拠が分からず納得できない。東京でも15%一律削減なんてない中で、なぜ関西だけが、そこまでやらなきゃいけないのか。『原子力発電所が必要でしょう』という議論に持っていかせるためのブラフとしか、今のところ見えない」と述べた。


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中朝国境を流れる鴨緑江に浮かぶ北朝鮮領の黄金坪島(ファングムピョンド)と威化島(ウィファド)の開発権を中国が取得し、工業団地などを建設する中朝経済協力事業の着工式が6月8日、黄金坪島で開かれた。

5月下旬の金正日総書記の訪中で協力事業の詰めの協議を行ったとされる。

北朝鮮は6日の政令で「黄金坪・威化島経済地帯の設置」を決定、両島について、中国に50年間の開発権を認めた。
政令は「伝統的な朝中友好をさらに強化し、対外関係を拡大し、発展させるため」と意義づけ、黄金坪島から開発を始めるとしている。

黄金坪島は面積約11平方キロの穀倉地帯で、丹東市と細い水路で隔てられただけでほぼ陸続き。

関係筋によると、中国が数億ドルで50年間の開発権を得て、北朝鮮の安い労働力を活用したIT関連企業や食品、服飾などの加工場を集めた工業団地、通関手続きや関税が免除される保税区を設け、中国人らのビザを免除するなど自由貿易区に近い形態になるという。
中国側は、中国企業を中心に約300社を目標に誘致する計画とされる。

日本海側の羅先(ラソン)経済特区でも、羅津(ラジン)港と中国・吉林省の琿春間の道路を改修し、中国側の投資を期待する。

羅先経済特区は北朝鮮が1991年に、中国の経済特区をモデルに咸境北道の羅津(ナジン)と先鋒(ソンボン)を合わせて指定した「羅津-先鋒自由経済貿易地帯」で、北朝鮮は2010年1月、羅先市を特別市に昇格させ、海外からの投資が円滑に進むよう羅先特区法を改正した。

201012月、北京の国有企業の商地冠群投資有限公司が北朝鮮朝鮮投資開発連合体と10項目の投資意向書を締結した。
2-3年で羅先経済特区の建設に必要なインフラを建設し、5-10年かけて北東アジア最大の核心工業特区を建設するという。
計20億ドルを投資し、火力発電所、道路、タンカー専用埠頭、石油精製工場、製鉄所を建設する。

また咸境北道茂山磁鉄鉱山など北朝鮮の地下鉱物資源を開発し、国際金融銀行も設立することで北朝鮮と合意した。

ーーー

中国は東北部の製品積み出し港として利用できる羅先への投資には積極的だが、黄金坪開発には消極的との見方もある。

中国の東北3省が利用できる港は現在、大連港・丹東港の2カ所にすぎず、羅先経済特区を対日本・東南アジア輸出入の窓口として活用するという意図が見える。
特に吉林省と黒龍江省の場合、大連・丹東港よりも羅津港に近い。

中国国務院は先ごろ「中国図們江地域の協力開発計画綱要・長吉図(長春、吉林、図們江)を開発・開放の先導区とする」を許可した。
これは中国政府がこれまでに許可した唯一の国境沿いの開発開放区の計画で、計画地域で国境沿いの開放の先行試験権を付与し、図們江地域の国境沿いの開放における模索を奨励する。

中国は琿春市を国境開放都市に指定して琿春辺境経済合作区とし、「長吉図開発・開放先導区」事業に琿春-羅津港の高速道路建設を含めた。

2010/8/18 中国地域経済の新版図 -2

ーーー

北朝鮮と韓国の国境には開城工業団地がある。


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公取委は6月1日、2010年度の独禁法違反事件の処理状況を発表した。
   
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/11.june/110601hontai.pdf

1) 2010年度の法的措置件数は入札談合4件,価格カルテル6件,不公正な取引方法2件の合計12件であった。
法的措置とは排除措置命令及び課徴金納付命令であり,1つの事件で両命令が出る場合は1件としている。
このほか、法的措置を採るに足る証拠が得られなかった場合であっても,違反の疑いのある行為が認められるものとして、3件の警告を行った。
2) 課徴金納付命令の状況
課徴金納付命令 延べ143名の事業者  総額 362億8,787万円
課徴金の納付を命ずる審決  延べ13名の事業者 総額 357億9,919万円
合計  延べ156事業者 過去最高額の720億8,706万円
一事業者当たりの課徴金額 過去最高額の4億6,209万円
課徴金の大きなものは以下の通り。
ストーカー炉の建設工事 2699,789万円 過去最高
光ファイバーケーブル(NTT光ファイバー向け)
  同種製品の合計
1491,617万円
 (
1609,943万円)

カルテルとして過去最高
建設・電販向け電線 1083,817万円
シャッター
  
近畿分を含む合計
482,331万円
552,164万円)
旧防衛庁調達実施本部、燃料 448,460万円
郵便番号自動読取区分機器 421,159万円


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東芝とソニーは中小型の液晶パネル事業を統合する。
6月7日付の日本経済新聞が報じた。

