Teslaは1月24日、巨大電池工場を運営する米西部ネバダ州Renoに36億ドルを追加投資すると発表した。小型電気自動車(EV)200万台分に相当する100ギガワット時の年間生産能力を持つ電池工場 と、同社初の商用車であるEVトラック「Semi」の量産工場も新設する。

EV truck Semi

Semi は当初、2019年の出荷開始を予定していたが、テスラは2022年12月に最初の納入先である米ペプシコに引き渡した。Elon Musk CEOは2022年10月に、2024年に5000万台の生産を目指すと述べている。 ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev や貨物輸送大手United Parcel Service (UPS)、小売り大手Walmartなども発注している。

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Tesla Motors とパナソニックは2017年1月4日、Tesla が米ネバダ州Reno近郊のSparksに建設した「Gigafactory」で円筒形リチウムイオン電池セルの量産を開始すると発表した。

Gigafactory内に設置されたパナソニックの電池セル工場で 新型EV(電気自動車)「モデル 3」およびTeslaの住宅用蓄電池「PowerWall」、産業用蓄電池「PowerPack」向けに、「2170」サイズの円筒形電池セルを生産する。

検証用の2170セルの生産は2016年12月に開始されており、1月4日にTesla PowerWall 2 とPowerPack 2 用のセルの生産が開始された。新型EV Model 3用のセルの生産開始は第2四半期を予定している。

Gigafactoryにおけるリチウムイオン バッテリーセルの生産量は、2018年までに年間35 GWhに達する見込みで、これはGigafactoryを除く全世界で生産されるバッテリーの総量とほぼ同量となる。

Teslaとパナソニックは2016年12月、ニューヨーク州バッファロー工場で太陽電池セルとモジュールの生産を開始することで合意した。

2017年夏にも太陽電池モジュールの生産を開始し、2019年までに1GWの生産能力に拡大するという。

両社は、この協業により、TeslaのGigafactoryにおける電気自動車用電池や蓄電池の生産により構築された関係を、更に、強化、拡大させる。

2017/1/11 Tesla Motors とパナソニック、「Gigafactory」でバッテリーの生産開始

パナソニックは2010年11月にTeslaに3000万米ドルを出資したと発表した。Teslaは、Tesla製の先進的な電池パックにパナソニックのリチウムイオン電池を搭載しており、またEV用の次世代リチウムイオン電池を共同で開発するなどパナソニックとは親密な関係があり 、パナソニックを優先サプライヤーとして位置づけている。

パナソニック は、2013年6月でTesla Mortorsの高級EVセダン「モデルS」向けリチウムイオン電池セルの累計出荷 1億個を達成した。


パナソニック エナジーは2022年10月31日、米国カンザス州に車載用円筒形リチウムイオン電池の新工場建設を正式に決定したと発表した。新工場の初期の生産能⼒は30GWh程度を予定し、2022年11月より工場建設を開始して、2024年度中の生産開始を目指す。

カンザス州、2022年714同州への投資誘致補助金制度である Attracting Powerful Economic Expansionへの申請承認した。

新工場は、ネバダ州に続く同社の米国における車載電池の第2工場となる予定で、同社は車載用円筒形リチウムイオン電池「2170」の生産体制を増強、量産時期は2024年度中を目指す。

同社は20221213日、Lucid Motorsの高級EVLucid Air車載用円筒形リチウムイオン電池供給する契約を締したと発表した。今後発売予定の Lucid Air Sapphire Project Gravity SUV を含むLucid Air フルラインップなどに電池を供給することに合意した。

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今回のTesla発表では、新バッテリー工場では最新のバッテリーセル「4680」を製造し、生産能力は年間で最大200万台分となる予定。「Semi」工場については「大量」生産施設を建設するとしたが、具体的な生産台数の見込みは示さなかった。

TeslaのEVには、パナソニック製の円筒型セルが採用されてきた。「Roadster」や「モデルS」、「モデルX」にはノートパソコンなどに使われていた直径18mm×長さ65mmの「1865」と呼ぶセルが搭載されている。
モデル3には直径21mm×長さ70mmの「2170」と呼ぶ電気自動車向けセルが採用された。エネルギー容量は「1865」から「2170」で1.5倍になる。

Tesla は2021年10月20日の第3半期決算の発表文で、同社が、航続距離が標準的なモデルの車載用電池については、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池に世界的に移行する計画だと述べた。

Teslaは現在、米国ではパナソニックのNCM電池を使用しているが、中国では寧徳時代新能源科技(CATL)から供給されるLFP電池を使用している。

CATLのLFP電池は正極側にリチウムや鉄、リンを使い、長寿命で、最高800℃までの耐熱性を有し、安全性と信頼性に優れていると言われる。火災や振動、衝突など様々な危険な状況を想定した300項目以上の試験で検証しているという。

パナソニックエナジーはTeslaからの要請で新型電池「4680」を開発中で、「技術的な面ではほぼ完成した」としている。「円筒形は安全性が高く電池モジュール内のセル密度を高められる点で大きなメリットになる。より走行距離の長いEVを実現する上で「4680」という電池セルは重要な技術になるだろう」としている。

パナソニックエナジーは2022年6月1日、「4680」のパイロットラインの稼働を開始したことを明かした。量産を担当する和歌山工場では、建屋の改装と設備製作を開始し、グローバル展開を前提とした生産システムの基盤を整えているとした。北米での生産も検討していく。

TeslaのEVには、パナソニック製の円筒型セルが採用されてきた。これに対し、「4680」は直径46mm、長さ80mmの円筒形電池で、「2170」から電池容量を5倍に高めることができる。

2021/11/4 テスラ、リン酸鉄リチウムイオン電池への世界的な移行を計画


パナソニックは現在まで、Tesla の新工場について発表をしていない。 今回の新工場建設は電池工場についてもTeslaが単独で実施する可能性が強い

同社は2022年2月にFremontのパイロットプラントで4680の電池を生産したことを発表した。その後、沈黙を守っていたが、2022年12月25日に、先週 868千個の4680電池を生産したと明らかにした。Model Y を1000台以上生産できる。

