2022年7月アーカイブ

米民主党は、Inflation Reduction Act of 2022を議会に提出すると発表した。

米民主党の Joe Manchin 上院議員がChuck Schumer上院院内総務と合意した歳出法案で、バイデン大統領が公約に掲げていた大企業と富裕層への増税案が復活した。

バイデン大統領は2021年秋、1.75兆ドルの大型歳出・歳入法案の可決をめざしたが、Manchin議員らが反対したため成立しなかった。

バイデン大統領は2021年10月28日、Build Back Better Act を発表した。与党民主党内で意見が対立し、進展していない 「10年で3.5兆ドルの予算案」を修正し、早期の法案成立を目指すもの。

大統領案はBuild Back Better Act の名前で、当初の「10年で3.5兆ドル」を半減し、気候変動対策や子育て支援等に1兆7500億ドルを投じるものである。

2021/11/1 バイデン大統領、10年間3.5兆ドルの予算案を修正

今回、上院で法案通過の鍵を握るManchin議員が方針転換した。バイデン氏は大幅に規模を縮小した今回の法案について、法案は気候変動対策や法人増税など同氏が実現をめざしてきた政策を含んでいるとし、速やかな可決を議会に呼びかけた。

付記

米上院は8月6日土曜の夜から15時間以上の討議を行い、8月7日日曜にこの新たな歳出・歳入法案を可決した。

予算関連法案はフィリバスター回避のための60票を必要としないとする上院のreconciliation processを使い、単純多数決での決定としたが、党派に沿い、50:50となった。
規定により、上院議長を兼ねる副大統領が賛成票を入れ、可決した。

  共和党 民主党 民主系 合計 副大統領
無所属
賛成   48 2  50 1
反対 50   50
合計 50 48 2 100 1


下院は8月12日、賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成   220 220
反対 207   207
棄権 4   4  
合計 211 220 431 4


バイデン大統領が近く署名して成立する見込み。

付記

バイデン米大統領は8月16日に署名し、成立した。大統領は「気候変動に関するこれまでで最大の前進だ」と強調した。


概要は下記の通り。年収40万ドル以下の家族には追加課税なし、中小企業には新税なし。

付記 2023年1月から自社株買いをした米企業への課税が始まる。

企業が実施する自社株買いのうち、同一年度に新規発行した分を差し引いたネットの株式購入額の1%相当する額を課税する。
自社株買い実施額が年100万ドル未満の場合や、組織再編の一環の場合は課税対象外とする。

財源

金額

 法人税 minimum tax 15% 3,130億ドル
 処方箋薬の価格改革 交渉による引き下げ*1 2,880億ドル
 国税庁による徴税改革*2 1,240億ドル
 Carried Interest Loophole*3 140億ドル
 合計 7,390億ドル
投資
 Energy Security & Climate Change *4 3,690億ドル
 医療保険制度改革延長 *5 640億ドル
 合計 4,330億ドル
差引 赤字削減 3,060億ドル


*1  Medicareが医薬品価格を交渉して引き下げ、支出上限を2000ドルにする。

*2  税の抜け穴を封じ、税法を厳密に適用

*3  Carrieed Interest Loophole:

Private Equityの収益構造はマネジメントフィー(資産の2%)及び将来の利益に対し20%の成功報酬からなっている。
この成功報酬のことをCarried interest呼び、正確には出資額に対する利益配分を指す。

アメリカの最高所得税率は37%だが、このCarried Interest の税制は長期キャピタルゲインの優遇税率20%が適用され、これは不平等でおかしいと指摘されている。

*4  エネルギーコスト引き下げ、クリーンな生産、2030年までにカーボン排出の40%削減
   太陽光投資減税(30%)を10年延長

*5  医療保険料の引き下げ

米上院は7月27日、国内半導体産業向けの補助金を含む「The CHIPS and Science Act of 2022」(「CHIPS法」)を64対33の賛成多数で可決した。
共和党 民主党 民主系 合計
無所属
賛成  17 46 1 64
反対  32 1 33
棄権 1 2 3
合計 50 48 2 100

下院は翌28日、これを可決した。バイデン大統領の署名を経て成立する。

共和党 民主党 合計 欠員
賛成  24 219 243
反対  187 187
棄権 1 1
合計 211 220 431 4

付記

バイデン大統領は8月9日、国内半導体産業支援法「CHIPS法」案に署名し、同法が成立した。

CHIPS法は、中国との競争を念頭に国内の産業競争力を強化する目的で議論が続けられてきた。中核的要素は、2021年度国防授権法に含まれた、半導体産業向けインセンティブ制度のCHIPSに527億ドルの予算を充当することにある。

国内半導体メーカーやその声を受けたバイデン政権からの強い後押しがあり、通商条項などを削除したかたちで上院可決に至った。

2022/7/27 バイデン大統領、半導体法案の早期成立訴え 

法案の総額は約5年で約2,800億ドルとなり、その多くはエネルギー省や商務省、国立科学財団(NSF)、国立標準技術研究所(NIST)といった連邦政府機関の研究開発プログラムなどへの予算の充当となる。

産業界向けのCHIPSに関する5年間で527億ドルの予算の内訳は次のとおり。

  1. 商務省製造インセンティブ(390億ドル):半導体の設計、組み立て、試験、先端パッケージング、研究開発のための国内施設・装置の建設、拡張または現代化に対する資金援助。
       うち、60億ドルは直接融資または融資保証に使用可能。
  2. 商務省研究開発(110億ドル):商務省管轄の半導体関連の研究開発プログラムへの予算充当。
  3. その他下記(27億ドル)

CHIPS for America Defense Fund (20億ドル)
CHIPS for America International Technology Security and InnovationFund(5億ドル)
Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors (CHIPS) for America Workforce and Education Fund(7億ドル)

上記のほか、半導体製造に関する投資に対して4年間、25%の税額控除を導入するとしている。

補助金を受け取る企業は、先端半導体の生産で中国に投資するのを10年間禁止される。

法案可決を受けて、米半導体産業協会(SIA)は「米国の経済、国家安全保障そしてカギとなる技術におけるリーダーシップの強化に向けた決定的な進展だ」との声明を出し た。

半導体とは別に、科学研究に対する5年間で約2000億ドルの予算も決められた。

National Science Foundation 810億ドル
Regional Technology Hubs   100億ドル
Dept of Energy       679億ドル、etc.

EUのガス在庫の枯渇懸念が強まっている。Gazpromは7月25日、Nordstreamについて、新たに送ガス用タービン1台の修理を始めると発表。27日から供給量を6月中旬までの約2割に減らす。

欧州連合(EU)は7月26日、ブリュッセルでエネルギー相理事会を開き、 ロシアが欧州へのガス供給を一段と減らし、欧州のガス在庫が枯渇する懸念が強まっているのを受け、8月から2023年3月までの天然ガスの消費を過去5年の平均に比べて15%減らすことで合意した。 ただ一部の加盟国に配慮して例外規定を設けるなど実効性には課題もある。

EUは2021年にロシアから需要全体の4割にあたる1550億立方メートルの天然ガスを輸入 した。15%の削減が実現すれば450億立方メートルの節約になるが、例外規定を設けたことで効果は薄れる可能性が高い。

島しょ国など他の加盟国とガス網で結ばれていない国は除外する。
発電をガスに大きく依存している国は目標を免除される可能性がある規定も設けた。
鉄鋼や化学など重要な産業で使うガスは目標の対象外とできるルールも設けた。

具体的には加盟国が自主的な目標として実現に努める自発的削減である。但し、ロシアがガス輸出を止めるなどの緊急事態になれば、欧州委が'Union alert'を出し、削減を義務付ける可能性もあるとしている。

ーーー

ロシア国営 Gazprom は6月14日、天然ガスパイプラインNordstream 1 の供給量を40%減らすと発表した。従来の日量最大1億6700万立方メートルから1億立方メートルになる。

Gazpromは翌15日、さらに33%削減すると発表した。合計60%のカットとなる。モスクワ時間の16日午前1時半をもって供給量は最大6700万立方メートルになる。

Gazpromは7月11日から2週間ほどの「定期検査」を実施し、その間はガス供給が完全に止まった。

点検の期限である7月21日に天然ガスの供給を再開したが、21日の供給量は点検前と同じ、通常時よりおよそ60%削減された状況である。

Gazpromは7月25日、Nordstreamについて、新たに送ガス用タービン1台の修理を始めると発表。27日から供給量を6月中旬までの約2割に減らす。

2022/7/11 独エネルギー大手Uniper ドイツ政府に金融支援を要請 



EU各国のロシア天然ガス依存度は下図の通り。

欧州は例年、ガスの不需要期の夏場に在庫を蓄え、暖房需要が増える冬になると消費量の半分を在庫でまかなう。

7月24日時点では、ガスの貯蔵能力は67%と平年並みの水準に回復している。液化天然ガス(LNG)の4~6月の輸入量を約3300万トンと前年同期比5割増やしたのに加え、ロシアからの調達を継続した効果も大きかった。

ただ、LNG輸入量はすでに受け入れ能力の上限に近い水準まで増やしており、これ以上の拡大は難しい。ドイツなどが進めるLNG受け入れ基地の新設や拡充も、今冬には間に合わないものが多い。

 

米連邦準備理事会(FRB)は7月27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の3倍となる0.75%の利上げを決めた。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25~2.50%とした。

前回の6月会合で約27年ぶりに0.75%の利上げを決めており、連続の実施となる。

2018/6  1.75%~2.00%
2018/9  2.00%~2.25%
2018/12  2.25%~2.50%
2019/7 2.00%~2.25%
2019/9  1.75%~2.00%
2019/10

1.50%~1.75%

2020/3

1.00%~1.25%

2020/3

 0.00%~0.25%

2022/3 0.25%~0.50%
2022/5 0.75%~1.00%
2022/6 1.50%~1.75%
2022/7 2.25%~2.50%


パウエル議長発言:

我々は物価上昇率を抑えることに注力し、迅速に動いている。米国の家庭と企業のため、物価安定を取り戻すべく必要なツールと決意がある。あらゆる人に恩恵をもたらす強い労働市場が持続していることを考えれば、インフレを目標の2%まで下げることが不可欠だ。現在は労働市場が極めて逼迫し、インフレは進みすぎている。

