2018年9月アーカイブ

Tesla, Inc.のElon Musk CEOが8月にツイッター上で公表した株式非公開化の計画をめぐり米証券取引委員会(SEC)から訴えを起こされていた問題で、両者が和解したことが9月29日分かった。
Musk CEOは罰金の支払いに応じるほか、Teslaの会長職から退くことなどで合意した。CEOとしては留任する。

付記

TeslaのElon Musk CEOは10月4日、ツイッターでSECを "Shortseller Enrichment Commission " (空売り筋:ショートセラーを富ませる組織)に名称変更するよう促し、挑発した。

Just want to that the Shortseller Enrichment Commission is doing incredible work. And the name change is so on point!

付記

Teslaは11月7日、新たな会長にRobyn Denholm女史を指名した。同氏はこれまで、オーストラリアの通信大手、Telstra Corporation LimitedのCFOであり、2014年からTeslaの社外取締役も務めていた。また、過去にはToyota Motor Corporation Australiaに勤務し、財務管理を担当していた時期もある。

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Elon Muskは、投資家から四半期決算など短い期間で好業績を出すように圧力がかかることを嫌っているとされるが、8月7日に突然ツイッターで「1株当たり420ドルでTeslaを非公開にできないか考えている。資金は確保した(Funding secured)」と発信した。

株式市場は一時騒然としTesla株は前日比11%高となった。

その後、「資金は確保した」との発言も、サウジの政府系ファンドとの交渉での感触によるものであることが分かった。

Tesla は8月24日、株式非公開化の計画を撤回すると発表した。

Elon Musk CEO は、株式非公開化について「当初予期していたよりもはるかに時間がかかり、混乱を招くことが明らかになった」と指摘。「モデル3を普及させ、収益を改善することに注力する上で問題になる」と撤回の理由を説明した。

Tesla, Inc.のCEOのElon Muskがツイッターで株式非公開化の方針を公表した情報開示の手法をめぐり、米証券取引委員会(SEC)が同社に証言や書類提出を求める召喚状を送ったことが分かった。
米メディアが8月16日に一斉に報じた。

2018/8/21 Teslaの株式非公開化、米SECが本格調査へ

米証券取引委員会(SEC)は9月27日、投資家を欺いたとしてMusk CEO を提訴した。

ニューヨーク南部地区連邦地裁にSECが出した訴状によると被告はMusk 氏個人で、8月7日のツイートを問題視した。1株あたり420ドルでテスラ株を買い取り、非公開にする計画を示し「資金は確保した」としていた。この発言についてSECは価格や原資が「議論も確定もしていなかった」と指摘した。

SECは訴えでMusk氏に民事上の制裁金の支払いなどのほか、公開企業の経営に関わることを禁じるよう求めている。TeslaはNASDAQに上場している。

訴えが認められれば同社の経営に大きな打撃となる。

一方でMusk氏は同日出した声明で「不当だ」と反論。「自分は常に投資家の利益を最大限考えてきた」と述べた。

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SECは9月29日、訴訟の提起からわずか2日間での「スピード和解」を発表した。

内容:

SECはTesla Inc. のElon Musk CEO兼会長との間で、証券詐欺罪問題で和解することで合意した。
同時にこの問題での開示を怠ったことでTeslaを
訴え、同社は和解することで合意した

Elon Musk は会長職を退任し、独立した会長に交代する。Muskは3年間は会長に再就任できない。
Teslaは独立した取締役の委員会を設立し、Muskの対外的なコミュニケーションを監督する。

Musk本人とTesla はそれぞれ20百万ドルの罰金を支払う。合計40百万ドルは、裁判所が承認するやり方で被害を受けた投資家に配分する。

SECによると、Musk は8月7日のツイッター発言の時点で、Teslaを非公開にするための取引が不確かであり、多くの問題があることを知っていた。またどの相手方とも価格を含めた詳細を議論していなかった。このため、彼の発言は事実に基づいていなかった。Muskのミスリーディングな発言で8月7日に株価は上がり、市場を混乱させたとしている。

Teslaについては、MuskのツイートがTeslaがSECに届け出て開示すべき情報を含んでいるかどうかを決める手続きをもっておらず、また、ツイートが正確か完全かを判断することをしていなかったとした。

Elon Muskは会長職を辞めるが、引き続き CEO の役職にはとどまる。

SECと早期に和解することで、経営への打撃を抑える狙いとみられるが、司法省も刑事捜査を始めているほか、損失を被ったとする一部の投資家の間では集団訴訟を起こす動きが広がっており、問題はまだ解決していない。

New York 株式市場では、この問題が嫌気され、Tesla株は9月28日に前日比14%近く下落 した。

9月28日の終値ベースの時価総額はTeslaが約451億ドル、GMが475億ドルで、GMが1年5カ月ぶりに首位に返り咲いた。

英有料放送局 Skyの買い手を決める入札が9月22日に行われ、米メディア大手 Comcastが米同業の21st Century Foxに競り勝った。
英国のM&Aを監督する自主規制機関が9月20日、入札で買い手を決めると発表した。

Rupert Murdochが率いる21st Century Foxは既にSky の39.1%を所有しており、2017年12月にスカイの完全子会社化で合意したが、Rupert Murdochの英メディア支配を恐れる英当局の審査が長引いた末、経営権の獲得を逃す結果となった。

Foxは2018年6月に、Sky の39.1%を含むテレビ・映画関連事業をDisneyに売却しており、残りも取得すればDisneyに売却する予定であった。

この結果を受け、Foxは9月26日、保有する Sky の株式(39/1%) をComcastに116億ポンドで売却すると発表した。これを含む Fox のテレビ・映画関連事業 の買収を決めている Disneyも Fox決断を支持するとの声明を出した。

米国のComcastはFoxのテレビ・映画関連事業争奪戦でDisneyに敗れたが、欧州に地盤を持つSkyを傘下に収め、メディア事業のグローバル化を進める。

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欧米のメディアの買収合戦が続いている。

米連邦地裁は2018年6月12日、通信大手AT&Tによるメディア大手TimeWarnerの買収計画を承認する判決を下した。

Comcastは2018年7月19日、21st Century Fox のテレビ・映画関連事業の買収を断念、Walt Disneyによる買収が決定的となった。Walt Disneyと21st Century Foxは7月27日、それぞれ株主総会を開催し、事業の売買を承認した。

2018/6/14 米地裁、AT&Tによる TimeWarner の買収を承認


経緯は次の通り。

21st Century Foxの主要事業
(Skyの39%を含む)
Skyの残り61%
2017/12 21st Century Fox、Skyの株の残り61%の取得で合意
1株10.75£
2017/12/14 Walt Disneyが524億ドルで買収 
2018/1/23 英競争・市場局、公益に沿わないとの判断、両社に是正措置を要求
(スカイ・ニュースの分離・売却や Murdochの影響から引き離すことなど)
2018/4/25 Comcast 提案 1株12.5£
2018/6/5 英当局、報道部門「スカイニューズ」の売却を条件に認める方針
2018/6/13 Comcastが650億ドルでの買収提案
2018/6/15 欧州委、Comcastによる買収を無条件承認
2018/6/20 Walt Disneyは買収額を713億ドルに引き上げ
2018/6/20 Walt Disneyは21st Century Fox と合意、調印
2018/6/27 米司法省 これを承認
2018/7/11 21st Century Fox提案 1株 14.00£
2018/7/11 Comcast 提案 1株 14.75£
2018/7/12 英政府、21st Century Foxによる買収承認
(Walt Disney へのメディア含む事業売却を評価)
2018/7/19 Comcast、買収断念、Sky買収に注力
2018/9/22 入札
 
21st Century Fox 15.67£
  Comcast    17.28£

米韓FTA改正案に署名

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トランプ米大統領と韓国の文在寅大統領は9月24日夕、ニューヨーク市内で会談し米韓自由貿易協定(FTA)改正案に署名した。

改正FTAは両国の国内手続きを経て年明けにも発効する見込み。トランプ大統領は署名式で「新協定は貿易赤字を削減し、米国産品の輸出を大幅に拡大する」と強調し、「米国と韓国が貿易のための友好協力関係の例を示した」と語った。

鉄鋼への追加関税を回避するため、韓国が大幅に譲歩したもの。

トランプ大統領にとっては、追加関税の脅しで貿易協定を改正する最初の成功例であり、次いでメキシコとの間で自動車の追加関税の脅しでNAFTA協定の改正に成功している。
但し、NAFTAのもう一方の相手のカナダとの交渉は難航している。

2018/9/3 米国とカナダのNAFTA再交渉、再協議へ 後半部分にメキシコとの交渉内容

EUとの間では、関税引き下げに向け交渉することで合意した直ちにExecutive Working Group を設置する。加えて、短期的な対策を検討する。

この間は、どちらかが交渉を取り止めない限り、この合意の精神に反する行動を行わないこととした。

2018/7/27 米国とEU、関税撤廃交渉へ

日本は、EUのやり方を真似た。

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韓国と米国との自由貿易協定(FTA)が2012年3月15日に発効した。最初の交渉妥結から5年かかった。

工業製品などの9割弱について両国で関税が即時撤廃され、5年以内に工業製品などの約95%で関税が撤廃される。

2012/3/15 韓米FTA発効 

対韓貿易赤字に不満を持つトランプ米大統領は 2017年6月30日の米韓首脳会談で米韓自由貿易協定(FTA)の再交渉に言及した。
米通商代表部(USTR)は7月12日、FTAの改定交渉を韓国政府に正式に要求した。

協定では、米韓のいずれかが特別共同委員会は招集を要求した場合、相手国は原則的に30日以内に応じなければならないこととなっている。

2017/7/20 米国、韓国とのFTAの再交渉を要求 

米韓政府は8月22日、FTAを見直すかを議論する特別合同委員会をソウルで開いた。

米側は米韓FTAで貿易赤字が拡大しているとして改定を要求。一方、韓国は米国の対韓貿易赤字とFTAは無関係とし、改定には応じないと反論した。

2017/8/25 韓国、米国のFTA 即時改定要求に応じず

トランプ米大統領は2018年3月1日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威になっているとして輸入制限を発動する方針を表明した。

鉄鋼には25%、アルミには10%の追加関税をかけると述べた。

2018/3/3 トランプ大統領、鉄鋼とアルミに追加関税、日本も対象

トランプ大統領は3月8日午後、鉄鋼とアルミニウムに輸入制限の発動を命じる文書に署名した。 

それぞれ25%、10%の関税を課す。
15日後に発効する。
全ての国に適用するが、カナダとメキシコは当面猶予する。

今回の命令は、いくつかの国を除外するようになっており、国ごとに税率を変えたり、適切と思う国をリストに加えたり、リストから除外する権限を大統領に与えていると述べた。

2018/3/9 トランプ大統領、鉄鋼・アルミの輸入制限発動を命令

両国は3月25日、米韓FTAの改正・延長交渉で合意した。交渉に参加した韓国の金鉉宗通商交渉本部長は、「韓米FTAと貿易拡大法第232条の鉄鋼製品の関税賦課について原則的に合意・妥結した」と明らかにした。

鉄鋼に関しては25%の追加関税を免除する代わりに、韓国は米国向け輸出数量を減らす。(2015~2017年平均輸出量383万トンの70%を限度)

FTAの改正点は次の通り。

農産物市場関連の追加開放はない。

米国製自動車部品の使用義務など原産国関連の米国側の要求は反映されない。

一方、米自動車を輸入する際に適用してきた非関税障壁の自動車安全・環境基準のハードルを下げる
韓国の安全基準を満たさなくても、米基準を満たす車両の韓国輸入台数の拡大などを受け入れた模様。
(現在、米国車は年間2万5000台まで米国基準にだけ合わせれば韓国で販売できるが、これを5万台に引き上げる。

米国に輸出する韓国製ピックアップトラックに対する関税撤廃日程を2041年まで遅らせる。
(現行FTAでは、米国はピックアップトラックの25%の関税を来年から段階的に引き下げ、2021年までに完全撤廃となっている。)

両国が競争的な通貨切り下げを禁じる「為替条項」の導入でも合意した。
為替条項は(1)競争的な通貨切り下げを禁じる(2)金融政策の透明性と説明責任を約束するといった内容。
「付帯協定」との位置づけのため強制力は持たない。

米国への輸出拡大を狙った韓国の通貨安誘導を防ぐためで、米国が同条項を結ぶのは初めて。

2018/3/26 韓米FTA改正交渉妥結、鉄鋼の追加関税免除 

なお、上記の為替条項については、米国は「 (FTA交渉のなかで)FTAの条項とは別に、韓国と合意している」と説明するが、韓国側は「FTAとは別の事案」としている。

9月26日夕(日本時間27日朝)、日米首脳会談がニューヨークで行われ、安倍首相とトランプ大統領が「日米物品貿易協定(TAG:Trade Agreement on Goods )」の交渉入りで合意した。

付記

トランプ米政権は10月16日、日本との貿易協定に関する交渉を始めると議会に通知した。米貿易関連法では交渉開始の90日前までに議会に通知する決まりで、早ければ2019年1月にも協議が始まる見通し。

TAGは投資・サービス分野などを含む自由貿易協定(FTA)とは異なりモノの関税に絞る。関税撤廃・削減を目指しており、対象は農産品や工業製品などほぼ全ての貿易品目に及ぶ。税関手続きの円滑化などの交渉も含む。
日米はTAG交渉の見通しが立った後、サービスや投資分野でも2国間交渉を始める。

首脳会談に同席した茂木経済再生相は、実際の交渉入りの時期について、米国議会手続きなどがあるため「少し時間がかかる」としたが、「日米が関税について自由で公正な新たな枠組みを構築することは、国際経済全体に良い影響を与える」と述べた。

TAGでは、日本の農産品についてTPP水準を超えた自由化をしないと米国側に念押しした。

また、交渉中は米政権が検討する輸入自動車への高関税措置を発動しないことを、会談で首相が直接、トランプ大統領に確認した。

外務省は下記の通り発表した。

両首脳は,日米両国の経済的な結びつきをより強固なものとすることが,日米の貿易を安定的に拡大させるとともに,自由で開かれた国際経済の発展につながるとの考えの下,「日米物品貿易協定(TAG)」について交渉を開始することに合意し,共同声明を発出した。

また,日米双方の利益となるように,日米間の貿易・投資を更に拡大させ,公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現していくことで一致した。

共同声明の概要は次の通り。

両国経済が合わせて世界のGDPの約3割を占めることを認識しつつ,日米間の強力かつ安定的で互恵的な貿易・経済関係の重要性を確認した。

大統領は,相互的な貿易の重要性,また,日本や他の国々との貿易赤字を削減することの重要性を強調した。総理大臣は,自由で公正なルールに基づく貿易の重要性を強調した。


日米両国は,所要の国内調整を経た後に,日米物品貿易協定(TAG)について,また,他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても,交渉を開始する。
また,上記の協定の議論の完了の後に,他の貿易・投資の事項についても交渉を行うこととする。

