2013年4月アーカイブ

シンテックが好調で、半導体シリコンの減益を補い、増収増益となった。

但し、過去最高益の2008年3月期(シリコンの利益が最高であった)からは大きく下回っている。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益

 配当

中間 期末
2008/3 13,764 2,871 3,000 1,836 40 50
2012/3 10,477 1,496 1,652 1,006 50 50
2013/3 10,254 1,570 1,702 1,057 50 50
前年比 -223 74 50 51 - -
(2008/3比) (-3,510) (-1,301) (-1,298) (-779)    
2014/3予

未定

営業損益推移

シンテックが好調で、塩ビ・化成品がシリコンとシリコーンの減益分をカバーした。

  10/3 11/3 12/3 13/3 増減
塩ビ・化成品 196 197 237 456 219
シリコーン 249 341 337 286 -50
機能性化学品 139 129 147 145 -2
半導体シリコン 226 389 343 219 -124
電子・機能材料 307 361 382 409 27
その他 68 73 50 56 6
全社 -13 3 1 -0 -1
合計 1,172 1,492 1,496 1,570 74

 

Shintechの経常損益 (ドル建)は、3年間は2億ドル前後で停滞していたが、2012年は551百万ドルで前年比で2.2倍となり、過去最高の2006年の375百万ドルと比べても1.47倍となった。

米国内の需要回復は低水準に止まったが、中南米をはじめとした世界中の顧客への拡販により、高水準の出荷を維持した。
また、VCMの第2期 80万トンの増設が2011年に完成し、本年はフルにその効果が出たのが大きい。

立地 PVC VCM カ性ソーダ  
Texas州 Freeport  1,450   -   -  
Louisiana州 Addis   590   -   -  
Plaquemine   600   800   530  
Plaquemine   800  530  2011年完成
Addis  (270)   -   - Bordenから購入、廃棄
合計  2,640  1,600   1,060  


米国の他のPVCメーカーも損益が回復している。

Georgia Gulf は2013年1月にPPG IndustriesのCommodity Chemical Divisionと合併し、Axiall Corp.となった。

半導体シリコンは厳しい状況が続いている。
既報の通り、多結晶シリコンは半導体向け・太陽電池向けともに供給過剰に伴い市況は急激に悪化、当面、市況低迷は続くと予測される。

信越半導体グループの経常損益は今回は発表されていないが、2010年3月期以降、大幅減益となっており、2012年9月中間では更に悪化、前年同期比42%減となった。

今回、信越化学は特別損失に6,137百万円の投資有価証券売却損を計上した。

信越半導体は金属シリコンメーカーで世界大手5社の1社であるHemlock Semiconductorに24.5%を出資していたが、今回、その一部を売却し、売却損を計上した。売却により出資比率が2割を下回ったため、持分法の適用対象外となる。

Hemlock Semiconductorは1979年にDow Corningの100%子会社として設立された。
1984年に信越半導体と三菱マテリアルが加わり、3社のJVとなった。
  Dow Corning 63.25%、信越半導体 24.5%、三菱マテリアル 12.25%

今回の売却先は明らかになっていないが、Dow Corningと思われる。

従来、Hemlockは信越化学の持分法利益に貢献していたが、最近はシリコンの供給過剰に悩み、本年1月には400人のレイオフを発表している。

 



ヤクルト本社は4月26日、ダノン (Danone) との間の戦略提携契約を解除することを決めたと発表した。
今後の協業関係に関する覚書を締結する。

ーーー

ダノンは2000年までにヤクルト株5%弱を取得した。
当時はヤクルト経営陣のデリバティブ取引による巨額損失(1998年に1057億円の特別損失計上)が発覚し、株価が急落していた。

両社の間に具体的な提携関係に至らないまま、ダノンは2003年に一方的に出資比率を20%に引き上げた。

両社は2004年3月に以下の内容の戦略提携契約を締結した。

食品及び飲料の分野における両社の世界的なリーダーシップを強化し、両社の成長をさらに加速することを目的とする。

この目的を達成するために、両社は、当面は海外プロバイオティクス分野(ヨーグルトや乳酸菌飲料)を中心に、
ヤクルトの技術力及び独創的な販売網と、
ダノンの世界的なプレゼンス及びマーケティング力を活用して、
両社の相乗効果を十分に発揮できる様々な協力を行い、互恵的な提携関係を構築する。

相互に取締役を派遣。

ダノンはヤクルトの独自の文化、ビジネスモデル並びに独立性を尊重し、実質的な支配権を追求しないと確約。
ダノンは契約後5年間は現在の持ち株比率を引き上げず、その後の5年間に付いても、仮に買い増しを行った場合でも、実質的に過半数となるような水準は超えない。

(2004年当時、ヤクルトの株主総会で議決権が行使される比率は全体の7割程度で、35%超の株式を保有することは、「実質的に」議決権の過半数を押さえることになる。)

戦略提携契約に基づき、2005年にインドに50/50JVのYakult Danone Indiaを設立、2006年6月にはベトナムにヤクルト80%/ダノン20%出資でYakult Vietnamを設立した。

2007年5月には買い増しをしない期限を2012年5月まで延長する「休戦協定」を結んだ。

2012年に入り、ダノンは株を35%まで買い増す考えを打診したが、3分の1以上を握れば経営の重要議案を否決できるため、ヤクルトは拒否し、比率を28%にとどめる妥協案も受け入れなかったとされる。

両社はその後も契約改定に関する協議を重ねてきたが、合意に至ることができず、今回、ヤクルトはダノンに対して戦略提携契約の解除を通知した。

ヤクルト会長は会見で「企業文化やマーケティング手法などの違いを縮めることができなかった」と述べた。

これにより、ダノンが現在の持株比率を引き上げないという同契約上の義務も失効した。
今後、ダノンがTOBなどに踏み切るかどうかが注目される。

なお、両社ともに友好的な関係を維持することを希望しており、今後の協業関係に関する了解事項を確認するために覚書を締結した。

 ・両社は、戦略提携契約のもとで協同してきた既存の合弁事業、プロバイオティクス振興活動および研究活動を継続する。
 ・今後も両社にとってメリットのある新たな協業の可能性があれば、これに取り組む。
 ・ヤクルトは今後もダノンから3名の取締役候補の推薦を受け入れる。

ーーー

ダノンは世界で初めてヨーグルトの工業化に成功した会社である。

ヨーグルトのバクテリア機能はパスツール研究所のメチニコフ所長が解明した。

メチニコフ(1845-1916)はロシア人で、
ヒトデの研究から、細胞性免疫の基礎となる「捕喰細胞」の研究で1908年にノーベル賞を受賞したが、「動脈が硬化するのは腸内の細菌が自家中毒の原因となる毒を作るためである」という「メチニコフの仮説」を考えた。

ブルガリアではブルガリア菌と呼ぶ細菌で作ったヨーグルトを毎日飲んでおり、長生きが多いことを知り、このヨーグルトが大腸内の細菌の繁殖を防ぎ、自家中毒を防ぐと信じた。毎日大量に飲用するとともに、自らヨーグルト製造会社を作って、製造と販売を行った。

1919年、スペインのIsaac Carassoが、パスツール研究所から乳酸菌の株を取り寄せ研究し、世界で初めてヨーグルトの工業化に成功した。
息子のDaniel の名前をもじり(DAN-ONE)、「DANONE」を商標にし、医師を通じて薬局で販売した。


このDaniel が1929年にフランスでダノン社を創設した

ダノンは、地盤とする欧州の成長が少子高齢化もあって先細りで、この15年余りで欧州の売上高比率は約80%から40%未満へと半減しており、全体の半分以上を新興国とアジア・オセアニアが占める。

このため、ダノンにとっては、ヨーグルト・乳製品部門と新興国市場での販売網を強化するため、アジア展開で成功しているヤクルトと組む効果は非常に大きい。

一方、ヤクルトのアジア・オセアニア事業は増収増益で順調に拡大しており、海外展開において提携のメリットは少ない。

ーーー

ダノンは中国で宗慶後氏のワハハグループとのJV「杭州娃哈哈集団」を設立し、「娃哈哈(ワハハ)」ブランドの炭酸飲料水を売り出したが、ワハハ側との争いの後、撤退している。

2009/10/5 ダノン、ワハハに中国JVの持株売却

 


経済産業省は2010年7月5日、通称「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、告示を出した。

日本の重質油分解装置の装備率を2013年度までに10%から13%程度まで引き上げることを目標に基準を定め、引き上げを義務化した。

重質油分解装置の装備率 改善率
10%未満の企業  45%以上
10%以上13%未満の企業  30%以上
13%以上の企業  15%以上
重質油分解装置の装備率=重質油分解装置の処理能力÷常圧蒸留装置(トッパー)の処理能力

重質油分解装置の新設には500億円以上かかるとされ、内需が縮小する中で新増設は非現実的で、実質的にはトッパー能力削減しかないとされた。

本ブログでは、以下の理由で「官製の設備カルテル」ではないかとして批判してきた。

どういう原料を使って、どういう製品をつくるかは、企業の判断であり、重質油分解能力の向上を各社に義務付けるのはおかしい。
「重質油分解能力の向上」を
「重質油分解装置の装備率」にすり替えており、単なる告示で、違法に設備処理を強制している。

各社ともこれに対応していることから、「官民の設備カルテル」とみられる。

2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?

その後、(表面的には)これを公取委が問題にすることもなく、各社は順次、設備削減計画を発表した。

METIによる各社別の削減義務量と現時点での削減計画は以下の通り。(万bbl/d)

  トッパー
処理能力
改善達成
のための
トッパー
能力
トッパー
能力削減
義務量
トッパー能力削減計画
和シェル石油グループ 51.5 44.8 6.7 12.0  京浜・扇町 2011/9停止
JXグループ 179.22 137.9 41.4 58.0  下記
出光興産 64.0 55.7 8.3 12.0  徳山製油所 2014/3停止
コスモ石油 63.5 43.8 19.7 14.0  坂出製油所 2013/7閉鎖
東燃ゼネラル石油 66.1 45.6 20.5 10.5  分解能力 +3.45で基準充足
太陽石油 12.0 10.4 1.6    
富士石油 19.2 14.8 4.4 5.2  第1常圧蒸留装置 2010/11廃棄
極東石油工業 17.5 15.2 2.3    
合計 473.02 368.2 104.9  111.7  

JXグループ

  原油処理能力(千バレル)  
2008/12 2014/3 削減量
室蘭製油所 180 0 -180   出光興産と製品スワップ
仙台製油所 145 145 -  
根岸製油所 340 270 -70 2010/10 第2トッパー廃止
大阪製油所 115 0 -115 大阪国際石油精製に移管
 
PetroChinaとのJV化
水島製油所 455 345 -110 2010/6 A工場第2ストッパー廃止
麻里布製油所 127 127 -  
大分製油所 160 136 -24 2010/5 第1トッパー廃止
鹿島石油 210 189 -21 2010/5 第1トッパー能力削減
日本海石油 60 0 -60 2009/3 原油処理停止
合計 1,792 1,212 -580  

2013年4月26日の日本経済新聞の「私の履歴書」で渡文明・JXホールディングス相談役は以下の通り述べている。

(石油連盟会長の)5年間の任期中、最も力を入れたのは「脱石油」政策の見直しだ。会長に就任した時から訴え続けた。石油ショックによって、石油依存度を下げようと石油代替エネルギー法ができた。その後、依存度がどんどん下がっても、相変わらず石油だけ減らせというのは合点がいかない。

石連会長を退任する時には、主張がようやく認められた。代エネ法を廃止して、石炭なども含めて化石燃料の有効利用などをはかる、エネルギー供給構造高度化法を制定する方向が固まったのだ。

この新法に私はもう一つの狙いを託した。過剰設備の削減だ。石油製品を生産するトッパー(常圧蒸留装置)に重質油分解装置をつけると無駄を減らせる。経済産業省は同法に基づき、この装備率を13%とする告示を出した。
分解装置を増設するには巨額の資金を要する。従って装備率の低い会社は、分解装置をつくるより遊んでいるトッパーを廃棄する方が得策だ。

この結果、過剰設備対策が一気に進んだ。


過剰設備削減が 石油連盟の狙いであったことが分かる。

ーーー

なお、同氏はイラクのNasiriyah油田についても書いている。

同氏らの努力で日本側に権利が与えられる寸前までいったが、交渉団がバグダッドに行きながら、安全上の理由で石油省に行かなかったことで権利を失ったとされる。


 


中国商務部は4月22日、丸紅による米穀物大手Gavilonの買収を厳しい条件付きで承認した。公告22号で明らかにした。

米欧の規制当局は承認済みで、中国の審査が長引いていた。

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丸紅は2012年5月29日、北米で穀物・肥料・エネルギーのトレーディング事業を展開するGavilon Holdings の持分すべてを取得すると発表した。
買収価額は36億ドルだが借入金が20億ドル程度あり、合計で56億ドル程度となる。


丸紅はこれまでに北・南米に穀物供給ソースを確保し、アジアを中心に販売力を強化してきたが、Gavilonが全米に持つ140を超える穀物集荷関連拠点を取り込み巨大な穀物集荷流通網を確保し、更に、Gavilonのブラジル、豪州、ウクライナなどの拠点を丸紅の持つ資産と組み合わせ、活用する。

世界の穀物貿易における2012年度の取扱量は、丸紅 25百万トン、Gavilon 30百万トンで、合計55百万トンとなる。

 


肥料分野では、Gavilonは、肥料受け出しターミナル・倉庫・肥料混合設備を、米国内の戦略拠点として59 ヵ所保有している。

丸紅は1987年にBayerから30百万ドルで米国第2位の農業資材ディストリビューターのHelena Chemicalを買収し、リテール事業を行っているが、リテール事業とホールセール事業を有することになり、相乗効果を狙う。

Gavilonはメキシコ、南米、アフリカ等にも15 ヶ所の輸入ターミナル・倉庫・肥料混合設備を保有し、世界20 ヵ国以上において肥料販売を行っている。

Gavilonは原油・天然ガス等を中心にエネルギー事業も展開しており、北米において約8百万バレルの原油在庫施設、約100億立方フィートに及ぶ天然ガス在庫施設および約50万バレルの石油製品在庫施設などの物流ネットワークを活用し、トレーディング事業を行っている。


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中国が厳しい条件を付けた背景には食料確保への懸念があるとみられる。

商務部による分析では、中国は世界最大の大豆輸入国で2012年の輸入は全世界の貿易量の60%を占める。

2012年の中国の大豆輸入は5,838万トン、うち丸紅の輸入量は1,050万トンで第一位であった。Archer Daniels Midland(ADM)やCargill、Bungeなどの大手は丸紅よりもはるかに少なかった。

丸紅の輸出の99%が中国向けであり、Gavilonは北米の大豆の集荷、保管、輸送の巨大能力を持つため、両社の統合で大きな強みを持つことになるとしている。

このため、2社の合併は「中国の大豆輸入市場への支配力を強め、競争を排除あるいは抑制する」可能性があるとし、
(1)中国向け輸出・販売業務を分離独立すること
(2)例外を除き、丸紅はGavilonから大豆を買い付けてはならない
(3)市場情報を交換してはならない――といった義務を課した。


これにより丸紅は、買収の狙いであったGavilonの大規模な米国のネットワークを利用できず、独自に大豆を購入しなければならない。

買収の狙いは主に中国向け輸出のためと思われ、高額での買収の意義が失われることにもなる。 

米大豆協会では、丸紅とGavilonの連合が中国のような大規模な市場で供給を管理したり、価格操作を行うことは不可能であり、中国が課した条件は驚きだとしている。

商務部は同日、GlencoreによるXstrata買収も承認したが、XstrataのペルーのLas Bambas銅鉱山の売却を条件にしている。 (下記)

丸紅の大豆の場合もGlencoreの銅の場合も、中国でのシェアはEUの独禁当局が問題とする30~35%を下回っており、非常に厳しい規制である。

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中国商務部は4月22日、スイスの商品取引大手Glencoreと鉱山大手Xstrataの合併を厳しい条件付きで承認した。公告20号で明らかにした。

EUは欧州の資産を売却して事業を縮小することを条件に2012年11月に承認、南アも本年1月に条件付きで承認しており、中国の審査が長引いていた。

Glencore Internationalは2012年2月7日、同国の資源大手Xstrataを260億ポンドで買収し、対等合併すると発表した。

しかし、Xstrataの株主のカタールの政府系ファンド Qatar Holdingなどが合併条件の見直しを求めた。

Glencoreは9月7日、Xstrataの買収案を引き上げた。
Glencoreはまた、株主による承認を得やすくするため、合意の仕組みを変更する可能性についても提案した。

