2009年5月アーカイブ

原油価格上昇

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29日のWTI原油価格終値は66.31ドル/バレルとなった。昨年11月上旬の水準。

株式市場が底堅く推移する中、景気底打ちへの期待感が先行、原油の買い戻しが続いている。
米週間石油在庫統計で原油在庫が大幅に減少したことも反映した。

OPECは28日、臨時総会で原油生産の追加削減見送りを決めた。
サウジアラビアのヌアイミ石油相は年末までに75-80ドルに達する可能性もあると指摘した。

東京市場でも、ドバイ原油は終値64.00ドル/バレル、オープンスペックナフサは569ドル/トンと値上がりした。

29日発表の通関統計では、輸入ナフサの平均価格は29,628円/kl となり、前月比約1,000円のアップとなった。

  2008年 2009年
1月 65,961 21,500
2月 64,562 23,836
3月 63.597 28,632
平均 64.653 24,970
4月 63,392 29,628
5月 68,205  
6月 74,877  
平均 68,877  
7月 81,933  
8月 86,801  
9月 82,708  
平均 83,820  
10月 66,923  
11月 48,456  
12月 29,780  
平均 50,047  

国産ナフサ基準価格は3ヶ月ごとの平均輸入価格に2,000円/kl を加算する。


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旭化成クラレメディカル(以下 AKKM)は5月19日、米国のNxStage Medical, Inc.との間で、透析事業領域(一部血液浄化事業関連を含む)に関し、包括的な事業提携契約を締結したと発表した。

AKKMは旭化成メディカルの透析事業・血液浄化事業とクラレメディカルの透析事業を統合した会社で、人工腎臓、血液浄化関連製品などの開発、製造、販売を行う。人工腎臓用中空糸製造を延岡で、人工腎臓組立を大分、延岡及び浙江省杭州市で行っている。

NxStage 在宅透析システム、急性腎不全治療システムの製造、販売、及び関連ディスポ製品事業を行い、ドイツ、メキシコ、イタリアに生産拠点を持っている。

提携内容は以下の通り。

AKKMはNxStage のドイツ工場に人工腎臓用ポリスルホン中空糸を供給する。
NxStage はドイツ工場でその中空糸を使用してNxStage ブランド人工腎臓を製造し、北米で販売する。
AKKMは、NxStage のドイツ工場に人工腎臓組立を委託し、AKKMブランド製品を北米を除く全世界で販売する。
AKKMは将来、同工場で能力増強投資を実施し、新工場の土地、建物、設備等の所有権を保有する。
NxStage は、同社の人工腎臓設計と組立、及び血液回路および関連製品に関する特許およびノウハウについて、北米を除く世界市場を対象とした製造・販売権をAKKMに供与する。
AKKMは、NxStage に長期貸付金 4,000 万ドル(4 年満期)を提供する。

AKKMは中国に次ぐ海外組立拠点を検討していたが、NxStage ドイツ工場での共同事業化と両社の人工腎臓技術の融合で、グローバル成長戦略を加速する。
NxStage
製品競争力の要となる高性能中空糸の安定供給を確保する。

両社は、相互協力の下、日本・アジア、米州、欧州の三極にまたがるパートナーシップを推進することで、透析治療技術のさらなるイノベーションをリードする。

ーーー

旭化成メディカルとクラレメディカルは20066月、クラレのEVOH樹脂を用いた医療用中空糸膜の製造会社 A・Kメンブレン製造㈱を50/50で設立し、延岡に400万本/年(スタート時260万本/年)の工場の建設を開始した。

クラレメディカルはクラレの倉敷事業所再編計画の一環として、同工場にあったEVOH中空糸膜製造工場の新立地を検討していたが、ポリスルホン中空糸膜を延岡で製造している旭化成メディカルが、EVOH中空糸膜による製品ラインアップ構想を持っていたため、両社の構想が合致した。

ーーー

200612月、旭化成メディカルとクラレメディカルは両社の透析事業と血液浄化事業を統合することについて基本合意した。
今後の医療用中空糸膜技術の向上と製品競争力の強化を図るためには、より一層の事業の一体化が必要と判断した。

社名を旭化成クラレメディカルとし、旭化成ファーマが85%、クラレメディカルが15%を出資する計画であった。

旭化成メディカルのセパセル事業(輸血用白血球除去フィルター)とプラノバ事業(ウイルス除去フィルター)は対象外。
クラレメディカルの歯科材料事業は統合対象外。
A・Kメンブレン製造は旭化成クラレメディカルが吸収合併。

しかし、血液浄化事業については公取委の承認が得られず、計画を一部変更し、2007年10月にスタートした。

統合対象:旭化成メディカルの透析事業・血液浄化事業とクラレメディカルの透析事業
      (
クラレメディカルの血液浄化事業を除外
出資比率:旭化成ファーマ
85%→93%、クラレメディカル 15%→7%

付記

クラレメディカルは6月2日、同社の血液浄化事業の営業権を10月1日に川澄化学工業へ譲渡することについて基本合意したと発表した。

川澄化学は、プラスチックの成形加工技術を日本で最初に確立した先駆者として、プラスチックを採血・輸血医療に初めて実用化し、1回限りの使用で安全な今日のディスポーザブル医療機器をスタートさせた。
現在川澄化学は、血液に係わる医療機器・医薬品の専門メーカーとして、血液の採取・分離・保存・輸血から、血液の浄化、血管を通じての薬剤投与、血圧の監視、血管の診断・治療までの幅広い領域で高度な技術開発を続けている。

ーーー

2008年5月、延岡工場(旧A・Kメンブレン製造)のEVOH樹脂を用いた中空糸膜工場完成

2008年11月、延岡工場で新型ポリスルホン膜ドライタイプ人工腎臓の紡糸・組立一貫工場竣工

生産能力は 中空糸膜:600 万束/年、組立:550 万本/年で、
これで同社の能力は中空糸膜:3400万束/年、組立:約2,800 万本/年となった。


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昭和シェル石油は2010-14年度の5年間で太陽電池事業に約1600億円を投資する。工場新設などで期間中に生産能力を現在の8万キロワットから100万キロワットに増やす計画。

同社は5月26日、中期経営ビジョン「EPOCH 2010 ~変化に克ち、未来を拓く~」の概要を発表した。

国内での石油製品需要の漸減、海外市場での新規輸出型製油所の出現による国際競争の激化と、低炭素社会への動きという事業環境の変化を考慮して策定した。

それによると、中期経営目標・計画として2014年度にCCS ベースの経常利益目標1,000 億円とし、そのうち石油事業500 億円、太陽電池事業500 億円としている。

CCS ベース(Current cost of supply) とは棚卸資産の影響を除いたベースで、
2007年の経常損益は443億円
2008年は457億円となっている。
現在の経常損益を2倍にし、それを太陽電池で増やすという野心的な計画である。

中期経営ビジョンの柱は4つ。
 ① 石油事業の収益力強化

調達・製造・供給では、サウジアラムコ(同社に15%出資)からの最適な原油調達、シェルグループのトレーディングネットワークを活用した機動的な輸出、製油所の最適操業を通じてアジアトップレベルのコスト競争力の確立を目指す。

 ② 太陽電池事業の展開

グローバルシェア10%の獲得を目指す。

 ③ エネルギー&ホームソリューション事業の展開

石油製品、太陽電池に加え、東京ガスと共同で建設中の扇島パワーステーションで発電される電力を中核電源とした電力事業の確立、燃料転換を志向される需要家様のニーズに応えるLNGの供給拡大などを通じ、総合的なエネルギーソリューションの提供を目指す。

 ④ 成長の芽の育成

燃料電池、バイオ燃料、電気自動車関連、GTL燃料などの次世代エネルギーの技術開発にも取り組む。

 

太陽電池事業については、同社はシリコンを使わない「化合物型」の一種で、銅(Copper)、インジウム(Indium)、セレン(Selenium)を原料とする「CIS太陽電池」の商業生産を宮崎県内で手掛けている。

CIS太陽電池の特長は以下の4点。
1) 従来型の結晶シリコン系太陽電池とは異なる全く新しい構造の薄膜化合物系太陽電池。
2) シリコンを使用しないので、結晶系で危惧されている原料不足問題に影響されない。
3) 鉛やカドミウム(Cd)などの物質を使用していない環境対応型商品。
4) 外観は結晶系とは異なり、黒一色の落ち着いたデザイン。

現在、100%子会社である昭和シェルソーラーのCIS太陽電池宮崎第1プラント(年産能力20MW)が稼動しており、第2プラント(60MW)が本年4月22日に竣工式を行った。

同社は、既存80MWの能力に対し、2011年に年産1,000MW(1GW)規模の生産能力達成に向けて検討を行っている。

同社は昨年7月、CIS太陽電池技術開発の強化を目的として、厚木にリサーチセンターを設立するとともに、㈱アルバックと量産技術に関する共同開発を開始することを決定した。

昭和シェルが世界に先駆けて確立した独自のCIS太陽電池製造技術とアルバックがこれまで半導体、フラットパネルディスプレイで培ってきた真空装置技術を融合させることで、より生産能力の高い製造装置の開発を期待している。

本年4月、同社と日立製作所は、宮崎県にある日立のプラズマパネル工場を昭和シェルが買収することで両社が交渉に入ったことを明らかにした。日立はパナソニックからの調達に切り替えた。

昭和シェルは同工場を買収後、太陽光発電パネルの生産工場に転用する。

新井純社長は「太陽電池で世界シェア1割をめざし、石油と並ぶ中核事業に育成する」としている。

付記

昭和シェル石油は6月24日、15%の大株主であるサウジアラムコと、サウジアラビア王国内において太陽光を活用した小規模分散型発電事業の可能性の調査を開始することに合意したと発表した。

太陽光発電のパイロットプラントを建設し小規模独立型電力系統(マイクログリッド)への繋ぎ込みなどの技術検討を行い、この結果を受けて同国内での本格的な事業化へ移行する計画。

ーーー

新日本石油も、総合エネルギープロバイダーとして燃料電池、太陽電池、蓄電池等新エネルギー関連事業を次期事業の柱の一つと位置づけている。

ENEOSはエネルギーに責任を持ちたいと思っています。だからこそ、有限なエネルギーである石油だけでなく、無限で再生可能なエネルギーである太陽光にも取り組む-
総合エネルギー企業として当然の責務と考えています。」

新日本石油と三洋電機は、本年1月23日付で50/50の出資で薄膜太陽電池合弁会社「三洋ENEOSソーラー」を設立した。

新日本石油は薄膜シリコン太陽電池を安定調達し、国内大規模発電や公共産業向けの用途開拓ならびに住宅用途への投入を推進したいと考えていた。

三洋電機は、現在世界最高レベルのセル変換効率を実現するHIT太陽電池(結晶シリコン基板とアモルファスシリコン薄膜を用いて形成したハイブリッド型の太陽電池)を製造販売しているが、さらに薄膜シリコン太陽電池の技術開発も進めてきた。

三洋はHIT太陽電池に関しては今後とも単独での事業拡大を推進するが、薄膜太陽電池に関しては、新日本石油との共同出資会社設立を決めたもの。

新会社は、三洋電機のHIT太陽電池の要素技術や薄膜太陽電池の基礎技術、新日本石油の石油精製やガス原材料技術を強みとし、加えて新日本石油が持つ中東産油国との強い信頼関係を引き継ぐことで、早期の事業化および高性能な薄膜太陽電池の供給を進める。

新会社は、当初80MW規模で2010年度内の生産(三洋の岐阜事業所)・販売を開始した後、順次生産規模の拡大を図り、国内外を合わせ2015年度に1GW規模、2020年度には2GW規模の生産・販売を目指す。

なお、パナソニックが三洋電機を子会社化することが決まったが、パナソニックは2002年に住宅向け太陽光発電システムから撤退し、同社の弱点となっている。
このため、三洋が得意とする太陽光発電と充電池の両事業を合わせ、「五つ目の戦略事業」と位置づけている。

パナソニックの戦略事業
 デジタルAV事業-薄型テレビ事業
 生活快適実現事業:「エコライフ」「セキュリティ」「照明」「ヘルスケア」
 デバイス事業
 カーエレクトロニクス事業

 


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中国石油天然気(ペトロチャイナ)は5月24日、同社が、シンガポールのケッペルグループ(Keppel) からシンガポール石油(SPC)の45.51%の株式を全て買収することで合意したと発表した。1株 S$6.25(24%のプレミアム)で、買収総額は約10億2千万米ドルとなる。

買収完了後には、中国政府の承認を得た上で、SPCの残り全株式買収のオファーを行う。
Keppel と同じ株価で買収する計画で、その場合、Keppel分を含めた総買収金額は22億5千万米ドルとなる。

シンガポールのM&A法(Singapore Code on Take-overs and Mergers14条では、企業の株式30%以上を取得した者は残りの株式の買収を提案することが義務付けられている。

ペトロチャイナは残り株式買収の意図を持ち、Deutsche Bank に依頼して株主への公告を既に行っている。

 

SPCは豪州、中国、インドネシア、ベトナムで石油や天然ガスの開発などを展開している。



同社とChevron との50/50JVのシンガポール製油(Singapore Refining Company )はジュロン島に29万バレル/日の精製能力を持ち、ShellExxonMobil
と並びシンガポールの三大石油精製メーカーである。
SPCはまた、原油や燃油の港湾輸送や小売りなども行っている。
Pulau Sebarok220,000m3の貯蔵ターミナルを持つ。

最近の業績は以下の通り。(米ドル換算)

  2008 2007
Sales  768億ドル  605億ドル
Net Profit   1.6億ドル   3.6億ドル



ペトロチャイナによると、主な目的はダウンストリームの取得で、SPCはペトロチャイナが国際戦略を進めていくためのプラットホームとなる。

ペトロチャイナは石油精製ではシノペックに差を付けられており、中国南部で新設や拡張を行っている。
同社は既にシンガポールで活動しているが、製油所を手に入れることでvalue chain の統合が可能となった。

Keppelは政府系複合企業で(Temasek が出資)、海底石油掘削機器の世界最大のメーカー。
一時は
SPC77%を所有していたが、現在は45.51%を所有している。
SPCの残りの株主は名義は多数だが、実質は政府の
Temasek45.54%となっている。

今回の株式売却について、Keppel のCEOは、「過去10年にわたり、SPCを良質のエネルギー製品の供給者に育成し、かつ、石油開発・生産に上流展開してきた。今回の売却で株主価値を高めるチャンスを捉えた」としている。

ーーー

ペトロチャイナは昨年5月、新日本石油との間で、新日石子会社の新日本石油精製が保有する大阪製油所(115千バレル/日)を共同出資会社として運営することで合意した。同製油所を輸出特化型製油所に転換するため新会社を設立、ペトロチャイナが49%出資する。
当初は本年4月実施予定であったが、必要手続き等に時間を要し、6月以降となっている。


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2009年度鉄鉱石価格

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Rio Tinto は5月26日、子会社のHamersley Iron の新日鉄との豪州産鉄鉱石価格交渉が決着したと発表した。4月1日から適用される。

粉状鉱の価格を前年度比 33%値下げすることで合意した。世界的な景気後退による鋼材需要の減少を受けたもので、値下げは7年ぶり。BHPビリトンなど他の資源大手とも同程度で合意する見通しで、鉄鋼業界全体では3000億円程度のコスト軽減につながる。

価格推移(単位:cent/dry metric ton unit
  2007 2008 2009 2008 2007
Pilbara Blend Fines粉状鉱   80.42  144.66   97  -33%  +21%
Yandicoogina Fines粉状鉱   80.42  144.66   97  -33%  +21%
Pilbara Blend Lump塊状鉱  102.64  201.69  112  -44%   +9%

dry metric ton unit は含有鉄分1%当たりの鉄鉱石価格。
豪州産ヘマタイト系鉄鉱石には通常、鉄分
64%程度が含まれている。

 これで換算すると、粉状鉱の価格は実量ベースで、
  2007年 51.5ドル/トン
  2008年 92.6ドル/トン
  2009年 62.0ドル/トンとなる。

取引の大部分を占める粉状鉱でみると、昨年比では33%の値下がりだが、一昨年との対比ではまだ21%も高い。

昨年11月には、オーストラリア資源中堅のMount Gibson Iron が中国鉄鋼大手の首鋼集団と1トン当たり40米ドルで鉄鉱石(塊状、粉状とも)の売買契約を結んだと伝えられた。同社は数社から1012月期の出荷見合わせを要請され、11月に入って3社から契約破棄を通告されたという。

付記

中国鋼鉄工業協会や中国の鉄鋼会社にとっては受け入れがたい値段で、中国鋼鉄工業協会は緊急会議を開き、対策を協議している。

ーーー

原料炭については鉄鋼業界はBHP Billliton との間で、豪州の強粘結炭 Goonyella炭価格を2007年の98ドル/トンから2008年には300ドル/トンに上げたが、2009年度については3月に128ドル/トンとすることで合意している。(2003年度は46ドル)