上記協定は,双方の利益となることを目指すものであり,交渉を行うに当たっては,日米両国は以下の他方の政府の立場を尊重する。

-日本としては農林水産品について,過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であること。

-米国としては自動車について,市場アクセスの交渉結果が米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指すものであること。


日米両国は,第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する。
したがって我々は,WTO改革,電子商取引の議論を促進するとともに,知的財産の収奪,強制的技術移転,貿易歪曲的な産業補助金,国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため,日米,また日米欧三極の協力を通じて,緊密に作業していく。


日米両国は上記について信頼関係に基づき議論を行うこととし,その協議が行われている間,本共同声明の精神に反する行動を取らない。また,他の関税関連問題の早期解決に努める。

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関税の交渉を行うことで、 交渉期間中は自動車追加関税を回避するというのは、EUのやり方を真似たものである。

米国とEUは、関税引き下げに向け交渉することで合意した直ちにExecutive Working Group を設置する。加えて、短期的な対策を検討する。

この間は、どちらかが交渉を取り止めない限り、この合意の精神に反する行動を行わないこととした。

EUは特に、米国が中国の報復関税での輸出減少で苦悩する大豆とLNGの輸入拡大を謳い、米国から本案について了承を得た。

2018/7/27 米国とEU、関税撤廃交渉へ

今回、日本が日米TAG交渉入りで米国の了承を得たのは、とりあえずは成功である。

特に、農産品分野ではTPP水準を超えた自由化をしないという条件を呑ませたのは大成功である。

元々、米国はTPPよりも有利な条件を勝ち取るため、二国間のFTAを望んていたものであり、日本もそれを恐れてこれを回避しようとしてきた。
TPP水準を超えないということは、米国の参加を前提に決めた水準に止まるということである。

米国としては、とりあえずはTPPに参加して関税引き下げの恩恵を受ける豪州と同じ扱いとなることで、農民の不満を抑えられることとなる。

しかし、問題は自動車である。米国の対日貿易赤字の大部分が自動車である。

米国側は、市場アクセスの交渉結果が米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指すものであることとしている。

日本の輸入関税は元々ゼロであり、自動車税などの「非関税障壁」を手直ししても、米国製自動車の輸入が増えるとは考えられない。

日本の自動車業界は既に米国に進出し、製造と雇用の増加に貢献しているが、それは企業の活動であり、米国の対日貿易赤字とは関係がない。

日本の輸入が増えないなら、輸出を減らせ(数量制限)ということになりかねない。

しかも、これまでのように、長々と交渉を続けるわけにもいかないだろう。

大統領は3月22日に日本に関してツイッターで次のように述べた。「こんな長期間、米国をだませたとは信じられない」と喜んでいるようだが、もうこれまでだと。

I'll talk to Prime Minister Abe of Japan and others --- great guy, friend of mine --- and there will be a little smile on their face.
And the smile is, "I can't believe we've been able to take advantage of the United States for so long" So those days are over.


米連邦準備理事会(FRB)は9月26日の連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.75~2.00%から2.00~2.25%に引き上げることを決定した。決定は全会一致で、今年に入ってから3回目となる。 

年内は12月にあと1回の利上げが実施されると予想、2019年は3回、2020年は1回との見通しを示した。

声明で、「労働市場が引き締まり続け、経済活動が力強い速度で拡大していることを示している」と指摘した。前回まで記載していた「金融政策のスタンスは引き続き緩和的だ」とする文言を削除した。

FOMCのメンバーは長期的に適切な政策金利の水準を3.0%(中央値)と見込んでおり、足元のペースで利上げすれば2019年半ばには同水準に到達する。声明文の変更は、FRBが進めてきた金融緩和の縮小が終結しつつあることを示している。 

付記

FRBは12月19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で3カ月ぶりの利上げ(利上げ幅は0.25%)を決めた。2019年の想定ペースを従来の3回から2回に引き下げた。2020年までに利上げを停止する考えも示唆した。

2008/10 2.00%→1.00%
2008/12 1.00%→0.00%
  ↓   0.00%
2015/12 0.00%→0.25%
2016/12 0.25%→0.50%
2017/3 0.50%→0.75%
2017/6 0.75%→1.00%
2017/12 1.00%→1.25%
2018/3 1.25%→1.50%
2018/6 1.50%→1.75%
2018/9 1.75%→2.00%
(2018/12 ) (2.00%→2.25%)


四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを命じた2017年12月の広島高裁仮処分決定を巡る異議審で、同高裁は9月25日、四国電力が申し立てた異議を認め、仮処分決定を取り消した。

差し止めの理由とした阿蘇カルデラの破局的噴火について社会通念上、想定する必要がなく、立地は不適でないと判断した。決定を受け、四電は10月27日に3号機を再稼働させ る予定。

住民側は他の訴訟への影響などを考慮し、最高裁への特別抗告はしない方針。

伊方3号機については、9月28日に大分地裁が決定を出すほか、高松高裁や山口地裁岩国支部でも係争中。

付記

大分地裁は9月28日、住民側の申し立てを却下する決定をした。

住民側は原発事故が起きれば危険が及ぶと主張。阿蘇カルデラが破局的噴火をした場合の危険性などを訴えていた。


付記

広島市の住民らが、10月以降の運転差し止めを求めた仮処分申請で、広島地裁は10月26日、申し立てを却下した。

下記の通り昨年末の広島高裁仮処分が9月末までの停止を命じたため、10月以降の停止を求めていた。

裁判長は「巨大噴火が阿蘇で発生する可能性は非常に低く、噴火によって事故が起こるリスクは、直ちに除去しなければならないほど差し迫った危険には当たらない」と判断した。 

伊方3号は10月27日未明に再稼働した。


付記

高松高裁は11月15日、愛媛県の住民の申し立てを退けた2017年7月の松山地裁決定を支持し、運転を認める決定をした。阿蘇カルデラで運用期間中に「破局的噴火」が起きる根拠は不十分で「立地が不適とは考えられない」とした原子力規制委員会の判断を追認した。

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伊方原発3号機について、広島高等裁判所は2017年12月13日、運転の停止を命じる仮処分の決定をした。
運転停止の期間については、広島地方裁判所で並行して進められている裁判で異なる結論が出る可能性があるとして、2018年9月30日までとした。

「熊本県の阿蘇山で、巨大噴火が起きて原発に影響が出る可能性が小さいとは言えず、新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は、不合理だ」と指摘した。

伊方原発3号機は、2016年8月に再稼働を行ったが、2017年10月3日から定期検査のため運転を停止中で、決定が覆されない限り続くため、定期検査が終了する2018年2月以降も運転できない状態が続く。

なお、野々上裁判長は2017年12月末で定年退官のため、今後は別の裁判官が扱うこととなる。

問題となったのは、日本では1万年一度程度とされる「破局的噴火」の影響である。

破局噴火とは、地下のマグマが一気に地上に噴出する壊滅的な噴火形式で、しばしば地球規模の環境変化や大量絶滅の原因となる。大規模なカルデラの形成を伴うことからカルデラ噴火と呼ぶ場合もある。

阿蘇山では分かっているだけでも過去4回大きな噴火を起こし、約9万年前に起きた噴火は最大級の「破局噴火」であった。

2017年12月13日の仮処分では、四国電力が想定する地震の最大の揺れや周辺の火山の噴火の危険性をどのように評価するかなどが争われた。

原子力規制委員会が2013年に作成した「火山影響評価ガイド」 ではまず、原発の運用期間とされる約40年間に噴火するかどうかや、その規模を推定する必要がある。推定できない場合は、過去最大の噴火規模を想定する手順になっており、判決はこれを厳格に適用し、約9万年前という大昔の破局的噴火が審理の対象になった。

裁判長は、熊本県にある阿蘇山が噴火しても火砕流が原発に到達しないと主張する四国電力の根拠となった噴火のシミュレーションについて、「過去に阿蘇山で実際に起きた火砕流とは異なる前提で行われており、原発に火砕流が到達していないと判断することはできないため、原発の立地は不適切だ」などと指摘した。

そのうえで、「阿蘇山の地下にはマグマだまりが存在し、原発の運用期間中に、巨大噴火が起きて原発に影響を及ぼす可能性が小さいとはいえない。巨大噴火が起きた場合、四国電力が想定した火山灰などの量は少なすぎる」と述べた。

そして、「火山の危険性について、伊方原発が新しい規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理で、住民の生命、身体に対する具体的な危険が存在する」として、運転の停止を命じた。

2017/12/15 広島高裁 

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今回の広島高裁の三木裁判長は、差し止めの仮処分決定が重視した原子力規制委員会の手引書「火山影響評価ガイド」について「噴火の時期や程度が相当程度の正確さで予測できるとしていることを前提としており不合理」と批判 した。火山の噴火リスクについても「わが国の社会が自然災害に対する危険をどの程度まで容認するかという社会通念を基準として判断せざるを得ない」とした。

「破局的噴火」について、「発生頻度は著しく小さく、国が具体的対策を策定しようという動きも認められない。国民の大多数はそのことを格別に問題にしていない」と指摘。「破局的噴火が伊方原発の運用期間中に発生する可能性が相応の根拠をもって示されているとは認められない」とした。

仮処分 今回
火山影響評価ガイド ガイドに基づき、阿蘇の過去最大噴火(約9万年前)を想定。 ガイドは噴火の正確な予測 を前提としているが、実際には正確な予想不能で、ガイドそのものが不合理。
火山の危険性 火砕流が原発敷地に達した可能性が小さいと言えず立地は不適 原発運転中に阿蘇で破局的噴火が起きる根拠が示されておらず、立地不適でない。
噴火の影響 降下火砕物の厚さや大気中濃度の想定が不適 降下火砕物の想定は合理的
社会通念の捉え方 社会通念を踏まえても、科学的知見に基づくガイドの限定解釈は許されない 国は破局的噴火の対策を作らず、国民の大多数も問題にしていない。
安全性に欠けないとするのが現時点の社会通念
想定する地震や津波など火山以外の危険性 新規制基準、規制委の適合判断とも合理的 同左

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2017年12月の広島高裁仮処分決定の際に、安井至氏の「市民のための環境学ガイド」は「 原発とカルデラ噴火のリスク」(2017/12/23) で、巽好幸氏の「富士山大噴火と阿蘇山大爆発」を紹介している。

巽先生の予測によれば、阿蘇カルデラなどの7大カルデラの一つが、今後100年間で巨大カルデラ噴火を起こす確率は約1%であるとのこと。もし起きてしまえば、最悪の場合、火砕流による死亡者700万人に加え、その後の食糧不足によって、1億人の命が失われるとのことである。火山灰が10cm 積もるだけで、農地は完全 に失われ、その復活には1000年程度の年月が必要となる、とのこと。

阿蘇でおきるカルデラ爆発だと、火砕流は時速100kmで伝達するので、カルデラ爆発の2時間以内に700万人が死亡すると考えられている。巨大な火砕流が発生すれば、その地域は数 百年間復活できないと考えられるが、実は、それ以外にも、火山灰が西風にのって日本全国を覆う可能性が高い。火山灰が10cm 覆うだけで、農業は一切行うことができない。国内の食糧生産は ゼロになる。そのため、最悪1億人が命を落とすというのが、巽先生のシナリオのようだ。

阿蘇カルデラ爆発が起きたときに、何が起きるか、恐らく裁判長は知っていたと思われる。しかし、それを述べてしまったら、伊方原発の存在に、全く迫力が無くなってしまう。恐らく、カルデラ爆発の被害は、意図的に無視したのだと考えられる。

下図の通り、この破局的噴火で火砕流は伊方原発に到達している。同時に九州ほぼ全土に到達しているため、全滅である。また日本のほぼ全土に15cmの火山灰で覆われ、農地が完全に失われる。

要するに日本全滅であり、伊方原発が稼働していようが、休止していようが、全く関係ない。国としても、破局的噴火の対策を作ることはできない。

今回の判決は、破局的噴火だけを判断の対象としており、この限りにおいては、今回の判決が常識的である。

なお、阿蘇には巨大噴火の兆候はないが、可能性のあるものが一つ存在している。

神戸大学海洋底探査センターは2016年から3回にわたって、大学の付属練習船「深江丸」で九州南方の海底に広がるくぼみ「鬼界カルデラ」の調査を行った。

最近の論文によると、海底からの高さが600メートルにもなる世界最大級の「溶岩ドーム」が、カルデラの内側で確認されたこの溶岩ドームは、カルデラができた後に、新しいマグマの活動によってつくられたと推定できるという。

巽教授によると、次の巨大カルデラ噴火の準備過程に入ったと言える。 今この鬼界カルデラで、7300年前と同規模の超巨大噴火が起きれば、九州南部は高温の火砕流で覆い尽くされ、関西でも20cm、首都圏でも数cmの火山灰が降り注ぐという。

富士フイルムは、iPS細胞を使った移植医療について臨床試験(治験)を国に申請する。

骨髄移植した人の約4割がかかる急性移植片対宿主病(GVHD:graft versus host disease) の患者数十人を対象に2019年に始める。

移植片対宿主病(GVHD)は、移植時に輸注されるドナーの造血幹細胞浮遊液中に含まれるドナー由来のリンパ球が引き起こす合併症で、患者の正常細胞を異物として認識して攻撃する。
皮膚炎や肝炎のほか下痢や嘔吐を繰り返し、命を落とすこともある。

造血幹細胞浮遊液中に含まれるドナー由来のT細胞が活性化され、炎症性サイトカインが放出されることで発症する。患者とドナーのヒト白血球抗原(HLA)の組み合わせの違いに関係する。

おおよそ移植後6-30日頃におこる急性GVHDと、移植後3ヶ月以降に発症する慢性GVHDに分けられる。

今回の治験は、他人のIPS細胞から、過剰な免疫の働きを抑えるとされ間葉系幹細胞(軟骨や脂肪などに変化する細胞)を量産して注射し、移植した骨髄に含まれる免疫細胞が患者の体を攻撃するのを抑え、症状を改善する。

他人の骨髄から採取した間葉系幹細胞を使ったGVHDの治療そのものは実績があり、日本でもJCRファーマが2015年に製品化した。

JCRファーマ(旧称 日本ケミカルリ) は2015年9月に、日本初の他家由来の再生医療等製品として急性移植片対宿主の治療製品「テムセル®HS注[一般: : (同種骨髄由来間葉系幹細胞]の製造販売承認を取得し、2016年2月に発売した。

