米政府は9月13日、米通商法301条に基づく対中制裁関税の大幅な引き上げについて最終決定を下した。2024年分について、9月27日に引き上げる。

電気自動車の関税率を100%に引き上げるなどし、中国で過剰生産された廉価品に対し米国の戦略産業分野の保護を強化する狙いがある。


米国は5月14日、中国製EV関税などを大幅に引き上げると発表した。

5/29の一覧表発表時に、改正時期の2024年は2024年8月1日、2025年は2025年8月1日とされた。

2024/5/15 米国、中国製EV関税など大幅引き上げ 

その後、8月1日に予定していた中国の電気自動車などに対する制裁関税の引き上げを2週間以上、延期すると発表。

更に8月30日に最終決定を9月上旬に再延期すると発表していた。


2024年5月に発表された改正案は、一般からの1,100件を超えるコメントを検討した結果、中国の不公正な貿易慣行からアメリカの企業と労働者を保護する措置を強化するためのいくつかの更新を加えて、ほぼ採用された。

全リスト 
https://ustr.gov/sites/default/files/Section%20301%20Modifications%20Determination%20FRN%20(Sept%2012%202024)%20(FINAL).pdf


引き上げの主なものは下記の通り。

現行レート 改正レート 改正年
Battery Parts (Non-lithium-ion Batteries) 7.5% 25% 2024
Electric Vehicles 25% 100% 2024
Facemasks 0~7.5% 25% 2024
50% 2026
Lithium-ion EV Batteries 7.5% 25% 2024
Lithium-ion non-EV Batteries 7.5% 50% 2025
100% 2026
Medical Gloves 7.5% 50% 2025
100% 2026
天然黒鉛 0% 25% 2026
その他重要鉱物 25% 2024
永久磁石 0% 25% 2026
Semiconductors 25% 50% 2025
Ship-to-Shore Cranes 0% 25% 2024
Solar Cells (組み立て有無に関係なく) 25% 50% 2024
鉄鋼・アルミ製品 0~7.5% 25% 2024
注射器,注射針 0% 100% 2024
改正時期 9/27 1/1 1/1


医療用マスクと手術用手袋への関税を当初案の25%から50%に引き上げたが、中国以外の供給元への切り替えを可能にするため開始を遅らせた。
中国製注射器の関税率は当初予定の50%から100%に引き上げ、即時発効とする。乳児の経腸栄養注入器については1年間の除外を認める。

半導体は2025年、重要鉱物の天然黒鉛は2026年の、それぞれ1月1日に税率を引き上げる。 
半導体に対する50%の関税は2025年に導入する予定で、新たに太陽光パネルに使用されるポリシリコンとシリコンウエハーが追加された。

一方、コメントを受けた見直しにより、最初に関税強化が発表された今年5月14日までに契約した港湾用クレーンについては、2026年5月14日まで適用を除外することを決めた。米港湾当局協会は国内で大型クレーンを製造できる企業がなく、多額の追加費用が発生するとして撤回を要望していた。


中国商務部の報道官は9月14日、これについて「断固として反対する」との談話を発表した。「必要な措置を取り、中国企業の利益を守る」とも述べ、対抗策の発動を示唆した。報道官は「典型的な一国主義や保護主義のやり方だ」と強く批判した。

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米国では800ドル以下の個人向け貨物は、関税や複雑な輸入手続きが免除されている。米国人旅行者が持ち帰る土産物や贈答品などへの適用が想定されている。

しかし、中国の衣料ネット通販大手シーイン(SHEIN)やテム(Temu) などの利用が急拡大。海外拠点から米国の個人宛て小口貨物で商品を輸送するため、関税の適用対象外となってきた。
米政府によると、適用除外の輸入品は過去10年間で7倍超に膨らんだ。

今回、商法301条などに基づいて制裁関税を課された製品は、個人向け小口貨物を対象にした関税免除措置を適用しないと発表した。インターネット通販の急拡大で、衣類など安価な製品が無税で流入し、制裁関税の「抜け穴」になっていることを受けた措置で、さらに議会に対し、同措置の抜本的な見直しに取り組むよう要請した。

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EVの関税を100%に引き上げるが、現在はほとんど輸入はない。将来の流入に備えた予防措置と思われる。

ただし、比亜迪(BYD)のEVの最安値は1万2000ドルで、米国のTeslaのEVは安くても3万ドル超である。関税を100%に引き上げてもBYD品は2万4000ドルで、Tesla品よりはるかに安い。

米国のコストが高いのが問題だが、米国の理屈は、中国の低コストは過剰生産の結果であり、それを低価格で輸出するのは不公正な貿易慣行であるというものである。

2024年のIg Nobel 賞の受賞者が9月12日(日本時間13日)に発表され、生理学賞は、東京医科歯科大学と大阪大学で教授を務める武部貴則氏らの研究チームによる「多くの哺乳類が肛門呼吸できることの発見について」に贈られた。

武部貴則教授(37)の専門は実は「再生医学」で、11年前に共同研究者とともにヒトのiPS細胞から肝臓の機能を持つ細胞のかたまりを作ることに初めて成功した。

2019年にはヒトのiPS細胞から肝臓やすい臓など複数の臓器を同時に作り出すことにも成功している。

今回の研究を始めるきっかけとなったのは、田んぼなどに生息する「ドジョウ」で、ドジョウは酸素が少ない環境ではえらだけでなく腸でも"呼吸"できるという特徴があるため、哺乳類の中にも同じように腸から酸素を吸収できるものがいるのではないかと考えた。


実験では肺の機能が低下したブタのお尻から高い濃度の酸素を含む特殊な液体を入れ、体内に酸素がどれくらい取り込まれるかを調べた。その結果、血液中の酸素の量が大幅に増えた。

さらに▽酸素を含む液体を注入したマウスは酸素が少ない環境でも活発に動き回る様子が確認できたほか、▽呼吸不全の症状のあるブタに酸素の液体を注入したところ、症状が改善した。

この研究の論文は3年前の2021年、新型コロナウイルスの感染拡大によって各地の医療機関で重い肺炎の患者が相次ぐ中、発表された。

呼吸不全の新たな治療法として、実用化に向けた研究は現在も進められていて、ことし6月には武部教授が創業したベンチャー企業などが安全性などを確認する臨床試験を始めている。

株式会社EVAセラピューティクスは、腸呼吸を応用した治療法や医療機器を開発する東京医科歯科大学発ベンチャー企業。

武部貴則教授の研究チームが開発した、腸を用いたガス交換により血中酸素分圧を上昇させる「腸換気技術(EVA法)」の実用化を目的として設立。

腸管内に純酸素ガスもしくは酸素が豊富に溶けたパーフルオロカーボン(炭素とフッ素のみから構成される化学物質)を注入することで肺を介さずに呼吸不全を緩和できる可能性があり、人工肺(ECMO)や人工呼吸器の離脱促進や上気道閉塞における急性期の呼吸管理法としての利用を見込む。

EVA法は、内閣府主催の「第4回 日本オープンイノベーション大賞」において、「腸換気(EVA)技術の実用化」として科学技術政策担当大臣賞を受賞した。


なお、日本人の
イグノーベル賞受賞は18年連続。 過去の受賞者


本年のその他の受賞(9件)は次の通り。

平和賞
B.F. Skinner
ミサイルの飛行経路を誘導するために生きたハトをミサイル内に飼育することの実現可能性を調べる実験

第二次世界大戦時に海軍研究所で行われた研究プログラムで、ミサイルの誘導にハトを使うことが検討された

鳥を垂直に透明なプラスチック板(スクリーン)の上に配置する新しいハーネスシステムを考案し、ニュージャージー海岸のどこかにあるターゲットの投影画像をスクリーン上で「つつく」ように訓練した。
誘導信号は、スクリーンとくちばしが接触したポイントから拾われた。
最終的には、システムをより強固なものにするために、3羽の鳩を使用するバージョンを作成した。

この時点で、軍事の焦点はマンハッタン計画に移っており、この案は却下された。

植物学賞
Jacob White
Felipe Yamashita

「本物の植物が隣接するプラスチック製の人造植物の形状を模倣することの発見」

ホワイト氏とヤマシタ氏(ブラジル人、ボン大学)は、チリ南部の熱帯樹林に生育するBoquila trifoliolataというつる植物をプラスチック製の藤の木にまとわせたところ、Boquila trifoliolataの葉色・向き・葉脈パターンがプラスチック製の藤の木についている偽物の葉を模倣したことを発見した。