上記の通り、パナソニックもTeslaとは無関係でカンザス州に車載用円筒形リチウムイオン電池の新工場を建設する。


Teslaが電池を自製する理由としては、バイデン政権が決めたインフレ抑制法が考えられる。

新法では、低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に、下記の条件を満たした場合、1台当たり最大7500ドルの税控除を受けられる。

主な要件(控除額は個人の場合)
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -
電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること どちらか
必須
3,750ドル
電池用部品の50%が北米で製造されていること 3,750ドル

但し、財務省は2022年12月19日、2023年1月1日からの控除対象のバッテリー調達基準に関する指針の詳細公表時期を2023年3月中に延期すると発表した。変更の可能性がある。

しかし、新車購入者のほかに、インフレ抑制法の条項45Xでは、上記条件を満たした車載電池メーカーに対し「先進製造業生産控除」と呼ばれる補助金が1キロワット時当たり35ドル割り当てられる。

Tax Credit for Production of Battery Cells and Battery Modules:

A tax credit is also included for the production of battery cells and battery modules in the United States based on the capacity in kilowatt hours of the battery cell or module. The credit in the case of a battery cell is based on the capacity of the cell up to $35 per kWh, and in the case of a module is based on the capacity of the module up to $10 per kWh (or, in the case of a battery module that does not use battery cells, $45 per kWh).

For a 75kWh battery pack, this means that there could be a tax credit of up to $2,625 ($35 per kWh) for the maker of the battery cells and up to $750 for the maker of the modules ($10 per kWh). The credit is eligible for direct payment from Treasury and the right to the credit can be sold for cash to third parties (in both cases subject to certain limitations).

Musk CEOは決算発表で次の通り述べた。

"Long term we expect the value of these credits to be very significant. You can do the math, if we were to get anywhere near 1000 gigawatt hours of production or even a few hundred gigawatt hours it's very significant."

現在の方式では、Teslaとパナソニックはこれを折半することとなる。今後、Teslaが単独で生産する場合、利益は大きい。

TeslaのCFOは以下の通り述べた。

"In the case of Panasonic with its domestic manufacturing (US) we're splitting the value of the credit. So the value the credits this year will will not be gigantic but I think it could be gigantic and we think it probably will be very significant in the future."

"We think on the order of $US150 to $US250 million per quarter this year, and growing over the course of the year so far as our volumes grow".

新工場での生産能力は年間100ギガワット時だが、将来、500ギガワットまで拡大する計画である。

三井化学アグロは、農薬、肥料等の研究、開発、製造、販売、輸出入、非農業用殺虫剤の製造販売、建築資材の防虫、防蟻、防湿等の環境管理を業とする。

同社は、有機合成力を基盤に創出した独自の原体をベースに、地域別戦略に基づく国内外での農薬事業の拡大と、農薬事業の周辺領域であるPPM (Professional Pest Management)事業の拡大という成長戦略を通じて、持続的な農業の促進とQoL向上へ貢献することで、「農業化学品分野においてグローバルに存在感のある研究開発型企業」となることを目指している。

同社は2021年9月10日、Meiji Seikaファルマの農薬事業を取得することに合意したと発表した。

Meiji Seikaファルマは、非中核である農薬事業から撤退し、強みを持つ医療用医薬品の感染症領域に経営資源を集中させる。

Meiji Seikaファルマの農薬事業は、研究開発型事業として、「自然環境に配慮した農薬を提供し、農業の生産性を向上させることにより、世界的な食糧問題の解決に寄与する」というビジョンを掲げている。また、これまでにも世界初の抵抗性誘導型殺菌剤であるプロベナゾールをはじめ、特徴的な非選択性除草剤であるグルホシネートPやミツバチ等に対する環境影響に配慮しグローバル市場での拡販を狙う殺虫剤フルピリミンに代表される独創的な創農薬を実現しており、高い研究開発力を有している。

農薬事業の売却にあたり、Meiji Seikaファルマは100%子会社の㈱MMAGを設立し、同社に農薬の製造販売事業(Meiji Seikaファルマの完全子会社である Meiji アグロケミカル及び Meiji Pharma Korea Co., Ltd.の全株式を含む)を吸収分割の方法で承継させた上で、新会社MMAGの全株式を三井化学アグロに譲渡する。

グロは2022年1月4日、Meiji Seikaファルマ農薬事業取得完了した株式譲渡価額422 億円概算)である。


三井化学アグロは2023年1月24日、
昨年度にMeiji Seikaファルマから取得した㈱ MMAGの合併をはじめとしたグループ内企業の再編を行い、併せて、再編後のグループ各社の社名を変更すると発表した。

三井化学アグロは、三井化学クロップ&ライフソリューションに改称する。

再編は下図の通り。


  1. MMAGを三井化学アグロに吸収合併(2023年3月31日付)
  2. MMアグロケミカルを宇都宮化成工業に吸収合併(2023年4月1日付)
  3. 三井化学アグロの韓国支店法人の機能をMMアグロコリアに統合(条件が整い次第速やかに実行)
  4. エムシー緑化は変更無し


再編後の社名と相互関係は下図の通り。

損保大手の東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン 、三井住友海上火災保険は、ロシアやウクライナ周辺の海域で軍事行動などに伴う船舶の被害を補償する「船舶戦争保険」について、1月下旬から保険料を大幅に引き上げる見通し となった。

保険料はこれまで1200万円程度だったが、今後は2000万円超に高まる見通し。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化を受けて、保険のリスクの一部を引き受ける再保険会社が保険料を引き上げた ため。

