2012年4月アーカイブ

2010年4月のBPの原油流出事故で米司法省は4月24日、BPの元技術者を2つの司法妨害(証拠隠滅)容疑で逮捕したと発表した。

同省によると、元技術者のKurt Mix容疑者は、当時のBPの発表よりもはるかに多い原油が流出したことを示すメッセージ300通以上をiPhoneから消去した疑いが持たれている。

Clean Water Actでは、原油の流出量1バレルに対して1,100ドルの罰金(重大な過失による場合は、4,300ドル)が決められている。

政府は410万バレルが流出したと見ており、重大な過失であれば、罰金は176億ドルにもなる。
BPでは流出量を320万バレルとし、重大な過失なしとしてバレル1,100ドルを適用し、35億ドルを引き当てており、現在政府と交渉中。

Mix容疑者はBPの掘削・仕上げのプロジェクトエンジニアで、流出量の見積もりと漏出停止作業の担当をしていた。

2010年10月4日頃Mix容疑者は、BPの弁護士が電子情報を集めると知り、200通以上の上司との通信メッセージを抹消した。
また、8月19日頃に、Mix容疑者はBPのコントラクターとの間の流出量に関する100以上のメッセージを抹消した。

BPはMix容疑者に対し、携帯のメッセージを含め、事故に関するすべての情報を保持するよう、何度も通知していた。

起訴されると、禁固20年以上で、罰金が1件につき25万ドルの可能性がある。

当局は今後、BPとその従業員が原油流出量について意識的に少なく見せようとしたとみて調べる。
Mix容疑者が会社からデータの消去を指示されたのか、誰かと共謀したのか、などが問題となる。

2012年1月に退職して会社に対するロイヤリティが少ないMix容疑者を最初に逮捕したのは、司法取引に持ち込んで彼から会社や他の社員についての情報を得ようとする検察側の作戦と見られている。

司法省では、Mix容疑者は井戸からの流出量がBP側が公表しているよりもはるかに多いことを認識していると示唆した。
また、BPが2010年5月に
失敗したTop Kill (漏れている箇所に泥などを流し込んで原油を封じ込める)実施に際し、BPの内部データや通信メッセージでは失敗を予想していたのに、楽観的な発表をしたと述べた。

Top Kill 開始の5月26日に、Mix容疑者は上司への送信で、 "Too much flowrate - over 15,000."(日量15千バレル以上が流出)と報告した。これはBPの発表5千バレルの3倍で、15千バレル以上の場合はTop Kill で処理できないと見られていた。

初日の終わりにMix容疑者は、15千バレル以上の流出で開口部は大きすぎると報告した。
しかし、BPはTop Kill は計画通り進んでいると発表した。
5月29日になってTop Kill は中止され、BPは失敗を発表したが、翌日の株価は約15%下落した。

株価の下落で損をしたとBPを訴えた投資家は、BPが株価下落を防ぐため流出量を低く評価したと主張している。

ーーー

司法省のDeepwater Horizon Task Forceは現在も爆発の調査を行っており、法に違反する行為があったかどうか、誰に責任があるのかを明らかにしようとしている。

なお今回の逮捕は、先日合意に達した漁業関係者・清掃業者・ホテル・不動産会社など10万以上に及ぶ原告との78億ドルの和解の動きには影響を与えない。

 
       付記

連邦地裁のCarl Barbier判事は5月2日、和解案を仮承認し、最終承認のための公聴会を11月8日に設定した。

これには、米国政府などからの請求(Clean Water Act による罰金やOil Pollution Actによる自然資源損害によるもの)や州や地方自治体からの請求、別の併合審理手続きによるもの、その他は含まれていない。

2012/3/5 BP、メキシコ湾岸原油流出事故で漁業関係者などと和解

外務省は4月27日、国連の大陸棚限界委員会が太平洋の4海域約31万平方キロメートルを日本の大陸棚として新たに認める勧告を採択したと発表した。国連同委の勧告には拘束力がある。

政府は2008年に沖ノ鳥島と日本最東端の南鳥島の周辺の計7海域、約74万平方キロメートルについて大陸棚拡張を申請した。
  http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/dai4/sankou1.pdf

これに対し、中国と韓国は沖ノ鳥島が基点の2海域について、EEZを設定できない「岩」だと主張する口上書を同委員会に提出した。

中国の国連代表部は意見書で「沖ノ鳥島には人間は住めず、経済生活は営めない。大陸棚を設定する、いかなる根拠もない」と指摘、多くの国が同様の懸念を持っており、委員会は日本の申請を取り上げるべきでないと主張した

今回、国連の委員会は4海域計約31万km2(国土面積の約82%に相当)を認めた。
 ・四国海盆海域
 ・小笠原海台海域
 ・南硫黄島海域
 ・沖大東海嶺南方海域

いずれも沿岸から200カイリの排他的経済水域(EEZ)の外にあり、沖ノ鳥島も認定の基点とされ、国連から「島」とのお墨付きを得た。

国連は沖ノ鳥島南方海域(九州パラオ海嶺南部海域)については判断を先送りした。

残りの2海域(茂木海山海域、南鳥島海域)は陸続きになっていないと判断され、認められなかった。
政府は再申請するか、勧告を受け入れるか判断する。

今後、政府は条約を批准していない米国などと調整しながら国内手続きを進め、境界を画定。その後、国連に連絡すれば正式に拡張部分の開発権などの効力が生じる。

ーーー

大陸棚限界委員会は国連海洋法条約に基づいて設置され、地質学や地球物理学などの専門家がメンバー。

国連海洋法条約では、原則として海岸線から200海里370キロまでの海域を、鉱物資源などを採取できる、その国の大陸棚としており、その外側についても、海底の地形や堆積岩の厚さなど一定の条件が満たされれば、沿岸国が最大350カイリまで大陸棚の限界を延長できる。
この場合、EEZ外でも大陸棚の海底や地下にある資源の探査・開発権が認められる。

日本はレアメタルや次世代の天然ガス資源であるメタンハイドレートなどの採掘権を主張できる範囲が大幅に広がる。


付記

中国外務省の劉為民報道局参事官は4月28日夜、日本最南端の沖ノ鳥島が大陸棚の基点として国連に認められたと日本政府が発表したことについて会見で以下の通り述べた。

国連の大陸棚限界委員会はまだ日本の大陸棚限界問題の処理結果を公表しておらず、日本側が何を根拠に発表したのか分からないが、国際的に主流の見方は日本側の主張を支持していない。

中国の立場は一貫しており、国際法に基づけば、沖ノ鳥礁は排他的経済水域(EEZ) や大陸棚に含めるべきではない。


カネカは4月18日、ドイツでの酸化型コエンザイムQ10に関する特許侵害訴訟でカネカの請求を棄却する判決が出たため、4月13日に控訴したと発表した。

カネカは、酸化型コエンザイムQ10に関する同社の欧州特許(EP 1 466 983)を侵害しているとして、2010年10月に浙江醫藥(Zhejiang Medicine) と欧州のディストリビューターである欧州協和発酵を相手取り、ドイツ・デュッセルドルフ地方裁判所に販売差し止めと損害賠償を求める訴訟を提起していた。

判事は浙江醫藥の設備を視察した後、3月13日に、カネカの請求を根拠がなく、侵害の事実はないとして棄却する判決を下し、訴訟費用をカネカ負担とした。

カネカはこの判決を不服とし、4月13日に控訴した。

浙江醫藥は、最初から請求は根拠のないものと考えていたとし、世界中でカネカが行っている裁判で同じ結果が出ると信じていると述べた。

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カネカは、コエンザイムQ10に関する研究開発投資を継続的に行っており、その過程で生じた知的財産は重要な経営資源と位置付け、これを守るため各地で訴訟を行っている。

2009年に、中国の廈門金達威ビタミン(Xiamen Kingdomway Vitamin)と米国のPacific Rainbowを被告として、還元型コエンザイムQ10に関する特許の侵害に対して、米国カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に販売差し止め及び損害賠償を求める訴訟を提起し、その結果、被告が米国での還元型コエンザイムQ10の販売を取りやめることに同意した。

酸化型コエンザイムQ10に関しては、2010年10月には、上記のドイツに加え、中国のコエンザイムQ10 メーカーと輸出業者及びフランスの輸入業者を相手取ってフランス・パリ地方裁判所に特許侵害訴訟を提起した。

さらに、2011年3月には、米国特許(U.S. Patent 7,910,340)に基づき、カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所に下記の7社を被告とする侵害訴訟を提起し、差止と損害賠償を求めた。

浙江醫藥 (Zhejiang Medicine)と同社の米国子会社 ZMC-USA
廈門金達威集團 (Xiamen Kingdomway Group)
米国 Pacific Rainbow International
三菱ガス化学
米国 Maypro Industries(
山田進社長が商社の駐在員として渡米し、独立して設立)
神舟生物科技ShenZhou Biology & Technology)

この米国訴訟の追加的措置として、カネカは2011年6月に米国国際貿易委員会(ITC)に申立を行い、上記の7社による特許侵害についての調査を行うよう求め、ITCは7月に調査を決定した。

通常、調査開始決定から約1年後に特許侵害の有無の初期決定(Initial Determination)が下され、再審査がなければ初期決定がITCの最終決定となる。
ITCは、米国関税法337条に基づき、輸入品による特許侵害や輸入品に関わる不正競争についての申立に対応する権限を持っている。

これに対し、三菱ガス化学は以下の発表を行っている。

自社の製造方法が当該特許のいかなる有効なクレームも侵害しないとの決定をITCが速やかに下すものと確信している。
同社独自の製法でコエンザイムQ10を製造し、カネカの米国特許出願の10年以上前から米国で販売している。
カネカの米国特許権を侵害していないと確信しており、積極的に反論していく。

ーーー

コエンザイムQ10は、人間の全ての細胞1つ1つに存在する補酵素で、①エネルギー産生、②抗酸化の働きがあるが、加齢とともに減少する。

体内には還元型と酸化型のコエンザイムQ10が存在するが、大部分は還元型(血中では95%以上)。

抗酸化力を発揮するのは「還元型」だけで、酸化型コエンザイムQ10は小腸ですぐ還元されて体内では還元型
コエンザイムとなる。
但し、
体内で"酸化型"を"還元型"に変換する力も、年齢とともに、衰えていく。

カネカは、世界で初めて高純度還元型コエンザイムQ10の大量生産技術を確立した。



ナフサの第1四半期の輸入価格平均は52,121円/klとなり、国産ナフサ基準価格は54,100円/klとなった。

3月の輸入価格は急騰しており、3月単月ベースでは国産基準価格は59,300円となる。

ナフサ輸入価格の推移は以下の通り(単位:円/kl)

  輸入価格 平均価格 基準価格
'11/1 49,216 50,531 52,500
2 50,586
3 52,019
4 55,594 57,007 59,000
5 58,403
6 57,298
7 54,427 52,885 54,900
8 52,412
9 51,831
10 50,717 49,680 51,700
11 49,541
12 48,777
'12/1 48,700 52,121 54,100
2 50,866
3 57,302

本年3月に2011年の実績が修正された。
大半は金額の端数だが、2011年2月の数量が修正されており、この結果、2011年第1四半期の国産ナフサ基準価格が当初の52,400円から52,500円に変わった。

国産ナフサ基準価格は、輸入価格の四半期平均(四半期ごとの加重平均価格)に2,000円を加算(10円単位を四捨五入)。

なお、最近のナフサ価格(2か月後入着)は下記の通りで、2ー3月は急騰している。(4月には下降に転じた。)

このため、第2四半期の国産ナフサ基準価格は6万円を超えると見られている。
 
仮に平均価格 1050$/t とすると、81円/$で85,050円/$
比重0.691で58,770円/kl 国産基準価格 60,800円/kl

なお、グラフのナフサ価格は毎日の東京オープンスペックのスポット価格であり、輸入先、グレード、契約形態などの違いにより実際の購入価格とはかなり差がある可能性がある。


 

4月15日、中国のあるメディアが浙江省新昌県のあるカプセルメーカーのカプセル原料が工業用ゼラチンだと報道した。
なめし加工した後の残りの皮を加工して生産しており、それが既に大量に薬品市場に流れ込んでいるということで、社会に強烈なインパクトを与えた。

指摘を受けたのは、「学洋明膠蛋白廠」。(明膠はゼラチンのこと)

カプセル工場では皮革の廃材を強酸や強アルカリの液体で脱色し、ゼラチンにしていた。

まず原料を袋に入れ、大鍋の中で煮る。その後、鉄の容器に移し冷ましながら、異物を取り除く。
ある程度固まったゼラチンを切り分け、網に載せ天日干したのち、完全に水気が飛んだものを出荷していた。

中国紙によると、通常なら1万個で60元以上するカプセルもこの方法なら40~50元にコストを抑えられる。

同社のゼラチンで作られた医薬用カプセルから基準値を超える
最大で安全基準の90倍の量)重金属クロムが検出された。

「学洋明膠蛋白廠」は、医薬用カプセルやアイスクリーム、乳製品、ドリンクといったものの原料として多くの企業にゼラチンを販売していた。
地元の人たちは「ゼリーやアイスの類は怖くて食べられない」と話している。

報道の翌15日18時に新昌県はこの学洋明膠蛋白廠を閉鎖した。
同社の創業者の息子が、証拠隠滅をはかるため、会社に放火する騒ぎも起きた。

浙江省新昌県には数十社の薬用カプセル製造会社が集中。全国生産の3分の1に当たる年約1000億個が製造されている。
同県の18日の調査結果発表では、96サンプルのうち33で毒性のあるクロムの値が基準を超えたという。

同県公安局が4月16日に、警察が容疑者11人に対する強制措置をとったことを明らかにした。華星膠丸廠、新昌県卓康カプセル、新昌県瑞香膠丸、浙江林峰カプセルのカプセル生産企業4社の関係者だという。

国家食品薬品監督管理局が4月16日緊急通知し、含有クロム量超過の薬用カプセルの販売停止と使用停止を発表した。

4月18日に浙江省寧波市の前宋村にあるゼラチン製造拠点40カ所が摘発された。

衛生省は4月21日、長春海外制薬集団、吉林省輝南天宇薬業股分、丹東市通遠薬業、青海省格拉丹東薬業、四川蜀中制薬、通化金馬薬業集団股分、通化盛和薬業股分、通化頤生薬業股分、修正薬業集団股分ーーなどを挙げ、各医療機関に対して当該企業の製造した全てのカプセル剤の購入と使用の即時停止を命じる通達を出した。


日本の厚生労働省もこうした薬用カプセルが日本に輸入されていないかどうか事実関係の調査を始めた。

日本では医薬用ゼラチンは日本薬局方によりその純度が厳しく規定されている。

 

 

政府が2012年7月から始める自然エネルギーの新たな普及制度で、電力会社の買取価格がほぼ決まった。

経済産業省の第三者組織「調達価格等算定委員会」が4月25日の会合で、電力会社による買取価格案を議論し、終了後に委員長案を発表した。
同委員会は27日に再度議論し、枝野経産相に買い取り価格と期間を報告する。
国民からの意見聴取などを経て、経産相が最終決定する。

ーーー

2009年2月に当時の自民党の二階経済産業大臣が太陽光発電に関する新たな買取制度の新設構想を明らかにした。
太陽光発電導入が促進できるように、電気事業者が10年程度にわたり、(当初は)当時の2倍程度の価格で買い取る仕組みを考えているとした。

2009/3/3 太陽光発電に関する新たな買取制度の創設へ

民主党政権に代わり、2011年の震災当日の3月11日午前に再生エネルギー法案を閣議決定した。
同法案は
与野党協議を経た修正案が8月23日の衆院経済産業委員会で可決され、同日中に衆院を通過、参院審議を経て8月26日に成立した。

2011/6/24 再生可能エネルギー法案 

原案では「買い取り価格は経産相諮問機関が決定」となっていたが、修正の結果、「調達価格等算定委員会(国会同意人事)の意見を聴取して決定」となった。

委員は以下の通り。
 委員長
  植田 和弘  京都大学大学院経済学研究科教授
 委員長代理
  山内 弘隆  一橋大学大学院商学研究科教授

  辰巳 菊子  公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会理事・環境委員長
  山地 憲治  公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)理事・研究所長
  和田 武  日本環境学会会長

当初の国会同意人事案では、再生可能エネルギーの普及を阻んできた3名(うち1名は経団連地球環境部会長)が入っているとして反対が広がり、1名が差し替えとなった。
 このため、発足が遅れ、第一回会合は本年3月6日となり、短期間での決着となった。

ーーー

今回の委員長案は以下の通り。

太陽光発電のうち、住宅用に相当する10kw未満については、全量買い取り方式ではなく、現行の「余剰電力買い取り制度」を維持する。これのみ、消費税非課税となっている。

   kw当たり

税前
利益率
 IRR

買取価格(円) 買取期間

建設費

年間
維持費

税込み 税抜き
太陽光 10kw以上 32.5万円 10千円 6% 42.00 40 20年
未満
≒家庭用
46.6万円 4.7千円 3.2% 42.00 42 10年
風力 20kw以上 30万円 6.0千円 8% 23.10 22 20年
未満 125万円 1.8% 57.75 55
地熱 1.5万kw以上 79万円 33千円 13% 27.30 26 15年
未満 123万円 48千円 13% 42.00 40
中小水力 1000kw~
30,000kw
85万円 9.5千円 7% 25.20 24 20年
200kw~
1000kw
69万円 69千円 7% 30.45 29
200kw未満 100万円 75千円 7% 35.70 34
バイオマス メタン発酵ガス化
 ・下水汚泥
 ・家畜糞尿
392万円 184千円 1% 40.95 39 20年
未利用木材 41万円 27千円 8% 33.60 32
一般木材
(パーム椰子殻含)
41万円 27千円 4% 25.20 24
廃棄物系(除木質)
 ・一般廃棄物
 ・下水汚泥
31万円 22千円 4% 17.85 17
リサイクル木材 35万円 27千円 4% 13.65 13



