2015年12月アーカイブ

ブリヂストンは12月24日、Pep Boys との間で、買収契約の内容改定を完了した。

株式公開買付け価格を1株当たり現金17.00ドル、株式買収総額で約9億47百万ドルに上げた。
(10/26の当初の契約より1億12百万ドル増、12/12の改定契約より84百万ドル増)

2015/12/25 ブリヂストンとCarl Icahn による米国大手自動車用品小売チェーンの買収合戦のその後

しかし、Carl Icahn は12月28日、1株当たりの買収提案金額を従来より2ドル引き上げて18.5ドルにすると発表した。
ブリヂストンの直近の提案額の1株17ドルを上回った。
また自らの前回の提案の「上限18.1ドル」を上回っており、今後も上積みしていく用意があると表明した。

Icahn の再提案を受け、Pep Boysは同日、Icahnの提案が優位となったとの意見を表明した。
ブリヂストンに対し、 12月31日午後5時を期限に新たな提案を示すよう要請、その内容次第では「買収合意を破棄し、推奨する売却相手を変える意思がある」とした。

これに対し、ブリヂストンの米国子会社が12月29日、「1株18.5ドルでの株式買い取りという Icahn 側の最新の提案に対して、対抗案を提出しない」と発表した。

経緯
10月26日 ブリヂストン、買収契約を締結 1株当たり現金15.00ドル 総額 約8億35百万ドル
12月7日 Icahn 提案 1株15.50ドル 総額 約8億63百万ドル
12月12日 ブリヂストン、買収契約を締結 同上 同上
12月18日 Icahn 提案 1株16.50ドル
12月23日 Icahn 提案 ブリヂストン案に+0.1ドル
(上限 18.1ドル
12月24日 ブリヂストン、買収契約を締結 1株17ドル 総額 約9億47百万ドル
12月28日 Icahn 提案 1株18.5ドル  更に上積みの用意 総額 10億超
12月29日 ブリヂストン発表 「対抗案を提出しない」

ブリヂストンは12月24日の契約時に、Pep Boysが最終的に第三者の提案を優れていると判断した場合など一定の状況下で契約が終了した場合にPep Boysからブリヂストンへ支払われる違約金を35百万ドルから39.5百万ドルへと修正している。

Pep Boysが最終的にIcahnと契約する場合、この違約金を受け取ることとなる。


付記

Pep Boysは12月30日、先に締結していたブリヂストンとの合意を破棄し、Icahn Enterprisesに1株18.50ドルで身売りする最終合意に署名した。
Icahnは、Pep Boysの代りに違約金3950万ドルをブリヂストンに支払う。

Icahn は2015年2月9日にカナダの自動車製品のディストリビューターのUni-Select Inc.から買収したAuto Plus とPep Boysを統合する。
アナリストらの間では、Icahnの関心はPep Boysの小売り部門に限られ、タイヤとサービス部門については他の企業に売却する計画ではないかとの観測が広がっている。


 

2011年4月にAppleが米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に、Samsung がスマートフォン「Galaxy S」やタブレット端末「Galaxy Tab」などでAppleの知的財産権を侵害したとして提訴した裁判が今も続いている。

経緯は後述するが、上記裁判についての本年5月18日の連邦控訴裁判所の判決を受け、本年12月3日に、Samusung が Appleに548百万ドルの損害賠償金を払うことで両社が合意し、12月14日に支払が行われた。

しかし、Samsung は12月14日、米最高裁判所に上告し、同社とAppleとの間で争われている知的財産侵害訴訟の判決を見直すよう求めた。

最高裁が意匠に関する訴訟を取り扱ったのは1800年代までで、 その後は扱っていない。
(その当時の訴訟は、スプーンの取っ手、カーペット、鞍、ラグなどに関するものだった。)

Samsungは最高裁に対し、意匠に関する権利がどの範囲まで適用されるのか、またどのような賠償を請求できるのかについて指針を示 すことを求めており、最高裁が上訴を受理した場合、最高裁の最終判断がハイテク業界や消費者の購入できるすべてのガジェット類に波及的な影響を及ぼす可能性がある。

Samsungは、「この判例が効力を持った場合に影響を受けかねない大小すべての米国企業のために、米最高裁判所に上訴することが重要であると考えている」と述べている。

一方、Appleは12月23日、2012年にSamsungによる特許侵害を認めた陪審判決が出た後に販売された分に関連して、「付随的賠償および利子」名目でさらに180百万ドルの支払いをSamsungに請求 する訴訟をカリフォルニア州北部の連邦地裁に起こした。

両社の争いは2016年も続くこととなった。

ーーー

2011年4月にAppleが米国カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に、Samsung がスマートフォン「Galaxy S」やタブレット端末「Galaxy Tab」などでAppleの知的財産権を侵害したとして提訴した。

陪審団は2012年8月24日、SamsungがAppleの一部特許を侵害したとして、1,050百万ドルのAppleの損害を認定した。

陪審団は、Samsungのスマートフォンの大半は、Appleの技術特許3件とデザイン特許4件のうちの3件(合計7件のうち6件)を侵害したと認めた。
このうち、指の動きをタッチパネルが感知する技術など5件はSamsungが「故意に侵害」したと認定した。

技術特許 
  Bounce back ('381):ページの端をスクロールしたとき跳ね返る機能
  Single Scroll, Pinch to Zoom ('915):1本指でスロール、2本指でピンチ、ズーム
  Tap to Zoom ('163) :画面タップにより文書を拡大
     
デザイン特許
  iPhone Front (D'677) :Galaxy Ace以外が侵害
iPhone Back (D'087):Galaxy S, the Galaxy S 4G, Vibrantが侵害
iPhone Home Screen (D'305):13機種全てが侵害
iPad Design (D'889) :侵害無し

一方 、陪審団は、「Appleが自社の特許を侵害した」とするSamsungの主張は一件も認めなかった。

'516 特許 wireless technology
'941 wireless technology
'711 to play music while using other apps
'893 to scroll through the photo gallery, switch to the camera to take a pic, and then return to the same point
'460 to take a photo, preview it immediately, and email it off seamlessly

この裁判の裁判官は韓国系のLucy Kohで、当初は韓国企業と米国企業の裁判に韓国系の判事ということで話題となったが、訴訟指揮は高く評価された。

2012/8/28 Apple、Samsungとの特許係争で勝訴

これに対し、Lucy Koh判事は2013年3月1日、「1次評決で陪審員団が算定した1,050百万ドルの賠償金のうち43%に当たる450.5 百万ドルを削減する」と判決し、この部分について、新たな陪審員団に知的財産侵害の損害を再算出するよう命じた。

陪審員による賠償金額の算定方法に2つの法的な誤りが見つかったとしている。

①実用特許権の侵害に関する賠償金算出の際に、Samsungの利益に基づいて計算が行われた点で、このような計算方法は意匠権の侵害 の場合のみに適用される。

②賠償責任の対象となるのは、特許権が侵害されていると考えられる旨の通知をAppleがSamsungに対して行った後に発生した売上に限られる。
  2010年8月にサムスンと面談した際に示した特許権は1件のみ。
  その他の特許権は2011年4月に、また一部端末は同年6月以降に追加された。

2013年4月に同判事は、さきに削減したうち、Galaxy SII AT&T に関する賠償金 40百万ドルを承認した。

2013年11月21日、削減した分についての算出を担当する新しい陪審員は、Samsungに290 百万ドルの支払いを命じた。

この裁判では、Appleは380百万ドルを求め、Samsungは52百万ドルを主張していた 。

この結果、当初の1,050百万ドルの賠償金は、929百万ドルとなった。 (1,050ー451+40+290)

Samsungは控訴し、特許訴訟を専門に扱う米連邦巡回区控訴裁判所 (CAFC) は2015年5月18日、SamsungがAppleの複数の特許を侵害したと認定した が、賠償の一部は無効と判断した。

一般に認識されているiPhoneの特徴的な外観やデザインをSamsung がまねたとする「Trade dress」については、この点に関するAppleの主張は米商標法の保護対象にならないiPhoneの機能的要素に基づくものだと判断損害賠償額を見直すように、下級審に差し戻した。

日本でも、ある商品に必ずある機能的な形状、例えば、髭剃りは基本的にT字型、は立体商標として登録されないし、無効理由になる(商標法4条1項18号)。

Trade dressに違反する項目としては、四隅が均等に丸みを帯びた長方形の形状、製品の前面を覆うフラットでクリアな表面、そのクリアな表面の下のディスプレイ画面などが挙げられている。

判決では、「四隅が均等に丸みを帯びた」形状はポケットに入りやすく耐久性がある、「長方形」は表示を最大化する、というSamsungの主張を受け入れ、Appleはその主張を支える十分な証拠を示さなかったと述べた。

Trade dress 分は382百万ドルで、これを除くと548百万ドルとなる。

Samsungはデザイン特許等の侵害に対する賠償額の算定がおかしいとして、異議を申し立てたが、控訴裁は8月13日、異議申し立てを却下する決定を下した。

これに対し、Samsungは8月19日、控訴裁の判断の見直しを求め、最高裁に上告する方針を発表した。(上記の通り12月14日に上告)

Samsungは最高裁に上告する一方で、 Appleに548百万ドルの損害賠償金を払うこととした。

Samsung は、Apple が侵害だと主張する特許に無効などの措置が取られた場合には、支払った賠償金の一部または全額の返還を受ける権利を留保すると主張しているが、Apple 側はこのような権利を認めていない。

Dowは12月23日、クウェートのPICとの50/50JVのEQUATE Petrochemical の持分をMEGlobalに売却し、税引前で15億ドルを受け取ったと発表した。
PICも同様に処理し、EQUATE Petrochemical をMEGlobal の100%子会社とする。

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Dow Chemical は2014年11月12日、これまで進めてきた非戦略事業の売却目標を70億ドル~85億ドルに増やすと発表したが、この一環として、KuwaitのPetrochemical Industries Company (PIC) とのJVを再編し、出資比率を下げると発表した。2015年央にも完了させる。

対象となるのは、エチレングリコールのワールドリーダーである
MEGlobal と、Kuwaitの石化コンビナートのGreater EQUATEである。
出資分のどれだけをどこに売るのかは明らかにしていない。

2014/11/17 Dow、非戦略事業の売却を拡大、KuwaitのPICとのJVの出資を減らす 

Dow と PICとの関係は下記の通り。

歴史
・1995年 Union Carbide PIC Equate を設立
2001 ダウがUnion Carbide を買収、 Equateのパートナーになる
・その後、Equate-2 建設開始
2004年 EquipolymersMEGlobal 設立(Dowの事業を拠出)

2008年12月1日  DowとPIC、K-Dow Petrochemicals 設立契約と付随契約に調印
・2008年12月28日 一転 破談
・2012年5月   Dow、本件調停で勝利、21.6億ドルの損害賠償

既存JV概要

EQUATE Petrochemical EQUATE 2 MEGlobal Equipolymers
設立 1995 2004 2004
株主 Union CarbideDow 45%→42.5%
PIC 45%
42.5%
Boubyan Petrochemical
10%→ 9%  
Al-Qurain Petrochemical  0 6%
Dow 50%
PIC
  50%
当初
Dow
 50%
P
IC  50%

その後、
MEGlobal 100%
工場 Shuaiba, Kuwait Fort Saskatchewan and
Red Deer, Alberta, Canada
Schkopau, Germany
Ottana, Italy

その後
②は売却
製品と能力 (千トン) 
  
エチレン 650800
LL/HDPE 450600
EG     300400

PP     100120
PIC資産、Equateが製造受託)

エチレン 850
PE    
300
EG    
600  
EO/EG

Fort Saskatchewan 340
Prentiss I    310
Prentiss II   350
合計
    1,000


他社製品の販売も実施

PET 335

PTA 190
 PET 160

その後 ②は売却

 * Equipolymers のイタリアの工場は2010年7月、同地 のOttana Energia とタイのIndoramaのJVに売却。


Dow は2015年10月、PICとのJV再編の具体的計画を発表した。

 第一段階

2015年末に、EQUATEがMEGlobal (DowとPICの50/50JV) を買収する。
(DowはEQUATEに42.5%出資している。) 

 第二段階

2016年央にDowはEQUATEへの出資を減らす。

 その他

MEGlobal はU.S. Gulf Coast にMEG プラントを建設する。

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今回は第一段階を実施したもので、各社の関連は下記の通りとなる。

 

2015/12/2 武田薬品とイスラエルのTeva Pharmaceutical、日本でジェネリック医薬品のJV設立


武田薬品は12月28日、
合弁会社の詳細について発表した。

Tevaの100%子会社のテバ製薬とその100%子会社の大正薬品工業及び武田薬品の間における三角吸収分割を行う。

 武田薬品は長期収載品事業を分割し、ジェネリック医薬品事業を営む大正薬品に承継する。
 大正薬品は武田テバ薬品と改称する。

 武田薬品は対価としてテバ製薬の株式49%を取得する。 

 ジェネリック医薬品事業を営むテバ製薬は武田テバファーマと改称する。

参考 テバ製薬の歴史は下記の通り。

移管を予定している武田薬品の長期収載品の2014年度の実績は約1,250億円。

このうち、高血圧症治療剤「ブロプレス」をはじめとする大型の長期収載品はジェネリック医薬品の市場浸透による影響を受けて2015年度は大きく減収となっている。
2016年度も一定の減収が想定される。

武田薬品としては、武田テバ薬品への長期収載品の供給の役務収益や、武田テバファーマと武田テバ薬品のジェネリック医薬品も含めた製品を武田薬品がその流通網を通じて販売する分があるため、2016年度の売り上げ減は差し引きで約500億円を見込んでいる。




田辺三菱製薬は、12月21日、抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード®点滴静注用100」(一般名:Infliximab)について、既存治療では効果不十分な川崎病の急性期に対する効能・効果追加の承認を取得したと発表した。

生物学的製剤として、世界で初めての「川崎病」の効能・効果の承認取得となる。

川崎病の急性期では、冠動脈病変(冠動脈の拡大や瘤の形成)の発生を抑えるために、発熱などの急性期症状を早期に鎮静化することが治療目標とされているが、実際には既存治療では効果不十分で追加治療が必要な患者が存在し、そのうち、およそ4人に1人の患者に冠動脈病変をきたしてしまうとの報告もあることから、新たな治療薬の開発が望まれていた。

この高い医療ニーズを受け、同社は既存治療に効果不十分な急性期の川崎病患者を対象とした国内臨床試験を実施し、その結果、レミケード®の有効性ならびに安全性が認められた。

ーーー

川崎病は1967年に川崎富作博士が、小児の「急性熱性皮膚粘膜リンパ腺症候群」として発表し、現在は「川崎病」という病名になった。

川崎病は主に4歳以下の乳幼児に発生し、次の6症状のうち、5つを満たせば川崎病と診断する。

1. 5日以上続く発熱(38℃以上)
2. 発疹
3. 両目の充血
4. 唇が赤くなり、舌の表面に苺のようなブツブツができる(いちご舌)
5. 初期に手のひらや足裏がはれあがったり、赤くなったりする。熱が下がってから指先や手全体の皮がむけることがある。
6. 首のリンパ節がはれる。


最も問題になるのは、冠動脈に炎症が起きて、冠動脈瘤ができてしまうこと。

原因が不明のため根本的な治療法はないが、症状を軽くしたり、冠動脈瘤ができないようにするために、いくつかの治療が行われている。

(1) 急性期
 a.アスピリンの内服
 b.γ‐グロブリン療法:冠動脈瘤をつくりにくくさせる
   γ‐グロブリンが効かない重症の場合は、ステロイド薬の投与や血漿交換療法を行うこともある。

 ◎実際には既存治療では効果不十分で追加治療が必要な患者が存在、
  そのうち、およそ4人に1人の患者に冠動脈病変をきたしてしまうとの報告もある。

  今回の承認取得により、既存治療では効果不十分な川崎病患者の治療選択肢が拡大した。

(2) 急性期以後
 冠動脈瘤ができた場合: こぶの程度に合わせてアスピリンの内服を続ける。
   巨大なこぶの場合、アスピリンに、別の抗凝固薬の内服を加える。

 血管が詰まってしまう可能性が高い人:
  血管バイパス手術や、カテーテルを血管に入れ、風船をふくらませて押し広げたり、
  血管の壁が厚くなって内腔が狭くなっているところを削る治療も行われている。

ーーー

抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤「レミケード®点滴静注用100」(REMICADE、一般名:Infliximab)は、Johnson & Johnson の子会社 Janssen Biotech(旧 Centocor Biotech) が創製した関節リウマチ等の治療薬で、1993年に田辺製薬が、日本及びインドネシア、台湾における本剤の開発・販売に関する契約を締結し、2002年にクローン病治療薬として日本での販売を開始した。
(田辺製薬は2007年10月1日に三菱ウェルファーマと合併し、田辺三菱製薬となった。)