Boquila trifoliolataが宿主植物の模倣をすることは知られていたが、どういう情報経路で模倣を行うかはわかっておらず、化学物質経由か遺伝子経由であると考えられていた。しかし、今回の実験でプラスチックの植物も模倣したことから、「これまで考えられた2つの可能性は否定された」と論じている。

解剖学賞
Marjolaine Willems

「毛髪形成における遺伝的決定論と半球の影響」

研究チームは、北半球に住んでいる人と南半球に住んでいる人、そして同性の双生児74組でつむじの向きをチェックした。

その結果、双子のつむじの向きは同じであったことから、つむじの向きへの遺伝的影響は強いことが判明。
さらに、南半球の子どものつむじ毛は北半球の子どもよりも反時計回りの傾向が高いこともわかり、研究チームはHemispheric Influenceの可能性が示唆されたとしている。

薬学賞
Lieven A. Schenk
痛みを伴う副作用を引き起こす偽薬は、痛みを伴う副作用を引き起こさない偽薬よりも効果的である可能性があることについて


研究チームは77人の健康な参加者に「フェンタニル(鎮痛薬)鼻腔スプレーを投与する」と伝えて投与する実験を行った。
実際には一方のグループには中性のスプレー、一方にはカプサイシン(軽度の灼熱感を引き起こし、偽の副作用として機能)を含むスプレーが与えられた。

実験の結果、偽の副作用を引き起こすプラセボスプレーの方が、副作用のないプラセボスプレーよりも効果的に痛みを軽減することが明らかになった。
これは参加者が灼熱感を副作用として期待し、それによってスプレーが効いていると思い込んだためと考えられる。軽度の副作用が実際には治療効果を高める重要な役割を果たす可能性があることを示唆している。

物理学賞
James C. Liao
死んだマスの遊泳能力の実演と説明

魚は渦流のエネルギーを利用することでエネルギー消費を抑えていると考え、泳ぐ動きを変えて流れ​​に同期するニジマスを実験対象として選んだ。

ニジマスの死骸を流水装置に入れたところ、速度変化をつけることはできないという違いはあるものの、生きたニジマスと同じような動きをすることが分かった。「つまり、魚は渦流から十分なエネルギーを引き出して自身の抗力を克服することができ、羽ばたく物体はたとえ遠く離れていても、エネルギーを消費することなく、別の航跡を生成する物体を追うことができるということです」

確率賞
František Bartoš
コインを投げた時、最初に上にしていた面が出る確率の方が高いという理論を35万757回の実験で示したことについて


理論的にはどちらも2分の1で等しいはずだが、実際にはコインの重心に偏りがあり、コインを投げるとその回転軸の方向が変化するため、最初の面を上にして空中にある時間がより長くなると研究チームは予想した。テストの結果、最初に上にしていた面が出る確率の方がわずかに高いことが示された。

化学賞
Tess Heeremans
酔った虫と酔っていない虫を分離するためのクロマトグラフィーの使用

自己駆動粒子(自分で速度を変えられる物質や物体)に関するもので、研究チームはイトミミズを高活性グループと低活性グループに分け、低活性グループにはエタノールを吸収させ、両方のイトミミズを流路に放った。

その結果、エタノールを摂取していない高活性のミミズは、酔っぱらったミミズよりも先に流路の端まで到達した。活性ポリマーを長さと活性で選別するには「構造化された空間中に流れる流路」が適していることを示した。

人口統計学賞
Saul Justin Newman
最も長生きしたことで有名な人々の多くが、出生と死亡の記録がきちんと保管されていない場所に住んでいたことの発見


従来、100歳以上の長寿者が集中する「ブルーゾーン」は、強い社会的つながりや野菜摂取量の多さ、特定の遺伝的要因などと関連付けられてきた。しかし同氏は、貧困や低所得、高い犯罪率といった要因と長寿との意外な関連性に気づき、人口統計データを詳しく調査した。

その結果、各ブルーゾーンのデータに多数の誤りがあることが判明した。例えば、1997年のイタリアでは3万人の死亡者が年金を受給し続けていたり、2000年のコスタリカの国勢調査では99歳以上の42%が年齢を誤って申告していたことが分かった。さらに2010年の日本では、百歳以上の高齢者23万人以上が行方不明、架空の人物、死亡、または事務的ミスによるものであり、82%もの誤りがあったことを明らかにした。ニューマン氏は「他の分野でこれほどの誤りが発見されれば大スキャンダルになるはずだが、人口統計学ではこうした問題がほとんど言及されません」と指摘。

生物学賞
Fordyce Ely
牛がいつ、どのように乳を噴出するかを調べるために、牛の背中にいる猫の横で紙袋を爆発させる実験(猫は不要と判明)


搾乳時に乳を出そうとしない牛と、すぐに乳を出す牛の違いに注目し、乳房からの乳の射出に関わる生理学的プロセスを理解するための実験

乳を出す行為は、血中のオキシトシンによる乳腺内の圧力が高まる条件反射として説明できると結論付けられた。
この条件反射により、乳腺胞と乳管の筋肉が収縮し、乳が放出されると論じている。
また、乳を出さない場合は血中のアドレナリンが筋肉の収縮を妨げ、乳腺内の圧力が高まるのを防いでいることが分かった。


注 人口統計学賞での日本についての記述

2010年9月10日、所在不明高齢者問題を巡り、現住所が不明で住民票が削除されているにもかかわらず、戸籍上「生存」する100歳以上の高齢者が約23万人以上いることが法務省の調査で分かった。
戦争や移民先の海外で死亡したものの、死亡届が未提出の例が多いとみられる。同省は自治体に対し、戸籍の整理・抹消手続きを促す。

同省は2010年8月末から9月初めにかけ、電子化された戸籍を中心に、全体の約9割にあたる約4743万戸籍を調査。現住所や住所履歴を記す戸籍の「付票」に住所の記載がない100歳以上が23万4354人。うち「120歳」以上が7万7118人、「150歳」以上は884人だった。

9月10日付けの日本経済新聞は、「田辺三菱製薬を売却へ 三菱ケミG 多額の開発費重荷」と題する記事を掲載した。

化学業界では中国メーカーの過剰生産で収益が悪化し、各社が事業見直しを迫られている。三菱ケミGも本業との相乗効果が見込みにくい医薬品を含め全社的な事業再構築を模索する。

三菱ケミGは売却に向けファイナンシャルアドバイザーを起用し、外資系ファンドなどに打診しているもようだ。売却に向けての交渉は初期段階とみられる。三菱ケミGは田辺三菱を完全子会社化した際の5000億円を上回る金額での売却をめざしているようで、金額など条件次第では売却しない可能性も残る。

収益貢献が高い医薬品事業も見直しの対象になるのは、多額の研究開発費用が必要という医薬品事業特有の理由がある。医薬品の世界では従来型の低分子医薬品からパイオ薬が競争の中心になり、創薬の難易度が格段に上がった。世界の製薬大手は毎年数千億ー1兆円規模を研究開発に投じている。田辺三菱の売り上げは約4300億円と国内でも中堅規模。三菱ケミGの筑本学社長は「医薬品事業のための資金をどう捻出するかは頭が痛い問題」と話す。

三菱ケミカルは同日、この報道を否定した。

当社が発表したものではなく、そのような事実はありません。
当社は、ファーマ事業を含めた全ての事業を対象に、グループ全体の事業ポートフォリオのあるべき姿に関して継続的に検討をしており、売却を含めたあらゆる選択肢を念頭に置いてポートフォリオ改革を推進しております。今後開示すべき事実が発生した場合は速やかに開示いたします。

後述するが、同社には有望な製品はなく、買い手を探すのに苦労すると思われる。

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三菱ケミカルホールディングスは2019年11月18日、田辺三菱製薬の普通株式の全てを取得し、完全子会社とすることを目的とし、公開買付けを実施すると発表した。TOBは成立し、2020年2月末に田辺三菱製薬は上場廃止となった。その後、田辺三菱製薬の決算は公表されていない。

2019/11/22  三菱ケミカルホールディングス、田辺三菱製薬に公開買付け

三菱ケミカルのヘルスケア事業のコア営業損益の状況はこれまでの発表からみると、下記の通りである。2023/3月期以降は田辺三菱製薬の実績は不明。

コア営業損益 単位:億円

三菱ケミカル
ヘルスケア部門
田辺三菱製薬
合計 田辺以外 コア合計 うちロイヤリティ その他
2019/3 538 -20 558 631 -73
2020/3 165 -26 191 174 17
2021/3 179 -31 210 159 51
2022/3 -70 -40 -30 133 -163
2023/3 1,418 159 1,259
2024/3 563

