2008年11月アーカイブ

中国国家発展改革委員会の張平主任は27日、国内の景気は11月に一段と減速したと述べるとともに、大規模な失業や社会不安を回避するため、政府は行動せざるを得ないと述べた。

「11月には、いくつかの経済指標が低下の加速を示している。一部の企業、とりわけ輸出を中心とする企業の生産は困難に直面している。一部の企業は操業を全面的ないしは部分的に停止している。これは当然のことながら、雇用に影響を与える。一部の地域では地方からの労働者が故郷に戻っている」と述べた。

国家発展改革委員会の担当者は26日、「今後、消費刺激策を一層整え、国民の所得を引き上げ、消費予測と消費環境を改善して、消費拡大のためにさらに良好な環境を整備する」と表明した。

個人所得税の課税最低限の引き上げが柱になるとみられている。

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中国政府は11月9日夜、国内需要拡大のため2010年末までに総額4兆元(約57兆円)規模の投資を実施する緊急経済対策を発表した。

2008/11/12 中国、緊急経済対策に57兆円

張平主任によると、中央政府が打ち出した4兆元の投資の使途は次の通り。

  鉄道・道路・空港・都市農村送電網などのインフラ  1兆8000億元
  災害復興再建  1兆元
  住宅保障プロジェクト    2800億元
  農村民生プロジェクトと農村インフラ    3700億元
  医療衛生・文化教育事業     400億元
  生態環境保護    3500億元
  自主革新・産業構造調整    1600億元
   

第4四半期の投資1000億元では、国民生活・インフラ・環境保護の問題解決に重点が置かれる。さらに災害救済資金の給付を繰り上げ、復興再建を強化するための資金もこれに含まれる。

ーーー

中国人民銀行は1126日、商業銀行の基準金利を期間1年物で1.08%引き下げ、貸出金利を年5.58%、預金金利を年2.52%とすると発表した。
利下げ幅が
1%を超えるのはアジア通貨危機時の199710月以来11年ぶりで、異例の大幅利下げで安定成長の維持を目指す。

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商務部はこのほど指導意見を発布、各級の商務主管部門に対し、次の7方面から生産・消費促進の作用を発揮するよう要求した。

 (1)合理的に計画し、流通ネットワークを優良化し、便利な消費を促進する。
 (2)市場の需要を導き、特色ある商品の開発を行い、人気のある製品の消費を促進する。
 (3)中古品の流通を発展させ、再生資源を回収し、循環消費を促進する。
 (4)クレジット機能を拡大し、支払い環境を改善し、信用消費を促進する。
 (5)効率的な流通を行い、流通コストを低下し、メリットのある消費を促進する。
 (6)商品の品質を保障し、市場環境をクリーンなものにし、安全な消費を促進する。
 (7)消費シーズンを掴み、市場販売を強化し、休祭日やイベント消費を促進する。


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三菱化学とJSRは11月25日、両社のABS製造販売の合弁会社「テクノポリマー」について、合弁事業に関する業務提携を解消し、三菱化学が保有する全株式をJSRが取得し、同社をJSRの全額出資子会社とすることで基本合意したと発表した。

テクノポリマーは、1996年7月1日にJSR 60%、三菱化学 40%出資の合弁会社として設立した。
JSRの四日市にABS 20万トン、三菱化学の四日市にABS 9万トン、AS樹脂 約3万トンの能力を持つ。

JSRは、テクノポリマーについては、これまで以上に迅速な意思決定と経営資源の有効活用や最適化を図り、企業価値を高めるために、JSRのポートフォリオの中で事業を遂行していくことが最適であると判断した。

一方、三菱化学は、化学品分野における「高機能化へのシフトと事業基盤強化」の方針に沿い、戦略事業分野への集中的な投資を加速し、事業の集中と選択を推進するため合弁事業を解消、JSR100%子会社とする。

【伊藤忠彦・JSR副社長の話】
テクノポリマーの国内シェアは25%程度で、事業環境が厳しいことは確かだが、完全子会社化することで迅速な意思決定ができるし、技術を含めて集中化で きる。今後は車両用分野を中心に樹脂の高機能化、高付加価値化を図っていきたい。機能性フィルムなども将来性は十分あると思う。

【高下悦二郎・三菱化学常務の話】
旧三菱モンサント化成時代からの古い歴史のある事業だけに、深い感慨はあるが、JSRさんへの譲渡ということで納得がいくように思う。

今回の発表では株式譲渡の件だけであるが、業界の状況や4ヶ月以上前の発表であることから考えると、三菱化学内のプラントの廃棄の可能性が強い。

下記のとおり、これまでも需要は漸減しており、今後は一層厳しくなることが予想されることから、三菱化学が事業撤退を決め、JSRが引き受けたものと思われる。

 

今年に入り、塩ビ業界では新第一塩ビが高岡工場を停止、ヴイテックも水島工場の停止を決めている。

2008/4/5 新第一塩ビ、高岡工場を停止 

2008/4/15 ヴイテック、PVC生産体制見直し 

また、東ソーがスチレンモノマー業界から撤退、新日鐵化学とのJVの日本スチレンモノマーは新日鐵化学の100%子会社となった。

2008/8/9 日本スチレンモノマー解散  

今後も同様の動きが出よう。

ーーー

日本のABS業界の変遷は以下の通り。

JSRはダイセルとの生産JVの協同ポリマーを設立しており、JSRの能力20万トンの中に含まれている。(ダイセルは自消)

 

各社の能力は以下の通り。(若干古いデータ)

会社名 工場 千トン  
旭化成工業 水島   80  
UMG ABS
 
宇部興産   42.7%
 三菱レイヨン 42.7%
 GE       14.6%
宇部  100 宇部興産
大竹   66 三菱レイヨン
合計  166  
テクノポリマー
 
JSR    60%
 三菱化学 40%
四日市  200 JSR
四日市   90 三菱化学
合計  290  
鐘淵化学工業 高砂    0 テクノに営業譲渡、工場は転用
電気化学工業 千葉   65  
東レ 千葉   72  
日本エイアンドエル
 
住友化学    67%
 三井化学    33%
愛媛   70 住友化学
大阪   30 三井化学
合計  100  
合計    773  

 

テクノポリマーの歴史は次の通り。

  三菱化学 JSR
1952 三菱化成/Monsantoで
  モンサント化成設立
 
三菱化成PVC事業移管(以下四日市)  
1953 可塑剤生産開始  
1957 PS生産開始  
1958 三菱モンサント化成に改称    
1961 AS樹脂生産開始  
1966 ABS生産開始 ABS生産開始(四日市)
1990 スペシャリティ製品を日本モンサントへ統合  
1994 三菱モンサント化成からMonsanto撤退、三菱化学へ統合  
1996                            三菱化学/JSRでテクノポリマー設立
1998                              両親会社より製造部門を吸収
2002                         鐘淵化学から耐熱ABS樹脂事業買収(プラントは他に転用)
2009                              三菱化学撤退、JSR 100%に

1996年7月にJSR 60%、三菱化学 40%出資で設立され、同年10月から営業を開始し、98年4月に製造部門を統合した。
当時、JSRはABSのトップメーカーであり、三菱化学も2番手グループにあったことから、テクノポリマーは世界4位の規模をもつABS企業としてスタートした。
(世界では台湾の奇美実業を筆頭に、Bayer、
BorgWarnerを買収したGEがトップ3であった。)

JSRは韓国のLG Chem、台湾の国喬石油化学と台湾化繊、中国の吉林化学などにABS技術供与を行なっていた。

ーーー

日本のABSメーカーは日本の自動車メーカーのアジア進出に伴い、レジンの輸出を行なっている。
(ABSの輸出の大半は日本の海外進出メーカー向けである)

テクノポリマーは上海にコンパウンド基地の上海虹彩塑料(Shanghai Rainbow Color Plastics)、テクニカルセンター(Techno Polymer Shanghai Technical Development ) を持っている。

更に、中国・華南地区でのビジネス拡大に対応するため2008年5月に広東省広州市に100%出資の現地法人大科能樹脂(広州)(Techno Polymer Guangzhou)を設立、2月に巴工業 80%、テクノポリマー 20% でコンパウンド会社の星科工程塑料(深セン):Stella-Tech Engineering Plastics(Shenzhen) を設立している。

ーーー

ABSの国内需要は需要家の海外進出に伴い漸減している。輸出を含めた全出荷も減少傾向にある。

テクノポリマーの損益は2007年3月期は最高益を記録したが、2008年3月期は大幅減益となっている。

 

 


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BHP Billiton 1125日、同社取締役会は最早、Rio Tinto 買収が株主の利益になるとは考えないと発表した。

内容は以下の通り。

・これまでも買収が株主の利益になるなら買収を進めるとしてきた。

・現在も統合のメリット、途上国経済の成長に伴う天然資源の需要増について見方を変えてはいない。
 両社のカルチャーは似ており、主な資産やインフラはオーバーラップしており、この組み合わせは素晴らしい。

・しかし、最近の世界経済の悪化と、その結果のコモディティ価格の低下がリスクを変えた。 

BHPはバランスシート面の強みを重視しており、統合による負債の増加及び資産売却が困難になったことがリスクを増やした。

・米国と豪州の独禁法当局は買収を認めたが、
EUは鉄鉱石と原料炭の資産売却を要求すると思われる。
 通常なら、しかるべき対応は可能である。
 しかし、現在の状況下では、決められた期間内に正当な価格で資産売却が出来るかどうか分からない。
 買収コストとリスクを増やす可能性がある。

EUが対応策を要求しても、BHPはこれに応じない。その場合EUは買収を認めないであろう。

・このほか、以下の点が問題である。
 ・統合会社の負債が大きいが、短期的な情勢悪化により運営資金と返済資金が十分かどうか。
 ・
Rio Tinto がやろうとしている非コア事業の売却ができるかどうか。

・もし、BHPが対応策を出さなくともEUが買収を認めた場合、BHPは株主総会に買収提案をすることが必要になる。
 その場合は、取締役会としては株主に対し、これに反対するよう要請する。

・この18ヶ月の買収関係費用 450 百万ドルは2008年下期に費用処理する。

ーーー

200711月、BHP Billiton Rio Tinto に対し買収提案をしたことを発表した。

Rio Tinto の株式1株に対してBHP株3株を与えるという案で、1,400億ドル以上に相当するが、Rio はこの条件が同社の現状、将来性を考えると著しく安すぎるとし、拒否した。

2007/11/15 BHP Billiton Rio Tinto に買収提案 

2008年2月6日にRio Tinto に対し買収提案を行なった。当初の案を修正し、BHP株3.4株としたが、Rioはこれを拒否した。

2008年5月30日、BHP Billiton European Commission に対し Rio Tinto 買収の事前届出を行なった。

2008/6/6  BHP BillitonEC Rio Tinto 買収の事前届出 

米国と豪州の独禁法当局は買収を問題なしとしたが、EUは異議告知書を送付した。来年1月に結論を出す。
中国と日本の独禁法当局も審査を行なっている。
公取委は11月14日、
BHP Billiton から買収計画などの資料を受け取っている。

2008/10/3 豪州の独禁法当局BHP Billton Rio Tinto 買収にOK 

ーーー

今回の売却断念に関し、豪州紙は次のような分析を行なっている。

両社の株価はこの3週間でそれぞれ、ほとんど30%下落している。
しかし、両社が似たような事業形態のため、買収条件は「
Rio Tinto の株式1株に対してBHP株3.4株」という相対的なもの。
このため、株価下落は直接には影響しない。
コモディティ価格の下落も、シナジー効果を相対的に増やすことになる。
   