買取価格は、「価格は一貫してヒアリングを通した費用を積算し、IRRで事業リスクを発電ごとに個別で見る考え方で決定し、諸外国との比較を行っている。高くもなく低くもなく、施行後3年間は例外的に利潤を高める、という意図を反映した価格」(植田委員長)とした。

付記 欧州の固定価格買取制度

委員の中には「太陽光は30円代後半でも採算が合う」との声もあったが、再生エネルギー導入を加速させる狙いから高めの設定となった。

ヒアリング結果:http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/pdf/005_02_00.pdf

これに対し、最近の設備コストの低下などを織り込んだ。
  http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/pdf/006_02_00.pdf

買い取り価格は年度ごとに政府が見直す。
制度の適用を受けた場合は、二年度目以降の買取価格の算定のために、設備のコストデータを提供することを条件としている。

業界団体が要望する価格をほぼ受け入れる形になり、民間企業の参入が加速すると見られる。

参考 2011/5/24  孫正義氏の自然エネルギー財団とメガソーラー計画

買い取り価格は電力会社の燃料費に比べて高く、この差額は広く電気料金に上乗せされる。
経済産業省では標準家庭で上乗せ分は月100円未満との見通しを示している。

なお、ドイツでは電気料金に上乗せによる消費者負担が政府の予想を超えて膨らんだため、4月1日以降の設置分について買取価格を引き下げ、太陽光発電の普及を事実上抑制する形に方針転換した。

2012/4/6 太陽電池大手 Q-Cells 破綻




関西電力大飯原発の再稼働をめぐり、橋下大阪市長と松井大阪府知事は4月24日、首相官邸で藤村修官房長官と会談した。
橋下氏らは再稼働の条件とする8項目の提言を提出し、慎重な判断を求めた。

8項目の提案は以下の通り。

 ・ 原発から100キロ圏内の都道府県と安全協定を締結できる仕組みを構築する

 ・ 使用済み核燃料の最終処理体制を確立し、その実現に取り組む(下記参照)

 ・ 国民が信頼できる規制機関として、政府からの独立性が高い三条委員会の規制庁を設立する(下記参照)

 ・ 新体制のもとで安全基準を根本から作り直す

 ・ 新たな安全基準に基づいた完全な安全評価(ストレステスト)の実施

 ・ 重大な原発事故に対応できる防災基本計画と危機管理体制の構築 

 ・ 電力需給の徹底的検証と結果の開示(下記参照)

 ・ 事故収束と損害賠償など原発事故で生じるリスクに対応できる仕組みの構築

 

藤村長官は「8項目の提案については、将来的には考えるべきことで、今回の手続きは進めていきたい」と述べた。

橋下市長は記者団に対し、再稼働に関する政府の姿勢を以下のように批判した。

政権は安全宣言をしたが、これは安全を確認したわけではなく、国民はだまされてはいけない。
今回は政権みずからが考えた手続きで進めているだけであり、科学者や原子力安全委員会のチェックがないまま、政権が政治家の作った手続きをそのまま進めているだけで安全かどうかは分からない。
これは国家の重大な危機だ。

藤村官房長官は「いまの手続きは変えられない」と言っていたが、それを変えるのが政治主導ではないか。

ーーー

滋賀県の嘉田知事と京都府の山田知事は4月17日、政府に対し「脱原発依存」の工程表を示すことなどを求める共同提言を発表した。「国民的理解のための原発政策への提言」と題して下記7項目を掲げた。

 1.原子力規制庁の早期設置や電力の需給状況を点検する第三者委員会の設置
 2.福島原発事故の徹底した解明と公表、電力需給状況に係る資料の完全な公開
 3.免震事務棟、防潮堤などの恒久的な対策ができていない段階における安全性の説明
 4.事故調査が終わらない段階において稼働するだけの緊急性の証明
 5.脱原発依存の実現の工程表明示と、核燃料サイクルの見通し
 6.事故を想定したオフサイトセンターの整備やマックス2、スピーディなどのシステムの整備と
  それに伴う避難体制の確立
 7.福島原発事故被害者の徹底救済と福井県に対する配慮

ーーー

民主党原発事故収束対策PTは4月10日、原発再稼働問題に関する緊急提言(「原子炉の安全」から「人々の安全」へ)を発表し、5条件をあげた。

 1、「国会事故調」並びに「政府事故調」の報告による事故原因の究明・解析
 2、「原子力規制庁法案等」の成立、新規制組織、法律、マニュアル等の策定
 3、 改正原子力災害対策特別措置法に基く地域防災計画の策定
 4、「免震重要棟」(「最後の砦」)の設置
 5、「ベント管の設置」あるいは「放射性物質を除去するためのフィルター設置」


福島第1原発事故で災害時の指揮拠点となる免震事務棟の重要性が確認された。=「最後の砦」
大飯原発では免震事務棟の完成時期は2015年度である。(当初より1年前倒し)

原子炉内の圧力を下げるための排気(ベント)設備に放射性物質を取り除くためのフィルターを取り付ける工事も2015年度に完了する。
津波対策の防潮堤のかさ上げは、従来通り2013年度の完成を見込む。

政府はそれまでに大きな地震はないと断言できるのだろうか。

 

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使用済み核燃料処理について

 河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり(2011/5/31) 使用済核燃料で原発が止まる

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「三条委員会の規制庁」について

現在の原子力安全庁の案は下記の通りで、環境省の外局と位置付けられている。

提案では、政府からの独立性が高い三条委員会の規制庁を設立するとしている。

自民党もこれと同じで、独立性の高い3条委員会として「原子力規制委員会」を環境省に置き、その下に規制庁を置くとしている。独立性担保のため、規制委の人事は、環境省から切り離して国会同意人事とし、規制庁の人事は規制委が行うとしている。

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「電力需給の徹底的検証と結果の開示」について

政府は4月23日、今夏の電力需要や供給能力を精査する「需給検証委員会」の初会合を開いた。

電力9社(沖縄を除く)が提出した需給見通しによると、原発が再稼働せず2010年夏並みの猛暑となった場合、全国で0.4%の電力不足が生じる見通しで、関西電力の不足は16.3%に上る。

同委員会は各社の試算を詳細に検討し、5月中旬に最終的な需給見通しを確定する予定。

原発稼働をゼロと想定した電力9社の8月の需給見通し
電力会社 供給力 最大需要 需給
過不足
予備率
北海道 485 500 -16 -3.1
東北 1,475 1,434 41 2.9
東京 5,771 5,520 251 4.5
中部 2,785 2,648 137 5.2
関西 2,535 3,030 -495 -16.3
北陸 578 558 20 3.6
中国 1,235 1,182 53 4.5
四国 587 585 2 0.3
九州 1,574 1,634 -60 -3.7
合計 17,025 17,091 -67 -0.4
単位:万キロワット。最大需要は2010年夏並みの猛暑を想定。

野田政権は4月13日夜の関係閣僚会合で、大飯原発の安全性を最終確認し、再稼働することが妥当だと判断したが、その際の電力需給見通しは以下の通り。

  能力 2011夏
実績

2012/8見通し

4/23
需給検証
委員会
2011夏
並み
2010猛暑
並み
過去5年
平均
需要   2,784 2,784 3,095 3,023  
供給力
(除 原発)
4,079
(3,046)
2,947
(2,611)

2,631

2,525

2,540
 
過不足   163
(5.9%)
-153
(-5.5%)
-570
(-18.4%)
-483
(-16.0%)
 
             
原子力 977 337 0 0 0 0
火力 1,697 1,415 1,472 1,472 1,472 他社込み
1,923
一般水力 331 225 203 203 203 254
揚水 488 448 312 206 221 232
太陽光 0 0.2 0.2 0.2

含地熱 5

自社合計 3,494 2,425 1,987 1,881 1,896  
他社一般 585 405 523 523 523  
融通 0 118 121 121 121 121
他社合計 585 523 644 644 644  
総合計 4,079 2,947 2,631 2,525 2,540 2,535
原発除く 3,046 2,611 2,631 2,525 2,540  

今回の関西電力の見通しでは、供給力は2,535となっており、上表の2010年猛暑並みケースに近い。

これには需要面(需給調整契約など)や揚水発電や融通量など、いろいろの問題点がある。
(東電からも周波数変換により 100万kwまでの送電は可能)

また、常時これだけが不足するのではなく、ピーク時の短時間だけであり、それを回避する方法を考えればよい。

    2012/4/16  関西電力の電力需給予想 

「需給検証委員会」での十分な検証が期待される。

 

 

4月22日午前2時15分ごろ、山口県和木町和木6丁目の三井化学・岩国大竹工場のレゾルシンプラントで爆発事故が発生した。
8時06分にも同プラントのタンクが爆発した。
同日17時15分に全プラント鎮圧を確認した。

爆発の3時間近く前の21日午後11時半ごろ、蒸気を供給する設備にトラブルがあり、構内の7割のプラントが緊急停止に入った。

爆発が起きたレゾルシンプラントでは、作業員が約30メートル離れた計器室で停止のために自動弁の開閉や窒素の注入などを始めるボタンを押した。その後、死亡した従業員がプラント内に入り、完全に停止させるために手動でバルブを閉める作業などに当たっていたとみられる。

同社では、「爆発は酸化過程に出る過酸化物が影響した可能性がある」が、タンク内で爆発したのか、タンク外に何かの原因で可燃性物質が漏れて爆発につながったのかなどは「調査してみないと分からない」としている。

付記

田中稔一社長は「社内の事故調査委員会の結果を踏まえて、徹底して対応する」と話した。

1984年にも同じプラントで爆発事故(静電気による発火が原因で負傷者なし)が起きていることから、警察は事態を重くみて、23日に業務上過失致死傷の疑いで工場などを捜索した。詳しい経緯を調べる。

被害は次の通り。(4月22日19時時点)

    人的被害 物的被害
死亡 負傷
構内 1名 9名(うち重症 2名) 損傷 14プラント
隣接JX 麻里布製油所   2名  
地域住民   10名 家屋損傷 267軒(主にガラス破損)
合計 1名 21名  

可燃性ガスや毒性物質などの漏出はないという。

 

付記

三井化学は6月14日、この事故の業績への影響見通しを発表した。

営業利益  30億円 生産・販売の減少及び代替品の調達による損失等
特別損益  -30億円 補償、撤去及び復旧等に係わる費用
事故に起因するプラント停止に伴う固定費及び保険収入等
税引前損益  -60億円  

 

岩国・大竹工場は小瀬川を挟んで山口、広島両県にまたがって立地している。爆発が起きたのは川の南側にある山口県内の工場。

 

 

中国地方では2011年11月に東ソー南陽事業所(周南市)で1人が死亡する爆発事故が起きたばかり。
EDCプラント不具合が生じ稼働を停止、点検中で、塩ビモノマーなどを貯蔵タンクに一時抜き出す移液作業をしていた。

総務省消防庁は4月23日、大規模なコンビナート群がある全国33道府県に対し、事業者に再発防止策を指導するよう求める通知を出した。同様の通知は、2007年12月の 三菱化学鹿島事業所で起きた火災以来。
通知では「緊急停止作業を行う際には、作業手順の確認を行い、作業に携わる者全員に周知徹底を図ること」とした。

 
 ーーー

レゾルシンはタイヤ補強材(タイヤコード)の接着原料や紫外線吸収剤などに使用される。

世界需要は約6万トン。


 

メーカーは以下の通り。

 

能力

 
住友化学  30,000トン 千葉2万トン、大分1万トン(2010/4 新設)
INDSPEC Chemical 20,000トン Occidental Petroleum子会社
Petrolia, Pennsylvaniaに工場
三井化学 7,600トン 岩国大竹
その他 約2千トン インド、中国など
(ロシアメーカーは操業中止)
合計 約6万トン  


住友化学と三井化学はプロピレン、ベンゼンを原料とし、1,3-diisopropylbenzeneから製造している。
これに対し、INDSPECは1,3-benzenedisulfonic acid から製造する。

その他ではインドのAtul が能力1500トンで、5000トンへの増設を希望している。
中国に小規模メーカーが数社あると言われる。
以前にはロシアの Orgsintez が生産していたが、2007年に停止した。

 

付記

住友化学は4月24日、三井化学から要請のあったレゾルシンの応援出荷に応じる方針を明らかにした。

需給バランスは国際的にも堅調で、現在千葉と大分の両工場ともフル操業状態のため「増産による対応は難しいものの、当面、在庫を切り崩して応援出荷することにした」という。

 

 

自動車部品など機械用のベアリング(軸受け)の販売を巡り、大手メーカー4社が事前の合意に基づいて一斉に値上げする価格カルテルを結んでいた疑いが強まったとして、東京地検特捜部は4月20日、関係先を独占禁止法違反容疑で家宅捜索した。

公正取引委員会が2011年7月に犯則調査権に基づいて、日本精工、NTN、ジェイテクト、不二越の4社の強制調査を実施し、刑事告発を視野に調査を進めてきた。

ベアリングは全体の市場規模が約4500億円と大きく、4社が8割以上のシェアを占める。カルテルが及ぼす社会的影響が大きいうえ、各社の役員クラスがカルテルに関与した疑いもあるとみており、行政調査では不十分と判断した。

公取委は、4社のうち不正を最初に申告したジェイテクトについては、課徴金減免制度を適用し、刑事告発を見送るとみられる。

ジェイテクトは、2005年5月に光洋精工と豊田工機が合併して出来た会社。
NTNは旧称 東洋ベアリング。

特捜部も刑事立件の可否を判断するため、任意での事情聴取を進めていた。

付記

公取委は6月14日、日本精工、NTN、不二越の3社と各社の担当役員ら7人を東京地検に告発、地検は3社を起訴し、担当役員ら7人を在宅起訴した。

ジェイテクトは自主申告したため告発対象から外れた。

 

1973年に、日本精工、光洋精工(現 ジェイテクト)、不二越と、エヌ・テー・エヌ東洋ベアリング(現 NTN)の販売会社「東洋ベアリング販売」の4社が「エー・エム会」と名付けたカルテルの会合を開いていたと認定され、公取委から排除命令を受けている。

原材料の鋼材価格が高騰した2004年ごろ、価格調整を目的としたカルテル組織を復活させた。


ーーー

独占禁止法違反被疑事件に関する調査には,行政調査と犯則調査がある。

行政調査は、独占禁止法に違反する事実があると判断した場合に行政処分を行うことを前提として行われる調査で、相手方が調査に応じない場合には刑罰が科せられる間接強制の方法により、営業所などへの立入検査を実施して関係書類の提出を命じ、また、関係者に出頭を命じて事情聴取するなどの調査を行うことができる。(独占禁止法第47条

犯則調査は、公取委が刑事告発に相当する事案であると判断した犯則事件を調査するために行われる調査であり、関係者からの事情聴取、所持品の検査等の調査を行うことができる。
また、裁判官の発する許可状を得て、直接強制(相手方が調査等を拒む場合に、抵抗を排除して実力行使すること)の方法により、臨検(事件調査のため必要な場所に立ち入り、検査を行うこと)、捜索を行い、必要な物件を差し押えることができる。(独占禁止法第102条
調査の結果、刑事告発が相当と認められたときは、検事総長に告発を行う。 

公取委は下記の案件については積極的に告発する方針で、これらに該当すると疑うに足る相当の理由のある場合は、犯則調査の対象とする。

一定の取引分野における競争を実質的に制限する行為で、国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案
違反を反復して行う、排除措置に従わないなど、行政処分によっては独占禁止法の目的が達成できないと考えられる事案

 

犯則調査の流れは下記の通り。


カルテルでの刑事告発のケースは少ない。
今回
公取委が告発に踏み切れば、2008年11月の亜鉛メッキ鋼板カルテル事件以来、約3年半ぶりとなる。

1974 -  石油ヤミカルテル事件
    過去に行政指導で生産調整が行なわれてきた経緯もあり、
最終的に生産調整カルテルは無罪、価格協定カルテルも一審では有罪だが、最高裁で一部が無罪となった。
     
(この間、17年間 刑事告発なし)
     
1991   ラップフィルム(ストレッチフィルム)の価格カルテル
      罰金600万~800万円、懲役6月~1年(執行猶予2年)
1999   ダクタイル鋳鉄管 シェアカルテル
      罰金3000万~1億3000万円、懲役6月~10月(執行猶予2年)
     (以上2件の概要は、2007/7/16 塩ビ管カルテル調査
     
2000   ポリプロカルテル 告発断念 
     公取委は刑事告発しようとしたが、検察が告発を受けないことを決めた。*(村山治「市場検察」)
     
2008   公取委、塩ビ管のカルテル疑惑 刑事告発を断念
    塩化ビニル管及び同継手で排除措置命令及び課徴金納付命令
     
2008   溶融亜鉛めっき鋼板カルテルに排除措置及び課徴金納付命令
    亜鉛メッキ鋼板の価格カルテルで刑事告発 
      2009/5 日新製鋼淀川製鋼所、罰金1億8000万円、日鉄住金鋼板に1億6000万円
   
      個人6被告について、1年~10月の懲役(執行猶予3年)
     