この保険をめぐっては、再保険会社が引き受けを拒否したため、各社はいったん保険の提供を停止するとしていたが、再保険会社と交渉を進めた結果、ことし3月までは継続できる見通しにな った。

ただし、4月以降の提供は不透明な状況で、対象の海域を航行するロシア極東の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」からのLNGの調達が今後も安定的に行えるかどうかが課題 となる。


一般の海上輸送保険(船舶普通期間保険)は、船舶が沈没、座礁、座州、火災、他の船舶との衝突等の海上固有の危険に遭遇したことによって被る船舶自体の損害、費用、および賠償責任(衝突により相手船と相手船上の積荷または財物に与えた損害に対する賠償責任等)によって被る損害を補償する保険で、危険の予測が著しく困難な戦争、軍事的行動、水雷その他の爆発物等との接触、襲撃、捕獲、内乱あるいは労働争議等の危険については免責としている。

このため、別証券にて、これらの危険による損害について保険金を支払いするのが「船舶戦争保険」である。

2022年12月23日にある船会社が資源エネルギー庁にサハリン2のLNGを輸送できないと連絡した。 損保3社が「2023年1月からロシア、ウクライナ、ベラルーシの3カ国で戦争による船の被害を補償する船舶戦争保険を引き受けできない」と通知したためである。

ロシア政府による船舶の接収などのリスクに保険なしで対処することは難しいため、「サハリン2」から日本にLNGを運び込むことは事実上、不可能となる。

損保3社は英国の保険会社に最保険しているが、 実は再保険会社も、リスク分散のために「再々保険」を契約している。再保険会社が、その先の再々保険会社との交渉で物別れに終わったため、ロシアなど3カ国の戦争リスクの引き受けを拒否した 。

今回の事例では十数社にリスクを再移転していたが、数社がロシアリスクを拒否したとされる。

リスクの約9割を海外の再保険市場に移転している国内損保にとって、再保険なしの契約はあり得ない。

この事態を受け、 エネ庁と金融庁は連名で損保に保険提供の継続を要請し、再保険交渉の加速を促した。

最終的に年間の補償上限を限る形で2023年1月からの保険継続に必要な補償額を何とか確保した。日本向けの船舶戦争保険が更改を迎える4月が次の正念場となる。

海運大手3社は現在、サハリン2運営会社との長期用船契約にLNG船3隻を配船中。
内訳は日本郵船とロシア国営Sovcomflot が「Grand Elena」と「Grand Aniva」の2隻、商船三井と川崎汽船、ロシアのPRISCOが共有で「Grand Mereya」を投入している。

このほかにも日本の電力・ガス会社がLNG船を配船するFOB(本船渡し条件)ベースでサハリン2から一定量のLNGを購入している 。

ブラジルのLula大統領とアルゼンチンのFernandez大統領は1月23日、ブエノスアイレスで首脳会談を開き、両国間の貿易などで用いる共通通貨の創設に向けて協議することで一致した。

当面は通貨統合ではなく、デジタル通貨などが検討されている模様で、為替取引での米ドルへの依存を低減する狙いがある。 Lula大統領は、「メルコスルで共通通貨を作ってはどうか」と述べ、Fernandez大統領も「とても面白い」と同調した。

ブラジル側は共通通貨の名称としてSur (South)を検討しているとされる。

ブラジル通貨はReal で、現在 1 US$=5.2614 Real

アルゼンチン通貨はArgentine peso で、現在 1 US$=176.542 Peso

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両大統領は、アルゼンチンのウェブサイトPerfil に1月21日に執筆した記事で、共通通貨の構築を含む経済統合深化を目指す考えを示していた。「我々は取引の障害を克服し、規則の簡素化や近代化を進め、現地通貨の使用を促したい」として「金融と貿易の双方に用いることが可能な南米共通通貨の議論を進めることを決めた」と指摘している。

また、地域の統合強化にはアルゼンチンとブラジルの良好な関係が重要だと強調し、両国とパラグアイ、ウルグアイの4カ国で構成するメルコスル(南米南部共同市場)の強化も訴え、「メルコスルが世界との効果的な統合のためのプラットフォームになることを望んでいる」と言及した。

The fluid and dynamic relationship between Brazil and Argentina is essential for the advancement of regional integration.

Together with our partners, we want Mercosur to constitute a platform for our effective integration with the world, through the joint negotiation of balanced trade agreements that respond to our strategic development objectives.

We intend to break down the barriers to our exchanges, simplify and modernize the rules, and encourage the use of local currencies.

We also decided to advance discussions on a common South American currency that can be used for both financial and trade flows, reducing operating costs and our external vulnerability. We decided to advance discussions on a common South American currency


英紙フィナンシャル・タイムズはこれに先立ち、アルゼンチンとブラジルが今週、共通通貨に関する準備作業の開始を発表すると報じていた。

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ブラジルとアルゼンチンは2019年にも両国の共通通貨の構想が浮上した。当時のブラジルのボルソナロ大統領、アルゼンチンのマクリ大統領が合意した。メルコスルの4カ国でも共通通貨の創設に向けた協議を進めていくことで一致していたが、ブラジル中央銀行が慎重姿勢をみせたことで大きな進展はみられなかった。

国際通貨基金(IMF)によると、両国の人口合計は2億6000万人、国内総生産(GDP)は2兆5200億ドル(約330兆円)の経済圏となる。英紙フィナンシャル・タイムズによると、共通通貨がすべての中南米諸国に導入された場合、経済圏は世界のGDPの5%を占める。ユーロ圏は 世界のGDPの14%である。

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Mercosur(Mercado Común del Sur:英語では Common Market of the South)は、1995年1月1日にアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイの南米南部諸国の関税同盟として発足した。域内の関税撤廃等を目的とする。