問題はRio Tinto が380億ドルでAlcan を買収した結果、Rioの負債が420億ドルとなっていることで、これまではBHPは余り懸念していなかった。
 

2007/7/17 Rio Tinto、Alcanを買収 アルミ生産で世界最大に 

Rio は元々、非コア事業、特にAlcanの包装事業を売却して負債を減らすことを検討していた。
  売却は最初は順調だったが、先月になり、本年末までの100億ドルの売却目標の達成が困難で、総額150億ドルの売却計画を見直す必要があると認めた。
   
金融危機により、目標価額での売却は困難で、売却先も見つからない状態。
合併条件として資産売却を求められても、同様のことが起こる。
   
Rioは更に、来年10月にはAlcan買収の借入金のうちの90億ドルの借り換えが必要となる。
   
BHP自体は85億ドルしか借入金がないのに、Rioの420億ドルの借入金を自身のBSに載せるのかという問題に直面、今回の断念に至った。
   

ーーー

日本鉄鋼連盟会長の宗岡正二・新日本製鉄社長は25日、「欧州委員会から異議告知書が通知された段階で、BHPが買収を断念したことを歓迎する」とコメントした。 


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中国の大成生化科技(Global Bio-Chem)はこのたび、世界で初めてトウモロコシの穀粒を原料としたPolyol の商業生産を開始したと発表した。
工場は長春市に立地し、年産能力は
2万トンで、本年中にフル稼動する予定。
10月28日に中国科学技術部
が研究開発及び経済性での要件を満たしていることを認定した。

同社は新しい触媒を開発し、大規模商業生産で polyol 合成と分離の技術を確立した。

この計画は中国政府が奨励、支持するバイオケミカル事業に分類され、過去数年にわたり、国家発展改革委員会(NDRC)、科学技術部、吉林省及び長春市の科学技術局から研究開発助成金を受け取ってきた。

2006/10/5 ダウ、天然油ポリオール開発に成功 

 

大成生化科技は香港上場企業で、1994年に設立された。アジアにおけるコーン製品、コーンベース製品のパイオニアで最大のメーカー。
2007年末のコーン処理能力は240
万トン。
また、世界最大の
アミノ酸(lysine のメーカーのひとつで、年間醗酵能力は45万トンとなっている。

同社の製品には、
コーン製品では
Maize OilCorn Steep LiquorCorn StarchCorn Gluten MealCorn Fibre Feed など、
コーンベースのバイオケミカル製品では
アミノ酸(Lysine、Glutamic Acidなど)、Polyol(Ethylene Glycol、Propylene Glycol、Butylene Glycol など)がある。

同社は又、中国最大のコーンベースの甘味剤メーカーの大成糖業(Global Sweeteners Holdings)の親会社でもある。

<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>

大成糖業は2001年にCargill との50/50JVで、HFCS(ブドウ糖果糖液糖)製造販売の大成嘉吉高果糖(上海):GBT-Cargill High Fructose (Shanghai) を設立している。

ーーー

三井物産は20046月に、大成生化科技との合弁でソルビトール製造の合弁会社長春大成日研糖醇開発(Changchun Dacheng Polyols)を設立した。

大成生化科技 51%、三井物産 47%、三井物産子会社でソルビトールメーカーの日研化成 2% の出資で、能力は10万トン。

日研化成は日研化学が48%、三井物産が40%、明治製菓が12%の合弁会社であったが、2003年3月末に三井物産 100%となった。

2008年1月、大成生化科技は三井物産から株を買い取り、100%子会社とした。(大成糖業の傘下)

 


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8月以降、各国の通貨価値が大きく変動している。

米ドルは110円程度から90円台になったが、ユーロや英ポンドは大幅に下がっている。

今回、英国のIneosの買収を決めた三菱レイヨンは、2006年にも買収交渉をしたといわれるが、ポンドの大幅下落により、当時買っていたのと比べ格安での買収となる。


既報の通り、韓国ウォンも大幅に下落した。

2008/11/20  韓国 ウオン安続く 

円高もあり、対円ではウォンは2007年当時と比べ、半分の価値にまで下がっている。
韓国への買物ツアーが盛んである。
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付記 
   
韓国が8年ぶりに、外国に貸した対外債権より外国から借り入れた対外債務の方が多い純債務国に転落した。
   
韓国銀行が11月28日に発表した「9月末の国際投資対照表(暫定)」によると、9月末現在、対外債権から対外債務を差し引いた純対外債権はマイナス251億ドルと、2000年第1四半期以来の純債務国に転じた。
   
外国人投資家の株売りが決定的な原因で、今年6~9月、株や派生金融商品などに入れた持分の投資資産を約280億4000万ドル売って韓国を離れた。これは、純対外債権のマイナス251億ドルと同様の規模。これに経常収支の赤字などが加わった。

これに対し、人民元はこのところ対米ドルではほとんど変動していない。

参考 2008/4/10 人民元上昇



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BASF、全世界で減産

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BASFは19日、需要の激減を受け、過剰能力となることを避けるため、世界の80 程度のプラントを停止し、更に100 程度のプラントで減産すると発表した。PSとカプロラクタムについては既に発表されている。

主に自動車、建築、繊維産業向けの事業で実施する。 

BASFの本拠地 Ludwigshafen の40のプラント、北米の10プラント、アジアの15プラントなどが停止される。北米ではディスパージョン製品とTDIを生産するGeismar (Louisiana)Freeport (Texas) なども停止される。Port Arthur (Texas) のエチレンプラントは減産となる。

10月末から主な市場で状況が一変、需要が激減した。特に自動車業界の需要家が突然に注文をキャンセルしているという。
また、需要家が在庫を減らしていることや、需要家の与信問題も販売減につながっているとしている。

減産により、世界中で2万人の従業員に影響が出る。出来る限り残業減や休暇などにより労働時間を柔軟にすることで対応する。
本社工場では組合との間でこの旨の協定を結んだ。

減産はとりあえず来年1月まで行い、需要低迷が続けば、その後も継続する。

この結果、BASFでは2008年は前年の利益は達成できないと認めた。
今後、コストダウンを徹底する。またCibaの買収・統合を急ぎ、事業の最適化を進める。

同社が進めていたスイスのCibaTOBの結果、94.59%を買収した。

ーーー

BASF20077月、スチレン事業一部の「戦略的な選択肢」を検討していることを発表した。

同社は20078の第2四半期の業績発表の席上、 スチレン事業の一部の売却に関して、買い手候補のある1社と極めて建設的な交渉を行っていることを明らかにした。

BASFは本年2月に、売却交渉が進んでおり上半期中に決定するだろうとしていたが、結局妥結しなかった。

BASF818日、スチレン部門売却準備を更に進めることを決めた。
スチレンコポリマー事業を分離対象に加え20091月付けで売却対象事業を子会社に分離する。

2008/8/20 BASF、スチレン系事業の売却準備 進める 

しかし、同社は11月22日、買い手が見つからないため、スチレン部門の子会社分離を取り止めると発表した。
今後、この事業をどうするか、再検討する。

ーーー

BASFは昨年来、大規模買収を検討してきた。

化学業界は更なる集約が必要であるとし、最近はM&Aの資金確保が困難となったため買い手が減っており、買収のために100億ユーロの新規借入が可能な同社にとってチャンスであるとしていた。

2007/9/20 BASF、新しい買収?

BASFは27.7億ドルでのCiba買収をおこなったが、BASFの首脳部は先週、市場の将来がもっとはっきりするまで、買収を延期すると述べた。

ーーー

BASFの減産発表に続き、各社が減産の検討を明らかにしている。

Dowは年末までにリストラ計画を発表する。


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ダウは11月13日、Dow Energy Plan for America” を発表、物価の安定、経済の強化、安全保障の強化、環境浄化、米国製造業の活性化のため、大胆な、総括的な、超党派のエネルギー政策をとることを要請した。

Andrew Liveris CEO は、「新しい政府、議会は米国のエネルギー対策であらゆるオプションを含む計画を実行する必要がある」と述べた。

ダウでは、包括エネルギー政策は次の8つのゴールの達成が必要としている。

 ・積極的なエネルギー効率、エネルギー節約の奨励
 ・より多くの再生可能エネルギーを市場に
 ・商業ベースの代替エネルギーを優先
 ・国内の石油・ガス生産促進
 ・石炭の炭素利用率(
carbon efficiency)の最適化
 ・カーボン捕獲・貯蔵の可能性の追求
 ・原子力発電の促進
 ・エネルギー政策と温暖化対策の関係の認識

 

Dow Energy Plan for America” の内容は以下の通り。
   
http://news.dow.com/dow_news/pdfs/dow_energy_plan.pdf

1. 省エネ: Encourage Aggressive Energy Efficiency and Conservation
   
   住宅、ビルの省エネ   Improving Energy Efficiency of All Homes and Buildings
   長期的な優遇税制   Long Term Tax Incentives for Energy Conservation and Efficiency
   グリーン ビルディング   Promote Voluntary Green Building Programs
   教育   Public Education on Energy Efficiency
    Energy Policy Act の実行   Funding & Implementing EPACT(Energy Policy Act of 2005)
   都市の省エネ   Urban Energy Efficiency Pilot Program
   電力会社の省エネ   Energy Efficiency Policies for the Power Sector
     
2. 多様化: Increase and Diversify Our Domestic Energy Supplies
     
   原油・ガスの海上掘削   A New Political Consensus on Offshore Oil and Gas Production
      (現在、推進の是非で民主党、共和党で対立)
     
3. 代替、再生可能エネルギー: Accelerate Development of Alternative and Renewable Energy
     
   発電、燃料、化学原料用の石炭、バイオマス利用
    Funding Cost-Shared Demonstration of Commercial-Scale Polygeneration Plants
   エネルギー向けインセンティブ   Renewable and Alternative Energy and Fuel Incentives
   原料向けインセンティブ   Extend Incentives for Biofuels to Renewable Feedstocks
   原子力発電   Accelerate Deployment of Nuclear Power
   カーボン捕捉、貯蔵   Carbon Capture and Sequestration Viability
   R&D 税控除   Making the R&D Tax Credit Permanent
     
4. 温室効果ガス排出削減: Reduce Greenhouse Gas Emissions
     

 


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11月20日のWTI原油価格終値は49.62ドル/バレルと、50ドル割れとなった。

50ドル割れは2005年5月以来のもの。ダウ平均も下がった。


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バイエル・マテリアルサイエンスは1117日、上海のBayer Integrated Site 2つ目の塩素リサイクル工場を建設すると発表した。

住友化学からライセンスを受けた塩酸酸化技術を使用して、イソシアネート生産時の副生塩酸を塩素にするもので、建設中の年産25万トンのTDIプラントの原料として供給する。

バイエル・マテリアルサイエンスは上海では既に、同社とUhdeNora Uhde とイタリアのde Nora SpA のJV)が共同で開発したOxygen Depolarized Cathode (酸素還元カソード)法の塩酸電気分解設備をスタートさせており、塩素を年産35万トンのMDI(本年10月稼動)の原料として供給している。

ーーー

塩素は、イソシアネートやエピクロルヒドリンなど各種塩化物の合成に使用されているが、これらの製造過程では、通常、塩酸が副生される。

TDIの製法
  トルエン
ジニトロトルエンTDA(Toluylene diamine)
  TDA
+ホスゲン(塩素+CO)→TDI塩酸

MDIの製法
  ベンゼン→ニトロベンゼン→アニリン
  アニリン+フォルムアルデヒド→MDA (
Methylene dianiline)
  MDA +ホスゲン(
塩素+CO)→MDI+塩酸

副生塩酸は、35 %塩酸として販売したり、VCMのオキシクロリネーション法の原料として有効利用している。
東ソーのビニル・イソシアネート・チェーンでは日本ポリウレタンのMDIからの副生塩酸とエチレンでEDCを生産し、VCM原料としている。)