同書によると、当時の笠間治雄特捜部長は、談合について、従来 必要悪として黙認してきた商慣行であり、それを経済の外側にいる検察が悪と認定し、血刀を振るうことには抵抗があったという。
業績の上がらない業界の価格協定を摘発すること自体に違和感を持ち、暴利を貧ろうというのでなければ処罰価値がないと考えた。そして、価格協定とされるものが「拘束性」が証明されていないと受け止めていた。
公取委は、協定し、その実効性があったからこそPPが値上がりしたとの主張だったが、ポリエチレンも同様の値上がりをしていた。「それをどう説明するのか。協定と値上がりとの因果関係を証明できなければ、協定に拘束力があった証明にならない」とした。

 

なお、改正独禁法による課徴金減免制度で、刑事罰について刑事訴追を免ずる規定はない。

公取委は2005年10月の方針で、調査開始日前に最初に課徴金の免除に係る報告及び資料の提出を行った事業者(及び調査に協力した個人)については告発を行わないこととするとした。

2005年独禁法改正法の国会審議では、法務省刑事局長が質問に対し、「公取委に対しては専属告発制度が認められていることの趣旨を踏まえると、公取委が刑事告発しなかったという事実を検察官は十分考慮することになるので、課徴金減免制度は十分機能することになると思われる」旨の答弁を行っている。

なお、亜鉛めっき鋼板カルテル事件でJFE鋼板が刑事告発されなかったが、他社の弁護側が、カルテルに深く関与していた同社が刑事責任を追及されなかったことを強調して、刑の軽減を求めたのに対し、判決は「(JFE鋼板の告発免除は)課徴金減免制度を有効に機能させるための措置で、考慮する必要はない」と退けた

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、4月20日午後に共同声明を採択して閉幕した。

焦点だったIMFの融資能力の強化については4300億ドル超の調達にメドを付けた。

本日我々は、IMFCとともに、危機の予防と解決のためにIMFの資金基盤を拡大するとの合意に達した。これは、多数の国々を含む、幅広い国際協調のための努力の成果である。2010年改革における増資に加えて、IMFの利用可能資金を増加させるという確実なコミットメントは4300億ドルを上回っている。この資金はIMFの全ての加盟国に利用可能であり、いかなる特定の地域にも限定されるものではない。

IMFのChristine Lagarde専務理事は、メンバー各国がIMFの資金を4300億ドル以上拡大し、融資能力をほぼ倍増することを約束したことを歓迎、拠出を約束した各国に感謝を表すとともに、拠出の意向を示した各国に感謝するとし、特に、中国、ロシア、ブラジル、インド、インドネシア、マレーシア、タイの名前を挙げた。

米国はIMF強化の方針自体には賛同したものの、共和党の賛同を得られないため、資金拠出は見送った。
カナダも
「現時点では」その用意はないとしている。

現在の拠出の内訳は以下の通り。

  億米ドル 現地通貨建て  
ユーロ圏 2,000 1500億ユーロ  
英国 150    
スウェーデン 100   今後、+47の増額用意
ポーランド 80 62.7億ユーロ  
デンマーク国立銀行 70  53億ユーロ  
チェコ 20 15億ユーロ  
(EU合計) (2,420)    
日本 600    
韓国 150    
サウジアラビア 150    
スイス 100    
ノルウェー 93 60億SDR  
オーストラリア 70    
シンガポール 40    
米国 0    
カナダ 0    
その他 (677)   中国、ロシア、ブラジル、
インド、インドネシア、
マレーシア、タイ、その他
合計

4,300
 以上

   

ラジルのマンテガ財務相は4月19日、「一部の国はIMF改革にあまり熱心ではない。出資割り当て問題の進展よりも資金集めの方に熱心だ」と述べ、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は具体的な拠出額提示の用意はないと述べた。
これら諸国は
、IMFの政策決定への投票権拡大が伴うべきと主張している。

ーーー

欧州の金融危機への対応で、2011年11月のG20首脳会合では、IMFが十分な資金を持つ必要で一致した。
IMFは欧州への支援を念頭に最大5000億ドルの財源調達を目指した。(うちEUが2600億ドル規模を拠出)

しかし、国際的な支援増強の前に「欧州の自助努力が必要」との条件が出され、EUの対応待ちとなった。

2012/3/7 欧州金融危機への今後の対応

EU27カ国は3月30日、コペンハーゲンでユーロ圏財務相会合を開き、債務危機に対応するための安全網全体の規模(2013年7月以降)を現在の案の5,000億ユーロから8,000億ユーロ(約88兆円)に拡大することで合意した。

  2012年7月ESM発足以降
当初案 目標 決定
欧州基金 ESM   5000億ユーロ 統合、上限撤廃
    7500億ユーロ
     (約1兆ドル)
8000億ユーロ
 ESM 5000億
 ギリシャ一次支援 529億
 EFSF 1917億
 EFSM 485億
EFSFの残 打ち切り 
    (2500億ユーロ)
IMF資金枠 現行   約 4000億ドル     +5000億ドル
 (うちEU 2600億ドル)
ユーロ圏EU 1500億ユーロ
      (2000億ドル)
合計       1兆9000億ドル  


2012/4/2 ユーロ圏、金融安全網 8,000億ユーロに拡大で合意

IMFは当初5000億ドルの増強を考えていた。

しかし、米国が「欧州は債務問題対応であらゆる必要な措置をとるべきだ」として追加供与する積りはないとするなど消極的な動きがあることから、「昨年想定していた世界経済へのリスクが現実のものにならなかった」ことを理由に、追加的に必要な資金の見通しを 4000億ドル超に引き下げていた。

日本は4月17日、IMFに600億ドルを拠出する考えを正式に発表した。
スウェーデンは、100億ドルを即時拠出し、後に147億ドルに増額する用意があると表明。デンマークも70億ドルの拠出を発表した。

IMFのLagarde専務理事は声明で「こららの諸国は、今週末の春季会合までに決定的な前進ができる基盤を作った」と歓迎の意を示した。

安住財務相は4月20日記者会見し、IMFの資金基盤強化で合意したことについて「日本は大きな貢献を果たせた」と述べ、ユーロ圏以外で口火を切って日本が600億ドルの拠出を表明したことで「予想以上の成果を挙げることができた」と自賛した。

ーーー

日本はこの600億ドル拠出に2012年3月末に1兆2887億ドルに達した外貨準備高を利用する。

Lehmanショック直後の2009年にIMFに外貨準備から1000億ドルを拠出したが、500億ドルが年内にも返済される見込み 。
これに外貨準備から100億ドルを上積みする。

2009年2月に日本政府がIMFに最大1000億ドルを拠出する取り決めに正式に署名した。
2008年11月のG20金融サミットで、当時の麻生首相が表明したもの。

加盟国支援が必要になった場合、要請を受けた日本が外貨準備からIMF貸し付ける形で拠出するもので、加盟国による資金提供としては過去最大、ストロスカーン専務理事は「人類の歴史上、最大の貢献だ」と謝意を表明 した。

外貨準備高は、円高を阻止するための為替介入の結果の外貨資産(米国債など)。
政府は国債の一種である政府短期証券を発行し金融市場から円資金を借りて外国為替市場でドルを買う。

このため、外貨資産に対応して、政府短期証券のかたちの円建て債務が生じている。
(2011年12月末の政府短期証券残高は、
123兆7889億円となっている。 円高で多額の為替差損が出ている。

2002年に政府は円売り・ドル買い介入を行い、その結果、2002年10月末残高4607億ドルが、2003年度末(2004年3月末)に8266億ドルに激増した。

2011年10月-11月の介入で残高は増加している。

 


バイエル が同社の経口避妊薬YasminやYazが血栓を起こしたとの500件の訴訟の解決のため少なくとも110百万ドルを支払うことが明らかになった。匿名のバイエル関係者が明らかにした。一人当たり220千ドルを支払う。

イリノイ州の連邦裁判所判事が1月9日に、経口避妊薬の健康リスクについて女性をミスリードしたとする裁判を、調停により解決するため、延期していた。

2009年以来、バイエルは避妊薬が時に致命的な血栓を起こすとする訴えを多数受けている。
原告側はバイエルは血栓のリスクが高いことを知りながら、他の製品より安全として販売してきたと主張している。

原告側弁護士は2004年から2008年の間に少なくとも50件の死亡が避妊薬に関係しているとのFDAの報告を引用した。

連邦裁判所に出された訴訟はイリノイ州連邦裁判所に統合された。

裁判官はバイエルの要請を受け、George Washington Universityの法学部教授に調停を要請した。

バイエルは米国での裁判の判決よりも和解を選んだ。

約11千件の訴訟が行われており、最初の解決となる。

ーーー

2011年4月に、第4世代のプロゲステロンであるDrospirenone配合のYasminやYazについて、従来のプロゲステロンと比べ、静脈血栓塞栓症のリスクが高いとする論文がBMJ 誌のオンライン版に掲載された。

FDAは2011年5月31日に注意勧告した。
FDAは835千人以上のデータをチェックし、他の避妊薬と比べて血栓の可能性が74%以上高いとしている。

本年4月10日にFDAはバイエルや他の避妊薬メーカーに対し、ラベルで血栓についての警告を強調するよう指示した。

バイエルの避妊薬の2010年売上高は1580億ドル。
 

 

三菱商事と三井物産は4月17日、それぞれが米国のSempra Energyの子会社であるCameron LNGとの間で、米国産天然ガスの液化を委託する交渉を行っていることを明らかにした。

Cameron LNGはルイジアナ州HackberryのLNG輸入基地の輸出基地への転用工事を2013年後半より開始し、総工費60億ドルで1系列年間400万トン能力の液化設備3系列(合計能力 1,200万トン)を建設し、2016年末より生産・輸出する計画を検討している。

現在、Cameron LNGは、自由貿易協定(FTA)締結国向けのLNG輸出許可を米国エネルギー省から取得しているが、日本を含むFTA未締結国向けの輸出許可は2011年12月に申請され、現在、承認待ちの状態となっている。

先行しているのはCheniere Energy が海外からのLNG受入基地に天然ガスのLNG化設備を建設してLNGを輸出する計画で、2010年9月に米国がFTAを締結している国(将来締結した国も含む)に限定して輸出許可が出された。

これに対し、同社は、多国間での自由貿易協定を目指すWTO加盟国へのガス輸出を禁止することが正当かどうかの判断を政府に求め、エネルギー省は2011年5月、同社に条件付きですべての貿易相手国への輸出を認めた。

Cheniereは2012年1月に建設着工、早くて2015年に稼働開始の予定で、既に売買契約を締結済である。

ーーー

米国ではシェールガスの生産増で天然ガス価格は暴落している。(4月には100万BTU当たり2ドルを割った)

しかし、天然ガスの輸出には反対も多く、特にFTA未締結の日本への輸出は簡単ではない。

米政府は「LNG輸出の国内ガス需給への影響」に係る調査実施を2012年第1四半期に完了させる予定。
米市場への適切なエネルギー供給を維持するために、LNG輸出に対しては何らかの条件が加えられる可能性がある。
 中国への輸出を避けるため、FTA未締結国への輸出を制限する可能性がある。

米国のエネルギー多消費型の産業界(発電業界、化学、アルミ、米国ガス協会等)から米国のLNG輸出に対する懸念が頻繁に提起されている。輸出により国内ガス価格が上昇するのを懸念し、一定の制限を設けるべきとの主張を展開している。

 

DowのAndrew Liveris CEOは「天然ガスを輸出する代わりに、液体形態ではなく、これを加工した固体形態で輸出するべきだ」と述べ、シェールガスからのLNGの輸出を制限するよう求めている。

付記

野田首相は4月30日のオバマ米大統領との首脳会談で、LNGの対日輸出拡大などエネルギー面での協力を求めた。

オバマ大統領は首相の輸出要請に対し、「日本のエネルギー安全保障は米国にとっても重要」と理解を示す一方、「(対日輸出は)政策決定プロセスにある」として、明言は避けた。日本政府内には「少なくとも11月の大統領選までは、オバマ大統領が輸出認可に動く可能性は低い」との見方が強い。

ーーー

三菱商事は、原料となる天然ガスを市場から調達のうえ、Cameron LNGに年間約400万トンの天然ガスの液化作業を委託して、生産されたLNGを需要家に販売する。

原料ガスについては、同社が34%保有する米独立系ガスマーケティング会社であるCIMA Energyなどを通じての調達も検討する。

三菱商事は2008年6月、米国でガスマーケティング事業を展開しているCIMA Energy Ltdの持分34%を同社の個人パートナーから取得した。

CIMA Energyは1996年設立で、米国内におけるガスおよび原油のマーケティング事業を行っており、年間のガス取扱高は約145百万MMBtu(LNG 換算280万t)となっている。

三菱商事は2009年1月より米国テキサス州のFreeport LNG 受入基地の使用を開始したが、同基地に持ち込むLNGを再気化した天然ガスについても、CIMA が米国内で販売を行う。

同社では、米国からも日本にLNGを輸入することで、調達先の多様化に繋げるのみならず、米国内の天然ガス市場も活用した柔軟性のある供給計画を実現させ、エネルギーの安定調達を目指すとしている。

なお、三菱商事はカナダでも天然ガス開発に参加しており、カナダで生産した天然ガスを原料に、液化天然ガス(LNG)として輸出する可能性についても検討を進めている。

三菱商事は2010年8月、カナダの大手エネルギー会社Penn West Energy Trustが所有するブリティッシュ・コロンビア州のCordova堆積盆地のシェールガスを中心とした天然ガス開発プロジェクトに参画する契約を締結した。

2010/8/26 三菱商事、カナダのシェールガス開発プロジェクトに参画

三菱商事とカナダの天然ガス最大手のEncana Corporationは2012年2月、British ColumbiaのCutbank Ridgeの未開発の土地でのシェールガス開発で提携したと発表した。

2012/2/21  三菱商事がカナダのシェールガス開発に参加

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三井物産はLNG輸出プロジェクトの準備費用の一部を負担し、1系列分に相当する年間400万トンのLNG輸出枠を確保する方向でSempra Energyと共同で検討を行う。

三井物産は米国ペンシルベニア州マーセラス・シェールエリアとテキサス州イーグルフォード・シェールエリアのシェールガス・オイル事業に参画しており、現在LNG換算で年間100万トンに相当する天然ガスを米国内で生産している。

Marcellus Shaleエリア 2010/2/18   三井物産、米国でシェールガス開発生産プロジェクトに参画  

Eagle Ford エリア     2011/7/4  三井物産、テキサス州のシェール開発に参加

これらのシェールガス・オイル事業では、今後も生産量の増加が見込まれることから、三井物産が権益を保有する天然ガスをLNG輸出に向けた原料ガスとして活用する可能性についても検討していく。

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2012年2月時点での米国のLNG輸出計画は下記の通り。  

プロジェクト 事業者 申請液化能力
万トン/年
       政府認可状況
エネルギー省 エネルギー規制委
Sabine Pass ルイジアナ Cheniere 1,600 認可済 審査中
Freeport テキサス Freeport LNG 900 審査中 審査中
Lake Charles ルイジアナ Southern Union 1,500 認可済 未申請
Cove Point メリーランド Dominion 800 未申請 未申請
Jordan Cove オレゴン Jordan Cove LNG 900 未申請 未申請
Cameron ルイジアナ Sempra 1,200 未申請 未申請
 米国計画 合計  6,900    

 

付記

住友商事と東京ガスは4月27日、米国のDominion Cove Point LNGと米国産LNG調達に関する協議を開始したと発表した。

Dominion がCove Point LNG受入基地にLNG 液化プラントを新たに建設し、米国内で生産されるシェールガスをはじめとした天然ガスを精製・液化する。
同社と液化加工契約締結をした事業者は、自らが調達した米国産天然ガスを本プロジェクトのLNG液化プラントで液化し、LNGを引き取ることができる。

Cove Point LNGプロジェクトの概要

  • 事業主体 : Dominion
  • 所在地     : 米国メリーランド州 
  • 液化能力: 約500万トン/年

住友商事が先行契約で取り決めた天然ガス液化加工契約の主要条件

  • 契約数量  : 約230万トン/年(LNG換算)
  • 契約期間  : LNG液化プラントの運転開始から20年間    

住友商事は本プロジェクト近郊で参画しているマーセラス・シェールガス開発プロジェクトなどからの調達を予定している。

住友商事は2010年9月1日、子会社Summit Discovery Resources II, LLCを通じ、米国の独立系石油ガス開発会社であるRex Energyが米国ペンシルベニア州マーセラス・シェール・フィールドで開発している天然ガス開発プロジェクトに参画する契約を締結したと発表した。

Rex社の既存資産プラス新規リース権の約30%を取得する。
取得資産の対価として契約締結時に約88百万ドル、2011年12月末までに追加で約 106百万ドル、合計194百万ドルを拠出する。

同社の持分ベースで総開発エリアは22,000エーカーで、生産量(ピーク) 46 bcf/年(原油換算 約8.4百万バレル)。
今後約10年間で累計1,100本以上の井戸を順次掘削していく計画で、総開発費用は約 1,200百万米ドルを見込む。

同社は又、米国の独立系開発会社であるCarrizo Oil & Gasが米国テキサス州Barnett Shale fieldに保有している天然ガスコアエリア開発プロジェクトに12.5%参画した。

また、100パーセント子会社であるPacific Summit Energyが米国内でガストレーディング・マーケティング事業も手掛けており、今回、本プロジェクトが最終合意に至れば、ガス上流開発から流通、液化、LNG輸出まで、米国における天然ガス・LNGのバリューチェーンの構築が可能になる。

 

アルゼンチン政府は4月16日、スペインの石油会社Repsol-YPFのアルゼンチン子会社YPFを国有化する方針を明らかにした。

時価による買収ではなく、資産没収で、補償額は国家評価裁判所(National Appraisal Tribunal)が決定するとするだけで、詳細は明らかにされていない。

