2024年5月アーカイブ

世界最大級の鉱業会社BHPグループが、107年の歴史を持つ同業のAnglo Americanに買収の可能性を打診した。

Anglo Americanは4月24日遅く、BHPから一方的で拘束力のない株式交換による事業統合の申し出を受け取ったと明らかにした。310億ポンド(388億ドル)の買収提案とされる。Anglo Americanによると、BHPの申し出は、Anglo Americanが南アフリカの白金および鉄鉱石部門をまず分離することが条件になる。

非公開情報を理由に複数の関係者が匿名で語ったところでは、BHPはロンドン市場に上場するAnglo American買収の可能性について最近評価を行ってきた。検討は初期段階であり、BHPが買収を進めると決めるか確実ではないとしている。

Anglo Americanは南米の大規模な銅事業を傘下に置き、業界の多くが同事業の拡大を目指す中で、鉱業大手の中でも特に買収の標的と長らく考えられてきた。しかし、複雑な構造と商品ミックス、特に南アへのエクスポージャーの大きさが潜在的買い手を遠ざけていた。Anglo Americanは世界のダイヤモンド市場で支配的な地位を築いてきたDe Beers も傘下に置く。

同社は、歴史の古い銅山から産出する低純度鉱石の問題などに直面する。生産する一部主要商品の価格下落を受け、Anglo Americanは 2023年の利益が急減し、配当引き下げを余儀なくされた。

Anglo Americanの株価は過去1年で12%下落し、時価総額は270億ポンド(約5兆2200億円)となった。ロンドンおよびシドニー市場に上場するBHPの時価総額は約1490億ドル(約23兆円)。


両社の歴史、概要は下記の通り。

BHP Group Anglo American
歴史 2001年に豪州のBroken Hill Proprietary (BHP)と、南アで大規模に活動する英国のBilitonが合併し、BHP Billitonとして英、豪での二元上場会社となった。

2007年にRio Tinto買収を計画するが、2008年に断念
   
2008/11/27 BHP Billiton、Rio Tinto 買収を断念 

BHP Billitonは2015年にアルミ、石炭、マンガン、ニッケル、銀などの事業を分離し、South 32とした。      
   2014/12/10 BHP Billiton、分離会社の社名は "South32"

2018年11月にBHP Groupに改称(二元上場のまま)

BHPグループは2021年8月、石油・ガス事業を豪 Woodside Petroleumに売却すると発表した。
   
2021/8/19 BHPが石油・ガス事業から脱却

2022年1月 豪州上場のBHPが英国上場のBHP株を買収し、豪州上場に1本化 

主な鉱山資産には、ピルバラの鉄鉱石、エスコンディーダの銅が含まれる。

より多くのバッテリーグレードのニッケルを供給するためにニッケル事業を拡大中で、カナダのジャンセン鉱山の開発を通じてカリ市場にも参入している。

2023年度には銅鉱山会社Oz Mineralsも買収した。

1917年 南アフリカの金塊を採掘・販売するため、Anglo American Corporation of South Africaとして創業

1926年 ダイヤモンドの供給最大手のデビアス(De Beers)の株式を過半数取得。

1928年 現ザンビアのCopperbelt 地域で銅の採掘を開始、1971年終了

1942年 カナダのHudson Bay Mining and Smelting Co.を買収。

1995年 子会社Johannesburg Consolidated Investment Company をAmplats社(白金とダイヤモンド)、新JCI社(その他の鉱業)、Johnic社(工業部門)の3社に分割し、新JCI社とJohnic社の権益を黒人投資家へ譲渡

 白金とダイヤモンドの事業は、後に資本関係を結んでいるDe Beersへ移管

1998年 様々なグループの改編を機にロンドン証券取引所へ上場、社名をAngro American PLCとする。

両社の売上高と構成 

BHP Group
(2023/6)
Anglo American
(2023/12)
売上高 538億ドル 307億ドル
鉄鉱石 248億ドル 80億ドル
160億ドル 74億ドル
石炭 109億ドル
貴金属 67億ドル

ーーーーーー

Anglo Americanの取締役会は4月26日、BHPからの310億ポンド(388億ドル)の買収提案を拒否した。
「提案はAnglo Americanとその将来の見通しを著しく低く評価しているとの結論に至った。また、提案には、提案に固有の不確実性と複雑さ、および実行に伴う重大なリスクを考慮すれば、取締役会が高く魅力的でないと考えている構造が含まれている」としている。

Anglo American は「銅がポートフォリオの最大30%を占めており、銅や他の構造的に魅力的な製品のうまく進展し価値を増加させる成長オプションを有することで、Anglo Americanの株主がこれらのトレンドの全体的な影響が具体化されるにつれて著しい価値の向上に恩恵を受けると信じている」としている。

金属市場においては、ロンドン金属取引所での銅の3か月の終値は4月29日に1メトリックトン当たり10,135.50ドルの歴史的な高値を記録した。2月9日に見られた8,169ドルの安値からほぼ25%増加した。

Anglo Americanの拒否を受け、BHPは買収価額を340億ポンド(426.7億ドル)に引き上げたが、Anglo Americanは5月13日、これを再度拒否した。

Anglo American は5月14日、エネルギー転換の下で需要が高まっている銅事業に集中するため、収益性の低い石炭やニッケル、ダイヤモンド、プラチナなどの事業を売却するか切り離す大胆な合理化計画を発表した。鉄鉱石と銅、つまりエネルギー転換の鍵となる金属に特化したよりシンプルな企業構造を目指す。これらの再編を通じて17億ドルの経費節減が期待できるという。

BHPによる買収提案を拒否し、単独経営を維持するための方針とみられている。

三井物産と英Shell、仏のTotalEnergy が、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油(ADNOC)が新たに進めるLNG輸出事業について、権益取得に向け協議していると 本年4月に報じられた。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

関係者によれば、3社は増設設備の権益に加え、LNGをそこから購入する契約の獲得を目指している。 ただし、ADNOCはプロジェクトを進めるに当たり、これら企業からの投資を必要としておらず、権益を売却しない決定もあり得るという。


これについて三井物産は、これは同社が発表したものではなく、また、現時点で同社として具体的に決定した事実はないとしている。

既存の液化プラントを運営するADNOC LNGは1973年に設立された。ADNOCが70%、三井物産が15%、BPが10%、Totalが5%出資している。

液化プラントはAl Ruways沖合のDas Island にある。既存能力は年産600万トンで、1977年に出荷を開始した。



Das Island 現状

LNGの増設計画では、当初 Fujairahが候補地となったが、その後、キャンセルされた。

2023年5月に新立地としてAl Ruways Industrial Cityが選ばれた。

480万トンが2系列で合計960万トンとなり、第一期と合わせると年産 1560万トンとなる。

2027年スタートの予定。

2024年3月にプラント建設の準備作業となる限定的着工指示(LNTP)を発行し、進展が見られた本年中に同事業に関する最終投資決定(FID)が行われる予定である。



ADNOCは最近、新しいLNG供給契約を次々に締結している。日本の石油資源開発とも(三井物産ではなく)ADNOCが直接契約している。

2024年3月に中国のENN Natural Gasの子会社であるENN LNG (シンガポール) とLNG供給契約を締結した。15年間の合意覚書に基づき、年間最低100万トンのLNGを供給する。

2023年8月17日、石油資源開発(Japex)にLNGを供給する5年間の契約を締結したと述べた。取引額は4億5,000万ドルから5億5,000万ドルと述べたが、LNGの量や出荷開始時期については明らかにしなかった。

2024年3月18日にドイツ国営会社「Securing Energy for Europe(SEFE)」の子会社と、15年間の液化天然ガス(LNG)長期契約を締結した。年間100万トンのLNGが2028年よりドイツに供給される。

2024年5月8日には、ドイツのエネルギー大手EnBWと、年間60万トン、15年間の液化天然ガス(LNG)供給契約を結んだと発表した。


各紙の今回の報道は、第一期の出資比率を前提に、第二期も3社が出資すると想定したものと思われるが、資金面や営業面からみても、今回、3社の出資を必要とする理由はADNOC側にはないと見られる。

米国は5月14日、中国製EV関税などを大幅に引き上げると発表した。

同日発表したFact Sheetで次のように述べている。

バイデン大統領の経済計画は、アメリカの経済的将来と国家安全保障に不可欠な主要セクターで投資を支援し、良好な雇用を創出している。

一方、中国の技術移転、知的財産、革新に関する不公正な貿易慣行は、アメリカの企業と労働者を脅かしている。中国はまた、人工的に低価格の輸出品を世界市場に供給している。

中国の不公正な貿易慣行に対応し、それによって生じる損害を補償するために、バイデン大統領は本日、通商代表に対して、1974年の通商法のセクション301に基づいて中国からの180億ドル相当の輸入品に対する関税を引き上げるよう指示した。