本日、FOMCは政策金利を0.75%引き上げると決めた。利上げの継続が適切と予測している。バランスシートの規模を大幅に縮小するプロセスも続ける。

IMFは7月26日、 減速する世界経済成長に立ち込める不透明で暗い見通しと題する報告を発表した。

「世界の3大経済国・地域の失速が世界経済見通しに大きく影響している。インフレが主要な懸念事項だ。

パンデミックとロシアのウクライナ侵攻によって混乱が続く世界経済は、不確実性の高い暗澹たる見通しに直面している。4月の世界経済見通し(WEO)で警告した下振れリスクは、その多くが現実になり始めている。

インフレは米国と主要な欧州諸国を中心として想定以上に上昇し、世界金融環境のタイト化を招いている。
中国は新型コロナウイルス感染拡大とロックダウンを受けて予想以上に鈍化しており、ウクライナ戦争からはさらにマイナスの波及効果が生じた。

その結果として、今年の第2四半期は世界GDPが縮小した。」

IMFによる2022年と2023年の各国・各地域のGDP予想は下記の通りで、2021年実績から大きく下落するとしている。

「世界経済成長率は昨年の6.1%から減速して今年は3.2%、来年は2.9%となる見込みであり、それぞれ4月の予測値から0.4%ポイント、0.7%ポイントの引き下げとなった。
これには米国、中国、ユーロ圏という3大経済国・地域の失速が反映されており、世界経済見通しはその影響を強く受けた。」





「経済活動が減速する一方で、世界のインフレ率は食料・エネルギー価格の上昇を一因として上方改定された。

インフレ率は今年、先進国で6.6%、新興市場国・発展途上国で9.5%に達すると予想され、それぞれ0.9%ポイント、0.8%ポイントの上方改定となった。同率は今後も高止まりする見込みである。

物価上昇は多くの国々へと拡大したが、その背景には、サプライチェーンの混乱やかつてない労働市場のタイト化から生じたコスト圧力がある。」





「今日のインフレ水準は、現在および将来のマクロ経済の安定性にとって明白なリスクを示しており、政策当局者は中央銀行の目標値までインフレ率を戻すことを最優先目標に掲げるべきである。

主要先進国の中央銀行は、IMFが4月に予想したよりも速いペースで金融政策面の支援を解除しており、多くの新興市場国・発展途上国では昨年からすでに金利上昇が始まっている。

このように金融政策の引き締めが諸国間で同期化する状況は過去に例がなく、その効果は来年の世界経済鈍化やインフレの減速という形で現れるだろう。

金融政策の引き締めを強化すれば必ず大きな経済的代償を伴うが、後延ばしにすれば一層苦境に立たされるだけである。引き締めに着手した中央銀行は、インフレを制御できるまで今の方針を堅持すべきだ。」

萩生田経済産業相は7月26日の閣議後会見で、キオクシアと 、同社と米Western Degitalの合弁会社から共同で申請されていた生産設備整備の計画を 、「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」(5G促進法)に基づく「特定半導体生産施設整備等計画」に認定したと明らかにした。

  • 経産省として同計画が5G促進法の認定基準を満たし、日本における先端メモリー半導体の安定的な生産に資するものと判断
  • 足元の半導体サプライチェーンの強靱化や半導体産業の発展への貢献に加え、半導体に関する日米連携の強化にも資する
  • 助成額の上限は約929億円

キオクシアと米Western Degitalも同日、三重県四日市市のキオクシア四日市工場第7製造棟における第6世代の3次元フラッシュメモリー設備投資計画が認定されたこと 、これにより、四日市工場における設備投資等に助成金が交付されることを発表した。JVはフラッシュパートナーズ有限会社、フラッシュアライアンス有限会社、フラッシュフォワード合同会社

2020/10/29 キオクシア、四日市工場で新製造棟を建設 (四日市 No.7 )

両社は、国内最大規模の半導体工場である四日市工場において、20年にわたるジョイントベンチャーパートナーシップを基に、最先端フラッシュメモリの開発・生産を加速させ る。また、半導体関連産業の発展や半導体人材の育成に貢献していくとしている。


台湾積体電路製造(TSMC)は2021年11月9日、日本で初めてとなる工場をソニーグループと共同で熊本県に建設すると発表した。

子会社 Japan Advanced Semiconductor Manufacturing (JASM)を熊本県に設立、ソニーセミコンダクタソリューションズは約5億米ドルを資本金として出資し、20%未満の株式を取得する。

22/28nmプロセスを皮切りとした半導体の製造受託サービスを提供する。当初の設備投資額は約70億米ドルで、2022年の建設開始を予定しており、2024年末までに生産開始を目指す。

経済産業省は2022年6月17日、TSMCが熊本県で建設中の半導体の工場に最大4760億円の助成をすると決めた。TSMCとJASMが申請していた計画を同日付で認可した。
半導体産業の強化に向けた6170億円の基金から補助する第1号の案件になる。

2022/2/16 台湾積体電路製造の熊本工場にデンソーが出資

今回の認定はこれに次ぐ第2号である。これで合計5,689億円となり、残りは481億円しかない。

ーーー

先端半導体工場の新増設を支援する改正法が2021年12月20日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。

高速・大容量通信規格「5G」のシステム構築に不可欠な「特定半導体」を製造する事業者が対象で、継続的な生産、需給逼迫時の増産対応などを条件とし、工場の新増設にかかる設備費用の最大半額を補助する。(その後、最低10年間は生産を続けることを求めることとした。)

5G促進法による「特定半導体生産施設整備等計画」に認定手続きは下記の通り。



バイデン米大統領は7月25日、経済安全保障の観点から半導体の国内生産を補助金で後押しする超党派の法案について、「議会は一刻も早く通過させなければならない」と述べた。大統領は半導体供給に関するオンライン会合を開き、「米国は半導体で世界をリードする必要がある」と強調、巨額補助金をつぎ込んで国産半導体の育成を加速させる中国に対抗する構えを見せた。 

今週にも上院で法案を通し、下院でも同じ法案を通して成立する可能性がある。

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米議会下院は1月25日、中国に対抗するため先端技術の競争力向上をめざす包括法案The America COMPETES Act of 2022 を公表した。

上院は2021年6月8日に同様の法案 United States Innovation and Competition Act を異例の超党派で可決している。しかし、この法案は「中国対抗法案」との位置づけで、新興技術の研究開発や台湾の支援強化など様々な条項を盛り込んだため、下院との法案すり合わせに時間がかかっ ていた。

米政府は半導体業界へ計520億ドルの補助金を拠出する方針で、Samsung は補助金支給条件などを確認した上で、新工場建設を決定したという。Intelも補助金を前提にしている。

今回、与党・民主党の議会指導部が公表したAmerica COMPETES Act では、2022会計年度(21年10月~22年9月)から5年間で上院と同じ計520億ドルの補助金を出す。うち390億ドルは新設設備に直接供与される。

台湾積体電路製造(TSMC)のアリゾナ州の120億ドルの設備、Intel のオハイオ州の200億ドルの設備など、これの対象となる新設備はこれを前提に既に着工されている。

法案には、サプライチェーン(供給網)を強化するために450億ドルをあてる条項も盛った。ハイテク製品や医療品などの生産の国内回帰を促すほか、備蓄を増やす。先端技術の研究開発で政府の支援を増やす。

途上国向けの温暖化対策基金や、太陽光関連に投じる資金が盛り込まれた。

2022/2/1 米下院、半導体補助金法案を公表 

下院は2月4日、America COMPETES Act を賛成222、反対210で通した。ほぼ党派通りで、民主党から1人だけ反対、共和党から1人だけ賛成した。

ーーー

今回下院で通った法案と昨年の上院の法案とは、半導体業界への520億ドルの補助金は同じだが、異なる点が多い。

バイデン政権は11月の中間選挙を控え、インフレ対策で成果を急いでいる。半導体不足で生産が止まった自動車が値上がりした。政府高官は、 夏季休暇入りの前に補助金を実現させるよう与野党の議会指導部に促してきた。

米インテルは6月、補助金の支給が遅れていることを理由に、中西部オハイオ州で7月に予定していた新工場の起工式を延期すると表明した。法案の成立がこれ以上遅れれば「世界の投資合戦で米国が後れを取る。台湾に調達を依存するリスクが続く」との危機感がバイデン政権や与野党で高まった。当初案から縮小された内容でも国家安全保障の観点から可決を急ぐ必要があるとした。


これを受け、共和党の上院上層部は、これまでの法案から米半導体業界に520億ドル強の補助金・奨励金を交付する件に限った法案(通称 半導体法:Chips Act)の審議入りを決めた。

上院(定数100)は7月19日、64対34の賛成多数で半導体法案の採決に進む方針を決めた。与党・民主党に加えて、野党・共和党から16人が賛成に回った。 民主系無所属のSanders議員は反対した。

共和党 民主党 民主系 合計
無所属
賛成  16 47  1

 64

反対 33  1

34

棄権 1 1

2

合計 50 48 2 100

7月25日の週に上院で可決し、それを受けて下院も同法案を可決する見通し。上院の法案可決には60票が必要になる。

高速通信機器の開発や科学研究を政府が支援する条項も加えられる可能性がある。

逆に、米国の半導体企業の中には、このままのCHIPS法ではIntelなどのメーカーにしか支援が行き届かないとして反対しているところもある。

半導体メーカーはCHIPS法で補助金、FABS法(Facilitating American-Built Semiconductors Act)で製造装置購入のための投資税額控除の両方の恩恵を受けるが、AMD、NVIDIA、QualcommなどIntelと競合するファブレス半導体メーカーは、半導体を製造していないため補助金の対象にはならない。

法案成立は簡単ではない。

当初の中心であった 対中法案は成立のメドが立たなくなっていた。民主党が下院の法案に気候変動や格差是正など中国とは直接関係ない条項を取り入れ、共和党が反発した。対中投資規制や貿易の条項でも与野党で意見が分かれた。

米Illuminaは、遺伝子変異や遺伝子機能の大規模解析のためのライフサイエンスツールや統合システムの開発、製造、販売を手がけるリーディングカンパニーで、シーケンサー(遺伝子配列解析装置)で世界最大規模のシェアを誇る。

米Grailは早期がんの検出技術を開発する新興企業で、2016年にIlluminaから分離・独立した。Amazon創業者のJeff Bezosなど有力者が出資していることでも知られる。

Illuminaは2020年9月、Grail を再び傘下に収めることを決め、71億ドル(約7800億円)で買収すると発表した。

米連邦取引委員会(FTC)は2021年3月30日、IlluminaによるGrail 買収計画を巡り、差し止めを求める訴訟を首都ワシントンの連邦地裁に起こした。

GrailはIlluminaから解析装置を購入する関係にあり、競合はしておらず、「垂直統合」と呼ばれるM&Aである。競合しない企業同士の統合について、米当局が「もの言い」をつけるのは珍しく、バイデン米政権の競争政策を映す動きとして注目を集めた。