2012年7月31日にベネズエラ 正式加盟したが、創設4ヵ国の外相は2016年12月2日、ベネズエラに対して加盟国資格を一時停止すると通知した。2012年の正式加盟から4年以内にメルコスール規則を国内で制度化するという約束を履行できていないというのが理由である。(ベネズエラのマドゥロ大統領は、思想の異なる国を排除しようとするクーデター行為だと非難した。)

2012年12月ボリビア加盟議定書に署名したが、各国議会の批准待ちで、正式にはまだメンバーではない。

準加盟国は、チリ、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、ペルー、スリナムの6か国。

LG化学は1月19日、米国の抗がん剤開発会社AVEO Pharmaceutical の買収を成功裏に終えたと発表した。(その後の発表では社名を AVEO Oncology an LG Chem Company としている。)


LG化学は2022年10月18日、腎臓がん治療剤を保有する米国の製薬会社AVEO Pharmaceuticals, Inc を買収すると明らかにした。買収金額は5億6600万ドルで、AVEOの株式100%を確保することになる。

AVEOは2021年にFDAから腎臓がん標的治療剤 FOTIVDA(tivozanib)の承認を受け、8月には米国抗がん剤治療ガイドラインの「勧告薬剤地位」を取得した。

「tivozanib」は、2006年12月にAVEOが協和発酵キリンより導入した経口トリプル血管内皮細胞増殖因子(VEGF:Vascular endothelial growth factor)受容体阻害剤である。欧州連合とノルウェー、アイスランド、ニュージーランドで進行性腎細胞がん(RCC)の成人患者の治療薬として承認されている。


AVEO
アステラス製薬と共同で進行性腎細胞がん患者を対象とした「tivozanib」 の開発を行った。

アステラス製薬は2011年に、AVEOと同社ががん治療薬として開発している「tivozanib」について、日本を含むアジア・中東を除く全世界での開発・商業化に関する契約を締結した。

両社は今後、「tivozanib」の広範囲な開発プログラムを共同で進めていくが、北米での開発・商業化はAVEOの主導で、欧州での開発・商業化はアステラス製薬の主導で行う。北米および欧州における開発・商業化に関わる費用及び利益は両社で折半する。

北米・欧州を除く契約地域についてはアステラス製薬が独占的開発・販売権を有しており、アステラス製薬が当該地域における開発及び商業化に関わる費用を負担するとともに、AVEOに対し当該地域の売上に応じて漸増する二桁台のロイヤリティを支払う。製造についてはAVEOが責任を持つ。

本契約に基づき、アステラス製薬はAVEOに対し、契約締結時一時金として125百万ドルを支払う。また、種々の開発マイルストン達成に伴う総額575百万ドル(腎細胞がんにおける申請および承認時の90百万ドルを含む)のほか、売上達成に応じて780百万ドル以上の追加一時金を支払う可能性がある。

なお、協和キリンは2006年に「tivozanib」の全疾患に関する権利をAVEOに導出する契約を締結したが、2019年に両社間の契約を見直し、協和キリンが欧米を含むAVEOのテリトリーにおける「tivozanib」の非がん領域の権利を再度取得することとなった。

LG化学は今回の買収で米国内の抗がん剤商業化力と独自開発新薬に対する市場を確保することになった。「今回の買収決定はLG化学のバイオ事業40年以上の歴史で最も重要な里程標で、世界への跳躍の軸を用意することになった。米国商業化能力を持続強化し現地売り上げ拡大を積極的に進め、抗がん剤中心の米国の臨床・許可能力を高めてグローバル革新製薬会社としての跳躍にスピードを出すだろう」としている。



2002年にボストンで設立されたAVEOは抗がん剤市場に特化した力を持つ製薬会社で、2010年にナスダックに上場した。現在頭頸部がん治療剤臨床3相を進めるなど、3件の新薬開発研究開発プロジェクトを進行中。

米医薬品大手 Ily Lillyは1月19日、アルツハイマー病薬「Donanemab」についてFDAが迅速承認(Fast track)を認めなかったと発表した。

迅速承認は、重篤もしくは生命を脅かすような疾患を対象として、臨床上の有用性が予測できるような代替的な評価項目に基づいて医薬品を承認する仕組みで、いわば仮免許であり、その後の検証的試験で臨床的有用性を示すことなどが必要となる。

重篤または生命を脅かす状態を治療し、unmet medical needsを満たす医薬品の開発を促進するための、迅速な審査のための治験薬

同社は2021年6月末に、Donanemabが画期的治療薬の指定を受けたと発表した。

画期的医薬品指定制度は2012年のFDA安全・イノベーション法により規定された。同制度は、既存治療法を上回る劇的な改善を示す製品の開発の迅速化を目指すもので、具体的には、FDAは開発が順調に進むように上級幹部を早くから関与させ、指定製品の臨床試験を簡略化することを認める。

しかし、今回の審査では、FDAへの臨床試験データ提出で、同薬で少なくとも12か月治療した患者のデータ数が不十分とされた。

同社では通常承認のための第3相臨床試験の結果提出は引き続き今年第2四半期を目指し、提出後速やかに通常承認を申請するとしている。

なお、新薬ではFDAは本年1月7日、エーザイとBiogenの新薬の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体LECANEMAB開発コード:BAN2401、米国ブランド名:LEQEMBI™ 注射 100 mg/mL 溶液)について、アルツハイマー病の治療薬として、迅速承認したと発表した。

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アルツハイマー型認知症の原因は未だ解明されていないが、進行に伴っていくつかの特有の病変が見られる。例えば、神経細胞の外側では「アミロイドβ」が蓄積して老人班を形成し、神経細胞の中では「タウタンパク」が蓄積してタンパク質が糸くず状に変化したようなもの(神経原繊維変化)が見られるようになる。


以下、詳細は 
2021/8/17 アルツハイマー病治療薬を巡る話題


1.既存のアルツハイマー治療薬

アルツハイマーは、病理学的には神経原線維変化とアミロイドβ沈着の2つを特徴とする変化により、脳の神経細胞死が生じ、記憶力低下をはじめとする認知機能障害が緩徐に進行する病気。

