2023年12月アーカイブ

旧ソ連を構成したロシアなど5カ国でつくるユーラシア経済連合(EAEU)は12月25日、サンクトペテルブルクでの首脳会議に合わせ、イランと関税の引き下げなどを定めた自由貿易協定(FTA)を締結した。

EAEUはロシア、アルメニア、カザフスタン、キルギス、ベラルーシで構成する。

2011/12/2 ユーラシア経済同盟 

2022年のEAEUとイランの間の貿易額は62億ドル。FTAの締結により、5~7年後には両者の貿易額が180億~200億ドルに達する見込みとしている。

現在のEAEUからイランへの主な輸出品は小麦や食用油、鉄鋼で、イランからEAEUへの主な輸出品は果物や野菜など。FTA締結後は工業製品で取引が拡大する可能性がある。


ユーラシア経済連合(EAEU)は、ユーラシア経済共同体(2000~2014年)を前身とする経済同盟。

ユーラシア経済共同体(2000~2014年) ユーラシア経済連合
ロシア 加盟国 2014/5/29
ベラルーシ 2014/5/19
カザフスタン 2014/5/19
ウズベキスタン
タジキスタン
キルギス 2014/12/23
アルメニア オブザーバー 2014/10/10
ウクライナ
モルドバ オブザーバー

EAEUが締結したFTAのうち、ベトナム、セルビアとのFTAが発効済み。

ベトナムとユーラシア経済連合EAEU間の自由貿易協定VN-EAEU FTAが2016年10月5日に発効した。ユーラシア経済連合にとって、自由貿易協定を結ぶのはベトナムが初めて。

セルビアとユーラシア経済連合(EEU)との自由貿易協定(FTA)が2019年10月25日に締結された。セルビアはこれまで、EEU加盟国のうちロシアとベラルーシ、カザフスタンとそれぞれ個別のFTAを結んでいたが、今回のFTAはそれに代わるもので、他のEEU加盟国のアルメニアとキルギスも加わり、1億8,300万人の市場をカバーする。

2019年にンガポールとのFTAを締結したが、まだ発効していない。

2019/10/5 ユーラシア経済同盟、シンガポールとFTAを締結、イランとは3年限定のFTA 

ユーラシア経済連合(EAEU)加盟国首脳で構成される最高ユーラシア経済評議会が2022年5月27日にオンラインで開催され、インドネシアとの自由貿易協定(FTA)の締結交渉開始を決定した。FTAによる食料品や化学品などの輸出拡大を見込んでいる。

他、エジプト、イスラエル、インドと締結交渉をしており、モンゴル、アラブ首長国連邦(UAE)と共同研究を行っている。

原子力規制委員会は12月27日、テロ対策の不備による東京電力柏崎刈羽原発への是正措置命令を解除した。事実上の運転禁止命令が解除された。

2年8か月ぶりに再稼働に向けた準備が再開されることになり、今後は、新潟県など地元自治体の同意が焦点となるが、地元では、失態を繰り返す東電への不信感が根強く、再稼働は全く見通せない。

新潟県は約11年をかけて福島事故の独自検証を続けてきたが、花角知事は「現時点で結論はない」と慎重な姿勢を崩していない。 知事は、県民の意思を確認するとして、知事選挙を行うことも選択肢の一つだという認識を示していて、最終的な判断が注目される。

柏崎刈羽原発の周辺住民らが東電を相手取り、原発の運転差し止めを求めた訴訟の第42回口頭弁論が12月25日、新潟地裁であったが、原告側は、東電が2002年のトラブル隠しの発覚以降、福島第1原発事故を経ても不正や不祥事を繰り返しているとし、「東電に原発を運転する適格性はない」と訴えた。

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東電は2013年9月に柏崎刈羽原発の6号機と7号機の審査を規制委に申請し、2017年12月に安全審査に合格した。 (1~5号機は未申請)

しかし、2020年以降、大きな問題が相次いで発生した。

2020年9月に社員が中央制御室に不正に入室する問題が発生した。

東電は7号機の新規制基準に基づく安全対策工事が2021年1月12日に完了したと発表したが、その後、施行ミスや未完のものが次々と見つかり、2月26日に検査日程を「未完」と変更した。他の箇所でも 問題がないか点検する。

さらに、2020年3月以降、テロリストなどの侵入を検知する複数の設備が壊れ、その後の対策も十分機能していなかったことが明らかになった。

原子力規制委員会は2021年3月16日、柏崎刈羽原発の核物質防護設備の機能一部喪失について、安全重要度評価 を「赤」とし、3月23日に「対応区分:第4区分」として扱うことを伝えた。

核セキュリティー分野で「赤」という判定は、日本で初めてというだけでなく、同種の検査制度を20年にわたって運用しているアメリカでも近年例がない という。
東電の核セキュリティーは最低レベルであり、原子力発電事業者としての適格性が問われる。

原子力規制委員会は4月14日、柏崎刈羽原発のテロ対策の不備を問題視し、原発再稼働に必要な核燃料の移動や装塡を禁じる行政処分の是正措置命令を決定した。規制委は27項目の是正を東電に要請した。

2021/3/29 柏崎刈羽原発の再稼働、見通しつかず

東京電力は2021年12月24日、7号機の消火設備の配管でずさんな溶接が74カ所見つかったと発表した。1000カ所以上の溶接を本来の仕様通りに再施工する。再施工の進捗をみながら、すでに30カ所の不適切溶接を確認している6号機の追加調査も検討する。

2022/1/5 東京電力柏崎刈羽原発でまたトラブル

その後、事務局の原子力規制庁が東京電力による再発防止の取り組みなどを検査してきた結果、12月に提出された報告書案では「自律的に改善できる仕組みが定着しつつある」と評価され、これを受けて規制委員会は、現地調査や東京電力の社長との面談を行い改善状況を確認してきた。

その結果、命令解除を判断する条件はそろったとして、27日の定例会合で、最終的に判断する方針を決めた。

テロ対策については、規制委が指摘した27項目の課題が是正され、劣化の兆候を自ら発見して改善する仕組みが新たに整備されたとした。規制委は今後も通常の検査で監視を続ける。

適格性については、東電が柏崎刈羽の保安規定で約束した「7項目」にのっとって活動していると判断した。

1)福島第一原発の廃炉をやりきる覚悟と実績を示す
2)柏崎刈羽原発の安全対策に必要な投資を行い、安全性向上を実現
3) いかなる経済的要因があっても安全性の確保を前提とする
4) 安全を最優先した経営上の判断を行い、内容を速やかに発信
5) 規制基準の順守にとどまらず、自主的に発電所の安全性を向上する
6) 社長をトップとして原子力安全の責任を担う
7) 関係部門の異なる意見や知見を一元的に把握し、発電所の安全性を向上する

12月27日に開かれた会合で、規制委員会は報告書案を了承し、自律的な改善が見込める状態であることが確認できたとして命令を解除することを全会一致で決めた。

「対応区分を「第4区分」から「第1区分」に変更することが決定された。
 また、原子炉設置者としての適格性について再度確認した。

しかし、規制委は12月20日の会合で、「条件付き」の判断であることを強調した。テロ対策の不備は一定程度改善したとする一方、委員からは今後も厳しく監視していく必要があるとの声が相次いだ。トラブルが続いた東電の体質に、不信感を拭いきれていないことをにじませた。

新たな課題が生じても自律的に対処できるようになったと判断したものの、「普通の状態になっただけ。これがスタート」(山中伸介委員長)など継続に向けた努力を求める意見も相次いだ。

