2013年2月アーカイブ

JX日鉱日石エネルギーと出光興産は2月26日、2014年4月以降に年間約230万KLの石油製品をスワップすることで基本合意したと発表した。

エネルギー供給構造高度化法に基づく重質油分解装置の装備率向上義務を果たすため、JXは2014年3月末に室蘭製油所の原油処理を停止、また出光は徳山製油所における原油処理機能を2014年3月に停止する。

 JX日鉱日石エネルギー

2012年11月2日、室蘭製油所での原油処理(日量18万バレル)を2014年3月末で停止すると発表した。

同製油所では新たに設備投資を実施のうえ、二次装置を活用して、SKグループと合弁で韓国に新設するパラキシレン製造設備用の原料となるアロマ基材等の製造・輸出を行う。キュメンも引き続き製造する。

参考 2011/8/9  JXエネルギーとSKグループ、韓国でパラキシレンと潤滑油ベースオイル製造のJV設立

また、石油製品の物流拠点としての油槽所機能は存続し、引き続き北海道地区への灯油をはじめとする石油製品の安定供給に向け、万全の体制を確保する。

 出光興産

2011年11月1日、エネルギー供給構造高度化法に則り、徳山製油所における原油処理機能(日量12万バレル)を2014年3月に停止すると発表した。

今後、徳山は、西日本における燃料油事業の物流拠点としての機能を強化するとともに、化学事業の主力拠点として競争力強化に向けた取り組みを進める。

  燃料油供給体制

(1)原油処理機能停止後も安定供給に努め、競争力強化を図る。
(2)入出荷設備を増強し、油槽所機能を向上させる。

  化学事業について

(1)ナフサの輸入ロット大型化などを通じて、さらなる競争力強化とコンビナート各社への安定供給を図る。
(2)化学事業の主力拠点として、新たな事業を検討していく。

2014年4月以降、JXは大分製油所から出光に、出光は北海道製油所からJXに、それぞれ年間約230万KL(日量約4万バレル)を供給する。

ーーー


2009年7月1日にエネルギー供給構造高度化法が成立した。

これに基づき、経済産業省は2010年7月5日の「告示」で、エネルギー供給構造高度化法の基本方針の一つに重質油分解能力の向上を挙げ、重質油分解装置の装備率の目標を決めて、業者に対して重質油分解装置の新設若しくは増設又は常圧蒸留装置の削減により適切に対応することを求めた。

重質油分解装置の新設は考え難く、実際には常圧蒸留装置の削減を求めるものである。

2010/7/7 エネルギー供給構造高度化法で重質油利用促す新基準、石油業界の再編圧力に

2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?


METIによる各社別の削減義務量と現時点での削減計画は以下の通り。(万bbl/d)

  トッパー
処理能力
改善達成
のための
トッパー
能力
トッパー
能力削減
義務量
トッパー能力削減計画
和シェル石油グループ 51.5 44.8 6.7 12.0  京浜・扇町 2011/9停止
JXグループ 179.22 137.9 41.4 58.0  下記
出光興産 64.0 55.7 8.3 12.0  徳山製油所 2014/3停止
コスモ石油 63.5 43.8 19.7 14.0  坂出製油所 2013/7閉鎖
東燃ゼネラル石油 66.1 45.6 20.5 10.5  分解能力 +3.45で基準充足
太陽石油 12.0 10.4 1.6    
富士石油 19.2 14.8 4.4 5.2  第1常圧蒸留装置 2010/11廃棄
極東石油工業 17.5 15.2 2.3    
合計 473.02 368.2 104.9  111.7  


JXグループ

  原油処理能力(千バレル)  
008/12 2014/3 削減量
室蘭製油所 180 0 -180  
仙台製油所 145 145 -  
根岸製油所 340 270 -70 2010/10 第2トッパー廃止
大阪製油所 115 0 -115 大阪国際石油精製に移管
 
PetroChinaとのJV化
水島製油所 455 345 -110 2010/6 A工場第2ストッパー廃止
麻里布製油所 127 127 -  
大分製油所 160 136 -24 2010/5 第1トッパー廃止
鹿島石油 210 189 -21 2010/5 第1トッパー能力削減
日本海石油 60 0 -60 2009/3 原油処理停止
合計 1,792 1,212 -580  


本年1月23日にKansas Cityの連邦裁判所で始まったDow Chemical の独禁法違反裁判で、2月20日、陪審員はDowを有罪とし、4億ドルを支払えとする決定を行った。

問題の製品はPolyether Polyol 製品で、酸化プロピレン系のポリエーテルポリオール、MDI、TDI、MDI-TDIブレンドなど。
1999年~2003年の市場が危機的な状況の際に、Dow Chemical、Bayer、BASF、Huntsman、Lyondellの各社が価格カルテルを結んだとして 、2005年に米国の需要家が集団訴訟を行った。

Dow Chemical 以外は、いずれも違法行為はなかったとしながら、和解している。

2013/1/22 Dow Chemical の独禁法違反裁判、始まる 

原告側は1999年1月1日からの違法行為を問題としたが、男性2人、女性5人の陪審員は2000年11月以前については認めず、原告の11億25百万ドルの損害の主張に対し、4億ドルの損害を認定した。

判事はこの決定をまだ承認していないが、判事がこれを認めた場合、独禁法の規定で賠償額が3倍になる恐れがある。

Dowでは有罪の決定には不満を表したが、原告側の1999年1月に談合があったという主張を陪審員が認めなかったことは評価し、陪審評決の見直しを求める申立てを行うとともに、上告を含め、すべてのオプションを検討していると述べた。

陪審員裁判らしく、最終弁論では原告被告双方からカルテルについての説明が行われた。

被告側:
全員がいつもと変わらないことをやっているのが何がカルテルか? 単なる会話と取り決めとは別物で、価格カルテルはなかった。

原告側:
ウインクしたり、頷いたりするだけで協定は成立する。
陰謀は役員会議室で合意されるのではなく、裏部屋やゴルフコースやカクテルを飲みながら行われる。
もし、アヒルのようにガーガー啼き、アヒルのようにひょこひょこ歩けば、見なくても、それはアヒルだ。証拠は十分だ。

ーーー

Dowは裁判開始に当たり、裁判所に対し、和解に応じた各社がいずれも違法行為はなかったとしていることを理由に、事実審理を省略する略式裁判で訴えを棄却することを要請した。

しかし裁判所は2012年12月18日、これを却下した。
裁判長は、原告側は陪審員が違法行為があったと考えるのに十分な直接的及び間接的証拠を提出しているとした。また、これらの会議が別の理由による合法的な会議であるとのDowの主張を否定した。

裁判長が事前にクロの印象を与えているように見える。



PetroChinaは2月20日、ConocoPhillipsから西オーストラリアの2つの権益を取得する契約と、四川盆地の内江-大足地区の非在来型資源探査の共同研究契約を締結した。

西オーストラリア

1)Browse BasinのPoseidon油田の権益の20%取得

Browse Basinには下記の3つの鉱区がある。

  油田 Operator

権益

ConocoPhillips Karoon Gas
WA-314-P   ConocoPhillips 10% 90%
WA-315-P Poseidon-1 60% 40%
WA-398-P Poseidon-2  
Kronos-1


今回、PetroChinaはPoseidon油田の権益の20%を取得した。

2)内陸のCanning BasinのGoldwyer Shaleの権益の29%を取得

権益:ConocoPhillips 75.0%
    New Standard Onshore 25.0%

2012年に試掘を開始、現在はNew Standard OnshoreがOperator だが、試掘の初期段階の完了後はConocoPhillipsがOperatorとなる。

今回、PetroChina は権益の29%を取得した。


中国

四川盆地の内江-大足区(Neijiang-Dazu Block)で非在来型資源探査の共同研究を行う。

両社は同地区の約50万エーカーで非在来型資源の探査を行い、技術的、商業的に見込みがあれば、共同研究期間中に合意する予定の生産物分与契約の下で開発に移行する。

ーーー

U.S. Energy Information Administration.によれば、中国のシェールの埋蔵量は通常の天然ガスの埋蔵量の12倍もあり、技術的に採掘可能な埋蔵量は米国のそれより50%も多い。
四川盆地は米国エネルギー省の報告でもシェールガスの可能性を認めている。



中国のPetroChina、Sinopec、中国海洋石油(CNOOC)は競って北米のシェールオイルやオイルサンド事業に参加している。

2005/4 中国海洋石油 カナダのオイルサンド開発企業・MEGエナジーの株式の16.69%を買収
2009/9/10 PetroChina、カナダのオイルサンド事業に参加 Athabasca Oil Sands
2005/6 SinopecNorthern Lightsにおけるオイルサンド事業の権益の40% をSynenco Energy から買収
2009年に50%にアップ
2010/4/16 Sinopec、カナダのオイルサンドに投資 ConocoPhillipsのオイルサンド事業会社 Syncrude Canada
2010/10/18 CNOOC、テキサス州のEagle Ford Shale projectに参加 Niobrara shaleを追加
2011/2/16 PetroChina、カナダの天然ガス権益取得
2011/7/22 中国海洋石油、カナダのオイルサンド企業を買収
2012/1/9 PetroChina、カナダのオイルサンド権益を100%にアップ、Sinopecは米のシェールガスの権益取得
2012/2/7  Shell とPetroChina、非在来型ガス開発での提携強化 (カナダと米国)
2012/7/31  中国石油大手による買収 続く (CNOOCによる Nexen買収:2013年2月12日、米政府承認)


これには、事業参加によって技術を取得し、中国のシェール開発に役立てるという目的もある。

 



大日本住友製薬は2月18日、第三期中期経営計画を発表した。ビジョンとして、「グローバルレベルで戦える研究開発型企業」「最先端の技術で医療に貢献」を設定した。

経営目標は以下の通り。(億円)

  2012年度
 予想
2017年度
 目標
売上高  3,480 4,500
営業利益 280 800
EBITDA 630 1,100
研究開発費 592 800

 

大日本住友製薬は本年1月、癌幹細胞標的抗癌剤BBI608の大腸癌を対象にした単剤のフェーズ3試験を、米国・カナダで開始した。

がん幹細胞はがん細胞の供給源と考えられているが、がん幹細胞に対する抗がん剤が成功した事例はなく、通常のがん細胞を抗がん剤などでたたいても、がん幹細胞は、生き残るため、がんが再発、転移する。

BBI608と(同時に開発中の)BB1503は、癌幹細胞の自己複製を阻害し、癌幹細胞と癌細胞に細胞増殖抑制・細胞死を誘導すると考えられており、世界初のがん幹細胞に対する抗がん剤となる可能性を有している。


大日本住友製薬は2012年4月、癌領域を専門とするバイオベンチャー企業で、癌幹細胞への抗腫瘍効果を目指して創製された低分子経口剤であるBBI608 及びBBI503 の2 つの有力な開発パイプラインを有するBoston Biomedical Inc.(BBI) の買収を完了し、完全子会社とした。

2012/3/3  大日本住友製薬、米国医薬品会社Boston Biomedical を買収

BBIの買収に伴い、大日本住友製薬は癌領域におけるグローバルな研究開発体制を構築した。

創薬研究の指揮は、BBIのCEOのChiang J. Li が行う。

米国では、BBIを2013年にボストン近郊(ケンブリッジ)に移転し、買収時点の人員30名を、新規採用や日本からの派遣も含めて、100名規模に拡張する。

日本では研究本部から独立した社長直轄の組織としてがん創薬研究所を2012年9月に新設した。総勢約50名。

当面の開発スケデュールは以下の通りで、BB1608については2015年の北米、2016年の国内の上市を、BB1503については2017年の北米及び国内上市を目標としている。