「アメリカの労働者と企業は、公正な競争があれば誰にでも勝てる。しかし長い間、中国政府は公正でない、市場経済ではない手法を使ってきた。中国の強制技術移転と知的財産の窃盗は、技術、インフラ、エネルギー、医療に必要な重要な要素のグローバル生産の70、80、さらには90パーセントを支配しているアメリカの供給チェーンと経済安全保障にとって受け入れがたいリスクを生んでいる。さらに、これらの非市場政策と手法は、中国の過剰生産能力と輸出増加を招き、アメリカの労働者、企業、コミュニティに重大な害を与える恐れがある。

大統領はアメリカの労働者と企業を中国の不公正な貿易慣行から保護するための行動を取る。中国に技術移転、知的財産、革新に関する不公正な貿易慣行を廃止するよう促すため、大統領は鋼鉄、アルミニウム、半導体、電気自動車、バッテリー、重要鉱物、太陽電池、岸壁クレーン、医療製品などの戦略的セクター全般で関税を引き上げるよう指示した。」

これに対し、中国外務省の汪文斌報道官は14日の記者会見で「中国はWTOの協定に違反する一方的な関税の引き上げに一貫して反対しており、あらゆる必要な措置をとりみずからの正当な権益を守っていく」と述べ、対抗措置をとることを示唆した。

New Section 301による中国製品の輸入関税は下記の通り (主にChatGPTによる翻訳)

中国は現在、特に重要鉱物の採掘、加工、精製などの上流ノードにおいて、EVバッテリー供給チェーンの一部セグメントの80%以上を支配している。
重要鉱物の採掘および精製能力の中国集中は、供給チェーンを脆弱にし、国家安全保障とクリーンエネルギー目標を危険にさらす。

米国およびグローバルな耐久性を改善するために、大統領は、十分な国内産業基盤を築くために米国全体に投資してきた。バイパーソンインフラ法、国防生産法、インフレ削減法を通じて、政権は、先進バッテリーおよびバッテリー材料の国内生産能力を拡大するために、約200億ドルを助成金と融資に投資してきた。インフレ削減法には、米国でのバッテリーおよびバッテリー材料の生産への投資を促進するための製造税額控除も含まれている。大統領はまた、American Battery Materials Initiativeを設立した。これにより、バッテリーとその原料の信頼性の高い強固な供給チェーンを確保するために、政府全体のアプローチが動員される。

注)
米財務省は5月3日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際の税優遇の要件を従来案から緩和すると発表した。中国産の鉱物を使ったEVは2025年から優遇の対象外とするとしてきたが、黒鉛など一部鉱物については2027年からとし、メーカーに2年間の猶予期間を設けた。中国産の黒鉛などを使わずEV電池をつくるのは現時点で難しいからで、黒鉛はリチウムイオン電池の負極の中核材料で、供給の7割を中国に依存している。加工や精製の中国依存度も高い。
それにもかかわらず、今回、2026年から黒鉛の関税を引き上げる。

  ブログ 米国、EV税優遇の「中国産で対象外」のルール緩和 

現行 改正 時期 問題点と米国の対応策
Semiconductors 25% 50% 2025 中国の政策は、市場主導の企業による投資排除のリスクを伴う市場シェアの拡大と急速な生産能力拡大につながっている。今後3〜5年で、中国は特定のレガシー半導体ウエハの製造のためにオンラインになるほぼすべての新しい生産能力の約半分を占めると予想される。パンデミック中、供給チェーンの混乱、レガシーチップを含む製品の幅広い価格上昇が、自動車、家電製品、医療機器を含む様々な製品で過度な依存のリスクを強調した。
CHIPS and Science法を通じて、バイデン大統領は、アメリカの半導体製造能力、研究、イノベーション、労働力に約530億ドルを投資している。これにより、アメリカの半導体製造能力が国内での製造能力を低下させた数十年にわたる非投資と海外移転に対抗するのに役立つ。
CHIPS and Science法には、半導体製造ファブリケーション施設の建設、近代化、拡張に直接的なインセンティブとして390億ドル、半導体企業に対する25%の投資税額控除が含まれている。
半導体に対する関税率引き上げは、これらの投資の持続可能性を促進するための重要な初期段階。
電気自動車 25% 100% 2024
中国の広範な補助金と市場原則に反する慣行が、過剰生産の重大なリスクをもたらしている。その結果、2022年から2023年にかけて、中国のEV輸出は70%増加し、他の地域での生産的な投資が危険にさらされている。EVに対する100%の関税率は、中国の不公正な貿易慣行からアメリカの製造業者を保護する。
政府は、電池製造や重要な鉱物の生産に対する事業税額控除、EVの採用に対する消費者税額控除、スマートスタンダード、連邦政府によるEV充電インフラの投資、EVおよび電池製造への供給を支援する助成金を通じて、強力なEV市場の開発を促進している。
電気自動車への関税率の引き上げは、これらの投資と雇用を、不当に価格設定された中国からの輸入から保護する。
バッテリー、バッテリー部品、および重要鉱物
中国は現在、特に重要鉱物の採掘、加工、精製などの上流ノードにおいて、EVバッテリー供給チェーンの一部セグメントの80%以上を支配している。
重要鉱物の採掘および精製能力の中国集中は、供給チェーンを脆弱にし、国家安全保障とクリーンエネルギー目標を危険にさらす。

米国およびグローバルな耐久性を改善するために、大統領は、十分な国内産業基盤を築くために米国全体に投資してきた。バイパーソンインフラ法、国防生産法、インフレ削減法を通じて、政権は、先進バッテリーおよびバッテリー材料の国内生産能力を拡大するために、約200億ドルを助成金と融資に投資してきた。インフレ削減法には、米国でのバッテリーおよびバッテリー材料の生産への投資を促進するための製造税額控除も含まれている。大統領はまた、American Battery Materials Initiativeを設立した。これにより、バッテリーとその原料の信頼性の高い強固な供給チェーンを確保するために、政府全体のアプローチが動員される。

注)
米財務省は5月3日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際の税優遇の要件を従来案から緩和すると発表した。中国産の鉱物を使ったEVは2025年から優遇の対象外とするとしてきたが、黒鉛など一部鉱物については2027年からとし、メーカーに2年間の猶予期間を設けた。中国産の黒鉛などを使わずEV電池をつくるのは現時点で難しいからで、黒鉛はリチウムイオン電池の負極の中核材料で、供給の7割を中国に依存している。加工や精製の中国依存度も高い。
それにもかかわらず、今回、2026年から黒鉛の関税を引き上げる。
  ブログ 米国、EV税優遇の「中国産で対象外」のルール緩和 

リチウムイオンEVバッテリー 7.5% 25% 2024
同 非EVバッテリー 7.5% 25% 2026
バッテリー部品 7.5% 25% 2024
天然黒鉛と永久磁石 0% 25% 2026
太陽電池
(モジュールに組み立てられているかどうかにかかわらず)
25% 50% 2024
この関税増加は、中国の政策に基づく過剰生産能力に対抗し、価格を抑制し、中国以外のソーラー容量の開発を阻害していることを防ぐもの。中国は不公正な手法を使い、グローバルソーラー供給チェーンの一部分で80〜90%以上を支配しようとしており、その現状維持を図っている。中国の政策と市場原則に反する慣行は、人工的に安価なソーラーモジュールとパネルを世界市場に氾濫させ、中国以外のソーラー製造への投資を阻害している。

政権は、米国のソーラー供給チェーンに歴史的な投資を行っており、これはソーラーセル技術の開発を支援した初期の米国政府による研究開発に基づいている。インフレ削減法は、ポリシリコン、ウエハ、セル、モジュール、裏シート材料を含むソーラー部品に対する供給側税制のインセンティブを提供し、ユーティリティ規模および住宅用ソーラーエネルギープロジェクトの展開を支援する税額控除、補助金、融資プログラムを提供している。大統領の「アメリカへの投資」政策の結果、ソーラー製造業者は既に、2030年までに年間数百万の家庭用パネルを供給するための米国製造能力を8倍に増やすことを計画しており、その投資額はすでに約170億ドルに上ることが発表されている。

岸壁クレーン(船から岸壁) 0% 25% 2024
米国政府は、信頼できるパートナーと共に岸壁クレーンを生産するための米国の産業能力を再構築することで、米国市民に対して引き続き成果を提供している。岸壁クレーンにかかる25%の関税率は、中国の不公正な貿易慣行によって市場が過度に集中している状況から米国製造業者を保護するのに役立つ。岸壁クレーンは、米国内外の重要な商品の連続した移動と流れを可能にする基盤となる重要なインフラで、政府は、米国の供給チェーンに影響を与える可能性のあるリスクを緩和するための措置を講じている。この措置は、大統領の「アメリカへの投資」政策を通じて米国の港湾インフラへの投資を進める取り組みに基づいている。この港湾安全イニシアチブには、米国に岸壁クレーン製造能力を戻すことが含まれており、米国の供給チェーンの安全を支えることに加えて、米国および世界中の港湾がクレーンやその他の重機を調達する際に信頼できるベンダーを利用することを奨励している。
医療製品
これらの関税率の引き上げは、COVID-19パンデミック対応に不可欠であり、国内のすべての病院で毎日使用されている医療用品の強力な国内産業基盤を支え、維持するのに役立つ。連邦政府と民間セクターは、これらおよび他の医療製品の国内製造を構築するために大規模な投資を行っており、アメリカの医療従事者と患者が必要なときに重要な医療製品にアクセスできるようにしている。アメリカ企業は、市場に投入された安価な中国製品と競争するのに苦労しており、その品質が非常に低い場合もあり、医療従事者や患者の安全に懸念を引き起こす可能性がある。

