2009年12月アーカイブ

出光興産は12月25日、日本風力開発(JWD)と提携し、JWD子会社の二又風力開発の増資を引き受け、共同で事業を推進することを決定したと発表した。

JWDと出光は、2009年3月30日に「共同事業に関する協定書」を締結して以来、CO2フリーのエネルギー供給を拡大することを目的として、蓄電池を併設した風力発電所の共同事業について協議を進めている。

今回、二又風力開発に出資し、その発電する電力と環境価値を初年度は40%、2年目以降は全量を引き取り、これを三菱地所が所有する新丸ビルに販売する。

二又風力開発は青森県上北郡六ヶ所村にあり、JWD 59.96%、出光 40%、六ヶ所村 0.04%の出資となる。
2008年5月の運転開始で、1,500kW
の風力発電機を34基、合計51,000kWの能力を持ち、世界で初めて蓄電能力34,000kWの大型蓄電池を併設している。
蓄電池は1ユニット2000kWのNAS(ナトリウム硫黄)電池17基から成る。

自然エネルギーは出力が不安定で取り扱いが難しいため、電力会社への送電量が制限されてきたが、蓄電池併設で、需要に応じて出力させることが可能となり、送電線への負担を大幅に減少させることができる。

需給調整ができる風力発電所が増えれば、電力会社への送電量も増やすことができ、CO2フリーのエネルギー供給の拡大に繋がるため、JWDと出光は、今後も蓄電池を併設した新たな風力発電所の開発および発電した電気・環境価値の販売に協力して取り組む。
また、電力の需給調整機能を果たす蓄電池の特徴を活かし、スマートグリッドなどでの活用方法を共同で検討する。

石油会社各社は、国内での石油製品需要の漸減、海外市場での新規輸出型製油所の出現による国際競争の激化と、低炭素社会への動きという事業環境の変化を考慮し、新エネルギー分野への進出を図っている。

ーーー

日本風力開発は1999年の設立で東証マザーズに上場している。
2001年2月に先ずドイツのザルツベルゲン市で売電事業を開始、同年9月に銚子で売電事業を開始した。

2009年9月末の風力発電所の設備容量は、ドイツのザルツベルゲン市の7,000kWを加え、272,450kWとなり、本年9月中間決算での風力発電による売電収入は1,937百万円となっている。

ーーー

世界風力会議(Global Wind Energy Council)の2009年2月の発表によると、世界の風力発電総設備容量は、前年の94,123MWから120,798MWに達した。毎年、20~30%超の伸び率を示し、順調に増加している。

日本は13位 1,880MWで、世界全体のわずか約1.6%である。

NEDO資料 http://www.nedo.go.jp/library/fuuryoku/index.html

 

日本の主な風力発電業者は以下の通り。

ユーラスエナジーホールディングス(Eurus Eergy

2001年11月設立で、東京電力が60%、豊田通商が40%を出資する。

操業中の設備容量:
  日本     438,060kW (+建設中 84,050kW)
  韓国     138,994
  アメリカ   523,960
  ヨーロッパ  726,240(スペイン 507,740、イタリア 169,200、イギリス 38,100)
  合計    1,827,254

・電源開発(Jパワー)

国内13地点で合計出力264,380kW
海外はポーランドにザヤツコボ風力発電所(48,000kW)

・日本風力開発  日本 265,450kW、ドイツ7,000kW。

・エコ・パワー(EcoPower)

荏原製作所子会社
20地域で119基が稼動中で、総発電容量は130,510kW

ーーー

出光興産と三菱地所は12月9日、出光の「生グリーン電力」を三菱地所の新丸ビルで受電することで合意した。

再生可能エネルギー100%の「生グリーン電力」を直接需要地が受電する取り組みは日本で初めてとなる。

グリーン電力とは、風力、太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギーにより発電された電力のことで、「電気そのものの価値」の他に「環境付加価値」を持つ電力と考えられる。
「生グリーン電力」は発電所から需用者に直接送られたグリーン電力のこと。
(通常の電力に「環境付加価値=グリーン電力証書」と組み合わせた「みなしグリーン」ではない。)

出光は、二又風力開発の生グリーン電力を2010年4月から託送(他の電力会社が保有・運用する送配電網を使用)により、直接新丸ビルに供給する。

三菱地所は、新丸ビルで使用する電力すべてを「生グリーン電力」で賄い、新丸ビルのCO2排出量が年間約2万t削減される。

三菱地所と出光興産は、東京都、千代田区、青森県が進める「再生可能エネルギー地域間連携」の仕組みに参加することを今後検討する。

ーーー

東京都は12月4日、青森県及び千代田区と、再生可能エネルギー地域間連携に関する協定を締結した。

都市の旺盛なエネルギー需要に対し、自然エネルギーの豊かな地域が創り出す再生可能エネルギーを活用することで、都市のCO2削減と地域の経済活性化及び雇用拡大とを同時に達成することを目指すもの。

同協定を踏まえ、都は、その民間パートナーを募集している。

参考  2009/11/7 中国企業、米国で風力発電事業


本年のブログは今日で終わります。

2006年2月15日にスタートして、今回で1336回となりました。
ご愛読、ありがとうございました。

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新日本石油と新日鉱ホールディングスは2008年12月4日に「経営統合に関する基本覚書」を締結し、両社グループの経営統合に向けた協議を進めてきた。

    2008/12/8 新日本石油と新日鉱ホールディングス、経営統合

両社は本年10月30日、経営統合契約を締結、統合持株会社設立のための株式移転計画を作成したと発表した。

2010年4月1日  両社が共同して株式移転を行うことにより統合持株会社 JXホールディングス を設立

        新日石の普通株式1株に対して統合持株会社の普通株式1.07株を、
    新日鉱の普通株式1株に対して統合持株会社の普通株式1.00株を
        割当て交付

2010年7月1日  両社グループの全事業を統合持株会社の傘下に統合・再編・整理

       2009/11/3 新日本石油と新日鉱ホールディングスとの経営統合契約の締結

ーーー

両社は12月25日、公取委への事前相談で、1点について対応策をとれば、独禁法上の問題がない旨の回答をもらったことを明らかにした。

両社が行っているニードルコークス事業(コークスを加熱して製造される針状組織の炭素材料で、電気炉用の電極の骨材として使用)について、競争を実質的に制限することとなるおそれがあるとの懸念を指摘された。

れに関しては、両社いずれかの本事業を分離の上、その経営権を第三者に譲渡する旨の問題解消措置を申し出て了承を得た。

ーーー

両社は12月25日、持株会社JXホールディングスの子会社のJX日鉱日石エネルギー(「JXエネルギー」)の製油所、製造所および支店の体制ならびにブランドについて発表した。

1.JXエネルギーのグループ製油所、製造所および支店の体制

 JXエネルギーは、8製油所、3製造所、10支店を全国に配置する。

(1)製油所体制(8製油所)

製油所名 原油処理能力(千BD) 参考  赤数字は削減分
2008/12 2011/3予 トッパー内訳
室蘭製油所   180   180 第2 180 新日石精製 室蘭製油所
仙台製油所   145   145 第1 145 新日石精製 仙台製油所
根岸製油所   340   270 第1 120
第4 150
第2  70
新日石精製 根岸製油所
大阪製油所     115   -   新日石精製 大阪製油所
CNPCとのJVで輸出型製油所化
水島製油所   455   345 第3 140
第2 110
新日石精製
第2  95
第3 110
ジャパンエナジー 
麻里布製油所   127   127 第4 127 新日石精製 麻里布製油所
大分製油所   160   136 第3 136
第1  24
新日石精製 大分製油所
(旧 九州石油)
鹿島製油所   210   189 第1 189
  (-21)
 
鹿島石油 
(ジャパンエナジー 70.7%)
(日本海石油
 富山製油所)
     60   -   - 2009/3 廃止済 
 1,792  1,392   計 -400

* 上記のうち、日本海石油(新日石の100%子会社)富山製油所はオイルターミナルに機能変更した。

* 残り8製油所のうち、大阪製油所はCNPC(ペトロチャイナ)とのJVとするため、新会社の能力から除外した。

新日本石油とペトロチャイナは2008年5月、新日本石油精製が保有する大阪製油所(115千バレル/日)を共同出資会社として運営することで合意した。
同製油所を輸出特化型製油所に転換するため新会社を設立、ペトロチャイナが49%出資する。
2009年6月、中国国家発展改革委員会
NDRC)の承認を得た。

今後の事業環境変化に先んじ、2011年3月末までに、昨年12月4日(基本合意日)を基準として日量400千バレルの石油精製能力(原油処理能力)を削減する。
うち、大阪製油所の115千バレルはペトロチャイナとの輸出特化JVへの移管のため、実質的には285千バレルの減となる。

さらに、遅くとも2015年3月末までに、日量20万バレルの追加削減を行う予定。

(2)製造所体制(3製造所)

製造所名 参考
川崎製造所 新日石精製川崎製造所
 石油化学製品(エチレン、プロピレン、パラキシレン、ベンゼン等)
横浜製造所 新日石精製横浜製造所
 潤滑油製品、各種溶剤、ワックス等
知多製造所 ジャパンエナジー知多製油所
 石油化学製品(パラキシレン、ベンゼン等)、各種溶剤等

(3)支店体制(10支店) 略

 

2.石油精製販売事業で用いるブランド

統合後の石油精製販売事業で用いるブランドについては「ENEOS」に統一する。
(現在のジャパンエナジーのブランドは「JOMO」)


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2009年 回顧と展望

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昨年12月19日に一時32.40ドル/バレルまで下がったWTI原油価格は、株価の回復に合わせ2月後半から上がり始め、10月には80ドルを超えた。
しかし、その後は下がり始めたが、12月中旬から再度上昇に転じ
、12月24日の終値は78.05ドルとなっている。

      WTI (ドル/bbl)
2008 2009
年初 100.00(1/2) 46.34(1/2)
最高(一時) 147.27(7/11) 82.00(10/21)
最低(一時) 32.4012/19) 33.20(1/15)
年末 44.60(12/31) 79.36(12/31)

ナフサ価格もこれに合わせて上下している。

国産ナフサ基準価格は2008年4Qの52,000円/klから2009年1Qは27,000円に急落、その後、33,300円、41,200円と上昇した。
10月の輸入価格は円高の影響も受け39,304円、11月は39,836円となった。
2ヶ月平均での国産ナフサ基準ベースは 41,500円と、第3四半期比で300円高となっている。

ナフサ価格は上昇しつつあるが、需要減少のなかで一旦下がった製品価格を値上げするのは困難であり、損益に悪影響を与えている。
円高のなかでの製品価格値上げで海外価格との差が大きくなると、海外品の流入も懸念される。

円高が続いている。当初はドル安の影響であったが、その後、中東の不安でユーロも売られた。

ナフサは安くなるが、輸出手取りが減るほか、海外からの流入の恐れも出てくる。

化学品の国内出荷は低迷しているが、中国向けの輸出が好調で、多くの製品で高操業を続けている。

しかし、米国などからの攻勢で海外の価格は低く、かつ円高も影響して、輸出は採算が悪く、単に操業度を上げているだけという状況にある。

この結果、本年上期の各社の決算は前々年同期、前年同期と比べて大幅な減益で、特に石油化学の比率の大きい会社の損益が悪い。

2009/11/13  中間決算対比

METIの発表したエチレンセンター11社の石化部門の営業損益は昨年度の大幅赤字に続き、本年上期も単独で48億円、連結で227億円の赤字となっている。

今後、日本の石油化学の損益が大幅に改善する可能性は少ない。

現在操業を支えている中国の需要は政府支援によるもので、いつまでもは続かない。
その中で、中国及び中東の新鋭設備が次々と稼働する。

METIの世界の石油化学製品の今後の需給動向 予測では中国の需要が今後順調に増加したとしても、2013年の全世界の需要は現在の能力よりも少ない。

中国の需要は農村部の所得格差と、将来の不安からの貯蓄性向の高さ(日本と同様)により、今後も引き続き増加するとは考え難い。他方、これに折り込んだ以外にも新増設があるため、設備過剰は必至である。

中国向け輸出で生きている韓国や台湾の企業が日本に輸出する可能性もある。

ーーー

昨年の 2008年の回顧と展望 「終りの始まり」で以下の通り述べた。

石油化学の赤字が続いた場合、石油化学の継続の意義の説明が出来なければ、海外株主は石油化学からの撤退を求めるか、それが行なわれない場合は持ち株を売却するであろう。

三菱ケミカルは7月の欧米での会社説明会で、「石油化学をなぜやっているのか」と聞かれたという。
赤字が続けば、「なぜ石油化学をやめないのか」と問われることとなる。

他方で医薬メーカーや信越化学のように高配当の企業がある中で、減配や無配になれば、国内投資家も持ち株の売却をするだろう。

大量の株式が売却されれば、企業の存続も危なくなる。

 

実際に本年3月末で住友化学、三菱ケミカルHD、三井化学の外人持株比率は大きく低下した。(武田薬品や信越化学は余り変わっていない)
他社は発表していないが、三菱ケミカルの本年9月末は更に19.00%にまで下がっている。

石油化学会社の株価は低迷している。

各社とも2008年秋に株価は暴落しているが、その後、信越化学、JSR、電気化学等の株価は2007年末以降の高値から7割程度までに戻っている。

しかし、住友化学、三菱ケミカルHD、三井化学の株価は低迷したままである。石油化学のない日産化学と対比すると違いは明白である。

医薬、農薬を持ち、石油化学でもサウジに進出して石化ビジョンのはっきりしている住友化学も、Petro-Rabighがまだ損益に貢献していないためか、低い水準にとどまる。

田辺三菱製薬と三菱樹脂を合併し、今回三菱レイヨンを合併する三菱ケミカルHDは昨年後半と同じ水準のままで低迷している。
(三菱ケミカルの場合、三菱ケミカル誕生で三菱化学の株主は株数が1/2になった。このためグラフでは三菱ケミカルHDの実際の株価を2で割っている。)

三井化学は12月に株数で29%増となる増資を行った。

同社は11月13日の発表で手取りを279.5円として、総額を643億円とみていた。
しかし、その後の株価の低下で
発行価格は198円となり、手取額は 433億円と、当初予定より210億円もの大幅減少となった。
仮に一般並に7割程度まで戻り、発行価格 700円と仮定すると、手取りは1600億円となる。
株価の低迷で1000億円以上を失ったことになる。

今回の増資で株数が増加したため、株価アップは期待しにくい。

ーーー

昨年も述べたとおり、国内需要に合わせてエチレンセンターを減らすしかない。
現在のエチレン能力は800万トンあるが、内需は600万トン以下である。

しかし、「終わり」がなかなか始まらない。

三菱化学と旭化成が水島のエチレンの統合で1つを止める検討をしているのが唯一である。

最大の理由はエチレンを止めた場合の影響の大きさである。
エチレンを止めると、一部を除いてその工場のほとんどの誘導品も止めざるを得ない。
この場合、製造所の要員が不要になるだけでなく、営業や管理部門の縮小も必要となる。

石化専業の場合は企業の存続そのものが問題になる。
総合化学の場合でも全員を他の事業で吸収する余裕はない。

エチレンを止めざるを得なくても、止められないというのが現状である。

また、ポリオレフィン等の統合会社も問題を複雑にしている。

三菱化学は日本ポリエチレンを設立したが、自社の鹿島、水島のプラントのほか、川崎の東燃化学と新日本石油、更に昭和電工の大分にプラントを持つ。日本ポリプロは千葉の丸善石化、四日市の東ソーのコンプレックスにプラントを有する。