健康な成人から採取した骨髄液からヒト間葉系幹細胞を分離し培養した

JCRフと医薬品卸のメディパルは2011年7月より共同で液体窒素を用いた超低温管理物流システムの研究をすすめてきたが、このシステムを稼働させることによってマイナス150℃以下という極めて低い温度を10日間以上維持した配送・保管が可能となり緊急時にも安定した品質の製品を全国の医療現場に届けられる。

ただ、間葉系幹細胞は増やすことが難しく、多くの提供者を探さなければならない。これには下記の問題があるが、iPS細胞の場合にはそれらの問題がない。

富士フィルムが 出資する豪州のCynata Therapeuticsは、他家iPS細胞由来間葉系幹細胞を用いた再生医療製品英国で治験中で、15人中14人が完治したり、症状が改善している。

Cynata Therapeuticsは下記の説明をしている。

富士フィルムではCynata Therapeuticsの技術を使って、白血病の治療に伴って重い合併症になった患者を対象として、2022年の製造・販売承認を目指す。

日本で年間1千人以上が重症化し、このうち通常の治療が効かず、今回の臨床試験の対象となるような最重症患者は年間数百人程度発生しているとされる

ーーー

富士フィルムは2016年9月、2013年設立の豪州のCynata Therapeutics に400万豪ドル(9%)出資することで合意した。

出資により富士フィルムは、Cynata社が移植片対宿主病の患者を対象に臨床試験を予定している他家iPS細胞由来間葉系幹細胞を用いた再生医療製品の開発・製造・販売ライセンス導入と製造受託の選択権を取得した。

(フェーズ 1 試験終了後90日まで)
・ 3百万ドルのマイルストーン投資
・ 富士フイルムはすべての開発と費用に対し責任を持つ


(フェーズ2 以降)
・ 富士フイルムはマイルストーン(60万ドル+)と製品販売に関する2桁台のロイヤルティを支払う。
富士フイルムのGvHD市場予測は年間3億米ドルのピーク収入を示しており、年間3,000万米ドル以上のロイヤルティの可能性

また、Cynata社の持つ、他家iPS細胞由来間葉系幹細胞を用いた再生医療製品開発に関する技術・ノウハウも取得可能となる。

Cynata Therapeuticsは富士フイルムの米子会社Cellular Dynamicsから、iPS 細胞の提供を受けており、この関係で出資が決まった。

Cellular Dynamics については  2015/4/14 京都大学iPS 細胞研究所、Cellular Dynamics Internationalと提携へ


建設資材に含まれるアスベスト(石綿)で健康被害を受けたとして、近畿・四国の元建設作業員と遺族33人が国と建材メーカー22社に7億1200万円の賠償を求めた訴訟の控訴審 で、大阪高裁は9月20日、国の責任だけを認めた2016年1月の一審・大阪地裁判決を変更し、メーカーの責任も認定、計3億3900万円の賠償を命じた。

高裁判決は国の責任について、1975年以降に防じんマスクなどの措置を義務づけなかったと指摘し、さらに石綿を含む建材の製造を禁じる措置などを取るべき時期を一審判決より4年早い1991年とし、国の賠償責任の割合を一連の訴訟で初めて1/3 から1/2に引き上げた。

メーカーの責任についても、1975年以降に建材に警告表示をしなかったとして、当時市場のシェアが高かった8社に賠償を命じた。

「一人親方」についても、労働安全衛生法上の保護対象ではないが、国の違法行為があれば保護されるべきだと判断した。

建設アスベスト訴訟判決はこれで11件目。

国は、2012年5月の横浜地裁が原告の請求を全て棄却したのを除き、全て敗訴で、今回で10連敗となる。

メーカーについて責任を認めたのは、今回が5回目。一人親方を補償対象としたのは今回が3回目となる。

原告全面勝訴は、今回を含めいずれも高裁判決で、今回が2件目となる。

これまでの判決 2018/9/5 建設石綿訴訟の控訴審、原告全面勝訴 


全国で起こされている「建設アスベスト訴訟」で高裁判決は4件目 で、連続して原告全面勝訴となった。

国の責任 メーカーの責任 一人親方への責任
東京高裁 2017/10 X 労働関係法令が保護対象とする「労働者」でない。
東京高裁 2018/3 X 因果関係不明 〇 建設現場で労働者とともに作業に従事
大阪高裁 2018/8 〇 労働者以外の保護を念頭に置いた規定あり
大阪高裁 2018/9 〇 国の違法行為があれば保護


今回の判決と、1審の大阪地裁判決の概要は次の通り。

判決 一人
親方
メーカー
大阪地裁 2016/1 X X 国の責任を一部認める。
原告14人に計9746万円

国は遅くとも1975年には、石綿吹き付けなどに従事した作業員が石綿関連疾患を患う危険性を認識できた。
国は1975年時点で、事業者に対して労働者に防じんマスクを使用させるべき義務を明示的に定めるべきだった。

(メーカー)被害者が実際に扱った石綿建材を具体的に特定するものではない。

(一人親方)労働関係法令の保護対象ではない

2016/1/27 建設アスベスト訴訟で国が3度目の敗訴

大阪高裁 2018/9/20 国の責任に加え、メーカーの責任も新たに認定し、「一人親方」への国の責任も認定
国とメーカー8社に計約3億3900万円の支払いを命じた。(大幅に増額)

国が1975年10月から防じんマスクの着用や警告表示を義務付けなかったこと、1991年末までに石綿を含む建材の製造を禁止しなかったことを違法と判断。

国の賠償責任の割合を一連の訴訟で初めて1/3から1/2に引き上げ。

(メーカー)建材の販売シェア率10%を基準にし、ニチアスなど8社の責任を認めた。

(一人親方) 労働安全衛生法上の保護対象ではないが、国の違法行為があれば保護されるべきだと判断

新華社通信は9月19日、電子商取引大手Alibaba Groupの馬雲(Jack Ma)会長が、米中貿易摩擦を踏まえ、米国で100万人の雇用を創出することはもはや目指していないと表明したと報じた。

馬会長は2017年1月に大統領就任直前のTrump氏とトランプタワーで会談し、Alibabaのネットワークや販売力を活用し、アメリカの中小企業の製品を中国および他のアジア市場に販売し、5年間で100万人の中小企業の雇用を創出するという計画を示していた。

Ma会長は新華社に対し、「公約は中国と米国が協力的で友好的な関係にあることが前提条件だった。足元の状況によって前提が完全に崩れたため、公約をもはや遂行できない」と語った。

Ma会長はこの問題について、米中間の貿易摩擦が世界中のビジネスに打撃を与えると警告するなど、批判をますます強めている。
9月18日には中国の実業界と政界指導部に対し、両国が経済の優位性を競い合う中で貿易摩擦がトランプ政権後も含め20年間続く状況に備えるよう警鐘を鳴らした。

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AlibabaのJack Ma会長は2017年1月9日、トランプ・タワーでTrump次期米国大統領と40分間にわたって会談した。Alibabaの公式ブログ「ALIZILA」が同日に会談内容などを公表した。

それによると、Alibabaのネットワークや販売力を活用し、アメリカの中小企業の製品を中国および他のアジア市場に販売、5年間で100万人の中小企業の雇用を創出する。

Trump次期大統領は記者たちに次のように述べた。

私たちは素晴らしいミーティングをした。彼は素晴らしい企業家であり、世界においてもっとも優秀な企業家の1人である。彼はアメリカを愛し、中国を愛している。ジャックと私は、中小企業のために素晴らしい事をするつもりだ。

また、Ma会長は、次のように話した。

私たちが100万の中小企業を支援し、Alibabaのプラットフォームを通じて中国やアジア、特に東南アジアに販売することを話し合った。

また、Alibabaが米国各州の企業の製品や農産物をECサイト「天猫」(Tmall)で扱っていることを誇示している。

欧州中央銀行(ECB)は9月13日の理事会で、毎月の債券買い入れ額を10月から月150億ユーロに半減させること、債券買い入れ策を年末までに終了させ、少なくとも来年夏までは金利を過去最低水準にとどめる ことを決めた。

マリオ・ドラギ総裁は記者会見で「債券買い入れ策の終了は、われわれの金融政策が緩和的でなくなるという意味ではない」とし、低金利とフォワードガイダンス(金融政策の先行きの手掛かり)を長期にわたって現行水準に維持する方針を示した。


これまでの債券買い入れの推移と、ユーロ圏消費者物価の推移は下記の通り。

ECBは2015年1月22日、定例理事会を開き、ユーロ加盟国の国債などを購入し、資金を大量に金融市場に供給する「量的緩和政策」の導入を決めた。

ユーロ圏は物価が下落し続けるデフレの懸念が強まっており、量的緩和はこれを払拭する狙いで、量的緩和の導入は1998年のECB創設以来初めて。

量的緩和政策の概要は下記の通り。

1) 2015年3月から2016年9月末まで、毎月 600億ユーロ、総額1兆1400億ユーロの金融資産を買い取る。

2) ユーロ圏の全加盟国の残存期間2~30年の国債を購入対象とする。購入はECBへの出資比率に応じて行う。

3) 購入した国債の信用が低下し、国債価格が急落して、ECBに損失が生じた場合、
損失の2割は全加盟国で分担
残る8割は、国債を発行した国の中銀が負担。

2016年4月、買い入れ規模を当初の月600億ユーロから月800億ユーロに増額した。

当初案では量的緩和は2016年9月末までとなっていたが、ECBは2016年9月8日、3つの政策金利の据え置きと量的緩和(QE)プログラムの現状維持を発表した。

主要政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利を0.00%で据え置く
下限政策金利である中銀預金金利はマイナス0.4%、上限政策金利の限界貸出金利は0.25%で維持した。

ECBは2016年3月10日、追加緩和で -0.4%に引き下げた。

資産購入規模は月額800億ユーロの現状を維持し、少なくとも 2017年3月まで実施し、必要に応じその後も継続すると確認した。

2016/12/14 欧州中銀、量的緩和の規模を縮小、実施期間は延長 

ECBは2016年12月に以下を決定した。

1) 資産購入プログラムの期間を2017年12月末までに延期

2) 月額の購入額を2017年4月以降600億ユーロへ減額

2017年10月に以下を決定した。

1) 資産購入プログラムの期間を2018年9月末までに延期

2) 月額の購入額を2018年1月以降300億ユーロへ減額

2018年6月14日に以下を決定した。

前回、2018年9月末が期限としていたが、10月以降は新規購入額を150億ユーロに減らし、年末で打ち切る。
すでに保有している国債については満期を迎えた分を再投資に回して当面は残高を維持する。

今回、量的緩和策について、6月時点の発表通り年内に終わらせる。

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米国は既に2014年11月には債券買い入れをゼロとし、FF金利を何度も引き上げている。


残るのは日本だけとなった。

日銀は9月18-19日に開いた金融政策決定会合で、短期金利をマイナス 0.1%、長期金利をゼロ%程度とする長短金利操作(yield curve control)付き量的・質的金融緩和政策の現状維持を賛成多数で決定した。

長期国債の買い入れ額についても、保有残高の年間増加額を「80兆円をめど」としつつ、「弾力的な買い入れ」を継続する。

黒田総裁は、安倍首相が触れた緩和の「出口」について、「あくまで2%を達成してから」と述べた。


東芝メモリとWestern Digitalは9月19日、3次元フラッシュメモリを製造する東芝メモリ四日市工場の第6製造棟およびメモリ開発センターの竣工式を行った。

両社は、成膜、エッチングなどの最先端生産設備の導入を進め、今月から96層積層プロセスを用いた3次元フラッシュメモリの量産を開始した。3次元フラッシュメモリは、エンタープライズ用サーバ向けやデータセンター向けSSDおよびスマートフォン向けを中心に需要が伸びており、長期的な市場の拡大が見込まれており、今後、市場動向に応じて追加投資を行い、生産体制を拡充する。

第6製造棟に隣接したメモリ開発センターは今年3月から運用を開始しており、3次元フラッシュメモリの開発を進める。

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第6製造棟は、3次元フラッシュメモリ固有の工程を行う製造棟として、東芝メモリが2017年2月に着工した。

東芝メモリの売却にからむ東芝とWestern Digital の争いのなかで、東芝は2017年8月に四日市工場への単独投資を発表した。

2017/8/8 東芝、東芝メモリの増設を単独実施

両社は2017年12月に和解して共同投資に戻った。

東芝と Western Digital は2017年12月13日、係属中の仲裁および訴訟を解決し、フラッシュメモリ事業に関する協業を一層強化していくことに合意したと発表した。

本合意の一環として、東芝、東芝メモリおよびWestern Digital は全ての係属中の仲裁および訴訟の取り下げに合意した。

フラッシュメモリ事業に関する既存の合弁会社の契約期間を延長し、協業を強化する。(下記)

次世代 3次元フラッシュメモリBiCS FlashTM生産のための製造棟である建設中の四日市工場第6製造棟への今後の設備投資について、共同で実施する。

また、岩手で建設が計画されている新製造棟へのWestern Digitalの参画に関する最終契約について、協議していく予定。

四日市工場のNAND型フラッシュメモリの生産体制は次の通り。

  JV 引取比率
第3製造棟 Flash Partners(東芝 50.1% / SanDisk 49.9%)
2019/12/31 まで延長済
当初は均等引取

2008/10 改組:30%分は東芝が単独運営、70%分は従来通り JVで均等引取

SunDiskが韓国サムスン電子に買収提案を受けた。東芝はSunDisk保有分の生産設備を買い取って資金支援した。

第4製造棟 Flash Alliance(東芝 50.1% / SanDisk 49.9%)

2029/12/31まで延長

第5製造棟 Flash Forward(東芝 50.1% / SanDisk 49.9%)

2027/12/31 まで延長

均等引取
新第2製造棟
第6製造棟 東芝単独

共同で投資

 


2017/4/14 東芝の半導体売却に新たな難問 参照


東芝メモリは2018年8月31日、同社を東芝から買収した㈱ Pangea と合併した。合併後の社名は東芝メモリとなる。

新しい東芝メモリの概要は次の通り。

会社名 東芝メモリ株式会社
資本金 4,734億2万5千円
大株主及び
持株比率
(議決権ベース)
BCPE Pangea Cayman, L.P. 49.9%
(Bain Capital 子会社)
東芝 40.2%
HOYA 9.9%


2017/9/30 
東芝メモリの株式譲渡契約締結

  

なお、東芝メモリは2018年7月24日、3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH™」の生産能力の増強を目的とした岩手県北上市において初となる製造棟の起工式を行った。2020年の量産開始を目指す。

エンタープライズ用サーバ向けやデータセンター向けSSDおよびスマートフォンを中心とした3次元フラッシュメモリの中長期的な市場拡大に対応できる生産体制を四日市工場と連携を図りながら確立し、さらなる事業競争力強化を図る。