しかし、ウレタンとVCMの需要の伸びの差などから、副生塩酸の処理に困っているのが現状である。

塩酸を塩素に転換する技術としては、三井化学の塩酸酸化法(MT クロル法)や、上記の塩酸電気分解法があるが、設備投資額、運転コストの面でさらなる向上が望まれていた。

住友化学の塩酸酸化技術は高活性酸化触媒使用を用いて効率的に塩素に転換する技術で、低温下で高い触媒活性があるため、固定床反応器の使用が可能となり、スケールアップ、設備投資額の面で優れている。
エネルギーでかつ環境に優しいプロセスとして、2005年にグリーン・サステイナブルケミストリー賞を受賞するなど、国内外から注目を得ている。

2002年に日本で最初のライセンスを行い、2006年には三菱化学にもライセンスしている。

ーーー

バイエル・マテリアルサイエンスでは、この2つの技術を結びつけ、イソシアネート生産でのコスト面での指導的地位を強化することとなるとしている。
また、著しい省エネが可能となり、温暖化防止にも役立つとしている。


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米商務省は19日、10月の住宅着工件数を発表した。

季節済み調整後の年率換算で791千戸で、1959年1月の統計開始以来、最低水準となった。
年間累計では966千戸となる。

また、米労働省が発表した消費者物価指数(総合)は前月比マイナス 1.0% で、過去最大の低下幅となった。

これらが影響し、原油価格も下落した。
19日のニューヨーク先物市場のWTI 原油は53.62ドルと下落が続いている。

株価も19日のダウ平均終値は8,000ドルを割り、7,997.28ドルとなった。
(終値では最近の最安値、一時的には10月10日に7,882.51ドルを記録)

 


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少し前まで、日本の円安とは異なり、韓国ではウオン高が続いていた。

2000年頃には1ドル1,300ウオンであったが、2006年には970ウオンとなり、その後も900ドルウオン程までウオン高となった。

2006/8/26 韓国の上場企業、10社中3社が赤字 

しかし、今年の3月後半から急にウオン安となり、1,000ウオン/ドルを超え、8月から急落、10月には1,400ドル/ウオンを超えた。
韓国政府は1兆円の経済対策を発表するなどし、一時1,200ウォン台に戻したが、再び下落し続けている。


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付記 対日本円では半分になった。(100円800ウォンが1600ウォンに)

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これが、多くの企業に思わぬ損害を与えている。

サムスン電子の主要納品業者の泰山LCDは9月に会社再生手続きを申請したが、11月14日、2008年3Qの業績を発表、為替ヘッジ用の通貨オプション商品に関連して6,092億ウォン(約420億円)の損失を計上したことが明らかになった。

損失規模は自己資本の88倍に相当し、昨年の年間売上高に匹敵する金額で、60年分の利益に相当する額の損失をわずか3カ月で出したことになる。

ーーー

2007年頃にウォン高が進み、ほとんどの外為専門家がさらにウォン高になると予想した。

このため、韓国の中小輸出業者は製品を売る際、為替ヘッジに死活を賭けた。

2005年頃にCitiBankが設計し、韓国に紹介した「KIKO」(Knock-in, knock-out)という通貨オプション商品が韓国で流行した。

「KIKO」は約定期間の1年から2年の間に為替が一定の範囲内だけで動けば、企業は一定額のドルを市場よりも高く銀行に売って利益を得ることができる。

初期にKIKOに加入した企業は、商品設計通り実際にウォン高ドル安になったことから為替差益を得た。

それ以降、KIKOは為替ヘッジ商品として知られるようになり、昨年からは外資系銀行や韓国の多くの銀行(国営の産業銀行まで)が競い合うようにKIKO関連商品を発売、契約は急増した。

 

実際にはこの商品は、ウォンが約定額を超えて安くなると、契約額の2倍から3倍にもなるドルを市場で高く買い取り、当初契約を行ったよりも安いレートで銀行に売らなければならない。

為替の変動で企業が得る利益には制限がかかっている一方で、損失は無限大に責任を負わなければならないという奇怪な構造だが、銀行はこれを「先端的な金融技法を活用した安全な為替リスク回避型の商品」と宣伝し、企業に対し融資を行う代償として半ば強制的に購入させたという。

この金融商品を売る際、リスクについてきちんと伝えなかったり、手数料や証拠金なし、としていた。実は別の名目で商品の中に手数料を忍び込ませていた。

しかし最近のように毎日、大きくウォン安が進む状況では、企業の損失は際限なく膨らんでしまう。
泰山LCDはこれで大きな損失を計上した。
金融監督院は10月初めに、「KIKO」が原因での被害額について、520社で5兆ウォン(約3,580億円)に達すると推定している。

「KIKO」により損失を被った120社余りが10月末にシティー、 SC第一、新韓、外換銀行など計13行を相手取り、訴訟を起こす意向を明らかにした。さらに被害企業を募集し、第2次訴訟を進めていく。<p><p><p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p></p>

ーーー

韓国の石油化学は2006年にはウオン高で苦しんだ。
今回はウオン安で輸出比率が多い韓国の石油化学にとり有利な筈である。

しかし、
米国発の金融危機が中国の景気悪化を通して、韓国石油化学業界に直撃弾を与えた。

1116日の朝鮮日報は以下のように伝えている。

韓国の石油化学各社にとって最大の顧客だった中国の需要不振が最も大きな原因で、中国では先月、世界最大規模のおもちゃ会社「合俊」が不渡りを出すなど、中小の輸出企業が続々と倒産している。

この結果、石油化学製品の価格は急激に落ち込み、麗水NCCでは、「最近、合成樹脂の価格が大きく落ち込み、これらの原料となるエチレンやプロピレンの価格を上げられずにいる。いきなり市場が消えてしまったような感じだ」としている。

SKエナジーは1973年に竣工して以来35年目にして初めてエチレンプラントを停止した。
LG化学も減産に入り、麗川NCCも30%の減産措置を断行した。
ロッテ大山石油化学(来年1月2日にロッテの湖南石化と統合)は最近、稼働率を90%から70%に下げた。
湖南石化も、
エチレンの稼働率を30%に下げることを検討している。

SKエナジーでは「石油化学製品は作れば作るほど損になるため、各社とも工場を稼動できずにいる。市場が上向くのを待つほかない状況だ」と語っているが、同社の野積み場には買い手がつかない合成樹脂の在庫があふれている。
麗水の石油化学各社も、工場の周辺や道路のあちこちに在庫品を3メートルもの高さにまで積み上げているという。

さらに、サウジアラビアやイランなどが新設・増設した石油化学工場を稼動させ始める年末からはエチレンなどの価格下落が予想されており、石油化学業界では当分の間、工場の稼動正常化は難しいだろうと懸念している。<p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p>

 

日本の石油化学にとって、対岸の火事ではない。



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Ineos の状況悪化

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昨日、Ineos が「噂が流れているが、全く問題なし」と異例の発表をしたことを報じた。

 2008/11/18 Ineos 苦境?

実際にはこの発表が事実でないことが明らかとなった。

現地時間の11月17日(上記記事のアップ後)、同社はBarclays Merrill Lynch 主導の銀行団に対し、総額70億ユーロの2つの借入契約を2009年5月末まで免責するよう要請したと発表した。<p>HTML clipboard</p>(金利支払中断の意味と思われる。) 銀行団はこれを受け入れた。

グローバルな経済危機の影響を受け、出荷が通常レベルの1/3から1/4に落ち込んでいるという。
「前例のない事態に直面している。需要家は工場を止めたり、在庫を減らしたりしている」としている。

 

同社が巨額の借入金を抱えてやっていけないのではないかとの懸念で、同社の借入金、ボンドの価値が急落した。

同社のユーロ建てローンは額面の47.4-50.5%に落ち込んでおり、第二抵当のローンは額面の24-32%にまで下がった。

同社向け債権の保護の費用は70%以上となった。債権者は10百万ユーロの債権の貸し倒れを予防するためには7百万ユーロの支払いが必要となる。

Moody Ineos の企業としてのレーティングをB1からB32段階下げ、更なる引き下げも検討するとしている。
同社の第一抵当のローンについては
B2に、第二抵当ローンについてはCaa2 に引き下げた。

Ineosでは(借入契約の2009年5月末までの免責を要請したことについて)来年5月には事態がもっとはっきりするだろうとしている。
しかし、市場では、同社が来年
5月末までに問題を解決するとは思えず、76億ユーロの借入金のリストラは避けられないとし、かなりの資産の売却が必要とみている。

Lyondell Basell のボンドの価値も、化学業界の業績悪化見通しから、この数日で額面の13-15%下がっている。


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WACKER Dow Corning 11月14日、江蘇省・張家港市でシロキサンと乾式シリカの生産を開始したと発表した。

両社の投資額合計は12億ドルに達する。

シロキサンと乾式シリカの能力合計は約20万トンで、順次操業度を上げ、2010年末にフル稼働する。

シロキサンは、シリコン(珪素)を原料とするシラン(有機珪素モノマー)のポリマーで、有機ポリシロキサンをべ一スとした材料の総称がシリコーン。

乾式シリカ(ヒュームドシリカ)は二酸化珪素(SiO2)で、主な用途はシリコーン樹脂の充填材。

この事業のため、両社は2つのJVを設立した。

事業 JV社名    出資比率 建設担当
WACKER Dow Corning
シロキサン製造 Dow Corning (Hldg.) 25% 75% Dow Corning
乾式シリカ製造 Wacker Chemicals Fumed Silica Hldg 51% 49% WACKER

シロキサン工場は乾式シリカ工場に原料のクロロシランを供給し、乾式シリカ工場は逆に副生塩酸をシロキサン製造のために供給する。

Dow Corning WACKER は共にアジア、中国を今後の成長を見込める優先地域と考え、最新鋭の技術を投入することとした。

両社はJV製品をもとに、同地で最終製品を別個に製造し、それぞれの需要家に販売する。

WACKER張家港市で、2005年にポリマーパウダーを、2006年にシリコーンエラストマーとシリコンシーラントを製造開始している。

ーーー

Dow Corning はシリコーン事業を行うため、1943年にDow Corning Glass Works (現在はCorning, Inc.)の50/50JVとして設立された。

2007年の売上高は49.4億ドル、純利益は6.9億ドル。

ーーー

WACKER の基は1903年にAlexander Wacker が設立した電気化学コンソーシアムで、1914年にWacker-Chemie GmbHが設立され、1916年にアセトアルデヒド、酢酸、アセトンの最初の大規模生産を行なった。

Wacker 一族が51%Hoechst 49%出資していたが、2006年に株式公開を行った。依然、Wacker 一族が50%強を保有している。

2007年の売上高は以下の通り。

百万ユーロ
Chemicals Wacker Silicones  1,361.0
Wacker Polymers   532.8
Wacker Fine Chemicals   112.4
小計  2,106.2
Wacker Polysilicon   456.9
Siltronic  1,451.6
Others   247.2
Consolidation  -480.7
Total  3,781.3

同社はVAEの製造でAir Products との間に2つのJV(Wacker Polymer Systems:80%保有、Air Products Polymers:35%保有)を持っていたが、本年に入り、両社のAir Products 持株を買い取り、いずれも100%子会社としている。

300mm Wafer では韓国のSamsung との50/50JV Samsung Wafer をシンガポールに設立している。


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Ineos 苦境?