鉄鉱石と原料炭の値下げを合わせると、業界全体で年間約9000億円程度のコスト軽減が見込めるとされている。
鋼材1トン当たりで1万5千円前後となる。新日鉄とトヨタは2009年度の鋼材価格交渉で1トン当たり約1万5千円の値下げで合意したと報じられている。


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Obama 大統領は217日、7,970億ドルの景気対策法案(Stimulus Plan)にサインした。

この中には、電池製造支援として、米国での先進的な電池や自動車用電池メーカーへの補助金として20億ドルが含まれている。
プラグイン ハイブリッドカーを2015年までに100万台にすることを狙ったもの。

2009/2/19 米国の景気対策法案成立、エネルギー・環境関連が多数

米国エネルギー省では、部品や電気自動車を含めた電池メーカー35社に与えるとしているが、このうち12億ドルをリチウムイオン電池などの自動車用の先進的な電池の製造工場を建設する企業に与えられる。

多くの企業がこれを狙って動いているが、更に各州が工場誘致を狙って動いている。
ミシガン州は同州に工場を建設するメーカー4社に各1億ドル(25百万ドルx 4年)の税額控除を決めた。(当初3社で、その後1社追加)

ーーー

ダウはリチウム電池の製造のため、韓国最大のリチウム電池メーカーKokam Engineering の米国子会社、及び投資会社のTownsend Ventures, LLC と SAIL Venture Partners と組んで、合弁会社 KD ABG MI, LLC を設立する予定。
(K
okam-Dow Advanced Battery Group から取った)

Kokam Engineering は1989年設立で、1998年にリチウムポリマー電池の開発を開始、1999年に生産を開始した。
2003年に電気自動車用の大型リチウムポリマー電池の開発を開始した。

ダウは5月14日、補助金を受けられるのを前提に、新会社の立地をミシガン州のMidland に決めたと発表した。
年間6万台のハイブリッド又は電気自動車用に電池を供給する。800人の雇用を考えている。

ミシガン州とは既に交渉済みで、同州は4月14日にJVを同州に工場を新設して税額控除を受ける4社のうちの1社になると発表している。

エネルギー省の決定は本年夏で、認められた場合、9月末には建設を開始し、2011年央には生産を開始する。

ーーー

ミシガン州が税額控除を認めたメーカーは、KD ABG MI, LLCのほか、次の3社。

1)A123 Systems

2001年にマサチューセッツ工科大学からスピンアウト。創業者MITの教授のYet-Ming ChiangGEが10%出資している。
リチウムイオンバッテリーの性能を向上させるナノスケール材料を開発した。

同社は最近、クライスラーとの間で新しい電気自動車用の電池販売の契約を締結した。

2)Johnson Controls-Saft

フランスのバッテリー関連会社のSaftと米Johnson Controlsの合弁会社。
フォードに電池を供給する。

3)LG Chem

LG化学は113日、「2010年に発売予定のGMの電気自動車シボレー・ボルト(Chevy Volt) に搭載されるリチウムイオン・ポリマー・バッテリーを供給する唯一の企業として選ばれた」と発表した。

LG化学はソウルの90km南方の梧倉(Ochang )に730百万ドルを投じて新工場を建設する。
GMは当初は電池の組立を
Compact Power に委託するが、ミシガン州の自社工場完成後は自社で行う。

2009/1/17 LG化学、GMに電気自動車用バッテリー独占供給へ


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台湾の石化メーカー6社が福建省の泉州市泉港区の泉港石化工業区に地元政府と組んで、エチレン年産100万トンの石油化学センター建設を計画していることが明らかになった。

福建省福州市で先週開かれた第11回海峡両岸経済貿易交易会で、台湾の台湾石化同業公会(石油化学工業協会)が明らかにした。

泉港石化工業区には仙境、南墾、洋嶼、Chlor Alkaliの4地区があるが、南墾地区が割り当てられた。

同石化センターは第1期として2.4平方キロの敷地に総額60億ドル(うちエチレン15億ドル)を投じて、エチレン100万トン規模のナフサ分解装置とポリプロピレン、エチレングリコール、スチレン、酢酸、合成ゴム、合成繊維など53品目のプロジェクトを推進する。売り上げ目標約700億元。

次の台湾メーカー6社が80%を出資する。

 和桐化学(Ho Tung Chemical   Normal paraffin, Alkyl Benzene, LAS などのメーカー
 大連化学(Dairen Chemical   VAM、エチルアセテート、1,4ブタンジオールなどのメーカー
 李長栄(Lee Chang Yung Chemical   DME、アセトアルデヒド、MIBKMEKPPなどのメーカー、
(台湾ポリプロをバゼルから買収)
 長春人造樹脂(Chang Chun Plastic)   フォルムアルデヒド、PVA、その他のメーカー
 國喬石油化学(Grand Pacific Petrochemical   SMABSなどのメーカー
 台湾合成ゴム(TSRC   SBRBRTPEのメーカー

主な誘導品計画は次の通り。
 PP 400千トン
 SM 500千トン
 MTBE 160千トン
 MEK 60千トン
 VAM 350千トン
 NBR 30千トン

これから中国及び台湾の政府の承認を得ることが必要。
これまで台湾プラスチックが中国政府の承認を受けられないままとなっているが、台湾石化同業公会では楽観的である。

2008/4/16  台湾プラスチック、寧波エチレン計画取り止めか

6社は現在、FSと環境アセスメントを実施中。

将来的にはエチレン年300万トン規模に増設する計画とされる。

泉州市は台湾に向かい合っており、泉港区にはExxonMobil/Saudi Aramco/Sinopec &Fujian Government Fujian Refining & Petrochemical が石油精製の増設(400万トン→1200万トン)とエチレン80万トンのコンプレックスの建設を行っている。

2006/4/7 中国のエチレン合弁会社ー2 の4.福建石化計画

 
   
 
 


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2006年のイグ・ノーベル賞(The Ig Nobelの平和賞に高周波雑音発生装置「Electromechanical Teenager Repellant」、通称「モスキート」を発明した英国のHoward Stapletonが選ばれた。

人間は年をとるに従い、高周波の音が聞き取れなくなる。「モスキート」はこれを利用して、若者しか聞き取れない高周波の雑音を発して、街にたむろするteenagerを追い払うための装置(repellant)として開発された。

2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞 

東京都足立区が本年5月21日から、区立北鹿浜公園に「モスキート音」と呼ばれる高周波音を流し、たむろして破壊行為などを繰り返す若者らを「退散」させる実験を始めた。

使われるのは、英国製の「モスキートMK4」という高周波音発生装置。5月中旬から来年3月までの予定で1台を試験設置し、午後11時から午前4時まで作動させる予定。

公園管理課では、近隣住民の声も聞きつつ慎重に実験する方針で、効果次第では、ほかの公園を含めた本格導入も検討する。


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LyondellBasell の業績

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LyondellBasell の連結財務諸表が発表されている。

Basell によるLyondell 買収に伴い、20071221日から旧 Lyondell の業績が加算され、2008年の売上高は急増した。

Sales (百万ドル)
  2008 2007 増減 2006
Fuels  17,370 478 16,892 0
Chemicals 15,208 2,700  12,508 1,341
Polymers 17,693  13,618 4,075  11,495
Technology & R&D 434 363 71 339
Other 1 -39 40 0
Total 50,706 17,120 33,586 13,175

LyondellBasell のセグメントの内容は以下の通り。

Fuels gasolineultra-low sulfur dieseljet fuelaromaticslubricantsnaphthaVGOLPGbitumenheating oilMTBEETBEalkylate
Chemicals ethylenepropylenebutadienearomatics
EGEOEO derivativesethanol
VAM
acetic acidmethanol
PO
SM、TBAisobutylene
PG
PG ethers、butanediol
fragrance
flavors chemicals
* TDI
事業は2008/9/1に売却(中止事業に含む)
    2008/3/31 
Rhodia Lyondell、イソシアネート事業売却
Polymers HDPELDPELLDPEPP
PP-based compounds, materials and alloys ("PCMAs")
Catalloy process resins
polybutene-I polymers
Technology and R&D licensing of polyolefins process technologies
supply of polyolefin catalysts and advanced catalysts

損益面では需要減や売価値下がりなどのほか、在庫評価減とノレン償却があり、営業損益では59億ドルの赤字(前年比69億ドルの悪化)、当期純損益では73億ドルの赤字となった。

2008年の営業損益には以下を含む。
 ノレン償却  4,982 百万ドル(うち
Lyondell買収 4,921百万ドル)
 減損損失   
218百万ドル(2008/4 Shell から買収の Berre refinery の設備)
 在庫評価減 
1,256百万ドル

ノレン償却等を除外すると、前年比17億ドルの採算悪化となり、在庫評価減を除いても4億ドルの採算悪化となっている。

Operating Income (百万ドル)
  2008  減損損失 一般損益 2007

一般増減

2006
 ノレン   他
Fuels -2,708  -2,305  -218  -185 20 -205  0
Chemicals -2,774  -2,384   -7  -383 166 -549  138
Polymers -507   -293    -214 850 -1,064  517
Technology & R&D 202      202 152 50 123
Other -141      -141 -254 113 -48
Total -5,928  -4,982  -225  -721 934 -1,655  730
 

このほか、借入金の増加により、支払利息が21億ドルも増えており、当期損失の大きな要因となっている。
2008年末の長期借入金の残高は 23,195百万ドル(約 2.2兆円)となっている。
(金利支払不能で、ほぼ全額が期限の利益を失い、短期借入金に計上されている。)

連結損益計算書 (百万ドル)

  2008 2007  増減 2006
Sales and other operating revenues:        
Trade  49,903  16,168  33,735  12,364
Related parties 803 952 -149 811
  50,706 17,120 33,586 13,175
Operating costs and expenses:        
Cost of sales 48,780 15,196 33,584 11,746
Inventory valuation adjustment 1,256   1,256  
Impairments:        
   Goodwill 4,982   4,982  
   Other 225 20 205 42
Other Selling, general and administrative expenses 1,197 740 457 525
Research and development expenses 194 135 59 132
Purchased in-process research and development   95 -95  
  56,634 16,186 40,448 12,445
         
Operating income (loss) -5,928 934 -6,862 730
         
Interest expense -2,476 -353 -2,123 -332
Interest income 69 70 -1 70
Other income, net 113 127 -14 32
Income from equity investments 38 162 -124 130
Income (loss)  before income taxes -8,184 940 -9,124 630
         
Provision for (benefit from) income taxes -848 279 -1,127 234
Income (loss) from continuing operations -7,336 661 -7,997 396
Income from discontinued operations, net of tax 15   15  
Net income (loss) -7,321 661 -7,982 396
 

ーーー

同社は1月6日、破産法 Chapter 11 (民事再生法)の申請を行った。

2009/1/7 LyondellBasellChapter 11 申請

2009/4/27 LyondellBasell、親会社も米国の民事再生法対象に追加

 


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韓国公正取引委員会(KFTC)は2009年5月18日、マリンホースのメーカー4社にカルテルに参加したとして排除命令と557百万ウオンの課徴金支払命令を出したと発表した。

参考 2008/12/12 マリンホース国際カルテル事件で日本人に有罪判決

横浜ゴムもカルテルに参加したが、KFTCにカルテル情報を報告したため、leniency programに基づき課徴金を免除された。

なお、Manuli Rubber は韓国でのビッドに参加していないため、対象にならなかった。

課徴金は以下の通り。

    百万 KRW  千USD  
Bridgestone Corporation Japan  319  (256.6)  
Dunlop Oil & Marine UK  146  (117.4)  
Trelleborg Industrie SAS France  50  ( 40.2)  
Parker ITR S.r.l. Italy  42  ( 33.7)  
Yokohama Rubber Japan    ー   ー leniency
Manuli Rubber Italy    ー   ー 韓国でビッドに不参加
Total    557  (447.9)  

KFTCは2005年に課徴金を売上高の5%から10%に引き上げた。

2008年3月、KFTCは国際カルテルのみを担当する新しい部門を設置した。

2008年12月にはインドネシア、タイ、シンガポール、中国の製紙メーカー4社に対し、韓国を含むアジア太平洋地域数カ国でコピー用紙のカルテル行為を行ったとして、総額3,988百万KRW(2,922千ドル)の課徴金を課している。4社は韓国で販売されるコピー用紙の56%を占める。

これは過去5年で最初の国際カルテルで、その以前には、2例がある。

・2002年の黒鉛電極カルテル
  UCAR International (米)、SGL Carbon (独)、昭和電工、東海カーボン、日本カーボン、SEC(日本)

・2003年のビタミンカルテル
  Hoffmann La-Roche(スイス)、BASF(独)、Aventis (仏)、Solvay(蘭)、エーザイ、第一製薬


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LyondellBasell はロシアの億万長者 Len Blavatnik の所有するNew York-based Access Industries が株主だが、このたび、ドイツの投資家 Andreas Heeschen ProChemie Holding Ltd が加わることとなった。

ProChemie Holding Access Industries 50/50出資でドイツに ProChemie GmbH を設立し、これがLyondellBasell の株主となる。
取引の詳細は発表されていない。

両株主はLyondellBasell のリストラを支援する。今回の措置はLyondellBasell の運営や、民事再生法(Chapter 11 処理には影響を与えないとしている。

参考 2009/4/27 LyondellBasell、親会社も米国の民事再生法対象に追加

Andreas Heeschen は武器メーカーのHeckler & Koch の主オーナー。
彼は化学分野に関心を持っているという。


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公正取引委員会は521日、ポリプロカルテル事件で住友化学とトクヤマに対し、審判の結果、519日に課徴金納付を命ずる審決を行ったと発表した。

課徴金は以下の通りで、昨年6月の納付命令とほぼ同金額。
 住友化学 1億1716万円
 トクヤマ     4779万円

 納付期限 7月21日

ーーー

2000年5月30日にポリプロピレンのカルテルで7社に公取委の立入検査が入った。

公取委は2001年5月30日に7社に対し排除命令を出した。
7社のうち
社は課徴金を支払ったが、社は2007年8月の審決に対して東京高裁に審決取消訴訟を提起し、まだ争っている。

公取委は2008年6月20日付けで、4社に対し課徴金納付命令を出した。
(通常はメーカーが審決を受諾した後で課徴金納付命令を出す。)

2007/8/11 PPカルテル審決 付記

メーカー側は控訴中のため、審判手続の開始請求を行い、公正取引委員会は8月29日、審判開始を発表した。

住友化学とトクヤマの2社については、本年2月に第3回審判で審判手続が終結、3月に審決案が送達され、2社は審決案に対する異議の申立てを行ったが、異議を受け入れず、課徴金の納付を命ずる審決が行われた。

両社は、本件違反行為をしたことはなく,本案審決の認定は事実無根であると主張した。

公取委は、本件は改正前の独禁法が適用されるが、それによれば、公取委の審判審決において既に認定されている被審人の一定の違反行為について、課徴金に係る審判手続の段階で公取委における審理や認定判断をもう一度行うというようなことは、予定していないものと解される。
このため、被審人らが本件審判手続において本件違反行為の不存在を改めて主張することはできないと解するのが相当であるとした。

出光興産、サンアロマーについては審判が係属中。

4社は審決そのものに対して東京高裁に控訴しており、まだ結論が出ていない。
結論が出る前に納付期限が来れば、どうするのだろう。


各社の課徴金は以下の通り。(
青字が確定分)

  課徴金命令 審判課徴金 08/6 納付命令 今回の納付審決
三井化学(グランドポリマー)  7億6008万円      
日本ポリケム  8億4517万円  2億2087万円    
チッソ  4億3513万円  1億1662万円    
住友化学   1億1716万円  1億1716万円(審決取消訴訟中)
出光興産        1億4215万円   審判係属中 (審決取消訴訟中)
サンアロマー         5097万円   審判係属中 (審決取消訴訟中)
トクヤマ         4781万円     4779万円(審決取消訴訟中)

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韓国LG Chem の業績

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韓国LG Chem の連結損益の発表があった。

結果は下記の通りで、石油化学の営業損益は前年比若干の減益だが、黒字(2006年比では大幅増益)となっており、情報&電子材料は大幅増益となった。

世界中の化学会社が減益となっているなかで、大健闘である。

連結売上高及び営業損益 (単位:百万ウォン)   注:百万ウオンは約75,000円
2008 2007 増減 2006
売上高 石油化学  12,669,516  11,056,970  1,612,546   9,210,971
工業材料・建材    ー    ー   ー   2,143,132
情報&電子材料   2,940,773   2,294,369   646,404   1,859,971
その他    728,236    986,727   -258,491   1,760,755
調整  -1,783,643  -2,924,110  1,140,467  -3,543,315
合計  14,554,882  11,413,956  3,140,926  11,431,514
営業損益 石油化学    885,209    932,425   -47,216    515,560
工業材料・建材    ー    ー   ー    124,275
情報&電子材料    470,065    166,153   303,912    41,669
その他    -19,072    -17,838    -1,234     4,885
調整    -15,079    -15,135      56    -12,290
合計   1,321,123   1,065,605   255,518    674,099
継続事業税引後損益    917,699    755,585   162,114    460,110
中止事業税引後損益    68,309    80,288   -11,979     -2,068
税引後損益合計    986,008    835,873   150,135    458,042