1.三菱ケミカルのヘルスケアの営業損益のうち、田辺三菱製薬分を除くとほとんどなし。

2.田辺三菱製薬の損益は大半がロイヤリティ収入で、それ以外の販売損益はゼロに近い。 

  

 ・ 多発性硬化症治療剤「ジレニア」

田辺三菱製薬の前身の吉富製薬が創製し、海外ではノバルティス(スイス)に導出したこの薬剤のロイヤリティ収入は、収益の柱となっている。

2019年2月、ノバルティスから本件契約の規定の一部の有効性について疑義が提起され、2019年2月15日、国際商業会議所より、ノバルティスを申立人とする仲裁の申立てがあった旨の通知を受領した。

ノバルティスは、米国、EU等における製品の売上ベースのロイヤリティ支払い義務を定める本件契約の規定の一部は無効であり、ノバルティスにはロイヤリティの一部の支払義務がないことの確認を求めている。 本仲裁は、ICCの仲裁規則に従い、英国ロンドンを仲裁地として行われる。

2023/2/15 国際商業会議所の仲裁判断で田辺三菱製薬のロイヤリティ収入が復旧

仲裁の期間中はロイヤリティは売上高に計上しなかった。

最終的に田辺三菱の勝訴となり、2023年3月期4四半期にこれまでの 1,259億円を一括して売上収益として認識した。

 ・ もう一つのロイヤリティの「インヴォカナ」は、ヤンセンファーマシューティカルズに導出した2型糖尿病治療剤。

上記の通り、三菱ケミカル全体のヘルスケア部門の営業損益は過去のロイヤリティがほとんどであり、これらは契約期間が終了すると、利益はゼロになる。

3. 三菱ケミカル(田辺三菱製薬)としては当然、新製品の開発、他社からの技術導入により事業拡大を狙っているが、今までのところ、すべて失敗に終わっている。

1) 新型コロナワクチン

田辺三菱製薬のカナダ子会社 Medicago Inc.は、植物由来ウイルス様粒子「VLP」技術を用いた新規ワクチンの研究開発に特化したカナダのバイオ医薬品会社であり、2022 年2月には新型コロナウイルス感染症の予防を適応として開発してきた VLP ワクチン「COVIFENZ®」がカナダにおいて承認され、商用規模生産の移行に向け準備を進めてきた。カナダ政府と最大7600万回分の契約をむすび、日本でも承認申請の予定だった。

たばこ属の葉に遺伝子を組み込んで抗原を作るが、段階的に生産を引き上げる「スケールアップ」に課題が見つかり、計画通りに量産できない状況となった。

新型コロナウイルス感染症を取り巻く環境は大きく変化しており、現状の新型コロナウイルスワクチンの世界的な需要及び市場環境と、商用規模生産の移行への同社の課題を包括的に検討した結果、COVIFENZ®の商用化を断念するという結論に至り、精算を進める。減損損失が480億円であることを発表した。

   2023/2/4 田辺三菱製薬、新型コロナワクチンから撤退、カナダ子会社を精算へ

2)田辺三菱製薬は2017年7月24日、イスラエルの医薬品企業 NeuroDerm Ltd.の買収手続き開始について合意したと発表した。本買収の取得価額の総額は、約11億米ドル。

NeuroDerm は、パーキンソン病の治療薬に関して、新たな製剤研究や、医薬品と医療器具(デバイス)とを組み合わせる優れた技術開発力を有する医薬品企業で、現在、米国および欧州でフェーズ3に移行し、2019年度に上市が見込まれるパーキンソン病治療薬「ND0612」を中心に開発を推進していた。

 2017/7/27  田辺三菱製薬、イスラエルの医薬品企業 NeuroDermを買収   

NeuroDerm では「ND0612」の治験が当初計画から遅れていたが、第3相臨床試験の治験施設の開設および患者組み入れにおいて重要な立ち上げ期間に今般の新型コロナウイルス感染症の拡大が重なるなどしたため、更に約1年半の開発計画の延長を決定した。

このため、欧米での申請は2023年度になる。

本開発計画の遅れと、複数の競合品の開発状況等から収益性が低下する見込みとなり、2020年9月中間決算で、仕掛研究開発費について845億円の減損損失を計上した。

田辺三菱製薬は2024年6月、ND0612の米国承認申請について、米国食品医薬品局(FDA)より審査完了報告通知を受領した。これは、現在の申請内容では承認に至らない場合にFDAより発行される。

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米国に進出しているメーカーとしては住友ファーマの例がある。

収益の柱であった第二世代抗精神病薬に分類される「統合失調症」および「双極性障害におけるうつ症状の改善」の治療薬「ラツーダ」の特許が切れ、年間2000億円の売上高が、一気にゼロになるという「特許の崖 (Patent Cliff )」に襲われた。

ラツーダの後継候補をこれまで買収してきたが、いろいろな問題でうまくいかなかった。 

2009年9月にSunovion Pharmaceuticals Inc.を買収した(買収額 約26億米ドル)が、同社のバーキンソン病治療薬「キンモビ」の売上予想を見直し、特許権全額 -556億円を減損処理した。

2012年4月に米国のBoston Biomedical Inc.の買収を完了した。癌幹細胞への抗腫瘍効果を目指して創製された低分子経口剤であるBBI608 (ナパブカシン)及びBBI503 の2 つの有力な開発パイプラインを有している。(買収額 200 百万米ドル+マイルストーン)

ナパブカシンは、がんの親玉である「がん幹細胞」をピンポイントで攻撃する世界初の新薬候補として注目を集めていた。またナパブカシンは比較的低コストで治療効果が期待できるとされ、開発費の抑制にもつながるため製薬各社や市場関係者が注視していた。

2019年7月2日、年間売上高が1千億円以上の「ブロックバスター」候補だったナパブカシンの膵がん患者を対象としたフェーズ3試験の中止を発表した。減損損失 -269億円
胃がん、膵がん、結腸・直腸がん向けに、臨床試験の最終段階である第3相まで開発が進んでいたが、2017年6月に胃がん向けの開発に失敗した。

2012/3/3 大日本住友製薬、米国医薬品会社Boston Biomedical を買収 

最後の手段として2019年10月31日、Roivant Sciences との間で、戦略的提携に関する正式契約を締結した。

2019/11/4  大日本住友製薬、Roivant Sciences と戦略的提携、30億ドルを投資

大日本住友製薬は対価として総額30億ドルを支払った。(子会社5社を含めた新会社に 20億ドル、Roivantの株式に10億ドル)
更に、このうちのMyovant Sciences Ltd.( 約52%買収)を2022/10/23に 総額17億米ドルを支払い、100%とした。 合計投資額は6000億円となった。

現在、ラツーダ後継としているのは、Roivant Sciencesの下記の3剤。

    当初開発  
進行性前立腺がん治療剤オルゴビクス 一般名:レルゴリクス 武田薬品 Pffizerと提携
子宮筋腫・子宮内膜症治療剤マイフェンブリー レルゴリクス40mg、エストラジオール1.0mg、
酢酸ノルエチンドロン0.5mgの配合剤
  Pffizerと提携
過活動膀胱治療剤ジェムテサ 一般名:ビベグロン 米 Merck  

しかし、ラツーダの利益減をカバーできるとは思えない。

2023/11/8  米国医薬業界、特許切れの恐怖:住友ファーマのケース


米国では、主要大企業が自社での新製品開発に多額の研究費を投じるとともに、
開発会社が開発中の目ぼしい新製品を金に糸目をつけず、買い漁っている。
このため、中小企業は淘汰され、少数の大企業が生き残りを賭け、争っている。

医薬品の開発は、途中の段階では問題がなく、有望であっても、最後の最後の臨床試験で悪い結果がでると終いである。そのような開発品に数千億円をかけざるを得ない。

多数の有望製品をもっていたとしても、それらは次々に特許が切れる。それに備えて次々と有望製品を買い漁る必要がある。

日本の企業で今後、世界で事業をやっていける企業は少ないだろう。

世界の大企業が企業生命を賭けて大投資をしているなかで、三菱ケミカルや住友化学のような多角化企業の場合、医薬に投資できる資金は限られる。

特定分野に限定するとか、中外製薬のようにRocheと組むなどを考えないと、投資の配分で他の事業にも影響を与えかねない。

多角化事業の一環として医薬事業をやることは今や無理であろう。

住友商事は9月10日、米州住友商事会社の 100%子会社で、米国において化粧品原料の販売を行うPresperse Corporation がニュージャージー州連邦破産裁判所に Chapter 11に基づく企業再生手続開始の申立てを行ったと発表した。 