現時点で認可されているアルツハイマー病の既存治療薬は以下の4つで、いずれも根治を目的としたものではなく、進行を少し(半年〜1年程度)遅らせるものでしかない。

いずれも、ニューロン間の情報を伝達する化学物質である神経伝達物質を制御することにより機能する。


2.新薬開発(アミロイドβ仮説)


注) 一般名の末尾の「マブ」はモノクローナル抗体医薬の意味。
   末尾の「ビル」は抗ウイルス薬、「ニブ」は キナーゼ阻害薬

「Aβ(アミロイドβ)仮説」

脳の神経細胞外にAβが蓄積タウ蛋白のリン酸化神経原線維変化細胞毒性が生じ、神経細胞が死滅認知症を発症

 抗Aβ抗体:Aβを除去

 抗タウ抗体:タウを除去したり、タウの凝集を阻害

 T-817MA:神経細胞保護効果や神経突起伸展促進効果のあるT-817MA投与で、リン酸化タウの減少を確認。

①エーザイ/バイオジェン ADUHELM(一般名:アデュカヌマブ)

米食品医薬品局(FDA)は2021年6月7日、エーザイと米バイオジェンが共同で開発するアルツハイマー型認知症治療薬候補ADUHELM(一般名:アデュカヌマブ)について、脳内アミロイドβプラークを減少させることにより、アルツハイマー病の病理に作用する初めてかつ唯一治療薬として迅速承認(accelerated approval)したと発表した。

従来の認知症薬とは異なり、認知機能の低下を長期的に抑制する機能を持つとして世界で初めて承認された。

アミロイド斑(プラーク)は、アミロイドβ蛋白が蓄積したもので、アルツハイマー病患者の脳にみられる。新薬はこのレベルを下げるもの。

2021/6/8 エーザイとバイオジェンのアルツハイマー新薬、米で承認

ADHUHELMについては、2020117日のFDAの末梢中枢神経系薬物諮問委員会で、有効性に対して否定的な見解が出された。


FDA
諮問委員会の提言はFDAによる審査において考慮されるが、拘束力はない。しかし、提言に反する承認は異例。

2019/10/24  Biogenとエーザイ、一旦治験中止したアルツハイマー薬の承認申請へ

FDAのウッドコック長官代行は、承認に至るまでのバイオジェンとFDAとのやりとりが適正だったか調査するよう、米厚生省の監査部門に調査を要求、監査部門は8月4日、承認過程を調査すると表明した。

米下院の二つの委員会も、同薬の承認をめぐる調査に着手した。一方、二つの米大手医療機関は、当面は患者に使用しない方針を表明した。

米国の高齢者向け公的医療保険 Medicare当局は2022年1月11日、保険適用を臨床試験(治験)の参加者に限定する方針を発表した。最終決定された場合、最大市場の米国で普及が進まず、期待された大型薬化は難しくなる。

② エーザイ/Biogen BAN2401

2023/1/7 FDAより迅速承認

 2023/1/9 エーザイのアルツハイマー治療薬、FDAから迅速承認を取得 

③ Ely Lilly 「ドナネマブ」   今回、迅速承認否定

Aβペプチドは脳内に沈着し、過剰になると互いに結合してタンパク質プラークを形成する。
ドナネマブは、このタンパク質プラークを標的とし、脳内で負担となる余分なタンパク質を除去する。
単に新しいプラークの沈着または既存のプラークの成長を防ぐのではなく、沈着したプラーク自体を標的にすることが、脳から既存のアミロイド負荷を取り除くために必要)

以前のプラーク結合抗体のいくつかは、脳に微小出血を引き起こしたために放棄されたが、これは微小出血を引き起こすことなくマウスのプラークを除去することが報告されている。

3.光認知症療法

東京大学は2021年4月、光酸素化法を開発したと発表した。

脳内でアミロイドβペプチド(Aβ)が凝集・蓄積することがAD発症の原因と示唆されており、Aβの凝集を抑制すること 、また凝集したAβを効率よく除去することがAD根本治療戦略として考えられている。

今回、光照射と光酸素化触媒を用いた光酸素化法を確立した。

GMと韓国のLG Energy Solutionは、米国で折半出資する合弁会社Ultium Cells LLC での米国内での4番目となる電池工場を建設する計画を無期限で棚上げした。詳しい複数の関係者が明らかにした。

GM幹部らはこの1年、米国で第4電池工場を建設する計画の詳細を詰めているとの発言を続けてきた。

しかし、両社の幹部がここ数カ月続けてきた交渉は合意がないまま終了した。生産拡大のペースや、労働組合の結成の是非を含む工場運営のあり方について、方針が食い違ったとしている。

LGは、北米ではGM以外にもStellantis、ホンダとの電池合弁プロジェクトを抱えており(下記)、複数のメーカーの要望に同時に応える必要に迫られている。

GMは2025年までに北米で年100万台のEV生産を目指しており、電池工場の新設が必要であるため、新たな提携先を検討しているとされる。

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LG Chemは2020年9月17日、世界シェア首位のバッテリー部門を分社化して、完全子会社にすると発表した。

同社のバッテリー部門は売上高全体の3割強を占める。収益面では先行投資がかさんだため営業赤字が続いていたが、4~6月期には黒字転換して収益化にもめどが立ち始め、単独経営も可能だと判断した。大型投資を加速させるため、新規株式公開による資金調達も狙う 。

12月1日にバッテリー事業を手掛ける「LG Energy Solution」を発足させる。新会社ではバッテリーの製造をはじめ、保守点検やリース、再利用など幅広く事業を展開していく。

LG Energy Solutionは2022年1月27日、韓国取引所に上場した。LG化学は同社株82%を持つ。

2020/9/19 LG Chem、電池部門を分社 (2020年12月1日発足)