田辺三菱製薬は、Unmet medical needs に応えるため、稀少疾病を含めた各種難病に対するレミケードの開発と適応性の拡大に取り組んでおり、今回の川崎病を含め13の適応症を有している。

適応症 承認時期
クローン病 2002年1月
関節リウマチ 2003年7月
べーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎 2007年1月
尋常性乾癬 2010年1月
関節症性乾癬
膿疱性乾癬
乾癬性紅皮症
強直性脊椎炎 2010年4月
潰瘍性大腸炎 2010年6月
腸管型ベーチェット病 2015年8月
神経性ベーチェット病
血管性ベーチェット病
川崎病(急性期) 2015年12月


なお、本剤は2012年に「難治性川崎病」に対して希少疾病用医薬品に指定されている。

希少疾病用医薬品は、次の指定基準に合致するものとして指定される。
希少疾病用医薬品の指定が、直ちに製造販売承認に結びつくものではない。

  1. 当該医薬品の用途に係る対象者の数が、本邦において5万人未満であること。

  2. 医療上の必要性
     
    • 代替する適切な医薬品・医療機器又は治療法がないこと。
    • 既存の医薬品・医療機器と比較して著しく高い有効性又は安全性が期待されること。
  3. 対象疾病に対して当該医薬品を使用する理論的根拠があるとともに、その開発に係る計画が妥当であると認められること。

中国財政部は12月25日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)が発足したと発表した。

2016年1月16~18日に、北京で参加各国の代表を集めた開業式典を開く。
初代総裁には、元中国財政次官の金立群氏を選出する見通し。

初年度の融資規模を20億ドルと見込んでおり、2016年4月以降の融資開始を目指す。

ーーー

AIIBの加盟国は当初、東南アジア諸国などが中心だったが、3月に英国が参加表明したことをきっかけに、57カ国に拡大した。

2015年6月29日、北京の人民大会堂で設立協定の調印式を開いた。
この時点では、創設メンバーとして参加を表明していた57か国のうち、フィリピンなど7か国が設立協定への署名を見送った。

2015/6/30 アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立協定調印式

その後、マレーシアが8月21日、タイが9月29日、ポーランドが10月12日、デンマークが10月28日 、南アが12月3日、クウェートが12月4日に署名し、残るのは南シナ海の領有権を巡って中国と対立、中国が埋め立てを強行したことで関係がさらに悪化したフィリピンのみとなった。

フィリピンは年内の正式署名を見送る可能性が高まった。本年末までに署名しない場合、発言権などで優遇される「創設メンバー」の地位を失う。

付記

フィリピン政府は12月30日に声明を発表し、「銀行の運営面で透明性や独立性などが確保されている」として、創設メンバーとして参加するための期限である12月31日に北京で協定に署名することを明らかにした。

南シナ海の領有権を巡って中国と激しく対立しているが、経済成長や人口増加を背景に、交通網や発電所などの社会基盤整備が急務となっており、最終的には経済的な実利を取る判断を下したとみられる。

財務相は声明で「インフラ整備目標の達成に向けて、ASEANなど加盟国との協力関係を拡大する機会となる」と強調した。

ーーー

AIIBは、協定に署名した国々のうち10カ国以上が協定を批准し、批准国の出資金の合計が全体の50%以上に達した段階で設立される仕組み。

中国は11月4日に批准した。英国のオズボーン財務相は12月3日、 英国がG7の中で最初に批准したことを明らかにした。
その後、ドイツ、韓国、オーストラリアなどが批准し、12月25日時点で17カ国・出資金の合計 50.08%となり、発足した。

AIIBの参加国と出資比率、議決権比率は下記の通り。 (青色は批准国、フィリッピンは正式署名をしていない
→付記 12/31署名

出資(億ドル)

出資比率
(%)
議決権
(%)
域内 域外
1 中国 297.804 30.34 26.06
2 インド 83.673 8.52 7.50
3 ロシア 65.362 6.66 5.93
4 ドイツ 44.842 4.57 4.15
5 韓国 37.388 3.81 3.50
6 オーストラリア 36.912 3.76 3.46
7 フランス 33.756 3.44 3.19
8 インドネシア 33.607 3.42 3.17
9 ブラジル 31.810 3.24 3.02
10 英国 30.547 3.11 2.91
11 トルコ 26.099 2.66 2.52
12 イタリー 25.718 2.62 2.49
13 サウジアラビア 25.446 2.59 2.47
14 スペイン 17.615 1.79 1.79
15 イラン 15.808 1.61 1.63
16 タイ 14.275 1.45 1.50
17 UAE 11.857 1.21 1.29
18 パキスタン 10.341 1.05 1.16
19 オランダ 10.313 1.05 1.16
20 フィリッピン 9.791 1.00 1.11
21 ポーランド 8.318 0.85 0.98
22 イスラエル 7.499 0.76 0.91
23 カザフスタン 7.293 0.74 0.89
24 スイス 7.064 0.72 0.87
25 ベトナム 6.633 0.68 0.84
26 バングラデシュ 6.605 0.67 0.83
27 エジプト 6.505 0.66 0.83
28 スウェーデン 6.300 0.64 0.81
29 カタール 6.044 0.62 0.79
30 南アフリカ 5.905 0.60 0.77
31 ノルウェー 5.506 0.56 0.74
32 クウェート 5.360 0.55 0.73
33 オーストリア 5.008 0.51 0.70
34 ニュージーランド 4.615 0.47 0.66
35 デンマーク 3.695 0.38 0.58
36 フィンランド 3.103 0.32 0.53
37 スリランカ 2.690 0.27 0.50
38 ミャンマー 2.645 0.27 0.49
39 オマーン 2.592 0.26 0.49
40 アゼルバイジャン 2.541 0.26 0.48
41 シンガポール 2.500 0.25 0.48
42 ウズベキスタン 2.198 0.22 0.45
43 ヨルダン 1.192 0.12 0.37
44 マレーシア 1.095 0.11 0.36
45 ネパール 0.809 0.08 0.33
46 ルクセンブルグ 0.697 0.07 0.32
47 ポルトガル 0.650 0.07 0.32
48 カンボジャ 0.623 0.06 0.32
49 ジョージア 0.539 0.05 0.31
50 ブルネイ 0.524 0.05 0.31
51 ラオス 0.430 0.04 0.30
52 モンゴリア 0.411 0.04 0.30
53 タジキスタン 0.309 0.03 0.29
54 キルギス 0.268 0.03 0.29
55 アイスランド 0.176 0.02 0.28
56 マルタ 0.136 0.01 0.27
57 モルディバ 0.072 0.01 0.27
小計 733.850 247.664 100.00 100.00

981.514

未割当 16.150 2.336

18.486

合計 750.000 250.000

1,000.000


Samsung BioLogicsは12月21日、韓国Incheon Free Economic ZoneのSongdo(松島)で同社3番目となるバイオ医薬品受託生産プラントの起工式を挙行した。
起工式には、サムスン電子の李在鎔副会長ら500人以上が参加した。

第3プラントは総投資額8500億ウォンをかけ、生産能力(18万リットル)と生産効率の両面で世界をリードする設備になる。
同プラントは2017年までに完成する予定で、検証後、2018年の第4四半期に操業を開始する。

同プラントが操業を開始すれば、Samsung BioLogicsの総生産能力は36万リットルとなりスイスのLonza(26万リットル)、ドイツのBoehringer-Ingelheim(24万リットル)を抜き、世界最大のバイオロジクスの受託生産機関(CMO)になる 。

第1プラント 3万リットル 最近米FDAから正式に生産認可
第2プラント 15万リットル 2016年3月に操業開始の予定
第3プラント 18万リットル 2018年の第4四半期に操業を開始
合計 36万リットル


第1プラントでは、FDAから品質安全性など3つの核心基準ですべて「無欠点」通知を受けた。

同社のCEOは、「われわれは、飛躍的に成長している市場であるバイオ医薬品の安定供給を行うため、そして世界のバイオ医薬品会社からの生産需要に応えるため、第3プラントに投資している。世界最大の生産能力と年中無休の稼働能力によって、この第3プラントは世界クラスの品質と生産性を誇ることになるだろう」と語った。

第3プラントが全面稼動すれば、年間売上高2兆ウォン、営業利益1兆ウォンを達成できるとみている。
同社は長期的には、さらに第4、第5プラントに投資することによりCMO事業を継続的に拡大していく計画である。

Samsungによると、第3プラント着工を決めたのは、「半導体成功神話」をバイオ医薬品受託生産分野で再現できるという自信からという。

「30年前にサムスンが半導体投資決定をした当時、主要電子企業が自主的に半導体を生産していたため成功するかどうか心配されたが、結局、世界市場はサムスン電子など専門企業中心に変わった。」

この4年間、バイオシミラー(バイオ後続品)開発などを通じて、「ライバル企業が追うことができない果敢な攻撃投資で後発企業をかわした半導体の成功方程式がバイオ医薬品でも可能だ」という結論を出した。

半導体プラントの設計と建設で得たノウハウをバイオ工場に移植した。

今回の第3 プラント(18万リットル)の建設費は8500億ウォンで工事期間は35ヶ月。
これに対しAmgen
は9万リットル規模で10億ドル(約1兆1000億ウォン)、41ヶ月。
1リットル当たりの建設費は40%弱で、工事期間も短い。


第3 プラントはバイオ医薬品工場では初めて365日稼働が可能なシステムを整える。

ーーー

三星グループは2010年5月11日に新事業戦略を発表した。

2010年3月に経営の第一線に復帰した李健煕会長主宰で新事業関連社長会議を開き、確定したもので、未来の新事業は、太陽電池、自動車用電池、発光ダイオード(LED)、バイオ製薬、医療機器の5つ、2020年まで23兆3000億ウォン(約1兆9000億円)を投資するというもの。(うち、バイオ医薬には2兆1000億ウォン)

  2010/5/12 三星グループの新事業戦略

三星グループは2011年2月25日、遺伝子組み換え技術などを使うバイオ医薬品事業に新規参入すると発表した。

第1弾として受託生産事業に乗り出すため、米Quintiles Transnational Corp. のJVのSamsung BioLogicsを設立した。
サムスン電子とグループの持株会社
Samsung Everlandが40%ずつ出資し、Samsung C&TとQuintilesが各10%出資した。

2011/3/7  サムスン・グループ、バイオ医薬品事業に進出

Samsung Everland は2015年9月1日に三星物産と合併し、三星物産となった。

現在のSamsung BioLogics の出資比率は、サムスン電子が46.8%、三星物産が51.0%、Quintiles Transnationalが2.2%となっている。

2011年5月に松島に生産施設と研究センターの建設に着工した。

2013年に、Bristol-Myers Squibb とRoche との間でバイオ医薬品の製造受託契約を締結した。

ーーー

Samsung BioLogicsは2011年12月、バイオシミラー(バイオ医薬品後発薬)の生産のため、米国のBiogen と合併会社 Samsung Bioepis 設立の契約を締結した。

出資比率はSamsung BioLogicsが85%、Biogen が15%であったが、現在はそれぞれ 91.28%と8.8%となっている。2016年から大量生産する予定。

同社はMerck とも開発で提携しており、両社は2015年9月8日、TNFα阻害薬「ブレンザイス」(一般名=エタネルセプト)が韓国で承認を取得したと発表した。

韓国のSK証券はBioepisの売上高が2022年に1兆2000億ウォン、営業利益は5400億ウォンになると見込んでいる。

ブリヂストンは12月12日、さきに買収契約を締結していた米国の大手自動車用品小売チェーン The Pep Boys - Manny, Moe & Jack との間で、買収契約の内容改定を行ったと発表した。

Carl Icahn が、ブリヂストンの買値よりも高い価格での買収提案を行ったのに対し、ブリヂストンがこれに追随したもの。

経緯
10月26日 ブリヂストン、買収契約を締結 1株当たり現金15.00ドル 総額約8億35百万ドル
12月7日 Icahn Enterprises 提案 1株15.50ドル 総額約8億63百万ドル
12月12日 ブリヂストン、買収契約を締結 同上 同上
同額だが、ブリヂストン側は既に独占禁止法など規制面での承認を受けており、金額以外の条件が評価された。


2015/12/17 ブリヂストン、Carl Icahn と米国大手自動車用品小売チェーンの買収合戦 

本ブログは最後に、「ブリヂストン側がIcahn側の提案価格と同額にしたことから、後、Ichan側がさらに価格を上げるかどうか、注目される 」とした。

やはり、Icahn は動いた。

12月18日に、Carl Icahn は買収提案価格を1ドル引き上げ、1株当たり16.50ドルとした。
Pep Boys はブリリヂストンの15.50ドルよりも「優れた提案だ」と評価し、ブリヂストンに12月23日までに対案を出すよう求めた。

Icahnは更に、ブリヂストンの対案が出る前に、新しい提案を行った。
ブリヂストンの提案価格に0.1ドルを上乗せするというもので、上限は18.1ドル (総額では10億8百万ドル)となっている。

しかし、ブリヂストンは12月24日、Pep Boys との間で、買収契約の内容改定を完了した。

株式公開買付け価格を1株当たり現金17.00ドル、株式買収総額で約9億47百万ドルに上げた。
(10/26の当初の契約より1億12百万ドル増、12/12の改定契約より84百万ドル増)

Pep Boysの取締役会は、Icahnから受領した最大で10億8百万ドルの提案はもはや優位な提案とは考えないと発表した。

株式公開買付けは、今後更なる延長がない限り、2016年1月13日に完了する予定。

もし Pep Boysが解約した場合の違約金は39.5百万ドルに変更された。(当初は35百万ドル)

米紙によると、Icahan はインタビューで、「全ての株主の価値が大いに高まったことはうれしい」と述べた上で、Pep Boysの株価はまだ過小評価されており同社取締役会は引き上げの好機を逃したと指摘し、「われわれが17ドルより高い金額を提示する意欲があったことを知りながらの取締役会の行動は理解できない」と付け加えた。

Pep Boysの株価は12月24日のニューヨーク市場で17.51ドルで終了、取引終了後にブリヂストンの提案が行われた。

付記

Carl Icahn は12月28日、1株当たりの買収提案金額を従来より2ドル引き上げて18.5ドルにすると発表した。
ブリヂストンの直近の提案額の1株17ドルを上回った。
また自らの前回の提案の「上限18.1ドル」を上回っており、今後も上積みしていく用意があると表明した。

Icahn の再提案を受け、Pep Boysは同日、Icahnの提案が優位となったとの意見を表明した。
12月31日午後5時を期限に新たな提案を受け付ける。

厚生労働省は12月18日、顔料の原料を製造する国内の化学メーカーの工場従業員と退職者の計5人が膀胱癌を発症したと発表した。

問題の工場は三星(みつぼし)化学工業の福井工場で、12月3日、工場の従業員約40人のうち47〜56歳の男性4人と、約12年前に退職した43歳の男性1人が 膀胱癌を発症したと労働局に報告した。5人の勤務歴は7年半〜24年で、2014年2月〜2015年11月の診察で判明した。


工場では膀胱癌を引き起こすとの指摘があるオルト−トルイジンのほか、発がん性が指摘されるオルト−アニシジン、2、4−キシリジン 、パラ−トルイジン、アニリンの計5種類の芳香族アミンを使用、ドラム缶に入った芳香族アミンの液体をポンプを使って反応器に移し、他の物質と合成して 染料や顔料の中間体を製造していた。

厚労省によると、「芳香族アミンには、問題が起きて製造禁止になっている物質もあるが、オルト―トルイジンなど5物質については、国内でがんの報告は初めて。」

同社ではこの物質の危険性を認識し「防じん・防毒マスクはして換気もしていた」と説明しているが、厚労省は「どこかで漏れがあったと判断せざるを得ない」としている。5人には労災申請を勧めている。

福井新聞によると、一人の男性は、18年余り、福井工場に勤務。オルト―トルイジンからつくった粉末状の物質を袋詰めする作業や、機器の修理の際に機器にこびりついた粉末の結晶をへらで落とす作業に従事し 、「作業が終わると顔が(粉で)真っ白になった」と振り返る。

工場では、芳香族アミンの動物への発がん性を指摘する文書が約4年前に従業員に配布され、この男性は「みんなびっくりした」と話し、「そのときから粉じんにさらされていることを上司に言い続けてきたが、会社は『今まで通りやれ』と言うだけだった」と憤った。

作業実態や発生原因について所轄の労働局・労働基準監督署及び労働安全衛生総合研究所で調査を行っている。


厚労省は、予防的観点から、12月18日、日本化学工業協会及び化成品工業協会に対して、芳香族アミンによる健康障害の防止対策の適切な実施を要請した。

また、緊急対応として、当該事業場で取り扱われている芳香族アミンのうち、膀胱癌との関連があるとされているオルト-トルイジンを取り扱う事業場として厚労省が把握している 約40事業所を対象に、防毒マスクの着用など労働者のばく露防止と健康管理の徹底が図られるよう、労働局・労働基準監督署による調査・指導を実施する。