石油化学では特にオキソアルコールの需要が伸び、またPVCや合成ゴムも好調であった。
2008年9月に高吸水性樹脂(SAP)事業(能力70千トン)を
Kolon Industries から買収し、アクリル酸事業と一体化した。

情報&電子材料ではバッテリーの需要家の拡大、偏光板のコストダウン、生産性上昇で増収、増益(単体で利益3倍)となった。

2009/1/17 LG化学、GMに電気自動車用バッテリー独占供給へ

中国のビニルチェーン、エンプラ、情報&電子材料は黒字となっている。(ABSは赤字) 

増収増益の理由の一つはウオン安で、2008年の8月頃まで1000ウオン/$であったのが、金融危機後は暴落し、一時は1519ウオンまで下がった。年末は1266ウオン。
(その後は
1570ウオンまで下がったが、520日現在は1248ウオンとなっている。)

付記
LG経済研究院は5月10日、「最近のグローバル企業と韓国企業の経営成果比較」と題する報告書で、「昨年韓国企業が相当に良好な実績を見せたが、ドル基準では米国や日本、ユーロゾーンの企業に比べ不振だった」と分析した。

連結会社の税引後損益は以下の通り(単位:百万ウオン、参考に円換算を付記した)。

2008 2007 増減
百万円
LG Chem  1,002,585  75,194   686,205
LG Petrochemical   247,141
(LG Chem total)  1,002,585  75,194   933,346   69,239
LG Dow Polycarbonate PC   -23,698  -1,777    -8,813   -14,885
Tianjin LG Bohai Chemical VCM    3,189    239      151    3,038
Tianjin LG Dagu Chemical PVC    -2,365   -177     7,722   -10,087
Tianjin LG New Building Materials PVCドア材ほか    3,120    234     4,617   -1,497
Ningbo LG Yongxing Chemical ABS   -23,555  -1,767    55,236   -78,791
LG India PS     -847    -64     3,447   -4,294
LG Vina Chemical J/V DOP    -3,198   -240     2,233   -5,431
LG Chemical (Guangzhou)
Engineering Plastics
Engineering
Plastics
   3,036    228     3,508    -472
LG Chem (Tianjin) Engineering Plastics Engineering
Plastics
   3,682    276     1,806    1,876
LG Chem (Nanjing) Information &
Electronics Materials
LCD display
Battery
   15,671   1,175     6,228    9,443
LG Chem (Taiwan) LCD display    -2,462   -185    -1,764    -698
LG Chem Display Materials (Beijing) LCD display    1,518    114     1,541     -23
LG Chem Poland LCD display    -1,904   -143     2,592   -4,496
LG Chem Industrial Materials 人造大理石    4,182    314    -1,414    5,596
LG Chem (China) Investment 中国持株会社     -711    -53     1,128   -1,839
LG Chemical Hong Kong 商事     216    16      814    -598
LG Chem America 商事     -837    -63    -1,549     712
LG Surfaces 商事    3,879    291     5,311   -1,432
LG Chem Europe 商事     889    67      324     565
調整    3,618    271   -180,591  184,209
Total   986,008  73,951   835,873  150,135

LG Chem は昨年12月1日、工業材料・建材部門を本年3月末までにスピンオフすると発表した。

石油化学と工業材料・建材では企業カルチャーや需要家が異なるため。
2009年4月1日付けで分離され、LG Hausys という名前の会社となった。

同社の扱い製品は以下の通り。
 Industrial textiles for floorings and other applications
 Decorative materials for kitchens, offices and home appliances
 Housing materials including window frames, PVC floorings and others
 Automotive components
  (interior and exterior components, bumper systems, engine parts, plastic fuel tanks, and steering wheels)

決算では「中止事業」扱いとし、この部門の業績を全社の売上高、営業損益から除外し、最終税引後損益で加算している。

ーーー

2009年第1四半期の業績も好調で、前年同期比で増収増益となっている。

  Q1 2009 Q1 2008 増減
Sales 2.93 trln 2.99 -0.06
Operating Profit 416.5 billion 340.2 76.3
Net Profit 288.5 billion 258.4 30.1


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ダウは511日、子会社のDow Europe が合成ゴム事業の売却を検討していると発表した。
J.P. Morgan を財務アドバイザーに起用した。

この事業自体は儲かっているが、事業の効率化のためとしている。

同社の合成ゴム事業は、以前の東ドイツの合成ゴムメーカーの統合でできたBuna Sow Leuna Olefinverbund (BSL) の事業で、1996年にダウがBR/ESBRの販売を受託し、19979月にBSL80%を買収、20006月に残り20%をドイツ政府から買収した。

Schkopau 工場をもち、SBR ポリブタジエンゴム (PBR)Lithium Lo Cis ポリブタジエンゴム (Li-PBR)nickel Ziegler-Natta 触媒 Hi Cis ポリブタジエンゴム (Ni-PBR)、エマルジョンSBR (ESBR) 溶液重合SBRSSBR) を製造販売している。

本年3月に年産6万トンの新しい溶液重合SBR (S-SBR)プラントが商業生産を開始した。

2007年6月、JSRDow Europe からこのS-SBRの能力の50%3万トンの引取権を取得している。

JSRは、2003年以降、欧州にてDOWとの間でS-SBRの生産委託を行なってきたが、さらに引取権を取得することにより、JSRの先端技術による高品質の製品の供給を拡大し、S-SBR市場におけるJSRのポジションをグローバルに強化することを狙った。

同社ではEUで2012年には、自動車の二酸化炭素排出規制が強化される予定で、さらなる低燃費化の必要から省燃費タイヤ用途でS-SBRへの ニーズが一層高まると見込んでいる。

JSRは引取権を有しているため、他社に事業が売却されても、影響はないと思われるが、相手次第だろう。
それとも、JSR が買収?

ーーー

ダウはほかに、オランダとフランスに工場を持っていた。

同社は1999年にシェルから、オランダ(Pernis のエマルジョンSBRプラントとフランス(Berre cobalt-ポリブタジエンゴム(Co-PBR)プラントを買収した。

同社は2004年初めにPernis の工場を停止した。Berre の工場についても20083月に停止を決めた。

ーーー

ダウはまた、独自のINSITE 技術によるメタロセンEPDM Nordel®)を持っている。

同社は1996年4月にDuPont と50/50JVの DuPont Dow Elastomers を設立し、これもJVに移管した。

しかし、ダウは2005年1月、EPDMや同じくINSITE 技術によるポリオレフィンエラストマー(Engage®)、塩素化ポリエチレン(Tyrin®)などをJVから引き取るオプションを選んだ。

これらは現在、ダウのエラストマー部門に属するが、これについては今後も維持する。

なお、DuPont Dow Elastomers DuPont がダウの持分を買取り、DuPont Performance Elastomers と改称した。

 

ーーー

付記

ダウは5月20日、2つの事業の売却が決まったと発表した。

1)塩化カルシウム事業:210百万ドルで
2)
Total Raffinaderij Nederland N.V. のダウの持分(45%)Valero Energy 725百万ドルで.


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米商務省は5月19日、4月の住宅着工件数を発表した。

季節調整済みの年率換算で458千戸となり、1月の(1959年の統計開始以来の)過去最低(488千戸)を更新した。
但し、5室以上の集合住宅の減少が大きく、主力の1戸建は増加している。


米国 住宅着工件数推移(季節調整済み年換算:千戸)

  2008 2009 前月比 前年同月比     2009 
1戸建 5室以上
集合住宅
1  1,064   488  -12.5%  -54.1%   357   118
2  1,107   574  +17.6%  -48.1%   357   204
3   988   525  - 8.5%  -46.9%   358   135
4  1,004   458  -12.8%   -54.4%   368    78
5   982          
6  1,089          
7   949          
8   854          
9   824          
10   767          
11   655          
12   558          
年合計   905.5          

注) 数値は過去2ヶ月分を常時見直している。
   このため、本年2月及び3月は前回発表から変わっている。

   なお、不思議なことに、今回の発表統計では昨年以前の月別数字が全て変更されている。(年計は変わらず)
   理由不明のため、上の表では昨年数字は従来の発表のままとした。


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2009年3月度決算対比

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2009年3月度決算発表がほぼ終わった。

化学関係(医薬を除く)各社の対比は以下の通り。
各社の詳細は既報。

営業損益で、これら各社は全社減益となった。(協和発酵キリンは2008/4発足で、前年は協和発酵)
石油化学関係、IT 材料関係のダウンが大きい。

当期損益は減損損失や有価証券評価損など多額の特別損失を計上し、大幅減益となり、赤字となった企業が多い。
住友化学と三井化学は繰延税金資産を一部取り崩している。

減益ではあるが減益幅の小さい信越化学は、年間配当を前年の90円から100円に増配した。

ーーー

医薬会社の損益は以下の通り。

武田薬品は当期に、TAP Pharmaceutical の会社分割、吸収、及びMillennium 買収に伴う特殊整理を含んでおり、実質は増益。
第一三共も
当期にRanbaxy買収の影響を含むが、これを除いても減益。
エーザイは前期、当期にMGI Pharma 買収に伴う特殊整理を含んでおり、実質は若干の増益。
田辺三菱製薬は前年上期は三菱ウェルファーマ分で、実質は若干の減益。

第一三共は買収したRanbaxyの株価低迷で、特別損失に「のれん償却」 3544億円を計上した。

 


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5月16日付の日本経済新聞は、三菱化学と旭化成が水島コンビナートでエチレン事業を統合することで基本合意したと報じた。
三菱化学は「具体的に決まった事実はない」としている。

両社の工場は隣接しており、原料ナフサ等を三菱化学に供給する新日本石油(旧三菱石油)と、旭化成に供給する新日鉱ホールディングス(ジャパンエナジー)は、2009年10月に共同持ち株会社を設立して両社を傘下に入れ、2010年4月に完全統合することを決めている。

2008/12/8 新日本石油と新日鉱ホールディングス、経営統合

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ーーー

水島には三菱化学は450千トン、旭化成(山陽石油化学)は443千トンのエチレン設備を有している。(2007年末時点、定修年)

両社はJVか、又は有限責任事業組合(
LLP)を設立し、エチレン設備を一体運営する。
その後、いずれか
1基を停止し、残る1基の能力を5割程度増強する。(能力合計89万トン→60万トン)

LLP制度は、企業間の連携や共同事業促進を目的として2005年に導入された。
出資比率と異なる損益配分が可能で、利益はLLPの出資者に課税される。

三菱化学は子会社ヴイテックのVCMの停止を決めているが、これにより(フルベースで)20万トン弱のエチレン需要が無くなることになる。このほか、ポリオレフィン等の需要の減少もあるため、需要に合わせた能力にする。

将来的には他の誘導品の共同生産や、三菱化学の鹿島の設備も共同事業体に加える考えもあるという。

三菱化学は鹿島に375千トンと476千トン(事故の8号炉を除くと453千トン)の2基のエチレンを有している。
四日市のエチレン(301千トン)は20011月に停止した。

水島地区の能力                 2007/12/末能力(千トン)
旭化成            三菱化学
自社 日本
ポリエチレン
日本
ポリプロ
PS
ジャパン
ヴィテック ダイヤ
ニトリックス
エチレン 定修年  443  450
(スキップ年)  (504)  (496)
PE LDPE  120  66
LLDPE  53
HDPE  163  94
合計  283  213
PP  100
SM  678
PS  108*
ABS  80
VCM  391*
ANM  243  111
                    * VCMは停止決定、PSは停止?

ーーー

当初、三菱化学(当時は三菱化成)と旭化成は水島のそれぞれのエチレンに相互乗り入れをしていた。

19672月、石油化学協調懇談会は 「エチレン製造設備の新設の場合の基準」を決め、年産30万トン以上とするとともに、1971年の需要を246万トンと見込み、操業率を85%とした生産能力を289万トンとして、既認可分190万トンを差し引いた99万トンを、新規増設分として認めることとした。

これを受けて各社が申請した計画は9計画・10プラント合計 300万トンに及んだ。
このため、三菱化成と旭化成は輪番投資を決めた。

1968年に旭化成 60%/日本鉱業 40%で山陽石油化学を設立、輪番投資のため、三菱化成と山陽石化が、ともに50/50出資で、水島エチレン(三菱化成内=先番)と山陽エチレン(山陽石化内=後番)を設立した。

2006/9/22  エチレン業界の変遷-1 エチレン30万トン計画

両社はその後も相互乗り入れで運営を続けたが、1994101日の三菱化学の発足に際し、同年7月に株式交換を行い、解消した。

合併の事前審査を通じて公正取引委員会から“物言い”がついたのも一因で、日本最大の化学メーカーとなる三菱化学がエチレン事業分野で旭化成と資本関係にあることが問題視された。こうした指摘に対し「それならこの際、すっきりさせよう、と資本提携解消となった」という。

しかし、25年も前の輪番投資のための相互乗り入れを単に続けていただけで、実際の必要性はなく、鹿島、四日市のエチレンを持つ三菱油化との合併で、「あくまでも国際競争力のあるコンビナートに再構築する必要に迫られたから」(三菱化成幹部)ということであろう。

水島エチレンは三菱化学発足時に吸収合併した。
山陽エチレンは
1995年4月に山陽石化が吸収合併、2001年にその山陽石化を旭化成が100%子会社にしている。

今回、公取委がこれを認めない理由は考え難い。

ーーー

三井化学と出光興産は5月11日、両社の強みを活かした「千葉地区における生産最適化」の検討開始で合意したと発表している。

2009/5/18 三井化学、事業構造改革を実施、千葉地区で出光興産と生産最適化検討  


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三井化学は5月12日、経営概況説明会を開き、2009年3月期の業績の説明とともに、事業構造改革の説明を行った。

事業戦略見直しの基本方針は、国内での勝ち残り、海外(特にアジア)での事業拡大で、内容は以下の通り。

  国内 ①千葉地区における出光興産との生産最適化
      ②体質改善のための設備統廃合の推進
      ③景気変動の影響を受けがたい事業の強化・拡大の加速
      ④機能フィルム・シート事業の強化・拡大

  海外 ①Sinopecとの提携による中国事業拡大
      ②ベトナム・ニソン計画参加

ーーー

出光興産との生産最適化

三井化学と出光興産は5月11日、出光興産・三井化学の強みを活かした「千葉地区における生産最適化」の検討開始で合意したと発表した。

            -----

三井化学は住友化学との経営統合計画の解消後、2004年2月に同じ千葉にコンビナートを持つ出光興産/出光石油化学と包括提携で基本合意した。 原料・留分から石化製品、また、工場基盤・業務を含めた幅広い領域にわたり、石油精製と石油化学という業種や企業の枠を超えた業務提携の検討を進め、千葉地区コンビナートの国際競争力の強化を目指すこととした。

200411 月、三井化学と出光興産は包括提携の一環として、千葉地区へ輸入するナフサを大型タンカーを使い共同輸送すると発表した。

20045月、三井化学/出光興産/出光石油化学は三井化学と出光石化のポリオレフィン事業の統合を発表した。
統合会社プライムポリマーは三井化学 65%/出光興産 35%で設立され、2005年4月に営業を開始した。
(出光石油化学は2004年8月に出光興産が吸収合併した。)

最近ではコンビナートナフサ供給連携事業の実施を決めている。

2009/4/11  平成21年度 コンビナート連携石油安定供給対策事業

今回、両社は以下を検討する。半年から1年程度の期間で詳細検討を進め、段階で有限責任事業組合(LLP)設立等により、最適体制を発足させる。
 1. 両社ナフサクラッカーを中心とした生産最適化
 2. 出光・千葉製油所のリファイナリー装置も含めた生産最適化
 3. 既に両社でJVとして運営している、ポリオレフィン・フェノール以外の両社石化誘導品の生産最適化

ポリオレフィンは上記のプライムポリマー
フェノールは出光興産内の千葉フェノール(三井 55%
/出光 45%)
  (フェノール能力 200千トン、アセトン能力 60千トン)

 4. 生産最適化にあたっては、有限責任事業組合(LLP)制度の活用を検討

これにより、
1. ナフサクラッカーを中心とした最適生産体制の構築、精製・石化のインテグレーションによる国内トップクラスの競争力の実現
2. 石化誘導品におけるリファイナリー留分の更なる有効活用等による競争力の強化
を狙う。

