米民主党上院トップのシューマー院内総務は6月1日、債務上限停止法案を通過させるまで会期を続けるとし、同日中に法案可決に向けたプロセスを開始すると言明した。

政府の資金繰りが行き詰まるとされる6月5日までに残された時間はわずか4日で、その間に上院は可決し、署名のためにバイデン大統領の送付する必要がある。

両党の多くの議員が5月31日に下院を通過した法案への反対を表明していた。このため10本の修正条項を投票にかけた。(当初11本とされたが、記録では10本)
修正が可決されると下院に戻す必要があり、間に合わなくなるが、これらの修正条項に可決の見込みはなく、迅速に法案自体の採決に進む見通しになっていた。

(議員が特定項目について修正を提案したという証拠作りのためだけのもので、国家の緊急時にこんなことをやるのは理解し難い。)


修正提案の議決は次の通り。

投票時間 賛成 反対 棄権 結果
No.1 07:30 pm 21 75 4

否決

可決には60票の賛成が必要

2 08:22 pm 35 62 3
3 08:38 pm 46 51 3
4 08:53 pm 49 48 3
5 09:05 pm 17 81 2
6 09:22 pm 46 51 3
7 09:36 pm 48 51 1
8 47 52 1
9 48 51 1
10 10:18 pm 30 69 1


その後、6月1日10:37pmにThe Fiscal Responsibility Act of 2023を投票した。可決には
フィリバスター(議事妨害)を阻止するために60票が必要であるが、超党派の議員が賛成し、63票の賛成で辛うじて可決した。

共和党 民主党 民主系
無所属
無所属 合計
賛成 17 44 1 1 63
反対 31 4 1 36
棄権 1 1
合計 49 48 2 1 100


民主党系では無所属のBernie Sanders などが反対した。

Biden大統領は議会のタイムリーな行動を称賛し、できるだけ早くサインすると述べた。6月2日の午後7時(日本時間3日朝8時)に声明を発表する。

アメリカ政府の債務上限の引き上げをめぐり、バイデン大統領と野党・共和党のMcCarthy下院議長が基本合意した。

今後は最終的に法案として上下両院で可決する必要がある。

McCarthy下院議長は5月28日に法案を完成させて大統領と再び協議し、正式に合意したうえで、5月31日に採決を行う方針を表明した。

Yellen財務長官は、債務上限の引き上げを行わなければ6月5日にもデフォルトに陥る恐れがあると指摘している。

それまでに下院と上院で可決し、大統領がサインする必要がある。

2023/5/28  米債務上限引き上げで基本合意


議会に提案された法案 The Fiscal Responsibility Act of 2023 の主な内容は下記の通り。

 債務上限を2025年まで凍結

2023年1月19日に債務は31兆4000億ドルの上限に到達した。

下院議会は4月26日、連邦債務上限を最大1兆5,000億ドル引き上げ、連邦政府の支出を4兆5,000億ドル削減する法案を賛成217、反対215で可決した。

しかし今回、上限は変更せず、2025年1月1日まで凍結する。 (現在の上限を超えての借り入れが可能)

 国防費以外の歳出制限

2024年度は2023年度と同レベルとし、2025年度は1%だけ増やす。それ以降は制限なし。

国防予算は3%増とする。

 未使用のCovid 19 予算の返還  約300億ドル

 福祉予算

Medicaid(医療扶助)は変わらず。
Supplemental Nutrition Assistance Program (=Food Stamp) で就業が求められる年齢を50歳から54歳に引き上げ

 IRS予算

Inflation Reduction Actで決まった最富裕層への課税推進のためIRS予算(10年間800億ドル)から、2024年度と2025年度にそれぞれ100億ドルを他の予算に振り向ける。

 エネルギー計画認可

化石燃料と再生可能エネルギー計画の認可を容易にする。環境レビュープロセスの簡素化


下記テーマについてはいずれか一方が希望したが、今回の合意に含まれなかった。

 奨学金免除

   共和党はバイデンによる奨学金免除の取り消しを求めていたが、生き残った。

 増税

   民主党は富裕層への増税を図ったが、含まれず。

 クリーンエネルギー

   共和党はInflation Reduction Actのなかのクリーンエネルギーや気候変動に関する主部分の削除を狙ったが、実現せず。

ーーー

法案をめぐっては、双方の一部の議員からは反対の声が上がっており、共和党の強硬派の委員は「法案を阻止するために何でもする」と述べた。

共和党保守強硬派の議員連盟「Freedom Caucus」メンバーの下院議員は、McCarthy議長の今回の動きは議長解任の理由になると述べた。メンバーは次々に法案への反対を同僚に訴えた。

下院が4月26日に通した法案では、連邦債務上限を最大1兆5,000億ドル引き上げる代わりに、連邦政府の支出を4兆5,000億ドル削減するもので、今回の法案は削減がゼロであり、あまりにも異なることを問題視している。

McCarthy 院内総務を下院議長に選ぶ際に「Freedom Caucus」のメンバーが反対し、過半数を取れないまま、何日もかかった。McCathyは反対派の説得のため、多くの妥協をした。議長解任動議の提出条件は会派の半数の賛成であるが、 最終的に1人で動議を出せることを承認した。

大統領と議長は29日のメモリアルデー(戦没者追悼記念日)の祝日もそれぞれの党の議員に法案を支持するよう働き掛け、可決に十分な票の確保に努めた。

McCarthy下院議長は5月31日の下院本会議で採決を行う方針で、まず5月30日に下院の議事運営委員会で審議した。同委メンバー13人中9人が共和党議員で、そのうち最右翼の3人がMcCarthy議長に批判的である が、賛成7(共和党7)、反対6(共和党2、民主党4)の賛成多数で本会議審議に進めることを可決した。