両統合会社の契約がどうなっているか分からないが、プラント停止がエチレンコンプレックス全体の停止に繋がりかねないため、相手会社はプラント停止を統合会社を主導する三菱化学に白紙委任しているとは思えない。
逆に言えば、相手会社は三菱化学と組むことで、エチレンの稼動が保障されている感もある。

ーーー

日本の石油化学は1980年代初めに、どうしようもなくなったが、抜本策は取らず、産構法の下で、エチレンや誘導品の一部廃棄や停止と共販会社設立で一時しのぎを行い、その後のバブルで救われた。

2000年初めには三菱化学の四日市エチレン停止や三井と住友の合併案など、抜本策に動き始めたが、中国バブルが起こった。

このため、本来ずっと昔に解消すべきであった小規模多数のエチレンセンターが残存したままとなっている。

しかし、次の奇跡が期待できない以上、思い切った手を打たないと、共倒れとなるであろう。


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2000年のポリプロカルテルについては、トクヤマ、出光興産、住友化学、サンアロマーの4社が2007年8月8日の審決を不満として東京高裁に審決取消を求めて提訴していたが、その判決が9月25日にあった。

東京高裁は、本件審決には、原告らの主張するような違法はなく、原告らの請求は理由がないとして、原告らの請求をいずれも棄却した。

2009/10/14 ポリプロカルテルで高裁判決

住友化学は10月14日、「主張が認められなかったことは残念だが、上告しないことにした」とのコメントを発表した。
しかし、残り3社のうち、
<p>HTML clipboard</p>トクヤマのみが上告及び上告受理申立てを行い、現在係属中となっていることが分かった。

12月2日の事務総長定例記者会見で以下の説明があった。(12/25 メールマガジン)

 本年9月25日、ポリプロピレンの販売価格カルテル事件の審決取消訴訟について、東京高等裁判所において、株式会社トクヤマほか3社の請求を棄却する判決が出された。その後、原告のうち株式会社トクヤマから上告及び上告受理申立てが行われ、現在係属中となっているが、それ以外の原告については、当該判決が確定している。
 この事件は、平成12年の価格カルテル事件であったわけであるが、争点となったのは、平成12年3月6日の会合において、原告7社の間でポリプロピレンの販売価格の引上げに関する合意があったのかどうかという事実関係、公正取引委員会が行った審決の事実認定が引用している証拠が実験則や経験則に照らしてどうなのか、実質的な証拠があるのかどうかというところが争点であった。
 東京高等裁判所としては、9月25日の判決において、公正取引委員会の審決の認定は、経験則、採証法則、証拠を採用する法則等に反するとは言えず、実質的な証拠があって、本件審決が上記会合において基本合意、これは価格カルテルであるから意思の連絡ということになるわけであるが、意思の連絡が成立したと認めたことは合理的であるということができ、原告らが主張するような違法はないとして原告らの請求を棄却したというものである。


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旭化成ファーマは12月24日、同社が開発したRho-kinase阻害剤ファスジル(Fasudil)のCoTherix社へのライセンス契約に関しての仲裁手続で、CoTherix社に対し、同社に約91百万米ドル(+金利)の支払いを命じる最終裁定が出たと発表した。

同社は2006年6月にCoTherix社に対してファスジルの開発・販売権を供与するライセンス契約を締結したが、2007年1月以降、CoTherix社がファスジルの開発を中止したため、同社は2007年10月にCoTherix社に対し、ライセンス契約の違反に基づく損害賠償を求め、国際商工会議所(ICC)の仲裁手続をカリフォルニアで開始していた。

ーーー

旭化成ファーマは2006年6月、CoTherixに対してファスジルの経口剤および吸入剤に関するライセンス契約を締結した。
北アメリカとヨーロッパで独占的に開発・販売する権利を供与した。

ファスジルは、新しい作用機序 (Rho-kinase 阻害作用)をもつ薬剤で、Rho-kinaseの機能についての解明が進むにつれて、多くの疾患に対してファスジルが効果を示すことが期待されている。

Rho-kinaseは、細胞内情報伝達に関与するリン酸化酵素で 、血管平滑筋の収縮・弛緩をコントロールする生体機能分子として、近年、注目を集めている。
血管平滑筋に存在するRho-kinaseが異常に活性化されると、血管平滑筋の収縮が亢進され、 その結果生じる血流障害により組織の機能異常が起こる。

同社は当時、ファスジルを注射剤として、国内で「くも膜下出血術後の脳血管攣縮及びこれに伴う脳虚血症状の改善」の適応症で販売しており、同疾患において広く使用されていた。また、注射剤については、国内で脳梗塞の治療薬としての開発を進めていた。

経口剤については、米国での狭心症を対象とした用量探索臨床試験が終了し、ファスジルの特徴が確認されており、また、その作用機序から肺高血圧症にも効果が期待されることもあり、当該治療領域に米国で経験のあるCoTherixにライセンスした。

ライセンス一時金は8.75百万米ドルで、以降開発のステージアップ等に応じて支払いを受けることとなっていた。

ーーー

CoTherixは2000年の設立で、2004年にNASDAQに上場、肺高血圧症薬Ventavisを2005年から販売していた。

CoTherixは、2007年1月にActelionに420百万ドルで買収され、同社の100%子会社となった。

Actelionは1997年12月、「血管内皮細胞に関連した疾患に対する革新的な新薬の創製と開発に注力する」という明確なビジョンの下、創始者チームによって設立された。

Actelionは、エンドセリン受容体拮抗薬の分野におけるリーディングカンパニーとして、長年実現しえなかった経口エンドセリン受容体拮抗薬を世界で初めて肺動脈性肺高血圧症の治療薬として製品化することに成功した。

CoTherixは2007年1月(Actelionによる買収完了当日)、旭化成に対しファスジルの開発を取り止めると通告、旭化成に返却した。

旭化成は200710月に契約違反として仲裁手続きを開始するとともに、2008年にカリフォルニア州裁判所に訴えていた。
裁判は引き続き行われている。

Actelionでは、この仲裁の結果と金額に驚き、失望していると述べた。
CoTherixでは、本件への対応を検討している。

独占契約の場合、勝手にやめられると技術供与側にとっては損害は大きい。
契約上の規定がどうなっているか、仲裁決定の理由がどうなっているのか、興味がある。

ーーー

日本でも同様の係争がある。

湧永製薬は1998年6月に、同社が創製したニューキノロン化合物(抗菌剤)の国内外の独占的な開発・製造・販売権を大日本製薬(その後合併し、大日本住友製薬)に供与するライセンス契約を締結した。

湧永製薬によると、大日本製薬は2002年5月になって突如開発を中止した
湧永はライセンス契約の定めに従って開発を履行するよう、再三にわたって求めたが、応じなかったため、ライセンス契約を解除した上で、2004年7月に
損害額89億8300万円についての一部請求として50億円の損害賠償請求訴訟を提起した。
大日本製薬は、開発中止は化合物を適正に評価したうえで決定したものであり、ライセンス契約の解除は正当な権利行使であると主張した。

2007年3月大阪地裁は、原告の請求の一部を認容し、大日本住友製薬に対して8億9,000万円の支払いを命じた。

大日本住友製薬は控訴し、大阪高裁は2009年3月、第一審判決を取り消し、湧永製薬の請求を棄却した。

これに対して湧永製薬は2009年4月最高裁に上告し、現在争っている。


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Huntsman831日、世界第三位の酸化チタンメーカーで再生法(Chapter 11)適用中のTronox主要資産買収の"stalking horse" 契約を締結したと発表した。それよりも良い条件の買い手が出なければ、購入できる。

2009/9/5 Huntsman、再生法適用の酸化チタンメーカーの資産買収

Tronox はこのたび、Huntsmanとのstalking horse契約を破棄した。12月21日に予定されていた入札も中止となった。

Tronox
は社債保有者がスポンサーとなって再建する方向で交渉している。

Huntsmanは買値を高めてまで購入しようとは思わないとしている。


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欧州連合(EU)閣僚理事会は12月22日、欧州委員会の提案を可決し、中国とベトナム原産の革靴製品に対する反ダンピング税の課税期間をさらに15カ月間延長することを決定した。

EUは中国とベトナムの革靴が不当な安値で輸出されているとの理由から、2006年10月7日から中国製品 16.5%、ベトナム製品 10%のダンピング課税を行っている。
これを期限を過ぎた後の10年1月以降も15カ月間、延長することにした。

この措置は当初から極めて異常な、政治的なもので、今回の延長について中国は猛反発している。

ーーー

EU欧州委員会は2006年、中国・ベトナム製の革靴に対し、臨時反ダンピング税を課すよう提案した。最初は4%とし、段階的に引き上げて最後は 19.4%(ベトナム製は16.8%)に引き上げ、臨時措置の6カ月間にダンピングが解消されなかった場合は、正式な反ダンピング税の課税に踏み切るとした。

中国商務部はこの件について、特にEUが中国を非市場経済国待遇をしていることに猛烈に反発した。

WTO協定では「貿易の完全な又は実質的に完全な独占を設定している国ですべての国内価格が国家により定められているものからの輸入の場合には、規定の適用上比較可能の価格の決定が困難であり、また、このような場合には、輸入締約国にとって、このような国における国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないことを考慮する必要があることを認める。」と規定している。

「市場経済国」との認定を受けていない国の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。EUは中国に市場経済国待遇を適用せず、しかも中国よりコスト水準の高い国を代替国に採用するケースが多く、この結果、ダンピングと判定される確率も高くなっているといわれている。

欧州連合(EU)は200610月、加盟国による投票を行い、中国・ベトナム産革靴に対する反ダンピング税徴収法案を僅差で可決した。
同法案に基づき、
10月7日から、中国製品には16.5%、ベトナム製品には10%の反ダンピング税が課された。期間は2年間。

同法案はフランスが提出したもので、投票結果は反対12、賛成9、棄権4。EUの規定では、提案を否決するには加盟国の過半数の票が必要で、棄権票は賛成票とみなされることから、同法案は1票差でかろうじて可決された。

欧州委員会は、十分な法的根拠と事実の裏付けを欠くとする内部の強い反対意見を踏まえて、最終的な反ダンピング措置の実施期間を通常の5年間から2年間に改め、2年後にはダンピング措置を終わらせなくてはならないとした。

2006/2/27  EU、中国・ベトナムの革靴に反ダンピング税

EUは2008年4月末にはアモイから輸入する皮靴も課税対象とし、中国企業がアモイを経由することで課税を免れる行為を封じた。

2年後の2008年10月にEUは再調査を開始し、11月19日に行われた同委の反ダンピング諮問委員会では、多くの加盟国の代表が、客観的な事実に基づいて反ダンピング措置の延長に反対を表明した。
しかし、EU閣僚理事会は
11月22日、欧州委員会の提案を可決し、中国とベトナムが原産の革靴製品に対する反ダンピング税の課税期間をさらに15カ月間延長することを決定した。

ーーー

<p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p>これの期限を迎える2009年10月、欧州委員会は中国とベトナム製革靴に対する反ダンピング関税を再度15か月延長することを提案した。

EUの反ダンピング委員会は11月19日、評決を行い、賛成10か国、反対15か国、棄権2か国で同案を否決した。

しかし、欧州委員会は反ダンピング委員会の否決にもかかわらず、閣僚会議で反ダンピング関税の延長を認めた。
欧州委員会の主張は以下の通り。

反ダンピング課税を取り止めると、ダンピングとそれによる被害が増大し、EUで26万人以上が従事する産業の構造調整を遅らせることとなる。
また、反ダンピング課税により需要家や流通業者に悪影響は出ていない。
消費者価格は安定しているし、流通業者の利益率も適正である。
このため、延長が妥当である。

しかし、最大5年の延長が可能なところ、15ヶ月の延長にとどめる。これは業界が構造調整するのに適当な期間である。

このように、反ダンピング委員会が延長に反対し、多数の参加国が延長に反対したのを、革靴業界を抱えるイタリアやフランスなどが延長を主張し、通したもので、EUが最終的に保護貿易主義の圧力に屈服したと見られている。

ーーー

これに対して、中国商務部の姚堅報道官は次のような談話を発表した。

中国側はこの決定に対して強い不満を抱いており、中国政府はEU側がいかなる形式でもこの案件において反ダンピング措置を延長することに反対する。今後はこの案件をめぐり世界貿易機関(WTO)の紛争解決制度に提訴するとともに、相応の措置を取って中国産業界の合法的な権利を着実に保護する方針だ。

EUの靴製品産業は長期にわたり割り当て制度によって保護され、これにここ数年の反ダンピング措置が加わったが、産業界は必要な構造調整をすでに終えている。

EUの業界は世界の供給チェーンの中で、徐々にミドル・ハイエンド市場へと足場を移しており、その製品は中国産製品と直接の競合関係にはなく、対中反ダンピング措置を継続することに意味はない。

我々はEUの輸入業者、小売業者、多くの加盟国が今回の反ダンピング措置の延長に反対していることに注目する。EU側が事実を尊重し、民意に従って、中国産革靴製品に対する反ダンピング措置を即刻停止することを願う。

保護貿易主義は相互の信頼関係を損なうばかりで、最終的には人を損ない、自身の利益をも損なうという結果を招くだけだ。

中国皮革工業協会のデータによると、反ダンピング課税によって、中国製革靴のEU向けの生産量が約20%減、輸出量が約4000万足減少しており、中国では約2万人の職が失われたとしている。

<p>HTML clipboard</p>

ーーー

中国商務部は12月23日、EUからのカーボンスチールファスナーに対するダンピング調査でクロの仮決定をしたと発表した。

本年初めに、EUは中国製スチールファスナーに対して5年間のダンピング課税(最高87%)を行った。中国は10月にWTOに提訴している。

米国もダンピング調査及び反補助金調査を開始した。

中国は生産量の50%を輸出しており、EUと米国の措置は中国メーカーに悪影響を与えた。

今回の決定はEUによる中国製革靴製品に対する反ダンピング税の課税期間延長の発表の数時間後に発表されたが、実際には昨年12月から調査しており、対象になるのが1社という小さなもので、対抗策ではなく、偶然の一致である。

ーーー

米国と中国の間では米国が中国品に対して反ダンピング措置を取ったのに対して中国が対抗策をとり、エスカレートしている。

参考 2009/11/9 米中 貿易戦争、更に激化

今後、中国が対抗策を取り、エスカレートするのが懸念される。

 


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Alcoa1221日、サウジアラビアで国営鉱物資源会社(Ma'adenとJVを設立し、サウジでワールドクラスのアルミ一貫事業を行うと発表した。
先端技術を導入し、世界で最低水準の生産コストのアルミナ、アルミ、アルミ製品のサプライヤーになるとしている。

第一期では以下の能力の、完全に統合されたコンプレックスを建設する。
・年400万トンのボーキサイト鉱山
・年180万トンのアルミナ
・年74万トンのアルミインゴット、スラブ、ビレット
・年25万~46万トンの最先端の圧延工場(当初はアルミ缶製造用、将来は建材用なども)