2017年度に世界で8億ドル超の売り上げを目指す。


 

ーーー

同社の研究開発戦略は、アンメット・メディカル・ニーズの高いがん領域と精神神経領域を研究重点領域とし、革新的な新薬の創出に全力を注ぐ。

がん領域では、がん幹細胞の領域で世界をリードするとともに、画期的な製品の継続的創出を目指す。

精神神経領域では、治療満足度の低い症状の改善や、既存薬で充分な有効性が得られていない患者の治療に焦点を当て、統合失調症、うつ病やアルツハイマー病等の研究開発を推進する。

さらに、iPS 細胞などの最先端サイエンスを創薬に応用するとともに、細胞医薬や再生医療の取り組みを強化し、難治性疾患の治療薬の開発にも挑戦する。

大日本住友製薬は2011年4月、京都大学iPS細胞研究所との間で難治性希少疾患の治療法創成を目的とする5年間の共同研究を行うことについて合意し、共同研究契約を締結した。

遺伝子の変異に起因する難治性希少疾患の一つに焦点を当て、その疾患特異的iPS細胞を用いて、産学協同して病気が進行するメカニズムを解明し、患者に特有の疾患関連シグナルを同定してその経路を阻害する治療薬を探索する。





Moody'sは2月22日、英国債の格付けを最上級の「Aaa」から「Aa1」に1段階引き下げた。

英経済には構造的な強さがかなりあるものの、世界経済の減速に加え、国内の公的・民間部門で続いている負債圧縮による英経済への影響を踏まえると、成長は低迷する見通しだと指摘した。

現在のS&PとMoody'sの各国の格付けは以下の通り。

青字2013年に変更があったもの

S&P Moody's
- ユーロ ユーロ圏外 - ユーロ ユーロ圏外
AAA ドイツ
オランダ
フィンランド
ルクセンブルグ
英国
カナダ
 
Aaa ドイツ
オーストリア
オランダ

フィンランド
ルクセンブルグ
英国↓)
米国

カナダ
AA+ EFSF(欧州金融安定基金)
フランス
オーストリア
米国 Aa1 フランス
EFSF
ESM
英国
AA ベルギー   Aa2
 
AA- エストニア
 
日本
中国
Aa3 ベルギー
 
日本
中国
韓国
A+   韓国 A1 エストニア  
A スロバキア
スロベニア

A2 スロバキア
 

A- マルタ   A3 マルタ  
BBB+ イタリア
アイルランド

Baa1

BBB     Baa2 イタリア
スロベニア
 
BBB- スペイン
Baa3 スペイン
 投資適格     投機的格付
BB+ キプロス ハンガリー Ba1 アイルランド ハンガリー
BB ポルトガル
Ba2

BB-     Ba3 ポルトガル  
B+

B1

B     B2
 
B- ギリシャ
B3 キプロス
CCC+     Caa1    
CCC

Caa2

CCC-     Caa3
 
CC

- -
SD     Ca    
D     C ギリシャ  
SD:Selective Default 選択的デフォルト       
D :Default デフォルト
Ca:一部デフォルト
C:デフォルト

 

過去の推移は  2012/2/14 Moody's、ユーロ圏6か国の国債格付けを引き下げ 





住友金属鉱山は2月15日、瀬戸内海の四阪島(愛媛県今治市宮窪町)にある旧四阪島製錬所の大煙突(直径10.5メートル、高さ64.2メートル)が老朽化して倒壊のおそれがあるため、4月中旬から半年かけて解体すると発表した。

元禄4(1691)年に開かれた住友家の別子銅山は、明治に入り、機械設備の導入、索道、鉄道の敷設などによって出鉱量の拡大が図られ、これに対応する製錬能力を確保するため、別子山中にあった製錬所は新居浜の沿岸部に移設された。

1883年に惣開に洋式製錬所(新居浜製錬所)が建設され、翌年からの試験操業を経て1893年から本格的な生産が始まった。
別途、1888年に山根湿式製錬所が完成、亜硫酸ガスから硫酸を回収したが、排煙により周辺の農作物に被害が出はじめ、1895年に廃止した。

しかし、製錬所の移転で、亜硫酸ガスが周辺地域の農作物に被害を及ぼすという、予期せぬ事態が発生した。

当時は亜硫酸ガスの回収方法が確立されておらず、技術的に解決することは極めて困難だったため、時の住友総理事伊庭貞剛は、製錬所を無人島の四阪島へ移転するという決断を下した。

一般に「四阪島」と呼称されるが、家ノ島、美濃島、明神島、鼠島、梶島の5つの島で構成される。

四阪島は新居浜から約20キロ離れた無人島で、ここに製錬所を移転すれば、亜硫酸ガスは瀬戸内海上で拡散され、煙害が発生することはないと考えた。
しかし、無人島に製錬所を作るには、港や道路、住宅をはじめとするインフラをいちから整備しなければならず、総建設費は、当時の別子銅山の2年分の純利益に相当する約170万円という、まさに社運を賭けた大事業であった。

製錬所造成時に家ノ島と美濃島は埋め立てられ陸続きとなり、家ノ島に精錬所、美濃島には社宅等が設置された。(1915年のピーク時の人口5500人)
1905年に製錬所を四阪島に移転、大煙突は1924年に完成した。

     
 

     

 

しかし、瀬戸内海上で拡散されると考えた亜硫酸ガスが風に乗って、そのまま四国本土にまで流れ、予想に反して煙害を愛媛県の東予地方全体にまで拡大させることとなり、農民達は、煙害の根絶と損害賠償を求めて激しい運動を繰り広げた。

1910年、住友は被害者農民との間で、損害賠償と亜硫酸ガス排出抑制のための操業制限に関する契約を結ぶ一方で、煙害克服に向けたさまざまな技術改良に着手した。

まず、原料中の硫黄分を減少させるため、1913年に惣開に住友肥料製造所(後に住友化学となる)を開設し、硫化鉱に含まれる硫黄から硫酸を作り、さらにこれから過燐酸石灰を製造することとした。また、煙害の除去、軽減のため、いくつもの試験研究を実施した。

これらの対策により、四阪製錬所から排出される硫黄量は、192年には1919年の半分にまで減少した。

その後もいろいろの対策を行い、1939年の中和工場の完成で煙害の被害は根絶することができ、大煙突の役割を終えた。
四阪島に製錬所が移転してから34年後のことである。

 (住友金属鉱山 「環境への取り組みの歴史」から)

 

ーーー

別子銅山は1973年に閉山、283年に亘る歴史に幕を閉じた。

別子銅山の閉山、新居浜東予精錬所の操業開始により、四坂島精錬所の重要性は低下、順次合理化が図られ、1976年12月に溶鉱炉が停止した。

現在、四坂島では(株)四阪製錬所が、製錬技術を活かし、製鋼煙灰に含まれる亜鉛を回収するリサイクル事業を行っている。




市長としての最終年を迎えNew York のMichael R. Bloomberg 市長は2月14日、2013年の市政教書演説(2013 State of the City address)を行った。市長はこのなかで、発泡ポリスチレンの食品包装を店舗やレストランで禁止する法律を制定すると述べた。

先ず、過去の実績を振り返り、New Yorkは911の悲劇から立ち直り、5つの区は全て以前より良くなり、NYは過去のいつよりも強くなったと述べた。

昨年の殺人事件は最低の419件に止まった。
観光客は最大の52百万人。
平均余命は80.9歳に上昇。
生徒10万人分の学校建設
320万人の私企業での雇用・・・・・

しかし仕事は完成しておらず、現在のプロジェクトを推し進め、新しいプロジェクトをスタートさせる必要があるとし、取り組むべき事項を列挙した。

環境問題に関しては、二酸化炭素排出量をたった5年で16%減らしたが、次の10年で30%減らすとし、更に新しい目標として、2017年までにリサイクル比率を倍増し30%にすると述べた。

具体的な計画は以下の通り。

・通りに1000個のリサイクルコンテナーを置き、リサイクルを容易にする。

・プラスティックをもっとリサイクルできるようにする。
 開発中のBrooklynの
Sunset Park WaterfrontにSIMSという私企業が北米最大の家庭用リサイクル工場を建設する。
  全ての種類のプラスチック廃棄物を受け入れる。
       子供にリサイクルを教える教育センターを備える。
  New York市で最大級の太陽光発電で運転

・New York市の最後のリサイクルのフロンティアの食品廃棄物の処理。
 New Yorkは毎年120万トンの食品廃棄物を埋め立て、トン当たり80ドルをかけている。
 これをもっと安いコストで、肥料にしたり、エネルギーに変換する。
 
本年春にStaten Islandで堆肥化の試行を行い、成功すれば全市に展開する。
 全市で学校の食品廃棄物リサイクルを行う。教育にもなる。

・問題はStyrofoamで、リサイクルがほとんどできず、生分解もしない。
  環境にとって恐ろしいものだが、納税者にとっても恐ろしい。
  取り除くことが必要なため、リサイクル費用がトン当たり20ドルも増える。
  これらは他のもので代替可能で、無しで済まされる。

 このため、Styrofoamの食品包装を店舗やレストランで禁止する法律を制定するよう市議会と協力する。

New York市によると、発砲ポリスチレンの廃棄物は年間で2万トンに達するという。

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市長は発泡ポリスチレンのことをStyrofoamと述べているが、これはDow Chemical の商標。
Dowでは同社の製品はコップや食品トレイや包装ではなく、断熱材として使用されていると反論した。

発泡ポリスチレン禁止は既にLos Angeles、Portland, Ore、San Francisco、Seattleなどで行われている。

 


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本ブログは2006年2月15日に始まりました。

2006/2/15 プラスチック100周年

7年経ちましたが、本日が2500回目となります。


 

2011年6月、ConocoPhillipsと中国海洋石油(CNOOC)が共同で開発している渤海湾の海底油田のPenglai (蓬莱) 19-3で原油流出が見付かり、7月10日には新たに油の流出が確認されたため、監督機関の国家海洋局は7月13日にConocoPhillipsに対し、Platform BとPlatform C(生産量は蓬莱油田の3分の1相当)の稼働停止を命じた。

ConocoPhillipsは期限として決められた8月31日に、原油流出が止まったと発表したが、国家海洋局は流出は完全に止まっていないと判断し、9月2日にPenglai (蓬莱) 19-3 全体の生産停止を命じ、ConocoPhillipsはこの命令に従った。

同油田はConocoPhillipsが権益49%を保有してオペレーターを務めており、残り51%はCNOOCが保有している。

2011/8/17  渤海湾の原油流出事故

国家海洋局は2013年2月16日、同油田が一連の改修工事を終え、正常操業再開の条件を満たしたと発表、操業再開を認可した。
当初は停止は6か月程度と見られていたが、17か月に及んだ。

原油漏洩によりシンガポールの9倍の広さの6,200km2の海が汚染され、遼寧省と河北省の観光と水産業に大きな被害を与えた。

ConocoPhillips に対しては、将来の漏洩を防止するため関連基準を守り、対策を取るよう命じ、CNOOCに対してはこれを支援するよう命じた。
国家海洋局は今後も同油田と周辺海域の監視を続けるとしている。

2012年4月に国家海洋局は、両社が汚染被害への補償と渤海湾の環境保護基金に合計で270百万ドルを支払うと発表した。

なお、 中国の法律では原油漏れの罰金は最高で20万元(3万ドル強)となっている。





パキスタン政府は1月30日、パキスタン南西部のGwadar港の港湾管理権をシンガポールのThe Port of Singapore Authority (PSA)から中国のChina Overseas Port Holding Companyに移譲することを閣議決定した。

