2016年6月アーカイブ


東京ガスは6月21日、VirTex Groupがテキサス州南部ウェブ郡・ラサール郡に保有するEagle Ford 層他におけるシェールガス開発事業の権益を取得したと発表した。

VirTex はこの鉱区でBP及びLewis Energy Group とパートナーを組み、25%の持分を有するが、これを買収する。

本事業に必要な支出額は最大で約80億円、ガス生産量持分はLNG換算で約20万トン/年(20年平均)と見込んでおり、生産物は今後、米国内市場に販売する。

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東京ガスが米国でシェールガス開発事業の権益を取得するのは、テキサス州 Barnet堆積盆におけるシェールガス開発事業に続き2件目となる。

2013年3月にQuicksilver Resources Inc.から、米国テキサス州バーネット堆積盆におけるシェールガス開発事業の権益25%を485百万米ドルで取得した。

同社持分のガス生産量は、LNG換算で約35~50万トン/年と見込んでおり、米国内市場に販売する

2013/4/2 東京ガス、米国でシェールガス開発事業に参加 


その後、東京ガスはガス・原油価格下落の影響等を踏まえた事業価値の再評価をおこなった結果、本投資で2015年3月期に230億円、2016年3月期に128億円、合計 358億円の減損損失を計上した。

豪州のクイーンズランド・カーティスLNGプロジェクトについても、2015年3月期に65億円、2016年3月期に148億円、合計 213億円の減損損失を計上している。

今回、資源安により権益の取得価格が低下していることから、投資額を抑え優良な権益を取得し、将来的な利益確保を狙う。

同社の2つの買収の対比は下記の通りで、今回は非常に割安となっている。

取得 LNG換算持分 取得価額 取得時 
 WTI価格
Barnet 2013/3/29 35~50万トン/年 約520億円
(減損358億円)
$97.23
Eagle Ford 2016/6/21 20万トン/年 約80億円 $48.85

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東京ガスは2020年に向けた経営計画「チャレンジ2020ビジョン」で、ガス上流事業の拡大と海外でのLNG Value Chain の構築を掲げ、今後も投資を積極的に進める。

原料調達および海外上流事業の多様化・拡大

・非在来型ガス(CBM・シェールガス)を含む多様なソースからの調達・上流事業参画
・中小規模LNGプロジェクトやフローティングLNG等、新しいコンセプトのプロジェクトからの調達・上流事業参画
・必要に応じた他企業との共同調達の推進
・調達数量の増大に応じたLNG船団の拡充

地域ごとにLNGバリューチェーンを構築し、併せて地域間でのバリューチェーン展開を目指す。

米大統領選で共和党の候補者指名を確実にしている実業家 Donald Trump が6月28日、ペンシルバニア州Alumisource で演説し、大統領に就いたら「米国をTPPから離脱させる」と述べた。NAFTA についても再交渉を求め、拒否されれば離脱するとしている。

アドリブの演説ではなく、あらかじめ用意した文書を読み上げた。

ポイントは次のとおり。演説では、各所でClinton夫婦の過去の行動を挙げ、その結果の悲惨さを述べ、批判している。

英国の友人たちは、国民投票で経済、政治、国境を取り戻した。

次は米国民が自らの将来を取り戻す時だ。

米国の最初の憲法には所得税さえ無かった。しかし関税はあった。国内の生産への課税ではなく、海外の生産への課税である。
今や、米国企業に課税し、規制し、制限して潰しながら、外国が無関税で製品を米国に輸出する欺瞞を許している。

もう一度、経済的独立を宣言する時だ。

大統領になれば、以下の7 つを実施し、職を取り戻す。

1)米国はTPPから離脱する。

2)米国の労働者を守るため、タフで有能な貿易交渉者を指名する。

3)商務長官に命じて、外国が米国労働者を傷つけている貿易協定違反を全て明らかにし、関係官庁にあらゆる手段でそれを止めさせる。

4)北米自由貿易協定(NAFTA)のパートナー(カナダとメキシコ)に直ちに再交渉する意図を伝える。米国労働者に少し良くするのではなく、もっともっと良くするのだ。
再交渉に応じない場合、撤退の通知をする。

5)財務長官に指示し、中国を為替操作国に指定させる。通貨切り下げで米国を害する全ての国に厳しく対処する。

6)通商代表部に指示し、米国及びWTOで中国の貿易問題に対処する。不当な政府補助金は中国のWTO入りの際に禁止されており、このルールを実行する。

7)中国が、米国の企業秘密盗みを含め、違法行為をやめない場合、これを是正するため、大統領としてのすべての権限を使う。


経済的敗北の時はようやく終わる。新しい繁栄の時代が始まる。

米国は再度、独立する。

米国の労働者はようやく、彼らを守り、彼らのために戦う大統領を持つことになる。

米国を、事業を始め、労働者を雇い、工場をオープンする世界で最良の場所にする。

税制改革で、労働者や事業への重荷を取り去る。無駄なルールや規則を取り除く。

未来を信じる時だ。互いを信じる時だ。米国を信じる時だ。

米国を再び、全ての人にとって偉大な国にする。今までよりももっと偉大な国に。


出光興産は6月28日、定時株主総会を開催した。

社長から、報告事項および決議事項に関する説明が行われたが、その際に大株主の代理人から、現在協議を進めている昭和シェル石油との経営統合について反対の意見表明がなされた。

出光興産は2015年7月30日、昭和シェル石油の株式 33.24% をShellから取得する株式譲渡契約を締結したと発表した。

出光興産と昭和シェルは2015年11月12日、対等の精神に基づく両社の経営統合に関する基本合意書を締結したと発表した。

2015/11/16 出光興産と昭和シェル、経営統合に関する基本合意書締結 

当初、2016年10月から2017年4月を目途に本統合会社を発足させることを目指すとした。

しかし、2016年6月17日の発表では、公取委審査の遅れから、昭和シェル株式の譲り受けは、当初の2016年上期中から2016年9月中とし、統合会社発足を2017年4月1日(予定)としている。


創業家側の弁護士によると、出光の創業家は筆頭株主の日章興産などを通じて出光株の33.92%を握っている。

同社の有価証券報告書によると、大株主の持株比率は下記の通り。

日章興産 16.95%
出光文化福祉財団 7.75%
出光美術館 5.00%
(以上合計) (29.70%)
社員持株会 3.80%

この29.70%に、出光昭介名誉会長(1.21%)、同氏の長男と次男(各1.51%)を加えると33.92%となる。

このままでは、統合承認に必要な、議決権3分の2以上の賛成をえることが困難になる。

なお、会社側は文化福祉財団と美術館は公益財団であり、議決権を行使できず、創業家の議決権は21.2%にとどまり、合併は可能とみている。

合併の反対の理由について創業家側は、
①出光と昭和シェルが、労働組合の有無など異質の企業体質を持ち、合併により経営の効率性を失う
②中東情勢が不安定ななか、サウジアラビアの国営会社サウジアラムコの影響力を受ける昭和シェルとの合併を急ぐべきではない、としている。

昭和シェルにはSaudi Aramcoが14.96%を出資する。
Shell が50%を所有していたが、2004年に9.96%をSaudi Aramcoに売却、翌年さらに5%を追加売却した。)

Shell の持株 33.24% を出光が買収する。

出光興産は、1953年にイギリスから経済制裁・禁輸措置を受けていたイランから原油を輸入した「日章丸事件」以来、イランとの関係が深く、イランとサウジの「対立の渦中に合併でサウジアラビアとの関係を強化するのは適切な経営戦略でない」とする。

出光は当初、昭和シェルの買収を持ちかけたが、昭和シェルの反対で合併に変更した。合併の場合は、合併会社における出光家の議決権は薄まり、重要事項の決定に関与できなくなる。


また、第1号議案である取締役選任議案で出光の取締役10人の再任に反対票を投じた。
しかし、これを含む全ての議案は、賛成多数で原案どおり承認可決された。

付記

月岡隆社長の取締役再任案への賛成率が52.3%だったことが分かった。昨年は91.6%で、賛成が39.3ポイント減った。
反対47.2%、その他0.5%で、創業家(議決権 33.92%、投票のうちでは38.6%)以外にも現経営陣への反対勢力が多数存在することがうかがえる。


出光興産は次のとおり述べている。

当社グループの企業価値向上のみならず、日本国内のエネルギーの安定供給体制の維持・強化に貢献することの重要性について、大株主と当社経営陣はその考えを同じくする中で、大株主とは今回の経営統合について継続的にコミュニケーションを行ってまいりました。

本日の定時株主総会の場で大株主の代理人からこのような形で経営統合反対の意見表明があったことは、誠に残念であると考えております。

当社グループの持続的な成長と石油業界の将来を考えた時、昭和シェル石油との経営統合が最善の策と確信していることには変わりなく、今後も対等の精神の下、経営統合に向けた協議を継続して参ります。

大株主を始めとする株主の皆様にご理解頂ける統合会社の設立に向け取り組んで参りたいと存じます。


アジアインフラ投資銀行(AIIB)は6月24日の理事会で第1号として4件、総額509百万ドルを決め
た。

うち、
1件がAIIBの単独で、3件が世界銀行やアジア開発銀行など他の国際金融機関との協調融資。

協調融資で既存の国際金融機関と対立しない姿勢を示すとともに、単独の融資を盛り込んで自前の審査能力もアピールした。

AIIBの開業初年度となる2016年の目標は12億ドル。

融資案件は下記の通り。(単位:百万ドル)

協調融資(融資額) AIIB 融資額
バングラデシュの送電線整備 単独 165 ①農村部の250万戸(1250万人)に新たに電力を供給する送電線
②首都ダッカで変電所を改良、電線を地中化
インドネシアの貧困地区の開発事業 世銀 

主導

216.5 政府の都市スラムインフラ投資を補助
 154都市のスラムに住む 970万人に貢献
パキスタンの高速道路の延伸 ADB  100 100 National Motorway M-4の残っている区間
 Punjab州のShorkot-Khanewal の4レーン、64km
UK DFID     34
タジキスタンの高速道路 EBRD 27.5 27.5 Dushanbeからウズベキスタンの国境に延びる高速道路
AIIB 合計 509

 注)ADB:アジア開発銀行、UK DFID:英国国際開発省、EBRD:欧州復興開発銀行


アジアインフラ投資銀行(AIIB)の第1回年次総会が6月25日、北京で開かれた。

総会では上記の第1陣の融資が報告された。

金立群総裁は総会で「2017年初めから新メンバーが加わることを楽しみにしている」と述べた。

創設メンバーに続く第2陣の加盟申請は今年9月末に締め切るが、既に24カ国が参加意向を伝えてきているという。具体的な国名は現時点で不明。

AIIBの創設メンバーは57カ国。
 2015/12/26 アジアインフラ投資銀行 発足 

24カ国が追加加盟すれば81カ国となり、アジア開発銀行(ADB)の67カ国・地域を上回る。

なお、鳩山由紀夫元首相が、AIIBの「国際諮問委員会」の委員に就任することが、分かった。金立群総裁が6月25日、確認した。

幅広い分野にわたって第三者の立場で助言する役割を担う。非加盟国を含め、元首や首相の経験者10人程度で構成する見通しで、金総裁が中心となって人選を進めている。


付記

韓国企画財政部は6月28日、AIIBの副総裁の一人でChief Risk Officerの洪起沢(元韓国産業銀行会長)が突如休職に入ったことを明らかにした。
「一身上の都合で半年間の休職をAIIB理事会に口頭報告し、これが受け入れられたと聞いている」としている。

AIIBは既に洪副総裁の後任者探しに着手、韓国以外の国々の候補者を検討しているとされる。

洪副総裁は所在不明で、韓国政府側とも連絡ができていない状態という。



参考

2015/7/2 アジアインフラ投資銀行(AIIB)の概要 
2015/12/26 アジアインフラ投資銀行 発足
2016/1/18 アジアインフラ投資銀行の開業式典
2016/2/8 アジアインフラ投資銀行(AIIB)、副総裁人事を発表

離脱派を引っ張ってきた一人の英国独立党のNigel Farage 党首が6月24日のテレビ番組で、英国がEU加盟国として支払っている拠出金の額について間違いを認めた。

投票前、離脱派は拠出金が週3億5千万ポンド(約480億円)に達すると主張、与党・保守党のBoris Johnson 前ロンドン市長らが全国を遊説したバスの側面にも、巨額の拠出金を「国民医療サービスの財源しよう」と書かれていた。

一方で残留派は、EUから英国に分配される補助金などを差し引くと、拠出金は「週1億数千万ポンドだ」と反論 していたが、 Farage 党首は番組で残留派の主張が正しいことを事実上、認めた。

実態は下記の通り。誤認識などではなく、全くの嘘で、国民を騙したことになる。

英国の2015年の拠出金は180億ポンドである。

週当たりでは3.5億ポンドで、離脱派はこれをそのまま、「国民医療サービスの財源にしよう」と訴えた。

実際には、英国に限り、50億ポンドのリベートがすぐに払われる。

サッチャー首相の"I want my money back" という発言に基づき1984年に導入されたもので、サッチャーは、EUから受け取るよりも、多くの資金を拠出することは、「貧しい国」にとって不当であるとした。また、当時、EUの全予算の70%以上は、農業政策分野に当てられていたが、農民の少ないイギリスが受ける恩恵は小さいことが、根拠となった。

従って、実拠出金は130億ポンドで、週当たりでは2.5億ポンドとなる。

さらに、EUの政策に基づき、英国に45億ポンドが支出される。

このため、ネットでは英国のEUに対する支出は85億ポンド(週当たりでは1.6億ポンド)となる。


また、離脱派はEU加盟国からの移民制限を主張していたが、英国が今後 EUと貿易協定を結ぶためには「人の移動の自由」が条件になる可能性があり、離脱派が、「移民がゼロになるわけではなく、少しだけ管理できるようになる」と、「下方修正」した。


このため、「うそを信じてしまった」と離脱に投票したことを後悔する書き込みが増加し、「BREXIT」(Britain Exit )に絡め、BREGRET (Britain Regret) が使われている。

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格付け大手は6月27日、英国債の格付けを変更した。

S&P   AAA(最上位)から2段階引き下げ、AAに
フィッチ  AA+ (上から2番目)から1段階引き下げ、AAに
Moodys  Aa1 (上から2番目)据置き、但し見通しを「安定的」から「弱含み」に下方修正

付記

S&Pは6月30日、EUの格付けをAA+ からAAに1段階引き下げたと発表した。
英国が国民投票で離脱を決めたことで、EUの財政の柔軟性が低下し、予算の見通しに不透明感が高まったと判断した。


富士フイルムは6月23日、子会社でiPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーのCellular Dynamics International, Inc.が、米国国立眼科研究所との間で、他家 iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を用いた加齢黄斑変性の治療に関する共同研究開発契約を締結したと発表した。

Cellular Dynamics は、免疫拒絶を起こしにくいHLAタイプの他家iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞と、細胞の培養・冷凍保存用培地の開発・提供を行う。