今日の発表は、バイデン大統領が常にアメリカの労働者を支援するという決意を反映している。海外からの反競争的で不公正な慣行に直面した際には、大統領はアメリカの労働者と産業を保護するために必要なすべての手段を展開する。

注射器と針 0% 50% 2024
呼吸器およびフェイスマスクなど 0~7.5% 25% 2024
ラバー製医療用および手術用手袋 7.5% 25% 2026

韓国ハンファグループ傘下のHanwha Q Cellsは、2024年4月初めにジョージア州 Cartersville工場での太陽電池モジュールの生産を開始した。

すべて米国製のingots、wafers、cells、modulesを生産する"Solar Hub" で、2024年末にフル稼働すると、1日当たりのパネル生産量は4万6,700枚以上、年間8.4GWの生産能力を持つことになる。同社によると、これは130万世帯分の電力を賄う量のパネル生産能力に相当する。

原料であるシリコン(ケイ素)を加工したものが「Ingot」、これを薄く切ったものが「wafer」、太陽電池としての機能を持つ最小の単位を「Cell」と呼び、セルを複数組み合わせて屋外で利用できるように支持板(ガラス板など)、裏面材(バックシートなど)、アルミ枠などで保護・強化したものが「Module」 である。

Dalton工場は最終段階のModule組み立てだけであるが、Cartersvilleでは元のIngotから最終のModule組み立てまで、すべて米国製である。

Hanwha Global 部門は2022年3月、米国のポリシリコン生産会社 REC Silicon の12%を買収することを決めたと発表した。同日、Hanwha SolutionもREC Siliconの持分4.67%を追加購入したと明らかにした。これまでグループで16.67%を保有していたが、今回の取引で、筆頭株主となった。

RECシリコンはノルウェー・オスロ取引所に上場されるポリシリコン生産会社で、米国にだけ工場2つを保有している。ワシントン州のモーゼスレイク工場(年産 1万6000トン) は水力発電基盤のエコエネルギーを活用し、カーボン・フットプリントがほとんど残らない「クリーンポリシリコン」を生産する。モンタナ州ビュート工場では半導体向けポリシリコンを年間 2000t 生産する。

数年間休眠状態だったモーゼスレイク工場は、2022年4月に復活した。

RECシリコンが製造したポリシリコンは、ジョージア州カーターズビルのハンファQセルズ新工場で利用される。

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Hanwha Q Cellsは2023年1月、米国の太陽光発電史上最大といわれる25億ドル以上を投じるジョージア州Daltonの太陽電池モジュール製造施設拡大を発表した。

当初の能力1.7GWに対し、1.4GWと2GWの増設を行い、合計能力を5.1GWとした。1日当たり3万枚以上のパネルを生産している。

計画の一環として、アトランタ北西郊外のCartersvilleに新たな製造施設の建設を発表し、バイデン政権が進める気候変動対策に合致した投資として賞賛されていた。

同社の能力推移は下図の通り。

Hanwha Q Cellsは、米政府のインフレ抑制法(IRA)によって税額控除の恩恵も受ける。Cartersville工場だけで年内に1億4000万ドル (約1860億ウォン)の税額控除を受けることになる。来年、計画通り全ての製品を作り始めれば、税額控除規模は1兆ウォンに増える。

Q Cellsは2024年1月8日、マイクロソフトと戦略的提携を結び、8年間で12GWの太陽電池モジュールと設計・調達・建設(EPC)サービスを供給すると発表していた。マイクロソフト向け太陽電池モジュールは、今回生産が開始されたCartersville工場から供給する予定 。


Hanwha Q Cells はマイクロソフトとの8年間の戦略的アライアンスを発表した。この提携により、マイクロソフト社は世界最大級の再生可能エネルギーの購入企業となる。

Q Cells は、これまでで最大規模のモジュールおよび設計・調達・建設(EPC)サービスに関する協定を結び、8年間で12GWの太陽電池モジュールとEPCサービスをマイクロソフト社に供給する。この協定には、2023年1月に発表された2.5GWの太陽電池モジュールとEPCサービスに関する取り決めも含まれている。

両社は世界的なクリーンエネルギー経済の推進を目指している。マイクロソフトは、2025年までに電力消費量の100%を再生可能エネルギーで賄うことを宣言しており、ハンファQセルズは、完全な米国製の太陽光発電サプライチェーンとエネルギーのワンストップソリューションを提供することで、マイクロソフトの目標達成をサポートする。

また、Q Cellsは本年2月、太陽電池のリサイクル会社のSolar Cycleと提携、Q Cellsが米国で廃棄、所有、設置した太陽電池パネルをリサイクルすると発表している。

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ドイツの太陽電池メーカー大手のQ.Cellsは2012年4月2日、法的整理の手続きを申請すると発表した。

太陽電池ブームを追い風に2008年に世界シェア首位に立ったが、中国メーカーなどとの価格競争が激化し、赤字体質に陥っていた。

2012/4/6 太陽電池大手 Q-Cells 破綻

Q.Cellsは2012年8月26日、韓国のHanwha Groupから買収提案を受けたと発表した。

Q.Cells は8月29日、債権者集会で韓国のHanwha Groupへの事業売却が、参加者の過半数によって承認されたことを発表した。
従業員約1,550人のうち、1,250人を
Hanwha Groupが引き受け、また、Q-Cells の事業の大部分についてもHanwha Groupに移管される。

買収価格は、営業債務の引き受け部分(1〜5億ユーロ相当)と、キャッシュによって支払われる部分(数千万ユーロ)から成り、キャッシュ部分の金額は今後、Hanwha Groupが引き受ける追加債務の金額によって変動する。

新聞情報では、買収額は4千万ユーロで、2億74百万ユーロの負債も引き継ぐ。

2012年10月24日、買収が完了し、Hanwha Q.Cells GmbHが設立された。

2012/11/27 倒産したドイツの太陽光発電メーカーQ. Cells、韓国ハンファグループのHanwha Q.CELLSとして再生 

アルミ産業が集積する富山県高岡市で、太陽光発電の廃棄パネルで水素発電する事業が始まる。パネルからアルミを抽出する企業グループと、アルミを化学反応させて水素を取り出し火力発電する事業者が連携する。

高岡市は官民連携で地域内アルミリサイクル事業を進めており、2023年に環境省の「脱炭素先行地域」に指定された。

同事業の目玉は①リサイクル業のハリタ金属(高岡市)と三協立山による太陽光の廃棄パネルからアルミを抽出して再生する取り組みと、②アルハイテック(高岡市)が手掛けるアルミ水素発電の2つ。
先進的で効果の高い取り組みを実現することで上限50億円の交付金が得られ、双方の取り組みの相乗効果を訴求する。

2030年代に廃棄パネルの大量発生が見込まれるなか、再生可能エネルギーの利用比率を高めたい電力事業者に売り込む。


廃棄パネルの処理ではハリタ金属が保有する大型ラインが中核的な役割を担う。自動車スクラップ1台分をまるごと粉砕でき、1時間に1000枚(20トン)以上処理する能力がある。

アルハイテックは、アルミを有効活用した水素社会づくりを目指す「北陸アルミ水素将来ビジョン」を掲げ、工場や家庭からのアルミ廃材全般からアルミ水素発電を行う取り組みを進めており、今回、廃棄パネルの処理を行うハリタ金属/三協立山と提携する。



アルミ系廃棄物を処理して水素発電をするまでには大きく4つのステップがある。

①パルパー型分離機でアルミ系廃棄物をパルプとプラスチック付きアルミに分離する。

アルミ付き廃棄物から、水を用いて紙を分離する装置。
基本的には排水を必要としない構造で、水を循環させ且つ少ない電気エネルギーでの運転が可能
パルパー底面の特殊スクリーンを通過したパルプ繊維を回収するので、繊維を切ることがほとんどない良質な繊維が再利用できる。

②次に、乾留炉でプラスチック付きアルミを乾留してプラスチックを分解し、アルミを取り出す。

アルハイテックが開発した乾留炉はパルパー型分離機で回収された樹脂部分を熱処理により分解除去し、不純物の少ないアルミを回収する。
同社の特許技術により600℃前後の温度で付着するプラスチックを自燃させることよる運転で分離を可能にした。これにより、純度が高いアルミを回収することができる。