この調印式が2月18日、イスラマバードの大統領府で駐パキスタン中国大使らが出席して行われた。

Gwadar港は南アジアと中東を結ぶインド洋の戦略的要衝で、中国は中東やアフリカから石油を運ぶための拠点を確保したことになる。
今後、原油貯蔵設備や製油所を建設するとされる。

なお、以前からGwadar港からパイプラインでカラコルム・ハイウェイを通って新疆ウイグル自治区の喀什市(カシュガル、Kashgar)まで結ぶKashgar Corridor構想があり、これが実現すると、中東の原油を喀什から国内のパイプライン網を通じて中国各地に送ることが出来る。

インドは中国の軍港化を懸念しているが、パキスタン外務省は 「懸念するいかなる理由もない」としている。

パキスタンは中国に対して、グワダル港に海軍基地を建設し、中国海軍を駐留させるよう求めたとされるが、中国政府は同提案を検討しなかったと表明した。

このGwadarは面白い歴史をもつ。

1783年に対岸のオマーンの宮廷で内紛が発生し、Saiadという王族が追放された。当時パキスタンを支配していたカラート藩王国のハーンがSaiadにGwadarを与えた。

その後、1797年にSaiadがオマーンの国王に即位したため、Gwadarはオマーンの飛び地となった。
1958年にオマーンがGwadarをパキスタンに売却、飛び地は解消した。
 

Gwadar港は石油の豊富な中東、資源の豊富な中央アジア諸国、人口の多い南アジアの各地域の十字路として戦略的に重要な場所にある。
大規模積み替え港として、また内陸の中央アジア諸国、アフガニスタン、中国西部のための海上輸送のハブを目指し、2002年に建設を開始し、2007年に開港した。

港の建設は中国が行い、当初の建設費の80%の248百万ドルを中国が低金利融資している。

港の管理権(40年間)は経験豊富なシンガポールのPSAが取得した

港を管理する会社には、PSAが60%出資、残りをパキスタンの金融会社Aqeel Kareem Dedhi Group とパキスタンの物流会社National Logistic Cellが20%ずつ出資している。

しかし、港はまだ完全には機能しておらず、追加の投資が必要だが、PSAは契約上の義務の履行が困難として、中国に譲渡することを決めた。(撤退の場合は多額の違約金の支払いが必要となる。)

ーーー

中国は原油の安定的確保のため、いろいろの手を打っている。

現在、マラッカ海峡を通らずに、ベンガル湾からミャンマー領土を横断して昆明に抜ける石油と天然ガスのパイプラインを建設している。

 

 

 

 

 

 





ミャンマー西部のベンガル湾に面したチャウピュー近郊のマデ島にガス集荷基地と石油タンカー専用港を建設し、沖合いで出る天然ガスと、マデ島で陸揚げした原油をマデ島 から国境の雲南省端麗を経由して昆明に送り、精製する。

事業主体となる企業には、中国石油天然気集団(CNPC)が50.9%を出資。ミャンマー側は国営石油ガス企業(MOGE)などが49.1%を保有する。総事業費は石油パイプラインが15億ドル、天然ガスは10億4935万ドル。

2009年10月31日、マデ島で着工式が行われた。



 

ロシアとウクライナが天然ガスを巡り、再び争っている。

ウクライナはロシアとの間で、ロシアの天然ガスの価格を巡り、長期にわたり争い、EUにも影響が出た。
2009/1/2 ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止

本年に入り、ロシアのGazprom はウクライナのNaftogaz に対し、70億ドルの請求を行った。
2009年の売買契約での"Take or Pay" 条項に基づくとしている。

ウクライナは2012年にロシアから329億m3のガスを購入した。
2009年の契約では購入義務量は毎年 520億m3で、20%の引き下げは可能となっており、420億m3が"Take or Pay" 義務量となっている。
Gazpromはこの不足量に対し請求を行った。

Gazpromの欧州とウクライナへの輸出は減っており、2012年の損益は前年比15%減となった。

これに対しNaftgasは、以前から2009年の契約が価格その他の条項がアンフェアだとして再交渉を要求している。

Naftgasは、本四半期の価格1000m3当たり430ドルという「法外な価格」であるとする。

これまで数度にわたり2012年の購入量を下げると通知しており、支払うべき金額は支払い済みであり、支払いの根拠がないとしてGazpromの要求を拒否した。


一方でウクライナは、国内でのシェールガス開発を進めるとともに、欧州から安いガスを大量に購入し、ロシアからの輸入を更に引き下げることを狙っている。

ウクライナ政府とShellは1月24日、ウクライナでのシェールガス開発に関する契約を締結した。
  
2013/1/29 Shell、シェールガス開発でウクライナと正式契約 

西部のLvivとIvano-Frankivsk地区のOlesskaシェールガス田の開発権を得ているChevronとの間でも正式契約に向け動いている。

別途、2012年8月に黒海沖合の天然ガス開発で、ExxonMobilが中心となり、Shell、ルーマニアのOMV、ウクライナのNadra Ukrainyが参加するコンソーシアムが落札したが、本年中に正式契約することを予定している。

ウクライナは供給先の多様化を狙い、スロバキアとハンガリーのガスの輸入交渉を行っている。
昨年11月には、Gazpromより安い価格でドイツのRWEからガス輸入を開始した。
また、トルコからブルガリア、ルーマニア経由でLNGを輸入することを検討している。

但し、欧州各国側は、Gazpromからのガス輸入契約に再販禁止条項があるため、問題となることを恐れ、ウクライナへのガス供給に積極的ではない。

ウクライナ大統領は、今回の70億ドルの請求問題で何度もEUに書簡を送ったが、なんら支援の表明がないと不満を表している。

また、需給状況にもよるが、欧州からのガスは必ずしも安くはない。

ウクライナの姿勢は価格面でロシアから譲歩を引き出す戦術とも見られるが、これに対しロシア側は、値引きの条件として、ウクライナが関税同盟(ロシア、ベラルーシ、カザフスタンが加盟)に参加するか、欧州に通じるパイプラインの経営権を渡すことを挙げている。

 

ウクライナはEUへの参加を希望しているが、EU側は現政権が野党指導者のユーリア・ティモシェンコ前首相を刑事起訴・拘束したことを問題視し、進展していない。



経済産業省は2010年7月5日、通称「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、告示を出した。

日本の重質油分解装置の装備率を2013年度までに10%から13%程度まで引き上げることを目標に基準を定めた。

重質油分解装置の装備率 改善率
10%未満の企業  45%以上
10%以上13%未満の企業  30%以上
13%以上の企業  15%以上
重質油分解装置の装備率=重質油分解装置の処理能力÷常圧蒸留装置(トッパー)の処理能力

2010/7/7 エネルギー供給構造高度化法で重質油利用促す新基準、石油業界の再編圧力に

重質油分解装置の新設には500億円以上かかるとされ、内需が縮小する中で新増設は非現実的で、実質的にはトッパー能力削減しかないとされた。

本ブログでは、以下の理由で「官製の設備カルテル」ではないかとして批判してきた。

どういう原料を使って、どういう製品をつくるかは、企業の判断であり、重質油分解能力の向上を各社に義務付けるのはおかしい。
「重質油分解能力の向上」を
「重質油分解装置の装備率」にすり替えており、単なる告示で、違法に設備処理を強制している。

各社ともこれに対応していることから、「官民の設備カルテル」とみられる。

2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?

各社とも順次、設備処理案を発表してきた。

2012/11/6  JX日鉱日石エネルギー、室蘭製油所の原油処理を停止 

これまで削減計画が未達なのは大手ではコスモ石油と東燃ゼネラル石油であった。

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 改善達成
のための
トッパー
能力
(万bbl/d)
トッパー
能力
削減
義務量
(万bbl/d)
トッパー能力
削減計画発表
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
コスモ石油

 

千葉 24.0           2013/7
坂出製油所
閉鎖
 
14万バレル
 
四日市 17.5          
8.0   31.3        
坂出 14.0          
合計 63.5 2.5 3.9 45 5.66 43.8 19.7
東燃ゼネラル石油

 

川崎 33.5   8.4          
15.6          
和歌山 17.0          
合計 66.1 2.8 4.2 45 6.09 45.6 20.5


コスモは坂出閉鎖を決めたが、まだ5.7万トンが未達で、2013年度中に追加の一部設備の廃棄か分解装置の増強を検討し基準を満たす方針とされる。

東燃ゼネラルの場合、堺も和歌山も存在意義があり、仮にどちらかを止めても、まだ不足する。和歌山県知事は影響が大きいとして和歌山工場廃止に反対した。

ーーー

2012年7月、ExxonMobilは東燃ゼネラル持株の一部を売却し、持株比率を22%に落とした。
本年1月には
東燃化学とDow子会社Union Carbide (UCC) との50/50JVである日本ユニカーのUCCの全持株を取得することで合意したと発表した。
    2013/2/6     Dow、日本ユニカー持株を売却

2012年6月以前
2012年7月以降(日本ユニカー100%化は2013年第3四半期)

東燃ゼネラルは2013年2月15日、新体制下での中期経営計画を発表したが、このなかで、エネルギー供給構造高度化法への対応策を公表した。

3工場体制は維持し、川崎と和歌山の小規模トッパー各1基を廃棄するとともに、川崎の残油水素化分解装置を増強することにより対応する。

製油所 トッパー
処理能力
(千bbl/d)
重質油分解装置 改善達成
のための
トッパー
能力
(千bbl/d)
トッパー
能力
削減
義務量
(千bbl/d)

対応策

分解能力
(千bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
トッパー
能力
(千bbl/d)
分解能力
(千bbl/d)
川崎 3基  335 28 8.4         1基 -67 +34.5
1基  156              
和歌山 2期  170           1基 -38  
合計 6基  661 28 4.2 45 6.09 456 205    
対策 2基 -105 +34.5         -105 +34.5
対策後 4基  556 62.5     11.24        


トッパー能力削減は105千トンで、現状重質油分解能力での義務量の205千トンの半分程度だが、残油水素化分解能力増により、重質油分解装置率を目標の6.09%から11.24%に引き上げる。

トッパー能力削減は計算上の義務量を下回り、 経産省と業界の「狙い」は未達となるが、経産省告知ではあくまで「重質油分解装備率の45%以上の改善」であり、これを満足する。

 




DowのAndrew Liveris 会長兼CEOは2月12日、上院の Energy and Natural Resources Committeeのヒアリングに出席し、無条件の輸出承認に反対する証言を行った。 
       証言全文  http://www.dow.com/company/insights/pdf/Dow-Senate-Written-Testimony.pdf


会長は、エネルギー産業、製造業、国民の利益を勘案したバランスの取れた戦略をとるよう求めた。

"製造業のルネサンス" についての持論を述べ、天然ガス価格が上昇すると失業が増えると説明し、天然ガスをそのまま輸出するのではなく、米国で加工したうえで輸出すべきだと述べた。

2000年から2009年の間で天然ガス価格は百万BTU当たり約3.50ドルから14.50ドル近くまで上昇し、需要は24%減少した。
この間、製造業の失業は540万人に達した。

日量50億立方フィートの天然ガスを製造業で使用すると、GDPは49億ドル増加し、雇用は直接分とサプライチェーンを通じるものとを合わせると18万人増える。

これに対し、同じ量の天然ガスをLNGに加工して海外に輸出すると、GDPの増加は23億ドルに過ぎず、雇用増は22千人に過ぎない。

 

参考  2013/1/30 米国の天然ガス輸出論争、激化

      2013/2/5   米国の天然ガス輸出規制はGATT違反?

