2013年12月アーカイブ

 

イラクで2つの石油化学計画が検討されている。
一つはShellの計画で、もう一つは韓国のHanwha Chemicalによるものである。

1)Shell

Shellは2012年4月にイラクでの石化コンプレックス建設に関するFS実施の覚書を締結した。
2013年11月12日にShellのCEOのPeter VoserがBaghdadでイラク首相と会談した。
近く、石化計画実施の覚書が締結されるとみられている。

構想では南部イラクに110億ドルを投じて石化コンプレックスを建設する。
Nebras計画
(アラビア語で "beacon of light")と呼ばれ、エタンクラッキングでエチレンを製造する。

ーーー

ShellはイラクでMajnoon油田の開発を行っている。

イラクの石油第二次入札で落札、2010年1月にShell(60%)とPetronas(40%)が20年間の契約を締結した。
国営石油会社Missan Oil が開発に加わり、Shell がオペレーターとなっている。

Shellはまた、三菱商事と組んで、イラク南部での油田ガス回収事業を行っている。

イラク内閣は2010年6月に計画を承認した。
Basra Gas Companyを設立、イラクが51%出資し、シェルが44%、三菱商事が5%出資した。

所要資金は120億ドル(将来170億ドルまで増える可能性あり)で、イラク南部の4つの巨大油田ー RumailaZubairWest Qurna Phase 1Majnoon油田ーでそのまま燃やされている付随ガスを回収、当初はイラクの電力不足解消のため発電に使用、将来は液化設備をつくり、最大日量6億立方フィートの輸出を行う。

2010/7/6 シェルと三菱商事、イラク南部で油田ガス回収事業

2)Hanwha Chemical

韓国のHanwha Chemicalは12月19日、イラク産業省次官との間で、40億ドルを投資し、イラク南部にエチレン生産設備や石油化学製品生産工場などを建設する計画の合弁事業意向書を締結した。

今後、イラク政府と具体的に事業性を検討する。

低コストの原料をほかに先駆けて確保し、原価競争力を得ようという戦略。

ーーー

イラン・イラク戦争(1980-88)前にはイラクには2つの石油化学計画があった。

Petrochemical-1 (PC-1)、PC-2と呼ばれ、いずれも国営石油化学企業 State Enterprise for Petrochemicalsが所有、運営するものであった。

PC-1はペルシャ湾近くのKhor Al-Zubair(Basrahの南方)にあり、1970年代後半にLummus と Thyssen Rheinstahが建設した。
PC-2はバグダッド南部のMusayibにあり、イラン・イラク戦争で建設が中断、
1988年の戦争終結で建設を再開した。

1991年にイラクはクウエートに侵攻して湾岸戦争を起こした。PC-1、PC-2 ともに爆撃を受け、大きな被害を受けた。
PC-2は2003年のイラク戦争の後、停止したままとなっている。

現在、PC-1はBasrah petrochemical complex と呼ばれ、State Company For Petrochemical Industries(SCPI)が運営している。
実際の稼働状況は不明だが、公称能力は以下の通り。

Plant Licensor 能力 千トン
エチレン Lummus 132
HDPE Phillips 30
LDPE Equistar 60
VCM Stuffer 66
PVC Stuffer 60
液塩/苛性ソーダ Oxytch/Zarmba 42/84


原料はRumaila油田からパイプラインで受け入れる。
LDPEの農業用フィルムも生産している。






東芝はこのたび、スペイン大手電力会社Iberdrola S.A.から、英原子力発電事業会社NewGeneration(NuGen)の株式50%を取得することで合意した。Iberdrolaが23日に発表した。取得価格は8500万ポンド(約140億円) 。


NuGen は仏エネルギー大手GDF Suez とIberdrola の50/50JVで、英中部Sellafieldで合計出力360万キロワットの原発建設を予定している。Iberdrola はスコットランドのScottish Powerを所有する。

2010年11月にGDF Suez、Iberdrola、Scottish and Southern Energy が夫々37.5%、37.5%、25%出資のJVを設立したが、2011年9月にScottish and Southern が撤退し、両社の50/50JVとなった。

しかし、Iberdrola が2012年に、事業再編と債務削減を進めるためにNuGenの保有株を売却する意向を明らかにしたことで、プロジェクトは頓挫していた。

東芝は子会社Westinghouse Electric の原発設備をNuGen に納入することを狙い、同社への出資を検討していた。

原発設備を納入した後に経営権を売却することを想定しているとされている。

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日立製作所は2012年10月30日、英国で原子力発電所の建設を計画している原発事業会社Horizon Nuclear Power の全株式を、同社株主のドイツのエネルギー会社 No.1のE.ON及びNo.2のRWEから6億7000万ポンド(約850億円)で買収する契約を締結した。

Horizon
が保有する北ウエールズのAnglesey島のWylfaとSouth GloucestershireのOldburyの2カ所で、1,300メガワット級の原子力発電設備をそれぞれ2~3基建設する予定で、日立が世界で唯一運転実績を持つ第三世代原子炉である改良型沸騰水型原子炉(ABWR)技術を用いる。

2012/11/1  日立製作所、英の原発会社買収

ーーー

英国では19基の原発が稼働しているが、英国政府は2009年11月に原発拡大策を発表した。
10か所に原発を新設し、2025年までに全電力の25%を原発で賄う計画(当時は全電力の13%)。

  稼働中 廃止 政府案
Berkeley    2基   
Bradwell    2基 
Calder Hall    4基   
Chapelcross    4基   
Dounreay DFR   2基   
Dungeness  2基   2基   
Hartlepool  2基   
Heysham  4基   
Hinkley Point  2基   2基 
Hunterston  2基   2基   
Oldbury  2基   
Sizewell  1基   2基 
Torness  2基     
Trawsfynydo    2基   
Windscale    1基   
Winfrith SGHWR    1基   
Wylfa  2基   
Braystones    
Sellafield    
Kirksanton    
合計  19基   26基   
 

しかし、福島事故で原発の安全確保のためのコストが見直された結果、2012年以降、ドイツ、英国の企業が原発計画から撤退した。

ドイツのE.ONとRWEは2009年にHorizon Nuclear Power を設立し、英国西部の2カ所に建設用地を購入、原子炉6基(発電容量計6ギガワット以上)の建設を計画していた。
2012年3月に
原発建設計画を断念し、共同出資会社を売却する方針を発表した。(→ 日立が買収)

下記のEDFのHinkley PointとSizewell の計画に英国のCentricaが2008年に20%の出資を決めたが、その後、福島事故による新しい安全対策などのさまざまな理由でコストが跳ね上がり、撤退を決めた。これにより英国企業は全て新規計画から撤退した。


英国政府はこのたび、原発推進のため自然エネルギーの普及に使われている「固定価格買取制度」を原発に導入した。

英国では、再生可能エネルギー、原子力、CCS付火力など低炭素電源へシフトする政策を掲げているが、現行の卸電力取引制度(BETTA)は、このような政策を前提に策定されたものではなく、強力な施策が導入されない限り、開発コストが高いこれら電源は市場から締め出されることになる。

そのため、英国政府は2011年7月、これらの電源の支援を目的とした電力市場改革(EMR: Electricity Market Reform)に着手した。
現行の卸電力取引制度の枠組みはそのまま残すものの、卸電力市場に低炭素電源を導入する強いインセンティブを組み込むべく、以下の4つの施策の導入を掲げている。
これらの制度は2013年以降、順次導入されることになっている。

CO2排出権価格の下限値の設定:火力発電事業者が購入しなければならない排出権の価格を一定以上に保つことで、低炭素電源を相対的に優位に立たせる制度
低炭素電源からの固定価格買取制度の導入:再生可能エネルギーの他、原子力やCCS付火力なども対象とする方針
新設火力のCO2排出基準の設定:石炭火力に対するCCS設置を実質義務化するもの。
キャパシティーペイメント制度の導入:再生可能エネルギーの大量導入によって、設備利用率の低下から投資不足が懸念される一般電源を確保する制度(設備に対する報酬制度)
   
  http://www.jepic.or.jp/data/ele/ele_05.html

ーーー

フランスのEDF と英国政府は2013年10月、2基の原発リアクターの建設で合意した。
英国での原発新設は1995年完成したSizewell B 原発以来となる。2023年の運転開始を目指す。

総額160億英ポンド(うち建設費は140億英ポンド)を投じて、Hinkley Pointに欧州加圧水型原子炉(EPR) 2基(総出力320万kW)を建設する。
これに続いて、Sizewell に2基のEPRの建設を進める。
同型のものを建設することで、設計、購入、建設における経費節減を図る。("series benefit")


運営体制としては、機器メーカーのAREVA、提携している中国の中国広核集団(CGN:旧称中国広東核電集団)と核工業集団公司 (CNNC) に加え、他社の参加を交渉している。

EDF Group 45-50%
AREVA 10%
CGN & CNNC 30-40%
その他(15%までの参加を認める)


広核集団はこれを海外原発事業への進出の足掛かりにしようとしている。
同社は
Horizon 買収にも名乗りを上げた。
英国政府は安全保障上、懸念を示しており、Horizon では
少数株主持ち分しか取得できないと主張し、最終的には日立製作所が取得した。

英国政府とEDFは今回、原子力発電での電力の固定価格買取価格(35年間)について、下記の通り合意した。

Sizewell での建設を決める場合 £89.50/MWh(約14.1円/kWh)
Hinkley Point単独の場合        £92.50/MWh(約14.6円/kWh)

 これは現在の卸価格の約2倍になる。

英国の自然エネルギーの固定費買取価格は以下の通り。(いずれも 2014年)

・陸上風力   £100/MWh
・洋上風力    £155/MWh
・潮力・波浪   £305/MWh 
・バイオマス   £105/MWh
・太陽光   £125/MWh

原発に固定費買取価格制度を適用することに対する反対は強い。

反原発団体 Stop Hinkley は、「原発の固定価格は、現在の市場価格の約2倍と高い。原発にこの制度を導入するのは、事実上の補助金にあたる」と言う。

Hinkley原発での固定価格は、ほかの自然エネルギーより安いが、買い取り期間が通常15~20年程度の自然エネルギーに比べて、35年とかなり長い のも問題とされる。

これが、競争を阻害する「国家による補助」を禁じるEUの法律に違反しないか、調査が進められる。

これらの批判に対しては、「世界的なエネルギー需要の高まりで化石燃料が高騰するので、今は市場価格の2倍でも将来的には元が取れる」、「原発は60年使うからその6割を保証するだけで、自然エネルギーも運転期間25年に対し15年だから、変わりない」との反論がなされている。

 

英国の電力価格は、2005年を100として、2012年までに1.7倍、2000年と比較すると2倍以上に高騰しているという。 今後、どこまで上がるのだろうか。

ーーー

米国では、シェールガスの生産増加の影響で天然ガス価格が低くとどまり、発電コストの競争力が低下したことや安全性や信頼性向上のために多額の費用がかかることなどを理由に、既存の原発を停止したり、新設を中止するケースが出ている。(他の問題も絡むが。)

2013/9/2 米・電力大手Entergy、Vermont Yankee原発の廃炉を決定


英国での今回の原発電力の買取価格の高さは驚きである。

まともに対策を取れば、こんな価格でないとやれないのであろうか。




欧州司法裁判所は12月19日、欧州のガス絶縁開閉装置(GIS : gas insulated switchgear)市場における欧州競争法違反による制裁金に関し、三菱電機と東芝、及びSiemens(ドイツ) が行っていた上訴を却下した。

これにより、Siemensについては2007年1月の欧州委員会の制裁金が確定した。

三菱電機と東芝については、2011年7月に欧州一般裁判所が計算誤りとして制裁金を無効にしたため、欧州委員会が2012年6月に新しい制裁金の支払いを命じ、両社がこれを不満として欧州一般裁判所に訴えており、これの判決待ちとなっている。

この判決により、日本企業が欧州市場で販売をしない約束をすれば、カルテルに参加していると判断され、制裁金を命じられることとなった。

経緯は以下の通り。

(単位:千ユーロ) 2007/1
 制裁金
2011/7
一般裁判所
  2012/6 
 制裁金
2013/12
司法裁判所
制裁金
Siemens(ドイツ)   396,563 却下 上訴   却下 2007/1分
確定
Siemens(オーストリア)    22,050          
ABB(スイス)       0          
三菱電機 2002/10  JV
 
TMT & D
  118,575

取り消し
(違反有・
 計算誤り)

上訴 74,817

連帯
  4,650

却下 2012/6分
一般裁判所
審議中
東芝    90,900 56,800
Alstom(フランス)    11,475          
Areva/Alstom(フランス) 53,550          
日立製作所    51,750 却下        
Schneider(フランス)    8,100          
富士電機システムズ    3,750 情報提供
減額→3,550
       
日本AEパワーシステムズ
(富士電機システムズ、
日立、明電舎のJV)
   1,350          
合計   750,713          
   
1) 2007/1 欧州委、制裁金支払い命令
   
  欧州委員会は2007年1月24日、電力用ガス絶縁開閉装置で国際カルテルを結んでいたとして日欧10社に7億5千万ユーロの制裁金支払いを命じた。


少なくとも1988
からカルテルを結んでいたとされる。各社が連絡をとりあって割当数量比率で受注できるよう調整し、最低価格を決めていた。また、日本企業は欧州で販売せず、欧州企業は日本で販売しないことも決めていた。

日本企業は欧州での販売実績はほとんどないが、上記の取り決めに従って欧州で応札せず、直接的に欧州での競争を制限したため制裁金が課せられた。

  2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金

なお、日本とEUには「独占禁止協力協定」があり、違反行為の調査などを相互に通報する規定が設けられているが、欧州委が通報を忘れたため、公取委は制裁金の発表でカルテルの存在を把握したが、既に時効となっていた。

  2008/4/19 電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルの日本での扱い

   
2) 欧州一般裁判所(一審)への提訴
   
  日本企業各社は欧州競争法に違反する行為を行っていないとして提訴。
  Siemensは、「制裁金の額は無茶苦茶で、どうしてこんな額になるのか理解できない」として提訴した。
   
3) 2011/7 欧州一般裁判所
   
  EUの一般裁判所(General Court:第一審裁判所を改称)は2011年7月、東芝と三菱電機への制裁金を無効とし、富士電機への制裁金を減額した。
日立製作所の提訴は却下した。
Siemensの訴えも却下した。

  http://europa.eu/rapid/press-release_CJE-11-70_en.htm

先ず、欧州で販売していない日本企業に制裁金が課せられたことについては、欧州市場は欧州企業に、日本市場は日本企業とという(書類にはない)合意があり、日本側は欧州市場への参入を行わず、欧州側は欧州市場割当の結果を日本側に連絡していること、欧州側は日本市場への不参入を約束するとともに、一部の海外市場に参入しないことを約束していることから、カルテルに参加していると認めた。

制裁金の計算に際し、欧州委員会が三菱電機と東芝には2001年の売上高を使用し、欧州企業には2003年の売上高を使ったことを問題とし、平等な扱いでないとみなし、無効とした。
(東芝と三菱電機は2002年10月に両社の電力系統・変電事業を統合して50/50の合弁会社
TMT & Dを設立したが、カルテルにはJVではなく、東芝と三菱電機として参加していたため、欧州委は、JV設立前の両社の売上高を採用した)

富士グループについては、情報提供による協力があったのに評価しなかったとして、2002年10月以前の分の制裁金を240万ユーロから220万ユーロに減額した。

Siemensの訴えも却下した。

  2011/7/15 欧州一般裁判所、東芝・三菱電機への電力用ガス絶縁開閉装置カルテル制裁金を取り消し

   
4) 司法裁判所への上訴
   
  東芝と三菱電機及びSiemensは判決を不服として司法裁判所に上訴した。
   
5) 2012/6 欧州委員会
   
  欧州委員会は東芝と三菱電機に対し、制裁金の計算をやり直し、新しい制裁金の支払いを命じた。一部は連帯での支払いとなる。
   
6) 一般裁判所への提訴
   
  東芝と三菱電機は新しい制裁金を不満とし、一般裁判所に提訴した。現在、審議中。
   
7) 2013/12 司法裁判所判決
 

 