「規制委の判断は、東電にお墨付きを与えたことにはならない」、「東電が生まれ変わったとか、非の打ち所のない組織になったと認定することではない」との発言もあった。

オックスフォード英語辞典を出版するオックスフォード大学出版局がこのほど、毎冬恒例の「今年の流行語」を発表、2023年は「Rizz」が大賞に選ばれた。

言語専門家チームや一般の投票によって決まる「Word of the year」で、SNSをにぎわせたZ世代のスラング「Rizz」が3万2000以上の票を獲得し、選ばれた。

この用語は「charisma(カリスマ)」の中間の言葉をとったもので、「他者を自身のセンスや魅力などで惹きつける力」を指す。

動詞としても、たとえば「rizz up」のように使われる。これは「chat up(相手を誘惑する)」と同様に、「人を惹きつける、誘惑する」という意味をもっている。

また「rizz」がたくさんある人のことを「rizzler」とも呼ぶ。

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過去の「今年の流行語」は下記の通りで、2005年には日本で開発され、2004年11月に英国の新聞Timesが採用し、大ブームとなった数独=「Sudoku」が選ばれている。


2022年 
goblin mode

「goblin mode」は俗語で、「in goblin mode」や「to go goblin mode」という表現で使われる。コロナ禍の2022年2月にSNSで流行した。

「社会規範や期待を否定する形で、堂々かつ自己中心的、怠惰、ずぼらで強欲である行動のタイプ」

普通の生活に戻ることを拒否する人々や、SNS上で表現される達成不可能な美的基準や持続不可能な生活に反抗する人々の、一般的な雰囲気を捉えたもの。

2021年 vax 

vaccine(ワクチン)

2020年 Words of an unprecedented year

「前例のない年を表す単語たち」

環境問題、政治経済、社会運動、ソーシャルメディア、科学技術、世界英語の広がり」など様々な分野ごとに、新しい語が生まれ、1つの単語には絞れなかった。

2019年 CLIMATE EMERGENCY

気候変動を低減するあるいは抑止するための措置が急務である状況

2018年 Toxic

ネガティブな意味で、社会問題・政治問題のほか、あらゆる物事や状況とセットで使われた。

  • toxic waste (有毒廃棄物・ゴミ)
  • toxic workplace (有害な職場)
  • toxic relationship (害のある関係)

2017年 Youthquake

youth (若者) と quake (地震)

若者の行動や影響から生ずる著しい文化的、政治的、社会的変化」:若者の強力な力が政治にまで影響を及ぼすようになった。

2016年 Post-Truth

「非常に緊迫した」政治的な1年を反映する言葉として選んだ。

客観的事実よりも感情的な訴えかけの方が世論形成に大きく影響する状況を示す形容詞。6月のブレグジットと11月の米大統領選を反映した選択。

2015年 

初の絵文字「Face with Tears of Joy」うれし泣きの顔

世界で最も使われている絵文字(英国での利用率は前年比20%増、米国でも17%増)

2014年 vape

電子タバコを使用すること、または器具自体
ロンドンで初のベープカフェがオープン

2013年 selfie

自分撮りした写真

2012年 omnishambles

BBCテレビの風刺政治コメディ "The Thick of It" から生まれた造語で、「omni=すべて」と「shambles=大混乱」をくっつけた。ロンドン五輪に関する失言や不適切発言、欧州金融危機などによる混乱状態ならびに対処の誤りを表す。

2011年 squeezed middle

ミリバンド労働党党首(当時)がBBCのラジオ番組で口にした言葉で、労働党は中産階級をターゲットにする必要があると話したときに使った表現で、直訳すると「圧迫されている中間層」

2010年 big society

キャメロン首相が2010年7月、big societyとは何かについて演説を行った。「大きな社会とは言い換えればliberalism(自由主義)であり、empowerment(権限付与)であり、freedom(自由)である」と説明し、「中央官庁のエリートから街の男女へ権力を再配分する」との考えを示した。

Teslaと中国(上海)自由貿易試験区臨港新片区管理委員会は12月22日、土地の取得に関する調印式を行い、上海に大型蓄電装置を製造する新たなギガファクトリーを建設するプロジェクトが正式に始動したことを明らかにした。

Teslaにとって米国以外で初の大型蓄電装置を生産するギガファクトリーで、計画では2024年の第1四半期に着工し、第4四半期に稼働開始する。

超大型商用バッテリー「Megapack 」を生産し、グローバル市場に供給する計画で、初期の計画では「Megapack 」を年間1万台生産する。蓄電の規模は40ギガワット時(GWh)。Megapack は1ユニットで約3.9メガワット時(MWh)の蓄電が可能で、これは約3600世帯の1時間の電力消費量に相当し、再生可能エネルギーをより効率的に貯蔵・配分できる。

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Teslaは2023年4月9日、上海市に大型蓄電装置「Megapack 」の工場を建設すると発表した。新工場の生産能力は年間1万ユニット、容量ベースで同約40GWh(ギガワット時)に上り、中国国内だけでなく世界各国に輸出する。

同社は上海市南東部の臨港新区に年間110万台のEV工場の「ギガファクトリー」を構える。Megapack の工場も同じく臨港新区に建設される。

2019/10/25 Tesla、中国工場の試運転開始 

臨港新区は、「このプロジェクトは上海市が外資企業の積極誘致だけでなく、市場メカニズムの導入や法治の推進、国際化されたビジネス環境整備などに注力してきた成果だ。対中投資に対する外資企業の信頼を高める効果がある」と述べ、歓迎している。

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現時点ではMegapack はカリフォルニア州の工場だけで製造されている。その生産能力は上海の新工場と同じ年間40GWh。

Teslaは電池セルの一部を自社生産するとともに、外部からも電池セルを調達し、車載電池パックや蓄電装置に組み込んでいる。同社の電池セルのサプライヤーは日本のパナソニック、韓国のLGエナジーソリューション、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)と比亜迪(BYD)の4社。

Megapack にはもともと三元系のリチウムイオン電池が使われていた。しかし2021年と2022年に起きた発火事故の後、CATLから(エネルギー密度が相対的に低い)リン酸鉄系のリチウムイオン電池の調達を開始した。

中国は12月21日、レアアース(希土類)の抽出・分離技術の輸出を禁止した。

半導体材料となるガリウム・ゲルマニウムなどの輸出規制に続く措置で、戦略的鉱物で支配的地位を維持する狙いがあるとみられる。

 中国は今年8月に半導体材料のガリウムやゲルマニウムの輸出規制を導入した。

2023/7/6 中国が半導体材料ガリウムなど輸出規制

 12月1日からはEVの主要材料であるグラファイト(黒鉛)製品の一部も輸出を許可制にした。

中国の商務部と税関総署は10月20日、「輸出管理法」「対外貿易法」「税関法」の規定に基づき、国家の安全と利益を守るため、商務部・国防科学技術工業委員会・税関総署公告2006年第50号「黒鉛類関連製品に対して臨時輸出管理措置を実施する決定」に記載の品目を調整し、一部の黒鉛品目に対して輸出管理を実施すると発表した。12月1日から実施される。

人造黒鉛や天然黒鉛のうち、特定の特性を満たす品目について、無許可での輸出を禁止するとした。輸出事業者はこれらの品目を輸出するに当たって、省レベルの商務主管部門を通じて商務部に申請を行い、その審査・承認を経て「両用品目および技術輸出許可証」を取得する必要がある。