住友商事は1990年に日本産化粧品素材の欧州・米国・中国への輸出を開始、2007年に北米の化粧品素材販売事業会社Presperseに20%出資、2010年に出資比率を100%に引き上げた。

当時の発表によると、化粧品業界は、市場規模約32兆円(グローバルベース)、今後新興国を中心に年率3~4パーセントの成長が見込まれる有望な市場で、Presperse は、エスティローダー、ロレアル、エイボン、P&G、レブロン、ジョンソン・エンド・ジョンソン等の大手化粧品メーカーを主要顧客とし、約300社の化粧品メーカーとの取引実績を有する米国の大手化粧品原料フォーミュレーターである。

米国市場を軸としビジネスを行っているが、今後は欧日市場に展開すると同時に、飛躍的な伸びが見込まれるBRICSをはじめとする新興国にも拠点を配置しながら拡大し、一気に世界展開を進める予定であった。


今回、Presperse Corporationは米国内におけるタルク(滑石)関連訴訟を受け、これまで真摯に訴訟対応を進めてきたが、同対応に係る費用が大きく、同社の事業継続が困難な見通しとなった。

しかし、同社が活動を行う化粧品業界においては、多くのステークホルダーに同社の事業価値を認めてもらっているため、同社の事業を継続したい。

このため、Chapter11 524(g)による再建手段を検討することで原告側と合意に至り、裁判所に Chapter11に基づく企業再生手続申請することとした。

Chapter 11 524(g) とは、アスベスト被害に対応するために制定された連邦倒産法の事業再生手続の一類型。

通常の事業運営を継続しつつ、アスベスト関連責任について切り出して解決を行う際に利用される。同手続の申請者は、アスベスト関連責任の解決のために一定額の救済基金を設立し、アスベスト関連責任の債権者は当該救済基金から返済を受けることで、申請者のアスベスト関連責任が免責される仕組みとなっている。

2024年3月時点での負債総額は5920万ドル(約83億円)。同社が販売するタルク(滑石)を原料に含む化粧品を使用した消費者から訴訟が相次ぎ、関連費用が膨らみ、事業継続が困難になった。

商品の競争力は維持できているものの、数百件に上る訴訟にかかる弁護士費用や和解金の積み立てが生じ、24年3月期の最終損益は4057万ドルの赤字(前期は317万ドルの黒字)だった。

住友商事は24年3月期の連結決算で、訴訟関連費用約50億円を計上し、Presperse の株式評価額を0円にする評価の見直しも実行済みのため、25年3月期の連結業績予想に与える影響は軽微としている。

Presperseは原料の安全性の問題について認めていない。

ーーー

米国ではタルクについての裁判が相次いでいる。このうち最大のものはJohnson & Johnsonのもので、これにはPresperse Corporation は関与していない。

Johnson & Johnsonはベビーパウダーのタルクにアスベストが含まれ、中皮腫や卵巣がんが発症したとして訴訟が相次いでいる。

Johnson & Johnson向けのタルクのサプライヤーはCyprus Mines(キプロスに拠点)とフランスのImerys である。

ヘルスケア製品最大手のJohnson & Johnson(J&J) は2018年4月5日、同社製ベビーパウダーのタルクにアスベストが含まれており、中皮細胞から発生するガンの一種、中皮腫を誘発したとする告訴を巡る米ニュージャージー州ミドルセックス郡の上級裁判で敗訴した。

原告に3,000万米ドル、配偶者に700万米ドル、合計3,700万米ドル(約40億円)の補償的損害賠償金の支払いを命じる評決を陪審員が下した。

これに対し、J&Jは原告側の主張を否定し、同社のベビーパウダーにはアスベストは含まれておらず、ガンを引き起こすはずはないと反論している。

同様の訴訟が相次いだが、2024年5月の時点で約95%のケースで和解に至った。また米各州が提起した消費者保護訴訟でも暫定合意に達したと発表した。

J&Jは2024年5月1日、タルクを使った同社のベビーパウダーが原因で卵巣がんを発症したとして集団訴訟を起こされている問題で110億ドル(約1兆7400億円)での一括和解案を提示。昨年の提示額に21億ドル上乗せし、数千人もの原告に支持を求めた。

5月1日の発表によれば、J&Jは既存および将来の法的請求をすべて決着することを目指して子会社に破産法適用を申請させることに原告の承諾を求めた。同社の子会社は過去に2度、連邦破産法11条の適用申請を試みたが、原告側は補償額が少なすぎるとして受け入れなかった。


J&Jが今回進めようとしているのは「プレパッケージ」破産と呼ばれる手法で、債権者から事前に十分な支持を取り付ければ破産法11条の適用プロセスをスピードアップできるもの。破産裁判所では集団訴訟の原告は無担保債権者とみなされる。J&Jが破産法裁判所の判事から承認を得るには、原告の75%から支持を取り付ける必要があると破産法11条は定めている。

2月に提出された有価証券報告書によるとJ&J は現在、ベビーパウダーや類似製品に使用されたタルクがさまざまな種類のがんを発症させたとして、6万件近くの訴訟を抱えている。この多くはニュージャージー州にある連邦裁判所判事の判断で集約され、公判前の情報交換が行われている。その他の訴訟は州裁判所で審理される。

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米国では陪審員制度であり、J&Jのような大企業が訴えられると賠償額は膨大なものになる。これが報道されると、同種の製品メーカーとそこに原料を供給するメーカーが相次いで訴えられるのが米国の慣行である。

Presperse Corporation についても、同社が販売するタルク(滑石)を原料に含む化粧品を使用した消費者から訴訟が相次ぎ、タルクを供給したPresperseも訴えられたものである。

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J&Jは2022年8月、タルク(滑石)を原料とするベビーパウダーの製造と販売を、来年から世界中で停止すると発表した。コーンスターチを原料として使っていくという。

J&Jのベビーパウダーは130年近く販売されており、おむつかぶれの予防や化粧に使われている。家庭にやさしい同社のイメージを象徴する製品となっている。しかし、タルクを使ったパウダーをめぐっては、含有されているアスベスト(石綿)が原因で卵巣がんを発症したとして、女性や遺族らがJ&Jを相手に数万件に上る訴訟を起こしている。

J&Jは製造・販売の停止の方針を明らかにしたが、安全性については、数十年にわたる独自の研究ですでに示されているとする、これまでの見解を繰り返した。「タルクを使用したJohnsonのベビーパウダーは安全で、アスベストを含んでおらず、がんを引き起こさないことが、世界中の医学専門家による数十年にわたる独立した科学的分析で確認されている。当社はそれを強く支持している」とした。

製造・販売の停止については、「世界的な製品ラインアップの評価の一環として、コーンスターチを原料とするベビーパウダーのラインアップに移行するという商業的な決断をした」と説明した。

米グーグル出身の研究者らが設立したサカナAIは9月4日、米NVIDIAなど複数の投資家から資金を調達すると発表した。

具体的な金額は明らかにしていないが総額は約200億円で、そのうちNVIDIAが数十億円と最大の出し手になる見通し。

生成AI(人工知能)開発競争が世界で過熱するなか、日本発のスタートアップと米国半導体の雄が組む異例の展開となる。

サカナAIは2024年1月に米有力ベンチャーキャピタル(VC)のKhosla VenturesやLux Capital主導のもとで約45億円の資金調達を発表した。NTTグループやKDDIのほか、ソニーグループのそれぞれのベンチャーキャピタルなど日本の大手企業からも出資を受けた。

世界では大手企業が出資や提携を通じて生成AIの有望なスタートアップを囲い込む動きが広がる。サカナAIを巡っても米テクノロジー企業やアジアの有力投資家が出資に意欲を示し、水面下で協議や交渉が進んでいるもよう。

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サカナAIはグーグル出身のDavid Ha氏とLlion Jones 氏、外務省出身でメルカリ執行役員などを務めた伊藤錬氏の3氏が2023年に創業した。ジョーンズ氏は2017年にグーグルが発表し、現在の生成AIの土台となった論文「 Attention Is All You Need」の共同執筆者の一人として知られる。