FTCは、今回の買収が早期がん検出サービスの技術革新を停滞させると主張した。
がん検出技術を開発する企業は、遺伝子解析装置の購入先として最大手 Illumina以外の選択肢が乏しく、IlluminaがGrailのライバル会社に対して、装置を高く売りつけ、研究開発を阻害する可能性があると指摘した。

Illuminaは「FTCによる買収差し止めの動きは、長年の反トラスト法執行実務からかけ離れている」と主張、買収計画の遂行に向けて裁判で争う姿勢を示した。

2021/4/8 米FTC、Illumina によるGRAIL買収に異議  

Illuminaは2021年8月18日、GRAILの買収を完了したと発表した。ただし、米連邦取引委員会(FTC)や欧州委員会(EC)の独禁法審査が終わっておらず、それまでは、独立した別会社のままにするとした。

米国では現在、F.T.C. administrative judge(行政法判事)が審理中だが、FTC勝利はほぼ確実である。その場合、Illuminaは連邦控訴審に控訴することになる。

ーーー

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は7月19日、IlluminaによるGrail 買収をめぐり、EU競争法違反の疑いがあると警告する「異議告知書」を両社に送付したと発表した。

欧州委は2021年7月から独禁法の調査を開始したが、調査終了前の2021年8月に買収を完了した。

Illuminaは、Grailは欧州での売上高がないため、欧州委員会には調査する権限はないとして訴えていたが、EUの General Courtは本年7月13日にこれを棄却した。Illuminaはこれを不満とし、控訴すると発表した。

欧州委員会は、委員会による独占禁止法の調査終了前に買収を完了し、市場競争がゆがめられたとの見解を示した。

両社には今後、異議告知書に対する反論の機会が与えられる。その上で欧州委が最終的に違反を認定すれば、両社に年間売上高の最大10%を罰金として科すことになる。


付記

F.T.C. administrative judge(行政法判事)は9月1日、買収は競争を阻害しないとし判断した。

FTCのルールでは、この決定は Federal Trade Commissionでレビュー可能で、スタッフは手続きを行った。

他方、EUは9月6日、IlluminaによるGrail 買収を禁止した。

買収は技術革新を抑制し、血液ベースの早期がん検出検査の新興市場での選択肢を減らすとし、Illuminaは、これらの懸念に対処するのに十分な救済策を提供しなかったとしている。

最終的に、塩野義が2022年11月以降にも結果をまとめる最終段階の臨床試験(治験)データを待つという結論になった。

イタリアのドラギ首相は7月21日、マッタレッラ大統領に再び辞表を提出し、受理された。
大統領は上下院の解散を表明、政府は9月25日に前倒し総選挙を実施することを決めた。

大統領はドラギ氏に暫定的に首相にとどまるよう求めた。

ーーー

2018年6月1日に 「五つ星運動」と「同盟」の連立で、法学者で政治経験のないGiuseppe Conteの第一次内閣が発足したが、2019年8月に「同盟」が離脱、連立が崩壊した。ライバル関係にあった「五つ星運動」と野党の「民主党」、その他が連立を組み、第二次Conte内閣が誕生したが、2021年に「民主党」から独立した少数政党「イタリア・ ヴィーヴァ」がConte首相を批判、連立を離脱した。

Conte首相は大統領に辞表を提出、新たな連立政権で第3次内閣を目指したが失敗した。

欧州中央銀行(ECB)の第3代総裁を務め、'Super' Mario と呼ばれたMario Draghi は2021年2月13日、イタリア首相に就任した。

連立与党の中核だった「五つ星運動」と中道左派「民主党」に加え、1月に連立離脱した「イタリア・ヴィーヴァ」や、これまで野党であった中道右派の「同盟」や「フォルツァ・イタリア」なども含めた大連立内閣が発足した。

考え方が異なる多くの党の連立である。

合従連衡の経緯             
与党〇、野党X
第一次
コンテ内閣
第二次
コンテ内閣

2021/1

ドラギ内閣
五つ星運動
同盟

 離脱

民主党 民主党  分離
イタリア・ヴィーヴァ

 離脱X

フォルツァ・イタリア
混合会派
自由と平等
イタリアの同胞(極右)


2021/2/15 
イタリア、ECB前総裁のマリオ・ドラギ氏が次期首相に 

ーーー

イタリアでは議会最大勢力で、ドラギ首相が率いるテクノクラート政権を支える左派ポピュリスト政党「五つ星運動」が6月21日に分裂した。

同党内ではウクライナへの武器供与などを巡って、政権の積極方針を支持する前党首のディマイオ外相を中心としたグループと、武器供与が紛争長期化につながるとして反対する現党首のコンテ前首相を中心としたグループとの間で意見相違が続いてきた。51名の下院議員と11名の上院議員が同党を離党し、ディマイオ外相を党首とする新党「未来に向けてともに(IpF)」を結党した。

IpFはドラギ政権を今後も支えることを明言しているが、「五つ星運動」内には来年に予定される総選挙を前に政権への協力を取り止めるべきとの声も浮上し た。

物価高騰による家計負担の軽減措置を巡って政権が崩壊の危機に瀕していた。

ドラギ内閣はインフレ対策として230億ユーロの支援パッケージ案を提出した。これには、「五つ星運動」が以前から反対してきたローマ市内のゴミ焼却場建設条項が含まれている。

五つ星運動は最低賃金の導入など政府の物価高騰支援策の修正を求めており、こうした要求が通らない限り、法案採決に棄権するとした。但し、政権不信任の立場ではないとしていた。

イタリアではこの法案の採決を内閣の信任投票とみなし、ドラギ首相は五つ星運動が参加しない形での政権維持が難しいとして、同党が信任投票に参加しない場合、首相を辞任する可能性を示唆していた。


イタリア議会上院は7月14日、ドラギ内閣の経済対策案への投票を実施した。 経済対策案は賛成172、反対39で可決されたが、連立与党の中心の「五つ星運動」が投票をボイコットした。

選挙を経ていない実務家出身のドラギ首相は、連立の結束を重視し、「大統領に辞表を提出する」とし、「政権を支えてきた国民的な統合連立はもはや存在しない」と述べた。

しかし、マッタレッラ大統領は政局の不安定化を懸念して首相辞任を認めず、議会での解決を指示した。

イタリアの議会上院は7月20日、ドラギ首相が率いる内閣の「信任投票」を実施した。首相は上院での演説で、政府を維持する唯一の方法は「信頼に基づいた合意を再構築することだ」と強調し、各政党に協力を求めた。

今回も95対38の賛成多数で可決したものの、与党の左派「五つ星運動」と中道右派「フォルツア・イタリア」、極右「同盟」は投票前に離席し、事実上の「不信任」を示した。

ドラギ首相は7月21日、マッタレッラ大統領に再び辞表を提出し、受理された。
大統領は上下院の解散を表明、政府は9月25日に前倒し総選挙を実施することを決めた。

世論調査では、極右政党「イタリアの同胞」率いる保守連合が過半数を獲得する可能性が高まっている。

欧州中央銀行(ECB)は7月21日の理事会で、政策金利を0.5%引き上げると決めた。利上げは11年ぶりで、上げ幅は2000年以来22年ぶりの大きさ。

ロシア産天然ガスの供給不安で景気悪化懸念が急速に高まるものの、インフレ阻止を優先した。


主要政策金利をゼロ%からプラス0.5%、中銀預金金利はマイナス0.5%から0%に引き上げられ、2014年に導入したマイナス金利政策が終了する。

ーーー

欧州中央銀行(ECB)は6月9日、5月のインフレ率が8.1%と高い水準を維持しているため、量的緩和政策を終了し、政策金利を引き上げることを発表した。

これについて、7月21日に開催予定の次回理事会で11年ぶりに金利をそれぞれ0.25ポイント引き上げる。さらに、9月の理事会で発表されるユーロ圏に関するマクロ経済予測に基づき、さらなる引き上げを決定する。「中期的インフレ見通しが変わらないか悪化すれば、9月理事会でより大幅な引き上げが適切になる」としており、9月以降も、徐々に持続的なさらなる引き上げが適切だと予想している。

2022/6/13 欧州中銀、7月に0.25%利上げへ、量的緩和は終了

実際には今回、一気に0.50ポイント引き上げた。

ーーー

英国のイングランド銀行(中央銀行)は2021年12月16日、政策金利を0.15ポイント引き上げ、年0.25%とすると発表した。

新型コロナウイルス感染拡大以降、利上げによる金融政策の正常化に踏み切ったのは、日米欧の主要中銀では初めてとなる。

その後の利上げ 2022/2/3 →0.50%、3/17→0.75%、5/5→1.00%、6/16→1.25%

米連邦準備理事会(FRB)は6月14-15日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を75ベーシスポイント引き上げ、1.50~1.75%とした。

2022/6/16 米国、大幅利上げ

日本だけが取り残される形となる。

日銀は7月20~21日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決めた。

記者会見で黒田東彦総裁はエネルギー価格の上昇などを背景に「価格転嫁の動きが広がっている」と指摘し、経済の下支えと物価上昇に見合う賃上げが必要だとして、金融緩和を継続する考えを改めて強調した。利上げは「全くない」と言い切った。

更に円安が進み、輸入品の価格が上昇すると見られる。

東芝は2022年4月21日の取締役会で、パートナー候補となりうる潜在的な投資家やスポンサーから、企業価値向上に向けた戦略的選択肢(非公開化を含む)に関する提案を募集することを決議した。

同日から、フィナンシャル・アドバイザーの野村證券を通じて、提案の提出を前向きに検討する意向を示すパートナー候補との協議を実施し5月30日を期限として、法的拘束力のない提案の提出を要請してきた。

6月2日現在、非公開化に関する初期的な提案を8件、上場維持を前提とした戦略的資本業務提携に関する初期的な提案を2件、受領している。これらの提案は、いずれも法的拘束力を有するものではなく、ビジネス・法務・財務・税務その他の詳細なデューディリジェンスは、実施されていない。

東芝は7月19日の取締役会で、上記の10件のなかから第2次入札プロセスに招聘する複数の本パートナー候補を選定した。非公開化関する提案と、上場維持を前提とした戦略的資本業務提携に関する提案が含まれている。