これについて東芝メモリは、引き続き共同投資を行うべく Western Digital と協議を進めているとしている。

北上計画については 2017/9/7 東芝メモリの売却、9月13日に決定 参照

Western DigitalのCEOは7月にメモリー市況の悪化を受け、「東芝メモリと協議して短期の投資計画を見直す」と言及しており、今後も市況見通しや投資計画を巡って両社がすれ違う可能性は残る。

トランプ米政権は9月17日、中国からの輸入品2千億ドルを対象に第3弾の制裁関税を9月24日に発動すると発表した。

家具や家電などに10%の関税を上乗せする。当初計画の25%上乗せを先延ばしにすることにより、米企業が代替サプライチェーンを探すなど対応策を講じるための時間的猶予を与える。中国が対米黒字削減や国内産業保護策の見直しなど、踏み込んだ政策変更に応じない場合、2019年以降は25%に引き上げる。

トランプ大統領は今回の追加関税について、中国の「政府からの補助金や、いくつかの産業で外国企業が地場企業と協業しなければならない規則といった中国の不公平な通商慣行」への返答だとした。

「どういう変化が必要なのか、我々は極めて明確に提示してきた。中国に対しても、米国を公平に扱うようあらゆる機会を与えてきた 。しかし今のところ、中国は自分たちの慣行を改めるつもりはないらしい」と述べた。

大統領はまた、中国が米国の農家や産業に警告通り報復した場合、米国は直ちに中国製品約2670億ドル相当を対象にする追加関税を目指すと表明した。

但し、「貿易問題は、最後は習近平主席と私の手で解決されることを望む」とも述べた。

米政権は7月6日から340億ドル、8月23日から160億ドル、合計500億ドル分に25%の制裁関税を課した。
中国はそれぞれ同日に米国産大豆などに同規模の関税を課して対抗した。

2018/7/6 米国、対中制裁関税を発動、中国も対応

2018/8/6 中国、対米報復関税を発表 付記

今回の第3弾は「中国の報復に対する報復」との位置づけ。

米当局はこれまで、可能な限り消費財は関税対象から外したいと表明してきたが、今回、米通商代表部(USTR)が作成した関税の適用対象となる最終品目リストは一般消費者に身近な製品を対象とした。

スーツケースやハンドバッグ、トイレットペーパー、毛織物といった日用品が新たな関税の対象となった。

また冷凍肉、サバのくん製からホタテまでほとんど全ての魚介類、大豆、さまざまな果物類やシリアル、コメなどの食品にも追加関税がかけられた。

電子機器では、ルーターなどコンピューターのネットワーク利用に関わるものが対象となった。

第2弾までは企業向け中間財が多く、消費財の割合は1%に過ぎなかったが、今回で2割超にあがり、全米小売業協会は「米国人の生活を脅かす」との懸念を示した。

ただし、当初6000品目以上とされていた対象商品のうち、スマートウォッチや自転車用ヘルメット、ベビーサークル、ベビーチェア、乗用車のチャイルドシートなど300品目が除外されている。
三菱ケミカルの電解液原料のリチウム塩や、SUMCOのウエハー生産向け資材、タングステンなども外れたと報道されている。

当初は対象品目に多くのApple製品が含まれていた。Appleの腕時計型端末Apple Watch や無線イヤホンAirPod headphone、人工知能(AI)を備えたHomePod smart speaker、キイボードやマウスのない低価格パソコンMacMini、 タブレット端末の入力用ペン Apple Pencil、更には充電器やアダプター、iPhone や iPadの革製のカバーなどが含まれる。

これに対し、大統領は、" Make your products in the United States instead of China. Start building new plants now" とつぶやいた。

2018/9/11 Trump 大統領、米企業に「米国に生産を移管せよ」

第3弾の発動で、合計2500億ドル分となり、中国からの年間輸入総額(約5千億ドル)の半分に相当する。

中国商務省は9月18日、声明を発表し、中国は米国の追加関税に対して報復する以外の選択肢はないとし、米国が自らの行動を正すことを期待していると表明した。

既に8月3日に対応策を発表しているが、食品や衣服、医療器具、生活用品、液化天然ガスなど5207品目、600億ドルの関税措置の対象は変えず、5~25%の4段階だった関税率の上乗せ幅を5%と10%の2段階に下げると発表した。 (米国が来年に税率を引き上げた場合、中国も引き上げると思われる。) 北京時間 9月24日午後0時1分より実施する。

中国国務院関税税則委員会は8月3日、トランプ米大統領が6月18日に新たに2千億ドル相当の輸入品に10%の追加関税を検討するよう米通商代表部(USTR)に指示したと発表したのに対応し、米国からの輸入品に対する第3 弾の関税上乗せ策を実施することを発表している。

対象商品の輸入額は約600億ドルで、税率は25%、20%、10%、5%の4段階で、税率25%は2,493品目、20%は1078品目、10%は974品目、5%は662品目となっている。

追加関税の対象となるのは液化天然ガス(LNG)や、小・中型の航空機やヘリコプター、半導体、鉄鉱石、鉄鋼製品、車のフロントガラス、焙煎コーヒー豆、砂糖、チョコレート、菓子、避妊具など。

2018/8/6 中国、対米報復関税を発表 

また、高関税措置のほか、非関税措置をとると言明した。米企業の許認可を遅らせるなどの措置になる可能性がある。「どんな措置かは、適切な時期に公表する」としている。 

米国企業が必要とする中国製の基幹部品の輸出を規制したり、中国に進出している米企業に対し税務調査や事業認可棚上げなどを行うのではと取りざたされている。

中国の問題は米国からの輸入が1300億ドルしかないことで、米国の追加関税対象が2500億ドルとなり、更に残り約2670億ドル相当に追加課税するとしているのに対し、報復関税は第三弾までで1100ドルとなり、残りは200億ドルしかない。今回、600億ドル相当の追加関税に加え、非関税措置を取る。

米中両政府による閣僚級協議では、中国の劉鶴副首相らが9月27~28日にワシントンを訪問し、Mnuchin米財務長官らと会談する開く方向で調整を進めており、閣僚協議に向けた事前調整を数日内に本格化させる予定だった。

しかし、今回の米国の発表をうけ、中止になる可能性が強い。

仮に閣僚級協議を開催しても、中国としては、LNGや大豆の輸入拡大で対米黒字を減らすことは出来るが、Trump の要求する「Made In China 2025計画」の取り下げは中国の将来のためにも、メンツからも応じる筈がなく、問題の解決は難しい。


トランプ大統領はツイッターへの投稿で、中国が、11月6日の米中間選挙を控え、貿易を通じて大統領の支持基盤の弱体化を狙っているとの的外れの非難を行った。これら労働者層をターゲットとするなら「われわれは中国に対し、重大な経済的報復を迅速に実施する」としている。

China has openly stated that they are actively trying to impact and change our election by attacking our farmers, ranchers and industrial workers because of their loyalty to me.
What China does not understand is that these people are great patriots and fully understand that.....

.....China has been taking advantage of the United States on Trade for many years.
They also know that I am the one that knows how to stop it.
There will be great and fast economic retaliation against China if our farmers, ranchers and/or industrial workers are targeted!



既報の通り、ExxonMobilは9月5日、広東省政府との間で、恵州大亜湾石油化学工業団地に石油化学コンプレックスを建設する協議を進める基本協力契約に調印したと発表した。
年産120万トンのエチレン(原料は多様化)、2基の機能性ポリエチレン系列、2基の機能性ポリプロピレン系列を含む。2023年の操業開始を目指す。

LNGの受入基地も建設する。

2018/9/10  ExxonMobil、中国で新しい石化コンプレックス、LNG受入基地も 


中国では他に、SABICとBASFが新しい石化コンプレックスの検討を行っている。また、中国のSinopecも新しいエチレンコンプレックスを建設中である。

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(SABIC)

ExxonMobilについて報じた直後の9月11日、サウジのSABICは福建省との間で石油化学コンプレックスの建設について覚書を締結した。

詳細は一切触れず、事業の多様化と世界の石化市場でのトップの地位を強化するという戦略に沿ったものとしている。


SABICは天津にSinopecとの50/50JVの
SINOPEC SABIC Tianjin Petrochemical を持つ。エチレンは年産100万トン。

2009/7/13 中国、シノペック天津石化計画へのSABICの参加を承認

2011/5/26 SABICとSinopec、天津でポリカーボネート生産 

SABICはまた、2016年5月30日に、神華寧夏煤業集団 (Shenhua Ningxia Coal Industry Group) との間で中国で石油化学コンプレックスを建設する協定書にサインしたと発表した。

2016/6/4 SABIC、神華寧夏煤業集団と中国での石油化学(石炭化学)計画で合意

同じサウジのSaudi Aramco は、福建省泉州にExxonMobil 及び福建煉油(SINOPECと福建省政府の50/50JV)とのJVのFujian Refining & Petrochemical を持っている。
エチレンは当初80万トンであったが、その後増設し、110万トンとなっている。

2006/4/7 中国のエチレン合弁会社ー2

そのSaudi Aramco はSABICの経営権取得に向け、動いている。その場合、Saudi Aramco の石化部門とSABIC が統合する可能性がある。

2018/8/9 Saudi Aramco、SABICの株式購入と上場問題

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(BASF)

BASFは広東省に大規模化学コンプレックス( "Verbund")を建設する可能性を調査しており、本年7月9日ベルリンで、広東省政府との間で非拘束の覚書を締結した。Merkel 首相と訪独中の李克強首相が調印式に参列した。

第一段階には、年産100万トンのエチレンを含む。第一段階は遅くとも2026年までに完成、全体は2030年頃に完成する。投資額は100億ドルとみている。BASFが単独で事業を行う。

完成すれば、ドイツのLudwigshafen、ベルギーのAntwerp に次ぐ3番目に大きいVerbundとなる。


BASFは既に、江蘇省南京市のSINOPEC揚子石化に隣接し、BASF 50%/SINOPEC 50%のJVのBASF-YPC Company を持っている。

2005年5月にエチレン年産60万トンでスタートしたが、2005年に74万トンに増設している。

2006/4/6 中国のエチレン合弁会社ー1

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(Sinopec)

Fujian Petrochemical Company Limited (Sinopecと福建省政府の50/50JV)は台湾の投資会社Dynamic Ever Investments Ltd (旭騰投資有限公司)との50/50出資で古雷石化(Gulei Petrochemical )を設立し、福建省漳州市の古雷港経済開発区にエチレンコンプレックスを建設中である。

エチレンは年産80万トンで、多くの誘導品プラントを建設する。2020年半ばの生産開始を目指している。
Badger技術の年産60万トンのSMも2020年に操業を開始する。

古雷港経済開発区には台湾のDragon Aromatics のパラキシレン工場がある。

同工場は2015年4月に大爆発を起こし、現在まで休止中である。 社名を福建福海創(Fuhaichuang)石油化工と改称し、間もなく操業再開とされている

2015/4/7 福建省のパラキシレン工場で爆発事故 

SinopecDragon Aromatics を買収する動きがあったが、実現していない。

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今年のIg Nobel Prize 贈呈式が9月13日、米ハーバード大で開催された。

昭和伊南総合病院(長野県駒ケ根市)の堀内朗医師が、医学教育賞を受けた。日本人の受賞は12年連続。

受賞理由は「座位で行う大腸内視鏡検査―自ら試してわかった教訓」。

大腸がん検診などで受ける内視鏡検査は、通常は横に寝た状態で肛門から内視鏡を体内に入れていく が、同氏は、痛みや不快感を減らす方法を探していて、座った姿勢のままで受ける方法を思いついた。
椅子に腰掛けて少し股を開き、口径の小さな内視鏡を自分の肛門にゆっくり入れてみたところ、「驚くほど容易にできた」という。計4回試し、内視鏡の入れにくさと、感じる痛みや不快感がそのたびに異なることも発見した。

同病院では、日帰りで手軽に検査を受けてもらおうと覚めやすい鎮静剤を用いるなど工夫し、検査数は地方の病院としては異例の年1万5千人に達し、全国的に注目されている。ただ、座った姿勢で医師が内視鏡を入れる検査は、恥ずかしがって受けたがらない人が多く、採用していないという。

他の受賞は以下の通り。

医学賞 "Validation of a Functional Pyelocalyceal Renal Model for the Evaluation of Renal Calculi Passage While Riding a Roller Coaster"

腎臓結石を取り除く方法:ローラーコースターの後ろの席に乗る。

3Dプリンターでつくった腎臓模型に尿と偽物の石を入れ、Big Thunder Mountain Railroad などに60回乗ってテスト。
後ろの席では64%が取れ、前の席では17%だった。

人類学賞 "Spontaneous Cross-Species Imitation in Interaction Between Chimpanzees and Zoo Visitors"

動物は真似をしないとされてきたが、動物園での観察で、チンパンジーは、人間がチンパンジーの真似をするのと同じように、多く、又うまく、人間の真似をすることが判明。

化学賞 "Human Saliva as a Cleaning Agent for Dirty Surfaces"

人間の唾で汚れた表面を拭くと、金メッキした表面では他のクリーナーよりも綺麗に拭ける。その原因となる成分を発見、洗剤用合成唾の開発に道。

医学教育賞 "Colonoscopy in the Sitting Position: Lessons Learned From Self-Colonoscopy"

上記

文学賞 "Life Is Too Short to RTFM: How Users Relate to Documentation and Excess Features in Consumer Products"

複雑な商品を使うほとんどの人はマニュアルを読まない。人生は短く、マニュアルを読んでいる暇はない。
誰がRTFM (Read the fine manual)かどうかは、企業が将来もっと良いマニュアルをつくるのに役立つが、それもほとんどの人が読まない。

栄養学 "Assessing the Calorific Significance of Episodes of Human Cannibalism in the Paleolithic"

人肉は他のほとんどの肉よりも著しく低カロリーである。

平和賞 "Shouting and Cursing While Driving: Frequency, Reasons, Perceived Risk and Punishment"

自動車の運転中に叫んだり罵ったりする頻度、背後のストレスファクター、交通安全への影響の測定(大事故発生率が高い)

生殖医学賞 "Nocturnal Penile Tumescence Monitoring With Stamps"「切手による夜間陰茎勃起現象の調査」

勃起不能は精神的なものと、他の病気(糖尿病、りんぱ腫、動脈硬化など)によるものがある。
簡単に見分けるには、繋がった切手で輪をつくってペニスに巻いて寝て、朝になって切手がミシン目で切れたかどうかでチェックする。

経済学賞 "Righting a Wrong: Retaliation on a Voodoo Doll Symbolizing an Abusive Supervisor Restores Justice"

パワハラする上役に、身代わりのブードゥー教の人形に針を刺して復讐。

生物学賞 "The Scent of the Fly"

