Dowは11月28日、カナダ・アルバータ州Fort Saskatchewanにおいて、世界初のScope 1 and 2 emission がネットゼロのエチレンクラッカーと誘導品工場を建設する「Path2Zero」(path to zero) プロジェクトへの最終投資を決定したと発表した。

Scope 1 は、燃料の燃焼や、製品の製造などを通じて企業・組織が「直接排出」するGreen House Gas
Scope 2 は他社から供給された電気・熱・蒸気を使うことで間接的に排出されるGreen House Gas

政府の補助金等を除き、65億ドルを投資するもので、エチレンクラッカーを新設、PEを200万トン増設するのに加え、既存の製造装置をネットゼロのスコープ1および2の排出量に改修することを含んでいる。この投資により、Dowの世界的なエチレン生産能力の20%を脱炭素化する見込み。

Dowによると、本プロジェクトに約15億ドルの補助金が国や地方政府から供与される見込み。

2024年に建設を開始する。2027年にエチレン、ポリエチレンの能力を1,285千トン/年増やし、2029年に更に600千トン増やす。

net-zero Scope 1 and 2 emissions の達成のため、Linde社の空気分離および自己熱改質技術を活用する。

エタンクラッカーのオフガスを水素に変換する。この水素は、炉へ供給されるクリーンな燃料として使用される。さらに、排出される二酸化炭素量が捕捉され、貯蔵される。既存の排出量を約100万トンCO2相当削減し、現地の新たな生産能力の追加によるすべての排出を抑制する。

米連邦議会下院は12月1日、経歴詐称や選挙資金の不正利用などが指摘され、複数の刑事事件でも訴追されている共和党のGeorge Santos下院議員の除名処分を、超党派の賛成で可決した。

共和党 民主党 合計 欠員
賛成 105 206 311  
反対 111+本人 2 114  
棄権 5 5 10  

 合計

222 213 435 0
今後 221 213 434 1


下院による Santos 議員の除名決議はこれで3回目。

今回の下院の採決で超党派の311票が賛成し、初めて、憲法が議員除名に必要と規定する3分の2の賛成に達した。反対票は本人を含め114票だった。倫理委員会の調査で新たな窃盗などの疑惑が出てきたことを受け、過去に除名に反対してきた共和党議員の多くが賛成に回った。

米国憲法 第5条[議会手続]
[第2 項]両議院は、各々その議事規則を定め、秩序を乱した議員を懲罰し、3分の2の同意によって議員を除名することができる。

空席を埋める特別選挙は来年2月ごろに行われる見通し。

下院議員が除名となるのは2002年以来で、史上6人目。

過去に除名された5人のうち3人は、南北戦争で南軍を支持したのが理由だった。他の2人は、刑事事件で連邦法違反罪に問われて有罪判決を受けていた。

なお、上院は15人で、うち14人は南北戦争で南軍を支持。1人は土地投機にからみ、スペイン領であったフロリダとルイジアナを英領にすべく策略した件で1798年に議員として最初に除名。


Santos議員は2022年の中間選挙で、ニューヨーク州ロングアイランドから初当選した。しかし、当選後には複数の経歴詐称や詐欺疑惑が浮上した。

2022年11月の当選から間もなく、New York Timesが経歴詐称の疑惑を報道。議員は詐称を認めたが「犯罪者ではない」として当選を辞退しなかった。

これを機に、大学のバレーボールチームのチャンピオンであったとか、ゴールドマン・サックスやシティグループで働き、富を築いたとか、彼の母親が9/11のテロ攻撃でワールドトレードセンターにいたと主張するなど、数多くの誇大広告と事実に反する主張をしていたことが発覚した。

その後も、犬のブリーダーに対する詐欺行為など、議員に関する疑惑が相次いで明らかになった。

今年5月には、資金洗浄や公金横領など23件の犯罪について連邦検察に訴追された。本人は無罪を主張し、公判開始を控えている。司法取引を交わさずに有罪となった場合、約20年の実刑判決を受ける可能性がある。

11月に公開された下院倫理委員会の報告書では、「下院候補としてのあらゆる側面を自分個人の経済的利益のために」悪用したと断定された。

倫理委は、美容目的のボトックス治療や私的なクレジットカード支払い、ポルノなどを含む有料コンテンツサイト「OnlyFans」の代金、ニューヨーク郊外のリゾート通いなどに、選挙資金を使っていたと結論した。

バイデン米大統領は2022年8月16日にインフレ対策法案:Inflation Reduction Act of 2022 に署名し、法案は成立した。大統領は「気候変動に関するこれまでで最大の前進だ」と強調した。

エネルギーコスト引き下げ、クリーンな生産、2030年までにカーボン排出の40%削減を狙い、3,690億ドルを投じる。

新法では、

低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に1台当たり最大7500ドルの税控除を受けられる。

既存のEV減税は適用対象を自動車メーカーごとに20万台と定めていたが、台数の上限を撤廃する。  

ただ、EV減税の対象となる新車について、北米地域での最終組み立てを義務付けた。さらにEV用電池の原材料である重要鉱物の調達先を、米国か、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に事実上制限する。世界シェアの高い中国製品をサプライチェーン(供給網)から排除する狙い。