今後、選定された本パートナー候補がデューディリジェンスを実施する。ただ、入札から離脱したファンドの再合流や、新たに事業会社が参画する可能性もあり、再編の枠組みはまだ見通せない。

東芝は原子力や防衛関連事業など経済安全保障上の重要技術を持っており、外国資本の経営参加を規制する改正外為法で審査対象となっている。経済産業省などは「国内勢の参加が不可欠」と判断している模様。

関係者によると、「国内外のファンド4社程度に絞られた」という。

報道では、下記の各社が選ばれたとされる。

1.産業革新投資機構(JIC) / 日本産業パートナーズ(JIP)
    なお、東京電力ホールディングスがこれに参加する検討をしているとされる。

2. 米大手投資ファンド Bain Capital

東芝の筆頭株主で旧村上ファンド出身者がシンガポールで設立した Effissimo Capital Managementは、Bain Capitalが東芝株を公開買い付けした場合、保有株をすべて応募する方針であることが、Effissimoが3月31日に関東財務局へ提出した変更報告書で明らかになった。

2022/4/5 Bain Capital が東芝の買収を検討

3. 欧州拠点のCVC Capital Partners

4. カナダのBrookfield

各社が東芝に提示した買収価格は一株5000円台後半から6000円前半とみられるが、一株7000円の高額な買収価格を提示していたアジア系ファンドは、資金的に実現性が乏しいことなどを理由に二次選考には進めなかった。

買収候補として有力視されていた米投資ファンドのKKRが再編案の提出を見送った。

KKR関係者は、「東芝の株価が高すぎる。外為法への対応など不確実性もあり、コストに見合わない」などと話している。

東芝の7月19日の株価は5301円。
2021年4月にCVC Capital Partnersが買収提案をした前日の株価は3830円で、
約30%のプレミアムを加え、1株5000円での買い取り価格を提案した。

2021/4/14 英投資ファンド、東芝に買収提案 

4陣営は2カ月程度のデューデリジェンス(資産査定)を経て、正式な提案を出すかどうかを判断する。東芝が提案を受け入れるかどうかの判断は今秋になる見込み

洋上風力発電に使う風車の世界大手が日本への参入を見直す。デンマークのベスタスは日本で補助金を使った工場建設を保留し、独シーメンスグループも日本向け製品の供給を絞る。

政府が洋上風力発電の事業者を公募するルールを見直しており、開発規模が小さくなって採算が取れない。

政府自らが自由な競争を制限するように方針を変更した結果、日本での新事業が取り止めになる結果ともなりうる。

日本経済新聞は7月15日、「洋上風車大手が日本工場建設中止 公募ルール変更」の記事を出したが、ベスタスは、事実に反する内容であるとし、日経に記事の修正または削除を要請した。
ベスタスは日本市場において、これまでと変わることなく、再生可能エネルギーの普及に貢献するべく精力的に取り組むとしている。

ーーー

国の洋上風力発電公募入札の評価基準が問題になっている。

日本で洋上風力発電の導入が進んでいなかったのは、①海域の占用に関する統一的なルールがない、②先行利用者との調整の枠組みが存在しないのが問題である。

これらの課題の解決に向け、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(「再エネ海域利用法」)が成立、2019年4月に施行された。
選ばれた事業者はその区域内で最大30年間の占用許可を得る。

ところが、2021年12月の大規模計画3件の公募入札で、三菱商事を中心とする企業連合がすべてを勝ち取った。最安値は11.99円/kWhで、次点とは5円程度の差があった。

240点満点のうち120点が電気の供給価格で、運転開始時期は事業能力80点のうち「事業計画の実現性」20点分の一部(点数不明)に過ぎない。

価格は最も安ければ自動的に120点を獲得できるが、運転開始はどれだけ早めても最大20点までしかとれない。 (「最も確実に事業を実現」が20点で、「早く」は評価するのか不明)

このため、公募ルールを変更することとなった。

2022/2/24 国の洋上風力発電公募入札の評価基準が問題に

経済産業、国土交通両省は6月23日、洋上風力発電に参加する事業者を増やすための新たな公募ルール案をまとめた。複数の海域で同時に事業者を募る場合、特定の企業連合がすべて落札するのを防ぐ仕組みとする。運転開始時期が早い提案への評価も高める。多くの企業が参入できるようにして、洋上風力が普及する環境を整える

新たなルールでは「計画の迅速性」を20点満点で評価する。価格への配点は120点に据え置く一方、両省が満点を得られる価格をあらかじめ定める。事業者がそれより安い価格で提案しても一律120点として評価する。

複数の海域で同時に公募する際には、企業連合あたり100万キロワットを上限とする。次点との点差が大きい海域から選ばれ、上限に達したら他の海域への提案は無効とする。

この結果、風車メーカーは、価格がいかに安くても、採用される計画が限定されることとなる。このため、日本で工場を建設するメリットはなくなることとなる。

ーーー

洋上風車は、デンマークのVestas Wind Systems A/S、スペインのSiemens Gamesa Renewable Energy S.A.、米国のGeneral Electric の3社が世界3強と呼ばれる。

GEはさきの大規模公募で3海域を総取りした三菱商事連合と組む。今後も三菱商事連合と組むと見られる。


デンマークのVestjysk Stålteknikは、1945年設立で、 2003年に世界最大の風力発電機メーカーとなるべく、デンマークのNEG Miconと合併し、社名を Vestas Wind Systems A/S に変更した。同社の風力発電機は世界80ヶ国以上で導入され、世界で20,000人以上を雇用している。

2014年4月に三菱重工との合弁により、デンマークに洋上風力発電設備に特化したMHI Vestas Offshore Wind A/Sを設立、洋上風力発電分野におけるトップクラスのシェアを獲得している。

三菱重工業が70%、ヴェスタス社が30%を出資し、2021年に日本にMHIベスタスジャパンを設立した。

2021年9月にVestas が長崎県内に洋上風力発電設備(ナセル)の工場建設を検討していることが分かった。

ナセルを風に正対させ風の効率を最適に保つためのヨーシステム、ブレード角度を変化させローターの回転速度を調整するピッチシステム、増速機や発電機を排熱から保護するための冷却システム、ローターの回転を安全に止めるためのブレーキシステム、風速と風向を検知する風向風速計、雷から風車を守るための雷保護システム等 を搭載し、風力発電機を安全かつ効率よく発電運転することを可能にしている。

経済産業省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」を利用して工場を建設するとみられ た。

補助対象:建物・設備の導入等
補助率:大企業は1/2以内
補助上限:100億円
事業期間:原則3年で、大規模投資案件は4年

しかし、今回の新しいルールが適用されると、風車メーカーは、価格がいかに安くても、採用される計画が限定されることとなる。

今回、納入先の公募落選で、同社は長崎での工場建設を保留とした。

スペインのSiemens Gamesa Renewable Energy S.A.も、日本での洋上風車の供給を見送る方針を明らかにした。


政府自らが自由な競争を制限するように方針を変更した結果、日本での新事業が取り止めになる結果となり得る。

原発再稼働?

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岸田首相は7月14日の官邸での記者会見で、原子力発電所を今冬に最大で9基稼働すると表明した。国内消費電力のおよそ1割に相当する電力を確保する。
火力発電の供給能力も10基増やす。電気代負担を実質的に軽減する新枠組みも打ち出し、電力不足解消へ政策総動員で臨む。

エネルギー対策と物価高対策

この冬で言えば、最大9基の原発稼働を進め、日本全体の電力消費量の約1割に相当する分を確保するとともに、ピーク時に余裕を持って安定供給を実現できる水準を目指し、火力発電の供給能力を追加的に10基を目指して確保するよう指示した。過去3年間と比べ、最大の供給力確保を実現できる。

岸田首相は原発だけでなく、経産相に「火力発電の供給能力を追加的に10基確保するよう指示した」とも述べた。

報道各社から質問を受け、経産省担当者は「10基ではなく、10基分の供給力の確保。6月末に方針を決めた」と述べた。

火力発電の供給力は、2016年度以降、設備の休廃止により大きく減少、2022年度1.1kW余りと最も低くなっている。

経産省は6月30日、冬を見据えて有識者が話し合う総合資源エネルギー調査会電力・ガス基本政策小委員会で、火力発電のたき増しや老朽化で停止した発電所の再稼働を求める方針を決定、7月末にも発電所を持つ会社に、東日本で170万㌗、西日本で190万㌗分の供給力を募る。

東京電力と中部電力が出資する火力発電会社「JERA」は7~8月、懸念される電力不足に対応するため、老朽化して休止中だった姉崎火力5号機(出力60万キロワット)と、知多火力5号機(同70万キロワット)2基を臨時で再稼働する。電力需給は一定の余裕が生まれるが、政府は状況はなお厳しいとして節電を呼びかけている。


日本の原発の状況は下記の通り。

再稼働が認められたのは10基ある。

但し、「特定重大事故等対処施設」問題がある。

原子力規制委員会は2019年4月24日の定例会合で、原発に設置が義務付けられているテロ対策施設が期限内に完成しない場合、期限の延長を認めないことを決めた。原則として原発の運転停止を命じる。

テロ対策施設は「特定重大事故等対処施設」と呼ばれ、2011年の福島第一原発事故後にできた新規制基準で設置が義務付けられた。
原子炉から離れた場所に建て、遠隔制御で原子炉を冷やす設備を備える。原子炉が航空機の衝突などによる攻撃を受けても、電源や冷却機能などを失わないようにする。

2019/4/25 テロ対策施設未完成の原発、運転停止へ 

このため、工事が期限までに完了しない原発については、工事完了まで停止することとなる.