ワインの専門家はグラス1杯のワインに1匹のハエが入っていることがにおいで分かる。


過去のイグ・ノーベル賞については、下記を参照。

2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞
2007/10/8 2007年イグ・ノーベル賞
2008/10/4 2008年イグ・ノーベル賞
2009/10/3 2009年イグ・ノーベル賞
2010/10/7 2010年ノーベル化学賞とイグ・ノーベル賞
2011/10/1  2011年度イグノーベル賞
2012/9/25 2012年 Ig Nobel 賞に日本人の「スピーチジャマー」
2013/9/16 2013年 Ig Nobel 賞、日本の2チームが受賞
2014/9/20 2014年イグ・ノーベル賞
2015/9/22 2015年 イグノーベル賞
2016/9/24  2016年 イグノーベル賞
2017/9/15 2017年 イグノーベル賞


過去の日本人の受賞リストは 
2017年 イグノーベル賞 の末尾にあります。

Momentive Performance Materials (MPM Holdings Inc.)は9月13日、韓国のグループとの間で同社を31億ドル(負債、年金以外の退職後給付込み)で売却する契約を締結したと発表した。

売却先と出資比率は次の通り。

SJL Partners(Private Equity Fund 運用会社)50%
KCC Corporation(
建築資材、シリコーンメーカー)45%
Wonik QnC Corp 半導体原料・設備メーカー) 5%

Momentive Performance Materials は元GE Advanced Materials で、シリコーン、石英、セラミックのメーカー。

GEは2006年9月、シリコーン事業のGE Advanced MaterialsをApollo Management, L.P. に38億ドルで売却すると発表した。

GEは1971年に東芝と設立したGE Toshiba Silicones、1998年にBayerと設立したGE Bayer Silicones の2つのJVを持つが、両社からJV持分を買い取ってGE 100%とした上で、本体とともにApollo に売却する。

2006年12月、GE Advanced Materials は Momentive Performance Materials となった。

2006/9/21 GE、シリコーン事業を売却

なお、Momentiveは2014年4月に資金繰りに困り、Chapter 11を申請した。(同年10月に約30億ドルの債務免除を受け、Chapter 11 から離脱した。)

2014/4/19 シリコーン事業のMomentive Performance Materials、Chapter 11 申請

同社は75年の歴史を持ち、世界で24の生産拠点、12の研究開発センターを持つ。Dow Corning、Wacker Chemie とともに世界3大シリコーン・石英・セラミック企業に挙げられる。

今回、世界規模のシリコーン事業を目指す KCCと、石英・セラミック事業の買収機会を求めていたWonik QnC がSJL Partnersを通じて手を組んだ。Goldman Sachsが売却主幹事を務めた。

買収により、KCCは一気に基本技術を保有する世界2位のシリコーンメーカーに躍進、韓国最大手の石英・セラミックメーカーのWonik QnC は世界1位に跳躍する。

KCCは、現代グループ創業者の鄭周永の一番下の弟の鄭相永が、兄の留学指示を無視し、1958年に金剛スレート工業を設立した。
ペイントと建築材分野で業界最高であったが、創業者が「幅広い需要分野を持つシリコーンがKCCを生き残らす」 と考え、これに注力した。10年余りの研究の末に独自開発に成功し、2004年に年間3万トンを生産、その後拡大した。

  現在の扱い製品は次の通り:

建材:板ガラスをはじめグラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材、石膏ボード、塩ビサッシや床材、化粧シートなど
塗料:建築用、工業用、船舶用、自動車用の塗料
素材:各種シリコーン製品、アルミナセラミック製品、エポキシ系の半導体封止材、その他自動車や電子電機向けの素材

Wonik QnC は、半導体、情報通信、金融部門を主力事業とするWonik(円益グループの一員で、半導体部門で石英事業を担当する。

半導体部門は、 革新的な技術と力量を持った韓国半導体産業の先頭走者と謳い、 Wonik QnCの他に、半導体前工程のWonik IPS、高純度特殊ガスのWonik Materials、高温熱処理及びCVD装備のWonik Tera Semicaon、Gas C-PuriflerのWonik Holdingsがある。

SJL Partners はPrivate Equity Fund 運用会社で、韓国CVC Capital の会長だったSteve Suk Jung Limが設立し、会長をしている。

主な投資先には、韓国のバイオシミラー医薬品メーカーのCelltrion Holdings、韓国のファッションブランドや靴のVigevanoがある。

中国財政省は9月5日、财税〔2018〕93号で、輸出企業への輸出増価税リベートを拡大すると発表した。

米国との貿易戦争で輸出企業が打撃を受けており経営を下支えする狙いがある。エレクトロケミカル製品や文化関係等としているが、金属や半導体関連など397品目を対象に還付額を上げる。

具体的には、マルチエレメント集積回路、非電磁干渉フィルター、本、新聞などの輸出税還付率は16%に引き上げる。

竹製彫刻、木製扇子などは13%に引き上げられる。

バサルト繊維とその製品、安全ピン、その他の製品は9%に引き上げる。

実施は9月15日で、製品別の還付率引き上げの詳細は、 提高出口退税率的产品清单.xlsx を参照。

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輸出増値税リベートとは輸出製品の購入の際の増値税、輸出製品の製造のための原料やサービスの購入時の増値税を払い戻すもの。

中国では財、サービスの販売時と輸入時には原則16%の増値税(付加価値税)がかかる。(下記参照)

製品販売者は製品の販売にかかわる増値税とその購入又は製造にかかわる原料サービスの購入の代価に含まれる増値税との差額を納付する。(日本の消費税の仕組みと同じ)

製品の輸出に関しては増値税は免除される。その製品の購入又は製造にかかわる原料サービスの購入の代価に含まれる増値税に関しては、(日本では全額控除されるが)、中国では政策的にその全部又は一部がリベートとして払い戻される。

リベート率13%とは購入代価に含まれる16%(一般品)の増値税のうち13%相当分を払い戻すことになる。残りは輸出業者の負担となる。

リベート率16%のものは、購入代価に含まれる増価税を全額払い戻すもの。

中国では、輸出抑制や輸出促進などの政策上、特定の製品について輸出増値税リベートの変更が時々行われる。

2006/9/26   中国、輸出増値税リベート変更

2007/6/28 中国、輸出抑制のため輸出増値税還付率を引き下げ

2008/10/27 中国、一部商品で輸出増値税の還付率引き上げ

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なお、増価税率はこれまで17%であった。

中国は、2018年3月28日の国務院常務会議で増値税(付加価値税)制度改革を深化させる措置を決め、5月1日から増値税税率の軽減と小規模納税者基準の緩和が決定された。

製造業は17%から16%に、運輸・交通や建築は11%から10%にそれぞれ下げた。
増値税の税率は17、11、6%の3段階から16、10、3%になった。

課税対象

現行

改正後

製造業

貨物の販売、貨物の輸入 (下記の軽減税率適用品以外)

役務 (加工、修理整備役務)

有形動産リースサービス

17%

16%

運輸・交通・建築


特例

交通運輸、郵政、基礎電信、建設、不動産リースのサービス、不動産の販売、土地使用権の譲渡

下記の貨物の販売または輸入

穀物等農産品・食用植物由、食用塩

水道・暖房ガス・冷房ガス・熱水・石炭ガス・石油液化ガス・天然ガス・ジメチルエーテル・メタンガス・居住用石炭製品

図書・新聞・雑誌・音像製品・電子出版物

飼料・化学肥料・農薬・農機・農業用フィルム

その他

11%

10%

その他

上記以外のサービスの販売

無形資産の販売

6%

6%

輸出

貨物の輸出

0%

0%

2018/5/12  中国、付加価値税率を引き下げ、ハイテク産業向け減税も 

千代田化工建設は9月11日、米国 Kiewit Energy Group と共同で、米国メキシコ湾岸で計画されている大型エチレンコンプレックス建設計画のうち、心臓部となるエチレン生産プラントを一括受注したと発表した。

受注したのは、ExxonMobilとSABICの新しいJVがテキサス州San Patricio County建設するエチレンコンプレックスで、年産180万トンのエタンクラッカーエチレングリコール2基のPEプラントを建設する。

この計画のうち、千代田化工とKiwitは、エチレン生産プラントの設計・調達・建設工事(EPC)及び、プラントモジュールの組立 ・運搬役務を受注した。2022年第1四半期までに完了予定。

付記 ExxonMobilとSABICは2019年6月13日、建設を実施する決定を行ったと発表した。千代田化工は6月25日、着工支持を受けたと発表した。

付記 三菱重工は2019年6月21日、三菱重工エンジニアリングが米国三菱重工業および米国大手建設会社のZachry Groupと共同で、年産130万トンの大規模ポリエチレンプラントを受注したと発表した。

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2016年7月25日に石油化学JV構想が発表され、2017年4月19日に立地を発表、2018年5月1日にJVが設立された。Gulf Coast Growth Venturesと呼ばれている。

現在、環境許認可の取得中。環境への配慮を強調している。

2016/7/28 SABIC とExxon Mobil、米国 Gulf Coast で石油化学JV構想


千代田化工は、これまで大型石油化学プラントのEPC業務を世界中で遂行してきた実績及び米国におけるEPC業務の経験を生かして、同じく豊富な実績に加えて米国で高い評価を有するKiewit と蜜に連携しながら、本案件を成功裏に完工するべく、鋭意取り組 むとしている。

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パートナーのKiewit Energy Group は現在では従業員所有企業として米国、カナダおよび諸外国で事業展開をしている。

交通、水処理、大型建設工事、発電、石油・ガス・化学工業、ビル建設および鉱業等における建設および設計業務を得意とする。

2017年の売上高は87億ドル。

日本企業も多くのプロジェクトを同社と共同で行っている。

2013年4月 IHI:Dominion 社のCove Point LNG 計画(年産525万トン)のEPC契約

2017年7月 日揮:米国西海岸のJordan Cove LNGプラント建設プロジェクト

米Altaba Inc.(旧 Yahoo! Inc.)は9月10日、保有する日本のヤフー株を1株あたり354円ですべて売却すると発表した。ヤフーの10日終値371円を約5%下回る。
株式の譲渡日は9月14日になる予定としている。


Altaba はヤフー株の26.82%の13億6353万株を保有しており、ソフトバンクグループに次ぐ第2位の株主。

2018年3月31日付でヤフーの35.6%を保有していた。
ソフトバンクグループは36.4%、ソフトバンク子会社のSBBM (旧称ソフトバンク・ブロードメディア)が6.6% 保有。

Altabaは2018年2月にヤフー株の売却方針を明らかにした。

大量のAltaba持株が市場に出ると株価が暴落する。報道を受け、株価は低迷した。

このため、ソフトバンクとヤフーは次の処置を行った。

① ソフトバンクは7月10日、ヤフー株式のTOBを実施すると発表した。Altabaが保有する約35%のうち、6億1388万株(10.78%相当)を約2210億円で買い付ける。 買い付け価格は1株360円。

②ヤフーが6億1111万株(10.7%)の自社株買いを実施し、ソフトバンクグループの保有株を取得する。買い付け価格は同じ360円。

ソフトバンクグループの持ち株はAltaba持株の買収で10.78%増え、ヤフーの自社株買い(ヤフーへの売却)で10.73%減り、
42.97%となる。

Altabaの持ち株はソフトバンクへの売却で10.78%減り、ヤフーの自社株買いで母数が減ることで2.89%増え、26.82%となる

持株比率の推移は次の通り。

2018/3/31 2018/6/15 2018/7/10 2018/8/8 2018/8/31
共同保有
解除
Altaba持株
買収
自社株
買い
ソフトバンク 36.38 36.37 36.37 +17.33 53.70 -10.73 42.97
SBBM 6.56 6.56 6.56 -6.56 0 0
(小計) (42.94) (42.93) (42.93) (+10.78) (53.70) (-10.73) (42.97)
Altaba 35.57 34.77 34.71 -10.78 23.93 +2.89 26.82
合計 78.51 77.69 (77.64) (0) (77.63) (-7.84) (69.79)


ソフトバンクグループとAltabaはこれまで、先買権を付与する合意があり、ヤフー株の共同保有者となっていた。
この合意が解消されたため、2018/7/10以降は共同保有者ではなくなった。


今回、Altabaは当初約7億5000万株を売却して約25億ドルを調達する計画だったが、保有する13億6千万株の全株売却に規模を拡大した。売却額は総額で約43億4千万ドル(約4830億円)となる。
売却で得た資金は自社株買いなどに利用する。


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1994年、スタンフォード大学の楊致遠(Jerry Yang)とDavid Filo によってWeb Directory が始められた。

1995年3月1日、カリフォルニア州に Yahoo! Inc. を共同設立し、事業を開始した。

直後の1995年11月にソフトバンクと同社が買収したZiff-Davis Publishing Co.が200万ドルを出資し、株式の約5%を取得した。(NASDAQでの株式公開は1996年4月である。)

その後1996年1月に、ソフトバンクとYahoo は日本でインターネットビジネスの本格的展開を図るため、ヤフー株式会社を設立した。

資本金は2億円で、ソフトバンクが60%、Yahooが40%であった。

米国のYahooは2008年ころから経営が悪化、従業員削減を繰返して行い、CEOも相次いで交代した。企業買収もしくは売却の危機にさらされ続けた。

Microsoft が買収を試み、2005年、2006年、および2007年に合併交渉を行った。だがYahoo側が難色を示し実現しなかった。

2008年2月1日にMicrosoftは現金と株式の446億ドルでの一方的な買収を申し入れ、それは後に敵対的買収をめぐる攻防になったが、最終的にMicrosoftは撤退した。
Microsoftによる買収に賛成する株主(Carl Icahnなど)が会社側の決定を不満とし、争いになった。

2017年に、ポータルサイトなど中核のネット事業を通信大手で、AOLの運営を行う Verizon Communicationsに約48億ドルで売却し、社名をAltaba に変更した。

事業を売却した結果、日本のヤフーや中国の電子商取引大手Alibaba(阿里巴巴集団)などの株を保有する投資会社になっている。

Freeport LNG は9月6日、住友商事の米国子会社との間で年間220万トン、20年間のLNG供給契約を締結したと発表した。

契約は、テキサス州Freeport の近くのQuintana Islandで建設中の第4系列LNGプラント(年産500万トン)が商業生産を開始する2023年にスタートする予定。

Quintana Islandでは1~3系列(それぞれ年産500万トン)が建設中で、第1系列は2019年上半期に生産を開始する。

Freeport LNGでは、第4系列の運営には最低350万トンの契約が必要だが、これが重要な一歩になるとしている。

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Freeport LNG の建設中の3系列は、能力1500万トンで、日量2.2 Bcf の天然ガスを液化する。