ーーー

三星化学工業は1953年設立で、有機顔料中間体をコア事業とし、医農薬中間体や写真薬、機能性色素など様々な分野に事業を展開して いる。

福井のほか、相馬、埼玉に工場を持つ。

福井工場 アセト酢酸アニライド系化合物の製造 (有機顔料中間体)
相馬工場 アミノベンゼン系化合物、フタルイミド系化合物、アセト酢酸アニライド系化合物の製造
埼玉工場 顔料、写真薬、医薬、農業等の中間体の開発、製造

福井工場で取り扱う芳香族アミンは下記の通り。

用途

有害性情報

IARC(国際がん研究機関) 日本産業衛生学会 ACGIH(米国産業衛生専門家会議)
オルト-
トルイジン
染料・顔料の中間体原料、エポキシ樹脂硬化剤原料 グループ1
(ヒトに対して発がん性がある)
発がん分類 2A
(ヒトに対しておそらく発がん性がある)
許容濃度 1ppm
発がん性区分 A3
(動物に対して発がん性がある)
TLV-TWA 2ppm
オルト-
アニシジン
染料中間体 グループ2B
(ヒトに対する発がん性が疑われる)
発がん分類 2B
(ヒトに対する発がん性が疑われる)
許容濃度 0.1ppm
発がん性区分 A3
(動物に対して発がん性がある) 
TLV-TWA 0.5mg/m3
2, 4-
キシリジン
染料・顔料中間体 グループ3
(分類できない)
発がん性区分 A3
(動物に対して発がん性がある)
※Xylidine(異性体混合物)について
p-トルイジン 顔料中間体・農薬合成原料 評価なし 発がん性区分 A3
(動物に対して発がん性がある)
TLV-TWA 2ppm
アニリン ウレタン中間体合成原料、染料・ゴム製造用薬品・医薬・農薬合成原料 グループ3
(分類できない)
発がん性区分 A3
(動物に対して発がん性がある) 
TLV-TWA 0.5ppm skin


安衛法上の位置付けは、いずれもSafety Data Sheet 交付対象物質で、当該物質を取り扱う事業者は、労働安全衛生法第28 条の2に基づき、化学物質による危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)等の実施に努めること、労働安全衛生規則に基づく一般的健康障害防止措置を講ずることが求められる。


Dow Chemical と DuPontは12月11日、対等で経営統合すると発表した。

Dow も DuPont も、物言う株主から事業分割などドラスティックな手段による企業価値の向上の要求を受けていた。

両社とも、不採算事業のみならず、儲かってはいるが将来の成長が見込めない等の事業についても売却したり、スピンオフしてきたが、経営改革を迫る「物言う株主」から対応が遅いと批判されていた。

2015/12/14 Dow と DuPont、経営統合を発表

欧米では上場企業の経営者は、株主からの更なる成長、更なる収益性の向上による株主価値の増大を常に求められる。
それに対応できない場合、株価が下落するだけでなく、物言う株主からは退任を求められる。

DuPontのEllen J. Kullman 会長兼CEOは10月16日に退陣したが、物言う株主からの事業改革の要求を株主総会で辛うじて退けたが、これまでのやり方で収益が悪化することが分かり、退陣した。

特に、景気変動に影響が受けやすい事業や、石油化学などのように原油価格などの変動で損益が大きく左右されるような事業の継続は、それ相当の理由があり、実際に対応できる案がある場合を除き、正当化されない。

原油価格が上がったとか、不景気で業績が悪化したというのは株主にとっては関係ないこと。
そんな事業はさっさと止めろ。
事業を続ける場合、うまく対応して株主価値を上げるのが経営者の使命であり、それが出来ないなら辞めるべきだという考え方。

このため、欧米の化学会社は抜本的な対策をとってきている。

最も早いのはICIであった。

1997年に同社は事業を化学品のなかでも、付加価値が高く、投下資本が少なく、景気変動の影響が少なく、研究開発により重点を置いた事業に急速に転換することを決めた。1997年7月、ICIは英蘭系Unileverの特殊化学品4社を買収し、同時に既存事業を順次分離・売却していった。

2006/3/7 ICIの抜本的構造改革

2007年8月にAkzoはICIを買収することで合意した。
1926年に設立され、高圧法ポリエチレンを開発した名門 ICI は消え去ることとなった。多岐に亘った事業がバラバラにされ、元のICIは跡形もなくなった。

2007/8/13 Akzo が ICI を買収

Bayerは、2004年7月にBayer Chemicalsの大半とBayer Polymersの一部を新会社 Lanxess として分離し、2005年に上場したが、更に2015年9月1日にMaterial Science 部門をCovestro として分離し、今後は完全にLife Science 事業(HealthCare と CropScience )に注力することとした。

2014/9/22 Bayer、ライフサイエンス事業に注力、MaterialScienceを分離、上場

2015/9/2 Bayer のMaterial Science 部門、Covestro として分離独立

BASFは2009年にスイスの特殊化学薬品メーカー Ciba を買収、今後はスペシャリティケミカル分野を拡大し、主導的地位を高めるとした。
一方で、
Dowとともに世界のリーダーであったポリスチレン事業を
2011年10月に IneosとのJVのStyrolutionに統合、2014年11月にその持分をIneosに売却し、同事業から撤退した。

2009/4/6 BASFCiba買収承認

第二次大戦前に I.G. Farben を構成していた3社のうち、Hoechst は医薬会社のSanofi Aventis となっている。
(買収したCelanese を再度分離し、Rhodia を分離したRhone Poulenc と合併して Aventis となり、フランスのSanofi Synthelaboと合併した。)

石油化学については、Dowだけが他社と異なる政策をとる。

同社は"asset light" strategy (JV化)を採用し、石油化学を継続しながら、そのリスクを軽減する方策をとった。

Kuwait Petroleum Corporation と50/50JVのMEGlobalを設立してダウの設備を出したのが最初だが、2007年にクウェート国営石化会社 PIC との間でグローバルな石化JVを設立すると発表した。

他方、Saudi Aramco とのJVででサウジのJubail Industrial Cityにワールドクラスの統合石化コンプレックスを建設することとした。

その後、米国でのシェールガスの優位性が明確になり、米国については自ら石油化学事業を再興する方策をとった。
安価なコストのエタン、プロパンを原料に、原油価格に左右されない状況が確保できたと考えたもの。

PICとのグローバル石化JVは土壇場でPICが方針を撤回して破断となったが、これが結果としては有利に働いた。
2013年5月に、PICから損害賠償として 22億ドルを受け取ったのに加え、JVに出すはずであった米国事業が原料安で収益性が増大した。

2014/7/2 Dow Chemicl、新エチレン設備の建設着工

Dow を除く多くの企業が石油化学から離脱するなか、IneosBasell (その後 Lyondellと合併し、LyondellBasell)のような個人企業がこれらを取得し、世界中で拡大していった。

株主の意見に左右されないため、購入した企業を担保に新しい企業を購入する形で拡大した。
当然、
グローバルな経済危機の影響を受けると、販売が激減し、借入金の返済が行き詰まり、苦境に陥るが、なんとか、克服してきている。

2009/7/20 Ineos、75億ユーロの借入契約条件変更に成功 

ーーー

日本についてはどうであろうか。

本ブログでは2007年末の「回顧と展望」で、2007年は石油化学業界にとって激動の年であったとし、原料価格の高騰による採算悪化を背景に欧米各社は「選択と集中」を一層進めたが、そのなかで日本のみが、この激動の蚊帳の外であるとした。

「日本の石化事業もガラパゴスのように『危機遺産』とならなけばよいが」としている。
 

2007/12/26 2007年回顧と展望 「ガラパゴス鎖国」論


2015年に住友化学が千葉のエチレンやSM/POなどを停止、京葉エチレン(3月に三井化学が離脱)にエチレンを依存することとした。

2013/2/4 住友化学、エチレン国内生産から撤退

三菱化学と旭化成は2016年4月に水島地区でのエチレン共同生産の三菱化学旭化成エチレンを設立することを決めた。
旭化成の年産 50万トンのエチレン設備は廃棄し、三菱化学の50万トン設備をを57万トンに増強する。

2015/5/29 水島地区エチレン設備運営会社 

なお、三菱化学は鹿島1の390千トンを2014年の定期修理をもって停止している。

2012/6/27 三菱化学、鹿島事業所における基礎石油化学事業の構造改革 

しかし、エチレン能力は700万トンを若干切る程度であり、2014年の生産実績を上回り、日本の内需をはるかに上回る。


欧米では、
石油化学は景気変動に影響が受けやすいこと、原油価格などの変動に左右されることが問題視されているが、日本ではこれに加え、次のような問題点がある。

1) コストの高いナフサを原料とし、(原油価格が下がっても)国際競争力はない。

   昭和電工 新中期経営計画


本図は、原油が100ドルから50ドルに下がり、エチレンコストが下がるような印象を与えるが、その保証はなく、仮にこれで意思決定を行うとすれば誤りである。

2) 内需は減少しており、人口減も考えると、さらに減少すると見込まれる。
  他方、中国の増産に加え、サウジなどで汎用品以外の製品も生産を始めるため、輸出も減少する。

3) そのなかで、過剰能力を抱え、過当競争が行われている。

4) 輸入品の圧力で、アルミやメタノールがずっと昔に全滅したが、PEやPPのような合成樹脂はいまだに存続している。
 これは、競争力があるためではなく、余りにも不合理な慣習のため、輸入品では採算が取れず、海外から入ってこないだけである。

・需要家の必要とする機能を満たすため、高機能化を推進しており、自動車初め、需要業界に大きな貢献をしている。

 しかし、欧米と異なり、高品質化のための追加コスト(開発費等)を請求できていない。
 グレード数が大幅に増え、頻繁なグレード切替(切替時にオフスペックが発生)で製造面でもコスト高となっている。
 連続生産による大量生産のメリットが得られていない。

・米国では前月に注文を受け、連続生産し、90トンローリー貨車で輸送するのが一般的で、包装品や小口輸送はコンパウンダーが行う。
日本ではJust-in-time 方式が普通で、前日に注文を受け、ほとんどが包装品をトラックで輸送している。


このような状況下で、株主に対し、石油化学事業への注力をどのように説明できるのか。

三菱ケミカルは12月9日の説明会で国内の石油化学の方針を次のように述べている。

  石化原料:

• 2016年の水島エチレンセンター統合によりクラッカー構造改革を実施
• 国内需要規模に応じた供給体制を構築し、長期的な安定収益事業体質へ改善
• ユーティリティーの構造改革推進によりコストダウン実現

 要は縮小生産であり、更なる需要減もありうるし、コストダウンにも限界がある。

 ポリオレフィン:

• 生産の合理化を進めコスト削減
• 製品の高機能化を推進し、高付加価値製品の比率UP

各社とも同様であり、欧米なら、この説明で納得する株主はいないであろう。

日本の化学企業のうち、住友化学だけは石油化学の日本での継続について絵を描いている。

住友化学は千葉のエチレンを停止したが、今後、バルク製品はサウジで展開し、シンガポールを高付加価値製品の供給拠点とし、千葉工場はマザー工場として、生産技術・製品・ノウハウの発信拠点としても活用していくという方針で、不採算の誘導品は大胆に停止した。

高機能化で競っている日本はマザー工場としては最適である。

三菱ケミカルの小林社長(当時)は社長就任後の2008年7月の欧米での会社説明会で、「石油化学をなぜ止めないのか」と聞かれたという。
しかし、その後も株主を納得させる回答を行っていない。

実際に各社の株価は低迷している。

 三菱ケミカル発足時と同じ水準である。三菱化学2株を1株に変換しているため、実質ベースでは実際の株価の半値である。

 三菱(医薬あり)、住化(医薬、農薬あり)と異なり、石油化学品の比重が高い。株価は低迷。

 両社よりも上がっているが、下の日触と比べると、上昇率は低い。

 2003年比で4倍近い値上がりとなっている。


石油化学と同様に、
産業競争力強化法第50条に基づいて、調査報告がなされた石油精製産業では、出光興産と昭和シェルJXと東燃ゼネラル石油の統合が決まり、後者の場合は大胆な設備廃棄が想定されている。

医薬業界でも各社は大胆な対応をしており、武田薬品は売上高で大きな比率を占める「長期収載品」をTeva とのJVに出す。

日本の化学会社も、日本での石化原料や汎用樹脂などをどうするか、戦略を考える時期に来ているのではないか。

東京理科大学の伊丹敬之教授が述べている通り、日本の産業はエレクトロニクスから化学に、産業科学は物理学から化学に転換し、化学反応(例えば燃料電池)や化学素材(デジタル電子機器のフィルター、導光板、偏向膜など)が必須の部分として使われるようになっている。

論文 日本産業の化学化 参照

今後とも、各社が注力する高機能製品の原料として石化原料は必要だが、今のように各社が石化原料から一貫で生産する必要はない。


日本化学工業協会の小林喜光会長(三菱ケミカルホールディングス会長)は、12月22日の定例会見で、「海外ではダウとデュポンの合併やファイザーのアラガン社買収など、ダイナミックな動きが見られる。日本の各社も今の好業績に満足することなく、将来の発展に向けて、さらなる新陳代謝が必要だ」と力を込めた。


中国広東省深圳市光明新区の柳溪工業団地で12月20日11時40分、建物33棟を巻き込む大規模な地滑りが発生した。


朝日新聞によると、土砂を流出させた残土受け入れ場の工事にあたって実施された環境影響評価(アセスメント)の報告書(2015年1月)が、地滑り発生の危険性を指摘していたことが分かった。

工事は、残土などを高さ155メートル、容積800万立方メートルまで受け入れられるようにするもの。

Google Map でビューを傾斜させると下のとおりで、工業団地の上にそびえている。

残土は地下鉄の工事現場から運び込まれていた。
深圳市は現在5本の地下鉄網を、5年後の2020年に11本まで拡大する計画で、市内各地で工事を急いでいる。

報告書は、工事で地形が変わり、土砂や水の流出が激しくなることから、有効な措置がとられなければ、地滑りの危険性があると指摘している。
特に土砂の流出を防ぐ堰が崩れた場合は、ふもとの工業団地の安全にも影響を及ぼすとして、夜間も含めたパトロールや危険を知らせる警報の整備、観測施設の設置などを求めていた。

ただし、結論としては「残土受け入れ場そのものが環境改善に役立つ。適切な措置をとれば、工事を進めてもよい」と評価しており、区政府も3月に許可していた。


2015年9月
事故後

英製薬大手 GlaxoSmithKlineの子会社でPfizer と塩野義製薬が出資するViiV Healthcareは12月18日、米国のBristol-Myers Squibbから、開発中のHIV治療薬(最終開発段階のものと、臨床試験前の研究段階の一連のもの)を最大15億ドルで買収する契約を締結した。

最終段階の治療薬は下記を含む。
 現在、患者を対象とした
phase III 開発段階にある阻害薬 fostemsavir (BMS-663068) (2018年に承認申請予定)
 phase IIb 段階の成熟抑制剤BMS-955176
 予備の成熟抑制剤 (BMS-986173)

研究中のもの
 成熟抑制剤、アロステリック
インテグラーゼ阻害剤、キャプシド禁止剤の3つの機能を併せ持つ生物剤
(BMS-986197)

ViiV HealthcareはBristol-Myers Squibb の研究員も受け入れる。

買収対価は、最終段階のものが一時払い 317百万ドルで、商業販売開始後に最大 518百万ドル+ロイヤリティ。
研究段階のものは、一時払いが33百万ドルで、販売開始後に最大587百万ドルとなっており、将来の販売実績によっては更なる支払もある。

 
今回の取引で、GlaxoSmithKlineは過半数株を保有するHIV事業の合弁会社、ViiV Healthcare のパイプラインを拡充できるようになる。
ViiVはHIV治療薬の市場シェアで米バイオ医薬品会社 Gilead Sciences Inc に次ぐ2位。

ViiV Healthcare は下記の変遷を経ている。

塩野義は2001年9月に、GlaxoSmithKline (GSK) との間で、両社の所有する複数の疾患領域における開発化合物を開発・販売することを目的とした合弁会社Shionogi-GSK Healthcare を設立した。

2002年8月に、両社はこのJVでHIV インテグレース阻害薬に関する共同研究を開始した。

2009年10月に、GSKとPfizerは両社のHIV 治療薬を供出し、英国にViiV Healthcareを設立した。(GSK:85%、Pfizer:15%)
GSKはShionogi-GSKHealthcareの持分をViiVに譲渡し、名称をShionogi-ViiV Healthcareと改称した。