現在、美浜3号はこの工事のため2021年10月から停止している。(7月下旬に完成、8/12に稼働)
大飯3号は稼働中だが、8月24日に期限が来るため停止、12月に運転再開。
大飯4号は定検で停止中で、8月24日に期限が来るが、その前に工事が完了、8月中旬に運転再開。

玄海3号は定検で停止中で、8月24日に期限が来て停止継続、2023年1月20日に運転再開予定。

玄海4号は定検停止していたが、7月10日に再開、8月上旬に通常運転する。しかし、9月13日に期限が来て停止、2023年2月中旬に運転再開予定。今冬には間に合わないとして首相構想から唯一除外。

このほかに定期検査のための休止がある。

高浜3号、4号は定検休止中で、8月と12月に運転再開する。
大飯4号は定検休止中。特定重大事故等対策の期限が8月24日だが、恐らく直前に同工事と定検が終了し、8月中旬から運転再開。

以上により、年末~年初に10基のうち9基が稼働する。

岸田首相の「最大9基」はでに原子力規制委員会の審査に合格して再稼働済みの西日本の10基のうち、検査のため運転を停止する九州電力玄海4号機を除く9基である。
原発9基態勢となるのは今のところ、23年1月下旬~2月中旬の1カ月程度に過ぎず、それ以外の期間は7~8基の稼働にとどまる。

2023年2月には残る玄海4号が運転再開するが、同月には伊方4号、川内1号が定検に入る。

現在 運転
再開
特定重大事故等対策 運転再開 2023/2までの稼働期間 次期定検 政府案
完了済 期限
停止
完了
関電 高浜 3号 定検 8月 8月~
4号 定検 10/21 10/21~
美浜 3号 特定 2021/10 7月下旬 10/20→8/12
繰り上げ
8/12~
大飯 3号 8/24 12月 12月~
4号 定検 8月 (8/24) 8月 8月中旬 8月中旬~
四国 伊方 3号 ~2023/2/23 2023/2/23
九州 玄海 3号 定検
特定
8/24 2023/1/20 2023/1/20~
4号 定検 8月 9/13 2023/2

----

川内 1号 2月中旬まで 2023/2月中旬
2号 通期 2023/5
合計 10基 4基 9基

注 5基稼働中との報道があるが、定検からの立ち上げ中で通常運転前の玄海4号を含めたもの。

ーーー

稼働が認められた上記10基のほか、新規制基準への適合性を認めた原子炉設置変更許可を受けたものが7基ある。
(従来の安全基準を強化して新たな規制基準が施行されたが、原子力施設等が新規制基準に係る適合性の審査に合格したもの)

東北電力女川2号(BWR:沸騰水型)
東電柏崎 6号、7号
日本原子力東海2号
関電高浜 1号、2号
中国電力島根2号(BWR)

設置変更許可は再稼働に向けた節目の一つだが、再稼働するには後段規制の設工認や保安規定変更認可、使用前確認もクリアしなければならない。安全対策工事の完了や地元同意も必要となる。

原子力規制委員会は2021年4月14日、柏崎刈羽原発のテロ対策の不備を問題視し、原発再稼働に必要な核燃料の移動や装塡を禁じる行政処分の是正措置命令を決定した。事態が改善されたと判断されるまでは再稼働ができない状態が続くことにな る。

2021/3/29 柏崎刈羽原発の再稼働、見通しつかず 

丸紅と大阪ガスは7月14日、丸紅が出資するペルーのLNG合弁会社 Peru LNGとともに、ペルー共和国で合成メタンの製造・販売事業(メタネーション事業)の事業性を調査・検討する共同検討契約を締結した。

Peru LNGについて:

出資者:Hunt Oil Company 50%、SK Energy 20%、Shell 20%、丸紅 10%

南米最初の天然ガス液化プラントをペルーのPampa Melchoritaに持つ。

2010年6月に38億米ドルを投じて完成した。能力はLNG 年間440万トンで、天然ガスは近くのCamiseaガス田からRepsol YPFとPetrobrasにより供給される。

LNGは全量Repsol のガス・マーケティング子会社が18年間にわたって購入する。

メタネーションは、再生可能エネルギー等から製造される水素と、工場等から排出されるCO2を原料とし、都市ガスの主成分であるメタンを合成する技術。

本事業は、2010年に運転を開始したPeru LNG基地を活用し、再エネ電力を用いて水を電気分解することで生成したグリーン水素と、回収されたCO2を用いて合成メタンを製造し、日本などへの輸出やペルー国内のガス需要に供給することを目指す。


これを実現するため、今年度は実現可能性の検討や事業性評価などに取り組む。



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SK onと米国完成車メーカー Fordが合弁した電気車用バッテリー生産会社「Blue Oval SK」が公式発足した。7月14日に発表された。

Ford Motorは2021年9月27日、114億ドルを投資し、米国に電動ピックアップトラック F-150 Lightning Electric Truck の組立工場と、3つの電池工場を新設すると発表した。

2025年に操業を開始する予定。

3つの電池工場については設立を交渉中のFord とSK InnovationのJVのBlue Oval SKが建設、運営する。

バッテリー工場に両社がそれぞれ44億5000万ドルずつを投資し、組立工場にはFord単独で25億ドルを投資する。

テネシー州Stanton にBlue Oval Cityを建設する。電動ピックアップトラック「F-150 Lightning Electric Truck」の組立工場と、新JVのBlueOvalSKのリチウムイオン電池工場及び主要サプライヤーの拠点とリサイクル施設が建設される。投資額は56億ドル。

2021/10/1 Ford Motor、114億ドルを投じ、電動ピックアップトラックと3つの電池工場を建設

ーーー

SKイノベーションは2021年10月1日、電池事業を分社し、全額出資の「SKオン」(SK on)を設立した。EVの世界的な普及による需要急増に対応するため、電池事業を上場させて増産資金を確保する狙いがある。

SKは現在、米国や欧州、中国の3大市場で合計5つの新工場建設を進めている。足元で年間40ギガワット時の電池生産能力を2025年には200ギガワット時まで拡大する。

なお、SKは米ジョージア州Commerce市に電気自動車用バッテリー工場を持っている。第一工場 9.8GWh、第二工場 11.7GWh(2023年生産開始)

2018/12/4 SK Innovation、米に電気自動車バッテリー工場を建設、LG & Samsung も各地で増設

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Blue Oval SKは、米国内バッテリー工場はテネシー州(1プラント)とケンタッキー州(2プラント)に計3プラントを建設する。テネシー工場はフォードの電気車工場とともに建設される。
3つの工場を完工すれば年間バッテリーセルの生産能力は計129GWhになる。

SKは現在、米国や欧州、中国の3大市場で合計5つの新工場建設を進めている。足元で年間40ギガワット時の電池生産能力を2025年には200ギガワット時まで拡大する。

パナソニック エナジー米国カンザス州714 同州への投資誘致補助金制度である Attracting Powerful Economic ExpansionAPEXへのパナソニック エナジーの申請ついてカンザス州が承認したこと発表した。

カンザス州が州内への投資を誘致するために設定した補助金制度で、特定事業領域において、総額 10 ドル以上投資をすることに同意した適性ある企業に対して適用される。
カンザス州はパナソニックが投資と雇用を完了した後、補助金として過去最大規模の8億2900万ドルを払う

パナソニック エナジーは2022年4月設立で、エナジーデバイス事業部(乾電池、リチウム一次電池、ニッケル水素電池)、モビリティエナジー事業部(車載用円筒形リチウムイオン電池)、エナジーソリューション事業部(小型リチウムイオン電池、蓄電モジュール、蓄電システム)を持つ。

パナソニック ホールディングス取締役会の承認得られた場合にはカンザ車載用リチウムイオン電池製造工場の立地先となる予定。「新しい工場の場所、生産能力も含めた具体的な中身についてはまだ何も決まっていない」としているが、候補地としてカンザス州 De Soto挙げている。最大で 4,000 人の新規雇用と約40 の投資を生み出すと期待している

米ホワイトハウスは7月13日、「中国が優位にたつリチウムイオン電池市場で、米国で完結するサプライチェーンを構築する取り組みだ」との声明を発表した。

NHKは3月4日、パナソニックがEVの新型電池の生産を強化するため、アメリカで工場用地を取得する方針を固めたと報じた。

Teslaへの供給を想定し、数千億円規模の大型工場とすることを視野に、量産技術の確立などを急ぐとした。Teslaは現在、新たな工場をテキサス州で建設しており、パナソニックでは、この工場に近い、南部のオクラホマ州や、中西部のカンザス州の土地を候補とする。

パナソニック エナジーの社長は6月1日の投資家説明会で、車載用電池の生産能力について、北米を中心に2028年度にかけて3─4倍への拡大を目指すと語っていた。
同社が和歌山県の工場で量産を予定する新型車載用リチウムイオン電池「4680」(直径46mm×長さ80mmの円筒形電池)については、2023年度から北米市場で戦略パートナーに供給する。

同社が現在量産している円筒形車載電池は「1865」(直径18mm×長さ65mm)と「2170」(直径21mm×長さ70mm)の2種類だが、「4680」は、「2170」に対して体積を5倍以上にして、容量を大きくしたのが特徴。電池1つ当たりの容量を大きくすれば、自動車1台に搭載する電池の数を減らせる。

ーーー

パナソニックは2014年10月1日、リチウムイオン電池セルを生産する新会社 Panasonic Energy Corporation of North America をネバダ州
Sparksに設立した。

新会社は、同社とTesla Mortorsが連携して設置を検討してきた大規模電池工場ギガファクトリー内で、リチウムイオン電池の生産を行う。

2014/10/8 パナソニック、リチウムイオン電池の生産会社を米国に設立 

現在 この工場は世界最大リチウムイオン電池工場であり車載電池セルの出荷数 60 億個を突破している。今後もネバダ Sparksでの事業けていくが、カンザス州検討されている工場は、米 EV 産業の発展に対するパナソニックの長期的なコミットメントを表すものであるとしている。

英国 次期首相候補

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ジョンソン首相は7月7日、声明を発表し、与党・保守党の党首を辞任して、首相の座からも退くことを明らかにした。

7月5日には閣僚2人(Rishi Sunak:Chancellor of the Exchequer, and Sajid Javid:Health secretary)が、政権は誠実さに欠けるとして辞任、その後、Welsh Secretary Simon Hartが辞任、首相に辞任を迫ったNorthern Ireland Secretary Brandon Lewis が解任されていた。

後任を決める与党・保守党の党首選を取りまとめる委員会は7月12日、立候補の条件を満たした8人を正式に候補者として指名した。

当初、11名が立候補したが、不祥事続きで信頼が失墜したジョンソン氏が後任選出まで首相を続けることへの批判が根強く、党は手続き迅速化のため、7月11日に選出方法の変更を決定した。
従来は立候補には保守党議員358人中、8人の推薦が必要であったが、最低20人の推薦が必要と厳格化した。

サジド・ジャビド前保健相は出馬の意向を示していたが辞退した。

指名を受けたのは下記の8人。内女性(赤字)は4人。

今後の予定は次の通り。

7/13 第一回投票 30票未満の候補者は除外
7/14 第二回投票 最小票の候補者除外 ----現在、これで5人になった。
7/18~21 投票を繰り返し、2候補を残す。7/19に3人に絞られた。