LGは現在
米国ミシガン単独工場の増設を進めている。これに加え、GMと3カ所、Stellantis
Fiat Chrysler Automobiles とPeugeot の統合会社と1カ所の合弁会社工場を持つ。昨年、ホンダとの契約を締結した。

(LG単独)

LG単独ではミシガン州Hollandに5GWhの工場を持ち、GM、Ford Motor、Chrysler などに供給している。

LG Energy Solution は2021年3月12日、2025年までの5年間で米国に45億ドル以上を投資すると発表した。少なくとも2工場を建設、米国での電気自動車の成長に対応し、能力を70GWh増やす。


(LG / GM)

LGはGMとのJVのUltium Cells LLCで、オハイオ州 Lordstown の近辺に23億ドルを投資して生産能力30GWhの次世代グローバルEVバッテリーシステムの生産工場の建設中。

2020/1/3 GMとLG Chem、世界最大級のEV用電池工場建設計画を発表

GMとLGは2021年4月16日、第二工場のテネシー州Spring Hillでの建設を発表した。能力は35GWh。

GMは2022年1月25日、EVの生産能力の強化に向けて、米国で3つ目となる新たな電池工場の建設を発表した。LG Energy Solution との50/50 JVのUltium Cells LLCが26億ドルを投じ、ミシガン州 Lansing に第3工場を建設する。

2022/1/28 GM、米国で3つ目の電池工場を建設、電気自動車生産投資も

両社は4番目の工場建設を協議してきたが、今回、破談となった。

(LG / Stellantis)

Stellantis N.V.(Fiat Chrysler Automobiles とPeugeot の統合会社)は2021年10月18日、LG Energy Solutionと合弁会社を設立し、北米で電動車用の電池を生産すると発表した。

StellantisとLG Energy Solutionは2022年3月23日、本契約を締結した。立地はカナダのオンタリオ州 Windsor (デトロイト市に隣接)で、能力は45 GWh。

同社はSamsung SDIとの間でもIndiana州にJVを設立した。

2022/5/27 Stellantis、米国での2つのEV向け電池合弁会社の内容が確定


(LG / ホンダ)

本田技研工業と韓国のLG Energy Solution は2022年8月29日、北米で生産販売されるHondaおよびAcura(プレミアム・ブランド)のEV用リチウムイオンバッテリーを米国で生産する合弁会社の設立に合意した と発表した。

韓国のバッテリー・メーカーが日本の完成車メーカーと合弁するのは今回が初めて。

新たな合弁会社は2022年中に設立される予定で、出資比率はLGが51%、ホンダが49%とされる。

両社は総額約44億USドルを投資し、米国に生産工場を建設する。今後、建設地の確定を経て、2023年初頭に着工し、2025年中の量産開始を予定している。

この工場で生産されるリチウムイオンバッテリーは、全量が 本田の北米工場へ供給される予定で、その生産能力は最大約40GWhを目指している。

2022/9/2 ホンダとLG Energy Solution、米国にEV用バッテリー生産合弁会社設立に合意

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競合するSK Innovationは2021年10月1日、電池事業を分社し、全額出資の「SKオン」(SK on)を設立した。EVの世界的な普及による需要急増に対応するため、電池事業を上場させて増産資金を確保する狙いがある。

SK Onは、ジョージア州に二つのバッテリーセル工場、ケンタッキーとテネシー州にFordとのJVのバッテリー工場をもっている。

SK on とFordの合弁の米国の電気車用バッテリー生産会社「Blue Oval SK」が公式発足した。2022年7月14日に発表された。

社名 工場 能力 操業開始
SK Battery America Georgia No.1 9.8 GWh 2022
Georgia No.2 11.7 GWh 2023
BlueOval SK
 (JV with Ford)
Kentucky No.1, 2 86 GWh 2025~
Tennessee 43 GWh


2021/10/1 Ford Motor、114億ドルを投じ、電動ピックアップトラックと3つの電池工場を建設

 

SK On は、米 Ford Motor とトルコ財閥の Koc Holdingの3社による合弁としてトルコでの電池合弁工場の建設を計画していたが、これを白紙撤回する見通しとなった。資金調達の不調や物価高などで3社の協議が進まなかったという。

Ford はSKとの交渉が難航するなか、代案としてLG Energy Solutionにバッテリー合弁工場を提案し、関連協議を進めているとされる。 ただ、LG Energy Solution側はまだ関連協議が具体的に決まったことはないと明らかにした。

2023/1/11 韓国SK On のトルコの電池JV計画 白紙撤回へ

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もう1社の韓国電池大手のSamsung SDI も2021年10月22日、Stellantis N.V.Fiat Chrysler Automobiles とPeugeot の統合会社との間で米国で合弁会社を設立し、電気自動車用の電池工場を建設する覚書を締結したと発表した。

Stellantis N.V.は上記の通り、LG Energy Solutionと合弁会社を設立し、北米で電動車用の電池を生産すると発表している。

Stellantisは両社との同時契約で、Samsung SDIの得意な、安定性が高いとされる「角形電池」と、LGの軽量で高出力な「パウチ型電池」の2種類を安定調達する狙いがあるとみられる。

Samsung SDIは現在、韓国と中国、ハンガリーで電池工場を持つが、米市場のEVシフトの潮流に乗り遅れないように米国進出を検討してきた経緯がある。(同社はミシガン州にバッテリーパックの組み立て工場は持っている。)

稼働
韓国(蔚山 5万台
中国(西安 4万台
ハンガリー(Goed) 5万台
合計 14万台


2021/10/25 Stellantis、米国でSamsung SDI とも合弁でEV電池生産 



米国のLNG会社 NextDecadeは1月19日、伊藤忠商事に年100万トンのLNGを15年間にわたり販売する長期契約を結んだと発表した。

2020年代後半に稼働を開始する同社のテキサス州BrownsvilleのRio Grande LNG project から供給する。

販売価格は米国のHenry Hubガス価格に連動し、伊藤忠がLNG運搬船を手配する。すでにNextDecadeは下記の通り、石油大手エクソンモービルや中国、ポルトガルの企業と長期契約を結んでおり、日本企業と合意するのは初めてとなる。