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Ineosはこれまで、EVC、Innovene などを次々買収して拡大してきた。

同社の創業者で会長を務めるのJim Ratcliffe Ineosを担保にして金を借りるという形で、他の事業を買収していった。<p><p><p><p>><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p>

2006/6/14  事業買収で急成長した化学会社 

同社は過去10で、BASFとDowに次ぐ世界第三位の石油化学会社となった。
現在、
20カ国以上で18の事業を行なっており、従業員は16,000人に達する。

同社は equity fund には頼らず、借入金により大きくなった会社である。
BPからの Innovene 買収は90億ドルで、ほとんどが長期借入金で賄った。

昨年の講演で、Ratcliffe会長は、10年の期間の高利のボンドを利用しており、借り入れ期間中は金利の支払いのみであることを明らかにしている。

今回の金融危機は当然予想していなかったもので、同社の経営に大きな影響を与える。
金融危機に加え、実体経済にも悪影響が出ており、特に、Ineosが買収したEVCとHydro のPVCは、住宅不況の影響で非常に苦しい状況にある。

このため同社が借入金返済のため、米国の多くの資産売却を検討しているという情報が広く流されている。

少なくとも、拡大路線は変更せざるを得ない状況にある。

ーーー

同社は11月3日、異例の発表を行なった。<p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p>

INEOS - Adapting in turbulent times

最近メディアでいろいろ推測記事が出ているが、Ineos はこれまで銀行との契約を守らなかったことはない。
この3年間に借入金を大きく減らしており、近いうちに返済期限がくる借入金はない。

2005年のInnovene 買収以降、10億ポンド以上の借入金を返済した。9月末のキャッシュ残高は13億ポンドに達する。

化学産業のサイクルは底にあるが、会社は全事業が利益を上げている。但し、現在の経済情勢のもと、多くの他の企業に歩調を合わせ、重要でない投資計画は再検討している。

全事業にわたり、コストを低減し、効率を高めており、グローバル市場で十分戦っていける。

ーーー

なお、同社はこのたび、テキサス州La PortePP工場の停止を決めた。
合計235千トンで、1系列は本年末、他の1系列は来年1月末に停止、他のプラントから供給を続ける。

 


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各社の中間決算の結果がまとまった。(旭硝子、昭和電工は6月中間決算)

営業損益の傾向をみるため、前期の営業損益の順に並べて対比した。

   
   
   

営業損益をみると、いくつかの会社を除き、ほとんどの会社が大幅減益となっている。
特に、石油化学関係での減益が大きい。ハイテク材料分野でも減益となっている会社が多い。

なお、下記各社については既報 参照

 住友化学、三井化学、三菱ケミカル:2008/11/3 注目会社 2008年9月中間決算-1 
 信越化学:2008/11/5 注目会社 2008年9月中間決算-2 
 三菱レイヨン、東ソー、旭化成:
2008/11/10 注目会社 2008年9月中間決算-4 

例外は以下の通り。

ーーー

旭硝子 (318億円の減収、営業損益 193億円の増益

  売上高 営業利益  
ガラス事業  338億円減  154億円減 板ガラス減、自動車ガラス若干減、ガラス繊維全面撤退
電子・ディスプレイ事業   14億円減  359億円増 TFT液晶用ガラス基板およびPDP用ガラス基板の出荷が大きく伸長
化学事業   35億円増   15億円減  
セラミックス事業その他   10億円増   4億円増  

ーーー

宇部興産 (370億円の増収、営業損49億円の増益

  売上高 営業損益  
化成品・樹脂  146億円増  38億円増 カプロラクタム、底堅い需要で価格転嫁
機能品・ファイン   28億円増  4億円減  
建設資材   58億円増  4億円減 セメント・生コン、建材製品低迷
機械・金属成形   53億円増  4億円減   
エネルギー・環境   86億円増  24億円増 石炭の価格高騰と需給逼迫状況が継続

ーーー

協和発酵キリン  (551億円の増収、営業損109億円の増益

2008年4月1日に協和発酵がキリンの子会社になるとともに、キリンファーマを100%子会社とした。   
2008年10月1日に協和発酵とキリンファーマが合併し、協和発酵キリンファーマとなった。

    2007/10/25 協和発酵とキリンファーマの統合 

このため、協和発酵キリンの前年上期は協和発酵単独、本年上期はキリンファーマを連結した協和発酵のもの。

売上高、営業損益対比 (億円)
  売上高   営業損益
07/9 08/9 増減   07/9 08/9 増減
ノレン
償却前
ノレン
償却後
医薬  689  1,087  398    97  240  197  100
バイオケミカル  438  457  19    40  55  52  12
化学品  510  572  62    33  30  30  -3
食品  209  208  -1    7  7  6  -1
 246  366  119    5  7  7  2
全社  -167  -212  -45     -   -   -   -
 1,926  2,478  551    182  340  292  109
注 合併によるノレン償却 48億円を営業費用処理

薬価改定の影響はあったが、キリンファーマの連結、Amgenからのライセンス料一時金、新製品が貢献し、増収増益となった。

2007年1-6月のキリンの連結決算で、医薬事業の売上高は315億円、営業損益は49億円であった。
(キリンファーマには他にバイオケミカル、化学品もあり)


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11月15日午後1時20分ごろ、福島県会津若松市河東町の昭和電工・東長原事業所で、ホスゲン漏洩の検知器が作動した。

ホスゲンの漏出があったのは、事業所のほぼ中央にあるホスゲンの合成室と貯蔵室の付近とみられる。
ガス濃度は最高で 0.3ppmを記録。警報作動で室内の機械設備が自動停止し、濃度は1時間後にゼロになった。

同社では近隣の住民に広域放送や緊急電話等で知らせ、屋内に入って窓や戸を閉めるよう呼び掛けた。
けが人や体調不良を訴えている人はいない。敷地境界の検知器はホスゲンを検知していない。

同社は「漏出量は微量で人体に影響はない」と説明。詳しい原因を調べている。

 

東長原事業所では本年8月にもホスゲンの流出事故があった。

同事業所は大気汚染防止法に基づき福島県から施設改善の措置命令を受け、再発防止策を提出。10月31日に操業を再開したばかりだった。

昭和電工では「当社は、去る8月9日にホスゲンを漏洩させており、今回、再び漏洩させてしまったことにつきまして誠に申し訳ございません。今後、原因究明の上、徹底的な安全管理策を講じてまいります」と陳謝している。

ーーー

8月9日午前6時ごろ、従業員12人と正門前の商店の女性の計13人が気分不良を訴えた。
10人が市内の病院に搬送され、残る3人が自力で病院に向かったが、いずれも軽症。

ガス濃度測定警報器のアラームが鳴り、ホスゲン流出が判明した。
事業所の敷地外では有毒ガスは検出されていないが、市は周辺の約50世帯に自主避難を要請した。

同社によると、事故当時、入社5年目の男性従業員が1人でホスゲンを無害化する作業にあたっていた。
新商品の塗料用特殊添加剤を製造する過程で、アクリル酸とホスゲンの化学反応後、残ったホスゲンを棟外に隣接した除害塔に送り、カセイソーダの液体を使って無害化する作業にとりかかったが、閉めるバルブの手順を誤ったという。

アラームが鳴った後、別の従業員がバルブを閉め直した。

同社では「当社といたしましても原因究明を進めるとともに、安全管理を徹底し再発防止に努めてまいります」としていた。


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11月14日午前0時10分ごろ、三菱化学水島事業所内の日本ポリプロのプラント(100千トン)で火災が発生した。けが人や建物への延焼はない。

同プラントの直径5センチのパイプから、ノルマルヘキサンとトリエチルアルミの混合触媒が漏れて発火したとみられる。漏出個所から約60~80センチの炎が断続的に出た。
<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>放水すると火勢を強めるため、<p>HTML clipboard</p>パイプの両端を遮断して自然鎮火を待ち、同日午後8時前に火は消えた。

日本ポリプロは日本ポリケム65%/チッソ35%のJVで、2003年10月1日に営業開始した。

日本ポリケムは三菱化学65%/東燃化学35%のポリオレフィン統合会社であったが、PEに関して日本ポリケムが日本ポリオレフィン(昭電/日石化学)との再統合(日本ポリエチレン設立)をするに当たり、東燃化学が別途出資する日本ユニカーが独禁法上の障害となったため、三菱化学が東燃化学の持分を買い取った。

この結果、日本ポリケムは三菱化学100%出資となった。

同社は水島のほか、千葉(チッソ)、四日市(チッソ)、鹿島(三菱)、川崎(東燃化学内)にプラントを持ち、PP合計能力は1,082千トン。

ーーー

三菱化学は10月8日、水島事業所内をパトロール中の作業員が、エチレンプラント(年産能力45万トン)付近で異常な“におい”に気づいた。
直ちに停止して臨時点検したところ、冷凍機の配管溶接部分にひび割れが見つかったため、配管の交換工事を行なうことを決めた。

10月22日夜に運転を再開したばかり。

同社のエチレン生産能力
水島事業所   450千トン
鹿島事業所 第1プラント   375
第2プラント*   453
合 計  1,278
* 全8炉中、第8号炉を除く7つの分解炉の能力。8号炉まで含めた能力は476千トン。

ーーー

三菱化学鹿島事業所では2007年12月21日に、第2エチレンプラントで火災事故が発生し、協力会社従業員4名が亡くなった。

    2008/3/17 三菱化学鹿島事業所火災事故 事故報告書 

2008年3月5日に第2エチレンの8基の分解炉のうち5基が、5月15日に6号炉が、9月12日に7号炉が停止命令の解除を受け、操業を再開したが、残る8号炉については再開の目途は立っていない。

経済産業省原子力安全・保安院は本年2月、三菱化学に対して、鹿島事業所の高圧ガス保安法に基づく完成検査及び保安検査に係る認定を取り消す行政処分を行っている。


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ニューヨーク先物市場のWTI原油価格は、本年初日の1月2日に一時100.00ドル/バレルを付けた。
その後、7月11日には一時147.27ドルの過去最高を記録したが、その後下落が続き、11月13日には一時54.67ドルを付けた。

最近のWTI原油価格は、ダウ平均の上下に対応して上下している。
景気の先行きの動向が原油の需要に影響を与えるため。

   
   
ナフサ価格は原油価格の値下がり以上に下落している。
11月4日の東京市場オープンスペックナフサ価格終値は、276ドル/トンとなった。
これは2003年10月1日の275ドルに次ぐもの。

日本やアジア各国でエチレンセンターが減産をしており、ナフサの需要が減少しているのが理由。
   

OPECは11月29日にカイロで臨時総会を開催する。
イランは、臨時総会で減産を支持する方針であることを明らかにした。


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欧州委員会は11月12日、自動車用板ガラスカルテルで4社に制裁金を課したと発表した。

1998年から2003年の間に目標価格、シェア、需要家割当などの違法の話し合いを行なったとしている。これら4社で市場の90%を占めている。

欧州委員会は匿名の情報で調査を開始し、2005に立ち入り調査を行なった。

制裁金は以下の通り。

  減額率
  (%)
減額
(千
Euro)
    制裁金 
 (千Euro)     円
Saint-Gobain (France)   0      0   896,000  
Asahi/AGC Flat Glass (Japan)   50  113,500   113,500  139億円
Pilkington (UK) (日本板硝子)   0      0   370,000  440億円
Soliver (Belgium)   0      0     4,396  
TOTAL    113,500  1,383,896  

Saint-Gobain 1988年にカルテルで制裁金を払っており、重犯として制裁金が60%の割増となった。

旭硝子/Glaverbel は調査に協力し、資料を提出したため、制裁金は50%の減額となった。

<p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p>自動車用ガラスの制裁金支払いに備え、旭硝子は135百万ユーロ(165億円)を積んでいる。
日本板硝子は建築用ガラスを含め350百万ポンドを引き当てているが、残高は約250百万ポンドのため、2008年9月中間連結決算に新たに89億円の特別損失を計上した。

 

今回の制裁金は総額(1,383,896 千ユーロ)でも、1Saint-Gobain 896 百万ユーロ)としても史上最高となる。

過去の制裁金 順位 
対象分野 制裁金
(百万ユーロ)
 