年内にも統合新会社を設立し、官民ファンドの産業革新機構から出資を受け入れる。

統合新会社は1000億円超の第三者割当増資を実施する。(→機構が2000億円を出資)
全額を産業革新機構が引き受け、最終的な出資比率は革新機構が7~8割で、残りを東芝とソニーが分け合う。

同機構からの資金をもとに国内に生産ラインを新設、世界シェア首位を争う。

革新機構は両社が単独で事業を進めた場合、十分な能力増強投資ができず、競争力を失ったテレビ用パネルの二の舞いになる可能性が高いと判断。有機ELパネルの研究を続けてきた両社の統合を後押しする。

付記

6月30日付の各紙は日立ディスプレイズもこれに加わると報じた。

東芝、ソニー、日立製作所と官民ファンドの産業革新機構は8月31日、2012年春に中小型液晶パネル事業の統合会社を設立すると発表した。
3社の事業を引き継ぐ新会社の名前は「ジャパンディスプレイ」。
米ディスプレイサーチによると、世界シェア(2010年)は、3社の単純合計で22%に達する。
出資比率は機構が7割で経営権を握り、3社は1割ずつ。


世界の液晶パネルのメーカーは以下の通り
で、大型では日本勢は韓国、台湾勢に押され、シェアは落ちた。
シャープはこのたび、亀山工場をテレビ用大型パネルから中小型に切り替える方針を発表した。

日立ディスプレイズは日立 75.1%/キヤノン 24.9%

ーーー

産業革新機構(Innovation Network Corporation of Japan : INCJ先端技術や特許の事業化を支援することなどを目的として、「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法(平成11年法律第131号=産活法)」に基づき、2009年7月27日に設置された。

産活法は1999年に「産業活力再生特別措置法」の名で、バブル崩壊後の傷んだ日本経済を持続的成長が可能な状態まで回復させるため作られた。

その後、2003年には、産業サイドの過剰供給構造と過剰債務の問題や、それに伴う生産性低下の要因となっていた設備投資の低迷の解消を図るため、さらに、2007年には、イノベーションの促進、サービス産業の生産性向上、早期事業再生の促進等を図るため、改正された。

2009年には、その後の経済状況の変化に対応しつつ、わが国経済を持続的成長軌道へ回復させるため、資源や資金、知財や技術などの経営資源が効率的に活用されるようにすべく、改正され、名称も「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」(「産活法」)に改めた。

当初は「事業再構築」のみを扱ったが、現在は以下を対象としている。

事業再構築 「選択と集中」により、企業全体の生産性を向上させる計画
経営資源再活用 他の企業から事業を承継し、有効に活用することで、生産性を向上させる計画
事業革新設備導入 一定の要件を満たす「事業革新設備」への投資を支援する計画
経営資源融合 2社以上の異なる事業分野の経営資源の融合により、革新的な事業を行い、
著しい生産性向上を目指す計画
資源生産性革新 事業者が自らの資源生産性を向上させるための計画
資源制約対応製品生産設備導入 一定の省エネ・新エネ製品等を生産するための設備投資を支援する計画

次の2つは途中の改正で追加されたが、2009年改正で除外された。
  共同事業再編
  技術活用事業革新

産活法の適用を受ける場合、税制(登録免許税、特別償却ほか)、金融支援、会社法その他で支援を受ける。
  
http://www.meti.go.jp/sankatsuhou/outline/change-001.html#002

なお、本年度の産活法改正(5月成立、7月施行)では、「公正取引委員会との協議制度」が創設された。

「主務大臣が計画を認定をしようとするに際して、当該計画に従って行おうとする措置が、事業者の営む事業の属する事業分野における適正な競争が確保されないおそれがある場合として政令で定める場合に該当するときは、あらかじめ公正取引委員会に協議するものとすること」

新日本製鉄と住友金属工業は7月に改正産活法の適用を経産省に申請する。

経産相と公取委の協議により合併審査の透明性・迅速性の向上が期待できる。
改正後は、公取委は経産相の意見に回答しなればならない。

産活法では、産業革新機構について以下の通り規定している。

第一条  この法律は、我が国経済の持続的な発展を図るためにはその生産性の向上が重要であることにかんがみ、特別の措置として、事業者が実施する事業再構築、経営資源再活用、経営資源融合、資源生産性革新等を円滑化するための措置を雇用の安定等に配慮しつつ講ずるとともに、株式会社産業革新機構を設立し特定事業活動の支援等に関する業務を行わせるための措置、中小企業の活力の再生を支援するための措置及び事業再生を円滑化するための措置を講じ、併せて事業活動に おける知的財産権の活用を促進することにより、我が国の産業活力の再生を図るとともに、我が国産業が最近における国際経済の構造的な変化に対応したものと なるための産業活動の革新に寄与することを目的とする。