2012年10月に塩野義はJVの50%持分をViiV Healthcareに譲渡し見返りにViiV Healthcareの10%の権利を取得した。
塩野義は、
知的財産の権利(50%持分)は継続して保持し、ViiV に供与、ドルテグラビル及び関連製品の販売高に応じ、平均10%台後半、一部地域では20%台前半のロイヤリティーを得る。

2012/11/2 塩野義製薬、HIV治療薬JVの枠組み変更


GlaxoSmithKlineの歴史は下記の通り。



SmithKline BeckmanとBeechamが合併して SmithKline Beecham
Glaxo とWellcomeが合併して Glaxo Wellcome

1998年にSmithKline BeechamとAmerican Home Products が合併合意破談
SmithKline Beecham Plc とGlaxo Wellcome Plc が合併合意破談

2000年にSmithKline BeechamとGlaxo Wellcomeが再度合併に合意し、Glaxo SmithKline となる。

2014年1月に、PfizerがAstraZenecaに対する買収提案を行った。

買収目的の一つが買収後は英国に多くの利益を留保・移転し、米国の高い税を回避するという「効果的な租税負担を構築する」ことであった。

これに対しAstraZenecaは、コスト節約と節税という財務面での利点がPfizerの買収の主な動機になっているようだと指摘、戦略上の魅力を感じなかったとして、この提案を拒否、Pfizerは買収断念を発表した。

Pfizerは2015年11月23日、アイルランドに拠点を置く同業のAllergan との合併で合意し、この目的を果たした。

2014/5/12 Pfizer が AstraZenecaに買収提案


AstraZenecaはその後、事業買収や提携で急速に事業を拡大している。

1. AstraZenecaは2015年2月5日、Actavis Plc から米国とカナダの呼吸器疾患薬事業を買収する契約を締結した。
現金6億ドルでの買収で、他に低率のロイヤリティを支払う。

2. 富士フイルムと協和発酵キリンは2015年7月24日、両社の共同出資会社協和発酵キリン富士フィルムバイオロジクス(FKB)が開発中のバイオ後続品(バイオシミラー)で、英 AstraZeneca と提携すると発表した。


2015/7/27 富士フイルム協和発酵キリン、バイオシミラー医薬品の開発・販売で AstraZeneca と提携
 

3. AstraZenecaは11月6日、米のバイオ医薬品会社 ZS Pharma を27億ドルで買収すると発表した。
主力の高脂血症治療薬
Crestor ®の特許が米国で切れたことを受け、心疾患治療薬のポートフォリオ拡充を目指す。

2015/11/12 AstraZeneca、米製薬会社 ZS Pharma を27億ドルで買収

AstraZenecaは12月16日、中国の医薬品開発受託大手、薬明康徳新薬開發(WuXi AppTec) と提携し、中国でのバイオ医薬品事業を強化すると発表した。

薬明康徳新薬開發(WuXi AppTec) は2000年12月の設立で、中国及びアメリカを拠点とする医薬品・生物医薬品・医療機器業務を取り扱う世界有数の受託会社。技術革新主導型、顧客志向の会社として、創薬研究及び開発プロセスにおける広範で統合型のサービスを提供している。

両社で中国向け製剤を共同開発し、薬明康徳の生産拠点を買収する権利も取得する。
薬明康徳のバイオ医薬品の生産拠点に総額1億ドルを投じる計画

AstraZenecaの米子会社 MedImmune と薬明康徳の合弁会社が開発中の製剤の開発のスピードも上げ、炎症や免疫治療での用途を見込む。

AstraZenecaは2007年4月23日、米バイオテクノロジー会社 MedImmune, Inc.を150億ドル以上で買収することで合意したと発表した。

MedImmune は2012年9月10日、薬明康徳新薬開發との間で、自己免疫疾患と炎症性疾患に用いる新規の生物製剤 MEDI5117 を中国で開発、販売するためのJVを設立すると発表した。

MedImmune は技術開発を担当、薬明康徳新薬開發は登録、臨床試験、製造を担当する。

更に、中国での従来型の低分子医薬品の研究設備にも5千万ドルを充て、競合が激しい同分野で研究開発力を高める。

5. AstraZenecaは12月16日、 武田薬品の呼吸器系疾患領域事業を5億7500万ドルで買収することで合意した。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬ダクサス(一般名:roflumilast、武田が買収したナイコメッドの画期的新薬)、呼吸器疾患治療剤 アルベスコおよびアレルギー用点鼻薬オムナリス(一般名:ciclesonide)を含む呼吸器系疾患領域事業を取得する。

各国・地域で販売されている同領域の製品や複数の前臨床段階にある化合物も移管される。
移管の完了にあたり、一定数の従業員がAstraZenecaに移籍する。

武田は2014年に、消化器系疾患領域、オンコロジー、中枢神経系疾患領域、代謝性・循環器系疾患領域を4つの重点疾患領域と定めている。

なお、AstraZeneca米国でroflumilastを「Daliresp」の商品名で販売している。上記のActavis から取得したもの。

6. AstraZenecaは12月17日、オランダとカリフォルニアに拠点を持ち、癌関連の薬を開発する私企業 Acerta Pharma の株の過半を40億ドルで買収することで合意した。

先ず、Acertaの55%を25億ドルで買収する。
Acertaの開発している血液癌治療用の薬 acalabrutinib が米国で承認された時、又は2018年末に、15億ドルを支払う。

AstraZenecaは更に、欧州と米国での同剤の承認後に、残りの株を30億ドルで買収するオプションを持つ。

同社では、同剤の年間売上高が世界中で50億ドルを超えると期待している。


AstraZenecaはICIから独立したZenecaとスウェーデンのAstraが統合したもの。




Moody'sは12月19日、韓国の格付けを、従来の「Aa3」から同国として過去最高水準となる「Aa2」に引き上げた。

声明で「韓国の極めて頑強な制度は構造改革の継続を支援し、経済および財政の回復力をさらに高めるだろう」と指摘した。

韓国と日本、中国の格付けは以下の通り。

S&P Moody's- Fitch
AAA Aaa AAA
AA+ Aa1
AA Aa2 韓国 AA
AA-
韓国
中国
Aa3
中国
AA-
韓国
A+
日本
A1
日本
A+ 中国
A A2 A 日本


現在の各国の格付け

米議会下院と上院は12月18日、1兆1500億ドル規模の予算法案を可決した。大統領がサインし、同日成立した。

下院は12月17日に、6220億ドル規模の企業向け優遇税制法案を賛成318、反対109で可決した。
法案は上院に送られ、歳出法案とともに採決され、可決した。

これまで一時的な措置だった研究開発費用の優遇税制などを恒久化する内容で、学生や低所得者、教師など中間層を支援する措置も盛り込まれており、民主党の支持も得られた。

共和党は、現在の租税政策をおおむね踏襲する内容だとした上で、多くの優遇税制が恒久化されることで、「議会が特定の減税措置を延長するかどうかについて米国民は毎年12月に心配する必要がなくなる」としている。

予算法案の議決は下記の通り。

  上院   下院
共和党 民主党 無所属 合計 共和党 民主党 合計
賛成 27 37 1 65 150 166 316
反対 26 6 1 33 95 18 113
棄権 1 1 - 2 1 4 5
合計 54 44 2 100 246 188 434

米国では2016年予算案(2015/10~2016/9)が決まらず、ギリギリの9月30日に、12月11日までの暫定予算法案を可決した。

オバマ大統領は10月2日、債務上限問題について、解決する責任は議会にあるとして、野党共和党とは「交渉しない」と改めて表明。議会が上限を引き上げなければ、米国債のデフォルトが発生し「金融システムは危機に陥る」と警告した。 

これを受け、米政府と議会指導部は協議を続け、10月26日遅く、連邦債務上限の引き上げと2年間の予算案の概要で合意に至った。

債務上限引き上げ:

米財務省は債務上限凍結が切れた2015年3月以降、緊急の資金繰り策によって債務残高を上限の18兆1000億ドル以内に抑えてきた。
今回、債務上限凍結を2017年3月15日まで再び延長し、それ以降については期限までに行った借り入れを含む金額を新たな上限として設定する。

 予算合意

2017年9月30日までの全体的な資金調達額が決まった。

ただし、2017年9月までの2年分の予算は大枠が決まったが、予算執行の細かな配分を定める関連法案が成立しておらず、暫定予算の期限の12月11日を迎えた。

このため、米下院は12月11日、12日から5日間のつなぎ予算案を賛成多数で可決した。上院は可決済みで、オバマ大統領の署名を経て成立した。
12月16日には、更に12月17日~22日のつなぎ予算を可決した。

これでようやく、2016年予算案(2015/10~2016/9)が決まった。

ーーー

今回の予算案には、両党の妥協で長年の懸案が抱き合わせで含まれ、いずれも可決された。

1)原油輸出解禁

米議会与野党の幹部は12月15日、1975年から原則禁止してきた国産原油の輸出を解禁することで合意した。

米国では1970年代の第1次石油危機をきっかけに、安全保障上の理由から原油の輸出が原則禁止され、ガソリンなど精製された石油製品の輸出に限ってきた。

1973年のアラブ石油禁輸に伴い、 米国の石油資源を保護し、米国の消費者が値上げショックを受けるのを防ぐため、1975年12月にEnergy Policy and Conservation Act (EPCA) を成立させ、原油の輸出を禁止した。 カナダ向けは特別に輸出可能。

2014年6月25日、Pioneer Natural ResourcesとEnterprise Products Partners は商務省がテキサスのEagle Ford Shaleの超軽質油を輸出する計画を承認したと発表した。 いずれも個別の申請による承認(private ruling)である。
制度は変えず、最小限の加工をした「コンデンセート」と呼ばれる原油の一種を禁輸対象外の「石油製品」とみなしたもの。

2014/6/30 米国が原油輸出を一部解禁 

シェール革命を背景に、原油生産がこの7年間で8割以上増え、原油の在庫がだぶつき、石油関連企業が輸出解禁を主張し、共和党が支援していた。

オバマ大統領や民主党は「地球温暖化対策に逆行する」などと反対してきたが、再生可能エネルギーの支援策(風力・太陽光発電への税制優遇の継続)と引き換えに野党側と折り合った。

付記

米パイプライン大手Enterprise Products Partnersは12月23日、1月の第1週に60万バレルの米国産原油をタンカーに積むと発表した。

スイスの商社 Vitol が購入するが、最終買い手は明らかにしていない。


2)IMFの資本改革案

IMFは2010年に、新興国の出資比率を引き上げ、理事会への登用を増やす「IMF改革」に合意した。
改革案が実現すれば、IMFへの出資比率で米国、中国が日本に続く第3位に浮上、更に上位10カ国にインド、ロシア、ブラジルが入り、新興国の発言力が増す。

IMFへの出資比率 (%)
現状   改革後
米国 17.67 米国 17.41
日本 6.56 日本 6.46
ドイツ 6.11 中国 6.39
英国 4.51 ドイツ 5.59
フランス 4.51 英国 4.23
中国 4.00 フランス 4.23
イタリア 3.31 イタリア 3.16
サウジ 2.93 インド 2.75
カナダ 2.67 ロシア 2.71
ロシア 2.50 ブラジル 2.32

しかし、重要事項の議決には投票権で85%以上の賛成が必要で、唯一15%超の比率を持つ米国が事実上の拒否権を持つ。

米国では台頭する中国への警戒心が強く、共和党を中心とする議会の反対で承認を見送ってきた。

BRICSの第6回首脳会議は2014年7月15日、「2010年に採択されたIMF改革案が実行されないことに失望し、深刻な懸念を持っている。これはIMFの正当性、信用性、有効性を傷つけている」と厳しく批判した。

ルー米財務長官は3月18日、議会での証言で、IMFの改革を議会が承認しないことは戦略的に危険で、中国が主導するアジアインフラ銀行創設といった問題で米国の影響力が低下するとの懸念を示した。改革案の米議会での批准が遅れていることで、新興国の間でIMF以外の機関から資金を調達する傾向が出ているとの認識を示した。

オズボーン英財務相は12月7日、IMFでの中国の役割拡大に反対する米議会の姿勢について「悲劇」だと批判した。

IMFでは、中国やインドなど一部の国だけに割当を増やす暫定策も検討していた。この場合、米国は増資がないため、議会の承認は必要がない。

今回、与野党幹部は、歳出法案にIMF改革の承認を盛り込むことで合意した。
共和党が希望していた原油の輸出解禁などをのむ一方、民主党側がIMF改革などを入れるよう求め、折り合った。

Sanofi とBoehringer Ingelheim は12月15日、両社が事業交換に関して独占的な交渉に入っていると発表した。

両社は2016年10-12月の取引完了を目指しており、実現すれば、Sanofi はConsumer Healthcareでグローバルリーダーとなり、 Boehringer Ingelheimは動物医薬品で世界二位となる。

Sanofi の評価額114億ユーロの動物医薬品事業(子会社"Merial") と Boehringer Ingelheim の評価額 67億ドルの Consumer healthcare 事業を交換するもの。
Boehringer Ingelheim の中国のconsumer healthcare 事業は交換の対象外となっている。 

Sanofi は評価額の差額の47億ユーロを現金で Boehringer Ingelheimから受け取る。

Sanofi

Boehringer Ingelheim

動物医薬品事業(子会社"Merial")
   評価額 114億ユーロ
Consumer healthcare 事業
  (中国事業を除く)
   評価額 67億ユーロ
現金     47億ユーロ

Sanofi のconsumer healthcare の2015年の売上高は、Boehringer Ingelheimの16億ユーロを加え、約51億ユーロとなり、グローバルなマーケットシェア 4.6%で、トッププレーヤーとなる。
両社の事業は製品でも地域でも極めて補完的である。

Sanofi は比較的弱かったドイツと日本での地位を高める。米国、欧州、ラテンアメリカ、ユーラシアでも事業を拡大する。
Boehringer Ingelheim は日本でエスエス製薬を傘下に持つ。
  
2010/2/16 Boehringer Ingelheim、エスエス製薬にTOB

Sanofi はまた、鎮けい薬、胃腸薬、ビタミン・ミネラル・サプリメント、鎮痛薬で有力ブランドを確保し、風邪薬では売上が増大する。

Boehringer Ingelheimの動物医薬品は、Sanofi のMerial の売上高25億ユーロを加え、売上高38億ユーロの世界二位の企業となる。

Merialは愛玩動物や家禽に強く、Boehringer Ingelheimは豚に強く、補完的である。

統合後の両社の分野別のグローバルの地位は下記の通り。

 Sanofi の Consumer Healthcare

市場規模
 億ユーロ
統合後の
地位
痛み止め 132 #2
アレルギー 31 #3
風邪薬 172 #6
女性用品 8 #1
消化薬 144 #1
ビタミン・ミネラル・サプリメント  276 #3

 Boehringer Ingelheimの動物医薬品

市場規模
 億ユーロ
統合後の
地位
小動物 71 #1
反芻動物 58 #4
26 #1
家禽 24 #3
6 #1


Sanofi (2011/5 Sanofi-Aventis から改称)はHoechstと Rhone Poulenc が合併してできたAventisと、フランスのSanofi-Synthelaboが2004年に合併したもの。

2011/2/17 Sanofi-Aventis、Genzymeを買収 

Boehringer Ingelheim は世界で20位以内に入る医薬会社で、1885年に設立されたドイツに本拠を置く家族経営の企業。

子会社の日本ベーリンガーインゲルハイムがエスエス製薬の株の約60.2%を所有していたが、2010年にTOBを行い、出資比率を93.83%とし、その後100%子会社とした。

消費税の軽減税率(8%) 適用の範囲が、酒と外食を除く全ての飲食料品となった。


民主党政権下の2012年8月に、民主、自民、公明の3党合意で成立した消費増税法では、税収増加分すべてを社会保障費にあてることとしている。

これまで検討されてきた増収分の使途は下記の通り。

当初 2015年度 引き上げ後
消費税率 5% 8% 10%
うち、地方分 2.18% 3.10% 3.72%
(既存)高齢者年金・医療・介護 13 兆円 13 兆円 13 兆円
(増税分)
基礎年金国庫負担割合 1/2との差額 先取り 3 兆円 3.2 兆円
診療報酬、介護報酬、年金、子育て支援等の物価上昇分 残り 1/3   0.35 兆円 0.8 兆円
社会保障充実
総合合算制度
1.35 兆円
2.4 兆円
0.4 兆円
後代への負担の付回しの軽減   2/3 3.4 兆円 7.3 兆円
(消費税アップ分 計) - 8 兆円 14 兆円


社会保障の充実:子供・子育て支援の充実、医療・介護の充実、年金制度の改善
総合合算制度:消費増税に伴う低所得者対策として、医療、介護、保育などの自己負担総額に上限を設けるもの。