③続いて、水素製造装置で、繰り返し使える特殊なアルカリ系溶液とアルミを反応させて高純度の水素を発生させる。

アルハイテックが開発した水素製造装置は水素ではなく、アルミを輸送・貯蔵し、必要な時に水素を製造する。
また、アルハイテックの水素製造装置は小型化が容易なため、施設の規模感に合わせて柔軟に対応可能。
独自開発した特殊なアルカリ性反応液を用いて水素と水酸化アルミ(難燃剤として高価で売れる)を製造する。従来品よりも高効率・高反応速度で水素を得ることができる。
この反応液は約100回繰り返し使用することができる。

④最後に、その水素を燃料電池に送って発電に利用する。


水素製造装置は、アルミと反応液を混ぜることで常温、常圧で水素を生成し、同時に資源として使える水酸化アルミニウムを取り出すことができ
る。

通常、反応液に使われる水酸化ナトリウム水溶液は、使うたびに消耗して化学反応の速度・効率が落ちが、アルハイテックではバルセロナ自治大学の基礎研究を元に、アルカリ水溶液に触媒を加えた独自の反応液を開発し、常温で100回以上繰り返し使用できる画期的なものに改良し

また、この反応液は触媒の効果により、劇物である水酸化ナトリウムの含有量を最小限に抑えながらも効率的に水素を発生させることができる。そのため、劇物の対象外となり、取り扱いやすいという利点もある。

反応槽は二重部屋構造を採用して、水素発生中にアルミを連続的に投入できるようにし、供給を自動で制御することも可能で動作確認では、9kgのアルミから1kgの水素と26kgの水酸化アルミニウムを生成できた。

アルミ付き廃棄物を用いた水素発生における反応液の開発


2023年にアルハイテックが環境省の助成を受けて実施した事業化調査の結果では、320キロワット規模(一般家庭250軒分)では年間600トンのアルミ原料が必要になる。調達価格が1キロ100円未満で採算が取れる。
高岡市には年間100トン以上のアルミスクラップを排出する工場も多い。高純度のアルミの市況は同200円以上だが、切りくずなどでは100円以下もある。切りくずは溶融用の溶液になじみやすく発電効率も高まる。

一方で売電価格の動向が事業展開のカギを握る。同社では、アルミ水素発電の売電価格8〜30円(1キロワット時)程度で事業化を想定する。


アルハイテックは工場や家庭などから排出されるアルミを回収し、水素を作り出すことでエネルギーや資源に変える「アルミ水素エネルギー社会システム」の実現を目指している。

2018年8月には、システムを地域から北陸全体へと広げることを目指す「北陸アルミ水素将来ビジョン検討会議」が発足その後、参加を表明した北陸地域の約80機関による検討会議が行われ、3回目に座長の川口教授から、「アルミ水素エネルギー社会システム」の将来像や2040年頃までのロードマップをわかりやすく示した「北陸アルミ水素将来ビジョン」が発表され

参考資料 NEDO Web Magazine クリーンなエネルギーを地産地消する水素発電システムを開発

Shellは5月8日、シンガポールのEnergy and Chemicals Park をインドネシアのChandra Asri とスイスのGlencoreのJVのCAPGC Pte. Ltd.に売却する契約に合意に達したと発表した。

Chandra Asri はインドネシアの化学・インフラソリューション企業
Glencoreはスイス・バールに本社を置く 世界最大のグローバル多角的天然資源企業の1つ

Chandra AsriがJVのマジョリティを持つ。

これは、SHELLのChemicals and Products businessを高機能化し、排出を減らしつつ、より多くの価値を生み出すという同社のコミットメントを示すものとしている。

買収したChandra Asri とGlencoreのJVのCAPGC Pte. Ltd.によると、入札で買収したという。買収金額は発表されていない。2024年末迄に取引を完了させる予定。


発表内容は下記の通り。

1.売却対象のShell Energy and Chemicals Park Singapore はJurong島とBukom島の石油精製・石油化学資産である。

Jurong島は、元の7つの島(Ayer Chawan、Ayer Merbau、Merlimau、Pesek、Pesek Kecil、Sakra、Seraya)とWestern Islands を一つにしたもの

メルバウ島にはShellが出資するが、今回の売却対象外のPCS、TPCがある。
セラヤ島とサクラ島には売却対象のPO/SM設備が、またメルバウ島には同じく売却対象のEO、EGプラント(JV)がある。

Bukom島はJurong島の南東にある島で、Shell のSM/PO設備があるSeraya島から5kmのパイプラインで繋がっている。

Bukom島には、Shell が所有・運営する日量237千バレルの製油所と、年産110万トンのエチレンクラッカーがある。


2003年1月、住友化学 とShell はシンガポールでの新たなエチレンプラントの建設についてFSを開始する旨の契約を締結した。

シェルの日量50万バレル(当時)のリファイナリーがあるブコム島にエチレンプラントを建設、パイプラインで ジュロン島に送り、住友化学が誘導品を増設する計画であった。

2004年5月、住友化学はサウジ・ラービグ計画に参加する覚書を締結、これにより、ブコム島でのエチレン計画から撤退することとなった。

シェルは住友化学の離脱後もシンガポールの経済開発局とともに本計画を進めることとし、2010年3月に下記能力でスタートした。その後、増設。

エチレン 800 千トン
プロピレン 450
べンゼン 230
ブタジエン 155

2013/6/7 ExxonMobil のシンガポール石化2期計画完成 に記載


2.Jurong島にはShell 出資の下記のプラントがある。このうち、PSCとTPCは今回の売却対象外である。これらにはShell単独ではなく、Qatarとの50/50JVとして出資している。

社名 Petrochemical Corp. of Singapore (PCS)   今回売却の対象外
場所 Merbau島
株主 日本シンガポール石油化学(JSPC)   50%
QPI and Shell Petrochemicals (Singapore) 50% (Shell 50%/Qatar 50%)  
  
カタール石油、シンガポールのPCS、TPCに出資
能力 エチレン 1,080千トン(①400+②400+増強)

社名 The Polyolefin Company (Singapore) (TPC)  今回売却の対象外
場所 Merbau島
日本シンガポールポリオレフィン(NSPC) 70%
QPI and Shell Petrochemicals (Singapore) 30% (Shell 50%/Qatar 50%)
能力 LDPE  250千トン(145+②64+増強)
LLDPE 150千トン
②114+増強)
PP  
450千トン(①175+②114+増強)

LLDPE設備をPPに転換 (PP +200千トン→650千トン)
 原料
プロピレンはPCSで新設のメタセシス法プラントから供給

 以下は今回の売却対象。ただし、EO、EGは日本勢とのJVであり、その同意が必要と思われる。

社名 Seraya Chemicals Singapore     Ellba Eastern
場所 Seraya島 Sakra島
能力 SM 370千トン
PO 160千トン
Polyols 78千トン
PG 40千トン
SM 550千トン
PO 250千トン

SM/PO併産設備

社名 Ethylene Glycols (Singapore)  
場所 Merbau島
株主 日本シンガポールEG 30%  (*住友化学、三菱化学、日本触媒ほか)
シェルグループ  
 
70%
能力 EO    45千トン
EG   122千トン
誘導品 30千トン

社名 Ethoxylates Manufacturing Pte Ltd  
場所 Merbau島
株主 Ecogreen Oleochemicals (Singapore) 
原料のEO/EGを売却するため、Shellが買い取って、原料とともに売却すると思われる。 
能力 Ethoxylates 18千トン


3. 売却プラントの従業員の雇用は維持する。

4. ShellとCAPGCは合わせて原料供給契約、製品引取契約等を締結する。

EU加盟国は5月8日、凍結したロシア資産の利子をウクライナ支援に使うことで大筋合意した。武器の調達などを支援するため7月にも支払いを始める。

西側諸国は2022年2月のウクライナ侵略の開始直後にロシア中央銀行の資産を凍結していた。総額3000億ドル(約46兆円)の3分の2はEU域内にある。資産を保管するベルギーの 国際決済機関Euroclear が得る年30億ユーロ(約5000億円)の利子収入を活用する。

米欧カナダの6カ国とEUは2022年2月26日、ロシアに追加制裁する方針を表明した。ロシアの中央銀行に初めて制裁を科し、ロシアの外貨準備を使えなくして通貨ルーブルの防衛を困難にする狙い。岸田文雄首相は2月27日、米欧の制裁への参加を表明した。

米英独仏イタリア、カナダの6カ国と欧州委員会は同日、ロシアの大手銀行などを国際的な資金決済網 SWIFTから排除する追加の金融制裁を科すことで合意した。数日中に実行する。

ロシアはドルやユーロなどの外貨準備をおよそ6300億ドル、日本円でおよそ73兆円保有していて、ウクライナへの軍事侵攻や欧米の経済制裁を受けて急落する通貨ルーブルを外貨を使って買い支える姿勢を示してきた。