下院本会議は5月31日夜(日本時間6月1日朝) 投票を行った。その結果、賛成多数で可決し、上院に送付された。

共和党 民主党 合計
賛成 149 165 314
反対 71 46 117
棄権 2 2 4

合計

222 213 435


法案は上院で審議・採決される。6月5日(月)以前に債務上限が引き上げられるか適用停止とされなければ、前代未聞のデフォルトに陥る可能性があり、それまでに上院で可決し、大統領がサインする必要がある。

上院ではフィリバスター(議事妨害)を阻止するために60票が必要であるが、上院での法案可決はほぼ確実視されている。

議員の中には法案の一部修正を求める声もあるが、仮に修正すれば、再度下院で議決する必要があり、時間がない。

上院勢力図  無所属は元民主党員

共和党 民主党 民主系
無所属
無所属 合計
49 48 2 1 100

共和党のスーン上院院内幹事は6月2日夜までの法案可決で与野党が一致する可能性に言及した。

原子力発電所の運転期間の60年超への延長を盛り込んだGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法は5月31日の参院本会議で可決、成立した。既存の原発を可能な限り活用し、電力の安定供給と温暖化ガスの排出削減を目指す。

60年超の場合は、予見しがたい休止期間の範囲で操業を認める。(運転期間累計は60年が限度)

ーーー

原子力規制委員会は2022年12月21日、原子力発電所の運転開始から30年以降10年以内ごとに繰り返し運転を認可する新ルール案を了承した。現行ルールを上回る「60年超」運転が可能になる。 

現行ルールでは、運転開始から40年を迎える原発は、規制委の運転延長の審査に合格した場合に限り1回のみ最長20年の延長が認可される。また、これとは別に、運転開始から30年以降の原発は、10年ごとに「高経年化対策」も実施されている。

新ルールはこれらを一本化する内容で、規制委は電力会社に対し、施設の劣化を管理する長期計画の作成を義務づけ、安全性を確認すれば運転延長を繰り返し認可する。福島原発事故以前の規制に戻すこととなる。

2023/1/4 原発運転期間延長 


2023年2月10日、「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定された。

気候変動問題への対応に加え、ロシア連邦によるウクライナ侵略を受け、国民生活及び経済活動の基盤となるエネルギー安定供給を確保するとともに、経済成長を同時に実現するため、主に以下二点の取組を進める。

①エネルギー安定供給の確保に向け、徹底した省エネに加え、再エネや原子力などのエネルギー自給率の向上に資する脱炭素電源への転換などGXに向けた脱炭素の取組を進めること。

②GXの実現に向け、「GX経済移行債」等を活用した大胆な先行投資支援、カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ、新たな金融手法の活用などを含む「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行を行うこと。

政府は2月28日、エネルギー関連の5つの法改正案を閣議決定。これらをまとめた束ね法案「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(GX脱炭素電源法)として、通常国会に提出された。

GX脱炭素電源法のうち、原子力に関しては、

原子力発電の利用に係る原則の明確化(原子力基本法)
高経年化した原子炉に対する規制の厳格化(原子炉等規制法)
原子力発電の運転期間に関する規律の整備(電気事業法)
円滑かつ着実な廃炉の推進(再処理等拠出金法)

――が柱となっている。

原子力基本法の改正では、従前の条文に対し、目的、基本方針の中に、それぞれ「地球温暖化の防止」、「福島第一原子力発電所事故を防止できなかったことを真摯に反省」との文言が追加され、安全最優先、原子力利用の価値を明確化。さらに、廃炉・最終処分などのバックエンドプロセスの加速化、自主的安全性向上・防災対策に係る「国・事業者の責務」について、新たに条文立てされている。

高経年化炉の規制については、関連法案の成立を前提として既に原子力規制委員会で技術的検討が開始されているが、事業者に対し、①運転開始から30年を超えて運転しようとする場合、10年以内ごとに設備の劣化に関する技術的評価を行う、②その結果に基づき長期施設管理計画を作成し、規制委員会の認可を受ける――ことを義務付ける。

運転期間については、原子炉等規制法から経済産業省が所管する電気事業法に移され、これまで通り「運転期間は40年」、「延長期間は20年」の原則を維持。安定供給確保、GX(グリーントランスフォーメーション)への貢献、自主的安全性向上や防災対策の不断の改善につき、経済産業相の認可を受けた場合に限り延長を認め、「延長しようとする期間が20年を超える」場合は、事業者が予見しがたい事由(東日本大震災以降の安全規制に係る制度・運用の変更、司法判断など)に限定して運転期間のカウントから除外することで、実質的に60年超運転を可能とする。

(原子炉等規制法)規制委員会は10年ごとに検査(60年超も)
(電気事業法)原則は「運転期間は40年、延長期間は20年」、経産省は60年超の場合、予見しがたい休止期間の範囲で操業を認める。

また、再処理等拠出金法では、経済産業省の認可法人「使用済燃料再処理機構」の業務に、「各地の廃炉作業の統括」を追加している。


原子力規制委員会は2023年2月13日夜に臨時の委員会を開き、運転開始から60年を超える原子力発電所の安全規制の新たな制度案と原子炉等規制法の改正条文案を多数決で了承した。

石渡明委員が反対するなか、山中伸介委員長と他の委員の計4人が賛成した。政府は今国会に関連法案の提出をめざす。

2023/2/10 原子力規制委員会、原発60年超運転に向けた規制制度案の承認持ち越し→承認 

ーーー

衆議院は4月27日の本会議で、電気事業法、原子炉等規制法、再処理等拠出金法、再エネ特措法および原子力基本法の改正案を束ねたGX脱炭素電源法案(脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案)を賛成多数で修正可決した。