千葉地区コンビナートには、4つの製油所(83万バレルの製油能力=国内の2割)、5つのエチレンセンター(エチレン能力 247万トン=国内の3割)がある。

同社では三井・出光の生産最適化により、
・合計能力100万トン、売上規模2000億円の競争力のあるナフサクラッカーの一体的体制構築
・「クラッカーを中心にした石油精製~石化誘導品の生産最適化」という国内初のビジネスモデルにより、国内最強の競争力が実現するとしている。

これは三井と出光の千葉地区だけでの「生産最適化」の検討であって、両社の合併の検討ではなく、最適化のメリットをどのように分け合うかが問題となろう。

ーーー

③景気変動の影響を受けがたい事業の強化・拡大の加速

農業化学品事業の早期規模拡大を目指す。

同社は2007年3月に第一三共から三共アグロを買収した。三共アグロは事前に三共ライフテックからアメニケア事業(防蟻剤、防疫剤)を譲り受けた。

三井化学は2009年4月に農業化学品事業を会社分割して三共アグロに承継させ、原体事業と製剤事業を一体化し、三井化学アグロに改称した。

④機能フィルム・シート事業の強化・拡大

第一ステップとして、東セロを核とする機能フィルム・シート事業の再編・集約を行う。

ーーー

海外計画は以下の通り。

①Sinopecとの提携による中国事業拡大

三井化学は 4月15日、シノペックとの間で協力関係拡大の覚書を締結した。

両社は2006年4月に折半出資により、ビスフェノールA合弁会社「上海中石化三井化工有限公司」を設立し、本年1月に年産12万トンのプラントを稼動し、順調に推移している。

今回、両社が合意した主な内容は、以下の通り。
・フェノール/アセトン、ビスフェノールA及びその誘導品(例えばMIBK)等の協力関係について検討すること
   フェノール、MIBKはFS中で、他にEPT等の機能製品を検討している。

・以下の事項に関し協力の可能性を検討すること
 a) 技術交流並びに共同研究開発
 b) その他のプロジェクト合弁
 c) エンジニアリングサービス

なお、前日の4月14日に、三菱化学とシノペックは、相互の技術、原料、市場における優位性を活かし両社の提携をより一層強化して事業を拡大加速することを目的とする戦略提携パートナー関係を確立するための基本合意に至ったと発表している。

2009/4/15 三菱化学、シノペックと事業戦略提携の基本合意

②ベトナム・ニソン計画参加

出光興産と三井化学は3月27日、クウェート国際石油(KPI)・ペトロベトナム(PVN)と、「ベトナムニソン製油所・石油化学コンプレックス」の建設に向けて、装置の詳細設計や経済性、資金調達方法などを検討する合弁会社「ニソン精製有限責任会社(仮称)」に参加することを決定したと発表した。

合弁会社の概要
(1)会社名 (仮称)ニソン精製有限責任会社
        <英文名:Nghi Son Refinery & Petrochemical Limited Liability Company>
(2)所在地ベトナム社会主義共和国タインホア省ニソン経済区
(3)設立 2008年6月投資ライセンス取得後設立
(4)資本金 2億米ドル(約200億円)
(5)出資比率 出光 35.1%、
クウェート国営石油 35.1%、PVN 25.2%、三井 4.7%
(6)精製能力 日量20万バレル
(7)建設費用 約58億米ドル(約5,800億円)

合弁会社設立後、2年間かけて装置の基本設計や経済性、資金調達方法などを検討し、建設移行の場合は2013年末の操業開始を目指す。

三井化学は出資によりアロマ原料を安定的に調達することにより、PTAおよびフェノール事業の安定化と収益拡大につなげるとしている。

 


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金融危機の影響で開発資金獲得に苦しむ豪州の2つのレアアースのメーカーに中国企業が相次いで出資する。

1.Arafura Resources

豪州のNorthern TerritoryのNolans Bore レアアース・リン・ウラン鉱床の権益100%を保有するArafura Resources は、429中国の資源開発グループである有色金属華東地質探査局( East China Exploration & Development Bureau )から25%(24百万ドル)の出資を受け入れる正式契約に調印した。

昨秋以降の金融危機の影響で開発資金の調達難に陥り、プロジェクトを継続するには、中国資本を受け入れるしかなかった。
資金はNolans Bore鉱床のレアアース開発に使用する。

同鉱床は1995年に発見され、1999年にNorsk Hydroが露頭サンプリング・分析を実施している。2000年にArafra 社が権益を取得、資源量確認ボーリングを実施中。

有色金属華東地質探査局はまた、Arafura Northern TerritoryJervois 鉄/バナジウム計画にも51%(800万ドル)を出資する覚書を締結した。

2. Lynas Corp

西豪州にあるレアアース鉱 Mt Weld 鉱を開発する Lynas Corp. はこのたび、中国の国有非鉄大手、中国有色鉱業集団(China Nonferrous Metal Mining Co.)から252百万豪ドルの出資(マジョリティ)を受け入れることを決めた。

認可を待って、新株を発行する。出資に加え、有色鉱業集団はLynas に対し、中国の銀行からの104百万米ドルと80百万米ドルの2つの借入契約に保証を与える。

これによりLynas は合計で522百万豪ドルの資金を得るが、このうち、286百万豪ドルがMt Weld 鉱の開発の第一段階に使われる。

Lynas も開発資金に苦しんでいたが、中国からの提携申し入れを断っていた。
これからのレアアース資源開発では、「中国と繋がっていないことが重要」だと認識、「自分たちは中国と提携する意思はない」としていた。

しかし、95百万ドルの開発資金の供給契約を結んでいたヘッジファンドが、昨秋以降の金融危機と資源価格の暴落の影響などにより資金供給を拒否したため、2月10日にMt Weld 鉱の開発計画の中断を発表した。

豪、マレーシア、日本などの政府系機関や需要家などに支援を要請したが、日本の需要家も支援に慎重で、万策尽きて、中国に依存することとなった。

ーーー

Lynasは、1983年にYilgangi Gold NLとして設立され、1985年にLynas Gold NLに改称し、西オーストラリア州Pilbara地域で金探鉱を行っていたが、2001年6月、金プロジェクトを売却し、社名をLynas Corporation に変更、2002年5月にMt.Weld 鉱床の権益100%を取得し、同鉱床の探鉱開発に集中していった。

Mt.Weld 鉱の鉱物資源量は、770万t、酸化レアアース品位12%となっている。
(精測鉱物資源量120万t :品位15.7%、概測鉱物資源量500万t :品位11.8%、予測鉱物資源量150万t :品位9.9%)

同社はMt.Weld プロジェクトのコスト削減のため、中国山東省にレアアース分離プラントの建設を計画した。

しかし、2006年に入って、レアアース産業に対する生産抑制、輸出制限、増価税リベート見直し、環境規制など中国政府による締め付けが強くなったことから、同社は中国でのレアアース分離プラント建設を断念し、マレーシア東海岸PahangKuantan Gebeng Industrial Area にプラントを建設することとした。 

計画では酸化レアアースの生産量を当初年間5千トン、将来21千トンとしている。

Mt.Weld レアアース鉱床からレアアース鉱物(モナザイト等)を採掘、西オーストラリア州南部のEsperance 港からマレーシアへ海上輸送、分離・精製し、更に最終消費者の要求にあったレアアース製品とした後、米国・欧州・日本などへ販売する。

ーーー

レアアースは中国の生産量が世界の96%を占めている。

中国のレアアースの過度な開発問題について、全国人民代表大会(全人代)代表の周洪宇氏が全人代に提出した「レアアース生産・輸出の厳格な規制を求める建議」が、中国で幅広い注目を集めている。

氏は「3年以内に、レアアースの輸出量を現在の10万トン前後から2、3万トン前後に減らし、レアアース金属の高利潤と持続可能な発展維持に向け、中国は長期的なレアアースの価格決定権を確保しなければならない」と強調している。

2009/4/22 中国がレアアースの輸出を制限?

ーーー

中国国土資源部は57資源保護のため、2009年のタングステン、アンチモニー、レアアースの生産量を下記の通りに制限すると発表した。

タングステン鉱  68,555トン
アンチモニー鉱 90,180トン
レアアース鉱   82,320トン

国土資源部ではまた、これら3の資源に関しては2010630までは、新しい掘削ライセンスの申請を受け付けない。

ーーー

このため、日本のレアアース需要家は中国以外にソースを求めつつある。

Mt.Weldでの採掘、マレーシアでの精錬の計画は、完全に中国の影響を排除できる「脱中国」プロジェクトとして日本の需要家も注目していた。

しかし、豪州メーカーの中国資本の受け入れに、日本企業関係者は「中国とは関係ないプロジェクトだから価値があるのに、中国の出資を受け入れたら何の魅力もない」としている。

 


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武田薬品工業、第一三共、アステラス製薬、エーザイ

武田薬品工業

減益決算となったが、これは米国の事業を今後拡大するための再編に伴うもので、営業損益には再編のための費用が2423億円入っており、これを除くと実質増益となる。当期の特別損益にはこの関連で713億円の益が入っている。

期末配当を当初予定の88円から4円増やし、年間180円とし、次期も同様とする。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3 13748   4231 5364 3555 84.0 84.0
09/3 15383 3065 3272 2344 88.0 92.0 
増減 1635 -1167 -2092 -1211 4.0 8.0
10/3 15000 3950  4000 2800 90.0 90.0

同社は2008年3月、Abbott Laboratories との50/50JVのTAP Pharmaceutical Products Inc. を均等な価値で会社分割を実施することでAbbottと合意した。ルブロン事業をAbbot に譲渡し、残りを同社が取り込む。

2008/4/4  武田薬品工業、米国事業再編

同社は更に、米国バイオ医薬品会社 Millennium Pharmaceuticalsを約88億ドルで買収することを発表した。

2008/5/13 2008年3月期 注目会社決算 武田薬品工業

この2つの関係で以下の損益が当期の決算に折り込まれた。

TAP社の分割・子会社化 ミレニアム社の買収    合計
販売費一般管理費 無形固定資産償却費    258億円    427億円 685億円
のれん償却費     - 139億円 139億円
研究開発費 インプロセスR&D費    543億円 1,056億円 1,599億円
合計=営業損益    -801億円 -1,622億円  -2,423億円
特別利益 ルプロン事業譲渡益    713億円    713億円

また、今期には為替の影響で、営業損益で前期比 171億円の赤字となっている。(売上高で791億円のマイナス)

ーーー

第一三共

連結決算                     単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3 8801 1568   1691    977 35 35
09/3 8421 883  546 -3358 40 40 
増減 -380 -685 -1144 -4335 5 5
10/3 9600   960  690 400 30 30

同社は当期にRanbaxy Laboratoriesを子会社化した。(2008年11にランバクシー株の63.9%を取得した。)

2009/1/8 第一三共、ランバクシーの評価損計上 参照

2008年9月に米FDAが品質問題を理由にRanbaxyのインドの2工場から米国への輸入を禁じた。更に本年2月にはFDAがインドのパンタ・サヒブ工場のデータの一部に虚偽があるとして、これを使った製品を認可しないとした。

米国市場への輸出の激減で、Ranbaxyの業績は悪化している。

同社の株価は低迷を続け(上記記事参照)、本会計年度末における同社の株価が第一三共の取得価格に比べ50%以上下落したため、株式評価損を計上、連結決算では特別損失に「のれん償却」 3544億円を計上した。

取得価額は4883億円で、ネット資産を引いた「のれん」は4087億円となり、20年で均等償却する予定であった。(当期の通常償却 108億円)。今回、3544億円を追加償却した。

Ranbaxy の影響を除くと、当期の損益は以下の通りとなる。

売上高 営業損益 経常損益 当期損益 
08/3 8801 1568 1691    977
09/3 8421   883  546 -3358
うち
Ranbaxy損益   386      6 -239 -162
同買収関連 -198 -198 -3695
上記以外損益 8035 1075 983    499
前年比 -766 -493 -708 -478

   * 特別損失にのれん償却 -3544

売上高については、非医薬品の日本乳化剤などを日本触媒に売却したことによる減や、前年度に欧州子会社の決算期変更による余分の3か月分(2007/1~3)が加算されていることなどで前期比減となった。

営業損益では売り上げ減の影響のほか、海外事業強化のための販管費増、研究開発費の増で減益となった。

同社では2009年の課題の1つとして、複眼経営の実現に向けたランバクシーとの協業体制の推進を挙げている。
  ・FDA問題の早期解決
  ・バリューチェーン機能の協業体制の構築
  ・グローバルリーチ活用策の推進

ーーー

アステラス製薬

連結決算                     単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  9726  2759  2842    1774    50  60
09/3  9657  2504   2715  1710  60  60
増減   -69  -255  -127   -65  10   0
10/3予  9680 2150  2190  1350   60  65

研究開発費が245億円増えたため、減益となった。
開発プロジェクトの進展に加え、アルツハイマー型認知症治療薬のライセンス料、買収したアジェンシス社の研究開発費の追加、つくば研究センター新研究棟の償却費などで増加となった。

ーーー

エーザイ

当期に10円増配して年間140円とし、次期も更に増配して年間150円とする予定。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3 7343 177 189  -170 65 65
09/3 7817 918   826  477 70 70
増減 475 741  637  647 5 5
10/3予 8200   1030 970   630  70 80

エーザイは2007年12月、がん・救急治療に強みを持つ米国バイオファーマ企業であるMGI PHARMA, INC を総額約39億米ドルの現金にて買収する最終契約を締結した。

このため、昨年度と本年度の損益には MGI Pharma 買収に伴う特殊整理を含んでいる。

これを除外すると、以下の通りで、研究費は増加したが、営業損益は増益、当期損益は若干の減益にとどまった。

連結損益  単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 研究費 経常損益  当期損益 
08/3 7343   1108 1378   1119   707
09/3 7817   1203  1553   1111 693 
増減 474 95 175 -8    -14

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東レ、帝人、三菱レイヨン、チッソ

東レ

全分野で大幅減益となった。但し、すべてで営業利益を確保した。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  16497   1034   915   481  5.0   5.0
09/3  14716   360  205   -163  5.0  2.5
増減  -1781  -674  -709   -644  0  -2.5
10/3予  13000   150   50   -50  2.5  2.5
営業損益対比(億円)
  08/3 09/3 増減   上期 下期
繊維   214   77  -137     62   14
プラスチック・ケミカル   207   41  -166     82  -41
情報・通信機器   298   98  -199     96   2
炭素繊維複合材料   181   84   -97     56   28
環境・エンジニアリンク   98   33   -65     2   31
ライフサイエンスその他   63   32   -31     8   24
全社   -25   -4   21     -3   -1
合計  1034   360  -674    303   57

特別損失で、減損損失(123億円)、投資有価証券評価損(138億円)、関係会社事業損失(57億円)などを計上、ネットの特別損益は前期の129億円の損失から403億円の損失に、274億円の悪化となった。

ーーー

帝人

合成繊維、化成品(PETフィルム、PC)が大幅減益となった。合成繊維は営業赤字。

次期予想は未定としている。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3   10366   652   463   126  4.5   3.5
09/3   9434   180    -27   -430   3.0   2.0
増減   -932   -472    -490   -556  -1.5  -1.5
営業損益対比(億円)
  08/3 09/3 増減   上期 下期
合成繊維   244   -28  -272     41  -69
流通・リテイル   53   39   -14     20   19
化成品   202    2  -200     39  -37
医薬医療   217   248  31    107  141
IT・新事業   35   36    1     5   31
全社  -100  -118   -18    -61  -57
合計   652   179  -473    151   28
  成長SBU
積極的資源投入
安定収益SBU
安定収益と
キャッシュ・フロー確保
再建SBU
抜本策による再建実施
合成繊維 パラアラミド繊維、
炭素繊維、PEN繊維
  ポリエステル繊維
化 成 品 ポリカーボネート、
PENフィルム、
PEN樹脂
  ポリエステルフィルム、
ポリエステル樹脂
医薬医療 医薬医療    
流通・リテイル   流通・リテイル  
IT   IT  

繊維はポリエステル繊維が赤字拡大、高機能繊維も大幅減益となった。
化成品もPETフィルムが減益、PC樹脂は赤字転落。

他方、医薬医療は増益となった。

ーーー

三菱レイヨン

各部門とも大幅な減益となったが、アクリル繊維が大きな赤字に転落した。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  4185   375     340   143   5.5   5.5
09/3  3450   -76     -38   -290   3.0   1.0
増減  -735  -451  -377   -432  -2.5  -4.5

同社は2006/3より、退職給付会計における数理計算上の差異の処理方法を、定額法償却での営業外費用処理から発生の翌年度に営業費用として一括償却する方法に変更した。
これまでの実績は以下の通りで、2007年3月期は株価高騰で大幅益となったが、その後は損失となっており、当期は前期比で38億円の損失増となった。