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レアアースの加工技術について、商務部は2022年12月に、国家安全保障と公共の利益の保護などを目的とする「輸出禁止・制限技術カタログ」に追加する方向でパブリックコメントを募集していた。

今回、レアアースを使った高性能磁石などの製造技術の輸出を禁止し、レアアースの精錬などに関連する技術についても輸出を制限すると発表した。

2023年12月21日 2023年商務部・科学技術部告示第57号

「中華人民共和国外国貿易法」および「中華人民共和国技術輸出入管理規定」に基づき、商務部と科学技術部は、「中国輸出禁止・制限技術目録」を公表し、2020年第38号(「中国輸出禁止・制限技術目録の調整内容」)を同時に廃止すると発表した。 軍民両用の技術は輸出管理の対象となる。

希土類金属と希土類磁石の製造技術を海外移転禁止品目リストに掲載した。レアアースの抽出や加工に関する技術を明記。高性能磁石のネオジムやサマリウムコバルトを作る技術も対象とした。 

レアアースを使った高性能磁石は、EVのモーターなど、幅広い製品に使われているが、中国が世界のレアアースの産出量のおよそ7割を占めているほか、アメリカや日本など各国が高性能磁石を製造するためのレアアースの精錬や加工といった工程を中国に依存している。

中国は、こうした技術を囲い込むことで、半導体などの先端技術をめぐり、中国への輸出規制を強めるアメリカをけん制する狙いがある。

欧米は独自のレアアース加工産業の振興に力を入れているが、今回の禁輸措置は電気自動車(EV)のモーターや医療機器、兵器に使われ、中国が事実上の独占状態にあるいわゆる「重希土類」への影響が最も大きいとみられる。中国は世界の重希土類の99.9%の分離を手掛けており、欧米が新設している加工設備は主にネオジムやプラセオジムなどの軽希土類を扱っている。

中国は欧米のレアアース企業が苦戦しているレアアース精製のための溶媒抽出工程を確立している。

新たな規定はレアアース製品の出荷そのものには影響しないが、中国国外でレアアース産業を発展させようとする外国勢の取り組みを阻止しようしている可能性もあるされる。

横浜市経済局企業誘致・立地課は12月21日、Samsung Electronicsが横浜市西区の「みなとみらい21地区」に半導体の次世代パッケージング技術の研究拠点「Advanced Package Lab」を新設すると発表した。

Samsungの投資規模は今後5年間で400億円(約3500億ウォン)を上回ると予想され、政府がその半分、最大200億円の助成金を支給する。

Advanced Package Labは、合計2000坪の土地に、技術研究ができる施設やオフィスなどを構え、2024年度に開設する予定。研究開発の概要として、「先端パッケージ技術は、半導体業界が迎えつつある微細化の限界を突破するための方法の一つとして注目されている。異なる半導体を水平および垂直につなげるヘテロジニアスインテグレーションを使い、小さなパッケージによりたくさんのトランジスタを集積し、1つのパッケージにさまざまな機能を実装できるようにする」どと説明している。

「横浜はパッケージ関連企業が多く、優秀な大学と人材もあるため、業界、大学、研究機関などと協力するのに適した場所の一つだ」としている。


経産省は同日、ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業の開発テーマ「高性能コンピューティング向け実装技術」に関して、採択審査委員会での審査を経て、日本サムスンを採択先として決定したと発表した。

日本サムスンの採択事業テーマは「高性能大面積3.xDチップレット技術の研究開発」で、ポスト5G情報通信システムを支えるHPC(高性能コンピューティング)/AI(人工知能)用プロセッサ向けチップレットモジュールに関し、処理性能向上のためのさらなる高集積化とチップ間データ転送帯域の向上、大面積化と製造性の向上によるコストダウンおよび電源の安定供給の実現を目的に、2.xD/3Dを組み合わせた「3.xDチップレット技術」を開発するとしている。

この開発目的達成のため、同社は専用のパイロットラインを構築。チップを効率良く3Dに実装する技術「ファインピッチChip to Waferボンディング」、より多くのチップを集積させるための大型化技術「高機能大面積樹脂インターポーザ」、大型化しても反りを抑えて製造性を維持するための技術「大面積サブストレートの微細フリップチップ実装技術」、異種多チップモジュール内でも安定した電源を供給する技術「電源特性向上技術」の研究開発を、日本国内の材料/装置メーカーと連携を図りながら行っていく方針。

経産省は最大で2分の1を補助する。半導体支援のために用意した「ポスト5G基金」から拠出する。

次世代半導体の国産化をめざす共同出資会社「Rapidus」が北海道に建設する新工場に対しては、政府はポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の採択先として、2回計3300億円を補助している。

2023/4/26 政府、ラピダスに2600億円の追加補助

他に、半導体支援として下記の2つがある。

1) 経済産業省の「半導体の安定供給確保のための取組に関する計画(供給確保計画)」 概要と、承認済みの計画(今回を含め18件)

2) 特定半導体生産施設整備等計画認定制度があり、これまでTSMC、キオクシア、マイクロンメモリ(2件)が多額の助成金を認められている。

戦時中に日本本土で働かされた韓国の元徴用工7人が日本製鉄(旧新日鉄住金)を相手に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、韓国大法院(最高裁)は12月21日、同社に賠償を命じた高裁判決を支持し、原告の勝訴が確定した。

女子勤労挺身隊として動員された韓国人3人と遺族1人が三菱重工業へ損害賠償を求めた訴訟も、賠償を命じた判決が確定した。

一、二審では原告が製鉄所や飛行機工場で過酷な労働を強いられたことを認め、元徴用工に対して1人当たり1億ウォン(約1100万円)、元挺身隊員には1人当たり1億~1億5千万ウォン(約1650万円)の賠償を命じ、日本企業側が上告していた。
今回の裁判の元徴用工や元挺身隊員はいずれも故人となり、遺族らが裁判を引き継いでいる。

日本政府は元徴用工の補償問題は1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決したとの立場をとる。しかし、韓国大法院は2012年に「植民地支配に関わる不法行為の損害賠償については請求できる」との解釈を提示した。

韓国大法院は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で被害者の勝訴を確定した。日本製鉄(旧新日鉄住金)に対し、戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者に1人あたり約1000万円の賠償を命じた。

大法院判決(11対2の決定)は、戦時中に行われた日本統治下の朝鮮半島から日本本土の工場などへの動員は「日本政府の不法な植民地支配や、侵略戦争の遂行と結びついた日本企業の反人道的な不法行為」と認定していた。

原告側は2019年1月と3月の2回にわたり、日本製鉄とPOSCOのJVのPOSCO-NIPPON STEEL RHF JV の株式9億7300万ウォン(約8700万円)相当を差し押さえた。

大邱地裁浦項支部は2021年12月30日、日本製鉄が韓国内に所有する資産、POSCOとの合弁会社「PNR」の株式の売却命令を出した。

韓国大法院は2018年11月29日、三菱重工業に対し、第2次世界大戦中に同社の軍需工場で労働を強制された韓国人の元徴用工らに対する賠償支払いを命じる判決を下した。

1件は、元女子勤労挺身隊員の女性4人と親族1人に対し、それぞれ最大で1億5000万ウォン(約1500万円)の賠償を命じた。この女性らは1944年、名古屋市にあった三菱重工の航空機製作工場で、無償労働を強制されたと話している。
もう1件の訴訟では、原告6人(うち生存者2人)にそれぞれ8000万ウォン(約800万円)の賠償支払いが命じられた。