同法を巡っては自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党が衆院通過前に規制委の審査の効率化を求める文言を付則に加えた。

原発の立地地域だけでなく「電力の大消費地である都市の住民」の信頼を確保し、協力を得ることを国の責務とする内容も修正して盛り込んだ。

5月31日の参院本会議で可決、成立した。

現代自動車グループは2023年4月25日、韓国SK Onと合弁で電池セル生産会社を米国に設立する計画を発表した。両社は2022年11月に北米向け電気自動車(EV)用電池の供給について覚書を締結していた。

合弁会社はジョージア州Bartow Countyに電池セル工場を建設する。総投資額は50億ドルで両社折半出資。2025年の稼働開始を目指す。年間生産能力は35ギガワット時で、EV 30万台の生産をサポートできる。

今回発表した新工場で生産する予定のバッテリーは、ジョージア州南西にある現代自動車グループ傘下の起亜の工場や、アラバマ州にある現代自動車の工場など、米国内のグループ工場向けに納品する。


現代自動車、SK Onの両社はそれぞれジョージア州でのEV・バッテリー事業を急速に進めている。

(現代自動車)

現代自動車は2022年5月21日、米ジョージア州に電気自動車(EV)の専用工場を新設すると発表した。

ジョージア州Bryan Countyに2023年着工し、2025年上半期から稼動する。生産量を次第に増やし2030年に年産30万台とする。
ジョージア州政府は税制優遇などインセンティブを提供し、持続的な諸般の支援を約束した。

投資額は55億ドル、生産能力は年産30万台規模で、車載電池工場も併設する。

「バッテリーセル工場は合弁形態で設立するだろう。合弁対象は確定しておらず検討中」と説明した。SK On、LG Energy Solution、Samsung SDIの韓国企業3社のうち1社が有力とされた。

2022/5/24  現代自動車、米にEV工場

11月23日にはグループ傘下のサプライヤー現代モービスが9億2,600万ドルを投じて同地域にEV用電力システムと現代が開発した統合充電システム(ICCU)の製造工場を建設することを発表した。


(SK On)

ジョージア州北東のジャクソン郡コマース市に既に2つのEV用バッテリー工場「SKバッテリーアメリカ」を持つ。


ーーー

Hyundai Motor Group とLG Energy Solutionは5月26日、米国に5兆7000億ウォン(約43億ドル)を投じて自動車用バッテリーのJV工場を建設すると発表した。同日、ソウルのLG Energy Solution本社で契約を締結した。

現代自動車は2022年5月21日、米ジョージア州に電気自動車(EV)の専用工場と電池工場を新設すると発表したが、「バッテリーセル工場は合弁形態で設立するだろう。合弁対象は確定しておらず検討中」と説明した。SK On、LG Energy Solution、Samsung SDIの韓国企業3社のうち1社が有力とされた。

現代自動車は最終的にLG Energy Solutionを選んだもので、上記のSK OnとのJVに続き、LG Energy Solutionと合弁工場を建設し、米国内におけるEVとバッテリーの生産能力を 急拡大している。

現代自動車のEV新工場(Hyundai Motor Group Metaplant America )が建設される米ジョージア州ブライアン郡に建設する。JVは折半出資で、総投資額は5兆7000億ウォン(約43億ドル)。年間約30ギガワット時(GWh)のバッテリーセル(EV 約30万台) を生産する。

両工場を完成すれば、米国内にも合計約60万台以上のEVのバッテリー生産能力を備えることになる。

ーーー

調査会社テクノ・システム・リサーチによると、2020年の車載電池の世界シェアでSamsung SDIは9%で4位。LG Chemは23%で2位、SK Innovationは5%で7位。

LG Energy Solution (今回の現代自動車とのJVが加わる)

2023/2/24 Ford、トルコでの電池JVの相手をSKからLGに変更

SK On(今回の現代自動車とのJVが加わる)

2023/1/11 韓国SK On のトルコの電池JV計画 白紙撤回へ 

SK Innovation

SK Innovationは2018年11月に米ジョージア州Commerce市に1兆1396億ウォン(約1140億円)を投資して、電気自動車用バッテリー工場を建設することを明らかにした。
2020年6月29日、第2工場の設立のための投資協約式を交わしたと発表した。

SK Innovationは、LG Chemと同様、米国と中国と極東、そして欧州というEVマーケットのシェア9割を占める地域をカバーする。

北米でVolkswagenグループへの供給が決まっている。

Commerce工場は112万2000平方メートルの敷地に新設され、来年初めに着工して2022年に完成する予定。年間 9.8GWhの規模で建設される。

新工場が完成すれば、SK Innovationは韓国(忠清南道瑞山市)とハンガリー(Komárom )、中国(常州)を含めて「グローバルの四角生産体制」を構築することになる。

新工場は、瑞山工場(4.7GWh)の2倍を超える規模で、常州工場(7.5GWh)と、2022年に完成予定のKomárom工場(7.5GWh)を合わせれば、全体の生産能力は約30GWhに増える。

  稼働 建設
韓国(忠清南道瑞山市) 4.7GWh  
中国(常州) 7.5GWh  
ハンガリー(Komárom   7.5GWh
米国(Commerce   9.8GWh
合計 12.2GWh 17.3GWh
総計

29.5GWh

2018/12/4 SK Innovation、米に電気自動車バッテリー工場を建設、LG & Samsung も各地で増設 

日本やアメリカなどが参加するIPEF(インド太平洋経済枠組み)の閣僚級の会合が5月27日、デトロイトで開かれ、参加国が重要な物資のサプライチェーン=供給網を強化していくことで合意した。