2022/8/24 米「インフレ抑制法案」成立 電気自動車補助金で波紋 


IRAが成立して以来、米国のクリーン車両およびバッテリー供給チェーンにおいて約1,000億ドル近くの民間投資が発表されている。

ルールでは、2024年から対象のクリーン車両は「懸念される海外企業」(FEOC)が製造または組み立てたバッテリー部品を含んではならず、 2025年からは、「懸念される海外企業」が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならない。

しかし、この定義が明らかにされていなかった。

主な要件(控除額は個人の場合)
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -

電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること(日本については下の注を参照)

2023
2024
2025
2026
2027ー
40%
50%
60%
70%
80%

2025年からは、「懸念される海外企業」が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならない。

どちらか
必須
3,750ドル

電池用部品の50%が北米で製造されていること

2024-25
2026
2027
2028
2029-
60%
70%
80%
90%
100%

2024年から、「懸念される海外企業」が製造または組み立てたバッテリー部品を含んではならない。

3,750ドル

注)2023年3月28日に「重要鉱物のサプライチェーンの強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(日米重要鉱物サプライチェーン強化協定:日米CMA)が署名され、即日発効となった。米国は、同協定をインフレ抑制法(IRA)上のFTAとみなす。


「懸念される海外企業」の定義が明らかでなかったが、財務省は12月1日、
「懸念される海外企業」と見なされるエンティティを定義する提案ガイダンスを公表した。
     https://public-inspection.federalregister.gov/2023-26513.pdf

それによると、「懸念される海外企業」は、懸念国(中国、ロシア、イラン、北朝鮮)の企業 及びその企業が25%以上所有、またはコントロールする企業とされる。

In general, an entity incorporated in, headquartered in, or performing the relevant activities in a covered nation would be classified as a FEOC.
For purposes of these rules, an entity would be "owned by, controlled by, or subject to the direction" of another entity if 25 percent or more of the entity's board seats, voting rights, or equity interest are cumulatively held by such other entity.

ライセンスその他の契約も"control" しているとみなされる可能性がある。
  In addition, licensing agreements or other contractual agreements may also create control.

バッテリー部品が条件を満たすかどうかは、該当する重要鉱物の抽出、加工、およびリサイクルのすべての段階のレビューによって決定される。

例えば、懸念外国法人でない企業によって抽出された鉱物が、懸念外国法人によって加工された場合、準拠していないと見なされる。


自動車メーカー各社は新ルールでどうなるか検討しているが、Fordは同社のMustang Mach-E EV が適用外になりそうだとしている。


Ford は2月13日、ミシガン州Marshall近郊に35億ドルを投じて電気自動車(EV)用のリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池製造工場 BlueOval Battery Park Michigan を建設する計画を発表した。
Fordの単独事業で、中国の大手電池メーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)から技術のライセンス供与や技術支援を受ける。CATLは出資はしない。

2023/11/23 フォード、バッテリー工場計画を縮小

工場自体はフォードが全額出資で運営するため、フォードはこの工場でつくった電池を積むEVも税優遇の対象になりうるとしてきた。だが、今回の規制では、ライセンスその他の契約も"control" しているとみなされる可能性があり、そうなれば控除対象外となる。
コントロールの有無をどう政府当局が判断するかは不透明。

米政府は規制を巡り、1カ月程度、企業から要望を聞き取り、最終案を決める予定だが、野党・共和党は、今回のルール案にも「抜け穴が多い」として批判を強めており、最終案はさらに厳格になる可能性もある。

OPECプラスは11月30日、オンライン形式で閣僚級会合を開き、現行の協調減産態勢を維持することで合意した。

半年に1回の閣僚級会合では加盟国の生産枠を引き下げる追加の協調減産に踏み切れるかどうかが焦点だった。事前の折衝でサウジなどが中心となり追加の協調減産を模索していた。

これに対し、アフリカの産油国、ナイジェリアとアンゴラが反発した。

ナイジェリアの2024年の生産枠(138万バレル)は2023年の174万バレルから大幅に削減されることが決まっているが、足元の生産量はすでに枠の上限に迫っており、これ以上の減産には同意できない状況である。

アンゴラも状況は似ており、OPEC脱退も辞さないほど激しく反発していたという。

サウジアラビアの要請を受け、OPECプラス全体の協調減産が議論されたが、各国の足並みが整わず、見送りとなった。「減産で価格下支えを図りたいサウジアラビアなどと、今の価格で多く売りたい一部産油国の思惑のずれが大きい」とされる。


協調減産は見送りになったが、サウジアラビアなど有志国は現状の国際石油市場と原油価格の動向、今後の国際石油需給バランスの展望を踏まえ、2024年1~3月期に日量計約220万バレルの自主減産を行うことを決めた。