石油生産の低迷や投資をめぐり対立していたスペインの親会社Repsol-YPFから経営権を奪う。
Fernández大統領はYPFのCEOに Julio De Vido企画・公共投資相を起用した。近く、YPF株式の51%を取得できる法案を議会に提出する。残り49%についても同国の地方に分配する計画。

付記
アルゼンチン下院は5月3日、国有化法案を可決した。上院は可決済で、大統領の署名で施行される。

YPFはもともとアルゼンチンの国有石油会社だった。1999 年の民営化に伴う政府放出株式をRepsolが購入した。
アルゼンチン政府は0.2%の"golden-share"を持ち、買収拒否権などの重要事項についての権利を持つ。

Repsolは 1987 年に主に下流事業を営む石油会社としてスペイン政府により設立された国営石油会社であったが、1989 年以降、順次株式が公開され 1997 年に 100 %民間企業となった。
1999 年にYPF を買収し、社名をRepsol-YPFに変更した。

それまでのRepsolは石油下流、およびガス事業が主体の企業であったが、南米に豊富な炭化水素資産を持つ YPF の取得により、石油メジャー企業の一角を占める国際石油企業となった。

同社については 2006/8/5 Repsol YPFによるポルトガルの石油化学増強

RepsolはYPFの買収後、2008年にアルゼンチンの億万長者Eskenazi 一族に15%を売却、昨年には更に10%をEskenazi に売却した。現在、RepsolはYPFの57.4%を保有している。

Eskenazi一族は買収資金を銀行とRepsolからの借入金で賄った。

アルゼンチンは燃料輸入が昨年倍増し94億ドルに達したが、権はこの一因をYPFの生産低迷や投資不足にあるとして、批判を強めていた。

YPFはEskenazi の買収時の契約に従い、利益の90%を配当(年2回)として支払っている
政府は2011年に2回、本年に1回、取締役会でこれに反対した。

本年3月8日の取締役会では、政府は配当支払いではなく、石油開発と生産に使用することを要求した。

大統領は、「石油は極めて重要な資源だ。YPFは必要な投資を怠った。このままでは国の存続も危ぶまれる」とし、石油生産の落ち込みで同国が「発展できない国」にならないようYPFの経営権を取り戻す必要があると述べ た。

YPFは本年2月に、南アルゼンチンのVaca Muertaシェールオイル層に少なくとも230億バレルの油があることが分かったと発表した。そのうち、130億バレルがYPFに帰属する。

大統領は、「アルゼンチンは自国の石油をコントロールできない少数の国の一つであるが、今後、YPFの運営をうまくやる」と述べた。

ーーー

Fernández大統領(Cristina Fernández de Kirchner)は弁護士 出身で、Nestor Carlos Kirchner前大統領の妻。2007年10月の大統領選で勝利した。

大統領は2008年には、欧州の金融機関も参入していた240億ドルの年金基金と、スペイン企業傘下にあったアルゼンチン航空をそれぞれ国有化している。今回のYPFを巡っても国有化の噂が絶えなかった。

ーーー

これに対し、スペイン政府は「これはRepsolに対する敵対行為であり、即ち、スペインに対する敵対行為である。政府は対応策を協議しており、明確で断固たる措置を取る」と述べた。 

欧州委員会報道官は「強制的な国有化は投資家に悪い印象を与え、アルゼンチンの投資環境を傷つける」と警告。同じ中南米のメキシコのカルデロン大統領すら「残念ながら誰も利することのない政策だ」と突き放した。

アルゼンチンは昨年、EUに対し143億ドル(前年比28%増)の輸出を行っており、EUからの報復は大きなリスク要因となる。

フェルナンデス大統領は、「どんな脅しにも屈しない」とYPF国有化に向けた決意を強調した。

ベネズエラのチャベス政権は同日「我が国は欧州からのいかなる脅しも拒絶し、南米諸国にアルゼンチンへの連帯を呼び掛ける」との声明を発表。外交問題に発展した場合はアルゼンチン擁護に回る意思を明確にした。

アルゼンチンは2001年、823億ドルのデフォルト(債務不履行)に陥った。現在も日本などの Paris Club(主要債権国会議)関係の政府系金融機関が持つ債務については交渉を続けている。今回の方針が、国際金融界への復帰を一層難しくする可能性もある。

 

ーーー

アルゼンチン政府の国有化発表にもかかわらず、SinopecがRepsolからアルゼンチン子会社のYPFの買収で交渉しており、150億ドルで買収する非拘束の合意に達したという。4月17日付の中国の財新網Caixin.com)が伝えた。
買収にはアルゼンチン政府の承認が必要である。

スペイン語のEl Confidencial newspaper が4月10日に、Sinopecが91.6億ドル以上で買収する交渉を行っていると伝えていた。

Sinopec は既にアルゼンチンに進出している。2011年2月に Occidental Petroleum がアルゼンチンの資産をSinopecに25億ドルで売却している。

2010/12/17 Sinopec、Occidental からアルゼンチンの石油権益を買収



Dow Chemicalは4月12日の取締役会で、第2四半期の配当金を1株当たり25セントから32セントに増額することを決めた。
6月29日現在の株主に対し、7月30日に支払われる。
これは1912年以来連続での403回目(四半期ごと)の配当となる。

Andrew N. Liveris 会長兼CEOは、「今回の増配は、会社の長期的な成長を反映する配当政策を推進し、明確に定められている当社の3つの優先事項(株主還元、債務の返済および当社ポートフォリオにおける内部投資)に対して現金を配分するという当社取締役会のコミットメントを示すものである」と述べた。

ーーー

Dow は2009年第1四半期に、金融市場の混乱、化学製品需要の前例のない低迷、グローバルな景気後退、ペンディングとなっているR&H合併問題等の要素の複合を理由として、42セントから15セントへ97年目で初めての減配を行った。

2009/2/23 Dow Chemical、史上初の減配

その後、2011年第2四半期に25セントに増配していた。

この発表に先立つ4月2日に、同社は工場閉鎖による年間250百万ドルのコストダウン策を発表している。
2011年に始めたコストダウンとEfficiency for Growth programの一環。

概要は以下の通りで、約900人の職が失われる。

・ポルトガル、ハンガリーとイリノイ州のSTYROFOAM断熱材プラントの閉鎖、オランダの同工場の休止
・ブラジル
Camaçari のTDI工場の閉鎖
・ポリウレタンとエポキシの一部設備の統合による最適化

ーーー

同社の決算は下記の通りで、業績は回復している。(単位:百万ドル)
なお、2009年4月1日に Rohm & Haas 買収が完了した。

セグメント別業績

Segment 内訳 (2011/3Q 変更)

2010 Sales 内訳

Advanced Materials Division  
.... Electronic &
Functional
Materials
Dow Electronic
  Materials
Semiconductor Technologies
Interconnect Technologies
Display Technologies
Growth Technologies
Functional
  Materials
Dow Home & Personal Care
Dow Microbial Control
Dow Wolff Cellulosics
Performance Additives
JV Dow Corning
Coatings &
Infrastructure
Solutions
Dow Building &
Construction
Dow Building Solutions
Dow Construction Chemicals
Dow Solar Solutions
Dow Coating
 Materials
Architectural Coatings
Industrial Coatings
Dow Water & Process Solutions
Performance Monomers
JV Dow Corning
Agricultural
   Sciences 
   Division
Dow AgroSciences Seeds, Traits & Oils
Ag Chemicals
Other: AgroFresh
 
Performance
   Materials
   Division
Amines
Chlorinated Organics
Dow Automotive Systems
Dow Formulated Systems
Dow Plastic Additives
Epoxy
Oxygenated Solvents
Polyglycols, Surfactants & Fluids
Polyurethanes
Other: Dow Oil & Gas, SAFECHEM
JV: SCG-Dow
Performance
   Plastics
   Division
Dow Elastomers
Dow Electrical & Telecommunications
Dow Packaging & Converting
Polyethylene
Other: Polypropylene,
    Plastics Licensing & Catalyst
JVs: EQUATE,
       The Kuwait Olefins Company,
  MEGlobal, SCG-Dow,
  UnivationTechnologies
Feedstocks &
   Energy
   Division
Chlor-Alkali /Chlor-Vinyl
Energy
Ethylene Oxide / Ethylene Glycol
Hydrocarbons
JV: CompañíaMega, EQUATE,
      The Kuwait Olefins Company,
      MEGlobal, SCG-Dow

 

 

 

 


中国人民銀行(中央銀行)は4月14日、人民元の米ドルに対する変動幅を1日につき上下 0.5%から1.0%に拡大すると発表した。4月16日から実施する。

人民銀は声明で「為替市場が成熟し、取引参加者の価格決定やリスク管理の能力が向上している」と強調。「市場の発展に応じ、(人民元の)弾力性を高める」と変動幅拡大の理由を説明した。

温家宝首相は3月に、「人民元制度の改善を続け、上下両方向に変動が大きくなるようにする」と述べていた。

変動幅の拡大は、2007年5月にそれまでの0.3%を0.5%に引き上げて以来。
中国は2005年7月に2.1%の切り上げをして以来、管理フロート制をとっている。途中、2008年7月から2010年6月まで金融危機に対応してレートをほぼ固定した。

変動幅を1%に変更した初日の4月16日の中間値は6.2960人民元/ドル、終値は6.3150人民元で、中間値からは0.3%の乖離に止まった。なお、弾力化前からは8.1%の値上がりとなった。 

 

米財務省は4月13日に、半期に一度の為替報告書の議会提出を期限の4月15日から当面先送りすると発表した。中国から人民元の変動幅を拡大するとの事前連絡を受けて決めた可能性が高い。

ーーー

米国は人民元の切り上げを強く要求しているが、中国の陳徳銘商務相が雑誌「新世紀」で「人民元高は(輸出)企業の経営を圧迫する」と述べるなど、変動幅の拡大による悪影響を懸念する声は根強い。

しかし、貿易黒字の縮小傾向が顕著となるなど(2月には貿易収支は大幅赤字になった)、輸出入が均衡しつつあることで、人民元の上昇圧力は著しく弱まっている。

また、1~3月期の実質成長率は8.1%に沈み、5四半期連続の減速を示した。

市場では「4~6月期は貿易赤字に転落する可能性があり、足元は元高ではなく元安圧力が強くなるのではないか」との見方も浮上している。

「変動幅を拡大しても過度の元高圧力をもたらすことはない」との判断も働いた模様。

 

 

 


大阪府豊中市居住の熊本県出身の女性が熊本県に患者認定義務付けを求めた訴訟の控訴審で、大阪高裁は4月12日、一審判決を取り消し、女性の訴えを退ける判決を言い渡した。
女性側は上告する方針。

別の認定義務付け訴訟で福岡高裁が本年2月、感覚障害のみの水俣病を認め、認定基準を「不十分」と批判しており、高裁判決で異なる判断が示されたことになる。

2012/2/29 水俣病訴訟、遺族が逆転勝訴 

ーーー

女性は1953年ごろから手足にしびれが出始め、1978年に認定申請した。
しかし、熊本県は「感覚障害や運動失調など2つ以上の症状の組み合わせ」で水俣病と認める1977年基準に当てはまらないとして、1980年に退けた。
女性ら関西に移り住んだ人々は、国などに賠償を求めて提訴した。(関西訴訟)

1995年の政治決着で、ほとんどの患者が和解に応じ裁判を取り下げたが、女性を含む「関西訴訟」の原告だけが行政の責任を問い続けた。

2001年の高裁判決は、排水規制をしなかった国と県の過失を指摘、水俣病の認定基準も間違っているという判断を下した。

「汚染された魚介類を多く食べ、指先や舌先の感覚に障害があれば認定できる」との基準を示し、女性ら37人を水俣病と認定、国と同県、チッソに原告1人あたり450万~850万円の賠償責任があることを認めた。

2004年10月の最高裁判決は二審・大阪高裁判決が示した基準を支持し、高裁判決が確定した。

最高裁の判決が確定した後も、国は「最高裁の判決は有機水銀中毒症の判断基準であり、水俣病と有機水銀中毒は別」とし、現行の水俣病認定基準の見直しは行わず、熊本県の棄却処分に対する女性の不服審査請求も退けたため、女性は2007年5月に提訴した。
行政機関が本来すべき認定をしない場合に裁判所に認定の義務付けを求める「義務付け訴訟」)

被告の国側は「最高裁判決の基準は医学的にあり得ない」とし、国の認定基準について「水俣病認定に複数の症状の組み合わせが必要とする基準は医学的な根拠があり、現在でも合理的だ」と反論していた。

2010年7月、大阪地裁は以下の理由をあげ、女性の認定申請を退けた処分を取り消し、公害病訴訟では初めてとなる改正行政事件訴訟法に基づく行政認定を義務づけた。

1)  現行の認定基準(1977年基準)の「感覚障害や運動失調など2つ以上の症状の組み合わせ」がない限り水俣病と認めないとの国の主張は医学的正当性を裏付ける根拠がない。
   
2) 四肢の感覚障害は水俣病の基礎的症候で、神経症状が感覚障害のみである水俣病も存在すると認められる。
   
 

国はメチル水銀により末梢神経を損傷したとする「抹消神経説」を支持、複数の症状の組み合わせが必要と主張。
関西訴訟の原告を支援する医師や研究者は、メチル水銀が大脳皮質を傷つけたとする「中枢神経説」を提唱している。
判決は、原告の症状を「中枢神経の損傷と推認される」とした。

   
3) 原告の症状は四肢の感覚障害のみだが、メチル水銀の摂取状況、他に原因になる疾患がないことなどを総合考慮すれば、原告は水俣病と認められる。

2010/7/19 大阪地裁、国の基準を否定し、水俣病認定を義務づけ 

これに対し、県側は「十分な合理性・正当性がある」として控訴していた。

ーーー

大阪高裁判決の概要は以下の通り。

1)複数の症状の組み合わせを必要とする国の認定基準は、
  「策定当時の医学的知見に適合しており、その後の医学的見解からみても相当」
  「認定基準は水俣病の可能性が臨床医学上50%以上といえるものまで広く認めている」

2)感覚障害だけの場合でも、「個別具体的事情を総合考慮することで水俣病と認める余地がある」

  (原告の女性のように国の基準に規定された複数の症状の組み合わせに該当しない場合、
   慎重な検討を経ずに水俣病と認めない運用がなされてきた事例があったこともうかがえる。)

)女性の症状の検討:

  メチル水銀の摂取は「水俣病を発症させる程度の暴露が継続した可能性は低い」
  感覚障害の発症は1972年ごろで暴露終了から長期間経過しており、変形性頸椎症が原因の可能性もある。

2010年7月の一審・大阪地裁判決は、認定基準を「医学的正当性を裏付ける証拠がない」と否定。「感覚障害はメチル水銀が蓄積された魚介類を食べたのが原因」として、女性を水俣病と認めていた。

本年2月の福岡高裁判決は、二つ以上の症状の組み合わせを認定条件とした国の「77年基準」を「認定されるべき申請者が除外された可能性がある」と否定 していた。

ーーー

未認定患者の救済策として、一時金210万円を支払う水俣病特別措置法が2009年7月8日、可決成立した。

2009/7/3 水俣病救済法案、衆院を通過、来週成立の見通し

これに基づき、鳩山内閣は2010年4月、水俣病の未認定患者を救済するための特別措置法の「救済措置の方針」を閣議決定した。

2010/4/16 水俣病「救済措置の方針」を閣議決定

水俣病特別措置法に基づく救済制度の申請期限について、細野豪志環境相は本年2月に、2012年7月末で申請を 打ち切ることを表明した。

横光克彦環境副大臣は4月8日、水俣病不知火患者会などが集団検診で被害者の掘り起こしを続けていることについて、申請が7月末で締め切られるまでは「不知火患者会が(潜在被害を)掘り起こすのは多くの方に手を挙げていただく機会」 であるとしたが、「期限後には、こういった動きは慎んでもらわないといけない」とし、「いつまでも続くと、(地域振興などに力を注げず)ほかの団体に迷惑がかかる」と述べた。

その後の記者会見で真意を問われた横光副大臣は、「申請を目的にした掘り起こしを続けても、窓口がなくなった後では意味がないという趣旨」と釈明した。


 

付記

2012年6月24日、 患者団体「水俣病不知火患者会」(約5700人)や医師団など9団体でつくる実行委員会主催で、過去最大規模の一斉検診が、熊本県の水俣市や天草市、鹿児島県出水市の6会場で行われた。
受診した1413人のほとんどが初めての検診とみられ、途中集計の969人中88%にあたる853人に代表的な症状の感覚障害が確認されたという。

検診は、いまだ名乗り出ていない潜在被害者の実態を明らかにし、掘り起こしにつなげようと実施した。

救済策の申請受け付けは2010年5月に始まり、2012年5月末現在、熊本、鹿児島、新潟3県で5万5692人が申請している。


野田政権は4月13日夜の関係閣僚会合で、 大飯原発の安全性を最終確認し、再稼働することが妥当だと判断した。
これを受けて、枝野幸男経済産業相は14日に福井県を訪問し、再稼働を要請した。

この日の会合では、関電が実施済み及び計画している安全対策が 暫定的な安全基準を満たしていることを最終的に確認した。そのうえで、原発が1基も再稼働せずに一昨年並みの猛暑を迎えた場合、関電管内で約2割の電力不足になるといった電力需給見通しなどを踏まえ、再稼働する必要性を認めた。

ーーー

政府は4月8日、関西電力の管内のことし夏の電力需給について、最新の見通しをまとめた。

2010年猛暑並みの場合、19.6%の不足
去年を除く過去5年間の平均的な状況になった場合、17.2%の不足
2011年夏の実績( 家庭での節電や企業の土日操業)の場合でも7.6%の不足