 


2012年6月に三菱化学が鹿島事業所の基礎石油化学事業の構造改革を発表したが、本年に入り、住友化学が2月に千葉のエチレン停止を発表、8月には旭化成ケミカルズと三菱化学が水島地区の両社のエチレンセンターの集約について合意したと発表、日本の石油化学業界もようやく動き出した。

1) 三菱化学(鹿島) 第1エチレン及び第1ベンゼンの停止(2014年5月の定期修理時に実施)

三菱化学は2012年6月11日、鹿島事業所の基礎石油化学事業の構造改革を発表した。

生産能力(非定修年、千トン/年)
    現 在 停止後 増減
エチレン 1E 390 0 -390
2E 490 540 +50
880 540 -340
ベンゼン 1Bz 90 0 -90
2Bz 180 180 0
270 180 -90


なお、日本ポリエチレンと日本ポリプロは、川崎(旧 東燃化学)の1系列ずつを2014年4月に停止すると発表した。

日本ポリエチレン HDPE 5.2万トン/年
日本ポリプロ    PP      8.9万トン/年

2012/6/27 三菱化学、鹿島事業所における基礎石油化学事業の構造改革

2) 住友化学(千葉) エチレン停止と京葉エチレン改組(2015年9月)、日本オキシラン停止(2015年5月)

住友化学は2月1日、国内石油化学事業の拠点の千葉工場の競争力強化のため、2015年9月(次の定修時期 )までに、エチレン製造設備を停止すると発表した。

    現状
  千トン
2015年
  千トン
 

住友化学

千葉

415 0 合計能力607→( 384+α)
京葉エチレン 住友化学 千葉 192 384+α
三井化学 192 0 三井離脱
丸善石化 384 384-α  

丸善石油化学

千葉

525 525  

丸善石化は、エチレンの引き取り枠については「当社分(50%)が減り、住友化学の引き取り枠(25%)が増えることで、より稼働率が改善する体制を目指すのが基本姿勢」との認識を示した。

2013/2/4 住友化学、エチレン国内生産から撤退 

住友化学は、2015年9月のエチレン停止までに千葉の不採算事業の縮小も進めるとしたが、11月27日に、日本オキシランのSM(年産425千トン)、PO(181千トン)、PG(100千トン)を2015年5月をめどに停止すると発表した。

2013/11/29  住友化学、エチレン停止に合わせ日本オキシランのSM、PO、PGを2015年に停止 

3) 水島のエチレン集約

旭化成ケミカルズと三菱化学は8月2日、西日本エチレン有限責任事業組合として運営している水島地区の両社のエチレンセンター(いずれもエチレン能力 50万トン/年:非定期修理年)の集約について合意したと発表した。

2014年2月に正式発表する予定で、2016年春からスタートする。

いずれかのエチレンを止めるが、誘導品については両社ともかなりの処理をすると思われる。

2013/8/5   水島地区エチレンセンター集約へ 

以上の結果、エチレンとスチレンモノマーの状況は以下の通りとなる。

 エチレン 

工場別能力一覧表 定修スキップ年   単位:千トン/年
会社名 工場 2001年 2012/12/末 変更後  

三菱化学

鹿島1

410 390 0 2014年停止

鹿島2

491 490 540  
四日市 270 - - 2001/1 停止
水島 496 494 494
 -250

西日本エチレン
  有限責任事業組合

2016年春
 いずれかを全停止
 

(1,667) (1,374) (1,034)
旭化成 水島 504 504 504
*   -250
三井化学 500 500 500  
千葉 612 612 612

千葉ケミカル製造
有限責任事業組合
 

(京葉) (192) (192) (  0)
(1,304) (1,304) (1,112)
出光興産 千葉 413 413 413
徳山 498 688 688  
(911) (1,101) (1,101)  

住友化学

千葉

415 415 0 2015年停止
(京葉) (192) (192) (384)  
(再計) (607) (607) (384)  

丸善石油化学

千葉

525 525 525  
(京葉) (384) (384) (384)
(再計) (909) (909) (909)

京葉エチレン

丸善石化

千葉

384 384 384  
住友化学 192 192 384
三井離脱
三井化学 192 192 0
合計 (768) (768) (768)  

東燃化学

川崎

515 540 540 Exxon 少数株主に
日本ユニカー100%化

JX日鉱日石エネルギー

川崎

443 443 443  

東ソー

四日市

527 527 527  

昭和電工

大分

635 691 691  

合計

8,022 8,000 6,745  


西日本エチレン有限責任事業組合の集約は、どちらを止めるか未定のため、三菱化学・旭化成各250千トンの減で表示した。

 SM 

2011年3月に三菱化学(鹿島)、2012年に電気化学(千葉)が停止、千葉スチレンモノマーが改組している。

会社名 工場 2012/12   変更後 備考

旭化成

水島 

678

678

2004/2 330千トンプラント稼動
2007 125千トン停止

出光興産

千葉

210

210

徳山

340

340

合計

(550)

(550)

(新日鐵化学)

大分

0 0

2011/8 SM事業をNSスチレンモノマーに移管

NSスチレンモノマー 大分 422 422 新日鉄化学51%/昭和電工49%

(電気化学工業)

千葉

0

0

2012 停止 240千トン

千葉スチレンモノマー

千葉

270

270

電気化学60%/住友化学40%
2012/4 住友化学離脱

日本オキシラン

千葉

412

 0

住友化学60%/ライオンデル・ケミカル40%
PO併産  2015年停止

太陽石油化学

宇部

335

335

04/1/1 三井化学から譲受け

(三菱化学)

鹿島

0

0

2011/3 停止 371,000トン

合計

 2,667

 2,255

 


ーーー

エチレン能力は現状の800万トンが675万トンに、SMは一時の340万トンが225万トンに減少する。

これはグラフで見られるように、エチレン製品(エチレン換算)とSMの内輸込みの数量である。

輸出は多くの場合、操業度維持のための赤字輸出である。また、サウジなどでは今後、高加価値製品の生産が始まり、米国では安価なシェールガスを利用した生産も始まるため、日本からの輸出は減少する。

日本の石油化学が生き残るためには更なる設備廃棄が必要であるが、出来るであろうか。


水島の三菱化学と旭化成の西日本エチレン有限責任事業組合はエチレンプラントの集約を決めるが、千葉の三井化学と出光興産の千葉ケミカル製造有限責任事業組合の場合は、エチレン集約を行わないと思われる。
三井化学が京葉エチレンから脱退し、これまでの引取義務 192千トンを住友化学に譲り、実能力が減るためである。

あまり報じられていないが、週間ダイヤモンド(2013年2月14日)によると、三井化学は住友化学と丸善石油化学に対し、 千葉地区の4社(3社プラス出光興産)のエチレンの大統合の提案をしていたという。最新鋭プラントである京葉エチレンを停止するのが条件で、これが通らなければ京葉エチレンから離脱するとした。

住友化学と丸善石油化学がこれを断り、現在の形になったとしている。

その他の企業についてもなかなか難しい。

これまで何度も述べてきたが、日本で設備処理が柔軟に出来ないのは雇用問題があるからである。
日本では他国のように人員整理が簡単には出来ない。

東洋酸素事件の東京高裁判決(1979)では整理解雇の要件は以下の通り。
  ・事業部門を閉鎖することが企業の合理的運営上やむを得ない場合であること
  ・従業員を他の事業部門の同一又は類似職種に充当する余地がないこと
  ・具体的な解雇対象者の選定が客観的、合理的な基準に基づくものであること
  その後の判例では「労働組合との協議」が条件に加えられた。

具体的には、このままでは倒産もありうるというような状況でないと、解雇が認められない。

新規事業で多人数を使う事業は少なく、停止するエチレンと誘導品の人員を、他の業務に回すのは容易ではない。

過去にエチレンを止めたのは三菱化学の四日市だけであり、今回も 他部門にひろく展開する三菱化学と住友化学及び旭化成である。

住友化学の場合、千葉工場の従業員約1000人のうちの4分の1程度を他工場に配置転換するが、他社ではなかなか難しい。
石油会社の場合は、本業の石油精製設備のスクラップも進める必要があり、こちらでの人員吸収は難しい。


住友化学の場合は、今後、バルク製品はサウジで展開し、シンガポールを高付加価値製品の供給拠点とし、千葉工場はマザー工場として、生産技術・製品・ノウハウの発信拠点としても活用していく という絵を描いており、不採算の誘導品は大胆に停止する。

三菱化学も同様に、不採算の誘導品の処理を進め、高付加価値化を進めている。

他社も早く手を打たないと、ジリ貧になる可能性がある。




第二次安倍内閣がスタートして1年が経過した。
2013年3月には黒田東彦氏が日銀総裁に就任、デフレ経済を克服するために2%のインフレターゲットを設定し、無制限の量的緩和を行っている。

アベノミクスは「三本の矢」を基本方針としている。
  (1) 大胆な金融政策
 (2) 機動的な財政政策
 (3) 成長戦略

安倍内閣の発足後、円は急落、現在は100円を越えている。

 

日銀の黒田東彦総裁は就任記者会見で、2%の物価上昇率目標の達成へ「量的、質的両面から大胆な金融緩和を進める」とし、目標の達成期限は「2年程度を念頭に置く 」とし、「達成まで、あらゆる手段を講じる」と強調した。
(この2%は食料とエネルギー価格を除くコアコアCPIであり、当然消費税アップの影響は除くと明言している。)

総合物価指数(2010年=100)は、昨年12月が99.3であったのが、本年10月には100.7になった。
生鮮食品を除いても(コアCPI)、99.4から100.7になっている。

 

付記 2013年11月はそれぞれ、100.8、100.7、98.7であった。

果たしてアベノミクスは成功し、2年後にデフレを脱却するであろうか。

私見ではアベノミクスは失敗である。以下に理由を述べる。

ーーー

アベノミクスの基本的な誤りは、安倍首相の「デフレは貨幣現象である」という考えである。

安倍首相は2013年2月7日の衆議院予算委員会で、民主党の前原誠司委員の「人口が減少するなかで、構造問題を解決しないとデフレは脱却できないのではないか」との質問に対し、「人口減少とデフレを結びつける考え方を私はとらない。デフレは貨幣現象であり、金融政策で変えられる。人口が減少している国はあるが、デフレになっている国はほとんどない」と答えた。

白川前総裁は2012年11月12日に「物価安定のもとでの持続的成長に向けて」という講演で、全く異なる意見を述べた。

日本でも、高齢化や女性の社会進出、価値観の多様化などによって、新しいタイプの需要が潜在的にはどんどん生まれていると考えられます。例えば、医療・福祉産業では、高齢化により潜在需要が急拡大しているにもかかわらず、各種の規制や現場の人手不足などから、需要に見合うサービスが提供できていないとの声が多く聞かれています。また最近注目が集まっている高齢者の消費についても、所得、健康状態、嗜好の違いなどから若年層の消費よりも個別性が強く、供給者サイドの工夫如何でさらに拡大する余地があることが指摘されています。

いずれにせよ、こうした未充足の需要、すなわち成長分野における「供給不足」は、需給ギャップにカウントされていません。
本来「需給のミスマッチ」と認識すべき部分まで、「需要不足」という形で示されているということです。

持続的に需給ギャップを改善していくためには、潜在需要を顕在化させるように、経済の変化に合わせて供給構造を作り変えていくことが必要です。

2013/1/5 日銀総裁の変心?


アベノミクスは「三本の矢」を基本方針とするが、デフレは貨幣現象であり、金融政策で変えられる」との考えから(1)の「大胆な金融政策 」がメインである。
(2)の「機動的な財政政策」は当面の対策であり、(3)の「成長戦略」はデフレ対策とは別である。

6月5日に安倍首相は成長戦略の第3弾を発表し、以下の通り述べた。

規制改革こそ成長戦略の一丁目一番地です。時には国論を二分するようなこともあるでしょう。TPP交渉の参加を決定したときもそうでした。しかし、私は成長のために必要であれば、どのような岩盤にもひるむことなく、立ち向かっていく覚悟です。
本日、規制改革会議から答申を頂きました。その主な成果を紹介しましょう。
インターネットによる一般医薬品の販売を解禁します。ネットでの取引がこれだけ定着した時代で、対面でもネットでもとにかく消費者の安全性と利便性を高めるというアプローチが筋です。消費者の安全性を確保しつつ、しっかりしたルールの下で、全ての一般医薬品の販売を解禁致します。

実際には、「成長戦略の一丁目一番地」の岩盤規制の切り崩しは、利益団体と官僚の抵抗に会い、全く進まない。
TPPへの交渉参加や、コメの生産調整(減反)の廃止方針などを評価する声も聞かれるが、鳴り物入りで打ち出した「国家戦略特区」や医療分野など他の「岩盤規制」に切り込み不足であり、首相の指導力が見えない。
首相が明言した「インターネットによる一般医薬品の販売を解禁」も、条件付となった。

池田信夫ブログは「日本には超効率的な輸出産業と規制だらけの国内産業の二つの経済があるが、アベノミクスはその構造を変えないで格差を拡大しただけだ」としている。

日銀の黒田東彦総裁も11月21日の記者会見で、「なかんずく第3の矢といわれている成長戦略が非常に重要」と切り出し、「成長力を底上げするための成長戦略の実行を加速し、強化することが極めて重要だ」と訴えた。


以下に示すように、デフレは貨幣現象であり、金融政策で変えられる」というのは誤りである。
規制緩和による成長戦略がなければ、デフレは解消しない。

白川前総裁の言うように、「潜在需要を顕在化させるための供給構造の作り変え」が必要であり、そのためには、首相が前面にたって、利益団体と官僚組織に立ち向かい、規制緩和をすることが必要である。

安倍首相にその認識と対応する決意がないことがアベノミクスが失敗するとみる理由である。

以下は現状についての認識。

1) 為替レート

政府と日銀が、デフレ経済を克服するために2%のインフレターゲットを設定し、無制限の量的緩和 を行うと表明すれば、トレーダーが円を売るのは当然であり、円安はその結果である。

財界は円高を日本経済の六重苦(円高、高い法人税率、自由貿易協定への対応の遅れ、労働規制、環境規制、電力不足)の筆頭に挙げ、是正を要請していたが、現在の100円を超える水準は日本経済全体にとってはマイナスである。
(2013年1月の日経の景気討論会で東芝の岡村正相談役は、1ドル85~90円が望ましく、それ以上になると原料や電力料がアップし、大変であると述べた)

日本の10月の貿易統計によると、貿易収支は1兆907億円の赤字で、貿易赤字は16カ月連続で、1979年以降で最長を更新した。
輸入の方が輸出より多いため、円安は全体としては不利であり、特に家計にとっては (今後は消費税アップも加わり) 影響が大きい。

後述するが、総合物価指数はアップしているが、実態はエネルギー価格が円安でアップしているためである。

輸出産業にとっては円安は大きな恩恵であり、輸出製品の採算は向上している。
しかし、輸出数量は増えていない。赤字輸出が黒字になり、企業採算が向上しただけである。

円安を利用してドル建て価格を下げて輸出数量を増やし、生産増や投資に結びついて初めてデフレ解消に役立つが、そうはなっていない。
ほんの一部を除き、現在の輸出品には国際競争力がないためである。
化学製品の場合、円安が続いても、新規投資を行うことはない。

 

2) 金融緩和

毎日新聞の「安倍政権1年」で伊東光晴氏のインタビューが載っている。(2013年12月9日 夕刊)


現実はどうか。「マネタリーベース」を見ろと伊東さんは言う。
市中に流通するお金と、各銀行が日銀に開設する当座預金口座残高との合計がマネタリーベースだ。
日銀のデータでは、アベノミクスが始まった4月末のマネタリーベースは155兆円。このうち当座預金残高は66兆円、流通するお金は89兆円。
11月末はマネタリーベースは191兆円、当座預金残高は102兆円に膨らむ一方、流通するお金は89兆円と同じ。
つまりアベノミクスで市中に出たお金は、銀行に眠ったままなのだ。