両社は2012年11月にそれぞれ株主総会を開き、合併案を承認した

2012/11/26 Glencore とXstrataの合併

中国商務部は合併会社は世界最大の銅の生産者になるため、中国企業が値上げを呑まされるのを恐れた。
これに対し、Glencore側からXstrataのペルーのLas Bambas 銅鉱山を売却する案を提示した。

今回の承認に当たり、この鉱山の売却の手続きが細かく決められている。

このほか、Glencoreは中国のメタル不足の懸念を緩和するため、2020年12月31日まで中国企業に対し最低量の銅、亜鉛、鉛を供給する。




公正取引委員会は4月23日、インフルエンザ予防接種の料金でカルテルを結んでいた疑いで、埼玉県吉川市の吉川松伏医師会(約80人)を立ち入り検査した。

関係者によると、吉川松伏医師会は数年前から、インフルエンザ予防接種の料金について医師会の会合などで、13歳以上は「4,450円以上」、2回の接種が必要な13歳未満の子どもでは「初回3,700円以上」と決めて会員に通知していた。

インフルエンザの予防接種で、公取委による立ち入り検査が明らかになったのは2003年の三重県四日市医師会以来、2例目。公取委は、ほかにも最低価格を決めていた医師会がないか調べる。

四日市医師会は、1件につき 3,800円以上とするよう決定していた。
公取委は2004年6月21日、四日市医師会に勧告を行った。

厚生労働省によると、インフルエンザの予防接種は2011年~12年にかけての冬に約5000万人が受けたと推定される。

予防注射は自由診療となるため、65歳未満の人は費用が原則的に全額が自己負担となる。
ワクチンの料金は1本2,000円程度とされるが、接種料金は医療機関が自由に決められる。

65歳以上の場合は一部を公費負担としている。文京区では65歳以上の場合は2,200円となっている。

全国300の医師を対象としたQLifeの調査(2008年)では接種費用は以下の通りとなっている。

13歳未満は2回の接種が必要。
  子供の1回目の接種費用の平均値は、病院 2,702円、診療所 2,525円。
  子供の2回目の接種費用の平均値は、病院 2,379円、診療所 2,160円となっている。

ワクチンそのものの料金は1本2,000円程度とされるため、赤字となるケースが見られるが、ワクチン接種を「来院経験がない人に営業する絶好の機会」と考え、接種料金を安く設定するケース があるという。

また、ワクチン1本に2人分の量が入っているため、日を指定して、続けて接種する医院もあるとされる。

 

 


出光興産、コスモ石油、丸紅、三井物産とQatar Petroleum及びTatolは4月21日、Laffan Refinery 2計画の合弁契約に調印した。

日本側4社は2006年にLaffan Refinery計画に参加しており、同国とのパートナーシップを強化する。

Laffan Refinery 計画は単一構造の天然ガス田としては埋蔵量世界最大級を誇るNorth Fieldのコンデンセートを精製し、付加価値を高めて出荷するという、Qatarの戦略に沿って計画されたもの。

North Fieldで採掘されたガスは現地で分離、前処理される。
ガスとコンデンセートは海底パイプでRas Laffanに送られ、LPGが生産され、コンデンセートはナフサ等に精製される。

2010/12/21 カタール、LNG増産工事完了で年産 7,700万トン体制

Laffan Refinery 2が完成するとコンデンセートの精製能力は合計で約30万バレルとなり、世界最大となる。

4社は生産した石油製品を直接販売する権利は持たず、出資分の配当金を受け取る。

計画の概要は以下の通り。

  Refinery 1
 (
LR1)
Refinery 2
 (
LR2)
出 資 Qatar Petroleum 51% 84%
ExxonMobil 10% -
Total 10% 10%
出光興産 10% 2%
コスモ石油 10% 2%
丸紅 4.5% 1%
三井物産 4.5% 1%
能 力 146千b/d 146千b/d
立 地

Ras Laffan 工業都市

原 料 North Gas Field のコンデンセート
製 品 Naphtha 61千b/d  60千b/d
Jet fuel 52千b/d 53千b/d
Gasoil * 24千b/d 24千b/d
LPG 9千b/d 9千b/d
着 工 2006年4月  
完 工 2009年9月 2016年下期
総コスト 約8億米ドル 約15億米ドル

* 現在、DHT(ディーゼル水素化精製)設備を建設中で、2014年第2四半期に完成する予定。
   LR1とLR2の
Gasoil を超低硫黄ディーゼルに加工できる。

 


出光興産は以下のとおり述べている。

1979年以来33年間にわたってカタール国と原油取引を続けている。

最近ではQatar Petroleumから研修生の受け入れを行い、また、Laffan Refinery 1には副所長を派遣し、人的面でも関係強化を図ってきた。
Laffan Refinery
2においては基本設計段階から2名の技術者を派遣し、建設段階も継続して派遣する。



丸紅は4月18日、ロシア最大の国営石油会社 Rosneft との間で、極東LNG事業及び石油ガス鉱区の共同探鉱・開発に関する戦略的パートナーシップ契約を締結したと発表した。

丸紅はこれまで、Rosneftとの間で原油・ナフサ等の引取り、石油化学プラント事業における機器納入、サハリン島における共同物流事業等を通じて長年に亘る提携関係を構築してきた。

とりわけサハリン1プロジェクトにおいては、丸紅は日本側パートナーであるサハリン石油ガス開発の主要株主として、Rosneftと緊密な協力関係にある。

今回締結した戦略的パートナーシップ契約は、ロシア極東地域におけるLNGプロジェクトの実現に向け、マーケティング、プラントの設計・建設、資機材の供給、ファイナンス、輸送、エンジニアリング等を共同で検討、推進するものであり、Rosneftが保有する石油ガス鉱区の共同探鉱・開発も視野に入れるもの。

Rosneftは現在、サハリン1の天然ガスのLNG基地建設を計画している。
サハリン島やハバロフスク地方を対象に建設場所の候補地を選考しているが、サハリン1計画の原油輸出基地であるDe-Kastriになると見られている。

サハリン1プロジェクト
事業主体 Exxon Neftegas(ExxonMobil 子会社、オペレーター) 30.0%
サハリン石油ガス開発(SODECO)
     日本政府   50.00 %
     伊藤忠グループ   18.12  
     石油資源開発   14.46  
     丸紅   11.68  
     国際石油開発帝石   5.74  
30.0%
ONGC Videsh (インド) 20.0%
Rosneft
   
           
Sakhalinmorneftegas-Shelf 11.5%
Rosneft-Astra 8.5%
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
①石油    約23億バレル
②天然ガス  約4,850億立方メートル
出荷 原油:不凍港 De-Kastriから海上輸送
天然ガス:検討中の基地でLNGに加工、海上輸送
 
参考 サハリン2プロジェクト
事業主体   当初 現在
Shell                     55%  27.5%-1株
Gazprom  ー  50.0%+1株
三井物産  25%   12.5%
三菱商事  20%   10.0%
開発鉱区 ピルトン-アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
①原油 10億バレル
②天然ガス 4,080億立方メートル
出荷 原油:サハリン南端プリゴロドノエから海上輸送
天然ガス:プリゴロドノエでLNGに加工、海上輸送
        能力年間960万トン(480万トンx 2基)
 
 
天然ガス輸入はガスを氷点下162度以下に冷やしたLNGを特殊なタンカーで運ぶ方法に頼っている。

天然ガスは輸送距離が4000キロ以下ならパイプラインを敷設した方がコストが安く、それ以上ならLNG船で運んだ方が有利といわれる。 (「パイプライン費用」 対 「液化費用+輸送費」 の比較)

サハリン1の天然ガスについては、首都圏まではわずか約2000キロのためExxonMobilはパイプラインを選択して事業調査を実施し、2001年6月に日本海岸か太平洋岸のいずれかの海底にパイプラインを引いて2008年に天然ガスの供給を開始すると発表した。

しかし、最大の需要家である東京電力が購入に動かず、この計画は白紙に戻った。

当時、経産省、電力業界は一体となって原発の建設を推進しており、天然ガスの優先度が低いと考えていた 。
「天然ガスの発電コストは原子力の1.2倍」といった試算が行われていた。

さらに、パイプラインができれば途中で簡単に支線を引けるため、新規参入企業が発電所をつくるのを電力会社が恐れたとの説もある。

ExxonMobilは2006年11月に中国のCNPCとサハリン1の天然ガスの供給でMOUを締結したが、まだ最終合意に達していない。

2013年2月にExxonMobilとRosneftはロシアの太平洋岸にサハリン1の天然ガスの液化プラント建設を検討することで合意した。

これまでLNGの輸出はGazprom独占となっていたが、プーチン大統領は本年2月に徐々に輸出を自由化する意向を表明している。

既報の通り、丸紅はLNG輸送ビジネスを拡大していく方針。



環太平洋経済連携協定(TPP) の交渉参加11か国は、4月20日の閣僚会合で、日本の参加を全会一致で承認した。

TPP閣僚会合の共同声明の要旨は以下の通り。

 ・各国が日本との2国間の協議を完了したことを確認。日本は他の参加国と同様、妥結に向けて迅速に交渉する
 ・日本は各国の国内手続きが完了したあとで交渉に参加できる
 ・日本の交渉参加でTPPは世界のGDPの40%近く、世界の貿易の約3分の1を占める
 ・日本の交渉参加はTPPの経済的な重要性を高め、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)への道筋を支える

日本は7月下旬にマレーシアで開催が検討されている次々回会合から交渉に合流する見通し。

米国には、新たな交渉参加国を認めるために米議会で90日間以上議論するという取り決め(90日間ルール)がある。
米通商代表部(USTR)は全参加国の同意を受け、議会に合意を通知する。

付記 オバマ政権は4月24日、米議会に対し日本の交渉参加を通告した。

日本の交渉参加に当たっては、ブルネイ、チリ、マレーシア、メキシコ、シンガポール、ベトナムの各国は早期に賛成したが、その他の国々は簡単には賛成せず、いろいろな条件が付いた。(後記)

ーーー

環太平洋戦略的経済連携協定 (Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement) の参加国は以下の12か国となる。


各国は以下の順で参加した。

2006/11 TPP(通称P4)発効 シンガポール
ニュージーランド
ブルネイ
チリ
(計4か国)
2010/3 (拡大)TPP
政府間交渉開始
米国
オーストラリア
ベル―
ベトナム
2010/10 追加参加 マレーシア
(計9か国)
2011/11 Broad outlineに合意  
2012/11 追加参加 カナダ
メキシコ
(計11か国)
2013/2 日米共同声明  
2013/4 追加参加支持 日本
(計12か国)

2011年11月に参加9か国は合意の概要(Broad outline)を発表した。これ以外の交渉内容は公表されていない。

1.包括的な市場アクセス(関税その他の非関税障壁を撤廃)
2.地域全域にまたがる協定(TPP参加国間の生産とサプライチェーンの発展を促進)
3.分野横断的な貿易課題(TPPに以下を取り込みAPEC等での作業を発展させる)
   ・規制制度間の整合性:参加国間の貿易を継ぎ目のない効率的なものとする
   ・競争力及びビジネス円滑化:地域の経済統合と雇用を促進する
   ・中小企業:中小企業による国際的な取引の促進と貿易協定利用を支援
   ・開発:TPPの効果的な履行支援等により、参加国の経済発展上の優先課題が前進
4.New trade challenges:革新的分野の製品・サービスの貿易・投資を促進し、競争的なビジネス環境を確保
5.Living agreement:将来生じる貿易課題や新規参加国によって生じる新しい課題に対応するため、
   協定を適切に更新

ーーー

カナダ、メキシコの参加に当たっては、次の秘密の覚書があったことが分かった。
1: 遅れて交渉した国は、既に交渉を始めている9ヵ国が合意した事項(条文)を、原則として受け入れ、再協議は認められない。
2: 交渉を打ち切る権利は、9ヶ国にあり、遅れて交渉入りした国には認められない。


日本政府は、日本の場合にこういう条件は付けられてないとしている。

安倍首相は2月22日のオバマ大統領との日米首脳会談で、自民党の参加条件である「聖域なき関税撤廃が前提でない」ことを確認し、参加に踏み切った。

日米共同声明

両政府は、日本が環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉に参加する場合には,全ての物品が交渉の対象とされること、及び、日本が他の交渉参加国とともに、2011年11月12日にTPP首脳によって表明された「TPPのアウトライン」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。

日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。

両政府は、TPP参加への日本のあり得べき関心についての二国間協議を継続する。これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている。

米国との間では、以下の交渉が行われた。(4月12日 TPP政府対策本部発表)

  日本が他の交渉参加国とともに、「TPPの輪郭」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことを確認するともに、日米両国が経済成長促進、二国間貿易拡大、及び法の支配を更に強化するため、共に取り組んでいくこととなった。
     
  この目的のため、日米間でTPP交渉と並行して非関税措置に取り組むことを決定。
    対象分野:保険、透明性/貿易円滑化、投資、規格・基準、衛生植物検疫措置等
     
  また米国が長期にわたり懸念を継続して表明してきた自動車分野の貿易に関し、
  TPP交渉と並行して自動車貿易に関する交渉を行なうことを決定。
 対象事項:透明性、流通、基準、環境対応車/新技術搭載車、財政上のインセンティブ等
TPPの市場アクセス交渉を行なう中で、米国の自動車関税がTPP交渉における最も長い段階的な引き下げ期間によって撤廃され、かつ、最大限に後ろ倒しされること、及び、この扱いは米韓FTAにおける米国の自動車関税の取り扱いを実質的に上回るものとなることを確認。
     
  日本には一定の農産物、米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティが両国にあることを認識しつつ、TPPにおけるルール作り及び市場アクセス交渉において緊密に共に取り組むことで一致

非関税措置については、米国側発表では以下の通りとなっている。

保険   かんぽ生命との公平な競争環境
透明性    
投資   外部取締役の役割強化などを含む日本企業へのM&Aの機会増
知的財産    
規格・基準    
政府調達    
競争政策    
急送便   日本郵便の手がけるEMS(国際スピード郵便)
SPS(植物検疫)   日本の食品添加物の審査手続きを早めて効率を上げるよう求める


両国の合意があれば、これら問題以外にも付け加えることができる


ニュージーランドとオーストラリアは「すべての品目を交渉のテーブルに載せる」「交渉を遅らせない」「高い水準の自由貿易を実現する野心がある」の3点を挙げ、「保証」を求めた。

カナダとの交渉は自動車関税の扱いで難航した。
日本は米国との事前協議で日本車の関税撤廃時期の先送りで合意したが、カナダが「カナダと米国の自動車産業は一体である」として、米国並みの条件を要求した。
最終的に、自動車関税をTPP交渉とは別に交渉するというカナダの提案をのんだ模様。

今後、米やカナダとの事前協議を踏まえ、日本に関税維持を求める国が増える懸念もある。

逆に、日本が「聖域」とする「コメ」「麦」「乳製品」「牛肉・豚肉」「砂糖やデンプンなど甘味資源作物」の5品目については何も決まっていない。

参考

 2010/11/10  TPP参加と農業問題
 2011/11/7    番外編 記事紹介 「TPP亡国論のウソ」:「農業の守り方を間違った」
 2011/11/16  環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉
 2013/3/18  TPPで関税撤廃した場合の経済効果についての政府統一試算

 



週刊文春が「中国猛毒食品」キャンペーンをしている。

3月28日号 告発キャンペーン(1)

大気汚染だけじゃない
あなたが食べている「中国猛毒食品」

4月4日号 大反響! 告発キャンペーン第2弾 戦慄の現地ルポ

世界的スクープ 
悪臭漂うドブ川で野菜栽培、発がん性ホルモン剤注入で鶏肉肥大...
「中国猛毒食品」生産農家を直撃!
「死んだ豚を川に捨てたのは俺だ」
 犯人農民の告白

「中国人も食べない日本向け食品」リスト

4月11日号 禁断のレポート! タブーに挑む告発キャンペーン第3弾

スーパー、コンビニ、外食産業...
保存版 
「中国猛毒食品」はこうして見破れ!

冷凍食品 おそうざい 激安ファストフードは危険がいっぱい
安全検査済み を信じるな! 中国人のインチキ検査の実態

4月18日号 列島震撼「中国猛毒食品」 告発キャンペーン第4弾

鳥インフルH7N9は日本に上陸している!

▼決死の上海ルポ 死亡男性は社員食堂の調理師
▼汚水で日本向け手羽先を"洗浄"する鶏肉工場

権威が警告「感染者はすでに数万人」パンデミックの恐怖
鶏肉年間19万トン輸入加熱処理済みを信じるな!
 