 

 

2010年7月15日、 オバマ米大統領がLG化学子会社 Compact Powerのミシガン州Hollandのリチウムイオン電池工場の起工式に出席し、祝辞を述べた。


工場は2012年稼動の予定で、A123 Systems(下記参照)及び Johnson Controls-Saft と組み、2013年末までに"Chevy Volt"ベースで6万台分を生産する予定であった。
投資額は303百万ドルで、オバマ政権から150百万ドルの補助金を受ける。
更に
州税や市税などで175百万ドル以上の支援を受ける。

オバマ大統領は祝辞で、「これは新工場の建設以上を意味する。この町や州、米国の新たな未来を建設するものだ」と評価し、「この工場で数百人が働くことになり、これによって小規模な企業の基盤も確保される。こうした努力が米国経済の発展に寄与するだろう」と語った。

「米国経済は困難に直面しているが、エコカーの量産を通じて未来型の雇用を創出し、外国に対する原油依存度も減らせる」と強調した。そして、「この工場はミシガン州と米国が進む方向を示す象徴だ」と指摘した。

2010/7/17 オバマ大統領、LG化学の米工場起工式で祝辞

2013年2月13日、エネルギー省のInspector General (監察官)は以下の内容の、LG Chem とエネルギー省職員を非難する報告書を発表した。

LG Chem は、Holland工場が完成しているのに1個たりとも販売せず、GMのChevy Volt用の電池を引き続き韓国から供給している。
Holland工場の従業員は、ゲーム、映画、ボランティアなどで時間をつぶしている。

エネルギー省の景気刺激のための補助金の管理が十分にされておらず、LG Chemはプロジェクトに関係のない労務費を不当に請求し、それが支払われている。

正確な損失は不明だが、従業員の証言などから、非生産作業に少なくとも160万ドルが使われ、その半額がコスト分担の取り決めにより、補助された。(エネルギー省は今回、LGに対し 842千ドルの返還を命じた。)

工場は実際に販売される電気自動車用に使う電池をまだ製造していない。

151百万ドルの補助金のうち、142百万ドルが既に払われているのに、合意された能力の60%(5ラインのうち3ライン)しか建設されていない。

LG Chem側は、契約で決められた5ラインを完成させるには政府の金が更に22百万ドル必要としている。
(枠は9百万ドルしか残っていない。)

LG Chemは労務費を非常に低く見積もっていた。

補助金給付の際の書類では電池生産は2012年初めに韓国からミシガンに移るとなっているが、実施されていない。

計画でうたわれた440人の雇用の半分以下しか生まれていない。


この工場は、米国の自動車メーカーが米国で2015年までに100万台の
'Made in America'の電気自動車(ハイブリッドを含む)を売るというオバマ政権の政策のコーナーストーンである。

しかし、
LG Chemはこの目標を十分認識しておらず、エネルギー省も十分な対策を取っていない。

LG Chemによると、 Chevrolet Voltの電池需要が2012年に月間平均で 1,955台分あり、ミシガンで完成している設備で十分生産出来るのに、ミシガンでの電池生産を遅らせる決定を行った。
エネルギー省によると、補助金給付の際の書類に、当初の韓国での生産からミシガンでの生産に切り替えるとの文言がなかったため、強制できないと考えたという。

電気自動車の不振も影響している。
GMは2012年に、「Volt」を5万台売るという目標を設定したが、10月までの販売台数は1万9000台に止まっている。

付記
地元紙のHolland Sentinelは社説で、残念なことではあるが、LG Chemは工場建設に自費を150百万ドル投じており、200人の従業員をレイオフせずに給料や健康保険料を支払っていると擁護している。

ーーー

既報の通り、LGと組む米リチウムイオン電池メーカーのA123 Systems, Inc が2012年10月に破産法11条の適用を申請した。

同時に、自動車関連の技術、製品、ミシガン州にある2工場、中国のcathode powder製造工場、上海汽車とのJVのShanghai Advanced Traction Battery Systemsの持分などを、自動車部品メーカーのJohnson Controls, Inc.に1億2500万ドルで売却することで合意したことを明らかにした。

同社も、オバマ政権が打ち出したGreen New Deal 政策を通じ、2億4900万ドルの助成金を受けていた。
 



米科学誌 The Bulletin of the Atomic Scientists は1月14日、オバマ大統領宛ての公開書簡を発表した。
http://www.thebulletin.org/web-edition/features/open-letter-to-president-obama-the-time-the-doomsday-clock-five-minutes-to-midn

同誌はManhattan Projectに参加したシカゴ大学の科学者たちが1945年に設立したもので、1947年に世界終末時計(Doomsday Clock)を作った。

書簡は同誌の理事会が作成したもので、タイトルは 「終末時計は真夜中の5分前」となっており、
・核兵器の役割低減や一層の核削減を大統領に求め、
・核物質の管理強化に向けた戦略が必要と指摘し、核拡散の潜在的リスクを避けるため、日本に六ケ所村での再処理を断念させるとともに、韓国に対しても再処理構想を見直すよう求めるべきだと訴えている。

ーーー

最近、日本の核燃サイクルが破綻しており、六ヶ所村の再処理工場も、高速増殖炉も撤退するしかないという2つの報告が出た。

1)六ヶ所村再処理工場

毎日新聞が2月2日から6回にわたり、「虚構の環(サイクル) 再処理撤退阻む壁」という連載を行った。

核燃サイクルは資源に乏しい日本が「準国産エネルギー」を目指し60年代後半から具体化させた。しかし再処理工場の完成は19回延期され、再処理後の燃料を使うはずの高速増殖原型炉「もんじゅ」がトラブルで停止したままである。

実際には政府も業界も、ずいぶん前から、核燃サイクルは「完成のめどの立たない虚構」と考えているが、責任問題、費用負担問題、原発への影響などから撤退に動かず、国民に嘘をついてきたという。

2012年9月、民主党のエネルギー・環境調査会が「30年代に原発ゼロを目指す」「核燃サイクルを一から見直す」とする政府への提言を決めた。
日本原燃が
提示した「ひな型」をもとに六ヶ所村が「再処理堅持」の意見書を可決、「国際問題になりかねない」との意見書は猛烈に効き、「見直す」とする党の方針はわずか8日で覆った。

「(2003年)村田成二・経産事務次官が『六ケ所から撤退できないか』と提案してきた。電力から『撤退したい』と言えという。冗談じゃない。国から言い出し国が責任をとるべきだと考えた」(東電首脳)
言い出した方が責任を負う。だから言い出せない−−。この構図はエネ庁内部で「ばば抜き」と呼ばれた。

再処理工場の重大な弱点として、分割発注を挙げる声は根強い。
国の原子力政策作りを担う原子力委員経験者の一人が明かす。「プラント設計がばらばらで、分断されて施工している。うまくいくわけがない。トータルで仕切っている会社もない」

2004年4月27日、経産省職員2人は意を決して自民党商工族で大臣経験もある重鎮に接触した。撤退には政治の後押しが不可欠だ。
重鎮は黙ったまま聞き、説明が終わるとこう言った。
「君らの主張は分かる。でもね。サイクルは神話なんだ。神話がなくなると、核のごみの問題が噴き出し、原発そのものが動かなくなる。六ケ所は確かになかなか動かないだろう。でもずっと試験中でいいんだ。『あそこが壊れた、そこが壊れた、今直しています』でいい。これはモラトリアムなんだ」

2004年、六ケ所村の再処理工場を動かすと18.8兆円のコストが生じると公表されていた。一方、再処理工場を動かさず使用済み核燃料を地中に捨てる直接処分を選んだ場合のコスト試算について、エネ庁や原子力委、電事連などが共同で作業を進めていた。
自民党議員から「意図的に直接処分のコスト試算を膨らませろ」という意味の発言が出た。

「撤退」唱える共同研究、電力業界異論で連載中止

経産省上層部「維持」で意思統一、「撤退派」を次々更迭

「再処理事業の確実な実施が著しく困難となった場合、日本原燃は使用済み核燃料の施設外への搬出を含め、速やかに必要かつ適切な措置を講ずる」。1998年に日本原燃、青森県、六ケ所村が締結した覚書だ。
国も電力もこの文書に基づき「再処理から撤退
工場に貯蔵中の使用済み核燃料が各原発に送り返される収容しきれなくなり全原発が即時停止」というシナリオを最も恐れる。

現職のエネ庁課長級職員が取材に答えた。「核燃サイクルは恐らく完成しない。早く撤退した方がいいと思う。でも実際の政策となると無理」。電力会社首脳も「『サイクルをやるべきだ』とは思わない。しかし仕方がない」と言う。

2)高速増殖炉

原発推進派の池田信夫氏と止めるべきだとする河野太郎衆院議員などが2月10日に裏磐梯で開催されたG1 Summit 2013で、「核燃料サイクルは破綻しており、撤退するしかない。高速増殖炉が将来実用化しても、採算に乗らないからだ」という点で一致したという。
   池田信夫ブログ http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51842127.html

池田氏は補足して以下の通り述べている。

高速増殖炉の致命的な問題は、採算性である。
そもそも再処理の目的である高速増殖炉が経済的に意味をなさないのだ。

通常のウラン(価格130ドル/kg以下)の埋蔵量は、消費量の100年分ぐらいだが、それ以上のコストで採掘可能な非在来型ウランの埋蔵量は、・・・「きわめて保守的な推定」でも350年分である。

さらに海水中にはほぼ無尽蔵のウランが含まれているが、その精製コストも下がり、日本の原子力委員会の報告によれば25,000円/kgまで下げられる。これは通常のウランの価格基準(130ドル)の2倍程度で、今後の技術進歩で在来型のウランと競争できる可能性もあり、そのコストは核燃料サイクルよりはるかに低い。高速増殖炉が完璧で安全な技術だとしても必要ないのだ。
    池田信夫ブログ 
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51842217.html

池田氏は「使用ずみ核燃料の直接処分」(再処理せずにそのまま地下に埋める)しかないとし、候補地として、六ヶ所村や福島第一原発を挙げ、政治的には厄介だが、技術的には問題ないとしている。

河野代議士は以前から使用済み核燃料の処理が出来ないから原発を止めざるを得ないと主張しているが、ブログでは以下の通り述べている。

再処理はやめ、高速増殖炉からは撤退、使用済み核燃料をドライキャスクで暫定保管しながら、もはや守ることができない国と自治体の数々の約束について、守れないという現実を認めて具体的な方策を考えるという方向性でほぼ一致したといっても良いと思います。

ーーー

フィンランドの高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の処分実施主体であるポシヴァ社は、2012年12月 、世界初の使用済燃料の処分場の建設許可申請書を政府に提出したことを公表した。オルキルオト島に建設する。

日本でこれを建設し、稼働するまでには何十年もかかるであろう。それまで暫定保管で続けられるであろうか。

 


 

ブリヂストンは2月1日、中国メーカーに対する商標権侵害訴訟に勝訴したと発表した。

広州市宝力輪胎有限公司(Guangzhou Bolex Tyre、宝力タイヤ)が同社の登録商標である「BRIDGESTONE」に類似した「GEMSTONE」を使用してタイヤを生産・販売した行為に対し、2010年3月に天津市浜海新区人民法院に提訴した。

宝力タイヤは広州国際集団の子会社の広州橡企業集団(広州Rubber)が75%、香港宝盛発展が25%出資するJVで、1992年に設立され、宝力(BOLEX)、捷通(GEMSTONE)、東尼(TONY)の3ブランドでタイヤを販売している。

広州国際集団は、タイヤとソーダ灰を主とする企業集団で、3つの子会社を持つ。
  ・
広州華南橡膠輪胎Guangzhou South China Rubber Tire):万力ブランドのタイヤ
  ・
広州橡企業集団(Guangzhou Rubber Enterprise Group)
フルレンジのタイヤ
  ・
広東南方鹼業 (Guangdong Southern Alkali Industry) : ソーダ灰等