後代への負担の付回しの軽減 :既存の社会保障費(高齢化等での自然増を含む)のうち、安定財源が確保できていないもの。国の借金増を防ぐためのもの。

軽減税率を適用する場合、減収分を上記の使途のどれかを減らすか、他の財源から確保する必要がある。

財務省と自民党は軽減税率に充てられる財源は「総合合算制度」の導入に充てる予定だった「4000億円が上限」と主張してきた。
生鮮食品のみに軽減税率を適用する場合は3400億円程度である。

しかし今回、自民党の選挙対策で軽減税率適用範囲が拡大し、必要な財源は1兆円規模となるが、財源は確保できていない。

政府は財政健全化策として、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度に黒字化するとした閣議決定を行なっているが、その際、軽減税率を導入した場合の税収減については触れていない。

与党合意では「2016年度末までに安定的な恒久財源を確保。財政健全化目標などを踏まえ、消費税を含む税制改革や社会保障制度改革など歳入・歳出のあり方を検討し、必要な措置を講じる」としている。

予定していた社会保障の充実がさらに見送られれば、国民からの批判は必至である。
谷垣幹事長は消費税率10%超への再増税について記者団に「将来の課題だ」と述べ、否定しなかった。

米国、利上げ

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米連邦準備理事会(FRB)は12月16日、米連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を 0%~0.25% から0.25%~0.50% に引き上げることを決めた。

利上げは約10年ぶりで、米経済は2007-09年の金融危機による打撃を概ね克服したとの認識を示した。


FRBは2014年1月29日に開いた会合で、債券買い入れ規模を減らし、量的緩和(QE3)の縮小を継続する方針を決めた。
アメリカ経済は消費や設備投資が一段と改善し、景気は「上向いた」という見方を示した。

FRBは2012年9月以来、毎月850億ドルの債券買い入れを続けていたが、2013年6月にバーナンキFRB議長が、経済指標次第としつつも「年内に証券購入ペースを緩めるのが適切」と述べた。

2013年11月の会合では縮小見送りを決めたが、12月の会合では2014年1月の買い入れ額を100億ドル減らすことを決めた。

2014/2/4 米国の量的緩和縮小とその影響 

その後の推移は下記の通りで、FRBは2014年10月29日、QE3での資産購入を10月いっぱいで終了することを決めた。
なお、その時点では、ゼロ金利政策は「相当な期間、維持するのが適切」とした。

2014/1 750 億ドル ( 850億ドル
2 650
4 550
5 450
7 350
8 250
10 150
11 0

付記 

FRBの保有資産は2008年の危機前は1兆ドルを割り込んでいた。
2008年からの量的緩和(QE1 ~ QE3)での買い入れで、現在では4兆5千億ドルとなっている。

これを圧縮すれば、利上げとともに二重の引き締めとなるため、簡単には出来ない。

これを圧縮するには10年以上かかるとされる。真の「出口」はこれからである。
現在は満期を迎えても償還分を再投資して資産規模を維持している。


参考  日本の金利

付記

速水優総裁は2000年8月11日の会合で、「少なくとも日本経済はデフレ懸念の払拭が展望できる情勢に至ったと判断する」と総括、「政策判断としてどれでいくか決定するのは、日銀法第3条で認められた我々の自主性である」と言明し、政府の議決延期請求を否決してゼロ金利政策の解除を決めた。

ゼロ金利解除後、ITバブル崩壊で景気の雲行きが怪しくなり、速水総裁が2000年10月の会合で「米経済が少し変調をきたしているとの心配がある」と指摘。
日銀は2000年12月の会合で景気判断を下方修正、2001年2月には政策金利を引き下げ、3月に量的緩和政策という異例の措置に踏み切った。

米国経済がITバブル崩壊から立ち直ると日本の景気も回復に向かい、2006年に入ると消費者物価は前年比で上昇するようになった。
その後も景気回復が続き、物価下落の圧力も低下したことから、7月14日にゼロ金利政策の解除が全会一致で決定され、短期金利が実質的にゼロという状況は2001年3月以来、5年4か月ぶりに解除された。

2010年10月に三度目のゼロ金利政策が導入され、現在に至っている。

ブリヂストンは12月12日、さきに買収契約を締結していた米国の大手自動車用品小売チェーン The Pep Boys - Manny, Moe & Jack との間で、買収契約の内容改定を行ったと発表した。

Carl Icahn が、ブリヂストンの買値よりも高い価格での買収提案を行ったのに対し、ブリヂストンがこれに追随したもの。

ーーー

ブリヂストンは10月26日、Bridgestone Americas, Inc. 子会社のBridgestone Retail Operations, LLC が米国でタイヤ販売などを行っている大手自動車用品小売チェーンのPep Boys を買収する最終契約を締結したと発表した。

株式公開買付けにより、Pep Boys の株式を1株当たり現金15.00ドル、株式買収総額約8億35百万ドルで取得する手続きを開始、2016年初に終了する見込みとした。

Pep Boys は1921年創業の自動車アフターマーケットの大手で、自動車タイヤの販売、整備・補修及び自動車用品の販売を行う小売店を米国35州とプエルトリコに800店舗以上を展開している。

Bridgestone Retail Operationsは、Firestone Complete Auto Care などのブランドで全米に2,200店舗以上の自動車タイヤ販売、自動車整備・補修及び自動車用品を販売する小売店を運営しているが、Pep Boys の買収により、小売店網は約35%拡大する。

ーーー

これを受け、ブリヂストンは12月12日、買収価格を15.50ドルに引き上げると発表した。当初価格は15.00ドルであったが、Icahnが15.50ドルを提示したのを受け、同額に引き上げた。

これにより、買収総額は、8億35百万ドルから8億63百万ドルに増えることになる。

Pep Boys側はブリヂストンが買収価格を引き上げたことで、これを受け入れて買収契約の内容改定を行い、「株主にブリヂストン案を推奨する」とし、Icahn 側の提案について、「もはや優位性はない」と発表した。

ブリヂストンの改正価格はIchanの価格と同額だが、ブリヂストン側は既に独占禁止法など規制面での承認を受けており、金額以外の条件が評価された。

今回の株式公開買付けは、今後延長されない限り、2016年1月4日に完了する予定。

ブリヂストン側がIcahn側の提案価格と同額にしたことから、後、Ichan側がさらに価格を上げるかどうか、注目される。

先週末 12月11日のPep Boysの株価(NYSE:PBY)は、高値16.59ドル、終値 16.34ドルで、買収価格(15.50ドル)より高い。

付記

Carl Icahn は買収提案価格を1ドル引き上げ、1株当たり16.50ドルとした。
Pep Boys は、12月18日にIcahnから通知があったことを
明らかにした。

Pep Boys はブリリヂストンの15.50ドルよりも「優れた提案だ」と評価し、ブリヂストンに12月23日までに対案を出すよう求めた。

ブリヂストンの対案が出る前に、Carl Icahn が更に新しい提案を行った。
ブリヂストンの提案価格に0.1ドルを上乗せするというもので、上限は18.1ドルとなっている。

人民元は米ドルに対して下落を続けている。(12/14 6.4591人民元 / ドル)

しかし、国際通貨基金(IMF)は5月26日に公表した中国経済に対する年次審査報告書で、中国の人民元はもはや過小評価されていない、と指摘した。
「人民元の過小評価がこれまで大きな不均衡の要因だったが、実効為替レートの過去1年間の大幅上昇により、もはや過小評価されているとは言えない水準になった。」

米ドルに対して下落しているのは、ドル高の影響であり、人民元は、ドル以外の大半の通貨に対しては上昇している。

2015/5/30 IMF、「人民元はもはや過小評価でない」 


中国人民銀行は12月11日、為替相場は複数の国々との貿易と投資を反映するものであり、 米ドルに対する変動のみでなく、通貨バスケットに対する人民元の変動を考慮する必要があると説明、人民銀行が運営する中国外国為替取引システム(CFETS)は、13の通貨で構成される新たな人民元の指数を公表した。

「人民元はドルだけを参考にすべきではない」とのコメントを、市場では「中国政府は対ドルでの人民元の下落を容認している」と受けとめられ、人民元は続落した。

CFETSは合わせて、BIS(国際決済銀行)通貨バスケットの為替レート指数と、SDR決済通貨バスケットの為替レート指数を発表した。

いずれも2014年12月末を100とする指数で、結果は下記の通り。

CFETS指数 BIS 指数 SDR 指数 人民元/US$
2014/12/31 100.00 100.00 100.00 6.2040 100.00
2015/11/30 102.93 103.50 101.56 6.3981 96.97
12/11 101.45 102.28 99.52 6.4553 96.11

11月30日の指数では、対米ドルでは2014年末比で3.03%の元安だが、CFETS指数では2.93%、BISバスケットでは3.50%、SDRバスケットでは1.56%の元高となっている。
(12月11日のスタート日ではSDRバスケットは0.48%の元安となったが、対米ドルの3.89%の元安よりも、元安の程度ははるかに小さい)

各バスケットでの各国通貨の比率(%)は下記の通りで、 CFETS指数は再輸出を調整した国際貿易のウェイトにより計算される。 SDR指数は2011-2015年の構成比率。

CFETS指数では米ドルの比率は26.40%に過ぎない。

CFETS 指数 BIS 指数 SDR 指数
米 ドル 26.40 17.80 41.90
ユーロ 21.39 18.70 37.40
日本 円 14.68 14.10 9.40
香港 ドル 6.55 0.80 -
英 ポンド 3.86 2.90 11.30
豪 ドル 6.27 1.50 -
NZ ドル 0.65 0.20 -
シンガポール ドル 3.82 2.70 -
スイス フラン 1.51 1.40 -
カナダ ドル 2.53 2.10 -
マレーシア リンギッド 4.67 2.20 -
ロシア ルーブル 4.36 1.80 -
タイ バーツ 3.33 2.10 -
他 27カ国通貨 - 31.70 -
合計 100 100 100

台湾の公平交易委員会(公取委に相当)は12月9日、スマートフォンなどに使う電子部品のコンデンサーについて、日本ケミコンなど日系企業を中心に10社が価格カルテルを結んでいたとして、総額約215億円の多額の課徴金を科すと発表した。台湾でのカルテルに対する課徴金としては過去最高額。

アルミ電解コンデンサーでは日本ケミコン、ルビコン、エルナー、三洋電機、ニチコンに総額45億2290万台湾ドル、タンタル電解コンデンサーではNECトーキン、松尾電機、米Vishay Polytecに総額12億7370万台湾ドルを科した。

同委員会によると、アルミ電解コンデンサーについて少なくとも2005~14年初めに価格や数量、顧客への対応方法などの情報を交換、タンタル電解コンデンサーでも同様の行為をしていた。

各社の課徴金は下記の通り。 日本円は3.7円/台湾ドルで換算した。

千台湾ドル 百万円
アルミ電解
 コンデンサー
日本ケミコン 1,868,300 6,913
 同上(香港) 82,900 307
 同上(台湾) 293,800 1,087
ルビコン 1,248,000 4,618
エルナー 76,600 283
三洋電機(香港) 842,000 3,115
ニチコン(香港) 111,300 412
合計 4,522,900 16,735
タンタル電解
 コンデンサー
NECトーキン 1,218,200 4,507
Vishay Polytec 31,200 115
松尾電機 24,300 90
合計 1,273,700 4,713
総額 5,796,600 21,447

日本ケミコン:1931年 佐藤電気工業所として設立(日本発の電解蓄電器の製品化)
ルビコン:1952年 日本電解製作所として設立、アルミ電解コンデンサ製造開始
エルナー:1929年 本田製作所として創業、1934年 アルミ電解コンデンサの採算・販売
三洋電機:2009年に事業(サン電子で製造)をサン電子に売却
ニチコン:1950年 関西二井製作所設立、1956年 アルミ電解コンデンサ製造開始
NECトーキン:1938年 東北金属工業設立、1988年トーキンに改称、2002年NEC・電子部品事業と統合、改称
Vishay Polytec:米のVishay Intertechnology 日立コンデンサ(その後 日立AICと改称)の三春工場のタンタル・ニオブコンデンサ事業を取得
松尾電機:1949年設立

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コンデンサー業界は日本、韓国、米国、中国でカルテルの調査を受けている。

中国の国家発展改革委員会(NDRC) は2014年、他国の競争当局に先がけてコンデンサーの価格カルテルの調査を開始した。

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日本の公正取引委員会は2014年6月24日、「アルミ電解コンデンサー」や「タンタルコンデンサー」などの販売を巡り価格カルテルを結んでいた疑いが強まったなどとして、メーカー10社程度に立ち入り調査を行った。

対象となったのは、日本ケミコン、パナソニック、日立化成、NECトーキン、ニチコン、ルビコン、エルナー、松尾電機など。

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米当局も現在、キャパシタ(電解コンデンサー)業界のカルテルの調査を行っている。

司法省は2015年9月2日、NEC TOKIN が罪を認め、1380万ドルの罰金を支払うと発表した。
合わせて、同社は今後の調査への協力を約束しており、今後、広がる可能性がある。

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韓国の公正取引委員会は、本年秋に、日本のコンデンサーメーカー8社が最大4兆ウォン(約4100億円)台の価格カルテルを結んでいた疑いで調査に入った。

調査対象はパナソニック、ニチコン、日本ケミコン、日立化成、NECトーキンなどの8社。

2015/10/3 韓国公取委、日本のコンデンサーメーカーの価格カルテル調査 




Dow Chemical と DuPontは12月11日、対等で経営統合すると発表した。 それぞれの取締役会が満場一致で賛成した。


概要は下記の通り。

社名 DowDuPont
体制 統合後に無税スピンオフで Agriculture、Material Science、Specialty Products の3つの会社に分離し、それぞれ上場する。

株式 両社の株主はDowDuPont の株式の50%ずつを取得。
役員 会長:Dow のAndrew N. Liveris 会長兼CEO
CEO:DuPont の
Edward D. Breen 会長兼CEO (10月16日退任のEllen Kullman の後任)
取締役:16名で、両社から現在の8名ずつ。
本社 両本社制
 Dow のMidland, Michigan
 DuPontのWilmington, Delaware
シナジー
効果
コスト面 30億ドル (Agriculture 13、Material Science 15、Specialty Products 3億ドル)
(製造コスト 40%、販売費・一般管理費 30%、借入金 20%、R&D 10%)
両社の固有のコストダウン計画分(Dow の2015-17の3年間 10億ドル、DuPontの 2016の7億ドル)以外のもの
成長面  10億ドル
合計   40億ドル (2年内に実現)

そのための一時的コスト 35~41億ドル


両社は幾つかの資産を売却すれば、独禁法上の審査をクリアすると、アナリストらはみている。
売却が必要な分野は恐らく種子と穀物関連とされている。

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Dow のAndrew N. Liveris 会長兼CEOは11年前にDowのCEOに就任してから、ほぼ一貫してDuPontとの合併を目指してきた。
2006年にDuPont買収を試みたことがあったが、袋小路に陥った。そして2009年、金融市場が崩壊したのとほぼ同じ時期に特殊化学品メーカーのRohm and Haasを160億ドルで買収した。

Edward Breen が今年10月にDuPontの暫定CEOに就任(その後、11月9日に「暫定」が取れる)した直後、合併の提案をしたとされる。

Dow も DuPont も、物言う株主から事業分割などドラスティックな手段による企業価値の向上の要求を受けている。

ヘッジファンド、Third Point LLCを率いるActivist Investor(物言う株主)のDaniel Loebは2014年1月21日、Dow Chemicalに手紙を送り、石油化学事業とスペシャリティケミカル事業を分離するよう求めた。

Dow は2013年12月に塩素事業(売上高50億ドル以上)からの撤退を発表したが、もっとドラスティックなものを求めている。

2014/2/18 物言う株主、Dow Chemical の分割を要求、会社側は拒否  

DuPontは5月13日の株主総会で辛うじて物言う株主に勝利を収めたが、物言う株主のNelson Peltz が率いる米Trian Fund Management が会社の分割を要求していた。

既に発表されているPerformance Chemicals部門に加え、DuPontを2社に分割する。
 GrowthCo (Agriculture, Nutrition and Health, Industrial Biosciences)
  CyclicalCo/CashCo (Performance Materials, Safety and Protection, Electronics and Communications)


2015/5/15 DuPont、株主総会で物言う株主に勝利

DuPontのEllen J. Kullman 会長兼CEOは10月16日に退陣した。(2008年10月1日付けで社長、2009年1月1日付でCEO、2009年12月31日付けで会長に就任)
業績悪化の責任を取ったとされる。

2015/10/6 DuPont のCEO Ellen Kullman、急に退任 


両社とも、不採算事業のみならず、儲かってはいるが将来の成長が見込めない等の事業についても売却したり、スピンオフ する一方、原油価格の変動の影響が少なく、成長が見込める事業を買収してきた。