エレベーター   992 2007/2/28 EU、エレベーターのカルテルで過去最高の罰金
ビタミン   790.5 2001年 (当初は855.2百万ユーロ、2社減額)
 Hoffman-La Roche (462百万ユーロ)、 BASF(296.16
236.8)、
  Aventis(5.04)、Solvay Pharmaceuticals(9.1)、
  Merck(9.24)、
 武田薬品工業(37.05)、エーザイ(13.23)、第一工業製薬(23.4
18)
送電設備   751 2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金
パラフィンワックス    676 2008/10/6 EU、パラフィンワックスのカルテルで制裁金

<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>

なお、ビタミンカルテルは1999年に米国で摘発され、11社に総額9億1050万ドルの罰金が課せられた。

Roche 500百万ドル:米国史上最高(2008年時点でも)
BASF 225百万ドル、武田薬品 72
百万ドル、エーザイ 40万ドル、第一工業製薬 25百万ドル
Merck 14百万ドル、Degussa-Huls 13百万ドル、Lonza 10.5百万ドル、ほか

ーーー

Saint-Gobain旭硝子、日本板硝子の3社は、米国のGuardian とともに、2007年11月に EEA欧州経済領域内での建築用板ガラスのカルテル行為に対して、総額486.9百万ユーロの制裁金を科されている。

  千ユーロ
Guardian (USA)  148 000
Pilkington (UK)  140 000
Saint-Gobain (France)  133 900
Asahi (Japan)   65 000
TOTAL  486 900

2007/12/1 欧州委員会、板ガラスカルテルに制裁金 

ーーーーーーーーーーーーーー

米司法省は11月12日、液晶パネルの販売を巡る国際価格カルテルで、3社が罪を認め、合計585百万ドルの罰金を支払うことに同意したと発表した。

  百万$ TFT-LCD 販売先 期間
LG Display  400 worldwide 2001/9-2006/6
Chunghwa Picture Tubes   65
Sharp  120 Dell (computer monitors and laptops) 2001/4-2006/12
Motorola (Razr mobile phones) 2005/- 2006/
Apple Computer (iPod portable music players) 2005/9-2006/12

<p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p>

カルテルは2つ。3社はいずれも他社とカルテルを結んでいた。
相手先はまだ明らかにされていないが、他にも複数の日本メーカーが調査を受けており、今後有罪を認める企業が相次ぐ可能性がある。

第一は韓国のLG Display (former LG.Philips LCD) と台湾のChunghwa Picture Tubes(中華映管)で、台湾・韓国・米国でTFT-LCD パネルの価格を協定したというもの。

第二はシャープで、DellAppleMotorola 向けのTFT-LCDパネルの価格を日米の他社と協定したとされる。

<p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p>LGの4億ドルは米司法省が独禁法で課した罰金で2番目に大きい。
過去最高は、1999年のスイスの製薬会社Hoffmann-La Roche のビタミンカルテルの5億ドル。
<p><p><p><p>p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p></p></p> 
シャーマン法では、罰則は法人の場合には1億ドル以下の罰金、自然人の場合には100万ドル以下の罰金若しくは10年以下の禁錮又はこれらの併科となっている。ただし、罰金額は、違反行為によって自らが得た利得の2倍の額又は違反行為によって被害者に与えた損害の2倍の額まで引き上げることができる。
<p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p>

LG Display は13日、「課徴金は2009年から5年間分割納付することにした」と述べた。
全額、今年の会計に反映する予定。

液晶パネルカルテルに関しては、日本の公正取引委員会や、韓国、EUの当局も調査している。

 


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三菱レイヨンは11月11日、世界最大手のMMAメーカー、Lucite International Group Limited の発行済み株式の全てを取得し、連結子会社化するための株式売買契約を締結すると発表した。
Lucite も同日発表を行なった。

       2008/9/5 MMAメーカー Lucite、売却か? 

買収概要は以下の通り。

・Lucite International Group Limited 全株式を買収

所有株式数
(千株)
持分比率
(%)
Funds managed by Charterhouse Capital Partnership  7,794  81.6
Ineos Investors  1,100  11.5
ルーサイト社の取締役  350   3.7
AMJ   206  2.2
米国ルーサイト社従業員  54  0.6
Halifax EES Nominess International Limited   52  0.5

・買収費用総額(予定) 16億USドル既存外部借入金の引受けを含む

  買収費用は三菱東京UFJ銀行による融資で賄う。

スケジュール 2008年11月11日 株式売買契約締結、
           関係当局認可を経て、2009年1月本件買収完了予定

・将来の新興市場への展開等での更なるシナジーを求めて、戦路的事業パートナーの参画を募る予定。
    三菱レイヨンがマジョリティ保有。出資比率、出資タイミング等は調整中。

 

同社は買収目的を次のように説明している。

①MMA市場におけるリーディング企業の実現

MMAモノマー能力シェア
2007/末 2010/末
三菱レイヨン   12%   14%
Lucite   23   22
(合計)  (35)  (36)
住友化学     6    8
LG MMA    3    5
(合計)    (9)  (13)
旭化成    3    5
R&H (Dow)   15    13
Evonik (旧Rohm   14   12
Arkema    6    5
その他   18   17
* 2007年 310万トン
  
三菱レイヨン 第6次中期経営計画より

MMA業界に関しては 2006/4/13  MMA事業の拡大 

②米欧アジアでのバランスの取れた三極生産体制を確立

Lucite:欧州(旧 ICI)、米国(旧 DuPont)、上海、シンガポール(アルファ法)
三菱レイヨン:日本、タイ(サイアムセメントJV)、中国恵州、韓国(湖南石化JV)、米国(計画)

東欧、ロシア、南米など成長の期待される新興市場への展開を加速

③MMA製造技術の拡幅(新エチレン法の獲得)

LuciteACH法、新エチレン法(アルファ法)
三菱レイヨン:直酸法(C4法)

Lucite は11、シンガポールのアルファ法プラントが予定より早くスタートしたと発表した。
能力は12
万トン

同社は2番目のアルファ法プラント建設の検討を進めている。能力は25万トン

④買収シナジーの発現

ーーー

Lucite と三菱レイヨンは20056月にMMA事業での提携契約を締結した。
両社は投資を分担し、相互に製品を供給すること、将来両社工場を
JVとするための検討を行なうこととした。

1. 北米 建設: 三菱レイヨン
  場所: テキサス
  規模: MMA及びMAA(メタクリル酸)14万トン
  製造法: C4法
  時期: 2009年末完工、2010年商業運転

2. アセアン 建設:
Lucite International
  場所: シンガポール
  規模: MMA12万トン
  製造法: アルファ法(C2法)
  時期: 2007年末完工、2008年商業運転

ーーー

Lucite 2006年に売却を検討した。三菱レイヨンも交渉を行なったが、当時の売値は20億ドル~25億ドルで、価格が折り合わなかった。

同社はシンガポールのAlpha 法プラントの立ち上がるのを待って、希望価額での売却か、又は上場を狙った。

しかし、今回の金融危機で情勢が変わった。

Lucite Moody の格付けで Caa1 というジャンク級に下げられた。
また、
Lucite を狙う会社は多いが、買収資金の手当が難しくなった。

最後は、サウジのSipchem Lucite技術を導入してANM 200千トン、MMA 250千トンを事業化する)がサウジの投資会社Jadwa Investment と組んで三菱レイヨンと争ったが、三菱UFJから資金を確保した三菱レイヨンが買収した。

買収にはLucite の債権者の同意を必要とするが、最近は欧州のLBOの債権は平均して額面の65.8%でしか売れない状況で、今回は額面で引き取ってもらえるため、全く問題はないとされている。

逆に三菱レイヨンにとっては、最近の英ポンド安、ドル安により、非常に安く買収できたこととなる。

買収額の16米ドルは10億英ポンド強となる。
2008年7月初めには210円/ポンドであったが、11月上旬には155円/ポンド程度となっており、2,100億円が1,550億円に下がることとなる。

 


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各社の中間決算の結果がまとまった。(中外製薬は6月中間決算)

 
 
 
 

1)武田薬品工業 (987億円の増収、営業損益 1,799億円の減益)

2008/11/7  注目会社 2008年9月中間決算-3 参照。 

TAP Pharmaceutical Products の分割・統合、米国バイオ医薬品会社 Millennium Pharmaceuticals 買収した。

両社の子会社化により、両社の売上高が本年5月から武田の連結売上高に加わった。
円高による影響額(280億円の減収)を補い、増収となった。

しかし、これに伴う費用処理で大幅減益となった。
なお、TAP のルブロン事業をJV相手の Abbott
に譲渡した譲渡益を特別利益に計上している。

米国事業再編によるTAP社の分割・子会社化およびミレニアム社買収の影響
    TAP社の分割・子会社化 ミレニアム社の買収    合計
販売費一般管理費 無形固定資産償却費     124億円     199億円    323億円
のれん償却費       -     68億円    68億円
研究開発費 インプロセスR&D費     573億円    1,114億円   1,687億円
営業損益   -697億円   -1,381億円  -2,078億円
特別利益 ルプロン事業譲渡益     753億円       753億円 

 

2)アステラス製薬 (97億円の増収、営業損益 168億円の減益)

円高の影響(売上高 -170億円、営業利益 -34億円)があったが、増収となった。

研究開発費は787億円増加したが、増収と売上原価率の低減で、営業損益は168億円減に止まった。

 

3)第一三共 (374億円の減収、営業損益 323億円の減益)

円高傾向で推移したこと、欧州子会社の決算期の変更、医薬品事業への集中化方針でその他事業を自立化させたことなどにより減収となった。
(2007年1月-3月の売上高141億円、営業利益18億円が前年第1四半期に加算されている。)

減収に加え、海外における営業基盤の拡充や積極的な研究開発投資などにより、営業利益は減益となった。

 

4)エーザイ (360億円の増収、営業損益 105億円の減益)

前期のMGI PHARMA, INC.買収に伴うのれん償却額の計上や研究開発活動への積極的資源投入の結果、減益となった。

 

5)田辺三菱製薬 

2007年10月1日に田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併したため、前年比は増収増益となっているが、上のグラフは前年上期は両社の成績を合算した。そのベースでは14億円の減収、営業損益は 57億円の減益となる。

売り上げ減少、売上原価率悪化、合併によるノレン償却(50億円)、研究開発費増加で減益となった。

 

6)中外製薬 (250億円の減収、営業損益 127億円の減益)

抗インフルエンザウイルス剤「タミフル」の売上高減少、昨年末のサノフィ・アベンティスとの販売提携解消が減収、減益の理由。

特別利益に「アクテムラ」に関わるホフマン・ラ・ロシュとの共同開発精算金 63.4億円が入った。

 

7)大日本住友製薬 (56億円の増収、営業損益 41億円の減益)

薬価改定の影響やアムロジンの減収があったが、新製品の発売、新規生産受託の開始、輸出の増加で増収となった。

統合失調症ルラシドンの海外臨床開発の進展に伴う研究費の増加で減益となった。

 

8)大正製薬 (56億円の増収、営業損益 4億円の増益)

前期末に連結子会社としたビオフェルミン製薬の売上高44億円が加わった。

「当期損益」は、合併したビオフェルミン製薬のノレン償却 128.5億円があり、赤字となった。

 

9)塩野義製薬 (9億円の増収、営業損益 13億円の増益)

医療用医薬品全体の売上高はほぼ横ばい、「工業所有権等使用料収入」が増加、シオノギエンジニアリングサービスの工事受託は減少した。

ーーー

配当

武田薬品工業は前年の168円から176円に増配する予定。
因みに、同社の2001年3月期の配当は50円で、毎年増配している。

エーザイも前年の130円から140円に増配する。(2001年3月期の配当は23円)