宝力タイヤの商標とブリヂストンの商標対比

一審でのブリヂストンの勝訴判決の後宝力タイヤは天津市第2中級人民法院に控訴したが、2013年1月にブリヂストンの主張が認められ、控訴が棄却され、ブリヂストンの勝訴判決が確定した。
宝力タイヤに対して「GEMSTONE」を表示したタイヤの生産・販売の停止及び損害賠償金の支払いなどが命じられた。

ーーー

ブリヂストンはこれまでも中国で商標権侵害訴訟で成果を挙げている。

同社は山東三泰「ROCKSTONE」ブランドのタイヤは商標権侵害等に該当するとして、 2008年4月に、中国上海市第一中級人民法院に提訴した。

第一審では請求が認められなかったため、2008年10月に上海市高級人民法院に上訴した。
併せて、山東三泰のオランダの販売代理店を相手取り、オランダ商標権侵害で提訴するなど、積極的な対応を実施した。

この結果、2008年11月にオランダの販売代理店との間で「ROCKSTONE」タイヤの販売の停止等を含む内容での和解に達し、2008年12月には、山東三泰との間で「ROCKSTONE」タイヤの製造販売の停止等を含む内容での和解に達した。

また、杭州普利斯帝橡胶(BridgeSteel Rubber) の「BRIDGESTEEL」ブランドのコンベヤベルト商標権侵害等に該当するとして、2007年 9月に中国杭州市中級人民法院に商標権侵害で提訴した。
裁判では同社
の主張が認められ、「BRIDGESTEEL」及び「普利斯帝」の使用停止と金型の廃棄、「普利斯帝」の企業名称としての使用停止等の命令が下された。

判決では、商標権侵害の有無の判断では、商標の「形(サウンド)」と(意味)」の3つの要素が重要とし、侵害を認めた。

ーーー

ブリディストンでは、「商品やサービスに関する模倣行為については、お客様の安心・安全を最優先することを基本とし、関係当局への通報等や訴訟などを通じて厳正に対処していくことで、今後ともブランド価値の維持・向上を図っていく所存です」としている
 



 

水銀に関する条約の制定に向けた議論のため、1月13-18日にスイスのジュネーブで「水銀条約政府間交渉委員会第5回会合」が開催され、水銀の使用や貿易、排出を国際的に規制する条約の条文案に合意するとともに、日本の提案を受け、条約の名称を「水銀に関する水俣条約」(Minamata Convention on Mercury)とすることを決めた。

本年10月9日-11日に熊本市及び水俣市で条約の採択・署名のための外交会議が開催される。
発効は50カ国の批准が必要で、国連環境計画は2016年をめざしている。

水俣条約については 2011/1/18 水銀条約とPVC  

国連環境計画(UNEP)によると、人の活動で大気中に排出された水銀は2010年で推定1,960トン。途上国を多く含む東アジア・東南アジアが40%を占めるほか、サハラ砂漠以南のアフリカ16%、南米13%となっている。EUは5%、北米は3%、日本は1.5%程度。

会議では、中国やインドなど途上国からは「自分たちだけが発展し、有毒性が分かったから、強い排出規制を押しつけるのは横暴だ」との声が続いた。また、途上国からは「貧しい人々は鉱石や砂金か金を抽出する際、水銀がなければ生活できない」「健康に有害でも発展には必要」との声も聞かれた。

合意された条約案の内容は以下の通り。

1)前文

「水俣病を教訓にして水銀を適正に管理し、将来同じ問題を引き起こさない」と明記。

2)鉱山からの水銀産出

条約発効後の水銀一次鉱出(水銀を鉱出することを一義的な目的とする鉱出活動)は禁止。
既存の水銀一次鉱山は条約発効後15年内に廃止。

3)水銀の貿易

金属水銀の輸出は、条約上で認められた用途や、環境上適正な保管に限って許可。
水銀の輸出にあたっては輸入国の事前同意が必要。

4)水銀添加製品

電池(水銀含有量が重量比2%未満のボタン電池は対象外)、スイッチ・リレー、電球型蛍光灯、石鹸、化粧品、殺虫剤、局所消毒剤、非電化の計測機器(血圧計、体温計、気圧計など)などについては、2020年までに、製造、輸出、輸入を禁止。
(研究用、校正用、標準用などの用途は除外、一部は補修用や特殊用途、
チメロサール含有ワクチン保存剤等 は適用除外)

歯科用アマルガムについて、使用等の制限のための措置を講ずる。


5)水銀使用製造プロセス

苛性ソーダ製造は2025年、アセトアルデヒド製造は2018年までに水銀利用を禁止。

水銀法電解
 陰極(水銀)でナトリウムアマルガム(Naと水銀の合金)を生成、これを解汞塔で加水分解し苛性ソーダを得る。
 陽極で塩素ガス(Cl
2)が発生

アセトアルデヒド(エチレン法以前)
 水銀触媒を使ってアセチレンを水和

PVC、ポリウレタン等の製造工程において使用する水銀量の削減等の制限措置を実施。

アセチレン法PVC
 
アセチレンと塩酸を塩化水銀(HgCl2触媒下で反応させ、VCMを製造

ポリウレタン製造で水銀を触媒に使うケースがある。


新規施設のプロセスにおける水銀利用の抑制。
(日本ではこれら工程で水銀は使用されていない)

6)人力小規模金採掘

小規模金採掘が実施されている締約国はその使用や環境中への放出を削減、可能であれば廃絶するための行動を行う。

砂金の採掘では金を含む砂に水銀を通し、砂中の金を溶け込ませた後に水銀を回収・蒸発させて金を回収するという手法がとられる。

7)大気への排出

石炭火力発電所、セメント製造設備、非鉄精錬設備等、5つのカテゴリーを対象に、5年以内に以下の排出削減対策を実施。

石炭中に水銀が含まれる。セメント製造では飛灰や残土・汚泥を使用するため水銀が含まれる。

・新規施設:利用可能な最善の技術、環境のための最善の慣行、排出限度値の設定等。
・既存施設:排出管理目標設定、排出限度値設定、利用可能な最善の技術/環境のための最善の慣行、
       他の有害物質の制御の活用等

8)水・土壌への放出

放出限度値の設定、利用可能な最善の技術/環境のための最善の慣行等

9)保管、廃棄物対策、汚染地対策

10)途上国への資金援助、途上国の能力強化・技術支援・技術移転

ノルウェーが100万ドル、スイスが100万スイスフランの拠出をそれぞれ表明。日本政府 も100万ドル規模の貢献を表明した。

ーーー

日本と世界の水銀の状況は下記の通り。
  ソース:http://www.env.go.jp/chemi/tmms/seminar/20110626/mat01.pdf

 
 


日本への影響については、毎日新聞が以下の通り報じている。

日本では、水銀を使わない血圧計や体温計が普及しており、照明器具も蛍光灯から発光ダイオードへの転換が進んでいる。

一方、金属製錬の過程で副産物として発生した水銀や、蛍光管、乾電池のリサイクルで出る水銀を、インドやシンガポールなどに輸出しており、輸出量は年間平均約100トンに上っている。 (2006年には250トンを輸出)

条約が採択されれば、輸出できなくなった水銀を国内で安全に保管する技術の開発が急務となる。
保管費用を誰が負担するかも検討課題だ。




Occidental Chemical  (OxyChem) がシェールガスを利用し、VCM原料用にエチレンを新設することが、同社のEPAへの申請書で判明した。

計画概要は以下の通り。

立地:テキサス州Ingleside
能力:年産 545千トン
原料エタン:隣に新設する液状天然ガスの分解装置からパイプラインで輸送
製品エチレン:隣接する100%子会社OxyVinylsのVCMプラントにパイプラインで輸送
建設開始:2014年12月
生産開始:2017年2月

 


 

米国では安価なシェールガスを原料とする石油化学計画が続出している。

Dow:2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表

2012/3/12  Dow、ワールドスケールのプロピレン建設を決定

エチレンについては、メテキサス州Freeport に同社としては世界最大の年産150万トンのプラント建設を決定し、政府の認可を申請した。投資額は17億ドルで、2014年に建設を開始し、2017年1月に操業開始の予定。

Shell:2011/6/14 Shell、アパラチア地方でエチレンクラッカー建設へ 

Lyondell:2011/12/20   LyondellBasellの成長戦略

Chevron Phillips:2011/12/29  Chevron Phillips Chemical、シェールガス利用で大規模石化計画

ExxonMobil:テキサス州Baytown に年産150万トンのエチレン工場を建設することを決め、認可手続きに入っている。

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OxyChemはOccidental Petroleumの化学部門。

同社は1997年にオレフィン、ポリオレフィン事業をLyondell 及び Millenniumの事業と統合し、Eqistar を設立した。
(Lyondell 41%、Millennium 29.5%、Oxy 29.5%)

同社は2001年にEquistarの持分をLyondellに売却し、売却代金でLyondell株を取得した。

LyondellとMillenniumは2004年に両社の事業とEquistar を統合し、新Lyondellとしたが、2007年にBasellがLyondellを買収してLyondellBasellとなった。Oxyは2007年にLyondell株を全て売却し、関係を断った。

OxyはEquistar設立時に以下のエチレンコンプレックスを拠出した。現在はLyondellBasellのプラントとなっている。

Corpus Christi, TX  : 旧 Corpus Christi Petrochemical 、1988年にCain Chemicalから買収

Chocolate Bayou, TX : 当初MonsantoとConocoのJV、1988年にCain Chemicalから買収

Lake Charles, LA : 当初Cities Service が建設し、停止。1986年に買収


OxyChemの現在の事業は以下の通りで、塩素系事業が中心となっている。 

OxyChem 塩素、苛性ソーダ
炭酸カリウム(世界最大)
塩化カルシウム(世界最大)
有機塩素化合物、その
OxyVinyls EDC
VCM(世界最大)
PVC(世界3位、北米2位)
INDSPEC Chemical レゾルシン(米国唯一)
(当初、Koppersが建設、その後MBOで独立、1999年Oxyが買収)
Armand Products
(Oxy
/Church & Dwight)
炭酸カリウム
Carbocloro:ブラジル
(Oxy
/UNIPAR)
クロルアルカリほか

VCM用のエチレンは外部(恐らく LyondellBasell のCorpus Christiの旧自社工場)から購入している。
今回、シェール革命により、一旦は売却し、購入に切り替えていたエチレンの自製を再開することになる。


OxyVinylsも変遷を経ている。

OxyChemとGeon(1993年にGoodrichから独立)は1999年に塩ビ樹脂事業を統合し、OxyVinylsを設立した。(Oxy 76%)

残るGeonはコンパウンド事業を行っていたが、2000年にコンパウンド会社のM.A. Hannaが合併統合し、Polyoneとなった。
この結果、OxyVinylsはOxyChem とPolyoneの76/24%のJVとなった。

2007年にOxyChemはPoly OneからOxyVinyls株式を261百万ドルで買収し、OxyChem の100%子会社となった。


参考

日本ゼオンは1950年に古河グループ(日本軽金属、古河電工、横浜護謨)とGoodrich のJVとして設立され、Goodrichの塩ビの商標のGeonを社名に使用した。(英文社名:Nippon Geon

1970年にGoodrich が撤退したため、英文社名をNippon Zeonに変更した(現在はZeon Corporation)。



公正取引委員会は2月4日、愛知電線の請求に基づく審判で、愛知電線の審判請求を棄却した。

 

公取委は2011年7月22日、VVFケーブル(主に建物内のブレーカーからコンセント等までの屋内配線として使用)の製造業者及び販売業者に対し、排除措置命令及び課徴金納付命令を出した。