(機構の目的)
第三十条の二  株式会社産業革新機構は、最近における国際経済の構造的な変化に我が国産業が的確に対応するためには、自らの経営資源以外の経営資源の有効な活用を通じ た産業活動の革新が重要となっていることにかんがみ、特定事業活動に対し
資金供給その他の支援等を行うことにより、我が国において特定事業活動を推進することを目的とする株式会社とする。

産業革新機構の投資対象となるのは、大学や研究機関に分散する特許や先端技術による新事業、ベンチャー企業の有望な技術、国際競争力の強化につながる大企業の事業再編などで、投資にあたっては機構内に設置する「産業革新委員会」が評価を行い、投資対象の決定をする。

今まで慣れ親しんできたビジネスモデルに拘ることなく、従来の業種や企業の枠にとらわれずに、その発想と行動において自己変革と革新を推し進めていくという「オープンイノベーション」の考え方を採用している。

産業革新機構の概要は以下の通り。

 
政府からの出資は、財政投融資特別会計(投資勘定)

民間企業(下記)は各5億円出資。
ただし日本政策投資銀行は10億円。

旭化成、住友化学、住友商事、住友電気工業、武田薬品工業、GEジャパン、JX日鉱日石エネルギー、シャープ、東芝、パナソニック、日立製作所、
東京電力、大阪瓦斯、東日本旅客鉄道、日揮、日本政策投資銀行、商工組合中央金庫、みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行

個人は産業革新機構の社長と専務(各500万円)

 

これまでの投資案件は以下の通り。

支援事業名     百万円
(株)JEOL RESONANCE 2011/1 先端技術の研究開発に不可欠な分析機器『NMR』の事業を担う、日本電子(株)より会社分割される新会社の第三者割当増資を引受け 1,500
(株)中村超硬 2010/12 太陽光発電・LED等の成長市場を支える材料加工技術の事業強化を図る中村超硬への投資 1,245
チリ水事業会社 2010/11 丸紅とのコンソーシアムによるチリ水事業会社 アグアス・ヌエバスの買収  
(株)アネロファーマ・サイエンス 2010/11 新規性の高いDDS技術を核として抗がん剤を開発し製薬企業との協働により医薬品の上市を目指す大学発バイオベンチャーに投資 700
日本インター(株) 2010/11 パワーデバイス専業メーカーである日本インター株式会社への投資 3,500
国際原子力開発(株) 2010/10 国際原子力開発(株)の設立
(原子力発電プロジェクトに関する提案活動を行う新会社)
20
エナックス(株) 2010/8 ラミネート式リチウムイオン電池のフロンティア企業に投資 3,500
267.5
知財ファンド「LSIP」
(エルシップ)
2010/8 我が国初の知財ファンドの設立
(ライフサイエンス系の知的財産を集約しライセンスする事業)
600
豪州水道事業会社 2010/5 本邦初の官民連携による豪州水道事業会社の買収
(三菱商事、日揮と)
225
百万
豪ドル
(株)GENUSION 2010/5 本邦初の本格的ファブレス・フラッシュメモリ・ベンチャーに投資
(次世代型フラッシュメモリ技術の事業化)
1,590
ゼファー(株) 2010/5 小型風力発電ベンチャーのグローバル事業拡大に投資 1,000
アルプス・グリーンデバイス(株) 2010/3 低炭素社会の実現に不可欠なデバイス開発事業に投資 3,000

 


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東洋エンジニアリングは66日、インドネシア最大の石油化学会社Chandra Asri Petrochemicalの新設子会社のPT Petrokimia Butadiene Indonesiaがジャワ島西部 Cilegon Chandraのコンプレックスに隣接して建設する年産10万トンのブタジエン製造設備を受注したと発表した。

PT Chandra Asri2007年に豊田通商からスチレンモノマー製造・販売の PT.Styrindo Mono Indonesia を買収し、本年11日付でPPメーカーの PT Tri Polyta Indonesiaを統合し、新社名PT. Chandra Asri Petrochemical Tbk.として上場した。

これは新生Chandra Asri Petrochemical 大増設計画の第一弾である。 .

ーーー

Chandra Asri は当初、Barito group75%日本インドネシア石油化学投資(丸85%、昭和電工 10%TEC 5%)が25%出資して設立され、1995年に生産を開始した。

2005年に日本側は撤退した。

2006/4/26 インドネシアのエチレン計画への日本企業の参加-1

その後、株主が次々に代わった。

2008/6/7 インドネシア Chandra Asri の状況 

現在の株主は以下の通り。

Barito Pacific 71.9%  当初の株主
Temasek Holdings 22.9%  シンガポールの政府系投資機関
一般株主 5.2%  (上場)

付記

タイのSiam Cement Group は2011年9月、Chandra Asriの株式30%を取得、経営に参画する。
シンガポールのTemasekから23%、Baritoから残り7%を買収した。買収金額は135億バーツ(約338億円) 

Barito Pacific    64.8%    当初の株主
Temasek Holdings   ー         シンガポールの政府系投資機関
Siam Cement Group   30.0%    
一般株主   5.2%    (上場)

ーーー

Chandra Asri Petrochemical の現状と増設計画は以下の通り。(数字は能力:千トン).