4月25日号 最大のタブーを限界まで書く 告発キャンペーン第5弾

「中国産食材」を使う外食チェーン全32社 実名アンケート

付記  5月2日・9日 ゴールデンウィーク特大号

告発キャンペーン第6弾
あなたはそれでもチキンナゲットを食べますか?
マクドナルドの中国産鶏肉が危ない!
中国の契約養鶏場で"抗生物質漬け"の鶏が大量死

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これに対し、科学ライターの松永和紀さんが、Foodcom.net の「編集長の視点」で「"中国猛毒食品"のトリック」として批評している。

「いかに、中国製が怖いか、危ないか、書いてあるのだが、中国製への不安を煽る時にこれまでたびたび用いられてきたトリックが使われている」とし、以下の4点を挙げている。

(1)猛毒とリスク--中国産食品の違反事例、リスクは高くない

食品衛生法に基づき設定されている基準、規格はなかなか厳しく、一品目、違反品を食べたところで健康影響はない、というレベルで設定されている。
中国の違反は、アフラトキシンのような強い発がん物質が検出されたり、抗生物質が基準を大幅に超えたりする食品もあることはあるが、多くは基準を少し超えた程度のもの。このような違反品に対して「猛毒食品」と表現するのは、読者に対するごまかし、"偽装"ではないか?

食品別の解説の記述に誤りが多い。

リスクの大きさは摂取量によって変わるのに、大量投与の動物実験の結果を引いて危ないと論じている項目も目立つ。

(2)違反数と違反率--中国産の違反率は低い

中国産は少量多品目であり、検査数はほかの国に比べて圧倒的に多い。そして、違反の割合は、全体平均に比べて大幅に少ない。

2011年度の中国の違反率は0.25%。
韓国が0.58%、台湾が0.68%、ベトナムは1.1%、タイが0.78%、欧州は0.48%、イタリアが0.77%、アメリカは0.80%である。

(3)品目の種類--品目によってリスクは大きく異なる

水産物は微生物が付きやすく管理が難しく違反が出やすい。しかもエビや貝類など加工度が低い状態で食べる割合が多いため、リストに並べると消費者へのインパクトはとても大きい。

国産の水産物を検査すればおそらく、微生物については相当数の汚染が見つかるはずだ。
私たちは、国産食品の汚染は、実は把握せずに食べている。

(4)検査数 --「1割しか検査していない」は、タメにする議論

「残りの9割は検疫をスルーして国内に入ってきます」と言っている。

検査というのは、そういう性質のものだ。違反の蓋然性の大きさに応じて対応を変えて輸入検疫は行われている。

(5)ピンとキリの混同--中国国内の"キリ"が日本に輸入される可能性

たしかに、劣悪な食品も相当数あるだろう。だが、それが日本に輸入されているか、というと、まったく別の問題である。今、中国で日本向け食品を製造したり加工したりしている日系企業や日中の合弁企業などの安全管理のレベルはすさまじく高い。

中国の食品の品質、安全性はピンからキリまで。その中のピンが、日本に輸入されている中国産のかなりの割合を占める。だからこそ、輸入検疫における中国産の違反率は低い。

但し、中国のレベルの低い食品を排除できない、キリの日本企業もあり、そういう観点から見た時に、実は最近、中国産食品の中に、気になるものがあり、もしかすると、これは将来、大きな綻びになるかもしれないという予兆のような違反が見られるとしている。


別途、「生のジビエ料理なんて紹介しちゃダメ! 週刊文春さん」として、週刊文春のエッセーに記載されている鹿料理(生の刺身、レバー、ハツ、脳みそ)を「これらの怖さ、はっきり言って、中国産の比ではない」としている。

「この原稿を書きながら、背筋がゾクゾクしてきた。それくらい、このエッセイは危ないんです! そんなこともわからない雑誌が特集する『中国猛毒食品』。信じますか?」

ーーー

同氏は、農林漁業生産者(一次産業)が加工(二次産業)、販売(三次産業)まで手がける「6次産業化」についても 、現状は、食品衛生やリスク管理に対して責任を持てるような状況ではないとして、懸念を表している。

無責任な「6次産業化」が、心配    

6次産業化への懸念に、多くの反響をいただきました


 

 

テキサス州のWaco市の約30km北にある人口2600人余りの町WestにあるWest Fertilizer 社の肥料工場で、4月17日夜、原因不明の火災が起きたあと、2度にわたって大規模な爆発があった。

 

報道によると、同工場には肥料原料の無水アンモニアが25トン保管されていたとされる。
 (付記 その後の調べで、硝安が245トン、無水アンモニアが50トンと判明)

無水アンモニアのタンクで火災が発生し、消防が消火中に、大爆発が起こった。

爆発の衝撃は、アメリカ地質調査所でマグニチュード 2.1を記録、現場から北におよそ100km以上離れたダラスでも揺れを感じた住民がいたという。

この爆発で133人が入居していた老人ホームを含む住宅など75棟が倒壊したり壁が吹き飛んだ。

村長は、35人から40人の消息が掴めず、亡くなったのではないかとしている。そのうち、6人が消防士、4人が救急医療士。
地元警察は、負傷者が160人以上にのぼるとしている。

付記
消防隊員ら12人が工場敷地内で、他に、高齢者施設の入居者を含む住民3人が死亡した。約200人が負傷した。
被害総額は1億ドルに及ぶ。

漏出や爆発の恐れがあることから、付近の住民約2800人の多くは避難し、周辺への車の進入も禁止された。

今のところ、原因は不明。硝安の爆発とか、ガス状態の無水アンモニアが放水で爆発したとかの説が述べられている。

警察はテロの可能性については、「現時点で事件性を示すものは何もないが、その可能性を排除しない」としている。

工場を運営する会社は、昨年、安全管理に問題があるとして、連邦政府から罰金を科されていた。

ーーー

Westの南のWaco市は1993年に"Waco siege"事件が起こった場所。

1993年2月にDavid Koreshに率いられたキリスト教系カルト教団Branch Davidianが武装して立て籠もった。

2月28日に武器の不法所持の容疑でアルコール・タバコ・火器局が強制捜査に乗り出し、武装した捜査員100名が突入を試みた 。
信者達は応戦し、捜査官4名、信者6名が死亡した。
その後、立てこもりは51日続いた。

4月19日、FBIは19台の戦車、装甲車、武装ヘリを前面に立てて突入を試みた。
建物の一角から出火、信者のほとんどが脱出せず、死亡した。
最終的には
Koreshを含む81名(子供25名を含む)が死亡した。生存者はわずか9名。
集団自殺と扱われているが、
政府の弾圧ではないかとの疑問も呈されている。 

 

たまたま、今回の爆発は集団自殺のあった4月19日の2日前にあたるため、関連付ける向きもある。

 



Saudi Aramcoは4月10日、世界で5番目に大きいManifa油田の操業を開始した。

170億ドルを投じたManifa油田は7月までにArabian heavy原油を日量50万バレル生産し、来年末までに日量90万バレルまで増やす。

原油はJubailにあるSATORP(フランスのTotal とのJVのSaudi Aramco Total Refining and Petrochemical )の製油所のほか、建設中の2つの製油所、サウジアラビアの南西端にあるJizanの製油所と、西海岸のYanbuで建設中のSinopecとのJVのYanbu Aramco Sinopec Refining Co.(YASREF)のワールドクラスの製油所で精製する。

ーーー

サウジの主な油田は以下の通り。

  日量
      万バレル
ガワール (Ghawar) 500
サファーニア (Safaniya) 150
クライス (Khurais) 120
マニファ (Manifa) 90
シャイバ (Shaybah) 東南部 75
カティフ (Qatif) 50
クルサニア (Khursaniyah) 50
ズルーフ (Zuluf) 45
アブカイク (Abqaiq) 40








米財務省は4月12日、議会に為替報告書(Semi-Annual Report on International Economic and Exchange Rate Policies)を提出した。

特にアジアの多くの国での為替レート管理を問題にしている。

日本に関しては、日銀の金融緩和策が円安・ドル高につながったことに関連し、「競争的な通貨切り下げを慎むよう引き続き迫っていく」と明記した。

中国については
「為替操作国」との認定は見送った。財務省は1992-94年に中国を為替操作国と認定したが、それ以来、どの国に対してもこうした認定は行っていない。

1)日本

日本は経済を復活させ、成長させるために、国内経済で競争を不当に制限している規制を緩和することにより、国内経済を活性化するための抜本的で徹底した手段をとることが必要である。

マクロ経済の刺激策は短期的には有効でも、構造改革の代わりにはならない。

日本に対して、G-7とG-20で合意した約束、即ち、国内の手段を用いて国内目的の達成を目指す姿勢を維持し、通貨安競争を避け、競争目的のために為替相場を目標としないよう求める。

財務省は日本の政策をきっちりと見守っていく。


参考

G7財務相・中央銀行総裁会議は本年2月12日、緊急共同声明を発表、各国の財政・金融政策は「国内目的の達成に向けられており、為替レートを目標にはしないことを再確認する」と初めて明記し、「通貨安競争」をしないことを申し合わせた。

2月16日のG20財務相会議は2月16日、「競争的な通貨安を回避する」、「金融政策は国内の物価安定や景気回復を目的とすべき」などを明記した共同声明を採択、日本を名指しすることは避けながらも、世界的な通貨戦争の観測の抑制に努めた。

G7、G20で各国が日本を名指しで批判しなかった理由について、竹中平蔵氏が田原総一朗氏との対談(3月24日:東京プレスクラブ)で次のように述べている。

リーマン・ブラザーズの倒産のときに、まずアメリカが金融緩和して、言ってみればドル安政策打った。 (田原)
 

米国、英国も、欧州全体が金融緩和をやっており、「日本は一番遅れてやったわけで、その一番遅れて、しかもその程度はまだアメリカよりも充分じゃないわけで、日本だけが批判されるという風に考える方がおかしい」

(その時、日本がやらなかったのは)「それは白川さんだからやんなかったんじゃないですか。----基本的には、(民主党政権が)経済成長に対して関心を払わなかったっていうのが一番大きいです。分配のことばっかりやった」

ダボス会議でドイツのメルケル首相が円安を批判したが、「そのとき皆なんて言ったかっていうと、『ドイツが言うなよ』って言ったわけですよね。ドイツはギリシャとスペインのせいでユーロが下がりましたと。そうすると漁夫の利を得たような形で輸出力が強いドイツがわーっと、 一人勝ちになっちゃったわけでしょ。だからそんなこと言うのはおかしい」 

ーーー

2)中国

人民元は4月初め時点で、2010年6月の弾力化前と比べ、米ドルに対し10.0%引き上げられた。(グラフの通り、その後もさらに上昇)
両国の物価の差を勘案すると、人民元は2010年6月から2013年2月までで実質16.2%上がったことになる。

中国の経常収支黒字は2007年にはGDPの10.1%あったが、2012年には2.3%に減っている。

中国政府は資本の動きの自由化に向かっていろいろの手を打っている。

これらを勘案し、財務省は中国を為替管理国とは見做さない。

しかしながら、人民元は依然として著しく過小評価されており、介入も再開されたように見える。人民元の更なる切り上げが必要である。

財務省は今後も、人民元の動きを注視し、通貨変動の幅を広げ、透明性を高め、強く、バランスの取れたグローバル経済を支えるよう中国政府の政策の変更を求めていく。


付記

中国人民銀行の易綱・副総裁は4月17日のIMF春季会合のパネルディスカッションで、近い将来、人民元の変動幅を拡大する計画であることを明らかにした。また、今後数年かけて人民元の自由化を着実に推し進めていく方針も示した。




水俣病未認定患者の遺族が熊本県に認定を求めた2件の訴訟の上告審判決が4月16日、最高裁第3小法廷で言い渡され、いずれも患者側の勝訴となった。 (判決要旨 下記)


水俣市の女性については県の上告を棄却した。女性を患者と認めなかった県の処分を取り消し、認定するよう県に義務付けた二審・福岡高裁判決が確定した。

豊中市の女性については、女性を患者と認めなかった2審・大阪高裁判決を破棄し、審理を同高裁に差し戻す判決を言い渡した。

水俣病について最高裁が判断を示すのは、行政責任を確定させた2004年10月の関西訴訟判決以来9年ぶり。

高裁判決では、裁判所が患者認定審査をできるというものと、県の裁量を重視し、司法は県の判断が不合理かどうかを審理するというものに 分かれていたが、今回、司法が独自に審査しうるとして県の判断を覆した。

また、環境庁の「手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせ」を条件とするという「(昭和)52年判断条件」に基づく高裁判決を破棄した。
「52年基準」に合うものは個別的な因果関係について立証の必要がないとするものにすぎず、それ以外でも諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、水俣病と認定する余地を排除するものとはいえないとした。

これまで「52年判断条件」に基づいて行ってきた政府の水俣病収拾策と、それを前提にしたチッソの事業再編に影響が出るのは必至である。

付記

最高裁判決を受け、石原伸晃環境相は4月19日の閣議後記者会見で、「判決の趣旨をしっかり踏まえ、(運用改善の)具体化を急ぐよう指示した」と述べ、検討を始めたことを明らかにした。

熊本県水俣市の溝口チエさん(故人)を水俣病患者と認定するよう命じた最高裁判決を受け、熊本県は4月19日、チエさんを患者として認定した。蒲島郁夫知事は24日に水俣市でチエさんの遺族に会い、謝罪する。

認定審査業務にあたる熊本、鹿児島両県の担当者は「これまでも症状の組み合わせだけでなく、総合的に判断してきた」と主張するが、溝口さんを除く認定患者2975人のうち、単一症状のみでも「総合的判断」で認定された患者は4人しかいない。

ーーー

この訴訟は、水俣病と認定されなかった患者2人の遺族が司法に救済を求めているもの。

熊本の女性は1974年に水俣病認定を申請したが、認定に必要な検診が完了しないまま1977年に死亡した。
県は20年後の1994年に生前のカルテなどを探す作業を始め、1995年に判断資料がないとして申請を棄却した。
遺族は2001年に棄却取り消しを求めて提訴、2005年には県に対し認定を命じるよう求める「義務付け訴訟」を追加提訴した。
女性の生前の診断書に「四肢末端に知覚鈍麻を認める」との記述があることなどから「2004年の水俣病関西訴訟最高裁判決に従えば水俣病」と主張したが、県側は「腎臓病による尿毒症が原因」と反論した。

豊中の女性は1953年ごろから手足にしびれが出始め、1978年に認定申請した。
しかし、熊本県は「感覚障害や運動失調など2つ以上の症状の組み合わせ」で水俣病と認める「52年基準」に当てはまらないとして、1980年に退けた。
女性ら関西に移り住んだ人々は、国などに賠償を求めて提訴した。(関西訴訟)
最高裁の勝訴判決が確定した後も、国は認定基準を見直さず、熊本県の棄却処分に対する女性の不服審査請求も退けたため、女性は2007年5月に提訴した。

この2件のこれまでの裁判の概要は以下の通りで、県の認定と司法判断について、両高裁で意見が分かれている。

    原告 1977年基準:
「感覚障害や運動失調など
2つ以上の症状の組み合わせ」
水俣病の
基礎的症候
原告のケース
水俣市
女性
熊本地裁 敗訴     病状に関する客観的な資料が乏しい
福岡高裁 勝訴 不十分 各症状で可能性の程度はさまざま 裁判所が患者認定審査をできる
四肢末端の知覚鈍麻と口の周辺の感覚障害あり。
メチル水銀の曝露歴を有すると推認。
県主張の尿毒症は医学的知見から認められない。
熊本県の棄却処分は違法、水俣病認定をすべき
豊中市
女性
大阪地裁 勝訴 医学的正当性の
根拠なし
四肢の感覚障害 総合考慮し、水俣病
大阪高裁 敗訴 相当 感覚障害だけでも、
「個別具体的事情を総合考慮」
県の裁量を重視、司法は県の判断が不合理かどうかを審理
違法となるのは「現在の科学水準に照らし、審査に重大な誤りがあった場合」に限られる
(1992年10月の伊方原発訴訟最高裁判決)
変形性頸椎症が原因の可能性もある。
県判断は現在の医学的知見からも合理性、
手続きに過誤や欠落はない
水俣市女性  福岡高裁  2012/2/29 水俣病訴訟、遺族が逆転勝訴
豊中市女性  大阪地裁  2010/7/19 大阪地裁、国の基準を否定し、水俣病認定を義務づけ
   大阪高裁  2012/4/17 水俣病認定で原告逆転敗訴

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水俣病の認定問題の経緯は以下の通り。

1956 5月1日 水俣病公式確認
チッソ付属病院の細川院長が水俣保健所に「原因不明の中枢神経症患者が多発している」と報告
1968 水俣病を初めて公害と認定
1969 公害健康被害救済特別措置法制定、患者認定制度始まる
 