これを受け、愛知電線は課徴金納付命令の取り消しを求めるとともに、予備的請求として、課徴金の30%の減免を求めていた。

  VVFケーブル カルテル
排除
命令
課徴金
  (千円)
 備考
矢崎総業 2,460,670 30%減額
富士電線工業 1,617,180  
弥栄電線 688,950  
協和電線工業 499,100  
愛知電線 326,960  
カワイ電線 323,070  
菅波電線 50,220  
協和電線 0 課徴金100万円未満
住電日立ケーブル(日立電線、住友電工、タツタ電線) 203,520 50%減額
古河エレコム(古河電工) 53,190 30%減額
昭和電線ケーブルシステム ―  最初に自主申告
合計 8社 6,222,860  

 

本件の調査に当たり、公取委は2009年12月17日に同社以外の4社に立入検査を行った(一次立入検査)。
その後、2010年4月13日に、同社ら7社に立入検査を行った(二次立入検査)。

愛知電線では同社への立入検査(二次立入検査)の当日に、課徴金減免申請を行うため、公取委の担当に電話で事前相談を行った。
これに対し、20日間の期限を既に経過しているとして、申請は受け付けられない旨の回答があり、
立入検査の当日に事前相談を行ったにもかかわらず20日間の期限を過ぎているとの回答に疑問を抱いたものの、減免申請は行わなかった。

課徴金減免の要件としては、調査開始から20日以内に申請を行うこととなっている。

7条の2 12項
当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後公正取引委員会規則で定める期日までに、公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者

課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則 第五条
当該違反行為に係る事件について・・・・処分が最初に行われた日から起算して20日(行政機関の休日に関する法律掲げる日の日数は、算入しない。)を経過した日とする。

愛知電線の主張:
1)期限を経過しているとして減免申請を不可とした公取委の対応は違法・不当なもので、適正手続の保障を定めた憲法第31条に違反。

一次立入検査、二次立入検査ともに、告知書には「建設・電販向け電線・ケーブル」となっていて、「特定VVFケーブル」の取引を対象としたものかどうかが明確ではないから、これに基づく立入検査は課徴金減免申請の認められる期間の起算日にはならない。

一次立入検査は建設用電線のうち3品種の取引について行われたものであって、特定VVFケーブルの取引を対象としたものではなく、一次立入検査を「調査開始日」とするのはおかしい。

従って、相談した時点では、調査開始から20日の期限は経過していない。

2)それにより課徴金減免申請の機会を逸した被審人には、課徴金減免申請の効果(30%減免)が認められるべき。

 

今回の審判では以下の理由でこれを却下した。

・特定VVFケーブルが「電線・ケーブル」に含まれることは明らか。
・一次立入検査と二次立入検査の留置物の双方に本件違反行為に関する書類が含まれている。
・一次立入検査は本件違反行為についての調査であるといえるから、
一次立入検査の日が「調査開始日」に該当する。
20日間の期限を既に経過しているとして、申請は受け付けられないとした回答には違法・不当な点はない。

・回答には違法・不当な点はないため、また、実際に課徴金減免申請を行っておらず、課徴金減免申請の効果が認められるべき理由はない。


 


ソウル中央地裁は1月31日、株式投資によって生じた損失を補填するため、グループ会社の資金を横領した特定経済犯罪加重処罰法違反の罪に問われたSKグループ会長の崔泰源被告に対し、懲役4年の実刑判決を言い渡し、身柄を拘束した。
検察が横領事件の主犯として同時に逮捕した弟の崔再源副会長は無罪を言い渡された。

会長は2月5日に一審判決を不服として控訴した。

会長と副会長は系列会社2社(SKテレコム、SK C&C) から497億ウォン(現在のレートで約41億円)を横領した罪で、2012年1月に在宅起訴された。
2008年10月に、系列会社2社に出資金の名目で送金させた497億ウォンを、会長と副会長の先物投資を代行していた海外在住の韓国人に送金したという。

裁判所は、「崔泰源会長の個人資産を管理する組織が投資を主導した点などを見る限り、グループ会社の資金の横領は崔泰源会長が指示したものと考えられる」との結論を下し、副会長は無罪とした。

裁判長は、「崔会長が大企業の経営トップとして、経営や財務に関し透明性を確立しなければならない立場にありながら、むしろグループ会社の資金を私的に流用したことから、厳しい処罰は避けられない」と述べた。
また「2003年にSKグループ系列会社に対する背任行為などにより有罪判決を受け、赦免により復権(2008年8月)してから3カ月もたたないうちに横領行為を行った点を考慮すると、実刑判決は避けられない」と指摘した。

崔会長は2003年にSK Global の債務を減らして1兆5587億ウォンの利益を水増しするなどの粉飾決算を行い、またSKの筆頭株主としての支配権を維持するため、本人所有のウォーカーヒルホテル株とSK C&C所有のSK株を交換する際に非上場株のウォーカーヒル株を過大評価した疑いで起訴され、2008年5月に懲役3年、執行猶予5年が確定した。

会長は、系列会社の役員に毎年の賞与金を多く支給してから返却させる方法で2005~2010年に約140億ウォンの不正資金を蓄財し、私的な用途で使った容疑でも訴えられたが、これについては無罪となった。

ーーー

韓国ではこれまで、大企業のオーナーに対しては、「経済への悪影響が懸念される」、「経済発展に貢献した」といった理由で執行猶予付きの判決が下されるケースが多かった。

しかし、裁判所はこの1年間、財閥の公私混同を問題にし、「社会的責任」や「相応の処罰」を強調する傾向にある。

泰光グループの李豪鎮前会長は2012年2月、会社の資金445億ウォンを横領したとしてに懲役4年6月の実刑判決を受けた。
(検察は2012年11月の2審で、懲役7年、罰金70億ウォンを求刑している。)

ハンファ・グループの金升淵会長は2012年8月、関連会社の資金を自身の所有する会社に不正に流用し、系列会社や少数株主、債権者などに4856億ウォンの損害を負わせたとして、4年の実刑判決と罰金51億ウォンの判決を受けた。
裁判所は
「犯行によって最も利益を得る立場でありながら、実務者に責任を転嫁し、反省の態度を見せていない点を考慮すると、厳罰に処する必要性がある」と述べた。


大法院は量刑の基準として、300億ウォン以上の横領や背任罪で起訴された被告が、被害額を弁償するなど減軽の余地がある場合、懲役4-7年とするよう勧告しており、今回、SKの崔会長は横領した額を全て弁償したが、裁判所は検察の求刑通りの量刑を適用した。


SKの崔会長は今回、オーナーを中心とする経営体制を解体した。グループ会社社長団協議会の議長を専門経営者に任せたり、役員に対する人事権も社長団協議会傘下の人事委員会に譲渡した。
これまで、株式を含む自らの資産をグループの財務部門に預けて管理してきたが、自らの資産はグループ外の会社に管理を依頼する。



既報の通り、中国の大気汚染が悪化している。

中国の周生賢環境保護相は1月に開かれた全国会議で、1月の大気汚染は中国全土の4分の1、全人口の半数近い6億人に影響が出たと述べた。 スモッグは17の省や自治区、直轄市に及んだとしている。

環境保護相はまた、1年間に車が約1500万台増える状況が続く中で汚染物質の排出量も増え、7割前後の都市で大気が環境基準を満たしていないことも明らかにした。
さらに、呼吸器や循環器の疾患を引き起こす微小粒子状物質「PM2.5」に対する国民の関心が高まっていることを認め、2015年までに濃度を5%下げる目標の達成に取り組む姿勢を強調した。

中国科学アカデミーの研究員によると、北京市街地 (750平方キロメートル) の上空の浮遊粒子状物質は4千トンに達し、北京の空気汚染はすでに非常に顕著な状態 となっている。

国務院は2012年末に、北京・天津・河北省地域、長江デルタ、珠江デルタなど大気汚染の深刻な地域への思い切った対策を旨とする「重点区域大気汚染対策第12次五カ年計画」を了承した。

これらの地域は汚染物質の排出が高度に集中し、単位面積当たりの汚染物質排出度は全国平均の2.9-3.6倍に上る。

これらの地域は経済規模で全国の71%、石炭消費量で全国の 52%を占める。
国土面積の14%を占めるこれらの地域は二酸化硫黄排出量で全国の48%、窒素酸化物排出量で全国の51%を占める。
重点地域内の82%の都市が2011年改定の大気の質の評価基準の国家2級基準に達していない。

ーーー

米国自然資源保護委員会北京代表部によると、石炭消費量は北京で2000万トン、天津で7000万トンに達し、河北省は3億トン、山東省は4億トンにおよぶ。華北地域全体では毎年10億トンの石炭を燃やしている計算になる。

1月30日の国務院常務会議では、中国のエネルギー総消費量を2015年までに標準石炭換算で40億トンに抑制する方針が打ち出された。

2011年の一次エネルギー消費量は石炭換算で34億8000万トンで、前年から約7.1%増加した。
2012年から2015年の平均伸び率を約3.5%に抑える必要がある。

今後石炭消費量の伸びは厳格に規制されるが、この結果、エネルギーを大量に消費する重化学工業もエネルギーのボトルネックに直面する こととなる。
(このスキームの裏には
大手国有企業などとの駆け引きがあり、長い間遅れが生じていたという。)

また、全体のエネルギー消費に占める石炭の割合を約65%に低下させ、天然ガスのシェアを7.5%に高めることが打ち出された。

ーーー

大気汚染の原因として、自動車のガソリンも槍玉にあがっている。

中国にはガソリン中の硫黄分について国としての基準はなく、地域ごとに異なっている。

北京市のみがEURO-5に相当する「京5」を本年2月1日から施行した。

2月1日から第5段階基準を施行し、自動車メーカーからの第4段階基準の軽量ガソリン車の届出の受理を停止し、第5段階排出基準を満たさないバスなど大型ディーゼル車の販売、登録を停止する。
3月1日から第5段階排出基準を満たさない軽量ガソリン車の販売、登録も停止する。
また、「京5」を満たす車両には青色環境マークを発行するという。

北京市以外では、上海、広州、南京がEURO-4相当の「国4」の基準を採用しており、2013年1月からは江蘇省、浙江省、広東省などの10以上の地域も「国4」を採用した。

しかし、その他の地域はEURO-3相当の「国3」に止まっている。

EUの自動車排ガス規制(硫黄分規制値)

  欧州での
導入時期
ガソリン 中国での適用
EURO-3 2000年 150ppm 以下 一般
EURO-4 2005年 50ppm以下 上海、広州、南京等
EURO-5 2009年 10ppm以下 北京


日本では2008年から10ppm以下となっている。米国では80ppm以下。

シノペックの傅成玉董事長は1月末、「汚染の原因は燃料の品質が悪いせいではない。政府の品質規制の基準が低いためだ」と責任は政府にあるとの考えを示した。

これに対し、インターネット上で、「国の基準は国有企業が決めているのではないのか」、「責任感がまったくない」、「国有企業の道徳感が低すぎる」などの批判が噴出した。

環境問題の専門家は規制が進まないことは「石油業界が反対したためだ」と批判する。排ガス規制の基準作りに関与する公的組織のメンバーの7割が石油業界関係者で、環境問題の専門家は1割未満 に過ぎない。

関係者の間では、「国内で広範囲にわたる石油製品の基準引き上げが難しいのは価格面に問題があるため」と見ている。
グレードアップによるコストが市場に転嫁出来ない場合、業界の損益は激減する。

中国の業界筋によると「国4」へのアップグレードにSinopec, CNPC、CNOOCの精製3社で500億人民元(7500億円)が必要という。
高品質のガソリンについては税金を低くするべきだとの声も出ている。