これに対する疑問が呈されたことから、枝野経産相がやり直しを指示した結果、4月13日に修正案が提示された。

(1)関電
 ①火力: 積み増し困難。
   今夏、定期検査中の設備はなし。 
   長期停止火力(多奈川第二、宮津エネルギー研究所)は、立ち上げに相当程度の時間が必要。
 ②緊急設置電源: 積み増し困難。
   今夏に間に合うものは調達済
 ③一般水力: 11万kW増。
   今夏に補修を予定していた水力の補修の時期を先延ばし。この結果、全ての水力が稼働。
 ④揚水: 21万kW増
   夜間の電力融通の積み増し、水力発電の増等により積み上げ

(2)他電力からの融通: 現時点で昼間は積み増し困難。
  (より需要が見通せる将来時点であれば上積みはあり得る。)

(3)自家発電からの購入
  5万kWの積み上げにより、今夏は89万kWまで積み上げ。

関電管内の自家発(1000kw以上)は能力680万kwで、このうち自家消費や売電確定分を除くと130万kw。
今回、89万kwを折り込んだ。
残りは万一の場合のバックアップなど。

修正の結果、以下の通りとなる。

2010年猛暑並みの場合、18.4%の不足
去年を除く過去5年間の平均的な状況になった場合、16.0%の不足
2011年夏の実績( 家庭での節電や企業の土日操業)の場合でも5.5%の不足

詳細は下記参照。

関西電力の需給予想に対しては多くの疑問が出ている。

これを受け、政府は4月11日、各電力会社が申告している電力需給見通しを審査する有識者会議を新設する方針を決めた。
国家戦略室の「エネルギー・環境会議」に置き、4月中にも初会合を開く。
これまで政府の電力需給予測は電力会社の申請に基づいてまとめてきたが、第三者の評価を採り入れて予測の精度を高める。

今回はこれを待たず、上記の政府試算で判断した。

ーーー

各方面で出ている批判は以下の通り。

(需要)

原発がすべて停止したままの供給力2631万kwを、昨夏の実績が上回るのは昼間のピーク時間を中心にした計19時間で、全体のわずか0.9%。
ピーク時に節電すれば電気料金を割り引く仕組みを作ったり、反対にピーク時の電気料金を高く設定して使用を抑えれば、大規模停電などには至らないとの指摘もある。 (毎日新聞 4月14日)

需要サイドでは、様々な対策で200万Kw程度のピーク時の需要を落とすことができると見られている。
また、需給調整契約が88万Kw以上あると想定されている。(下記 河野太郎ブログ)

*基本料金を割り引く代わりに、ピーク時間帯の使用電力を削減できる契約

(自家発)

この供給力予測では、関電管内の自家発電の購入量を83(→89)万kwとしている。しかし、この数字は1000kw以上の発電容量のところからkwhあたり15円から20円という価格で購入するという前提でつくられている。

ISEPの試算では、関電管内で自家発電容量は700万kw以上あり、購入価格を例えば50円に引き上げれば相当量の掘り起こしが可能だとみている。さらに価格を引き上げれば1000kw以下の設備容量の自家発電も購入対象になりうる。

西日本全域で購入対象になり得る自家発電容量は2000万kwあり、さらに現在は購入対象にしていないガスコジェネの容量がそれに加わる。

河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり(4月13日) この夏関西の電力は足りるか

(融通)

中部電力、中国電力、四国電力の供給力余力は800万kw以上あると見込まれている。(同上)

(揚水発電)

能力の半分の稼働しかない。(昨年は原発の夜間電力が汲み上げに使用可能であった)
 ベース供給力減に伴う揚水汲み上げ電力不足としているが、夜間であれば火力をフル稼働すれば余力がある筈。

 

(火力発電)

八木関電社長は「休止中の火力発電所の立ち上げや、ガスタービン発電機の設置など供給力上積みに努めている」と述べているが、実態は違う。

宮津エネルギー研究所1、2号機、多奈川第2の1、2号機が長期休止中。
宮津市や京都府が宮津火力発電の再稼働を、また岬町が多奈川第2火力発電の再稼働をそれぞれ要望しているが、関電は「主要部品を替える必要があり、新設に近い金額がかかる」として再稼働に否定的な態度をとっている。

また和歌山県と和歌山市は、着工準備中の和歌山火力発電所(出力計370万kw)の早期着工を求めているが、関電は 原発が再稼働すれば過剰投資になる」として着手を見合わせている。

関電は 原発の再稼働を前提に供給計画を立てており、再稼働ができない場合の対策は最初から放棄している。それは、原発を動かさずに他の方式で発電すると燃料費などが「余分」にかかる=儲けが減るからだ。

週刊MDS 関電の「電力不足」はウソ 大飯原発再稼働へ向けての脅し

ーーー

関西電力 2012年8月 電力需給予想 (単位:万kw)
  http://www.meti.go.jp/policy/safety_security/pdf/120413-1.pdf

  能力 2011夏
実績

2012/8見通し

2011夏
並み
2010猛暑
並み
過去5年
平均
需要   2,784 2,784 3,095 3,023
供給力
(除 原発)
4,079
(3,046)
2,947
(2,611)

2,631

2,525

2,540
過不足   163
(5.9%)
-153
(-5.5%)
-570
(-18.4%)
-483
(-16.0%)
           
原子力 977 337 0 0 0
火力 1,697 1,415 1,472 1,472 1,472
一般水力 331 225 203 203 203
揚水 488 448 312 206 221
太陽光 0 0.2 0.2 0.2
自社合計 3,494 2,425 1,987 1,881 1,896
他社一般 585 405 523 523 523
融通 0 118 121 121 121
他社合計 585 523 644 644 644
総合計 4,079 2,947 2,631 2,525 2,540
原発除く 3,046 2,611 2,631 2,525 2,540


供給内訳 (百万kw)

    能力 2011夏
実績
ケースA
2011夏
並み
ケースB
2010夏
並み
ケースC
5年平均
ケースB
(4/9提出)
原子力 美浜①-③ 166.6 50 - - -  
高浜①-③ 339.2 169.6 - - -  
大飯①-④ 471 117.5 - - -  
合計 977 337 0 0 0 0
火力 石炭 舞鶴①-② 180 180 180 180 180  
LNG 姫路第二④-⑥ 165 165 165 165 165  
姫路第一⑤-⑥ 144.2 124 127.5 127.5 127.5  
南港①-③ 180 180 180 180 180  
堺港①-⑤ 200 178.5 181.9 181.9 181.9  
石油 赤穂①-② 120 120 120 120 120  
相生①-③ 112.5 112.5 112.5 112.5 112.5  
宮津①-② 75 0 0 0 0  
多奈川第二①-② 120 0 0 0 0  
海南①-④ 210 165 210 210 210  
御坊①-③ 180 180 180 180 180  
ガス
タービン
関空①-② 4 0 3.2 3.2 3.2  
姫路第一①-② 6.6 0 2.2 2.2 2.2  
その他 火力増出力 - 10 10 10 10  
合計 1,697 1,415 1,472 1,472 1,472 1,472
水力 一般   331 225 203 203 203 193
揚水 喜撰山①-② 46.6 30 21.6 14.2 15.4  
奥多々良木①-⑥ 193.2 181.4 124.2 82 88  
奥吉野①-⑥ 120.6 120 82.2 54.6 58.2  
大河内①-④ 128 116.2 84 55.2 59.4  
小計 488 448 312 206 221 185
合計 819 673 515 409 424 378
太陽光 堺太陽光 1 0 0.2 0.2 0.2  
自社合計 3,494 2,425 1,987 1,881 1,896 1,850
原子力 原電敦賀 56 0 0 0 0 0
火力 卸電気 電源開発* 260 77.8 155.5 155.5 155.5  
IPP
共同火力*

 

新日鉄広畑 13 13.3 13.3 13.3 13.3  
神戸製鋼神戸①-② 134 131.8 131.8 131.8 131.8  
神戸製鋼加古川 6 5.4 5.5 5.5 5.5  
ガス&パワー 15 14 13.6 13.6 13.6  
中山共同発電 14 14 13.6 13.6 13.6  
和歌山共同火力①-③ 30.6 14.5 14.5 14.5 14.5  
JX 麻里布 13 13.2 13.2 13.2 13.2  
自家発   - 55.3 89.1 89.1 89.1 83.9
合計 (486)
452
339 451 451 451 445
水力 一般   54 48 51 51 51  
揚水 電源開発* (35)
18
17.5 16.4 16.4 16.4  
合計   72 66 67 67 67 67
太陽光   4.5 0 4.5 4.5 4.5 4.5
融通 中部電力     70 70 70  
北陸電力   0.5 3 3 3  
中国電力   71.9 37 37 37  
四国電力   34        
その他   11.2 11.4 11.4 11.4  
合計 - 118 121 121 121 121
他社合計 585 523 644 644 644 638
総合計 4,079 2,947 2,631 2,525 2,540 2,488
同上(原発除く) 3,046 2,611 2,631 2,525 2,540 2,488


他社の*印は総能力で、関電の受け入れはその一部。

 



コスモ石油は、サウジアラビア国営石油会社のSaudi Aramcoが沖縄県にあるタンクに貯蔵している原油を調達する。
5月上旬に沖縄県の基地にあるサウジ産原油20万キロリットルを船積みする予定で、堺製油所まで運び、石油製品を生産する。

原油の国内輸送に関し大型タンカーの利用が認められたことから費用の軽減が見込まれる。

ーーー

Saudi Aramcoによる沖縄原油タンク活用プロジェクトは2007年4月に中東訪問中の安倍晋三首相がアブドラ国王との会談で提案したもので、2010年6月に資源エネルギー庁とSaudi Aramcoが基本的事項について合意した。

Aramcoがうるま市の沖縄石油基地㈱の原油タンク6基(計60万キロリットル貯蔵)を借り受け、自国原油を蔵置し、商業的に活用する。
経産省が石油天然ガス・金属鉱物資源機構JOGMECを通じ、沖縄石油基地から借りる国家備蓄用タンクのうち6基を転貸)

我が国は、緊急時において貯蔵される原油の優先的な供給を受けられ、エネルギーセキュリティが向上するとともに、日本への原油供給の約30パーセントを担うサウジアラビア王国との戦略的関係が一層強化される。

中東からの原油輸送は通常20日かかるが、沖縄からだと3~4日で製油所まで届く。

第1船(約30万キロリットル)は2011年2月に入港した。

Aramcoはこれまで、中国や韓国などに販売してきた模様。
第一号は2011年5月に韓国の
GS Caltex.に出荷された。
2011年8月にはConocoPhillips向けに米西海岸に出荷されている。

ーーー

沖縄石油基地㈱は1973年設立で、JX日鉱日石エネルギーが65%、コスモ石油が 35%を出資する。

うるま市の約63万坪の敷地に45基(貯油能力450万キロリットル)の巨大タンクを配備し、日本の原油消費量の約6日分に相当する原油を貯蔵している。

平安座島と宮城島の間を埋め立てて、沖縄石油基地㈱の石油備蓄基地(OCC)が作られている。
これに隣接して平安座島に沖縄出光の石油備蓄基地(沖縄ターミナル:OTC)がある。(航空写真の青色の囲い)

本島と結ぶ海中道路は、この石油備蓄基地の為につくられた。

 

 

我が国の現行石油備蓄制度は、国家備蓄と、「石油の備蓄の確保等に関する法律」に基づく民間備蓄の二本立てとなっている。

石油備蓄は現在、国家備蓄が116日分、民間備蓄は89日分となっており、国家備蓄は国内10か所の国家備蓄基地に加え、民間石油タンクを借り上げている。



昭和シェル石油と太陽石油は4月13日、韓国GS Caltexとの間で韓国でのパラキシレン事業に関わる新規プロジェクト基本覚書を締結した。

麗水市のGS Caltexの年産能力135万トンのPXプラントを2014年末に年産235万トンまで増強し、PXの単一工場として世界最大とする。(インドのRelianceが185万トン、韓国のSオイル 170万トン)

昭和シェル石油と太陽石油は原料供給などで協力する。

両社の原料キシレン能力は以下の通り。
 昭和四日市石油 376千トン
 西部石油    250千トン(昭和シェル 38%、宇部興産 11%、他に中国電力ほか)

 太陽石油    400千トン

両社は製造・販売の関与も検討する。
合弁設立の有無や各社の投資負担など協力関係の詳細は今後詰める。

両社は、「この協働により三社は、原材料調達・生産・製品の販売に至る、PX事業を通しての競争力強化を目指してまいります」としている。

総事業費は500億~600億円規模になる見通し。

ーーー

韓国企業はパラキシレンの拡大を図っている。
日本企業の参加が相次いでいる。

1)コスモ石油・Hyundai Oil Bank

 コスモ石油は2009年6月、Hyundai Oil Bankとの合弁会社設立の基本合意を発表した。

合弁会社:HC Petrochem
出資比率:50/50
 ・事業内容 :パラキシレンおよびその他関連製品の製造・販売
 ・設備規模 :Hyundai Oil Bankの既存設備(大山)の譲受
                   ナフサ原料のパラキシレン 380千トン/

         パラキシレン製造設備 新設
           混合キシレン原料のパラキシレン 800千トン
/
           (2011年7月に鍬入れ式)

 ・コスモ石油四日市製油所にミックスキシレン蒸留装置 (300千トン)を新設、JVに供給

 注)コスモ石油とHyundai Oil BankにはUAEのIPICが出資している。

  2009/5/8 コスモ石油、韓国でパラキシレン製造へ

2)JX日鉱日石エネルギーは2011年8月、SKイノベーション(旧称 SK Energy)と合弁設立で合意した。
 2014年に年産能力100万トンのパラキシレンの生産を始める予定。

 2007年1月22日に当時の新日本石油とSKが合意した戦略的業務提携に基づくもの。

1)パラキシレン製造に係る合弁会社設立

社名:未定  付記 2012/6/8設立、ウルサン・アロマティックス
立地:蔚山
出資:JX 50%-1株、SK 50%+1株
能力:約100万トン
原料:JXは日本国内の製油所から供給

注)SKは蔚山にパラキシレン 650千トンを持っている。

2)潤滑油ベースオイル製造に係る合弁会社設立

2011/8/9  JXエネルギーとSKグループ、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立

3)韓国のS-Oilは2011年6月に、温山で1系列で世界最大のパラキシレン工場の商業生産を開始した。

稼働したのはNo.2 Aromatic Complexのパラキシレン年産90万トン、ベンゼン 28万トン。
これにより同社の能力はほぼ倍増し、パラキシレン 170万トン、ベンゼン56万トンとなった。

2011/10/28   韓国S-Oil、1系列で世界最大のパラキシレン工場の竣工式を開催

 

 

 

中国とマレーシアは4月1日、 広西チワン族自治区欽州市で両国首相が出席し、China-Malaysia Qinzhou Industrial Park(中馬欽州工業園区)の立ち上げ式典を行った。

同工業園区は2011年4月に両国首相が設立に合意した。

住宅、工業団地、商業施設からなり、第1期は15km2、最終的には55km2となる。
開発コストは10億リンギ(約270億円)と見込まれている。

マレーシアのQinzhou Development (Malaysia) と欽州政府傘下の欽州金谷投資が合弁で手掛け、今後3期に分け、15年で開発を行う。

 


ナジブ首相は挨拶の中で、着想から1年でプロジェクトが着工に至ったことについて、「中国政府のプロジェクト認可までの動きが非常に速く、感銘を受けた。この"欽州スピード"とをマレーシアも学ぶべきだ」と、述べた。

温家宝首相はナジブ首相に対して中国はもっと多くの中国企業にマレーシアに投資するよう勧めているとしマレーシアにも同様の工業園区を建設したいと述べた。

ナジブ首相はこれに賛成し、それにより中国の企業がASEANに大きな足跡を残すことになると述べた。

ナジブ首相はその後、首相のお膝元パハン州クアンタンのGebengに工業園区を建設すると述べた。

        Geneng には現在、PetronasのMTBE MalaysiaとPP Malaysia、BASF/Petronas JVのBASF Petronasがある。


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中国は既にシンガポールと共同で2つの工業園区を持っている。

江蘇省蘇州市のChina-Singapore Suzhou Industrial Park (中新蘇州工業園区)と天津市郊外のChina-Singapore Tianjin Eco-City (中新天津生態城)である。

China-Singapore Suzhou Industrial Park 中新蘇州工業園区
蘇州工業園区は中国最初の政府間合作開発区で、日本企業も多く進出している。
詳細は http://www.sipac.gov.cn/japanese/

ーーー
 
China-Singapore Tianjin Eco-City 中新天津生態城

 
 

天津市の浜海新区は渤海湾に面した区域で、塘沽(TangGu)、漢沽(Hangu)、大港(Dagang)の3つの行政区と経済技術開発区(TEDA)、保税区などから構成されているが、漢沽とTEDAの間に建設中。


天津エコシティの計画詳細は http://file.h2o-china.com/user/130/2e.pdf 

 

 

東ソーは4月9日、南陽事業所事故調査報告書を発表した。
4月3日に関係行政官庁へ提出、6日に受理された。

   http://www.tosoh.co.jp/news/pdfs/20120409002.pdf

 付記

東ソーは2012年6月13日、南陽事業所第二VCM製造施設爆発事故調査対策委員会の報告書を発表した。
http://www.tosoh.co.jp/news/pdfs/20120613001.pdf


事故は2011年11月13日に南陽事業所第二VCM製造施設で発生した。
  
2011/11/17  東ソー・南陽事業所の第二VCMプラントで爆発事故

3時39分にオキシ反応工程の緊急放出弁誤作動で全開、プラントが全停止した。
その後、プラント点検のための液抜き作業等を行ったが、ガス漏れが起こり、15時24分に爆発した。
1名が死亡した。