今回の追加制裁はこれを阻止する狙いで、日本やヨーロッパ各国などとも連携してロシア経済に打撃を与える。

ただ今回、エネルギー関連の取り引きは例外的に許可する制度を設けるとしていて、ロシアに対して実効性を伴う形で強い
圧力をかけられるかが焦点になる。

2022/2/28 ロシア追加制裁、国際決済網から排除 

ユーロクリアから半年ごとにEUの基金に入れ、9割をウクライナのための武器購入、1割を復興に回す想定。

ロシア中銀資産の活用は22年から主要7カ国(G7)やEUで議論してきた。EUの合意は具体的な活用の第一歩といえるが、活用するのは利子部分にとどめ、資産全体の没収などには踏み込まなかった。

ロシア国内には欧州企業の資産が多く残る。国際法への抵触に加え、ロシアによる報復を懸念したためとみられる。

国際法上、国家資産は原則没収できない。

今回、ロシア資産を例外とする論拠にしたのは国連の国際法委員会が2001年にまとめた文書で、国際法の権威が集まる同委は2001年に草案を採択し、違法行為によって特別に影響を受ける国は加害国の責任を追及できると記した。
米国はこれに基づき、予算の面などで影響を受けるG7も対抗措置が可能だと主張した。

英国は国際法に抵触する懸念から資産没収に慎重な立場だったが、2023年11月にキャメロン外相が就任してから推進派に転じた。

ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアの凍結資産そのものの活用を求めている。資産没収には各国の国内手続きも必要になる。

独仏は没収できるとの米国の解釈に真っ向から反論、交戦状態にない第三国の資産を没収すれば国際法違反の悪しき前例になると訴える。

国営ロシア通信は2024年1月21日、西側諸国がロシアの資産を没収してウクライナ復興に充当し、ロシアが報復に動いた場合、西側が失う資産と投資の規模は少なくとも2880億ドルに上るとの試算結果を伝えた。EU加盟国の資産はこの8割の2233億ドルを占める。ロシアは、西側が強硬措置を進めれば、ロシア側にも没収できる米国と欧州諸国の資産のリストがあると警告している。


国営ロシア通信によると、西側諸国がロシア国内に保有する資産は次の通り。

EU  2233億ドル(キプロス 983、オランダ 501、ドイツ 173、フランス 166、イタリア 129、その他EU 281)
英国  189億ドル
米国  96億ドル
日本......46億ドル
その他 322億ドル

EUに没収を提起してきた米国では、サミットまでに合意できる折衷案として資産の将来の利子を担保にした債券発行や融資の構想が浮上している。


神戸大学は2024年4月30日、大学院工学研究科の森田健太助教・丸山達生教授と、藤田医科大学病院、名古屋市立大学、藤田医科大学、神戸大学大学院医学研究科の研究グループが、水中で「塊」状に凝集して働く酵素阻害剤を発見したと発表した。


近年、劇症型溶連菌感染症の症例が増えている。発症すると急激に症状が悪化して手足の壊死や多臓器不全を起こし、30%が死に至ることから、「人食いバクテリア感染症」とも呼ばれている。

溶連菌はDNA分解酵素(DNase)を分泌してヒトの白血球が持つ感染防御機構を破壊することで感染を有利に進める。

DNaseを阻害すれば劇症型溶連菌感染症の治療につながると思われるが、これまでに人体に投与可能なDNase阻害剤は見つかっていなかった。

今回発見した水中で「塊」状に凝集して働く酵素阻害剤は、溶連菌感染症治療に役立つ可能性があり、今後、この現象を詳細に解明することでこれまでとは全く異なる視点での酵素阻害剤開発および感染症治療への応用が期待される。

この研究成果は、4月16日に、米国化学会が発行する「JACS Au」に掲載された。 



研究グループではMannan 007 (Mn007)という分子がDNA分解酵素(DNase)を阻害することを発見した。調査したところ、Mn007は水中で凝集して初めてDNaseを阻害する 。

一方、DNase以外の酵素にMn007凝集体を作用させても、酵素の阻害は起こらない。つまり、Mn007凝集体はDNase特異的な阻害剤であることが分かった。これまで、酵素阻害剤は対象の酵素と1対1で反応することが一般的であり、特定の酵素だけを阻害する低分子の凝集体は世界初の発見。


溶連菌は、DNA分解酵素(DNase)を分泌し、ヒトの白血球が持つ感染防御機構を破壊し、感染させる。

 

今回発見した酵素阻害剤 Mn007は、
  
  単独ではDNA分解酵素を阻害しない。
  DNase以外の酵素は阻害しない。

  水中で凝集すると、初めて、DNA分解酵素を阻害する。(DNase以外の酵素は阻害しない)

次に研究グループは、Mn007が劇症型溶連菌感染症の治療薬になり得るかどうかを検討した。

白血球を含むヒトの血液にMn007と溶連菌を加え、しばらく溶連菌を培養した後、溶連菌の数を数えたところ、Mn007を加えた血液中では溶連菌は増殖しにくいということがわか った。
Mn007凝集体が溶連菌の分泌するDNaseを阻害し、白血球の持つ感染防御機構が正しく働いたためだと考えられる。

Mn007の濃度が上がるにしたがってMn007の凝集体が増え、それに伴いDNaseが阻害されていることがわかる。

研究グループは、今後の展開として、病気の原因となっている様々な酵素に対してMn007のような凝集性の酵素阻害剤を個別にデザインすることで治療薬開発ができるようになるかもしれ ないとしている。

米Intel と、半導体製造を中心にサプライチェーンを繋ぐ世界的な業界団体SEMI の日本支部、及びオムロンなど国内14社と三菱総合研究所は5月7日、半導体製造後工程であるパッケージング・アセンブリーテスト工程トランスフォーメーションおよび完全自動化目的とする半導体後工程自動化標準術研究組合SATASを、416設立したと発表した。

後工程自動化必要技術およびオープン業界標準仕様作成、装置開発実装統合されたイロットライン装置動作検証い、2028 実用目指す。事業れた知見技術既存および新規工場導入・実装していくこと実用化おける重要目標なる。

従来半導体製造トランスフォーメーションし、より効率的かつサスティナブル柔軟サプライチェーン実現目指す。

後工程は多様な部品や製品を手作業で組み立てることが多く、労働力が豊富な中国や東南アジアに工場が集中しているが、人件費の高い日米に拠点を構えるには、生産ラインを無人化する技術が必要だと判断した。

インテルが装置や素材メーカーに共同開発を呼びかけた。技術力を持つ日本の装置や素材メーカーと連携する狙いで、今後も参画企業を募る。

日米連携には日本や米国で半導体を一貫生産できるようにし、供給網が寸断するリスクを軽減させる狙いがある。

日本国内では半導体の技術者は不足感が強い。生産を自動化することで、後工程を担う人員確保の負担を減らす。後工程に関する技術の標準化を進め、複数の製造装置や検査装置、搬送装置をシステムで一括管理したり制御したりできるようにする。

経産省も最大数百億円の支援をする見通し。

参加メーカーと各社の専門分野は下図の通り。



参考

米アリゾナ州のKatie (Kathleen )Hobbs 知事(民主党)は2024年5月2日、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁じる1864年の州法を廃止する法案に署名、同法が成立した。7月までに州議会が閉会した後、90日後に発効する。

州最高裁が1864年の中絶禁止法の有効性を認め、早ければ6月下旬に施行される可能性があるため、 この州法を正式に廃止することにしたもの。

これまでの経緯は下記の通り。

アリゾナ州では、アリゾナ州が州になる前の1864年に人工妊娠中絶禁止法を制定した。(アリゾナ州は1912年に米国で48番目の州に昇格した。)

受精の時点から中絶を禁止するもので、レイプや近親姦の場合でも例外とならない。

母体の生命が危険な場合を除き、中絶に禁錮2~5年の罰を科せる。

1973年1月22日、Roe v. Wade事件に対する最高裁判決が出た。テキサス州の「妊娠中絶を原則禁止」とした中絶法を7対2で違憲とする判決を下した。これにより、アリゾナ州の人工妊娠中絶禁止法は無効とされた。

中絶は憲法に保障された権利との判断を示し、胎児が子宮の外で生きることができるようになるまでなら中絶は認められるとした。
現在は「妊娠22~24週ごろよりも前」がその基準と考えられている。

2022年6月24日、米連邦最高裁は1973年の「Roe v. Wade判決」を覆す判断を下した。

「中絶は深い道徳上の問題だ。中絶の権利は憲法に明記されておらず、歴史や伝統に根ざしているわけでもない。憲法は州が中絶を規制したり、禁止したりすることを禁じていない」と結論づけた。

保守派判事5人が支持、リベラル派判事3人が反対し、ロバーツ長官も中絶が妊娠中期まで認められることに根拠がないとして州法の合憲性を認めた。(但し、中絶を選ぶ権利まで取り消すことには反対した。)

問題となったミシシッピー州法については「胎児の生命を保護することなど州側の正当な利益があり、州法には合理的な根拠がある」と判断。州法を「違憲だ」とした連邦控訴裁(高裁)の判決を破棄し、審理を差し戻した。