精錬所と圧延工場はサウジ東海岸のRaz Az Zawr産業地区に建設される。低コストでクリーンな発電所や港湾、鉄道施設など政府の開発したインフラを利用できる。
原料のボーキサイトは
QuibaQiba)近郊のAl Ba'ithaの新鉱山から鉄道で輸送される。
 
* Qibaの近くのAz Zabirahにはボーキサイト鉱山があるが、Al Ba'ithaの新鉱山はこの近くにあると思われる。(地図参照)

計画は2段階で開発される。第一段階はアルミ精錬と圧延で、2013年に製造を開始する。第二段階のボーキサイト採掘とアルミナ製造は2014年に予定されている。

投資額は108億ドルとしているが、詳細設計次第となる。
Ma'adenJV60%を所有、Alcoa主導の投資事業組合Alcoa 50%)40%を所有する。

Alcoaは全工程にわたっての設計、建設、操業でノウハウ、経営技術、支援を提供する。また、第一段階では原料アルミナを海外から供給する。

ーーー

Ma'aden 19973月に、サウジの石油以外の金属資源を開発し、サウジ経済を石油と石油化学以外に多角化するために設立された。

20087月に株式50%を公開した。

今回の立地のRas Az Zawr Al Jubail の北90kmにあり、Ma'aden70%、SABICが30%出資するMa'aden Phosphate Company の統合化学肥料コンプレックスがある。

2010年にスタートする予定で、燐酸、硫酸、アンモニア、二燐酸アンモニウム(DAP)造粒の各プラント、コジェネレーション、海水淡水化プラントとインフラ設備がある。
原料の硫黄は北部のAl Jalamidから貨車で輸送される。
粒状
DAPを年産292万トン生産し、そのほか、外汎用のアンモニア40万トン、硫酸20万トンを生産する。


中東のアルミ事業については下記参照。

2008/6/3 中東のアルミ事業

2008/6/18 サウジの2つのアルミ計画 中国アルミとドバイアルミの進出


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エーザイは12月18日、AkaRx, Inc.の買収手続きを開始すると発表した。
買収価格は255百万米ドルで、AkaRxは米国事業会社エーザイ・インクの子会社となる。

同社は2008年1月に、がん・救急治療に強みを持つ米国バイオファーマ企業のMGI PHARMA, INC を買収したが、これに伴い、AkaRx買収オプション権を取得した。

今回、このオプション権を行使したもの。

AkaRX は山之内製薬が藤沢薬品と合併し、アステラス製薬となった時にスピンアウトした会社で、<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>山之内はここで新薬AKR-501 を(YM477 として)開発していた。

2007年8月に米国バイオファーマ企業 MGI PHARMAAkaRXからAKR-501(現在の開発品コード:E5501)の開発権を買収するとともに、2010年18日までの間でAkaRxを買収するオプションを取得する契約を締結した。

エーザイは2007年12月、がん・救急治療に強みを持つMGI PHARMA を総額約39億米ドルの現金にて買収する最終契約を締結した。

MGI PHARMA買収で、AkaRxを買収するオプションがエーザイに移り、期限切れを間近に控え、オプションを行使した。
AkaRxの株式を100%取得し子会社化し、AKR-501の全世界における開発・販売・製造権を取得する。

AKR-501は、巨核球およびその前駆細胞に作用して血小板産生を促進するトロンボポエチン(TPO)の受容体アゴニストで、経口投与により血小板数増加を促進させることにより、血小板減少を示す様々な疾患に対する効果が期待されている。

アゴニストとは生体内の受容体分子に働いて神経伝達物質やホルモンなどと同様の機能を示す作動薬。

現在、米国において、<p>HTML clipboard</p>特発性血小板減少性紫斑病および肝疾患に伴う血小板減少症を対象とした第II相試験を進めており、前者についてはPOC(Proof of Concept:創薬概念の検証)が確認されている。また、がん化学療法に伴う血小板減少への適応についても可能性を追求していく。

特発性血小板減少性紫斑病は、血小板が減少し、さまざまな出血症状を引き起こす疾患で、日米欧、中国、インドなどで患者数は約80万人と推計されているという。

内藤社長は、中国では人口の1割が肝炎ウイルスを保有していると言われており、AKR-501は将来の中国市場開拓の役割を期待できると述べた。

同社は今回の買収を通じ、開発品ラインナップの更なる強化を図り、アンメットメディカルニーズ(未だに医療ニーズが満たされない疾患領域)を充足させる。

なお、同社はAkaRxの買収に伴い、インプロセス研究開発費 255百万米ドルが発生するため、当期の営業損益、経常損益、当期損益予想をそれぞれ227億円減額した。


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バブル時に事業を担保とした借入金で買収を行い、バブル破裂により経営破たんに瀕しているのがIneosBasell(現在のLyondellBasell)である。

前者は借入契約の変更を行い、合わせて製油所売却交渉を続けている。
後者は民事再生法(Chapter 11)での再生手続きを協議中で、合わせて
インドのReliance からの買収提案についても交渉している。

同じ問題を抱えているのが、アルミニウム大手の UC Rusal (United Company Rusal) である。

ロシアの大富豪 Oleg Deripaska 1997年に持株会社Basic Element を設立し、エネルギー、製造、機械、資源、ファイナンスサービス、建設、航空の各分野でロシア、CIS、アフリカ、豪州、アジア、欧州、ラテンアメリカの合計100社以上に出資している。ロシアの自動車大手GAZもこれに含まれている。

その1社でロシア最大のアルミメーカーであるRUSALが2006年に、同国2位のSUALとスイスの商社Glencore International AGのアルミニウム部門を買収し、UC Rusal を設立した。
買収規模は約300億ドルになると伝えられた。

2006/9/5 ロシアのアルミ最大手RUSAL、同国2位のSUALを買収

UC Rusal は2008年4月、Onexim Group (Norilskの元社長Mikhail Prokhorov が所有)からNorilsk Nickel 株の25%+1株 の買収を完了した。

2008/8/11 ニッケル世界最大手Norilsk NickelKGB出身者がトップに 

Onexim は現金とUC Rusalの株式 14%を受け取ったとされている。
UC Rusal は買収に当たり、45億ドルの協調融資をアレンジした。

ところがコモディティー価格が急落すると、担保のNorilsk 株が急落し、担保割れとなった。

オーナーのDeripaska の資産も2008年に280億ドルあったのが、今年は35億ドルに激減した。
銀行からの追加担保の要求を受け、カナダの自動車メーカー
Magna Internationalの株式15億ドルとドイツの建設会社Hochtiefの株式5億ドルを売却している。

UC Rusalは2008年10月31日期限の対外債務の返済資金を工面できなくなった。
このため、海外金融機関は見返りにNorilsk Nickel の株式を要求した。

ロシア政府は、ニッケルや希少金属をもつ戦略企業の所有権が海外移転するのを恐れ、また、雇用維持のため、危機対策として設定した500億ドルの融資枠から45億ドルを国営の、対外経済銀行(Vnesheconombank)を通じて融資、同社を破綻から救った

対外経済銀行の監査役会はプーチン首相が長となっている。

本年6月、Deripaska 氏の所有するサンクトペテルブルク郊外の工場が閉鎖され、労働者がプーチン首相に助けを求めた。
プーチンは国営テレビが放映する中で、「自分の野心、プロ意識のなさ、そして恐らく強欲のために、何千人もの住民を人質にした」と
Deripaska を非難、工場再開に合意する契約書にサインさせた。

債務総額は168億ドルに達しており、UC Rusalは本年1年はその対策に追われた。

Deripaska 氏は本年5月、プーチン首相に同行して日本を訪問、日本の債権者と協議した。

12月3日、UC Rusalは総額169億ドルの債務の条件変更について契約を締結したと発表した。

海外金融機関からの74億ドルの債務は2段階に分かれる。
最初の
4年間は返済は返済可能ベースで行われる。金利は借入金のレベルに応じてLIBOR+(1.75%~3.5%)とする。
残額は3年返済とするが、Rusalは別の返済方法があればそれを採用できる。

ロシアの銀行の21億ドルについても契約が締結され、4年の期間を必要があればあと3年延長することとし、金利は89%に下げられた。

ONEXIMからの27億ドルについては、18.2億ドルをRusalの株式6%に変換することとなった。
残額は海外金融機関のものと同様の扱い。

UC Rusal はこの決着を受け、新株発行で20億~25億ドルの資金調達(IPO)を目指すこととしている。
発行済み株式数の10%にあたる新株を香港とパリの株式市場で発行する。

但し、当初は年内に行われる予定であった増資は来年に繰り越されることとなった。

対外経済銀行からの45億ドルの融資は期間が1年であったが、11月に1年間延長された。
海外金融機関が
7年の延長を認めたが、対外経済銀行は来年以降については明言していない。

このため、増資を承認する担当の香港当局は来年これがどうなるかを懸念した。

対外経済銀行はその後、1年以上延長する手続き中であること、約6億ドルを出資してIPOで3%以上引き受けることを明らかにしている。

プーチン首相と並んで対外経済銀行の監査役会に名を連ねるロシア財務相は、「我々は、Rusalが財務問題をすべて片付け、危機を乗り越えることに関心を持っている」と述べた。


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Braskemと酵素メーカーのNovozymes は1214、サトウキビからのPP生産で提携したと発表した。

Braskemは約250億円を投じて、Rio Grande do Sul 州Triunfo市Southern Petrochemical Complex でさとうきびエタノールから年産20万トンのエチレンとポリエチレン(HDPE+LDPE)工場を建設している。

2009/12/1 テトラパック、ブラスケムのグリーンプラスチックを使用

同社は2008930日、世界で初めて再生可能原料からのグリーンポリプロピレンの開発に成功したと発表した。
最初は実験室で、次にパイロットプラントで製造に成功、Beta Analytic Inc.
から認証を得た。

同社は、今回のNovozymesとの提携で、Novozymesの発酵技術とBraskemの化学、プラスチック技術を結びつけ、大規模生産技術を確立し、グリーンポリマーでの世界のリーダーを目指すとしている。
開発期間は最低5年としている。

Novozymesも農業廃棄物をバイオ燃料にする酵素を生産しており、また、再生可能原料からアクリル酸を生産する計画でCargill 提携している。

CargillNovozymes は20081、再生可能原料から3-ヒドロキシプロピオン酸(3HPA)を経由してアクリル酸を製造する技術を共同で開発する契約を締結したと発表した。
米エネルギー省から
150万ドルの支援を受ける。

バイオ技術でつくった微生物を使用して砂糖を発酵させて3HPAに変換する。
3HPAはその後、アクリル酸を含む幅広い化学製品に変えられる。


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LANXESS は “LANXESS goes Asiaを合言葉に、特に中国とインドで、Bayer から引き継いだ事業をベースに活動を強めている。

既報の通り、同社はインドと中国の企業買収手続きが91日に完了したと発表した。

インドではベンジル製品のインド最大メーカーで塩化硫黄のメーカーのGwalior Chemical Industries 82.4百万ユーロで買収した。
Madhya Pradesh Nagdaに工場を持つ。

中国では江蘇省のLiyang市でトリメチロールプロパンを生産するJiangsu Polyolsを買収した。

2009/9/11 LANXESS、インドと中国の企業買収手続き完了、"LANXESS goes Asia" 推進 

その一方で、同社は経済危機に対応するため、年初に“Challenge 09-12”プログラムをつくり、2012年までに世界中で360百万ユーロのコストダウンを行うこととしている。

同社は2007年にイネオスとのABSのJVの Ineos ABS を設立し、49%を出資した。
LANXESS 本年に入り、JV持株を全てIneosに売却、ABS事業から完全撤退した。

同社のRubber Chemicals部門はSouth Carolina州にプラントを持つが、インフラ設備とサービス部門を投資会社のCooper River Partners, LLCに売却、そこから長期契約でインフラ設備をリースし、サービスを受けることとした。

同社のFunctional Chemicals 部門は着色剤の生産をメキシコのLermaで行っているが、近く生産をLeverkusen工場に移す。

LANXESS 12月15日、グローバルに生産ネットワークの効率化を進める一環として、山東省イ坊(Weifan)市のヒドラジン水和物のJVのLANXESS Yaxing (Weifang) Chemicals の持株(55%)をパートナーのイ坊亜星集団(Weifang Yaxing Groupに売却したと発表した。

このJVはLANXESSバイエルの化学品子会社であった2004年9月に設立され、米国バイエルのBaytown工場から設備を移設し、2006年7月から稼動していた。

ランクセスは今後、ドイツのLeverkusenのプラントから世界中の需要家に供給する。
中国ではイ坊亜星が単独でこの事業を行う。

中国での活動強化という長期方針よりも、本社工場の操業度を上げ、コストダウンを図るという短期目的を優先したこととなる。


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中央アジアのトルクメニスタン東部Gedaimと中国新疆ウイグル自治区Horgos を結ぶ天然ガスのパイプラインが12月14日、操業を開始した。中央アジアのガスを中国に供給する初の基幹パイプラインとなる。

トルクメニスタンでの開通式典には中央アジア歴訪中の中国の胡錦濤国家主席と中央アジア3カ国TurkmenKazakhUzbek の大統領が参加した。胡主席は「パイプラインは中国と中央アジアの協力の象徴」と述べた。

パイプラインはウズベキスタン、カザフスタンを通過。中国までの全長は1833km。
中国は天然ガスを建設中の
国内パイプラインで沿岸部まで輸送する。総延長は7000kmに達する。

2007/9/7 四川-上海の天然ガスパイプライン「川気東送プロジェクト」工事開始

2006年に関係国が計画に調印、2007年に着工した。建設費73億ドルの多くを中国が負担した。
輸送能力は2012-13年のフル稼働時で年400億立方メートルとなり、中国の昨年の年間天然ガス消費量(778億立方メートル)の半分以上になる。
中国は石炭依存を減らす努力をしており、これはその一環。温室効果ガス削減に貢献する。

中国はカザフスタンからの原油輸入も拡大し、エネルギー分野で中央アジアとの関係強化を進める。

2006/5/29 中国-カザフ石油パイプライン正式稼動


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CO2選択透過膜の開発

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住友商事は12月14日、ルネッサンス・エナジー・リサーチが開発したCO2選択透過膜技術の実用化に向けた技術開発・市場開拓を、同社と共同で推進すると発表した。

このCO2選択透過膜は、混合気体からCO2だけを分離して透過するという特徴を持っている。

重要な基礎化学原料で、石油精製分野でも必要な水素は、ナフサやオフガス(メタン、エタン等)を高温高圧の条件下で、水蒸気改質することで得ている。
その過程で、CO、CO
2が副生成物として発生するため、これを製品となる水素から分離しなくてはならない。

従来採用されている化学吸収法では、CO2を溶剤に吸収させ、CO2を吸収した溶剤をスチームで加熱することでCO2を分解・除去し、再び溶剤として回収している。このため、大量のスチームが必要で、エネルギー多消費型かつ巨大な脱炭酸塔が必要となる。

ルネッサンス・エナジー・リサーチの開発したメンブレン(膜)を利用すれば、エネルギーの消費を4分の1以下にまで抑え、かつ、巨大な脱炭酸塔を小型のメンブレン装置に置き換えられるようになる。
さらに、中空糸(ストロー)状のCO2選択透過膜を束ねてモジュール化することによって、化学吸収法よりも狭い場所で効率よくCO2の分離回収が可能。