韓国の大田地裁は2019年3月25日、三菱重工業の商標権2件と、三菱重工業が韓国国内に保有中の770件余りの特許権のうち 発電技術特許などの特許権6件の差し押さえを決定した。

韓国大法院は2022年8月にも三菱重工業が韓国国内にもつ資産の売却命令を確定させる予定であったが、(恐らく韓国政府の介入で)最終判断をしないまま、現在に至っている。

元徴用工や元挺身隊員をめぐる大法院判決は2018年以来5年ぶり。  韓国最高裁では元徴用工や元挺身隊員を巡り、今回の2件を含め9件の訴訟が係争中。最高裁は今月28日、三菱重工を訴えた2件、日立造船を訴えた1件についても判決を言い渡す。

元徴用工や元挺身隊員をめぐる大法院判決は2018年以来5年ぶり。  韓国最高裁では元徴用工や元挺身隊員を巡り、今回の2件を含め9件の訴訟が係争中。最高裁は今月28日、三菱重工を訴えた2件、日立造船を訴えた1件についても判決を言い渡す。

付記

戦時中に強制労働させられたとして元徴用工と元挺身隊員が起こした裁判で、韓国の最高裁は12月28日、三菱重工業を訴えた2件、日立造船を訴えた1件についてそれぞれ上告を棄却し、企業に賠償を命じた2審判決が確定した。


付記

日立造船の敗訴が確定した訴訟で、同社が2019年に賠償金相当額を「供託」していたことが判明した。

同社は2審で敗訴した直後の2019年1月に「強制執行を防ぐため」として、6000万ウォン(約660万円)を韓国の裁判所に供託した。

原告側は訴訟の賠償金として供託金を受け取る手続きを行う方針。

供託金を原告側が受けとれば、日立造船が賠償金を支払ったことになる。

付記

ソウル中央地裁は2024年1月23日、日立造船被害者のLさん側が供託金を賠償金として受け取るために申し立てていた差押取立命令の申立てを認めた。

韓国最高裁は2024年1月11日、戦時中に八幡製鉄所(現在の北九州市)で強制労働させられたとする元徴用工の遺族らが日本製鉄(旧新日鉄住金)を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、日本製鉄の上告を棄却、約1億ウォン(1100万円)の賠償を命じる判決が確定した。2023年12月以降、最高裁の判断が下るのは3回目で、いずれも日本側が敗訴している。

ーーー

韓国の朴振外相は2023年3月6日、元徴用工問題の解決策を正式に発表した。韓国最高裁が日本企業に命じた賠償金の支払いを韓国の財団が肩代わりする。

骨子:

・ 韓国政府傘下の公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」が原告に判決金相当の金額を支払う。

新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工業を相手取った3件の訴訟で判決が確定している。韓国外務省によると賠償対象となる元徴用工は故人を含め15人いる。

聯合ニュースによると15人分の判決金と利子の総額は40億ウォン(約4億円)規模になる。遺族を含む原告に支給する。

・ 係争中の訴訟も、原告の勝訴が確定した場合は財団から支給する。

韓国の裁判所では、元徴用工らが日本企業に賠償などを求めた同様の訴訟が多数、係争中。

・ 肩代わりの財源は民間の自発的貢献により調達

1965年の日韓請求権・経済協力協定に基づく日本の経済協力で恩恵を受けた韓国鉄鋼大手ポスコなどが想定されている。

付記 韓国鉄鋼大手ポスコは3月15日、元徴用工を支援する韓国政府傘下の財団に40億ウォン(4.1億円)を拠出すると表明した。

被告の日本企業の資金拠出は前提としていない。日本政府は、元徴用工問題は1965年の協定で最終的に解決済みとの立場で一貫し、大法院判決は国家間の約束を覆す「国際法違反」と主張してきた。被告の日本企業の拠出がなければ、日本側も受け入れが可能となる。

別途、経団連と、韓国側のパートナーとなる全国経済人連合会は共同で「未来青年基金」(仮称)を設立する予定で、基金は留学生への奨学金支給など若者世代の交流増進に活用されるという。

・ 原告に判決金の受け取りに理解・同意を求める努力を継続する。

・ 歴史問題の真の解決に向けた研究と、未来世代に対する教育を強化


朴外相は「膠着した日韓関係をこれ以上放置せず、国益の次元で悪循環の輪を断ち切る」と話した。「これが最後の機会だと思う」と強調した。小渕恵三首相と金大中大統領による1998年の日韓共同宣言を「発展的に継承する」と言及した。

日本側には「日本政府の包括的な謝罪、日本企業の自発的な寄与で呼応することを期待する」と求めた。経団連と韓国の全国経済人連合会(全経連)による共同事業を念頭に「両国の経済界の自発的な寄与を検討中と聞いている。日本政府も反対しないという立場と理解している」と明らかにした。

2023/3/9 韓国、元徴用工解決策を発表 (過去の経緯も)

韓国政府は上記に基づき、政府傘下の財団が賠償金相当額を支払う「第三者弁済方式」による手続きを進めている。 但し、一部の原告は政府案を拒否している。

今回勝訴が確定した原告らに対しても適用する方針とされる。


日本製鉄は12月18日、米国の高炉・電炉一貫の鉄鋼メーカーである United States Steel Corporation(U. S. Steel)を買収することを決定したと発表した。

本買収は、買収のために設立した子会社と U. S. Steel とを合併する方法(逆三角合併)により実行する。

U. S. Steel の発行済株式が合併対価(1株当たり 55 米ドル)を受領することができる権利に転換されて消滅し、それと同時に本買収のために設立した子会社の発行済株式が U. S. Steel の株式に転換されることにより、U. S. Steel は 日本製鉄の完全子会社となる。

合意した取得価格(1株当たり 55 米ドル)は U. S. Steel 株式の 2023 年12 月15 日の終値(39.33 米ドル)に対して 40%のプレミアムを加えた価格となる。

US Steel の株価は8月上旬から急騰している。

8月13日に US Steel は北米におけるフラットロール鋼の生産者で鉄鉱石ペレットの製造業者でもあるCleveland-Cliffsの買収提案を拒否した。

Cleveland-Cliffsは1株当たり、現金17.50ドルと自社株1.023株での買収を提案した。1株あたり32.53ドルに相当、合計72億5000万ドルとなる。11日終値である22.72ドルを43%上回る。

日本製鉄の買値の55ドルは、この時点での株価22.72ドルの2.4倍という高値である。発表後の18日終値は49.59ドルで、買収提案額に届かなかった。

Cleveland-Cliffs 提案の買収額 72億5000万ドルに対し、日本製鉄の買収総額は2倍弱の141億26百万ドル(約2兆100億円)で、負債込みの企業価値は148億68百万ドル。

この資金調達については、主として主要取引銀行からの借入金で対応する予定。

なお、バイデン政権は大企業のM&Aを厳しく審査する姿勢を示しており、承認されるかどうか懸念される。

付記

米ホワイトハウスは12月21日、日本製鉄によるUSスチール買収を巡り、安全保障上の観点から認可するか精査すると発表した。国家経済会議(NEC)のブレイナード委員長は声明で「たとえ緊密な同盟国からの買収であっても、真剣な精査に値するとバイデン大統領は考えている」と述べた。