2022年に米OpenAIが「Chat GPT」を公開して以降、急速に普及する現在の生成AIは「大規模言語モデル」と呼ばれる技術を中核にしている。米テクノロジー企業などが巨大なコンピューターを使い、膨大な文章データを学習させて言語を扱う能力を高めてきた。

サカナAIはこうした従来の開発手法とは一線を画し、魚が群れを形成するように小規模なAIを組み合わせて高度な知能を実現する目標を掲げてきた。

同社は3月21日、複数の人工知能(AI)を掛け合わせてより優れたAIを生み出す新たな手法を開発したと発表した。
進化的アルゴリズムによる基盤モデルの構築

短い時間で「交配」を繰り返してAIの進化を促すことで、開発期間を従来の数百分の1に縮められる可能性がある。

 

生成AIの開発には通常、高性能の半導体や膨大な学習データが必要となる。高度な基盤技術を開発できるのは資金力のある一握りのテクノロジー企業に限られていた。サカナAIは従来とは異なるアプローチを実現し、生成AIの開発にゲームチェンジを仕掛ける狙いだ。

今回の発表は具体化に向けた第1弾の成果となる。

開発した手法は一から自前でAIのモデルを構築するのではなく、設計情報が公開された「オープンソース」の技術などを用いる。世界中の開発者らがオープンソースの技術に改良や改変を加え、多様な特徴を持つAIが生まれている。これらの中から異なるモデルを掛け合わせ、生物が進化するように高性能のAIをつくり出す。

まず「親」となる数種類のAIを様々なパターンで組み合わせて「子」となるモデルをつくる。その中から優れた性能をもつAIを選抜し、再び掛け合わせて「孫」のAIを生み出す。実験では1世代で最大100種を超すモデルをつくり、数百世代にわたって掛け合わせを繰り返した。この作業により、無数の組み合わせによる「競争」を勝ち抜いた優れたAIが生まれるという。

サカナAIの手法ではこうした組み合わせや選抜の工程に人間が介在せず、自律的に動作するアルゴリズム(計算手法)を用いる。実験では数百世代にわたる膨大な掛け合わせも1日で済んだ。多くの電力を消費する大量のコンピューターも不要だ。

米テクノロジー企業などが自前の大規模言語モデルを開発する際には、一般に年単位の期間がかかる。条件や方法が異なるため単純比較はできないが、サカナAIの新たな手法ではこれまで大量のデータを学習させて言語能力などを高めていた時間を数十〜数百分の1にできる可能性がある。

同社は開発した手法を用いて実際に①日本語で数学の問題を解く大規模言語モデル②画像に関する質問に日本語で正確に答えるモデル③日本語の指示に基づいて高速に画像を生成するモデルの3種類を試作した。開発した手法は論文として公表し、さらに発展させてより優れたAIの実現につなげる計画だ。


ことし7月には、AIに日本語で浮世絵の特徴を学習させることで、浮世絵風の画像を作り出す生成AIモデルを開発したと発表し、日本文化の特徴を取り込んだAIとして注目された。

 

 

京都大学病院はiPS細胞から作った膵臓の細胞のシートを糖尿病の患者に移植する臨床試験を2025年にも実施する。

膵臓の細胞が正常に働かず血糖値が上昇し、様々な合併症を引き起こす重症の1型糖尿病の患者にiPS細胞から作った膵臓の細胞「膵島細胞」を移植する。

血糖値を下げるための注射を不要にしたり、回数を減らしたりして、患者の負担を軽減できる可能性がある。2030年以降の実用化をめざす。

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膵臓は、アミラーゼやリパーゼなどの消化酵素を分泌する外分泌細胞と、インスリンやグルカゴンを分泌して血糖調節を行う内分泌細胞との2種類の異なる細胞群(組織)からできている。

この血糖調節を行う内分泌組織を「膵島」という。直径が約 0.1〜0.3 mm の球状の塊で、膵外分泌組織の中に点々と散らばっている。

膵臓の中には 成人1人あたり約 100 万個の膵島があり、膵臓を構成する組織の約1%程度といわれている。

膵島のうち、血糖を上昇させる働きがあるグルカゴンを分泌するのがα細胞

血糖を低下させるホルモンであるインスリンを分泌するのがβ細胞

糖尿病には1型と2型がある。

1型は、自己免疫疾患などが原因でインスリン分泌細胞が破壊されるもので、インスリンの自己注射が必要。 患者は通常、インスリン製剤を毎日数回、腹部に自分で注射する必要がある。

2型は、遺伝的要因に過食や運動不足などの生活習慣が重なって発症する。糖尿病の多くは、この2型である。


国内では、亡くなった人の膵臓から膵島細胞を取り出し、重症患者に移植する「膵島移植」が2020年から公的医療保険の対象になっている。
しかし、日本膵・膵島移植学会によると、提供者(ドナー)不足などから、保険適用後に実施されたのは10人以下にとどまっている。

健康な人の膵島細胞を移植する既存の治療法はドナー(提供者)が不足しており、免疫抑制剤による副作用もある。


京大などはiPS細胞から膵島細胞を作ってシート状にする技術を開発し、この技術をもとに京大病院での治験計画を立てた。
2024年の8月下旬に京大の治験審査委員会で承認され、医薬品を承認審査する医薬品医療機器総合機構(PMDA)に計画書を送付した。

健康な人の細胞から作ったiPS細胞から膵島細胞の塊をつくり、複数集めて数センチメートル四方のシート状にする。手術でシート複数枚を患者の腹部の皮下に移植する。

移植したシートが患者本来の膵島細胞の代わりにインスリンを放出し、血糖値を下げることで、患者の体の負担や合併症のリスクを減らせる。

シートは京大と武田薬品工業が中心となって立ち上げ、iPS細胞の事業化を手掛けるオリヅルセラピューティクス(神奈川県藤沢市)が製造する。同社は実用化に向けて今回の治験の後、海外の研究機関や企業などと協力し、規模を拡大した国際共同治験によって有効性を確かめる方針だ。

オリヅルセラピューティクス株式会社 は、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と武田薬品工業によるiPS細胞共同研究「T-CiRAプログラム」の事業化を目的に発足した研究開発型企業で、創業日 は2021年4月9日
事業内容 は、1.細胞移植による再生医療等製品の開発、2. iPS細胞関連技術を利活用した、創薬研究支援および再生医療研究基盤整備

株主は、京都大学イノベーションキャピタル、武田薬品工業、SMBCベンチャーキャピタル、他

iPS細胞から作った膵島細胞を使う治療法について、主に1型糖尿病の患者支援や治療法の開発支援に力を入れるNPO法人「日本IDDMネットワーク」の井上龍夫理事長は「新しい治療法が従来の課題を解決し、根治に向けた選択肢になると期待したい」と話す。

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世界でも1型糖尿病の治療技術の開発が進む。米バイオ企業のVertex Pharmaceuticalsは6月、1型糖尿病の患者12人にヒトの幹細胞からつくった膵島細胞を移植し、インスリンが作られることを確認したと発表した。うち11人は注射などによるインスリンの投与量が減ったり、投与が不要になったりした。

国立国際医療研究センターはヒトではなくブタの膵島細胞を使う手法の研究を進めており、今後1型糖尿病患者向けに臨床試験の実施を目指す。ヒトの免疫がブタの細胞を攻撃するのを防ぐため、細胞を微小な穴の開いたカプセルに入れて投与する。

ブタの細胞がつくるインスリンはヒトのものとの違いが少なく代用できる。過去にはブタのインスリンを糖尿病の治療に活用していた時代もある。

米通商代表部(USTR)は8月30日、カナダが施行したデジタルサービス税(DST)が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に違反しているとして、カナダ政府に同協定に基づく協議を要請した。

協議が75日以内にまとまらなければ、USMCAの紛争解決制度に従って正式にカナダ政府を提訴する見通し。

カナダは6月にデジタルサービス税(DST)を発効した。全世界の売上高が7億5千万ユーロ(約1200億円)を超す企業の収入の一部に3%の税金をかける。

課税対象はSNSやオンラインのマーケットプレイス事業、デジタル広告で、主にグーグルやメタといった米テック企業が徴税の対象になる。2022年1月以降の収入に遡って適用され、年間およそ8億7500万ドル(約1280億円)の税収が見込まれている。


米国は、カナダのDSTは
グーグル、アップル、アマゾン・ドット・コム、メタなどのアメリカのハイテク大手を不当にターゲットにしているとし、米国企業をカナダ企業と同等に扱うよう定めたUSMCAの規定に違反していると主張している。USTRのキャサリン・タイ代表は「米企業を差別する一方的な措置に反対する」とした。