ルネッサンス・エナジー・リサーチは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、近畿経済産業局から補助金を得て、神戸大学松山教授らと共同で開発した。

この技術は大量の水素を必要とする石油精製や化学プラントの水素製造工程に応用可能で、日本国内で約40カ所、海外では国内の約50倍あると言われており、大きな商機が見込めるとしている。
また、CCS(CO2の分離、回収、貯留)のCO2分離・回収工程においても、この技術の活用が期待される。

住友商事は、このCO2選択透過膜の先進性に着目し、実用化に向けた技術開発、市場開拓を本格化する。当面は石油精製や化学プラントの水素製造工程をターゲットとして、2010年早々に日本の顧客プラントへ試作機を設置し、その評価・改良を行いながら、モジュールの大型化を進めていく予定。

ーーー

ルネッサンス・エナジー・リサーチは大阪ガスの理事・エグゼクティブリサーチャーで触媒の研究を行っていた岡田治氏が2004年に大阪ガスを退職して設立した。

岡田氏が大阪ガス時代に培った触媒関連技術を幅広い領域で事業展開することを目的とし、大阪ガスから関連特許の製造・販売・ライセンスの権利を受け、ガス会社では参入が難しかった事業ドメインをターゲットとしている。

同社の事業内容は以下の通り。

  1. 炭化水素の水蒸気改質法による水素製造技術をベースとし、燃料電池を含むエネルギー・水素分野を中心とした、触媒・プロセス技術の販売・ライセンス、化学プロセス・プラントの設計・エンジニアリング、およびその関連分野における研究の受託、技術コンサルタント等
  2. 触媒・材料分野の計算化学ソフト開発及び化学プロセス分野のシミュレーションソフト開発等
  3. CO2選択透過膜等各種ガス透過膜及びその応用プロセスの開発等

CO2選択透過膜の利用の一つとして、次世代型水素ステーションの研究開発も進めている。

燃料電池自動車には、水素ステーションなどのインフラ整備が必須だが、現在の水素ステーションの水素は、天然ガスの改質が主流で、副生成物として生じる大量のCO2をPSA(吸着と脱着を繰り返すガス精製装置)により分離して、高純度水素にする必要がある。
この場合、PSAが高コストかつ巨大で、効率ロスも大きく水素ステーションの実用化の障害となっている。

同社の開発した高性能CO変成触媒とCO2選択透過膜を組み合わせたメンブレンリアクターを用いれば、COとCO2濃度を同時に大幅に下げられることから、PSAを小型化でき、システム全体の低コスト化、小型化、高効率化が可能となる。

ーーー

なお、大阪ガスのエネルギー開発部長であった一本松正道氏が岡田氏と同時に大阪ガスを退職し、同じ事務所でルネッサンス・エナジー・インベストメントを開業した。両氏は互いに相手の事業に出資している。

ルネッサンス・エナジー・インベストメントは、独自の技術の目利きの力を生かし、無機機能性材料をベースとした独創技術を産業化する触媒として、最初期段階での研究開発への投資、技術開発ベンチャーの創成、技術開発ベンチャーのマネージメントなどを行っている。

経済産業省/NEDOの委託研究として平成19年度から5年計画(予算30億円)で開始された「マルチセラミックス膜新断熱材料の開発」プロジェクトで主要メンバーとして壁用断熱材/窓用断熱材料の材料開発を行っている。

投資先には次のものがある。

創光科学:
青色発光ダイオードの発明者の名城大学の赤碕勇、天野浩両教授の技術をベースに、紫外線発光素子の開発実用化を目的に設立された30億円の研究資金を持つ日本最大級の大学発ベンチャー。

REIメディカル:
京都大学理学部の中西和樹准教授の発明した独創技術“モノリス担体”技術を用いて、アフェレーシス治療用血液吸着カラムの開発を行っている。
矢野重信教授の発明した“光線力学療法 次世代感光医薬”の実用化にも取り組んでいる。

 


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化学関係の通信社ICISは、SABICMohamed Al-Mady CEOとのインタビュー記事を掲載した。
インタビューは
1210日に Gulf Petrochemicals and Chemicals Association の第4回フォーラムの場で行われた。

CEOは、SABICは技術と市場にアクセスするため、最終的には買収を狙うとした。
但し、今のところ具体的な計画はない。

CEOの発言は以下の通り。

常にCompetitive でないといけないが、そのためには原料(material inputs)、市場(market access)、技術(innovation)が必要である。

「原料」については、天然ガスの不足の懸念はあるが、事態は改善すると楽観している。
しかし、「市場」は、買収によってのみ可能である。
「技術」も同様で、自社でやると時間がかかり過ぎる。
買収を通じて、人材も確保できる。

我々の戦略に合致し、価格が適正であれば、買収を狙う。
(但し、今のところは、サウジと海外で行っているプロジェクトで手一杯である。)

この考え方は、これまで行ったDSMHuntsmanの事業の買収(現 SABIC Europe)、GE Plastics の買収(現 SABIC Innovative Plastics )の理由である。

GE Plastics 買収でSABICは エンプラを主とするSpeciality chemicals部門に参入した。これを強化したい。

サウジが進めるSpeciality chemicalsへの多角化をよく表すのがSaudi Kayan projectである。
大部分が
2010年末から2011年にスタートする。
この製品の多くはサウジで初めてのものだ。

Joint ventures も技術と市場にアクセスするためのもう一つのルートである。
日本企業との合弁の
SHARQExxonMobilとのJVYanpet などが良い例である。

SABICはまた、SINOPECとの天津石化JVで中国市場に進出した。
石化コンプレックスは
12月末に稼動する。

最近発表した米国の Albemarle 触媒トリエチルアルミの製造JVも別の多角化の例である。
触媒は天津であれ、どこであれ、使用できる。

    市場 技術 Specialty化
買収 SABIC Europe
DSM事業、Huntsman事業)

(欧州)
 
SABIC Innovative Plastics
GE Plastics

(全世界)
JV SHARQYanpet、その他    
Saudi Kayan project    
(多角化)
天津JV
(中国)
   
触媒JV  

中国は需要の伸びが高く、SABICにとって完全な投資先である。

但し、インドは問題である。インドの政策は透明でなく、我々は投資を求められていない。
需要の伸びが高く、国内企業だけではやっていけないが、保護主義を採っている。

インドは最近、サウジ、オマーン、シンガポールからのPPにダンピング課税を行った。
中国もブタンジオールと
メタノールについてダンピング調査しているが、これについては話し合いが続いている。


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住友化学は本年6月、飼料添加物メチオニンの需要増に対応し、愛媛工場に1系列 4万トンを増強し、14万トンにすると発表した。
2011年第1四半期に完成の予定。

更に12月10日、中国大連にメチオニン(2万トン/年)と農業用ポリオレフィン系特殊フィルム(4千トン/年)を製造販売する合弁会社を設立したと発表した。

2011年第4四半期の完成後には、同社のメチオニン能力は日中合計で16万トンとなる。

設立したJVは大連住化金港化工有限公司で、遼寧省大連経済技術開発区に工場を建設する。
住友化学が80%、大連金港集団が20%を出資する。

住友化学は2003年に同地に農薬中間体製造販売のJV 大連住化凱飛化学を設立しているが、大連金港集団はこれに40%出資する大連凱飛化学の株主の1社である。

東洋エンジニアリングは12月14日、飼料添加物メチオニン製造設備建設プロジェクトを受注したと発表した。

ーーー

メチオニンは、動物の体内で合成することができない必須アミノ酸の一種で、鶏などの家禽用飼料に広く添加されている。
鶏の飼料はトウモロコシや大豆かすを主原料とするが、鶏肉や鶏卵の品質や生産性を向上させることを目的にメチオニンが使用されている。

世界的な人口の増加、発展途上国や新興国の経済成長による食肉文化の広がり、健康を意識した鶏肉志向の高まり、家畜排泄物の管理や規制といった環境問題への対応(メチオニン添加で鶏の排泄物中の窒素含有量が低減)、中長期的な飼料用穀物の不足や高騰に対する懸念など、さまざまな理由から、メチオニンの需要はここ数年拡大を続けている。

現在全世界で約70万トンといわれる市場は、今後も年率5%程度で増加していくものと見込まれている。

住友化学は世界50カ国以上に輸出しており、特にアジアでは圧倒的なシェアを持っている。
同社
は、特に伸長が著しい中国の需要に応じるため、長期的には大規模生産設備への増強も視野に入れ、まずは2万トンの設備を、中国に新設することとした。

なお、中国の藍星集団と同社のフランスの子会社Adisseo Groupは本年8月、メチオニン工場を南京市に建設する契約を締結した。能力は年産7万トンで、2012年下半期に稼動の予定。

2009/8/27 藍星集団、南京でメチオニン工場建設

ーーー

メチオニンのメーカーは、中国の小規模メーカーを除くと、住友化学と、Evonik(旧称 Degussa)、Novus International、Adisseoの4社である。

Evonikは50年以上の生産の歴史を持ち、ドイツのWesseling、ベルギーのAntwerp (2006年に12万トンを建設)、米国のMobile にプラントを持っている。能力は35万トンで、手直しで2013年までに43万トンにするとしている。

Novus International は1991年に三井物産(65%)と日本曹達(35%)がMonsantoからメチオニン系飼料添加物製品(MHAとALIMET)の事業を買収して設立した。メチオニンの能力は明らかにされていない。

Monsanto は1950年代初めに研究を開始し、MHAの生産を始めた。1979年にALIMETを発売した。

Novusはその後、Monsantoから分離したSolutiaから飼料保存剤事業を買収、現在では多種類のanimal nutrition and health を世界90カ国以上に販売している。

日本曹達は1967年から二本木工場でDL-メチオニンを製造していたが、2006年に事業構造改善策の一環としてメチオニン生産を停止した。
日本化薬は日本曹達にOEM生産を委託して販売していたが、同時に撤退した。

Adisseo は2002年にCVC Capital Partners Aventis (現在はSanofi Aventis)の動物栄養製品部門を買収して設立した会社で、メチオニン、ビタミン、飼料用酵素を製造販売している。
2006年1月に中国の藍星集団がCVCから買収した。

メチオニンの能力は20万トンだが、フランスとスペインの工場でメチオニンを合25千トン増強することを明らかにしている。

上記の通り、藍星集団とAdisseo Groupは南京でメチオニンを生産する。 


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イラクの石油の第二次入札が12月11-12日の2日間行われた。

日本の石油資源開(Japex)12日、マレーシアのPetronasと組んで、イラク南部のGharaf油田を落札した。
油田は自衛隊が駐留していたSamawahの近くで、比較的安全と言われている。

イラク石油省が設立する会社(Iraq State Entity)が25%の比率で参加し、残りの75%をコンソーシアム2社が出資する。
Petronasがオペレーターを務める。

油田名 位 置 参加 参加比率  
ガラフ油田 イラク南部
ナシリアの
北85km
石油資源開 30% (40%)  
Petronas 45% (60%) オペレーター
Iraq State Entity 25%  

PetronasJapex が共同で約70億ドルを投入し、7年以内に生産を開始する。
原油1バレルごとに $1.49 の報酬を受け取る条件で、20年間、日量230,000 bbl を生産する。
イラクでは油田の権益自体は取得できないが、開発・生産のコストを原油で受け取ることができる。

同油田は、1984年に発見された未開発油田で、石油資源開発は、2005年3月に調印したイラク石油省との技術協力覚書のもと、同油田の評価スタディを同省と共同で行い、知見を有している。

両社は入札で
3つのチームに打ち勝った。
 ・
トルコ国営石油(TPAO)/インド ONGC
 ・
カザフスタンのKazMunaiGas/韓国のKoGas/イタリア Edison
 
・インドネシア Pertamina

石油資源開発は1955年に石油資源開発株式会社法に基づく特殊会社として設立され、国内で油・ガス田を発見するとともに、海外にも進出した。

1967年の石油開発公団の設立で、同公団の事業本部に編入されたが、1970年に公団から分離、商法に基づく民間会社になり、2003年に東京証券取引所に上場している。

国内では北海道、秋田、山形、新潟で探鉱開発に取り組み、海外では、東南アジア、カナダ、北アフリカ、中東、ロシア・サハリンを中心に探鉱開発事業を行っている。

2009年3月期の原油及び天然ガスの平均生産量合計は、原油換算で42,209バレル/日。
今回の油田の大きさが分かる。

ーーー

日本勢としては、一次で新日本石油、国際石油開発帝石、石油資源開発、三菱商事、二次で石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が入札資格を得ているが、これが初めての落札となる。

なお、第一次開放とは別枠でNasiriyah油田(Samawahの南東)の交渉が行われている。

日本連合(新日本石油/国際石油開発帝石/日揮)とEniが争ってきたが、Eniが第一次開放分で調印したZubair開発に注力するため、日本側に権利が与えられるのは確実とみられていた。

しかし、今のところ決着を見ていない。
(一時は日本の交渉チームがバグダッド空港に着きながら、石油省に行かず、交渉ができないという事態もあった。)

2009/11/12 イラク、第一次油田開放で進展

二次入札の結果は以下の通り。
(第一次開放対象の状況は 2009/11/12 
イラク、第一次油田開放で進展

  埋蔵量
 
bn bbl
生産能力
 ‘
000 b/d
落札 条件
Majnoon(マジヌーン)   8.20  600-800 Shell 60%
Petronas 40%
$1.39/bbl1.8 million bbl
West Qurna 2(西クルナ)   13.50    600 Lukoil 75%
Statoil ASA 25%
$1.15/bbl1.8 million bbl
Halfaya(ハルファーヤ)   4.60  250-600 CNPC 50%
Petronas 25%
Total 25%
$1.40/bbl535,000 bbl
East Baghdad(東バグダッド)   0.80   80-350 なし  
Gharaf(ガラフ)   1.00  100-140 Petronas 60%
石油資源開発 (Japex) 40%
$1.49/bbl230,000 bbl
Middle Furat Kifl(キフル)   0.21    28 なし  
West Kifl(西キフル)   *0.18    25 なし  
Marjan(マルジャン)   *0.15    20 なし  
Badrah(バドラ)   0.50    70 Gazprom 40%
Turkish Petroleum (TPAO)
  10%
Korea Gas Corp.
30%
Petronas
20%
$5.50/bbl170,000 bbl
Qayara(カイヤラ)   0.80    80 Angola's Sonangol $5.00/bbl120,000bbl
Najmah(ナジマ)   0.85    85 Angola's Sonangol $6.00/bbl110,000 bbl.
Eastern Fields Qarmar(カマール)   0.15    20 なし  
Gilabat(ギラバット)   0.20    30 なし  
Nauduman(ナウドマン)   0.05   >10 なし  
                          * 未確認

12月11日にはMajnoon油田とHalfaya油田が決まった。

MajnoonShell/Petronas
報酬 $1.39はイラク側の案より低いが、採掘量は180万バレルでイラク側希望量の2倍以上となった。
Saddam Hussein時代から交渉を続けてきたTotalCNPCと組んだが敗退した。見返りにHalfayaに加わった。

Halfaya
CNPC/PetronasTotal が加わった。
Statoil も応札したが敗退。

East Baghdadは治安が悪いこと、重質油であること、地質が複雑で採掘が困難なことから、応札なし。
また、
Eastern Fields QarmarGilabatNaudumanも応札がなかった。

Qayaraはアンゴラの国営石油 Sonangolが入札したが、報酬が$12.50でイラク要請($5)と比べ高過ぎ、決まらなかった。
しかし、
Sonangolは12日にイラク側の条件に同意し、決定した。

Sonangolはこれに20億ドルを投じるとしている。

翌12日に残りの入札が行われた。

West Qurna Phase 2 Lukoil NorwayStatoil ASAに決まった。

Lukoil は1997年にSaddamとの間でこの油田開発で37億ドルの契約にサインしたが、Saddamは2002年にこれをキャンセルした。
モスクワはSaddam失脚後にこれの復活を求め、イラクの129億ドルの債務を帳消しにしている。

    Statoil Halfa油田の入札で敗退している。

Gazpromをリーダーとし、トルコのTPAO、韓国のKogas、マレーシアのPetronasが参加するコンソーシアムがBadrah油田を落札した。

Middle Furat油田群(KiflWest KiflMarjanは入札がなかった。
イラク側はこれらを自ら開発するとしている。.