同社は1~3系列について、2011年に米エネルギー省からFTA締結国向け輸出の承認を受け、2013年5月に日本などFTA非締結国への輸出の承認を初めて受けた。

第4系列については2018年3月にFTA非締結国向け輸出の承認を受けた。

これまでに下記の輸出契約を締結している。

Freeport LNG

株主:
Michael Smith
Zachry
Dow(輸出には不参加)
大阪ガス

Freeport LNG Terminal
(Quintana Island, TX)
承認:2013/5(FTA締結国向けは 2011/2)
期間:20年間
液化開始:2018年(追加分2019年)
輸出契約:
 

大阪ガス

  220万トン
  中部電力   220万トン
  BP Energy   440万トン
  東芝   220万トン
SK E&S LNG

220万トン

Trafigura

50万トン

  再計  

1370万トン


2013/5/20 米エネルギー省、日本へのLNG輸出を許可

このうち、東芝の220万トンについては、これを武器に日本の電力会社などに火力発電設備を売り込もうとしたとされる。しかし、現時点でも販売先は全く決まっておらず、固定費保証契約のため、同社では過去に最大1兆円の損失の恐れがあるとした。

8月に入り、東芝がこれを売却する方針を固めた。入札手続きを始めており、海外のエネルギー関連企業など10社近くが関心を示しているという。


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住友商事と東京ガスは2014年2月、Dominion 社が米国メリーランド州で実施する Cove Point LNGプロジェクト(液化能力 年500万トン)における天然ガス液化加工委託およびLNG販売を目的に、共同事業会社 ST Cove Point LLCを設立した。




住友商事の100%子会社であるPacific Summit Energyを通じて米国産天然ガスを調達し、Dominion Cove Point LNG が液化加工した年間約230万トン分のLNGを輸出するプロジェクト。
2018年4月に商業運転を開始した。

このうち、東京ガスは年140万トンのLNGを輸入(英のCentricaとスワップ)、住友商事は残り90万トンのうち、80万トンを関西電力に販売する。

2016/11/22 東京ガス、英のCentrica とLNGをスワップ 




Trump 政権が近く実施する予定の年2千億ドル相当の中国製品に対する第3弾の追加関税の対象品目に多くのApple製品が含まれていることが、 同社が9月5日に米通商代表部(USTR)に宛てた文書で明らかになった。

主力製品で同社の売り上げ2290億ドルの2/3を占める iPhoneや、売上高192億ドルのiPad、売上高258億ドルのMac computerは対象外だが、Appleの腕時計型端末Apple Watch や無線イヤホンAirPod headphone、人工知能(AI)を備えたHomePod smart speaker、キイボードやマウスのない低価格パソコンMacMini、 タブレット端末の入力用ペン Apple Pencil、更には充電器やアダプター、iPhone や iPadの革製のカバーなどが含まれる。

なお、Trump大統領は9月7日、1~3弾の2500億ドルの残りの2670億ドルにも追加課税する用意があると述べた。

その場合には当然、今回免除となる iPhoneや、iPad、Mac computerも対象となる。

AppleはUSTRへの文書で「追加関税により、結果として米国の経済成長や競争力が押し下げられ、米消費者向けの販売価格の上昇につながる」との懸念を示し、 「関税は米消費者への課税となり、顧客の日常生活に欠かすことができなくなっているApple製品のコスト増をもたらす」と説明、「こうした政策を再考し、米国の経済と消費者を従来にも増して力強く健全な状態とさせる、より効果的な他の解決策を見いだす」ことを求めた。

これに対し、Trump大統領はツイッターで、「関税をゼロにする簡単な方法がある。中国ではなく米国で生産せよ」と述べた。

Apple prices may increase because of the massive Tariffs we may be imposing on China - but there is an easy solution where there would be ZERO tax, and indeed a tax incentive.
Make your products in the United States instead of China.
Start building new plants now. Exciting! #MAGA

#MAGA は Make America Great Again! のこと


Ford Motorは8月31日、2019年から予定していた中国のJV製の小型車 Focus Active SUVの米国への輸入を取りやめることを明らかにした。「関税のマイナス影響を避けるため、米国での販売中止を決定した」としている。

Trump政権は中国の知的財産侵害に対する制裁措置の第1弾として、7月に自動車を含む340億ドル相当の輸入品に25%の追加関税をかけた。

同社は Focus sedanをMichigan工場で生産していたが、同工場でRangerの改良モデルとBronco SUVに切り替えるため5月に生産を停止した。

中国からの輸入を計画していたFocus Activeは、販売計画が5万台以下のため、この工場での生産は考えられないとしている。

2017/6/30 Ford、小型車を中国で生産

GMもBuickブランドの多目的スポーツ車(SUV)を中国で生産して米国で販売する が、同社は関税分のコストを自社で負担しつつ、USTRに関税の適用除外を求めている。

これに対し、Trump大統領はツイッターで、「これは初めに過ぎない。米国でつくれば関税はなしだ」とした。続けて、「自動車の中国での関税は25%、米国は2%だ。これはフェアか? こんなのは終わりだ」としている。

"Ford has abruptly killed a plan to sell a Chinese-made small vehicle in the U.S. because of the prospect of higher U.S. Tariffs." CNBC.
This is just the beginning.
This car can now be BUILT IN THE U.S.A. and Ford will pay no tariffs!

If the U.S. sells a car into China, there is a tax of 25%. If China sells a car into the U.S., there is a tax of 2%. (正しくは2.5%)
Does anybody think that is FAIR?
The days of the U.S. being ripped-off by other nations is OVER!


Trump は米国の自動車関税は2.5%と誇るが、実際にはビッグスリーの主力収益源である4輪駆動などスポーツ用多目的車(SUV)は25%である。

米国では自家用自動車は『乗用車(passenger cars)』か『ライトトラック(light trucks)』に分類される。
『乗用車』はセダン、ステーションワゴン、クーペ。『ライトトラック』にはピックアップトラック、SUV、バン、ミニバンが含まれる。

自動車全体では、ライトトラックの方が乗用車より売上高は大きい。



なお、Trump大統領の次の標的は日本とされている。日本の対米貿易黒字を問題にし、特に自動車と農業を問題視している。

自動車の輸入関税だけをとると、米国の税率は2.5%であるのに対し、日本は0%であり、前記のツイッターでの主張は当て嵌まらない。

但し、現実に輸入がほとんどないのは非関税障壁であるとの主張がある。(排気量により税額が大きく異なる自動車税はその一つ)


ExxonMobilは9月5日、広東省政府との間で、恵州大亜湾石油化学工業団地に石油化学コンプレックスを建設する協議を進める基本協力契約に調印したと発表した。中国での化学品に対する需要の伸びに対応する。

恵州大亜湾石油化学工業団地には中海シェル石油化学(CNOOC and Shell Petrochemicals Company Limited)の石化コンビナートがある。

2006/4/7 中国のエチレン合弁会社ー2

計画では、年産120万トンのエチレン(原料は多様化)、2基の機能性ポリエチレン系列、2基の機能性ポリプロピレン系列を含む。2023年の操業開始を目指す。

基本契約では、ExxonMobilがLNGの供給を含めて参加する意向の恵州LNG受入基地の建設に省政府が協力することも確認している。(本件については詳細を明らかにしていない。)

エチレンと誘導品で最先端の製造技術を使用し、中国の石油化学政策(自給自足の多様化した原料ソース、燃料と価格品のバランス是正、最先端の競争力ある技術)の達成に向け支援するものとなるとしている。

ExxonMobilは既に、福建省泉州に福建煉油(SINOPECと福建省政府の50/50JV)とSaudi Aramco との2つのJVを持つ。

①Fujian Refining & Petrochemical Company Limited 

福建煉油の製油所(4百万トン/年)を12百万トン/年に拡張し、石油化学コンプレックスを新設

出資:ExxonMobil China Petroleum and Petrochemical Company Limited 25%
  
Saudi Aramco Sino Company Limited  25% 
  
福建煉油Fujian Petrochemical Company)50%

製品: エチレン 80万トン→ 110万トン
PE 80万トン→96万トン
PP 40万トン→55万トン
芳香族 100万トン
パラキシレン 70万トン

②Sinopec SenMei (Fujian) Petroleum Company Limited.  ガソリン販売

 出資:Sinopec  55%
     ExxonMobil China Petroleum and Petrochemical Company Limited 22.5%
     Saudi Aramco Sino Company Limited 22.5%

2006/4/7 中国のエチレン合弁会社ー2


 

ExxonMobilでは、アジアでの需要の伸びに対応するため、他の石化計画も検討している。

同社では、アジア太平洋地区と北米での石油化学能力が40%程度伸びるとみている。13の新しい設備が加わるとみており、そのなかには同社のメキシコ湾岸拡張計画の一部である2系列のエタンクラッカーが含まれる。今回の計画はこの一環である。

同社は最近、テキサス州のBaytownで年産150万トンのエタンクラッカーの操業を開始した。

2014/6/20 ExxonMobil もエチレンとポリエチレン工場の建設開始 

同社とSABICは新しいJVを設立し、テキサス州で年産180万トンのエタンクラッカーを建設する。エチレングリコール、2基のPEプラントも建設する。

2016/7/28 SABIC とExxon Mobil、米国 Gulf Coast で石油化学JV構想 付記


スイス製薬大手のNovartisは9月6日、後発医薬品子会社Sandozの米国事業の一部(皮膚科領域と錠剤などの経口投与剤)を9億ドルでインドの後発薬大手、Aurobindo Pharma USA Inc.に売却すると発表した。
他に一定の条件を満たした場合、1億ドルを受け取る (potential earn-outs)。


米国で長期的に利益ある成長を達成するため、価格競争の激しい分野を切り離し、後発薬でも複雑なもの、付加価値の高いもの、バイオシミラーなどに集中する。

売却するのは約300種類の製品と開発中のもので、皮膚科開発センター及び North Carolina州Wilson、New York州 Hicksville 及びMelvilleの製造工場を含む。売却製品の2018年上半期の売上高は6億ドル。

Aurobindo Pharmaは、1986年に設立され、1988年に半合成ペニシリンの製造から生産活動を開始した。 1995年にはムンバイ証券取引所に上場。

インド国内、米国、ブラジルに、中間体、原薬、製剤併せ14の製造拠点を構え、グローバルな生産、マーケティングを展開している。各種抗生物質、抗ウイルス、中枢神経系、循環器系、消化器系等の分野の200品目以上の原薬、それらを用いた300品目以上の固形、注射製剤を持ち、売上高は10億米ドル以上。

ーーー

Novartisは1997年にSandoz とCiba Geigyが統合して設立された。

Sandozの化学品は1995年にClariantとして、Ciba Geigyの化学品は1997年にCiba Specialtyとして、それぞれ独立している。
種子事業は2000年にAstraZenecaの農薬部門から独立したSyngentaに売却した。

このほか、2007年に医療用栄養食品のMedical Nutrition とベビーフードのGerberをNestleに売却している。
逆に、NestleからEye care 製品(医薬品、手術製品、コンタクトレンズ、OTC製品)のAlconを買収した。(2008年に25%、2010年に52%で、合計77%)

 

同社の部門別業績は下記の通り。(百万米ドル)

2013年

2017年

  Sales Operating
Income
Sales Operating
Income
Core
Operating
Income



Innovative Medicines 32,214 9,376 33,025 7,782 10,330
Alcon (Eye care) 10,496 1,232 6,024 -190 857

2019年分離

Sandoz (Generics)
 うち今回売却分
9,159 1,028 10,060
(1,200)
1,368 2,080

Vaccines and Diagnostics 1,987 -165 - - -
Consumer Health 4,064 178 - - -
Others - -739 -331 -417
Total 57,920 10,910 49,109 8,629 12,850

2014/4/25 Novartis、GSKとの取引等で事業再編 及び同社決算発表

なお、Novartisは2018年6月29日、眼科分野の子会社Alconをグループから分離すると発表した。
2019年前半にスイス証券取引所とニューヨーク証券取引所に上場させる。時価総額は250億ドル以上とみられている。

2018/7/5 Novartis、眼科分野の子会社 Alcon を分離・上場


中国とアフリカ諸国が関係強化について話し合う中国アフリカ協力フォーラム(The Forum on China-Africa Cooperation:FOCAC)が9月3日~4日、北京で開かれた。2000年から3年ごとに中国とアフリカで交互に開催されている。


4日には、『より緊密な中国アフリカ運命共同体の構築に関する北京宣言』を発表し、2019年から2021までの『中国アフリカ協力フォーラム―北京行動計画』を採択した。

今回はアフリカで唯一、中国と国交のないKingdom of eSwatini(旧称 スワジランド、本年国名を改めた)を除く53カ国が代表を派遣し、うち30近い国が首脳級を送り込んだ。

習近平は開会挨拶で「いま新しい世界が開けた。中国アフリカの団結を誰も破壊できない!中国アフリカは運命共同体だ!」と述べた。

習主席はアフリカへの支援として無償援助150億ドルを含む総額600億ドルの拠出を表明した。これまでの借款を2018末までに償還できない一部の国に対し、債務を免除する方針も示した。

さらに習首席は安全保障面にも支援を広げていく考えを表明した。「銃声なきアフリカ」の実現を目指すとし、アフリカ諸国が安保上の課題を自主的に解決するために「治安維持能力の向上を支援する」と語った。

中国のアフリカ進出には、資源の確保や中国製品の輸出先の拡大を目的とする「新植民地主義」との批判がつきまとう。このため、援助額はこれまで通りに据え置いた上で、気候変動 対策を強調するなど、援助の質の向上を強調。さらには現地の雇用を生む工業製品などの輸入を増やす考えを示した。

アフリカ側も中国の巨大経済圏構想「一帯一路」がアフリカ地域の一体化を加速すると評価した。

ーーー

中国とモーリシャスは9月2日、両国間の自由貿易協定(FTA)の交渉を終了し、「中国・モーリシャス自由貿易協定の交渉終了に関する了解覚書」に調印した。

今後、最終的な調印に向けて準備を進める。これは中国とアフリカ諸国の間で締結される初のFTAになる。

2017年12月に交渉をスタートし、4回の交渉と交渉の合間に行われた数々の折衝を経て、すべての内容について包括的合意に達した。

「全面的、高水準、互恵」の目標を達成し、貨物貿易、サービス貿易、投資、経済協力などさまざまな分野をカバーするものとなったとしている。

人民網は、「両国の二国間経済貿易関係の深化に有力な制度的保障を与えるだけでなく、中国とアフリカの全面的な戦略的パートナーシップに新しい形式と新しい内容を盛り込み、中国とアフリカ諸国がより緊密な利益共同体と運命共同体を構築することを推進し、『一帯一路』構想とアフリカ経済一体化プロセスとの連携を促進することになる」と している。