中国の影響力が拡大しているほか、新型コロナの感染拡大などを背景として、重要物資の供給が受けられなくなるリスクが高まっていることから、半導体や重要鉱物などを念頭に、中国に依存せずに重要な物資が供給できるよう、相互に協力する仕組みを整えていく。

バイデン米大統領は2022年5月23日、新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の発足を表明した。日米と韓国、インドなど計13カ国を創設メンバーとし、中国に対抗してサプライチェーン(供給網)の再構築やデジタル貿易のルールづくりなどで連携する。2022年5月26日にフィジーが参加し、現在は14カ国となっている。 (メンバーは下の表を参照)

「デジタル経済のルール作りや強固で強じんなサプライチェーンの確保、エネルギーの転換など、新たな経済の課題に立ち向かうためにデザインされた21世紀の新たな枠組みだ」と説明した。

IPEFは、(1)公平で強靭性のある貿易、(2)サプライチェーンの強靭性、(3)「クリーン経済」(インフラ、脱炭素化、クリーンエネルギー)、(4)「公平な経済」(税、反腐敗)の4つの柱から構成される通商枠組み。

米国の輸入拡大につながる関税の引き下げは交渉しないとしている点が、TPPとは大きく異なる。通常の多国間協定とは違い、議会の承認は得ず、緩やかな連携を目指す。

米国は、各国が枠組みのすべてに賛同しなくても、参加したい分野だけを選んで参加できる珍しい仕組みも検討している。

2022/5/21 インド太平洋経済枠組み(IPEF:Indo-Pacific Economic Framework)

昨年から交渉官が半導体など重要物資のサプライチェーンの強化や、デジタル技術を活用した貿易の円滑化など、4つの分野で交渉を行ってきた。

事前の協議では、4つの分野のうちサプライチェーンの強化に関する分野で交渉が進展している。
その一方で、「貿易」や、「クリーン経済」、「公平な経済」は、議論を主導するアメリカと新興国などとの間で意見の隔たりが残っている。

昨年5月の発足以来、具体的な成果はこれが初めてで、アメリカや日本は今後、他の分野でも協議を加速し、今年11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議に合わせて、「供給網」以外の分野を含めた全体的な合意を目指したい考えである。

しかし、IPEFは「関税の引き下げ」が交渉の対象になっていないため、東南アジア諸国にとっては輸出拡大などの具体的なメリットが乏しく、今後の交渉は難航が予想される。


ーーー


なお、5月25日から26日にかけて、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の貿易担当大臣会合が本年の議長国である米国のKatherine Tai 通商代表の議長のもと、デトロイトで対面形式で開催された。

APEC:

  • アジア太平洋地域の21の国と地域(エコノミー)が参加する経済協力の枠組み。(1989年に閣僚会議として開始。1993年から首脳会議も開始。事務局はシンガポールに所在。)
  • アジア太平洋地域の持続可能な成長と繁栄に向けて、貿易・投資の自由化・円滑化地域経済統合の推進、経済・技術協力等の活動を実施。
  • APECの取組は、自主的、非拘束的、かつコンセンサスに基づく協力が特徴。
  • ビジネス界と緊密に連携している点も特徴。APECビジネス諮問委員会(ABAC)が、ビジネス界の重視する課題を首脳に直接提言。

重要鉱物や半導体などのサプライチェーンの強化や、気候変動問題、食料安全保障などについて議論が行われ、自由で開かれたルールに基づく多角的な貿易システムを強化し、サプライチェーンの混乱に対処することや、世界経済が直面する食料不安や気候変動の課題にも対応していく必要性を確認した。

しかし、ウクライナ侵攻による世界経済への影響に関する文言にロシアや中国などが反発し、共同声明の採択は見送られ、議長声明が出された。
このなかで、「(
ウクライナ情勢についての)状況及び制裁について、他の見解及び異なる評価があった」としている。

ーーー

IPEFやAPEC等の参加国は下記の通り。

APEC:アジア太平洋経済協力
IPEF:インド太平洋経済枠組み

RCEP:地域的な包括的経済連携協定

TPP ASEAN APEC RCEP IPEF
参加国数 11 10 21 15 14
日本
韓国
台湾
中国
香港
ロシア

マレーシア
シンガポール
ベトナム
ブルネイ
フィリッピン
インドネシア
タイ
ミャンマー
ラオス
カンボジア
インド
スリランカ

加盟へ

豪州
NZ
米国
カナダ
メキシコ
ペルー
チリ
パプアニューギニア
フィジー


スリランカ大統領は5月25日、都内での講演で、「スリランカは高いレベルの経済自由化を目指し、東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)への加盟を申請する」と話した。





コニカミノルタの2023年3月期の業績は下記の通りとなった。 ヘルスケア部門で1035億円もの巨額の減損損失を計上した。

(単位:億円) 売上高

営業損益

親会社株主 
帰属損益
一般 減損 合計
デジタルワークプレイス 6,003 122 -29 93
プロフェッショナルプリント 2,526 175 -9 166
ヘルスケア 1,378 -87 -1,035 -1,122
インダストリー 1,375 189 -81 108
その他 21 -184 -12 -196
合計 11,304 215 -1,166 -951 -1,032


デジタルワークプレイス事業:
  
複合機及び関連消耗品の開発・製造・販売、並びに関連サービス・ソリューション、及びITサービス・ソリューションの提供

プロフェッショナルプリント事業:
  デジタル印刷システム・関連消耗品の開発・製造・販売、各種印刷サービス・ソリューションの提供

ヘルスケア事業:
  <ヘルスケア分野> 画像診断システムの開発・製造・販売・サービスの提供、
         医療のデジタル化・ネットワーク化・ソリューション・サービスの提供
  <プレシジョンメディシン分野> 遺伝子検査、プライマリケア関連サービスの提供、創薬支援