アンゴラのSonangol は前日のQayaraに次ぎ、Najmah油田を落札した。

Sonangol は当初、報酬 $8.50を提案したが、交渉の結果、イラク側提案の $6 で決着した。

ーーー

イラクのクルド自治区のTaq Taq 油田で石油を生産しているAddax Petroleum を買収したSinopec は入札に参加できなかった。
イラク石油省は中央政府の承認なしにクルド政府と石油契約を締結した企業とは取引しないとしている。

韓国石油公社とSKエナジーも、イラクの北部クルド自治区内の油田4つの鉱区の開発とインフラ建設を並行して進める内容の覚書をクルド自治政府と締結したため、入札資格を与えられていない。

2009/6/26  Sinopec、Addax Petroleum を買収

2009/4/7 イラクの油田開放、クルド人自治政府と契約の韓国企業を除外

 


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政府は129日、公正取引委員会の審判制度を廃止し、東京地方裁判所に機能を移管すると発表した。

また、処分の事前手続きに、事件にかかわっていない処分企業の社員が「手続き管理官(仮称)」として同席できるようにする。
すべての証拠を原則、開示対象にして透明性を高める。

公取委は「独禁法違反の判断には経済と法律の専門的な知見が必要」として廃止に反対したため、東京地裁は専門性の高い裁判官を養成する。
(審判官7名のうち、2名は裁判官が公取委に出向している。)

来年の通常国会に独占禁止法の改正案を提出する。  

付記 改正法案は2010年3月の国会に提出されたが、1年半にわたり継続審議となっており、経団連は2011年10月召集の次期臨時国会での改正法案成立を改めて求めた。

 

内閣府の田村謙治政務官は記者会見で「行政処分をする当事者がその処分の適否を判断する仕組みは、処分を受ける側の事業者からみると、やはり不信感をぬぐえない」と述べ、審判制度廃止の背景を説明した。

ーーー

公取委の命令に対して不服がある企業は命令の取り消しや変更を公取委に求める審判手続きを求めることができる。
現行制度では命令を出した公取委が審判手続きも担当するため、経済界から「検察官と裁判官を兼ねている」との批判が出ていた。

改正独禁法は2006年1月4日に施行されたが、附則第13条で、「政府は、この法律の施行後2年以内に、新法の施行の状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、課徴金に係る制度の在り方、違反行為を排除するために必要な措置を命ずるための手続の在り方、審判手続の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」とされた。

独占禁止法基本問題検討室(内閣府大臣官房)は2006年7月、「独占禁止法における違反抑止制度の在り方等に関する論点整理」を発表した。

2006/7/25  独占禁止法に関する論点整理

これに対して経団連では、2006年8月、コメントを発表した。
この中で「望ましい法改正の姿」として、第一に公取委の審判の廃止を挙げた。

公取委が自ら審査を行い、排除措置命令・課徴金納付命令を出し、その当否を自らの審判において判断することは、公正な審理が本当に確保されるのか、不信感は 払拭できないとし、現在の審判は廃止し、公取委の行政処分に対する不服申立ては行政訴訟の一般原則に立ち返って、地方裁判所に対する取消訴訟の提起という 仕組みに改めるべきであるとしている。

2006/8/2  「独占禁止法基本問題」に関する経団連のコメント

2009年6月3日に独禁法改正案が成立し、改正法の施行期日は2010年1月1日に決まった。

審判制度については、公取委は当初、審判制度の見直し案として、
・談合・カルテルは裁判所で争い、
・不当廉売などの違反行為は企業の主張を聞いたうえで処分を決める「事前審判」
を併せた制度を提案した。

これに対して、経済界は審判制度の全廃を主張、自民党の独禁法調査会でも「公取委の組織防衛」との批判が上がり、与党内でも調整が付かず、先送りすることとなった。

その結果、附則第20条で、
「政府は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の審判手続に係る規定について、全面にわたって見直すものとし、平成21年度中に検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」とした。

しかし、衆参両院の付帯決議では、「検討の結果として、現行の審判制度を現状のまま存続することや、平成17年改正以前の事前審判制度へ戻すことのないよう、審判制度の抜本的な制度変更を行うこと」と審判制度を廃止する方向性を明示した。


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中国税関総署は12月11日、11月の輸入が前年同月比26.7%増の945億6000万ドル(約8兆5000億円)となり、昨年10月以来、1年ぶりにプラスに転じたと発表した。
景気回復で国内生産が急拡大し、部品や原材料の輸入が大幅に増えた。

11月の輸出は1.2%減の1136億5300万ドルだった。


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米環境保護局(EPA)のLisa P. Jackson長官は12月7日、二酸化炭素(CO2)やメタンなどの温室効果ガス(GHG)が人の健康に有害な物質だとする認定結果を発表した。同時に、自動車から排気されるGHGが有害と認定した。 

GHGは温暖化の主因となって弱者の健康を損なう熱波を引き起こし、地上レベルのオゾン公害を増加し、健康と福祉の脅威となるとしている。

対象となるGHGは、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)の6種類。

長官は「気候変動に関する膨大な科学的証拠によって、温室効果ガスの脅威が現実のものであることが証明された。これに伴い、温室効果物質の削減に向けた取り組みに対する権限がEPAに付与された」と述べた。

今回の認定により、EPAは温室効果ガスを大気浄化法(連邦法)で大気汚染物質として規制、削減することが可能となる。

米国では下院が2020年までにGHGを2005年比17%とするエネルギー・気候変動法案(2009年米国クリーンエネルギー・安全保障法案)を可決しているが、上院審議は難航している。
法案が成立しない場合でも、政府が独自に温室効果ガスの排出規制を導入することができることになった。

本法案では温室効果ガス(GHG)の排出削減目標が2005年比で2012年3%減、2020年17%減、2030年42%減、2050年83%減と設定された。
削減手段としてキャップ&トレード方式が採用され、争点となっていた排出枠の無償配分については総排出枠の最大85%が様々な部門に異なる期間配分される。
無償配分以外は四半期ごとに開催されるオークションで取引される。
電力部門に対しては2012年-2013年に総排出枠の43.75%が無償配布され、以後徐々に減少、2016年-2025年に35%(うち電力会社30%、石炭発電事業者5%)、2030年には全量オークションとなる。
連邦再生可能エネルギー利用基準(RPS)の目標値については、2020 年に総発電量の20%と設定された。
このうち5%はエネルギー効率化分が認められる。
原子力発電や二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術を備えた石炭火力発電は再生可能エネルギーの定義から除外された。

ーーー

米連邦最高裁は2007年4月、EPAに自動車からの二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出規制を強く促す判決を下した。判事9人のうち5人が規制に賛成、4人が反対した。

Clean Air Actは「大気汚染物質」の新車からの排出をEPAが規制するよう定めている。

原告側は「地球温暖化をもたらすCO2は同法の規制対象」と主張。
これに対して、EPAは
▽CO2は大気汚染物質ではない
▽同法は地球温暖化に対処する強制的な規制権眼を同庁に与えていない
▽温室効果ガスと地球の気温上昇の因果関係は確立されておらず、規制は妥当ではないーーなどと反論していた。

最高裁の多数意見を代表したJohn Paul Stevens 判事は判決で、CO2を含む温室効果ガスは同法が規定する大気汚染物質に該当し、EPAは規制権限を持つとの判断を示した。

2007/4/5 米連邦最高裁、温室効果ガス規制で政府に促す判決

EPAはこの判決に基づき、規制の準備を続けてきた。

オバマ米大統領は本年126日、温室効果ガスの排出量削減と自動車の燃費向上に関する政策の見直しを、EPAと運輸省など関係省庁に指示した。

2009/1/28  オバマ大統領、温室効果ガス規制へ

EPAと運輸省道路交通安全局は本年9月15日、米国で販売される新車のGHG排出削減と燃費向上のための画期的なNational Programを提案した。

2012~2016年モデルの乗用車、軽トラックに適用されるもので、マイル当たりのCO2排出を平均250gとしている。これを燃費改善だけで行うとすれば、35.5マイル/ガロンとなる。

この決定は、デンマークのコペンハーゲンで開催中の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で、米国としての温室効果ガス排出削減の短期目標を公約したいオバマ米大統領を後押しする形となった。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のパチャウリ委員長は「関連法案が議会で保留となっている状況で、米政府は何をすべきかを理解している。米議会に対する強力な信号になるだろう」と強調した。


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住友化学は12月7日、100%子会社の大分ゼネラルサービス、日本エコアグロとともに、農業法人を大分県豊後大野市に設立すると発表した。高品質のトマトを栽培する。
3品種程度を栽培、パートを含め従業員十数人で、ビニールハウスで年間100~150トンを生産する計画。

同社は本年5月に長野県中野市でもイチゴを栽培する農業法人を設立している。

いずれも耕作放棄地を賃借し、住友化学グループの農薬、肥料、潅水チューブ、農業用ポリオレフィンなどの農業関連製品を用いる。
生産された作物は日本エコアグロを通じて販売する。

社名 株式会社住化ファーム長野 株式会社住化ファームおおいた(仮称)
所在地 長野県中野市 大分県豊後大野市
資本金 96百万円 300 百万円
出資比率 住友化学 30%
日本エコアグロ(住化100%) 70%
住友化学 37%
大分ゼネラルサービス(住化100%) 53%
日本エコアグロ(住化100%) 10%
栽培面積 1ha(耕作放棄地を所有者から賃借) 借地 1.76ha(うち耕作放棄地活用1.06ha)
施設面積 1ha
栽培作物 イチゴ 高品質のトマト
栽培システム 隔離土耕 隔離土耕等
販売 日本エコアグロ 日本エコアグロ
その他 住化グループの農薬、肥料、潅水チューブ、農業用ポリオレフィンなどの農業関連製品使用

住友化学は、グループ企業も含め、農業関連製品を幅広く取り扱っており、最近は独自に開発した「農業経営支援システム」の提供をはじめ、ニーズが高まりつつあるIPM(Integrated Pest Management:総合的病害虫管理)やICMIntegrated Crop Management:総合的作物管理)の観点もふまえ、安全安心で効率的な農業生産を総合的に支援する「トータル・ソリューション・プロバイダー」ビジネスを展開している。

「農業経営支援システム」は住友化学が独自に開発したシステムで、農業生産者はパソコンで、栽培履歴や生産コストの管理を行うことができるほか、農薬散布や施肥に関して適した剤や時期の情報を取得が可能。

同社ホームページの「i農力」サイトは,農薬、肥料、気象など農業に関する様々な情報やそれに関するサービスを会員に無料で提供している。

同社では、自ら農業法人を設立・運営することで得られる栽培技術や農業経営のノウハウも生かしながら、地域農業の活性化に貢献していく考え。

全国10カ所に農業事業子会社を設立して直営農場を経営するほか、20~30カ所の農場に生産を委託する。
作物は百貨店など大手小売りに直接販売する。2015年度に50億円の売上高を目指す。

全国規模で農地を確保して異業種参入するのは大手製造業で初めてとなる。
九州ではJR九州が同じ大分県内で来年4月からニラを生産するほか、西部ガスも北九州市で取り組んでいるリーフレタスの生産能力を倍増させる。

「住化ファームおおいた」の設立に当たっては、大分県と豊後大野市の協力を得て農場候補地の選定を行い、同市内の耕作放棄地等を活用する。
地権者と締結する土地の賃借契約については、改正農地法施行後に締結を予定しており、改正農地法の第一号案件になる見込み。

改正農地法は2009年6月17日参議院本会議で可決成立、2009年12月末までに施行される。
改正法は、「農地耕作者主義」をやめ、食糧の自給率向上や環境保全などに重大な障害を持ち込むおそれを回避できる「効果的および効率的な農地の利用」を目指している。

食料の安定供給を図るための重要な生産基盤である農地について、転用規制の見直し等によりその確保を図るとともに、農地の貸借についての規制の見直し、農地の利用集積を図る事業の創設等によりその有効利用を促進する。

日本エコアグロは住友化学の100%子会社で、事業内容は以下の通り。

 ・栽培農家・産地に対する土壌診断、肥料や資材の提案・販売
 ・当社独自のIPM防除プログラムの提案・販売
 ・各種栽培技術による栽培支援
 ・農産物の企画の提案、流通と販売

 


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中国最大の自動車用コンパウンドメーカーのChina XD Plastics Company は1127、NASDAQに上場した。
これまで
1年弱、店頭株式として取引されていた。

黒竜江省ハルビンに本拠を置く China XD Plastics 100%子会社のHarbin Xinda Macromolecule Material で主として自動車用のコンパウンドの開発・製造・販売を行っている。

同社は1985年にHarbin Xinda Nylon factoryとして設立された。
25年の歴史を持ち、19系列で年産7万トンの能力を持つ。製品の約90%が自動車用となっている。

製品は6つのグループから成る。
 Modified PP、Modified ABS、Modified Nylon、Alloy Plastics、
 Environment Friendly plastics、Engineering Plastics

同社の特殊プラスチックは中国で製造される30以上のモデルの自動車(Audi紅旗、VolkswagenMazdaなど)の内装(インストルメントボード、グローブボックスなど)、外装(バンパー、ドアミラーなど)や機能部品(エンジンカバー、エアコンシェルなど)に使用されている。

中国の自動車生産は、2006年が730万台、07年850万台、08年940万台と順調に増加、本年予想は1200万台となっている。

これに応じて、自動車用プラスチック需要は2006年が730千トン、07年955千トン、08年1,060千トン、09年予想は1,414千トンとなっている。2009年予想の140万トンのうち、輸入品が65%、国産品が35%となっている。(同社情報)

同社は現在、黒龍江省、吉林省、遼寧省の中国北東部に的をしぼっているが、2010年第1四半期に能力を10万トンとし、2013年までには能力20万トンとして河北省、山東省を含む市場で、2015年までに能力30万トンとして更に江蘇省、浙江省を含む市場で、大きな地位を占める構想を持っている。
現在のシェア10%を2013年までに25~40%にしたいとしている。

また、米国で同業を買収し、会社の認知度を高めたいともしている。


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パプアニューギニアLNG(PNG LNG)計画の運営を担当するExxon Mobil 123日、シノペックに年間200万トンのLNGを供給する契約を締結した。
山東省のシノペックの
LNGターミナルに20年間供給する。

シノペックの同ターミナルは現在建設中の第一期が年300万トンで、第二期では500600万トンに拡大する。

中国は原油輸入依存と石炭燃焼の公害問題を懸念し、LNGの比率を高めようとしている。

PetroChinaは豪州のGorgon ガス田LNGをExxonMobilからは20年間にわたり年間225万トン、Shellからは同じく20年間にわたり年間200万トンを購入する契約を締結している。

なお、東京電力は12月5日、豪州Gorgonガス田の隣のWheatstone LNG プロジェクトの11.25%をChevronから取得したと発表した。
Chevronが中心となって開発中で、同国北西部沖合の海底ガス田で天然ガスを産出、同国内で精製・液化する。2016年度以降操業を開始、年間最大860万トンを生産する計画。

Chevron  63.75%
東京電力  11.25%
Apache  26.25%  米国独立系
Kufpec   8.75%  Kuwait Foreign Petroleum Exploration Co.