「どうしてって? 当たり前でしょう。消費も企業活動も低調で、新たな融資先などあるはずがない。経済学の常識だよ」。怒声に近い。
「要するに安倍内閣はこの1年、何もしていないんだよ。国民の不安を高めただけ」。

ーーー

もともと、企業の内部留保は280兆円あるとされる。

金がないから投資しないのなら金融緩和が有効であるが、顕在化している需要が少ないために使えない金が豊富にあるのに金融緩和しても意味がない。

これを見ても、デフレは貨幣現象であり、金融政策で変えられる」というのは誤りである ことが分かる。

白川前総裁の言うように、潜在需要を顕在化させるように、経済の変化に合わせて供給構造を作り変えていくことが必要で、そのためには規制緩和が必要である。

3) 物価

総合物価指数(2010年=100)は、昨年12月が99.3であったのが、本年10月には100.7になった。
生鮮食品を除いても(コアCPI)、99.4から100.7になっている。

しかし、食料(酒類を除く)とエネルギーを除外したコアコアCPIは昨年12月が98.0であったのが、本年10月は98.8で、ほとんど変わっていない。

付記 2013年11月はそれぞれ、100.8、100.7、98.7であった。

総合物価指数の上昇のほとんどは円安によるエネルギー価格の上昇によるものである。
ほかには、消費増税の駆け込み需要などで需要が高まっている建材などが指数を押し上げた。

今後も消費増税の駆け込み需要は増えると思われるが、家電のエコポイント終了後の家電価格の大幅下落のように、デフレ脱却とは無関係である。

ーーー

なお、エネルギー価格の上昇には原発停止の影響も含まれる。

経産省は2013年4月に、原発停止の影響による燃料費増が、大半の原発が停止した2012年度が2010年度比で3.1兆円の増で、2013年度は3.8兆円に上るとの試算を発表した。(原発停止論に対する反論には必ず、この「3.8兆円の負担増」が使われている。)

これについて、河野太郎氏のブログ「ごまめの歯ぎしり」は、「経産省の嘘」(2013/11/20)で以下の通り述べている。

これ(2012年度の3.1兆円)は嘘だった。

経産省は、2008年度から2010年度の原子力発電電力量の平均2748億kWhから、泊3号機と大飯3、4号機の156億kWhを除いた電力量、2592億kWhを火力発電で代替したと仮定した。
その火力発電の内訳を石炭153億kWh、石油1206億kWh、LNG 1234億kWhとして経産省が計算したのが3.1兆円という数字だ。

しかし、実際には、節電や省エネルギーへの取り組みが進んだこともあり、火力発電の焚き増しは1827億kWhに過ぎず、経産省の計算の前提よりも現実は766億kWhも焚き増しは少なくて済んでいる。

現実の焚き増しによる燃料費の増加は2.1兆円にとどまる。(LNG価格上昇分を除くと、1.4~1.6兆円となる。)

経産省は、2013年度の原発停止による燃料費の焚き増しは3.8兆円にも上るとしているが、その数字も信憑性が低いと言わざるを得ない。

4) 株価

2012年11月からの株高は、円安と同時に始まったもので、ほとんど円ドル相場と連動しており、外人投資家によって日本株が買われているだけである。日本の経済が活況になることによって株価が上がっているのではない。

東京証券取引所によると、2012年11月第2週からの1年間で、外国人の累計買越額は12兆7500億円になった。
12カ月ベースでは過去最高で、この間に日経平均株価が7割近く上昇するけん引役になった。

投機マネーが日本に流れ込むか、それとも出ていくかだけの違いであり、円安になればアメリカのヘッジファンドが日本株を買いあさり、逆に円高になれば売りとばし、暴落することとなる。

5) 賃上げ

政府は産業界に賃上げを要請している。

しかし、 円安の恩恵を受けているのは極く一部であり、逆にデフレ解消が全く進まず、円安によるエネルギーや輸入原料価格アップを転嫁できず苦しむ中小企業は多い。

また、日本では、このままでは倒産もありうるというような状況でないと、解雇が認められないため、社内失業者が多い。
日本の労働者人口は6200万人で失業者は300万人程度、失業率は4%台とされるが、「社内失業者」が推定で他に600万人もいると言われている。

既存の事業の先行きが不明なまま、社内失業者を抱えたままで、賃上げを行うのは難しい。

規制緩和で供給構造を変え、低迷事業では解雇を認め、新しい分野に人を移すということをやらない限り、賃上げは難しいだろう。

ーーー

安倍首相が、デフレを解消し、アベノミクスを成功例として歴史に残したいならば、指導力を発揮して「抵抗勢力」を排除し、規制緩和を断行すべきである。

しばらくは選挙もないため、集票組織に気を使う必要もない。
また、経済立て直しに成功すれば、国民の支持は間違いなく、集票組織に頼る必要もなくなる。

「正当な理由」なしに規制緩和に反対する役人は昇進させなければよい。
「表情や口臭などを通じて患者の状況を把握」することが必要というのは、ネット販売否定の「正当な理由」ではない。


ーーー

日本の石油化学についても同じことが言える。

石油化学製品の需給構造は10年も前から変わりつつある。

日本の石油化学製品の需要は減少しつつあり、最大の需要国である中国は自給体制を整えた。
原料が安い中東諸国は供給能力を増やし、更に、日本企業の存在価値があった付加価値の高い製品の生産を始めた。
加えて、米国の安いシェールガスを利用し、多数の企業が米国での新規投資を開始している。

伊丹敬之教授は、70年代以降日本の産業に「エレクトロニクス化」が起こったように、化学以外の産業でも生産プロセスと製品の根幹部分に、化学反応や化学素材が必須の部分として使われるようになるとし、日本のイノベー ションと国際競争力を担うのは「化学」となるとする。
また、多くの産業の環境維持努力のプロセスも「産業の化学化」をもたらす。
産業の中心科学がエレクトロニクスを代表とする物理学から化学へとシフトする。

   http://www.csj.jp/kaimu/ronsetsu/ronsetsu0902.pdf

ただし、教授は、そのイノベーションを担うのが化学企業となるかどうかは別の問題であるとしている。

減少しつつある需要に対する供給構造を、新しい時代に対応した体制に早く変える必要がある。






Ineosは12月20日、労働組合との紛争が続いていたスコットランドのGrangemouthの石油精製・石油化学コンプレックスで、1350人の労働者のほとんど全てが新しい年金制度にサインし、新しい労働条件を受け入れたと発表した。


Ineosは、Grangemouth石化事業は毎月10百万ポンド(約15億円)以上の損失を出しており、年金の赤字は200百万ポンド(約310億円)に達するうえ、
North Sea pipelineで供給を受けている北海の石化原料が減少しており、このままでは原料が枯渇し、遅くとも2017年末までには閉鎖するしかないとし、Survival Plan を作成、労働組合と政府(英国及びスコットランド)に協力を求めた。

 1) 300百万ポンド(468億円)を投資して、事業継続に必須の米国からの輸入エタンのガスターミナルを建設する。

 2) その条件として、労働組合に対し、製油所も含めた人員整理と賃金・年金の改正を要求

同社によると、Grangemouth での基本給は年間 £40,000 ~£43,000、手当やボーナスを入れると £55,000となり、スコットランド平均 の £26,000の2倍以上としている。これに年金が65%上乗せされ、1人当たり労務コストは£90,000 にもなる。

 3) 同時にIneosはスコットランド政府と英国政府に対し、事業をサポートするため、
  合計150百万ポンドの補助金と借入保証を要求
 

これに対し、組合側はストライキで対抗した。

2013/10/10    Ineos、Grangemouthの石化コンプレックス閉鎖か?

工場は閉鎖の危機に陥ったが、政府の介入で組合側は年金改正提案を受け入れた。Ineos は従業員の現在の給与は変更なしとしている。

この結果、労務費の高騰が避けられるため、会社は3億ポンドの投資を実行する。

33千トンを保管できる欧州最大の液化エタンタンクを1.25億ポンドを投じて建設する。2016年に完成する。

米国からシェールガス原料のエタンガス(正確にはシェールガスと同時に出る天然ガス液からのエタン)を輸入する特製の船2艘のための新しいドック設備も建設する。

Ineosは2012年9月、欧州のエチレン原料用にエタンを輸入するため、米国の独立系石油・ガス業者のRange Resourcesとの間で、2015年からエタンを購入する契約を締結した。

老朽設備を廃棄する。

ベンゼンプラントは2014年に、エタンとナフサの両方を原料とする「G4」クラッカー(年産32万トン)とブタジエンは2015年後半に停止する。
エタンを原料とする
「KG」クラッカー
(年産70万トン)だけが残ることとなり、誘導品も縮小する。

英国政府はIneosに対し150百万ポンドの債務保証を行い、スコットランド政府も900万ポンド以上の支援を行う。


 

LG Chem は12月18日、3億ドルを投資し、2015年9月までに粗アクリル酸と高吸水性樹脂(SAP)を増設すると発表した。

同社の年産能力は、粗アクリル酸が8万トンから51万トンに、SAPが16万トンから36万トンに大きく増加する。

同社によれば、粗アクリル酸の市場は年率6%の伸びが期待され、2002年の440万トンが2017年には590万トンになると見ている。

ーーー

他方、韓国のSK Global Chemical も蔚山にアクリル酸工場を建設する計画を進めていると報じられている。

報道では、三菱化学がアクリル酸とアクリル酸エステルの生産技術ライセンスをSK Global Chemical に供与することで交渉しているとされる。

三菱化学は2013年3月29日、SAPを製造・販売するサンダイヤポリマーの持株全てを譲渡し、合弁事業を解消すると発表した。
持株40%のうち、30%を豊田通商に、10%を三洋化成に譲渡する。

2013/4/1 三菱化学、高吸水性樹脂事業から撤退 

これにより、三菱化学は特定企業に縛られずに海外でアクリル酸を事業展開できる体制を整えたこととなる。

SK Global Chemical の計画では、蔚山に年産16万トンのアクリル酸のプラントを建設する。
今後、SAPへの進出も検討する。SKでは中国や東南アジアや他の開発途上国でのSAPの需要が高い伸びを示していると述べている。

ーーー

2012年6月の日本触媒の会社説明会資料では、世界のアクリル酸の能力は500万トン超、SAPは200万トン超としているが、その後、各社の増強計画が続いている。

 


各社の増強計画の詳細については下記を参照。

アクリル酸  2011/4/6 日本触媒、インドネシアでアクリル酸と高吸水性樹脂を増強

SAP         2011/8/4 日本の各社、高吸水性樹脂を増強

 

なお、日本触媒・姫路製造所は2012年9月29日に爆発事故を起こしたが、2013年12月18日に対象168施設のすべてについて、一時使用停止命令が解除され、稼働を再開できることとなった。



大阪ガスは12月20日、減損損失290億円の計上を発表した。

同社が参加している米国テキサス州のPearsall Shale ガス・オイル開発プロジェクトが経済性に見合った油・ガスを取り出せず、現時点では生産性の大幅な改善が見込めないため。


大阪ガスは2012年6月22日、Pearsall Shale ガス・オイル開発プロジェクトに参画することを決め、Cabot Oil & Gas Corporationとの間で、権益35%を250百万米ドルで取得すること等を定めた権益売買契約を締結した。

所在地:米国テキサス州南部(Eagle Ford地区)
参加者:Cabot 65%(オペレーター)、大阪ガス 35%
開発対象:ピアソール層
主な産出資源:天然ガス、軽質原油、NGL

これまで累計で330億円を投じたが、地下3300mのやや深いエリアで地層に難があったため、「現在の掘削技術では経済性に見合った量を確保できない」という。ガス・原油の販売高は当初想定の14%程度にとどまっている。

今後も鉱区閉鎖せず、生産販売を続ける。


米国では、油・ガスが予定通り出た場合でも、天然ガス価格の値下がりで、破産法を申請した企業も出ている。

2013/4/5  米国のシェールガス開発会社が破産法申請


 

 

 


Braskemは12月17日、SolvayからSolvay Indupaの70.59%の持ち株を290百万米ドルで買収する契約を締結したと発表した。

政府の認可を得た後、TOBを行い、一般株主の残り持ち株を買い取り、100%子会社にする。

Solvay Indupa はブラジルのSanto Andre工場とアルゼンチンのBahia Blanca 工場で苛性ソーダとPVCの生産を行っている。

両工場の能力は、PVCが54万トン、苛性ソーダが35万トン。

 

付記

アルゼンチンの証券監督官は2014年1月3日、買取価格が公正な市場価格より低いとして、これを認めないと発表した。

他に、公正取引当局の審査もある。

ーーー

Solvayは2013年5月、INEOSとの間で欧州の塩ビ事業を統合し、50/50JVとする覚書に調印した。現在、独禁当局の審査中。
Solvayは将来、塩ビ事業から撤退することを決めている。

なお、Solvayの統合対象は欧州の塩ビ事業だけであり、アルゼンチンとブラジルに工場を持つ子会社のSolvay Indupa とタイのJVのVinythai はSolvayに残る。

2013/5/15 Solvay、欧州塩ビ事業をINEOSと統合、将来塩ビ事業から撤退 

Solvayは今回の売却発表にあたり、Solvay Indupaは同社にとって2012年第4四半期以降、売却対象資産("Asset held for sale")であったとしている。

ーーー

Solvay は2007年12月に、子会社のSolvay Indupa がブラジルのSanto Andre工場の拡張を行なうと発表した。
ビニルチェーンの拡大とともに、サトウキビ原料のエタノールからのエチレン製造プラントを含んでいる。

バイオエチレンの能力は6万トン。
Santo Andre工場の既存能力は苛性ソーダ10万トン、VCMとPVCが各24万トンだが、増設後は苛性ソーダ23.5万トン、エチレンが6万トン、VCMとPVCが各36万トンとなるとしていた。

2007/12/21 ソルベー、ブラジルでバイオベースのエチレン 製造

しかし、2011年の時点で、バイオエチレンは未だ検討中としており、完成したという発表や報道はない。
今回の発表をもとにすると、
Solvay Indupa の能力は下記の通り と思われる。(千トン)

  苛性ソーダ VCM PVC バイオ
エチレン
Santo Andre, Brazil
 
( ) は2007年の計画
100→170
         (235)
240→330
       (360)
240→330
         (360)

0→( 60)
Bahia Blanca, Argentina 180 210 210  
合計 280→350 450→540 450→540  


ブラジルでは三菱化学と日商岩井が参加するPVC/VCM JV のCPCとEDCメーカーのSalgemaが1996年末に合併しTrikemとなったが、2003年にBraskemが買収した。

CPC (PVC/VCM)
 (株主)
 Odebrecht    61.67%
    年金基金  5.00%
 三菱化学 19.04%
 日商岩井 14.29%
1996/末 合併でTrikem に

(株主)
 Odebrecht   69.47%
    年金基金 7.09%
 三菱化学 13.41%
 日商岩井 10.06%


 

2003 買収

Braskem  99.99%

  PVC       514千トン
  VCM  540千トン
  EDC   1,180千トン

Salgema (EDC)
 (株主)
 Odebrecht 95%

BraskemはPVCを戦略製品と見ており、2012年8月にはAlagoas州のMarechal Deodoroに10億レアル(4億3千万ドル)を投じて200千トン のVCM、PVCプラントを完成させた。(原料のEDCは現在余剰となり輸出している分を利用)
Solvay Indupaの子会社化により、Braskemの生産能力合計はPVCが125万トン、苛性ソーダが89万トンに達する。

PVC能力(千トン)
    既存 新設 合計
Argentina Solvay Indupa Bahia Blanca     210
Brazil Santo Andre     330
Trikem Alagoas 260 200 460
Camaçari 250   250
合計 510 200 1,250

 

 
 

韓国産業通商資源部は12月10日、第2次国家エネルギー基本計画案(2013~2035年)を発表した。
電力に占める原子力発電の比率を2035年に29%とした。

2012年末時点の韓国の電源比率は原子力が29.5%で、石炭が39%、LNGが22.4%、太陽光など再生可能エネルギーが2.1%であったが、トラブルや不祥事で停止が相次ぎ、現在の原発比率は26.4% となっている。