アステラス製薬は前年の110円から120円に、第一三共は70円から80円に増配する。


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中国政府は11月9日夜、国内需要拡大のため2010年末までに総額4兆元(約57兆円)規模の投資を実施する緊急経済対策を発表した。

5日の国務院常務会議で「世界の金融危機は日々深刻さを増しており、積極財政と適度に緩和された通貨政策の実施が必要だ」と指摘、同対策を決定した。

これまでは景気の過熱が問題視されたが、ほぼ10年ぶりに「緩和」姿勢を打ち出した。

 

新華社通信によると、次の10項目が含まれている。

1) 住宅
  手ごろな価格、安い家賃の住宅を建設、スラム街撤去を速める。
   
2) 地方のインフラ
  田舎の道路、<p><p>HTML clipboard</p></p>電力網
  メタン燃料、飲料水(「南水北調:長江から取水し、西北地区と華北地区へ」促進を含む)
  危険な貯水池の強化 大規模灌漑地区の水保全の強化
  貧困救済努力の強化
   
3) 輸送
  輸送ネットワーク拡大の促進
  幹線鉄道の拡張、西部地区に空港建設
  都市の電力網の改善
   
4) 健康、教育
  医療・健康サービス拡大
  文化・教育部門の開発促進、地方の中学増設
   
5) 環境
  下水、ゴミ処理施設建設での環境保護
  水質汚染の防止
  グリーンベルト、植林
  省エネ、公害防止
   
6) 産業
  イノベーション、リストラの促進
  ハイテク、サービス産業の開発支援
   
7) 災害復興
  四川大地震の復興事業
   
8) 所得
  平均所得の引き上げ
  来年度の穀物買い上げ、農家補助金の引き上げ
  都市低所得者への補助金増加
  企業従業員の年金資金増
   
9) 税金
  増値税の改革
  企業が固定資産を購入した場合、従来はそれにかかる増値税を控除できなかったが、全産業でこれの控除を認める。
  これにより、1200億元の負担減となる。
  注)日本の消費税は控除可能
   
10) ファイナンス
  経済成長維持のためのファイナンス支援
  商業銀行の貸し出し枠の撤廃
特定プロジェクト、地方、中小企業、技術イノベーション、M&Aによる産業合理化への貸し出し増加

<p>HTML clipboard</p>

付記

増値税の改革の詳細

▽企業は付加価値税の計上にあたって、設備投資分の付加価値税を控除できるようになる
▽これまで付加価値税が免除されてきた輸入設備が新たに課税対象となる
▽外国投資企業による国産設備の調達における付加価値税の還付が取り消しとなる
▽小規模納税者の付加価値税率が一律で 3%に引き下げられる
▽鉱産物の付加価値税率が17%に戻される――など。


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SABIC子会社IBN ZAHR(Saudi European Petrochemical Co.)はこのたび、Al Jubail で建設していたPPプラントが生産開始したと発表した。

能力は500千トンで、1系列としては世界最大。
第1系列
320千トン(当初 260千トン)と第2系列 320千トンと合わせ、合計能力は 1,140千トンとなる。

SABICはほかにYanbu YANPET (SABIC/ExxonMobil JV) PP260+350千トン)を生産している。

また、IBN RUSHD (Arabian Industrial Fibers) YanbuPPプラントを建設する。

    2008/8/12 SABICのArabian Industrial Fibers、PP進出 
     

SaudiAramco と住友化学のJVのPetro-Rabigh は2系列(ホモ、ブロック各350千トン)合計700千トンのPPを建設している。

本計画は、Dow のUNIPOL法を採用、ホモとランダムを生産する。
YANPET PPと合わせると、SABICでのUNIPOL法PPの能力は175万トンに達する。

計画管理と基礎設計はAker Kvaerner が担当、建設は三星エンジニアリングが担当した。

IBN ZAHR は1984年にSABIC(70%)Neste Oy(10%)、Eni 子会社のEcofuel (10%)、Arab Petroleum Investment (APICORP) (10%) のJVとして設立された。
20067月にSABICNeste Oy の持株を買収し、現在は80%の株主となっている。

IBN ZAHR ではPPのほか、MTBEを生産販売している。

ーーー

付記

<p><p>HTML clipboard</p></p>

本日の日本経済新聞に三菱レイヨンのルーサイト買収の記事が出た。

 2008/9/5 MMAメーカー Lucite、売却か? 参照

<p>HTML clipboard</p>

三菱レイヨンは11月11日、ルーサイト買収を発表した。
Ineos 持分を含め 100%を、16億米ドル(外部借入金引受を含む)で買収する。
 

 


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三菱レイヨン

各事業とも原燃料価格の高騰、円高の進行、期後半からの世界的な景気減速による需要減の影響を受け、減収減益となった。
上期損益は前年同期の109億円から1億円、年間損益は前年の143億円からゼロになる予想で、配当も昨年の年間11円を年間6円に減配する。

一般的には売価上昇により増収となる企業が多いが、同社の場合、アクリル繊維が中国市場需要減退、生産調整強化により、前年同期比-116億円の減収となった。同部門は赤字に転落する。

同社は退職給付会計の数理計算上差異を翌年度に営業費用計上しているが、前年度の損の半年分30億円を計上したのも影響した。
株式市場の低迷により、今後、各社とも(損益算入の方法により差があるが)影響を受けると思われる。

特別損失としてインドネシアの紡績会社(日本向け紡績糸供給基地)を売却し撤退する損失引当43.5億円を計上した。(後記)

                                                     単位:百万円(配当:円) 
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
07/9中間  213,588  123,642  22,829  10,889  21,852  14,438  10,905  8,434  5.5  
08/9中間  198,292     2,942     3,644      126    3.0  
                     
08/3  418,529  240,205  37,508  16,044  33,968  20,271  14,274  9,966  5.5  5.5
09/3予  405,000     6,000     6,000    0    3.0  3.0

同社は2006年3月期以降、退職給付会計の数理計算上差異の処理を変更し、前年度の差異を翌年度に一括営業費用に落としている。

2008年3月期は28億円の損が発生、前期分調整後、営業損益で
-21億円(純損益で-12億円)の処理を行なった。
2009年3月期は同様に61億円の損が発生、営業損益で
-60億円(純損益で-36億円)処理する。

営業損益対比                          (億円)
  07/9中 08/9中 増減   07/3 08/3 09/3
予想
増減
化成品・樹脂   131    33  -98     387   223  87  -136
アクリル繊維・AN    15   -32  -47      22    7  -71   -78
炭素繊維・複合材料    67    20  -47     121   110  32  -78
アセテート・機能膜    16    7   -9      66    34  12  -22
全社    -1    1  2      1    0  0  0
合計   228   29  -199     597   375  60  -315

数理計算上差異を除外すると、以下の通りとなる。

営業損益対比 数理計算上差異除外            (億円)
  07/9中 08/9中 増減   07/3 08/3 09/3
予想
増減
化成品・樹脂   136    52  -84     295   236  125  -111
アクリル繊維・AN    15   -29  -44       1    10  -65   -75
炭素繊維・複合材料    69    25  -44     103   113  40  -73
アセテート・機能膜    16  10   -6      54    36  20  -16
全社   0    1  1      1    0  0  0
合計   235  60  -175    455   395  120  -275

 

前年上期対比の減益175億円の内訳は以下の通り。
 原燃料価格 
-122
 販売価格 37(為替
-39)
 数量 
-41
 コストその他 
-49
 合計 
-175

特別損失の事業整理損失引当金として、特別損失に4,352百万円を計上した。

インドネシアの紡績会社(アクリル繊維) P.T. Vonex Indonesia 保有全株式をインドネシア人実業家Choi Wijaya 氏に売却し、インドネシアにおける紡績事業から撤退する。

同社は1974年設立、三菱レイヨン97.3%、Choi Wijaya氏 2.7%(当初株主の双日から取得)の出資で、90年代以降、日本市場への紡績糸供給基地であったが、日本産地縮小により糸需要が減少、業績が悪化していた。
原料コスト上昇、世界的需要減退で事業環境が急速に悪化したため撤退する。

2009年1月に経営権を譲渡、4月に株式を譲渡する。

ーーー

東ソー 

 単位:百万円(配当:円) 
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
07/9中間  400,035  279,720  30,689  18,513  29,463  20,643  14,939  13,027  4.0  
08/9中間  425,775    12,009    13,574     5,318    4.0  
                     
08/3  827,394  576,750  59,107  36,307  52,451  37,314  25,183  20,996  4.0  4.0
09/3予  860,000    22,000    22,000    10,000    4.0  4.0
営業損益対比(億円)
  07/9中 08/9中 増減   08/3 09/3
予想
増減
石油化学    71    45  -26     150  76  -74
基礎原料    12    -8  -20      27   -90  -117
機能商品   207    66  -141     380  202  -178
サービス   17    18  1      34  32  -2
営業損益合計   307   120  -187     591  220  -371

   

前年同期比 -187億円のうち、
  東ソー本体 
-78億円(うち、売価差-購買価格差が-36億円
  連結子会社と調整が
-108億円となっている。

年間対比 -371億円は、
  東ソー本体 
-223億円(うち、売価差-購買価格差が-62億円
  連結子会社と調整が
-148億円となっている

基礎原料部門はVCM-PVCが中心で、機能製品部門にはウレタン原料がある。
同社はこれまでビニル・イソシアネート・チェーンに大きな投資をしてきたが、今後はこれらが足を引っ張る恐れがある。

ーーー

旭化成

ケミカルズの減益が大きい。

 単位:百万円(配当:円) 
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
07/9中間  830,757  24,064  63,689  15,851   63,145  16,469  38,019  18,131  6.0  
08/9中間  843,185    40,139     40,665    23,415    7.0  
                     
08/3 1,696,789  49,923 127,656  33,801  120,456  34,696  69,945  38,105  6.0  7.0
09/3予 1,739,000    95,000    95,000    55,000    7.0  7.0
営業損益対比(億円)
  07/9中 08/9中 増減   08/3 09/3
予想
増減
ケミカルズ  362  185  -177    652  435  -217
ホームズ  48  30  -18    214  230  16
ファーマ  77  102  24    127  150  23
せんい  35  17  -18    72  20  -52
エレクトロニクス  115  82  -32    222  140  -82
建材  21  8  -13    28  15  -13
サービス・エンジニアリング等  27  31  3    52  50  -2
全社  -49  -53  -5    -90  -90  0
営業損益合計  637   401  -236     1,277  950  -327

 

ケミカルズでは上期の前期比増減 -177億円の内訳は、

  数量差   
-23
  売価差    216 (うち為替要因 
-100
  コスト差等 
-370

となっている。

ーーー

三菱ガス化学の上期の損益は、今後の日本の化学会社の損益の方向を示唆している。

中国市場需要減退、生産調整強化による減 日本市場の需要減退も、輸出は壊滅的に
  それに伴う競争激化による値下げ競争
上期の原料価格未転嫁 競争激化による値下げ競争→)
上期の原料価格未転嫁分の転嫁も不可能に
  販売数量減、売価低下、減産によるコストアップで赤字に
     
・為替差損 円高で輸出及び海外事業損益で為替差損
     
退職給付会計の数理計算上差異で損失処理 株価低落で損失増加
     
事業整理損失 国内外での事業整理損失の増大
     

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鉄鉱石価格、下落へ

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本年度の鉄鉱石価格は大幅に上昇した。

鉄鋼大手各社は2月に、2008年度の鉄鉱石(ブラジル産)について、資源最大手Vale do Rio Doce との間で前年度比65%の値上げで合意した。
1トン当たりの価格は80ドル弱となり、07年度と比べ約30ドル上昇する。鉄鉱石の値上げ
は6年連続。