2006/3   933百万円の損
2007/3  14,209百万円の益
2008/3  2,050百万円の損
2009/3  5,899百万円

これが営業損益におおきな影響を与えるため、これを除外すると、以下の通りとなる。   

業損益対比(億円)
  08/3 09/3 増減   上期 下期
化成品・樹脂  236   44  -192     52   -9
アクリル繊維・AN   10  -91  -101    -29  -62
炭素繊維・複合材料  113   19   -95     25   -6
アセテート・機能膜   36   10   -26     10  0
全社   0   1    1     1  0
合計  396  -17  -413    60  -77

アクリル短繊維は、安価な他素材へのシフトが進み、世界的な需要減退が一層深刻となった。
このため、インドネシアの紡績会社ボネックスインドネシア社の売却による紡績事業からの撤退、日本での原綿生産能力の大幅縮小を実施するとともに、中国の寧波麗陽化繊有限公司の抜本的改革を進めることを決定した。

特別損失には 減損損失(113億円)、投資有価証券評価損(132億円)などのほか、インドネシアでの紡績事業撤退に伴う損失見込額(43億円)と中国での原綿生産事業の構造改革に伴う損失見込額37百万円)を事業整理損失引当金に計上した。

ーーー

チッソ 

減益とはなったが、特別損失に水俣病補償損失(37億円)、公害防止事業費負担(8億円)、減損損失(5億円)などを計上した上で、税引後損益で30億円の黒字を確保した。

次期でも黒字を見込む。

連結決算                   単位:億円
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 
08/3  2697   208    202   108 
09/3  2492   152    103    30
増減  -204   -57   -99   -78 
10/3予  2000   -   130    52

チッソは2000年3月決算で債務免除益 635億円を計上した。

2006/5/1 水俣病50年 

最近の特別損失は以下の通り。(億円)

  06/3 07/3 08/3 09/3
水俣病補償損失   -43   -42   -40   -37
公害防止事業費負担   -15   -9   -8   -8
固定資産処分損     -6   -1   -3
減損損失  -121       -5

2009/3/末の未処理損失は 1,139億円で、資本金 78億円に対し、資本勘定は -966億円となっている。


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旭化成、東ソー、トクヤマ、宇部興産

旭化成

大幅減益だが、ケミカルズ、エレクトロニクスなどの減益をホームズ、ファーマ(いずれも前期損益維持)がカバーしている。

次期は黒字を見込む。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  16968   1277   1205   699 6.0 7.0
09/3  15531 350 325 47 7.0 3.0
増減 -1437 - 927  -880   -652 1.0 -4.0
10/3予 13550 410 390 150 5.0 5.0
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減      増減理由 2009年
数量差 売値差 (うち為替) その他 上期 下期
ケミカルズ   652    -4  -656 -195 -72 (-179) -389   185  -189
ホームズ   214   219    5 33 26 ( - ) -54   30   189
ファーマ   127   120   -6 88 -74 ( -26) -20   102   18
せんい    72    -9   -81 -31 -16 ( -29) -34   17   -26
エレクトロニクス   222    33  -189 -51 -95 ( -35) -43   82   -49
建材    28    17   -11 7 13 ( - ) -31    8    9
Service & Eng.    52    56    5 4 0 ( 0) 1   31   25
全社   -90   -83    7 - - ( - ) 7   -53   -30
合計  1,277   350  -927 -145 -219 (-269) -563   402   -52

ケミカルズが下期に大幅赤字となって通期で赤字、せんいとエレクトロニクスも大幅減益となった。
他方、ホームズが下期に大きな益となり、損益を維持した。

次期の営業損益の予想は、せんいは20億円の赤字だが、ケミカルズは150億円の黒字、エレクトロニクスも80億円の黒字としている。
ケミカルズは販売量の回復と在庫評価損の減を折り込んだ。

緊急対策として以下を決めた。
  ・汎用事業の見直し
    既に意思決定したもの 
     ①ポリエステル長繊維の生産停止
     ②モノフィラメント事業からの撤退
     ③特薬事業(コエンザイムQ10)からの撤退(極端な供給過剰で大幅値下がり)
     ④軽量気泡コンクリート・白老工場の閉鎖(需要減)
  ・固定費の削減  ▲約135億円(減価償却費の増36億円を含む)
  ・設備投資の削減
     08年度実績1,267億円→09年度予定 900億円
  ・在庫(棚卸資産)の圧縮
  ・役員報酬の減額 ▲10%~20%

ーーー

東ソー

大幅減益で、営業損益、経常損益、当期損益がいずれも赤字となった。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  8274    591   525   252 4.0 4.0
09/3  7335 -203   -211 -253 4.0 2.0
増減 -939  -794 -735   -504 - -2.0
10/3予 6500 250  200   90 3.0 3.0
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 上期 下期
石油化学   150   -48  -198   45   -92
基礎原料   27  -175  -201   -8  -166
機能商品   380   -9  -389   66   -75
サービス   34   28   -5   18   11
合計   591  -203  -794   120  -323
石油化学 オレフィン製品、スチレンモノマー、キュメン、PE、クロロプレンゴム、PPS 樹脂
基礎原料 苛性ソーダ、VCM、PVC、セメント
機能商品 無機・有機ファイン製品、計測・診断商品、水処理装置、電子材料(石英ガラス、スパッタリングターゲット)、機能材料、ウレタン原料等


石油化学、基礎原料(ビニルチェーン)、機能商品(ポリウレタンなど)いずれも大幅減益となった。特にビニルチェーンの赤字が大きい。
いずれも下期に大幅赤字となった。

ーーー

トクヤマ

減益だが、営業損益ではセメントほかが若干の赤字となっただけで、化学品、特殊品とも健闘し、黒字を維持した。
特に多結晶シリコンなどの特殊品は好調。

当期損益では「防耐火個別認定仕様と異なる仕様の樹脂サッシ販売」に関する製品補償損失引当金繰入や関連する固定資産の減損損失などで赤字となった。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  3075    353   304   189 3.0 6.0
09/3  3010 227 204 -56 3.0 3.0
増減 -65  -126 -100  -245 - -3.0
10/3予 2860 200 180 100 3.0 3.0
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 上期 下期
化学品   47   13   -35   14   -1
特殊品  305  263   -42  155  109
セメント建材他   37   -6   -43   -1   -4
全社  -36  -43   -7  -21  -22
合計  353  227  -126  146   81
化学品 苛性ソーダ、ソーダ灰、塩化カルシウム、珪酸ソーダ、VCM・PVC、PO、イソプロピルアルコール、メチレンクロライド、二軸延伸PPフィルム、共押出多層フィルム、無延伸PPフィルム、微多孔質フィルム
特殊品 多結晶シリコン、湿式シリカ、乾式シリカ、窒化アルミニウム、歯科器材、医薬原体・中間体、プラスチックレンズ関連材料、イオン交換樹脂膜、金属洗浄用薬品、電子工業用高純度薬品、環境関連装置、医療診断システム、半導体ガスセンサ
セメント建材その他 普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、高炉セメント、生コンクリート、プラスチックサッシ、セメント系固化材、廃棄物処理

特別損失に樹脂サッシの製品補償損失引当で200億円、関連固定資産の減損損失で29億円を計上した。

2009/1/10 樹脂サッシメーカー5社が防火性能偽装

ーーー

宇部興産

化成品・樹脂が下期に損益が悪化したが、全部門で営業黒字を維持した。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3   7043    559     467   240  -   5.0
09/3   6847    312 204 117  - 4.0
増減   -196  - 247 -263  -124  -  -1.0
10/3予 5520  250 145  70  -  未定
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 上期 下期
化成品・樹脂  186   21  -165  107  -87
機能品・ファイン  141   67   -74   59   8
建設資材  109   89   -20   38   51
機械・金属成形   67   41   -26   23   17
エネルギー・環境   47   87   40   42   44
その他   9   8   -1   4   4
全社   1   -1   -1   -3   2
合計  559  312  -247  271   40


化成品・樹脂 カプロラクタム、ナイロン樹脂、工業薬品、ポリブタジェン
機能品・ファイン 機能性材料、ファインケミカル、医薬品
建設資材 セメント、クリンカー、生コンクリート、建設資材製品
機械・金属成形  諸機械器具、アルミホイール
エネルギー・環境 石炭、電力

化成品・樹脂セグメントは第3四半期以降、出荷は大幅に落ち込み減産となった。製品価格が大幅に下落し在庫評価額を下回ったため、多額のたな卸資産評価損を計上した。

石炭、電力卸などのエネルギー・環境セグメントが好調。


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住友化学、三井化学、三菱化学はいずれも大赤字となった。

 

住友化学 

大幅減益で、期末配当を3円減とした。

次期については営業損益で350億円の黒字を見込む。
サウジのラービグ計画の本格稼動で持分法投資損益が改善する。
次期配当は未定。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  18965    1024    928    631 6.0   6.0
09/3  17882      21   - 326   - 592 6.0   3.0
増減  -1083 -1003 -1254 -1222 - -3.0
10/3予   16200   350   300   100   未定
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減  2009年
上期 下期
基礎化学   106  -153   -259   -12  -142
石油化学    45  -303   -349  -101  -202
精密化学   114   16    -98   22   -5
情報電子化学    63   -10    -73   123  -133
農業化学   209   244    35   123   122
医薬品   465   324   -141   192   131
その他    37   -79   -116   -36   -43
全社   -15   -17     -3   -1   -16
合計  1,024   21  -1,003   310  -289

基礎化学、石油化学ともに大幅な赤字となった。情報電子化学も若干の赤字に転落した。
医薬品は研究開発費の増加等により減益。
その他での大幅減益は、高分子有機EL 等の新規事業における研究開発費等の増加による。

医薬品のうち、大日本住友製薬の実績は以下の通り。(単位:億円)

売上高 営業損益 経常損益 当期損益
08/3   2640    398    377    256
09/3   2640    312    314    200
増減     0    -86    -63    -56

経常損益では、持分法投資損益が前期の112億円の利益から128億円の赤字と、240億円の悪化となっている。

特別利益では前期にラービグ計画の上市に伴う持分変動利益が288億円あったが、当期には退職給付信託設定益が148億円あった。

株価下落で目減りした退職給付債務の積立不足額に充当するため、保有株式の一部を拠出して、164億円の退職給付信託を設定した。この株式の簿価と信託設定金額との差額である148億円を特別利益として計上した。

特別損失には構造改善費用 88億円、有価証券評価損 41億円などのほか、減損損失として208億円を計上した。

環境の著しい悪化等により、収益性の低下した一部の事業用資産について減損損失計上したもので、減損対象は、カプロラクタムや耐熱性セパレーターなど。

同社では繰延税金資産の回収可能性を検討した結果、その一部を取崩し、196億円を法人税等調整額に計上した。
その分だけ税引後損益が悪化した。(この分はその時点で利益が回復し課税所得があれば税金の減になる。)

ーーー

三井化学

大幅減益で、期末配当を3円減とした。
2010年予想でも営業損益で380億円の赤字、当期損益で560億円の赤字とみている。
次期配当は未定だが、中間配当は取り止める。 

藤吉社長は次期に2年連続で営業赤字になる見通しとなったことの責任を取り、社長を辞任する。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3 17867    772    661    248 6.0   6.0
09/3 14876 -  455 -508   -952 6.0   3.0
増減 - 2991 -1227 -1169 - 1201 - -3.0
10/3予  11500   -380   -470   -560  0.0 未定
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減    増減理由  2009年
数量差 交易条件 固定費他 上期 下期
機能材料  359  -160   -519 -274   -132 -113   92  -252
先端化学品  108    73    -35     -5    -10   -20   36   38
基礎化学品  335  -320   -655 -465   -160   -29   -2  -318
その他   34     1    -33   -20    -15     16   -2     3
全社  -63   -49    14  -24   -25
合計  772  -455  -1,227 -764   -317 -146  -28  -427

機能材料 自動車・産業材(エラストマー)、包装・機能材(工業樹脂)、生活・エネルギー材(機能加工品)、電子・情報材(電子材料、情報材料、機能性ポリマー)、ウレタン樹脂原料
先端化学品 精密化学品、農業化学品
基礎化学品 基礎原料(エチレン、プロピレン等)、フェノール、合繊原料・ペット樹脂、工業薬品、PE、PP

機能材料、基礎化学品が下期に大幅赤字となり、通期で赤字転落した。数量減と交易条件差(コスト減以上の値下がり)が大きい。

当期の業績及び厳しい経営環境を考慮し、繰延税金資産の回収可能性を慎重に検討した結果、当期末において繰延税金資産を取崩すこととし、その影響額 447億円を法人税等調整額に計上した。


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三菱ケミカルホールディングス

下期の石油化学関連の赤字が大きく、通期で大幅赤字となり、配当も4円減らした。
次期予想は経常損益までは黒字だが、180億円の特別損失を見込んでおり、当期損益は赤字となる。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3   29298 1250 1289    1641 8.0   8.0
09/3   29090     82    -19    -672 8.0   4.0
増減    -208 -1169 -1308   -2312 - -4.0
10/3予   25000    650    410     -90 4.0   4.0
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 概算増減理由 2009年
数量差 売値差 買値差 固定費他 その他 上期 下期
エレクトロニクス・アプリケーションズ 316    48 -268 -180 -280 190 10 -10 106 -59
デザインド・マテリアルズ 97 -21 -118 -70 70    80 -40     0 27 -48
ヘルスケア 572 793 221 130 -140    10 40 180 372 421
ケミカルズ 109 -555 -664 -90 910 -1,140 -70 -270 70 -625
ポリマーズ 112 -130 -242 -120 240 -290 0 -70 -5 -124
その他 141    88 -53 -60 30 -40 10     0 62 26
全社 -97 -141 -44 - - - -40 - -70 -71
合計  1,250  82  -1,168 -390 830 -1,350 -90 -170  562  -480
-520
エレクトロニクス・アプリケーションズ 記録材料、電子関連製品、情報機材、無機化学品
デザインド・マテリアルズ 食品機能材、電池材料、精密化学品、樹脂加工品、複合材
ヘルスケア 医薬品、診断製品、臨床検査
ケミカルズ 基礎石化製品、化成品、合成繊維原料、炭素製品、肥料
ポリマーズ 合成樹脂
その他 エンジニアリング、運送及び倉庫

ヘルスケアを除き減益となったが、特にケミカルズとポリマーズが営業損失となった。
同社の場合は棚卸資産の評価を総平均法としているため、住友化学や三井化学(後入先出法)と比べ、前期末の高値在庫の影響が大きい。

なお、2008年3月期決算時の予想によると、鹿島の事故関連は、本決算では保険金の入金で益となっている。

鹿島事故損失予想(億円)

2008/3 2009/3 合計 科目
減産、減販、代替品調達 -  82  -55  -137 営業損益
プラント停止・低稼働   -20 - 20 営業外費用
-  30  - 30 特別損失
合計 -112  -75  -187
保険金  140   140 営業外収入
差引合計 -112     65  - 47

ヘルスケア増益は2007101日に田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併し「田辺三菱製薬」になった影響による。

田辺製薬が存続会社だが逆取得の形をとったため、2008年3月期は三菱ウェルファーマの中間決算に田辺三菱製薬の下期を加えたものとなっている。

比較のため、田辺製薬の2007年上期を加算すると以下の通りとなる。

連結決算                            単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3 田辺 上期    938   184   192    99 13.0
田辺三菱製薬   3156   540   544   220 ( 7.68)  13.0
年間ベース   4094    725   736     319  13.0  13.0
09/3  4148   717   726   265 14.0 14.0
増減     53    -8   -11    -54 1.0 1.0

特別損益は以下の通り。(億円)

    08/3 09/3 増減
特別利益 田辺合併 持分変動利益 1,181    
その他     52   148  
合計 1,233   148 -1,085
特別損失 投資有価証券評価損       1   115  
減損損失     19   114  
薬害肝炎訴訟損失引当     95    88  
原材料仕入契約解約損      50  
田辺合併関連     49    
鹿島事故に伴う低稼働損失     30    
その他    150   202  
合計    344   569     225
差引      889 -421 -1,310

減損損失には、停止が決まったヴイテックのPVC設備(水島、川崎:45億円)や黒崎のカプロラクタムやナイロン設備(27億円)などが含まれる。

薬害肝炎の給付金については、負担割合が決定し、見込み額が200億円となったため、当期に88億円を特別損失に追加計上した。

なお、同社の場合は、繰延税金資産の取り崩しは行っていない。


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日本触媒

基礎化学品、機能性化学品事業が大幅減益となった。機能性化学品は営業損益で赤字となった。

連結決算                        単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  3027   184   207    119  8.0  8.0
09/3  2891     6    8    -53  8.5  7.0
増減  -136  -178  -200  -172  0.5  -1.0
営業損益対比(億円)
  08/3 09/3 増減    2009年
  上期 下期
基礎化学品   67   16    -51     35  -19
機能性化学品   88  -19  -107      17  -36
環境・触媒   28   12   -16     11   2
全社     1  - 3   - 4    - 5     2
合計  184   6  -178     58  -52