  • Cellular Dynamics は、GMPに準拠して製造された、免疫拒絶を起こしにくいHLAタイプ(最大5種類)の他家 iPS細胞由来網膜色素上皮細胞と、細胞の培養・冷凍保存用培地の開発・提供を行う。
  • Cellular Dynamics は、他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞を提供する。
    また、富士フイルムが開発した、生体適合性に優れさまざまな形状に加工できる細胞外マトリックス「リコンビナントペプチド(RCP)」も提供する。
  • 国立眼科研究所は、Cellular Dynamicsから提供を受けた、細胞、培地と細胞外マトリックスを用いて、移植用の組織培養を行うとともに、培養組織の冷凍保存試験と動物モデルでの有効性試験を行う。
  • Cellular Dynamics と国立眼科研究所は、細胞移植の効率向上に寄与する「RCP」を他家iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞とともに移植し、移植した細胞への血管新生による有効性と安全性も確認していく。

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加齢黄斑変性は、加齢に伴って、目の網膜の中心部分の黄斑部にある網膜色素上皮細胞が死亡・減少する疾患で、視力が低下し、進行すると失明に至る。患者は世界で約3千万人と推定され、完治する治療法が確立されておらずアンメットメディカルニーズが高い疾患。

日本では2014年9月、理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーが世界で始めて iPS細胞から作った網膜の細胞を、加齢黄斑変性の患者に移植する臨床研究の手術を行った。
2015年10月、
手術から1年が経過したことを受け、「がんなどの異常は見られず、安全性の確認を主目的とした1例目の結果としては、良好と評価できる」と発表した。

この場合は患者本人から作成したiPS 細胞(自家iPS細胞)を使用した。ヘリオスがシートの作成を担当した。

2013/12/4 大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発

京都大学iPS細胞研究所、理化学研究所、大阪大学、多細胞システム形成研究センターの4機関は2016年5月30日、「滲出型加齢黄斑変性に対するiPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植に関する臨床研究」を実施することを目的とした協定を締結した。

新たな臨床研究では、自家細胞・シート移植の手法に限定することなく、他家細胞の使用や細胞懸濁液の移植についても検討することを計画している。

iPS作成には1人当たり1千万円程度がかかり、作製に半年が必要で急場の間に合わない。このため、山中教授は「iPS細胞ストック」構想を進めている。

他家iPS細胞利用のためには、拒絶反応対策が必要で、白血球の血液型といえるHLA(ヒト白血球型抗原:Human Leukocyte Antigen)の合致が求められる。

HLA型は父母ごとに何百種で、合わせて何万もあり、全てのストックは無理だが、HLAホモドナー(父母が同型)のものは、片方が合えば使用できる。民族によりHLA型の分布が異なるが、日本人の場合は、ある1名のホモドナーで全体の20%75名のホモドナーで80%をカバーできる。

2012/7/26 「iPS細胞ストック構築」で赤十字と提携 

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富士フィルムは2015年3月30日、株式公開買付けにより米ベンチャーCellular Dynamics International, Inc. を買収することで同社と合意した。

ウィスコンシン大学のJames Thomson 教授は、山中教授と同じ2007年11月に、人間の受精卵を使わずに皮膚細胞からiPS細胞ができると発表しているが、Cellular Dynamicsは、そのJames Thomson 教授が創始者の一人である。

Cellular Dynamicsが持つ特許の範囲は、体の様々な細胞からiPS細胞を作製する技術、iPS細胞から心筋や糖尿病治療への応用が期待される膵臓のベータ細胞を作る技術など幅広い。中でも2013年に成立した、プラスミドと呼ばれる環状DNAを使ってiPS細胞を作る技術は、がんになりにくい安全なiPS細胞を得るのに不可欠とされる。

また同社は、California Institute for Regenerative Medicine とのiPS 疾患細胞バンクの樹立、National Eye Institute へのドライ型加齢黄斑変性症の臨床試験開始届を行うための前臨床試験用 iPS 細胞受託を進めるなど、米国でのiPS 細胞供給ビジネスを積極的に展開している。

Cellular Dynamicsは2015年2月、2人のHLA "Super-donor" からGMP基準のiPS細胞を樹立したと発表した。

京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授は2015年4月8日、このCellular Dynamics と iPS細胞関連の有力特許の相互利用などを推進する考えを明らかにした。

Cellular Dynamicsは山中教授の特許の実施権をすでに得ているが、癌になりにくい安全なiPS細胞を作ったり、iPS細胞から心臓の細胞を育てたりするための特許を幅広く保有し、高品質なiPS細胞製品を世界中の研究機関に供給している。

山中教授は、それぞれの特許を相互に利用できるようにするクロスライセンス契約の締結など「これまで以上に深い協力ができると期待している」と話した。


カリフォルニア州の電力会社 Pacific Gas and Electric (PG&E) は6月21日、労働組合や自然保護団体などとのJoint Proposal を発表、エネルギー効率アップ、再生エネルギー、エネルギー貯蔵に対する投資を現在の規定以上に増やし、2025年までにカリフォルニア州での原発を停止する。

Joint Proposal のメンバーは下記の通り。
 PG&E
 International Brotherhood of Electrical Workers Local 1245、Coalition of California Utility Employees
 Friends of the Earth、Natural Resources Defense Council、Environment California、Alliance for Nuclear Responsibility

停止するのは、Diablo CanyonのWestinghouseのPWR原発2基(各1,100MW)。

No.1 は2024年11月2日、No.2 は2025年8月26日に認可期限が来るが、PG&Eでは原発ライセンスの更新手続きを中止する。

カリフォルニア州の新しいエネルギー政策はDiablo Canyon原発の電力のニーズを著しく減らす。

気候変動に関する法案(SB-350:別名50/50/50法案)は下記を義務付ける。
 (1)2030年までに建物の電力効率を50%改善する
 (2)2030年までに電力会社は電源の50%を再生可能エネルギーで賄う
 (3)2030年までに自動車とトラックの石油使用量を50%削減する

停止までの 8 - 9年間で原発の電力を温室効果ガスのないソースに置き換える。原発2基の電力を、コスト競争力のある温室効果ガス無しのエネルギー効率アップ、再生エネルギー、エネルギー貯蔵の組み合わせで置き換える。

PG&Eでは2031年までに再生エネルギーの比率を55%にまで高める。これは米国のエネルギー会社で例のない自主的なコミットメントである。

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カリフォルニア州では2013年にSan Onofre原発の廃炉が決まっており、これで同州から原発がなくなる。

Southern California Edison 2013年6月7日、三菱重工業製の蒸気発生器の配管破損で前年から停止中の米カリフォルニア州南部のSan Onofre原発 全2基を廃炉にすると発表した。

2号機は1983年、3号機は1984年にスタートした。
三菱重工業は2号機、3号機の取替用の蒸気発生器を各2基 納入した。

San Onofre原発は2012年1月31日、3号機の蒸気発生器の配管から水が漏れて緊急停止、微量の放射性物質が漏れた可能性もある。定期点検中の2号機でも配管摩耗が見つかり、NRCはすべての稼働を禁じた。

Edisonは2012年10月、2基のうち1基を7割の出力で稼働する計画をNRCに出したが、市民団体や一部議員が反対、NRCも公聴会を重ねるなどして判断に時間がかかり、「再稼働できるかどうか、できたとしてもいつになるか不安定な状態がこれ以上続くのは、利用者や投資家にとってよくないとの結論に至った」とコメントを出した。
2013年6月7日、全2基を廃炉にすると発表した。

Southern California Edisonは2013年10月16日、米国で仲裁を申し立てた。本件契約の保証義務違反等に基づき、三菱重工に対し40億米ドル以上の損害賠償を求めている。

付記

2015年10月、請求額が75.7億米ドルで確定

2016年7月14日、請求額を66.67億米ドルに変更したことが判明

これに対し、三菱重工では、契約上の同社の責任上限は約1億3,700万米ドルであり、代替燃料コストを含め間接損害は排除されているとしている。

2013/10/22 米国原発会社、三菱重工業の蒸気発生器の欠陥で仲裁申立て 

英国、EU離脱

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6月23日英国で実施されたEU離脱の是非を問う国民投票は、大方の予想を裏切る「離脱」という結果となった。


結果は次のとおり。

スコットランドは、全選挙区で「残留」支持となった。

Nicola Sturgeon 自治政府首相は、「スコットランドの人々は自分たちの未来がEUとともにあると考えていることが明確になった」と発言し、EUに留まるため、独立を目指す可能性を示唆した。

2014年9月18日の住民投票では英国からの独立を否決している。

独立賛成 1,617,989 44.7%
独立反対 2,001,926 55.3%


北アイルランドも残留派が多数を占めた。

カトリック系民族主義政党シン・フェイン党は、アイルランドとの統一の是非を問う住民投票を行うべきだと表明。「北アイルランドは、イングランドの投票結果に引きずられている。今こそ長年の要求である南北統一をかけた国民投票の実施を強く求める」としている。

北アイルランドには、カトリック系住民が多数をしめるアイルランド人住民と、17世紀に移住してきたイングランド系・スコットランド系入植者の子孫であるプロテスタント系住民がおり、アイルランドが1937年に独立した際に英国に残留した。

両者の対立は続き、いわゆる「北アイルランド紛争」が起こった。

カトリック系住民は、英国がEUから離脱すると、EUメンバーであるアイルランドとの関係が疎遠になるのを恐れる。


人口からみるとEnglandが圧倒的で、シン・フェイン党の主張の通り、「イングランドの投票結果に引きずられている」のは確かである。

EU離脱を機に、連合王国が崩壊する可能性もある。

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年齢層別では、若いほど残留支持、年寄りほど離脱支持となっている。

以下、毎日新聞記事

「離脱に投票した人は高齢者が多いと聞くが、若者の将来を考えたことがあるのか」。大学生は憤る。

離脱で移民の入国は制限されるが、英国民もEU内を自由に移動する権利が制限される可能性がある。

「この小さな島国では若者の活動や将来を保証してこそ、活力が上がる」

Repsol は6月17日、Sinopecが両社のJVに関し、55億ドルの補償を求めた調停手続き開始の通知を行ってきたと発表した。

問題のJVは北海に10の石油プラットフォームを持つ単独では最大のオペレーターのTalisman-Sinopec Energy UK Ltd で、間もなく Repsol Sinopec Resources UK と改称する予定のもの。下記の歴史を持つ。

Sinopecの親会社である中国石油化工集団は2009年818日、スイスに本拠を置く石油開発大手のAddax Petroleum の買収を完了した。
  金額は約75.6億米ドルで、中国企業による外国企業買収としては2009年で最大規模になった。

2009/9/2  シノペックのAddax買収の余波

Sinopecは2012年7月24日、カナダのTalisman Energy の英国子会社Talisman Energy (UK) の49%を15億ドルで取得することで合意した。
  Talisman Energy (UK)をTalisman-Sinopec Energy UK Ltd とし、Sinopecの子会社Addax とTalisman Energy のJVとする。

2012/7/31 中国石油大手による買収 続く

スペインの石油大手 Repsol S.A. は2015年5月8日、カナダの同業 Talisman Energy Inc. を買収した。

    2014/12/24 スペインの石油大手Repsol、カナダのTalismanの買収で合意 

Talisman-Sinopec Energyは英国の北海に49の油田を持ち、そのうち38油田を運営している。Flotta島にオイルターミナルを持ち、海上に12施設を持つ。


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Repsolによると、Sinopecは今回、JVへの当初の15億ドルの出資額と、その後の投資と機会コストの40億ドル、合計55億ドルの返却についての調停を求めている。 同時に、AddaxはJVに留まる意向も示している。

Repsolではこれを根拠のないものとしている。

スペイン当局の要請を受け、Repsolは声明を出し、「今回のSinopec の動きは、英国への投資決定を行った者が、期待した結果が得られないため、自己防衛のために行ったと解釈される」と述べた。

調停申請はビジネスパートナーに期待される義務と矛盾するもので、出資して3年後(Repsol がTalisman を買収し、JVに参加して以降)に行われたが、その間、Addaxはマネジメントレベルで経営に参加しており、なんら心配や懸念を示すことなく JVの全ての決定に参加していると述べた。

Sinopecはこれまでコメントをしていない。

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中国では2015年に元CNPCの総経理で政治局常務委員であったエネルギーの帝王、周永康 が汚職で無期懲役刑になり失脚した。

2013/8/31 中国政府、元CNPC総経理(前政治局常務委員)の汚職をめぐる調査を開始

Sinopecの海外資産買収の多くは、周永康 が中国の石油会社に、海外進出してエネルギー資源を獲得するようプッシュした時に行われている。

同社は周永康 の失脚後、全ての海外資産購入について内部監査を行っているが、海外資産の多くがオイルブームの頂点に、他の企業の買値に多額の上乗せをして購入されたことを認識している。石油価格の暴落で利益が出ない油田が多く存在する。


IMFは6月20日、年に1度の日本の経済政策に関する報告書を公表した。

日本の今の経済政策では高い経済成長や財政再建の実現は難しいとして、労働市場の改革を進めるとともに、消費税率を少なくとも15%まで段階的に引き上げることが必要だとしている。

http://www.imf.org/external/np/ms/2016/062016.htm
https://www.imf.org/external/japanese/np/ms/2016/062016j.pdf (日本語版)

内容は下記の通り。

結論:

アベノミクスは日本経済の再活性化に向けて進展しているが、持続的な高成長・インフレはまだ確保できていない。
現在の政策の下では、高い名目成長目標、物価目標、プライマリー収支黒字化目標は全て、当局が設定した期限までには達成困難である。
目標未達のリスクを認識し、当局は金融・財政政策の緩和によって対応してきているが、見通しは引き続き弱いままだ。

アベノミクスの野心的な目標を達成するためは、より大規模で連携のとれた政策の改善が求められる。

労働市場の二重構造に取り組む改革と組み合わされた所得政策がより重視されるべきで、それらは更なる短期的金融・財政支援及びより信頼性の高い政策枠組みを伴うべきだ。
財政戦略は中期的な財政再建にコミットし、大規模で裁量的な消費税引上げをより小規模だが長期に亘って持続する引上げに変更すべきだ。

当初の成功の後、日本は向かい風と政策課題に直面している...