NEDOと人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem:Japan Technological Research Association of Artificial Photosynthetic Chemical Process )は9月4日、東京大学、信州大学とともに、世界で初めて、可視光領域で水を分解する窒化タンタル光触媒の開発に成功したと発表した。
可視光領域の波長600nm近辺は太陽光で最も強度が高い領域のため、効率的なエネルギー活用が期待できる。


窒化タンタルは、次世代の光触媒材料として2000年頃から有望視されていたが、実際に光触媒を製造して水分解を確認できたのはこれが世界で初めての事例となる。


NEDOとARPChemは、太陽光のエネルギーで水から生成した水素と、工場などから排出されるCO2を合成して、プラスチック原料などの化学品を製造する人工光合成の研究開発を進めている。

今回の成果は最初の光触媒の開発である。光触媒開発については、2021年度末に最終目標の太陽エネルギー変換効率10%を達成すべく、研究開発を進めている。

NEDOとARPChemは本年8月28日に、太陽電池材料として知られるCu(In,Ga)Se2(略称CIGS)ベースとした光触媒で、非単結晶光触媒の中で世界最高の水素生成エネルギー変換効率12.5%を達成したと発表した。また、従来の酸素生成光触媒(BiVO4)を組み合わせた2段型セルによる水の全分解反応を調査し、太陽光エネルギー変換効率は3.7%を記録した。
非単結晶なので、大型化(メートル級)に適した材料系になる。

今回、NEDOと人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は、東京大学、信州大学とともに、世界で初めて、可視光を吸収して水を分解する単結晶窒化タンタル(Ta3N5)微粒子光触媒の開発に成功した。

複合酸化物(タンタル酸カリウム、KTaO3)微粒子を従来の1/10以下の短時間で窒化することで、複合酸化物微粒子上に単結晶の窒化タンタル微粒子を直接形成し、さらに水素生成反応を促進する助触媒を担持させた。これにより、窒化物微粒子が高品位化して光励起された電子と正孔を水分解反応に有効利用することが可能となり、今回の窒化物微粒子光触媒の開発につなげられた。

従来の光触媒は、吸収波長が主として紫外光領域(~400nm)に限られるものが多かったが、この光触媒は水中に分散することで、400nmから600nmまでの波長範囲の可視光、および疑似太陽光を吸収して水を分解することができる。また、これを基板に固定化すれば、光触媒パネル反応器に組み込んで利用できる。

600nm近辺は太陽光で最も強度が高い波長域のため、効率的なエネルギー活用が期待できる。


今回開発した光触媒は、従来検討されてきた方法に比べて1/10以下の短時間での製造が可能で、安価なプロセスの実現が期待できる。

今後、窒化タンタル光触媒の合成手法の改良や、酸窒化物(酸化物イオンと窒化物イオンが共存する化合物)や酸硫化物(酸化物イオンと硫化物イオンが共存する化合物)などの異なる材料への展開を通じて水分解用微粒子光触媒の機能改良を進め、太陽光を使って製造する水素と、工場などから排出されるCO2を利用して化学品を製造するプロセスの実現に向けた研究開発の加速につなげる。


なお、NEDOとARPChemは2018年1月19日、東京大学、TOTO、三菱ケミカルとともに、人工光合成システムの社会実装に向けて大面積化・低コスト化を実現する新しい光触媒パネル反応器の開発に成功したと発表している。

開発した反応器は、基板上に光触媒を塗布し形成したシートを用いて、わずか水深1mmで水を安定的に分解可能で、既存の反応器に比べて反応器内の水の量を大幅に低減でき、軽量で安価な材料で製造が可能となる。さらに、1m2サイズの大型の光触媒パネル反応器を試作し、自然太陽光下でも水を水素と酸素に分解できることが確認でき、光触媒パネル反応器を実用化に近づける設計の基本原理を示した画期的な成果であるとしている。

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人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は、CO2と水を原料に太陽エネルギーでプラスチック原料等基幹化学品を製造する革新的触媒の開発やプロセス基盤の確立等に関する技術開発を目的に2012年10月に設立された。

組合員は下記の6企業、1団体。

国際石油開発帝石、住友化学、富士フィルム、三井化学、三菱化学、TOTO、ファインセラミックスセンター

研究開発体制は下図の通り。

スケデュール

2016年度にオレフィン合成プロセス(小型パイロット規模)を確立し、2021年度に光触媒のエネルギー変換効率10%を達成。その後、スケールアップを進め、原料変換を図る。

建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、肺がんや中皮腫などを発症したとして、京都府内の元建設労働者と遺族計27人が、国と建材メーカー14社に計約9億6千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が8月31日、大阪高裁であった。

裁判長は、1審京都地裁判決(2016年1月)に続いて国とメーカーの責任を認め、計約2億9千万の支払いを命じた。

1審では認められなかった「一人親方」と呼ばれる個人事業主に対する国の責任も認めた。労働安全衛生法には「労働現場で生じる健康障害について労働者以外の保護を念頭に置いた規定がある」と指摘。この規定は「一人親方についても安全を図る趣旨」であるとし、一人親方も同法で保護されるべき対象で救済対象だと判断した。

一人親方」への国の責任を認めたのは2018年3月の東京高裁判決(「建設現場で労働者とともに作業に従事した一人親方らは法律上、保護される」とした)に続き、2件目。

他の判決では、一人親方は労働関連法令の「労働者」に含まれないとして責任を認めていない。
但し本件の1審(京都地裁)では、労働安全衛生法の保護対象に含まれないとして救済を否定したものの、一人親方を保護する法律を定めなかった立法府の責任を問うことで解決されるべき問題
とした。

全国で起こされている「建設アスベスト訴訟」で高裁判決は3件目。

国の責任 メーカーの責任 一人親方への責任
東京高裁 2017/10 X  労働関係法令が保護対象とする「労働者」でない。
東京高裁 2018/3 X 因果関係不明 〇 建設現場で労働者とともに作業に従事
大阪高裁 2018/8 〇 労働者以外の保護を念頭に置いた規定

国とメーカー双方に賠償を命じるとともに、一人親方に対する国の責任も認めるという原告側全面勝訴の判決は初めて。今後の同種訴訟に影響を与えそうだ。

これまでの建設石綿訴訟の判決は次の通り。(〇は有罪、Xは無罪、一人親方の〇は補償対象、Xは補償対象外)

  判決 一人
親方
メーカー  
横浜地裁(1陣)
  
2012/5 X X X

原告の請求を全て棄却

「1972年時点で、石綿粉じん曝露により肺がん及び中皮腫を発症するとの医学的知見が確立した」
2006年に至るまでアスベスト建材の使用を全面禁止しなかったこと等について、「著しく合理性を欠く」と言うことまではできない。

   東京高裁 2017/10 X 国とメーカー4社の責任を認めて計約3億7200万円  

1972年ごろまでには石綿が健康被害を及ぼすとの医学的知見が確立していた。
国が1975年に建設作業での石綿吹き付けを原則禁じるなどの対策を講じてから5年たった1980年までに、事業者に対して屋内建設現場で作業する労働者に防じんマスクを着用させる罰則付きの義務化を図らなかった点などを違法と判断。 (1981年1月以降は違法)
義務化が実現した1995年4月までに現場で作業していた本人や遺族計44人への賠償を認めた。

(メーカー)
1975年時点で石綿の危険性などを建材に警告表示する義務があった。
石綿製品のシェアなどから、エーアンドエーマテリアル、ニチアス、エム・エム・ケイ、神島化学工業に賠償責任があるとし、本人や遺族計39人への賠償を認めた。

(一人親方)
労働関係法令が保護対象とする「労働者」には当たらず、国は賠償責任を負わない。

東京地裁
  
2012/12 X X 国に対する請求を一部認容
170人に総額10億6394万円の賠償命令

国は石綿の吹き付け作業では1974年、切断などでは1981年に規制の義務を負っていたが怠り、違法だ。

遅くとも1981年以降
・事業者に防じんマスクの着用を罰則つきで義務づける
・建材に「肺がんなどを生じさせる」と警告表示する
などの対策をとれば、多くの被害を防止できたと結論づけた。

 

この時期以降に屋内で建築作業に従事した労働者に限り、国の賠償責任がある。
 
屋外作業では危険性を容易に認識できたと言えず、零細事業主や個人事業主についても国は責任を負わない。

(メーカー)石綿を含有した建材の製造販売企業に共同不法行為は成立しない。

2012/12/10 建設労働者アスベスト訴訟、国に初の賠償命令

  東京高裁 2018/3 X 一人親方」(被災者ベースで150人ほど)を含む327人に計約22億8140万円を支払うよう国に命じる判決

遅くとも1975年10月(改正特定化学物質障害予防規則施行日)には防じんマスクの着用などを義務付けるべきだった」と指摘した。
1審で明確に示されなかった終期を2004年9月30日(改正労働安全衛生法施行令施行日前日)とした。

「建設現場で労働者とともに作業に従事した一人親方らは法律上、保護される」

メーカーへの請求は、「健康被害との因果関係が立証されていない」などとして、棄却した。

屋外作業に関わっていた原告も救済の対象にならなかった。

2018/3/21 建設石綿訴訟の控訴裁判決、一人親方も救済 

福岡地裁
  
2014/11 X X 国に対する請求を一部認容
36人に総額1億3700万円の賠償命令

建設現場での防じんマスク着用は「被害防止対策としては唯一有効な手段」

国は遅くとも1975年までには石綿被害の危険性を認識できた。
同年から罰則付きでマスク着用を義務づけるべきだった。
危険性を知らせる警告表示について、建材や建設現場などで義務づけるべきだった。

1995年まで国がこうした規制を怠ったのは「違法」

(メーカー)
加害企業の特定が出来ない。
「建材メーカーは製造販売の時期や製品がそれぞれ異なり、加害行為の一体性を一律に認めることはできない」
「42社以外に損害を与える企業がなかったと証明されていない」

(一人親方)
個人事業主で労働基準法が適用される労働者に当たらない。

大阪地裁 2016/1 X X 国の責任を一部認める。
原告14人に計9746万円

国は遅くとも1975年には、石綿吹き付けなどに従事した作業員が石綿関連疾患を患う危険性を認識できた。
国は1975年時点で、事業者に対して労働者に防じんマスクを使用させるべき義務を明示的に定めるべきだった。

(メーカー)被害者が実際に扱った石綿建材を具体的に特定するものではない。

(一人親方)労働関係法令の保護対象ではない

2016/1/27 建設アスベスト訴訟で国が3度目の敗訴

京都地裁 2016/1 X









国に対しては原告15人に総額1億418万円、建材企業9社に対しては原告23人に総額1億1245万円の支払いを命じる

国については、
・吹付作業者に対する規制については1972年10月1日以降、
・建設屋内での石綿切断等作業については1974年1月1日以降、
・屋外での石綿切断等作業については2002年1月1日以降、
国が、アスベスト建材について防じんマスクの着用や集じん機つき電動工具の使用、さらには警告表示を義務づけることの規制を怠ったことの違法性を認めた。

(メーカー)
主要なアスベスト建材企業であるエーアンドエーマテリアルやニチアス、ノザワなど9社について、被害者23名との関係で共同不法行為責任(民法719条2項)を肯定し、同種訴訟で初めて企業の賠償責任を認めた。
国の賠償の対象とされてこなかった「一人親方」ら個人事業主も含まれる。

(一人親方)
労働安全衛生法の保護対象に含まれないとして救済を否定したものの、「(一人親方を)保護する法律を定めなかった立法府の責任を問うことで解決されるべき問題」

2016/2/2 アスベスト訴訟でメーカーに初の賠償命令

大阪高裁 2018/8 国に対し、国の対策は十分ではなく、防塵マスクの着用や警告表示を義務付けなかったことは違法」などとして、原告全員に計約1億8千万円を支払うよう命じた。

(一人親方) 労働安全衛生法には「労働現場で生じる健康障害について労働者以外の保護を念頭に置いた規定がある」と指摘。規定は「一人親方についても安全を図る趣旨」であるとし、一人親方も同法で保護されるべき対象で救済対象だと判断した。

(メーカー)
「建材に含まれる石綿の量や危険性などを具体的に表示すべきで、警告表示義務違反があった」と認定。
20~25%程度のシェアを持つ10社に計約1億1千万円の支払いを命じた。

札幌地裁 2017/2 X X 国に計1億7600万円の賠償を命じた。

国は1979年には建設現場での石綿の危険性を認識していたと指摘した。
1979年以前に就労していた元労働者には賠償を認めず

(メーカー)
発症原因の企業を特定できないとして退けたが、国と建材メーカーによる損害補償制度の創設の必要性を指摘した。

(一人親方)
「一人親方」として働いた期間の国の責任も認めなかった。

横浜地裁(2陣) 2017/10 X

国とメーカー2社 (ニチアスとノザワ) に対し、計約3億円を原告39人に支払うよう命じた。国とメーカーの賠償対象が8人。
国のみが29人。メーカーのみが2人。

国は遅くとも1976年までには防じんマスクなどの使用や作業現場への警告表示を義務付けるべきだった。

(メーカー)
同時期までにアスベストの危険性を警告する義務があったのに怠ったと認定
発症原因だとほぼ特定できた建材メーカー2社に賠償を命じた。

「一人親方」
労働関連法令の「労働者」に含まれない。

 

 


半導体大手のルネサスエレクトロニクス (Renesas Electronics) は米国の半導体メーカー Integrated Device Technology (IDT) を買収する方針を固め最終交渉に入った。
IDTの株式時価総額は約49億ドルだが、買収額は60億ドル規模とみられる。

日経新聞が8月31日に報じ、ルネサスが検討していることを認めた。

付記 ルネサスエレクトロニクスは9月11日、買収を発表した。買収額は約67億ドル。

Integrated Device Technology (IDT) は、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の中核技術である通信用半導体の設計・開発に強みがある。
データセンターや通信インフラ用の半導体を設計・開発する。音や位置などの情報をデジタル化し、高速処理する技術に強みがある。

IDTは2015年12月にドイツの半導体メーカーであるZMDI(Zentrum Mikroelektronik Dresden)の3億700万米ドルの買収を完了させた。

ZDMIはもともと自動車向け半導体やセンサ関連に強みを有している半導体ベンダーで、IDTのコアコンピタンスであるタイミング半導体やパワー半導体、RF半導体などと組み合わせることで、ソリューションとしてのシナジーが期待できるようになるほか、ZDMIが抱えている自動車関連を中心とした顧客は、旧来の顧客と重なるところが少なく、成長性の面でも有利である。

IDTの既存の「Communications Infrastructure」、「Data Center」、「Consumer」に、「Automotive and Industrial」が加わった。

Automotive and Industrial 部門では、両社の技術を統合し、全ての問題を取り扱う。

ーーー

ルネサスエレクトロニクス によれば、同社は企業買収に当たり、①自社の製品や市場との親和性・補完性、②候補企業の市場競争力や財務健全性、③買収後の統合の確度など、様々な視点から候補企業を厳選したうえ、同社と候補企業が一体となって創出する将来の事業及び株主価値を最大化することを企図している。