ーーー

李明博前大統領は2008年に、産業振興と原発推進を掲げ、2030年の原発比率を41%に高める目標を掲げた。

しかし、福島第一原発の事故や、韓国での原発関連の不祥事が続いたこともあって反原発の世論が強まった。

このため、原子力発電政策を推進から維持へと転換、エネルギー計画を検討する官民合同の作業部会は、2035年の全電源に占める原子力の比率を22~29%にすると提言した。

今回、この範囲(22~29%)内で最も高い数値に目標を設定した。

計画案によると、最終エネルギー需要は2011年から年平均 0.9%増加し、2035年には石油換算 2億5410万トンになる見通し。
このうち電力が占める比率は27.6%に抑える。電力需要の年平均増加率は2.5%。
この需要見通しに基づき温室効果ガスの削減やエネルギー安保などを総合的に考慮した結果、原発比率は29%水準を目標とすることにした。

原発業界によると、2035年に原発比率を29%とするには計40~42基の原発が必要。
現在の韓国の原発は、稼働中が23基(20,716千kw)、建設中が5基(6,600千kw)、計画が6基(7,600千kw)となっており、建設中・計画の11基以外にさらに6~8基の建設が必要となる。

発電単価の安い原発が、2030年の原発目標比率41%から引き下げられたことで、電気料金が値上げされる可能性も指摘されている。
原発の発電単価は1kw時当たり47.08ウォン(約 4.6円)と、石炭(65.10ウォン)やLNG(125.2ウォン)に比べはるかに安い。

韓国では電気代が安く、日本企業の韓国進出の理由のひとつになっている。
東レは炭素繊維工場建設について、「日本では電気料金がどれだけ上がるか分からないので、積極的に韓国への投資を増やすことにした」と説明した。

電気代の安い第一の理由は、発電単価の安い石炭と原子力で発電電力量の約8割をまかなっていることだが、これに加えて、韓国の電気料金は「政策的料金」という位置づけのもと、料金をコスト以下に設定している。

韓国政府は1960‐70年代から、企業の原価負担を減らして国内の物価を安定させ、輸出競争力を強化する目的で、産業用電気料金をほかの用途(家庭用・商業用)に比べ安くしてきた。

2011/9/28  韓国の電力事情

産業通商資源省は本年11月に、電気料金はガスや灯油などの価格と比べて安すぎるとの認識を表明、「持続的な調整が必要だ」との考えを示した。
同省は11月21日から、産業用電気料金は 6.4%、住宅用は 2.7%、平均電気料金は5.4%引き上げた。
2013年1月には政府は電気料金を4.0%引き上げており、電気料金の引き上げ率は10%に達する。

韓国では現在、原発の停止が相次いで停電の恐れが懸念されているが、今後は電力料金の大幅アップの可能性もある。

ーーー

現在の韓国の原発の状況は以下の通り。

各原発の詳細は 2013/5/31 韓国の原発10基が稼動中断、夏の電力不足憂慮 



 




BPは12月16日、Oman政府との間でBPをオペレーターとするKhazzan タイトサンドガス田開発に関するガス販売契約と改定生産物分与契約を締結した。

BPは2007年1月にOman政府との間で、OmanのBlock 61の Khazzan ガス田とMakaremガス田の探査、開発のための契約を締結し、開発を続けてきた。

Khazzan project の建設は2014年に始まり、2017年後半に最初のガスが期待される。

15年にわたり約300の井戸を掘削し、Block 61に建設する中央処理施設に500kmのパイプラインでつなぎ、日量10億立方フィートのガスと日量25千バレルのガスコンデンセートを生産する。

投資額は、これまでの支出を含め、約160億ドルに達する見込み。

今回、Oman国有の開発会社 Oman Oil Company Exploration & Production (OOCEP)が開発に参加し、40%の権益を取得した。

同時に、BP とOman Oil Company は、Duqm市の Special Economic Zoneに年産100万トンの酢酸プラントを建設するためのFSを共同で実施する覚書を締結した。
実現すれば、BPの新法のSaaBre™ processを使用する世界初のプラントとなる。

BPは2013年11月7日に酢酸とエチレンの新法開発を発表した。

SaaBre process は天然ガス等からの一酸化炭素と水素からの合成ガスを直接、酢酸に変換するもので、COの精製やメタノールを必要としない。

Hummingbird® はエタノールの脱水素でエチレンを製造する方法。

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タイトサンドガスは非在来型天然ガスの一つ。

Tight sand gas 在来型ガスが貯留している地層よりも稠密な砂岩層に貯留した天然ガス。
Coalbed methane 石炭が生成される過程で発生して、そのまま石炭層に滞留した天然ガス。
Shalegas タイトガスよりも浸透率が2桁以上低い(0.001ミリダルシー未満)泥岩の一種である頁岩(シェール)に含まれる天然ガス

 



富山県神通川流域で発生したカドミウム汚染による公害病・イタイイタイ病で、原因企業の三井金属鉱業と地元の被害者住民団体の神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会は12月17日、これまで賠償対象でなかった腎臓障害「カドミウム腎症」発症者の救済を盛り込んだ合意書を交わした。

三井金属鉱業発表:

今回の全面解決におきましては、
神通川流域における汚染田復元工事が完了したこと、
現在および将来の認定患者・要観察者に対する賠償を継続すること、
公害防止対策の継続により神通川の現在の水質レベルを維持していくこと、
認定患者・要観察者程度ではないもののカドミウムにより腎機能に一定の影響がある方を対象とした健康管理支援制度を当社が実施すること、
全面解決に当たり当社が被団協に解決金をお支払いすること
を確認しております。

二度とこのような問題を発生させないため、被団協の皆様との「緊張感ある信頼関係」をもって、公害防止対策のさらなる充実を図ってまいる所存であります。

神岡鉱山は2001年に亜鉛、鉛鉱石の採掘を中止、排水処理を徹底し、2012年3月にカドミウムで汚染された農地の復元が完了している。

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イタイイタイ病は、富山県の神通川流域で1911年ごろ(厚生省推定)から発生した。
神岡鉱山は1905年に亜鉛鉱石の採掘を始めている。

1961年6月に萩野昇医師らがカドミウム原因説を学会で発表した。
体のあちこちが骨折し、患者が「痛い、痛い」と泣き叫んだことから名付けられた。海外でもItai-itai diseaseと呼ばれる。

水俣病、新潟水俣病、四日市ぜんそくと並んで日本の四大公害病の一つ。

患者らは三井金属鉱業を相手取って訴訟を行った。

第一次訴訟では、患者と遺族が、加害責任を明らかにするため提訴し、患者1人につき400万円、死者1人につき500万円の慰謝料を求めた。

1971年6月30日に富山地裁は原告勝訴の判決を出した。

神岡鉱業所からの廃水が神通川上流の高原川に長期間、放流されたことによって起きた、イタイイタイ病の主因はカドミウム、被告側は鉱業法109条により損害賠償責任を有する とし、近年の死者には500万円、それ以前の死者および生存患者には400万円の支払いを命じた。
因果関係の立証には必ずしも科学的な証明が必要ないとした。

控訴審で名古屋高裁は1972年8月9日、慰謝料として死亡患者全員に1000万円、生存患者には800万円の支払いを命じた。

三井金属鉱業は上告を断念、原告勝訴が確定し、8月10日に、イタイイタイ病の賠償に関する誓約書、土壌汚染問題に関する誓約書、公害防止協定が締結された。

第2次~第7次訴訟は併合されたが、会社側は第1次訴訟と同じ損害賠償の支払を約束したため、原告側の取下げによって終結した。

三井金属鉱業は医療補償協定に基づき、下記の支払いを行う。

  賠償金 治療費・
入通院交通費
介護手当(寝たきり)
月額
温泉療養費
(年額)
認定患者 1000万円 全額 86千円(90千円) 90千円
要観察者(下記) 200万円 全額 56千円(90千円) 90千円

また、患者に認定されると公害医療手帳が支給され、国から医療費・障害補償費・療養手当などが給付される。
(1971年2月からは「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」が施行され、1974年9月からは「公害健康被害補償法」による医療救済等の措置が実施されている。 )

認定患者は2009年3月までに195名となっている。

しかし、問題が残った。

イタイイタイ病の患者の認定は環境省より委託されて富山県が行っているが、認定条件は環境庁の「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法によるイタイイタイ病の認定について」(1972年6月に制定) で下記の通り定められた。

次の1)~4)のすべての項目に該当する場合には、イタイイタイ病と認定する。    

 1)カドミウム濃厚汚染地に居住し、カドミウムに対する暴露歴があったこと。
 2)次のⅢおよびⅣの状態が先天性のものではなく、成年期以降に発現したこと。
 3)尿細管障害が認められること。
 4)X線検査あるいは骨生検によって骨粗鬆症を伴う骨軟化症の所見が認められること。

なお、4)に至らないが、将来イタイイタイ病に発展する可能性を否定できないので経過を観察する必要のあるものを「要観察者」とする。

体内に入ったカドミウムは、腎臓の尿細管機能を低下させ、骨の維持に必要なリン、カルシウムなどが尿から体外に排出される。

カドミウムの蓄積で尿細管障害が起きた状態が「カドミウム腎症」と呼ばれ、重度になると、骨軟化症を起こしイタイイタイ病に至る。

カドミウム腎症だが、骨軟化症に至らない場合は、日常生活に支障がなくただちに健康被害にあたるとは言えないとされ、認定されない。
(三井金属鉱業は上記の通り、要観察者に対しては補償を行っているが、それ以外の患者には行っていない。)

しかし、尿細管障害者の死亡危険度は、障害のない人たちに比べて高いとする研究結果もあ り、研究者からは「国の消極的な立場が救済を妨げてきた」との批判が繰り返されてきた。

ーーー

カドミウム腎症の救済を含めた全面解決に動き出したのは、汚染土壌の復元にめどがつき始めた2009年7月で、神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会から申し入れをしたという。交渉は12回に及んだ。

三井金属鉱業は、1975年以前に汚染地域に20年以上住んだことがある人のうち、腎機能悪化の指標であるたんぱく質「β 2ミクログロブリン」の尿中濃度が一定値以上の人を対象に、「健康管理支援」の名目で、1人あたり一時金60万円を支払う。

「補償」という言葉を避け、「健康管理支援」としたのは、国が健康被害として認めていない症状に補償するのは、株主への説明がつかない、との懸念。
腎臓に一定の影響が出た人が保健指導を受けたり、将来イタイイタイ病に発展したりしないよう、健康管理を支援するための一時金なら「株主への説明ができる」としている。

居住歴を満たすのは約8千人で、対象者は数百人程度が見込まれる。来年4月から申請を受け付ける。


 


米議会の民主党代表を務めるPatty Murray上院予算委員長と共和党代表のPaul Ryan下院予算委員長は12月10日民主・共和両党の超党派委員会が2015会計年度末(2015年9月末)までの予算案で合意したことを発表した。

財政支出の削減を求める野党・共和党への配慮から、富裕層への増税を避けつつ、連邦職員の退職手当の削減や空港利用料の増額案などを盛り込んだ。
一方、民主党の要求に応じ、3月に始まった歳出の強制削減措置で圧縮するはずだった630億ドル分を復活させた。

期間を2年としたのは、2014年の中間選挙の直前に政府機関が再び閉鎖される事態を避けるためで、選挙が終わるまで対立を棚上げする狙いとされる。

Murray委員長は「非常に長い間、妥協は禁句とされてきた」と述べ、3年間にわたる議会の対立がもたらした不透明感は「米経済の回復に深刻な打撃を与えた」と指摘した。
Ryan委員長は「分裂した政府では望むものを必ずしも得られない」と述べた上で、「合意は現状を明らかに改善するものだ。これにより1月の政府機関閉鎖が確実に回避される。10月に再び閉鎖されるシナリオもなくなる」とした。

これに基づき、下院では12月12日に2014会計年度(2013/10~2014/9)、2015会計年度(2014/10~2015/9)の2年分の予算案が通過した。


賛成 反対合計
共和党 169 62 231
民主党 163 32 195
合計 332 94 426


民主党のリード上院院内総務は12月13日、超党派委員会がまとめた予算案を12月17日から上院で審議し、週末までの可決を目指す方針を明らかにした。
票読みでは法案は可決される見込み。
(12月17日にフィリバスターを止めさせる議案が通ったため、過半数で決まる。)

付記

米上院は12月18日、64対36で法案を通し、大統領に送付した。

これまでは2014年1月15日まで政府を動かせる暫定予算が認められていたが、これにより、2度目の政府閉鎖の危機は、回避される。

ーーー

米与野党は10月から始まる2014会計年度の暫定予算案9月30日夜になってもで合意できず、10月1日、政府は1996年以来、17年ぶりとなる政府機関の一部閉鎖を開始した。

米議会の上・下院は10月16日深夜、米政府の債務上限を来年2月7日まで引き上げ、政府の一部閉鎖も解消する法案を可決した。
米政府の債務不履行(デフォルト)がギリギリで回避された。

法案の骨子は以下の通り。
 ・米政府の国債発行を2014年2月7日まで認める。
   最終的には債務上限の引き上げ期限を3月ごろまで先送りできる可能性がある。
 ・2014年1月15日まで政府を動かせる暫定予算を認め、政府機関の一部閉鎖をすぐに解消する。

  ・「医療保険改革法」(オバマケア)で補助金の受給者の所得確認を厳格化する。

2013/10/17 速報 米国、政府デフォルトを直前に回避 

2010年以降、上下両院でそれぞれ多数派が異なる「ねじれ」状態で、与党・民主党は富裕層向け増税を主張し、野党・共和党は年金や医療といった社会保障費の大幅カットを訴えている。

11月のバージニア州知事選挙で共和党候補が敗北、財政協議での野党・共和党の強硬姿勢が政府機関の閉鎖を招いたと世論が判断した結果とされ、共和党も今回の協議で一定の配慮を示さざるを得なくなった。

但し、2014年2月7日には債務上限引き上げの期限を控えており、当面は綱渡りの財政運営が続く。

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超党派委員会の合意の概要は以下の通り。

予算規模

今回合意した予算は、政府が政策実行に使う政策的経費と軍事費で、全体の約6割を占める社会保障費など義務的経費は含んでいない。

  軍事費 非軍事の政策的経費 合計
2014年度 520,464百万ドル 491,773百万ドル 1,012,237百万ドル
2015年度 521,272 492,356 1,013,628

民主党が主張する1兆580億ドルと共和党が主張する9670億ドルのなかを取った「妥協の産物」 となった。

歳出の強制削減の縮小

2014会計年度 450億ドル
2015会計年度    180億ドル
2年合計         630億ドル (軍事費、非軍事費で折半)

注. 2013年3月1日に政府予算の強制削減措置が発効した。

2011年7月に国債発行の上限を引き上げた際に、条件として財政削減を義務付け、これが出来ない場合には、強制削減することを決めた。1年半かけても合意できなかった。

2011/8/3  米国、債務上限引き上げ、デフォルト回避

 ・ 米政府の支出を今後10年間で計1兆2千億ドルを強制的に削減
  ・ 2013会計年度(2012/10-2013/9)で850億ドルを削減
      国防費が13%、国防費以外が約9%削減

予算削減

歳出の強制削減の縮小の原資として、10年間で850億ドルの予算カットを行い、差し引きで220億ドルの赤字縮減を図る。

  連邦政府職員の退職プログラム 10年で 60億ドル
  軍事恩給支出 10年で 60億ドル
  乗客が支払う航空機の安全対策費の増額  10年で126億ドル
  その他
  http://budget.house.gov/uploadedfiles/bba2013summary.pdf


問題となる社会保障制度、税制の抜本改革は見送った。

 

韓国の産業通商資源部は2013年12月5日、インドネシアのバリ島で開催された韓国と豪州との自由貿易協定(FTA)交渉が実質的に合意したと公表した。

2014年の上半期までに批准したいとしており、発効すれば豪州は韓国と11番目のFTA協定国になる。

韓国は8年以内に全タリフラインの90.8%の品目を関税撤廃し、豪州は8年以内に全タリフラインを撤廃する。

韓国の残りの品目(9.2%)については、コメ、粉乳、果実(リンゴ、梨、柿など)、大豆、ばれいしょ、水産物(カキ、明太子など)など171品目 (1.4%分)は除外、牛肉などの492品目は10年以上かけて撤廃するとした。
また、貿易救済として、韓国の牛肉、精製糖、麦、トウモロコシなどの品目にはセーフガード措置を導入する。