Shell NA LNG 200万トン 20年
ENN LNG of Singapore
中国 ENN Natural Gas 子会社
200万トン 20年
Galp(Portuguese) 100万トン 20年
ExxonMobil 100万トン 20年
Guandong Energy Group 100万トン 20年
伊藤忠 100万トン 15年

NextDecadeは、世界にクリーンなエネルギーを提供することに取り組んでいる。

100%子会社のRio Grande LNGとNext Carbon Solutionsを通じて、テキサス州Brownsvilleで年間2,700万t (540万トンx 5 系列)のLNG輸出施設、北米最大級のCO2回収・貯留プロジェクトを開発している。

2023年3月までに投資方針を固め、設計や資材調達、建造は米プラント大手ベクテルが引き受ける。

LNG液化プラントの排ガスCO2 を回収・貯留し、CO2排出量を90%以上減らす。年間500万トン以上のCO2を永久貯留する。

LNG計画は次の通り。

Rio Grande LNG 液化プラント 完成イメージ図

立地

Rio Grande LNGは、パーミアン盆地とEagle Ford シェールガスを世界のLNG市場につなぐ米国最大かつ最もグリーンなLNG輸出ソリューションとなる見込み。

Rio Bravo Pipeline は日量 45 億立方フィートを輸送するよう設計されている。

CO2回収:

NextDecade Corporationと米国三菱重工業は2021年4月、Rio Grande LNG液化プラントの排ガスからのCO2回収システムについて基本計画パッケージの提供を行うことで合意した。米国三菱重工業はCO2回収システムの基本設計、CO2回収技術のライセンス供与を行う。経済性の検討を経て将来的に建設される予定で、排ガスからCO2を回収・貯留(CCS:Carbon Capture and Storage)する技術を商業用のLNG液化プラントに適用する今回の取り組みは、世界初となる。

三菱重工エンジニアリングが関西電力と共同開発したCO2回収技術「KM CDR ProcessTM」を採用し、LNGの低炭素化(Low Carbon LNG)を目指す。将来的に、ガス精製過程での回収分も含め年間500万t規模のCO2排出削減を見込んでいる。

厚生労働省は1月20日、2023年度の公的年金支給額を前年度から1.9%引き上げると発表した。新規裁定者については前年度から2.2%の引き上げとなる。

この日に発表された2022年の消費者物価指数(総合)は+2.5%となった。

年金支給額はアップにはなるが、昨年の物価アップを下回ることとなる。


過去3年の名目手取り賃金変動率は+2.8%となった。

これらを使い、下記の計算により2023年度の公的年金支給額が決まった。


前年度(2022年度)の公的年金支給額は前年度から0.4%の引き下げで、2年連続のマイナスであった。

計算方法と考え方についてはこれに記載してある。

 2022/1/22 2022年度の公的年金支給額、前年度から0.4%引き下げ

2023年度については、ニッセイ基礎研究所は既裁定者は1.8%、新規裁定者は2.1%の引き上げと予想していた。
マクロ経済スライドが実績で 0.1%ポイントだけ違った。

2022/11/23 来年度の年金、実質減額


マクロ経済スライドとは、平成16年の年金制度改正で導入されたもので、賃金や物価の改定率を調整して緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みである。

将来の現役世代の負担が過重なものとならないよう、最終的な負担(保険料)の水準を定め、その中で保険料等の収入と年金給付等の支出の均衡が保たれるよう、時間をかけて緩やかに年金の給付水準を調整することになりったもの。

政府は今回、インフレ率を上回る賃上げを企業に求めている。緊急事態ということで、本年のみ、マクロ経済スライドを来年に繰り越してもよかったのではないか。


既裁定者(68歳到達年度以後の受給権者)

  2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 原則
直近1年の物価変動率(基本) +0.5% +0.0% -0.2% +2.5%

基本は物価変動率
賃金変動率が物価変動率より低い場合は賃金変動率を採用

過去3年の名目手取り賃金変動率 +0.3% -0.1% -0.4% +2.8%
(採用) +0.3% -0.1% -0.4% +2.5%  
マクロ経済スライド
公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を改定率から控除
-0.1% -0.1%

当期 -0.2% 
繰越 -0.1%
計  -0.3%

当期 -0.3%
繰越 -0.3%
計 -0.6%

上記の(採用)がマイナスの場合は、調整せず、その分を翌年に繰り越す。

最終改定率 +0.2% -0.1% -0.4% +1.9%  
マクロ経済スライド繰り越し   -0.1% -0.3%  


65歳に到達し、新たに年金を裁定(決定)するときには、直近の賃金の動向を反映させるため、賃金の変動による改定(+マクロ経済スライド)を行う。

  2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 原則
過去3年の名目手取り賃金変動率 +0.3% -0.1% -0.4% +2.8%  
マクロ経済スライド
公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を改定率から控除
-0.1% -0.1%

当期 -0.2% 
繰越 -0.1%

当期 -0.3%
繰越 -0.3%
計 -0.6%

上記の(採用)がマイナスの場合は、調整せず、その分を翌年に繰り越す。

最終改定率 +0.2% -0.1% -0.4% +2.2%  
マクロ経済スライド繰り越し   -0.1% -0.3%

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米国で約7千万人に支給される年金給付(Social Security Benefit)が2023年は8.7%の大幅増額となる。

物価上昇に伴う生計費調整(COLA:Cost-of-Living-Adjustment)の規定によるもので、前年第3四半期の勤労者消費者物価指数(Consumer Price Index for Urban Wage Earners and Clerical Workers =CPI-W) の平均を採用、これを 1年間適用する。