幾つかの要因が持続的な改善を妨げている。

構造的障害 経済の先行きに対する信認の低さが投資と借入需要を抑え、ポートフォリオ・リバランスの妨げになっている。
労働需給の引き締まりと大企業の高収益が賃金上昇に波及するのを、労働市場の二重構造と硬直性が妨げている。
低迷する需要及びなお残るデフレ心理は、企業が製品価格を引き上げる能力を損なっている。
銀行が固定資産の担保に大きく依存し、中小企業の再建が遅いことが示すように、金融部門はリスク・テイクを十分に支援しておらず、リスクに基づいた資本供給を制約している。
政策の欠点 2014 年の財政スタンスは、消費税引上げにより期待された収支改善を超え、結果的に過度に緊縮的となった。
補正予算を毎年伴う財政政策の変動、消費税引上げの裁量的変更、そして中期的な予算の見通しを支える楽観的な成長前提は、信頼できる中期的なアンカー(支え)のない財政政策をもたらし、政策の不透明性を高めている。
金融政策の波及の弱さ、脆弱な賃金・物価のダイナミクス、自然利子率の低下は、必要なインフレ期待の上昇を妨げ、コミュニケーション及び信認に関する課題を日銀にもたらしている。
構造改革は、上記の(特に労働市場における)構造的問題に十分に対応していない。
世界経済の弱さと変動 世界の成長の低迷と貿易財部門における過剰生産能力は、減価した円が輸出を押し上げるのを妨げている。
新興市場に関する懸念や先進経済における金融政策の先行きに関する期待の変更は、金融市場の変動を高め、逃避通貨としての増価圧力をもたらした。
商品価格が低下しても、期待されたほど経済活動は活発化せず、他方で、総合物価上昇率の下方圧力となり、日銀は物価目標の達成期限を繰り返し延期せざるを得なかった。


最近採られた政策はアベノミクスを元の軌道に戻すことを狙っている。

マイナス金利政策 これまでのところ、マイナス金利政策はイールドカーブを全体的に低下させることに成功しており、日本国債の流動性と銀行の収益性への予期された影響を除けば、市場機能に悪影響を与えていない。
実体経済への波及効果の全容が明らかになるには、更なる時間が必要だ。
財政支援の拡大 追加的財政パッケージを採用・編成し、2017 年に予定されていた消費税引上げを二年半延期するという当局の決定は、短期において経済を刺激すると同時に財政の持続可能性確保に向けて前進することの難しさを示した。
これらの決定は、デフレのリスクを低下させ、短期的に成長を下支えする一方、リフレの可能性を再び損なうような性急な収支改善なくしては、当局の中期的な財政目標の達成に影響を及ぼすであろう。
賃金と投資を押し上げる政策 政府が政労使協議を通じて賃金上昇を求めてきており、また、毎年の最低賃金の上昇に3 パーセントの下限を最近設定したことは適切だ。
政府はまた、2016 年度に法人税の法定税率を一年前倒しで引き下げたが、これまでのところ投資に対して目に見える効果は現れていない。
新しい三本の矢 政府が採用した新たな「三本の矢」戦略は称賛すべき目標を掲げている
(1)強い経済(名目GDP を600 兆円に引上げるという目標を伴う)、
(2)出生率及び労働参加を高めるための子育て支援、
(3)家族を介護しつつ雇用を継続することを可能とする社会保障制度。


しかしながら、成長見通しは引き続き弱い。日本経済は2016 年に約0.5 パーセントという緩慢なペースで成長すると期待され、2017 年には、今後採用される補正予算による潜在的効果を除き、0.3 パーセントに低下すると見込まれる。

アベノミクスは再充填が必要だ...

労働市場改革と組み合わされた所得政策をより重視すべきだ。

所得政策と構造改革は、連携のとれた需要刺激策によって下支えされるべきである。

漸進的な消費税引上げの先行きを事前に公表することを含め、財政健全化に向けた信頼のおける道筋が今立案されるべきである。

低い潜在成長率や、日銀の金融緩和政策への過度な依存を避ける必要性に鑑みると、消費税を少なくとも15 パーセントまで(たとえば年率0.5 パーセントまたは1 パーセントの幅で定期的に)段階的に引き上げることにより、成長の下支えと財政の長期的持続可能性の間でバランスが保たれる。

成長見通しを大幅に引き上げるためには、労働市場の改革を柱とする一層の構造改革が、唯一実行可能な選択肢である。

政策の信頼性を高めるために、政策枠組みを強化する必要がある。


...あるいは、長期に亘って目標を徐々に達成できるよう、アベノミクスを再調整すべきである

大幅な政策の強化がない場合、政策余地は極めて限定的となり、慎重に用いられる必要がある。

結果として生じる物価と成長の低迷は、調整過程が長引くことを示唆する。


一方で金融の安定性を守り... 非伝統的な金融政策が長期化したり、リフレや財政安定化が達成できない場合は、金融の安定性に関するリスクが生じる可能性がある。

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IMFは6月22日、米国に関する年次報告書を公開した。

米経済は「全般的に良好」に推移しているが、多くの国民が貧困状態に置かれている。

米経済成長率は2016年は2.2%、2017年は2.5%になると予想。
インフレ率はFRBが目標とする2%に向けて緩やかに上昇していく。

ドル相場は10-20%過大評価されている。
現在の実効為替レートに基づくと米国の経常赤字のGDPに対する比率は2020年までに4%を超えると予想。




米連邦最高裁は6月23日、オバマ政権の大統領権限による移民制度改革の合憲性を巡り、判事の意見が 4 対 4 に分かれ判断を示せなかった。
このため、改革実施を差し止めた下級審の判決が維持される。

最高裁は本来9人で構成するが、2016年2月に保守派のAntonin Scalia判事が死去、共和党が後任人事の審議を拒否しているため、保守・中道派4人、リベラル派4人で拮抗していた。

最高裁が審理したのは、米国内に約1100万人いるとされる不法移民のうち、子供が米国の市民権や永住権を持つ親で、身元調査を通過するなど一定の条件を満たした不法移民に対し、強制送還を3年間猶予し、就労を認めるなどを決めた大統領令。実現すれば400万人以上が恩恵を受けると推計される。

大統領は就任以来、移民制度改革を掲げてきた。

しかし、共和党の反対で移民制度改革をめぐる法案審議が進まないことから、大統領は2014年11月、大統領権限を使って不法移民に暫定的な滞在資格を与える決定を下した。
不法移民の親が強制送還され、市民権や永住権を持つ子供と引き離されるのを防ぐためのもの。

これに対し、共和党などは大統領権限を逸脱しているなどとして反発。同年12月にテキサス州など26州が差し止め訴訟を起こした。

テキサス州連邦地裁は2015年2月に一時的な差し止め命令を出した。
ニューオーリンズ州連邦高裁は2015年11月9日、この差し止め命令を支持する判断を下した。

政府は「国家安全保障の利益にならないのは明らかだ」と差し止めを批判し、最高裁に上訴した。

今回、最高裁が4対4で判断が分かれたが、最高裁で判事の判断が同数となった場合は、下級審の判断が維持されるため、大統領令は差しとめられる。

オバマ大統領は記者会見し、最高裁の審理の結果を「数百万人の移民の心を引き裂くものだ」と批判した。その上で、移民制度改革を立法を通じて進めるよう改めて共和党に呼び掛けた。

尿による癌検査

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日立製作所は6月14日、住友商事グループの協力を得て、尿中代謝物の解析により、 健常者、乳がん患者および大腸癌患者を識別する基礎技術の開発に成功したと発表した。

将来、受診者自身が尿検体を採取し、これを医療検査機関に送ることで癌検査を可能とする新しい検査スタイルの確立に道を開くもので、癌検査の受診機会の増大に寄与する可能性がある。今後、バイオマーカー候補物質の構造解析を行い、大腸癌、乳癌以外の癌の識別および実用化に向けた研究を推進する。

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の医療分野研究成果展開事業、産学連携医療イノベーション創出プログラムの支援によって実施されたもの 。住商ファーマインターナショナルとともに検査法の開発を進めてきた。



乳癌と大腸癌の患者各15人、健康な人15人の尿中に含まれるさまざまな物質の量を、微量な物質を精密に測定できる質量分析計で細かく調べた。

尿検体から1,300以上の糖や脂質などの代謝物を検出し、そこから癌患者の尿を識別するバイオマーカー候補となる物質を10個程度まで絞り込 み、特定したバイオマーカー成分の含有量の違いから、健常者と癌患者の尿を識別することに成功した。

健常者群、乳癌患者群、大腸癌患者群の尿中代謝物を比較したところ、数百種の代謝物が、乳癌、大腸癌で健常者と比べて増加または減少していることが明らかになった。

これらの代謝物を一つひとつ精査することで、数百種のうちの多くが、癌の分子メカニズムと関連した代謝物変動であると確認されている。

そしてこれらの候補代謝物の貢献度を精査し、重要なバイオマーカー候補をさらに10種程度に絞り込み、主成分解析を行うことで、健常者、乳癌患者、大腸癌患者それぞれの尿検体の識別に成功した。

但し、バイオマーカー数を5~10種程度に減らした場合、乳癌と大腸癌の区別はつかないが、健常者と癌患者を区別することはできる。

このため、将来的にはまず、癌かどうかを判別する第1のフェーズと、癌の種類を詳細に解析する第2のフェーズというように、2段階での検査を検討している。


森下仁丹は6月16日、子宮頸癌の治療に使う経口ワクチン事業に参入すると発表した。創薬ベンチャーのアンジェスMGから、日米英中4カ国での開発・製造・販売に関する権利を使う許可を得ることで基本合意した。

子宮頸癌の原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染者は世界で3 億人以上と言われ、約10%が前がん病変の初期段階に移行し、その後、子宮頸部上皮内腫瘍性病変(CIN)と進むにつれ、HPV のがん関連蛋白質(特にE7)の発現が増加し、前がん病変の後期である高度異形性(CIN3)からは30-40%が子宮頸がんに移行すると言われている。

        http://www.irwebcasting.com/20120213/3/18c27d51e1/media/120213_anges_01.pdf

日本を含む各国で発売されている子宮頸癌予防ワクチンは、子宮頸癌の原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染予防を目的としたワクチンであり、HPVの既感染者に対し癌化を防ぐような有効性は得られない。

現在、前癌状態を治療する薬剤がなく、主な治療方法として子宮頸部円錐切除術が実施されているが、手術による早産、低出生体重、帝王切開のリスクが高まることが指摘されている。

今回の「子宮頸部前癌治療ワクチン(CIN治療ワクチン)」は、HPVのE7 蛋白質に対する特異的な細胞性免疫を子宮頸部へ効率的に誘導することで子宮頸部の高度異形成を消失させ、子宮頸がんへの移行を回避できる画期的な世界初の治療ワクチンとして期待されている。

本剤は、既に食品として使用され安全性が確立されている乳酸菌にHPVのE7蛋白質を発現させて死菌化した乳酸菌粉末のカプセル製剤で、経口投与により乳酸菌の持つ腸管粘膜免疫の誘導能を介して、子宮頸部の高度異形成を消失させることができる。

この治療ワクチンは、韓国のBioLeaders Corporation が創製し、大阪(当初は沖縄)のジェノラックBLが開発を行ったもの。

BioLeaders Corporationは2000年1月1日に、バイオテクノロジーの産業・教育・研究パートナーシップにより設立された。
世界で初めて乳酸菌ディスプレイ技術を利用して、乳酸菌をキャリアとした安全な経口剤タイプのワクチン化技術を開発した。

ジェノラックBLは2001年10月にバイオリーダースジャパン として設立され、2006年4月に改称した。

多様な感染症に対応するワクチン技術を持っており、その食経験からヒトへの安全性の高い乳酸菌に注目し、乳酸菌による抗原等の外来タンパク質の発現技術と、抗原タンパク質を維持した死菌化技術を応用して、粘膜ワクチンの開発を進めている。

アンジェスMGは2011年12月、BioLeaders Corporation とジェノラックBLとの間で、子宮頸部前がん治療ワクチンについて国内外の開発、製造、使用および販売の独占的実施権許諾に関するオプション権について基本契約することに合意し、2013年4月に国内外における開発、製造、使用および販売の独占的実施権許諾に関するライセンス契約に合意した。
中国の権利は2012年に取得済で、アンジェスMGは当該治療ワクチンについて、国内外の権利を取得することになった。

その後、アンジェス MGは、BioLeaders Corporation、ジェノラックBL、および東京大学産科婦人科学の川名敬講師との間で、経口ワクチンによる子宮頸癌治療ワクチンの共同開発を進めてきたが、2012年5月に森下仁丹がプロジェクトに参画し、共同研究を進めることになった。

川名敬准教授は2014年9月、東京大学医学部附属病院で実施された研究者主導臨床試験の成果を報告し、ワクチン領域で権威ある医学専門誌Vaccineに掲載された。

- 投与した全17例において薬剤に由来すると考えられる有害事象の発生は認められず。
- 至適用量を服用した被験者の70%で投与開始後9週目の時点で前がん病変の明らかな退縮を確認。

今回、アンジェスMGは、BioLeaders Corporation とジェノラックBLから許諾を受けているCIN 治療ワクチンの権利の全てを森下仁丹に独占的に再許諾するもの。
対価として契約一時金および商業化時のロイヤリティを受け取る。

アンジェスMGは、今回の権利許諾により、主力事業である遺伝子治療と核酸医薬を中心とする遺伝子医薬の開発に経営資源をより集中させると同時に、将来、CIN 治療ワクチンの商業化が成功した際にはロイヤリティを受け取ることで保有する権利の価値を最大化できる。

ワクチンは乳酸菌粉末のカプセル製剤であり、森下仁丹では、同社が長年取り組んでいるプロバイオティクス(ビフィズス菌や乳酸菌など)研究や、独自の製剤技術(シームレスカプセル技術)のさらなる深耕にも資すると判断し、権利の許諾を受けるに至った。

同社は今後、アンジェスに続き、外部の研究機関や企業と年内に提携し、ワクチンの開発や販売の体制を構築する。

ーーー

森下仁丹のシームレスカプセルは、カプセル構成成分の調整により、医薬品成分の活性維持や作用部位への運搬効率の向上などが期待できる。

シームレスカプセルの優位性

1. フレキシブルな粒径設計、小児から年寄りまで服用し易い設計が可能

2.口腔→胃→腸→大腸の各部位での崩壊設計が可能

3. 苦味物質のマスキングが可能

4. 酸素透過の低減が可能

5. カプセルinカプセルによる複合製剤の設計が可能


原子力規制委員会は6月20日、運転開始から40年以上が経過した関西電力高浜原発 1、2号機について、最長20年にわたって運転期間を延長することを認可した。

福島第1原発事故後の法改正で原発の運転期間は原則40年に限られ、期限(今回の場合、7月7日)までに規制委が認めれば1回だけ最長20年延長できる。
運転延長が認められるのは今回が初めてで、1号機は最長2034年11月まで、2号機は2035年11月まで運転が可能になる。

付記

規制委員会は8月3日、40年間近の美浜3号機について安全審査合格を内定した。
11月末までに、設備の詳細な設計を記した「工事計画」の審査、機器の老朽化の影響を調べる「延長審査」に合格することが必要。
工事完了は2020年3月の予定。

使用済み核燃料のラックを初めて可動式とした。
新しい炉内構造物が揺れに耐えられるかの確認は審査期限後に先送りした。

高浜原発 1、2号機の運転延長が認められたが、課題が多い。

昨日の記事の通り、前委員長代理の島崎邦彦東京大名誉教授(地震学)が基準地震動や津波に関して、疑義を述べている。反対派の証人として出廷する可能性まである。

これまで政府は、「世界一厳しい基準」とし、裁判所も多くがそれをもとに稼動を認めてきたが、規制委員会の中枢(元職)からの批判は大きい。
それに加え、今回の「稼動ありき」の決定は、規制委員会の正当性を疑わせるものになりかねない。


「合格」といっても書類上の計画であり、
安全対策の工事が必要で、再稼働は2019年10月以降となる。

大地震や津波の影響を受けない緊急時対策所、事故対応に当たる作業員が待機する免震事務棟の設置工事を開始した。
今後、格納容器の上部に重大事故時に放射線を遮る鉄筋コンクリート製の巨大ドームを設置し、海水を2号機に運ぶ配管を土中でなく岩盤を通すよう変える工事も実施する。

航空機突入などのテロ対策として、遠隔で原子炉の冷却や減圧ができる制御室などを設ける工事が必要。

古い原発特有の課題である電気ケーブルの防火対策は全長約1300kmに及ぶ。
原子炉格納容器は放射線を遮断する能力が低いとされ、上部をコンクリートで覆い、外周の壁も分厚くする。