インターネット上での非難を受け、Sinopec は2月1日、2013年末までに300億人民元を投じて 12の製油所に最新の脱硫装置を建設し、2014年から「国4」の基準(50ppm以下)に合格する石油製品を販売すると発表した。



 

東燃ゼネラル石油は1月31日、東燃化学とDow子会社Union Carbide (UCC) との50/50JVである日本ユニカーのUCCの全持株を取得することで合意したと発表した。
本年第3四半期をめどに合弁関係を解消し、100%子会社とする。

日本ユニカーのLDPEの高圧電線被覆分野は、高度な技術のもと国内でも希少な製品として高い競争力を有しており、東燃化学は今後同分野を化学部門の柱のひとつとして強化していくとしている。

Dowも1月31日の決算発表会でこれを発表した。
Dowは2012年12月にコアでない資産10億ドルを2年間で売却する方針を発表しており、その一環であるとしている。

DowはサウジのAramcoとのJVと米国でのシェールガスを利用しての石化再開発に注力しており、現在の日本市場は処分すべき非コア事業である。

ーーー

日本ユニカーは1961年に日東化学工業とUCCの合弁で日東ユニカーとして設立され、1962年に高圧法LDPEの生産を開始した。
1965年に日本側が日東化学に出資した三菱レイヨンに代わり、社名を日本ユニカーと改称した。

1980年に日本側が東燃石油化学(現東燃化学)に代わった。

2001年にDowがUCCを統合した。

現在の能力は、LDPEが 180千トン、LL/HDPEが120千トンで、合計300千トンとなっている。

ーーー

東燃化学は日本ユニカーとは別に、川崎にHDPEプラントとPPプラントを持っていた。

HDPEは1979年に昭和電工から川崎のプラントを購入したもので、大分石油化学コンビナートヘの集中を目指す昭電と、エチレン誘導品を強化拡充しようとする東燃石化の利害が一致した。

PPは1974年にExxonから技術導入した。

三菱化学と東燃化学は、両社のポリオレフィン事業の統合し、日本ポリケムを設立し、1996年9月に営業を開始した。
当初は50/50の出資であったが、1998年の増資時に三菱 65%、東燃 35%となった。


この時点で、日本ユニカーのポリエチレン事業(電線被覆グレードを除く)の参加について交渉したが、まとまらなかった。

2001年6月、日本ポリケム日本ポリオレフィン(昭和電工と日本石油化学の事業統合会社)はポリエチレン事業について、また、日本ポリケムとチッソは、ポリプロピレン事業について、それぞれ両社の事業を統合することにつき検討を開始することで合意したと発表した。

しかし、公取委は、日本ポリケムの親会社の東燃化学を通じて新会社が日本ユニカーと結びつくことを問題とした。
新会社と日本ユニカーを加えると、LDPEの合算販売数量シェア・順位は約45%・第1位となり、上位3社累積シェアは約80%となるとした。

このため、三菱化学と東燃化学が交渉し、2003年6月に三菱化学が日本ポリケムの東燃化学保有株式を全て買取った結果、統合が承認され、日本ポリエチレンが2003年9月、日本ポリプロが2003年10月に営業を開始した。

 


三菱化学は2012年6月、日本ポリエチレンと日本ポリプロが川崎のHDPE(52千トン)及びPP(89千トン)工場各1系列を2014年4月に停止すると発表した。

これはいずれも旧東燃化学のプラントで、これにより、日本ユニカーのプラントのみが残ることとなった。

2012/7/9 三菱化学、旧東燃化学川崎のPEとPPを停止へ

ーーー

東燃ゼネラル石油は2012年6月に、ExxonMobilからエクソンモービル有限会社の持分の99%を取得した。 ExxonMobilは東燃ゼネラル持株の一部を売却し、持株比率を22%に落とした。

2012/1/30 ExxonMobilが東燃ゼネラル石油から実質撤退

この結果、日本ユニカーは実質的にはExxonMobilとDowの子会社であったが、以下の通り、ExxonMobilから自立した東燃ゼネラル石油の事業となる。

                    ↓ 2012/6

                      今回         




既報の通り、米国の天然ガス(LNG)輸出を巡って、Dow Chemical と ExxonMobileが米国の産業界を2分して争っている。

Peterson Institute for International Economics のシニアフェローのGary Clyde Hufbauer が2013年1月24日付の論文で「米国がLNG輸出を規制する一方、国内で天然ガスの自由な消費を認めるのは偽善であり、WTOルール違反だ」と述べ、話題になっている。LNG Exports: An Opportunity for America

米国はGATTなどのルールに従うべきだ。米国の法律を修正すべきだ。

LNGの輸出制限で国内の天然ガス価格を下げた場合、天然ガス利用者への補助金となる。

これまで米国はカナダの木材輸出制限を非難し、最近では中国のレアアースなどの輸出制限を非難している。
1989年にはカナダとのFTA協定に、カナダから米国へのエネルギーの輸出で、カナダ国内と異なる税金を課すことを禁じ、供給を制限する場合には国内と輸出市場で同じ比率で制限するという規定を押し込んだ。

これは偽善である。

こんなことをしていると、非FTA締結国から同様の輸出制限を受けるかも分からない。またそれらの国からWTOに提訴されるかも分からない。


GATTは輸入と同じく、輸出についても原則として数量制限を禁止している。

第11条 数量制限の一般的廃止

「締約国は、他の締約国の領域の産品の輸入について、又は他の締約国の領域に仕向けられる産品の輸出若しくは輸出のための販売について、割当によると、輸入又は輸出の許可によると、その他の措置によるとを問わず、関税その他の課徴金以外のいかなる禁止又は制限も新設し、又は維持してはならない。」
同条では、「食糧その他の危機的な不足を防止し、又は緩和するための一時的なもの」など、例外について記載している。

第20条 一般的例外
例として、
有限天然資源の保存に関する措置。ただし、この措置が国内の生産又は消費に対する制限と関連して実施される場合に限る。

中国はレアアースの輸出枠設定について、上記の「有限天然資源の保存」を理由にしたが、日本や米国は、但書を引用し、輸出だけを制限する理由にはならないとしてWTO協定に基づく協議を要請した。
WTO上級委員会報告は、「環境保護や資源保護は、国内の環境規制や生産数量制限で対応することが基本」としている。

ーーー

米国ではNatural Gas Act of 1938 により、天然ガス輸出入にはエネルギー省の許可 が必要とされており、輸出許可の判断基準には①公共の利益に反するか否か、②輸出先国で内国民待遇が与えられるかどうかがある。

①の公共の利益については、国内供給を脅かさないことと、自由競争を阻害しないことが要件となる。

輸出許可申請には、以下の点の記載が必要である。

国内の天然ガスの需給
国内ガス価格への影響
米国および地元経済(生産活動と雇用、税収)への影響
貿易収支と国家安全保障上の影響

輸出許可を得ても、輸出契約は長期契約が中心のため、途中で状況が変化すれば、許可取り消しも有り得ると記載されている。

②についてはGATT加盟国は内国民待遇を約束しているため、原則として問題はない。

米国とFTAを締結している国のなかで、イスラエルとコスタリカは天然ガスに関する内国民待遇の合意がなく、LNGの輸出対象国から外れている。

判断基準としては「米国との間に内国民待遇を含む有効な自由貿易協定を結ぶ国に対する天然ガスの輸出は、公共の利益に適うと判断された場合、修正及び遅滞なくその申請は許可される」となっており、これまで全て認められた。

非締結国向けについては個別審査となっており、これまで認められたのは、Cheniere EnergyのSabine Pass プロジェクトのみである。 

詳細は  米国・カナダ産LNG輸入構想に関する通商法面からの考察 (2012年3月 IEEJ)

唯一の事例としてCheniere Energyが非締結国向けに認められたのには経緯がある。

Cheniere Energy が海外からのLNG受入基地に天然ガスのLNG化設備を建設してLNGを輸出する計画に関しては、2010年9月に米国がFTAを締結している国(将来締結した国も含む)に限定して輸出許可が出された。

これに対し、同社は2010年9月7日付で、非締結国向けの輸出を認めないのはGATTに違反するという長文の申請書を提出した。
GATTでは輸出制限を禁じているとし、天然ガス輸出はGATTの例外規定には該当しないとして、個別に詳細に論じている。
       
http://www.cheniereenergypartners.com/lng_documents/application_exhibits.pdf

これを受け、エネルギー省は2011年5月、CheniereのSabine Pass プロジェクトに条件付きですべての貿易相手国への輸出を認めた。

Cheniereは申請に当たり、「公益面の検討」として投資や雇用面のメリットに加え、以下を挙げた。(上記のIEEJレポート)
 ①国際的な天然ガス貿易の自由化を推進:市場メカニズムに基づく取引が浸透
                           (石油価格連動からのデカップリング推進)
 ②天然ガス供給源の分散化:同盟国のenergy security強化
 ③中南米等との通商関係の深化

当然、他の業者も同様の申請を行っていると見られるが、これ以外は一切認められていない。

なお、Cheniere Energy のGATT違反との主張に対し、「裁判所がGATTの規定は既存の法律に優先しないとの判断を示した」との記載を見付けたが、事実かどうか確認できていない。

1947年のGATTではGrandfather Clause(成立前に既に認められていた既得権を認める条項)があったが、WTO設立協定の1994年GATTの下ではこの規定が撤廃されたため、既存の国内法令を理由としてGATTを適用する義務を免れることはできない。
GATTに違反するこの法律は撤廃又は改正することが必要である。

ーーー

野田前首相は2012年4月30日のオバマ米大統領との首脳会談で、LNGの対日輸出拡大などエネルギー面での協力を求めた。

オバマ大統領は首相の輸出要請に対し、「日本のエネルギー安全保障は米国にとっても重要」と理解を示す一方、「(対日輸出は)政策決定プロセスにある」として、明言は避けた。

日本政府は中国のレアアース輸出規制についてはGATT違反として是正を要求している。

米国のLNG輸出規制については、なぜ、要請ではなく、GATT違反であるとして是正を要求しないのであろうか。




住友化学は2月1日、国内石油化学事業の拠点の千葉工場の競争力強化のため、2015年9月(次の定修時期 )までに、エチレン製造設備(定修スキップ年能力415千トン)を停止すると発表した。

同社では、内需の減少や輸入品の増加などから厳しい事業環境が続いており、その基調は今後も大きく変化することはないと見込んでいる。

石油化学事業を強化・維持していくためには、製品の高付加価値化やコスト削減を一段と進めていく必要があるが、設備の老朽化(操業開始後 40年以上経過)や内需構造の変化を踏まえ、自社での生産を停止し、国内で最も新しく大型の設備である「京葉エチレン」(丸善石油化学、三井化学、住友化学の合弁会社)からの調達に一本化することが最善と判断した。

同社は1958年に日本で最初のエチレンプラントをスタートさせた2社のうちの1社であるが、日本のエチレン事業から離脱する。

2015年9月のエチレンまでに、千葉の不採算事業の縮小も進める。
千葉工場の従業員約1000人のうちの4分の1程度を他工場に配置転換する。

十倉社長は記者会見で、「エチレン生産は石油化学事業の中核。設備停止は寂しさもあるが、最善と判断した」、「誘導品の高付加価値化を進めるなどして千葉工場全体を再編し、100億円前後の合理化を目指す」と述べた。

住友化学の国内のエチレン能力はゼロとなるが、停止後のエチレンなどの基礎原料は、京葉エチレンからの調達量を増加させることにより、必要量を賄う。

丸善石油化学と三井化学も同日、三井化学が京葉エチレンから離脱し、住友化学が京葉エチレンからの引取枠を増やすことについて原則合意したと発表した。

三井化学と出光興産は両社の千葉のエチレン設備を千葉ケミカル製造有限責任事業組合に移管し、今後の内需の低下、輸出市況の低迷による低稼働を見込んで、稼働率を70%まで落としても高効率な安定運転を維持できる体制に改造をおこなっている。