付記 

同社は2011年12月、大増設計画を棚上げすると発表した。世界経済の状況が不安定なためで、状況が好転すれば再検討する。
但し、上記ブタジエン計画は続行し、2013年に完成させる。


現状  

製品 能力
 千トン
系列 スタート 技術
ナフサクラッカー 600 1 1995 Lummus
LLDPE 200 1 1995 Union Carbide
HDPE 120 1 1995 昭和電工
PP
(Tri Polyta)
480 2 1992 Union Carbide
1 1995
SM
(Styrindo Mono)
340 1 1992 Lummus
1 1999

Chandra AsriTri Polytaはジャワ島西部 Cilegonの西の海岸にある。
Styrindo MonoCilegonの北のSerangにあり、
Chandra Asriがパイプラインでエチレンを供給していた。

     Showa Esterindo は昭電51%出資、酢酸エチル 50千トン

増設計画は以下の通り。

完成時期
原料LPG ナフサとLPG、コンデンセートの価格差を利用し、採算向上を図る。
LPGの輸入ターミナル建設のFSを実施中。
2014年末
クラッカー増設 340百万ドルを投じ、400千トン増設し、1,000千トンに。 2014年末
ポリエチレン デボトルネッキングで本年末に +16千トン
80百万ドルで1系列200千トン増設
2014年初め
ブタジエン C4(現在輸出)の有効利用
投資 
135百万ドル、能力 100千トン
2013年3Q
ブテン-1 C4(現在輸出)の有効利用
LLDPE向けに供給
2013
BTX 西ジャワのAnyer BTXプラントの建設を計画
 ベンゼン
170千トン、トルエン70千トン、キシレン55千トン
SM向けにベンゼン供給(現在、外部購入)
    ↓
採算悪化の予想から棚上げ

ーーー

参考 インドネシアの石化の現状(千トン)

製品 Chandra その他 合計
エチレン 600  - 600
LLDPE 200 Honam/Titan 200 400
HDPE 120 同上 250 370
PP 480 Pertamina 45
Polytama 230
755
SM 340  - 340
EDC 0 Asahimas 640
Sulfindo 470
1,110
EO 0 Polychem Lindo 200 200
プロピレン 320 Pertamina 288 608
アクリル酸 0 Nippon Shokubai 60 60


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米国最大の化学品のディストリビューターのAshland63日、特殊化学品とパーソナルケア製品などのメーカーのInternational Specialty Products (ISP)を買収すると発表した。
買収金額は約
32億ドルで、全額現金で支払う。

ISP1942年にIG Ferbenから独立したGeneral Aniline & Filma(GAF)の化学品子会社GAF Chemicals Corporationであったが、1991年に株式公開し、現在の社名となった。当初、GAF80%を保有していたが、その後、GAF株主に分配し、現在は無関係。

米国ニュージャージー州 Wayneに本拠を置き、米国に9工場、ドイツに1工場を擁し、さらにベルギーに新工場の整備を計画中。
500品目以上のスペシャルティケミカル製品を、世界70カ国を越える営業拠点から90カ国に展開する販売ネット を通じて販売している。

20113月度決算では売上高は約16億ドル、EBITDA(支払利息・税金・償却前利益)は約36000万ドル。

ISPの扱い製品は以下の通り。

Personal Care ヘアケア(各種スタイリング剤、毛髪保護剤等)
スキンケア(サンスクリーン剤、懸濁剤、乳化剤、防腐剤、保湿剤、増粘剤等)
Pharmaceuticals 製剤化原料としてPVP(ポリビニルピロリドン)・PVPPPVPコポリマーなどを全世界に供給
Foods & Beverages 料清澄安定剤のPOLYCLAR、アルギン酸、Hydrocollids類、食品向け製剤品
Industrial Chemicals ポリマー(エマルジョン、塗料、インク用分散安定剤、各種コーティング用ポリマー)
溶剤(各種反応溶剤、剥離剤、工業洗浄剤、ノニオン界面活性剤、エレクトロニック溶剤)
モノマー(UV/EB硬化用ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルエーテル)
中間体(各種化学合成原料としてのアセチレン付加誘導体)
アドバンスドマテリアル(カルボニル鉄還元パウダー
/CIP)
エラストマー(スチレンブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム)
工業用バイオサイド(防腐剤、防黴剤、防藻剤)
Agriculture 各種ポリマー・溶剤・中間体・乳化剤・アジュバント(フォーミュレーションサポート)
Fine Chemicals 光学活性医療中間体や各種写真薬などの受託生産

Ashlandはこの買収により、機能材料事業に水溶性ポリマーやその他の先進技術を、食品・飲料、エネルギー、コーティング、固着剤、水処理等の事業を補完する添加剤を確保する。