土砂流防止策や事故時対応の拠点となる1〜4号機共通の緊急時対策所、免震事務棟設置なども急ぐ。

関電が高浜1、2号機で見込む安全対策工事費用は、高浜原発全体の共用分を除いても2000億円超に上るが、費用はさらに膨らむ可能性がある。


地元自治体の再稼動の同意も必要である。

福井県や高浜町は、関電が3年程度かける安全対策や住民らの理解の状況を見極める考え。

福井県知事は、「高経年化に関連した安全対策が必要。新規制基準に基づく事業者の対応状況などを厳正に確認し、慎重に対処していくことになる」とのコメントを発表した。
高浜町長は、「安全と認められたことは歓迎する」としながらも、運転開始から40年以上が経過し「住民には不安もある」と指摘した。

一方、高浜原発から30キロ圏に一部地域が入る滋賀県の知事は、「40年を超えて運転することは、老朽化による不具合など原発の安全に対するリスクが高まることにつながり、県民には根強い不安がある」とし、運転延長には「大きな疑問を感じる」とのコメントを発表した。


さらに、訴訟による運転差し止めの可能性も高まっている。

大津地方裁判所は6月17日、福井県の高浜原発 3、4号機について、同地裁が 3月に運転停止を命じた仮処分の決定の効力を停止するよう求める関西電力の執行停止の申し立てを退けた。

関西電力はこの決定を受け、停止中の高浜原発3-4号機の核燃料を取り出すと発表した。執行停止の申し立てが地裁に却下されたことで「一定期間、原子炉が動かせないことが確定したため」としている。

大津地裁、高浜原発の運転停止の仮処分の執行停止の申し立てを却下

高浜原発 1、2号機については、愛知、岐阜、福井など14都府県の住民76人が4月14日、国を相手どり運転延長認可差し止めを求めて名古屋地裁に提訴している。

訴状では「54基の原発が約2年間動いていないときでも電気は足りていた。あえて危険な老朽原発を動かしてほしいという市民はいるだろうか」と指摘。それにもかかわらず、政府、原子力規制委員会、電力会社は福島の事故を忘れたかのごとく再稼働にまい進していると批判した。

弁護団長は「新規制基準と規制委の審査そのものの不合理性を問う裁判」と強調、2月に再稼働したばかりの高浜4号機がわずか3日後に緊急停止したことについて「これが『世界で一番厳しい』といわれる規制委の審査の現実だ」と批判した。

前委員長代理の島崎邦彦東京大名誉教授(地震学)の疑義は、今後の裁判に大きな影響を与えると思われる。

ーーー

政府は2030年度の電源構成で、発電量に占める原発の比率を20〜22%と している。

2010年度 2030年度
再生エネルギー(含水力) 9.6% 22~24%
原子力 28.6% 20~22%
LNG 29.3% 27%
石炭 25.0% 26%
石油 7.5% 3%

全原発を40年で廃炉にすると、2030年度の段階で、運転期間40年以下の原発は20基程度で、比率は15%程度にとどまり、目標達成には全国43基の原発のうち30基程度の稼働が必要である。

政府が目標を維持するには新増設か運転延長しかないが、新増設は世論の強い反発が予想される。

政府にとっては運転延長が現実的な選択肢となる。

ーーー

原子力規制委員会は6月20日、関西電力大飯原発の基準地震動(耐震設計で目安とする揺れ)を他の手法で再計算することを決めた。
前委員長代理の島崎邦彦東京大名誉教授(地震学)から、計算式の不備で、地震動に過小評価の恐れがあると指摘されていた。

同原発の基準地震動は最大加速度 856ガルで、島崎氏が在任中に指揮した審査で了承されていたが、地震動の審査をやり直すかどうかは、再計算の結果を踏まえて検討する。
ほかの原発でも別手法で計算するかは、大飯原発の結果を見て決める。

島崎氏が問題視するのは、入倉孝次郎京都大名誉教授らが提唱し、震源の断層面積から地震規模を算出する「入倉・三宅式」。
大飯原発の震源など地表に対して垂直に近い断層に適用すると、地震規模が他の計算式に比べて四分の一程度に過小評価されるという。

島崎氏は、規制委委員長代理を退任した後、日本海側での津波予測について研究を重ねてきた。
さらに熊本地震での現地調査を経て、「入倉・三宅式」を横ずれ断層に用いることによる弊害について、確信を持つようになったという。

田中委員長と石渡委員が6月16日に島﨑前委員長代理から直接話を聞いたが、同氏の発言は以下の通り。

将来の地震を予測する場合は、地震前に、断層の長さ、面積、地震モーメントを測定、断層のずれの量を考える必要があるが、関係式は地震後にわかった量で作られている。そこから、不確定性というか、推定の誤りが出てくる。

断層面が垂直の場合は地震モーメントが、入倉・三宅式を 1とすると、山中・島﨑式は 3.5倍、武村式は4倍になる。

震源の大きさが入倉・三宅式での計算結果の3倍以上だとすると、短周期レベルの地震動は5割増しになる。これはかなり深刻な問題だ。

熊本地震に係る国土地理院の暫定的な解で計算した断層面積を、入倉・三宅式に入れると、地震モーメントと断層のずれの量が、実際の値に比べ非常に小さくなる。

入倉・三宅式を使う限り、震源の大きさは過小評価される。


大飯で評価している断層は垂直で、入倉・三宅式を使っている。より真実に近そうな、過小評価にならないような式を使って、これまでと同じように計算し、必要であれば色々な判断をするのが一番ではないか。まずそこがスタートである。

垂直になっている断層に入倉・三宅式を使うことが既成事実化すること、これ以上見直すつもりはないという後ろ向きになってしまうことが一番怖い。必ず前向きに新しいものを受け入れるという方向で進めていただきたい。

川内原発は、すぐにどうこうという問題ではなさそうに見える。 高浜原発は遠いから、そんなに影響はないであろう。

入倉・三宅式に欠陥があることは頭の隅ではなく、真ん中に置いてほしい。
入倉・三宅式が原子力発電所の基準地震動設定でも引き続き使われる可能性があることが問題だ。

規制委員会は20日の定例会で再計算に同意した。田中委員長は「元々の審査の責任者の指摘なので例外的に受け入れた」と話した。

付記

原子力規制委員会は7月13日、大飯原発の基準地震動について、現状のまま見直す必要はないとの判断を示した。

島崎名誉教授の指摘に基づき、揺れの大きさを断層の長さから求める「武村式」を使って再計算した結果、現在の基準地震動の856ガルに対し、再計算では644ガルだった。

島崎邦彦・東大名誉教授(地震学)は14日、「結論には納得できない」として再々計算を求める抗議文を送った。

大飯原発の審査では、過去に、別の原発で想定を大幅に上回る周期の短い地震の揺れが観測された実例を踏まえて補正をしているが、今回の再計算では行っていない。
同じ条件で計算すれば、結果は大まかな推定で1550ガルにもなるとした。



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大飯原発は東京電力福島第1原発事故後、他の原発が停止を続けるなか、3号機と4号機が2012年に発送電を開始した。
2013年9月に定期検査のため停止した。(
3号機、4号機は
2013年7月8日に再稼動申請をしている。1号機、2号機はまだ申請していない。)

福井県の住民らが、安全性の保証をせずに大飯原発3、4号機を再稼働させたとして、関西電力に運転差し止めを求めた。
この訴訟で、福井地裁は2014年5月21日、現在定期検査中の2基を「運転してはならない」と命じ、再稼働を認めない判決を言い渡した。

判決で、「1260ガルを超える地震によってこのシステムは崩壊し、非常用設備ないし予備的手段による補完もほぼ不可能となり、メルトダウンに結びつく。この規模の地震が起きた場合には打つべき有効な手段がほとんどないことは被告において自認しているところである」としている。

2014/5/30 大飯原発差し止め訴訟判決 

これに対し、福井地裁は2015年12月24日、周辺住民らが求めていた再稼働差し止めの「仮処分」の申し立てを却下する決定をした。

この控訴審が名古屋高裁金沢支部で行われているが、本年6月8日の口頭弁論で、住民側は島崎前委員長代理の陳述書を提出した。証人出廷を要請することも検討している。

関電は当初、規制委の審査会合で700ガルの基準地震動を示していたが、その後、規制委との議論を経て856ガルに引き上げて概ね了承を取り付けた。

今回、島崎氏から「そもそも、関電が基準地震動設定の基礎に用いた式そのものに欠陥があり、過小評価となる可能性がある」との問題提起 を行った。

ーーー

島崎氏は6月24日発売の岩波書店『科学』(7月号)で津波についても以下のとおり述べている。

国土交通省が2014年9月に策定した『日本海における大規模地震に関する調査検討会報告書』が日本海「最大クラス」の津波を過小評価している。

津波の対策がこのまま進めば、再び『想定外』の被害を生ずるのではないだろうか。

2002年の津波地震の予測を中央防災会議や東京電力が無視し、『想定外』の災害を起こしたことを忘れてはならない。

水俣病と認定された男性が、民事裁判で賠償金が支払われたことを理由に法律に基づく補償費の支給を受けられないのは不当だと熊本県を訴えた裁判で、2審の福岡高等裁判所は6月16日、「支給すべき補償費があるか検討せずに賠償金によって、すべて補償されたと判断した県の処分は違法だ」として、処分を取り消す判決を言い渡した。

原告(91歳)は2004年に水俣病関西訴訟の最高裁判決で勝訴、慰謝料 800万円を受け取り、2011年には水俣病患者と認定された。

公害健康被害補償法では、認定患者には以下の補償が与えられる。

項目 内容                                  
一時金 Aランク 1,800万円/人+近親者慰謝料(最高1,900万円)
B     1,700    +近親者慰謝料(最高1,270万円)
C     1,600 
年金 170~67千円/人・月
医療費 患者医療費全額を支払い
その他
継続補償
医療手当、介護費、温泉治療費、針灸、葬祭費
患者医療生活基金(チッソが7億円拠出)からの支給
原告は認定後、公害健康被害補償法に基づき障害補償費を請求したが、同法には損害賠償を受けた患者に対して県は補償の義務を負わないとする免責規定があるため、県は2013年に不支給の決定をした。


これを不服として訴えた
1審の熊本地方裁判所は2015年3月、「法律の規定で補償の対象外になるのは明らかだ」として、訴えを退け、原告は控訴していた。

今回の判決で裁判長は、公健法の規定について、賠償を受けた場合でもあくまでその価格を限度に支給義務が免除されるにとどまると解釈し、「チッソから賠償金が支払われても、原告と熊本県との関係では損害や慰謝料がすべて補償されたとは言えない。支給すべき補償費があるか検討せずに賠償金によって、すべて補償されたと判断した県の処分は違法だ」と判断し、処分を取り消す判決を言い渡した。

民事訴訟で賠償金を受け取ったことによって補償が一切支給されないとすると「訴訟を起こさなかった水俣病患者との関係で、不公平が生じる」とも指摘した。

障害補償費の支給義務付け請求については「県が判断すべきだ」として認めなかった。

熊本県の蒲島知事は「今後については判決内容をよく検討したうえで対応したい」というコメントを出した。



国際通貨基金(IMF)は6月17日、英国がEUから離脱した場合、2019年の英国GDPの規模が、残留した場合より最大5.6%減少するとの試算を発表した。

http://www.imf.org/external/pubs/ft/scr/2016/cr16169.pdf

下のグラフで2018年以降でGDPが上向いているのは、大きく下がった前年比での伸び率であるため。


実際には下の通り、EUに残留した場合よりも減少が続く。

残留した場合よりも下回る理由はそれぞれ下記の通り。
当初は、不確実性によるものが大きいが、長期的には貿易の影響が大きい。投資の影響は小さい。


これまでに発表された予測(残留ケースとの差)も同様である。(最後は2017/2018年度で、他は全て2018暦年)

2016/5/5 OECDによる英国のEU離脱の影響分析


報告では以下の通り述べている。

英国経済は最近は極めて順調。経済成長率も先進国ではトップで、雇用も最高水準にある。65歳以上の雇用も10%を超える。
財政赤字も減少しており、金融セクターの改革も実行された。

しかし、住宅価格の下落の可能性、経常収支の赤字、家庭の貯蓄率の低さ、生産性の伸び率の低さなど、今後のリスク要因がある。
6月23日のユーロ離脱の国民投票が最大の不確実性の源である。

英国がEUに留まれば、本年後半に成長率は伸びに転じ、今後数年は安定する。石油やコモディティ価格の下落の影響が消え、失業率の低さが賃金を引き上げ、インフレ率は次第に目標に向かって上昇しよう。

EUを離脱すれば、大きなマイナスとなるとする。

離脱決定後、EUとの間で離脱の条件と今後の関係の詳細について交渉を開始する。
同様に、現在EUと貿易協定を結んでいる60以上のEU以外の国と交渉を行う必要がある。
交渉は何年も続き、その間、リスク回避のため消費や投資が減少する。長期的には、貿易や金融面でのバリアが生産減、所得減につながり、英国経済は悪化する。

不安定な期間が続くほど、また貿易交渉の結果が不利になれば、英国にとってのコストは上昇する。

ーーー

英国とEUの関係は密接で重要である。

 ・EUは世界最大の経済圏の一つで、英国は最大の貿易パートナーである。

英国の輸出も輸入も約半分がEUメンバー向けである。

 ・ 英国は金融関係がGDPの約3%を占め、他国をはるかに上回るが、英国とEUの関係は大きい。

 ・ 移民の状況は下記の通りで、EUからの移民が半分を占め、労働力は増大をつづけている。

(離脱派は低賃金の移民が職を奪い、これまで蓄積した福祉基金を食い物にしていると批判)

 ・ EUへの持ち出し?