補償協定の概要
項目 内容                                  
一時金 Aランク 1,800万円/人+近親者慰謝料(最高1,900万円)
B     1,700      +近親者慰謝料(最高1,270万円)
C     1,600 
年金 170~67千円/人・月
医療費 患者医療費全額を支払い
その他
継続補償
医療手当、介護費、温泉治療費、針灸、葬祭費
患者医療生活基金(チッソが7億円拠出)からの支給
1971 環境庁事務次官通知
水俣病の要件として、手足のしびれなどの主症状のうち「いずれかの症状がある場合」と明記。
1977 環境庁環境保健部長通知(事務次官通知を覆す)
「手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせ」を条件
(「(昭和)52年判断条件」として今に至る。これまでの認定は2,975人のみ)
1995 村山内閣 政治解決策
「メチル水銀の影響が否定できない者」を救済対象 

約1万人の未認定患者を対象に、四肢末端優位の感覚障害がある場合は「医療手帳」、感覚障害以外で一定の神経症状がある場合は「保健手帳」を交付。
医療手帳はチッソから一時金260万円、国・県から医療費自己負担分全額、月額約2万円の療養手当などを支給。
保健手帳は医療費自己負担分などを上限付きで支給してきたが、関西訴訟最高裁判決後に医療費自己負担分は全額支給に改めた。
2001 関西訴訟・大阪高裁判決
「汚染された魚介類を多く食べ、指先や舌先の感覚に障害があれば認定できる」
「52年判断条件」を事実上否定。
2004 最高裁 大阪高裁の基準を支持
国は、「最高裁の判決は有機水銀中毒症の判断基準であり、水俣病と有機水銀中毒は別」とし、水俣病認定基準の見直しは行わないことを言明。
2009 「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法」可決  最終解決策
2010/4/16 水俣病「救済措置の方針」を閣議決定 
2010 2010/11/15  チッソ、事業再編計画の認可申請
2011 2011/1/12 チッソ、「事業再編計画」に基づく、新会社「JNC株式会社」を設立

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判決要旨

■水俣病の定義

水俣病とは、魚介類に蓄積されたメチル水銀を口から摂取することにより起こる神経系疾患と解するのが相当。

■水俣病認定

個々の患者の病状についての医学的判断だけでなく、原因物質の摂取歴や生活歴、種々の疫学的な知見や調査の結果などを十分に考慮した上で総合的に検討する必要がある。
水俣病に罹患しているかという現在や過去の確定した客観的事実を確認する行為であり、行政庁の裁量に委ねられるべき性質のものではない。

■司法審査のあり方

県側は、裁判所の審査と判断は(1)「52年基準」に不合理な点があるかどうか(2)公害被害者認定審査会の判断に過誤・欠落があって、これに依拠した行政庁の判断に不合理な点があるかどうかといった観点で判断されるべきだと主張する。

しかし、裁判所においては、諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個々の具体的な症状と原因物質との間に個別的な因果関係があるかどうかなどを審理の対象として、水俣病に罹患しているかどうかを個別具体的に判断すべきだと解するのが相当。

■「52年基準」の合理性と限界

手足の先の感覚障害だけの水俣病が存在しないという科学的な実証はない。

「52年基準」は、複数の症状が認められる場合には通常水俣病と認められ、個別的な因果関係について立証の必要がないとするもので、多くの申請について、迅速かつ適切に判断するための基準として定めたという限度で合理性を有する。

「52年基準」の症状の組み合わせが認められない場合でも、諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、水俣病と認定する余地を排除するものとはいえない。

■結論(裁判官5人全員一致)

  福岡高裁判決:

今回の判決と同趣旨と認められるので、県側の上告を棄却する。

  大阪高裁判決:

水俣病認定にあたっては県知事の判断に不合理な点があるかどうかという観点から審査すべきだとしている。
今回の判決と異なる判断であり、破棄は免れない。
原告が水俣病に罹患していたかどうか、さらに審理を尽くさせるため、大阪高裁に差し戻す。

 

 


丸紅は4月15日、韓国のSK Shipping と共同で、フランスのTotal の英国法人と新造LNG船2隻の長期傭船契約を締結したと発表した。

丸紅とSK Shippingはこのたび、共同でLNG船を保有・運航管理する船舶保有会社2社を設立した。(報道では、丸紅が49%、SKが51%出資)

韓国の三星重工との間でLNG積載容量各180,000m3のLNG船2隻の建造契約を締結、Total Gas & Power Charteringとの間で最長30年間の傭船契約を締結した。

1隻は豪州 Ichthys LNGプロジェクトから、1隻は米国のシェールガスを原料とする初のLNGプロジェクトとなるSabine Pass LNGプロジェクトからのLNG輸送に投入される予定で、2017年1月および10月に竣工する。
LNG船は2015年に拡張される予定のパナマ運河を通峡可能な最大船型となる。

LNG供給先は韓国ガス公社(Kogas)で、同社は1社単独では世界最大のLNGの買い手で年間3千万トンを輸入している。

豪州のIchthys LNGプロジェクトは国際石油開発帝石(INPEX)が主導の計画で、生産開始は2016年12月末の予定。

Ichthys ガス・コンデンセート田の埋蔵量は、年間800万トン超のLNGを約20年の長期にわたり生産できる規模。
産出される天然ガスを、Darwinに建設する陸上プラントで液化し、年間840万トンのLNGと年間約160万トンのLPGとして生産・出荷する。
また、洋上貯油・出荷施設(FPSO:Floating Production, Storage and Offloading)等から日量約10万バレル(ピーク時)のコンデンセートを生産・出荷する。

権益比率は以下の通り。

INPEX 66.070
Total 30.000
東京ガス 1.575
大阪ガス 1.200
東邦ガス 0.420
中部電力 0.735

LNGについては既に、下記の通り、2017年から15年間の長期LNG売買契約を締結している。

買主 LNG年間販売量
東京電力 105万トン
東京ガス 105万トン
関西電力 80万トン
大阪ガス 80万トン
九州電力 30万トン
中部電力 49万トン
東邦ガス 28万トン
CPC社(台) 175万トン
TOTAL社(仏) 90万トン
INPEX 90万トン
合計 832万トン


Totalは2017年1月から韓国ガス公社(Kogas)に供給する。報道では年120万トンとなっており、
30万トンはINPEX枠からの購入かと思われる。

2012/1/16  国際石油開発帝石、豪州イクシスLNGプロジェクト 最終投資決定 

米国のCheniere Energyはルイジアナ州Sabine Pass の海外からのLNG受入基地に天然ガスのLNG化設備を建設しているが、2010年9月に米国がFTAを締結している国(将来締結した国も含む)に限定して輸出許可を取得、更に、2011年5月、条件付きですべての貿易相手国への輸出を認められた。

売買先は下記の通りで、韓国のKogasは2017年から年350万トンを輸入する。

輸出先 数量
万トン/年
供給開始  契約期間
BG Group (英) 350 2016  20年間
同上 追加 200 2016  同上
Gas Natural(スペイン) 350 2016  同上
Gail(インド) 350 2017  同上
Kogas(韓国) 350 2014→2017  同上
合計 1,600    


2012/2/24 
米国からのLNG輸入問題

ーーー

丸紅は2010年にノルウェーのBW Gas との協業によりLNG船の共同保有・運航事業分野に参入した。
BW Gasの子会社が保有していたLNG船8隻を共同保有している。(
丸紅49%、BW Gas 51%)


2011年にはカナダの海運大手Teekayと共同で、海運世界最大手のデンマークのA.P. Moller-Maersk A/S からLNG運搬船8隻(6隻は単独、2隻は権益)を買収した。(丸紅48%、Teekay 52%)

同社では、今後増大が予想されるシェールガスを原料とするLNGの輸送をはじめ、LNG輸送ビジネスを拡大していく計画で、2020年をメドに20~30隻に増やすとしている。



Browse LNG開発計画を主導するWoodside は4月12日、事業評価の結果、James Price PointでのLNG建設は投資基準に合致しないと判断したと発表した。

JV相手と早急に協議し、海上生産(浮体式LNG)への切り替え、既存LNG設備へのパイプライン建設や現計画の縮小案など、他の案の検討をを行う。パートナーの1社のShellは
もともと海上LNG施設を希望していた。

本計画の概要は以下の通りで、沖合で採掘したガスをパイプラインで圧送し、James Price Pointに建設する施設で精製、液化、出荷する予定だった。

プロジェクトパートナー
  East JV West JV 合計持分
Woodside 34% 17% 31.3%
三井物産・三菱商事 16% 8% 14.7%
(Chevron)  (16.67%) (20%) (17.2%)
Shell 25% 35% 26.6%
(BHP Billiton)  (8.33%) (20%) (10.2%)
PetroChina 8.33% 20% 10.2%
BP 16.67% 20% 17.2%
合計 100% 100% 100%
ガス・コンデンセート田位置 西オーストラリア州Broome市沖合425km 北西大陸棚Browse 地域
陸上プラントサイト予定地 西オーストラリア州Kimberley地区James Price Point
BrowseはTorosa(Scott Reef)ガス田、Brecknockガス田、Callianceガス田に分かれている。
年間LNG生産量 1,200万トン(400万トン×3系列)
将来的には2,500万トンまで拡張可
埋蔵量
(Woodside社見積もり)
ガス:15.5兆立方フィート、
コンデンセート:4億1,700万バレル
最終投資決断 2013年上半期
Woodsideでは「豪州の他のLNG事業と同様に強いコスト上昇圧力に見舞われた」と話し、投資額450億ドルとされる計画は「経済的な要件を満たさない」と述べた。

豪州では人材不足や賃金の高さを反映し、石油・ガスに従事する労働者の賃金は年間で14万豪ドルと各国平均の倍近い。また、昨夏導入の炭素価格制度(炭素税)や豪ドル高もコストを押し上げている。
 
LNG建設予定地とその周辺にアボリジニの文化遺跡があり、海はクジラの繁殖地で季節になると回遊してくるなどの理由で環境保護団体が計画に反対を続けていた。
 
豪州ではこの発表を受け、西豪州のLNG開発全体に遅れが出る可能性もあるとされている。
 
 
4月1日には米国のシェールガス開発会社GMX Resourcesが採算が合わないとしてChapter 11の申請を行ったと発表した。
今後、LNG価格が値上がりする可能性もある。



「イレッサ」訴訟で東京高裁で敗訴した患者側が上告していた件で、最高裁は4月12日、製薬会社アストラゼネカへの請求に対する上告を退ける判決を言い渡した。国への請求については、最高裁は既に4月2日に原告の上告を受理しない決定をしており、患者側の敗訴が決まった。

大阪高裁で敗訴した患者側も上告中であったが、最高裁は同日付で原告の上告を棄却する決定を下した。

これにより、一連の訴訟は終結した。

ーーー

イレッサは英国のAstraZenecaが開発した肺がん治療薬で一般名はゲフィチニブ。

厚生労働省は2002年7月、世界に先駆けて、申請から半年で輸入承認した。
2002年8月に発売され、2カ月の間に、1万人以上の患者に投与された。

がんの増殖、転移に関係する分子を狙い撃ちにする「分子標的治療薬」で、正常細胞を傷つける抗がん剤より副作用が軽いと期待されたが、市販開始直後から間質性肺炎などによる副作用死が相次いだ。

厚労省は同年10月、同社に、全国の医療機関に緊急安全性情報を出して注意を呼びかけるよう指示した。
その後、患者の同意を得た上で投与することも記された。

厚労省によると、2012年末時点で、イレッサの副作用とみられる報告は2350例あり、このうち862人が死亡している。

イレッサは特定の遺伝子変異を持つ患者に効果が高いことが分かっており、2011年11月からはこれら患者に限定して投与され、昨年1年間で約7500人に新たに投与された。

ーーー

イレッサで深刻な副作用を受けた患者と副作用によって死亡した患者の遺族計15人が、国とアストラゼネカに損害賠償を求めた訴訟で、東京、大阪両地裁は、原告側の和解勧告の上申書に基づき、事前に協議して、2011年1月7日に和解勧告した。

しかし、政府は1月28日、東京、大阪両地裁の和解勧告に応じないことを決めた。アストラゼネカも勧告受け入れを拒否した。

2011/1/31 政府、イレッサ訴訟で和解勧告拒否

その後の地裁判決と高裁判決の概要は以下の通りで、ともに高裁で原告側の逆転敗訴となっていた。

東京 東京地裁 判決 国とア社に1760万円の支払いを命じる
ア社 イレッサは特定の患者に高い効能、効果があり、製造上の欠陥はない
当初の添付文書の記載では医師らへの情報提供が不十分で、指示・警告上の欠陥
(PL法上で規定する「通常の安全性を欠いた状態」)
添付文書に致死的となる可能性を記載していれば、間質性肺炎で死亡することはなかった
国は承認前の時点で副作用による間質性肺炎で死に至る可能性があると認識
安全性確保のための必要な記載がない場合、国は記載するよう行政指導する責務がある。
間質性肺炎の危険性を目立つように記載するよう指導しなかった国の対応は違法
東京高裁 判決 地裁判決取り消し、遺族側主張を全面的に退ける
ア社 イレッサには有用性があり、製造における設計上の欠陥はない
イレッサの初版添付文書に警告欄がなく、副作用が致死的になり得るとの記載がなくても、指示・警告上の欠陥ではない

専門医が処方する薬剤
専門医であれば間質性肺炎による死亡の可能性を認識
国内の治験で死亡例はなく、海外の死亡例も因果関係があるとまでは言えない

欠陥があるとの前提事実がない以上、規制権限の不行使が違法かどうか論じるまでもない
大阪 大阪地裁 判決 ア社原告9人に計6050万円の支払いを命じる
ア社 警告欄に記載するなどして注意喚起を図るべきだった。
緊急安全性情報配布(2002/10)前は製造物責任法上の欠陥があり、賠償責任あり。
添付文書に関する行政指導は必ずしも十分ではないが、当時の知見のもとでは一定の合理性がある。
国家賠償法上の違法はない。
大阪高裁 判決 大阪地裁判決を取り消し、原告側の全面敗訴
ア社 担当医は肺がん治療を手掛ける医師であり、添付文書の重大な副作用欄を読めば、間質性肺炎の危険性を認識できた
副作用欄の4番目だからといって、担当医が致死的でないと理解するとは考えにくい
治験や海外症例などを含め、副作用の間質性肺炎による死亡は11例あったが、因果関係が明確と言えるのは1例で、「一般的な副作用を超える副作用を予測することは困難だった」
イレッサ自体に問題がない以上、責任はない


今回、最高裁第3小法廷は以下の判断で、5人の裁判官全員一致の意見で上告を棄却した。

医薬品は人体にとって異物であり、何らかの副作用が生じることは避け難い。製造物責任法上、副作用に関する添付文書の記載が適切かどうかは、副作用の内容や程度、医師の知識と能力、記載の形式や体裁といった事情を総合考慮し、予見できる副作用の危険性が十分明らかにされているといえるかどうか、という観点から判断すべきだ。

イレッサの輸入が承認された時点では、国内の臨床試験で副作用の間質性肺炎による死亡例はなく、国外でも間質性肺炎での死亡例にイレッサ投与との因果関係を積極的に認められるものはなかった。このため、他の抗がん剤と同程度の間質性肺炎の副作用が存在するにとどまると認識されていた。

製薬会社のアストラゼネカはこの認識に基づき、添付文書に「警告」欄を設けず、医師らへの情報提供目的で設けられる「使用上の注意」欄の「重大な副作用」欄の4番目に間質性肺炎を記載した。難治の肺がん治療を行う医師がこの記載を読めば、イレッサには他の抗がん剤と同程度の間質性肺炎の副作用があり、投与によって患者が間質性肺炎を発症した場合、死に至る危険性があることを認識するのは難しくなかったのは明らかだ。

一方、ア社の緊急安全性情報は、イレッサの投与を始めてすぐに症状が表れ、急速に進行する間質性肺炎の症例が把握されたことを受けて出されたものだ。このような間質性肺炎の症状は、承認までの臨床試験では予見できなかった。急速に重篤化する間質性肺炎の副作用があることを前提に、後に改訂された添付文書のような記載がなかったからといって、当時の添付文書の記載が不適切だったとはいえない。

以上によれば添付文書は、承認の時点で予見できる副作用を記載したものとして適切だった。

判決では裁判長を除く4人が補足の意見を付けた。

輸入販売開始後の約3カ月間で報告された死亡例は17件あり、危険性を予見することはできなかったのかについて、2人の裁判官は、「具体的ではなくとも概括的な予見の範囲内にあったと考えることも可能」と指摘した。
但し、予見に基づいた記載をするとしても「危険の具体的内容が明らかでない限り、一般的・概括的な記載にならざるを得ない」として警告としての効果を疑問視し、当時の記載が不適切だったとはいえないとした。

2人の裁判官は「イレッサは、新薬を早く使いたいという患者の望みと安全性を考慮し、国の判断によって輸入販売が始まったもので、患者だけに我慢を求めることには疑問も残る。新たに開発された薬の副作用のリスクは社会が広く分担し、被害者保護と救済を図ることも考えてほしい」として被害対策の必要性を指摘した。