米連邦議会上院財政委員会のロン・ワイデン委員長も「米国のイノベーターを標的にした差別的な税金で良質な雇用を危険にさらす」と述べてUSTRを支持した。

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デジタル課税は、恒久的施設を持たない外国企業への課税が可能になる仕組みで、世界的な多国籍企業について、各国間の利益と課税権をより公平に再配分することを目的としている。

各国がバラバラに導入を検討したため、大きな問題となった。

2020/1/29 デジタル課税を巡る問題

2020/7/14 米国、フランスのデジタル課税に報復関税 

2019/3/12 EU、デジタル課税合意見送り、仏英など独自課税へ

2019/12/30 イタリア、デジタル課税を導入、 フランスに追随

2020/2/18 OECD、多国籍企業課税新ルールの影響の試算発表   

「第1の柱」について、利益率10%以上の部分を超過利益とみなし、その20%を市場各国に分配するとした。「第2の柱」については最低税率を12.5%と仮定した。

2020/6/4 米、10カ国・地域にデジタル税の対抗措置検討

2020/6/23 米、デジタル税を巡る国際協議からの撤退を示唆

2020/10/23 フランス、デジタル税を再開

OECD/G20の「BEPS(税源浸食と利益移転:Base Erosion and Profit Shifting)包摂的枠組み」において、2021年10月8日に大枠合意に至った。詳細を巡って米国やインドなどの意見調整が進まず、制度の根拠となる多国間条約の署名が実現していない。

国際課税ルールの抜本的な改革であり、2023年前半に多国間条約の署名、2024年に条約発効を目標としている。カナダ政府は交渉に参加している。

経済協力開発機構(OECD)は2021年5月に米国の新提案を採用する調整に入った。関係国の交渉担当者に新たなルールに基づく複数の試算を示した。

多国籍企業の利益に対する課税権を、事業活動で利益を上げている国に再配分することを第一の柱とし、世界的に15%の最低法人税率を導入することを第二の柱とする。

米国案は、売上高と利益率の規模で機械的に対象を決める。米企業の狙い撃ちになるのを避け、対象を世界で100社ほどに絞り込む。
企業の国別売上高に応じて税収を各国に配分するという現行案の仕組みは変えない。

OECDは関係国の交渉担当者に新たなルールに基づく複数の試算を示した。いずれも米国が4月に提案した案に沿っており、利益率と売上高の組み合わせで一定の基準を超えるグローバル企業に課税する。

具体的には売上高を100億ドル(約1兆1000億円)以上とする案や、利益率の水準を15~20%以上とする案などがある。


OECD公表による合意内容および第1の柱・第2の柱の概要   詳細 別紙


2021/5/25 OECD、デジタル課税で米提案を採用へ

2021/10/12 国際課税の新ルール、136カ国・地域が合意

経済協力開発機構(OECD)は2023年7月12日、デジタルサービス税を導入している国がカナダ 等を除き、同税の適用を少なくともあと1年間見送ることで合意したと明らかにした。

OECDはアップルやアマゾンといった巨大IT企業への課税を見直した新たな国際課税ルールを2021年にとりまとめた が、この合意に参加した143カ国が2024年から合意内容を実施することになっていた。

デジタルサービス税凍結に不支持だったのは、143カ国中、ベラルーシ、カナダ、パキスタン、ロシア、スリランカの5カ国。この中でデジタルサービス税構想を持つのはカナダのみ。

デジタル課税発効の見通しが立たないため、カナダは独自ルールの施行に踏み切った。デジタル課税の交渉中はDSTを凍結するという案も拒否した。

カナダの財務大臣は2024年4月16日、政府の予算案を公表した。

国際税務関連では、以下の改正項目が含まれる。

第1の柱・第2の柱

本予算案において、OECD・第1の柱についてのコミットメントを再確認する一方、デジタルサービス税(DST)の制定計画を進めており、その実施法案が議会に提出されている(初年度は2022年1月1日以後の収入が課税対象見込み)。
第2の柱の実施法案は、近く議会に提出見込みである。


2024年2月の下院財務常任委員会の報告書では、必要があれば、多国籍企業に対して25%以上の実効税率を適用し、デジタルサービスに係る独自の課税の導入を進めるよう(また、デジタルサービスに係る税が引き続き国際先例との整合性を確保するよう)提言している。

なお、カナダの一般的な連邦法人所得税(CIT)税率は15%(基本税率38%-10%(州・準州レベルのCIT課税の可能性を考慮。外国法域に係る課税所得には適用なし)-13%(一般税率控除/製造・加工業に係る控除))であり、州・準州のCIT(連邦CIT上、損金不算入)税率はかなり異なっている。

武田薬品工業は米国でデング熱用ワクチンの販売の承認をFDAに申請する。クリストフ・ウェバーCEOが日本経済新聞に明らかにした。

承認されればワクチンで米市場に参入する初の日本企業となる。

デング熱は、最も急速に感染が拡大している蚊媒介の感染症で、世界保健機関(WHO)は、2019年のグローバルヘルスに対する10の脅威の1つにデング熱を挙げている。

主にネッタイシマカ、および比較的低い割合でヒトスジシマカによって媒介され、4種のウイルス血清型(DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4)すべてがデング熱または重症型デング出血熱を引き起こす可能性がある。個別の血清型羅患率は地理、地域、国や季節によって異なり、また時間の経過とともに変化していく。ある血清型のウイルスに感染した場合、その血清型に対する免疫は一生涯続くが、後に異なる血清型のウイルスに感染した場合、重症化のリスクが高まる。

デング熱はパンデミックを起こしやすく、熱帯および亜熱帯地域で流行が認められており、最近では北米大陸やヨーロッパの一部で流行している。現在、世界の約半数がデング熱の脅威にさらされており、毎年世界中で3億9000万人が感染し、約2万人が死亡していると推定されている。デングウイルスはあらゆる年齢の人々に感染し、中南米およびアジアの一部の国では小児の重篤な疾患の主な原因となっている。


武田薬品の4価デング熱ワクチンQDENGA®(TAK-003)は、4種のワクチンウイルス型すべての遺伝子型の"バックボーン"として弱毒化された生の2型デングウイルスをベースに構築されている。

元々はバイオ企業Inviragen (米コロラド州) が開発してきた。 2013 年に武田薬品がワクチンパイプライン拡充の一環で同社を3500万ドルで買収した。

Inviragenは2005年に設立、デング熱のほか幼児がかかりやすい手足口病のワクチンの研究開発を進めている。 シンガポールに開発拠点を持つ。従業員は約50人。

2022 年8 月にまずインドネシアで「QDENGA®」の製品名で承認を取得した。

米国では一度承認申請している。2022年11月24日、デング熱ワクチン候補(TAK-003)が、米国食品医薬品局により生物学的製剤承認申請 (BLA)を受理され、優先審査に指定されたと発表した。米国では、TAK-003は4歳から60歳を接種対象とした4種すべてのデングウイルス血清型によって引き起こされるデング熱の予防を目的として審査され た。

TAK-003 の生物学的製剤承認申請は、グローバル臨床第3相試験であるTIDES試験の安全性および有効性データに基づいている。

しかし、同社は2023年7月、米国食品医薬品局(FDA)との現行の生物学的製剤承認申請(BLA)の審査サイクル内では解決できないデータ収集に関する議論を経て、米国におけるTAK-003のBLAを自主的に取り下げ た。

同社では、必要なデータ収集についてFDAの審査期間中に対応することができないとしていた。

米国では自治領プエルトリコなどデング熱流行地域に旅行する人やそこで暮らす人たちにとってワクチンが必要な点を踏まえ、米国における今後のTAK-003を巡る対応をさらに検討していくとした。

デング熱ワクチンは2015年にフランスの製薬大手Sanofiの製品が世界で初めて承認されたが、感染歴がない子どもが接種すると感染時に重症化するリスクが高まることが判明すると、使用が大幅に減少した。

2022年10月に欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会(CHMP)から肯定的な見解があったことを受け 、同年12月に欧州委員会により、EUでの4種すべてのデングウイルス血清型により引き起こされるデング熱の予防を目的として、4歳以上を接種対象者として承認された。