 Dow の改革の一部

2009/4/3 ダウ、Rohm & Haas の買収を完了  

米国の石化事業をクウェートのPICとのJVにする計画がつぶれ、Rohm & Haas買収資金がなくなり、多くの事業を売却した。

2010/6/18 ダウ、スチレン系事業売却完了

2013/2/6 Dow、日本ユニカー持株を売却

2014/10/6 Dow Chemical、非戦略事業の売却を進める

2015/9/8 Dow Chemical、塩素バリュー・チェーンのOlinへの売却手続き開始

 DuPont の改革の一部

2008/9/30 DuPont のこの10

2011/5/27 DuPontDaniscoの買収成功

2012/9/5 DuPont、Performance Coatings事業をCarlyle Group に売却

2015/6/12 DuPont、Performance Chemicals 事業を分離

2014/8/23 クラレ、DuPontのビニルアセテート関連事業 の買収完了

2014/12/15 DuPont、クロロプレンゴム事業を電気化学に売却

しかし、経営改革を迫る「物言う株主」から対応が遅いと批判されていた。


Liveris会長は「今回の合併は業界の流れを変えるもので、われわれが10年以上かけて描いてきた構想の集大成が映し出されている」と述べた。

物言う投資家は今回の合併を歓迎している。

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統合後のDowDupontは、Agriculture、Material Science、Specialty Products の3つの分野でのリーダーとなるとしている。

1)Agriculture

2) Material Science

3) Specialty Products

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Dow は同じ12月11日、Dow とCorning の50/50JVの Dow Corning Corporation をDow 100%にすると発表した。

Dow Chemical のAndrew Liveris 会長は2014年11月、Corning Inc. がDow Corningの持株の売却を希望しており、Dowが購入することになるだろうと述べたと報じた。
CorningはSamsung Electronics とのJVであったSamsung Corning Precision Materialsを100%子会社にしており、Dow Corning よりもこちらに重点を置きたい意向であるとしている。

2014/11/25 Corning Inc.、Dow Corning から撤退へ 

Dow Corning は1943年に両社のJVとして設立され、シリコーンなどケイ素技術に特化している。

Dow Corning は日本では1966年に東レとのJVの東レ・ダウコーニング・シリコーン(現 東レ・ダウコーニング:Dow Corning 65%出資)を設立している。

Dow Corning は子会社に、半導体や太陽電池に使われる様々な純度の多結晶シリコンを製造するHemlock Semiconductor Group を持つが、これについては、DowとCorning は現状の持分を維持する。

Hemlock Semiconductorは1979年にDow Corningの100%子会社として設立された。
1984年に信越半導体と三菱マテリアルが加わり、3社のJVとなった。
  Dow Corning 63.25%、信越半導体 24.5%、三菱マテリアル 12.25%
しかし、信越化学は2013年3月期に持分の一部を売却し、20%以下としている。

アラブ首長国連邦の財務大臣によると、湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council )のメンバー諸国、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタールの6カ国は12月初めに会合を持ち、付加価値税(VAT)導入で大筋合意した。

各国は3年以内にVATを導入する計画で、最終合意には至っていないが、健康、教育、社会福祉、及び食品(94品目)を対象外とすることで合意した。ファイナンシャルサービスなどの分野については意見が分かれているという。

各国は過去10年以上にわたり、国家の歳入増加のため、VATの導入を議論してきた。
本年6月以降の石油価格の暴落でこの動きが強まった。

IMFなどは各国に対し、VAT導入や法人税・物品税の拡大などで歳入を多様化することを求めている。

アラブ首長国連邦は当初、本年第3四半期にもVAT導入法を提案するとしていたが、競争力低下や国境を越えての密輸の増加を恐れ、他のメンバー国と合わす為、遅らせた。

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本ブログのバックナンバーは下記にあります。
年月別索引はここにあります。

    https://www.knak.jp/blog/zenpan-1.htm

項目別索引を整理し、調べやすくしました。

https://www.knak.jp/blog/index.htm

ご利用ください。


General Electric は12月7日、スウェーデンの家電大手 Electrolux AB への厨房機器事業の売却を中止すると発表した。
米司法省が、「調理コンロやオーブンなどでシェアが高い両社の事業が統合されると、価格が上がって米消費者に不利益が生じる」と主張し、反対したため、断念に追い込まれた。

両社は2014年9月8日、ElectroluxがGEの厨房機器事業を33億ドルで買収することで同意した。

GEは選択と集中を進め、戦略外の厨房機器事業などを売却し、ガスタービンや航空機エンジンなどに注力する。
他方、Electrolux は北米でのシェアアップを狙った。

米国紙によると、両社の事業を統合すると、昨年の米国市場でのシェアは約25%となる。
これに対し、トップ企業のWhirlpoolのシェアは約30%、LGが13%、Samsung Electronicsが11%とされる。

米司法省は2015年7月1日、この売却を禁止することを求める訴訟を提起した。

売却により、米国で販売される厨房機器の主要メーカー2社が統合され、競争を阻害することにより、消費者に悪影響を与えるとしている。
北米でのGEの当該事業の売上高は約34億ドルで、Electrolux North Americaの売上高は約26億ドルとしている。

これに対し、Electroluxは買収により逆に競争が増え、需要家は安い価格で、より幅のひろい高品質製品を買えるようになると反論した。

買収により、Electrolux の規模と効率が増え、イノベーションと成長に投資ができるようになり、需要家、販売店、従業員、株主全ての利益となる。

更に、司法省の今回の反対は、2006年にWhirlpoolによるMaytag(米国の厨房機器市場での主な競合者)買収を承認したのと完全に矛盾するとした。

同社によると、司法省に対し、司法省の懸念を解消できる提案を行ったが、司法省は拒否したという。

Electroluxは既に、ブラジル、カナダ、エクアドルで買収の承認を得ている。同社では年間で350百万ドル以上のシナジー効果があるとしている。

ーーー

今回、この訴訟の決着はついていないが、GE がギブアップした。

GEとElectroluxとの契約では、売却が実行できない場合、Electrolux がGEに解約金 175百万ドルを支払うこととなっており、GEはこの支払を求めた。

Electrolux は、同社が承認の取得に多大の努力をしており、裁判が進行中なのにGEが契約を打ち切ったのは遺憾であるとしており、解約金の支払についてはどうするか検討する。

「選択と集中」を進めるGEは今後も、別の売却先を探すとみられる。

ーーー

今回の買収、統合後の米国市場のシェアが、上記の通り、Whirlpool約30%、Electrolux 25%、LG 13%、Samsung Electronics 11%というのであれば、また司法省がWhirlpoolによるMaytag 買収を承認しているのであれば、この買収を認めないのはおかしいと思われる。

米紙によると、オバマ政権下で独禁当局が買収を認めないケースが増えている。

米ケーブルテレビ最大手Comcastは4月24日、Time Warner Cable に対し提示していた総額450億ドルの買収案を撤回すると発表した。
買収がインターネットサービスの面で
Comcastに不当な利益をもたらしかねないとして、米当局が難色を示したため。

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米食品流通大手のCisco Corporationは6月29日、35億ドル規模のUS Foods買収計画を断念した。
米連邦地裁判事による同買収計画の差し止め命令が原因。

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タイの水産加工大手Thai Union Groupは12月4日、米のツナ缶メーカーの同業大手Bumble Bee Foodsの買収を断念すると発表した。

2014年12月に、所有するLion Capital から全株を15.1億ドルで取得すると発表したが、独禁法に違反する恐れがあるとして、米法務省が待ったをかけた。

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米連邦取引委員会(FTC)は12月7日、米事務用品小売り大手のStaplesによる同業のOffice Depo買収は公正な競争を妨害するとし、差し止めを求めて提訴した。

Staplesは2月4日に63億ドルで買収すると発表していた。



三菱ケミカルホールディングスは12月10日、100%子会社の三菱化学、三菱樹脂 及び三菱レイヨンの3社が、2017年4月1日をもって統合することを決定したと発表した。
合わせて、これを折り込んだ新中期経営計画 『APTSIS 20』を発表した。

経営環境の変化に迅速に対応し、事業の成長を図るためには、3社の持つ経営資源を最大限活用できる体制の構築が必要との認識のもと、3社を1社に統合する前提で詳細な検討を行ってきた。

2017年4月1日をもって、存続会社を三菱レイヨンとする吸収合併の方法により、3社を統合する。
新社は、統合後引き続き、純粋持株会社である三菱ケミカルホールディングスの100%子会社として事業を行う。

新社の商号、代表者、資本金等詳細は、今後順次検討・決定する。

新社は、協奏・インテグレーションの効果を最大限発現させて成長促進と収益拡大を実現するために、機能商品分野で7つ、素材分野で3つの合計10の事業ユニットに再編成する。

各分野の主要製品は下記の通り。

分野 主要製品 売上計画(億円)
2015 2020
高機能ポリマー 機能性樹脂、フェノール/ポリカーボネート、PET/PBT、サステイナブルリソース 2,100 2,700
高機能化学 スペシャリティケミカルズ、エポキシ樹脂、食品機能材 1,800 2,300
情電・ディスプレイ 光学系フィルム(ポリエステルフィルム等)、カラーレジスト、有機EL 2,400 2,500
高機能フィルム 食品包装材、工業用フィルム、医療用フィルム 1,800 2,000
環境生活・ソリューション アクアソリューション、イオン交換樹脂、アグリビジネス、インフラ資材 1,200 1,650
高機能成形材料 エンプラ製品、炭素繊維・複合材料、アルミナ繊維、機能成形複合材、射出成型品、繊維 3,000 3,800
新エネルギー リチウムイオン電池材料、オプトエレクトロニクスマテリアルズ、有機太陽電池(OPV) 350 700
石化 石化原料及び誘導品、ポリオレフィン、テレフタル酸 9,700 10.000
炭素 コークス、高純度グラファイト、カーボン・ゴム 2,150 2,450
MMA MMA、PMMA 3,700 4,250

テレフタル酸事業等の再構築事業については抜本的対策を実施する。


三菱ケミカルホールディングス全体のポートフォリオとしては、成長事業8つ、基盤事業6つの13の事業ユニット(ライフサイエンスは双方に)と5つの次世代事業テーマとなる。

次世代事業テーマの内容は以下の通り。

ヘルスケアソリューション 再生医療、診断支援システム、植物由来ワクチン
バイオソリューション 植物工場利用の高機能野菜栽培・成長因子、植物由来モノマー・ポリマー、腸内細菌叢の効果利用
ガスソリューション 人工炭酸泉、細胞凍結保存、水素ステーション、ガスの医療応用、安定同位体医薬、ガス・液の分離材料
新エネルギー・高機能材料 有機太陽電池、ケイ素材料
ビッグデータ・ICT利用ソリューション ビッグデータ・ICTを研究開発・製造から財・サービスの供給における事業展開において積極的に利活用




 

日本では消費税アップに関連し、軽減税率を採用する場合に、商品や価格、税率や税額を記入するインボイスの発行が必要だが、手間がかかるとして問題になっている。

しかし、海外ではほとんどの国が軽減税率を採用しているが、全く問題になっていない。

欧州各国では、モノやサービスの代金を請求する「明細書(インボイス)」に、税抜き価格と消費税を記すことが義務づけられている。
税率や税額などを記してあるため、業者はインボイスによって売り上げと消費税がはっきりわかり、インボイスをみれば、納めるべき消費税が一目瞭然になる。
税を徴収する政府もどれだけ消費税がかかったかが把握できる。

欧州では「軽減税率」を採用している国が多いが、インボイスに商品ごとの税額や税率が記されている。

軽減税率を採用するとインボイス発行に手間がかかるので困る、などの議論は聞いたことがない。

人民日報によると、中国では、国税総局がこのほど発表した公告の中で、納税者の経営コスト削減、社会資源の節約、消費者の領収書保存・使用の便利化を目的として、増値税(付加価値税)の電子領収書発行システムを2016年より全国的に展開することを明らかにした。

紙製の領収書が必要な場合は、フォーマットを各自印刷することができ、その法的効力、基本的用途、基本的使用規定は、税務機関が監督管理する普通領収書と同様となる。

北京、上海、浙江、深圳の4地域では2015年8月1日よりすでに同システムの試行が始まっている。

このニュースを聞いて、中国の領収証システムを調べて驚いた。
中国では官製の詳細な領収証がないと、支払を拒否され、支払った場合はその分を費用として損金算入ができず、仕入れ税額控除も出来ないという。

中国の増値税率は、一般が17%だが、穀物・食用油・ガス・図書・水道などが13%の軽減税率となっている。

日本では領収書は企業や個人が自由に作成しており、領収書の様式も特に定められていない。
これに対して、中国では領収書は税務当局の完全な管理管轄下に置かれている。

中国での領収書は「発票 (FaPiao)」と呼ばれ、「発票」は税務当局が印刷発行し、納税者が税務当局から購入する。
作成発行、取得、保管、未使用部分の税務当局への返却に至るまでのすべての行為に対して、税務当局が管理と監督の権限を持っている。

「発票」には2種類ある。
 一般の購入の領収証である「増値税普通発票」
 仕入れ税額控除を受けるための「増値税専用発票」

「増値税専用発票」には発行企業の情報や取引内容、金額に加え、受取企業の企業名、納税者番号、住所、銀行口座番号などの情報が記載されている。

これらがないと、損金算入も仕入れ税額控除もできない。(企業所得税法では、発票がなければ原価または費用を計上することができないと規定されている。)
このため、買い手は
発票の記載内容に問題がないことを確認した後、支払いを行う。発票がない場合や発票の記載内容に問題がある場合は支払わない。

「発票」は発行が厳密に管理されており、普通発票は税務局官製発票を申請購入 する。

増値税専用発票は税務局官製の偽造防止システムで発行する必要がある。

専用PCはICチップを搭載したカード(金税カード)を差し込んで使うようになっており、発票印刷の内容が全て記録される。
金税カードは企業によって発行できる増値税専用発票に制限があり、制限枚数に達したら税務局へ持って行って、カード内のデータを提出し、枚数をリセットしてもらう必要があ る。

なお、自身で発票を発行できない小規模納税人の税率は売上の3%で、仕入れ控除をすることができない。

日本でも、売上高が5,000万円以下の事業者に適用される簡易課税制度があり、小売業の場合、みなし仕入率を80%として消費税を計算する。
中国での税率3%は、一般消費税率17%の場合、みなし仕入率は82%となり、日本とほぼ同じとなる。

2015年81日より北京、上海、浙江省、深圳の4つの省・市 において増値税発票システムのグレードアップ版電子発票の試験導入が開始された。

電子発票への切替で、次のようなメリットが生じる。

 ・コスト削減

「電子発票」は発票のペーパレス化に繋がり、企業が発票作成機による発票の印刷、保管、郵送等に投じてきた業務費用の支出が一切不要となり、コストの大規模削減が可能になる。

中国全土で1年間に「発票」を約3.6億通使用し、関連の年間合計コストは約20億円に達するという。

 ・「発票」の照会、保管の負担が大幅に縮小

取引発生と同時に電子発票を取得することができるようになる。
これまでのように発票を印刷して紙媒体で保存しておく必要はなく、必要な際に電子発票をダウンロードし紙に印刷するという対応で済む。

税務当局としても、納税者の情報の照会、統計、分析を効率よく実施できるようになり 、発票の虚偽発行の摘発及び抑止につながる。

今回、このシステムを全国的に展開する。


12月8日付けのWall Street Journal が、DowとDuPont が合併交渉中で、数日後にも発表されると伝え、各紙が報道している。

記事は下記の通り。

Dow Chemical and DuPont Are in Advanced Talks to Merge

Dow Chemical Co. and DuPont Co. are in advanced talks to merge, in a tie-up that would cap off the strongest year ever for takeovers and come amid a surge of deal activity in the agriculture industry.

The chemical giants, which have a market capitalization of about $60 billion each, could announce a merger in coming days, people familiar with the matter said. It would be followed by a three-way breakup of the combined company, they said, a common approach to mergers and acquisitions of late.

独禁法を考え、3事業に分割する。
農業関連、高機能製品、化学品の3事業ではないかと言われている。

Dow's Chief Executive Andrew Liveris is expected to be executive chairman of the new company, with DuPont Chief Executive Edward Breen keeping that title. A deal has not yet been inked and the talks could fall apart, the people cautioned.

Should it come to fruition, a combination of the companies would be one of the biggest in a year marked by big deals. So far, companies have struck some $4.35 trillion of takeovers in 2015, in recent days eclipsing 2007 as the top year on record for deals, according to Dealogic.

It would create a giant with more than $90 billion in combined sales and strong positions in everything from plastics to industrial chemicals and agriculture.

Under pressure from shareholders to slim down and focus on faster-growing units, both companies have been restructuring their businesses by shedding some of the products that made them famous.