一方、韓国の豪州向け主要輸出品である自動車関連品目については、豪州側が中型車(1500~3000cc)と小型車(1000~1500cc)の即時撤廃、自動車部品は3年以内に撤廃する 。
 
韓国の対豪州の貿易額は、2012年の輸出額は9,269百万ドルで第12位、輸入額は22,978百万ドルで第6位となっている。
 

ーーー

韓国は米国、EU、欧州自由貿易連合(EFTA=スイス、ノルウェー、リヒテンシュタイン、アイスランド)、ASEAN10ヵ国、インド、チリ、ペルー、コロンビアなどの国・地域との間でFTAを締結しており、欧州―東アジア―米国をつなぐ「東アジアのFTAハブ」と自称している。

韓国政府は11月29日、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への「関心」を公式に表明し、事実上、交渉への参加の意思を明らかにした。

今回の豪州を含めると、TPP交渉参加の12か国のうち、8カ国とはFTAを結んでいることとなる。
(非締結は、日本、ニュージーランド、カナダ、メキシコ)
 


日本はFTA締結国の数では韓国より多いが、米国、EU、豪州と締結できていない。

  韓国 (11) 日本 (13) TPP参加国
(日本含め12)
ASEAN 物品貿易 2007年6月1日発効
サービス貿易 2009年5月1日発効
投資分野2009年9月1日発効
2008年12月から順次発効  
  シンガポール 2006年3月2日発効 2002年11月発効
マレーシア 個別には発効していないが、ASEANとして既に発効済み 2006年7月発効
タイ 2007年11月発効  
インドネシア 2008年7月発効  
ブルネイ 2008年7月発効
フィリッピン 2008年12月発効  
ベトナム 2009年10月発効
インド  2010年1月1日発効 2011年8月発効  
オーストラリア 2013/12 実質合意  ---
ニュージーランド  ---  ---
トルコ 2013年5月1日発効  ---  
米国 2012年3月15日発効  ---
カナダ  ---  ---
メキシコ  --- 2005年4月発効
チリ 2004年4月1日発効 2007年9月発効
ペルー 2011年8月1日発効 2012年3月発効
コロンビア 2013年2月21日 正式署名  ---  
EFTA 2006年9月1日発効  ---  
  スイス (EFTAとして締結) 2009年9月発効  
EU 2011年7月1日暫定発効  ---  
 

参考

米通商代表部(USTR) のCutler次席代表代行は12月12日、ワシントンの戦略国際問題研究所で開かれた「韓国のTPP参加」というセミナーで、「韓国はTPP参加に先立ち、韓米自由貿易協定(FTA)履行に関する懸念事項から解決する必要がある」とし「議会と利害当事者が心配している韓米間の懸案」として、▼原産地表示をめぐる論争▼金融サービス分野の資料共有▼自動車分野の非関税障壁▼有機農製品に対する認証--の4つを列挙した。

「韓国の行き過ぎた原産地認証要求でFTAを締結しても関税による恩恵が減っている。韓国政府が問題を解決することを望む」とし「韓米FTA 2周年の来年3月15日に金融サービス分野に関する合意が発効するだけに、きちんと履行するよう保障しなければならない」と主張した。

また自動車分野に関し、「米国自動車業界は韓国が近く施行するbonus-malus(自動車の二酸化炭素排出量に基づく補助金または過怠金)制度による不利益を懸念している」と指摘した。




三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長は12月12日に開いた事業説明会の中で、新たにヘルスケア事業の新会社を立ち上げ、三菱化学、田辺三菱製薬、三菱樹脂、三菱レイヨンに続く、5番目の基幹事業会社として展開していく構想を明らかにした。


新社は傘下の三菱化学メディエンス、APIコーポレーション、健康ライフコンパス、クリオカプスの4社を統合して2014年4月1日付で発足の予定。

主な事業内容は、
・臨床検査、診断薬・機器(三菱化学メディエンス)、
・医薬原薬・中間体製造受託(APIコーポレーション)、
・簡易血液検査などのトータルヘルスケア事業(健康ライフコンパス)、
・ハードゼラチンカプセルなどカプセルの製造・販売(クリオカプス)と、
医療・健康情報サービスから医療機器、製品までヘルスケアに関するソリューション全般に及ぶ。4社合わせた2013年度売上高は約1,200億円。

三菱化学メディエンスは2007年に三菱化学ビーシーエル(旧 三菱油化ビーシーエル)・三菱化学ヤトロン・三菱化学安全科学研究所の3社の事業を統合した。

APIコーポレーション(旧称 吉富ファインケミカル)は、三菱化学の医薬原体事業及びファインケミカル事業の一部を承継した。

三菱ケミカルホールディングスは2012年12月、医薬品カプセル製造で世界シェア2位の奈良のクオリカプス(Qualicaps)の 全株を取得し、子会社化するための株式売買契約をカーライル・グループとの間で締結したと発表した。
    2012/12/26 三菱ケミカルホールディングス、クオリカプスを買収

社名や従業員数などの詳細は今後、詰めていく。


三菱ケミカルHDは、グループ企業に医薬専門の田辺三菱製薬をはじめ、食品添加物の三菱化学フーズとMRCポリサッカライド、三菱レイヨンの人工炭酸泉、大陽日酸(酸素吸入器)などを持つだけに幅広いシナジーが期待できる。

   三菱ケミカルは9月26日、大陽日酸と資本業務提携契約を締結した。
   合併前の太陽東洋酸素に34.85%出資していたが、大陽日酸となった後、15.12%出資していた。
   これを27%に増やした。


三菱ケミカルHDの小林社長は「ヘルスケア事業は総じて付加価値が高い。医療情報を中心に独自性のあるビジネスモデルを追求していきたい。売上高は現在は1,200億円程度だが、すぐに5000億円規模になるだろう」と、新事業の立ち上げに意欲を示した。
また、営業利益でも現在の約60億円から、2015年度に100億円まで引き上げる目標を掲げた。

 

中国の月面探査機「嫦娥3号」が12月14日午後9時すぎ、月の「虹の入り江」に軟着陸した。
旧ソ連、アメリカに続いて世界で3番目となる。

日本は2007年9月に月周回衛星「かぐや」を打ち上げ、約1年半にわたり月を周回しながら様々な観測を行った。2009年6月に月面の狙った地点に衝突させた。

今後、6輪の無人探査車「玉兎号」を走行させて地質調査などを始める。

玉兎号は時速200 メートルで移動し、3カ月にわたって月面を探査、表面の画像を撮影するほか、レーダーを使って地下100メートルまでの地質を調べる。
月の土壌には核融合発電の燃料となる「ヘリウム3」が豊富にあるとされ、チタンなど有用な鉱物資源も存在する。

 

中国は2017年頃に探査機を再び月面に送り、土壌の一部を地球に持ち帰り、2020年以降に独自の宇宙ステーションの運用を開始し、月面に宇宙飛行士を送り込む構想を持っている。

中国の嫦娥計画は、国家的プロジェクトとして推進している月探査計画で、将来的には有人による長期滞在を目指し、2003年3月1日に正式に開始された。「探査計画」、「着陸計画」、「滞在計画」に分かれる。

嫦娥1号(総重量は2,350 kg)は、2007年10月24日に打ち上げられ、月の高度約200キロメートルを1年間にわたって周回し、科学的な探査を行った。

嫦娥2号は2010年10月1日に打上げられた。
月面から高度 18.7km まで接近して、虹の入り江地域を撮影した。
予定していた回数よりも少ない噴射で高い精度の軌道を得ることが出来たので、余った推進剤で月周回軌道を離脱させ、2012年12月13日には地球近傍小惑星 トータティスに最接近した。

ーーー

嫦娥3号は12月2日午前1時半、四川省の西昌衛星発射センターから、大型ロケット「長征3号B」で打ち上げられた。
月への軌道に乗り、制御に必要な電力を得る太陽光発電パネルを広げることに成功した。

打ち上げから月面着陸までに8日間も月を周回したことについて、中国航天科技工業集団は以下の通り説明している。

月面の昼ごろの高温下では、嫦娥3号は最小活動モードに入る。
高温になる前に月面探査車と着陸機の分離をするため、嫦娥3号は午前中に着陸しなければならない。この時間上の制限のために、嫦娥3号は数日間飛行する必要がある。

次に、嫦娥3号は既定時間に予定地点の「虹の入り江」に着陸するためには、8日前後の周回飛行が必要となる。

44年前のアポロ11号の場合は、月周回軌道に入ったわずか1日後に月面着陸を実現した。
これは、有人飛行か無人飛行かの違いによる。

アポロは有人で、短時間での帰還が必要なため、軌道調整を繰り返して静かの海の軌道面に到着した。
軌道調整に必要な大量の燃料を積んだため、科学機器を最小に押さえざるを得なかった。搭載していた物資ではそれほど長い月面活動を支えることもできなかった。


中国の専門家は、着陸には以下の難しい問題があると指摘している。

・最終着陸地点の選択

狭い範囲の地形の状況は把握できておらず、岩にぶつかったり、クレーターにはまる恐れがある。

空気がないため、空気摩擦による減速が不可能

伝統的なロケットエンジンと推進システムでは不可能で、推進力を連続調節できるエンジンを開発したが、初めての使用となる。

・人間が干渉できる可能性はほぼゼロで、全自動での着陸となる。

嫦娥3号は完全に独力でコントロールを実施し、降下・着陸地点の確定、軟着陸など一連の重要な動作を完了しなければならない。

・月面粉塵の付着、探査機故障の可能性も

 



旭化成は世界で初めてのCO2からの非ホスゲン法ポリカーボネート(PC) 樹脂製造技術を開発、2002年6月から台湾のJVで商業生産を開始しているが、このたび、この技術を改良に成功した。

新技術では原料の一部を変えることで、これまで4段階あった工程を3段階に減らした。1工程分の設備や電気代を減らせるため、生産コストは既存技術より1割以上減らせるという。(2013/12/6 日本経済新聞)

世界のPC樹脂は全て一酸化炭素(CO)を原料とするものであり、大部分は一酸化炭素と塩素から製造されるホスゲンを原料としている。ホスゲン法はホスゲンの毒性問題や環境面での問題をもっている。

旭化成が非ホスゲン法の開発に着手したのは1977年で、1988年に実証プラントを稼働した。
エチレンオキサイドと副生CO及びビスフェノールAを原料とし、高性能のPC樹脂と高純度EGの2つの製品を高収率で製造するもの。

 

 















旭化成は、25年の歳月をかけて実用化に成功したこの独自技術を、国内でも海外でも自らは使用していない。
製造技術をPC樹脂メーカーに供与し、対価を受け取るライセンス契約を締結し、この技術を世界に展開
するというユニークな戦略を取っている。

後発の立場で参入するよりも、ライセンス契約で事業を展開した方が収益性が高いと判断したためで、「環境対応に優れた製造法として世界のPC樹脂メーカーに向けて技術を広めたい」としている。

同社のライセンス先は以下の通りで、合計能力は665千トンに達する。
同社では、
「ライセンス契約の拡大を通じ、15~20年をめどにノンホスゲン法による生産能力を100万トン以上に高め、約25%のシェアを確保したい」としている。

台湾 旭美化成
奇美実業90%、旭化成ケミカルズ10%
100千トン
第1期    50千トン  2002/6
第2期 50千トン  2006
ロシア Kazanorgsintez
タタルスタン共和国カザン市
65千トン 2007
韓国 Lotte Chemical 80千トン  
Samsung Cheil Industries 160千トン 第1期   80千トン  2008
第2期   80千トン  2012
Saudi Arabia Saudi Kayan Petrochemical
(Sabic 35%、Kayan Petrochemical 20%)
260千トン 世界最大規模
国 Daelim Industrial が建設
合計 665千トン  


旭美化成

ABS樹脂で世界No.1メーカーの奇美実業は、ABS樹脂に続く上級樹脂の事業化を希望し、旭化成はポリカーボネート樹脂(PC)の次世代製造技術の開発に成功し、その事業化の可能性を探っていた。
両社のニーズが合致し、1999年11月にJV設立で合意し、旭美化成を設立した。(奇美実業51%、旭化成49%)

2002年に第1期 50千トンが完成、2006年に第2期 50千トンが稼動、合計能力が100千トンとなった。

2004年に製品技術および工場運転技術の実証を完了し、所期の目的を達成、今後より迅速でフレキシビリティのある経営をするための最適体制を両社で検討した結果、出資比率を、奇美実業90%、旭化成ケミカルズ10%とした。

その後、旭化成はこの技術のライセンス活動への精力的な取り組みを開始した。

ロシア連邦タタルスタン共和国カザン市のカザンオルグシンテツ社(Kazanorgsintez)

2004年8月、旭化成はこの技術を高く評価した同社との間でライセンス契約の締結に至った。

カザン市に、ロシアで第1号となる年産65,000トンのPCプラントを建設し、2007年より生産を開始した。

韓国 Lotte Chemical

Lotte Chemical(旧 湖南石油化学)は旭化成から技術を導入、麗川に65千トンのプラントを建設した。
2010年に15千トンの増設を行い、能力を80千トンとした。

韓国 Samsung Cheil Industries

Samsung Cheil Industries は2006年に旭化成から技術導入を行い、2008年に麗川に第1期 80千トンを稼動させ、2012年に第2期 80千トンが完成、合計能力を160千トンとした。

サウジ Saudi Kayan Petrochemical

Saudi Kayan Petrochemical は2005年10月にSABIC 35%、Al-Kayan 20%出資で設立された。残り45%は公募した。

アルジュベイルに100億ドルを投じて、エチレン 1,350千トン、LDPE 300千トン、PP 350千トン、Bis-Phenol A  240千トン、PC 260千トン等の石化コンプレックスを建設するもので、2009年稼動を目指した。

2006/7/5  新しいサウジ石化計画スタートへ

PC能力は260千トンで、旭化成が技術を供与した。

工場建設は、スペインのTecnicas Reunidas が
Bis-Phenol A ( 240千トン)を担当、PCは韓国のDaelim Industrial が担当した。

 


Qatar Petroleumは12月8日、日本ゼオンと三井物産との間で、カタールのRas Laffan Industrial Cityでブタジエンとエラストマーのコンプレックスを建設する覚書を締結したと発表した。

3社はワールドスケールのブタジエンと合成ゴム・エラストマー計画の技術面、販売面、経済性を評価する詳細FSを実施する。

開発中のAl-Sejeel Petrochemicals Complex、Al-Karaana Petrochemicals Complexと既存のRas Laffan Olefins Company (RLOC)から原料の供給を受け、ブタジエン抽出を行い、ゼオンの最新技術を使ってSBRやポリブタジェンゴムなどのエラストマーを生産する。

調印式に出席したカタールのエネルギー・産業大臣は、カタールの天然資源に付加価値を付ける重要な一歩で、今後のバリューチェーン建設の基になると喜びを示した。

 

カタールの石油化学の概要は以下の通り。

これまではMesaieedに石油化学拠点があったが、Ras Laffan Olefins が2007年からRas Laffanでエチレンプラントの生産を始めた。
(エチレンはパイプラインでMesaieedに運ばれている。)

現在、これに加え、Ras LaffanでAl-Sejeel PetrochemicalsとAl-Karaana Petrochemicalsの2つのJVが建設中である。

既報のとおり、Ras LaffanにはShell とQatar PetroleumとのJVのPearl GTLと南アのSasolとQatar PetroleumのJVのOryx GTLがあり、ナフサも生産している。

 

 




世界初のiPS細胞を用いた再生医療の実用化を目指すヘリオスと、日本初の免疫細胞医薬品(がん治療用の再生医療等製品)の承認を目指すテラは、12月5日、業務提携に関する基本合意書を締結、iPS細胞を用いた癌免疫細胞療法の開発に向けた検討を開始する。