医薬品による副作用被害については、製薬企業が基金をつくり医療費などを給付する「医薬品副作用被害救済制度」があるが、抗がん剤は原則として救済の対象外となっている。

あらかじめ相当の頻度で重い副作用の発生が予想される医薬品については、健康被害が生じてもこれを受忍すべきという考え方。

抗がん剤の副作用のみを救済すれば、(医薬品でない)放射線治療など他の治療の副作用に苦しむ患者らとの間に不公平感が生まれる可能性があること、がん患者の場合、症状の悪化が薬の副作用によるものかどうか判断するのが難しいことなどで見送った経緯もある。

弁護団は「最高裁の判決は極めて不当で受け入れがたいが、今回の訴訟を通じて被害の悲惨さを伝えたことで、医療現場の安全対策に多くの改善を促すことができた。国や企業は改めて今回の問題を検証し、同じような薬による被害が出ないようにすべきだ」と述べた。



 

オバマ米大統領は4月10日、3兆7700億ドル規模の2014会計年度(2013年10月─2014年9月)の予算教書を議会に提出した。

富裕層に対する増税や社会保障費の抑制などを通して、財政赤字を10年かけて1兆8000億ドル削減する。
これまでの2兆5000億ドルの赤字削減に加えると、削減規模は4兆3000億ドルになる。

大統領は、赤字削減のため民主、共和両党の妥協が必要であるとし、両党に聖域(Sacred cow)はあってはならないと述べた。
今回の提案には大統領としては通常なら提案しない年金の物価調整方式の変更も折り込んでいる。

ただ、当局者によると、大統領は共和党が増税に合意した場合にのみ、これを含む一連の歳出削減を受け入れるとしている。

10年間での1兆8000億ドルの赤字削減案の概要は以下の通り。

富裕層への増税 5800億ドル  
メディケアコスト削減 4000億ドル 医療提供者への支払い削減
高所得の受給者の自己負担額増
制度改革 2000億ドル 農家補助削減、連邦退職金改革など
経費削減 2000億ドル 防衛費とそれ以外を同額
年金改正 2300億ドル COLA (cost-of-living adjustment:物価調整)で連鎖CPI採用
借入金金利減 2100億ドル  

上記のうち、特に注目されるのは次の2項目。

1)富裕層への増税

大統領はこれまで、年収25万ドル超の世帯への増税を目指していたが、今回は盛り込まなかった。
しかし、年収100万ドル超の富裕層に最低30%の税率を課すBuffet ruleを打ち出した。

Warren Buffetは2011年8月、自分の税率が「秘書の税率よりも低い」として米国の税制は不公平となっているとの見解を表明した。これを受け、オバマ大統領は、高所得層向け増税提案を「Buffet rule」と呼んだ。

また、慈善事業への寄付金控除や、地方債の利子への減税など一部の控除に制限を設ける方針もあらためて提案した。

投資ファンドの幹部が受け取るキャリード・インタレスト(成功報酬)への税控除の廃止やたばこ税の引き上げ、税金のかからない個人退職勘定に対する上限設定も提案した。

法人税では企業の海外利益に対する課税強化やエネルギー税控除の縮小、社用ジェット機に対する税額控除廃止を提案。

一方で、小規模な新興企業への税控除の倍増、R&D費用に対する控除の延長、法人税率の最高税率の引き下げ(35%から28%)も提案。

2)年金改正

Social Security 給付額はCOLA (cost-of-living adjustment)のシステムでCPI(消費者物価指数)の増減に合わせ調整されている。

これを通常のCPIから「連鎖CPI:Chained CPI」に変更する。

通常のCPIではウェイトと価格指数の基準が基準年で固定されているのに対し、連鎖式ではそれらが毎年更新される。

牛肉価格が豚肉よりも急ピッチで上昇した場合、消費者は牛肉の購入を控え、豚肉の消費を拡大するといった行動を取り、物価の上昇の影響を軽減する。このような物価変動に対する消費行動の変化を考慮するもの。

日本でも「消費構造の変化に迅速に対応することができる」として2007年から参考指数として公表している。

米政府が「連鎖CPI」のデータ発表を開始した2002年以降、CPIに比べ、連鎖CPIの上昇ペースは約0.3-0.4%ポイント低くなっている。

COLAを通常のCPIではなく、連鎖CPIに変更することにより、給付金は減額される。

ーーー

民主党と共和党の主張は全く異なっており、この問題は簡単には解決しない。

2013年2月に、米国の国債発行の法定上限を暫定的に引き上げる法案が成立しているが、5月半ばにはこれの期限が切れる。

参考 2013/3/25 米議会が暫定予算可決 





三菱ガス化学と三菱商事は4月9日、トリニダード・トバゴ共和国において、同国政府及び同国の
Neal & Massy Holdingsとともに、メタノール年産能力100 万トン、ジメチルエーテル(DME)年産能力10 万トンの製造事業を検討することに合意したと発表した。

4月8日に現地でNational Gas Company of Trinidad and Tobago (NGC) とNational Energy Corporation of Trinidad and Tobago (NEC)も加わり、Project Development Agreement を締結した。第一段階実施のため、Caribbean Gas Chemical が設立された。


投資額は850百万ドル程度と見積もられており、 本年度中に最終投資判断の上、2014年第2四半期に
La BreaUnion Industrial Estateで建設を開始し、2016年度中の生産開始を目指す。

メタノールを世界中で販売すると共に、同国政府と協力し、同国 と周辺カリブ諸国において、DMEのディーゼル燃料代替促進に向けたプロモーションを行う。

Neal & Massy は卸売、不動産、自動車販売・メンテナンス代理店、産業用ガス製造供給、ホテル経営等、幅広い事業をカリブ全域で展開 している。

ーーー

Trinidad Tobagoには同国の天然ガスを利用する合計7つのメタノールプラントがPoint Lisasにあり、能力合計は660万トンに達する。

     国営 Trinidad and Tobago Methanol Company

1999年に子会社を統合した。
下記のメタノール5工場のほか、アンモニア/尿素プラントを持つ。

子会社
統合
Trinidad and Tobago Methanol Company (TTMC) 1984年 TTMC I 46万トン
1996   TTMC II 55万トン
Caribbean Methanol Company Limited (CMC) 1993 50万トン
Methanol IV Company Limited (MIV) 1998 55万トン
M5000
(5000T/D+既存プラント排ガスで400T/D)
2005 184万トン
合計   400万トン

   Methanex 及び Atlas Methanol

工場 能力  備考
Methanex   85万トン  
Atlas Methanol  170万トン  BP 36.9%/Methanex 63.1%

 

ーーー

SABICとSinopecは2012年2月、Trinidad and Tobago に共同で53億ドルを投じてメタノールコンプレックスを建設する件で同国政府との交渉を開始した。

同地の天然ガスを原料とするもので、立地はPoint Lisas。具体的な計画は明らかにしていないが、地元紙はMethanol-to-olefins (MTO) と Methanol-to-petrochemicals (MTP) が含まれていると報じた。

しかし、SABICは本年3月3日、この計画を取り止めると発表した。同国政府との間で原料の天然ガスの価格と供給条件で合意に達せず、交渉を中止することで合意した。

これについては以下の問題が噂された。

・野党議員も、Sinopecが参加することを知らなかった。
・米大使は政府に書簡を送り、米国企業などの競合相手を抑えてSABICを選ぶことに懸念を表した。

・SABICはNYMEXでの天然ガス価格が当時 100万BTU当たり2.48ドルであるのに対し、1ドル以下を要求していると伝えられた。
・SABIC/Sinopec側は政府が十分な量の天然ガスを供給できるのか疑問を持ったとされる。

この入札には、三菱ガス化学とNeal and Massyが米国のIntegrated Chemicalsと提携して参加していたほか、サウジのSaudi International Petrochemical (三井物産等のJapan-Arabia MethanolとSipchemのJV)も参加していた。

SABICとSinopecが選ばれた際には、日本大使館も懸念を表する書簡を送ったとされる。

2013/3/9  SABIC/Sinopec のTrinidad and Tobagoメタノール計画 取り止め


今回の三菱ガス化学と三菱商事の同国政府との合意は、SABIC/Sinopec 撤退に伴う代替案と思われるが、Methanol-to-olefins (MTO)などは含まれていない。

メタノールをそのまま海外に輸出するのではなく、これを原料にMethanol-to-olefins (MTO) 、Methanol-to-petrochemicals (MTP) により付加価値の高いプラスチック産業の基礎をつくるという同国政府の戦略は先送りされる。

2008年9月、LyondellBasell National Gas CompanyNational Energy Corporation、Lurgi AGの各社にTrinidad and Tobago 政府も参加して、Methanol、Methanol-to-Propylene、PP(490千トン)プロジェクトのProject Development Agreement に調印したと発表したが、その後の進展は報道されていない。

2007/12/25 Basell など、Trinidad and Tobago PP 事業

三菱ガス化学と三菱商事は一切触れていないが、Neal & Massy 側の発表では、第二期計画として、Methanol-to-olefins (MTO)でエタンからエチレン、MEGを、またプロパンからアクリロニトリルを生産し、更にメタノールと合成ガスから追加のMEGと酢酸を生産するとしている。

ーーー

三菱ガス化学のメタノール事業は以下の通り。(単位:千トン)
 同社によると、世界需要は年6千万あり、今後も年率4-5%の成長が見込まれている。

場所 能力  出資比率
中国重慶

 ー

 MGC 51%/重慶化医49%
 2009/10/13  三菱ガス化学、重慶のメタノール計画撤回
ベネズエラ ① 750
② 850
 2006/12/27 三菱ガス化学、ベネズエラのメタノール合弁増設
 2010年②生産開始
ブルネイ  850  2007/4/23 三菱ガス化学、ブルネイのメタノール事業決定
 2010年生産開始
サウジ  3,300
1,700
 2006/3/31 サウジ・メタノール計画
  2008年 No.5 1,700千トン生産開始
合計  7,450  


三菱ガス化学は日本の各社が操業停止する中、生産を継続したが、1995
7月に新潟 264千トンを操業停止し、設備は中国内蒙古の伊克昭盟化工集団総公司に売却した。
 

 


 

カネカは4月5日、医療機器の消化器領域の内視鏡処置具への事業展開・研究開発を加速させるために、同領域でユニークな技術および製品を持つリバーグループと株式譲渡契約を本年3月に締結したと発表した。

買収するのはリバーセイコー(2013年2月にリバー精工から社名変更)と子会社のリバーメディカル、メディカルリヴで、今後リバーセイコーが他の2社を吸収合併したのち、7月1日をめどにカネカが同社の80%の株式を取得する。

リバーグループは医療機器メーカーに未滅菌医療機器などのODM供給を10年以上行っており、内視鏡処置具を中心に特許も多く保有している研究開発型のメーカーである。

1981年に西村製作所が設立され、内視鏡処置具の製造に携わった。1988年にリバー精工となった。

主要製品は生検鉗子(組織採取用)と止血鉗子で、TVの
『ガイアの夜明け』、『がっちりマンデー』、『夢の扉』で取り上げられた。(鉗子は手術用はさみ)

2011/7/26 TV東京 『ガイヤの夜明け』

長野県岡谷市、精密機械工場が集まるこの町に、全国の医師たちが詰めかける会社がある。リバー精工は、大手医療機器メーカーとは違ったアプローチでユニークな製品を作り出す会社。社長の西村幸(みゆき)(60歳)氏。元々、モノづくりの世界に身を置いていたわけではない。
実は、法務省の官僚。地元・長野に戻った西村氏の目にとまったのが、家内制手工業で作られる医療器具の部品だった。人の為に頑張れるのはこの仕事だと思い、半年間弟子入りし技術の取得に没頭した。
その後リバー精工を立ち上げ、数々の医療機器を開発していくこととなる。製品の特徴は、全国の大学病院の医師と、共同開発をしていくということ。
通常、医療機器メーカーが開発から生産し、その器具を医師たちは使いこなそうと努力する。しかしリバー精工の場合は逆。あらかじめ医師たちから要望を聞き、共同で開発をする。例えば、医師の要望から、ナイフ型だったカテーテルの処置具を、自在に回転するハサミ型のものにした。これまでに比べ確実にガン細胞だけを除去することができ、手術時間を大幅に短縮させることに成功した。
そんな折、西村は5年前に大腸や胃など5つのガンがあることが判明した。それ以来、自らもガン患者の身として、患者にとっても負担の少ない器具を作ることを目指している。
リバー精工の医療機器は、最近では海外からも注目され始めている。世界中からその処置具を試してみたいというオファーが来ているのだ。そんな時起きた震災。日本製品の風評被害が世界で巻き起こり、興味を示していた中国側の輸入代理店からは、安全性を証明するよう求められた。日本の最先端医療を世界に広めていくために、西村氏はある作戦を考えていた。

2012/8/12  TBS がっちりマンデー

諏訪地区のスゴイ人が選ぶスゴイ人四人目は、長野県岡谷市にあるリバー精工の西村幸会長。西村さんは世界で一つの刃付きの生検鉗子という医療器具を作っている。生検鉗子の合わせ目を刃に出来るのは西村さんにしか出来ない技でこれまでに91種の特許を取得している。

2012/09/30 TBS 『夢の扉』

山形県酒田市の日本海総合病院に内視鏡によるがん治療を行う本間医師がいる。この日手術を行う患者は内視鏡治療を選択した。内視鏡のカメラの先にあるハサミで腫瘍を切り取りわずか30分で手術は終了した。この内視鏡用ハサミにより本間医師の治療件数が10倍になったという。
長野県岡谷市にあるリバー精工でその内視鏡用ハサミは産まれた。この会社では砕石バスケットやスネアーなどの医療器具を作っている。
会長の西村氏は一技術者として作業場に立つ。頭に立つ人は自分で物を作れなくてはいけないという信念があると語った。西村氏は刃渡り2ミリの刃の角度をペンチで調整する。そんな西村氏はがんの手術を経験し、負担が少ない医療器具を作りたい思い内視鏡用ハサミを開発。それまでは高い技術を要するメスが使用されていたがハサミは臓器を傷つけるリスクが少なく医師と患者にやさしい医療器具となっている。
内視鏡用ハサミの開発は6年前に始まった。本間医師は西村氏に内視鏡用のハサミが作れないかと提案した。西村は過去の経験を飛び越えるのが開発だと想い、それを引き受けた。1ミリ以下の部品が多く機械では作れないためすべてが手作業となった。開発から1年後西村氏はがんを患った。

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カネカの医療機器事業は、血液病因物質を選択的に除去して浄化された血液を再び体内に戻す血液浄化システムと、血管内治療用カテーテルを中心としたインターベンション事業を中心に展開して いる。

血液浄化システム:血液から血漿を分難し、病因物質だけを選択的に除去して、浄化された血液を再び体内に戻すシステム。
 (1)サルフラックス®(膜型血漿分離器)
 (2)リポソーバー®(LDL吸着器) 1988年 高分子学会賞
 (3)セレソーブ®(SLE治療用吸着器)
 (4)リクセル®(透析アミロイド症治療用血液浄化器)

血管内治療用カテーテル:心臓、脳、四肢などの病変部血管に細いチューブを挿入して血管内で疾患を治療するカテーテル。
PTCAバルーンカテーテルなど治療法毎に多数の製品を開発している。


カネカでは、当事業の更なる拡大を目指し、消化器領域に本格的に参入することとしたもの。
また、カネカの得意とする高分子加工技術とリバーセイコーの金属加工技術を組み合わせることで、新製品開発を促進する。

消化器領域だけでなく、リバーセイコーの技術を活用して循環器領域や他臓器(脳や腎臓など)でも再生・細胞医療への適応や、腎臓アブレーションなどへ展開し、3年後には100億円の売上増を目指す。


付記

カネカは4月12日、再生・細胞医療で使用される間葉系幹細胞を骨髄液から安全かつ効率よく分離するセレフィックBM(間葉系幹細胞分離デバイス)の欧州での医療機器承認を得たと発表した。
間葉系幹細胞は安全性や有効性が確認されつつある細胞で、iPS 細胞と同じく、再生・細胞医療で使用されることが大きく期待されている。

セレフィックBM による分離方法は、従来の遠心分離により細胞を分離する方法とは大きく異なり、特殊な不織布フィルターを使用することにより遠心分離をすることなく閉鎖系で骨髄液を処理することができる。
血液浄化システムの研究開発で培った独自の技術やノウハウを活かした。





三井化学は4月4日、ドイツのHeraeus Holdingsから 歯の修復材などを製造・販売する歯科材料事業 Heraeus Dental を買収すると発表した。
買収額は、有利子負債を含め4億5000万ユーロ(約543億円)。