住友化学は12月1日、子会社 CO2 M-Tech が開発中のCO2分離膜の実証試験で良好な結果が得られたため、2017 年初頭を目途に、国内化学メーカーの工場内にCO2分離膜の商業設備を導入する検討を進めると発表した。

CO2を分離する技術は、主に水素製造や天然ガス精製過程において CO2を除去するために使われているが、現在実用化されている「化学吸収法」や「物理吸収法」などのCO2分離技術は、多くの熱エネルギーと大型の設備が必要で、低コスト化が大きな課題となっている。

化学吸収法では、CO2を溶剤に吸収させ、CO2を吸収した溶剤をスチームで加熱することでCO2を分解・除去し、再び溶剤として回収している。このため、大量のスチームが必要で、エネルギー多消費型かつ巨大な脱炭酸塔が必要となる。

住友化学がルネッサンス・エナジー・リサーチとの合弁会社で開発中の膜分離法によるCO2分離技術は、既存の化学吸収法に比べプロセスがシンプルでエネルギー消費を大幅に削減でき、かつ、設備の大きさを2 分の1 以下に小型化できる点が特徴。


大阪ガスで触媒の研究を行っていた岡田治氏が2004年に大阪ガスを退職して設立したルネッサンス・エナジー・リサーチは、
世界最高水準の分離能力を有するCO2選択透過膜の開発に成功した。

2009/12/17 CO2選択透過膜の開発

住友化学、住友商事およびルネッサンス・エナジー・リサーチは2012年10月、「膜分離法」による CO2 分離事業への参入に向け、合弁会社を設立することで合意、2013年6月に CO2 M-Tech ㈱ を設立した。

当初の出資比率は、住友化学 47.5%、住友商事 47.5%、ルネッサンス 5%であったが、
現在は、住友化学 97%、ルネッサンス 3%となっている。

CO2 M-Tech 設立後、2014 年5 月から住友化学愛媛工場で、また2015 年9 月からは国内化学メーカーの工場内にパイロット設備を導入し、実際のプラント稼働環境下での実証試験を行い、分離膜のCO2透過性能や耐久性などを確認してきた。

水素製造や天然ガス採掘時のガスが本来有している数百kPa~数MPaの圧力を利用するだけでCO2を分離することが可能であり、分離に当たってスチーム等は全く使用せず、新たなエネルギーを殆ど必要としないため、大きな省エネ効果を達成できる。

例えば、一般的な規模の水素製造プラント(水素製造量:4万t/年)にこの膜を導入した場合、スチーム使用量を大幅にカットでき、石油換算で年間1,600万リットルもの節減が可能となる。

さらに、促進輸送機構を応用しているため、膜分離で最も重要な性能であるCO2分離スピード並びにCO2選択性は世界最高水準であり、この性能はシステムのコンパクトさを実現すると共に、プラントへの柔軟な対応をも可能にしている。

本システムを水素製造プラントに導入する場合のイメージは下記の通りで、化学吸収設備の前工程にCO2分離膜設備を設置し、CO2を50%程度事前に除去することで、スチームコストを削減する。

今後、水素エネルギーの利用拡大に伴い、需要の拡大が見込まれており、さらに、温室効果ガス削減の有望技術であるCCS(CO2を回収し地中に貯留)においても、コストの過半を占めるCO2の分離・回収コストを抑える観点から、「膜分離法」の実用化が期待されている。

EUの欧州委員会は12月3日、米ファストフード大手McDonald'sに対するルクセンブルクの法人税の課税措置が同社を優遇し、EU法が禁じる違法な助成金に当たる疑いがあるとして、本格調査を始めたと発表した。

EU当局によると、McDonald'sは2009年から、欧州とロシアのフランチャイジングが支払った使用料にかかる法人税を、ルクセンブルクや米国で納めなかった疑いが持たれている。

EUは、ルクセンブルクが、米国で課税対象となっていないと知りながら、利益にかかる税金を免除したとしている。

EUによると、ルクセンブルクはMcDonald'sの欧州フランチャイジング部門の収益にかかる税金を、利益が米国で課税対象であるとして、免除した。
ルクセンブルクはさらに、収益が米国の課税対象と証明する必要もないと取り決めたという。

Margrethe Vestager欧州委員(競争政策担当)は「McDonald's が欧州のロイヤリティについて、ルクセンブルグでも米国でも税金を支払わない点について、EUの加盟国助成金制度に基づき、注意深くチェックする。各国間で結ばれる二重課税協定は、二重課税の回避が目的で、二重非課税(double non-taxation)の正当化を狙ったものではない」と述べた。

同社の欧州のフランチャイジングは大きな利益(2013年で250百万ユーロ以上)を上げながら、ルクセンブルグ当局の2009年の2つのルーリングで、ルクセンブルグでは法人税を払っていない。

この利益は、欧州とロシアのレストランがMcDonald'sの商標や付随サービスを使う権利から生じる。
ルクセンブルグの本社は戦略的意思決定に責任を持つ。スイスの支店は限定した活動をしており、米国の支店は実際の活動はしていない。
得られたロイヤリティは米国支店に送金される。

2009年以降、ルクセンブルグでも米国でも税金を支払っていないが、下記の仕組みによる。

1) ルクセンブルグ当局が2009年3月に与えた最初のルーリング:

McDonald's の欧州フランチャジングは、利益が米国で課税されるため、ルクセンブルグで法人税を納めなくてもよい。
この点はルクセンブルグと米国の二重課税防止協定に基づく。

ルーリングでは、McDonald'sは毎年、スイスを通じて米国に移されたロイヤリティが、米国とスイスで課税されることの証拠の提出が義務付けられる。

2)しかし、このルーリングの前提とは異なり、利益は米国で課税されていない。

ルクセンブルグの税法の解釈では、McDonald'sの欧州フランチャイジングは米国に納税実体(taxable presence="permanent establishment")を持つが、米国法では納税実体を持たない。
このため、McDonald'sは最初のルーリングで義務付けられた米国での納税の証拠を提出できない。

3)このため、McDonald'sはこれを明らかにした上で、それにも関わらずルクセンブルグで課税されるべきでないと主張し、第二のルーリングを要請した。

McDonald'sの主張は、米国税法の観点では、十分な活動がないため米国に納税実体がないこととなるが、ルクセンブルグ法によれば、米国支店は十分な活動をしているため、納税実体があるというもの。

ルクセンブルグは2009年9月に第二のルーリングを出し、McDonald'sは所得が米国で課税されるという証拠を出す必要はないとした。
McDonald'sの欧州フランチャイジングは、米国で課税されないことが確認されたにも関わらず、ルクセンブルグでも課税されないことが確認された。

EUによると、第二のルーリングで、McDonald'sの欧州フランチャイジングの利益のほとんど全てが課税を免れる。
スイス支店の
限定した活動による利益分はスイスで納税している。


今後、EUは上記の懸念が正しいかどうか、特に第二のルーリングがEUの加盟国助成金制度に反する処理かどうかを調査する。
ルクセンブルグ当局がMcDonald'sに対して、同様の状況にある他の企業には与えられない恩典を与えたかどうかを調べる。

ルクセンブルク財務省は、McDonald'sに特別な課税措置や便宜を与えたことはないと説明、調査に全面協力する方針も示した。

Mcdonald'sが税優遇によって違法に利益を得ていたと欧州委が判断した場合、同社には巨額の追徴課税が命じられる可能性がある。

欧州委員会は2015年10月21日、Starbucksがオランダ政府から、Fiat Finance and Tradeがルクセンブルグ政府から、それぞれEUでは違法となる優遇税制を受けていたと判断した。

税務当局のTax ruling (税務裁定) そのものは合法であるが、これらについては、一部の企業だけを支援して公正な競争を妨げる違法な「国家補助」とみなした。

その上で、オランダ政府とルクセンブルク政府にStarbucksとFiat から本来の税金との差額を追徴するよう命じた。

2015/10/27 欧州委員会、StarbucksとFiatの税優遇を違法と認定、追加徴税を指示




東芝の原子力事業

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不適切会計問題で揺れる東芝に、新たに原子力事業での赤字隠蔽疑惑が発生した。

11月12日の日経ビジネスオンラインが、「スクープ 東芝、米原発赤字も隠蔽 内部資料で判明した米ウエスチングハウスの巨額減損」という記事を掲載した。

東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)で、計1600億円の巨額減損が発生していたことが日経ビジネスの取材で分かった。WHの単体決算は2012年度と2013年度に赤字に陥っていたが、本誌が指摘するまで東芝は事実を開示しなかった

東芝は、原子力事業全体では減損処理が不要なため、WHの減損処理を発表しなかったと弁明した。

しかし、東京証券取引所などを傘下に持つ日本取引所グループは、子会社の損失を開示しなかった東芝に対し、「あるべき姿を完全に逸脱した」と厳しく批判、東京証券取引所の規則に違反していたとして、「改めて強い指導をしていく」と厳しい姿勢で臨むことを強調した。

東芝は11月27日、米原発子会社ウエスチングハウス(WH)の減損問題について記者会見した。
新たな事業計画も発表したが、2029年度までの15年間で、新たに「64基」の原発建設を受注するのがベースとなっている。

説明資料 http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/pr/pdf/tpr20151127.pdf

会見で、東芝は先ず、「不十分な開示姿勢を深くおわびしたい」と陳謝した。

ウエスチングハウスについては、下記の点が明らかになった。

1)2012年度と2013年度で減損処理を実施。

2012年度 新規建設で677百万ドル、オートメーションで249百万ドル、合計926百万ドル
2013年度 新規建設で394百万ドル
合計    1,320百万ドル

上記の通り、WHではプロダクトライン別に簿価と時価を比較し、赤字のラインについて減損処理をしている。

それに対し、東芝では、グラフの右端の通り、WH全体として簿価と時価を比較、両年度とも時価が上回ったため、減損処理をしなかったとしている。

2)2006年のウエスチングハウス買収以降、WHが290百万ドルの累積営業赤字に陥っていること。
   (上記の減損損失 1,320百万ドルを含む)

東芝では、2014年10月の「減損テスト」の結果、東芝が連結で抱える「のれん」については減損が不要であると説明した。

これには、15年間で64基の原発を受注することが前提となっている。(東芝の減損テストでは保守的に46基で計算)

「福島以降、プラントの建設というのは確かにスピードダウンしたが、中国の最近の13次5カ年計画などでも言われたように、今後世界的に原子炉がどんどん建っていくという状況に変わってきている。全世界で約400基の新設計画があり、上記のように非常に多くの機会がある。」

「きれいな空気に対する需要というのは世界中に高まっている。これに対して、世界各国の首脳が集まって新しい施策を築いていこうという機運が高まっている。
そして、これを達成するためには原子力なしには立ちいかないということも自明の理。これから世界中で原子力に対する需要、これを求める声というのは高まっている。
ホワイトハウスのスタッフの会議でも、この気候変動の問題に立ち向かっていくには原子力がどうしても必要だ、そしてこれまで以上の規模で原子力が必要だという声が多く聞かれた。」

これをもとに、原子力事業の利益が2018年度以降に急増するとし、減損テストにパスしたとしている。


しかし、12月2日付けの日経オンラインは「スクープ 東芝、原発幹部さえ疑う『64基計画』」を掲載している。

東芝の経営幹部でやり取りされたメールには、「監査人の印象も悪くなるので、のれん減損テスト事業計画上の64基を今から減らす必要はないが、どこかの時点で冷静になって リーズナブルなレベルに見直す必要がある」 というのがあるという。


住友化学は11月30日、韓国S-OIL社にPPとプロピレンオキサイド(PO )の製造技術のライセンス契約をしたと発表した。

S-OILは、韓国の蔚山市温山に日量66 .9万バレルの石油精製コンビナートを有し、燃料、潤滑油および石油化学製品を主に生産している。

S-Oilは2011年に温山に1系列で世界最大のパラキシレン工場を完成させた。商業生産は2011年6月に開始している。

2011/10/28 韓国S-Oil、1系列で世界最大のパラキシレン工場の竣工式を開催

同社は、本年9月に重油を活用する日量7.6 万バレル規模の流動接触分解設備を導入したが、高品質ガソリンとプロピレン誘導品の生産設備への投資を決定した。
新たに生産される誘導品は、住友化学が独自に開発した技術を採用する年産40 .5万トンのPP 、年産30 万トンのPO などで、2018 年前半に完工の予定。

住友化学のPP 製造技術は、千葉工場における運転実績に加えて、シンガポールなどの関係会社を含めた海外の企業にもライセンス供与し、多くのプラントで長期にわたる運転安定性を示し、高品質な製品を製造してきた実績がある。

PO 製造技術は、同社が世界で初めて工業化に成功したクメンを循環利用するクメン法PO単産プロセス
(プロピレンとクメンからPOを生産し、副生するクミルアルコールはクメンにして再度利用)
で、併産物がなく 、独自に開発した高性能なエポキシ化触媒と組み合わることにより、高収率で運転安定性に優れていることが特徴で、千葉工場やサウジのPetro Rabigh の運転実績がある。

住友化学が韓国企業に最新技術を供与したのは、S-Oil がSaudi Aramco の子会社であるためと思われる。

サウジのPetro Rabigh は住友化学とSaudi Aramco のJVであり、Petro Rabigh の第一期では、単産プロセスのPO 20万トン、PP 70万トンを生産している。

ーーー

S-Oil は1976年にKorea-Iran Petroleum Co., Ltd. として設立された。
第一次石油ショックで原油の安定購入が韓国の第一の課題であった時に、双龍セメントがイラン国営石油会社(NIOC)との50/50 JV設立に成功した。

1978年のイラン革命で、イラン側が撤退し、1980年に双龍精油と改称した。
1987年に上場した。

1991年にAramco Overseas Companyが3億9500百万ドルを出資して35%を取得、20年間の原油供給を約束した。

1999年12月には、双龍セメントの持株 28.4%を自社株として買収し、双龍グループから法的に独立し、2000年3月に双龍精油からS-Oil に改称した。

S-Oil は双龍セメントから買い取って金庫株としていた28.4% を、2007年に韓国航空など韓進グループに売却した。

2007/3/9 韓国の石油精製 S-Oil に韓進グループが参加

Aramco Overseasは2014年、韓進グループからS-Oil の28.4%を19.5億ドルで買収し、持株比率を現在の63.4%にした。

政府・与党は、来年度の税制改正で焦点の1つである法人税の実効税率の引き下げについて、来年度に29.97%まで引き下げる方向で最終調整に入った。

平成27年度税制改正では従来の34.62%を本年度に32.11%、来年度に31.33%にすることが決まっているが、安倍首相は来年度をこれ以下に引き下げ幅を拡大し、早期に20%台とすることに意欲を示している。

安倍晋三首相は2014年6月、法人実効税率を来年度から数年間で20%台に引き下げる方針を表明し、「日本の法人税は成長志向型に変わる。雇用を確保し、国民生活の向上につなげていきたい」と語った。

アベノミクスの第3の矢となる成長戦略の柱として6月24日の臨時閣議で策定した「骨太の方針」に 、「2015年度から引き下げ、数年で20%台を目指す」と明記した。

2014/6/26 法人税率の引き下げ 

12月5日付けの日経によると、与党は2018年度に更に29.74%まで引き下げる方針を固めた。財源を確保できる目途が立ったという。

実効税率の計算は下記の通り。

法人には法人税と住民税と事業税(事業税+地方法人特別税)がかかるが、事業税は翌期に損金算入できるため、これを折り込んで実質の税率を計算する。
計算は、(法人税率+住民税率+事業税率) / (1+事業税率)となる。

付記 12月16日に発表された税制改正大綱で2016年以降の計算が明らかになった。

法人税率  2016-17年は23.4%、2018年は23.2%に下げる。
事業税(地方特別税を含む)は、2015年の6.0%を3.6%に下げる。
これにより、実効税率は29.97%、29.74%となる。   

 

平成27年度税制改正では下記の通りとなっている。

現行 2015年度 2016年度
法人税率 25.5% 23.9% 23.9%
法人事業税所得割(地方特別税含む) 7.2% 6.0% 4.8%
実効税率 34.62% 32.11% 31.33%

原資の中心は欠損金繰越控除の見直しである。

現行 2015年度~ 2017年度~
控除限度(大法人) 所得の80% 所得の65% 所得の50%
繰越期間 9年 9年 10年
2017/4以降の欠損

今回の29.97%への引き下げについては、政府・与党は、赤字の企業にも事業規模に応じて課税する外形標準課税の拡大で、代わりの財源の確保にめどが立ったとしている。

法人事業税で、利益にかかわらず事業規模(資本金や従業員数)に応じて課す外形標準課税の割合を全体の3/8 から5/8に拡大し、約8000億円の財源を確保する。

更に29.74%への引き下げの原資として、企業の設備投資を促す目的で設けた設備投資減税を2016年度末に廃止し、年間1300億円を確保する。

他方、欠損金繰越控除は2017年度以降控除限度を所得の50%とする予定を1年延ばす。これにより、2017年度は財源は差し引きゼロとなるため、29.97%に据え置く。