Ashland の会長兼CEOJames J. OBrienは、「今回の取引によって、当社は個人医療や製薬などの高利益率かつ高成長で、景気循環の影響を受けにくい世界市場における当社の市場ポジションを大幅に拡大することができる。この取引によって、当社はスキン、ヘア、オーラルのケアなど魅力的な成長分野でプレゼンスを広げることになる。さらに、われわれは当社の最も利益率の高い機能性原料ビジネスの規模を2倍以上にすることを期待している」と語った。

ーーー

Ashland 20087月、約33億ドルでHercules を買収する契約を締結したと発表した。

Ashland では両社の合併により、3つのコア事業が出来ると述べている。
specialty additives and ingredients
 Hercules wood rosin 製品(Aqualon) は接着剤、ペイント、食品、医薬品、化粧品等広く使用されている。
  統合により、この事業から
EBITDA1/3が産み出される。

paper and water technologies
  両社事業の統合により売上高20億ドルのグローバルなpaper and water technologies 事業が誕生

specialty resins
 Ashland の得意分野で、Ashland の商事部門と自動車用品部門(Valvoline) が補完する。

2008/7/14 Ashland Hercules を買収

ーーー

このところ、スペシャルティ分野での買収が相次いでいる。

昨年12月にBASFCognisを買収した。

 2010/6/24 BASF、 特殊化学品メーカーのCognisを買収

Cognisについては、潤滑油メーカーのLubrizolも買収に意欲を持ち、交渉をしていた。

LubrizolAdditives部門とAdvanced Materials部門を持つが、後者ではEngineered polymersに加え、Consumer Specialtiesを扱っており、ローションやシャンプーなどのパーソナルケア製品の増粘剤の最大のメーカーでもある。
同社はパーソナルケア分野での拡大を目指している。

そのLubrizol Warren Buffettが率いるBerkshire Hathawayが本年3月に97億ドルで買収した。

Warren Buffettは、Lubrizol はいくつかの分野でグローバルリーダーであり、我々が組むのにふさわしいとし、現在の経営陣に対し、これまで通りやって欲しいとだけ指示した。

昨年12月には、Royal DSM DSM Elastomers LANXESSに売却することで合意した。

2010/12/20 LANXESSDSM Elastomersを買収

本年4月にSolvayRhodiaの株式100%の友好的買収オファーを行った。

2011/4/12 SolvayRhodiaを友好的買収 

なお、Lanxessがベルギーに本拠を置くアルキルアミンとその誘導品のメーカーのTamincoを株主の CVC Capital Partnersから14億ドルで買収する交渉をしていると報じられている。

同社の社名は "The AMINe COmpany" から採っている。

200310月に投資会社AlpInvestがメイン株主となって、ベルギーの製薬会社UCBから分社化した。
20077月、CVC Capital Partners AlpInvestから買収した。経営陣が25%を出資している。

昨年10月に三菱ガス化学は中国のメチルアミン誘導品子会社の50%Tamincoに譲渡し共同経営していくことで合意したと発表した。

2010/10/30 三菱ガス化学、中国のメチルアミン事業でTamincoと提携 


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Lanxess61日、新しいネオジウム触媒ポリプタジエンゴム (Nd-PBR)の立地をシンガポールに決めたと発表した。

2億ドルを投じて、ジュロン島に年産14万トンのプラントを建設する。2015年上半期の操業開始を目指す。

工場は、現在建設中で
2013年第1四半期に完成予定の年産10万トンのブチルゴム(BR)のプラントに隣接して建設される。

Nd-PBR はタイヤに使用される原料の一部で、他の多くのタイヤ用ゴムに比べ、より効率的な燃費をもたらし、タイヤ摩擦も低減する。自動車の安全性、環境保護、経済性の向上においてより重要な役割を果たす。

LanxessPCSPetrochemical Corporation of Singapore)は、原料のブタジエンをPCSからLanxessに、ゴムの副産品のラフィネートⅡをLanxessからPCSに、それぞれパイプラインで供給する覚書を締結した。

同地で建設中のブチルゴムは、イソブテンとイソプレンを共重合した合成ゴムで、高い空気不透過性を備えており、主要用途は、タイヤ用インナーライナー、インナーチューブで、特殊用途としては防護服、医薬用ゴム栓、チューインガムなどがある。

中国とインドで顕著な中産階級層での急速な自動車普及によるタイヤの需要増加に対応する。また医薬品産業で特にアジア地域で高い需要がある。

Lanxess20082月、シンガポールに年産10万トンのブチルゴム生産拠点を新設すると発表した。

当初は
2010年稼動の予定であったが、需要の減少を受け、二度にわたり、延期し、この期間を利用し、製造技術の更なる改良を行った。
その後
20105月に前倒しでの再開を決定し、20105月に着工式を行った。