事故の経緯と原因は以下の通り。

  1)最初の緊急放出弁誤作動はバルブポジショナーのトルクモーターコイルの温度変化による接触不良

 

2)塩酸塔へのフィード組成の変動に気づかず、塩酸塔の塔内温度分布を適正に保てなかったために塩酸塔塔頂のHCL組成が異常となり、塩酸塔還流槽にVCMが多量に混入した。



 

3)1,1-EDC生成の異常反応の知識が無かったため、通常の停止操作に入った。

VCMの混入した還流槽を塩酸塔と切り離して閉鎖系にしたこと、冷却源を停止したことで急激な圧力上昇の要因を作った。

 

4)還流槽とタンク内に反応触媒となる塩化第二鉄が存在したことで、HCLとVCMによる1,1-EDCの生成反応(発熱反応)が進行し、温度・圧力が急上昇。

 

5)異常時の対応マニュアルが十分でなかった。

 

報告書では以下の通り結論付けている。

本事故の要因は、オキシ反応工程のA系列での緊急放出弁の誤作動を発端に、プラント全体の大幅な緊急ロードダウンが発生し、その過程で塩酸塔の温度管理が適切ではなかったため、HCLの中にVCMを混入させたこと、HCLとVCMから1,1-EDCが生成する反応に対する知識が不足していたため、通常と同じ考えに基づいた各機器の停止処置操作を行ったこと、異常時の対応マニュアルが十分でなかったこと、等である。

最初のトラブルから爆発炎上に至るまで約12時間の長時間が経過しており、その間、幾度も災害を回避する機会があったと思われるが、充分な対処に至らず、重大な結果を引き起こした。

報告書では事故の再発防止対策として、ハード対応とソフト対応(マニュアル改定、教育等)を挙げているが、次の記載が気になる。

事業所の体質的な課題に関しては、再発防止策が浸透し、効果を上げるまでには相当の時間を要すると思われる。

ーーー

東ソーでは休止中の第一VCM、第三VCMプラントについてもプラント特性に合わせて同様の対策を取り、今回の調査報告書と同時に、両プラントの稼働再開に向け改善計画書を提出した。

これを受け、県と同市消防本部、経済産業省の中国四国産業保安監督部(広島市)は計画書の審査、確認のため、10日に現地で合同の立ち入り調査を行った。

東ソーでは改善策の実施後に報告書を提出し、第一プラントは5月上旬、第三は6月以降の稼働再開を目指している。
なお、ペースト塩ビは2011年12月後半に生産開始している。

事故が起きた第2号機は、撤去して新設となれば運転再開に1年以上かかる見通し。

付記

東ソーは5月9日、第一塩ビモノマープラント(年産能力:25万トン)が8日から稼動再開したと発表した。
 
 東ソーは4月26日、第三塩ビモノマー(年産能力:40万トン)の運転再開が同日、当局から承認されたと発表した。27日から再稼働に向けた準備を開始する。

東ソーは7月8日、第三塩ビモノマー(年産能力40万トン)が稼動を再開したと発表した。

東ソーの宇田川社長は7月12日、第一塩ビモノマー(55万トン)について、「再建するが、生産能力は元に戻さず年20~30万トンにする」と述べた。(日本経済新聞)

 

ConocoPhillipsの取締役会は2011年7月、同社をスピンオフにより Exploration & Production事業とRefining & Marketing事業の2つの独立した企業に分割し、それぞれを上場する計画を承認した。

2011/7/20 ConocoPhillips、石油開発と精製に会社分割


ConocoPhillipsの取締役会は2012年4月4日、分離を承認した。

Exploration & Production会社がConocoPhillipsの名称を引き継ぎ、下流のRefining & Marketing会社はPhillips 66となる。
Phillips66は上場する。

Phillips 66 はConocoとの合併前のPhillips Petroleumのガソリンのブランド名。
1927年に新しいハイオクタンガソリンのテストをUS Highway 66で行い、時速66マイルが出たため、ガソリンのブランド名をPhillips 66とした。

4月30日に、株主は2株につきPhillips66の株1株を交付される。

新しいConocoPhillipsはPhillips66の株を持たない。

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ConocoPhillips2002年にPhillips PetroleumConocoが合併して誕生した。

ーーー

ConocoPhillips事業

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Phillips 66の事業

 

 

 

 

武田薬品は4月6日、移転価格税制に基づく更生処分について大阪国税局に異議申し立てをしていたが、更生された所得金額1,223億円のうち977億円を取り消す異議決定書を受領したと発表した。

地方税を含めた追徴税額は571億円であったが、このうち455億円が還付され、還付加算金(金利:2010年以降は年4.3%)が116億円支払われる。合計の還付額はたまたま追徴額と同じとなった。

異議申し立ての全額は認められておらず、残りの246億円という巨大が金額の所得が日本と米国で二重課税の状態にある。
同社では
今後の対応については異議決定書の内容について検討の上、決定するとしている。

付記

同社は5月7日、原処分の取り消しが認められなかった部分の全額の取り消しを求める審査請求書を、大阪国税不服審判所に提出した。

ーーー

武田薬品は2006年6月、米国アボットとの50:50の合弁会社(当時)のTAPファーマシューティカル・プロダクツ(TAP)との間の消化性潰瘍治療剤「プレバシド」の製品供給取引等に関して、米国市場から得られる利益が武田に過少に配分されているとして、移転価格税制に基づき、大阪国税局より所得金額で6年間で1,223億円の所得の更正を受け、約570億円の追徴税額を課せられたと発表した。

2006/6/29 武田薬品、移転価格税制に基づく更正

なお、TAPは2008年4月の会社分割により、武田アメリカの100%子会社となった。
2008/4/4 武田薬品工業、米国事業再編

武田薬品は、
①50/50JVのTAPとの取引価格はアボットの合意なしには決められず、独立企業間価格であり、移転価格税制が適用されるべきものではない、
②価格を安くすればTAPの利益が増えて半分がアボットにいくため、武田にとってTAPに所得を移転する意図や動機はない
として、徹底抗戦の構えをとった。

当初は追徴税額は返還されるものとみなし、業績は修正せず、追徴分は貸借対照表には固定資産の「長期仮払税金」として計上したが、監査法人の意見変更で2006年9月中間期に税金に計上した。
   2007/5/14 注目会社、3月決算概要ー4

武田薬品は2006年8月に大阪国税局に異議申し立てをおこなったが、2008年7月にこれを中断し、二重課税の排除を求めて国税庁に対し米国との相互協議を申し立てた。
しかし、2011年11月に国税庁から、相互協議が合意に至らず終了した旨の通知を受領した。

米国側との相互協議は、日本で更正した額を輸出価格の値上げとして米国で追加でコスト算入して利益を減らし、米国での税金を減らすというもの。

米国との相互協議が成り立たなかったということは、国税局の主張を米国当局が全く受け入れなかったことを意味する。

武田の主張の通り、通常は50/50JVとの取引価格は独立企業間価格とみられ、移転価格税制は適用されないため、米国側が応じないのは当然である。
下記の信越化学のケースでは、米国当局は日本側の主張を一部受け入れ、その部分について信越の米子会社に税金の還付をしている。

同社は一旦中断していた異議申し立て手続きについて大阪国税局へ再開を申し入れていた。

なお、大阪国税局が残りの246億円分の異議を認めなかった理由が分からない。

おそらく、武田薬品は国税不服審判所に審査請求を行うものと思われる。

ーーー

移転価格税制を巡る問題で、異議申し立てを国税当局が認めるのは珍しいという。

TDKの場合は、東京国税局の移転価格税制に基づく更正処分について国税不服審判所に審査請求を行い、国税不服審判所長から約141億円の処分を取り消しの裁決書を受領、地方税や還付加算金を含め約94億円が還付された。

2010/2/5 国税不服審判所、TDKの移転価格課税取り消し

信越化学の場合は、約110億円の追徴課税を受けていた問題で、二重課税の排除を求め日米相互協議を申し立て、日米両国の当局の相互協議で、申告漏れと指摘された所得は当初の約233億円から約39億円に減額され、還付加算金を含めて日米合計で約119億円が還付された。
 米子会社
シンテックは米税務当局(IRS)が39億円相当の技術料追加を認めたため、相当する税金の還付を受けた。

2010/6/11 信越化学の移転価格課税、119億円還付へ

 

 

 

野田首相と枝野経済産業相藤村官房長官、細野原発事故担当大臣は4月6日、「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」(新基準)を正式決定した。
    http://www.meti.go.jp/topic/data/120406-11.pdf

政府は関西電力大飯原発3、4号機が基準1,2 を満たすか検証するよう原子力安全・保安院と関電に指示した。
関西電力に対しては、基準3 を踏まえた安全対策の実施計画を示す工程表の提出を要請した。関電は新基準を念頭に入れた安全対策の実施計画を9日にも提出する。 

付記

関西電力は4月9日、大飯発電所3、4号機のさらなる安全性・信頼性向上のための対策の実施状況と実施計画を取りまとめ、経済産業大臣に報告した。
 「大飯発電所3、4号機における更なる安全性・信頼性向上のための対策の実施計画(概要)」

週明け以降の会合で、工程表の内容を確認した上で安全性を検証、福井県知事らに説明し、再稼働を要請する。
この後、地元理解を得られているかどうかを政治判断し、再稼働を決める。

* 地元の範囲は不透明
* 官房長官は地元同意について、「法律などの枠組みで義務付けられているわけではない」と述べている。

付記

野田政権は4月13日夜の関係閣僚会合で、安全性を最終確認し、再稼働することが妥当だと判断した。
これを受けて、枝野幸男経済産業相は14日にも福井県を訪問し、再稼働を要請する。

この日の会合では、関電が実施済み及び計画している安全対策が暫定的な安全基準を満たしていることを最終的に確認した。そのうえで、原発が1基も再稼働せずに一昨年並みの猛暑を迎えた場合、関電管内で約2割の電力不足になるといった電力需給見通しなどを踏まえ、再稼働する必要性を認めた。

ーーー

新基準設定に当たり、福島原発事故について、以下の「基本的理解」を行っている。

(1) 事故の原因と事象の進展
 ○地震の影響
  ・「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」の安全機能は正常に働いた。
  ・外部からの受電系統7回線の全てが、地震による電気設備の損傷等で受電できない「外部電源喪失」状態に。

 ○津波や浸水という共通要因による機能喪失
  ・津波の来襲により、海側に設置されていた冷却用のポンプ類が全て機能喪失した。
  ・非常用ディーゼル発電機、配電盤、蓄電池等の電気設備の多くは、建屋の浸水により機能を失った。
  ・生き残った冷却機能のうち、非常用復水器(1号機)は直流電源の喪失で十分機能せず。
   原子炉隔離時冷却系(2号機)、原子炉隔離時冷却系と高圧注水系(3号機)は水位が維持されていたが、
   電源喪失及び空気弁の開操作困難等により適切に減圧し低圧の代替注水に移行することができなかった。
    ・その結果、水位の低下により炉心が露出し、ついには炉心損傷・溶融に至った。
    ・原子炉建屋内に水素が滞留したことにより、1、3、4号機の原子炉建屋で水素爆発が発生した。

 ○迅速・的確な事故対応のための環境
  ・地震及び津波による電源喪失で、中央操作室における計測機器等が全て機能喪失し、
   プラントの状況監視や電動弁の制御等が出来なくなった。
   コミュニケーション・ツールの確保や情報の収集が迅速にできなかった。

 ○使用済燃料プール
  ・電源喪失や水素爆発の影響で、使用済燃料プールへの注水・冷却機能を喪失した。

(2) 地震及び高経年化の影響
   安全上重要な機能を有する主要設備については、基本的には安全機能を保持できる状態にあったと推定。

   ・原子炉圧力容器・格納容器・重要な配管類が、地震で破壊されたのではないかとの指摘もあるが、
  そうした事実は確認できていない。
  基本的な安全機能を損なう地震の被害があったことを示す知見は得られていない。
  ・高経年化による劣化事象の影響について評価したが、これは考え難い。


原発再起動にあたっての安全性の判断基準として3つの基準を決めた。
(各項目の最後の「対策」は下記の「30の安全対策」参照)

基準1 地震・津波による全電源喪失という事象の進展を防ぐ安全対策がすでに講じられていること。

 ① 所内電源設備対策の実施 
  1) 全交流電源喪失時にも電源供給可能な電源車等を配備  対策5,6,7,10
  2) 直流電源は、津波の影響を受けないよう浸水対策を行う    対策6
    3) 電源車等による給電が可能であるよう、緊急時の対応体制を強化、訓練実施 対策5,7,8,10

 ② 冷却・注水設備対策の実施
  4) 全交流電源喪失時の冷却・注水のため、最終ヒートシンクの多様性を確保 対策16,17
  5) 全交流電源喪失時の冷却・注水機能維持のための機器への浸水対策  対策13
  6) 震災時に給水が可能であるよう、緊急時の対応体制を強化、訓練実施  対策12
  7) 給水のための消防車・ポンプ車の確保  対策13,16,17
  8) 消防車、ポンプ車等用に必要な燃料の外部からの調達可能な仕組み 対策16,17

 ③ 格納容器破損対策等の実施
  9) 低圧代替注水への移行を確実に行うための手順・体制構築、訓練   対策20
  10) ベントの実施の手順・体制構築、訓練(BWR のみ)  対策21
  11) ベント弁等に空気駆動弁が用いられている場合、ベントを可能とすること。(BWR のみ) 対策21

 ④ 管理・計装設備対策の実施
  12) 全交流電源喪失時に、中央制御室の非常用換気空調系設備(再循環系)を運転可能に  対策25
  13) 全交流電源喪失時における確実な発電所構内の通信手段を確保  対策26
  14) 全交流電源喪失時においても、計装設備を使用可能とすること。  対策28
   15) 高線量対応防護服、個人線量計等の資機材を確保、要員拡充  対策30
  16) 津波等により生じたがれきを迅速に撤去      対策30

     大飯原発では、昨年3月末に原子力安全・保安院が電力各社に指示した「緊急安全対策」で既にほぼ実施済み。

基準2
「福島第1原発を襲ったような地震・津波が来襲しても、炉心と使用済み燃料ピット・使用済み燃料プールの冷却を継続し、同原発事故のような燃料損傷には至らないこと」を国が確認していること。

津波については、15mの津波、あるいは、各発電所の想定津波高さより9.5m以上の高さの津波に耐えられること。

大飯原発ではストレステスト(耐性調査)で確認済。
  
2012/3/26    原子力安全委員会、大飯原発のストレステスト 1次評価を確認

基準3
  さらなる安全性・信頼性向上のための対策の着実な実施計画が事業者により明らかにされていること。
事業者自らが安全確保のために必要な措置を見いだし、これを不断に実施する事業姿勢が明確になっていること。


福島第一原発事故の技術的知見から得られた30の安全対策について、
実施されていなくても、実施計画があるだけで再稼働を認めるというもの。

 ①原子力安全・保安院がストレステストの審査で一層の取り組みを求めた事項

 ②保安院が「東電福島原発事故の技術的知見」で示した30の安全対策
   (1) 地震などによる長時間の外部電源喪失を防ぐための対策 (対策1~4)
   (2) 所内電源の機能喪失を防ぎ、非常用電源を強化する所内電気設備対策 (対策5~11)
   (3) 冷却注水機能の喪失を防ぐ設備対策 (対策12~17)
   (4) 格納容器の早期破損や放射性物質の非管理放出を防ぐ格納容器破損・水素爆発対策 (対策18~24)
   (5) 状態把握・プラント管理機能の抜本的強化のための管理・計装設備対策 (対策25~30)

大飯原発の対策予定時期は以下の通りで、関電は前倒しを検討する。
 外部電源の多重接続(2014年度)
 防波壁の5mから8mへのかさ上げ(2013年12月)
 緊急時の免震棟(2016年度) →2015年度に繰り上げ
 内線電話の交換機などの高台移設(2016年度)
 フィルター付きベント設備の設置(中長期)→2015年度完成
 発電所へのアクセス道路の整備(中長期)

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東京電力福島第一原発事故の技術的知見から得られた30の対策(保安院)

〇外部電源対策 対策1 外部電源系統の信頼性向上
対策2 変電所設備の耐震性向上
対策3 開閉所設備の耐震性向上
対策4 外部電源設備の迅速な復旧
①所内電気設備対策 対策5 所内電気設備の位置的な分散
対策6 浸水対策の強化
対策7 非常用交流電源の多重性と多様性の強化
対策8 非常用直流電源の強化
対策9 個別専用電源の設置
対策10 外部からの給電の容易化
対策11 電気設備関係予備品の備蓄
②冷却・注水設備対策 対策12 事故時の判断能力の向上
対策13 冷却設備の耐浸水性確保・位置的分散
対策14 事故後の最終ヒートシンクの強化
対策15 隔離弁・SRVの動作確実性の向上
対策16 代替注水機能の強化
対策17 使用済燃料プールの冷却・給水機能の信頼性向上
③格納容器破損
・水素爆発対策
対策18 格納容器の除熱機能の多様化
対策19 格納容器トップヘッドフランジの過温破損防止対策
対策20 低圧代替注入への確実な移行
対策21 ベントの確実性・操作性の向上
対策22 ベントによる外部環境への影響の低減
対策23 ベント配管の独立性確保
対策24 水素爆発の防止(濃度管理及び適切な放出)
④管理
・計装設備対策
対策25 事故時の指揮所の確保・整備
対策26 事故時の通信機能確保
対策27 事故時における計装設備の信頼性確保
対策28 プラント状態の監視機能の強化
対策29 事故時モニタリング機能の強化
対策30 非常事態への対応体制の構築・訓練の実施