基礎化学品事業:アクリル酸、酸化エチレン、エチレングリコールほか
機能性化学品事業:高吸水性樹脂、医薬中間原料、コンクリート混和剤用ポリマー、電子情報材料ほか

 

ーーー

住友ベークライト

営業損益は、販売の減少に加え、退職給付会計の数理計算差異が38億円の損失となったこともあり、前期に比べ107億円減少した。半導体・表示体材料の減益が大きい。

特別損失に、事業再建関連費用および事業整理損を41億円、株式評価損42億円、減損損失15億円等を計上した。

連結決算                        単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  2253    90    97    22  7.5  7.5
09/3  2124  - 16    5  -79  7.5  7.5
増減  -128  -107   -92  -101  -   -
営業損益対比(億円)
  08/3 09/3 増減    2009年
  上期 下期
半導体・表示体材料  107   47   -60     49   -2
回路製品・電子部品材料  -27  -35   -9    -11  -25
高機能プラスチック   30   13   -17     22   -9
Quality of life   30   10   -21     17   -7
その他      2     1   -1       1      0
全社  -52  -51       1    -26  -26
合計  90  -16  -107    52  -68

同社では退職給付会計の数理計算差異を毎期発生年度に一括償却している。
このため、株価が上昇した2006年3月期はこれが79億円の利益となったが、2008年3月期は逆に46億円の損失、今期も38億円の損失となった。また、2008年3月期は
海外子会社の連結対象期間変更で9 ヶ月間となり、営業損益が約19 億円減少した。

これらの影響を除外すると、営業損益は次の通りとなる。

営業損益対比(億円)
  08/3 09/3 増減
半導体・表示体材料  132   57   -75
回路製品・電子部品材料  -19  -32   -13
高機能プラスチック   45   21   -24
Quality of life   44   22   -22
その他   2   1   -1
全社  -49  -48    1
合計  155   21  -134

ーーー

電気化学

スチレン系製品やクロロプレンゴムなどの有機系素材や電子材料などの減益が大きい。有機系素材は営業赤字となった。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  3640   299   249    67  5.0   5.0
09/3  3341   103   31    14  5.0    2.0
増減  -299  -196  -218   -52  -  -3.0
営業損益対比(億円)
  08/3 09/3 増減    2009年
  上期 下期
有機系素材  133  -19  -152     33  -52
無機系素材   29   25   -4     16   9
電子材料   78   30   -48     34   -4
機能・加工製品   53   62    9     23   39
その他   6   5   -1     4   1
全社   -1   -1    0     0   0
合計  299  103  -196    109   -6

有機系素材:
  SM、PS、ABS、クリアレン、耐熱・透明樹脂、酢酸、酢ビ、ポバール、クロロプレンゴム、アセチレンブラック 他
無機系素材:
  肥料、カーバイド、耐火物、セメント、特殊混和材 他
電子材料:
  溶融シリカ、電子回路基板、ファインセラミックス、電子包装材料 他
機能・加工製品:
  食品包装材料、ワクチン、関節機能改善剤、診断薬、建設資材・産業資材 他

ーーー

三菱ガス化学

各分野が大幅減益となった。

連結決算                     単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  5193   474    618   402  8.0  8.0
09/3  4477   - 31    70    70  8.0  8.0
増減  -717  -505   -548   -332  -  -
営業損益対比(億円)
  08/3 09/3 増減    2009年
  上期 下期
天然ガス系   33  -49   -82     9   -57
芳香族  121  -74  -194    15   -89
機能化学品  162   64   -98    31   33
特殊機能材  152   23  -129    42   -19
その他   5   6    1     3    2
全社   1   -1   -2    -4    3
合計  474  -31  -505    96  -127

天然ガス系:メタノール、アンモニア、アミン系製品、メタクリル酸系製品、多価アルコール類ほか
芳香族:キシレン異性体及びその誘導品

機能化学品:過酸化水素、電子工業用薬品類、エンプラ
特殊機能材:プリント配線板用材料、プリント配線基板、脱酸素剤

 

ーーー

田辺三菱製薬

2007101日に田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併し「田辺三菱製薬」になった。
上場している田辺製薬が存続会社だが、但し逆取得となっており、08/3は三菱ウェルファーマの中間決算に誕生した田辺三菱製薬の下期を加えたものとなっている。
このため、比較のため田辺製薬の上期を加算する。

連結決算                            単位:億円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3 田辺 上期   938   184   192    99  13.0  
田辺三菱製薬  3156   540   544   220 ( 7.68)  13.0
年間ベース   4094    725    736     319  13.0  13.0
09/3  4148   717   726   265   14.0  14.0
増減   53    -8    -11     -54    1.0    1.0

既報の通り、薬害肝炎の給付金の負担割合が決定した。
同社では昨年度に 91億円を繰り入れ、合計112億円を引き当てていたが、見込み額が200億円となったため、当期に88億円を特別損失に計上した。

2009/4/15  薬害肝炎救済法に基づく給付金の負担割合

なお、特別損失は前期が上記に加えて合併関連費用(49億円)、特別退職金(11億円)など、合計174億円であったが、当期は上記に加え、有価証券評価損(66億円)、特別退職金(43億円)、減損損失(34億円)など、合計258億円となり、84億円の損失増加となった。

 


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サウジのSABICSaudi International Petrochemical Company (Sipchem) 59日、それぞれの新計画の実施に当たり、互いに既存の余剰能力を出して協力する覚書に締結した。

SABICの計画:投資額 32億ドル
   
  MMA  250千トン
  PMMA  30千トン
 アクリロニトリル  200千トン
 ポリアクリロニトリル   50千トン
 ポリアセタール   50千トン
 カーボンファイバー   3千トン
 青酸ソーダ   40千トン
   
Sipchemの計画:投資額 8.1億ドル  
     
 ポリ酢酸ビニル  125千トン  
 エチレン酢ビ  200千トン  
     

いずれも2013年にスタートの予定。

覚書では、SABICSipchemに割り当てられた原料エタンを子会社でエチレンにして供給SipchemSABICMMA生産用の一酸化炭素を供給するとなっている。

MMAの製法にはACH法、直酸法、Lucite (三菱レイヨンが買収予定)のエチレン法(Alpha technology)などがある。
ACH法の場合はアクリロニトリル生産時に副生する青酸を利用する。

MMA用の一酸化炭素であればLucite のエチレン法(Alpha technology)である。

ーーー

Sipchemについては下記を参照。

2008/2/29 サウジ Sipchem の石油化学計画 

第二期計画で、酢酸、VAM、一酸化炭素を既に生産しており、今回の計画はVAMの利用。 

2006年11月、第三期計画として Sipchemはオレフィンと誘導品計画を発表した。

    
原料 アラムコ(エタン35%、プロパン65%
    
製品 :<p><p>HTML clipboard</p></p>エチレン  1,000千トン
        プロピレン 215千トン
        
HDPE 500千トン
        
EVA / LDPE 250千トン
        
PP
                 ANM 200千トン(Ineos 技術)
        
MMA 250千トン(Lucite 技術)
        
Carbon fiber
                 Ethylene vinyl alcohol
                 Polyvinyl acetatePolyvinyl alcoholPolyvinyl butyral
                 Polyacrylonitrile
                 Sodium cyanide
                 PE pipe and film
     生産開始:
2011
     
投資額:US$ 7 billion

しかし、同社は2008年6月にエチレン、PE、PP計画を取り止めた。
中東の石化プラント建設ラッシュで建設業者が確保できず、スケデュールやコストに狂いが出たこととファイナンス問題が理由とされている。

同社はエチレン、プロピレンをAl-Jubail の他のメーカーから購入し、付加価値製品の生産に専念することとした。

2008/6/23  サウジ Sipchem がエチレン、PE、PP計画取り止め

今回のSABICの新計画は<p>HTML clipboard</p>(ポリアセタールを除いて)全て、Sipchemの第三期計画に入っていたものである。(上記の青字) 

2008年2月に、SABICがSipchemの第三期計画に参加するとの情報が流れた。
別途Sipchemは、ANMとMMAの技術を供与するIneos (Luciteに22%出資)にも参加の要請を行っている。

おそらく、その後、事業分担の話し合いが行われ、Sipchemは酢酸関係(上記の
赤字)に限定し、残りをSABICに譲ったものと思われる。


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最近の原油価格

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5月8日のWTI原油価格終値は58.70ドル/バレルと、半年振りの高値となった。(11月11日終値が59.33ドル)

2009年の平均は45.59ドルとなっている。

東京市場ドバイ原油の8日の終値も57.20ドル/バレル、東京市場オープンスペックナフサも485ドル/トンと、いずれも半年前の水準に戻った。


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損益の変動の大きな会社の決算を順次分析する。

ーーー

JSR

これまで会社を支えてきた多角化事業が大幅減益となった。

多角化事業は売上高 1,464億円で、うち、半導体材料が505億円、フタットパネル・ディスプレイ材料が592億円となっている。
下期はこれらの営業損益がほとんどゼロにまで落ち込んだ。

連結決算                        単位:百万円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  406,967 60,010 56,063 36,994 16.0 16.0
09/3  352,502 30,347  31,111 13,981 16.0 16.0
増減   -54,465  -29,663 -24,952  -23,013 - -
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減  2009年
上期 下期
エラストマー  112   80 -31   60  20
エマルジョン   15   5   -10   -1   6
合成樹脂   30   13   -17   13   0
多角化事業  443  205 -238 190  15
合計  600  303  -297  262  41

ーーー

カネカ

化成品(塩ビ)、機能性樹脂(MBSほか)、エレクトロニクス(超耐熱性ポリイミドフィルムや液晶関連製品、太陽電池)、合成繊維が大幅減益となった。
太陽電池の減収減益は円高の影響が大きいとしている。

連結決算                     単位:百万円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
08/3  502,968 35,745   33,866 18,817 8.0 8.0
09/3  449,585 7,604   5,844 -1,850 8.0 8.0
増減   -53,383  -28,141  -28,022  -20,667 - -
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減  2009年
上期 下期
化成品   52   -5   -56   18 -23
機能性樹脂  120   30   -90   37 -7
発泡樹脂製品   -1   13   14 -1 14
食品   28   38    9 9 29
ライフサイエンス   53   59    6 34 25
エレクトロニクス   91   -9  -100 20 -29
合成繊維   66   12   -54 17 -5
全社  -52  -62   -10 -32 -31
合計  357   76  -281 102 26

ーーー

出光興産

石油製品は、上期はアジアの需要増を背景として製品輸出マージンが好調に推移し、夏場以降は原油価格の下落によりコストが大幅に低下して収益が向上、前年の営業損失から大幅な収益改善となった。

しかし、石油化学製品は下期に入り、需要減少、売価の下落で大きな赤字となった。

同社はこれまで棚卸資産評価を年度別後入先出法を採用していたが、当期より、四半期別に変更した。
また、当年度より適用される「棚卸資産の評価に関する会計基準」により、ネット売却価額まで簿価を切り下げた。
この影響は前者が538億円の益、後者が328億円の損、差引き210億円の益となっている。

連結決算                     単位:百万円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
08/3 3,864,263 55,891 60,695 4,837 75.0 75.0
09/3 3,798,489 102,411 89,289 3,323 75.0 75.0
増減 -65,774 46,520 28,594 -1,514 - -
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減  2009年
上期 下期
石油製品 -78 564 642 255 309
石油化学製品 186 -213 -399 -30 -183
石油開発 433 498 65 359 139
石炭 29 190 161 30 150
その他 -11 -10 1
全社 0 -5 - 5 0 -5
合計 559 1,024 465 614 410

ーーー

新日本石油

上記の出光興産は在庫評価を後入先出法を採用しているため、前年末の在庫の影響をあまり受けない。

しかし、新日本石油をはじめ、ほとんどの会社は総平均法を採用しているため、今回のように原油価格が激減した場合、前年末の高い在庫が当期の損益に大きく影響を与える。

2009/2/2 新日本石油の業績

新日本石油の場合、この影響が4,470億円の多額にのぼり、経常損益では前年比で5,511億円の採算悪化となった。
在庫の影響を除くと、経常損益は前年比で逆に638億円の改善になる。

石油化学製品の経常損益は356億円の赤字となった。

連結決算                     単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
中間 期末
08/3  7,523,990   263,962   275,666   148,306   6.0   6.0
09/3  7,389,234  -312,506  -275,448  -251,613  10.0  10.0
増減   -134,756  -576,468  -551,114  -399,919   4.0   4.0

経常損益対比(億円)
  08/3 09/3 増減    2009年
  上期 下期
石油製品   1,313  -3,757  -5,070      476  -4,233
石油化学製品    226   -356   -582     -114   -242
石油・天然ガス開発   1,113   1,211    98      219    992
建設・その他    105    148    43       1    147
合計   2,757  -2,754  -5,511      582  -3,336
             
在庫影響   1,679  -4,470   6,149      791  -5,261
             
在庫影響除き            
 石油製品   -363    713   1,076     -315   1,028
 合計   1,078   1,716    638     -209   1,925

国際会計基準では先入先出法か総平均法が定められており、日本で採用されている後入先出法は認められない。

企業会計審議会は、日本でも国際会計基準(IFRS)の任意適用を開始、2012年をめどにIFRSを強制適用するかを判断するとの方針を示している。

このため、海外の石油会社は在庫影響を除いた損益を、BPReplacement cost profits、Shell はCCS (Current cost of supplies) profits などとして報告している。

2009/2/4 BPの損益


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5月7日の日本経済新聞夕刊は、コスモ石油が韓国石油大手のHyundai Oil Bank (HDO)と合弁で、韓国でパラキシレンの生産に乗り出すと報じた。

コスモ石油では、「前向きに検討しておりますが、現時点において決定しておりません」としている。

報道内容は以下の通り。

・両社はともに産油国アラブ首長国連邦・アブダビの政府系投資会社(国際石油投資会社:IPIC)が筆頭株主となっている。
 資金と技術を持ち寄って高い成長が見込める中国などの市場を開拓する。

・9月をメドに韓国に折半出資の新会社を設立。
 新会社はソウル南西に位置する瑞山市大山のHDO製油所内にある年産38万トンのパラキシレン設備を買い取る。

・2013年に同製油所内で年産80万トンと世界最大規模の新設備を増設し、生産能力を118万トンに高める。
 年間売上高2千億-3千億円を目指す。
<p><p>>HTML clipboard</p></p></p>

付記    

コスモ石油は6月9日、合弁会社設立の基本合意を発表した。

合弁会社

     ・設立時期 :2009年9月予定
     ・出資比率 :当社 50%、HDO 50%
     ・事業内容     :パラキシレンおよびその他関連製品の製造・販売
     ・設備規模 :a)HDOより譲渡予定のナフサを原料とする既存パラキシレン製造設備
              (HDO大山(デサン)製油所既設・2009年譲渡予定)
               ナフサスプリッター-55,000BPD
               ナフサ脱硫装置-24,000BPD
               接触改質装置 -21,500BPD
               BTX装置     -パラキシレン生産量
380,000トン/年
               その他パラキシレン事業に関わる設備(タンク等)
             b)ミックスキシレンを原料とする新規パラキシレン製造設備
              (HDO大山製油所に2013年新設予定)
               BTX装置     -パラキシレン生産量
800,000トン/年
               その他パラキシレン事業に関わる設備(タンク等)
   
併せて同社では、協業化のさらなるシナジーを創出するために、四日市製油所内にミックスキシレン蒸留装置を新設することを決定した。
    <新設ミックスキシレン蒸留装置概要>
     1.建設予定地 四日市製油所
     2.
ミックスキシレン生産能力 300,000トン/年
     3.完成予定 2011年11月

ーーー

現在の韓国のパラキシレンメーカーは次の通り。(千トン)

会社名 立地 能力
GS Caltex Oil Yeochun 1,200
KP Chemical Ulsan 750
Samsung Total Daesan 600
S-OIL (双龍精油) Onsan 650
SK Energy Ulsan 650
Hyundai Oil Bank Daesan 360
Total 4,210

* Hyundai Oil Bank情報では能力は380千トンではなく、360千トンとなっている。

ーーー

コスモ石油には、UAEのIPIC が約900億円を投じコスモに20%出資し、筆頭株主になっている。

Hyundai Oil Bank は現代グループが1964年に極東石油として設立、一時シェルとのJVとなったが、1993年にHyundai Oil Bank と改称した。

1999年にIPIC50%を取得、2002年に更に20%を取得し、現在70%を所有している。
残りは現代重工業の
19.87%を初めとして現代グループが合計28.74%、残り1.26%4人の株主が所有している。

IPIC2008年に持株の半分の売却をGSカルテックスなどと交渉したが、現代重工業が株主間契約に反するとして売却を防ぐための法的手続きを行った。

Hyundai Oil Bank は大山に36万バレル/日の製油所をもつ。
製油所に隣接してベンゼンプラント(
11万トン)とパラキシレンプラント(36万トン)をもち、製品はほとんどを中国、台湾、東南アジアに輸出している。