Shellは、Jurong島に隣接するブコム島にある同社のコンプレックスのブタジエン抽出設備から、ブタジエン抽出後のラフィネートをパイプラインを通してLanxessに供給する。

ーーー

世界で、燃費性能、ウェットグリップ性能、騒音などの新規制に対応できる「グリーンタイヤ」の原料ゴムのニーズが増大しているが、今回のNd-PBRの新設はこれに応じるもの。

EUは2012年にタイヤの「ラベリング(表示)制度」を導入する。
タイヤの転がり抵抗(燃費)、ウエットグリップ(雨天時のスリップ防止)、騒音量の3つの性能をラベルで表示する。

消費者はラベルを確認し、環境性能に優れたタイヤを容易に選べるようになる。

また、燃費規制でCO2排出量120g/kmが導入される。(2004 年実績比で約26%の減少)
(車両・エンジンの技術改良により130g/km以下にし、
タイヤの性能などの技術改良やバイオ燃料の利用促進などで、10g/km削減し、120g/kmとする。)
但し、2012年には新車販売台数の65%、13年には同75%、14年80%とし、15年にすべての新車に対して適用する。

日本のタイヤメーカーは、2010年初頭から任意で「ラベリング制度」(※表示項目、および等級分けは欧州連合とは異なる)を導入しており、米国や韓国も同様の表示規制を現在検討している。

このため、これに適応するゴムが要請されており、Nd-PBRとSSBRを各社が競って増設している。

Nd-PBR は、他の多くのタイヤ用ゴムに比べ、より効率的な燃費をもたらし、タイヤ摩擦も低減する。

SSBR は、高性能タイヤのトレッドコンパウンドに使用され、湿潤路面でのタイヤのグリップ性能を向上する一方で、転がり抵抗を低減する。

2010/12/27 溶液重合法SBRの増設相次ぐ

ーーー

合成ゴムを最初に製造したのはBayerだが、2004年7月に合成ゴム、ゴム薬品を含む化学品・合成樹脂の一部が新会社 Lanxess として分離された。

2009/7/6 合成ゴム100

Lanxess は合成ゴムの世界トップメーカーである。(単位:千トン)

会社名 能力 製品
Lanxess 独、仏、ベルギー、米、加、ブラジル  1,413 ESBR, BR, EPM/EPDM, IIR, NBR, CR, SSBR,SBC
Goodyear   775 SSBR, BR, IR, ESBR
Kumho   743 ESBR, BR, NBR, SSBR, SBC
Polimeri 伊、英 653 EPM/EPDM, NBR, ESBR, BR, SSBR, SBC, SSBR
ExxonMobil 米、仏、英  646 EPDM, IIR
JSR  379 BR, IR, EPM/EPDM, NBR, SSBR, ESBR
日本ゼオン 日、米、英   338 ESBR, BR, IR, NBR, SSBR 
 * 資料:日本ゼオン ファクトブック 2011

同社は現在、ドイツ( Dormagen)、ブラジル(Cabo)、フランス(Port Jerome)、米国(テキサス州Orange)の工場でNd-PBRを製造している。

同社は
20103月に、上記の4拠点で2012年第1 四半期までに年間計5万トン(うちテキサスで2万トン)の追加増産を発表した。
同時に
SSBRでの手直し増強を行っている。

NKNK(Nizhnekamskneftekhim) はロシアの化学会社
Sythos S.A.はポーランドの化学会社 
KKPCは韓国のKumho Petrochemical(錦湖石化)の略称
SIBUR Group GAZPROM100%出資するロシア最大の垂直統合石油化学会社
Polimeri EuropaENI 100%
Karbochem (Pty) Ltd は南アの合成ゴムメーカー

 


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ソウル大学の余載翊(ヨ・ジェイク)機械航空工学部教授がレーザーを利用する、針のない「無痛注射器」を開発した。朝鮮日報が報じた。

注射器は、容器の中間に膜があり、その上には水が、下には注射液が入っている。
レーザーを容器の上部にある水に撃つと泡が発生し、瞬間的に圧力が大気圧の1万倍に急増、下のゴム製の膜を押し、その力で注射液がノズルに出てくるという仕組み。

余教授は「ノズルに出てくる注射液の流れは注射針よりも細く、神経を刺激する確率が低まる。万一、刺激したとしても、注射液の流れの移動速度は毎秒100-200メートルと非常に速いため、痛みを感じる時間がない」と説明している。

皮膚科で最初に使用する計画で、余教授は「皮膚科にはほとんどレーザー治療器があり、指2本分の大きさの注射を装着するだけで使用できる。ボトックスやスキンケア物質を痛みなく効果的に肌に注入できるだろう」と話している。