ヘリオスは理化学研究所認定のベンチャー企業で、加齢黄斑変性等の失明疾患に対して、iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞(RPE細胞)移植による新たな治療法の研究・開発を推進している。

2013/12/4  大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発

テラは、高品質で安定的な細胞培養技術を有しており、樹状細胞ワクチン療法等のがん免疫細胞療法の技術・ノウハウを、大学病院をはじめとした全国32ヶ所の医療機関に提供している。

社名のテラ(tella)は、「tera: 兆」、「tell: 伝える(発信する)」、「terra: 地球(グローバル)」の三つの言葉がその語源となっており、「人体を構成する60兆個の細胞を科学する企業」、「世界に向けて発信するグローバルなヘルスケア企業」という意味が込められている。

テラは、 日本初の免疫細胞医薬品として、樹状細胞ワクチン『バクセル®(Vaccell)』の承認を得るための取り組みを推進している。

改正薬事法が11月20日に参院本会議で可決、成立した。
公布から1年以内に施行、薬事法は改称し、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(「医薬品医療機器等法」)になる。
iPS細胞など細胞を使った治療を規制する再生医療安全性確保法と、細胞シートなどの再生医療製品や医療機器の承認手続きを簡素化する。

従来は、治療のために細胞を培養することは医師の治療行為の範囲で、企業が受託するのは禁止されていたが、今後は企業が承認を得て、培養することが可能となる。
テラは、承認を得られれば
『バクセル』を量産する。

テラの樹状細胞ワクチン療法の仕組みは下記の通り。

癌細胞は、正常な細胞が変異したもので、正常な細胞とは異なる目印(抗原)を持つ。

免疫細胞の一つである樹状細胞(dendritic cell)は抗原提示細胞で、癌細胞を異物として認識し、癌細胞を食べることで癌の目印を手に入れ、異物を攻撃するリンパ球(ナチュラルキラー細胞:NK細胞)に癌細胞の目印を伝達する。
この情報をもとに、リンパ球は癌細胞を狙って攻撃する。

樹状細胞ワクチン療法は、本来、血液中に数少ない樹状細胞を体外で大量に培養し、患者の癌組織や人工的に作製した癌抗原の特徴を認識させて体内に戻すことで、樹状細胞からリンパ球に癌の特徴を伝達し、そのリンパ球に癌細胞のみを狙って攻撃させる新しいがん免疫細胞療法。

テラは九州大学と共同で、単純かつ工業生産での取り扱いが可能と考えられる末梢血単核球から、一定品質および生物活性を示す樹状細胞を大量に増幅培養する方法を開発、九州大学と共同で特許出願を行っている。(特願2010-112588)

バクセル®(Vaccell)は、テラの登録商標で、「vaccine(ワクチン) + cell(細胞)」を語源とし、「細胞によるがんワクチン」を意味する。

人間が本来持っている免疫の力を高めて癌細胞だけを攻撃するため、正常な細胞までも攻撃してしまう抗癌剤などに比べて副作用が少なく、また、ワクチンは基本的に外来で注射するだけで、通院で治療できるといった利便性もある。

樹状細胞ワクチンはその製造が複雑かつ高価であることから、臨床試験の実施が容易ではなく、現在は保険外診療(自由診療)として提供されている。テラは「バクセル」の保険適用を目指している。


両社は、ヘリオスが有するiPS細胞を臨床応用するための技術・ノウハウと、テラが有する癌免疫細胞療法に関する技術・ノウハウを融合することで、最先端医療への貢献を目指す。

テラでは現在、癌患者本人の血液を採取し、2週間かけて樹上細胞を作製しているが、これをiPS細胞から作製できれば、血液採取が不要になり、治療を始めるまでの期間の短縮につながる。

両社はiPS細胞を用いた癌免疫細胞療法の開発に向けた検討を開始する。

テラは2013年4月にヘリオスに1億円を出資している。


 

1970年代に日本とインドネシア両国間の国家プロジェクトとして設立されたPTインドネシア・アサハン・アルミニウム(INALUM)について、日本の企業連合とインドネシア政府が12月9日、日本側が全保有株を同政府に5億5670万ドルで売却するとの合意文書に調印した。
合弁は解消され、インドネシアが事業を国有化する。

2011年度のアルミ地金生産量は246千トンで、その6割は日本向けであったが、インドネシアは今後、全製品を国内市場に回す意向を示している。

アサハンアルミについては操業30年を迎える2013年11月以降、インドネシア政府が日本の出資分を買い取る権利を持つ。
JV協定では、「生産開始」(1983年11月1日)から30年後に満了、設備は簿価などの補償を条件として、インドネシア政府に移管されることとなっている。

現在の出資比率は日本側 59%、インドネシア側 41%となっている。

日本側投資会社は「日本アサハンアルミニウム」で、下記各社が出資する。

国際協力機構(JICA) 50% 
旧精錬5社(
住友化学、昭和電工、日本軽金属、三菱化学、三井アルミ) 各7.5%、計37.5%
7商社 合計 12.5%

当初は国際協力銀行が出資したが、その後解散し、海外経済協力業務をJICAが承継した。

インドネシア政府と日本側は2011年2月18日、交渉を開始した。

計画概要と経緯については 2010/10/14  インドネシア、アサハンアルミの将来

2012年8月にインドネシアのハッタ・ラジャサ経済担当調整相は、INALUMの増産体制確立とIPO(新規株式公開)を支援するため、同社に最大12兆ルピア(約1000億円)の政府資金を投資する計画であることを明らかにした。

インドネシア政府では国内のアルミ需要が急増していることから日本側の株式の買い取りを決めたとし、政府が7兆ルピア(約580億円)で日本側の株式を全株買い取るとした。

しかし、複数の関係筋によると、「実際にインドネシアが提示した金額はそれを大きく下回っており」、交渉は難航した。

日本アサハンアルミニウムの岡本社長は本年9月に、株式売却交渉について、「譲渡価格や譲渡条件で未だ隔たりが大きい」ことを明らかにした。

合弁契約が終わる10月末までの合意を目指して交渉を継続するが、合意に至らない場合は世界銀行傘下の投資紛争解決国際センター(ICSID)に仲裁を求めるとした。
「JICAは国民に、民間企業は株主に、それぞれ説明責任があり、合理的な理由なくして相手方の要求はのめない」と指摘した。

その後、日本政府内から問題長期化が両国関係に悪影響を及ぼすとの懸念の声が上がり、一転して今回の合意に至った。


INALUMは、円高に伴う円建て借入金の金利負担増、渇水による稼働率の低下、アルミ市況の低迷などで収益が安定せず、稼働開始から30年に近付いた2010年度にようやく累積損失を一掃した。



Shellは12月5日、米国ルイジアナ州で検討していた日量14万バレルの「Gas-To-Liquid (GTL)」計画を撤回すると発表した。

シェールガスからの天然ガスを利用することを考えていたが、天然ガスは豊富にあるものの、建設コスト上昇や、長期的な原油価格と天然ガス価格及び両者の価格差(
spread)が不確かなことから中止を決めた。
建設コストは当初、125億ドル程度と見積もっていたが、200億ドル以上に膨れあがっている。

GTLは天然ガスを水素と一酸化炭素に分解後、分子構造を組み替え、ナフサ、ケロシン(ジェット燃料、家庭暖房用)、ノーマルパラフィン、ガスオイル(ディーゼルオイル)、潤滑油などを生産するもの。

安い天然ガスを原料に付加価値の高い製品がつくれること、天然ガスを産地でそのまま利用できることがメリットである。

Shell は最初の商業規模のGTL設備を1993年にマレーシアのBintuluに建設した。(日量14,700バレル)

2011年に Qatar PetroleumとのJVのPearl GTLがカタールのRas Laffanで生産を開始した。


Pearl GTLは建設費が当初計画の50億ドルから最終的には180-190億ドルまで膨れ上がったとされる。
製造能力は2系列合計で、GTLオイルが日量14万バレル、コンデンセートおよびLPGが石油換算で12万バレル、合計26万バレルとなっている。

カタールでは他に、南アのSasolとQatar PetroleumのJVのOryx GTLも日量32,400バレルのGTLを生産している。

このほか、南アのMossel Bayで国営石油会社PetroSAがSasol技術で日量36,000バレルのGTLを生産している。

ーーー

カタールでGTLを生産するShell と Sasol の両社がそれぞれ、米国のシェールオイルを利用するGTL計画を打ち出した。

ShellはVoser CEOが昨年、シェールガスで供給される安い天然ガスを利用する計画を正式に明らかにした。

Shellは本年9月に、投資額125億ドルのGTL計画の立地を同州の Ascension Parish に決めたことをルイジアナ州政府と共同で発表した。
計画を実施するかどうかは、用地評価や予備的エンジニアリング検討などにより決めるが、数年はかかるとしていた。


既報のとおり、米国の天然ガス価格は100万BTU当たり4ドル弱であるが、一般的に天然ガス価格は7ドル程度まで上昇すると予想されている。

現在は原油価格がバレル100ドル前後であるため、GTLは十分に採算に乗ると思われるが、今後、天然ガス価格が上昇(加えて、原油価格が下落)するようなことになれば採算が悪化することとなる。
GTLは輸出LNGとも競合する。

Shellはおそらく、天然ガス価格の上昇を予想、計画中止を決めたと思われる。

なお、Shellはこのほかに米国で、LNG輸出用の天然ガス液化計画と、Marcellus Shaleガスからのエタンを原料とし、Appalachia地方でエチレンクラッカーと誘導品プラントを建設することを検討している。

2013/1/30 Shell、LNG輸出用の天然ガス液化プラント建設 

2011/6/14 Shell、アパラチア地方でエチレンクラッカー建設へ

ーーー

これに対し、Sasolは今のところ、何も発表していないが、もしかすれば、同社もやめるかも分からない。

Sasolは2011年11月に、シェールガスを利用し、Lake CharlesにGas-to-liquids (GTL)プラントとワールドクラスのエチレンクラッカーと誘導品を建設するFSを開始すると発表した。

同社は2012年12月に計画がFront-end engineering and design (FEED) 段階に入ったと発表した。

・Gas-to-liquids (GTL)
  2段階で日量48千バレルの設備を2基建設する。1基は2018年、1基は2019年稼働を予定。

・エチレン年産150万トンのクラッカーと誘導品
  2017年稼働予定
  その後、立地をルイジアナ州 Westlake に決めた。

同社は本年3月に、ルイジアナ州 Lake Charlesに新しいLDPEプラントを建設することを明らかにした。
東洋エンジニアリングはSasol NorthAmericaから年産45万トンのLLDPEの基本設計を受注したと発表した。

 

 


欧州委員会は12月4日、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR:London Inter-Bank Offered Rate)など国際的な指標金利の不正操作に関し、複数の欧米金融機関がカルテル行為を実施したとして合計で約17億1千万ユーロの制裁金を科した。調査は続いており、対象はさらに拡大する見通し 。

ーーー

2012年夏に発覚したLIBOR不正操作事件は、欧米の金融業界を震撼させた大スキャンダルに発展した。

LIBORは世界の金融取引に使われる短期金利の基準値であるが、英米当局は1年以上にわたる捜査で、英国のBarclaysが2005~09年に虚偽申告を繰り返し、経済の実態とかけ離れてLIBORを上げ下げしたと結論づけた。「(LIBORを)下げろ! 3%を目指せ」と指示しているメールも見つかった。

欧州銀行間取引金利(EURIBOR)や円建ての指標金利も操作された。LIBOR不正操作の7~8割が日本円を舞台に起こっているとされる。

米欧当局は世界40前後の金融機関を調査した。

2012年6月にBarclaysは英米の当局から総額2億9000万ポンドの罰金を科せられた。

2012年12月には米英スイスの金融監督当局がスイスの大手銀行UBSに総額14億スイスフランの課徴金を求める行政処分を発表した。
UBSは2005~10年に日本を含む複数の国で組織的に不正を働いた。
金融当局はUBSの事案をBarclaysよりも悪質と判断し、罰金は3倍以上となった。

日本の金融庁は、LIBORや日本独自の東京銀行間取引金利(TIBOR)を不正に操作しようとしたとして、UBS証券に一部業務の停止命令を出した。

2013年2月、Royal Bank of Scotlandは英国金融サービス機構(FSA)に8,750万ポンド、米国商品先物取引委員会(CFTC)に3億2500万ドル、米国司法省 に1億5000万ドルのペナルティを支払うことに合意した。

2013年9月には米英当局は英国の金融取引仲介業者のICAPに8,700万ドルの罰金を科した。

10月にはオランダのRabobank が米英蘭の金融当局に合計774百万ドルの罰金を支払った。

ーーー

今回、欧州委員会はユーロ建ての指標金利の欧州銀行間取引金利(EURIBOR)と円建ての指標金利(円建てLIBORとTIBOR)についてカルテルを摘発した。

EUROについては、Barclays、Deutsche Bank、Société Générale、Royal Bank of Scotland が摘発された。

このうち、 Barclays はカルテルの存在を伝えたため、100%減免となった。(減免額は約 690百万ユーロ)
他の3行は協力の度合いにより、それぞれ減免を受けた。更に各行は決定を受け入れる(裁判に訴えない)ことで、それぞれ10%の減免を受けた。

なお、Crédit Agricole、HSBC、JPMorgan に対する調査を続けている。


円建てについては、 2007~2010年の間に1~10ヶ月間にわたる別々の7つの違法行為があったとされ、Deutsche Bank、Royal Bank of Scotland、UBS、JPMorgan、Citigroup、RP Martin (broker)が摘発された。

このうち、UBS はカルテルの存在を伝えたため、100%減免となった。(減免額は約 25億ユーロ)
Citigroup は1件のカルテルの存在を伝えたため、その分については100%減免となった。(その分の減免額は約 55百万ユーロ)

Citigroup(残りの分)と他行(JPMorganを除く)は協力の度合いにより、それぞれ減免を受けた。更に各行は決定を受け入れることで、それぞれ10%の減免を受けた。

なお、cash brokerのICAPに対する調査を続けている。

これまでの処分の概要は以下の通り。 

 

 今回の独禁法違反    行政処分
Euro 日本円 罰金合計
 千ユーロ

Reduction

罰金
 千ユーロ

Reduction 罰金
 千ユーロ

Barclays

100% 

0

  --- 0 2,900万ポンド

Deutsche Bank

30%

465,861

35%, 30% 259,499 725,360  

Société Générale

5%

445,884

  --- 445,884  

Royal Bank of Scotland

50%

131,004

25% 260,056 391,060 8,750万ポンド
325百万ドル
150百万ドル
UBS   --- 100% 0 0 14億スイスフラン
JPMorgan   ---   79,897 79,897  
Citigroup   --- 35%, 40%, 100% 70,020 70,020  
RP Martin (broker)   --- 25% 247 247  
ICAP(cash broker)   ---   --- --- 87百万ドル
Rabobank   ---   --- --- 774 百万ユーロ
合計   1,042,749   669,719 1,712,468  



改正独占禁止法が12月7日未明参院本会議で可決、成立した。

2010年3月に改正案が提出されて以来、3年9カ月かかって成立した。

2010/3/17 独禁法改正案(審判制度廃止)閣議決定
改正案は2012年11月に審議未了により一旦廃案になったが、2013年5月24日に同内容で閣議決定された。

「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案」の閣議決定について


法案の概要は以下の通り。

公正取引委員会が行う審判制度を廃止する。
  れに合わせ、審決取消訴訟における現行の下記規定を廃止する。
  1)実質的証拠法則(80条)
    公取委の認定した事実(実質的証拠のある場合)は裁判所を拘束するとの規定
   
  2)新証拠提出制限(81条)
   被処分者が裁判所に新たな証拠の申し出を出来るのは、
 公取委が審判手続きで正当な理由無しにその証拠を採用しなかった場合に限るとの規定
   
裁判所における判断の合一性、専門性の確保を図る観点から、排除措置命令等に係る抗告訴訟については、東京地方裁判所の専属管轄とするとともに、東京地方裁判所においては、3人又は5人の裁判官の合議体により審理及び裁判を行うこととする。(通常は一人の裁判官)
   