コスモ石油とHyundai Oil Bank 20084月、石油事業包括協力覚書を締結した。コスモとIPICとの共同事業テーマの一つである「IPICと密接な関係にある会社との連携による製品融通や共同投資のための国際的、互恵的ネットワーク構築」の一環。

両社は今後のアジア太平洋での需要の増大を背景に域内の石油産業の一層のグローバル化が進展するという認識を共有し、製品融通・マーケティング協力等により 両社が計画中の製油所の高度化設備をフルに活用することで相互発展の機会を創出すべく、以下の分野について、検討委員会を設置し協業可能性を検討する。

1)供給とトレーディング(Supply & Trading
   石油製品・半製品・石油化学製品融通等による製油所供給体制最適化
   中国やその他アジア太平洋共同マーケティング

2)石油精製(Refining
   両社の将来の精製装置高度化も踏まえた技術協力・研修生交流
   製油所オペレーションの効率性向上やコスト低減に資する情報共有

3)一般事項(General
   リテールマーケティング情報やその他情報の共有

ーーー

今回のコスモ石油/Hyundai Oil Bank のパラキシレン計画は、実はHyundai Oil Bank と同じく IPICが出資するスペインのCEPSA (Compañía Española de Petróleos, S.A.) との間で交渉が行われていた。

20077月、Hyundai Oil Bank CEPSA は覚書を締結した。

・両社で50/50JVを設立
Hyundai Oil Bank の大山製油所に2010年までにベンゼン(30万トン)、パラキシレン(80万トン)プラントを建設
Hyundai Oil Bank の既存プラントを引き継ぐ。

今回の計画はコスモ石油がCEPSAの代わりに入るということになる。

IPICCEPSAの株を買い増して47%を抑える予定で、IPICが世界戦略を考え、アジアの計画はコスモ石油とHyundai Oil Bank の組み合わせとした可能性がある。

ーーー

IPICはスペインのCEPSA25%を出資していたが、何故か現在の出資比率は9.5%に下がっていた。

現在の出資比率:
Total(フランス) 48.8%
Santander Bank(スペイン) 32.5%
Union Fenosa(スペイン)  5%
IPIC 9.5%

今回、IPICSantander持株を33億ユーロで買収することを決めたと伝えられた。Union Fenosa の持株も買収し、合計持株比率を47%とする。

参考 2008/8/19 スペインのCEPSA、上海でフェノール/アセトン生産を計画

ーーー

IPIC 実質政府100%出資で、Abu Dhabi National Oil CompanyADNOC)が 50%ADIAAbu Dhabi Investment AuthorityNational Bank of Abu Dhabi)が 50%を出資する。

IPICは活動を全世界に広げている。

UAE 内陸油田ハブシャンからの全長360kmの原油パイプラインとフジャイラ港でのタンクターミナルの建設
フジャイラにて50万バレル/日の能力の輸出を主体とした製油所の建設
オーストリア 石油、ガス会社OMVに17.6%の出資
石化会社Borealisに65%の出資
  2006/11/10 
OMVとBorealis、オーストリアとドイツで石化増強

AMI Agrolinz Melamine International 50%出資(OMVが残り50%
日本 コスモ石油に出資
韓国 Hyundai Oil Bankに出資
パキスタン パキスタンのPak-Arab Refinery Co.株式40%を保有(残りはパキスタン政府)。
キスタン政府との間で30万バレル/日規模の製油所建設を検討中(IPICが74%出資予定)
オマーン Oman Polypropylene に出資(出資するGulf Investment Corporationを通して)
エジプト Arab Company に出資
スペイン CEPSAに出資(47%にアップ)
中央アジア 2008/8/27 Abu Dhabi IPIC、中央アジアに進出
カナダ 2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収


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ダウは4月30日、第1四半期決算を発表した。

前期の大赤字を考え、ほとんどの人が赤字を予想していたが、黒字決算となった。

     単位:百万ドル
  09/1Q 08/1Q 増減   08/4Q 増減
Sales  9,087  14,824  -5,737    10,899  -1,812
EBIT  159  1,385  -1,226    -1,422  1,581
税引前損益  17  1,264  -1,247    -1,600  1,617
税引後損益  24  941  -917    -1,552  1,556
 
EBIT
  09/1Q 08/1Q 増減   08/4Q 増減
Performance Plastics  30  329  -299     -479  509
Performance Chemicals  115  271  -156    174  -59
Agricultural Sciences  338  331  7    34  304
Basic Plastics  4  427  -423    -315  319
Baisic Chemicals  -92  159  -251    -237  145
Hydrocarbon & Energy  -  -  -    -69  69
Unallocated & Other  -236  -132  -104    -530  294
合計  159  1,385  -1,226    -1,422  1,581

Liveris CEOはこの結果を、Dow AgroSciences が好調であったこと、在庫が減って操業度が上がったこと、固定費削減を理由としている。

ーーー

同社はつなぎ融資の条件変更、R&H買収条件の変更、減配等々により、Rohm & Haas の買収を完了することが出来た。
R&Hの製塩事業の子会社
Morton Salt の売却も行った。

2009/4/3 ダウ、Rohm & Haas の買収を完了

しかし、クウェートのPICとの合弁会社 K-Dow Petrochemicals 設立破談で予定した売却代金が入らなくなり、R&H買収のための多額の借入金が残っており、これを不安材料にStandard & Poor's は4月1日にダウの格付けをBBBからBBB-(ジャンクボンドの1ランクだけ上)に引き下げ、Moody's も422Baa3 (同)に引き下げ、"negative outlook”(否定的な見方)としている。

借入金返済の対策が実現しなければ、ダウが最も恐れているジャンクボンドへの格下げが避けられない。

ーーー

ダウは55日、16.25億ドルの増資を発表した。

10億ドルは一般の増資で、得られた資金は借入金返済に充てられる。

残り6.25億ドルは今回のRohm and Haas 買収にあたり、R&Hの大株主のPaulson & Co.Haas Familyの財団に買収代金の一部として合計30億ドル(当初の25億ドル+Haas財団に追加の5億ドル)の永久優先株を供与したが、この一部を普通株に換えるもの。

ーーー

Liveris CEO第1四半期決算発表時に、次のようないろいろの事業の売却の努力を行っていると述べた。

1)オレフィンと誘導品の事業
  
K-Dow 問題でクウェートと交渉を続けているが、平行して同様の仕組みの交渉を2つの国営石油会社と交渉している。

  また、いくつかの地域の事業のパートナーと事業売却の交渉をしている。(
4060億ドル)
   ・Total Group
との合弁のオランダの石油精製 Total Raffinaderij Nederland NV のダウ持分(45%)の売却
   ・東南アジアのオレフィン及び誘導品JVのダウ持分の売却

2)芳香族事業(重要だが、必ずしもダウの戦略にとってコアではない)
  SBR、SBラテックス (10~20億ドル)

3)独立した非戦略事業(20~30億ドル)
  Rohm and Haas のパウダーコーティング事業
  (
Dow Advanced Materials にとって戦略的意義を持たず、また、コーティングの需要家と競合している)

4)Dow AgroSciences
 
 これはダウにとって戦略事業だが、この事業の評価と、戦略的方向付けをしている。
  可能性としては、完全売却、JV、上場など。

これらの事業の価値は、およそ250億ドルに達する。このうち、40億ドルの実現はつなぎ融資の期間内に可能とみている。

ーーー

ダウは、石油化学を合弁事業化し(asset-light)、市場志向の機能性事業のポートフォリオによる高機能で収益の伸びの高い企業とする戦略をとっている。

しかし、石化事業をクウェートとのJVにし、それで得た資金で Rohm and Haas を買収するという戦略が、金融危機による石化事業の価値の低下とクウェートの政治問題で崩れ、ダウにとって儲け頭のDow AgroSciences の売却さえ、検討せざるを得なくなった。

他の事業の売却が出来ず、Dow AgroSciencesを売却せざるを得なくなれば、Liveris CEOの戦略に狂いが生じる。

2007年春に、汎用品事業の切捨てを主張するダウの役員が、ダウの売却話に加わったとして解雇されている。

2007/10/22 Dow の買収情報漏洩事件で新たな展開


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三菱樹脂は5月4日、世界最大手のエンジニアリングプラスチック製品(EPP)の加工メーカーであるQuadrant AG(本社:スイス)とEPP事業の世界展開の一環として、戦略的提携を行うことに合意したと発表した。

同社の基盤事業のEPP事業は1966年に米国 The Polymer Corporation と合弁で日本ポリペンコを設立し、モノマーキャスティングナイロンを中心とするEPPの加工・販売事業の展開を開始したが、現在も日本のみでの展開となっている

今回の提携で以下を狙う。
EPP事業における世界的リーディング企業としての地位の実現
・ワールドワイドな生産体制の確立と海外展開の促進
・事業シナジーの発現

The Polymer Corporation は1989年にDSMが買収、更に2001年にQuadrant DSMEPP事業を買収したため、日本ポリペンコは現在は、三菱樹脂とQuadrant のJVとなっている。

今般、三菱樹脂とQuadrant の創業者4人が、オランダに50/50の合弁形態での持株会社Aquamit B.V.を設立し、この持株会社がQuadrant の株式の公開買付けを実施し、100%を取得する。

持株会社の資本額は2,598千ユーロ(約 3.4億円)
Quadrant 株式の買付総額(予定)は約162百万スイスフラン(約146億円)

なお、発表にはないが、日本経済新聞(2009/5/5)によると、三菱樹脂は買収費用を全額負担し、役員も派遣して実質的な経営権を握る。持株会社は三菱樹脂の連結子会社となる。

ーーー

Quadrant 1996年設立で、2001年にDSMのEPP 事業を買収した。

DSMEPP事業は、1976年のErta買収に始まり、その後、Sheffield PlasticsPolymer Corporation を買収した。
しかし、
DSMがライフサイエンスと機能材料に集中することを決め、EPP事業をQuadrant に売却した。
DSMは2002年に石化事業をSABICに売却している)

  Formica →Erta n.v.  DSM  Polymer Corporation Quadrant
1933 Formica設立(ベルギー)
(plastic buttons)
     
1936 熱可塑性樹脂の
injection moulding
process
     
1936 nylon      
1946     設立(米国)  
1947     Polypenco特許
(nylon extruding
)
 
1948 Erta n.v.と改称      
1957     Polypenco 設立(英国)
(nylon and PTFE)
その後、欧州、
日本ほかに展開
 
1967 Cestidur SA (France)買収
(Polyethylene HD plate)
     
1976  DSMErta 買収    
1983   Sheffield Plastics USA買収
  (Polycarbonate plate)
   
1988    DSMがPolymer Corp、Polypenco 買収  
1996       Quadrant設立
Symalit AG 買収
熱可塑性フッ素樹脂素材)
2001   QuadrantがDSMのEPP事業買収、 Quadrant Engineering Plastic Productsに改称。
2005   QuadrantがPoly Hi Solidur買収
   (world market leader in UHMW-PE products)

Quadrant は現在、世界19箇所に製造・販売拠点を有し、2,400名の従業員を抱える。

会社概況 http://www.quadrant.ch/download/2008/unternehmenspraesentation.pdf

最近の業績は以下の通り。(百万スイスフラン)

2007 年12 月期 2008 年12 月期
売上高  811.8(730.6億円)  733.4(660.1億円)
EBITDA   98.4( 88.6億円)   68.0( 61.2億円)
当期利益      39.6( 35.6億円)   10.8(  9.7億円)

 


 


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非上場会社の12月決算の発表(決算公告)が出揃った。
各社とも、大きな減益となっている。

ーーー

東燃化学

  
東燃ゼネラル石油 100%
  川崎に東燃コンビナート (PE、PPは三菱化学に譲渡)

                      単位:百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益
07/12  273,100  27,100  27,500  16,600  
08/12  293,300  11,400  11,200  6,600 
増減  20,200  -15,700  -16,300  -10,000

ーーー

日本ユニカー (PE)

  東燃化学 50% / ダウ(UCC)50%

                      単位:百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益
07/12  52,550  2,211  2,146   2,104 
08/12  51,184  -992  -1,166  -727 
増減  -1,366   -3,203   -3,312  -2,831

ーーー

日本ポリエチレン (PE)

  
日本ポリケム(三菱化学)58% / 日本ポリオレフィン(昭電/新日石)42%

                      単位:百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益
07/12  170,154  5,880  5,554   3,379
08/12  178,358  400  606  123
増減  8,204  -5,480  -4,948  -3,256

ーーー

日本ポリプロ (PP)

  
日本ポリケム(三菱化学) 65% / チッソ 35%

                      単位:百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益
07/12  205,397   4,756  4,179   2,792
08/12  206,819  1,047  305  156
増減  1,422   -3,709  -3,874  -2,636

  注 2003年度は1-9月は日本ポリケム(1-8月はPE+PP9月は PPのみ)
    
10月から日本ポリプロ(ポリケム+チッソ)

ーーー

サンアロマー (PP)

  Basell
50% / SKDサンライズ(昭電65%/新日石35%) 50%

                      単位:百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益
07/12  67,401  4,095  4,110   3,280
08/12  69,524  1,542  2,106  1,284
増減  2,123   -2,553  -2,004  -1,996

ーーー

ヴイテック (PVC)

  
 三菱化学 85.1% / 東亞合成 14.9% 

                      単位:百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益
07/12  41,813  -338  -642   -468
08/12  45,206  -1,992  -2,365  -3,025 
増減  3,393  -1,654    -1,723  -2,557
   2008年12月末の累積損益は -16,978百万円
  2000/12 の営業損益は開示なし

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韓国鉱物資源公社(Korea Resources Corporation)は4月29日、ボリビアでのリチウム鉱開発共同推進のため、ボリビア国営鉱業公社(Corporacion Minera de Bolivia COMIBOL) とMOUを締結したと発表した。年480トンの生産を予定している。

COMIBOLは2008年6月18日、韓国鉱物資源公社(旧称 大韓鉱業振興公社)、LS-Nikko Copper など5社からなる韓国企業連合 とCorocoro 銅鉱山を共同開発する契約を締結している。
確認埋蔵量は1500万トンで、
COMIBOLと韓国企業連合が55対45の比率で株式を保有、210百万ドルの投資額を全額韓国が負担する。

LS-Nikko Copperは、日鉱金属、三井金属、丸紅の「日韓共同製錬」と韓国のLGグループ(LG電線、LG産電、LG商事)の50/50出資でLG-Nikko として設立、2003年にLG電線がLGグループを分離、LS-Nikkoに改称した。日鉱は日本側の80%、全体の40%を出資。

これとは別に、ボリビアのMorales大統領は4月21日、フランスのBollore Group とリチウム開発事業の交渉を始めると述べた。

付記

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、住友商事、三菱商事、経産省、日本貿易保険、国際協力機構からなる官民合同ミッションは、6月4日、首都ラパスでエチャス鉱山冶金大臣と面談し、ウユニ塩湖のリチウム資源開発をJOGMECを含む日本の関係企業と共同で行い、これに対して関連する政府関係機関が様々な支援を行うことの重要性と、その具体的進め方につき日本側の考え方の説明を行った。

この結果、ボリビア側としては国家事業として自ら炭酸リチウムの生産を行う考えであるとしつつも、日本からの技術的・資金的協力につき強い期待が表明された。
また、今後、開発に必要となるインフラ、技術データ等に関する情報交換及び将来の開発体制につき定期的に協議を行っていくことに合意した。

ーーー

ノートパソコンや電気自動車用にリチウムイオン電池の増産が続く中で、原料である無機化合物、炭酸リチウムは重要性を増している。

しかし、炭酸リチウムの供給には大きな問題がある。

世界のリチウム鉱の2007年の生産量と埋蔵量は以下の通り。(含有リチウム換算)
http://www.jetro.go.jp/world/cs_america/cl/stats/pdf/lithium.pdf

生産量 確認可採
  埋蔵量
確認埋蔵量
チリ  9,400トン  3,000千トン  3,000千トン
ボリビア   ー   -  5,400
ブラジル   240   190   910
アルゼンチン  3,000   na   na
中国  3,000   540  1,100
米国  非公表   38   410
カナダ   710   180   360
ポルトガル   320   na   na
ロシア  2,200   na   na
ジンバブエ   600   23   27
合計  25,000  4,100  11,000

中国はチベット自治区がリチウムの産地で、中国最大のリチウム生産を誇る扎布耶(Chabyer ザブイェ)塩湖では昨年、生産拡張工事を決めた。投資総額は10億8400万元で、拡張工事終了後には、年産能力は、リチウム2万トン、酸化リチウム5000トン、金属リチウム500トン、高純度リチウム200トン、リチウム材30トン、リチウム化合物490トンとなるという。

しかし、中国ではレアアース(希土類)について「レアアース生産・輸出の厳格な規制を求める建議」が全人代に提出され、中国で幅広い注目を集めている。リチウムについても輸出を規制する可能性は強い。

2009/4/22 中国がレアアースの輸出を制限? 