ーーー

「痛くない注射針」としては、日本ではテルモが先端がわずか0.2ミリの世界一細いインスリン用注射針を2005年に発売している。

これはプレス加工技術で世界的に有名な岡野工業の岡野雅行社長との共同開発品で、従来一般的に使われている0.25ミリと比べ、およそ20%も細くなり、注射の際の痛みを軽減した。
また、従来の針の構造では細くするにつれて注入抵抗が高くなり、注入しにくくなるが、世界初の外径・内径をダブルテーパー構造にすることで、薬液を注入する際の抵抗を抑えた。(テーパー構造とは先細りの構造)

岡野社長はこれを、それまでに培ったプレス加工技術を応用し、1枚の金属板を丸めて作るのの成功した。厚さわずか100分の5mmのステンレス製の板を、太さの違いが出るようカットし、高度な技術で丸めた。


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中国の衛生部(Ministry of Health)を含む6つの部門はこのほど通知を発表し、ポリカーボネート製哺乳瓶、ビスフェノールAを含むその他の哺乳瓶の生産を6月1日より禁止し、輸入と販売を9月1日より禁止することを明らかにした。

哺乳瓶メーカーと輸入業者はこれらの製品を回収しなければならず、回収した製品を再生して包材、コンテナー、工具などを生産してはならない。

哺乳瓶以外の食品包装資材、容器、塗料にビスフェノールAを使用することは許可されるが、その量は食品安全に関する国家基準の定める規定量を守らなければならない。

ビスフェノールAはポリカーボネート、エポキシ樹脂など様々な高分子材料の原料である。
食品用容器の場合、加熱すると食物や飲料の中に溶出し、人の代謝や幼児の発育・免疫力に影響を与えるのではないかと懸念されている。

近年、動物の胎児や産仔に対し、これまでの毒性試験では有害な影響が認められなかった量より、極めて低い用量の投与により影響が認められたことが報告された。

日本では厚生労働省は、動物でのビスフェノールAの低用量影響の問題を受けて、新たな対策が必要かどうか検討するため、ビスフェノールAの低用量曝露がヒトの健康に及ぼす影響について、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼し、その結果を基に食品衛生法における規制の見直しなどの必要な対応を行うこととしている。

また、リスク評価を経るまでもなく、公衆衛生の見地からは、ビスフェノールAの曝露をできる限り減らすことが適当であり、関係事業者に対して製品の更なる技術改良を行う等、自主的な取組を更に推進していくように要請しており、「ビスフェノールAについてのQ&A」を出している。
妊娠している人や乳幼児を育てている人は、このQ&Aを食生活や授乳に役立てて欲しいとしている。

これには各国の対応なども記されている。

ーーー

カナダ保健省は20084月、低用量でのビスフェノールAの乳幼児(主に18ヶ月未満の)への影響を考慮し、予防的アプローチとして、ビスフェノールAを含むプラスチック製哺乳瓶について近い将来、輸入、販売、および広告を禁じる方針を打ち出した。
同年10月にはポリカーボネート製のほ乳びんの輸入及び販売等の禁止と乳児用の調製乳に使用されている缶の内面塗装からビスフェノールAの溶出を可能な限り減らす指針を策定する等のリスク管理案が公表された。

カナダ政府は2010年10月、正式にビスフェノールAが有害物質であると宣言した。
http://www.nytimes.com/2010/10/14/world/americas/14bpa.html

ーーー

EUは本年2月25日の指令(IP/11/229)で、3月1日からビスフェノールAを含む哺乳瓶のEU域内での製造を禁止した。
1月に採択されたEU指令により、6月1日からはEU市場での販売とEU域内への輸入も禁止される。

業界では自主的に市場から回収し、他の製品に切り替えつつあり、2011年央に完了する見込みとなっている。

2010年3月にデンマーク政府が、三歳までの子供が使う食品容器の製造にビスフェノールAの使用を一時的に禁止し、欧州委員会はEuropean Food Safety Authority (EFSA) に対し、禁止の根拠の評価を要請した。

2010年7月にはフランスが一時的に製造、輸入、輸出、上市を禁止した。

EFSA20109月に意見を出したが、幼児への影響については更なるデータが出るまでは注意が必要とした。


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LyondellBasell531日、フランスのBerreの日量105千バレルの製油所の買い手を探す意向を発表した。  

付記
LyondellBasellは9月27日、買い手がなかったと発表した。
製油所停止の手続きを進める。

同社は2008年にShellから製油所を買収した。

Berreのコンプレックスには、製油所、ナフサクラッカー、PEPPプラントがあり、近くのFos-sur-MerPEPOMTBEETBEプラントがある。
クラッカーは増設され、エチレン年産
465千トンとなっている。

当初は全てShellが運営していたが、ShellBASFによるポリオレフィンJVBasell設立に伴い、BerrePEPPFos-sur-MerPEほかの設備はBasellに移管され、BerreのクラッカーはShellBasell50/50JVとなった。

 

200512月にShellはクラッカーの持分と、ブタジエン事業(同地区の)をBasellに売却することで合意、この結果、クラッカーはBasellの所有となった。

BasellShellの製油所から、クラッカーの原料としてナフサ、重質減圧軽油(VGO)LPGを購入、クラッカーの運営は引き続きShellが行った。

製油所の買収により、Basellは上記原料のほか、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、ビチュメン、燃料油の事業を手に入れた。