東電がこのプロジェクトで調達を見込む年間LNG量は、権益による確保分(100万トン)と購入分(310万トン)を合わせ、東電が火力発電で年間に消費するLNGの約2割に相当する最大410万トン。 

東京電力は12月7日、Papua New Guinea LNGから、2013年後半から20年間、年180万トンを輸入すると発表した。

ーーー

PNG LNG 計画は、パプアニューギニア中央部のサザンハイランズ州およびウエスタン州に位置するガス田(Juha、Hides、Angore)および油・ガス田(Moran、Kutubu、Gobe)から生産される天然ガス(随伴ガスを含む)を、全長750km超のパイプラインで首都ポートモレスビー近郊まで輸送し、今後建設予定のLNGプラントで液化する同国における初のLNGプロジェクトであり、LNGの生産数量は年間630万トンを見込んでいる。

12月8日、事業化に向けた最終投資決定について、プロジェクト参加企業間で合意した。

千代田化工は12月9日、日揮と共同で LNGプラントのEPC(設計・調達・建設)業務を受注したと発表した。

LNG液化施設能力 年産630万トン(315万トン x 2系列)
生産開始時期予定 2013年10月~12月
パイプライン 陸上300km+海上450km
LNG関連施設建設費見込み 100億ドル超

Papua New Guinea LNG Global Company LDCの参加者は以下の通り。
(2009年12月8日 最終決定)  

  権益比率 当初案  
ExxonMobil  33.2%  41.50% オペレーター
Oil Search  29.0%  34.04% パプアニューギニア法人
Santos  13.5%  17.69% 豪州大手石油会社
Nippon Papua New Guinea LNG
(日本パプアニューギニア石油の
 100%子会社
Merlin Petroleum
 の子会社)
  4.7%   5.34% 2008/12月 豪州のガス・電力供給会社
AGL Energy保有の権益(3.6%)を取得
IPBC  16.6%   - パプアニューギニア政府機関
Mineral Resources Development   2.8%   1.18% パプアニューギニア政府系企業
Petromin
(元の出資者のEda Oilが移管された)
  0.2%   0.24% パプアニューギニア政府系企業

日本パプアニューギニア石油は1990年6月設立で、事業目的はパプアニューギニアにおける石油、天然ガスおよびその他鉱物資源の探鉱・開発・採取ならびに鉱業権の取得・売買および貸借となっている。

政府が62.03%、新日本石油開発が36.41%、三菱商事が1.56%を出資する。

新日本石油グループは、オセアニア地域を石油・天然ガス開発のコア・エリアの一つと位置づけており、パプアニューギニアにおいては、1990年より原油の探鉱・開発に従事し、同国初の原油生産事業に参画してきた。
本LNG計画についてもその検討の開始段階からプロジェクトパートナーとして取り組んできた。


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国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は12月4日、地球温暖化データを科学者が故意に操作したともとれる電子メールが見つかったClimategate事件について声明を発表した。データは多くの科学者が検証し各国政府も承認したものだとして、報告書の内容が覆ることはないとしている。

2つの声明が出された。
第一はIPCC議長の
R.K. Pachauriによるもので、第二はIPCCWorking Group Iの共同議長のProf. Thomas StockerProf. Qin Dahe によるもの。

Statement of news reports regarding hacking of the East Anglia University email communications

It is unfortunate that an illegal act of accessing private email communications between scientists who have been involved as authors in IPCC assessments in the past has led to several questions and concerns. It is important for me to clarify that the IPCC as a body follows impartial, open and objective assessment of every aspect of climate change carried out with complete transparency. IPCC relies mainly on peer reviewed literature in carrying out its assessment and follows a process that renders it unlikely that any peer reviewed piece of literature, however contrary to the views of any individual author, would be left out. The entire report writing process of the IPCC is subjected to extensive and repeated review by experts as well as governments.
Consequently, there is at every stage full opportunity for experts in the field to draw attention to any piece of literature and its basic findings that would ensure inclusion of a wide range of views. There is, therefore,
no possibility of exclusion of any contrarian views, if they have been published in established journals or other publications which are peer reviewed.
I would also like to highlight the fact that the summary for policymakers of all the reports of the IPCC are
accepted and approved by all the governments of the world. Even at the stage of approval of the summary for policymakers of any report, which is carried out word by word, omissions if any would be highlighted by government representatives in the course of the approval.
In summary, no individual or small group of scientists is in a position to exclude a peer-reviewed paper from an IPCC assessment. Likewise, individuals and small groups have no ability to emphasize a result that is not consistent with a range of studies, investigations, and approaches. Every layer in the process (including large author teams, extensive review, independent monitoring of review compliance, and plenary approval by governments) plays a major role in keeping IPCC assessments comprehensive, unbiased, open to the identification of new literature, and policy relevant but not policy prescriptive.
The unfortunate incident that has taken place through illegal hacking of the private communications of individual scientists only
highlights the importance of IPCC procedures and practices and the thoroughness by which the Panel carries out its assessment. This thoroughness and the duration of the process followed in every assessment ensure the elimination of any possibility of omissions or distortions, intentional or accidental.

R.K. Pachauri
Chairman Intergovernmental Panel on Climate Change

ーーー

Statement by Working Group I of the Intergovernmental Panel on Climate Change on stolen emails from the Climatic Research Unit at the University of East Anglia, United Kingdom

Working Group I of the Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC) firmly stands behind the conclusions of the IPCC Fourth Assessment Report, the community of researchers and its individuals providing the scientific basis, and the procedures of IPCC Assessments.
Comments on blogs and in the media about the contents of a large number of private emails stolen from the Climatic Research Unit at the University of East Anglia, United Kingdom, have questioned both the validity of the key findings of the IPCC
s Fourth Assessment Report (AR4) and the integrity of its authors. IPCC WGI condemns the illegal act which led to private emails being posted on the Internet and firmly stands by the findings of the AR4 and by the community of researchers worldwide whose professional standards and careful scientific work over many years have provided the basis for these conclusions.
The key finding of IPCC AR4, "
The warming in the climate system is unequivocal [...] ", is based on measurements made by many independent institutions worldwide that demonstrate significant changes on land, in the atmosphere, the ocean and in the ice-covered areas of the Earth. Through further, independent scientific work involving statistical methods and a range of different climate models, these changes have been detected as significant deviations from natural climate variability and have been attributed to the increase of greenhouse gases.
The body of evidence is the result of the careful and painstaking work of hundreds of scientists worldwide. The internal consistency from multiple lines of evidence strongly supports the work of the scientific community, including those individuals singled out in these email exchanges, many of whom have dedicated their time and effort to develop these findings in teams of Lead Authors within the production of the series of IPCC Assessment Reports during the past 20 years.
The IPCC assessment process is designed to ensure consideration of all relevant scientific information from established journals with robust peer review processes, or from other sources which have undergone robust and independent peer review. The entire report writing process of the IPCC is subjected to extensive and repeated review by experts as well as by governments. Consequently, there is full opportunity for experts in the field to draw attention to any piece of published literature and its basic findings that would ensure inclusion of a wide range of views.

Prof. Thomas Stocker  Co-Chair, Working Group I
Prof. Qin Dahe  Co-Chair, Working Group I

ーーー

欧米のメディアはClimategateについて大きく取り上げており、12月7日からコペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)に影響するのでは、といった声も上がっている。こうしたことから、IPCCは公式に見解を明らかにしたとみられる。

これを受けて日本でもようやく報道されるようになった。(朝日新聞は当初に報道)

 


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韓国の公正取引委員会は12月2日、液化石油ガス(LPG)供給会社6社が2003年から08年にかけての6年間にわたり、価格談合を繰り返していたとして、過去最高となる6,689億ウォン(約506億円)の課徴金を課すことを決定した。
このうち、自己申告した2社に合計2,596億ウォンが免除される。

対象となったのは、LPG輸入会社のE1 CorpとSKガス、販売会社のSKエナジー、GSカルテックス、現代オイルバンク、S-OILの合計6社。

6社は毎月のLPG供給価格決定に際し、事前に情報交換を行い、価格を同一水準に設定していた。
E1とSKガスの価格決定担当者が会合を持ち、双方の価格を確認したり、価格変動幅を協議したりし、残る4社は輸入2社から価格を通知されていた。LPG充てん所に低価格を提示し取引先を拡大する行為を行わないことでも合意していた。

公取委は昨年これらの会社がほぼ同時期に価格引き上げの動きを見せたことから調査に着手し、6社の役員が定期的な会合などを通じて価格引き上げ幅と時期を事前に調整していたことをつかんだ。
これらの会社が6年ほど前から価格などを談合して得ていた不当な利得は数兆ウォンに達するといわれる。

企業別の課徴金は以下の通り。

  免除額 課徴金  
E1 Corp    1,894億ウォン  
GSカルテックス     558億ウォン  
S-OIL     385億ウォン  
現代オイルバンク     263億ウォン  
SKエナジー  1,602億ウォン     0  最初に自己申告
SKガス   994億ウォン   994億ウォン 2番目に自己申告
合計  2,596億ウォン  4,094億ウォン  

これまでで最大の課徴金は2009年7月に携帯電話用半導体チップメーカーのクアルコムが自社モデムチップを使わない携帯電話メーカーに対して高いロイヤルティを課したこと、及びリベート提供などの不公正取引の容疑で課された2,600億ウォン。

公取委の鄭委員長は就任後初の記者会見を9月に開き、「大企業は韓国の経済発展の牽引車の役割を果たしてきた」と功労を認めた上で、「しかし、不当行為に対しては公取委の力量を集中して厳しく監視する」と述べた。

委員長は、「最大の課徴金の場合は、企業の利益ではなく、関連売上高を基準に10%を科す」とし、「一度の課徴金を科されると、企業の存立が危うくなることもある」と述べた。

政府は1997年に石油産業事業化の宣言して価格告示制を廃止し、事業者が自由に価格を決定するようにした。さらに2001年にはLPG業界の価格も自律的に決めるようにした。公取委ではLPGメーカーらは政府の政策を悪用したと判断した。


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11月13日と17日の事業仕分け第3WGで科学技術予算が取り上げられた。結論は以下の通り。

番号 項目名 WG結論                 
3 - 17 (独)理化学研究所① 次世代スーパーコンピューティング技術の推進 来年度の予算計上の見送りに
限りなく近い縮減
3-18 (独)理化学研究所② 大型放射光施設(SPring-8) 1/3から1/2程度予算縮減
植物科学研究事業 1/3程度予算縮減
バイオリソース事業
3-19 (独)海洋研究開発機構 深海地球ドリリング計画推進 予算要求の1割から2割縮減
地球内部ダイナミクス研究 少なくとも来年度の予算の計上は
見送り
又は予算要求の半額縮減
3-20 競争的資金(先端研究) [予算] 科学技術振興調整費(外5) 予算は整理して縮減
競争的資金(先端研究) [制度] 一元化も含めシンプル化
3-21 競争的資金
(若手研究者育成)
①科学技術振興調整費 予算要求の縮減
②科学研究費補助金
③特別研究員事業
3-22 競争的資金
(外国人研究者招へい)
世界トップレベル研究拠点(WPI)プログラム 予算要求の縮減
学術国際交流事業
3-23 地域科学技術振興・
産官学連携
①知的クラスター創成事業、都市エリア
産学官連携促進等
廃止
②産学官連携戦略展開
③地域イノベーション創出総合支援
3 - 24 (独)科学技術振興機構 理科支援員等配置事業 廃止
日本科学未来館予算 縮減

3-33 (独)宇宙航空研究開発機構① GXロケット 来年度予算計上は見送り
3-34 (独)宇宙航空研究開発機構② 宇宙ステーション補給機(HTV) 予算要求の縮減(1割)
衛星打ち上げ
(24年度以降打ち上げ分)
予算要求の縮減(1割)
3-35 その他分野特定型 原子力システム研究開発事業 予算要求の縮減(2割)
先端計測分析技術・機器開発事業 予算要求の縮減(1割~2割)
3-38 ライフサイエンス分野 革新的タンパク質 細胞解析研究
イニシアティブ(ターゲットタンパク研究プログラム)
予算要求の縮減(2割~半減)
革新的医療品・医療機器の創出に向けた研究 
分子イメージング研究戦略推進プログラム
(第Ⅱ期)
予算要求の縮減(2割~1/3程度)
感染症研究国際ネットワーク推進プログラム
(第Ⅱ期)
廃止又は
予算要求の縮減(2割~半減)
3-39 科学技術振興調整費 女性研究者支援システム改革 予算要求の縮減(1/3程度)
3-40 研究環境国際化の手法開発 廃止
3-41 情報システム借料、開発・改修経費 予算要求の縮減(2割~3割)
3-36 (独)日本原子力研究開発機構① 高速増殖炉サイクル研究開発
(もんじゅ及び関連研究開発)
事業の見直し*
材料試験炉研究開発(JMTR)
3-37 (独)日本原子力研究開発機構② 高レベル廃棄物処分技術開発
(深地層部分)
結論持ち越し
国際熱核融合実験炉研究開発
(ITER サテライト・トカマク計画)

*3-36
 経済産業省と文部科学省の責任、役割分担が不明確であり、その整理をしなければ結論を出すのは困難。
 ただし、その前提の上であるが、もんじゅ本体の再開は残し、それ以外は凍結という大方の方向も示された。

これに対し、11月25日にノーベル賞受賞者(江崎利根川野依小林各氏)・フィールズ賞受賞者(森 重文氏) が「事業仕分けに対する緊急声明」を出した。

資源のない我が国が未来を持つためには、「科学技術創造立国」と「知的存在感ある国」こそが目指すべき目標でなければならない。この目標を実現す るために、苦しい財政事情の中でも、学術と科学技術に対して、科学研究費補助金を始め、それなりの配慮がなされてきた。このことを私たちは、研究者に対する国民の信頼と負託として受け止め、それに応えるべく日夜研究に打ち込んでいる。
学術と科学技術は、知的創造活動であり、その創造の源泉は人にある。優秀な人材を絶え間なく研究の世界に吸引し、育てながら、着実に「知」を蓄積し続けることが、「科学技術創造立国」にとって不可欠なのである。この積み上げの継続が一旦中断されると、人材が枯渇し、次なる発展を担うべき者がいないという 《取り返しのつかない》事態に陥る。
現在進行中の科学技術および学術に関する予算要求点検作業は、当該諸事業の評価において大いに問題があるばかりではなく、若者を我が国の学術・科学技術の世界から遠ざけ、あるいは海外流出を惹き起こすという深刻な結果をもたらすものであり、「科学技術創造立国」とは逆の方向を向いたものである。
学術と科学技術に対する予算の編成にあたっては、このような点検の結論をそのまま反映させるのではなく、学術と科学技術の専門家の意見を取り入れ、大学や研究機関運営の基盤的経費や研究開発費等に関する配慮を行い、将来に禍根を残すことのないよう、強く望むものである。