2023年3月、ブラジルで国家衛生監督庁により、4種すべてのデングウイルス血清型により引き起こされるデング熱の予防を目的として、4歳から60歳までを接種対象として承認された。QDENGAは、デングウイルス感染歴を問わず、またワクチン接種前の感染歴検査を必要としない、ブラジルで承認された唯一のデング熱ワクチンである。

28,000例を超える小児および成人を対象とした19件の臨床第1、2、3相試験にわたる結果に基づき、4.5年の追跡調査データより一貫した有効性が示され、重要な安全性リスクは特定されなかった。

ベトナム保健省の医薬品管理局は2024年5月14日、QDENGAの流通と使用を承認した。ベトナムでデング熱ワクチンが承認されるのは初めて。

世界保健機関は2024年5月15日、武田薬品工業のデング熱ワクチンQDENGA®(TAK-003)を事前認定したと発表した。WHOの医薬品事前認証プログラム (PQP) は、調達機関の供給する医薬品が品質、安全性、有効性の許容基準を満たすものであることを確証する支援プログラム。

国連機関などによる調達が可能になり、ワクチンの普及が進むと見込んでいる。WHOがデング熱ワクチンを事前認定したのは Sanofi PasteurのCYD-TDV vaccineにつぐ2例目。

WHOは、デング熱が大規模流行している地域で6~16歳の子供に対してQDENGA®の接種を推奨。初回接種の3カ月後に、2回目を受けるよう求めている。

今回、WHOの推奨を受け、米国で再度申請する。

世界で最大年20億ドルの売上高を目指す。

武田薬品工業は2024年2月27日、デング熱ワクチンQDENGAの生産拡大のため、インドの大手ワクチン・医薬品製造のBiological E と協業することを発表した。今後、Biological E が年間最大5,000万回接種分のワクチンを製造することで武田のワクチン供給能力は2030年までに年間1億回接種分に増加する。

同ワクチンは現在、欧州、インドネシア、タイ、アルゼンチン、ブラジルなどで承認されているが、価格と生産量などが障壁となり、民間市場を通した接種がほとんどで、公共接種は限定的にとどまる。

今回の協業を通じ、インドで価格を抑えたワクチンの大量生産が実現すれば、蔓延国・地域で公共接種を中心としたワクチン提供の拡大が見込まれ、世界のデング熱対策に大きく貢献することになる。

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WHO 世界ワクチン市場レポート 2023 (2024年06月13日)

WHO は、世界のワクチン市場のダイナミクスに関する定期的な報告書を発行し、特に国際的な支援が限られている国々のワクチンへのアクセスを強化するという観点から、ワクチン市場の全体的な健康状態をまとめてい る。2023年版 報告書では、パンデミック協定の議論やアフリカ連合の「アフリカのための新たな公衆衛生秩序」の呼びかけなど、現在進行中の画期的な地域的 ・ グローバルなイニシアティブに照らして、主要な事実と数値に関する最新情報を提供し、行動への呼びかけを強化している。


《ポイント》

  1. Covid-19 ワクチンは引き続き世界のワクチン市場量の 60 % (2022年) を占めている。
  1. ワクチン製造の集中は依然として続いており、10 社だけでワクチン投与量 (Covid-19ワクチンを除く) の 75 % を供給し、金額の 85 % を獲得している。


    下図は2022年の売上高トップ10。上はCOVID-19用ワクチンを含むもので、PfizerとModernaが合計で50%を超える。
    下はCOVID-19用ワクチン以外のもの。
    日本のメーカーはなし。中国やインドは含まれている。

  1. 需要量の地理的シェアでは、WHO 南東アジア地域が引き続き世界のワクチンの約 30 % を消費している。
  1. 中所得国が購入するワクチンは世界の数量で 60 % 、金額で 34 % を占め、高所得国は、世界の数量で 29 % 、金額で 63 % を占めている。
  1. ワクチン調達メカニズムに関しては、自己調達が数量で市場の約75 % 、金額で市場の90 % を占め、ユニセフなどによるプール調達メカニズムが、それぞれ残りの 25 % と 10 % を補っている。


2022年 ワクチン売上金額 トップ10  COVID-19ワクチンを含む

   COVID-19ワクチンを除外

ドイツに本社を置くインフィニオン テクノロジーズ (Infineon Technologies)は8月9日、世界最大かつ最も競争力のある200mm 炭化ケイ素 (SiC) パワー半導体工場となるマレーシアのKulimの新工場の第1フェーズを正式に開設 した。式典にはマレーシアのアンワル首相およびケダ州のサヌシ首相が参加した。

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Infineonは1973年に ドイツのSiemensの半導体グループの一部としてマレーシアのマラッカ州工場で操業を開始した。

1999年にシーメンスから分離・独立して誕生した。

2006年5月1日に、半導体メモリ部門を新子会社Qimonda AG として分割した。(設立後すぐにニューヨーク証券取引所に上場したが、2009年1月破産を申請した。 )

現在、Infineon Technologies AGは、自動車メーカーや各種産業向けに半導体を製造する多国籍企業で、パワー半導体、特にIGBTおよびパワーMOSFETにおいて世界トップクラスの市場シェアを有する。

ドイツ・ミュンヘン近郊のノイビーベルクに本社を置き、世界30カ国以上に現地法人を持つ。

自動車用や産業用の他、様々な分野へ、半導体製品の設計、開発、製造、販売、およびシステムソリューションの提供を行っている。またアメリカのカリフォルニア州サンノゼ、シンガポール、東京に子会社を置き、世界展開している。

2011年には、主に携帯電話用のモデムチップを開発販売していた無線ソリューション事業 (WLS) を約14億米ドルで米国の半導体会社インテルに売却し同事業から撤退した。インフィニオン製のモデムチップはAppleのiPhone 4に採用されるなどの実績を持っていた。

2014年8月20日、米国インターナショナル・レクティファイアーを現金約30億米ドルで買収することで合意した。この買収によりインフィニオンはパワー半導体市場のシェアにおいて、2位の東芝に2倍以上の差をつけて引き離す 。

2016年7月14日、米国Cree 社からパワー&RF事業部として分社化したWolfspeed社を8億5000万米ドルで買収すると発表。

2020年4月16日、米国の同業サイプレス・セミコンダクターを買収し子会社とした。

メモリーやプロセッサーなどを除いた、半導体市場全体の約3分の2の市場を狙っており、特にパワー半導体に注力している。

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マレーシアにおけるInfineonの事業は主に以下の3つに分かれている。

社名 場所 事業
Infineon Technologies (Kulim) Sdn Bhd ケダ州Kulim フロントエンド業務(ウェーハ製造)
Infineon Technologies (M) Sdn. Bhd. マラッカ州
Batu Berendam
自由貿易区
先端ロジック系半導体を用いたマイクロエレクトロニクス製品のバックエンド業務
Infineon Technologies (Advanced Logic) Sdn. Bhd. 電力、ディスクリートおよびセンサー半導体を用いたマイクロエレクトロニクス製品のバックエンド業務

2006年9月にKulim High-Tech Park内に、同社としてはアジア初のパワー半導体向け前工程工場 (第1工場)をオープンした。約10億米ドルを投資、最大生産能力は月間ウェハ投入量にして約10万枚(ウェハ径200mm)となっている。産業用・車載用のパワー半導体製品とロジック半導体製品が生産される 。

同社は、第1工場の優れた成長実績や安定性、そしてマレーシア投資開発庁の支援を追い風に、ウェーハ製造施設の拡大を決定した。第2工場施設は、エネルギー効率化および自動車産業向けのメガトレンド技術に重点を置いた製造コンピテンシー・センターとなる。

2022年2月、Kulim拠点に20億ユーロを投じ、第3製造棟としてSiC/GaN半導体の前工程工場を建設すると発表 した。(今回の第3工場第1フェーズ)

同工場の第1フェーズは、SiCパワー半導体の製造に重点を置き、窒化ガリウム (GaN) エピタキシーを含む予定。
SiC半導体は、電気をより効率的にスイッチングし、より小型の設計が可能であるため、高出力アプリケーションに革命をもたらし、電気自動車、急速充電ステーション、鉄道、再生可能エネルギーシステム、AIデータセンターなどの効率を高め る。第1フェーズで900人の高付加価値雇用が創出される。

2023年8月3日、200mmウエハーSiC(炭化ケイ素)工場を新設する計画を発表した。第3製造棟 第2フェーズとして今後5年で最大50億ユーロの追加投資を行う予定。完成すれば、「世界最大」の200mmウエハーSiCパワー半導体工場となる。 両フェーズを合わせたプロジェクト全体では最大4,000人の雇用が創出される。

なお、Infineonは既存および新規顧客から、車載および産業用アプリケーションにおける約50億ユーロの新規デザインウィンおよび、約10億ユーロの前払いを獲得している 。

車載部門の顧客には、Ford Motor Companyや上海汽車集団、奇瑞汽車などの自動車メーカー6社(うち中国企業は3社)が含まれている。再生可能エネルギー分野では、SolarEdgeや中国の太陽光発電/蓄電システム大手の3社が顧客となっている。
また、Schneider ElectricとSiCベースの製品に関し、前払いを含む生産能力確保について合意したことも明かした。

Kulim High-Tech Park 右端が第3工場 上からの写真 一番下が第3工場  
左側が第1フェーズ、右の空き地が第2フェーズ
..