中絶の権利に対する憲法の保障がなくなり、全米50州の26州で中絶が事実上禁止または大幅に制限される見込み。

米最高裁の中絶権判例を覆す意見草案 付記

この結果、州ごとに中絶権が決定できるようになった。

アリゾナ州では2022年、母体の生命が危険な場合を除き、妊娠15週以降の中絶を禁止する州法が成立した。ただしこの法律でも、レイプや近親姦の場合は例外とならない。

アリゾナ州最高裁判所は2024年4月9日、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁止する160年前の州法を有効とする判断を示した。

160年前の州法は1973年のRoe vs Wade 判決で死文化していたが、2022年に Roe vs Wade判決が覆されたことを受け、州最高裁は昔の禁止法が再び施行可能になったとの判断を下したもの。

今回の判決により、中絶が可能な州内のすべてのクリニックが閉鎖される可能性がある。影響は女性の健康と、今秋の大統領選挙にも及びうる。

そのため、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁じる同州の1864年の法律を廃止する法案が州議会に提出された。中絶禁止法は強姦や近親相姦による妊娠も含めて中絶を禁じており、バイデン大統領は生殖の自由を制限すると批判。トランプ前大統領も「行き過ぎだ」と指摘していた。

アリゾナ州下院は2024年4月24日、共和党議員3人が法案賛成に回り、賛成32、反対28でこの法案を可決した。

アリゾナ州上院は2024年5月1日、賛成16、反対14の賛成多数で可決された。

7月までに州議会が閉会した後、90日後に発効する。

アリゾナ州では2022年、母体の生命が危険な場合を除き、妊娠15週以降の中絶を禁止する州法が成立しており、今後はこの法律が有効となる。


同州では本年11月に、妊娠24週までの中絶について是非を問う住民投票が行われる予定で、その結果によってはさらに法律が変わる可能性がある。


2013年に豪州のOricaなどが設立したMCi ( Mineral Carbonation International )は4月10日、OricaのKooragang島(ニューサウスウェールズ州)のアンモニア製造工場の隣にCCU施設Myrtle(炭酸塩プラント)の建設を開始したと発表した。

CCU技術(Carbon dioxide Capture and Utilization)は二酸化炭素(CO2)を回収して製品開発などに生かす技術で、具体的には、製鉄工程で生じる副産物(スラグ)や火力発電所で生じる石炭灰、その他カルシウムやマグネシウムを含む様々な物質(廃コンクリートなど)にCO2を反応させることで、建設部門向けのさまざまな炭酸塩製品を製造する。



Myrtleは、Oricaのアンモニア工場から回収される年間1,000トン以上のCO2を利用し、約10,000トンの建材を生産 する。2025年初めまでに完成、就役、操業開始される予定としている。

MCiはMyrtle建設のためにオーストラリア政府のCCUS Development Fund から1,460万オーストラリアドル(約12億円)を確保している。

オーストラリア政府は2021年3月にCCUS開発ファンド(Carbon Capture, Use and Storage Development Fund)を設立し、最大5,000万豪ドル(約41億5,000万円、1豪ドル=83円換算)の公募型資金を公表した。

対象とするプロジェクトは、オーストラリア国内で実施されるパイロット規模以上のもので、将来的に地域のCCSハブに接続可能であるものとしており、2025年6月末までに完了することも要件となっている。

日本から伊藤忠商事とみずほ銀行に加え、三井住友信託銀行が同社に投資している。

伊藤忠商事は、2021年8月にMCiへの出資を実施した。

MCiの技術は半永久的にCO2を固定化し、且つ有用な成果物を創出できることから、世界的な脱炭素の流れを加速させる技術として産業界を中心に幅広く注目されている。また、MCi社は豪州政府から14.6百万豪ドル(約12億円)の本技術の更なる研究・開発に向けた基金交付を受けており、豪州国内で本技術への関心・期待が高まっていることが窺える。
伊藤忠商事はMCi社技術の日本国内での展開を図るべく、2021年3月に同社とMOUを締結した。その後早期に実用化できる可能性があること、対面業界である鉄鋼業界・電力業界などの顧客からの本技術への関心が非常に高いことなどを総合的に鑑み、同社への出資に至った。

本出資に伴い、本技術の日本向け展開・プロモーションについては伊藤忠商事が独占的に行うこととなる。

みずほ銀行は2023年3月31日にMCi Carbon との間で、みずほ銀行によるMCiへのUSD5Mの出資を目的に、株式引受契約を締結し、出資を行った。みずほ銀行は、環境・社会の持続性向上に資する領域(トランジション領域)における顧客の挑戦をサポートすべく、シード(技術の種)やアーリーステージ(初期段階)の段階から、トランジション領域にて顧客が関与するプロジェクト等に戦略的に出資することで、顧客と機会とリスクを共有し、広く環境・社会の持続性向上に資する社会的価値を共創していくことを目指している。

三井住友信託銀行は2024年3月12日、「社会課題解決に向けた挑戦や取り組みを資金面からサポートすることを目的とする」インパクトエクイティ投資として出資した。増資による資金は、当該量産化プラントの建設資金として活用される。

米財務省は5月3日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際の税優遇の要件を従来案から緩和すると発表した。中国産の鉱物を使ったEVは2025年から優遇の対象外とするとしてきたが、黒鉛など一部鉱物については2027年からとし、メーカーに2年間の猶予期間を設けた。

ーーー

バイデン米大統領は2022年8月16日にインフレ対策法案:Inflation Reduction Act of 2022 に署名し、法案は成立した。大統領は「気候変動に関するこれまでで最大の前進だ」と強調した。

エネルギーコスト引き下げ、クリーンな生産、2030年までにカーボン排出の40%削減を狙い、3,690億ドルを投じる。

新法では、

低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に1台当たり最大7500ドルの税控除を受けられる。

既存のEV減税は適用対象を自動車メーカーごとに20万台と定めていたが、台数の上限を撤廃する。  

ただ、EV減税の対象となる新車について、北米地域での最終組み立てを義務付けた。さらにEV用電池の原材料である重要鉱物の調達先を、米国か、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に事実上制限する。世界シェアの高い中国製品をサプライチェーン(供給網)から排除する狙い。

主な要件(控除額は個人の場合)
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -
電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること

2023年3月28日に「重要鉱物のサプライチェーンの強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(日米重要鉱物サプライチェーン強化協定:日米CMA)が署名され、即日発効となった。米国は、同協定をインフレ抑制法(IRA)上のFTAとみなす。

2023
2024
2025
2026
2027ー
40%
50%
60%
70%
80%

2025年からは、「懸念される海外企業」が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならない。→ 2027年から

どちらか
必須
3,750ドル
電池用部品の50%が北米で製造されていること
2024-25
2026
2027
2028
2029-
60%
70%
80%
90%
100%

2024年から、「懸念される海外企業」が製造または組み立てたバッテリー部品を含んではならない。

3,750ドル

「懸念される海外企業」の定義が明らかでなかったが、財務省は2023年12月1日、「懸念される海外企業」と見なされるエンティティを定義する提案ガイダンスを公表した。
 

それによると、「懸念される海外企業」は、懸念国(中国、ロシア、イラン、北朝鮮)の企業 及びその企業が25%以上所有、またはコントロールする企業とされる。

2023/12/4 米政府、EV税額控除で中国の影響排除

ルール通りであれば、2025年からは中国が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならないこととなる。

米財務省は5月3日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際の税優遇の要件を従来案から緩和すると発表した。中国産の鉱物を使ったEVは2025年から優遇の対象外とするとしてきたが、黒鉛など一部鉱物については2027年からとし、メーカーに2年間の猶予期間を設けた。 (ルール上は「黒鉛など一部鉱物」との規定はない。)

中国産の黒鉛などを使わずEV電池をつくるのは現時点で難しいからで、黒鉛はリチウムイオン電池の負極の中核材料で、供給の7割を中国に依存している。加工や精製の中国依存度も高い。

米国でEV販売・生産を手がける自動車メーカーから、代替調達先の確保には時間が必要だとして猶予期間を求める声が相次いでいた。

中国政府は2023年12月、黒鉛の輸出を許可制とした。米財務省などは、近く自動車メーカーや電池メーカー、資源会社を集め、取引実態を把握したうえで中国に頼らない重要鉱物の調達方法を検討するとしている。

円相場の動き

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欧米各国が2022年には利上げに転じたのに対し、日本銀行は3月18日~19日の金融政策決定会合で、ようやく従来の「マイナス金利政策」を解除し、無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促すことをきめた。

日銀による利上げは2007年2月以来およそ17年ぶりである。

一方で米国は2022年以降、頻繁な利上げを行い、現状のFF金利は5.25~5.50%で、日米金利差は非常に大きい。欧州も同様である。

2024/3/20 日銀、マイナス金利政策を解除

この結果、円安が進行している。2024年4月29日(祭日)の外国為替市場で一時160円台と、1990年4月以来34年ぶりの円安ドル高水準となった。

ーーー

4月29日(日本は祭日)のアジアの外国為替市場で午前中、およそ34年ぶりに1ドル=160円台になった。

午後1時すぎに一転して円高方向に変動し、1ドル=155円台まで値を戻した。

政府は発表していないが政府による円買いドル売り介入があったとの観測が強まった。

その後、4月30日、5月1日と再び円安に動いていたが、日本時間の5月2日朝6時頃(米連邦公開市場委員会の終了後)、急な円高・ドル安が進み、円相場は一時1ドル=153円台まで上昇した。1時間程度で4円超の円高になった。