具体的には、買収検討の候補企業の有する製品群が、同社の注力する事業分野で市場競争力があり、且つ同社の主力とするMCI(Micro Controller Unit:マイクロプロセッサベースの制御IC)やSoC(System on a chip:システムをワンチップに集積)と相互補完でき、将来にわたってシナジー効果を生み出せる可能性があること、そして、買収後直ちにグループの財務体質のさらなる強化に寄与することとしている。

2017年2月に買収が完了したIntersil Corporationについて触れ、一連のインテグレーション作業、すなわち、マネジメント及び組織の一体化、コーポレート及び製品ブランドの整理・統一、世界各国にある営業をはじめとする拠点の統合などをすでに完了させているとしている。

ルネサスは2016年9月に、電源用半導体を中心としたアナログ、ミックスドシグナル半導体を手掛けるIntersilを32億1900万ドルで買収することで合意し、2017年2月に買収が完了した。

2018年1月1日付で、Intersil がルネサスの米販売子会社を統合し、社名を「Renesas Electronics America」に変更した。製品ブランドについても、軍事宇宙航空向け製品など一部を除き、ルネサスブランドに統一した。

ーーー

ルネサスエレクトロニクスは2010年4月に、日立製作所と三菱電機のJVのルネサステクノロジと、NECのNECエレクトロニクスが合併して誕生した。

しかし、過剰な設備や人員を抱え、最終赤字が続いた。

2012年12月に懸案となっていた財務基盤の抜本的強化について、産業革新機構・トヨタ自動車・日産自動車など9社を割当先とする総額1500億円の第三者割当増資を行うことを発表した。2013年9月30日に払込手続きが完了し、産業革新機構が 約69%で筆頭株主となった。

その後、大規模な人員削減や不採算事業の撤退を進めた。

2013年10月、確実に収益をあげる企業体質を目指し、「ルネサスを変革する」として、各種構造改革から成る「変革プラン」を発表、2014年3月期に2010年のルネサス エレクトロニクス発足来、初めて最終黒字化した。

現在の主要株主は次の通りで、NECは 持株を売却した。産業革新機構は株の売却で約4000億円の利益をあげている。

2014/3/31 2018/6/30
産業革新機構 69.15% 33.38%
三菱電機 6.26% 4.53%
日立製作所 7.66% 3.71%
NEC 0.75%
デンソー 0.49% 4.99%
トヨタ自動車 2.49% 2.99%
日産自動車 1.49%
米国とカナダが進めていた北米自由貿易協定(NAFTA)改定を巡る協議は、期限の8月31日中の合意には至らず、物別れに終わった。
9月5日に協議を再開する。


これを受けて、トランプ米大統領は、カナダとの合意のないまま、メキシコとのNAFTA改定案を11月下旬までに署名する意向であることを議会に正式通知した。但し、「カナダが望むならカナダとの協定にも署名する」としている。

トランプ政権は12月1日のメキシコの政権交代までに新協定の署名を終えたいとしている。

米国内法は議会が十分な審議を行えるよう、署名から90日前の通知を求めている。→ 8月31日が期限
なお、新協定文書を1カ月後に議会に送付することとなっている。 → 9月末

カナダを含めた3カ国が新協定に合意し、新協定文書を9月末に議会に提出できるかどうかが焦点となる。
米国は、間に合わなければ、米国とメキシコだけの新協定を結ぶとして、カナダに妥協を迫っている。

しかし、カナダは2019年に総選挙を控えており、政治的な妥協の余地は乏しい。特に酪農製品市場の開放は難しい。

米議会はカナダを含めた3カ国の協定を望んでおり、カナダを除外した新協定を認めない可能性は大きい。

トランプ大統領はツイッターで、 「議会が認めなければ、NAFTAをやめるだけだ。NAFTA 調印以前の方がよかった。新協定を結ぶか、NAFTA以前に戻るかだ」と牽制した。

There is no political necessity to keep Canada in the new NAFTA deal.
If we don't make a fair deal for the U.S. after decades of abuse, Canada will be out.

Congress should not interfere w/ these negotiations or I will simply terminate NAFTA entirely & we will be far better off...

....Remember, NAFTA was one of the WORST Trade Deals ever made. The U.S. lost thousands of businesses and millions of jobs.
We were far better off before NAFTA - should never have been signed. Even the Vat Tax was not accounted for. We make new deal or go back to pre-NAFTA!

(付加価値税を導入しておれば輸入品に課税できるが、導入していないため輸入品に有利という主張。これが国境税導入の主張につながる。)



次の点が問題になっているとされる。

カナダ側の主張:

・NAFTA 19条の維持

NAFTA19条では、輸出者が最終的なアンチ・ダンピング(AD)と相殺関税裁定を審査するよう二国間パネルに求めることを可能にする規定が ある。

米国は、米国の国家主権を侵害するとして、2国間審査プロセスを変更するか、あるいはそれを取り除きたいとする。今回、メキシコは除外することに同意した。

カナダは米政府の行動から自国産業を保護するためには、紛争解決制度が不可欠と考えており、除外には反対している。

「文化例外」規定の維持 (TPPでも最後まで問題となり、一定期間猶予する内容のサイドレターで解決した)

文化例外とは、自国文化を保護・育成するため、書籍や映像、音楽などの文化産業を自由貿易の原則から除外するというもの 。

フランス語圏で、カナダからの独立機運が強いケベック州は文化的な独自性の維持への関心が強く、カナダの歴代政権も同州への考慮などから、過去の通商協定で文化例外の規定を盛り込むよう求めてきた。ハリウッド映画に代表される米国の巨大な文化産業からカナダやケベック州の文化を守るため、例外規定は決定的に重要だと考えられてきた 。

カナダが求める例外規定で、カナダは自国産業への補助や外国からの投資規制ができる。

米国側の主張:

・カナダの酪農製品市場の更なる開放

トランプ大統領はカナダの農業政策により、米国産の乳製品はカナダ市場へのアクセスを不当に制限されているとして、繰り返し批判、カナダの卸売制度の変更を求めている。
カナダのトルドー首相は自国の制度を守ると主張している。 USTRは、「農産物でカナダからの譲歩は何もない」とけん制した。

今回の交渉で、カナダの交渉責任者であるフリーランド外相は、カナダは断固として国益を守るとの考えを示し、「単なる合意ではなく、良い合意を求めている。われわれはまだそこまで達していない」と述べた。


8月31日に物別れとなったが、8月30日のトランプ大統領のBloomberg Newsとのインタビューでの「オフレコ」の発言を、8月31日にカナダのToronto Star がすっぱ抜いた。

「一切譲歩できないが、それを言ってしまうと、彼らはディールができないことがわかって失礼だから言えないんだ」

"Here's the problem. If I say no -- the answer's no. If I say no, then you're going to put that and it's going to be so insulting they're not going to be able to make a deal ... I can't kill these people,"

「カナダとは、完全にこちらの望み通りとなる。」

"Any deal with Canada would be totally on our terms."

「カナダへ必死だ。こちらは、なにか問題が出るたびに、(GMがカナダ工場で生産している)Chevrolet Impalaの写真を見せるのだ。」(輸入車に関税を掛けると脅しているのだという意味)

"Off the record, Canada's working their ass off. And every time we have a problem with a point, I just put up a picture of a Chevrolet Impala"

トランプ大統領はツイートでこの発言を認めた。

Wow, I made OFF THE RECORD COMMENTS to Bloomberg concerning Canada, and this powerful understanding was BLATANTLY VIOLATED.
Oh well, just more dishonest reporting. I am used to it. At least Canada knows where I stand!

Still can't believe that Bloomberg violated a firm OFF THE RECORD statement. Will they put out an apology?

その後のスピーチでは、オフレコ破りに不満を示しながら、カナダ側がトランプの考えを知ることになるため、いいことだと述べた。

"These are very dishonourable people. But I said, in the end it's OK, because at least Canada knows how I feel. So it's fine. It's fine. It's true."

Bloomberg はオフレコの約束は守っているとしている。Starは、この情報をあるソースから得たが、Star はBloombergと大統領とのオフレコの約束に拘束されないとしている。

Trudeau首相はこの発言について聞かれ、「我々はカナダにとって良いものならサインするというだけだ。カナダとカナダ人にとってよくないなら、無い方がましだ。はっきりしている」と述べた。

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メキシコとの合意でも、自動車関税を使って脅している。

詳細は発表されていないが、米国とメキシコは争点だった自動車の原産地規則について、現地調達率を現行の62.5%から75%に引き上げることで合意した。

両国はまた部品の40─45%を、時間当たり賃金が最低16ドルの工場で生産することで合意。これにより、メキシコの低賃金地域への工場流出を防ぐ。
米国製の鉄鋼、アルミニウム、ガラス、プラスチックの利用を増やすことも義務付けたとされる。

上記の基準を満たさない場合は、(現行では)普通車では2.5%の関税が課せられる。(最恵国に対するこの2.5%の関税を引き上げる可能性、基準を満たさない車には別の税率を適用する可能性についても触れられている。)

更に付帯合意ではメキシコからの年間自動車輸入が240万台、部品については年間輸入額が 900億ドル1080億ドルを超えた場合、米国は検討中の「安全保障を理由とした」関税(25%?)を適用することができる。

2017年のメキシコから米国への自動車輸出は約180万台だったが、早い時期に現状ペースでは2021年にはこれに達する見込み。

メキシコ側が「現地調達率」、「労務費規定」、「数量制限」を呑んだのは、米国が検討中の「安全保障を理由とした」関税の適用除外を受けるためとされる。

米国は今後、日本を含めた各国に、自動車関税の適用除外を条件にいろいろな要求をしてくるものと思われる。

"Every time we have a problem with a point, I just put up a picture of a Toyota XX" ということになる。

6月にWhite House で行われた日米首脳会談で、トランプ大統領は"I remember Pearl Harbor"と述べ、米国の対日赤字を非難、二国間貿易協定の交渉を求めている。


なお、米国は、協定が5年ごとに再交渉され、合意に至らなければ自動的に廃止になる「サンセット条項」を導入する要求を撤回した。

16年の期限が設けられ、見直しを経てさらに16年の延長が可能になる。

上記の通り、メキシコは紛争解決手法を定めた19条を除外することに合意した。

米国とメキシコ間で取引される農産物は関税をゼロに据え置く。農業技術の発展を支援するためバイオテクノロジーの導入に取り組む。

メキシコ人の賃金を引き上げる取り組みとして、ILOの労働基準を順守することをメキシコに義務付ける条項も盛り込んだ。

付記 

NAFTA再交渉を巡り、米国とメキシコの両政府が通貨政策の透明性を約束する「為替条項」の導入で合意したことが分かった。輸出促進のための競争的な通貨安誘導を控えることを見直し後の新協定に盛り込む見通し。

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日系企業の3カ国での2017 年の生産台数(万台)は次の通り。

USA Canada Mexico
トヨタ 126 57 11
日産 93 - 83
ホンダ 121 43 21
マツダ - - 19

住友金属鉱山と住友商事は8月30日、豪州大手の産金会社Northern Star Resources Limitedに、アラスカのPogo金鉱山の権益を全て譲渡すると発表した。

Pogo金鉱山は、アラスカ州で2006年から操業し、2009年からは住友金属鉱山がオペレータを務めてきた。

 Pogo金鉱山概要:

1)位置:米国アラスカ州フェアバンクスの南東約145キロ

2)権益比率:住友金属鉱山アメリカ社(住友金属鉱山100%子会社) 51%→85%
       Teck Resources 40%→ 0
       SC Minerals America(住友商事100%子会社) 9%→15%
         2009年4月以降、出資比率変更

3)埋蔵金量:109t(2008年末鉱量計算結果)
4)年間生産金量:11~12t/年
5)開発投資額:約378百万ドル(出資比率で負担)

採掘後、選鉱→青化浸出→電解採取を経てドーレ(金品位約94%、銀品位約6%)として回収している。

住友金属鉱山はPogo金鉱山で採掘できる金の量が残り少ないと見積もっており、操業効率の改善も難しいことから早期の撤退を決めた。

2017年の産出量は8.4トンで、2017年末の採掘可能な量を24トンと見ている。

豪州で多くの坑内掘り金鉱山を操業するNorthern Star に、住友商事の保有する権益15%と併せて100%の権益を譲渡し、Pogo金鉱山のすべての資産と債務を引継ぐ。

Pogo金鉱山の譲渡に係る対価は総額260百万米ドル(100%)で、必要な許認可の取得を前提として2018年10月の譲渡完了を予定している。

住友金属鉱山は日本で菱刈鉱山(鹿児島県伊佐市)を操業しており、海外では2021年から生産開始予定のカナダ南東部のCote金開発プロジェクトに27.75%出資している。

2017/6/8 住友金属鉱山、カナダの金開発の権益取得 

長期的に金の年間生産量30トンを目指しており、Pogo金鉱山の譲渡で一時的に年産量は6トン程度にまで落ちるが、引き続き金事業に注力していく。

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Pogo金鉱山は住友金属鉱山の海外での初の主導的な開発プロジェクトで、1991年に探鉱を開始、1997年にTech Resources と提携し、探鉱及び企業化調査を進めた。

Teck Resources はカナダの資源大手で、石炭・銅・鉛・亜鉛・モリブデン・金を扱っており、亜鉛では世界最大級、原料炭の海上輸送シェアは世界2位。

同社は1913年に金鉱山生産のため設立されたTeck-Hughes Gold Mines と、銀・亜鉛・鉛鉱山開発を主体とした1906年設立のComincoが2001年に合併してできた。(当初名はTeck Cominco)

2008年には石炭事業のJVパートナーである
Fording Canadian Coal Trustを98億ドルで買収して石炭資産を拡大した。

Teck のFording Canadian Coal 買収後、コモディティの価格は暴落し、カナダ経済も不況に陥った。

Teck は2009年初めには借入金の一部の支払猶予を受けたが、借入金返済のため、資産売却、コストカットを行っている。

この一環として金資産のJV権益の売却を進めており、カナダの金鉱山の権益を2008年にJV相手のBarrick Goldに売却、2009年4月にはアラスカのPogo鉱山の権益をJVパートナーの住友金属鉱山2億4500万米ドルで売却した。

中国投資有限責任公司(CIC) は2009年7月3日、100%子会社の Fullbloom Investment Corporation を通じて、資金難のTeck Resources Limited の株17.2%を現金15億米ドルで購入することで合意したと発表した。CICは2017年9月に持株17.2%のうちの4割を売却した。

2009/7/14 中国政府系ファンドCIC、カナダの資源大手に出資

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