Heraeus は19世紀半ばに白金の産業用途向けに酸水炎で2kgの白金溶解に成功、以来、高温技術を駆使した貴金属の素材、工業用センサー、歯科、医療用製品、石英ガラス、そして特殊光源を世界中で製造販売している。

Heraeus Dental は歯科材料ではトップの供給者の1社であり、多種類の材料を供給しており、次の利点を持つ。

① 長い歴史を通じて獲得した歯科材料事業に関する豊富な知見と業界でのプレゼンス、
② 歯科材料市場におけるHeraeus Dentalの確固たるブランド力、
③ 世界20ヶ国以上に拠点を有するグローバル販売ネットワークとグローバル経営ノウハウ

しかし、最近は新しい材料や治療方法が導入されており、同社の伝統的な貴金属材料の使用は劇的に減少している。

他方、三井化学は、同社が70%、歯科材料・歯科模型・歯科教育関係商品・ネイル関係商品を扱う(株)ニッシンが30%出資するサンメディカルで歯科材料に進出している。

1981年に当時の三井石油化学とニッシンが歯科材料などの製品を製造・販売することを目的に設立、以来、接着材料「スーパーボンド」 を主製品として接着歯学の進歩に寄与してきた。

1996年にISO9001の認証を取得し、医療機器の品質管理マネジメントシステムISO13485の認証を取得し、世界標準での製品設計、生産、品質管理を行っている。

石油化学の不振のなか、三井化学は景気変動の影響を受けにくいヘルスケア材料事業の拡大を目指しており、そのなかで歯科材料は需要が安定しているほか、世界的な高齢化で成長が期待できると判断し ているが、グローバル展開が課題となっていた。

これに加え、歯科材料市場においては、貴金属から樹脂等の他の素材へのシフトが起こっており、ポリマー技術等の化学領域に強みを持つ同社がHeraeus Dentalを譲り受けることにより、今後の成長を一層加速させることができると判断した。

今回の買収対象は株式取得対象が17社、資産取得対象が9社、計26社に及び、取得対象は下記各国にある。

欧州:ドイツ、オランダ、フランス、英国、イタリア、オーストリア、ハンガリー、スウェーデン、スイス
米大陸:米国、メキシコ、ブラジル
アジア:日本、中国(北京、上海)、韓国(51%出資JV)
オセアニア:豪州

日本にはHeraeus Holdingsの子会社ヘレウスがあるが、歯科関連はヘレウス・クルツァージャパンが、予防・保存・修復・補綴分野の歯科治療器材を包括的に提供しており、これが今回の買収対象に含まれている。

三井化学は100%出資の持株会社を設立し、同社が取得の上、統括・管理するとしている。

Heraeus発表では、今後も本社はドイツのHanauに置き、現在の経営陣はそのまま残り、現在の戦略も継続するとしている。

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Heraeus Dentalの2012年12月期の売上高は3億5360万ユーロで、営業利益は1,620万ユーロ(20億円)となっている。

これから見ると、買収額 4億5000万ユーロ(約543億円) は高過ぎる感もあるが、世界中のこれだけの国で、確立している有力ブランド力と販売ネットワークを一挙に確保出来ると考えると高くはないかも知れない。

Heraeus Dental のシェアは減少しており、早急に市場のニーズに合った製品を供給できるかどうかがキイである。





新日鐵住金は4月4日、同社と日鐵商事が合計で33.3%の権益を保有するRevuboe 炭鉱開発プロジェクト が3日にモザンビーク共和国政府より採掘権を取得したと発表した。

モザンビーク共和国Tete州に位置する未開発の原料炭炭鉱で、これまでの探査活動の結果、高品質かつ大規模な露天掘り可能な原料炭の賦存を確認して いる。
ブラジルのValeが操業中のMoatize鉱区、豪州Rio Tinto 社とインドTATAの合 弁会社が操業中のBenga鉱区、豪州Rio Tintoが探査中のZambeze鉱区等有望な原 料炭鉱区に隣接している。

採掘権を与えられたのはMinas de Revuboe Limitada で現在の出資状況は以下の通り。

豪州資源会社Talbot Group    58.9%    
日鉄商事   10.0%     当初、南ア法人に出資、2004/7 に独占探査権を取得
新日鐵住金   23.3%     2010/12 日鉄商事から取得し、参加
韓国POSCO   7.8%     2010/5 参加


Talbotは
2012年7月に、持株を英資源大手 Anglo Americanに540百万豪ドル売却することに同意した。
しかし、Anglo Americanは2013年3月28日、条件が合わなかったとして契約を取り消した。

このため、Talbotは新たな売却先を探すこととなる。

鉱区面積は 3,860 ヘクタールで、 推定資源量は 約14 億トン、原料炭の品質は、豪州優良強粘結炭並みの品質である。

年間500万トンの原料炭を採掘する計画で、2016年出炭開始を予定している。

同地の問題点は石炭の輸送をどうするかという点である。

先行するValeはBeiraまで鉄道輸送しているが、運搬能力は少なく、Beira港は整備されていない。

Rio Tintoはザンベジ川をバージで下り、河口で大型船に積み替える計画を立てたが、政府がこれを認めなかった。また、川を浚渫する必要もあるとされる。

このため、天然の良港のNacala港のターミナルと鉄道を建設中だが、完成は2015年になる。

Tete-Nacala Railway Line建設にはValeが協力しており、Valeは45億ドルを投資すると報道されている。

Rio TintoはBenga鉱区 とZambeze鉱区を所有・運営していた豪州のRiversdale Miningを買収しRio Tinto Coal Mozambiqueとしたが、石炭の輸送が十分に出来ず、本年1月17日、同社で30億米ドルの評価損を計上すると発表した。
両鉱山の埋蔵量が当初の想定よりも少なかったとも報道されている。

2013/1/24 Rio Tinto、140億ドルの評価損計上、CEO辞任 

新日鐵住金では本計画の出炭開始 を2016年としているが、鉄道とターミナルの完成が前提となる。

生産が軌道に乗れば、新日鉄住金が使用する原料炭のうち、自前の炭鉱からの調達比率は現在の20%から5ポイント高まるとみられる。





帝人は4月5日、キョーリン製薬ホールディングスの10.17%を4月2日付でキョーリンの大株主から取得したと発表した。取得価額は1株2439円で約185億円。(4月2日終値は2155円)
同時に大株主との間で、合計22%の持株について、共同で議決権を保有する契約を締結した。

帝人グループはヘルスケアを高機能繊維・複合材料事業とならぶ重点戦略事業としているが、株式取得を契機として、両社が研究開発、生産、販売・物流の各分野において共に効率向上を図れるよう、キョーリンとの間に戦略的提携関係が構築できることを期待している。

帝人は2003年1月に当時の杏林製薬との間で医療医薬品事業の統合を発表したが、わずか3カ月後に破談を発表しており、今回の取得は帝人にとって、この計画を再度実現するための第一歩と思われる。

同社では「キョーリンとの提携はスタートラインについたばかりで、これから話し合うところです」としている。

キョーリン側は「株式取得について事前に相談はなかった」とし、提携協議については「その可能性について協議する用意はある」という。

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帝人では「株式の取得先は非公開」としているが、実際は杏林製薬創業家の荻原一族である。

キョーリン製薬ホールディングスの有価証券報告書では大株主は下記の通り。 (2012/3/31)

株式会社アプリコット 6.67% 林の初期の社名もアプリコット)
ケーエム合同会社 4.82% 沢井製薬子会社(下記)
荻原 淑子 3.90%  
株式会社鶴亀 3.86%  
株式会社マイカム 3.66%  
日本マスタートラスト信託 3.36% 信託口
日本トラスティ・サービス信託 3.17% 信託口
荻原 弘子 3.00%  
荻原 年 2.97%  
株式会社バンリーナ 2.60%  
株式会社アーチァンズ 2.60%  


青字は荻原一族と関係会社。
荻原弘子氏は杏林の元会長、荻原年氏も元会長で弘子氏の叔父

2010年に沢井製薬による経営統合提案の際に、一族は持株を一定期間売却しない覚書を締結し、届け出ているが、当事者は以下の通り。

   荻原年、荻原弘子、アプリコット、荻原淑子、荻原正子、荻原桃子、荻原優子、マイカム、荻原明、
   荻原豊、荻原万里子、荻原和子、(追加) 鶴亀、アーチャンズ、バンリーナ

今回帝人が共同で議決権を保有する契約を締結した相手は、荻原弘子、荻原正子、荻原優子、荻原桃子の各氏とアプリコットの5株主。アプリコットの代表者は荻原弘子氏。 (他に鶴亀も弘子氏が代表者)

別途、荻原年、和子両氏とマイカム、アーチャンズ、バンリーナの5株主は合計13.32%を共同所有しており、他にも株主がいる。

一族が出資していた登山用品の「好日山荘」を経営するコージツの投資ファンドによるTOBでは、一族が2つに分かれて対立したとされており、今回も別行動を取っている模様。
上記の覚書は2013年3月31日付で終了したとの報告書が出ている。

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帝人と杏林製薬は2003年1月、同年10月1日に帝人の医薬医療事業グループを会社分割によって杏林に事業統合し、帝人が杏林株式の50%超を保有し、今後帝人グループの中核をなす連結子会社として発展させていくことについて基本合意に達したと発表した。統合新会社は、上場会社として独立した経営を維持する。

しかし、両社は3か月後の2003年4月に、医薬医療事業の統合を断念すると発表した。

杏林の主力製品の合成抗菌剤「ガチフロ錠」について厚生労働省が副作用の危険性を指摘したことで、杏林の株価が大幅に下落し、統合比率など条件を巡って両社の見解が食い違った。

創業家一族から「もうからない」と統合反対の声が上がり、白紙に戻ったのが真相だといわれている。

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沢井製薬は2010年12月2日、キョーリン製薬ホールディングスに対し経営統合の提案を行った。
両社を傘下に持つ持株会社方式を念頭に置いている。

沢井製薬はキョーリンの株式の約4.8%を取得し、資本提携を通じた戦略的経営統合について打診したが、キョーリンからは前向きな回答は得られず、正式提案を行った。

沢井製薬によるTOBの噂も流れ、株価は急騰したが、2010年9月に創業家一族は上記の覚書を締結している。

キョーリンはこの提案を12月7日に拒否した。賛同しない理由も含め、一切明らかにしなかった。

キョーリンの拒否は業界筋によると、「キョーリンの株式を4.8%も集めての経営統合提案に激怒した」ことに加え、「新薬メーカーとしてのプライドが後発医薬品メーカーとの統合を許さなかったから」で、創業家一族の意向によるものであろうとされた。

この結果、沢井製薬は2011年3月、交渉打ち切りを発表した。

上表記載の通り、沢井製薬はその後もキョーリンの株式4.82%を保有していたが、2012年10月に60億円で市場で全て売却した。

 

 

日揮は4月3日、フランスのTechnipと共同で、JSC Yamal LNGがロシアのYamal-Nenets自治区 Sabettaで進めるLNGプラント新設プロジェクトの有償見積りおよび詳細設計役務等に係る発注内示を受けたと発表した。

Yamal LNGはYamal半島のSouth Tambeyガス田に年産1,650万トンのLNGプラントを新設する計画で、第1期550万トンを2016年末に操業、同能力の第2期、第3期をそれぞれ2017年末、2018年末に稼働させる。

同ガス田の天然ガス埋蔵量は昨年末時点で9,070億立法メートルとなっている。

Yamal LNGはロシアの天然ガス第2位のNovatekが80%、Totalが20%出資する。

Totalは2011年10月、Novatekとの間で20%出資の契約に調印した。

今後、他社の出資も検討している。Novatekは最低51%の出資比率は維持する意向。

ロシアのノバク・エネルギー相は3月16日、Novatekが日本企業と資本参加を含む協議を進めていることを明らかにした。
ロシア通信によるとエネルギー相は、ノバテクが東京ガス、東京電力、丸紅、三井物産、三菱商事の各社と作業グループをつくり、協議に入ったと述べた。

総事業費は明らかにしていないが、1兆円を超える可能性があると見られている。

日揮とTechnip は先ずLNGプラントに係る有償見積り、詳細設計および一部長納期機器の調達役務を遂行し、次のフェーズとして、LNGプラント建設に必要な全ての契約を締結する予定。

日揮にとって初のロシアでのプラント建設プロジェクトの受注となる。

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現在のロシアの法律では、Gazpromのみが天然ガス、LNGを輸出する権利を持っている。このためNovatekはGazpromを通してしかLNGを輸出できない。

プーチン大統領は「ロシアが世界のLNG供給で3.6%しか占めていない」とGazpromに対する不満を示しており、2月13日、LNG輸出の段階的な自由化を検討するよう政府に指示した。

Yamal LNG は3月中旬に、ロシア政府が本計画を進めることを認めたと述べた。

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現在、 同地に多機能海港のSabetta港の建設が進められている。

ここはLNG、石油、天然ガス・コンデンセートを輸出する拠点港になる。

北極海航路が航行可能となる7月から11月は東側へ船を進め、ベーリング海峡経由で日本等に輸送、12月から6月は西欧に船を進める。

ロシア海運最大手ソフコムフロートは2010年8月、Murmanskを出港し北極海を初めて横断航行している大型タンカーBaltika が北極海航路の難関部分の通過に成功し、ロシア東端のチュコト(チュクチ)自治管区Pevekに達したと発表、「大型船舶の運航の可能性が実証された」と表明した。

2010/9/1  北極海横断航路で初輸送 

2012年11月7日にGazpromがStatoilの生産したLNGをノルウェーのHammerfestでLNG船オビ・リバー号に積み込み、ベーリング海峡を通り、12月5日に北九州市戸畑区の港に到着した。原子力砕氷船を同行させた。

欧州とアジアを結ぶ新ルートの将来性をアピールする狙い。

 

 


 

帝人は3月29日、2013年3月期の連結業績見通しを下方修正し、最終損益が300億円の赤字になると発表した。

炭素繊維や米在宅医療子会社の買収などで生じた「のれん」の価値を引き下げる減損処理を実施し、290億円の特別損失を計上する。

特別損失の内訳は以下の通り。

(1)高能繊維複合材事業(素繊維に係るのんの減損失   170億 円
(2)ヘスケア業に係のれんの減損 50億円
(3)そ他高機繊維・合材料業に係資産の減損失等 70億円
  合       計 290億円


(1)は2007年に炭素繊維の東邦テナックスを100%子会社化した際の「のれん代」
長期化する景気低迷、またスポーツ・レジャー用途を中心とした競合激化の状況を踏まえ、将来キャッシュフロー予測に基づく回収可能性を慎重に検討。

(2)は米国で在宅医療事業を営むBraden  Partners L.P. を2008年に114百万ドルで買収した際ののれん等の未償却残高の一部 。
米国での医療制度改革で保険価格が大幅に引き下げられたこと等の環境変化で買収時に想定した収益性が見込めなくなった。
 
(3)は炭素繊維分野に係る工場の固定資産の一部の減損損失や、2001年の洪水で被災したタイの子会社の工場の固定資産の一部等の減損損失。

ーーー

同社は2013年3月期の損益予想をたびたび引き下げてきた。

  売上高 営業利益 経常利益 純利益
2012/5/9 840,000 43,000 43,000 22,000
2012/11/2 770,000 25,000 20,000 3,000
2013/2/4 740,000 14,000 10,000 0
2013/3/29 740,000 12,000 8,000 -30,000

営業損益で見ると、2012年3月期決算発表時には430億円を予想したが、中間決算では250億円に減り、第3四半期決算では更に140億円に、今回は120億円となり、当初予想から320億円も減っている。

セグメント別では以下の通りで、今回の内訳は不明だが、2月4日発表分(当初予想比290億円悪化)で見ると、高機能繊維・複合材料セグメントが当初比で155億円 減となっている。

高機能繊維・複合材料事業は2事業本部で、
 高機能繊維事業本部はアラミド繊維製品、ポリエステル繊維製品
 炭素繊維・複合材料事業本部 は炭素繊維製品

  2012/3
実績

2013/3 予想

2012/
5/9
2012/
11/2
2013/
2/4
2013/
3/29
高機能繊維・複合材料 66 110 5 -45  
電子材料・化成品 49 80 25 -5  
ヘルスケア 264 280 280 250  
製品 66 70 60 50  
その他 37 45 40 40  
全社 -130 -155 -160 -150  
合計 * 353 430 250 140 120
* 2012年3月期実績は決算期統一の影響を除外したもの。


帝人は高機能繊維・複合材料事業をヘルスケアと並ぶ重点戦略事業としている。

その事業が短期間の間に急激に損益が悪化し、炭素繊維ののれん代を「将来キャッシュフロー予測に基づく回収可能性を慎重に検討した結果」減損処理し、更に工場の固定資産の一部減損処理せざるを得ないのはショックである。