7/20 これまで2位のMordauntが落選した。

ーーー
Rishi Sunak Liz Truss Penny Mordaunt

候補者が2人になった後は、全国16万人の保守党員による郵便投票が行われ、最終的な勝者は9月5日に発表される。

9/5  新首相選出


支持
議員
7/13 7/14 7/18 7/19 7/20
Rishi Sunak 前財務相 45人

7月5日に財務相を辞任。両親はインド系で東アフリカから移住
昨年まではジョンソン氏の後継者として有力視されていた。

新型コロナウイルス対策として打ち出した一連の経済対策は高い支持を得たが、
妻の税金申告漏れや、ジョンソン氏とともにロックダウン中のパーティーに参加し罰金を科されたことがイメージダウン

88 101 115 118 137
Ms Penny Mordaunt 通商政策担当閣外相 25人 元防衛相で、前回首相選挙でHuntを支持したため、Johnson首相に解任された。
EU離脱の熱心な支持者。
67 83 82 92 105
Ms Liz Truss 外相 21人 3人の首相下で、環境相、貿易相、女性担当相を続け、現在は外相。
「就任初日から」減税政策を始めると約束した。
50 64 71 86 113
Tom Tugendhat 下院外交委員長 20人 37 32 31
Ms. Kemi Badernoch 前閣外相 16人 両親はナイジェリア系 40 49 58 59
Nadhim Zahawi 財務相 14人

7月5日辞任のSunak財務相の後任

元イラク難民で幼少時に英国に移住。
英国は新型コロナウイルスワクチンの接種を世界で最も早く開始した国の1つだが、その際にワクチン担当相を務めていた。

25
Jeremy Hunt 元外相 13人

2019年の保守党党首選でジョンソン氏と共に決選投票に進んだ。
2年前から下院保健特別委員会の委員長も務めている。

18
Ms Suella Braverman 法務長官 12人

EU離脱の熱心な支持者
アイルランド問題でEUとの協定を破り、英国の弁護士から非難された。

32 27
以下は当初、立候補
Sajid Javid  前保健相 7月5日に 保健相を辞任。相次ぐ閣僚離反の口火を切った。元銀行員。両親はパキスタン系イスラム移民。2019年の保守党党首選では4位だった。
Grant Shapps 運輸相
Rehman Chishti 外務次官 パキスタン生まれ
国連は7月11日に公表したリポートWorld Population Prospects 2022で、世界人口が2022年11月15日に80億人を突破するとの見通しを示した。

最新の推定では、2030年には85億人、2050年には97億人、2100年には104億人としている。

また、2023年にはインドの人口が初めて中国を上回り、世界最多になると予想した。インドは増加が続くが、中国は今後、人口減少となる。
2050年時点でもインドのほか、パキスタン、ナイジェリア、エチオピア、コンゴ等、人口増が続く国が多い。


(百万人) 1990実績 2022予想 2050予想
China 1 1,144 1 1,426 2 1,317
India 2 861 2 1,412 1 1,668
USA 3 246 3 337 3 375
Indonesia 4 181 4 275 6 317
Brazil 5 149 5 215 7 231
Russia 6 148 9 145 15 133
Japan 7 123 11 124 番外
Pakistan 8 114 5 234  5 366
Bangladesh 9 106 8 170 10 204
Nigeria 10 94 6 216 4 375
Mexico 11 81 10 127 13 144
Ethiopia 12 122 9 213
Congo 16 97 8 215

中国の 独禁法などを管轄する国家市場監督管理総局(State Administration for Market Regulation :SAMR)は7月10日、過去のM&A(合併・買収)などの際に当局への申請がなかったことが独占禁止法違反にあたるとして、ネット大手の騰訊控股(Tencent)やAlibaba集団などに罰金を科すことを決めたと発表した。

合計28の案件が罰金の対象になり、金額は大半が1件当たり50万元(約1000万円)。

騰訊控股(Tencent)は12の買収案件について総額600万元の支払いを命じられ、Alibabaの子会社は動画配信サービス「Youku(優酷)」の株式取得など5件について報告しなかったとして250万元の支払いを求められた。

オンライン診療を手掛ける平安健康医療科技(Ping An Good Doctor)が日本のソフトバンクと合弁企業ヘルスケアテクノロジーズ を東京に設立した件も対象になった。

ヘルスケアテクノロジーズ
 設立:2018年10月15日
 事業内容:オンラインヘルスケア事業

同社のHELPO(ヘルポ)は体調が悪くなり始めたときや、ちょっとした身体の不安を医師・看護師・薬剤師の医療専門チームに気軽に相談できるヘルスケアアプリ

 平安健康医療科技にはソフトバンク・ビジョン・ファンドが400億円超を出資していた。

このほか、動画配信のBilibiliが3件、ブログサイトWeiboが1件など。


中国当局は2020年末ごろからネット大手の摘発を強めており、これまでもTencentやAlibabaに様々な名目で罰金を科してきた。

2020/12/31  中国もインターネット企業を規制

2021/4/13 中国政府、独禁法違反でアリババに罰金3000億円 

2021/7/29 中国独禁法当局、規制強化

2021/10/16  中国当局、独禁法違反で美団に 5.27億ドルの罰金 



中国では8月1日に改正独禁法が施行される。2008年8月の施行以来で初の改正となり、ネット大手への統制がさらに強まる見通し。M&Aの届け出義務違反に対する罰金は大幅に引き上げられる。

中国の第13期全国人民代表大会(全人代)常務委員会第35回会議は2022年6月24日、独占禁止法の改正に関する決定を可決した。8月1日から施行される。

国家市場監督管理総局局長の説明では、改正の理由として、2008年の独禁法施行以降の運用の中で、一部の独占禁止行為に対する処罰が不十分なこと、法執行体制に改善の余地があることなどの課題が明らかになったことを指摘している。

特に、一部の大規模プラットフォーム事業者がデータや技術、資本などの優位性を乱用して独占的行為を行い、公平な競争の障害となっており、プラットフォーム経済分野における独禁法関連制度の具体的な適用規則の明確化が急務とした。

改正独禁法の第22条において、市場支配的地位を有する事業者による、データやアルゴリズム、技術やプラットフォーム規則などを利用した市場支配的地位の乱用を禁止する旨が規定されるなど、プラットフォーム事業者を対象とする内容が追加された。

また、事業者集中審査について、国務院が定める申告基準に達しない場合でも、国務院独占禁止法執行機関が、当該事業者集中が競争制限・排除効果を持つかその可能性があることを証明する証拠を有する場合、同機関は事業者に申告を要求することができると規定した(26条)。

分類されたレベル別の事業者集中審査制度を整備し、経済や国民生活に関係する重要分野における審査を強化することも盛り込まれた(37条)。

垂直的独占協定に関して、関連市場における市場占有率が国務院独占禁止法執行機関の定める基準を下回ることを証明でき、かつ、国務院独占禁止法執行機関の定めるその他の条件に合致する場合は禁止しないとする「セーフハーバールール」を定めた(18条)。

バイデン米大統領は3月31日、高止まりしているガソリン価格の抑制を狙い、今後6カ月間にわたって戦略石油備蓄(SPR)を1日当たり平均100万バレル追加で放出すると発表した。計1億8000万バレルに相当する。

他国も協調し、米国以外の放出規模が「3000万~5000万バレルになるだろう」と述べた。

2022/4/2 OPECプラス、大幅増産を見送り 

付記

米政権は10月18日、石油の戦略備蓄を1500万バレル放出すると発表した。石油の大幅減産を決めたサウジアラビアなどへの対抗措置とみられ、11月の米中間選挙を前にガソリン価格高騰を抑制する狙いがある。

今春に合計1億8000万バレルの石油備蓄を放出する供給枠を設けたが、今回の放出でその枠を使い切る。

「今後の状況次第では、追加で大規模に供給できる用意はある」としている。


米政府が国内燃料価格引き下げのために戦略石油備蓄(SPR)から放出した原油の一部が6月に欧州とアジアに輸出されていたことが明らかになった。輸出された原油は500万バレル以上だという。

米税関のデータによると、Phillips 66はイタリアのTriesteに約47万バレルを輸出した。Triesteには中欧の製油所に原油を送るパイプラインがある。

仏Total Energies傘下のAtlantic Trading and Marketingも56万バレルのカーゴを2カーゴ輸出した。

業界筋によると、オランダのほか、インドのReliance製油所、中国にも輸出された。

報道によると、エネルギー省は4月に中国Sinopecの販売子会社であるUnipec向けに戦略石油備蓄から95万バレルを販売することを承認した。バイデン政権は、「エネルギー価格引き下げに役立ち、米国消費者のガソリン価格高の苦しみを和らげる」としている。

この発表は、戦略備蓄放出のうち500万バレルが海外に売却され、うち100万バレルが中国向けであるとのロイター報道の後に行われた。

さらに、中国のSinopecとバイデン大統領の息子のHunter Biden が親密な関係にあることが判明した。

2013年に private equity companyであるBHR Partnersが設立された。

2015年にBHR はSinopec Marketing に17億ドルを出資した。

2017年にHunter Bidenは彼が唯一のオーナーであるSkaneatelesを通じてBHR の10%を取得した。

Hunter の弁護士は昨年12月にHunter Bidenが最早、BHR にもSkaneatelesにも関与していないと述べたが、米国と中国の登録では、3月時点で上記の通りとなっている。

米国のガソリン高を緩和するための戦略石油備蓄が海外に売られたこと、特に中国に売られたこと、さらに売却先のSinopecにバイデン大統領の息子のHunter Bidenが関与している可能性があることは、今後問題になると思われる。

Hunter Bidenはこれまでに問題を起こしている。

Joe Bidenがオバマ政権での副大統領時代にウクライナ問題を担当したが、息子のHunterを同行させている。

2014年4月にBiden副大統領がウクライナの国営天然ガス会社Burisma Holdingsの幹部に会った1カ月後に、HunterはコンサルタントとしてBurisma Holdingsに入社した。2014年から2019年までBurismaの取締役を務めた。この期間で月額5万ドルの報酬を受けていた。

トランプ前米大統領はウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談で、バイデン氏と同氏の息子に関する調査を要求。これを受け、野党・民主党が弾劾調査の開始を発表した。

2019/9/26 米民主党、Trump大統領の弾劾調査開始へ

Joe Biden大統領も政府の業務に息子を関与させるやり方も問題である。

ロシアからの天然ガス輸送量減少により、経営難に陥っている独エネルギー大手でロシア産ガスの最大輸入業者の1つのUniperは7月8日、ドイツ政府に資本注入などの救済措置を求める申請書を提出した。