丸善石化が運営する京葉エチレン は丸善石化55%、住友化学と三井化学が各22.5%出資し、能力は768千トン(定修スキップ年)で、住友化学と三井化学が25%ずつ引き取っている。
三井化学の出資と引取枠をそのまま住友化学が引き継ぐものと思われる。

付記
丸善石化社長は業界紙のインタビューで、出資比率は過半を維持する考えを示し、エチレンの引き取り枠については「当社分(50%)が減り、住友化学の引き取り枠(25%)が増えることで、より稼働率が改善する体制を目指すのが基本姿勢」との認識を示した。
住友化学は三井化学の引取枠に加え、丸善石化の引取枠もいくらか引き受ける模様。

ーーー

産構法後のバブル時に、京葉地区にある丸善石化、住友化学、三井石油化学はいずれもオレフィン不足の状況にあった。
このため、丸善石化は1991年に京葉エチレンを設立、住友と三井への各年間15万トンの供給を前提に、同社構内に60万トンのプラントを建設した。
プラントは2004年1月に完成したが、事業環境の悪化で営業運転開始は2004年12月となった。

当時は各社が異なる共販会社に属していたため、住友と三井の出資は共販解散後の1995年12月となった。

ーーー

3社と出光石化は従来からエチレン設備をパイプラインで相互に結ぶいわゆるコンビネーテッド・コンビナートであったが、京葉エチレンへの参加を契機に3社間でエチレンに加え、プロピレン、ベンゼン、分解重油などが配管で結ばれた。
このため、住友化学がエチレン設備を休止しても、誘導品の生産には支障は生じない。

ずっと昔、当時の住友化学の長谷川周重社長(故人)は「エチレンは水」とし、基礎原料のエチレンは各社が個別に生産するのではなく、(工業用水のように)共同で手当てし、誘導品で勝負すべきだと述べた。
何十年も経って、この言葉が実現されることとなる。

住友化学はシンガポールとサウジで石油化学を展開しており、サウジでは第二期計画を決めている。

2006/4/2   シンガポールの石油化学の歴史

2012/5/28    住友化学、サウジ・アラムコとの「ラービグ第2期計画」実施へ

十倉社長は2012年11月の記者会見で石油化学事業の今後の展開について以下のように述べている。

サウジのペトロ・ラービグ社が第2期計画段階に入る。

今後、バルク製品はサウジで展開し、シンガポールを高付加価値製品の供給拠点とする。
千葉工場はマザー工場として、生産技術・製品・ノウハウの発信拠点としても活用していきたい。

ーーー

現在の日本のエチレン能力は定修スキップ年ベースで800万トンあるが、2011年実績で生産は6,689千トン、内需は5,204千トンに過ぎない。
(2012年の生産実績は更に減少し、6,146千トンである。)

エチレン能力が300万トン程度余剰と見られている中で、これまで、三菱化学が鹿島1号機(390千トン)を停止することを決めているだけ。

水島の三菱化学と旭化成、千葉の出光興産と三井化学はそれぞれ、両社のエチレンを拠出して
有限責任事業組合(LLP)を設立したが、本来の目標であるはずのエチレン設備の廃棄には至っていない。

三菱化学・鹿島1号機と住友化学・千葉の停止後も能力は700万トンを超えており、まだまだ過剰である。

問題点  2012/12/25   2012年 回顧と展望

 

工場別能力一覧表 定修スキップ年   単位:千トン/年
会社名 工場 2001年 2011/12/末 変更後  

三菱化学

鹿島1

410 390 0 2014年停止

鹿島2

491 490 540  
四日市 270 - - 2001/1 停止
水島 496 494 494

西日本エチレン
  有限責任事業組合

 (2011/4)

(1,667) (1,374) (1,034)
旭化成 水島 504 504 504
三井化学 500 500 500  
千葉 612 612 612

千葉ケミカル製造
有限責任事業組合

 (2010/10)

(京葉) (192) (192) (  0)
(1,304) (1,304) (1,112)
出光興産 千葉 413 413 413
徳山 498 688 688  
(911) (1,101) (1,101)  

住友化学

千葉

415 415 0 2015年停止
(京葉) (192) (192) (384)  
(再計) (607) (607) (384)  

丸善石油化学

千葉

525 525 525  
(京葉) (384) (384) (384)
(再計) (909) (909) (909)

京葉エチレン

丸善石化

千葉

384 384 384  -α
住友化学 192 192 384
三井離脱
三井化学 192 192 0
合計 (768) (768) (768)  

東燃化学

川崎

515 540 540 Exxon 少数株主に
日本ユニカー100%化

JX日鉱日石エネルギー

川崎

443 443 443  

東ソー

四日市

527 527 527  

昭和電工

大分

635 691 691  

合計

8,022 8,000 7,245  



 

Oman Oil Company (OOC) は1992年に政府100%出資で設立された。

PP計画と芳香族、PTA、PET計画、EDC計画には韓国のLGが参加している。
エチレンとPE計画にはDowが参加する予定であったが、取り消しとなった。

Sohar、Salalah、Sur の3か所で事業が行われている。

なお、Oman Oilは韓国のGSグループの中国子会社で、山東省でパラキシレンを生産する青島麗東化学工業に30%の出資を行っている。


立地:Sohar
 
 

2006/6/3 湾岸諸国の石油化学ー4 オマーン

2012/12/28  オマーン石油とLG、オマーンでPTA、PETのJV 

 
 

2007/7/20 建設費アップでダウのオマーン計画延期

 
 
       参考 Methanol Holdings (Trinidad)


立地:Salalah
 
 
        2008/4/18 オマーンのOctal PetrochemicalsPET樹脂 80万トン体制へ
 


立地:Sur
 

 

ーーー

青島麗東化学

Oman Oil は2005年に青島麗東化学工業(Qingdao Lidong Chemical)の30%を取得した。

出資: GSアロマティックス 60%   韓国GSグループ(2005年にLGから分離)のオーナー一族のシンガポール法人  
  Oman Oil 30%      
  青島紅星化学 10%   省政府の企業で、主に無機塩(特にバリウム、炭酸ストロンチウム)、その他を生産  

立地: 山東省青島市の青島経済開発区

製品: ベンゼン         250千トン
    トルエン        150千トン
    パラキシレン 700千トン 
          ラフィネート   113千トン


2006/11/3  韓国GSグループの山東省パラキシレン工場、近く商業生産開始
                 

Oman Oil とLGは上記の通り、Soharにパラキシレン、PTA、EDC、PPのJVを持っており、この関連でLGから分離したGSの中国計画に参加したと思われる。

                 

         




 

出光興産とAltaGasは、カナダ産のLNGとLPGのアジア向け輸出・販売の共同事業に関する可能性を調査するため、50/50の合弁会社とパートナーシップを設立することに合意した。出光興産が1月29日に発表した。

両社は、天然ガスの液化設備をカナダ西海岸に建設することについてFSを実施し、2014 年完了を目指す。
天然ガスの輸送は、AltaGas子会社のPacific Northern Gasのパイプラインを利用する。
許認可の承認、液化設備の完成を踏まえ、早ければ2017 年のLNG輸出・販売を目指す。

天然ガスは市場から調達するが、権益を持つ企業からの直接購入も検討する。年間の輸出量は200万トン程度を見込んでいる。

合わせてLPG の輸出・販売についても、冷凍・液化設備、販路などについて共同調査を行う。
早ければ2016 年にも
年間60~70万トンのLPG の輸出・販売を目指す。

  合弁会社 リミテッド
 パートナーシップ
業務 事業の意思決定 事業の遂行
社名 AltaGas Idemitsu Management AltaGas Idemitsu
Joint Venture Limited Partnership
出資
出光   50%
AltaGas   50%
   
AltaGas Idemitsu
    Management
   0.01%
出光 49.995%
AltaGas 49.995%


カナダの場合は米国と異なり、LNGの輸出制限の動きはない。

日本向けLNG運賃は以下の通りで、米国Gulf Coastの場合の半分で、豪州からとほぼ同じである。

  Kitimat(カナダ西海岸)   1.24 $/百万BTU 
  US Gulf Coast        2.96  
  Cove Point(東海岸)   3.07  
         
  Gordon(豪)   1.17  
  Gladstone(豪)   1.21  
  Ichthys(豪)   1.23  
    資料:Platts LNG Forum, Tokyo 2012/9/25  

 

カナダ西海岸ではアジア向けLNG輸出を狙って、多くの計画がある。

1)Pacific Northern Gasのパイプライン(稼働中)

AltaGas子会社のPacific Northern GasのパイプラインはSummit LakeとPrince Rupert 港を結んでおり、途中で分かれてKitimat港にも通じている。

Summit Lake ではSpectra Energy Corp のパイプラインに接続し、各シェール鉱区につながっている。

2)Kitimat LNG輸出ターミナル計画とPacific Trail Pipelines計画

これとは別に、Summit LakeからKitimat港まで直接結ぶパイプライン(Pacific Trail Pipelines )計画と、KitimatでのLNG輸出ターミナル建設の計画が進んでいる。

この計画は当初、Pacific Northern GasとGalveston LNGが始めたが、その後出資者の異動があり、2012年12月にChevronがEncana とEOG (Galveston LNGを買収)から権利を買収し、Apache とChevronの50/50JVとなった。Chevronが運営する。

LNG輸出ターミナルは年産5百万トンでスタート、10百万トンまで拡張できるという。
稼働開始は2015年を予定しており、現在、Front-End Engineering and Design (FEED) の段階。
カナダ政府から年間10百万トンのLNG輸出のライセンスを受けている。

Chevron はこれに合わせて、Encana、EOG、ApacheからHorn River Basinのシェールガス田 110千エーカーの権利を、ApacheからLiard Basinのシェールガス田 212千エーカーの権利を買収した。両ガス田の権利はChevron とApache が50/50で所有することとなり、Apache が操業を担当する。

3)Shell、三菱商事等の「LNG Canada」計画 

三菱商事は2012年5月16日、シェルカナダ、韓国ガス公社(Kogas)、中国石油天然気(PetroChina)とのLNG輸出計画、「LNG Canada」構想を発表した。

4社でカナダのブリティッシュ・コロンビア州 Kitimat港周辺においてLNG輸出基地を共同開発する。
(当初の案では立地は Prince Rupert とされていた。)

権益比率   シェル   40%
三菱商事 20%
Kogas  20%
PetroChina 20%



液化設備   600万トン/年x2=1,200万トン
将来的な数量拡張の可能性
生産開始   2010年代末


2012/5/17  Shell、三菱商事等の「LNG Canada」計画

付記

カナダのNational Energy Board は2013年2月4日、この計画に輸出ライセンスを与えた。
25年間で670百万トンまでの輸出を承認。

Kitimat LNG(Apache Corp and Chevron Corp)とBC LNG Export Cooperative に次ぐもの。

4)BC LNG Export Co-Operative (BC LNG)

売り手と買い手が加入するCo-opで、現在、13社ほどが加入しているとされている。

CanadaのNational Energy Board は2012年2月、BC LNGに対し、年間180万トンのLNGを20年間輸出するライセンスを与えた。
2014年に最初の船積みをする計画。

Douglas Channelの西側にバージベースの浮体式海洋石油・ガス生産装置(FPSO)を設置するもので、90万トン/年規模を2系列つくる。
天然ガスは既存のPacific Northern Gas Pipeline や新設するPacific Trail Pipelineで輸送する。

 

カナダでの日本企業のシェールガス開発は以下を参照  

 

 

 


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