英国は2014年にネットで70億ユーロの持ち出しだが、平均ではGDPの0.3%に過ぎず、GDP比ではオーストリア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スウェーデンよりも低い。

NEDO (国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構) は6月14日、㈱ナノエッグが、NEDO事業の成果をもとに、脱毛する新メカニズムを発見し、さらに髪の毛根まで有効成分を浸透させる世界初の技術の開発に成功したと発表した。

NEDOは、新市場の開拓を可能とする技術開発成果を実用化して社会に普及させ、次のイノベーションにつなげることを目的とし、中小企業等が取り組む新規性のある実用化技術の開発支援を行うイノベーション実用化助成事業に取り組んでいる。

聖マリアンナ医科大学発のベンチャーであるナノエッグは、加齢とともに起きる女性の"髪痩せ"について、これまでのような頭皮ケアだけでは対策として不十分で、大切なのは毛根環境の育成と毛髪表面からの有効成分浸透と髪の芯から毛根に届ける新発想であると考え、薬用育毛剤(医薬部外品)の開発に着手した。

2009年度にはNEDOのイノベーション実用化助成事業で自発的毛根賦活機能を有する効果的脱毛症治療剤の開発に取り組み、その後、臨床研究を重ね、世界初の毛根に有効成分を浸透させ毛髪環境を整える新発想技術(経皮吸収性)を生み出した。

この技術は、ナノエッグが開発した特殊ジェルが皮膚ホメオスタシス機能(外部環境の変化に関わらず、皮膚の状態を一定に保つ機能)のスイッチを入れ、併せて薬剤の経髪吸収性を向上させるというもの。

今般、ナノエッグはこの成果をもとに、育毛効果を発揮する成分(グリチルリチン酸ジカリウム、塩酸ジフェンヒドラミン、センブリ抽出リキッド)を確実に毛根に浸透させるドラッグデリバリーシステム(DDS)技術を配合した女性用薬用育毛剤「ふわり」を開発、6月27日に販売を開始する。

ーーー

2003年 9月に、聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター先端医薬開発部門DDS研究室の研究テーマの1つである「皮膚再生のためのレチノイン酸ナノ粒子」が科学技術振興機構のプレベンチャー事業に採択され、その制度をもとに2006年4月に㈱ナノエッグが設立された。

聖マリアンナ医科大学とパートナーシップを組み、先端医薬開発の研究を進めている。

事業内容は下記の通り。

1)医薬品事業

DDSとしてのナノカプセル化(ナノエッグ)製剤の開発研究

ナノエッグは、レチノイン酸をナノスケール(直径15~20ナノメートル)の無機質コーティングカプセルにすることで、安定性や透過性を向上させたもの。
レチノイン酸以外の化合物についてもナノカプセル化に成功し、事業化を進めている。

●レチノイン酸(ビタミンA活性体)及びレチノイドのカプセル化・・・シミ・皺・ニキビの治療薬
●α-リポ酸(リポアクティブVE)・・・シミ・皺改善のための医薬品及び化粧品原料
●その他低分子化合物経皮吸収のための皮膚外用基材の開発研究
●ナノキューブ等の皮膚塗布用基材

2)機能性化粧品事業

ナノカプセル技術や皮膚科学技術を駆使した、機能性エイジングケア化粧品『マリアンナ』及び『マリアンナプラス』の販売事業


大津地方裁判所は6月17日、福井県の高浜原発 3、4号機について、同地裁が 3月に運転停止を命じた仮処分の決定の効力を停止するよう求める関西電力の執行停止の申し立てを退けた。

関西電力高浜原発3、4号機の稼動の動きは下記の通り。

No.3 No.4
規制委員会 2015/2/12 安全審査合格

停止

停止

福井地裁 2015/4/14 運転差し止めを求めた仮処分申請で、再稼働を認めない決定
 
2015/4/15 高浜原発、再稼働認めず 福井地裁が仮処分決定
福井地裁 2015/5/18 関電申し立ての仮処分の執行停止要請を却下
福井県知事 2015/12/22 再稼働に同意
福井地裁 2015/12/24 仮処分の決定を取り消し
名古屋高裁 2016/1/6 住民側が抗告
関西電力 2016/1/29 3号機再稼動

稼動

2016/2/26 4号機再稼動
2016/2/29  直後にトラブルで停止
大津地裁 2016/3/9 運転の停止を命じる仮処分の決定  停止 停止
大津地裁 2016/6/17 関電の仮処分の決定の効力停止申立てを却下
大津地裁 2016/夏? 関電の決定取り消しの申し立てについての判断 ?

付記

大津地裁(同じ裁判長)は7月12日、関西電力の異議の申し立てを退けた。
「福島の原発事故の原因に関する説明が不足しており、原子力規制委員会の新規制基準の許可を受けたこと自体で、安全性が確保されたとみることはできない」とした。

関西電力は、決定を不服として大阪高等裁判所に抗告する方針。


福井地裁が2015年4月に仮処分申請で再稼動を認めない決定をしたが、2015年12月に同地裁の別の裁判官がこれを取り消した。住民が抗告中。

4月には、関電が想定する基準地震動を超える地震で過酷事故に陥る危険性があるとして、新規制基準を事実上否定し、再稼働差し止めを命じた。
12月には、新規制基準に基づく判断は「不合理な点はなく、高浜原発の安全性に欠ける点はない」と判断。「周辺住民らの人格権を侵害する具体的危険は認められない」と結論付けた。

高浜原発3号機は2016年1月29日に再稼動した。(4号機は2月26日に再稼動したが、直後に停止した。)

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滋賀県内の高浜原発から約30~70キロ圏内に居住する住民29人が、地震災害に伴う重大事故が原発で起きた場合、放射性物質で琵琶湖が汚染されて水が飲めなくなり、生命や健康を脅かされるとして、運転の停止を求める仮処分を申し立てていた

大津地裁は2016年3月9日、「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法に危惧すべき点があるのに関西電力は十分に説明していない」として稼働中の原発では初めて、運転の停止を命じる仮処分の決定を出した。

2016/3/10 高浜原発3、4号機、運転差し止め仮処分決定

関西電力は決定の取り消しを求めて異議を申し立てるとともに、仮処分の決定の効力を停止するよう申し立てていた。

関電は仮処分決定は「科学的知見をふまえず、主観的な危惧・不安から短絡的に結論づけた」と批判。
差し止めの経済的損失は1日約3億円にのぼり、予定していた電気料金値下げの見送りで市民生活や経済活動に大きな影響が出ていると主張した。

今回の決定は、仮処分の決定の効力停止の申し立てに対するもので、3月と同じ裁判長が、「関電が安全性に欠ける点のないことの立証を尽くさなければ、欠ける点のあることが推認される」と指摘。「福島第1原発事故の原因究明が完遂したと認めることはできず、新規制基準に従って許可を受けたことで安全性が確保されたとはみられない」とも言及した。

関電が決定取り消しを求めて申し立てた保全異議の審理(異議審)が終わるまで、再稼働は不可能になった。

異議審は5月10日の第1回審尋で法廷審理が終わり、6月10日に関電と住民の双方が追加書面を出し主張を終えた。
地裁は今夏にも結論を出すとみられる。今回と同様、山本裁判長が担当しており、決定が取り消されない可能性が高まった。


付記

関西電力はこの決定を受け、停止中の高浜原発3-4号機の核燃料を取り出すと発表した。執行停止の申し立てが地裁に却下されたことで「一定期間、原子炉が動かせないことが確定したため」としている。取り出した燃料は、使用済み燃料プールで保管する。



Shellは6月7日Shell Chemical Appalachia LLCがPittsburgh, Pennsylvania の近くでエチレンクラッカーとPEプラントを建設する最終決定を行ったと発表した。
18ヶ月以内に建設を開始し、商業生産は2020年代の初めを目指す。

Shellは2011年66日、Appalachia地方でエチレンクラッカーと誘導品プラントの建設を検討していることを明らかにした。

エチレンは豊富なMarcellus Shaleガスからのエタンを原料とする。
誘導品としては
PEを第一候補としている。今後も米国北東部のPE需要は伸びるとみている。
Shellではまた、この地域での雇用拡大も狙っている。

2011/6/14 Shell、アパラチア地方でエチレンクラッカー建設へ 

2015年6月15日、Shell ChemicalsはPotter Townshipの亜鉛精錬所跡地1000エーカーをHorsehead Corporationから買収した。

Marcellus basin とUtica basinのシェールガスからの低コストエタンを原料とし、年産160万トンのエチレンとポリエチレンを生産する。

原料ソースから近いという利点のほか、米国のポリエチレンの需要家の70%はピッツバーグの700マイル圏内にある。

ーーー

今回の発表は、Shellにとって石油化学事業の強化の(昨年の終わり来の)3番目の発表である。

1)Geismar, Louisiana でのアルファオレフィン増設

Shell Chemical はGeismar, Louisianaで年産425千トンのアルファオレフィン第4系列を新設し、同地での能力を130万トン以上とすると発表した。

ShellはGeismarに加え、英国の Stanlowで、Essar Oil (UK) Ltd にアルファオレフィンの生産委託を行っている。

Essar Group はインドで急成長しているグループで、製鉄、石油・ガス、電力、モバイル通信、海運、建設など、幅広い活動をしている。グループの資産は60億ドル、従業員は約2万人。石油・ガス部門のEssar Oils はインドとミャンマーで石油と炭層メタン(coal bed methane)の採掘を行っている。

Essar Oil (UK)は、2011年に Shell からStanlow refineryを買収してスタートした。


2)
中海シェル石油化学(CNOOC and Shell Petrochemicals Co.)増設

Shellは3月22日、CNOOCとShell Nanhai B.V. が広東省恵州市の大亜湾経済技術開発区中海シェル石油化学の増設の最終決定を行ったと発表した。

CNOOCがJVに隣接して建設を計画している石油化学施設を中海シェル石油化学が引き継ぐ。

年産100万トン以上の新しいエチレンクラッカーを建設し、エチレン能力を倍増以上にするとともに、中国最大となるSMPOプラントを含む誘導体を建設する。

Shell のOMEGA法(MEG)、SMPO技術、ポリオール技術を使用し、エチレンオキサイド150千トン、エチレングリコール480千トン、高品質ポリオール600千トンを生産する。

テルモは6月12日、脳動脈瘤治療に用いる新形状塞栓デバイスを開発し、世界で初めて製品化した米国のSequent Medical の全株式を取得するための契約を締結したと発表した。
買収金額は一時金が280百万米ドル、一定の条件達成に応じて支払うマイルストンが最大で100百万米ドルになる見込み。

規制当局の承認を前提に、株式取得手続きは2016年7月から8月を目途に完了予定。

脳血管内治療市場は毎年拡大しており、2018年には約3000億円規模になると見込まれてい る。その中でも、脳動脈瘤治療に使用される新形状塞栓デバイスは、大きな市場拡大が期待される。

テルモは、脳血管内治療を重要な成長領域と捉え、2006年のMicroVention, Inc. 買収により市場に参入し、以降、脳動脈瘤治療に使用する塞栓コイルと、関連するカテーテルやステントを中心に製品ラインアップを揃え、総合ニューロカンパニーとしてグローバルで事業を拡大してい る。

今回買収したSequent Medical は、脳動脈瘤治療の新たな選択肢として期待される新形状塞栓デバイスを開発し、世界で初めて製品化を実現した。
2010年には、欧州での販売に必要なCEマーク認証を取得し、既にドイツ、イギリスなどで販売を開始しており、米国での販売開始に向けた治験を他社に先駆けて実施して おり、
数年後には米国での承認取得も目指している。

カテーテルを使った脳血管手術は患者への負担が小さく年率10%のペースで市場が伸びている。
テルモは同領域の世界シェアで16%と3位グループにあるが、買収により Sequent Medical の新形状塞栓デバイスを加えることで、首位を目指す。

ーーー

脳動脈瘤の治療は、主に瘤への血流を遮断する方法がとられる。

その治療法には大きく分けて、手術で頭を開きクリップで瘤をはさむ外科的治療と、脚などの血管から挿入したカテーテルを通して、コイルやステントなどを留置する血管内治療がある。

開頭手術が必要ない治療法は、患者への身体の負担を小さくでき、入院日数も減らせ、医療費削減の効果も見込める。

MicroVention の方法は下記の通りで、カテーテルを通じてプラチナ製のコイルを脳動脈瘤まで到達させ、瘤の内側に詰めて治療する。
最近では、プラチナ製コイルをコーティングしたものが開発され、より高い治療効果が期待されているが、
MicroVention は、独自のコーティング技術で、競争力のある製品をグローバルに展開している。

MicroVentionは2013年3月、コスタリカに工場を開業した。従来のカリフォルニアの工場に加え、コスタリカに生産拠点を新設し、世界の需要に応え る。
コスタリカ工場では、主に脳血管治療用コイル、ステントなどを生産し、グローバルに供給する。

これに対し、今回買収したSequent Medical の新方法(WEB TM 動脈瘤塞栓システム)は、同社独自の技術により、形状記憶合金が細かく編み込まれており、専用のカテーテルを通して脳動脈瘤に留置されることで、瘤内への血液の流入を抑え る。

コイルによる治療もカテーテルで血管内から治療するため身体負担は小さいが、複数回に分けて詰める手間が必要で、手術に2~3時間かかるのが一般的である。
メッシュ状の器具を使えるようになれば、血管内で1回膨らますだけで済み、手術に必要な時間も1時間以内に抑えられるという。

既に販売されている欧州を中心とする地域では、WEBの形状と取扱いの簡便さから、破裂した脳動脈瘤の緊急手術や、既存の塞栓術では治療が難しいとされる血管分岐部に瘤がある「分岐部病変」、瘤の入口部が広い「ワイドネック型」などの症例においても使用され、脳動脈瘤治療の新たな選択肢として期待されてい る。

韓国の検察は6月10日、ロッテグループの幹部が帳簿外の裏金づくりを行った疑いがあるとして、大々的な家宅捜索を行った。

ソウル中央地検が、ソウル市内のロッテグループ本社にある辛東彬(重光昭夫)会長の執務室と自宅、グループ会社など計17カ所を家宅捜索した。グループ創業者、辛格浩(重光武雄)氏の執務室なども捜索した模様。

付記

韓国紙は7月8日、ソウル中央地検が創業者の辛格浩(重光武雄)氏と次男の辛東彬(重光昭夫)会長に対し出国禁止措置を取ったと報じた。

持ち株会社にあたるホテルロッテをはじめ、ロッテショッピング、ロッテホームショッピング、ロッテ情報通信などと、これら企業の主要役員の自宅も捜索対象となった。検事や捜査官約200人を投入し、コンピューターのハードディスクや会計帳簿、下請け契約書、資産取引に関する資料などを確保したとされる。
また、グループナンバー2のロッテショッピング政策本部長(副会長)ら数人の役員に出国禁止措置を取ったとされる。

ロッテは李明博前大統領の政権で最も恩恵を受けた企業だとされる。

辛格浩氏の宿願だったソウルの複合商業施設「ロッテワールドモール (第2ロッテワールド)」の認可を受けるために裏金を使って政界に金品を供与した疑いをはじめ、釜山のロッテワールド用地の用途変更やビール事業進出、免税店運営事業の受注など、前政権時代の恩恵に絡む数々の疑惑がある。

検察は役員が下請け業者との取引単価を水増しして差額を受け取ったことを示す手がかりを確保した。グループ会社間の資産取引の過程で裏金をつくった疑いがあるともされる。

韓国メディアは、前政権の関係者に捜査の手が及ぶ可能性に言及する。

また、辛格浩(重光武雄)氏の長女・辛英子ロッテ福祉・奨学財団理事長が化粧品会社から免税店入店に関して20億ウォン台の裏金を受け取った容疑で検察の捜査を受けている。

2年前にはロッテホームショッピングの前社長・現社長・役員らが複数の納品業者から20億ウォンを受け取った容疑で実刑判決を受けた。
特にロッテ免税店は中国人観光客の増加により「金の卵を産むガチョウ」になっているため、入店のためのロビー活動もいっそう激しさを増しているとされる。

付記

ソウル中央地検は7月4日、辛英子理事長について、背任収財や横領などの疑いで逮捕状を請求した。業者から便宜を図るよう頼まれて不正に30億ウォン(約2億7千万円)を受け取った疑い。自身が実質的に運営する会社から資金40億ウォンを横領した疑いもあるという。

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ソウル中央地検は7月7日、辛英子容疑者を背任収財や横領の疑いで逮捕した。
韓国の化粧品会社などからロッテ免税店への出店を認めるよう頼まれ、リベートとして計30億ウォン(約2億6400万円)を受け取ったほか、辛容疑者が実質的に運営する企業から40億ウォン(約3億5200万円)を横領した疑い。
検察は、家宅捜索の過程で、辛英子理事長の長男が所有する会社がコンピューターサーバーを交換し、関連文書を破棄するなど、組織的な証拠隠滅を行っていたことも確認したと発表した。