インダストリー事業:
  
<センシング分野> 計測機器等の開発・製造・販売

  <材料・コンポーネント分野>ディスプレイに使用される機能性フィルム、産業用インクジェットヘッド、
-----------------------------産業・プロ用レンズ等の開発・製造・販売
  <画像IoTソリューション分野>画像IoT及び映像関連機器の開発・製造・販売、関連ソリューション・サービスの提供

ーーー

2003年にコニカとミノルタが事業統合し、コニカミノルタとなった。

2006年3月末にデジタル一眼レフカメラシステムの一部資産をソニーへ譲渡することでソニーと合意、フィルムカメラやデジタルカメラなどのカメラ事業については2006年3月31日をもって終了し、今後は、中核事業の情報機器分野、戦略事業の光学及びディスプレイデバイス分野などへ経営資源を集中させることとした。

しかし、2010年代、世界的に紙の印刷需要が減って事務機の事業環境は厳しさを増した。このため「ポスト事務機」育成による成長を目指し、海外M&Aにより「プレシジョン・メディシン分野 」に進出した。

プレシジョン・メディシンは、個々人の細胞における遺伝子発現やたんぱく質などの特性を分子レベルで判別することで個々の患者を精密にグループ化し、最先端の技術を用いて適切な投薬、治療と予防を提供する医療。

従来の画一的な方法ではなく、患者特性に応じた集団ごとの治療法から疾病予防までを確立する事により、適切な投薬、治療が可能となる。また、個人の特性を鑑みた適切な投薬は、副作用を軽減し、患者のQOL向上に寄与する。

創薬分野においては、効果的なバイオマーカーの活用が薬理試験の効率化を促進することで創薬のイノベーションを加速する。さらに、臨床試験における正確な薬効予測を可能にし、臨床試験期間やその規模の縮小という形で、新薬開発の成功確率と効率を向上させる。

2017年7月6日、産業革新機構との共同投資によりAmbry Genetics Corporationを子会社化することを決定した。

Ambry Geneticsは、最先端の遺伝子診断技術を持ち、高度な商品開発力、多様な検査項目、高い検査処理能力、遺伝子カウンセラーチャネルでの圧倒的な強さを背景に、成長著しいがん領域を中心とした米国の遺伝子検査市場におけるリーダー的存在。

2017年9月25日、プレシジョン・メディシン事業の成長戦略の一環として、米国の創薬支援企業であるInvicro LLCの買収契約を締結した。

Invicroは、高度な数値解析技術、バイオマーカー探索技術に強みを持つ創薬支援のイメージングCRO(医薬品開発支援業務受託機関)で、PET(陽電子放出断層撮影法)イメージング技術を用いた、がん腫瘍部の検出技術やアルツハイマー病の病理画像解析技術を有し、製薬企業にとって付加価値の高い創薬支援、治験・診断支援を、バイオマーカーを軸にして⼀気通貫的に提供するビジネスモデルを推進。

Ambry Genetics Corporation (AG) Invicro LLC (IC)
本社 カリフォルニア州 マサチューセッツ州
買収額 (100%) 株式取得800百万ドル、
    他に業績連動型アーンアウト 200百万ドル
295万ドル
出資比率 60%(残り40%は産業革新機構) 95%
戦略的意義 プレシジョン・メディシン分野への本格参入
世界トップクラスの遺伝子診断技術とコニカミノルタのタンパク技術の融合
ヘルスケアにおける高収益性事業構築
患者と製薬会社双方をターゲットとするビジネスモデル
日本を含めたグローバル展開
プレシジョン・メディシン分野への本格参入
製薬会社向け創薬支援ビジネス開始
デジタルイメージング技術、タンパク質解析技術、遺伝子解析技術を融合した顧客への価値提供
ボストンで優秀な人財へアクセス
高成長・高収益事業の構築


コニカミノルタは写真化学技術を活用した,新たな高輝度蛍光体ナノ粒
子とデジタル画像処理技術を組み合わせてなる,デジタル病理技術(HSTT: High Sensitive Tissue Testing)開発した。
分子標的薬の標的となるたんぱく質の存在位置と量をヒト生体組織上でイメージング化し、正確に測定することができる。これは、従来の免疫染色技術の精度をはるかにしのぐ技術であり、早期かつ高精度の診断と疾患に対する患者の免疫反応の把握を可能にする。

2社の買収により、短期中期ではAG社の遺伝子検査サービスとIC社の画像解析サービスのコア事業強化に注力するともに、サービスを拡充させていくを目指 す。
中長期では、2社が持つ生命科学と情報科学の技術を融合することで、人体に存在する分子を総合的に解析するマルチオミックス解析を実現し、クラウド上のプラフォームで世界へサービスを展開することで、積極的に事業を拡大していく とした。

しかし、アンブリーを中核とするヘルスケア事業は4年連続で営業赤字が続いた。

減損損失を除く営業損益(億円)

2020/3 -44
2021/3 -64
2022/3 -203
2023/3 -87

同社によると、ライバルの米Invitae Corpなどが2017年頃に 採算度外視で仕掛けた検査料金の価格引き下げが、業績が悪くなった大きな要因とする。

さらに、①米国でのコロナ禍における予防的な遺伝子診断のための来院者の激減と 、②それ以降の医療スタッフの不足などにより、病院での診断や健康診断での遺伝子検査の需要成長が想定より大幅に下回っていること、③製薬会社での治験が大幅に遅延したこと、④他社との協業などの自社戦略の実行遅延などもあった。