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U. S. Steel は、粗鋼生産量米国有数の高炉・電炉一貫鉄鋼メーカーで、自動車・家電・建材用途等の薄板、エネルギー分野用途の鋼管等を、米国と欧州(スロバキア)で製造・販売して いる。粗鋼生産能力は約 20 百万トンで、競争力ある高炉一貫製鉄所に加え、高級鋼の生産が可能な先端的な電炉ミニミル、北米生産拠点で使用する鉄鉱石を自給できる鉄鉱石鉱山などの有用な資産を保有している。

また、電炉ミニミルの能力増強、電炉の原料となる直接還元鉄用ペレット製造設備の新設等、カーボンニュートラル化にも資する成長投資を行っている。

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日本製鉄はグループとして「グローバル粗鋼1億トン体制」を目指している。一貫生産体制の拡大に当たっては、買収・資本参加等による一貫製鉄所の取得、既存拠点の能力拡張を基本戦略としており、2019 年12 月にインドの Essar Steel India Limited(現 AM/NS India)、 2022 年3月にタイの G Steel・GJ Steel を買収した。

今回の買収は、日本製鉄の海外事業戦略に合致するだけなく、規模及び成長率が世界的に見ても大きいインド、ASEANに加えて、先進国である米国に鉄源一貫製鉄所を持つことによるグローバル事業拠点の多様化の観点からも、大きな意義のある投資と判断した。今後、この3つのグローバル重点拠点の拡張・充実により、企業価値の更なる向上を目指す。

本買収により、同社グループのグローバル粗鋼生産能力(30%以上出資先の公称能力単純合計)は約 86 百万トンまで拡大し、更なる広がりを持つことになる。

ドイツ政府は気候変動対策として2030年までに1500万台のEV普及を掲げ、2016年からEVの新車購入補助制度を始めた。これまでに210万台のEVに対し、100億ユーロ(約1兆5500億円)の補助金を支払った。

政府は11月27日、気候変動対策などに使う基金を大幅に減らし、インフレ対策などにあてる基金を今年末で廃止すると発表した。電気自動車(EV)の購入時に支給する補助金を停止する。

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ドイツ連邦経済・気候保護省は2022年12月9日、バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCEV)の新車購入時の補助金「環境ボーナス」制度の2023年以降の変更内容を正式発表した。今回の変更は2023年1月から適用、補助制度は2024年12月末で終了する。ただし、2023年以降は補助金財源がなくなり次第、支給終了となる。

PHEVへの補助金支給額はそれまで、(1)の場合は連邦政府支給分4,500ユーロ(これに自動車メーカー負担分2,250ユーロが加算され、総額6,750ユーロ)、(2)の場合は連邦政府支給分3,750ユーロ(同じく自動車メーカー負担分1,875ユーロが加算され総額5,625ユーロ)であった。

BEVとFCEVについては、連邦政府分の補助額を2023年1月から、(1)車体価格が4万ユーロ以下の場合は4,500ユーロ(それまでは6,000ユーロ)、(2)車体価格が4万ユーロ超6万5,000ユーロ以下の場合は3,000ユーロ(同5,000ユーロ)に減らす。

2024年1月からは、車体価格4万5,000ユーロ以下の車両に対してのみ、3,000ユーロを助成する。さらに、当初方針どおり、2023年9月から助成対象者を個人に限定し、企業などへの購入助成は終了するほか、これまで6カ月だった最低保有期間を2023年1月から12カ月に変更する。

また、それまでの制度では、自動車メーカーが連邦政府助成分の半分に相当する額を負担しており、このメーカー加算は継続する。例えば、2023年1月に車体価格が4万ユーロ以下のBEVを購入した場合、連邦政府助成分4,500ユーロに、メーカー負担分2,250ユーロが加算され、総額6,750ユーロが助成される。

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2022年12月の発表では、「補助制度は2024年12月末で終了する。ただし、2023年以降は補助金財源がなくなり次第、支給終了となる」としていたが、新型コロナウイルス対策で使わなかった過去の予算の転用が違憲となり、補助金を捻出できなくなった。

独憲法裁判所は11月15日、2021年度予算でコロナ禍の対応で借り入れた未使用の600億ユーロ(約9.8兆円)を気候変動対策などの基金に回した2022年の補正予算が、憲法に相当する基本法に違反すると判断した。

裁判長は、「ショルツ政権がコロナ・パンデミック対策予算のうち余った600億ユーロの国債発行権を、無関係の特別予算『気候保護・エネルギー転換基金』(KTF)に流用したのは憲法違反で、ショルツ政権が2022年初めに成立させた2021年度の2回目の補正予算は無効」とした。

判決の背景にあるのは、憲法(基本法)第109条の財政規律ルール「債務ブレーキ」。2009年に連邦議会で可決されたこの制度によって、連邦政府は2016年以来、GDPの0.35%を超える財政赤字を禁止されている。この債務ブレーキが一因となって、ドイツは2014年以来6年間財政黒字を記録した。

だが2020年にはコロナ・パンデミック、2022年にはロシアのウクライナ侵攻という未曽有の事態が発生した。憲法によると、自然災害や深刻な不況など政府がコントロールできない異常事態には、債務ブレーキの適用を一時的に停止することができる。

このため連邦議会は、2020~2022年の3年間については、債務ブレーキを停止した。ドイツ政府は2020年3月、コロナ対策費用として、経済安定化基金(WSF)を創設し、2000億ユーロの資金を国債発行によって追加的に調達できることになった。

ショルツ政権は2021年にコロナ対策に充てられる予定だった経済安定化基金の予算のうち、600億ユーロの国債発行権が使われずに残っていたことに気付き、余った600億ユーロの国債発行権を、経済グリーン化を主目的とする『気候保護・エネルギー転換基金』に流用させた。さらに債務ブレーキの適用を免除した年度が終わった後にも、政府が追加的に国債を発行できるように規則を変更した。

憲法裁判所は、ショルツ政権がコロナ対策に充てるはずだった国債発行権を、経済のグリーン化という全く違う用途に流用する際に、その理由を十分に開示しなかったことや、債務ブレーキが免除された会計年度が終わっても、特別予算を理由にして新たな借金をできるようにした点を違憲と認定した。

『気候保護・エネルギー転換基金』からの助成が予定されていたプロジェクトは、ほかに、産業界の脱炭素化(230億ユーロ)、鉄道インフラの整備(125億ユーロ)、外国の半導体工場の誘致のための補助金(72億ユーロ)など多岐にわたる。

このため同基金を活用していたEV購入補助についても「できるだけ早く終了する」となり、独経済・輸出管理局は12月16日、EV購入補助金の申請が17日以降できなくなると発表した。

今回は補助金停止の事前告知がなかったため、大きな駆け込み需要が起きない。

フランス政府も12月15日から中国などアジアで生産し輸入するEVについて新たに補助金の対象外とすると発表した。テスラやルノーの人気車種に、5000~7000ユーロの補助金がつかなくなる。

これまでフランスでは、どのEVを購入する場合でも、カーユーザーに対して一律の補助金を給付してきた。しかし10月10日に、EVの購入補助金の額を、生産から流通、登録に至るまでに生じる温室効果ガスの排出量に応じて決めるように制度を変更した。

仏政府は12月14日、電気自動車(EV)販売の補助金(1台当たり5000~7000ユーロ)支給の対象となる車種を発表した。部材の生産や車両の組み立て、輸送などの過程で生じる二酸化炭素量に応じた「環境スコア」を算定し、規定に満たない車種は12月15日以降に支給の対象外とする。