別途、大型スーパーのロッテマートが有毒物質を含む加湿器用殺菌剤をプライベートプランド商品として販売し多数の被害者を出したとして、業務上過失致死傷の疑いで捜査が進んでいる。

ソウル中央地方検察庁は5月14日、有害な化学物質、PHMG(ポリヘキサメチレングアニジン)入りの加湿器用殺菌剤を製造・販売したイギリスに本社を置く Reckitt Benckiser の韓国法人の元代表ら3人と別の会社の代表1人を業務上過失致死傷の疑いで逮捕した。

2001年から2011年に韓国で販売され、妊婦と乳幼児等221人が被害を受け、そのうち95人が死亡した。

問題を放置した政府の不作為を、修学旅行中の高校生ら300人以上が犠牲になった旅客船セウォル号の沈没事故になぞらえ、「家の中のセウォル号」とも呼ばれている。

ロッテマートは、2006年からPHMGを原料とした加湿器殺菌剤をプライベートブランド商品として製造して販売した。

ロッテマートは、「2011年8月以来、加湿器殺菌剤の問題点が提起され、被害者が発生したという報道が出る中でも、『正式に明確な調査結果が出ていない』、『被害状況の確認が難しかった』などの理由で、原因究明と事態の解決により積極的でなかった点について、おわび申し上げます」と述べた。

検察は6月11日、ロッテマートの元代表で現ロッテ物産社長を業務上過失致死容疑で逮捕した。


ロッテでは武雄氏の長男の重光宏之氏と次男の昭夫氏が経営権を巡って争っているが、さらに経営に不安が出てきた。

長男の宏之氏は、下記のコメントを出した。

家宅捜査されている事実について、グループの社会的信用や企業価値が毀損される極めて深刻な事態であると認識しており、------- 現経営体制の重大な問題点が新たに顕在化したものと受け止めている。

事態の全容解明に向けて説明責任を果たすことを求めるとともに、----- 経営正常化のための緊急協議の場を設けるよう求める。


韓国ロッテグループの事実上の持ち株会社、ホテルロッテは6月13日、韓国の金融委員会に上場撤回申告書を提出し、7月中に予定していた株式上場を無期延期すると決めた。検察の捜査が進む中で投資家保護を考慮した。


ロッテは6月10日、米国のAxiall への買収提案(下記)を撤回すると発表した。

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Lotte Chemical は6月7日、米国でWestlake Chemical から買収を仕掛けられている米国の塩ビメーカー Axiall に買収提案をしたと発表した。

Westlake Chemical は1月29日、Axiall Corporationの全株式を14億ドルで買収する提案をしたと発表した。
1株当たり20ドルの買収で、現金11ドルとWestlakeの株式 0.1967株で支払うもので、総額で約29億ドルとなるが、約15億ドルの負債込みとなるため、ネットでは14億ドルでの買収となる。

しかし、Axiallの取締役会はAxiall の資産価値と将来性を著しく低く評価しているとして 拒否した。

Westlakeは4月4日、新提案を行った。
1株当たり23.35ドル(20ドル)の買収で、現金14ドル(11ドル )とWestlakeの株式 0.1967株(同じ)で支払うもので、買収額は約15億ドルの債務込みで31億ドル、ネットで16億ドル(14億ドル )となる。

Westlake側はAxiall の株主に対し、Westlakeの提案を通すため、6月17日のAxiall の株主総会でWestlake側の推薦する取締役を選任するよう要請、これに対し、Axiall も会社側に投票するよう要請している。

2016/2/4 Westlake Chemical、Axiall に14億ドルでの買収を提案、拒否される 

Lotteは買収額を31億ドル(Westlake の修正提案)以上というだけで、詳細は明らかにしていない。

ロッテによるAxiall買収提案は、Westlakeに対抗するWhite Nightの役割のほか、相乗効果を狙ったものでもある。

Axiall はロッテが手薄なカセイソーダやVCM、PVCなどに強く、顧客の大半が北米地域であるのに対し、ロッテはエチレンなどオレフィン系に強みがあり、事業の中心はアジア地域で、製品群や顧客基盤が重ならない。

また、両社は米国で提携している。Lotte と Axiall は2015年6月18日、ルイジアナ州に石油化学JVを設立すると発表した。

シェールガスに付随するエタンを分解し、エチレンを生産するもので、 Lotte Chemicalが90%、Axiall Corp.が10%出資する。

エチレン能力は年産100万トンで、出資比率に応じ、Lotteが90万トン、Axiallが10万トンを引き取るが、Lotteは自社枠のうち40万トンをAxiallに販売する。Axiallはエチレンを自社のPVCに使用する。Lotteはエチレングリコール 70万トンを生産する。

2015/6/22 韓国 Lotte Chemical、米国で石油化学


ロッテは6月10日、Axiall への買収提案を撤回すると発表した。


付記

ルイジアナ州 Lake Charlesで開かれたエタンクラッカーおよびエチレングリコール合弁事業の起工式に出席した辛東彬(重光昭夫)会長は6月14日、グループが裏金疑惑で検察の捜査を受けていることについて「申し訳なく思う」と謝罪した。

ホテルロッテの韓国取引所への株式上場延期については「無期限延期ではない。年内上場に向け努力する。国会で国民と約束したので必ず上場する」と説明した。

オバマ米大統領は6月7日、訪米中のインドのモディ首相とホワイトハウスで会談し、東芝傘下のWestinghouseが原子炉6基をインドに建設することで基本合意した。
共同声明で「インドで拡大する電力需要に応え、化石燃料への依存を減らすという両国の意志を示すものだ」と意義を強調した。

2008年発効の米印原子力協定に基づく最初の契約となる。

またオバマ大統領は48カ国で構成される原子力供給国グループ(NSG)へのインド加盟について改めて支持を表明した。
NSGは民生用の原子力関連資機材の軍事転用防止を目的として輸出管理を行っている。
(インドは核拡散防止条約に加盟していないため、米国がインドのNSG加盟を後押しすることを問題視する声もある。)

Westinghouseとインド原子力発電公社(Nuclear Power Corporation of India Limited =NPCIL) が、2030年までに加圧水型軽水炉「AP 1000」6基をインドに建設する契約を2017年6月までに締結する。米輸出入銀行が資金支援する。原子炉設計や立地選定は「すぐに始める」としている。

ーーー

インドは経済成長に伴う電力不足への対応に加え、温暖化対策として2030年までに総発電量に占める非化石燃料の割合を40%に引き上げる目標を掲げる。
太陽光などの再生可能エネルギーとともに原発の増設を重視している。

インドは現在21基 (5,780MW) の原子炉を抱え、6基(4,300MW)を建設中。これに加え、既に政府は2015年4月に10発電所、44基の新設承認を行った。さらに2基の計画がある。
計画には今回のWestinghouseの案件や、フランスのArebaと三菱重工の案件、GEの案件、ロシアの案件も含まれている。

しかし、これまでインドへの原発輸出には2つの障害があった。

第一は、インドが核拡散防止条約(NPT)に加盟せず核兵器を保有したため、米国が原発輸出を禁じていた。

このため、インドはかつて導入した米製技術を元に国産化した。1974年以降に納入された外国製原発はロシアの2基だけで、うち1基が稼働、1基が建設中。

しかし米国は2008年の米印原子力協定の調印で方針を転換した。
日本も日本の原発輸出を可能とするため、2015年末に日印原子力協定の締結に向けて原則合意した。

第二の問題は、インド国会が2010年8月末に可決させた「原子力損害賠償法」 である。

インドで1984年に起きた史上最悪の産業事故であるボパール化学工場有毒ガス漏出事故は未だに解決をみていない。

2010/12/8 インド政府、Bhopal事故補償で13億ドルの追加請求

インドはこの経験から、「汚染者負担の原則」を原子力にも取り入れた。

放射能漏れなどの原発事故が発生した際、通常は原発の操業会社のみに負わせていた賠償責任を、原子炉などのメーカーつまり供給企業にも負わせるとしたもの。
これにより、万一の際の保障体制がより強力な形で整うことになる。
いざという場合には政府のバックアップが期待できるロシアやフランスなどに比べ、米国企業は相対的に不利益を受ける可能性が出てくる。

インド政府は国会審議の過程で、原子炉供給企業の責任を軽減する修正案を閣議了承するなど、米企業などへの配慮を示したが、結局これは野党の激しい批判で撤回に追い込まれた。
米国の駐印大使や国務次官補らが懸念を表明し、これがまた野党の反発をあおるという悪循環に陥った。

これでは海外の原子炉を使えないため、インドは2016年2月4日、原発事故の賠償に関する国際的なルールとなる「原子力損害補完的補償条約」(CSC)を批准した。
CSC加盟国は、過失の有無にかかわらず電力会社などの原子力事業者が賠償責任を負うとされる。

CSCが発効すれば「国内法は事実上骨抜きとなり、外国企業が進出しやすくなる」と指摘されている。

ただし、国民から反発を招く可能性もあり、対外条約と矛盾する国内法の改正に課題が残る。

ーーー

インドの原子力発電の現状と計画は下記の通り。

付記
Westinghouseは当初、Gujarat州での建設を計画していたが、地元の反対を受け、Andhra Pradesh州に変更した。

*1 Westinghouse

*2 Areva & 三菱重工業の原発建設計画

*3 VVER-1000 はロシア製のWater-Water Energetic Reactor
旧ソ連で開発され、旧ソ連・東欧諸国で広く発電炉として運転されている加圧水型原子炉
  Kudankulamで1基が稼動、1基が建設中で、さらにKudankulamで4基、Haripurで6基を計画している。

*4 ESBWR(Economic Simplified Boiling Water Reactor)
  設計はGE日立ニュークリア・エナジー 

2016年1月、インドのModi 首相とフランスのHollande 大統領は、年内にJaitapurでArevaのEPR 6基 建設の契約をまとめると述べた。
同月にインドの内閣は、Westinghouseとの契約を年内にまとめることを確認した。

Kovvadaに建設する原発では、GEのEconomic Simplified Boiling Water Reactor (ESBWR) を初めて採用する。

計画分で、Kalpakkam の600x2 以外は 2015年4月に政府の承認を受けている。

ーーー

回、WestinghouseのAP1000が採用され、6基が建設されることとなるが、東芝の計画では、インドで35基を建設するとなっており、道は遠い。

Monsanto は5月24日、Bayer からの総額620億ドル(債務込み)での買収提案を拒否した。

取締役会は満場一致で、Bayer の提案は不完全で適切なものではないと看做した。
合併のメリットは認めつつ、提案額は企業価値を著しく低く評価しているとし、更に、買収資金の調達や規制上のリスク(potential financing and regulatory execution risks)などについて懸念があるとした。

2016/5/23 Bayer、Monsantoに買収提案

6月11日付けのWall Street Journal によると、Bayer は新たな提案を行ったが、Monsantoはこれを拒否した。

Bayer はMonsantoに次の内容の書簡を送った。

・Monsantoが懸念する資金調達については準備が整っており、規制上の障害を乗り越えられる自信がある。
  (BayerはMonsanto買収の資金を債券と株式の組み合わせにより調達する方針を表明している。)

・買収額の引き上げのため、詳細な情報へのアクセス(Due diligence)を求める。
 (新しい買収額はそれをみて決めるとし、提示していない。)

これに対しMonsantoは、提案が変わっていないと考え、Bayerが買収額を引き上げるまでは詳細情報へのアクセスを拒否した。
さらに、合意の前に、規制上のリスクを含む他の諸点について明確にすることを求めた。

巨額の買収資金を巡り負債リスクを懸念する声が市場に根強いなか、Bayerが買収を実現するためには買収価格を引き上げるかどうかが焦点になっている。

付記

BayerはMonsantoに7月1日口頭で、7月9日文書で、これまでの買収価格122ドルから125ドルに引き上げると通知した。

これは、5月9日の終値に40%のプレミアムを乗せたものとなる。全株を取得すれば635億ドルとなる。

独禁当局の認可取得に自信があり、もし認可が得られない場合、15億ドルの"reverse antitrust break fee" を支払う。 

 

付記

Monsantoは7月19日、この提案を安すぎるとして再度拒否した。交渉は続ける。

ーーー

農薬・種子業界では、Dow Chemical と DuPont が2015年12月11日に経営統合で合意した。両社の農薬・種子事業を統合するとMonsantoを上回り、業界トップに躍り出る公算となった。

統合会社の社名はDowDupont で、統合後に無税スピンオフで Agriculture、Material Science、Specialty Products の3つの会社に分離し、それぞれ上場する。

2015/12/14 Dow と DuPont、経営統合を発表

しかし、この合意の前に BASFが数週間にわたりDowに対抗してDuPont の買収を検討していることが判明した。
正式なオファーはしていないが、DuPontに打診を行っている。

DuPontは1999年に種子会社のPioneer Hi-Bredを買収した。
BASFは種子事業を持っておらず、もしDuPontを買収できれば、農業科学分野でのギャップを埋めることが出来るとともに、Monsantoに次ぐ世界第二位のメーカーとなる。

2016/3/7 BASF、DuPontの全部又は一部の買収を検討 

農薬と種子合計で世界一、農薬で世界二位のSyngentaは本年2月3日、中国の化学メーカーの中国化工集団(ChemChina)による買収提案受け入れを支持した。TOBは数週間のうちに開始され、年末に買収が完了する見込み。

2016/2/5 中国化工集団(ChemChina)、スイス農薬のSyngentaを買収 


DuPontはDowと合併する。もし、BayerがMonsantoを買収すれば、BASFは取り残されることとなる。

BASFの副最高経営責任者は6月8日、本社で開いたR&Dに関する会見で、BayerによるMonsanto 買収計画により、自社の事業モデルが影響を受けることはないとの立場を示した。
「市場で起こっている出来事により、われわれが窮地に追い込まれることはない」と述べた。BASFの農薬事業は収益性が高く、革新にあふれており、規模も小さくないとしている。


 

IUPAC (国際純正・応用化学連合)は2015年12月30日、新元素113、115、117、118 を公式に認めた。
発見者に命名権が与えられる。

2012/10/1 新元素 113
2016/1/1 理研に新元素113 の命名権

IUPACは6月8日、新しい4元素の名称案を発表した。
5ヶ月間のパブリックレビューの後、IUPACから正式な元素名と元素記号名が発表される。

元素番号 元素名 元素記号
113 Nihonium Nh
115 Moscovium Mc
117 Tennessine Ts
118 Oganesson Og

・ 113=Nihonium

理研仁科加速器研究センター超重元素研究グループの森田浩介グループディレクター(九州大学大学院理学研究院教授)を中心とする研究グループが発見。

「日本」からNihonium と命名した。(ニッポニウムは下記の理由で使用できない)

1908年に当時第一高等学校教授であった小川正孝が第43番元素を発見し、ニッポニウム(Nipponium: Np)と命名した。
しかし後にそれは43番元素ではなかったことが判明し、ニッポニウムは幻の元素となった。
これは原子番号75のRheniumであった。
一度間違いとされた元素名ニッポニウムは使用できない。