但し、帝人では以下の通り、本事業を重点戦略事業とし、注力していくとしている。

今後も高成長が期待される航空機向けや、シェールガス革命によって需要が急拡大している圧力容器向け等の成長用途において、大幅な事業拡大を図る。

量産型自動車向けを中心に2016年頃の事業化に向けて、開発を加速する。

今後の成長地域である北米で、より高い競争力を備えた生産ラインを新設すべく、2014年度初めまでに意思決定を行う。
あわせて、米国でのコンポジット製品の成形工場の設置についても検討する。

ーーー

帝人では、炭素繊維について、軽くて(鉄の1/4)、強い(鉄の10倍)という特長から環境・エネルギー問題のソリューションとして年率15%以上の需要成長を見込んでいる。同社説明会資料 炭素繊維・複合材料事業の概況(2012/9/29)

炭素繊維では日本の3社が大きなシェアを占めている。

各社の能力は以下の通りで、帝人によると、同社の2011年の世界シェアは約20%としている。

  帝人 東レ 三菱レイヨン
日本 6,400トン 8,300トン 5,400トン
2,700トン
米国 2,400トン 5,200トン 2,000トン
ドイツ 5,100トン  

製造委託 
                 750トン

フランス   5,400トン  
韓国   2,200トン  
合計 13,900トン 21,100トン 10,850トン

三菱レイヨンは2011年に大竹事業所で産業用途を主体とした新タイプの高性能ラージトウを完成した。
東レは2015年3月には27,100トンになる。

日本の炭素繊維の状況については 2006/9/9 炭素繊維

 

最近は航空機用に加え、自動車用の開発が急である。

2011/12/15 自動車向け炭素繊維複合材料の開発が進展

炭素繊維の需要の今後の拡大を見込み、新規参入も増えている。

2011/6/17 SABIC、カーボンファイバーの技術導入;DowJV設立の覚書

当初、炭素繊維には多くの企業が進出したが、欧米の企業はほとんど撤退した。

そのなかで東レを初めとする日本の3社は事業を継続、釣竿やゴルフクラブなどスポーツ分野で市場を開拓しながら、開発を続け、航空機用に本格的に採用され、自動車用途でも目処が立ち始めた状況である。

自動車用途などは自動車メーカーとの長期にわたる共同開発が必要で、航空機用も含め、新規進出メーカーの製品が簡単に採用されることは考えられない。

このため新規メーカーはスポーツ・レジャー分野に向かうしかなく、これら分野での競争激化を生んだものとみられる。

自動車向けの本格採用にも時間がかかるとみられ、暫くは苦しい状況が続くものと思われる。



米国のシェールガス開発会社GMX Resourcesは4月1日、Chapter 11の申請を行ったと発表した。

同社は東テキサスのHaynesville/Bossier gas shaleやCotton Valley Sand Formationでシェールガスの開発を行ってきた。
2010年後半に事業を他の地域にも拡大する意思決定を行い、North Dakota、Montana州のBakkenとThree Forksのオイルシェールを買収した。

同社は昨年1年にわたり、生産増や効率改善、コストダウンに取り組んできたが、天然ガスの価格下落により、資金繰りが行き詰った。

現在の資産は281.1 百万ドルで、これに対する負債総額は485.5 百万ドルとなっている。

同社は債権者から50百万ドルのつなぎ融資(Debtor-in-possession:DIP)を受けて事業を継続しつつ、資産売却を進める。

2017年に期限がくる担保付債権保有者との間で操業中及び開発中のすべての資産を引き渡す契約を準備しており、裁判所の許可を得て、契約を締結し、その後入札でこれら資産を売却する予定。

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米国では天然ガスと原油は用途が異なるため、別々に需給により価格が決まる。

従来は天然ガス価格は原油価格にほぼスライドしており、原油100ドル/バレルの場合、天然ガス価格は100万BTU当たり10ドル前後であった。

しかし、シェールガスの開発が進み、天然ガス価格は暴落した。

米国ではNatural Gas Act of 1938 により、天然ガス輸出入にはエネルギー省の許可が必要とされており、FTA非締結国への輸出許可はこれまで1件だけである。

天然ガス輸出の是非を巡っては、輸出推進派とDowなどの輸出反対派が争っている。

2013/1/30 米国の天然ガス輸出論争、激化 

2013/2/5 米国の天然ガス輸出規制はGATT違反?

最近の天然ガスの価格状況は以下の通りで、2012年前半には2ドル程度にまで落ち込んだが、最近は3.5ドル程度となっている。

   三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査レポート(2013/1/23)

この価格水準ではメーカーの経営は非常に苦しく、多くの生産者はシェールオイルに移行しているが、シェールガス中心の生産者にはChapter 11の申請に追い込まれるケースも出始めているとされる。

ーーー

LNGの輸出を巡っては、近いうちに米国政府の決定が行われると見られており、FTA非締結国である日本向けの輸出も認められる可能性が強い。

この場合、供給側は赤字に悩み、需要側は購入を熱望している状況から、価格が上昇するのは確実である。

(Dowなどが輸出に反対するのは国内価格の上昇を恐れてのものである)

100万BTU当たり6ドルになるとの説があるが、それでも、LNGへの加工費3ドル、輸送費3ドル(メキシコ湾岸)を加えても12ドル程度であり、現在の原油価格スライドの約16ドルと比べ、かなり安くなる。

但し、現在のLNG輸入価格は単なる原油スライドではなく、震災後の買いあさりで割高になっているもので、長期的にみれば米国からのLNGはそれ程有利でないかも分からない。


東京ガスは2013年4月1日、米国政府の承認を前提に、住友商事を通じ米国のDominion Cove Point LNGを年140万トン輸入すると発表した。
関西電力も同日、年80万トンを輸入すると発表した。

住友商事はDominion Cove Point LNGが建設中の年間460万トンの天然ガス液化プラントに年230万トン分の液化加工契約を締結した。
米エネルギー省による自由貿易協定(FTA)未締結国向けのLNG輸出許可発行等を経て、2017年後半からのLNG輸出を目指す。





肺がん治療薬「イレッサ」の副作用をめぐり、死亡した患者2人の遺族が、販売元のアストラゼネカと国に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(寺田逸郎裁判長)は4月2日、国への請求について原告の上告を受理しない決定をした。

国の賠償責任を否定した2011年11月の二審・東京高裁判決が確定した。

アストラゼネカへの請求については同日、原告の上告を受理し、判決期日を今月12日に指定した。
ただ、二審の結論を見直す際に必要な弁論を開かないため、アストラゼネカの賠償責任も否定した同判決が維持され、遺族側の全面敗訴が確定する見通し。

最高裁は、医薬品の添付文書と製造物責任法(PL法)の関係について初の判断を示すとみられる。

付記
最高裁第三小法廷は4月12日、原告の上告を棄却した。遺族側の全面敗訴が確定した。

なお、大阪高裁で訴えを退けられた患者側が最高裁に上告しているが、異なる結果が出ることは考え難い。

ーーー

イレッサで深刻な副作用を受けた患者と副作用によって死亡した患者の遺族計15人が、国とアストラゼネカに損害賠償を求めた訴訟で、東京、大阪両地裁は、原告側の和解勧告の上申書に基づき、事前に協議して、2011年1月7日に和解勧告した。

しかし、政府は1月28日、東京、大阪両地裁の和解勧告に応じないことを決めた。アストラゼネカも勧告受け入れを拒否した。

2011/1/31   政府、イレッサ訴訟で和解勧告拒否

このため、両地裁で判決が言い渡されることとなった。

地裁判決と、その後の高裁判決の概要は以下の通り。

東京 東京地裁 判決 国とア社に1760万円の支払いを命じる
ア社 イレッサは特定の患者に高い効能、効果があり、製造上の欠陥はない
当初の添付文書の記載では医師らへの情報提供が不十分で、指示・警告上の欠陥
(PL法上で規定する「通常の安全性を欠いた状態」)
添付文書に致死的となる可能性を記載していれば、間質性肺炎で死亡することはなかった
国は承認前の時点で副作用による間質性肺炎で死に至る可能性があると認識
安全性確保のための必要な記載がない場合、国は記載するよう行政指導する責務がある。
間質性肺炎の危険性を目立つように記載するよう指導しなかった国の対応は違法
東京高裁 判決 地裁判決取り消し、遺族側主張を全面的に退ける
ア社 イレッサには有用性があり、製造における設計上の欠陥はない
イレッサの初版添付文書に警告欄がなく、副作用が致死的になり得るとの記載がなくても、指示・警告上の欠陥ではない

専門医が処方する薬剤
専門医であれば間質性肺炎による死亡の可能性を認識
国内の治験で死亡例はなく、海外の死亡例も因果関係があるとまでは言えない

欠陥があるとの前提事実がない以上、規制権限の不行使が違法かどうか論じるまでもない
大阪 大阪地裁 判決 ア社原告9人に計6050万円の支払いを命じる
ア社 警告欄に記載するなどして注意喚起を図るべきだった。
緊急安全性情報配布(2002/10)前は製造物責任法上の欠陥があり、賠償責任あり。
添付文書に関する行政指導は必ずしも十分ではないが、当時の知見のもとでは一定の合理性がある。
国家賠償法上の違法はない。
大阪高裁 判決 大阪地裁判決を取り消し、原告側の全面敗訴
ア社 担当医は肺がん治療を手掛ける医師であり、添付文書の重大な副作用欄を読めば、間質性肺炎の危険性を認識できた
副作用欄の4番目だからといって、担当医が致死的でないと理解するとは考えにくい
治験や海外症例などを含め、副作用の間質性肺炎による死亡は11例あったが、因果関係が明確と言えるのは1例で、「一般的な副作用を超える副作用を予測することは困難だった」
イレッサ自体に問題がない以上、責任はない



 

イスラエル沖のTamarガス田からの天然ガスパイプラインがYam Tatisガス田で既存のパイプラインに接続され、3月30日にAshdod天然ガス基地への天然ガス輸送が始まった。

同ガス田の推定埋蔵量は約2700億立方メートルで、今後、電気料金の値下げなど同国経済への好影響が期待されている。

Tamarガス田は北部ハイファの西方約90キロの地中海に位置し、2009年に発見され、掘削作業やパイプラインの敷設などが行われていた。

2010年に発見された隣接のLeviathanガス田の推定埋蔵量はTamarガス田を大きく上回ることも予想され、イスラエルが今後「エネルギー輸出国」に変わる可能性もある。

これらの外側にはキプロスの鉱区がある。

同地区でのガス田探査は当初 British Gasが行ったが、ギブアップした。

2007年に米国のNoble Energyが36%出資し、イスラエルの Delek Drilling (31%)、Isramco (29%)、Dor Alon (4%)の3社が加わるコンソーシアムが引き継ぎ、2年間の努力の末に2009年にガス田を発見した。 

Leviathanガス田(開発中):
   Noble Energy 39.66%、Avner Oil & Gas 22.67%、Delek Drilling 22.67%、Ratio Oil Exploration 15%

キプロス Block 12(試掘中):
   Noble Energy 100%(DelekとAvner が15%ずつ取得するオプション)

Leviathanガス田についてはキプロス(Cyprus) のBlock 12の分と合わせて海底パイプラインでキプロスに送り、キプロスで液化してLNGにして海外に輸出する構想がある。

ーーー

イスラエルでは2005年から、エジプトのシナイ半島のEl-ArishからイスラエルのAshkelonに通じる海底パイプラインで天然ガスを受け入れていた。

しかし、2011年にEl-Arishのパイプライン基地で爆発があり、ガス供給が停止され、エジプトの 新政権は2012年4月22日、イスラエル向けの天然ガス輸出契約を打ち切ったと発表した。

2011/2/8  エジプトーイスラエル・天然ガスパイプラインが停止

2011年には既存のYam Tatis ガス田が枯渇しており、それ以降、イスラエルの利用できる天然ガスはほとんどなくなり、Israel Electric Corporationは燃料を高価なディーゼルに戻さざるを得なくなっていた。

ーーー

キプロス側の開発については問題がある。

既報の通り、キプロス島は1974年以来、南北に分断されており、島の北部約37%をトルコ系住民による北キプロス・トルコ共和国(トルコのみが承認)が占めている。
南側のギリシャ系住民が住むのがキプロス共和国で、EUに加盟している。

天然ガスの発見で、トルコはトルコ系住民の住む北キプロス・トルコ共和国も権利を持つとし、南北で大陸棚での探査について協定を結ぶことを要求したが、キプロスはこれを無視した。

2011年9月、Noble EnergyはBlock 12で探査を開始したが、トルコの妨害に備え、イスラエルが戦艦と飛行機を用いてこの石油・ガス開発調査を支援しているという。

キプロス政府は2012年11月に新たにBlock 2, 3 ,9, 11の4鉱区 、12月にBlock 10の探鉱権を付与した。

その後、Block 9については当初の3社との交渉を打ち切り、Eni/KOGASに権利を付与した。

現在の状況は以下の通り。

Block 13 Noble Energy 100%(DelekとAvner が15%ずつ取得するオプション)
   
Block 2&3 イタリア炭化水素公社(Eni)/韓国ガス公社(KOGAS)
Block 9 仏Total E&P Activities/露NOVATEK/露Global Resources → Eni/KOGAS
Block 11  仏Total
   
Block 10 仏Total

 

トルコ政府はこれに参加する企業はトルコのエネルギー事業から締め出すと警告している。


キプロスによると、同国の天然ガス埋蔵量は最大約1兆7000億立方メートルで、同国にとり貴重な財産である。


 

 

南アのSasolは3月28日、ルイジアナ州 Lake Charlesに新しいLDPEプラントを建設することを明らかにした。

ExxonMobilのチューブラー法を使用するもので、能力は年産42万トン、2016年下期の完成を目指す。
同社は2005年に南アのSasolburgでExxonMobilの同技術でLDPEプラントを建設している。


Sasolは2011年11月に、Lake CharlesにGas-to-liquids (GTL)プラントとワールドクラスのエチレンクラッカーと誘導品を建設するFSを開始すると発表した。
シェールガスを利用するもので、エチレン能力は100万~140万トン。

同社は2012年12月に計画がFront-end engineering and design (FEED) 段階に入ったと発表した。

・Gas-to-liquids (GTL)
  2段階で日量48千バレルの設備を2基建設する。1基は2018年、1基は2019年稼働を予定。

・エチレン年産150万トンのクラッカーと誘導品
  2017年稼働予定

ーーー

三菱ケミカルホールディングスは3月5日の中期経営計画説明会で、米国のシェール革命について触れているが、エチレン及び誘導品の建設計画が目白押しである。この中にSasol計画も含まれている。

 

 各社の計画は以下の通り。

ExxonMobil:テキサス州Baytown に年産150万トンのエチレン工場を建設することを決め、認可手続きに入っている。

Dow:2011/4/26 ダウ、エチレンとプロピレンの拡張計画を発表

  2012/3/12  Dow、ワールドスケールのプロピレン建設を決定

エチレンについては、メテキサス州Freeport に同社としては世界最大の年産150万トンのプラント建設を決定し、政府の認可を申請した。投資額は17億ドルで、2014年に建設を開始し、2017年1月に操業開始の予定。

Chevron Phillips:2011/12/29  Chevron Phillips Chemical、シェールガス利用で大規模石化計画

Shell:2011/6/14 Shell、アパラチア地方でエチレンクラッカー建設へ 

Oxychem:2012/2/11  OxyChem、シェールガス利用でエチレン新設

Lyondell:2011/12/20   LyondellBasellの成長戦略

Formosa Plastics:

2012年12月に17億ドルを投じて能力増強とシェールガスへの原料転換を行うと発表した。
増設後の能力はエチレンが240万トン、プロピレンが100万トンになる。

Braskem:

BraskemのCEOは2011年4月、シェールガスを利用して米国でエチレンとポリエチレンの製造を行いたいと述べた。

なお、Braskemは米国で3つのPP工場を買収したが、原料プロピレンを供給するEnterprise Productsはテキサスでシェールガスからのプロパンの脱水素(PDH)で75万トンのプロピレン工場を建設する。

Indorama:

タイのIndoramaは2012年3月、シェールガスを原料にエチレンとEGプラントの建設を検討していることを発表した。

同社は2012年4月にOld World IndustriesからEO/EGプラント(元CelaneseのものでEO能力435千トン)を795百万ドルで買収している。

これに対する三菱ケミカルの戦略は以下の通り。

1)技術面で差異化できる製品を北米で展開

・日本合成化学(Noltex)Houston工場のEVOH樹脂の増設
   15千トン増設し、合計能力38千トンへ
・エチレン法によるMMA
/PMMA計画
   ダウの新エチレン(150万トン)プラントに隣接して、MMAモノマー25万トンを建設する計画
   三菱レイヨンが買収したLuciteのエチレンを原料とするアルファ法を採用。