2023年の仏国内販売上位10車種のうち、対象外となったのは中国で生産する米テスラのモデル3、ルノーの「ダチア・スプリング」、中国の上海汽車集団が生産する英MGモーターの「MG4」。いずれも中国などで生産するアジア製で、これまで補助金の支給対象だった。同じテスラ車でも、ベルリンで生産するモデルYは引き続き支給対象となった。

新制度は石炭火力発電が多く、輸送距離も長いアジア製の車種が不利になるため、中国や韓国などの自動車生産国は反発していた。

ルメール経済・財務相は「これまで数億ユーロの公的資金が炭素排出量が非常に大きい車種に流れていた」と指摘し、制度改定の意義を強調した。

EVはエンジン車と比べ5割程度価格が高い。EU域内で1、2番目に大きな自動車市場である独仏が相次ぎ補助金を停止・縮小したことで、EUが政策として進めるEVシフトにブレーキがかかる可能性がある。

東京ガスは12月16日、100%子会社の東京ガスアメリカが出資するTG Natural Resources LLCを通じて、Quantum Energy Partnersが出資する米国テキサス州・ルイジアナ州における天然ガス開発・生産事業会社 Rockcliff Energy II LLCの全株式を取得することを決定した。2023年12月29日に約2,700百万米ドル(約4,050億円)で取得完了予定。

買収資金は協議中だとしたうえで「Rockcliffの持つローンを引き継いだり担保付きの融資を受けるなど、キャッシュと併せて最適な組み合わせを考えていく」としている。



東京ガスは2017年5月、テキサス州においてガス等の開発を行うためにCastleton Commodities International が設立したCastleton Resources の株式30%を取得し、米国でのガス開発事業の権益を保有することとなった。

Castleton Resourcesは、テキサス州東テキサスに約660km2の鉱区を保有しており、ヘインズビル層におけるシェールガス開発事業や、コットンバレー層におけるタイトサンドガス開発事業等を、傘下の操業会社を通じて行っている。


東京ガスは2020年7月29日、Castleton Resourcesがルイジアナ州で新たなガス田権益を取得するにあたり、同社が実施する増資を引き受け、出資比率を46%から70%超に引き上げ子会社化することを決定した。

子会社化にともないCastleton Resources の社名を2021年3月に「TG Natural Resources LLC」に改称した。

その後、出資比率を約93%とした。

今回の株式取得により、TG Natural Resourcesが保有する天然ガスおよび天然ガス液の生産量は、約330百万立方フィート/日(約9.3百万m3/日、天然ガス相当量)から約4倍の約1,300百万立方フィート/日(約37百万m3/日、天然ガス相当量)、保有エリアの面積は約1,540km2(東京都の約7割)となり、米国テキサス州・ルイジアナ州有数の事業規模となる。


東京ガスグループは、中期経営計画「Compass Transformation 23-25」において、北米でのシェールガス事業の拡大を掲げており、今回の株式取得により海外における収益基盤の構築を見込んでいる。


石油やガスへの底堅い需要が見込まれる中、エネルギー業界ではコロナ禍後の資源価格上昇で潤沢な資金を抱える大手企業によるM&Aが活発化している。

2023/5/25  Chevron、米シェール会社 PDC Energy を買収

2023/10/17 Exxon Mobil、米シェール大手Pioneer Natural Resources を595億ドルで買収合意




英科学誌ネイチャーは12月14日、2023年に科学分野で話題になった今年の10人に大阪大学の林克彦教授らを選んだと発表した。

林教授は雄マウスの細胞から卵子をつくり、子どもを誕生させることに成功した。同誌は絶滅危惧種の保全に役立つ可能性がある「驚異的な成果」と評価した。

林教授らは2023年3月、哺乳類である雄マウスのiPS細胞から世界で初めて卵子をつくった研究成果を発表した。卵子を受精させ、雄の細胞だけで子どもの誕生にも成功した。

チームは、雄 (性染色体 XY) のマウスの尾から細胞を採取し、それらを幹細胞に変換した。

この過程で、そのような細胞の約3%が自然にY染色体を失う。

これらのYを持たない細胞を分離し、細胞分裂中にエラーを引き起こす化学物質で処理した。これらのエラーのいくつかは、X染色体を重複させた細胞を生じさせ (性染色体 XX) 、事実上、それらを雌性細胞にした。

チームはこれらの卵子を受精させ、その結果得られた胚を雌のマウスに移植した。630回の胚移植からわずか7匹の生きた子が生まれた。


現在、マウスでの作業を他の動物、北白毛のサイ(northern white rhinoceros:Ceratotherium simum cottoni) に適用しようとしている。現在知られている北白毛のサイはたった2匹しかおらず、その両方が雌で、このままでは絶滅する。うまくいけば、絶滅系統を保存する方法となり得るが、ラボでサイの精子や卵を育てることは、マウスよりもはるかに難しいとしている。


「今年の10人」は、下記参照
  
https://www.nature.com/immersive/d41586-023-03919-1/index.html

オランダを国賓として訪問している尹錫悦大統領は12月13日、ルッテ首相と会談し、「半導体同盟」を決めた。

経済安保分野である半導体問題で平常時には緊密に協力し、供給網危機時には共同対応に出る。両国政府は半導体対話チャンネルを新設し、核心品目供給網協議体構成を推進する。 「半導体バリューチェーンにおいて両国の特別な相互補完的関係を認識し、政府・企業・大学を合わせた半導体同盟構築に対する意志を再確認した」。これを実現するため産業当局間の半導体対話を新設し、半導体分野の人材育成プログラムを開設することにした。

合計20項目で構成された「韓国政府とオランダ政府間共同声明」には半導体分野のほかに外交・安保分野と新技術開発に向けた協力案が盛り込まれた。


尹錫悦大統領は12月12日、訪問先のオランダで半導体製造装置大手ASMLの本社を訪れ、次世代EUV装置の製造現場を見学した。

サムスン電子とASMLは12月13日、総額7億ユーロ(約1兆ウォン)を投じて次世代半導体製造技術を研究する「韓国・オランダ 先端半導体アカデミー」を設立し共同運営することにしたと明らかにした。

京畿道華城(キョンギド・ファソン)の東灘(トンタン)先端産業団地近くに作られる。ASMLが半導体メーカーと海外に研究開発センターを設立するのは今回が初めて。今後5年間、先端半導体分野の高級人材500人を養成する予定。

サムスン電子は「ASMLとの協力強化は欧州の半導体バリューチェーン強化と世界的供給網安定性に大きく寄与するだろう」と述べた。

研究センターは次世代極端紫外線(EUV)技術をベースに超微細製造工程とそれに必要な露光装備を開発するのが主目的。ASMLが世界で唯一生産するEUVV露光装備は半導体ウエハーに回路を描く核心装備で、半導体は回路線幅が微細なほど性能が高まるため、EUV装備は7ナノメートル以下の微細回路の実現に必須である 。

DRAMの14ナノ工程からは歩留まりと生産単価などの問題でEUV使用が必須であり、最近ではEUVは最先端メモリー(DRAM)工程の核心に浮上している。サムスン電子は「今回の協力を通じて最先端メモリー開発に必要な次世代EUV量産技術を早期に確保し、『メモリー超格差』を通じて30年間守ってきたメモリー世界1位の座をしっかり守っていく計画」と明らかにした。