市場では日本政府・日銀が円買い介入に踏み切ったという見方が出ている。
午後は円買い再開で155円台前半に失速した。




3日のニューヨーク外国為替市場で円が対ドルで上昇、一時1㌦=151円台 4月の雇用統計で非農業部門の就業者数が前月比17万5000人増と市場予想(24万人程度)を大きく下回り、FRBが早期利下げに動く可能性を意識したドル売り。


日本経済新聞は、専門家の意見をまとめ、介入原資は3000億ドルと推定、最初の介入が5兆円規模と推定されたことから、円買い余力はあと8回と報じた。

円売り介入の場合は限度がないが、円買い介入の場合は円を買うための米ドルが必要である。

日本の外貨準備は3月時点で1兆2906億ドルあったが、当面使えるのは、このうちの満期1年未満の短期証券と預金の合計の約3000億ドル(約47兆円)と推定した。

最初の介入は5兆円規模と推定されたことから、余力はあと8回、約40兆円としたもの。

日銀が4月30日に公表した5月1日の当座預金残高の見通しによると、為替介入を反映する「財政等要因」による減少額が7兆5600億円だった。

為替介入を想定しない市場推計と5兆円強のずれが生じており、市場では4月29日に5兆円規模の円買い介入があったとの観測が強まっている。

同様に、5月2日のケースでは、「財政等要因」による当座預金残高減少額が4兆3600億円で、為替介入を想定していない市場予想と3兆円強のずれが生じた。3兆円規模の円買い介入があったと見られている。

ーーーーーー

直近では政府は2022年9-10月に合計9兆1880億円の円買いドル売り介入を行った。

政府・日銀は急速な円安を抑えようと9月22日に24年ぶりに円買い・ドル売り介入に踏み切った。円安が続いたため10月も追加で介入した。9月22日と合わせた9~10月の介入額は9兆1880億円だった。11~12月は介入がなかった。

10月21日は円相場が一時1ドル=151円90銭台と32年ぶりの安値を更新した。その後、政府・日銀の円買い介入を受けて一時1ドル=144円台まで円高が進んだ。

この時点でも日米金利差はあったが、差は今ほどはひろがっていなかった。2022年9月のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は3.00~3.25%であった。

一時的ではあったが、9兆円の介入で円高はかなり進んだ。

今回は2回で8兆円の介入だが、これで円安が是正されると見る人はいないであろう。日経は1回目の介入のあと、余力はあと8回、約40兆円(しかない)とした。

小野薬品工業は4月30日、米国のバイオ医薬品企業 Deciphera Pharmaceuticals, Inc.との間で、本買収のために設立する完全子会社を通じて、一株当たり25.60米ドル、総額約24億米ドルの現金を対価として同社を買収することで合意し、4月29日(日本時間)に契約を締結したと発表した。Deciphera社を同社の100%子会社とすることを目指す。
名称 Deciphera Pharmaceuticals, Inc.
所在地 200 Smith Street Waltham, MA 02541, USA
事業内容 医薬品の研究開発、商業化
資本金 805千米ドル(2023年12月31日時点)
設立年月日 2017年(Deciphera Pharmaceuticals, LLCは2003年設立)

同社の2024年2月のPresentationで、同社のミッションを One Mission, Inspired by Patients: Defeat Cancer としている。

Deciphera社の最近の業績は下記の通り。(千米ドル)

2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期
連結売上高 96,148 134,036 163,356
連結営業損益 -300,077 -182,722 -210,958
親会社株主帰属当期純損益 -299,964 -178,931 -194,942

2023年12月期の営業損益は-210,958千ドルだが、R&D費用が234,123千ドルを占め、売上高を大幅に上まわる。それに対し、Costs of sales は僅か3,732千ドルである。
開発段階で売上高が一部計上されただけであり、正常時の損益ではない。

合意した取得価格は2024年4月26日の終値(@14.65米ドル)に対して74.7%、同日から過去30日間の売買高加重平均価格に対しては68.8%のプレミアムを加えた価格となる。

両社の取締役会は、全会一致で本買収へ賛同している。


小野薬品はグローバルスペシャリティファーマとして、独創的かつ革新的な新薬を世界に届けることを目指している。中長期成長戦略である「パイプライン強化とグローバル開発の加速」および「欧米自販の実現」を見据え、医療ニーズの高いがんや免疫疾患、中枢神経疾患、スペシャリティ領域を重点研究領域に定め、医療現場に革新をもたらす新薬の創出に取り組んでいる。

同社の業績拡大をけん引してきたがん免疫薬「オプジーボ」は2028年以降に段階的に特許切れを迎える。

オプジーボは、免疫細胞上のタンパク質(PD-1)を発見した京都大学の本庶佑名誉教授の研究を基に「ゴールの見えないまま始めた研究から成果が出るまで20年以上かかった」(小野薬品)。

2016/11/17 オプジーボ 50%値下げ


Deciphera社は、がんを対象とした革新的な医薬品の研究・開発・販売に注力しており、自社で創製した経口キナーゼ阻害剤からなる豊富なパイプライン(下記)を有している。

癌は無秩序な増殖を繰り返し、正常な細胞を障害し転移を行うことで本来、癌のかたまりがない組織でも増殖する。細胞増殖のシグナル(信号)を伝達する上で重要となるチロシンキナーゼという酵素がある。皮膚の表面の細胞では上皮成長因子受容体というチロシンキナーゼ活性を持つ受容体に上皮成長因子が結合し活性化され伝達により細胞増殖がおこる。

この増殖因子受容体に異常がおこることで、癌細胞の増殖がおこるとされる。

キナーゼ阻害薬はチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害し、腫瘍細胞の増殖を抑えることで抗腫瘍作用をあらわす。癌細胞の増殖などに関わる特定の分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる。

作用機序 適応症 開発段階
QINLOCK (Ripretinib) KIT阻害剤
(キナーゼ阻害剤)
4L GIST / 一部の2L GIST
消化管間質腫瘍(GIST)の4次治療の薬剤
上市済 / 効能追加P3
欧州及び中国を含む40ヶ国
以上で販売
Vimseltinib CSF-1R阻害剤 TGCT / cGVHD
腱滑膜巨細胞種(TGCT)を対象
欧米で2024年に申請準備中 /
P1/2準備中
DCC-3116 ULK阻害剤 KRAS変異がん、GIST P1b
DCC-3084 Pan-RAF阻害剤 がん P1準備中
DCC-3009 Pan-KIT阻害剤 GIST IND準備中


本買収により小野薬品は固形がん領域のパイプラインを拡充し、特にQINLOCK®とVimseltinibの獲得によって短中期的なグループの収益増加が期待できる。

QINLOCK®は、米国、欧州及び中国を含む各国で「イマチニブを含む3種類以上のキナーゼ阻害剤による治療を受けた消化管間質腫瘍 (GIST) 患者」への治療薬として承認されている経口投与可能なKIT阻害剤。

National Comprehensive Cancer Networkの腫瘍学臨床ガイドラインにて、GIST患者の4次治療としてカテゴリー1の推奨も受けている。

2023年のグローバル売上は163百万米ドルに達しており、GIST患者に広く使用されている。現在、KIT Exon 11 + 17/18に変異を有するGIST患者の2次治療への適応拡大を目指し、第Ⅲ相臨床試験が進行中。また、2019年にGIST患者の4次治療、2023年には上記一部変異を有するGIST患者の2次治療を対象として、米国食品医薬品局(FDA)よりブレイクスルーセラピー指定を受けている。

なお、2019年にDeciphera社は、主に中国本土と香港において、がん、自己免疫疾患、感染症、神経科学の治療薬の開発および商業化を行っているZai Lab Ltdとライセンス契約を締結しており、中国と台湾についてはZai Lab社が開発販売を実施している。

Vimseltinibについて:

腱滑膜巨細胞腫(TGCT)は、関節の内側又は近傍に生じる局所進行性の腫瘍で、主に第一選択として、手術による腫瘍の切除が行われているが、切除不能患者に対する治療選択肢が限定的であり、優れた有効性と安全性を有する新薬が求められている。TGCTの病態として、コロニー刺激因子1(CSF-1)遺伝子の転座とCSF-1の過剰発現が見出されている。

VimseltinibはFDAよりファストトラック指定を受けた経口投与可能なCSF-1受容体阻害剤であり、TGCTを対象とした第Ⅲ相臨床試験(MOTION study)にて主要評価項目及びその他副次的評価項目を統計学的有意に達成している。なお、慢性移植片対宿主病(cGVHD)を対象とした第Ⅱ相臨床試験を現在準備中。