  なお、高裁では3人の裁判官によるのが原則だが、東京高裁での控訴審では5人の合議体で行うことが出来るとする。
   
適正手続の確保の観点から、排除措置命令等に係る意見聴取手続について、予定される排除措置命令の内容等の説明、証拠の閲覧・謄写に係る規定等の整備を行う。




 
米国エネルギー省は11月15日、Freeport LNGに対しFTA非締結国向けの輸出量の増量を認めた。


2013年5月に1.4 Bcf/d(年間900万トン)までの輸出を認めたが、今回、1.8 Bcf/d 
(年間1200万トン)への増量を認めた。

これを受け、Dow Chemicalは11月15日に以下の声明を発表した。

Dowは今回のエネルギー省の決定をチェックしている。
Dowは
FTA非締結国向けのLNG輸出承認について、慎重な、計画的な、バランスの取れたやり方を提唱する。
今回の承認で、合計承認量は約
6.7 bcf / dayにもなった。
これは現在の米国の消費量の10%にもなり、多くの米国の製造業者が適正輸出量の上限と考える。

Dowの Andrew Liveris会長兼CEOによれば、「世界中の企業が安い天然ガスを利用するため米国に投資しており、米国経済の成長と雇用創出に役立っている。米国はこの戦略資源について、今後もこれまで同様に非常に注意深く扱う必要がある。最近のデータが示すように、米国の天然ガスを大量に海外に輸出すると、消費者のエネルギー価格が上昇し、製造への投資が抑えられ、経済成長と雇用創出を妨げる」。

JP Morgan は最近、天然ガス価格は2016年までに3倍になると予想、ConocoPhillips は天然ガス価格は次の4年で30%上昇するというエネルギー省の予測をはるかに上回るだろうと予測している。
適正輸出量の上限 7.0 bcf / day に近づいた今、米国経済の利益を最大にし、悪影響を最小にするべく、エネルギー省のデータを再検討することが必要である。

FTA非締結国向けのLNG輸出について、これまでエネルギー省が承認したものと承認待ちのものは以下の通り。 
天然ガス液化設備の建設が必要なため、実際の輸出開始は2016年以降となる。

会社名 立地 概要 輸出契約
Cheniere Energy

 

Sabine Pass
(Cameron Parish, LA)
承認:2011/5
数量:2.2 Bcf/d(年間1600万トン)
期間:20年間
BG Group、Gas Natural (スペイン)、Gail(インド)、
Kogas(韓国)
承認時は韓国はFTA未発効
 
2012/2/24 米国からのLNG輸入問題 
Freeport LNG

 

Freeport
(Quintana Island, TX)
承認:2013/5
数量:1.4 Bcf/d(年間900万トン)
  
→1.8 Bcf/d (年間1200万トン)
              (2013/11承認)
期間:20年間
大阪ガス、中部電力、 BP Energy
2013/5/20 米エネルギー省、日本へのLNG輸出を許可
Lake Charles Exports Lake Charles
(Lake Charles, LA)
承認:2013/8
数量:2.0 Bcf/d(年間1500万トン)
期間:20年間
BG Group
2013/8/12 米エネルギー省、非FTA締結国向けLNG輸出で3件目の承認
Dominion Energy Dominion Cove Point
(Chesapeake Bay
 in Lusby, Md.)
承認:2013/9
数量:
0.77Bcf/d 年間525万トン
期間:20年間
住友商事(東京ガス・関西電力)、
Gail(インド)
2013/9/13 米、日本向けLNG輸出 2件目を承認
(以下 認可待ち)
Cameron LNG Hackberry, LA 数量:1.7 Bcf/d(年間1200万トン) 三井物産、三菱商事、GDF Suez
Jordan Cove LNG Port of Coos Bay, Oregon 数量:1.0 Bcf/d(年間 600万トン) 未定


米国ではNatural Gas Act of 1938 により、天然ガス輸出入にはエネルギー省の許可 が必要とされており、輸出許可の判断基準には公共の利益に反するか否か、輸出先国で内国民待遇が与えられるかどうかがある。
米国は輸出承認で米国とFTAを締結している国とそれ以外で差をつけており、FTAを結んでいない日本はガス輸入のハードルが高い。

米エネルギー省は2012年12月5日、LNGに関する報告書を発表、LNG輸出の米国経済への影響を、輸出の量、グローバルな市場状況、天然ガスコスト等々、いろいろな前提で検討したが、全てのシナリオで、LNG輸出は輸出をしない場合と比べ、ネットで経済的メリットがあるとしている。

Dow Chmicalはこれに強く反発、逆にExxonMobil等は賛成に回り、論戦が行われている。

2012/12/7 米エネルギー省、LNG輸出に向けての報告書を発表
2012/12/12 Dow、エネルギー省のLNG輸出に関する報告に反論
2013/1/30 米国の天然ガス輸出論争、激化
2013/2/5 米国のLNG輸出規制はGATT違反?

Dow Chemical は、本年に入り3件が承認され、そのうちの1件については増量が認められたため、
今後更に承認が続くことを懸念し、牽制したとみられる。

ーーー

米国の天然ガスの価格推移は以下の通り。

 ソース:http://ecodb.net/pcp/imf_usd_pngasus.html

現在、100万BTU当たり4ドル弱である。
これをLNGにして日本に送る場合、液化費用が約3ドル、輸送費が約3ドルかかり、10ドル程度になる。
(輸送費は豪州やカナダの西海岸の場合は、1.2ドル前後となる)

現在の低価格の理由は以下の通り。

1) 天然ガスは都市ガス、発電その他に使われるが、発電所建設(石炭火力からの代替)には時間がかかる。
     輸出についても、液化設備の建設が必要で、すぐには輸出できない。

2) シェールガス採掘に当たり井戸を掘る権利を土地所有者から得ているが、この権利が高騰している。
   天然ガス価格が安いからといって掘るのをやめる訳にいかない。掘るのをやめれば権利を失うことにもなる。

この結果、一時的に需要と供給がアンバランスとなり、価格が低下している。
上記の価格は十数本のパイプラインが集積するルイジアナ州のHenry Hubの価格だが、消費が少ない北部では価格ははるかに安い。

現在の価格では、ほとんどの業者は赤字とされており、GMX ResourcesはChapter 11の申請を行った。

2013/4/5  米国のシェールガス開発会社が破産法申請 

採掘により、シェールガスとシェールオイル及び天然ガス液(NGL)が出るが、土地によりガスとオイルの比率が大きく異なる。
シェールオイルが多く出るところはシェールオイル(原油価格スライド)の利益でシェールガスの赤字をカバーできるが、GMXの場合はシェールオイルが少なく、破綻した。

一般的に天然ガス価格は7ドル程度まで上昇すると予想されている。Dowは輸出を制限することで、これを抑えようとしているもの。
(この場合、日本向けのLNG価格は13ドル程度となる。現状は16ドル弱)

ーーー

現在、シェールブームで米国で石油化学計画が林立しているが、これはシェールオイル・ガスに副生する天然ガス液(NGL)から得られるエタン(及びプロパン)を利用するものである。

NGLは採掘現場のガス処理設備で天然ガスと分離され、全国で10箇所ほどあるNGL Fractionation (分別)設備に送られ、エタン、プロパン等に分離される。

エタン価格は天然ガス価格とは別に需給で決定されており、天然ガス価格の変動には関係ない。
(エタン価格も現在非常に低い水準にある。)

DowがLNG輸出に反対するのは燃料価格の高騰を恐れているものと思われる。

 

なお、Dowは以下の理由で天然ガス輸出に反対している。

製造業は米国で最大の天然ガスのユーザーであり、天然ガスを使って、他のどのセクターよりも多くの雇用を生み、より多くの価値を生み出している。
製造業で使われたエネルギーの価値は、バリューチェーンを通じて多くの高付加価値の製品をつくることにより、20倍にも拡大される。

これに対して、LNGとしてエネルギーを輸出すれば、その価値分しか得られない。

米国の新聞にこれを皮肉る意見が投稿されていた。

Dowが天然ガスの輸出に反対するのなら、米国で製造した製品は中国などに輸出せず、米国で販売して最終製品にまで加工すべきだ。
同社はレジンなどを安く中国に輸出し、中国はそれを使った安い製品を米国に輸出して米国メーカーを淘汰しているではないか。

最終製品まで米国で製造してこそ、「製造業で使われたエネルギーの価値は、バリューチェーンを通じて多くの高付加価値の製品をつくることにより、20倍にも拡大される」。

 

 

ロシア下院は11月22日、これまでGazpromにだけ認めていた天然ガス輸出を 他の企業にも認める法案を可決した。法案は上院の承認とPutin大統領の署名を経た上で12月1日に発効した。

現在のロシアの法律では、Gazpromのみが天然ガス、LNGを輸出する権利を持っているが、国内のLNG生産拠点 はサハリン南部の1つしかない。
他社がLNGプラントを建設しても、Gazpromを通してしかLNGを輸出できない。

天然ガス輸出はパイプラインを利用した欧州向けに依存しているが、2012年には欧州の景気低迷のあおりでロシアの天然ガス輸出は前年比で約9%減少した。

プーチン大統領は「ロシアが世界のLNG供給で3.6%しか占めていない」とGazpromに対する不満を示しており、2013年2月13日にLNG輸出の段階的な自由化を検討するよう政府に指示した。
プーチン大統領は2020年までに年間輸出量を現在の約1千万トンの4倍に引き上げる目標を掲げた。

自由化により天然ガス開発を促進し、日本や中国をはじめとするアジア諸国への輸出拡大を目指す。供給先の多角化に加え「シェールガス革命」で加速する米国などのLNG輸出攻勢に対抗する思惑もある。

今回の法案が通ると、ロシア第2位のガス企業 Novatek や国営の石油大手 Rosneft などは、LNGでの輸出が可能になる。
パイプラインによるガス輸出は、今後もGazpromが独占的に行う。


ーーー

プーチン大統領の輸出自由化検討指示を受け、 Novatek や Rosneft は準備を進めており、対抗してGazpromも計画をたてている。

1)Novatek
  Novatekは、ロシアの独立系天然ガス生産・販売会社で、天然ガス生産量はGazpromに次いでロシア国内2位である。

Novatekの主要株主は、プーチン大統領の旧友でもある石油トレーダーのゲンナジー・チムチェンコのルクセンブルクのファンドVolga-Resourcesが20.77% 、Gazpromが10%などとなっている。

   
  日揮は2013年4月、フランスのTechnipと共同で、Yamal LNGがロシアのYamal-Nenets自治区Sabettaで進めるLNGプラント新設プロジェクトの有償見積りおよび詳細設計役務等に係る発注内示を受けたと発表した。

Yamal LNGはロシアの天然ガス第2位のNovatekが80%、Totalが20%出資する。

Yamal LNGはYamal半島のSouth Tambeyガス田に年産1,650万トンのLNGプラントを新設する計画で、第1期550万トンを2016年末に操業、同能力の第2期、第3期をそれぞれ2017年末、2018年末に稼働させる。

同ガス田の天然ガス埋蔵量は昨年末時点で9,070億立法メートルとなっている。

2013/4/8  日揮、ロシアのヤマルLNGプラントの詳細設計役務等を受注 

   
2) Rosneft
  Rosneftは丸紅などとサハリンの天然ガスを供給源とする年産1千万トンのLNG工場の建設を計画 している。

Rosneft とExxonMobilは2013年6月 に、2011年に締結した戦略的協力協定の進展状況を発表した。

2013/6/24 Rosneft とExxonMobil、戦略的協力関係を促進 

このなかに、ロシア極東でのLNGプラント建設がある。
2013年末までにLNGプラントの立地、天然ガス液化技術、運営形態を決定するとしているが、現在のところ、プラントはサハリン1に建設する見込み。

Rosneft のSechin社長は、サハリン1計画に30%出資するサハリン石油ガス開発(SODECO;石油公団・伊藤忠・丸紅等のJV)や同じく20%出資するインドのONGC Videshを参加させる可能性があると述べた。
また、
生産能力は年500万トンを想定しており、既にこれを上回る購入希望があるという。

Rosneft は6月21日に丸紅及びサハリン石油ガス開発(SODECO)との間でLNG供給の覚書(Heads on Agreement)に調印した。
丸紅に年間125万トン、SODECOに100万トンを供給する。


サハリン1プロジェクト

事業主体 ・エクソンネフテガス社
 (米、エクソン・モービル子会社、オペレーター、30%)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO)
 (日、石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資30%)
・ONGCヴィデッシュ社(インド、20%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社(ロシア、11.5%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 8.5%)
投 資 額 約120億ドル以上
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
①石油    約23億バレル
②天然ガス 約4,850億立方メートル

   
3)Gazprom
  資源エネルギー庁とロシア国営ガス会社Gazpromは2011年1月、ロシア東部での協力推進に関する合意文書に調印したと発表した。
   
  内容は、
・ウラジオストク周辺におけるLNG製造プラント建設に関するPre-FEED(初期設計前段階)、
・CNG(圧縮天然ガス)生産・海上輸送、
・ガス化学製品の生産
に関する共同FSを2011年末までに完了するというもの。


事業遂行のため、2010年12月6日に新会社「極東ロシアガス事業調査」が設立された。
  伊藤忠 32.5%、
伊藤忠石油開発 5%、石油資源開発 32.5%、丸紅 20%、国際石油開発帝石 10%

2011/1/21 日ロ、LNG事業協力で正式調印

   
  伊藤忠商事、石油資源開発(JAPEX)、丸紅、国際石油開発帝石(INPEX)及び伊藤忠石油開発が出資する極東ロシアガス事業調査㈱ とロシア国営ガス会社の Gazpromは2013年6月22日、ウラジオストクにおけるLNGプロジェクトに関するMOUに調印した。
   
  Gazpromは現在、サハリン2の天然ガスをサハリン南端のPrigorodnoyeにあるロシア唯一のLNG施設(サハリンエナジー所有)で液化し、日本に供給している。 

サハリン2プロジェクト

事業主体 Shell 55%→27.5%-1株
Gazprom 0%→50%+1株
・三井物産 25%
12.5%
・三菱商事 20%
10%
投 資 額 200億ドル
開発鉱区 ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
①原油 10億バレル
②天然ガス 4,080億立方メートル

<石油>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬後、新設港湾よりタンカーで日本等へ輸出
<ガス>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬、液化後、LNGをタンカーで輸出

Gazpromは、LNG輸出事業の一環として、サハリンからハバロフスクを経由しウラジオストクに延びるガス輸送用パイプラインの敷設を進めている。プリゴロドノエに次ぐ国内2番目のLNGプラントをウラジオストクに建設し、LNGを輸出する計画である。

2013/6/25 伊藤忠等の日本連合、GazpromとウラジオストックでのLNGプロジェクトの覚書 

 



Dow Chemicalは12月2日、塩素事業からの撤退を発表した。

今後売却する事業は、計11地区の約40プラントで、従業員は2000名、製品の売上高は50億ドルに達する。
今後、2年以内に売却を完了させる。

具体的には下記が処分対象となる。

米国Gulf Coastのクロル・アルカリとクロル・ビニル製造設備 Plaquemine, LA & Freeport, TX
Dow Mitsui Chlor-Alkali JV (Freeport, TX)
持分
上記の付随設備 塩水その他(Freeport, TX &Plaquemine, LA)
エネルギー関連(Plaquemine, LA.)
グローバルな有機塩素(GCO) 製造設備

Carbon Tetrachloride, Chloroacetyl Chloride,
Chloroform, Methyl Chloride, Methylene Chloride,
Monochloroacetic Acid, Perchloroethylene,
Trichloroethylene, Vinylidene Chloride

Freeport, TX & Plaquemine, LA
Stade, Germany
グローバルなエポキシ事業と製造設備 Freeport, TX & Roberta, GA
Rheinmuenster, Germany
Pisticci, Italy
Baltringen & Stade, Germany
亀尾市(Gumi), 韓国
張家港市, 中国
Guaruja, Brazil

(
愛知県衣浦のエポキシ工場は停止済み)