この日SK HynixもASMLと、EUV工程で電力使用量と炭素排出を減らす技術を共同開発することにした。

現代自動車は車載用半導体市場シェア2位であるオランダ企業NXPなどと協力することにした。

経済産業省は12月13日、国が指定した秋田・新潟・長崎の3海域で洋上風力発電を担う事業者の公募結果を発表した。

公募された海域は再エネ海域利用法で促進区域に指定しており、事業者は最大30年間占有できる。今回は2021年末の初回に続く第2弾となる。

ーーー

2022年に国の洋上風力発電公募入札の評価基準が問題になった。

日本で洋上風力発電の導入が進んでいなかったのは、①海域の占用に関する統一的なルールがない、②先行利用者との調整の枠組みが存在しないのが問題である。


これらの課題の解決に向け、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(「再エネ海域利用法」)が成立、2019年4月に施行された。選ばれた事業者はその区域内で最大30年間の占用許可を得る。 

促進区域に5か所が指定され、それぞれ入札により4か所の事業者が選定された。 

    選定事業者
促進地域 ①長崎県五島市沖 1.7万kw 戸田建設グループ
②秋田県能代市・三種町・男鹿市沖 47.88万kw 三菱商事連合 @13.26 (次点 @18.18)
③秋田県由利本荘市沖 81.9万kw 三菱商事連合 @11.99 (次点 @17.00)
④千葉県銚子市沖 39.06万kw 三菱商事連合 @16.49 (次点 @22.59)
⑤秋田県八峰町・能代市沖  
有望な区域 ⑥長崎県西海市江島沖 2022/9/30 「促進区域」に指定
⑦青森県沖日本海(南側)  
⑧青森県沖日本海(北側)  
⑨秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖 2022/9/30 「促進区域」に指定
⑩山形県遊佐町沖  
⑪新潟県村上市及び胎内市沖 2022/9/30「促進区域」に指定
⑫千葉県いすみ市沖  

②~④の公募入札で2021年12月、三菱商事を中心とする企業連合がすべてを勝ち取った。上の表のとおり、最安値は11.99円/kWhで、次点とは5円程度の差があった。

小泉進次郎前環境相は「運転開始時期が早いことはどのくらい評価されたのか」と疑問をぶつけた。2月3日の自民党の会合で河野太郎前規制改革相が「明らかに配点がおかしい」と経済産業省幹部に詰め寄った。

経済産業省は2022年3月18日、洋上風力発電の事業者を公募する際の審査基準を見直す方針を発表した。ウクライナ危機を受け、国産エネルギーの導入を加速する必要があると判断し、早期に稼働できることを重視する方向で検討した。

2022/2/24 国の洋上風力発電公募入札の評価基準が問題に

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今回の公募結果は下記の通り。

事業者 発電設備 運転開始
秋田県八峰町及び能代市沖 (下記)
長崎県西海市江島沖 住友商事、東京電力リニューアブルパワー 42.0万kW (1.5万kW×28基、Vestas製) 2029年8月
秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖 JERA、電源開発、伊藤忠商事、東北電力 31.5万kW (1.5万kW×21基、Vestas製) 2028年6月
新潟県村上市及び胎内市沖 三井物産、RWE Offshore Wind Japan 、
大阪瓦斯
68.4万kW (1.8万kW×38基、GE製) 2029年6月


秋田県八峰町及び能代市沖については、最も評価の高かった事業者に再提出させ、第三者委員会における評価等を経て、2024年3月に選定結果を公表する。

各件についての「非選定事業者名」や「事業実現性評価点」の詳細な点数内訳及び講評等については、「秋田県八峰町及び能代市沖」と合わせ、2024年3月に公表する。


なお、秋本真利衆議院議員が9月7日、洋上風力発電の入札制度を巡って風力発電会社「日本風力開発」の塚脇正幸社長(当時)から収賄し、その見返りに便宜を図ったという容疑で東京地検特捜部に逮捕された。

入札制度の変更にあたって、秋本議員が塚脇社長から収賄し、その見返りとして国会で質問をするなどして、日本風力開発に有利な制度になるよう活動したのではないか、という容疑である。



付記

評価の方法は、「価格点(120点満点)」と「事業実現性評価点(120点満点)」の合計で最高点だった事業者が落札者となる。

秋田県の「八峰町・能代市沖」と「男鹿市・潟上市・秋田市沖」、新潟県の「村上市・胎内市沖」の入札上限価格を19円/kWh
長崎県の「西海市江島沖」の上限価格を29円/kWhに設定していた。

「ゼロプレミアム水準」を3円/kWhとし、3円以下の価格はすべて価格点を満点(120点)とする。

「長崎県西海市江島沖」では、2事業者が入札に参加し、落札した事業者の価格が22.18円/kWhでもう1つの事業者よりも安く価格点で120点を獲得した一方、事業実現性評価点ではもう1つの事業者の方が高かった。結果的に価格点の差の方が大きかったため、住友商事、東京電力リニューアブルパワーのコンソーシアムが落札した。

「男鹿市、潟上市及び秋田市沖」では、3事業者が入札に参加し、価格はいずれも「ゼロプレミアム水準」で差が付かず、事業実現性評価点で最も高く運開時期が早かったJERA、電源開発、伊藤忠商事、東北電力のコンソーシアムが落札した。

「新潟県村上市及び胎内市沖」では、4事業者が参加し、そのうち3事業者の価格が「ゼロプレミアム水準」で差が付かず、事業実現性評価点で最も高く運開時期が早かった三井物産、RWE Offshore Wind Japan村上胎内、大阪ガスのコンソーシアムが落札した。

https://www.meti.go.jp/press/2023/12/20231213003/20231213003-1.pdf

住友化学は12月12日、CO2からメタノールを高効率に製造する実証に向けたパイロット設備を愛媛工場に新設し、運転を開始したと発表した。NEDOのグリーンイノベーション基金事業の助成を受けて建設したもので、2028年までには実証を完了し、2030年代の事業化、および、他社へのライセンス供与を目指す。

メタノールは、合成樹脂や接着剤、薬品、塗料など化学品の基礎原料で、世界で年間約8,000万トンの需要があり、現在は、天然ガスや石炭ガスを主原料に、高温高圧下で複数の製造工程を経て生産されている。

天然ガス等の部分酸化で製造した一酸化炭素 (CO) に、酸化銅-酸化亜鉛/アルミナ複合酸化物を触媒として、50-100気圧、240-260℃で水素 (H2) を反応させる。
  CO + 2H2 → CH3OH                 

COの代わりにCO2からメタノールを効率的に合成するための触媒や製造技術の開発が行われてきた。しかし、従来のCO2からのメタノール製造には、大量のエネルギーが必要な「高温・高圧」反応条件が不可欠であり、可逆反応であることによる収率の低さや副生する水による触媒劣化といった課題があった。

住友化学は島根大学 総合理工学部の小俣光司教授が研究を進めてきた内部凝縮型反応器(Internal Condensation Reactor)に着目し、2020年9月に二酸化炭素からメタノールを実用化に見合うレベルで高効率に合成する共同研究を推進することとした。

島根大学は引き続き触媒とプロセスの基礎技術の開発を進め、住友化学はその基礎技術をもとに触媒とプロセスの工業化に取り組み、これらの問題を解決し、高効率なメタノールの合成反応の確立した。

既存技術では難しかった反応器内でのメタノールや水の凝縮分離が可能であり、これにより、収率の向上、設備の小型化、省エネルギー化につながるとともに、触媒劣化の抑制も期待できるとしている。