220 万B/D 減産の内訳は次の通りで、減産は来年1月1日から3月末まで実施されることとなっている。

Saudi Arabia:1,000千バレル/日、Iraq:223千バレル/日、UAE:163千バレル/日、Kuwait:135千バレル/日、Kazakhstan:82千バレル/日、Algeria:51千バレル/日、Oman:42千バレル/日、合計 1,696千バレル/日

加えて、ロシアは2023年5~6月の輸出水準から500千バレル/日分の輸出を削減する。内訳は原油が200千バレル、精製油が200千バレルとなっている。

合計で約220万バレル/日となる。

これはOPECプラスとしての発表ではなく、各国の個別の発表で、あくまで加盟国が自主的な取組みとして追加減産を行う意思を表明したものである。

また、4月以降は市場の状況を見据えつつ、徐々に自主減産量を縮小していく方向性も同時に示されている。


なお、OPECプラスは、産油国トップ10入りしているブラジル(生産量は日量約320万バレル)を加盟国として招待することを決めた。OPECプラスの減産をOPECプラスに属していない産油国の増産が打ち消す構図になっていることが背景にある。

ブラジルの鉱業・エネルギー相は、ブラジルが来年1月に協力憲章に参加すると述べた。憲章は全ての産油国に開かれているもので、加盟国に対する拘束力はなく、対話と意見交換のためのプラットフォームを提供するもの 。OPECプラスに参加することになったブラジルが協調減産に応じるかどうかも未知数である。

OPECとロシアなど11の非加盟の主要産油国(ロシア、メキシコ、オマーン、アゼルバイジャン、カザフスタン、バーレーン、ブルネイ、赤道ギニア、マレーシア、スーダン、南スーダン)は2016年12月10日、ウィーンのOPEC本部で閣僚会合を開き、協調減産で合意した。

ーーー

「OPECプラス」は2022年10月5日に閣僚級会合を開き、11月の日量200万バレル減産で合意した。

OPECプラスは新型コロナウイルス禍の2020年5月、世界需要の1割に当たる日量970万バレルの協調減産に踏み切った。その後、減産量を減らしてきて、9月には10万バレルの増産としたが、景気減速などで需要が減るとの見方が強まり、前回の9月会合で10月に日量10万バレル減産することを決めた。

当初、100万バレルの減産と噂されたが、一気に200万バレルとした。200万バレル減産は世界需要の2%に当たり、2020年の970万バレル減産以来の規模になる。

2022/10/6 OPECプラス、11月は日量200万バレル減産

OPECプラスは2023年4月2日、5月から日量115万バレルの減産を実施すると発表した。市場の安定を維持するために供給を据え置くとこれまで約束していたため、協調減産は意表を突く格好となった。ロシアが3月から単独で実施している減産を加えると、昨年末比で日量 165万バレルの減産となる。

2023/4/3 サウジ、日量50万バレルの減産を表明、クウェートやUAEも追随、OPECプラスとして昨年末比 165万バレル(計365万バレル)の減産 

「OPECプラス」は2023年6月4日、今後の原油の生産量を決める会合を開き、日量200万バレルの協調減産を2024年末まで延長することで合意した。

サウジアラビアは自主的に7月に日量100万バレルを追加で削減すると表明した。5月からの50万バレル減産に追加するもの。

2023/6/6 OPECプラス、協調減産を2024年まで延長

これらにより、現状は下記のとおりとなっている。

2022/11
 協調減産
2023/5 2023/7

2024/1-3

自主減産

自主減産

サウジアラビア OPEC+ 全体 500 +1,000 1,000
イラク 211 223
UAE 144 163
クウェート 128 135
カザフスタン 78 82
アルジェリア 48 51
オマーン 40 42
ガボン 8
小計 1,157
ロシア (輸出削減) 500 500
合計 2,000 1,657 2,657 2,196
総計 2,000 3,657 4,657

2022 年11 月から実施されている 200 万B/D の協調減産は市場の状況に鑑み、2024 年末まで延長することが定まっていた。今回、それを確認した。

原油価格をさらに下支えするものとして、追加の自主減産が行われているが、自主減産の期間は 2023 年末までとなっており、その行方が市場関係者の注目するところとなっていた。

中国の新興のEVメーカーで、中国版Teslaと呼ばれる上海蔚来汽車(NIO Inc.)は11月21日、大手自動車メーカーの重慶長安汽車とバッテリー交換事業で協力協定を締結したと発表した。交換型バッテリーの標準規格化や、バッテリー交換ネットワークの構築と共有、交換型バッテリー搭載車種の研究開発、バッテリー資産管理メカニズムの構築などに共同で取り組む。


NIOの李斌CEOは「バッテリー交換事業に着手した時から、業界全体に事業領域を拡大することを試みていた。NIOの電池交換ネットワークと、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)を掛け合わせた『AIoT』技術を採用したパワークラウドは、5年の発展を経て、研究開発や建設、運営などで豊富な経験を積み重ねており、電池交換業務を業界向けに開放する準備が整った」と説明した。今回の協力によって長安汽車と提携し、新エネルギー車産業の質の高い発展と自動車業界の低炭素化を推進していくと述べた。