    2008/4/8 鉄鋼原料価格 急騰 

スポット価格は140ドルにもなっており、この価格はそれでも非常に安いものであることが分かった。

623日にRio Tinto は宝鋼集団向けの価格(単位:cent/dry metric ton unitが下記の通り決定したと発表した。

    2007   2008  
粉状鉱   80.42  144.66  79.88%up
塊状鉱  102.64  201.69  96.5%up

dry metric ton unit は含有鉄分1%当たりの鉄鉱石価格。
豪州産ヘマタイト系鉄鉱石には通常、鉄分
64%程度、ブラジル産ヘマタイト系鉄鉱石には同66.50%程度が含まれている。

参考までに日本・韓国向けの上記Vale の価格(cent/dry metric ton unit)は次の通りで、Rio の中国向け価格より20%程度安い。

    2008  
Southern System fines  118.98  65%up

Vale do Rio Doce はRioとの値上げ幅の差の解消を狙い、日本や中国の鉄鋼メーカーに10月出荷分から1~2割の追加値上げを求めた。

ーーー

しかし、中国では経済減速に伴い鉄鋼需要が頭打ちとなった。
鉄鋼大手は相次ぎ減産を打ち出しており、鉄鉱石の需要も落ち込んでいる。湾港倉庫の鉄鉱石在庫が増加している。

11月4日の中国紙は、Vale が中国向け鉄鉱石の12%追加値上げ要求を撤回したと報じた。
日本向けも値上げ要求を撤回するとみられる。

ーーー

オーストラリア資源中堅のMount Gibson Ironこのたび、中国鉄鋼大手の首鋼集団(Shougang Group )と1トン当たり40米ドルで鉄鉱石(塊状、粉状とも)の売買契約を結んだ。

同社は中国の日照鋼鉄などと長期契約(上記のRioの宝鋼集団向け価格と同価格)を結んでいるが、このうち数社から1012月期の出荷見合わせを要請され、11月に入って3社から契約破棄を通告されたという。

11月7日の日本経済新聞では、塊状201.69ドル、粉状144.66ドルから40ドルに(最大80.2%)の値下げとなっているが、これは価格のcent/dry metric ton unit を$/tと誤ったもので、粉状でみると、96ドルから40ドルへの値下げとなる。

同社は首鋼集団への安値での鉄鉱石販売とともに、首鋼集団からの出資も受け入れる。

中国首鋼グループ傘下の2社が1億6250万豪ドルを出資し、1株 0.6豪ドルでMount Gibson Iron の株式を購入し、支配権を得る。
これにより、今後の鉄鉱石供給を確保する。

首鋼グループは今年年初、鉄鉱石の供給を保障するねらいで、Mount Gibson Iron の株式を1株 2.60豪ドルで買い上げ、同社の支配権を獲得しようとした。
この時はオーストラリアの監督部門が公開買付を求め、阻止した。

しかし、金融危機により、同社の株価は下落を続けたため、今回、年初の23%の株価で買収することとなった。

 

この鉄鉱石の大幅値下げは他にも波及すると思われる。



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武田薬品工業

武田薬品の中間決算は前年同期比で増益となったが、損益は大幅減益となった。(但し、当初予想よりは増益)
配当は4円増配し、年間配当予想は176円とした。
 

                                     単位:百万円(配当:円) 
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益    配当
中間 期末
07/9中間   708,468   264,905   333,696   218,011  84.0  ー
08/9中間 当初予想     760,000      20,000      35,000      20,000   85.0  ー
実績   807,140    85,031   100,976    71,788  88.0  ー
増減      98,672  -179,874  -232,720  -146,223  +4.0  ー
             
08/3  1,374,802   423,123   536,415   355,454  84.0  84.0
09/3予想 当初予想  1,570,000  240,000     260,000  160,000  85.0  85.0
実績  1,560,000  270,000     290,000   195,000  88.0  88.0
増減  185,198  -153,123  -246,415  -160,454  +4.0  +4.0
      * 当初予想は2008/5/9

同社は Abbott Laboratories との50/50JVのTAP Pharmaceutical Products Inc.会社分割を実施し、TAPの販売機能を武田ファーマシューティカルズ・ノースアメリカに、開発機能を武田グローバル研究開発センターに移した。
また、米国バイオ医薬品会社 Millennium Pharmaceuticals, Inc. を買収した。

    2008/4/4  武田薬品工業、米国事業再編 

両社の子会社化により、両社の売上高が本年5月から武田の連結売上高に加わった。
円高による影響額(280億円の減収)を補い、増収となった。

この米国事業再編に伴い、多額の無形固定資産と「のれん」の償却や、仕掛中の研究開発費(インプロセスR&D)が発生、これらを上期に費用処理したため、一時的な費用 2078億円が発生した。

これを除くと、営業損益は前期比増益となる。

経常損益は買収に伴う米国の手元資金の大幅減と金利低下により受取配当が減少するなどで、実質ベースでも減益となった。

なお、TAPの分割によるルブロン事業の譲渡益を上期の特別利益に計上した。

米国事業再編によるTAP社の分割・子会社化およびミレニアム社買収の影響
    TAP社の分割・子会社化 ミレニアム社の買収    合計
販売費一般管理費 無形固定資産償却費    124億円  199億円  323億円
のれん償却費     -  68億円   68億円
研究開発費 インプロセスR&D費    573億円  1,114億円  1,687億円
営業損益  -697億円  -1,381億円  -2,078億円
特別利益 ルプロン事業譲渡益    753億円       753億円 

ーーー

なお、同社は2007年3月期に、移転価格税制に基づく更正処分に関する追徴税 571億円を計上した。

TAP Pharmaceutical Products との間の2000年3月期から6年間の製品供給取引等に関して、米国市場から得られる利益が武田に過少に配分されているとして、移転価格税制に基づき、追徴課税を受けたもので、同社は異議申し立てを行っていた。

この期間のTAPは利害の反する武田薬品とAbbott との50/50JVであり、大阪国税局の課税はおかしい。

    2006/6/29  武田薬品、移転価格税制に基づく更正 

しかしながら、今回、分割後のTAPは武田薬品の100%子会社となるため、移転価格税制が適用される。

このため、同社は取引価格について、関連企業間取引の価格設定の妥当性について事前に税務当局に確認を受ける制度である「事前確認」を申請、上記課税について、国税庁に対し、米国との相互協議申立書を提出した。


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中国国家品質監督検査検疫総局は10月30日、日本から輸入したしょうゆなどから有害物質トルエンと酢酸エチルが検出されたことが広東省検疫当局の調べで分かったと発表した。

検出されたのはトルエンは0.00064~0.0053ppm、酢酸エチルは0.417~0.537ppm で、輸入業者が既に対象製品を販売店から撤去したという。

北京の日本大使館は31日、問題の商品名とメーカーを公表した。

   ヤマサ醤油 「NH小包日式醤油」
   万城食品  「NH小包わさびペースト」
   キッコーマン 「公務小醤油」

キッコーマンは31日、同社に「公務小醤油」という名前の商品はないとした上で、下記の発表を行なった。

この件につきましては、日本醤油協会よりすでに、「微量であり、人の健康に影響を及ぼすとは考えられない」 との見解が示されております。(下記)
弊社としましても、トルエンおよび酢酸エチルは、通常、しょうゆに含まれていること、検出量が微量であることから、人の健康に影響をおよぼすものではないと考えております。

なお、しょうゆ中に微量のトルエンが含まれていることについては、20年以上前より日本農芸化学会で報告されており 学会での定説とされています。
また、
酢酸エチルは、醸造物中に香気成分として含まれます。酵母によって生成されたエチルアルコールと原料由来、あるいは酢酸菌や乳酸菌によって生成された酢酸から酢酸エチルが生成されます。

日本醤油協会では「いずれも微量であり、人の健康に影響を及ぼすとは考えられません」とし、検出レベルについて以下のように説明している。

上記検出レベルに対する考察
① トルエン
 ○ 日本の水道水の水質管理目標値 0.2mg/L(ppm)以下
 ○ WHO 水質基準ガイドライン値 0.7mg/L(ppm)以下
 上記の0.0053ppmは、水道水に設定された値に比較し十分に低いレベルである。

② 酢酸エチル
 醸造物中の酢酸エチルの濃度(ppm)
   しょうゆ(15)、清酒(12~45)、米焼酎(25)、高粱酒(中国酒)(1280)、茅台酒(中国酒)(1390)、
   ビール(10~20)、赤ワイン(95~174)、白ワイン(46~98)
 上記の0.537ppm は、一般に醸造物中に含まれる量に比較し低いレベルである。

ヤマサ醤油も、「NH小包日式醤油」という商品名の商品は弊社にはありませんとし、キッコーマンと同じ説明をしている。

万城食品では、「検出された量はいずれも微量であり、当社としては人の健康に影響を及ぼすものとは考えておりません」としている。
同社では製造工程ではトルエン・酢酸エチルは一切使用していないが、包装フィルム製造時これらの物が使用されている事は承知しているとし、食品衛生法・食品・添加物の規格基準の何れの数値をも下回っているので、何ら問題ないものと判断するとしている。

ーーー

実はこれは厚生労働省の措置に対する報復であった。

厚生労働省は10月7日、以下の発表を行なった。

つぶあんからのトルエン、酢酸エチルの検出について

本日、別紙のとおり、名古屋市において公表されたのでお知らせします。
なお、トルエンと酢酸エチルが検出された製品の同一ロット品については、輸入者が自主回収を行っています。

本事案の発生を踏まえ、厚生労働省としては次の対応をとったところです。
1 当該製造者からのあんについて、本日以降、輸入手続を保留
2 都道府県等に対し、同様の事案があった場合には直ちに報告するよう要請
3 当該品は日本国内において加工されておらず、未開封で流通していたことから、
  中国政府に対し、製造段階における異物混入の有無等について確認を要請

<製品の概要>
1.品 名:つぶあん (賞味期限2009年4月17日)
2.輸 入 者:マルワ食品株式会社(静岡県磐田市宮本218-2)
3.原 産 国:中華人民共和国
4.製 造 所:LANGFANG TORA YA FOODSTUFF CO., LTD.(河北省廊坊市)

5.検査結果

項目 苦情品 苦情品と同一品(1) 苦情品と同一品(2)
トルエン 0.008ppm 0.008ppm 0.010ppm
酢酸エチル 0.16ppm 0.28ppm 0.11ppm

6.検査機関:名古屋市衛生研究所

 

「粒あんを食べてめまいがした」との苦情が保健所に寄せられ、食べ残しを検査した。

同日付の朝日新聞は以下の解説をつけている。

トルエンは、塗料の溶剤などとして使われる。空気中の濃度が高まると、のどや目に刺激を感じるとされる。健康被害が報告された中国製冷凍ギョーザの包装の外側から検出されたことがある。酢酸エチルはトルエンと同様に溶剤として使われ、マニキュアの除光液にも含まれる。口にすると頭痛や眠気を催すほか、意識を失うことがある。

 

実際には、この検査結果は、上記の日本醤油協会の「考察」によると、「いずれも微量であり、人の健康に影響を及ぼすとは考えられない」ものである。

検疫総局は、(それを知った上で?)、日本の報道を引用し、日本でトルエンなどが入った食品を食べた人が体調不良を訴えたと指摘している。

ーーー

国立医薬品食品衛生研究所の畝山智香子さんは「食品安全情報blog」http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20081031#p4 で、「これは日本側が先にやった間違いだし、謝った方がいいと思うけど」、とコメントしている。

中西準子さんはホームページの雑感451-2008.11.4「信じられない認識と対応-トルエン」で、以下のように述べている。

これまで、マスコミの過剰報道がしばしば問題になってきた。しかし、厚生労働省がこうではどうしようもない。国際紛争の引き金になりかねない。猛省を望む。そして、もっと勉強してほしい、監視安全課と言うからには。