ノーベル化学賞受賞者で、理化学研究所の野依理事長は11月25日、自民党文部科学部会に出席し、理化学研究所が主体で研究開発している次世代スーパーコンピューターの開発予算が事実上凍結されたことについて、「不用意に事業の廃止、凍結を主張する方には将来、歴史の法廷に立つ覚悟ができているのか問いたい」と痛烈に批判した。
「科学技術振興や教育はコストではなく投資だ。コストと投資を一緒くたに仕分けするのはあまりに見識を欠く。次世代スパコンはいったん凍結すると、瞬く間に各国に追い抜かれ、その影響は計り知れない」と強調した。

一方、事業仕分け人に加わったJT生命誌研究館館長の中村桂子さん(元三菱化成生命科学究所部長)は12月4日の毎日新聞で以下の通り反論した。

私は日本の予算作りのシステムを変えるきっかけにしたいと思って、悩んだ末に仕分け人を引き受けました。
仕分け人の皆さんはよく勉強し、それぞれの専門や経験に基づいて発言していました。

継続中の事業を切ると問題が起きることは分かるので、複雑な思いはありました。しかし、ここで考え直すことが必要だと考えたのです。
科学技術基本法施行(95年)以後、科学も学術も「科学技術」という言葉で一くくりにした結果、短期的な成果を求めて限られた分野に莫大な予算が集中し、科学者は「役に立つ」という言い方で研究費を獲得するようになりました。真の継続性なしに、あたかも役に立つことができたかのように言い、必要なところにお金が回らず、無駄も増えました。この風潮を懸念している科学者は多いのです。大型プロジェクトに無駄がないとは決して言えません。

(ノーベル賞受賞者をはじめとする批判について)
科学技術の重要性を否定した仕分け人はいません。大事なのだから、もっと有効に限られたお金を使おうという努力です。そうそうたる学者や学長が、頭ごなしに「科学技術の大事さがわかっていない」とおっしゃる姿には違和感を覚えました。お金でなく、研究の魅力を語り、それへの共感を基本に、この国の学問を育てようと提案してほしかったです。

(閣僚が「科学技術については政治判断する」と発言した)
今回の判定がすべて正しいとは思いません。意見が分かれた場合、無理やり一つの結論にまとめたり、長期的に見て疑問に思う点もありました。全体を見て、再検討する機会が必要でしょう。
しかし、透明性をもって専門家の意見を聞くことなく、政治判断だけで結論を変えたのでは、システムを変えたいと思って参加したのに、何のためだったのか分からなくなります。

世界の情勢をきちんととらえ、無私の気持ちで研究のあり方を考える専門家の議論を踏まえて、必要なところに必要な予算がいくシステムをつくることが不可欠です。

ーーー

スーパーコンピューターについての仕分け人のコメントは以下の通り。

10ぺタスパコンを開発することが自己目的化している。巨額の税金を投入して世界最高水準のスパコンを創る以上、大事なのはスパコンを生かして、どのような政策効果を出していくのかを、明確にできなければ、国費投入は無理である。
必要最低限の予算へ見直しをする。来年度はこの開発計画を一度凍結し、計画の根本見直しをする。
一旦総合科学技術会議なりに戻して、何を実現するために何が必要かを見直すべき。ハードの戦いではなく、ソフトの戦いをするべき。
総合科学技術会議への差し戻し、再検討。科学技術の必要性、重要性は理解できるが、国民の理解には至っていない。世界一の頂のみを目指す時代ではない。
開発体制そのものの見直しが必要。システム部分等をカット。
ベクトル、スカラーの選択も、十分な総括ができていない。この段階で十分な説得力のない「世界一」という目的だけで、多額の投資をすべきではない。世界一番乗りと財政状況とのバランスを考えれば、これまでの経緯を踏まえ、基礎研究部分のみを残す。
技術は蓄積されているので、ここで計画を見直し、当初の目的に沿うようにする。抜本的変更が必要。
これまでの開発費の有効利用を考えての見直し。当初目的を満足しているのか、なぜNECが撤退したのか等の理由等を調査。立ち止まって見直しをする。世界一を目指す必要はない。
スパコンの国家戦略を再構築すべきである。従来の検討者以外の新しい研究者を入れて、新しい議論を公開しながら行うべき。現状はスパコンの巨艦巨砲主義に陥っていないか。競争のルールが変わってきている可能性はないか。世界の中での位置づけを検討すべき。おそらく日本の先端技術についての国の形を変えるかどうかを検討することになるだろう。
戦略の見直しをじっくりやってはどうか。
トヨタもF1から撤退した。苦渋かつ前向きの判断を。研究者が夢を追うだけではなく、一般人が「なるほど、巨額の税金投入の意義がある」と得心できる説明ができなければOKできない。日米共同なども模索すべき。

東京大情報基盤センターの金田教授は毎日新聞で次のように述べている。

科学は世界一を目指すものだ。それは全く否定しない。ただしスパコンは他の研究に使われる道具だ。道具が必ず「世界一」である必要があるのか。それを使い生まれた成果が世界一であることこそ重要だろう。

スパコンはマシンの速度と動かすプ ログラムの質がかみ合って性能を発揮する。低速のマシンでもいいプログラムを動かせば上位をしのげる。現計画は無意味な「コンテスト」の勝利が目的のよう だ。しかも近く米国で20ペタマシンが登場し、その勝利すらおぼつかない。

10ペタマシン(1秒間の演算回数が10x1000兆)は、部品数から故障率が 1ペタの10倍以上に達し、プログラムを書くのも非常に難しい。計算機への意識が低い日本は、質の高いプログラムを書ける研究者が極端に少ない。現実には 「使えない」マシンになるだろう。

10ペタ1台の価格で安定して十分高速な1ペタが10台以上作れる。それを意欲ある大学院生らにどんどん使わせる。それが日本の科学を底上げする政策だし、プログラムが書ける研究者の育成にもつながる。

私は事業仕分けで計画の見直しを主張した。それは開発停止、凍結という意味ではない。10ペタへのこだわりを捨て、内容を変更すべきという考えだ。当然スパコン開発は継続せねばならない。日本にまだない1ペタ級のベクトル型、スカラー型のマシン複数をすぐに導入し、広く使ってもらう。そのうえで 次々世代の革新的スパコン開発に挑戦すべきだと考えている。

昨年、自民党のなかで事業仕分けを行った河野太郎議員はブログ「ごまめの歯ぎしり」(河野太郎の国会日記 2009/11/27)で以下の通り述べている。

ノーベル賞受賞者が総理に陳情に行かれたが、やや、論点がずれている。

科学技術を大事だと思わない仕分け人はいなかっただろう。
しかし、科学技術が大切だから、何でもかんでも予算をつけろというわけにはいかない。科学技術が大切だからこそ、予算を有効に使うべきだ。

たとえばスパコン。スパコンのシミュレーション能力が、様々な分野での国際競争力に直結しているのは事実だ。
だからスパコンの開発が大切だというのは理解できる。

では、世界で一番速いスパコンと二番目に速いスパコンでどの程度の差があるのか。競争力にどれだけの開きが出るのか。開発費用がどのくらい違うのか。文科省は全く説明ができない。

どれだけのスペックのものを作れば、その後、どれくらいの期間、どうなるのかという説明もない。開発しようとしているスペックの妥当性について、説明は何もない。諸外国のプロジェクトと比べてコストがどうなのかという説明もできない。

文科省の計画では、次世代のスパコンは、ベクトル型とスカラー型の複合システムとして開発するという方針の下、ベクトル型のNEC・日立とスカラー型の富士通の三者が開発に取り組んできた。しかし、途中でNECと日立が離脱し、富士通のみが開発を担当することになった。

ベクトル型とスカラー型の複合システムが良いといった最初の計画は、何だったのか。スカラー型でよいならば、なぜ最初からそうしなかったのか。こうした指摘にも文科省は答えていない。

莫大な予算をかけてスパコンを開発するというならば、ある程度、世の中の質問に文科省は答えなければならないはずだ。

質問に答える反射能力が問われているようだと言った科学者がいたが、とんでもない。スパコンのこうした疑問は去年から出されている話だ。

科学技術は大切だという大項目で話をしているノーベル賞受賞者と一つ一つの事業を見て、その事業にかけられているコストが適正かどうか、コストの理由が明確になっているかどうかを検証している仕分け人と、論点が違っている。

スパコンにしても、GXロケットにしても安易に予算を戻してはいけない。

事業仕分けの有効性がこれだけ知れ渡ったのだから、国会の予算委員会で、一つ一つの事業を取り上げて、それぞれの事業の予算の議論をするべきだ。

予算委員会でスキャンダルの話をしたり、つまらない演説を延々とされたりするよりも、省庁別の分科会にして、事業仕分けをやっていくべきだと思う。


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タイ中央行政裁判所は9月29日、同国東部のRayongMap Ta Phut地区で計画されている石油化学などの76事業について、違憲の訴えの最終判決を下すまで一時凍結するようタイ政府に命じた。

裁判が長引けば外国直接投資や雇用、経済全体への悪影響が避けられないと見られ、タイ政府は10月2日、凍結命令の取り消しを最高行政裁に求めた。

  2009/10/7 タイの行政裁判所、ラヨンの76事業に凍結命令

これに対して、タイの最高行政裁判所は12月2日、76計画のうち11計画のみ、環境上の問題がないとして建設を認めた。
しかし、残り65計画(合計80億米ドルに達する)については政府指名の委員会による調査の間、凍結されることとなった。
(政府は最近、問題解決のため元首相を委員長とする委員会をつくった)

タイの外資1万社が加盟する外国商工会議所の会長は、「裁判所の判断は尊重するが、タイへの投資家の信頼を損なうことは確かだ」と述べた。「これらの計画の資金繰りがおかしくなる。政府が早期に解決して欲しい」としている。

2007年発効のタイの現行憲法は地域の環境・健康に被害を与える恐れがある事業活動について、
▽環境・健康アセスメントの実施
▽公聴会の開催
▽ 環境・健康アセスメントを行う独立機関の設置――を義務付けている。

同地区の住民と環境保護団体がPTTなどの事業が憲法の要件を満たしていないとして行政裁に建設中止を求めていた。

2007年の憲法改正で、従来の環境影響アセスメント(EIA)に加え、健康影響アセスメント(HIA)と公聴会が必要とされるようになった。
しかし、政府が
HIAを見る独立機関を設置していないため、HIAは実施していない。

この地域の環境整備を13年にわたり政府に求めていた環境グループは、この間工場からの公害で2000人が癌で死んでいるとしている。(但し医者は因果関係を認めていない)

事業継続を認められた事業には以下のものがある。

Aditya Birla Chemicals (インド)
PTT Aromatics and Refining
Star Petroleum Refining Chevron/PTT JV
Indorama Petrochem(タイ)

Siam Cementの20のプロジェクトのうち、18プロジェクトが凍結となった。PTT24計画のほとんどが凍結となった。

凍結となったものには、PTTの780百万ドルのガス分離プラント、PTT Chemical のPE増設、Siam Cement のオレフィン増設などが含まれる。

ーーー

付記

その後、タイ政府は環境・健康影響評価や周辺住民への公聴会、独立機関による承認など手続きを決めた。
「環境に影響を与えかねない事業」のリストも作成し、11事業を審査の対象とすることを閣議決定した。

8月31日に公布されたタイ天然資源・環境省通達で環境アセスメントが必要と規定された11業種は
(1)海の埋め立て(48ヘクタール以上)
(2)鉱山
(3)工業団地、工業用地開発
(4)石油化学の上流・中流事業
(5)精錬、鍛造
(6)放射性物質の製造、廃棄
(7)廃棄物処理
(8)空港(滑走路3000メートル以上)
(9)港湾
(10)ダム、貯水池(貯水量1億立方メートル以上、もしくは面積15平方キロ以上)
(11)発電所
で、リスト内に各業種で環境アセスメントが必要となる事業の内容、規模などが規定されている。

中央行政裁は2010年9月2日、一連の施策により「違憲」状態は解消されたとして、「11事業以外は再開可能」との判断を示した。

Map Ta Phut 地区で凍結されていた76件のうち、日系企業8件を含む74件が再開を認められる。

新日本製鉄や住友商事ら日本側71.5%、タイ側28.5%出資のブリキメーカー、
Siam Tinplateは9月16日、操業再開許可を受け取った。

環境に悪影響があるとして凍結が継続されるのは次の2件。
PTT Chemical Plcの子会社TOC Glycol Co.ethylene oxideethylene glycol
計画
Siam Cement GroupのThai Plastic & Chemical Plc VCM計画

PTTCH自身のHDPE(50,000t)、子会社Bangkok Polyethylene のHDPE(250,000t)、JVのエタノールアミン(50,000t)は操業が認められた。

今後、2件は新たに設けられた環境面の審査に進む。

PTT Chemical Siam Cement は、凍結された2事業は政府の環境に影響を与えかねない事業」には属しておらず、年内には再開できるだろうとしている。

マプタプット工業団地で9月6日、政府が規定した「有害産業活動11業種」に反発するNGOと地域住民がリストの見直しを要求、対応によっては工業団地への妨害活動に踏み切ると発表した。

アナン元首相は、「プロジェクト再開で公害問題が悪化した場合、政府は被害の全責任を負うべき」と訴えている。

大手環境団体でも、「NGOや有識者の意見を聞くこともなく、公聴会も実施されずに規定されたリストには納得がいかない。住民との摩擦が悪化するばかり」とし、アピシット首相にリストの早急な見直しと差し替えを求める意向だ。

政府がこれらの要求を無視した場合、NGOや地域住民側では9月30日に抗議活動を実施するとしている。


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「ナフサ免税」継続

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峰崎副財務相と増子副経済産業相が12月3日、財務省内で会談し、2010年度税制改正の焦点となっているナフサに対する租税特別措置について、課税化を見送り、免税措置を継続することで一致した。

ーーー

石油化学工業協会は11月19日、政府税制調査会で租税特別措置の見直し等の一環として、ナフサ等石油化学原料の免税に手を加えようとする動きがあることに対し、重大な懸念を表明、非課税の原則が貫かれるよう強く要求するとする緊急決議を行った。

2009/11/20 石化協が緊急決議 「ナフサ等原料非課税の原則を守れ」

政府税制調査会(会長・藤井財務相)は11月20日、租税特別措置の存廃をめぐって本格的な議論をスタートさせた。

会合では、増子経産副大臣が、ナフサの免税措置について「製造業の基盤で、雇用確保にもつながっている。課税すれば国際競争力が著しく低下する」と主張。特例ではなく「本則化すべきだ」と、恒久化を要求した。
これに対し、査定側の古本財務政務官は免税措置の導入時と比べて円高が進み、原油の輸入価格が低下していることなどを挙げ、「ナフサをまったく議論もしない『聖域』でいいのか」などと反論した。