更に、蔚来汽車(NIO)は11月29日、浙江吉利控股集団との間で、バッテリースワップに関する戦略的パートナーシップ契約を締結したと発表した。電池の標準化や技術、モデル開発で提携し、効率的なバッテリー資産管理メカニズムの確立や電池交換可能な車両の開発などを目指すとしている。


電池交換により、ドライバーは車両を充電ポイントに接続するのではなく、消耗したパックをフル充電されたパックに素早く交換することが可能になる。

NIOは2023年5月、第3世代となる新たなバッテリー交換システムを発表した。同社のEVの駆動用バッテリーを5分以内に交換できるようになり、欧州市場にも導入される。

この時点でNIOは、中国で1,300か所以上のバッテリー交換ステーションを稼働させ、累計2,000万回以上の交換作業を完了させている。

(10月26日時点でNIOは中国全土で2,000カ所のバッテリー交換ステーションと、3,281カ所の充電ステーションを建設・運営している。)

欧州ではノルウェー、オランダ、ドイツでサービスを開始し、13か所のステーションですでに1万2000回以上の交換が完了しているという。

NIOは、同社のEVの「充電」の56%以上がバッテリー交換によるものであるとしている。NIOの全車種はバッテリー交換が可能で、交換ステーションでは車両下部からバッテリーを取り出し、フル充電されたユニットに入れ替えることができる。一般的な急速充電よりも手軽で素早い交換作業を特徴とする。

第1世代の交換ステーションは2017年に導入され、2021年には第2世代が登場した。最新の第3世代では、第2世代よりも交換にかかる時間が1分短縮され、約4分40秒で完了するという。実際の機械的な交換作業は約2分30秒で行われ、残りの時間は安全確認と車両の位置決めによるもの。

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バッテリー交換ステーションにはバッテリーユニットが保管されている。電池を交換するためには、車体床下の電池位置とステーションの機器の位置を正確に合わせる必要があり、この位置合わせのために、NIOの車両は自動運転での駐車を利用している。自動運転でも調整できない位置ずれは、ステーション側の設備で微調整が行われる。

車を持ち上げ、横からマシーンが動いてきて古い電池 を自動的に取り外し、新しい電池を取り付ける。



https://www.youtube.com/watch?v=kBY6nkkyD7M

自動的に使用済みの車載バッテリーを取り外し、新しいバッテリーを取り付ける。

   https://hasimoto-soken.com/archives/3536

第一三共は11月17日、厚生労働省との間で、2023年秋開始接種に使用するオミクロン株XBB.1.5対応のCOVID-19新型コロナウイルス感染症 1価mRNAワクチン(DS-5670)を供給することに合意したと発表した。

今回の合意は、厚生労働省による本剤の薬事承認を条件とし、2023年度中に140万回分を供給するもの。

厚労省の専門部会は11月27日、本ワクチンの承認を了承した。

今後、正式承認を経て、12月上旬にも医療機関への配送が始まり、現在実施中の接種での使用が予定されている。

これまで海外メーカーのワクチンに依存していたが、国産ワクチンの使用にめどが立ったことで、今後、新たな変異株が流行しても、海外企業に頼らずワクチンを国内で調達できる体制が整う。

ーーー

第一三共は2023年1月13、開発中の新型コロナウイルス感染症に対するmRNAワクチン 「DS-5670」について、追加免疫の国内製造販売承認申請を行った。

国内の既承認のmRNAワクチン(Pfizer-BioNTech 、Moderna)の初回免疫(2回接種)完了後の健康成人及び高齢者約5,000名を対象とした国内第1/2/3相臨床試験の結果に基づくもの。

2023/1/16 第一三共、COVID-19に対するmRNAワクチンDS-5670国内における製造販売承認申請 

第一三共は8月2日、新型コロナウイルス感染症に対する起源株1 mRNAワクチン「ダイチロナ®筋注」(DS-5670)について、「SARS-CoV-2による感染症の予防」を適応とした追加免疫における国内製造販売承認を取得したと発表した。

国産初のmRNAワクチンで、ファイザーやモデルナのワクチンは冷凍保存が原則必要だが、冷蔵(28℃)での流通・保管が可能となるため、医療現場での利便性の向上が期待できる。

しかし、今回承認された本剤は追加接種に用いられる起源株1価のmRNAワクチンであることから、供給を予定していない。

同社は、XBB.1系統1価ワクチンに対応できるよう開発を進めた。


第一三共は9月6日、開発中のCOVID-19に対するmRNAワクチン(「DS-5670」)の追加免疫を対象とした日本での第3相臨床試験において、主要評価項目を達成したと発表した。

同社は翌9月7日に、12歳以上の追加免疫に対するオミクロン株XBB.1.5系統対応のCOVID-19 1価mRNAワクチン(DS-5670)について、日本における製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表した。