Deciphera社は、米国および主要な欧州諸国において自社での販売網を構築しており、この販売網は申請準備中のVimseltinibにおいても活用される。小野薬品はDeciphera社の欧米での開発・販売能力を獲得し、欧米自販体制を強化できる。 さらに、Deciphera社の創薬能力を活用することで、小野薬品グループのオンコロジー領域において研究開発のさらなる加速が期待できる。

住友化学は4月30日、経営戦略説明会を開催し、2024年3月期の連結最終損益(国際会計基準)が3120億円の赤字になったと発表した。従来は2450億円の最終赤字を見込んでいたが、赤字幅が670億円広がった。連結子会社である住友ファーマの医薬品の特許権などで減損損失を計上するためで、過去最大の赤字幅となる。

単位:億円 売上高

営業損益

株主帰属
損益
コア 非コア 合計
2023/3実績 28,953 928 - 1,237 - 310 70
2024/3予算 29,000 400 -200 200 100
同 2024/2/2予想 24,800 -1,450 -1,400 -2,850 -2,450
同 今回予想 24,470 -1,490 -3,400 -4,890 -3,120


コア営業損益

医薬品における北米でのラツーダ(非定型抗精神病薬)の特許切れによる売上高の激減に加え、後継候補であるオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)等の売上が計画を下回る見込みであることに加え、
エッセンシャルケミカルズにおいては世界的な景気減退による需要減少や交易条件の悪化等により持分法適用会社であるPetroRabigh の業績悪化が見込まれること等から、コア営業損益は-1490億円と予想した。

2023/11/8 米国医薬業界、特許切れの恐怖:住友ファーマのケース

(億円)
23/3実績 24/3予算 2024/2予想 今回予想
エッセンシャルケミカルズ
(うちPetroRabigh)
-342

-70

-870
(-630)
-910
(-650)
エネルギー・機能材料 152 130 50 80
情報電子化学 476 380 380 440
健康・農業関連 573 620 400 310
医薬品 162 -610 -1,310 -1,330
その他 104 150 -100 -80
全社 -197 -200
コア営業損益 928 400 -1,450 -1,490


非コア損失(赤字

合計 うち減損 その他
住友ファーマ関連 2219億円 1809億円

(基幹3製品 特許権 1,335億円)
(      のレン  359億円)
(開発品目開発中止  106億円)

北米子会社再編 301億円

固定資産除却等 109億円

その他 1181億円 885億円(国内石化、シンガポールMMAほか) 固定資産除却等 296億円
総計 3400億円 2694億円 706億円

医薬品における特許権及びのれん等

基幹3製品(進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」、子宮筋腫・子宮内膜症治療剤「マイフェンブリー」、過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」)の売上収益の伸びが想定を下回っており、北米事業の事業予想を見直した結果、「マイフェンブリー」にかかる特許権の一部133,457百万円及びのれんの一部35,858百万円を減損することとなった。
また、rodatristat ethyl及びEPI-589(いずれもフェーズ2試験段階)等の開発品目の開発を中止したことにより、当該開発品に係る仕掛研究開発10,577百万円を減損するなど、総額180,857百万円の減損損失を計上した。

医薬品以外の主なもの

千葉工場エッセンシャルケミカルズ製造設備及び工場共用資産  減損損失25,381百万円
シンガポールにおけるメタアクリル製造設備  減損損失14,891百万円
愛媛工場における正極材焼成実証設備  減損損失11,566百万円

全体の非コア損失のうち、評価損が合計2694億円に達する。
 

4月30日の経営戦略説明会では2024年3月期の実績を上記のように説明したうえで、短期集中業績改善策と、抜本的構造改革を説明している。

最大の経営課題は、「2024年度業績V字回復の達成」(コア営業利益 1,000億円、純損益 200億円としたうえで、

短期集中業績改善策による2024年度キャッシュ創出目標を、従来の5,000億円から6,000億円に上積みするとした。

抜本的構造改革として下記を挙げた。

1) 再興戦略
  住友ファーマは、グループの総力を挙げて徹底した合理化を進め、一日でも早く完全に止血する。
  その間、基幹3製品の拡販とともに、再成長に向けたあらゆる選択肢を検討していく。

  PetroRabighは、当社とAramco両社で「共同タスクフォースチーム」を結成することで合意。
  収益力強化を含む緊急度の高い重要課題解決に向け、短期集中で取組む。 

2) 成長戦略
  「Innovative Solution Provider」を長期に目指す企業像とし、新しい成長戦略を策定。
  
  農業関連、ICT関連が成長ドライバー。経営資源を集中投入し、2030年に各々1,000億円のコア営業利益を目標とする。

  次世代成長領域として先端医療を拡充。

  石化関連は長期的視点で環境負荷低減技術による価値創造に舵を切る。

ーーー

日本経済新聞はこれを取り上げ、石化再建「肩すかし」で株安 という副題で下記のとおり報じた。

大規模な止血策と2025年3月期の黒字化を発表したにもかかわらず、市場は厳しい反応を示した。30日の終値は前日比17円安(4.8%安)の337円と、470円上げた日経平均株価とは対照的な動きとなった。「ラービグを巡る構造改革案が具体策に欠け、構造改革に期待を寄せていた投資家が肩すかしをくらったとの受け止めからか」(立花証券の福永幸彦アナリスト)との声が聞かれた。

ラービグとはサウジアラビアの国有石油会社サウジアラムコとの合弁で、住友化学にとって持ち分法適用会社の「ペトロ・ラービグ」のこと。石油精製での競争力が低く、24年3月期は650億円の赤字に落ち込んだ。今回の経営戦略発表会で収益改善に向けた具体的な施策が示される期待もあったが、新たにアラムコとタスクフォースを設置し「1年以内に将来像の方向性を示したい」(岩田社長)との内容にとどまった。

収益改善には石油精製の部分を高度化する装置への投資などが必要だが、住友化学はそこへの追加投資はしない姿勢を貫いており、アラムコとの交渉が難航している。ラービグはアジア向けの汎用品が多く、「日本の内需は悲観していないが、アジア市況は24年も23年に比べてそんなに改善は期待できない」(岩田社長)。ラービグを含む石化関連事業全体の25年3月期のコア営業損益は350億円の赤字を見込む。福永氏は「タスクフォース結成はプラス材料だが先送り感が残る」とみる。

経営戦略説明会でも、「当社としては、同社に対するエクスポージャーを増加させる資金支出は実施しない意向」としている。

JR九州、住友商事、住友商事九州が出資し設立したでんきの駅(福岡市)は3日21日、系統用蓄電池事業の第1号案件として熊本市で建設を進めてきた系統用蓄電所「でんきの駅川尻」を完工した。

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太陽光発電を中心に再エネ導入量の多い九州地区では、電力系統の需給バランスを調整する系統用蓄電池の役割が重要になる。


2023年度に大規模な出力制御が九州電力管内を中心に日本全国で17億kwh発生し、太陽光発電が停止された。

出力制御は電気の供給が電気の需要を大きく超えたときに、電力会社が様々な発電設備の出力を停止することで需要と供給をコントロールする制度。

全体としては不足する電力を無駄にしないための手段として、①蓄電池、②追加送電網による広域送電が重要である。

でんきの駅は、JR九州が管理する鉄道沿線地・遊休地を有効活用し、JR九州の保守管理ノウハウと住友商事グループの蓄電事業ノウハウを活用し、系統用蓄電池事業を行う。

JR九州、住友商事100%子会社で蓄電池設備のアセット保有・管理を手掛けるBSホールディングス、住友商事九州が出資し、2023年4月に設立した。

JR九州、住友商事、住友商事九州は、2024年2月に熊本市とカーボンニュートラルの実現に向けた連携協定を締結した。

今後、熊本市内で事業展開しながら、九州エリア全体へ事業拡大を進めていく。さらに、でんきの駅をプラットフォームとして、災害時に蓄電池の電力を開放するなど、地域に安全・安心を提供する地域エネルギーサービスを検討する。

でんきの駅(福岡市)は3日21日、系統用蓄電池事業の第1号案件として熊本市で建設を進めてきた系統用蓄電所「でんきの駅川尻」を完工した。鉄道沿線特有の土地形状に合わせた専用設計の「バッテリー・ステーション」システムを構築した。

蓄電池は、住友商事(49%) と日産自動車(51%) の合弁会社である4R Energy(横浜市)が提供するリユース(再使用=中古)品のEV(電気自動車)用バッテリーを定置用にシステム化した「EVバッテリー・ステーション」を採用した。蓄電事業としての運用は、でんきの駅が担当する。

定格出力は1.5MW、実効容量は6.0MWh。リユースEVバッテリーを約350台分収納し、電池交換が可能。また、スケールアップ(高出力・大容量化)のための制御技術を導入した。今後、設備の本格稼働に向け各種試験を行った後、需給調整市場および容量市場に参入する。事業開始は9月の予定。

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参考 4R Energy の狙い

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