また、直近の金利上昇により減損テストに使用する割引率が上昇したことからも回収可能価額が大幅に低下した。

その結果、不振脱却が難しいと判断し、2023年3月期に1035億円の減損損失を計上した。

大幸社長は「 「あまりにも大きく描きすぎたバラ色の期待と現実とのギャップはずっと拭えなかった」としている。

「ポスト事務機」育成による成長を目指し、次の柱を求めて計画実現性の精査が甘いまま、新規事業育成を性急に進め たのが響いた。



付記 

同社が発表した新中期計画では、「過去から決別し、戦略的新規事業の位置づけを見直し、事業の選択と集中に取り組む」とし、基本方針として、「ベスト条件だけで成立する計画策定を廃止し、達成可能な計画を着実に実行し、自信と信頼を回復」とした。

問題のプレシジョンメディシン事業については「非重点事業」に見直した。

Biden米大統領と米連邦議会のKevin McCarthy 下院議長(共和党)は5月27日、米政府債務の法定上限を引き上げることで合意した。議会で承認されれば、市場で懸念されていた米国債の債務不履行(デフォルト)は回避される。

McCarthy議長はBiden大統領と電話会談し、債務上限を引き上げる一方で、政府の支出を削減するなどの案で「基本合意に至った」と明らかにした。今後は双方のスタッフ間での法案の文言の調整を進めるほか、28日にはBiden大統領と再び会談し、正式合意に至るとの見通しも示した。

暫定合意には、2年間の債務上限引き上げ(時限措置として現行の上限である約31.4兆ドルを上回る債務残高を認める)に加え、非国防支出を今後2年間にわたりほぼ現行の水準に据え置く歳出合意が盛り込まれた。
非国防支出を2024年度は2023年度と同レベルとし、2025年度は1%だけ増やすとされる。
未使用の新型コロナウイルス資金を回収、一部のエネルギープロジェクトの許可プロセスを加速し、貧しい米国人向けの食糧援助プログラムに要件を追加する。

McCarthy議長は、「歴史的な支出削減であり、人々を貧困から引き上げて労働力にする改革であり、政府の行き過ぎを抑制する――新たな税金や政府の新たなプログラムはない」としている。

ツイッターに「先ほど、大統領と電話を終えた。彼が何カ月も時間を浪費し、交渉を拒否した後に、私たちは米国民にふさわしい大筋合意に至った」と投稿した。

I just got off the phone with the president a bit ago. After he wasted time and refused to negotiate for months, we've come to an agreement in principle that is worthy of the American people.

Biden 大統領はこの合意を重要な前進("an important step forward") と呼び、「妥協であって、全員が望むものを手に入れる訳では無い」としている。

   "The agreement represents a compromise, which means not everyone gets what they want. That's the responsibility of governing."


今後は最終的に法案として上下両院での可決にこぎ着ける必要があるが、合意には民主・共和両党の強硬派からの反対が予想される。議長は28日に法案を完成させて大統領と再び協議し、正式に合意したうえで、31日に採決を行う方針を表明した。


Yellen財務長官は、債務上限の引き上げを行わなければ6月5日にもデフォルトに陥る恐れがあると指摘している。

これまでは6月1日にも行き詰まると説明していたが、最新データに基づいて分析したところ、デフォルト(債務不履行)に陥る恐れのある期限がやや後ずれした。

2023/5/24 米債務上限協議、合意に至らず

韓国外務省は5月25日、徴用工訴訟問題で敗訴が確定した日本企業の賠償金を韓国政府傘下の財団が支払う解決策に基づき、生存中の原告3人のうち1人に対し、相当額が26日に支給されると発表した。

生存者が政府の解決策を受け入れるのは初めて。


新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業を相手取った3件の訴訟で判決が確定している。韓国外務省によると賠償対象となる元徴用工は故人を含め15人いる。(生存者3名、故人12名)

聯合ニュースによると15人分の判決金と利子の総額は40億ウォン(約4億円)規模になる。


韓国の朴振外相は3月6日、元徴用工問題の解決策を正式に発表した。韓国最高裁が日本企業に命じた賠償金の支払いを韓国の財団が肩代わりする。

・韓国政府傘下の公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」が原告に判決金相当の金額を支払う。

・係争中の訴訟も、原告の勝訴が確定した場合は財団から支給する。

・肩代わりの財源は民間の自発的貢献により調達  

・被告の日本企業の資金拠出は前提としていない。

・原告に判決金の受け取りに理解・同意を求める努力を継続する。

・歴史問題の真の解決に向けた研究と、未来世代に対する教育を強化

2023/3/9 韓国、元徴用工解決策を発表 

1965年の日韓請求権協定を通じ日本から経済支援を受けた韓国鉄鋼大手ポスコは3月15日、元徴用工を支援する韓国政府傘下の財団に40億ウォンを拠出すると表明した。


韓国最高裁で勝訴が確定した15人中10人の原告遺族が、韓国政府傘下の財団からの解決金の受領を4月14日までに終えた。

4月7日に原告遺族2人への支給が初めて実施され、遺族側は「判決に関連し、被告企業に代わり韓国政府側から支給を受ける」とする受領申請書を提出。さらに8人への入金が14日に行われた。聯合ニュースは遅延損害金などを含め1人あたり2億ウォン(約2千万円)~2億9千万ウォンが支払われると伝えた。

韓国外務省のアジア太平洋局長は「(同意した)遺族は問題が早く解決されることを望み、支給を受け入れた」と述べた。

生存する原告3人を含む残り5人はいずれも日本側の謝罪などを求め、財団支出金の受領を拒む意向を示した。


今回、生存者1人に支給され、残り4人(生存者2人、遺族2人)となる。韓国政府は説得を続ける方針。




米石油大手Chevron Corporationは5月22日、米シェール開発会社 PDC Energy, Inc.を買収することで同社と合意したと発表した。買収額は63億ドル(債務を含めて76億ドル)で年末までに取得する見込み。