今回、これが承認されるもの。

第一三共は新型コロナワクチンを埼玉県北本市の工場で製造する。「政府と合意した140万回分は生産のめどが立っている」としている。

厚労省は9月〜2024年3月末に実施する接種用にPfizer、Modernaと計4500万回分を購入契約している。第一三共製は両社に比べ購入量が少ないため、接種できる場所は限られる見通し。

PfizerやModernaが開発したmRNAワクチンは、ウイルスのスパイクたんぱく質全体が作られるが、第一三共のワクチンは、スパイクたんぱく質の中でも、ヒトの細胞と結合するRBD=受容体結合ドメインという部分だけが作られるため、設計図となるmRNAの長さがより短くなっており、製造工程で品質を管理しやすいほか、変異ウイルスに対応してmRNAを作り直す作業が進めやすいといった利点があるという。

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厚労省の専門部会は11月27日、Meiji Seika ファルマの新型コロナワクチン「コスタイベ筋注用」の製造販売承認についても了承した。武漢由来の従来型対応のため、現在の接種では使われない見通し。

米国のバイオ企業 Arcturus Therapeutics が開発したレプリコンワクチンと呼ばれるタイプ(与後に体内で成分が増える自己増殖型ワクチン)で、PfizerやModerna製の既存ワクチンに比べ、少ない接種量でワクチンの効果が持続することが期待されている。

Arcturus Therapeuticsは2013年に設立された米国を拠点とする製薬企業で、後期臨床ステージの感染症用ワクチンをはじめ、肝臓や呼吸器の希少疾患に有効なmRNA医薬品の研究開発を行っている。

Meiji Seikaファルマが日本での供給や販売を担う。

従来型に対応したワクチンは4月に初回免疫用、6月30日に追加接種用として厚労省に製造販売承認を申請した。今回、これが承認される。

Meiji Seikaファルマは本年7月、オミクロン型の派生型「XBB.1.5」に対応したワクチンを、2024年1月までに厚生労働省に申請すると発表した。小林社長は「国内で生産体制を持つことが重要だ。二度と『ワクチン敗戦』と言わせないために努力をしている」と述べた。

Meiji Seikaファルマはワクチンを、医薬品の受託製造会社のアルカリス(千葉県柏市)と連携し、福島県南相馬市の工場で生産する予定。

アルカリスは、2017 年に武田薬品の創薬プラットフォーム事業を継承し事業を開始した日本初の創薬ソリューションプロバイダーである Axcelead Drug Discovery Partnersのグループ企業アクセリードが、Arcturus Therapeutics とのJVで設立したもの。

Arcturus Therapeuticsの研究開発パイプラインの製造拠点としての責任を果たしつつ、世界中の製薬会社、創薬ベンチャー、アカデミアなど幅広い顧客に高品質のmRNA医薬品の安定供給を約束する世界初の統合型mRNA医薬品CDMOを目指している。

Bayerに2つの打撃が相次いで襲った。

1)MonsantoのRoundup訴訟

Bayerは5年前に米 Monsantoを630億ドルで買収したが、同社の主力の除草剤Roundupを巡る訴訟で敗訴が相次いでいる。最高裁への上訴も棄却された。

2018/8/28 Bayer のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決 

2020/6/21 米最高裁、Bayerの除草剤問題での上訴を審議せず  Bayerの上訴を棄却


今回、11月17日に Missouri 州Cole Countyで陪審員はMonsanto敗訴の判断を下した。

原告のValorie Gunther (New York)、Jimmy Draeger (Missouri)、Daniel Anderson (California)の3人に損害賠償として合計61.1百万ドル、懲罰賠償としてそれぞれに5億ドル、合計15.6億ドルの支払いを命じた。3人は非ホジキンリンパ腫に罹ったが、それぞれ、Roundupの使用の結果であると主張している。(懲罰賠償額は最高裁の基準を上回っており、控訴で引き下げられる可能性がある。)

陪審はこれについて、過失、設計上の欠陥、Roundupの使用の潜在的な危険性を原告に警告していないことでMlonsantoに責任があると判断した。

11月時点で、Monsantoはほぼ10万件の訴訟で和解し、約110億ドルを支払ったが、まだ4万件が残っている。

Bayerは訴訟関連費用して160億ドルを引き当てているが(当初116億ドル、2021/8に追加45億ドル)、今回の陪審の判断は、引当を全額またはそれ以上の支払いを必要としかねない衝撃的な内容である。

2)抗凝固薬アスンデキサン

Bayerは11月20日、血栓症や脳卒中を予防する新規の経口抗凝固薬 asundexian の大規模後期臨床試験について、有効性が見られないため中止すると発表した。1万8000人の患者を対象に2022年8月に開始した試験の途中のモニタリングで、米Bristol-Myers Squibb/米PfizerのApixaban(製品名・Eliquis)に有効性で劣ることが示され、独立データモニタリング委員会が中止を勧告した。


asundexian はBayerのパイプラインで最も有望視されていたプロジェクトの1つで、年間50億ユーロ(55億ドル)以上の売り上げを生み出すと予想し、2026年に欧州で主要な特許による保護を失う抗凝固薬「Xarelto」(一般名・Rivaroxaban、日本製品名・イグザレルト)に代わる収益源としての自信を示していた。