 

リチウムの埋蔵量ではチリとボリビアが全世界の80%近くを占める。

現在チリで採掘されているのはアタカマ塩湖(Salar de Atakama)にある塩の鉱床。
未開発で世界の埋蔵量の
50%近くを保有するボリビアの資源はウユニ塩湖(Salar de Uyuni)にある。

また、アルゼンチンで採掘されているのはオンブレ・ムエルト塩湖(Salar de Hombre Muerto)で、米国のFMCのリチウム部門である
FMC Lithium が独占的に生産を行っている。

いずれも太古の時代には内海であった塩田(
salt pan)で、現在標高3000 メートル以上の高地の極めて厳しい自然条件の下にある。

チリではアタカマ塩湖の塩水(底の岩塩と表面の塩の固まりの中間に塩水層がある)を汲み上げ、プールで天日乾燥し、アタカマ塩湖から200キロ離れたアントファガスタ港湾都市で炭酸リチウムを生産している。
チリ鉱業化学会社(
Sociedad Quimica y Minera de Chile:SQM)とドイツのChemetallのチリ現地法人が生産しており、前者がアタカマ塩湖鉱区10ヵ所のうち9ヵ所の利権を所有している。

2001年10月にカナダのPotash Corporation of Saskatchewan がSQM株の18.3%を買収し、2004年に37.5%にまで引き上げている。

世界の4割を生産しているSQMは、本業であるヨード、硝酸塩カリウムの増産に注力しており、リチウム増産のめどは立っていない。(増産には新鉱区の開発が必要と言われている。)

ボリビアについては、日本や欧州の企業がボリビアのリチウム採掘を求めているが、Morales大統領は石油の国有化を行っており、ウユニの資源開発は許可されないだろうと見られていた。

2009/2/7  ボリビア、BP系ガス田を国有化

リチウム採掘を管轄するボリビア国営鉱業公社 (COMIBOL) のトップは、「わが国の天然資源に関しては、以前の帝国主義採掘モデルはボリビアでは二度と繰り返さない」としている。
大統領
も何度も「リチウムのある塩湖は世界のものではなく、ボリビア国民のものである」と述べている。

今回の改正憲法では、
国家の目的と機能(9条)のなかに「自然資源の責任ある利用の促進及びその工業化の促進」を掲げ、
先住民族の権利(30条)に「そのテリトリーにおける自然資源の開発による利益を受ける権利」を挙げている。

自然資源については、
「鉱物資源、水資源、炭化水素、森林、生物多様性などはボリビア国民の所有物であり、国家によって管理される」(348、349条)、
「国家は自然資源の探査・開発・工業化・輸送流通を管理・監督する」(351条)、
「炭化水素(天然ガスや石油)は国家管理の下に置かれ、ボリビア石油公社によって生産・流通が行われる。但し特定の事業を私企業と契約によって行うことを妨げるものではない」(359条他)と規定している。
   
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2009/02/post-ca8e.html

ーーー

COMIBOLは2010年春にリチウムとホウ素、マグネシウム、カリウムを塩湖から回収する実験プラントの発注先を決定して、2013年に商業用プラントの操業を開始することを計画している。

総額200億円規模の事業で、三菱商事、住友商事、韓国のLG、フランスの企業家Vincent Bollore が政府に対し、陳情を行った。

住友商事は、リチウムを海水から効率的に回収する技術を持つ北九州市立大学国際環境工学部の吉塚和治教授(分離工学)と提携している。
海水を濃縮し、マンガン酸化物とリチウムイオンを結合させて、リチウムを回収する技術で、従来の濃縮水に炭酸ナトリウムを投入して沈殿させる方法より効率が良い。

三菱商事は大株主として三菱自動車の再建を支援するが、その切り札の一つが、2009年夏に市場投入する電気自動車。三菱商事の試算によると2020年代には世界の自動車の半数が電気自動車へシフトし、原料の炭酸リチウムの需要は急拡大する。
このためボリビアの権益確保に動いた。

ボリビアのMorales大統領は4月21日、フランスのBollore Group とリチウム開発事業の交渉を始めると述べた。

Bollore Groupはイタリアの自動車メーカーのPininfarinaと電気自動車製造のJVを持っており、時速125kmで2時間走れる電気自動車用にリチウム電池を開発している。

大統領は今年の訪仏時にBollore 本社を訪問し、Bollore 社長と一緒に電気自動車に試乗した。

大統領は「ボリビア政府は天然資源のコントロールを絶対に手放さない」とし、政府の“absolute control” と、利益の60%を求めている。
また、
リチウムが欲しければボリビアで電気自動車を製造することを提案すべきだとしている。

ーーー

また、アタカマ塩湖の採掘現場の自然破壊も問題となっている。

採掘し放しで、使った塩素も垂れ流しで、水が汚染されているという。
http://www.dailymail.co.uk/home/moslive/article-1166387/In-search-Lithium-The-battle-3rd-element.html

環境対策の電気自動車が環境破壊を起こすことになりかねない。



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水俣病 53年

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水俣病発生を行政が把握してから53年を迎えた5月1日、熊本県水俣市で犠牲者を悼む慰霊式があった。

与野党が今国会に出した被害者救済法案をめぐる修正協議を始めたのをふまえ、斉藤環境相は式典のあいさつで「一刻も早く(救済の)枠組みが整理されるよう願う」と述べ、今国会中の救済法案成立への期待を表した。

ーーー

与党は3月13日、「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の最終解決に関する特別措置法案」を国会に提出した。

2009/2/17 水俣病与党プロジェクトチーム、チッソ分社化法案を今国会提出へ

これに対し、民主党は4月17日、「水俣病被害の救済に関する特別措置法案」を参議院に提出した。

与党案 民主党案
対象疾病 1)四肢末梢優位の感覚障害 1)四肢末梢優位又は全身性の触覚又は痛覚の感覚障害
2)口の周囲の触覚又は痛覚の感覚障害
3)舌の二点識別覚の障害
4)求心性視野狭窄
5)大脳皮質障害による知的障害、精神障害又は運動障害
被害者給付金 150万円 300万円
医療費等
 
療養費
療養手当:月額10,000円
医療費:
 自己負担分相当額
 療養手当:公健法の療養手当と同等額
 特別療養手当:月額10,000円
最終解決に向けた取組 公害健康被害補償法
地域指定等の解除
    
     ー
事業再編計画
 
事業譲渡(チッソ分社化)

当初の基準は、「四肢抹消の感覚障害のほかに視野狭さくや中枢性難聴など複数の症状の組み合わせ」であった。
最高裁は2004年の関西訴訟判決で、「一定の条件があれば感覚障害だけで水俣病と認められる」とした大阪高裁の判断を支持した。

与野党法案が出そろってから初の与野党協議が4月24日、国会で開かれたが、両案の隔たりが改めて浮き彫りになった。

与党から「民主党案は救済対象を広げすぎではないか」などの指摘があった。
但し、一時金については与党の150万円から増額する方向で与党と民主党の合意が図られる見通しとされている。

一方、チッソ分社化について民主党は「現時点ではとても容認できない」との見解を示した。

ーーー

西日本新聞は4月23日の社説で以下の通り述べている。

加害企業の事実上の消滅につながるチッソ分社化には、患者団体などに「責任逃れだ」との強い反発がある。私たちも同感ではあるが、補償費確保などを考えると、チッソのありようは避けて通れない問題だろう。
加害責任と救済責任を明確にしたうえで、チッソの補償費支払い能力を維持する仕組みを、与野党協議で救済法案とは別に練り上げてもらいたい。

水俣病の地域指定解除は「何をか言わんや」である。地域指定が解除されれば患者認定も当然なくなる。それは行政的には水俣病問題の終結を意味する。

水俣病被害の全容はいまだつかめていないのだ。新たな救済策実施にあたっては、民主党案に盛り込まれた「国による速やかな被害実態調査の実施」こそ最優先されるべきだろう。
それを怠れば、新救済策も14年前の政治決着の二の舞いになってしまう。

ーーー

民主党によると水俣病患者数は以下の通り。

      補償 人数
救済 公害健康被害補償法患者 行政が感覚障害と運動失調など
複数症状の組み合わせにより認定
1,600万円~1,800万円 補償 2,962
1995年 政治解決* 医療手帳 四肢末端優位の感覚障害 チッソから一時金260万円、
国・県から医療費自己負担分全額、
月額約2万円の療養手当
11,152
保健手帳 感覚障害以外で一定の神経症状 医療費自己負担分(上限付き)支給 1,222
司法救済 85年8月 2次訴訟(福岡高裁) 600~1,000万円補償     4
04年10月 関西訴訟(最高裁)
 チッソは二審で確定(51人)
 国・県分のみ上告(45人)
37人へ計7,150万円
8人は賠償取消
(但し二審判決で支払済みで変更なし
) 
   51
新保険手帳 *  関西訴訟で国側が敗訴し、復活 医療費自己負担分支給 21,190
未救済 公健法認定申請者 最高裁判決後   6,393
その他 国賠訴訟等原告   1,688
不知火患者会    1,662
新潟水俣病      17
水俣病被害者互助会       9

* 医療手帳、保健手帳、新保険手帳は、認定審査、認定訴訟取り下げが条件
  保健手帳、新保険手帳は、補償はなく、医療費補助のみ 


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3月決算の発表が始まった。

信越化学は長い間、増収増益を続けてきたが、金融危機を原因とする需要の落ち込みで、減収減益となった。
但し、その状況下でも塩ビは営業損益で黒字となっており、全体の減益幅も小さい。
配当は10円増配し、年間100円とする。

連結決算                        単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/3  1,376,364  287,145  300,040  183,580  40.0  50.0
09/3  1,200,813  232,927  250,533  154,731  50.0  50.0
増減  -175,551  -54,218  -49,507  -28,849  10.0  -
営業損益対比(億円)
  08/3 09/3 増減   2009年
上期 下期
有機・無機化学品    995    951  - 44      555  396
 塩ビ系    315    367  52     182  185
 シリコーン系    431    336  - 95      228  108
その他    249    248   - 1     145  103
電子材料  1,621  1,122  -499      794  328
半導体シリコン  1,411    984  -427      699  285
その他    210    138  - 72        95   43
機能材料    260    257   - 3     154  103
調整     -4     -2      2     -2    0
合計  2,871  2,329  -543    1,501  827

半導体シリコンは期後半から、幅広い分野でデバイス需要が急速に減少し、大幅な減益となった。
シリコーンも期後半から幅広い分野で需要が減退した。
これらの下期の営業損益は、上期のそれから半分以下になっている。

信越半導体グループ(信越半導体、SEHアメリカ、SEHマレーシア、SEHヨーロッパ、SEH台湾)の経常損益推移は以下の通り。

それに対し、シンテックは住宅市場の低迷が続く中、世界中での拡販により高水準の稼動を継続し、これにより塩ビ系は前期比でも増益となった。

Shintech は12月決算。
米国基準では「経常損益」概念はないが、税引前損益から特別損益を除外したもの。

<p><p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p>

なお、米国の他のPVCメーカーは各社とも下期に減益となっており、特にGeorgia Gulf Polyone は大幅赤字となっている。   

Shintechの場合は荷造設備を含め、輸出体制が以前から整っており、国内の需要不振にもかかわらず、世界各地域への輸出によりフル生産を行ったのが、他社との違いである。<p><p>HTML clipboard</p></p>
また、
<p><p>HTML clipboard</p></p>大部分のVCMの供給を受けるダウとの間で、共存共栄の考え方から製品値下がりの一部をダウが負担する契約になっていると言われており、これも影響していると思われる。

それにしても、SABICさえ損益が激減している10~12月を含む下期でシンテックが増益となっているのは驚異的だ。



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積水化学は「合わせガラス用中間膜」の事業を戦略事業と位置付け、グローバルに展開しているが、4月27日、Celanese からポリビニルアルコール(PVA) 樹脂事業を173百万ドルで買収することを決めたと発表した。

中間膜は、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂を製膜化することにより製造するが、その原料サプライチェーンは以下の通り。

酢酸 → 酢酸ビニルモノマー(VAM) → PVA樹脂PVB樹脂→合わせガラス用中間膜

今回、PVB樹脂の原料のPVA樹脂事業を買収することにより、安定的な原料供給体制を構築するとともに、需要地生産の促進、原料面での技術シナジーの発揮等、サプライチェーンの強化を図る。

買収するのはセラニーズのPVA樹脂事業に係る資産(設備、棚卸資産および知的財産権等)。
生産拠点はセラニーズ米国子会社の
Celanse Ltd.Calvert City, Ky.Pasadena, Texas 及びスペイン子会社のCelanese Chemicals Iberica S.L. Tarragona 3工場で、能力は12万トン/年。  

当該部門の2008年の売上高は296百万ドル。

同社ではセラニーズのPVA樹脂事業を譲受けるため、米国およびスペインに2009年5月に子会社を設立する。

ーーー

積水化学は、建築用と自動車用に「合わせガラス用中間膜」を製造販売している。

ガラスは割れると細かく鋭利な破片となって飛び散る性質を持っているため、フロントガラスには合わせガラス採用が義務づけられている。

2枚のガラスの中間膜を挟み込むことで、耐貫通性と飛散防止性をもたせる。
また、ニーズにあわせて遮音膜、遮熱膜、遮音・遮熱膜など高機能中間膜の需要も増えている。

遮音中間膜は、従来の中間膜層 2層の間に遮音層(コア層)を設ける3層押出技術により製造。
遮熱中間膜は紫外線に加え、太陽光中の熱線(中赤外線)を大幅にカットする。

同社は自動車向けの中間膜では世界で42%のトップシェアを誇っており、2010年度に44%を目指す。

同社の中間膜及び原料の生産拠点は以下の通り。

  工場、子会社 場所 稼動時期 生産品
製膜 滋賀 水口工場 滋賀県甲賀市 1960年 通常膜、遮音膜、遮熱膜、遮音・遮熱膜
SEKISUI S-LEC Mexico S.A. de C.V メキシコ・クエルナバカ市 1971年 通常膜
SEKISUI S- LEC B.V. オランダ・ルールモンド市 1997年 通常膜、遮音膜
SEKISUI S-LEC (THAILAND) CO.,LTD. タイ・ラヨン県 2002年 通常膜
積水中間膜(蘇州)有限公司 中国・江蘇省蘇州市 2004年 通常膜
SEKISUI S-LEC AMERICA, LLC. アメリカ・ケンタッキー州 2007年 通常膜、遮音膜
原料 滋賀 水口工場 滋賀県甲賀市 1960年 PVB樹脂
SEKISUI S- LEC B.V オランダ・ヘレーン市 2007年 PVB樹脂
アメリカ子会社 アメリカ・テキサス州 今回
 買収
PVA樹脂
アメリカ・ケンタッキー州
スペイン子会社 スペイン・カタルーニャ州

ーーー

Celanese の基はドイツのHenri Dreyfus1913年に設立したCellonit Gesellschaft Dreyfus (セルロイド製造)で、その後、航空機用ペイント、その原料の酢酸の製造を行った。英国、米国にも進出、第一次大戦後の需要減でアセテートの製造を始めた。

1961年に米Celanese はヘキストとの合弁で Ticona を設立、1964年には Celanese は日本でダイセルとの合弁でポリプラスチックを設立している。

1987年にヘキストがCelanese を買収したが、1997年にヘキストは事業再編でTiconaを分離、1998年に化学部門を新セラニーズとして分離した(Ticonaはセラニーズ子会社となる)。

2004
年にBlackstone Capital PartnersTOBでセラニーズを買収したが、2007年にCelanese株式の売却を完了した。

Celanese は酢酸を原料に、以下の製品を製造販売している。


セラニーズは現在、南京産業パークで大規模酢酸コンプレックスを操業しており、子会社Ticona超高分子量ポリエチレンほかの事業を展開している。

2007/2/22 セラニーズの中国での活動 (Celanese の酢酸事業概況も)

ーーー

今回、Celansese が買収するPVA(ポバール)は、クラレがビニロン繊維の原料として世界に先駆けて工業化した。
クラレがシェア世界第一位。

クラレは岡山(96千トン)と中条(28.3千トン)にプラントをもつが、中条は酢ビの生産停止で特殊品が中心となっている。

クラレは1996年10月、シン
ガポールに日本合成化学との50/50JVのポバールアジアを設立し、Sakra島に能力40千トンのプラントを持つが、2008年1月付けでクラレ 100%になった。

クラレは2001年にClariantのPVA、PVB事業を買収、Kuraray Specialities Europe GmbH を設立した。ドイツ・フランクフルトのPVA 50千トン、PVB 16千トンのプラントを手に入れたが、現在の能力はPVA 70千トン、PVB 20千トンとなっている。

酢酸関連については 2006/5/20 酢酸業界

 


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