2016年にドイツ最大のエネルギー企業E.ONが化石燃料、原子力、火力、水力、電力取引部門を「Uniper」として分離し上場した。E.ONには送配電、小売り、再生可能エネルギ一部門が残った。

同社の事業


ドイツは2020年に石油34%、天然ガス55%、石炭45%がロシアからの輸入だった。 特に、天然ガスは国内需要の9割以上を輸入に頼り、加えて輸入の半分以上をロシアに依存していることになる。

ロシア国営 Gazprom は6月14日、天然ガスパイプラインNordstream 1 の供給量を40%減らすと発表した。従来の日量最大1億6700万立方メートルから1億立方メートルになる。

Gazpromは翌15日、さらに33%削減すると発表した。合計60%のカットとなる。モスクワ時間の16日午前1時半をもって供給量は最大6700万立方メートルになる。

ドイツ重電大手Siemens Energyなどによると、パイプライン内のガス圧力を高めるために使われるガスタービン(aeroderivative gas turbine) 1基をカナダで修理したが、カナダ政府の制裁措置によってGazpromに提供できなくなったという。Siemens Energyではドイツとカナダ政府に事態を連絡し、解決策を協議していると発表した。

カナダ政府は7月9日、修理したタービンをドイツに返却すると発表した。

連邦ネットワーク庁によると、ガスの貯蔵率は7月7日時点で最大貯蔵量の63%と平年より2%少ない水準で推移する。暖房などの需要が少ない夏場に確保を進め、貯蔵率を11月までに90%まで引き上げる計画だがロシアから供給が細り、貯蔵量の積み上げは難航している。

Gazpromは7月11日から2週間ほどの「定期検査」を実施するとしており、その間はガス供給が完全に止まる見通しだが (7月11日停止)、検査終了後もガス供給が再開されない可能性もある。
ロシアはウクライナに重火器を供与するドイツに反発を強めている。

ロシアからのガス供給が完全に止まった場合などには、2023年2月頃に貯蔵率がゼロになる最悪のシナリオも想定される。

2022/6/17 Gazprom、ドイツ向けの天然ガス供給を削減

付記

Gazpromが出資するパイプラインの運営会社は点検の期限である7月21日、天然ガスの供給を再開したことを明らかにした。

ただ、ドイツのエネルギー規制当局によると、21日の供給量は点検前と同じ、通常時よりおよそ60%削減された状況で、全面的な再開にはならないとの見通しを明らかにした。

付記

Gazpromは7月25日、Nordstreamについて、新たに送ガス用タービン1台の修理を始めると発表。27日から供給量を6月中旬までの約2割に減らす。


Uniperとドイツ政権は7月に入り、ロシアのガス供給の制限に関係し、90億ユーロ規模の金融支援についての交渉を始めた。

Uniperの損失額は、2月のウクライナにおけるロシアの特殊軍事作戦の後、ロシアのエネルギー供給への依存を縮小するという独政権の決定の影響を被り、増え続けている。他のより高額な代用品で補填を強いられているためである。現在、LNGの市況は暴騰している。

ロシアが天然ガスの供給を絞るなか、ドイツ政府は冬場にガス不足の危機を回避しようと政策を総動員している。独議会は7月8日、経営不安に陥るエネルギー企業への公的救済に向けた関連法(Energy Security Act 改正案)を承認した。

これによると、政府は財政危機に瀕したエネルギー企業の救済のため必要な措置をとることができる。これにより消費者への影響を緩和する。

また、ガス価格の上昇を全ての消費者の間で均等に負担するようなメカニズムも導入する。天然ガスの輸入に大きな問題が生じた際には、価格調整条項を発動する可能性も含めた。

Uniperは即日、ドイツ政府に救済措置を求める申請書を提出した。

1)コスト上昇分の価格転嫁 Fair cost allocation

2)独政府系復興金融公庫(KfW)の融資枠拡大による追加融資

3)連邦政府によるUniper への出資

年末までに100億ユーロのコスト増になると試算、販売価格への転嫁を求めるとともに、20億ユーロ分の信用枠の拡大も政府系金融機関に要請した。ドイツ政府が今後、Uniperに資本注入し、株主になる可能性がある。(政府は資本注入を含め、90億ユーロ規模の公的支援を視野にいれている。)

付記 

ドイツ政府は7月22日、Uniper救済策として、株式30%を取得すると発表した。政府が経営に一定の影響力を持つことで、ガスの安定供給を目指す。
ドイツ政府は2億6700万ユーロ(約370億円)の増資によるUniper株取得で、56%所有の親会社であるフィンランドのFortum、同国政府などと基本合意した。

合わせて政府系金融機関であるドイツ復興金融公庫(KfW)の融資枠を現在の20億ユーロから90億ユーロに拡大する。

10月からガス買い取り価格の高騰分を料金に転嫁し、消費者の負担が増えることも明らかにした。

ドイツ政府はガス消費の抑制も強化する。緊急調達計画では警戒レベル別の政策対応を3段階に分けており、ドイツ政府は6月23日、2段階目の「非常警報」を発令し、3月末に公表した初期段階の「早期警報」から警戒レベルを1段階引き上げた。ガスの代替として石炭火力発電の稼働を一時的に増やす関連法も承認された。

ドイツ政府はガスを安定確保するため、不測の事態に備えた調達計画をすでに策定済み。警戒レベルは①早期警報②非常警報③緊急警報の3段階で、重大な問題が生じる場合に宣言する。

ロシアに代わる調達先をノルウェーなどで模索する。ただ現状ではガスの供給を大きく増やすのは難しい。インフラ面でも制約があり、ドイツで液化天然ガス(LNG)の受け入れ拠点の一部が完成する年末以降にならないと、ノルウェーからのガス調達量を増やすのは難しい。

ドイツはこれまでロシアからパイプで天然ガスを輸入してきた。LNGに切り替える場合、受け入れ設備と再ガス化設備が必要である。

ドイツは3月5日、国内初の液化天然ガス(LNG)輸入ターミナル建設を発表した。
ドイツ復興金融公庫(KfW)と大手エネルギー会社RWE、オランダ政府100%出資のガス大手Gasunieが、ドイツ北部のBrunsbüttel市でLNG輸入ターミナルの建設に関する覚書(MoU)を締結した。
出資比率はKfWが50%、Gasunieが40%、RWEが10%でターミナルの運営はGasunieが担当する。

同ターミナルの年間再ガス化能力は80億立方メートルで、ドイツの年間ガス需要約950億立方メートルの8.4%に相当する。 (この完成はかなり先になる)

ドイツ政府は5月5日、LNGの輸入拠点となるターミナル建設を北部Wilhelmshavenで始めた。

既存の桟橋を改良し、LNGが貯蔵できる設備を備えた船4隻をリースして洋上に停泊させる。浮体式LNG貯蔵再ガス化設備と呼ばれる大型設備で、海外から到着するタンカーからLNGを船の設備に受け入れ、船上で液体からガスに戻し、陸上のパイプラインを通じて消費地に送る。80億立方メートル程度を供給できるという。

10年契約で、秋までに完成し、RWEが運営する。陸上受け入れ基地機能の代替となる、ドイツ政府は29億4千万ユーロの予算を付ける。

これらが完成しても、現在パイプラインで受け入れている量には程遠い。価格だけの問題でない。

2022/6/17 Gazprom、ドイツ向けの天然ガス供給を削減

ガスの調達不安が高まれば、一段と厳しい措置が導入される見通しで、緊急調達計画の警戒レベル3段階で最も厳しい「緊急事態」になれば、ガスの配給制や価格決定などで政府が直接介入できるようになる。

一般家庭へのガス供給を優先させる方針で、企業を中心に工場の操業停止を迫られる恐れがある。割安なロシア産ガスから価格の高いLNGに切り替えれば家計負担も大幅に増える。ドイツ経済研究所のクラウディア・ケムファート氏は独メディアのインタビューで、ガス価格が「最大400%上がる可能性がある」と指摘した。

ロシアからのガス購入を続ければ経済制裁の効果を弱めかねない。一方、早期に供給が止まれば今冬のガス不足が現実味を帯びる。エネルギー不足による景気悪化の懸念は強まっている。


Frankfurter Allgemeine 紙とのインタビューでBASF CEO のMartin Brudermuller は、ロシアからのエネルギー途絶はドイツ経済を過去75年以上のうちで最悪の不況に陥らすと警告した。

4~5年経てばロシアのガスから独立することも可能かも分からないが、それまでについてはLNG輸入での代替は不十分である。ロシアの天然ガスはドイツの消費の55%を占めており、これが一夜にして切られると、被害は取り返しのつかないものとなる。ドイツ経済は第二次大戦以来最悪の危機に陥り、特に中小企業の多くにとって終わりを意味する。

BASFの場合、ガスの供給が最大需要量の50%以下になった場合、Ludwigshafen コンビナートで生産を大幅に落とすか、完全にシャットダウンせねばならない。

ドイツ人は事態の重要性を認識していない。天然ガスを切られると職を失うことを意味する。

アンモニアを例にとると、BASFは既にアンモニアや肥料の生産を落とさざるを得なくなっているが、肥料の生産国のロシアに頼れないため、2023年には肥料不足から食糧が不足し、価格が急騰、アフリカなどの貧困国では主食の購入が難しくなるだろうとしている。

2022/4/4 ロシア、天然ガス代のルーブル払い義務化

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公的支援の動きは欧州各国に広がる。

フランス政府は7月6日、ロシアのウクライナ侵攻が欧州のエネルギー市場を不安定にしていることを受け、国内最大の電力会社であるフランス電力(EDF)を完全に国営化する計画を発表した。

フランス政府はすでに同社の株式の84%を保有しているが、ボルヌ首相が同日、政府が「EDFの資本を100%保有する」計画を議会で表明。これにより政府が同社を完全に支配し、利益が減少する中での投資家への還元を回避できる。

イタリア政府は6月30日、国営エネルギー会社GSE(Gestore dei Servizi Energetici GSE S.p.A.)のガス備蓄を支援するために、40億ユーロの政府融資を行うことを決めた。

米連邦最高裁は6月30日、発電所の温暖化ガス排出に関して、環境保護局(EPA)が規制する権限を制限する判断を下した。石炭業界や共和党支持者の多い州の主張に沿った判断となり、バイデン大統領が掲げる気候変動対策に打撃となる。