日本経団連の御手洗会長は11月24日の記者会見で、各種の租税特別措置の見直しに関し、「立法時の趣旨と違ったものや機能していないものはやめればいい」と理解を示す一方、技術革新を促す研究開発優遇税制や石油化学製品の基礎原料であるナフサへの免税措置については、「本則化し、恒久化すべきだ」との考えを示した。

11月30日の税調の会合では「保留」とされたが、財務省の古本政務官が「期限の定めがあるものから」と発言。事実上、揮発油税分の議論を先送りする意向を示した。

ナフサ等の課税には来年3月末に期限切れとなる石油石炭税と、期限を定めず免税となっている揮発油税があるが、後者の議論を先送りにするというもの。

  石油石炭税 揮発油税
税率 原油・石油製品 2,040 円/KL
[本則の税率]
   24,300 円/KL (国税)
  +4,400 円/KL (地方税)
     
[暫定税率]
  24,300 円/KL (国税)
  + 800 円/KL (地方税)
     
53,800 円/KL  
     
免税の
定め方
租税特別措置法で2年毎に延長
(来年3月末で期限切れ)
租税特別措置法で期限を定めず
に免税
免税
相当額
  約1,000億円   約3兆円

今回、石油石炭税についても免税としたもの。

ただ、政府税調内にはナフサ免税を問題視する意見が根強く、来年以降もエネルギー課税全体の議論の中で引き続き見直しを検討する。

 


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行政刷新会議の事業仕分け初日の11月11日の午後、第2Working Groupで、漢方薬等の市販品類似薬を保険対象外とする方向性が出された。

これは、事業番号2-5「後発医薬品のある先発品などの薬価の見直し」で取り上げられた。

このうち、市販品類似薬については、事前に配布された財務省側の論点シートでは以下の通りとなっている。

④市販品類似薬の薬価は保険外とする

 
湿布薬・うがい薬・漢方薬などは薬局で市販されており、医師が処方する必要性が乏しい
            ↓
 国民の税金・保険料で持ち合う公的医療保険の対象として、湿布薬・うがい薬・漢方薬などは薬局で市販されているものまで含めるべきか、見直すべきではないか。

評価者のコメント:
●薬価、医療材料の価格を下げることは、国民にとっても、保険制度にとっても必要なことである。
●医療業界は全体的に閉鎖的。健全な市場形成に向け取り組むべき。
●先発薬の価格引き下げによって、1兆円の利益を上げている製薬会社の研究開発意欲が削がれるのか。
●処方された薬を全て保険適用にすべきではなく、数量の制限、金額の制限を導入すべき。
●薬剤の先発品を後発品価格まで下げることが望ましい。
●国民目線が欠如している。安全な薬を安価で提供すべき。医師・薬剤師が本人に説明し選ばせることも必要。国からももっと情報提供が必要。
●市販品類似薬は保険対象外とすべき。単価比較をすれば、市販品の方が安くなるデータもある。材料の内外価格差も同様。
●市販品を拡大して、保険適用外にするのは賛成だが、薬局だけでなく、スーパー、コンビニ、ネットで買える製品のスコープを広げて欲しい。
●ドラッグラグを広げないよう、新薬の認可手続きを迅速化すべき。

評価結果: 見直し
 廃止 0名
  自治体/民間 0名
  見直しを行わない 0名
 見直し 15名
   ア 先発品を後発品薬価を目指して見直し13名
   イ 医療材料の内外価格差解消 12名
   ウ 調整幅2%の縮小 9名
   
エ 市販品類似薬は保険外 11名
   オ その他 3名


とりまとめコメント:
アの先発品薬価を後発品薬価を目指して見直すことについては当WGの結論としたい。但し、保険適用範囲をジェネリック価格に絞るべきという意見と、一般名処方を原則として後発品シェア拡大の為の情報提供を進めるべきという意見の双方が出ている。いずれにしても、トータルの薬価を大幅に削るという方向性で全体のコンセンサスは取れた。
イの医療材料の内外価格差解消についても当WGの結論とする。
ウの調整幅2%の縮小については、半数強の方の意見があったが、十分に議論ができなかったこともあり、有力な意見が示されたという取り扱いとさせていただきたい。
エの市販品類似薬を保険外とする方向性については当WGの結論とするが、どの範囲を保険適用外にするかについては、今後も十分な議論が必要である。

ーーー

保険適用外となった場合、「混合診療の禁止」の原則により、医療機関で処方することは実質的に不可能になる。
(仮に医者に漢方薬を処方してもらおうとすれば、薬代だけでなく治療費まで含めて全額自己負担になってしまう。)

日本東洋医学会、日本臨床漢方医会、NPO健康医療開発機構、医療志民の会の4団体は12月1日、保険適用継続を求める約27万人分の署名を、厚生労働省に提出した。

「現在、医師の7割以上が漢方薬を使用して、国民の健康に寄与してきた。また、全国の医学部・医科大学でも医学教育の中に漢方教育が取り入れられ、日本東洋医学会で専門医教育も行われ、専門家育成も進んでいる」とし、「国民の健康を守るためになくてはならない漢方薬・煎じ薬が健康保険で使えなくなることに、断固反対をする」としている。

長妻昭厚労相は会見で「患者の負担も増える話で、(保険から)ただちに外すのは疑問がある。要望などを見て判断したい」と述べた。

漢方薬も薬であり、特に処方されるクラスの薬剤になると副作用や他の薬剤との飲み合わせによる効果が出てくる可能性が十分にあるため、医師の処方がないと危険との指摘もある。
例えば、風邪にも用いられる一般的な漢方薬の小柴胡湯はインターフェロンとの併用で間質性肺炎の副作用を起こす可能性があることが知られている。

ツムラの芳井社長は11月12日の中間決算説明会で、「漢方医学の現状を知らない人たちの議論。なぜこういうことになるのか分からない」と強く反発した。「保険削除されたらツムラは間違いなく倒産する」と危機感を露わにし、「漢方薬と日本の伝統医学が消えてなくなることにもなる」と強調した。

また、民主党のマニフェストで、漢方医学を取り上げている矛盾を指摘し、「明らかにマニフェストと違う方針であり、漢方医学を知らない人だけの議論で保険適用外の話が進められるはずがない」と一蹴した。

民主党マニフェスト 医療政策(詳細版)

●統合医療の確立ならびに推進
漢方・健康補助食品やハーブ療法、食餌療法、あんま・マッサージ・指圧・鍼灸・柔道整復、音楽療法といった相補・代替医療について、予防の観点から、統合医療としての科学的根拠を確立します。アジアの東玄関という地理的要件を活かし、日本の特色ある医療を推進するため、専門的な医療従事者の養成を図るとともに、調査・研究の機関の設置を検討します。

ーーー

民主党マニフェスト 医療政策(詳細版)の項目は以下の通り、非常に多岐にわたっている。

社会保障制度の安定
●国の責任で社会保障制度を維持発展
●医療は提供する側と受ける側の協働作業

予防医療の推進
●予防医学の推進

医療の安心・納得・安全
●医療の安心・納得・安全
●医療事故の原因究明および再発防止
●無過失補償制度の創設

国民皆保険制度の維持発展
●後期高齢者医療制度の廃止と医療保険の一元化
●包括払い制度の推進
●新しい医療技術、医薬品の保険適用の迅速化
●後発医薬品(ジェネリック薬品)

医療提供体制の整備
●医師養成数を1.5倍に増加
●現役医師の有効活用策で医療従事者不足を軽減
●臨床研修の充実
●勤務医の就業環境の改善
●医療従事者の職能拡大と定員増
●救急搬送・救急医療の連携強化
●国立高度専門医療センター・国立病院の機能の明確化

診療報酬
●地域医療を守る医療機関を維持
●レセプトオンライン請求の原則化

各診療科・疾患対策
●がん対策
●安心して産み育てることのできる医療
●歯科医療改革
●新型インフルエンザ対策
●アスベスト健康対策
●カネミ油症被害者対策
●肝炎総合対策
●難治性疾患対策
●心身医学
●統合医療の確立ならびに推進
●長期療養病床計画

http://www.dpj.or.jp/policy/koseirodou/index2009_medic.html


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IPCCデータの捏造疑惑

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11月20日に英国の East Anglia大学Climate Research Unit のサーバーへのハッカーの攻撃で、多数のemailデータが持ち出され、公開された。

一覧表は http://www.eastangliaemails.com/index.php 
Wall Street Journal による抜粋:

http://online.wsj.com/article/SB10001424052748704779704574553652849094482.html

Climate Research UnitProfessor Phil Jonesと米国や英国の研究者の間のemailなどで、科学的データの議論や、公表するかどうか、懐疑派に対してどのように反論するかの議論などが含まれている。

懐疑派の生データ要請を拒否してきたが、論文審査(peer-review)では生データが必要となる。懐疑派が'Climate Research' 誌を買収したため、これに論文を出すのを止めようとするメールもあった。

"I think we have to stop considering 'Climate Research' as a legitimate peer-reviewed journal."
"Perhaps we should encourage our colleagues in the climate research community to no longer submit to, or cite papers in, this journal." (from Mr. Mann to several recipients in March 2003)

「科学とIPCCのニーズは必ずしも同じではないが、これまで合わせるよう努力してきた」とのメールもある。

多くの新聞が取り上げ、例を詳細に説明している。Cimate-gate と呼ばれている。
Wall Street Journal:
http://online.wsj.com/article /SB10001424052748704888404574547730924988354.html
New York Times:
http://www.nytimes.com/2009/11/21/science/earth/21climate.html?_r=1

Fox Newsのアンカー、グレン・ベックにより報道されたClimateGate がYouTubeに出ている。
  http://www.youtube.com/watch?v=OIVAhIjRYHE

メールの中に、Michael Mannが科学雑誌“Nature”に発表した有名なHockey Stick曲線についてのPhil Jonesのメールがある。

直線から急激に曲がっている形がホッケーのスティックに似ていることから、Hockey stick曲線と呼ばれる。

Michael Mannは「この急カーブは19世紀以降の地球温暖化を物語っており、このままでは地球は悲劇的な事態に陥る。ただちに化石燃料の使用を減らして二酸化炭素の排出を抑えるべきである」と主張、このグラフはIPCCの報告書で何回も引用され、Mann自身が2001年からIPCC報告書の執筆者に選ばれるようになった。

しかしこの曲線の正しさについては、McIntyre & McKitrick
による批判、ドイツのハンブルク大学のvon Storch教授の批判など、論争となった。

問題のメールは以下の通りで、気温の下降を隠すために、Mannが1981年以降20年間、同Climate Research Unit Keith Briffa1961年以降、実際の気温にプラスした“Trick” について述べている。

From: Phil Jones
To: ray bradley,mann@virginia.edu, mhughes@ltrr.arizona.edu
Subject: Diagram for WMO Statement
Date: Tue, 16 Nov 1999 13:31:15 +0000
Cc: k.briffa@uea.ac.uk,t.osborn@uea.ac.uk

Dear Ray, Mike and Malcolm,
Once Tim's got a diagram here we'll send that either later today or first thing tomorrow. I've just completed
Mike's Nature trick of adding in the real temps to each series for the last 20 years (ie from 1981 onwards) and from 1961 for Keith's to hide the decline. Mike's series got the annual land and marine values while the other two got April-Sept for NH land N of 20N. The latter two are real for 1999, while the estimate for 1999 for NH combined is +0.44C wrt 61-90. The Global estimate for 1999 with data through Oct is +0.35C cf. 0.57 for 1998. Thanks for the comments, Ray.

Cheers
Phil

East Anglia大学ではデータが盗まれたことを認め、警察に調査を依頼したとしたが、公表されたものが本物かどうか不明としている。しかし、New York Times によると、コンタクトした何人かの科学者はメールの受信、発信を認めている。

Phil Jonesは上の記録が本物だと認めたが、「下降を隠す」というのをどういう意味で言ったのかは覚えがないとしている。

New York Times は、これらの書類は、疑いもなく、特定の問題についての調査の質や特定の科学者の行動について疑問を投げかけるものになろうとしている。.

懐疑派のMike Shedlockは、Beware The Ice Age Cometh: Hackers Prove Global Warming Is A Scam のタイトルで本件について詳細に述べている。

東京大学の大プロジェクトIR3Sの叢書「地球温暖化懐疑論批判」が、データに基づき懐疑論を打破しているが、データそのものに疑惑が出てくると、ますます懐疑派が勢いづくこととなろう。

ーーー

更にこの後、University of East Anglia は彼らの地球温暖化説の基礎となる生の気温データを廃棄していたことを明らかにした。
新しいビルへの移転時に場所がないので捨てたという。

懐疑派はこれまで生データがどのように加工されたのか疑問視していたが、過去150年にわたる長期的な気温上昇の計算根拠をチェックできないことを意味する。

付記

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の議長Rajendra Pachauri 氏は124日のBBCラジオのインタビューで、いわゆるClimateGateについて、詳しく調査すると述べた。

「全体を調査し、我々の立場を明らかにする。隠したりしない」としている。


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Tetra Pak11月25日、ブラジルのBraskemのグリーンプラスチック(HDPE)を容器の製造に試用する契約を締結した。

Braskemはさとうきびからのエタノールを原料とする年産20万トンのポリエチレン(HDPE & LDPE)プラントを建設中で2010年末に生産開始の予定であるが、Tetra Pak2011年初めから年間5,000トンを購入する。
これは同社のHDPE使用量の5%に当たり、プラスチック合計の1%弱となる。

Tetra Pak食品用の紙容器の開発・製造を主たる業務とするスウェーデンを本拠とする国際企業で、世界150カ国以上を市場として活動を展開している。同社の容器入り製品販売個数は2008年で約1,413億個に達する。
液体食品の容器に耐水性、酸素バリア性、耐衝撃性などをつけるため、紙にポリエチレンやアルミ箔をラミネートしている。

同社ではこれはグリーンポリエチレン使用の小さな第一歩だが、容器に再生可能材料を使用するというコミットメント示すものだとしている。

ーーー

Braskemは2007年6月21日、サトウキビから作ったエタノールを原料にHDPEを製造するのに成功したと発表した。
同社の
Technology and Innovation Centerで開発した競争力ある技術を使用した。

世界で初めて100%バイオマス由来であることが、米国材料試験協会が定める測定法ASTM D6866に基づき、放射性炭素測定研究所 Beta Analyticにより認証された。

同社は200812月に、取締役会がグリーンポリエチレン計画を承認したと発表した。

約250億円を投じて、Rio Grande do Sul 州Triunfo市Southern Petrochemical Complex でさとうきびエタノールから年産20万トンのエチレンとポリエチレン(HDPE+LDPE)を生産する。

同社ではグリーンポリエチレンの需要を国際市場で60万トン程度とみており、既存の製品の価格に15~30%のプレミアムを付ける考え。

ーーー

豊田通商は2008年9月、Braskem 2011年までに世界で初めて商業生産を開始する植物由来ポリエチレンに関し、日本を含むアジア地区の販売パートナーとしての業務提携を行うことに合意した。

同社は2007年にBraskem グリーンプラスチック開発プロジェクトに参加した。

ーーー

Braskemは本年7月、ブラジルのプラスチックフィルムメーカーのAcinplasとの間で、グリーンポリエチレン供給の契約を締結した。
ブラジルや欧州のスーパーマーケットで売られる野菜や果物用の有孔フィルムに使用する。

 

参考  2007/7/27 Dow、ブラジルでサトウキビからLDPE製造


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