原子番号93のネプツニウム (Neptunium) に元素記号 Np が使われている

115=Moscovium と 117=Tennessine

これらは、ロシアのドゥブナ合同原子核研究所(Joint Institute for Nuclear Research, Dubna)と米国のOak Ridge National Laboratory、Vanderbilt University、Lawrence Livermore National Laboratory の合同チームが発見した。

それぞれが立地する Moscow とTennessee州からとった。

・ 118=Oganesson

ロシアのドゥブナ合同原子核研究所 と米国のLawrence Livermore National Laboratory の合同チームが発見した。

ゥブナ合同原子核研究所のフレロフ核反応研究室(Flerov Laboratory of Nuclear Reactions)のリーダーの Professor Yuri Oganessian (1933年生まれ) の功績を讃え、彼の名前をとった。

Professor Yuri Oganessian は1998年にプルトニウムとカルシウムの衝突実験で原子番号114のフレロビウム(flerovium:Fl)を生成した。

生存中の人物にちなんで名付けられた元素は、Glenn Theodore Seaborg の名前をとった原子番号106のSeaborgium=Sg についで2件目。

Seaborg は加速器を用いて多くの新元素を発見した。
アクチニウム(89 Actinium=Ac) からローレンシウム(103
Lawrencium=Lr)までの元素を「アクチノイド系列」と命名し、この系列に属する元素の大半、すなわちプルトニウム(94 Plutonium=Pu) 、アメリシウム(95 Americium=Am)、キュリウム(96 Curium=Cm)、バークリウム(97 Berkelium=Bk)、カリホルニウム(98 Californium=Cf)、アインスタイニウム(99 Einsteinium=Es)、フェルミウム(100 Fermium=Fm)、メンデレビウム(101 Mendelevium=Md)、ノーベリウム(102 Nobelium=No)、ローレンシウム(103 Lawrencium=Lr)の発見に寄与した。

参考 

2009/8/26 112番目の元素 Copernicium
2011/12/8 新元素 Flerovium(原子番号114) とLivermorium(原子番号116)

Bayerは2004年7月にBayer Chemicalsの大半とBayer Polymersの一部を新会社 Lanxess として分離し、2005年に上場した。

2006/9/6 Bayer と Lanxess

2015年9月1日にMaterial ScienceをCovestro として分離した。

今後は完全にLife Science 事業(HealthCare と CropScience )に注力する。

2014/9/22 Bayer、ライフサイエンス事業に注力、MaterialScienceを分離、上場

2015/9/2 Bayer のMaterial Science 部門、Covestro として分離独立

HealthCare とCropScience 部門の変遷は下記の通り。

2006/6/12  2つの買収劇  Schering 買収
2012/11/23 米ビタミンメーカー Schiff Nutrition International の買収 
2014/3/4 Bayer、中国の漢方薬メーカーを買収
2014/5/10 Bayer、米 Merckの大衆薬事業を買収


なお、Bayer はアスピリンで有名だが、米国などでは1994年まで、Bayer アスピリンをSterling Drug が売っていた。
また、Bayer は米国では1995年に改称するまで Miles Laboratories の社名で活動していた。

第一次大戦でのドイツの敗戦で、米国子会社が商標権も含め接収されたためである。

2012/1/31 Kodak と Bayer


経緯は
下記の通り。


 

中小の医薬品メーカーの動きも激しい。買収に出たメーカーが他のメーカーに買収を仕掛けられるケースも多い。


7.  Valeant

Valeant はこれまで、成長の大部分を買収や、買収で手に入れた割安な医薬品の値上げに依存していたが、業績が著しく悪化している。
武田薬品が買収提案を行ったと報道された。

2015/2/28 Valeant Pharmaceuticals、米同業Salix Pharmaceuticalsを買収
2015/3/18 Salix Pharmaceuticals の買収合戦
2015/8/26 Valeant Pharmaceuticals、女性用バイアグラの Sprout Pharmaceuticalsを買収
2016/5/30 武田薬品、カナダのValeant Pharmaceuticalsに買収を提案、拒否される

ーーー

8. Allergan 

二度にわたる買収で、いずれも買収された会社の社名を新社名にしている。

本社を税率の低いアイルランドに移すため、Pfizerが買収したが、米国の新たな税制では本社移転による恩恵がなくなり、断念した。
最近、Carl Icahnが同社の株を大量に取得したとされる。

2014/10/22 米製薬会社 Allergan を巡る買収合戦
2015/11/26 Pfizer、アイルランドのAllerganを買収
2015/7/29 後発薬最大手のTeva、米 医薬大手の Allerganから後発薬事業買収
2016/4/7 Pfizer とAllergan、合併計画断念
2015/11/19 ジェネリック医薬品大手のMylan、アイルランド製薬大手Perrigo のTOBに失敗

ーーー

9. AbbVie / Shire

AbbVieもShire Pharmaceuticals の買収を決めたが、米政府の新規制で撤回した。

2014/10/20 買収・合併による節税目的の海外移転禁止の動き強まる
2015/3/9 米国の製薬会社 AbbVie、同業のPharmacyclics Inc を210億ドルで買収
2015/1/17 アイルランド製薬Shire Pharmaceuticals 、米バイオ医薬品 NPSを買収
2015/8/8 アイルランドのShire Pharmaceuticals、Baxalta に買収提案  

ーーー

10. Endo International

EndoはDuPontに買収され、DuPont Merck Pharmaceutical の部門となったが、DuPontとMerckがJVを解消した際に、Management Buyoutで独立した。
最近、多くの企業を買収している。

2015/3/18 Salix Pharmaceuticals の買収合戦
2015/5/20

アイルランドの製薬大手 Endo、米の Par Pharmaceutical を買収

欧米の医薬業界は1980年代から買収、分離を相次いで行ってきたが、最近になって活動が一層活発になった。

各社の動きをまとめた。

1.Pfizer

1999年にAmerican Home Products とWarner Lambert の合併が合意された直後、敵対買収を行ってWarner Lambert を買収、2009年にはそのAmerican Home Products (Wyeth と改称)を買収した。
2003年にPharmacia を買収している。

最近では、2015年にAllerganを買収し、本社を税率の低いアイルランドに移そうとしたが、米国の新たな税制では本社移転による恩恵がなくなり、断念した。
AstraZenecaに買収を打診し、断念している。

2006/3/6 世界の医薬会社の構造改革
2007/10/11 高杉良「挑戦 巨大外資」 Pfizer / Warner Lambert / American Home Products
2009/1/27  Pfizer、Wyeth を買収
2014/5/12 Pfizer が AstraZenecaに買収提案
2015/2/11 Pfizer、米製薬会社 Hospira, Inc. を買収 
2015/11/26 Pfizer、アイルランドのAllerganを買収 
2016/4/7 Pfizer とAllergan、合併計画断念

ーーー

2.Glaxo SmithKline

SmithKline Beecham と Glaxo \wellcome は1998年に一旦合併合意しながら破談となったが、2000年に合併した。
Pfizer、塩野義とHIV治療薬のJVを持つ。

2006/3/6 世界の医薬会社の構造改革 
2009/4/29 GlaxoSmithKline の動き
2012/11/2 塩野義製薬、HIV治療薬JVの枠組み変更

ーーー

3. Merck と Schering

両社はいずれもドイツの企業で、米国に子会社を持っていたが、第一次大戦でドイツ資産が没収され、別会社となった。

ドイツではMerck がSchering を買収しようとして断念、ScheringはBayer に買収された。

米国ではMerckがSchering-Ploughを買収、合併した。

なお、米国Merckは米国、カナダ以外の地域では「MSD」(Merck Sharp & Dohme)の名称を使用、逆にドイツのMerck KGaAは米国とカナダでは「EMD」Emanuel Merck, Darmstadtの社名を使用している。

2006/3/23 2つのMerck社
2006/3/24 バイエルがシェーリングの買収合意
2014/9/25 独Merck KGaA、研究用試薬の米 Sigma-Aldrich を170億ドルで買収
2009/3/11 Merck、米Schering-Plough を買収
2014/5/10 Bayer、米 Merckの大衆薬事業を買収

ーーー

4. Sanofi

Hoechst は米国で Celanese や Marion Merrell Dow を買収、1999年にRohne Poulent と合併してAventisとなった。(Celanese を再分離)

2004年にSanofi Synthelabo がフランス政府の支援を受け、Aventisを吸収、Sanofi Aventisとなった。現在名は Sanofi。

2006/3/6 世界の医薬会社の構造改革
2011/2/17  Sanofi-Aventis、Genzymeを買収 
2015/12/19 仏Sanofi と独 Boehringer Ingelheim、事業交換の交渉

ーーー

5. AstraZeneca、Novartis

AstraZeneca はICI から分離したZeneca とスウェーデンのAstraが合併してできた。

2014年にPfizerから買収提案があったが、拒否した。その後、買収を続けている。

NovartisはSandozとCiba-Geigyの合併で生まれた。

AstraZenecaの農薬部門とNovartisの種子部門が合併し、Syngenta となった。

2014/5/12 Pfizer が AstraZenecaに買収提案
2015/11/12 AstraZeneca、米製薬会社 ZS Pharma を27億ドルで買収
2015/12/22 AstraZeneca、買収による事業拡大 
2015/7/27 富士フイルム協和発酵キリン、バイオシミラー医薬品の開発・販売で AstraZeneca と提携

ーーー

6. Johnson & Johnson

Consumer Healthcare 傷ケア、ベビー用品、スキンケア・化粧品、オーラルケア、コンタクトレンズ、OTC医薬品
Medical Devices 外科手術関連、感染予防、心臓疾患関連、整形・脳神経外科関連、糖尿病関連、コンタクトレンズ
Pharmaceuticals 中枢神経系、真菌症、鎮痛・麻酔、がん、その他領域



JXエネルギーは6月3日、マレーシア国営石油 Petronas の子会社 Petronas LNG 9 の発行済み株式10%を取得する株式売買契約を締結したと発表した。

合わせて、Petronasの100%子会社 Petronas LNG とLNG販売における販売支援を行う契約も締結した。
Petronas LNG 9 が生産する年間360万トンのLNG販売の一翼を担う。

Petronas LNG 9 への資本参画は、マレーシアにおいてMalaysia LNG Tiga プロジェクトに次ぐLNGプロジェクトとなる。

ーーー

PetronasのBintuluのLNG生産基地は世界最大級で、現在8系列のLNGプラントが稼働しており、第9系列目のLNGプラントが建設されている。

既存8系列は生産開始順に3社に分かれており、1番(Satu)、2番(Dua)、3番(Tiga) の名がついている。
建設中の第9系列の運営会社は仮称で LNG 9 と呼ばれている。当初、Petronas 100% であったが、今回 JXが出資する。

既存 3プロジェクト計8系列のLNGプラントの生産能力は実質年間2,570万トン(下表では2,320万トン)と、単一場所でのLNG液化基地としては最大級。
同プラントからの日本へのLNG輸入量は、2014年で約1,500万トン、日本の全LNG輸入量の約16%を占める。

株主

能力

生産開始
Petronas サラワク州 その他
MLNG (Satu) 90% 5% 三菱商事  5% 260万トンx 3
= 780万トン
1983
MLNG Dua 60% 10% 三菱商事 15%
Shell 15%
260万トンx 3
= 780万トン
1985
MLNG Tiga 60% 10% JX  10%
Shell 15%
ダイヤモンドガス 5%
380万トンx 2
=760万トン
2003/3
MLNG 9 90% JX 10% 360万トンx 1
=360万トン
2017/1Q

ダイヤモンドガスは三菱商事 80%、石油資源開発 20%出資のJV


これらは、いずれもマレーシア、サラワク州沖のガス田から生産される天然ガスをBintuluで液化し、日本、韓国、台湾などの電力・ガス会社向けにLNGを販売している。

LNG基地は隣接している。

JXが出資しているMLNG Tiga の運営は下記の通りとなっている。

https://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/1/1808/200709_107e.pdf

米電力大手Exelon は6月2日、米中西部イリノイ州にある2つの原子力発電所を閉鎖すると発表した。廃炉の公算が強い。

原発名 場所 基数 能力 タイプ 閉鎖時期
Clinton Clinton, Ill. 1基 1,069MW BWR 2017/6/1
Quad Cities Cordova, Ill. 2基 1,871MW BWR 2018/6/1


シェール革命によるガス価格の下落(10年前に比し約1/3に低下)で電力卸売価格も大きく低下し、採算が合わなくなっていた。
同社では両原発は同社の原発のうち、最も効率がよいものだが、過去7年間で合計8億ドルの損失を計上していたとしている。
両原発で1500人を雇用しており、間接人員も含めると4200人となる。

ExelonやComEd などはイリノイ州議会に以下の点を含んだ "Next Generation Energy Plan" の法制化を求めている。

・ Zero Emission Standard の導入
  州が監査し、収入が支出をカバーできない原発に限り、補償を行う。
・Renewable Portfolio Standards の強化・拡張
・太陽光発電の推進
・電力料の50%引き下げ

州議会はこれを議論中だが、成立するかどうか見通しがつかないため、廃止を決めたとしている。
引き続き、 "Next Generation Energy Plan" の法制化に向け、運動を続ける。


Exelonは、2000年にUnicom (シカゴを基盤とする Commonwealth Edison の親会社) とフィラデルフィアに本拠を置く PECO Energy が合併し誕生した。

11箇所の原子力発電所を運営しているが、その中にはかつて大きな原子力事故を起こしたことがあるスリーマイル島原子力発電所が含まれている。

今回閉鎖する2原発以外の原発は下記の通り。

原発名 場所 基数 能力 タイプ
Braidwood Illinois 2基 2,389MW PWR (Westinghouse)
Byron Illinois 2基 2,347MW PWR (Westinghouse)
Dresden Illinois 2基 1,845MW BWR (General Electric)
LaSalle Illinois 2基 2,320MW BWR (General Electric)
Fort Calhoun #1 Nebraska 1基 484MW PWR (Combustion Engineering)
Limerick Pennsylvania 2基 2,317MW BWR (General Electric)
Oyster Creek #2 New Jersey 1基 636MW BWR (General Electric)
Peach Bottom #3 Pennsylvania 2基 2,599MW x 2 BWR (General Electric)
Three Mile Island Pennsylvania 1基 837MW PWR (Babcock and Wilcox)

#1 Fort Calhoun原発はOmaha Public Power District が所有し、Exelonが操業している。
#2
Oyster Creekは認可期限の2019年末までに停止を発表済み
#3 Peach Bottom はExelon とPublic Service and Gas of New Jerseyの共有で、Exelonが操業している。

ーーー

米国では主として採算を理由に廃炉する原発が相次いでいる。今回の2原発を含めると、合計9原発となる。

社名 原発 立地 発表 詳細
Dominion Kewaunee Wisconsin 2012/10 2012/10/26
米の発電会社、不採算を理由に原発を閉鎖
Entergy Yankee Vermont 2013/8 2013/9/2 
米・電力大手Entergy、Vermont Yankee原発の廃炉を決定
 
Duke Energy Crystal River Florida 2013/2
Southern California Edison San Onofre California 2013/6
Exelon Oyster Creek New Jersey 2010
Entergy James A. Fitzpatrick New York 2015/11 2016年末~2017年初めに閉鎖 採算悪化
Entergy Pilgrim Massachusetts 2015/10 2019/6/1までに閉鎖