Xareltoでは米 Johnson & Johnsonと開発コストを共有し、米国市場の大部分を同社に任せたが、 asundexianでは単独開発を選択し、米国でのマーケティングや流通に多額の費用を投じる用意をしていた。

Xareltoの売上高は2022年で4,516百万ユーロ(7300億円)で、特許切れまでに後継候補でXarelto 以上の売上高を見込んでいたasundexian の代わりが見つからない場合、悲惨なこととなる。

2023/11/8 米国医薬業界、特許切れの恐怖:住友ファーマのケース


Bayerの株価は11月20日に急落し、12年ぶりの安値となった。

今年6月に就任したBill Anderson CEO(直近はRocheの医療用医薬品部門CEO)は、11月8日発表した2023年7〜9月期決算(最終損益は45億6900万ユーロの赤字)について「今期の業績はまったく容認できない」と語った。

管理職の削減とともに、主要部門である農薬・種子(Crop Science)かコンシューマー・ヘルスの分社化を検討していると明らかにした。

本年7~9月期でCropScienceで3,964百万ユーロ(約6300億円)の特別損失があり、全社の金利・税前損益が3,594百万ユーロの赤字、純損益が4,569百万ユーロの赤字となった。Pharmaceutical、Consumer Health はほぼ前年並み。

AGC (旧称 旭硝子)の合成医農薬CDMO製造子会社であるAGC若狭化学は11月17日、福井県三方上中郡の上中工場において大型製造ラインの竣工式を行った。同社の製造能力を 1.5 倍に拡張する増設で、2024年第1四半期の稼働開始を予定している。

AGC若狭化学はフッ素・ヨウ素を含むハロゲン化学、新規製法の開発力、廃棄物およびレアメタルのリサイクルによる資源の有効活用とそれらによるコスト低減技術等を強みとし、新規開発品を含めた原料から原体までのワンストップの受託製造を行っている。また、cGMP対応の医薬品製造ラインも持つ。

CDMO (Contract Development and Manufacturing Organization) は、医薬品製造および製造プロセス技術の開発を受託・代行する事業。

AGCグループは、化学品事業ったフッ化合物合成など多様学合成技術みに1985合成医農薬CDMO事業開始し、以来、高付加価値かつ高品質製品発・製造目指し、積極的買収・設備投資い、事業拡大してきた。

同社の説明:

AGCは「素材をつくる技術開発力」がベースとなっている会社で、その技術力で世界や社会にどのように貢献できるかと考えたときに、ライフサイエンス事業に注力することになった。


化学合成による低分子医薬品から微生物・動物細胞を用いた遺伝子組み換え技術によるタンパク質医薬品など、薬物の構造が多様化・複雑化している今日において、これらすべての工程を製薬会社一社が担うのは、現実的ではなく、「創薬」とその後の「開発・製造」の水平分業化が進んでいる。医薬品も製造プロセスを分離してアウトソースすることで、新たな医薬品を市場に送り出すまでのスピードを加速させることができる。

分離したプロセスに求められる精密な技術力をAGCが担っている。


AGCグループの ライフサイエンス事業は下記の通り。

シアトル 2017年、CDMO大手のCMC Biologicsを買収 (約600億円)
 動物細胞と微生物を用いた CDMO
2020年設備増強、新設
バークレー (カリフォルニア) 2018年増強
その後、上記と統合?
コペンハーゲン(デンマーク) 2018、2020、2024年増強
ハイデルベルグ(独) 2016年、Biomeva Gmbhを買収
 バイオ医薬品の開発・製造受託サービス
2023年増強
ボルダー(コロラド) 2020年、AstraZenecaのバイオ医薬品原薬製造工場を買収
ロングモント(コロラド) 2021年、Novartis Gene Therapiesから遺伝子治療薬工場を買収 2022年増強
マルグラート・デ・マール(スペイン) 2019年、合成医薬品原薬製造会社Malgrat Pharma Chemicals, S.L.U.買収 2022,2024年増強
ミラノ(イタリア) 2020年、遺伝子・細胞治療CDMOのMolecular Medicine S.p.A 買収
AGC若狭化学 1998年、旭硝子100%で若狭エイ・ジー・シー・ファインケミカルとして設立
医薬品中間体等,ファインケミカル製品の受託製造及び開発
2024年増強
千葉工場 2019年
買収したCMC Biologics社の技術を導入し、動物細胞を用いたcGMP対応バイオ医薬品(抗体医薬品等)開発・製造受託設備を新設
2020年増強・新設
横浜テクニカルセンター デュアルユース設備新拠点 2025年予定
平時:動物細胞利用バイオ医薬品、mRNA医薬品、遺伝子・細胞治療薬
パンデミック時:ワクチン製造