以上の事業と設備の売却に加え、DowはFreeport, Texas の約 80万トンのクロルアルカリ設備を閉鎖する。
その分は2014年初めに稼動するダウ・三井物産JVの新設備(生産能力は苛性ソーダ約88万トン、塩素約80万トン)から供給する。

注)Dow Mitsui Chlor-Alkali JV:

三井物産とDowは2010年7月、両社が折半出資でテキサス州フリーポートで電解事業を行う合弁事業の設立に関する合弁契約書を締結、12月にJVを設立した。三井物産は約1.4億ドルを出資。

社名:Dow-Mitsui Chlor-Alkali LLC
能力:苛性ソーダ約88万トン、塩素約80万トン
操業:Dow
操業開始:2014年初め
製品:折半引取り
    三井物産は塩素はDowに委託してEDCにし、アジアで販売、
    苛性ソーダはDowを通じて米国で販売

  2010/7/2 三井物産とダウ、合弁でテキサスで電解事業 


同社は現在、「上流」の基礎素材から、景気変動に左右されず、利益率の高い「下流」の製品と技術に軸足を移している。

これまでに100億ドルもの事業を処理してきた。
主なものは下記の通りで、2009年頃の売却は、Rohm & Haas買収資金を確保する目的。

 2009年 Morton Salt
 2009年 
Total Group との合弁のオランダの石油精製 Total Raffinaderij Nederland NV のダウ持分(45%)
 2010年 Styron

 2011年 PP事業
 2013年 PPライセンス・触媒事業

   他方で戦略的成長分野に大規模投資を行った。
    
     2009年 Rohm & Haas 買収


     
シェール革命に対応したGulf Coastでの投資サウジでのSadara Chemical、その他


今回の対象となる塩素関連事業は過去数十年にわたり貢献してきたが、ダウが撤退しようとしている市場である。

同社の塩素チェーンは今後、以下の通りとなる。


Liveris CEOは、「下流のポリウレタンや農薬の原料用の塩素は保持する。コモディティ部分を売却する」としている。


これまでに下記の経緯があった。

2004年  テキサス工場のEDCプラント1系列を2005年末までに停止し、VCMの生産も縮小すると発表した。

それまで Dow はShintechが使用するVCM全量を特別な価格フォーミュラで供給しており、共存共栄の関係にあった。

2004年12月、信越化学はLouisiana 州 Plaquemine に塩素 45万トン、VCM 75万トン、PVC 60万トンの一貫生産を行う計画を発表した。
更に2007年5月には、テキサス州で電解工場(塩素50万トン)とVCM工場(825千トン)を建設する許可申請を同州環境庁に提出した。

これにより、DowとShintechの関係が薄らいだとの見方が出た。

しかし、Dowは2008年1月にテキサス州フリーポートでクロルアルカリ設備("Chlorine 7 ")の建設を開始すると発表、同時にShintechとのVCMの長期供給契約の更新を発表した。

Liveris 会長兼CEOは、「塩素はダウの機能製品事業の重要な原料で、ポリウレタン、エポキシ、特殊化学品、特殊プラスチック、農業化学品の将来の成長の鍵を担っている」と述べ、「この供給契約は新投資の操業を保証するもので、JVの形はとっていないものの、Shintechはクロルアルカリ事業での戦略的パートナーである」とした。
Shintechはテキサスの電解・VCM計画を無期延期とした。

2008/1/31  ダウ、テキサスでのクロルアルカリ設備新設、シンテックとのVCM供給契約更新を発表


2010年に入り、Dowと信越の姿勢に再び変化が見られた。

Dowは2009年2月に、2011年のスタートを目指すとしていた"Chlorine 7 "を経済情勢の悪化で延期すると発表した。
DowのLiveris CEOは2010年2 月
に、「信越とのパートナーシップは2011年には明らかに終了する」とし、「クロルアルカリは資本集約的事業で、ダウの大規模設備は有利であり、PVC業界とのパートナーシップも探求する。塩素でもAsset Light戦略を行う積もりだ」と述べた。

信越化学は2010年4月、Shintechがルイジアナ州PlaquemineでVCMの第2工場の建設工事を開始したと発表した。

2010/4/6  信越化学、米国でVCM増強 

三井物産とDowは2010年7月1日、両社が折半出資でテキサス州フリーポートで電解事業を行う合弁事業の設立に関する合弁契約書を締結した。

  2010/7/2 三井物産とダウ、合弁でテキサスで電解事業 


なお、
Dowは2006年にFort Saskatchewan (カナダ Alberta 州)の chlor-alkali と EDC プラントを停止している。


 

12月2日付けのWall Street Journal は、Dow Chemical が社名から Chemical を外す検討を行っていると報じた。
Liveris CEO はインタビューで、同社の事業はいまや"Chemicals"(化学品) にではなく、"Chemistry"(化学反応)にリンクしていると述べた。




大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス(旧称 日本網膜研究所)は12月2日、再生・細胞医薬事業に関する提携を発表した。

加齢黄斑変性等の眼疾患を対象としたiPS細胞由来網膜色素上皮細胞(RPE細胞)を用いるもので、世界初のiPS細胞技術を用いた再生・細胞医薬事業に向けたもの。

ーーー

RPE細胞は、網膜の外側にある一層の細胞で、主な機能は、血液網膜バリア、貪食能、栄養因子の分泌など。
これの異常が加齢黄斑変性(
age-related macular degeneration:AMD)である。

貪食能は隣接する視細胞から出る老廃物を貪食し、メンテナンスを行う機能で、これがうまく働かないと視細胞が損なわれ、視力低下につなが る。
またRPE細胞には、PEDF とVEGFという栄養因子を分泌して網膜を保護したり、外側から余計な血液成分などが入り込んでくるのを防ぐバリアとしての機能がある。

加齢黄斑変性は、欧米では失明原因の第1位、日本では失明原因の第4位となっている。 日本では50歳以上の人の約1%がかかり、高齢になるほど多い。

加齢黄斑変性には萎縮型(ドライ型)と日本に多い滲出型(ウェット型)がある。
ウェット型は、脈絡膜から異常な脈絡膜新生血管を生じ、網膜面に進展する。新生血管は脆弱であり
そのため出血、滲出物の貯留を認め、黄斑部の機能障害をきたし、偏視、視力低下などを来す。

現在、ドライ型には治療法がなく、ウェット型の現在の治療法(抗VEGF抗体薬)も根本治療でない。

ヘリオスはiPS細胞から生体内のRPE細胞と同じ形態と機能を持つRPE細胞を分化誘導することに成功している。

これを拡大培養し、RPEの懸濁液及びシートを作成し、それぞれドライ型、ウェット型の治療に使用しようというもの。



理化学研究所と先端医療振興財団は2013年7月30日、iPS細胞を使い、滲出型加齢黄斑変性の患者6人を対象に、目の網膜を再生する世界初の臨床研究を8月1日に開始すると発表した。2月に厚生労働省に計画を申請、7月19日に了承された。

理研の高橋政代プロジェクトリーダーは「新しい治療をつくるための第一歩。これからが長い道のりで、慎重に進めないといけないし、責任をひしひしと感じる」と決意を述べた。

ヘリオスがシートの作成を担当する。

網膜下の脈絡膜新生血管や傷害を受けたRPEを取り除いた後、iPS細胞から作製したRPEシートを移植用器具を用いて網膜下へ移植する。

ーーー

ヘリオス(Healios)は旧称 日本網膜研究所で、2013年9月に改称した。

Healiosは、Helios(ギリシャ神話の太陽の神)とHeal(癒す、治す)の二つの言葉から構成され、難治性疾患治療の新たな希望の光と、疾患に侵された患者様を癒していきたいという願いが込められている。

ヘリオスは理化学研究所認定ベンチャーで、理化学研究所が発明した日本発の技術に係る特許の実施許諾に基づいて、加齢黄斑変性の新たな治療法を開発することを目指しており、さらにこの治療開発を端緒として、視細胞移植、網膜再生薬、検査法開発などにより、現代の難治性網膜疾患を治療可能な疾患にすることを目指す。

大日本住友製薬は、第三期中期経営計画において、細胞医薬/再生医療の事業化に向けて取り組みを本格化することを掲げており、ヘリオスとの提携が、将来の細胞医薬・再生医療領域での事業基盤の構築に寄与することを期待している。

京都大学iPS細胞研究所と大日本住友製薬は2011年4月、難治性希少疾患の治療法創成を目的とする5年間の共同研究を行うことについて合意し、共同研究契約を締結した。
研究期間は2011年3月〜2016年3月(5年間)で、両者は疾患特異的人工多能性幹細胞(iPS 細胞)を用いて、病気が進行するメカニズムを解明し、疾患特有の疾患関連シグナルを同定してその経路を阻害する治療薬を探索する。
大日本住友製薬は、両者の共同研究で探索した化合物の評価・最適化・合成展開を行う。

大日本住友製薬は11月29日、兵庫県神戸市のポートアイランドにある「神戸医療産業都市」にiPS細胞等を用いた再生医療及び細胞医薬の研究拠点を開設すると発表した。
再生・細胞医薬事業推進室の研究活動の本拠地として、最先端で高度な医療クラスターを形成しつつある神戸医療産業都市の4施設(神戸バイオメディカル創造センター、神戸キメックセンタービル、神戸臨床研究情報センター、先端医療センター)内に研究室を開設する。

日本網膜研究所と大日本住友製薬は2013年3月28日、大日本住友製薬が日本網膜研究所に15億円の出資をし、日本網膜研究所との間でiPS 細胞技術の実用化に関する連携に向け独占的協議を行うことについて、基本合意書に調印した。
その後の協議の結果、今回の共同開発契約を締結した。

今回の共同開発契約に基づき、両社は、iPS細胞由来RPE細胞を細胞医薬品として、国内での早期の使用を可能にすべく、早期の臨床試験着手および新薬事法下での加齢黄斑変性等の疾患を適応症とする製造販売承認取得を目指す。
ヘリオスは、実施許諾契約に基づき、大日本住友製薬より契約一時金として5億円、開発時マイルストンとして最大11億円を受け取る。

大日本住友製薬が提供する最大52億円の開発費用を基に、国内におけるiPS細胞由来RPE細胞による細胞医薬品の開発を共同で行い、ヘリオスが製造販売承認の取得および販売を行う 。

また、両社は、将来的に本共同開発によって製品化されるRPE細胞医薬品に関して、その製造や販売促進を両社で共同して行うため、合弁契約を締結した。
2014年2月を目途として、合弁会社を設立する。

共同開発契約の対象:

(1) 製品 : iPS 細胞由来RPE 細胞
(2) 適応症 : 眼疾患(滲出型加齢黄斑変性など)
(3) 地域 : 日本

合弁会社の概要:

(1) 会社名 : 未定
(2) 事業内容 :眼疾患領域における医薬品・医療機器及び再生医療等製品の製造販売等
(3) 株主構成 : ヘリオス 50%、大日本住友製薬 50%

*合弁会社は、共同開発で得られた成果をヘリオスと大日本住友製薬からライセンスを受ける。
  成果に伴う対価を合弁会社から両社へ均等に配分する。





小泉元首相の原発に関する発言が、11月12日の日本記者クラブでの講演の以後、盛んに取り上げられている。

原発即時停止の理由は、「放射性廃棄物、核のゴミをきちんと危険のないよう保管する場所が、日本にはどこにもない」というもの。

2013/11/1   小泉元首相の「脱原発」論 


これに対する批判も多い。

安井至氏も「市民のための環境学ガイド」で述べている。

B君:しかし、小泉さんの言う「使用済み核燃料の問題」は、なかなかの難問だ。
A君:その通りですが、すでに相当大量の使用済み核燃料を抱えているので、これから多少増えたところで、本質的な差がでるとは思えないですね 。

ーーー

いろいろの資料から推定した使用済核燃料の状況は以下の通り。(残り年数以外は単位:トン) 

    貯蔵容量 貯蔵量  1回当たり取替量 同年間換算 残り年数
北海道電力  1,000 400 50

37.5

16.0

東北電力 東通 440 100 30 22.5 15.1
女川 790 420 60 45 8.2
東京電力 福島第一 2,100 1,960 140 105 1.3
福島第二 1,360 1,120 120 90 2.7
柏崎刈羽 2,910 2,380 230 172.5 3.1
日本原子力
発電
東海第二 440 370 30 22.5 3.1
敦賀 860 580 40 30 9.3
中部電力 浜岡 1,740 1,140 100 75 8.0
北陸電力 志賀 690 160 50 37.5 14.1
関西電力 美浜 680 390 50 37.5 7.7
高浜 1,730 1,160 100 75 7.6
大飯 2,020 1,430 110 82.5 7.2
中国電力 島根 600 390 40 30 7.0
四国電力 伊方 940 610 50 37.5 8.8
九州電力 玄海 1,070 870 90 67.5 3.0
川内 1,290 890 50 37.5 10.7
合計 20,660 14,370 1,340 1,005 6.3
(除く 東電・福島) (17,200) (11,290) (1,080) (810) (7.3)
日本原燃 六ヶ所村 3,000 2,945      
東電/日本原子力 むつ市中間貯蔵施設 3,000      


1) 同一原発内では貯蔵能力を融通できるとして計算。
2) 六ヶ所村の保管分の返却がない(現状通り保管)とした。

東京新聞の記事(2012年9月4日)では残り年数はもっと短くなっている。

東京電力柏崎刈羽、原電の東海第二、九州電力の玄海が特に短い。

このうち、柏崎刈羽と東海第二はむつ市の中間貯蔵施設が完成したため、これを利用できる。
但し、福島第一、第二の廃炉を進める場合、使用済み核燃料をいつまで福島のプールに置いておけるのかという問題がある。

ーーー

福島第一原発で廃炉に向け、4号機の使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始めた。

定期検査中だった4号機は、福島第一で最も多くプールに燃料を保管している。事故による爆発で大きな被害を受けたため、原子炉建屋の耐震性を懸念する指摘もある。

使用済燃料プール内の燃料ラックから1体ずつ取り出し、構内用輸送容器(キャスク)へ装てんして共用プール建屋のプール内へ移送し、ここで集中的に保管する。

 




上海環境エネルギー取引所で11月26日午前、炭素排出権取引が始まった。


中国政府は、年間排出枠割当量の配分による排出削減と省エネ圧力を企業に与え、コストと排出の削減による産業のアップグレード、それにグリーン開発を推進していくこととした。

国内7省・直轄市で炭素排出権取引のテスト事業を行うことが決まっており、本年6月に深圳市で全国に先駆けて排出権取引がスタートした。
上海市は炭素排出量管理の新しいシステムを確立し、全国で初めて排出量の集計ガイドと業界別集計法を定めた。
北京や重慶、天津、湖北省、広東省でも間もなく始まる見込み。

ーーー

2013年から2015年まではテスト段階となり、工業分野では鉄鋼、化学工業、電力など、非工業分野では航空輸送、空港、港湾、百貨店とホテルなど、年間の炭素排出量が一定の規模に達する上海市の企業合わせて191社がテストケースとなってい る。

テスト期間における各社の各年度の炭素排出量割当の総量を排出削減の要求に見合うよう設定する。
第1段階では、参加企業は排出量を無料で付与され、割り当てられた排出量では足りない場合に上海環境エネルギー取引所で不足分の排出量を購入する。
余剰分については、余剰の排出量を売却したり、次年度に繰り越すことができる。

当局者らは、各地方の取引制度で最も効果的なものを見極めてから、全国の制度を確立する意向を示している。


中国は世界最大のCO2排出国になっており、大気汚染が深刻化するなか、汚染対策に対する国民の要求が高まっている。

今月ポーランド・ワルシャワで開催された第19回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP19)では、中国代表団の団長は試験的排出量取引によってCO2が削減されるだけでなく、「産業の改善」が後押しされるという見方を示した。

当局では、排出量取引により、非効率な製鋼所やセメント工場の閉鎖を促すことになると期待を示している。

COP19では、2020年以降の新たな温室効果ガス排出削減の枠組み作りで、2015年3月末までの早期に各国が自主的な削減目標などを示すことに合意した。
中国は2020年までにCO2排出量を2005年比で単位GDPで40-45%削減すると宣言した。



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