   ※ 19、20、24は主にBWRが対象

 

 

 

韓国知識経済部は4月4日、洪錫禹長官主宰のIT政策諮問団会議を開き、集中投資を行う10大IT中核技術を選定した。

IT産業の発展を通じ、社会や経済などあらゆる分野をスマート化するビジョン
"Smartopia Korea"を掲げるとともに、
 ・主力IT産業の競争力向上
 ・ソフトウエア素材産業の競争力強化
 ・未来新産業の育成
の3大政策目標を掲げた。

また、集中投資を行う10大IT中核技術を以下の通り決めた。
 ・次世代デバイス中核技術
 ・IT中核素材
 ・ビッグデータおよび人工知能
 ・ハイブリッドストレージ
 ・有無線統合ネットワーク
 ・テラヘルツおよび量子情報通信
 ・無人化プラットホーム
 ・バイオセンサー
 ・ライフケアロボット
 ・電力半導体

韓国政府は、今後5年間で1兆2400億ウォン(約900億円)を10大技術分野に投じ、2020年に同分野で売上高49兆8000億ウォン、輸出197億ドルの達成を目指している。

知識経済部は、1人当たり国民所得4万ドル達成に向け、ソフトウエアの競争力確保に注力する方針で、洪長官は「IT産業を、現在のハードウエア中心からソフトウエア中心に転換してこそ、貿易規模2兆ドル時代を開くことができる」と強調している。


 

 

ドイツの太陽電池メーカー大手のQ-Cellsは4月2日、法的整理の手続きを申請すると発表した。

太陽電池ブームを追い風に2008年に世界シェア首位に立ったが、中国メーカーなどとの価格競争が激化し、赤字体質に陥っていた。

同社は破綻の理由には挙げていないが、ドイツ政府は4月1日から太陽光発電の買取価格(Feed-in-tariff)の大幅引き下げを実施する。

ドイツ議会は3月29日、Renewable Energy Actの改正案を議決した。

ドイツでは送電事業者に買い取りを義務づける「固定価格買取制度」により太陽光発電は急速に拡大し、設備容量で世界一になった。
 しかし価格は電気料金に上乗せされるため消費者負担が政府の予想を超えて膨らんだ。このため、4月1日以降の設置分について買取価格を引き下げ、太陽光発電の普及を事実上抑制する形に方針転換した。

10kW 未満の
小規模発電は1kw時当たり0.2443ユーロから0.1950ユーロに引き下げられる。かつ、発電量の80%分しか払われない。
1 MW までは0.165ユーロに、1-10 MWは0.135ユーロになる。発電量の90%分しか払われない。

10MW以上についてはFeed-in-tariffは不適用となる。(一定の猶予期間あり)

 

これらを受けて、多くのメーカーが破綻している。

2011年12月にSolar Millennium AGが破綻した。

本年3月にSolarhybrid AGが破綻した。
同社はこれに先立ち、買取価格の引き下げが同社損益に大きな影響を与えるとしていた。

4月2日、南カリフォルニア州で1000メガワットのBlythe Solar Power Projectを推進しているSolar Trust of America LLCがChapter 11 を申請した。

同社は破綻したSolar Millenniumが70%、Ferrostaal(旧称MAN Ferrostaal、アブダビのIPICが70%取得)が30%のJV。
Solar Millenniumはその持株を
Solarhybrid AGに売却しようとしたが、Solarhybrid AG自体が破綻した。
Ferrostaalは資金援助を拒否した。

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Q-Cells は2009年に大幅赤字に陥った。
同社は2009年8月13日、2009年上半期決算が下記理由で大幅な赤字となったと発表した。

スペイン政府が2009年以降、太陽光発電の補助金を年間500MWに制限した。
スペインは世界最大の市場で、2GW以上の需要があったため、1.5GWが他に需要を求め、競争が激化した。
   
金融危機による銀行融資の激減
   
厳しい冬のため、3月末まで需要が極めて少なかった。
  スペインが上記理由で需要激減となったが、ドイツや中欧ではほとんど設置されなかった。


2009/9/16 欧州で「太陽電池バブル」崩壊、米First Solarは好調 

2010年はかろうじて黒字を確保した。

新たに開始した太陽電池モジュール事業と中型の建物屋根への太陽光発電施設や小規模太陽光発電施設というシステム導入事業という戦略新規事業部門の売上高が全社売上高の27%を占めたのが大きい。

しかし、同社が3月末に発表した2011年決算は、価格下落に歯止めがかからず、最終損益が8億4600万ユーロの最終赤字だった。有形・無形資産の除却損 398.5百万ユーロ、在庫評価損 129.1百万ユーロを含む。

2011年に経営再建のため、生産量を一時的に削減、ドイツの生産能力を半減して生産拠点をドイツから人件費の安いマレーシアに移管した。

本年2月には債権者集会を開き、債務の株式化などの財務リストラの承認を得た。しかし、Pfleiderer社の同様のケースが裁判所で否定されたことからこれを断念、代替案が見つからないため法的整理に入ることを決めた。

同社によると、世界の太陽電池の状況は以下の通り。

  1)過剰能力(単位:GWp)

  需要 能力 過剰
2010年 19 25 6
2011年予 25 40 14
2012年予 29 50 21

  2)2011年のスポット価格下落

Solar cells         -60%
Modules -40%
Systems -20%

Q-Cellsは2008年の年間生産量で世界1位であった。(2位は米のFirst Solar、3位は中国のSuntech Power)

その後の中国勢の台頭で同社のシェアは急減している。

2010年のシェアは以下の通り。
1 Suntech (尚徳電力) 中国 6.6%
2 Ja Solar晶澳太陽能) 中国  6.1%
3 First Solar 米国 5.9%
4 Yingli(英利緑色能源) 中国 4.7%
5 Trina Solar天合光能) 中国 4.7%
6 Q-Cells ドイツ 3.9%
7 Gintech昱晶能源科技 台湾 3.3%
8 シャープ 日本 3.1%
9 Motech(茂迪) 台湾  3.0%
10 京セラ 日本 2.7%

この状況は液晶パネルなどと同じである。

参考 2011/12/26   2011年 回顧と展望

 

Q-Cellsの2011年決算は以下の通り。 (単位:百万ユーロ)

  2011 2010 2009 2008 2007
売上高 1,023.1 1,354.2 790.4 1,195.1 858.9
EBIT
(金利・税金
 控除前損益)
-717.4 82.3 -362.5 191.8 197.0
純損益 -845.8 18.9 -1,342.9 177.3    148.4


生産・販売状況 (単位:MWp) 
  2011 2010
生産量 Solar cells  717  939
Thin-film Modules 66 75
合計 783 1,014
出荷量 Solar cells 319 612
Thin-film Modules 58 36
Crystalline Modules 150 157
Systems 259 120


 

 

Dowは3月27日、タイのRayongの工業団地Asia Industrial Estateで新しいコンプレックスの開所式を行った。(各プロジェクトは既に2010年から順次稼働している。)
これは同時に、Dowのタイ進出45周年と、DowとSiam GroupのJVの提携のSCG-Dow Groupの25周年を祝うものとなる。

新しいコンプレックスはDow、Siam Group、Solvayの共同計画で、'Thai Growth Project'と名付けられている。

SCG-Dow Groupの既存プラントは Map Ta Phut Industrial Estateにある。

ーーー

Dowが1967年にBangkokに小さな販売事務所を設置したのが同社のタイ進出の始めである。

SCG-Dow Groupは1987年に設立された。両社はそれ以前に1975年にポリオールのJVのPacific Plastics (Thailand)を設立している。

  Pacific Plastics
  (Thailand)

  SCG-Dow Group

Siam Styrene
  Monomer
Siam Synthetic
 Latex
Siam Polystyrene Siam Polyethylene
Formed: 1975 1988 1990 1993 1995
Ownership: Dow 49%;
Siam Cement 48%;
Others 3%
                                   Dow 49.99%;
                                   Siam Cement 49.99%;
                                   Others 0.02%
Headquarters:

Bangkok, Thailand

Production
facilities:

Map Ta Phut Industrial Estate, Rayong Province

Capacities:
metric tons per year
Polyol Styrene monomer:
  300,000
Latex Polystyrene:
  120,000
LLDPE:
  300,000

 

新しいコンプレックスはDowとSiamの新しいJVのMap Ta Phut Olefins Co., Ltd.によるナフサクラッカーとその誘導品から成っている。

1)エチレンクラッカー Map Ta Phut Olefins Co., Ltd.

エチレン90万トン、プロピレン80万トン

Dowは2006年10月、タイでSiamとのナフサクラッカーJV計画を進めると発表した。
Siamの発表では、
11億ドルを投じてRayongに新しいナフサクラッカーを建設するもので、能力はエチレン90万トン、プロピレン80万トン。サイアムが67%、ダウは33%出資する。

2006/10/24 ダウ、アジア進出を促進

 2)ポリオレフィン

同地にはSiamの子会社のThai Polyethylene (TPE)、Thai Polypropylene (TPP) と両社のJVのSiam Polyethyleneがあるが、いずれも増設した。(千トン)

会社名 製品 既存能力 今回新設 合計能力
Thai Polyethylene HDPE  580  400 980
LDPE 100   100
LLDPE 120   120
Siam Polyethylene LLDPE 300  350 650
Thai Polypropylene PP 320 400 720
3)Specialty elastomers

Siam Synthetic Latex に下記のSpecialty elastomersを生産するプラントを新設。
  
AFFINITY™ Polyolefin Plastomers
   ENGAGE™ Polyolefin Elastomers

4)過酸化水素プラント MTP HPJV (Thailand) (Dow/Solvay JV)

過酸化水素 33万トン

Solvayは2011年10月5日、ダウとのJVのMTP HPJV (Thailand)が世界最大の過酸化水素プラントを稼働させたと発表した。能力は330千トン(100%ベース)と世界最大。

2007/8/3 
Dow と Solvay、タイにHPPO用の過酸化水素製造のJV設立

5)POプラント MTP HPPO Manufacturing (Dow/Siam JV)

過酸化水素法PO 39万トン

Dow Chemical は2008年6月、タイのSiam Cement Group (SCG)とのJVの MTP HPPO Manufacturing がタイでPO工場の建設に着手したと発表した。2012年1月4日、正式スタートアップを発表。能力は39万トン。

2008/6/16 Dow、タイで過酸化水素法PO工場建設

6) ユーティリティ、ターミナル

Power, Utilities & Infrastructure
Rayong Terminal Co.,Ltd.


 

 

東芝は3月31日、同社グループ会社のWestinghouseによる新型加圧水型原子炉「AP1000®」の建設運転一括許可(Combined License=COL)を米国原子力規制委員会(NRC)が承認したと発表した。

 South Carolina Electric & GasのVirgil C. Summer原子力発電2・3号機で、米国における新規原子力発電所の建設は、本年2月にCOLを取得したボーグル(Vogtle)原子力発電所3・4号機に続くものとなる。


NRCは本年2月9日、Southern Nuclear Operating Companyのジョージア州オーガスタの南東26マイルのVogtle power plantの2機の建設・運転一括許可を承認した。

東芝傘下のWestinghouse Electricの新型加圧水型軽水炉(PWR)のAP1000を採用する。

1979年のスリーマイル島原発事故以来凍結されている米国の原発建設について、オバマ政権は再開する方針を示していた。
福島第1原発の事故後も、原子力を主要なエネルギーとして利用する政策を堅持している。
今回はその第1号である。

NRCは同日、5人の委員で採決し、4対1の賛成多数で承認した。

反対したのはGregoy Jaczko委員長で、福島第一原発のメルトダウンの例から原発建設のポテンシャルな危険を懸念すると発表した。「まるで福島の問題が起こらなかったかのように、承認を下すことを支持できない」「操業までに、福島で計画している改善策を実施するという確約が必要だ」と述べた。

NRCはWestinghouseの改良型のAP1000 そのものを2011年12月30日に承認している。
110万kW級の最新鋭リアクターで、安全システムが運転員の操作や電源を必要としない世界初の設計となっていて、圧縮ガスによる圧力や重力などの力で原子炉容器内に冷却水が注入され、自然循環によって熱を取り除くようになっている。

同型の原子炉は中国で4基が建設中だが、米国内では初めてとなる。

ーーー

米国の原子力規制委員会(NRC)は3月30日、米南部サウスカロライナ州で計画中の原発2基について建設運転を承認した。

米電力大手South Carolina Electric & Gas とサウスカロライナ州営電力会社Santee Cooperがサウスカロライナ州のコロンビアの北西約40キロにあるV.C. Summer Nuclear Stationが計画している2号機と3号機。

これも「AP1000」で、総工費は約110億ドルで、17~18年にかけて稼働させる予定。

今回もGregoy Jaczko委員長は反対した。
福島原発の事故を受けてNRCが現在検討しているすべての安全対策を会社側が実施することを求めた。
今回の承認に当たり、前回の
Vogtle原発承認以降に決めた安全対策の一つを実施することという条件がついた。


付記

Exelon は8月28日、テキサス州Victoria County Stationの原発申請を取り下げた。

同社はさきに、建設を長期間遅らせるため、combined construction and operating license (COL)の申請を取り下げていたが、今回、残していたearly site permit for land の申請も取り下げた。

天然ガスの値下がりで、予想しうる将来にわたって競争力がなくなったと判断した。

7月30日付の英 Financial Times は、"Nuclear 'hard to justify', says GE chief"のタイトルでGeneral ElectricのCEOのJeff Immeltのインタビュー記事を掲載した。

シェールガス革命で天然ガスが豊富に供給され、再生可能エネルギーの選択肢も増えたことから、原子力発電を正当化することは難しくなったというもの。

2012/7/31 原子力発電の正当化困難にーGE会長 

なお、NRG Energyも2011年4月、福島第1原発事故の影響で「規制動向など先行きが不透明になった」として、東芝との合弁会社でテキサス州で進めていた原発2基の新設計画への投資を打ち切った。同計画の認可申請は取り下げられていないが、事実上計画は宙に浮いている。

NRGは2008年にNuclear Innovation North America(NINA)を設立。同年に東芝が12%出資し、サウステキサスプロジェクト原子力発電所に改良型沸騰水型原子炉 (ABWR)2基(3号機、4号機)を増設する計画を進めていた。

米原子力規制委員会は2012年8月7日、最近の連邦控訴裁判所の判決で提起された使用済み核燃料の保管に関する規則を見直すまで原子力発電所建設の認可手続きを停止すると発表した。

連邦高裁は2012年6月、運転をやめた原発の敷地内で60年間、使用済み燃料の保管が認められていることについて、NRCの安全性評価は不十分だとして再検討を命令。原発敷地内ではなく、最終処分場の候補地を検討するよう求めている。

ーーー

米国では天然ガス価格が約10年ぶりの水準に下落しており、電力会社の間ではコストの安いガス火力発電への関心が高まっている。
このため、認可を受けた2件以外の新設計画の先行きについては不透明感もある。

米国の64カ所にある原発で運転中の原子炉は計104基で国内の電力需要の約20%を賄っている。

米国で計画中の原発は以下の通り。

  申請 機種 立地 基数 既存
稼働
 状況
NRG Energy 2007/9/20 ABWR South Texas Project 2 TX 取り止め
NuStart Energy 2007/10/30 AP1000 Bellefonte 2 AL 保留
UNISTAR 2008/3/13 EPR Calvert Cliffs 1 MD 審査中
Dominion 2007/11/27 USAPWR North Anna 1 VA 審査中
Duke 2007/12/13 AP1000 William Lee
 Nuclear Station
2 SC 審査中
Progress Energy 2008/2/19 ESBWR Harris 2 NC 審査中
NuStart Energy 2008/2/27 ESBWR Grand Gulf 1 MS 保留
Southern Nuclear
Operating Co.
2008/3/31 AP1000 Vogtle 2 GA 2012/2 承認
South Carolina
Electric & Gas
2008/3/31 AP1000 Summer 2 SC 2012/3 承認
Progress Energy 2008/7/30 AP1000 Levy County 2 FL 審査中
Exelon Nuclear
Texas Holdings
2008/9/3 ESBWR Victoria County
 Station
2 TX 申請取下げ
Detroit Edison 2008/9/18 ESBWR Fermi 1 MI 審査中
Luminant Power 2008/9/19 USAPWR Comanche Peak 2 TX 審査中
Entergy 2008/9/25 ESBWR River Bend 1 LA 保留
AmerenUE 2008/7/24 EPR Callaway 1 MO 保留
UNISTAR 2008/9/29 EPR Nine Mile Point 1 NY 保留
PPL Generation 2008/10/10 EPR Bell Bend 1 PA 審査中
Florida Power
 & Light
2009/6/30 AP1000 Turkey Point 2 FL 審査中
AP1000  Westinghouse Electric(東芝)
EPR  Framatome (Areva), Electricité de France, Siemens
US-APWR  三菱重工業
ESBWR  General Electric   

ソース:http://pbadupws.nrc.gov/docs/ML1200/ML12004A009.pdf

 

 

 

 

 

 

内閣府中央防災会議の有識者会議は3月31日、東海から九州沖の「南海トラフ」で起きる地震について、「最大クラス」で津波や震度を予想した。 

「あらゆる可能性を想定した最大クラス」を前提に試算した。

2003年に政府はマグニチュード8.8の想定をしたが、その際は津波は最大17メートルだった。

今回、震源域を約2倍、地震の規模を約3倍のマグニチュード9.1とした。
満潮時の津波は高知県黒潮町の34.4メートルを最大に、各地でこれまでの想定の2~3倍となった。