同社は2023暦年から報告セグメントを変更した。従来、化学品に包括されていたライフサイエンスを独立させた。

従来 今後
ガラス 建築ガラス
オートモティブ
電子 電子
化学品 化学品
ライフサイエンス(合成医農薬中間体・原体、バイオ医薬品等)


業績  ライフサイエンス部門の2023年1~6月の半期決算は下記の通り。

2023/1-6 2022/1-6 増減
売上高 667億円 692億円 -25億円
営業損益 6億円 102億円 -97億円

 
売上高は、コロナ特需の消滅、米国バイオCDMO新規ライン立ち上げ遅延等で減収

バイオCDMO能力増強に伴う先行費用発生もあり、減益

日産自動車は11月24日、英国での電気自動車(EV)化に、20億ポンド(約3700億円)を追加で投資すると発表した。北部Sunderland工場で3車種の新型EVを生産するほか、同国で3拠点目となる巨大電池工場「ギガファクトリー」を建設する。

2021年に表明した10億ポンド(約1900億円:文末の「EV36Zero)の投資とあわせ、累計で30億ポンド(約5600億円)をSunderland工場の体制強化 (電池工場を含む)にあてることになる。

同工場ではEV「LEAF」のほか、多目的スポーツ車(SUV)の「JUKE」と「Qashqai」を生産している が、それぞれの車種で今後、新型EVを生産する。

3つの新型EVは、現在、日産のSunderland工場で生産されている以下3車種の将来を象徴するもの 。

  • 2022年に英国で最も売れた車であり、英国で生産される全車の5台に1台を占めるオリジナル クロスオーバーである「Qashqai
  • 販売台数100万台を突破したコンパクト クロスオーバーの常識を覆すモデルである「JUKE
  • Sunderland工場で25万台以上が生産された世界初の量産EV である「LEAF

3つの次期型モデルは、以下のエキサイティングな次世代EVコンセプトモデルからインスピレーションを得てい る。

  • 流麗でモダンな美しさが特徴のクロスオーバーEVである「ニッサン ハイパーアーバン」
  • 多面的かつ多角的なエクステリアが美しいコンパクト クロスオーバーEVである「ニッサン ハイパーパンク」
  • 2021年に発表され、Sunderland工場で生産される将来のEVのインスピレーション源である「NISSAN CHILL-OUT」

今回の追加投資で生産するEVは英国のほか、欧州市場で販売する。欧州日産自動車は9月25日に、2030年までに欧州に投入する新型車はすべてEVとする目標を発表している。

EVの基幹部材の車載電池の工場も新設する。現在英国では中国企業傘下のAESCグループと連携し、2拠点のギガファクトリーを持つ。今後のEV需要拡大に合わせ、3拠点目の工場を新設する。

日産自動車は2018年8月3日、日産が保有するバッテリー事業およびバッテリー生産工場を、再生可能エネルギー事業者である中国のEnvision Group(遠景能源集団) に譲渡する契約を締結したと発表した。

エンビジョンAESCエナジーデバイス(Envision AESC Energy Devices Ltd.)は2019年4月1日、同日付で事業を開始したと発表した。その後、AESCグループに改称した。
中国の再生可能エネルギー関連企業のEnvision Group(遠景能源集団)が80%、日産自動車が20%を出資する。

2018/8/7 日産自動車とNEC、バッテリー事業を譲渡

日産自動車は2021年7月1日、英国Sunderland工場の隣接地のInternational Advanced Manufacturing Parkに、エンビジョンAESCが大規模バッテリー工場「ギガファクトリー」を建設することに協力すると発表した。
下記 EV36Zero でNo.2、今回 No.3 建設。

車両とバッテリーの生産は、「EV36Zero」のマイクログリッドによって電力が賄われ る。本グリッドは、日産の風力発電と太陽光発電の設備を融合し、日産と近隣のサプライヤーに100%再生可能な電力を供給する能力を有する予定。

2021年7月1日、日産自動車はカーボンニュートラルを加速させるEV推進ビジョン「EV36Zero」を発表した。英国のSunderland工場を中心に、CO2を出さないゼロエミッションに向けて、新たに360度のソリューションを確立していく。

この革新的なプロジェクトには、日産とエンビジョンAESC、そしてSunderland市議会によって10億ポンドが投資される。EVや再生可能エネルギー、バッテリー生産という相互に関連した3つの取り組みによって自動車業界の未来の青写真を描いた。

  • 新世代のクロスオーバーEVをSunderland工場で生産
  • エンビジョンAESC社はSunderland工場の隣接地に新たな9GWhのギガファクトリーを建設 (No.2)
  • サンダーランド市議会が主導する再生可能エネルギーを利用した「マイクログリッド」から100%クリーンな電力をSunderland工場に供給
    既存の日産の風力発電設備と太陽光発電設備に加えて、20MWの新規の太陽光発電設備が含まれる。
  • EV用バッテリーをエネルギーストレージとして二次利用することで、究極のサステナビリティを実現
  • この包括的なプロジェクトにより、サプライヤーを含め、英国に6,200名の雇用を創出