PDCはコロラド州のDenver-Julesburg (DJ) 盆地に27万5,000エーカー(約1,113平方キロ)の権益、テキサス州とニューメキシコ州にまたがるPermian 盆地に2万5,000エーカー(約101平方キロ)の権益を保有している。いずれもChevronがNoble Energy, Inc.から買収したガス田(下記)に隣接している。

PDCの2023年第1四半期(1~3月)の石油ガス生産量は、DJ盆地で日量21万6,000バレル(原油換算相当)、パーミアン盆地で日量約2万8,000バレル(原油換算相当)。

Chevronは2020年7月20日、独立系石油ガス開発企業のNoble Energy, Inc.を買収することを発表した。Noble Energyの全株式(50億ドル相当)を株式交換方式で買い取る。Noble Energyの企業価値は負債も含めて130億ドルとされており、Chevronは負債額87億3,700万ドルを負うことになる。

この買収で、ChevronはDenver-Julesburg (DJ) 盆地とPermian 盆地の油田・ガス田を獲得する。

Chevronは更に2021年3月5日に,、Noble Energy, Inc.の子会社で石油ガスのパイプライン輸送を担うNoble Midstream Partnersを買収することで合意した。取引額の総額は13億ドル相当で、株主はChevron株式を受け取る。

Noble Midstream Partnersは、DJ盆地とパーミアン盆地で、石油ガスのパイプライン輸送サービスを実施している。

この買収により、シェブロンは石油ガスの生産・輸送を含めたガバナンス機能を簡素化し、DJ盆地とパーミアン盆地でさらなる運用の統合を図ることを狙う。

今回、Noble Energyから買収した油田と隣接するPDC Energyの油田を合わせ持つこととなり、Noble Midstream Partnersのパイプラインをともに利用できることとなる。

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U.S. Energy Information Administration (EIA) によると、DJ Basin は2020年に米国で5番目の大きさの生産盆地で、平均で日量51万バレルの石油、51億立法フィートの天然ガスを産する。

当初の開発者の1社がGreat Western Oil and Gas Companyで、同社は後に Noble Energyが買収した。(今回、ChevronがNobleを買収)

もう1社が Kerr-McGeeで、その後、Anadarko Petroleumに買収された。Anadarkoは2019年にOccidentalに買収された。

2019年4月にChevron Corp がAnadarko Petroleum を500億ドルで買収すると発表した。同月にOccidental PetroleumAnadarkoに対し570億ドルで買収することを提案した。

Occidentalは買収提案のうち現金の比率を引き上げ、さらにAnadarkoChevronとの買収契約を破棄するための違約金10億ドルを負担すること、Anadarkoがアフリカに保有する資産をTotalに売却することで合意したことを発表。

翌5月にChevronは買収条件の再提出見送りを発表、AnadarkoOccidentalに買収された。

Noble EnergyとPDCを買収したChevronと、Anadarkoを買収したOXYの2社がDJ Basinの主プレーヤーである。両社はPermian Basin でも主プレーヤーである。


グラフのPREはおそらく、Parsley Energy  

調べても分からず、ChatGPTにこのグラフの元記事のアドレスを知らせると、すぐに返事があった。




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米連邦債務の上限引き上げを巡り、バイデン米大統領と野党・共和党のマッカーシー下院議長が5月22日、会談した。事務レベルでの協議が行き詰まっており、広島市で開かれた先進7か国首脳会議(G7サミット)に出席していたバイデン大統領が、米国に戻る大統領専用機からマッカーシー議長と電話で協議し、再会談で一致したもの。

しかし、マッカーシー氏は会談後、記者団に「生産的な話し合いだったが、まだ合意はしていない。前の年度よりも支出を減らさないといけない」と述べ合意点を見い出すために事務方の交渉が「夜通し」で行われるとの見通しを示した。

議会で関連法案を可決するのに数日を要するとみられるため、デフォルトを回避できるタイミングで法案を成立させるには、週内に合意をまとめる必要があると述べた。

バイデン大統領は声明を発表し「債務不履行を防ぎ、経済の大惨事を避けるための生産的な会談だった」としたうえで「債務不履行はありえない。前に進む唯一の方法は超党派の合意に向けて誠実に取り組むことだ。合意していない分野がいくつかあるが協議を続けていく」としている。

イエレン米財務長官は、5月21日のインタビューで、債務上限の引き上げが行われなければ6月1日にも財政資金が枯渇すると改めて指摘した。「これは厳密な期限だ」と語り、早期の合意を求めた。

6月1日まで残り10日ほどとなった。継続協議で妥協案を探る。

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2023年1月19日に債務は31兆4000億ドルの上限に到達した。

下院議会は4月26日、連邦債務上限を最大1兆5,000億ドル引き上げ、連邦政府の支出を4兆5,000億ドル削減する法案を賛成217、反対215で可決した。

▽バイデン政権の看板政策である再生可能エネルギーやEV=電気自動車などに対する税額控除の廃止または修正
▽低所得者向けの医療保険制度「メディケイド」や食料支援を行う際の条件の厳格化
▽石油・天然ガス・鉱物などエネルギー資源開発プロジェクトに対して政府の許認可プロセスを迅速にすることなども盛り込んでいる。

法案は上院に送られるが、上院民主党トップの"Chuck" Schumer 院内総務は「上院に到着した直後に廃案になる」と述べており、民主党が多数の上院で可決される見込みは低い。