中部電力浜岡原発のある静岡県御前崎市には21メートルの津波が押し寄せるという。
また、従来の震度6強から震度7になった。

中部電力が浜岡で想定している津波は8.3メートルである。
福島第1原発の津波が15メートル程度であったことを考慮し、緊急安全対策では1400億円をかけて高さ18メートル、長さ1.6キロの防波壁建設、扉の水密化や非常用電源増設などを進めているが、この防波壁を軽々と越える高さである。

原子力安全・保安院は「従来想定していた津波よりはるかに高く、緊急安全対策は結果的に不十分だった」として、中部電力に追加対策の検討を求める。

枝野経産相は3月31日、「これを踏まえて抜本的な安全対策を組み立てていくことになる」と述べ、必要な措置を取る考えを示した。

再稼働の前提となる安全対策が根底から見直しを迫られるのは必至で、巨額の安全対策費と併せ、浜岡原発の再稼働は一段と厳しくなった。 

なお、野田首相は4月3日、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を巡り、関係3閣僚と初の協議を行い、経産省に対し、再稼働の是非を判断するための「暫定安全基準」の整備を指示した。

ーーー

菅直人首相(当時)は2011年5月6日、中部電力の浜岡原子力発電所について、定期検査中の3号機のほか稼働中の4、5号機も含めてすべての原子炉を停止するよう要請したと発表した。

期限は、津波対策などで中電が検討している「防波壁の設置など中長期の対策が完成するまでの間」とした。

2011/5/7 菅首相、浜岡原発の全炉の運転停止を要請 

浜岡原電では、東海・東南海・南海地震の3連動の地震を検討し、津波の遡上高を海抜8.3メートルと想定している。

敷地前面にある砂丘堤防は海抜10~15mの高さがあり、地震後においてもこの高さはほぼ維持され、敷地内への津波の浸入を防ぐことができるとしていた。

中部電力では福島第1原発の津波が15メートル程度であったことを考慮し、下記の緊急安全対策(本年12月完工予定)を行っている。

当初、工事費を約1000億円と発表していたが、中部電力は3月21日、約400億円積み増すと発表した。

周辺の地質などを追加調査し、当初計画時点より防波壁の基礎部分を平均で2メートル深く造ることにした。
また、浜岡原発建屋内の防水扉や非常用ガスタービン発電機などを増強する。
今年12月としている工事の完了予定は変更しない。

1) 浸水防止対策

・防波壁設置工事

 海抜18mの防波壁
を新たに設置するとともに、両端部は盛土で約20mにかさ上げをおこなう。

・建屋内への浸水防止
 屋外の海水取水ポンプ浸水に備え、同様の機能を持つポンプを新たに設置する防水構造の建屋の中に設置。
 原子炉建屋外壁の耐圧性・防水性の強化(防水扉から水密扉への取り替えと強化扉の新設による二重化など)

 

2) 冷却機能強化

「海水取水ポンプ」や「非常用電源」などの機能の喪失が発生した場合でも、これに替わり、原子炉を冷やし続けるための「注水」「除熱」「電源供給」の3つの働きを保つための対策を幾重にも備え、一週間程度で確実かつ安全に原子炉を冷温停止に導く。

・注水

  1. 空冷式の熱交換器を設置
  2. 緊急時の注水確保のため電源を必要としない可搬式動力ポンプを配備
  3. 発電所に隣接する新野川から専用ホースなどを用いて淡水を送水
  4. 水源の多様化を目的とした水タンクを高台などに増設

・除熱

  1. 電源喪失時にベント操作をおこなうための窒素ボンベの設置
  2. 中央制御室から直接ベントがおこなえるよう遠隔操作化
  3. 冷温停止に必要な機器の予備品を確保

・電源供給

  1. ガスタービン発電機を高台に設置
  2. 災害対策用発電機の原子炉建屋屋上への設置
  3. 予備蓄電池の確保

ーーー

なお四国電力伊方原発の津波の想定は3メートルとされた。
従来の震度5強から6強になった。

保安院は3月26日に四国電力伊方原発3号機の1次評価を妥当とする審査書をまとめ、原子力安全委員会に報告した。
この1次評価では、扉の浸水対策などで14.2メートルの津波にまで耐えられるとしている。

 

塩ビ共販の第1号の第一塩ビ販売は30年前の1982年4月1日に営業を開始した。

産構法(特定産業構造改善臨時措置法)が施行されたのは1983年5月24日であり、 塩ビ共販は、産構法の下で設立されたポリオレフィン共販とは異なり、産構法施行に先立つ1年前に設立された。

共販会社は通常の事業統合として、公取委の審査を受けて設立された。(このため、第一塩ビ販売以外の共販の発足がずれ込んだ。)

ーーー

1979年1月に第2次石油危機が発生し、3万円/kl 程度であったナフサ価格は一気に6万円/kl まで上昇、需要が激減し、不況が深刻化した。

日本の石化業界は先ずは以前と同じように不況カルテルで対応しようとした。

塩ビ業界はそれまでに何度も不況カルテルを結んでいる。
 1958/11/18-59/3/31
 1972/1/1-9/30
 1977/5/13-78/8/31 (4回延長) 

1972年3月には、ポスト・カルテル対策として業界で基本問題研究会を設置した。 
 ・第5次増設後、公称能力 1,584千t に対し 実能力は 2,060千t(MITI算定)となる。
 ・対策 設備投資休戦、過剰設備の廃棄、休止
   →1972年末には通産省の指導で、公称能力を上回る48万トンの設備廃棄を実施。

 なお、過剰設備廃棄に加え、商社を含む共販会社の設立の提案もあったが、この時点では採用されなかった。

塩ビ業界は1981年5月から翌年2月まで生産量と余剰設備制限を内容とする不況カルテルを実施し、在庫量を適正水準まで戻した。
しかし、国際競争力の低下により輸入は増大し、市況は回復しないままであった。この結果、塩ビ業界の赤字は、1980年には 323億円となり、危機的な状況となった。(1981年470億円、82年 407億円)

このことは不況対策としてカルテルを実施しても問題は解決できず、抜本的な対策が必要となってきたことを示していた。

1981年10月に通産省は産業構造審議会化学工業部会の塩化ビニル・ソーダ小委員会を開いた。

長期需給見通しによれば、1985年の設備稼働率は塩ビで67%となり、「国際競争力の強化」と「集約化」が必要。
具体的には、
①メーカー17社が数社ずつまとまり共同販売会社を設立し、価格の安定化、流通合理化、生産の受委託を進める
②塩ビ中間原料の輸入を数社ずつによる共同輸入
③塩ビ設備能力の増加は避け、競争力強化と集約化促進のためにS&Bを積極的に進める

これを受け、主要9社首脳が構造改善策を協議し、全17社を4グループに再編成して共販化を目指すことで合意した。

組み合わせについて、塩ビ協「塩化ビニル工業30年の歩み」(1985)では当時の呉羽化学・高橋博社長が塩ビ協会長として私案をつくったとしている。

共販体制発足時の姿は以下の通り。

グループ 会社名 資本金
 百万円
参加会社 出資比率
    %
その他系 第一塩ビ販売

1982/3/12設立
1982/4/1営業開始
  90 住友化学    25
呉羽化学    25
サン・アロー化学    25
日本ゼオン    25
三井系 日本塩ビ販売

1982/7/15設立
1982/8/1営業開始
  80 鐘淵化学    25
電気化学    25
東亜合成化学    25
三井東圧化学    25
三菱系 中央塩ビ販売

1982/7/15設立
1982/8/1営業開始
  90 旭硝子    33.33
化成ビニル    33.33
信越化学    33.33
興銀系 共同塩ビ販売

1982/8/11設立
1982/9/1営業開始
  50 東洋曹達    27.5
チッソ    27.5
セントラル化学    17.5
日産塩化ビニール    17.5
徳山積水    10.0

三菱化成系の塩ビメーカーは菱日と三菱モンサント化成であったが、三菱化成は共販参加に当たり、両社の塩ビ販売窓口会社として「化成ビニル」を設立した。

先発の日本ゼオン、呉羽化学工業、住友化学工業、サン・アロー化学(徳山曹達系)の4社は1981年12月に社長会を開き、共販売会社の骨格を最終的に決定、直ちに公正取引委員会との協議に入った。

共販会社の内容は以下の通り。
 ①資本金は4社均等出資、従業員は各社からの出向
 ②共販対象は汎用塩ビ樹脂とし、各社の自家消費用を含む全量を買い上げて販売する。
   ペースト塩ビは4社のうち、ゼオンと住化のみが生産しており、これを除外した。
 ③共販量の4社間の比率は現行生産シェア(占有率)を目安にするーーなど。

公正取引委員会は、この計画については「販売シェアが24%と規制基準(25%)を下回っているし、競争制限につながることはない」とし、共販を認めるとの姿勢を示した。

しかし4グループ化による共販については、以下の理由で「独禁政策上問題点が多い」とし、
残り3共販については、「先頭グループの共販活動の様子を見守ったうえで判断したい」とした。

①販売市場を4分割するので価格競争がほとんど行なわれなくなる可能性が強い
②グループによっては販売シェアが市場支配力の目安である25%を超えるところもある
③共販による構造改善効果が不明確ーーなど。

この結果、第一塩ビ販売のみが4月1日に営業を開始した。

1982年6月になって、通産省と公取委はようやく、塩化ビニル共販会社設立で合意した

日本塩ビ販売(三井系) 1982/7/15設立、8/1営業開始
中央塩ビ販売(三菱系) 1982/7/15設立、8/1営業開始
共同塩ビ販売(興銀系) 1982/8/11設立、9/1営業開始

 

各共販とも、交錯輸送の廃止による物流の合理化、販売経費の削減、グレード統合や設備処理・生産集中による生産合理化、研究開発の効率化などをうたっている。
これは、設立の際に公取委に対して設立目的として説明したもので、毎年、公取委から進捗状
況のヒアリングを受けた。

実際には、各社から共販に出向した社員が自社の費用(口銭)で自社の製品の販売を行っており、実質的には縦割りの運営であった。販売価格などの販売政策は当然、共販内で協議して決定された。

第一塩ビ販売のみは、各社の技術を出し合って技術改良や新技術の開発を行った。
これが後に、共同開発の新技術による共同生産会社(第一塩ビ製造)の設立につながり、更には(呉羽化学を除き)各社の塩ビ事業を統合した新第一塩ビに発展した。

 

EU27カ国は3月30日、コペンハーゲンでユーロ圏財務相会合を開き、債務危機に対応するための安全網全体の規模(2013年7月以降)を現在の案の5,000億ユーロから8,000億ユーロ(約88兆円)に拡大することで合意した。

但し、8,000億ユーロの内訳は今年7月に発足する欧州版IMFの欧州安定メカニズム(ESM)の5,000億ユーロに、既に実施済み又は実施予定のものを加えたもので、不十分との声も上がっている。

ESMは資本金を2014年上半期までに5回分割で払い込むため、ESMの融資能力はそれに合わせて増加、最終払込時点で5,000億ユーロとなる。
2013年6月末まではEFSFはESMと併存し、総額5,000億ユーロを確保する範囲でEFSFの未消化分も利用できる。

EUは当初、ESM/EFSFの融資能力を、合わせて 9,400億ユーロ(うちEFSFのコミット済みが約1,900億ユーロのため新規資金は7,500億ユーロ)に引き上げることを提案していたが、域内で最大の経済規模を持つドイツが反対した。 

なお、ユーロ圏諸国はIMFに1,500億ユーロを拠出する。

2011年11月のG20首脳会合で、IMFが十分な資金を持つ必要で一致した。
IMFは欧州への支援を念頭に最大5000億ドルの財源調達を目指しており、このうちEUが2,600億ドル規模を拠出する方針であった。
英国など非ユーロ圏EUの拠出は未定。

EU議長国のデンマークのベステエア財務相は、会議後の記者会見で、「ヨーロッパは宿題を果たした。今度はIMFの基盤を拡充する時だ」と述べ、G20の対応を促した。

IMFは5000億ドル規模の追加融資財源の調達に向けて加盟国と本格協議に入る。4月下旬ワシントンで開く春季総会で資金増強策の大枠を決定する。
議会の反対が強い米国は支援を見送る構えで、日本や中国の協力が焦点となる。日本は「欧州の努力を前提に協力する準備はある」との姿勢を示していた。

付記

安住財務相は4月17日の閣議後記者会見で、日本政府として600億ドルをIMFに拠出する方針を表明した。

Lehmanショック直後の2009年にIMFに1000億ドルを拠出したが、500億ドルが年内にも返済される見込みで、これに外貨準備((2012年3月末 1兆2887億ドル)から100億ドルを上積みする。

ーーー

EU首脳会議は2012年3月2日、財政規律の強化に向けた新条約に各国が署名したが、欧州債務危機対策の一環としての金融安全網の再強化については、ドイツの慎重論に配慮し、3月末までに結論を出すことで合意した。

基本構想は以下の通りで、IMF資金枠を合わせ、1兆9000億ドルを準備する。
本来、この会議で決定する予定であったが、ドイツの慎重論に配慮し、決定を3月末まで延ばした。

  2012年7月ESM発足以降
当初案 目標
欧州基金 ESM   5000億ユーロ 統合、上限撤廃
    7500億ユーロ
     (約1兆ドル)
EFSFの残 打ち切り 
    (2500億ユーロ)
IMF資金枠 現行   約 4000億ドル     +5000億ドル
 (うちEU 2600億ドル)
合計       1兆9000億ドル


2012/3/7 欧州金融危機への今後の対応 

今回の「8,000億ユーロ規模の安全網」は、実質的には当初案のままである。

ーーー

今回の8,000億ユーロ(2013年7月EFSF解散後)の内訳は以下の通り。

    金額
(億ユーロ)
 
欧州安定メカニズム
(ESM)
新規 5,000  
ギリシャ向け第一次支援

 

EU各国による支援で、
EUは調整役

 

 

 

 

実施済 529
  ユーロ圏 IMF 合計
支援総額 800 300 1,100
調整 -27   -27
実施済 529 200 729
残額 244 100 344

調整:
不参加のスロバキア、
問題化以降のアイルランドと
ポルトガルの分を控除

欧州金融安定化ファシリティ
(EFSF)

 

枠   4,400
既実施 1,917
残   2,483

残から下記が控除される
可能性がある。
 ギリシャ債務交換 300
 ギリシャ一次残  244

 

既実施・
  コミット
ギリシャ二次 1,480 ギリシャの銀行の資本再編 480
新規融資 1,000


他に民間保有のギリシャ債務交換 300、
一次支援残高 244 あり 

IMFは280の融資実施承認
(即時 16.5)

アイルランド 177 2010/11 総額 850
 アイルランド年金基金 175
 EFSF 177
 EFSM 225
 英、デンマーク、スウェーデン 48
 IMF 225
ポルトガル 260 2011/3 総額 780
 EFSF 260
 FEFM 260
 IMF 260
合計 1,917  
欧州金融安定化メカニズム
(EFSM)

 枠 600

既実施 アイルランド 225 上記参照
ポルトガル 260
合計 485
合計 7,931  


参考

2010 年5 月、当面の危機への備えとして総額5,000 億ユーロの包括的支援策を発表した。
①全てのEU 加盟国が対象となる上限600 億ユーロの「欧州金融安定化メカニズム」(EFSM)
②ユーロ圏参加国が欧州中央銀行への出資率に応じた比例配分で拠出して特別目的会社を設立する「欧州金融安定化ファシリティ」(EFSF) 
 
3年間の時限措置で、2013年6月末まで。
EFSFを引き継ぐ恒久的支援組織の「欧州金融安定化メカニズム」(ESM)   当初は2013年7月設立予定。

2012年2月、
ESM創設条約が署名された。1年繰り上げ、2012年7月発効を目指す。
  
当初の最大融資能力は、7,000億ユーロの応募資本(800億ユーロの資本金と6,200億ユーロの請求払資本)
  によって得られる5,000億ユーロ (払込資本金
/融資額は15%以上とする。)

 EFSFの債権発行のための各国の保証負担額は当初合計4400億ユーロ。
 但し、AAA格付けの債権の発行のために必要なAAA格付け国6か国の保証額は2554億ユーロしかない。
 このため、保証負担額を7798億ユーロに増加した。(ギリシャ、アイルランド、ポルトガルを除くと7260億ユーロ)。
 この場合の6か国の保証負担額は4515億ユーロとなるが、従来通り4400億ユーロと称されている。
   2011/11/7  EU 金融危機

なお、ESMは7,000億ユーロの応募資本(800億ユーロの資本金と6,200億ユーロの請求払資本)をテコにESM債の発行などで金融市場から調達する5,000億ユーロが最大融資能力となるが、ユーロ圏17カ国は800億ユーロの資本金を分割払いにする。

2013年半ばに資本金の6割(480億ユーロ)を確保していても、その時点のESMの融資能力は3000億ユーロにとどまる。

当初は資本金を5年に分けて払い込む計画だったが、EU首脳はこれの加速方針でも合意した。
2回分は本年7月と10月に、2回分を2013年中に、最後を2014年上半期に行うことが決まった。
融資額と資本金の比率が15%を下回る場合は払い込みを早める。
 

ーーー

欧州委員会は3月29日、債務問題解決のためのユーロ圏サミットをローマ法王の臨席のもとに4月1日に開催すると発表した。

「今のユーロを救えるのは、明らかにローマ法王ベネディクト16世と聖なる介入のみだ。法王の臨席でユーロ救済のための神の介入を祈る機会をいただく。これが今や最も頼れる戦略である。」

エイプリルフールを前に、Herman Van Rompuy EU大統領の側近の内部用のE-Mailが外部に流出したもの。

英国の独立党の党首は、「神の介入は欧州中央銀行の介入よりは効果があるだろうが、 全知全能の神は賢明にもユーロには近づかないだろう」と述べた。

 

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