高効率の200mm SiCパワー半導体工場は、インフィニオンのパワー半導体の世界的リーダーとしての役割を強化する。第2フェーズでは、最大50億ユーロを投資し、世界最大かつ最も効率的な200mm SiCパワー半導体工場が建設される。

Kulim第3工場はInfineonのパワー半導体のグローバル コンピテンス センターであるオーストリア Villachの製造拠点と密接な関係にある。Infineonは2023年にVillachのSiCおよびGaNパワー半導体の生産能力を増強してい る。これら2つの製造拠点はワイドバンドギャップ技術のための「1つのVirtual Fab」として、迅速な立ち上げとスムーズで高効率な運用を可能にする技術とプロセスを共有してい る。

Infineonは2023年5月に炭化ケイ素 (SiC) 材料の調達基盤を多様化し、競争力のあるSiC供給元をさらに確保するため、中国のSiCサプライヤーであるSICC(山東天岳先進科技股份)と契約を締結した。この契約により、SICCはInfineonに対して、競争力があり、高品質なSiC半導体製造用150 mmウエハーおよび結晶ブールを供給し、長期的に予測される需要に対して2桁のシェアをカバーする。

インフィニオンは現在、2030年までに世界シェア30%という目標を達成するために、SiCの製造能力を拡大しており、その能力は2027年までに現在の10倍になる見込み。すでに世界中で3,600社以上の自動車および産業分野の顧客にSiC半導体を提供している。

米保健福祉省は昨年(2023年)8月29日、高齢者向け公的医療保険「メディケア」の対象となる医療用医薬品(処方薬)の価格を交渉で決める制度を最初に適用する10品目を発表した。

米国の法律は従来、約20年前に始まった処方薬制度の一環としてメディケアの対象となる処方薬の価格交渉は禁止していた。

バイデン大統領が2022年署名して成立したインフレ抑制法(Inflation Reduction Act:IRA)では、65歳以上の米国人を対象とし、約6600万人に適用されているメディケアに関し、最も高額な医薬品の一部の薬価引き下げ交渉を認めた。

交渉は2023~2024年に行われ、新たな価格は2024年9月に公表し、2026年1月から導入する。この仕組みにより、2031年までに年間250億ドルの薬価削減を目指している。

MerckやJohndon & Johnsonなどの製薬大手は収益減への懸念から、メディケアの薬価交渉をめぐって米国政府を提訴している。インフレ抑制法の薬価交渉に関連する部分が米憲法違反だと主張している。

2023/8/31 米国、メディケア対象医薬品の薬価交渉対象の第一弾10品目を発表


今回の10品目は下記の通り。メーカーは13社。

製品名 一般名 用途 メーカー
Eliquis アポキサバン 血栓塞栓症の治療・予防に用いられる経口投与が可能な抗凝固剤の1つ。 Bristol Myers Squibb 
Pfizer
Jardiance エンパグリフロジン ナトリウム・グルコース共輸送体-2 阻害作用を有する糖尿病治療薬 Boehringer Ingelheim
Eli Lilly
Xarelto リバロキサバン 経口抗凝固薬の一つ Bayer
Janssen Pharmaceuticals
Januvia シタグリプチン 経口血糖降下薬、2型糖尿病の治療薬 Merck & Co.
Farxiga ダパグリフロジン 2型糖尿病治療薬の内、SGLT-2阻害薬に分類される医薬品 AstraZeneca
Entresto サクバトリル/
バルサルタン
心不全・高血圧症治療のための合剤 Novartis
Enbrel エタネルセプト 分子標的治療薬の一つで関節リウマチなどの膠原病・自己免疫疾患の治療薬 Amgen (Immunex)
Imbruvica イブルチニブ B細胞性腫瘍の治療に用いられる抗がん剤 Pharmacyclics
Janssen Biotech
Stalara ウステキヌマブ ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤
日本では乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎に対して適応
Janssen Biotech
Fiasp;
NovoLog 等
インスリンアスパル 1型および2型糖尿病の治療に使用される超速効型インスリン Novo Nordisk


バイデン政権は2024年8月15日、薬価引き下げ交渉の対象となっていた10種類の医薬品について、全ての交渉参加メーカーと合意に達したと発表した。

対象となった医薬品はMedicareの医薬品のうちの高額のもので、薬価は38~79%引き下げられ、2023年の使用ベースではMedicareとして約60億ドルの節約ができたとみられる。

糖尿病治療薬のジャヌビアやジャーディアンス、血液サラサラ薬のエリキスやイグザレルト、白血病治療薬のインブルビカなどが価格交渉の対象となる。

医薬品名 2023年に使用した
Medicare対象人数
2023年価格
(30日分)
2026年価格
(30日分)
節減額 (%)
Eliquis 3,928,000 $521 $231 $290 (-56%)
Jardiance 1,883,000 $573 $197 $376 (-66%)
Xarelto 1,324,000 $517 $197 $320 (-62%)
Januvia 843,000 $527 $113 $414 (-79%)
Farxiga 994,000 $556 $178.50 $377.50 (-68%)
Entresto 664,000 $628 $295 $333 (-53%)
Enbrel 48,000 $7,106 $2,355 $4,751 (-67%)
Imbruvica 17,000 $14,934 $9,319 $5,615 (-38%)
Stelara 23,000 $13,836 $4,695 $9,141 (-66%)
Fiasp; Fiasp FlexTouch;
Fiasp PenFill;
NovoLog;
NovoLog FlexPen;
NovoLog PenFill
785,000 $495 $119 $376 (-76%)

2026年に発効する引き下げにより、政府による60億ドルの節約に加え、メディケア加入者の自己負担額を計15億ドル節約できると推計している。

バイデン政権は今後も毎年薬価引き下げ交渉の対象を増やしていく方針で、2025年は最大15種類を対象として選定する見込み。

本交渉を巡っては、複数の製薬会社から訴訟が提起されるなど業界の強い反発が示されてきたが、こうした大企業の反発を乗り越えるかたちで交渉妥結にこぎ着けたことは、政権にとって大きな政治的成果といえる。

バイデン大統領は「我々はついにビッグ・ファーマを打ち負かした」と成果を強調した。

ハリス大統領候補(副大統領)は、
カリフォルニア州司法長官時代にコスト削減への努力と製薬会社の責任を追及してきた実績を強調し、「私のキャリア全体を通して製薬会社の責任を追及し、処方薬のコストを下げるために働いてきた」と述べ、「メディケアは、その(団体交渉)力を使い、大手製薬会社と直接対決し、薬価引き下げの交渉をすることができる」と述べた。


ただし、今回の引き下げ幅ほどには国民負担の軽減にはつながらないとの指摘もある。

製薬業界がメディケアの交渉に強く反対しているにもかかわらず、いくつかの製薬メーカーは、政府の極秘価格設定を検討した結果、新価格が発効しても事業に大きな影響はないと先月述べた。

今回対象となった10種類の医薬品はいずれもメディケア・パートD(高齢者向け処方薬保険)の対象となっており、現行でも製薬会社からメディケアに対して一定のリベートが支払われ、メディケアはこれを加味し値引きをした上で加入者に医薬品を提供している。しかし、リベートの額は公表されておらず、仮に薬価引き下げが実現したとしても、リベートの額も減少する場合には、加入者が実際に支払う正味の価格はさほど引き下がらないこともあり得る。

米国研究製薬工業協会のスティーブ・ユーブル会長は「政権は(IRAの)価格設定スキームを利用して政治的な見出しを盛り上げているが、患者はそれが自分たちにとって何を意味するかを知ったらがっかりするだろう。患者の自己負担が減るという保証はない」と述べ、効果を疑問視している。(この項  JETRO ビジネス短信)

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