2022/10/18 米国の2023年の年金給付、生計費調整で8.7%の大幅アップ 






英スタートアップのBritishvolt が経営破綻したことが1月17日に分かった。電気自動車(EV)向け電池の「ギガファクトリー」の建設を目指していたが計画が遅れ、資金繰りに行き詰まった。

従業員300人の大半は即時解雇された。

昨年10月に資金繰りが悪化したため政府に3,000万ポンドの支援を求めたが拒否され、破綻の危機に直面。その後、既存株主のスイスの商品取引・資源大手 Glencoreから当面の運転資金を確保しこれを免れたが、今年に入り、身売りに向け協議中と明らかにしていた。

大手会計事務所Ernst & Young(EY)が 同日、管財人に指名された。今後、事業や資産の売却などの処理を進める。

Britishvolは、イングランド北東部Blythに年産能力30ギガワット時のバッテリー工場を建設する計画を進めていた。総工費は38億ポンドを予定し、政府も1億ポンドの拠出を約束していたが、生産開始予定がたびたび延期されたため実現が疑問視され、資金調達が難航していた。

立地 完成予想図


英国内に電気自動車(EV)向けバッテリーのギガファクトリーを建設する計画が頓挫することになり、政府の目指すバッテリーの国内生産拡大が危ぶまれている。

英政府はEV普及に向け、2030年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止し、2035年までにハイブリッド車(HV)の販売も禁じる計画 で、充電設備を拡充しているほか、国内のEV生産を増やすためにバッテリー工場も支援すると表明していた。

英国では日産自動車と中国系のエンビジョンAESCグループ がEV向けリチウムイオン電池の工場を建設している。Britishvolt の破綻により、英国の電池工場は日産のみとなった。

2021/7/7 英国日産、電気自動車と電池の増設プロジェクト発表

欧州連合(EU)では35のバッテリー工場が計画または建設中で、英国は後れを取っている。 英国の自動車産業はかねて、国内のバッテリー製造能力の不足を指摘し、ギガファクトリーが新設されなければ自動車各社が生産を国外に移転する恐れもあると訴えていた。

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BritishvoltはEVバッテリー分野のスタートアップ企業で、2019年12月に設立された。

アラブ首長国連邦(UAE)の実業家で、資産管理と投資のエキスパートであるOrral Nadjari氏が創業し、CEOを務めた。(2022年8月に退任)

Nadjari氏は当時、英国がリチウムイオンバッテリーの材料調達、製造、また流通において、中国、韓国、そして日本より10年以上の遅れを取っていることを認め、後発メーカーの利点、すなわち、年々強化されつつあるバッテリーと脱炭素関連規制への対応、技術革新と新たな生産技術への対応、そして資金調達を活かすことで挽回を図ることを目指した。

1.脱炭素とカーボンフットプリントへの対応

Britishvoltは当初、英国南西部の南ウェールズにある空軍基地の跡地に工場を建設する予定であった。しかし、様々な検討の結果、2020年末にイングランド北東部 NorthumberlandのBlyth地区にあるBlyth発電所跡に大規模な工場を建設することを発表した。理由は、再生可能エネルギーへのアクセスにある。

Blyth地区は、英国が計画している最大の海洋風力発電ファームであるDogger Bankから最も近い陸地に位置する。また、現在英国とノルウェーが建設中の世界最長720Kmの海底送電ケーブルによる電力の相互リンクも極めて大きな利点である。

2.材料の調達に関する戦略

同社は2021年8月17日、Glencoreと長期のコバルト供給契約を締結した。GlencoreはBritishvoltに出資したことも伝えられている。

3.資金および人材の確保

同社が計画している工場の建設費用は26億ポンドであるが、この資金を確保するために、グレンコアによる出資を含め、何度か資金調達を行っている。

しかし、最大の戦略は、工場稼働前のIPO(新規公開株による上場)である。

当初、特別目的買収会社(SPAC)との合併による米国株式市場への上場を検討した。しかし、これは延期となり、ロンドン証券取引所でIPOを行う方向で作業が進められていた。

優秀な人材を確保するために、一般社員にも上場前に株式の一部をインセンティブとして与えることを既に始めた。

4.工場運営に関する課題の解決策

社内に技術的な蓄積やノウハウがないため、外部からそれらを調達し組み合わせる手法を取った。

技術面での提携先は、基礎研究ではダラム大学、ニューカッスル大学、ノーサンブリア大学、工場建設ではIGS、環境エンジニアリングではRolton Group、製造技術・生産準備・工程管理・製品のライフサイクル管理については自動車産業で最大手の一つであるシーメンスの英国法人、バッテリーのセパレータ複合材料については米国のENTEKで、個体電池開発については英国政府が支援する英国バッテリー工業センターを含む複数の英国機関とコンソーシアムを形成している。

Britishvoltは2022年1月、英政府が支援する研究開発機関の「UK Battery Industrialisation Centre」と次世代電池の開発で提携することで合意したと発表した。期間は2年間で、開発資金は数百万ポンドに上る見込み。ニッケル含有量が高く、エネルギー密度が高い電池を開発し、商業化することを目指す。

2021年夏に工場の建設を始め、2023年末までに生産する計画であった。

最初の段階では、年間10ギガワット時のリチウムイオンセルを生産する。これは約10万台のEVへバッテリーを供給する規模に相当する。またこの段階での雇用は約1,000人となる。

その後、2段階に分けて工場拡大することを計画している。2027年までに年間30ギガワット時の生産力、3,500人の従業員を雇用する予定である。

2021年に株式市場から300-400億ポンド規模の資金を調達することを想定し、政府補助金や債務での資金調達も予定していた。

Orral Nadjari CEOは「英国の自動車産業や経済全体に重要であり、我々が未来の原動力になれる」と述べていた。

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