野党・共和党系の18州や国内最大級の石炭関連企業の一部を代表して石炭産地のある南部ウェストバージニア州がEPAを相手取り、州全体の排出量を規制する権限はないと訴えていた。19州は各州の電力部門が石炭の使用停止を余儀なくされ、深刻な経済的負担を強いられるのではないかと懸念していた。

最高裁はEPAには火力発電から再生可能エネルギーへの移行など、発電所からのガス排出量を幅広く規制する権限を法律で与えられていないと結論づけた。

保守派6 対 リベラル派3での判断。

多数派の判事らはEPAに関して、発電所の排出については規制が可能だとしつつ、現行の法律(大気浄化法)のもとでは、議会はEPAに対し、火力から再生可能エネルギーなど発電形式の変更を促す規制の権限を与えていないとした。最高裁のロバーツ長官は、政府機関にそれだけの権限を与えるためには議会がより明確な法制度を整える必要があると説明した。

EPAには、電力網全体の電力生産の変更を要求することにより、電力生産からの温室効果ガス排出を制御する権限が無いというもので、裁判所の最高裁判事であるジョン・ロバーツと4人の保守的な裁判官によって書かれた。ニール・ゴーサッチは賛成意見を書いた。裁判所の3人のリベラルな裁判官は反対した。

Elena Kagan は反対意見の中で、「今日、裁判所は、私たちの時代の最も差し迫った環境問題に対応するために議会が与えた権力の環境保護庁(EPA)を取り除いた」と書いた。

1960年代に、議会は大気浄化法を可決し、EPAに大気質を改善するための規制を施行する権限を与えた。 2015年、オバマ政権のクリーンパワープランは、発電所からの二酸化炭素排出に関する州のガイドラインを設定した。 24の州が、この計画が大気浄化法によってEPAに付与された権限を超えたと主張して訴訟を起こた。

6対3の意見では、大気浄化法は、個々の排出者に削減を要求するのではなく、グリッド全体に抜本的な変更を加えることによって発電所での温室効果ガス排出を規制する権限をEPAに与えていないとする。

ロバーツ判事は「主要な質問の教義」を引用してその理由を説明した。これは、重要な問題を決定するとき、政府機関は明確な議会の承認を得なければならないと述べている。ロバーツ判事は、大気浄化法はそのような認可を提供しなかったと主張した。

Kagan判事は反対意見のなかで、気候変動の影響に関する政府間パネルの悲惨な評価を引用し、この判決は「温室効果ガスの排出を抑制するために必要な電力と付与された電力をEPAから奪う」と書いた。

バイデン大統領は判決を受けて声明を発表し、「気候変動と闘うわが国の力を損なう可能性がある」と最高裁を批判。政権の法務チームに対し「気候変動の原因となる有害な汚染から米国人を守り続けることができる方法を見つけるよう指示した」と説明した。

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この決定は、銃の権利を拡大し、中絶の権利を保護した1973年の判決であるロー対ウェイド事件を覆すものを含む、裁判所からのいくつかの物議を醸す決定の直後に行われた。

2022/5/10 米最高裁の中絶権判例を覆す意見草案 付記
2922/6/28 米議会、銃規制強化法案を可決、米最高裁はNY州の銃規制を違憲と判断

米最高裁は2022年6月30日付でBreyer判事が引退し、Jackson判事が就任したが、保守派とリベラル派は6対3のままである。

性別 born 人種背景

指名大統領

就任日 判断傾向
Clarence Thomas 男性 1948/6 アフリカ系 George H. W. Bush 1991年10月23日 保守
John Roberts  (Chief) 男性 1955/1 白人系 George W. Bush 2005年9月29日 保守
Samuel Alito 男性 1950/4 イタリア系 2006年1月31日 保守
Sonia Sotomayor 女性 1954/6 ヒスパニック Barack Obama 2009年8月8日 リベラル
Elena Kagan 女性 1960/4 ユダヤ系 2010年8月7日 リベラル
Neil Gorsuch 男性 1967/8 白人系 Donald Trump 2017年4月10日 保守
Brett Kavanaugh 男性 1965/2 白人系 2018年10月6日 保守
Amy Coney Barrett 女性 1972/1 白人系 2020年10月26日 保守
Ketanji Brown Jackson 女性 1970/9 アフリカ系 Joe Biden 2020年6月30日  リベラル
引退 2022/6/30            
Stephen Breyer 男性 1938/8 ユダヤ系 Bill Clinton 1994年8月3日 リベラル

中国国家鉄路集団有限公司が中心となり、中国電建市政建設集団が建設を担当するインドネシアのジャカルタとバンドン間の高速鉄道がようやく本年中に開業にむかう。

3月31日に、全線最長の箱桁架設工事がようやく完了した。そして本線バラスト軌道の敷設工事が、6月1日に正式にスタートした。これは同高速鉄道建設が線路の外での施工段階から、線路の上での施工段階へと全面的に移行したことを意味する。

ジャカルターバンドン高速鉄道はインドネシアの首都ジャカルタと第4の都市バンドン間の150 kmを結び、線路の総延長は142キロメートル、本線の軌道の総延長は279.4キロメートル。そのうちバラスト軌道区間は112.8キロメートル、スラブ軌道区間は166.6キロメートルで、いずれも中国製の鋼鉄製50メートルレールが採用される。

中国産レールはジャカルタ-バンドン高速鉄道軌道敷設基地まで運ばれた後、中国製の設備と先進的なパルスフラッシュ式溶接技術を使用して溶接作業が行なわれ、500メートルのロングレールに溶接されると、ロングレール輸送列車を利用して施工現場まで運ばれる。

人民網紙によると、 同高速鉄道は「一帯一路」(the Belt and Road)イニシアティブと中国・インドネシア両国の実務協力におけるシンボル的プロジェクトであり、中国の高速鉄道事業が初めて全システム、全パーツ、全産業チェーンにわたって海外で展開されるケースにもなる。完成すれば、ジャカルタ ーバンドン間の移動時間が現在の約3時間から40分に短縮される。

インドネシア政府が今年2022年内の「ソフト開業」を掲げている。 但し、無理であるとの見方も強い。

将来的にインドネシア第二の都市である東ジャワ州スラバヤへの延伸が計画されている。

これについては、 日本および中国が高速鉄道システムの売り込みを行い、入札を競った。

ロジェクトの操業開始時期は、JICAが2023年とみていたのに対し、中国側は大統領選が行われる2019年には操業を開始できるとした。
建設コストについても、JICAは61億ドルを要するとみていたところを、中国は55億ドルで完成できるとした。

インドネシア政府は2015年9月3日、高速鉄道計画の撤回を発表し、入札を白紙化したが、直後の9月29日、財政負担を伴わない中国案の採用を決定した。

中国は改訂版入札書をインドネシア側に再提出した。そこで、プロジェクトはbusiness-to-businessベースに切り替えることを明確にするとともに、インドネシア政府からは一切の政府支出を求めないし、政府保証も不要とした。

中国の国営企業(中国鉄道建設公社)は、インドネシアの国営企業3社(建設会社のWijaya Karyaがリーディングカンパニー)との間で、高速鉄道プロジェクトの実施に関する契約を締結し、両者の出資による特別目的会社(SPC)を設置することに合意した。

総コストは、55億ドルと見積もり、建設期間は、2016年から2019年までとし、その後50年間は政府から得るコンセッションの下、高速鉄道サービスを提供し、その事業収入をもって初期投資コストを回収する。
更に、本プロジェクトの建設に係る必要資金は、中国開発銀行を通じて提供するとし、融資比率は、総コストの75%、grace periodは10年間、融資期間は50年とした。

2015年9月の落札時点では、2015年に着工し2019年に開業する予定とされていたが、起工式は2016年1月21日にずれ込んだ。

提出された書類の大半が中国語で審査が進んでいないこと、中国側はインドネシア政府に当初の条件とは異なり、債務保証を求めてきているとも報じられた。
その後も、土地価格の高騰や民間工業団地の移転補償問題、不法占拠に対する立ち退き交渉の難航などで土地収用は85%にとどまり、中国側の融資の条件である高速鉄道用地の全区間確保が出来ていないため本格着工が行われず、地元業者による自己資金による整地工事のみが行われている状態とされていた。

その後のコロナ禍での工事遅延もあった。

総工事費は契約締結当時は55億ドルとされていたが、その翌年には、早くも61億ドルに膨れ上がり、最近の国会での国営建設会社の証言によれば、75~80億ドルに達するであろうとされている。
中国側のFSが低過ぎたことに起因するが中国側は主に土地収用の遅れ等によるものとしている。

予算のオーバーに対し、政府は2021年に国家予算357億円をインドネシア側出資企業に投入して支援することを決めた。(これは61億ドルの予算に対するもので、工事費は更に増え、政府支出も増えると見られる。)

下図のように、インドネシア国営企業コンソーシアムが主体の中国とのJVが運営主体のため、コスト増はJVが負担せざるを得ない。出資者の国営企業は既に多額の対外債務を抱えており、このような支払を行えるような財務状況にはなく、最終的に国が支援するしかないこととなる、


完成後も、ジャカルタ、バンドンの二都市間には、既に既存路線が走っていることから十分な収入は見込めず、建設費増により赤字が予想される、

中国側の融資は45.5億ドルで、grace periodは10年間、融資期間は50年であり、2026年からは毎年債務支払義務が発生する。(アジア開銀なら1%未満)
この負担は大きく、
数年もしないうち経営破綻に陥ってしまう可能性が高いのではと見られている。

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ジャカルタ-バンドン間の高速鉄道計画とは別に、ジャカルタ-スラバヤ間のジャワ島横断鉄道(在来鉄道)の高速化計画がインドネシアと日本の協力で進められている。

2017年3月、インドネシア政府は、ジャカルタとスラバヤを結ぶ鉄道の活性化のパートナーとして日本を選択した。このプロジェクトは、インドネシアの2つの主要都市間の列車を、時速 140〜160km、軌間 1,435mmにアップグレードすることを目的としている。
現在は12時間かかるジャカルタ―スラバヤ間を約半分の5時間半にすることが検討されている。

建設により、踏切が高架線に置き換わる。現在、ジャカルタとスラバヤの間には約988の踏切があり、列車の安全性、強度、速度を妨げている。プロジェクトのフェーズ1では、ジャカルタからスマランまでの新しい路線を構築し、フェーズ2では、スマランからスラバヤまでの既存の路線をアップグレードする。

これについて、インドネシア政府が中国に対して資金面などでの参加を2022年1月12日に打診していたことが明らかにされた。

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