2023/5/2 米債務上限問題で与野党が攻防

バイデン大統領は5月9日、連邦議会下院のマッカーシー議長らと、懸案となっている債務上限問題への対応に関する協議を行った。2月に続いて2回目となる。

会合は1時間程度行われ、会合後に報道陣の取材に応じたマッカーシー議長は「新しい動きはなかった」と述べた。共和党側は4月に下院で可決した独自の歳出削減法案を基に債務上限引き上げの条件として厳しい歳出削減の確約を要求した。他方、バイデン大統領を含む民主党側は予算の修正協議には応じるものの、債務上限については従来どおり無条件での引き上げを主張した。

バイデン大統領は5月16日、ケビン・マッカーシー議長らと3回目の協議を行った。

会合後に報道陣に答えたマッカーシー議長は「両者には依然大きな隔たりはあるが、今週末までに合意に至ることは可能であり、それほど難しくはない」と述べ、 前向きな姿勢を示した。バイデン大統領も「双方が求めるもの全てを得ることが難しいことを認識すれば、超党派の予算合意に至る道は開ける」としており、両者に歩み寄りがみられた。今後、スタッフ間で協議を続け、5月19日に広島で開かれるG7サミットへのバイデン大統領の参加後に再度協議するとし た。

バイデン大統領のG7への参加に関しては、債務上限問題の協議を優先して、オンライン参加となるとの可能性も取り沙汰されていたが、当初の予定どおり対面参加 した。ただし、訪日後に予定していたオーストラリアとパプアニューギニア訪問を中止した。


バイデン大統領が日本を訪問している間も担当者レベルでの交渉は続けられ、マッカーシー下院議長は18日、「何も合意はしていないが、合意できるかもしれない。道筋は見えてきた」と述べて、話し合いが前向きに進んでいることを示唆した。しかし、19日になって事態は一転し た。

交渉を担当する共和党の議員が「交渉が生産的ではない」と述べて協議が一時、中断した。これについてホワイトハウスの報道官は、広島で行った記者会見で「双方のあいだに深刻な開きがあることは間違いない」と認め「共和党側はアメリカ経済を人質にしてはならない。経済不況を引き起こし、何百万人もの雇用が失われるおそれがある」と述べてけん制した。

マッカーシー下院議長は20日、「不幸なことだがホワイトハウスは交渉をひっくり返している。共和党はG7広島サミットからバイデン大統領が戻ってからでないと交渉には応じられない」と述べた 。

バイデン大統領はG7広島サミットが閉幕したあとの記者会見で、 野党・共和党の提案は「率直に言って受け入れがたい」と述べ、意見の食い違いが依然として大きいことを明らかにした。これまでの歳出削減と新たな歳入の組み合わせによる3兆ドル近い財政赤字の削減に加えて 、新たに1兆ドル以上の支出削減案を提案 したにもかかわらず、共和党側は富裕層などを守りながら、100万人近い人たちへの食料支援を危険にさらすような提案をしていると述べ、「共和党がその極端な立ち位置から動く番だ」と訴えた。

「例えば、昨年2000億ドルを稼いだ石油産業に対する300億ドルの減税を可能にするような内容には同意しない 。低所得層向け公的医療保険のメディケアを巡って2100万人の米国人の医療を危険にさらす一方で、(石油産業に)さらに300億ドルもの優遇措置は必要ない」と述べた。

アメリカのメディアは共和党が低所得者向けの医療保険制度や食料支援の条件を厳格にすべきだと提案していると伝えてい る。

これに対し、マッカーシー 議長は「私の立場は変わらない。子供や孫を犠牲にして、持ってもいない金を使い続けるわけにはいかない」とツイッターに投稿し、さらなる支出の削減を求めた。

ーーー

民主党上院議員団はバイデン大統領に対し、共和党との債務上限交渉が不調に終わった場合のデフォルト(債務不履行)回避に向け、合衆国憲法修正第14条の発動に備えるよう求めた。

5月18日に公表された書簡によると、民主党と会派を組む無所属の"Bernie" Sanders議員が率いる11人の議員は、上限引き上げへ超党派合意を目指すバイデン氏の努力を評価しつつ、議会共和党は「誠実に行動していない」と指摘した。

その上で、「合衆国の公的債務の効力が問われてはならない」と規定している修正第14条に言及 し、「この権限を用いれば米国は滞りなく支払いを続けることができ、世界的な大惨事を防ぐことができる」とした。

バイデン大統領は今回、議会抜きで債務上限を引き上げるために合衆国憲法修正第14条を発動する権限が自身にあるとの考えを示したが、その法的理論を検証する時間はほとんどないと述べた。「問題は、それが可能かどうか、また異議申し立てが行われず、結果的に問題の日付を過ぎても米国債がデフォルトにならないような時期に、条項を発動することができるかどうかということだ。これは未解決の問題だ」とした。

2023/5/9 米国の債務上限問題と米憲法修正第14条



米財務次官は5月15日、デフォルト回避に向けた方法として提案された「1兆ドルのプラチナコイン(法定通貨)を鋳造する」 という考えを否定した上で、実行可能な解決策は議会が連邦債務上限を引き上げることだけだと述べた。

米国の主要メディアに「米国財務省が額面1兆ドルのプラチナコイン(法定通貨)を発行することで公的債務上限を実質的に1兆ドル引き上げることが可能 」との話が流れている。

1996年に米議会で「財務省は任意の額面、大きさのプラチナコインを法定通貨として鋳造することができる」という法律が可決された。記念貨幣発行を意識した動きであった。

しかし、財務省が例えば1兆ドルの額面のプラチナ貨幣を発行して、米連邦準備理事会(FRB)に持ち込み、財務省口座に入金すれば、米国債を発行せずに、1兆ドルが調達できることになる。このプラチナ法定通貨が市中に流通すること はなく、鋳造にあたり議会の承認も必要ない。




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