韓国のソウル高裁は11月23日、元慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、原告の請求を却下した1審判決を取り消し、日本政府に1人当たり2億ウォン(約2300万円)の慰謝料の支払いを命じた。

ーーー

韓国の元従軍慰安婦らが日本政府を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は2021年4月21日、国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除の原則」を認め、訴えを却下した。

「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」が支援する元慰安婦の李容洙氏や遺族ら20人が2015年の韓日慰安婦合意から1年後の2016年に提起した。「精神的、肉体的な苦痛を受けた」として計約30億ウォン(約2億8千万円)の損害賠償を日本政府に請求した。

日本政府が、国際法上の「主権免除」の原則を理由に訴訟に応じてこなかったため裁判が進展していなかったが、裁判所が公示送達の手続きを取ったことで、2020年から動き始めた。

当初1月13日に元慰安婦や遺族の20人による訴訟の判決が言い渡される予定であったが、判決は延期され、裁判所は追加の審理の必要性があるとみて弁論を再開した。

1審のソウル中央地方裁判所は判決で、「国際慣習法や韓国の最高裁判所の判例にのっとり、外国の主権行為について損害賠償の訴えは認められない」として、「主権免除」の原則が適用されるとの判断を示し、原告側の訴えを退けた。

「主権免除を認めなければ、外交的衝突は不可避だ」とし、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年の日韓合意の有効性も認め、原告側が控訴していた。

2015年12月28日、岸田文雄外務大臣は日韓外相会談直後の共同記者発表において,慰安婦問題について以下のとおり発表した。
ア 慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり,かかる観点から,日本政府は責任を痛感している。
 安倍内閣総理大臣は,日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する。

イ 日本政府は,これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ,その経験に立って,今般,日本政府の予算により,全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には,韓国政府が,元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し,これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し,日韓両政府が協力し,全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復,心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。

ウ 日本政府は上記を表明するとともに,上記(イ)の措置を着実に実施するとの前提で,今回の発表により,この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
 あわせて,日本政府は,韓国政府と共に,今後,国連等国際社会において,本問題について互いに非難・批判することは控える。

2021/4/21 韓国地裁、慰安婦訴訟2件で原告側の訴えを却下

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日本政府は、国家は他国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」の原則から、訴えは却下されるべきだという立場である。

しかし、2審のソウル高裁は11月23日の判決で、「現在までに形づくられた国際慣習法を考慮すると、日本に対する韓国の裁判権が認められる」と判断し、1審判決を取り消し、原告に1人あたり日本円でおよそ2300万円の慰謝料を支払うよう、日本政府に命じた。

「訴訟は被告(日本政府)が当時占領していた朝鮮半島で、国民である原告に働いた不法行為への損害賠償を請求した事案だ」と指摘。国際慣習法は、主権免除を認める範囲を狭める方向に変化しているとして、「領土内での国民に対する不法行為では、(主権)免除は否定される」と断じた。

一方、慰安婦問題の解決をうたう2015年の日韓合意について、ソウル高裁は「日本政府が裁判で意見を主張しなかったので争点にならなかった」と説明した。

今回、外務省は下記の発表を行った。

  1. 11月23日、岡野正敬外務事務次官は尹徳敏駐日韓国大使を召致し、元慰安婦等が日本国政府に対して提起した訴訟の韓国ソウル高等裁判所における控訴審において、2021年1月8日の判決に続き、国際法上の主権免除の原則の適用が否定され、原告の訴えを認める判決が出されたことは、極めて遺憾であり、日本政府として本判決は断じて受け入れられない旨強く抗議を行いました。
  2. 慰安婦問題を含め、日韓間の財産・請求権の問題は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で「完全かつ最終的に解決」済みです。また、慰安婦問題については、2015年の日韓合意において「最終的かつ不可逆的な解決」が日韓両政府の間で確認されています。
  3. 韓国政府に対して国際法違反を是正するために適切な措置を講じることを改めて強く求めます。

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元慰安婦をめぐる裁判では、2年前にもソウル中央地裁が「主権免除」の原則を認めず日本政府に賠償を命じていて、この時は日本政府が裁判への関与を拒んで控訴せず、判決が確定した。

韓国で旧日本軍の元従軍慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は1月8日、請求を認め日本政府に賠償支払いを命じる判決を出した。

調停申請時、原告は12人だったが、多くが他界し、生存者は5人となっている。

ソウル中央地裁は、原告1人あたり1億ウォン(約948万円)の支払いを命じる原告勝訴の判決を出した。

日本政府は国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」の原則から、 調停にも審理にも、一度も出席していない。

日本政府は賠償の支払いに応じていない。

2021/1/8 元慰安婦訴訟で日本政府に賠償命令 

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