このうち、San Onofreは
三菱重工業の蒸気発生器の欠陥を理由にするもの
  
2013/10/22 米国原発会社、三菱重工業の蒸気発生器の欠陥で仲裁申立て


2012年7月30日付の英 Financial Times は、"Nuclear 'hard to justify', says GE chief" のタイトルでGeneral ElectricのCEOのJeff Immeltのインタビュー記事を掲載した。
シェールガス革命で天然ガスが豊富に供給され、再生可能エネルギーの選択肢も増えたことから、原子力発電を正当化することは難しくなったというもの。

2012/7/31 原子力発電の正当化困難にーGE会長


新設の原発は旧基準に基づき稼動認可を得たものが1つで、新基準では3件の建設運転一括許可が出ている。

1) Watts Bar 原発2号機 (稼動認可)

米原子力規制委員会(NRC)は2015年10月22日、テネシー州のWatts Bar 原発2号機の稼働を認可したと発表した。
米Westinghouse製の加圧水型原子炉で、出力は約110万kw。1973年に建設認可を得たが、79年のスリーマイル島原発事故の影響で85年に建設を中断、2007年に建設再開に乗り出し、完成にこぎ着けた。

2015/10/31 米国、19年ぶり原発稼働認可 

2) Vogtle原発 3・4号機 (2012/2 建設運転一括許可=COL)
3) Virgil C. Summer 原発2・3号機 2012/3 建設運転一括許可=COL)

 いずれも新型加圧水型原子炉「AP1000」

2012/4/4 米、2件目の原子力発電所新設を承認 

4) South Texas 原発 3・4号機(2016/2 建設運転一括許可=COL)

東芝のSouth Texas 原発の事業開発会社Nuclear Innovation North America は2016年2月9日、NRCから、South Texas Project 3・4号機建設の建設運転一括許可(COL)の承認を受けた。ABWRとしてCOLが承認されたのは今回が初めて。


東芝は、今後 15年間で Westinghouseで 64基の原発を受注するとしており、うち米国では18基となっているが、現状では実現は非常に難しい。

今回COLを得たSouth Texas 原発 3・4号機も、当初の運営主体であったNRG Energyが離脱したため、東芝が抱え込んでおり、認可は得たものの、パートナーが見つかるまでは建設に入れない状況にある。

2016/5/16 東芝、米国大手エンジニアリング会社との原発建設に関する協力関係を解消

SABICは5月30日、神華寧夏煤業集団 (Shenhua Ningxia Coal Industry Group) との間で中国で石油化学コンプレックスを建設する協定書にサインしたと発表した。

SABICは声明で、共同計画は寧夏回族自治区での新規の石油化学コンプレックスで、SABICの原料ソース多様化に役立つとしている。
寧夏では、神華が供給する石炭を利用出来るメリットがあるとしている。

 

計画の詳細は明らかにされていない。

協定書では、3年間でFeasibility Study を行い、その後、国家発展改革委員会(NDRC)の承認を求める。

SABICにとって、計画は事業を他地域に広げ、新しい市場に展開する戦略の一環であるとしている。
中国のコンプレックスは、原料を幅広いソースで得るのにも役立つとしている。国際市場での原料価格のサイクリカルな変動からSABICを守り、利益ある成長戦略を確実にすると述べた。

ーーー

SABICは現在、中国でSinopec とのエチレンコンプレックスJV、韓国でSK Global Chemicalとの高機能ポリエチレンのJV を持っている。

SABICSinopec との50/50JVのSINOPEC SABIC Tianjin Petrochemical を設立し、天津でエチレン100万トンのコンプレックスを運営している。

2009/7/13 中国、シノペック天津石化計画へのSABICの参加を承認

SABICと韓国のSK総合化学は2014年5月26日、SKの最新ポリエチレン技術(Nexlene™ )を使って高機能ポリエチレン製品を製造するための50/50JVを設立する合弁契約に調印した。

シンガポールに本社を持つSabic SK Nexlene Company を設立し、韓国に100%子会社Korea Nexlene Company を設立し、SKの蔚山の年産23万トンのプラントを買収して運営する。

2014/5/31 SABIC、韓国のSK総合化学と高機能ポリエチレンのJVを設立

ーーー

神華集団はDow Chemical とのJVで陜西省楡林市でワールドスケールのCoal-to-Chemicals コンプレックスを建設している。

2007年5月21日、中国の国有石炭最大手・神華集団との間で、を建設するための詳細FS実施の契約を締結。

2009年11月、起工式

2012年10月、環境評価書を提出

2012/10/27 Dow/神華集団、楡林市の石炭化学コンプレックスの環境評価書を提出

Hanwha Chemical は5月25日、収益性と競争力アップの方策の一環として、蔚山コンプレックスのクロルアルカリ工場を約71百万ドルで水酸化カリウムなどのメーカーの韓国のUNIDに売却したと発表した。

韓国では、自主的な企業のリストラの推進を狙った企業再生特別法(Special Act for Corporate Revival)が8月に発効し、いろいろなインセンティブが与えられるが、化学会社の工場売却も対象となる。化学業界は過剰設備に悩み、リストラが必要な分野であり、Hanwhaの先制的な動きは政府に歓迎される。

クロルアルカリ工場は海水を電気分解し、塩素と苛性ソーダを生産するもので、塩素はPVCの原料となる。

UNIDは水酸化カリウム、 炭酸カリウムなどの化学品と中密度繊維ボードを扱う。世界の水酸化カリウム市場で最大シェアを誇る。

1980年に東洋化学とDiamond ShamrockのJVの韓国カリ化学(Korea Potassium Chemicals)として設立された。
1987年にDiamond Shamrockが撤退し、Korea Investment Corporation となり、1995年に現在の UNID に改称した。
社名は "You need "の発音から採った。You は顧客、株主、従業員。

UNIDは電解で水酸化カリウム(KOH)と炭酸カリウム(K2CO3)を生産する唯一のメーカー。

水酸化カリウムは塩化カリウム(KCL:ニガリの構成成分の一つで、カリ鉱石として採掘される)の電解で生産される。
炭酸カリウムは通常は水酸化カリウムに炭酸ガスを吸収させて生産する。


UNIDでは、購入したプラントを改造し、水酸化カリウム(KOH)を生産する計画。水酸化カリウムは石鹸の原料や半導体の洗浄用に使われる。

Hanwhaとしては売却により苛性ソーダの過剰状況を緩和できる一方、UNIDでは不要の塩素を引き取ってPVCの原料に使用でき、一石二鳥となる。
UNIDとしては、既存工場の移転を求められており、Hanwha の蔚山工場を取得し、水酸化カリウムに転用することでコスト引き下げが可能となる。

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日本政府は本年4月5日、韓国と中国原産の水酸化カリウムウムに対して暫定的な不当廉売関税を賦課する政令を閣議決定した。

2015年4月にカリ電解工業会から申請を受け、5月から調査を実施してきた。
この結果、本年3月5日に日本産業への実質的損害等の事実を推定する仮決定を行った。4月9日から8月8日までの間、暫定的な不当廉売関税が課せられる。

2016/4/8 日本政府、反ダンピング課税申請要件を緩和 

新潟市から法律に基づく水俣病の患者認定申請を棄却された市内の9人(故人1人を含む)が、市に処分の取り消しと患者認定を求めた裁判で、新潟地裁は5月30日、 市の処分を一部取り消し、原告7人を水俣病と認定するよう市に命じた。2人については請求を退けた。

原告は新潟市の50~80代の男女で、1人は申請後に死亡した未認定患者の遺族。阿賀野川のメチル水銀に汚染された魚を食べ、しびれなどの症状があるとして市に認定申請し2007~13年に棄却された。

水俣病の行政認定を巡る判決は最高裁が認定の幅を広げる判断を示した2013年4月の判決以来で、新潟水俣病では初めて。


水俣病未認定患者の遺族が熊本県に認定を求めた2件の訴訟の上告審判決が2013年4月16日、最高裁第3小法廷で言い渡され、いずれも患者側の勝訴となった。

それまで、裁判所が患者認定審査をできるというものと、県の裁量を重視し、司法は県の判断が不合理かどうかを審理するというものに分かれていたが、司法が独自に審査しうるとし、県の判断を覆した。

また、環境庁の「手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせ」を条件とするという「(昭和)52年判断条件」に基づく高裁判決を破棄した。
「52年基準」に合うものは個別的な因果関係について立証の必要がないとするものにすぎず、それ以外でも諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、水俣病と認定する余地を排除するものとはいえないとした。

2013/4/17  水俣訴訟、最高裁判決

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最高裁判決を受け、環境省は2014年1月に、メチル水銀との因果関係が認められれば、手足の先のしびれなどの感覚障害だけでも認める方針を固めた。
しかし、認定基準そのものの変更ではなく、認定基準の「補足」とした。

「補足」された認定基準は非常に厳しく、多くの被害者にとって水銀ばく露を証明する書類を今から確保するのは極めて困難で、これが救済対象の拡大につながる可能性は低いとみられた。

2014/1/14  水俣病認定基準  

環境省は2014年3月7日、これを関係自治体に通知した。

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今回の訴訟は、「症状が複数でない場合でも認定する余地がある」とした最高裁判決をきっかけに2013年12月に提起された。

新潟市が昔の「複数症状の組み合わせ」を原則とする認定基準に基づき判断したと指摘し、「基準は医学的に間違っている。原告らは少なくとも感覚障害がある」と訴えた。

一方、新潟市側は、大半の原告は食べた川魚の量が少なく、症状は新潟水俣病によるものではないなどと反論していた。

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水俣病と診断されながら国の基準では認定されなかった新潟市などの男女11人が2007年4月に、国と新潟県、原因企業の昭和電工に1人当たり1200万円の損害賠償などを求めた新潟水俣病3次訴訟の判決が2015年3月23日に出た。

原告7人を患者と認定し、昭電に1人330万〜440万円(総額2420万円)の支払いを命じた。

国と県は、国の認定基準で棄却されているため、水俣病患者ではないとしたが、判決は、「症状が手足末端の感覚障害のみの人も存在する」とし、水銀摂取から40年以上経過後に発症する「遅発性水俣病」の存在も否定できないと指摘した。

同居家族に認定患者がいることを重視する見解を示し、7人を患者認定した。
しかし、3人については感覚障害を認めたが、同居家族に認定患者がいないなどとして請求を退けた。

国と県の賠償責任については、工場排水を規制しなかったことが違法とはいえないとして認めなかった。

2015/3/26 新潟水俣病 3次訴訟判決

この3次訴訟については、高裁で係争中で、第1回口頭弁論で、被告の国や昭和電工などは請求の棄却を求め争う構えをみせた。

他に2009年6月の5次訴訟も係争中。

1次訴訟は1971年9月に、昭和電工の工場排水が原因と確定、患者側勝訴となった。
2次訴訟は、1995年12月の未認定患者救済策の閣議決定を受け、1996年2月に和解。
4次訴訟は、和解勧告を受け、2010年10月に和解合意。

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新潟県の泉田知事は4月2日、水俣病特別措置法(特措法)に基づく救済策で一時金の支給の対象と認められず、新潟県に異議を申し立てた92人のうち、3人を救済対象とし、2人を棄却したと発表した。残る87人も審査を進めるとした。

2015/4/3 新潟県、水俣病 3人の異議認める

今回の判決で西森裁判長は、軽度の水俣病の場合、手足の感覚障害の症状だけのものが存在すると指摘し、最高裁の見解を踏襲した。

その上で、請求を認めた7人について「阿賀野川の魚介類を摂取するか、摂取した母親の胎内にいたことにより、高度のメチル水銀の暴露を受け、水俣病になった」と判断した。
また、メチル水銀が取り込まれてから数年後に発症した例や、発症後10~20年後に症状が悪化した例があるとして、長期間経過後、老化に伴い症状がはっきり現れる「遅発性水俣病」があり得ることも認めた。 

認められた7人は、症状は感覚障害だけだったが、同居する家族に認定患者がおり、食生活が同じという点からもメチル水銀を摂取した可能性が大きいとし、水俣病と判断した。

7人は2015年3月、国や県、原因企業の昭和電工に未認定患者らが損害賠償などを求めた新潟水俣病第3次訴訟の地裁判決で、水俣病と判断されている。

一方、請求を棄却された2人は、感覚障害はあるが、家族に認定患者がおらず、「汚染された阿賀野川の魚を多食した確かな証拠がない」とした。

判決後、記者会見を開いた高島章・原告弁護団長は、訴えを退けられた2人については「7人と同じような症状がある。家族が認められているかの違いしかない」と複雑な表情を見せ、「家族の有無による線引きがいかに非科学的で根拠がないか、今後も主張していきたい」と述べた。

棄却された2人は東京高裁に控訴する。

原告側弁護団は新潟県内に住む男女3人が新たに認定を求めて提訴すると明らかにした。

新潟地裁判決を受けて、新潟市の篠田昭市長は「判決を真摯に受け止めるとともに、判決内容の詳細を確認し、今後の対応を検討したい」とのコメントを発表した。

本年4月末現在、認定を申請した2,129人のうち患者として認められたのは705人。
認定患者は原因企業の昭和電工から約1千万円の一時金(死亡の場合は500万円上積み)や年約140万円の年金などの補償が受けられる。

Lotte Chemical が主導するウズベキスタンと韓国の石化JVのUz-Kor Gas Chemical は5月21日、現地で完工式を行った。

Uz-Kor Gas Chemical はSurgil ガス田の45億立方メートルのガスを処理し、エチレン/HDPE 387千トン、プロピレン/PP 83千トン、分解ガソリン102千トンなどを生産、発電した電気の余剰分を外販する。37億立方メートルのガスも外販する。
製品は
中央アジアやロシアのほか、中東や北アフリカの顧客に供給する。

Surgil ガス田の埋蔵量は1300億立方メートルで、液化天然ガス換算で9600万トン、原油換算で8億3000万バレルに上る。

ロッテグループの辛東彬(重光昭夫)会長は完成式典で、「今回の事業で北アフリカなど新たな市場に進出できる橋頭堡を確保した」と述べた。

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2011年8月23日、ウズベキスタンのアラル海に近いSurgil ガス田を開発し、ガス化学プラントを建設する総額41億6千万ドル規模の超大型プロジェクト契約が締結された。

2006年に韓国ガス公社 (KOGAS) とウズベキスタン国営ガス公社(UNG) が了解覚書を締結し、2008年に双方が50%ずつ出資する合弁会社(Uz-Kor Gas Chemical ) を設立し交渉を続けてきた。

2011/8/29  韓国の李大統領、中央アジア3か国歴訪、ガス田開発、石化事業などで合意 

Uz-Kor Gas Chemical の韓国側株主には、当初、KOGAS、ロッテ大山石化、STX Energy のほか、LG International とSK Gaz が入っていたが、2011年末にLG International とSK Gaz が離脱し、出資比率が変更になった。

当初 現在
ウズベキスタン Uzbekneftgaz(UNG) 50.0% 50.0%
韓国 韓国ガス公社(KOGAS) 17.5% 22.5%
Lotte Chemical
(当初は子会社のロッテ大山石化)
17.5% 24.5%
STX Energy(双竜グループ) 5.0% 3.0%
LG International 5.0% 0%
SK Gaz 5.0% 0%



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ロッテは米ルイジアナ州など海外で大規模プラントの建設を相次いで進める

2015/6/22 韓国 Lotte Chemical、米国で石油化学

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