なお、BasellLyondellを買収し、20071220日にLyondellBasellとなった。

2007/12/24 LyondellBasell Industries 誕生

同社の2008年決算には、Lyondell買収に関するノレン等の償却 4,982百万ドルと Berre Refineryの買収に関するノレン等の償却 225百万ドルを含んでいる。

ーーー

今回の発表にあたり、LyondellBasellでは製油所は2008年の買収時に想定した経済性を実現していないとしている。

Berreのクラッカーとポリオレフィンは売却しない。
LyondellBasellでは、製油所売却によりコアの石油化学に集中するとしている。

同社はこのほか、Houstonに製油所を持っている。

  barrels/day
Houston Refinery 268,000
Berre Refinery, France 105,000
Oxyfuels
(MTBE&ETBE)
Channelview 46,000
Fos-Ser-Mer, France 15,000
Boltek, Netherland 14,000

2011/3/9  LyondellBasell の事業概況 


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中国国務院は5月19日、「レアアース(希土類)業界の持続的かつ健全な発展の促進に関する国務院の若干の意見」(ガイドライン)を発表した。

レアアース資源を有効に保護し、合理的に利用するため、
法律・法規の整備を急ぎ、監督管理を強化し、
レアアース 産業の構造調整と発展パターン転換をはかり、
レアアースの戦略的基礎産業の重要な役割を一層固め、発揮させ、業界の持続的かつ健全な発展を確保するとしている。
   
   http://www.gov.cn/zwgk/2011-05/19/content_1866997.htm (中国語)
   
業界の発展の中で、依然として違法な採掘が後を絶たず、製錬分離の生産能力急拡大や環境破壊、重大な資源浪費、高度応用研究開発の遅れ、輸出秩序の混乱などの問題があり、業界の健全な発展に重大な影響を与えている。
   
このため、
業界監督管理システムを確立し、業界管理を強化、改善する。
   
業界参入管理を厳格にし、指令的生産計画管理を整え、レアアース輸出企業の資質条件を引き上げ、輸出管理を強化し、租税、価格などのコントロール措置を整備し、資源採掘による暴利を抑える。
   
  違法な採掘と規制指標を超える採掘、違法な生産と計画を超える生産、環境を破壊し、汚染する行為、違法な輸出と密輸を断固取り締まる。
   
 

輸出管理強化の一環として、商務部と税関総局は519日、ジスプロシウム鉄合金、テルビウム鉄合金などレアアースの含有量が高い合金をレアアースの輸出割当に含め、管理すると発表した。

   
関係の法律、法規と制度を真剣に実行し、レアアースなど希少金属の管理に関する法律・法規の研究・制定、改正を急ぐ。
   
レアアース業界の統合を加速し、産業構造の調整・最適化をはかる。
   
  レアアース資源開発統合を深く推進し、製錬分離総量を厳しく抑制し、業界の合併再編を積極的に推進し、企業の技術改造を加速する。
   
  大型企業が主導する業界構造を基本的に形成し、南部イオン吸着型レアアース業界上位3位の企業集団の産業集中度を80%以上にする。
   
 

ガイドラインは南部3社の名前を挙げていないが、業界では、中国五鉱集団(China Minmetals )、中国有色金属工業対外工程建設有限公司(China Non-ferrous Metal Industry's Foreign Engineering and Construction)と地方有力企業1社であるとみている。

北部は内蒙古包鋼稀土高科技Inner Mongolia Baotou Steel Rare-Earth Hi-Tech )が圧倒的な力を持っているが、南部は産地が分散し、多数企業が競っている。 

   参考 2010/8/16  中国、レアアース市場での支配力拡大へ

国土資源部は本年1月に、江西省カンシュウ県(Ganzhou Prefecture)に11の国家管理のレアアース地区を設置した。

   
レアアース資源備蓄を強化し、応用産業を発展させ、戦略備蓄システムを築き、カギとなる応用技術研究開発と産業化を加速する。
   

ーーー

レアアース生産で中国最大手の内蒙古包鋼稀土高科技はこのたび、内モンゴル自治区の包頭市にレアアースの取引所を設立する計画について、自治区政府から許可を受けた。5月25日に同社が発表した。

中国で最初のレアアース製品取引所で、スポット取引のみで、先物は扱わない。8月8日に登記するが、実際の設立には6か月程度かかるとしている。

地元政府はすでに計画の具体案を国内の関連企業に通達し、取り引きに参加する準備を進めるよう指示を出している。
取引所には、価格の高止まりを望む中国企業が数多く参加するものとみられ、中国政府が事実上、レアアースの価格の維持を図ろうとしているのではないかという見方が出ている。

但し、南部のレアアース開発会社は、産出するレアアースの種類が違うとして、参加を見送る姿勢を示している。


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