 


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信越化学

減益発表が相次ぐなかで、信越化学は好調である。

                                           単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
07/9中間  687,736  359,416  140,042  41,301  146,023  46,605   95,194  32,471  40.0  
08/9中間  695,413  359,700  150,101    156,519  56,200  100,953   38,800  50.0  
                     
08/3 1,376,364  708,580  287,145  81,931  300,040  92,528  183,580  50,229  40.0  50.0
09/3 1,400,000    307,000    320,000    200,000    50.0  50.0
営業損益対比(億円)
  07/9 08/9 差異   08/3 09/3
予想
増減
有機・無機化学品  482  555   73     995    
 塩ビ系  163  182  19     315    
 シリコーン系  211  228   17     431    
  その他  108  145  37     249    
電子材料  790  794  4    1,621    
  半導体シリコン  695  699   4    1,411    
  その他  95  95   0    210    
機能材料   130  154  24     260    
調整   -2  -2  0      -4    
合計  1,400  1,501  101    2,871  3,070  199

塩ビは日米の住宅不振、中国の需給緩和などで、世界の各社が大幅減益となっているなか、シンテックは世界中の顧客に販売し、フル操業を継続した。

昨年度はさすがに減益となったが、中間決算では前期並みとなった。
なお、ドルベースでは 2007/6
134百万US$から2008/6153 百万US$と増えている。

信越化学の塩ビ系連結営業損益182億円に対してシンテックの上期経常損益は160億円で、ほとんどをシンテックで確保した。

これに対して、米国の塩ビ各社はトントンか、赤字の状況。

 

好業績を受け、同社は配当をどんどん増やしている。

 


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米国のエタノール最大手 VeraSun Energy 10月31日、子会社24社とともに会社更生法(Chapter 11)を申請したと発表した。

コーン価格の更なる上昇を予想して先物購入をした結果、第3四半期にコストが急上昇し、大きな赤字を計上した。資本市場の悪化、与信のタイト化により、資金が行き詰ったもの。

同社では雇用と生産販売は従来どおり続けるとしている。

ーーー

同社はArcher Daniels Midland とトップ争いを続けている。(第3位には大きく水を開けている)

同社は2001年の設立で、本社は南ダコタ州 Sioux Falls にあり、8州16箇所(1箇所は建設中)に工場を持っている。
85%エタノール含有のガソリン E85 も直接販売している。

米国の再生可能燃料能力(単位:百万ガロン/年)
Company Operating Capacity Expansion Capacity Under Construction Capacity
VeraSun Energy   1,420   220
Archer Daniels Midland   1,070   550
Aventine Renewable Energy    207   226
Abengoa Bioenergy    198   176
Renew Energy    130
総合計  10,893   671  2,116
  ソース Renewable Fuels Association (October 30, 2008) 

ーーー

同社の本年第2四半期は好業績であった。

売上高は前年第2四半期の 169.6 百万$ から499%増えて 1,015.2百万ドルになった。
増設により販売数量が
420%増えたこと、価格が17.1%上がったことによる。

この結果、金利・税金・償却前利益EBITDA)は前年の33百万ドルから73百万ドルに増えた。

ーーー

コーンの市況は、石油や他の農作物と同様、7月から急落した。
当然、エタノール価格も下落した。

しかし、同社は高値が続くと見て先物を購入していたため、コストと売価が大幅な逆ザヤとなった。
同社は9月に、第3四半期の損益は103百万ドル程度の赤字になると株主に予告している。


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各社の中間決算が順次、発表されている。

2008年3月期には、石油化学各社は原料価格高騰分をフルに価格転嫁できず、減益となったが、9月中間決算では特に7-9月にナフサが大幅に上昇、これが転嫁できていないために、大幅な減益となっている。

既報のとおり、第4四半期にはナフサは大幅に値下がりする(60,000円/klを切る)ため、値上げへの需要家の抵抗は強く、中国市場では既に製品価格は下落しているため、下手をすると転嫁できないままとなる恐れもある。(7-9月にナフサは15千円/kl 弱のアップとなっているが、これはPE、PPでは30円/kgに相当する。) 

各社は当然これは転嫁するという前提で年間予想をつくっている。(下記の通り、三井化学は年間の交易条件差をゼロとしている。)
各エチレンセンターは販売不振で減産に入っているため、価格転嫁が実現できない場合、大変なこととなる。

2008/10/31 第3四半期 国産ナフサ基準価格決定 

住友化学と三井化学は棚卸資産の評価で後入先出法を採用している。
このため、最高値のナフサが全量、費用に落ちることとなり、売価に転嫁できない分がそのまま損失となる。
(逆に下期にナフサが下がると、下がった分がまるまる損益に反映される)

三菱化学や東ソーは総平均法を採用している。
この場合、上期は前期末の安いナフサとの平均で原価を計算し、売上原価も前期末の安い製品との平均で決まるため、損益への影響は緩和される。
(但し、下期はナフサ価格低下を受けて売価も下がるが、原価は9月末の高いものとの平均となるため、損益は悪化する)

ーーー

住友化学 

                                                    単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
07/9中間  931,896  444,878   48,364   6,865  57,664  23,401  26,396  18,737   6.0  
08/9中間 1,009,207     31,009    22,973     6,288     6.0  
                     
08/3 1,896,539  933,291  102,397  14,292   92,790  30,283  63,083  23,366   6.0   6.0
09/3 2,010,000    70,000     60,000    15,000     6.0   6.0
営業損益対比(億円)
  07/9中 08/9中 増減   08/3 09/3
予想
増減
基礎化学    79   -12   -91     106   -20  -126
石油化学    20   -101  -122      45   25   -20
精密化学    61    22   -40     114   75   -39
情報電子化学   -63   123   186      63   155   92
農業化学   108   123   14     209   235   26
医薬品   260   192   -67     465   310  -155
その他    22   -36   -58      37   -80   -117
全社    -5    -1    6     -15    -   15
営業損益合計   484   310  -174    1,024   700  -324

基礎化学、石油化学が赤字に転落した。基礎化学は合繊原料やメタアクリルを含む。
原料価格高騰、円高の影響が大きい。後入先出法の影響を受けている。

なお、同社では下期のナフサ価格を54,000円/kl と想定している。
石油化学は下期で上期の赤字を取り消し、年間黒字予想としている。

情報電子化学は、偏光フィルムやカラーフィルターが生産能力の増強や生産性の向上が寄与して販売が大きく増加、大幅増益となった。
医薬品は研究開発費の増大で減益。

「ラービグ計画」は、2009年第1四半期の稼動開始を予定している。
サウジ・アラムコが運営してきたラービグの石油精製設備は、2008年10月1日をもって運営や修繕などの業務を含め
PetroRabigh が全面的に引き継いだ。

ーーー

三井化学

                                                   単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
07/9中間  881,591  510,756   42,733  13,700  40,488  16,902  20,152   8,588   6.0  
08/9中間  905,615     9,989    13,343     7,640     6.0  
                     
08/3 1,786,680 1,034,887   77,176  19,770  66,146  21,891  24,831   6,521   6.0   6.0
09/3 1,880,000     45,000    48,000    22,000     6.0   7.0
営業損益対比(億円)
  07/9中 08/9中 増減   08/3 09/3
予想
増減
基礎化学品   196    -2  -198     335   220  -115
機能材料   190    92   -98     359   190  -169
先端化学品    50    36   -14     108    90   -18
その他    14    -2   -16     34   -50    -21
全社   -23   -24   -1     -63
営業損益合計   427   100  -327     772   450  -322

機能材料(エラストマー、ウレタン材料等)、基礎化学品が大幅減益となった。
特に基礎化学品では〔変動費差+価格差〕の交易条件差が
-150億円ある。(全社合計では-200億円

同社も後入先出法の影響を受けている。
同社では年間の交易条件差はほぼゼロとしている。(下期の交易条件差は +200億円となる)
(前年との営業損益差は数量減
-120億円と 固定費増 -206億円

ーーー

三菱ケミカルホールディングス

                                                  単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末
07/9中間 1,389,814   16,206   66,487  15,091  70,578  14,703   38,164  42,752   8.0  
08/9中間 1,587,734     56,211    65,516     23,544     8.0  
                     
08/3 2,929,810   26,189  125,046  23,958  128,885  23,247  164,064  51,353   8.0   8.0
09/3 3,270,000     125,000     121,000      35,000      8.0   8.0
営業損益対比(億円)
  07/9中 08/9中 増減   08/3 09/3
予想
増減
ケミカルズ   121    70   -51     109    70   -39
ポリマーズ   107    -5   -112     112    90   -22
エレクトロ・アプリケーションズ   168   106   -62     316   250   -66
デザインド・マテリアルズ    62    27   -35      97    80   -17
ヘルスケア   212   372   160     572   790   218
サービス    51    62    11     141   120   -21
全社   -56   -70   -14     -97   -150   -53
営業損益合計   665   562   -103    1,250  1,250    0

同社は今期からセグメントの組替を行った。

 

石油化学については、同社は総平均法を採用している。
上期では、製品と原料の価格差はケミカルズで
-110億円、ポリマーズで-90億円あるが、総平均法による在庫評価益が162億円あり、減益幅が薄まった。(他に、数量差 -40億円、合理化・固定費差 -50億円など)

下期にはナフサ値下がりで逆に在庫評価損となるが、下期損益はケミカルズでゼロ(上期は+70億円)、ポリマーズは+95億円(上期は
-5億円)となっており、当然上期の未転嫁分を下期に転嫁できると見ている。

なお、本中間決算の営業外収益に昨年の鹿島事故の受取保険金 89.91億円が入っている。

ヘルスケアの増益は、2008年10月の田辺三菱製薬の合併に伴うもので、2008年上期の損益には田辺製薬分が入っていないことによる。これを加えると前年上半期及び前年年間と余り変わらない。

田辺三菱製薬 営業損益(億円) 
   07/3   08/3 増減
上期 下期
田辺製薬  305  184  ー  
ウエルファーマ  400      141
→田辺三菱     540
合計  704   725   21

 


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


<p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p>

米FDAは10月28日、バイエルに対し、2つのサプルメント入りOTCアスピリンで警告を発した。
効果、承認を得ていないこと(違法性)、消費者をミスリードするという点が問題となった。

問題となったのは①Bayer Aspirin with Heart Advantage と②Bayer Women's Low Dose Aspirin + Calcium の二つで、ともにFDAの承認を受けていない。

①は植物ステロールを含んでおり、包装にはコレステロール管理に役立つと記載されている。
②は骨を強化し、骨粗鬆症を防止するとしている。

FDAではこれらの記載は消費者にこれを飲む目的や飲む期間について間違った認識をさせるとしている。

また、ビタミンやハーブのようなサプルメントは医薬品と異なり、安全性や効能を証明する必要はない。しかし、既に承認された医薬品にそれらを加えると、全く新しい医薬品となり、販売の前にFDAの承認を必要とするとしている。

FDAではまた、食物やサプルメントの包装に、植物ステロールが心臓病を減らすなどの健康上の効能をうたう場合は、承認を与えている。

FDAは今回、回収命令は出していないが、速やかな措置を求めている。

<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>これに対して、バイエルでは販売する権利を主張している。
同社では宣伝で、これらを飲む場合は事前に医者に相談することと記載しており、①の場合は更にコレステロール低下剤の代わりにはならないと伝えており、問題はないとしている。

本件は下院でも問題となり、バイエルが組み合わせ製品を直接消費者に販売し、消費者をミスリードしていないか、調査を開始した。

サプルメントの業界団体のAmerican Herbal Products Association は医薬品・サプルメントのコンビネーションの基準をFDAに求め、全てを禁止するのはおかしいとFDAを批判している。


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

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