2017年4月には消費税率の引き上げがあることを配慮するもの。

ーーー

赤字企業への課税強化は、これまで経済界は強く反対してきた。

11月26日の官民対話で、経団連の榊原会長が、今後3年間で設備投資を約10兆円増やすこと、春季労使交渉で今年を上回る水準を期待するとしたうえで、「来年度の実効税率20%台実現をお願いしたい」と述べたのに対し、首相は「産業界も法人税改革の財源確保に協力して欲しい」と要請した。

他に財源がないことから、経団連は赤字企業への課税強化を受け入れた。

ーーー

実効税率引き下げは、日本での投資促進が主目的だが、大部分の中小企業は赤字のため、実効税率引き下げは投資促進のインセンティブにならない。

自民党税制調査会は、2016年度からの3年間、中小企業が新たに購入する機械装置の固定資産税を50%軽減することを決めた。

対象は、資本金1億円以下の中小企業が、新たに導入する160万円以上の機械装置で、生産性やエネルギー効率改善が条件。
2014年度で対象は1兆460億円。

3年間にわたり、年1.4%の固定資産税を50%軽減する。

 

エーザイは11月27日、中国統括会社の「衛材(中国)投資有限公司が、中国のジェネリック医薬品会社「遼寧天医生物製薬」の全株式を、株主の「遼寧龍源教育産業投資管理集団」の董事長兼総裁などから取得する契約を締結したと発表した。

買収額は500百万元(約96億円)で、移管条件が整い次第発効する。

本契約の発効後、「遼寧天医生物製薬」の社名を「衛材(遼寧)製薬」に変更し、「衛材(中国)投資有限公司」の100%子会社とする。

天医は医薬品や医薬品原薬の製造・販売を行う中国のジェネリック医薬品会社で、消炎・鎮痛、認知症、胃炎、整腸、糖尿病、慢性動脈閉塞症などの治療剤や漢方薬、および免疫調整剤など幅広い疾患領域に約90品目の製造承認を有している。
また、錠剤、カプセル、顆粒剤、液剤や凍結乾燥注射剤といった様々な剤型に対応可能な中国GMPに適合する最新の生産ラインと技術を保有している。

所在場所の本渓国家高新技術産業開発区は、瀋陽薬科大学を含む6つの薬学系大学と、約100社の製薬企業からなる製薬クラスターとして知られる。

本買収により、エーザイは中国において、現在展開している新薬を中心とした事業に加えて、ジェネリック医薬品事業に参入する。

高品質なジェネリック医薬品を安定的に供給することにより、中国におけるより広範な医療ニーズの充足が可能となる。

また、蘇州/上海に次ぐビジネス拠点として本渓市に進出することにより、薬都のアカデミアとの連携も強化し、更なる成長機会を模索する。

ーーー

中国の医薬品市場は、米国に次ぐ世界2位の市場規模を有し、2014年の市場規模は1,093億ドル、前年比+12%となっている。

中国医薬品市場では、金額ベースでその約8割をジェネリック医薬品が占めている。
政府はジェネリック医薬品の品質向上をめざしており、ブランド品と同等の高品質なジェネリック医薬品の安定供給が強く求められている。
今後、医療制度改革の進展に伴い、高質な医療へのニーズは、大都市のみならず内陸部や地方の中小都市にも拡大していくことが予測される。

ーーー

エーザイの中国ビジネスは、25年にわたる歴史を有している。

1991年に東北製薬集団との合弁会社「瀋陽衛材製薬有限公司」を設立した。

下記の蘇州工場の本格稼働で「瀋陽衛材製薬」の業務終了した。

1996年には製造、販売機能を持つ100%子会社の「衛材(蘇州)製薬」(現 「衛材(中国)薬業」を江蘇省蘇州市シンガポール− 蘇州工業園区に設立した。

2013年11月には注射剤生産施設が完成した。

さらに、2010年には導入品の直接輸入などのため「衛材(蘇州)貿易有限公司」を設立した。

2014年12月には、上記2社を傘下におさめる中国統括会社として、「衛材(中国)投資有限公司」を新たに設立、これにより、中国国内における迅速な意思決定を可能とする、自律的なマネジメント体制を確立した。

JXホールディングスと東燃ゼネラル石油は12月3日、両社の経営統合を目指すことで基本合意書を締結したと発表した。
今後、相互信頼と対等での精神に則り、統合に向けた協議を行い、2016年8月を目途に最終契約を締結する予定。

東燃ゼネラル石油はExxonMobilの子会社であったが、ExxonMobilグループから離脱している。

2012/1/30 ExxonMobilが東燃ゼネラル石油から実質撤退

2013/9/23 東燃ゼネラル、三井石油を買収へ

ExxonMobil は2014年時点では持株比率14.15% で、三井物産の9.99%を超えて筆頭株主であったが、その後売却を進め、2015年11月時点では保有比率は4.40%に下がり、筆頭株主は三井物産となった。

経営統合の方法

JX日鉱日石エネルギー(2016年1月1日にJXエネルギーに改称)を吸収合併存続会社とし、JXホールディングスの普通株式を対価とする三角合併とする。

統合比率は両社協議のうえ、決定する。

統合効果

統合後5年以内に、年度当たり1000億円以上の収益改善効果を達成することを目標とする。

以下の事項について、具体的な計画を策定する。

・ 製油所、油槽所などの統廃合
・ 川崎地区の製造拠点の一体運営
・ 組織統廃合、効率化
・ 精製・製造、需給、物流および販売の最適化の実行

「JXは効率の悪い自社の製油所を減らし、東燃ゼネラル側には閉鎖を求めない方向で提案している」とされる。

両社の事業は下記の通り。

JXホールディングス 東燃ゼネラル石油
石油製品 製油所
原油処理能力
2015/3
(千BD)
仙台 145 川崎 258
鹿島(鹿島石油) 252 千葉 152
根岸 268 156
大阪
大阪国際石油精製
115 和歌山 132
水島 380
麻里布 127
大分 136
合計 1,423 合計 698
油槽所数 48箇所 9箇所
SS数 10,655箇所 3,520箇所
石油化学
(年産能力)
パラキシレン 312万トン 50万トン
ベンゼン 194万トン 39万トン
エチレン 44万トン 54万トン
プロピレン 99万トン 75万トン
上流 生産量 11.5万BD
埋蔵量 846百万boe

他に JX金属の上流(銅鉱山)、中流(銅精錬)、下流(電材加工事業など)がある。

石油化学については、JXは新日本石油化学(浮島にエチレン)、東燃ゼネラルは東燃化学(川崎にエチレン)を持つ。

12月3日の会見で、「石化の効率を考えると、やはり両社とも川崎地区に拠点があるため、ナフサなど原料を相互融通できる体制を取れば、効率化の余地は極めて高い」としている。

問題は独禁法である。

統合すると、ガソリン販売量の国内シェアは5割を超えるため、公取委の判断が焦点となる。

「シェア50%は公取委で慎重な審査が行われる水準だ」とする意見が強いが、出光/昭和シェルもシェアは3割を超えるため「対抗馬が誕生するため審査をパスしやすくなる」との意見もある。

ーーー

出光興産と昭和シェルは11月12日、対等の精神に基づく両社の経営統合に関する基本合意書を締結したと発表した。

2016/11/16 出光興産と昭和シェル、経営統合に関する基本合意書締結 


JXホールディングスと東燃ゼネラル石油の経営統合が実現すれば日本の石油精製会社は実質3社体制となる。

国内石油元売り大手の昨年度の売上高は下記の通り。

会社名 売上高
JX + 東燃ゼネラル 14兆3335億円
JXホールディングス 10兆8824億円
出光興産 + 昭和シェル石油 7兆6277億円
出光興産 4兆6297億円
東燃ゼネラル石油 3兆4510億円
コスモ石油 3兆0358億円
昭和シェル石油 2兆9979億円

2010年4月20日のメキシコ湾原油流出事故に関する裁判で、裁判所は11月30日、Anadarko Petroleum Corp. に対し、1億5950万ドルの罰金の支払を命じた。

New Orleansの連邦地裁のCarl Barbier 判事は、Anadarkoは原油流出には責任はないが、鉱区の25%の所有で「汚染企業」の一部になると述べた。

この事件の関係者は以下の通り。

1)鉱区Mississippi Canyon 252の権益保有者

 BP Exploration and Production Inc.  65.0% (Operator
 Anadarko  25.0%
 MOEX (三井石油開発)  10.0%

2)Deepwater Horizon rig 関連
  ・設計:
R&B Falcon
  ・建設:韓国の現代重工業
  ・所有:
TransoceanR&B Falconを買収)
  ・リース:
BP Exploration and Production

  ・コントラクター 
    
Transocean:掘削作業
    
Halliburton:セメント作業(井戸内、または井戸と鉄管との間のセメント作業)
    
M-I SWACOSchlumbergerSmith InternationalJV):Drilling Fluid (mud)サービス

  ・Blow Out Preventor(BOP)の製造:Cameron International Corporation

Clean Water Act では、罰金の最高額は流出バレル当たり1,100ドル、35.1億ドルになるが、これを流出バレル当たり50ドルとした。
罰金159.5百万ドルは、Anadarkoに過失がないことと、流出被害の深刻さのバランスを取ったものとしている。

AnadarkoはBPと共に最高裁に無罪を訴えたが、2015年6月に拒絶されている。
同社に対しては、判事は「Ownerとしての責任のみ」としており、政府は2014年12月に10億ドルを求めていた。

Anadarkoは今回の判決に対し、政府の主張(10億ドル)よりはるかに少ないことは喜ばしいとしつつ、操業に関係していないものに、管理不能の事態について責任を取らすのはClean Water Act の趣旨に反すると信じるとし、控訴のオプションも考えると述べた。

今回の判決で、事故の処理の大部分が解決したこととなる。

事故に関しては、政府に対して下記の支払が既に決定している。

相手先 内容 金額
BP 刑事訴訟(11名死亡に関する11の違法行為とClean Water Act、渡り鳥条約、議会妨害に関する違法行為の合計14の罪状)
 

40億ドル

2012/11/17 BP、Deepwater Horizon事故に関する米政府の全ての刑事訴訟で和解
三井石油開発 Clean Water Act に基づく罰金 70百万ドル
環境保全のための土地買収 20百万ドル
2012/2/20 メキシコ湾原油流出事故で三井石油開発が米政府と和解


別途、三井石油開発は事故損失負担でBPに10億6500万ドルを支払っている。
2011/5/20  BPと三井石油開発、メキシコ湾原油流出事故損失負担で和解 

Transocean 刑事訴訟(問題あるのに調査せず) 4億ドル
Clean Water Act 10億ドル
2013/1/8 Transocean 、Deepwater Horizon 事故で罰金14億ドル支払い 


2015/10/12 BP、
メキシコ湾原油流出事故の民事訴訟で米政府等と和解  

Tevaの高品質なジェネリック医薬品と武田薬品の「長期収載品」と呼ばれる特許切れの医療用医薬品を日本で販売する。

日本で長年にわたり研究開発型の製薬企業として日本をリードしてきた武田薬品と、世界トップ10に入る製薬企業でジェネリック医薬品におけるグローバルリーダーであるTevaが戦略的に提携することにより、日本の患者と医療関係者の幅広いニーズ、およびますます高まるジェネリック医薬品の重要性に対応していくとしている。

新会社は、2016年4月以降の発足を予定しており、出資比率はTevaが51%、武田が49%で、独立した会社として運営される。
基本合意契約に関するその他の詳細は開示していない。

政府は、同じ効能で価格が半額からそれ以下の後発薬の普及を加速させる方針を決定、厚労省は後発薬を2017年度末までに60%とする普及目標を1年前倒しし、2020年度末までに80%以上にすると表明した。

武田の
国内医療用医薬品の売上高に占める特許切れ薬の比率は約45%とされる。後発薬が売り出されると販売が減少する。このため今後は長期収載品が売りにくくなることから、武田は特許が切れた薬の販売を本体から切りはなし、新薬の開発や販売に集中し収益力を高める。

Tevaは日本にテバ製薬を持っているが、新JVと連携するのか、統合するのかなどは未定。

ーーー

Tevaの日本での活動の歴史は下記の通り。

Teva Pharmaceutical は2008年9月、日本で興和との折半出資会社興和テバを設立して、日本市場に本格参入すると発表した。
両社の研究開発、製造、物流、マーケティングの力を合わせ、日本市場で高品質のジェネリック医薬品の供給を行なうとし、
2009年から営業を開始した。

2008/9/26 ジェネリック医薬品の世界最大手、日本進出 

興和テバは2009年12月、滋賀県甲賀市甲賀町の医療用医薬品のジェネリック専業メーカーの大正薬品工業とジェネリック医薬品で戦略的提携を行うことで合意、興和テバは大正薬品工業の株式の73.64%を取得した。

その後、2010年2月に第三者割当増資を引き受け、持株比率を88.28%に引き上げた。

2010年7月には大正薬品の営業部門を興和テバに統合、8月には完全子会社化し、10月には研究開発部門も統合している。

Teva は2011年5月にジェネリック医薬品で国内3位の大洋薬品工業の株式の過半数を取得する合意書を締結、創業家などから株式の57%を取得する契約を結び、更に残る株式全部について買収するオファを行い、2011年7月に大洋薬品の全株式を934 百万ドルで取得した。

2011/5/12 イスラエルの後発薬最大手テバ、日米で買収 

この結果、合弁の興和テバと100%子会社の大洋薬品工業が共存することになったが、Teva は2011年9月に興和テバの興和持分を1億5000万ドルで買い取り、興和テバを100%子会社とした。

2011/10/3 興和とイスラエルのTeva Pharmaceutical 、合弁事業を解消 

Tevaは、大洋薬品と興和テバを2012年4月に統合し、「テバ製薬」とした。

同社の業績は非開示だが、国内後発薬では日医工(売上高1270億円)、沢井製薬(1054億円)、東和薬品(714億円)に次ぎ、4位とみられる。


Tevaは海外でも買収を続けている。

2010年3月、ドイツ2位で世界6位の後発医薬品メーカー、Ratiopharmを36億2500万ユーロで買収すると発表。

2010/3/25 Teva Pharmaceutical、独Ratiopharmを買収

2011年5月、Cephalon68億ドルで買収することで合意

2011/5/12 イスラエルの後発薬最大手テバ、日米で買収 

2015年4月、米国のジェネリック医薬品大手のMylan に買収提案を行ったが、これは拒否された。

2015/4/24 イスラエルのTeva Pharmaceuticals、同業のMylanに買収提案

2015年7月、米医薬大手Allergan plc から後発薬事業を買収することで最終合意した。

2015/7/29 後発薬最大手のTeva、米 医薬大手の Allerganから後発薬事業買収

2015年10月、メキシコ製薬大手のRIMSA を買収すると発表した。買収にはラテンアメリカと欧州の医薬品の資産やパテントを含む。

2015/10/8 イスラエルのTeva Pharmaceutical、メキシコ製薬大手のRIMSAを買収

Allerganの後発薬事業の 合併により、Tevaの売り上げ規模は2014年の203億ドルから2016年に約260億ドルに上る見通しで、後発薬市場で他社を引き離し、首位を固める。
グラフにはRIMSAの買収は含んでいない。


国際通貨基金(IMF)は11月13日、外貨不足に陥った加盟国を支援する特別引き出し権(SDR)の構成通貨に中国の人民元の採用が妥当とする見解をまとめた。

2015/11/17 人民元、SDRの構成通貨に


これを受け、IMFは11月30日の理事会で、SDRに人民元を採用することを正式に決定した。

実際の組み入れは2016年10月となる。

これまでの米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの4通貨に中国の人民元が加わり、5通貨になる。

新しい構成は下記のとおりで、人民元は日本円を上回る。

2006-2010 2011-2015 2016-
SDRの構成 比率 SDRの構成 比率 比率
米ドル 0.632 US $ 44% 0.660 US$ 41.9% 41.73%
ユーロ 0.410 Euro 34% 0.423 Euro 37.4% 30.93%
人民元 --- --- --- --- 10.92%
日本円 18.4 日本円 11% 12.1 日本円 9.4% 8.33%
英ポンド 0.0903ポンド 11% 0.1110ポンド 11.3% 8.09%

2016年10月以降のSDRの通貨別構成は、上記の新比率と2016年7-9月の平均の為替レートを使い、2016年9月30日のSDRの米ドルでの価値が新旧で同じになるよう、決定される。

SDRの米ドルでの価値は、下記のように、毎日、ロンドン市場の正午の為替相場を基に IMFのウェブサイトに掲載される。

2011-2015

November 13, 2015

 構成通貨  比率  レート 米ドル換算
0.660 米ドル   41.9%   1.00 0.660000
0.423 Euro    37.4%   1.079 0.456417
12.1日本円    9.4%    122.58 0.098711

0.1110 英ポンド   

11.3%   1.5221 0.168953
  1 SDR =          1.384081

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