2)C4製造新技術の商業化、日本国内再編でアロマ原料を安定確保
   シェールガスからのエチレン、プロピレン製造ではC4、アロマは併産しないため、これらが不足になる。

3)米国のガス価格上昇の可能性も考え、中東の在来型資源利用も継続

 



東京ガスは3月29日、Quicksilver Resources Inc.との間で、米国テキサス州バーネット堆積盆におけるシェールガス開発事業の権益に関する売買契約を締結したと発表した。

東京ガスは東京ガスアメリカの子会社としてTG Barnett Resources LPを設立し、Quicksilver がバーネット堆積盆でシェールガスを開発・生産している事業の権益25%を485百万米ドルで取得する。

同社持分のガス生産量は、LNG換算で約35~50万トン/年と見込んでおり、米国内市場に販売する

同鉱区はバーネット堆積盆の複数鉱区で、約13万エーカー。確認埋蔵量は天然ガス1.2兆立方フィート。

東京ガスが米国でシェールガス事業を権益を取得するのは初めて。

同業では大阪ガスが2012年6月22日、米国テキサス州のPearsall Shale ガス・オイル開発プロジェクトに参画することを決め、Cabot Oil & Gas Corporationとの間で、権益35%を250百万米ドルで取得すること等を定めた権益売買契約を締結している。

所在地:米国テキサス州南部(イーグルフォード地区)
参加者:Cabot 65%:オペレーター 、大阪ガス 35%
開発対象:ピアソール層
主な産出資源:天然ガス、軽質原油、NGL

東京ガスは、カナダでは中部電力、大阪ガスと石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とともに、三菱商事が20109月から参画しているカナダのCordova堆積盆地のシェールガスを中心とした天然ガス開発プロジェクトに参加している。

2011/5/14 中部電力、東京ガス、大阪ガスとJOGMEC、カナダシェールガス開発プロジェクトに参加 


日本の各社のシェールガス開発への参加状況は別紙のとおり。



 

 

三菱化学は3月29日、高吸水性樹脂(SAP)を製造・販売するサンダイヤポリマーの持株全てを譲渡し、合弁事業を解消すると発表した。
持株40%のうち、30%を豊田通商に、10%を三洋化成に譲渡する。

この結果、三洋化成 60%、三菱化学 40%であったサンダイヤポリマーは、三洋化成70%、豊田通商30%のJVとなる。

豊田通商は三洋化成が世界で初めてSAPの商業生産を始めて以来、その販売に携わってきた。

三洋化成と豊田通商はSAPを戦略的開発品と位置づけており、今後いっそうの事業拡大のためには、両社が事業を遂行していくことが最適であると判断し、合弁を解消することとした。

豊田通商が保有する販売・物流網を活用することにより競争力を高め、成長するSAP市場での積極的投資を通じグローバル展開を加速し、これまで以上に市場ニーズ、顧客ニーズに応えるべく尽力する。

大垣工場は三菱化学連結子会社の日本合成化学内にあるが、引き続きサンダイヤポリマーのプラントとして稼働を継続する。


三菱化学は、四日市のアクリル酸、同エステル、グループ会社のエマルションなど川下製品までの一貫体制で競争力を強化する。
JVの解消後も、サンダイヤポリマーに原料アクリル酸の供給を継続する。

サンダイヤポリマーは実質的に三洋化成の事業になっており、三菱化学にとってはアクリル酸さえ買ってくれるのであれば、三洋化成に任せる方がよいとの判断であろう。

ーーー

サンダイヤポリマーは2001年3月22日に三洋化成工業 60%、三菱化学 40%出資で設立され、20014月に営業を開始した。

三洋化成は名古屋に年産85トンのプラントを有しており、三菱化学は日本合成化学工業との合弁のダイヤポリアクリレート(三菱化学 51%/日本合成化学 49%)大垣工場に年産10千トンのプラントを有していた。

合弁会社設立とともに、ダイヤポリアクリレートのSAP製造プラントは合弁会社に移管された。

2003年6月にサンダイヤポリマーが100%出資し、中国現地法人「三大雅精細化学品(南通)有限公司」が設立された。


その後、各プラントは以下の通り増設され、現在の合計能力は270千トンとなっている。

    設立時     手直し
名古屋   85  → → → 105 115
大垣   10  → → → 20  
中国    2065 135  
合計   95   260 270

 

参考

2011/8/4 日本の各社、高吸水性樹脂を増強

2006/4/24  アクリル酸業界



本年は産構法が施行されて30周年となる。
30年前をシリーズで振り返る。

 

塩ビ業界は他の業種に先行し、産構法によらず共販会社体制に移り、第一塩ビ販売が1982年4月にスタートした。

2012/4/3  塩ビ共販誕生から30年

産構法で構造改善基本計画が作成され、年産能力201万トンの24%にあたる49万トンの設備処理や、既に設立済みの共販会社を中心に生産の共同化、生産品種の専門化、EDCなどの原料購入の共同化を行うことなど、生産、販売、流通各分野における合理化を行うことが決まった。

これに基づき、1983年11月に業界21社は 下記の設備処理と5年間の新増設禁止を主な内容とする協定を結び、通商産業省の承認を受けた。
また、事業提携では4共販会
を核とした生産、流通の合理化を進めるための計画が承認された。

設備処理は重合槽の容量の減により行われた。

通産省によるPVCの生産能力の管理はトン数ではなく、重合槽の容量で行われていた。
 
 PVCの生産はバッチ式で、
プロセスにより、またグレードにより、特に重合後の「冷却」ー「後処理」の時間に差があり、実際には重合槽1m
当たりの生産能力は大きく異なる 。(1m当たり月産10トン強程度から30トンを超えるものまで)
 しかし、プロセス改良による能力アップはメリットとして認められていた。

下記の処理後能力(千トン)は諸資料からの推定

共販会社

参加企業

工場

重合槽 m3

処理後
能力
千トン
処理前 処理  処理後

第一塩ビ販売
 

住友化学工業

愛媛

348

193

155

16

千葉

338

0

338

47

686

193

493

63

呉羽化学工業

840

270

570

85

サン・アロー化学
(徳山曹達)

徳山

432

20

412

88

日本ゼオン

水島

670

170

500

96

高岡

456

148

308

53

1,126

318

808

149

;

3,084

801

2,283

385

日本塩ビ販売

鐘淵化学工業

高砂

416

20

396

85

大阪

106

0

106

24

鹿島

334

0

334

63

855

20

835

172

電気化学工業

渋川

126

111

15

8

青海

294

150

144

28

千葉

430

100

330

64

JV *

-

+123

123

27

850

238

612

127

東亜合成化学工業

徳島

319

209

110

18

川崎有機
川崎

380

0

380

46

699

209

490

64

三井東圧化学

大阪

649

257

392

75

JV *

-

+185

185

41

649

72

577

116

;

3,053

539

2,514

479
中央塩ビ販売

旭硝子

早月

54

0

54

10

化成ビニル

早月

16

16

0

0

四日市

577

71

506

94

水島

672

140

532

102

1,265

227

1,038

196

信越化学工業

南陽

240

80

160

26

鹿島

1,016

127

889

196

1,256

207

1,049

222

;

2,575

434

2,141

428

共同塩ビ販売
 

東洋曹達

四日市

560

35

525

113

南陽

87

0

87

15

647

35

612

128

チッソ

水俣

371

241

130

25

水島

224

0

224

43

千葉

264

54

210

40

859

295

564

108

セントラル化学

;

0

0

0

27

日産塩化ビニール

千葉

414

84

330

64

徳山積水
(積水化学/東曹)

徳山

298

33

265

61

;

2,218

447

1,771

388

合計

;

10,930

2,221

8,709

1,680


電気化学と三井東圧のJVは日本ビーヴィシー(1982年設立 三井東圧化学60%、電気化学40%)
セントラル化学は東亜合成(川崎有機)に製造委託している。

日産塩化ビニールは日産化学が1977年に千葉のVCM、PVC事業を分離して設立したもの。
1983年に東洋曹達とのJVの千葉ポリマーとしたが、1989年に解散し、PVC設備は東洋曹達四日市工場に移管した。

上記の処理のうち、信越化学鹿島工場の127mのみが廃棄でなく休止であった。
1988年のカルテル終了後、需要の急増により日本全体が能力不足になり、通産省が「要請」した形で再稼動し、同社はこれにより有利な立場となった。

産構法による設備処理は、他の業種ではすべて自己負担で行われたが、塩ビ業界のみ、経済的負担の公正を期するため調整金を設けて各社別の処理量を決めた。

調整金は廃棄m 対し2,000千(基準を超えて廃棄する分は4,000千円)を支給することとし、合計4,360百万円を支給、残存m数比で各社負担した。

基準分 1,856mx2,000=3,712百万円
基準超  162
mx4,000=    648百万円
合計          4,360百万円

なお、呉羽化学は270mの廃棄となっているが、実際は128m多い398mを廃棄している。

これを申告して調整金をもらわなかったのは、カルテル期間中にその能力分だけ自由に増設できるというメリットを享受しようとしたと思われる。実際には規制期間中にはこの権利能力を利用しなかったため、損をしたこととなる。

ーーー

エチレンオキサイドとスチレンモノマー

エチレンオキサイドは、指示カルテルによらず業界各社が自主的に設備処理を行った。

処理前能力   743千トン
処理   122千トン
処理後能力   621千トン


日本触媒化学と三井石油化学は製品融通の事業提携計画を作成した。
三井石油化学は1985年5月にエチレンオキサイド・グルコールの営業を三井東圧化学に移管した。

 

スチレンモノマーは、産構法の業種指定は1985年1月に行われ、設備処理は各社が自主的に進めた。

スチレンモノマー 設備処理(単位:千トン)
    処理前 処理  処理後

旭化成

川崎

65

:

:

水島

330

:

:

(395)

( 50)

(345)

出光石化

千葉

160

 

160

電気化学

千葉

160

 

160

三井東圧

大阪

90

90

0

新日鐵化学

戸畑

18

 

18

大分

150

 

150

(168)

( 0)

(168)

東洋曹達

四日市

91

 

91

三菱油化

鹿島

169

:

:

四日市

241

:

:

(410)

(100)

(310)

住友化学

千葉

100

100

0

日本オキシラン

千葉

225

 

225

合計:

1,799

340

1,459


追って、産構法終了後の動向を述べる。



本年は産構法が施行されて30周年となる。
30年前をシリーズで振り返る。

 

1)ポリオレフィン共販会社

ポリオレフィン業界では先行する塩ビの共販体制を参考に、産構法施行前から新しい体制の検討を始めた。

1982年12月29日付の報道では、ポリオレフィンの生産・販売のグループ化について関係企業18社を3グループに集約することで基本的に合意したとしている。

それによると、
 ①三菱化成・三菱油化・旭化成工業・昭和電工・東燃石油化学・出光石油化学・日本ユニカー
 ②三井石油化学・三井ポリケミカル・三井東圧工業・日本石油化学・宇部興産
 ③住友化学工業・東洋曹達・新大協和石油化学・日産丸善ポリエチレン・チッソ・徳山曹達

①は、三菱系2社は同一資本系列。
昭和電工は三菱油化と製品融通関係にあり、東燃石化に対して中低圧ポリエチレン工場を売却したいきさつがある。
日本ユニカーはその子会社。
旭化成は昭電、出光とトップ同士が親密な関係にある。
さらに旭化成と三菱化成は岡山県水島地区にエチレンの共同生産会社をもっている。
   
②は、三井系3社に、三井石油化学とエチレン共同生産会社を持つ日本石油化学が加わる。
さらに三井東圧系のエチレン生産会社(大阪石油化学)に出資していて三井グループと関係が深い宇部興産も参加する。

③は、住友化学と、東洋曹達、新大協和石油化学、日産丸善ポリエチレン、チッソの興銀系4社の連合にポリプロピレンを手がける徳山曹達が参加するというもの。(新大協和石油化学は最終的に参加せず)

3つのグループのシェアはポリエチレン2品目では、三菱系が約48%、三井系が約30%、住友・興銀系が22%。ポリプロピレンは三菱系が約38%、三井系が約30%、住友・興銀系が32%となる。

1983年1月には、宇部興産が三井グループではなく、高圧ポリエチレンを生産している千葉の丸善石油化学コンビナートの運営を重視し、住友化学と興銀系化学会社を核とする第三グループ入りを表明した。

1983年3月、公正取引委員会は汎用樹脂の共同販売会社設立を目ざしている三菱化成、三菱油化、昭和電工、旭化成、東燃石油化学、出光石油化学、日本ユニカーの石油化学7社の常務クラスの役員を呼び、「7社の共販会社案はシェアが大きすぎるので、再検討したうえ、再提出願いたい」と正式に伝えた。

当時の報道によれば、通産省は4グループ化を主張しており、業界案をバックアップしなかった。
 
これを受けて、7社は2つのグループに分割することを正式に確認した。

三菱油化、三菱化成工業2社
昭電、旭化成工業、東燃石油化学、日本ユニカー、出光石油化学の5社

石化共販4グループ案に対して公取委が難色を示した。

住友・興銀系のシェアは3品目合計で約33%だが、「品目によってはシェアが高過ぎるものもあるはず」とし、また、シェアの高い上位3グループの合計シェアが約80%になることにも公取委は難色を示した。

これに対して業界では特殊品を共販の対象製品から除外することとした。
これによって最大のシェアを握る住友・興銀グループは30%を切り27%台まで低下、上位3グループの合計シェアも70%を下回り67%に落ち着く。

1983年5月24日に産構法が施行され、これを受けて各グループが正式に申請、承認を受けて7月1日から営業開始した。

2)ポリオレフィンの設備処理 

1983年6月に告示されたポリオレフィン製造業の構造改善基本計画では、過剰設備として83年8月現在のポリオレフィン年産能力の22%に当たる902千トン分を処理することになった。

高圧法ポリエチレン(LDPE)は年産能力の37%に当たる637千トンの設備処理
中低圧法ポリエチレン(HDPE)は同25%に当たる265千トンの設備処理
ポリプロピレンは設備の過剰度がそれほど大きくなかったので、設備処理の対象とはならなかった。

原則として廃棄によるが、休止により行うことも妨げないとした。
設備の新設、増設および改造は、目標期日までの間は行わないとした。

実績は下記の通りで、LDPEは目標637千トンに対し592千トンの設備処理となり(達成率94%)、HDPEは目標の265千トンに対し258千トンの処理(達成率97.5%)となった。(LDPEは他に、出光石化が建設を開始していた38千トンがプラスとなる)

PPは設備処理対象外で、1984年4月に操業を開始した泉北ポリマー(80千トン)分が増となった。
(引取枠は三井東圧化学40千トン、日本石油化学28千トン、旭化成工業12千トンである。)

 

会社名 資本金
(百万円)
出資会社 出資
比率

(%)
      生産能カ(千t/年)
LDPE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

HDPE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PP

 83/8

 85/8

増減

 83/8

 85/8

増減

 83/8

 85/8

増減
ユニオンポリマー

83/6/17設立
83/7/1営業開始

400

住友化学工業

18  

286

164

-122      

144

144

 

宇部興産

18  

147

99

-48      

105

105

 

東洋曹達

18  

167

103

-64

72

52

-20      

チッソ

18  

     

45

35

-10

156

156

 

徳山曹達

14  

           

95

95

 

日産丸善ポリエチレン+

14  

     

75

54

-21      

100  

600

366

-234

192

141

-51

500

500

0

ダイヤポリマー

83/6/17設立
83/7/1営業開始

100

三菱油化

50  

260

185

-75

36

0

-36

190

190

 

三菱化成工業

50  

118

58

-60

75

69

-6

35

35

 

100  

378

243

-135

111

69

-42

225

225

0

エースポリマー

83/6/23設立
83/7/1営業開始

200

昭和電工

20  

123

70

-53

122

113

-9

92

92

 

旭化成工業

20  

147

96

-51

129

82

-47

0

12

+12

出光石油化学

20  

0

38

+38

82

64

-18

80

80

 

東燃石油化学

20  

     

45

37

-8

76

76

 

日本ユニカー

20  

185

138

-47      

 

   

100  

455

342

-113

378

296

-82

248

260

+12

三井日石ポリマー

83/7/1設立
83/7/1営業開始

900

三井石油化学

25  

45

45

0

226

168

-58

121

121

 

三井東圧化学

25  

           

158

198

+40

日本石油化学

25  

95

71

-24

100

75

-25

0

28

+28

三井ポリケミカル

25  

175

127

-48            

100  

315

243

-72

326

243

-83

279

347

+68
合計

+

1,748

1,194
 

-592
+38

1,007

749
 

-258

1,252

1,332

+80



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