内部凝縮型反応器の原理

本技術の特徴

 反応器内で生成メタノールを分離
   ⇒ 収率工場、設備小型化、省エネルギー化の実現

 副生する水の分離 ⇒ 触媒劣化の抑制



メタノールを、ごみの焼却処理により発生する二酸化炭素と再生可能エネルギー由来の水素を原料として合成すれば、温室効果ガス排出量の削減と有用な工業製品の生産を同時に達成することができる。

また、合成ガス(一酸化炭素、二酸化炭素および水素の混合ガス)からも製造ができるため、地域の使用済みプラスチックやバイオマス資源を合成ガスに変換し、この合成ガスを原料としてメタノールを得ることで、炭素循環の実現が可能となる。


ローム㈱と東芝デバイス&ストレージが、共同で申請していたパワー半導体に関する製造連携及び量産投資計画が12月8日、経済産業省の「半導体の安定供給確保のための取組に関する計画(供給確保計画)」として認定された。政府から最大1,294億円の支援を受ける見通し。


ロームがSiC(炭化ケイ素)パワー半導体、
東芝デバイス&ストレージがSi(シリコン)パワー半導体
への投資を重点的に行うことで効率的に供給力を拡大しそれを相互に活用する製造に関する連携を行うもの。

SiCパワー半導体が2026年4月から年産72万枚(8インチ換算)、SiCウエハーが2025年1月から年産70.8万枚(8インチ換算)、シリコンパワー半導体が2025年3月から年産42万枚(12インチ換算)を予定している。

電力を供給、制御する役目を果たすパワー半導体は、脱炭素社会やカーボンニュートラルの実現に向けて必要不可欠であり、今後も継続的な需要拡大が見込まれている。
自動車向けにおいては、電動化が急速に進む中、より高効率で小型・軽量化された電動パワートレインシステムの開発が進んでいる。
また、産業機器向けにおいても、自動化・効率化の要請は強く、パワー半導体の安定供給に加えて、性能向上にも大きな期待が寄せられている。

ロームは、世界で初めてSiC MOSFETの量産を開始して以来、常に業界をリードする技術開発を進めており、最新の第4世代SiC MOSFETは、数多くの電気自動車や産業機器等への採用が予定されている。また、急拡大するSiC需要に応えるため、生産能力増強に積極的かつ継続的な投資を計画する等、重点事業の一つとして取り組んでいる。

東芝デバイス&ストレージは、車載、産業向けを中心にSiパワー半導体を長年供給し、あらゆる電気機器の省エネ化・小型化に貢献してきた。昨年より300mmウエハを用いた生産を開始するとともに、引き続き旺盛な需要に応えるべくさらなる生産能力増強に取り組んでいる。
SiCパワー半導体についても研究開発を加速しており、鉄道向けで培ったノウハウを活用することによって、車載や送配電分野などに向けた製品ラインアップ拡充に努めている。

ロームは東芝の非公開化に際して3000億円を出資をしたことを公表しているが、これと関係なく、かねてよりパワー半導体事業における連携を検討しており、このたびの共同申請となったもの。ロームがSiCパワー半導体、東芝デバイス&ストレージがSiパワー半導体への投資を重点的に行い、相互に補完しあえる製造連携を加速することで、両社の国際的な競争力向上を目指すとともに、国内サプライチェーンの強靭化にも貢献する。

<認定された供給確保計画の概要>

SiCパワー半導体、Siパワー半導体及びSiCウエハの国内における生産能力の強化

ローム 東芝 合計
事業者名 ローム、
ラピスセミコンダクタ
東芝デバイス&ストレージ、
加賀東芝エレクトロニクス
事業総額 2,892億円 991億円 3,883億円
最大助成金額 1,294億円
(事業総額の1/3)
生産場所 宮崎県国富町
ラピスセミコンダクタ宮崎第二工場
石川県能美市
加賀東芝エレクトロニクス
主要製品 SiCウエハ 2025/1 70.8 万枚/年(8 インチ換算)
SiC パワー半導体 2026/4 72.0 万枚/年(8 インチ換算)
Siパワー半導体 2025/3 42.0 万枚/年(12 インチ換算)


ロームは
1958年設立の京都の半導体メーカー。

現在ではLSIをはじめ、ディスクリート半導体、光半導体、モジュール、バイオチップにいたるまでで、半導体製品を中心とした、さまざまな分野で開発、製造、販売をワールドワイドに展開している。

ラピスセミコンダクタについて

ラピステクノロジーはもともとOKIの半導体部門を源流としており、2008年にOKIセミコンダクタとしてロームグループの傘下に入った。
2011年にOKIセミコンダクタからラピスセミコンダクタへと社名変更をし、2020年に同社のLSI事業部門を切り出す形でラピステクノロジーが生まれた。

当時は商品企画、開発を担うラピステクノロジーと生産活動を担うラピスセミコンダクタそれぞれで専門性を生かすという目標を掲げていた。

ロームは2023年9月25日、100%子会社のラピステクノロジーを2024年4月1日に吸収合併することを発表した。

ロームは7月12日、出光興産子会社のソーラーフロンティアから、同社の国富工場の資産取得について基本合意し、11月に取得完了した。

今後、ローム製造子会社のラピスセミコンダクタの宮崎第二工場として整備、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の主力生産拠点として2024年度中の稼働を目指す。

8インチウエハーラインでSiC半導体を量産するほか、同サイズのウエハー基板も生産する。

ーーー

経済産業省の「半導体の安定供給確保のための取組に関する計画(供給確保計画)」の概要と、承認済みの計画(今回を含め18件)については下記を参照。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/economic_security/semicon/index.html

これとは別に、特定半導体生産施設整備等計画認定制度があり、これまでTSMC、キオクシア、マイクロンメモリ(2件)が多額の助成金を認められている。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/laws/semiconductor/semiconductor_plan.html

なお、次世代半導体の国産化をめざす共同出資会社「Rapidus」が北海道に建設する新工場に対しては、政府はポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の採択先として、2回計3300億円を補助している。

2023/4/26 政府、ラピダスに2600億円の追加補助

TOPPANは11月28日、有機ELディスプレイ開発・製造のJOLEDから能美事業所の土地・建屋を購入する契約を締結した。


今後、購入した能美事業所で、主にデータセンターのサーバー向けや生成AI向けの需要増などでさらに伸長が期待できる高密度半導体パッケージであるFC-BGA(Flip Chip-Ball Grid Array)のさらなる高速伝送やチップレットに対応する次世代技術開発および量産ラインの構築を行い、2027年以降の稼働を予定している。TOPPANの手掛ける既存のエレクトロニクス製品の生産も検討している。

FC-BGA(Flip Chip-Ball Grid Array) サブストレートは、LSIチップの高速化、多機能化を可能にする高密度半導体パッケージ基板で、TOPPANは、微細加工技術とビルドアップ配線板技術を独自に発展させた超高密度配線構造のサブストレートを開発、半導体プロセスの微細化に対応した製品を提供している。

PCやゲーム機向けのマイクロプロセッサやグラフィックプロセッサをはじめ、サーバー、AI、ネットワーク機器向けのハイエンドプロセッサ、高品質の車載用SoCなど、幅広い用途向けLSIの多彩な要求に対し、サブストレートの設計から製造まで顧客のニーズをトータルにサポートしている。

チップレットは、大規模な回路を複数の小さなチップに個片化して1つのパッケージに収める技術。

TOPPANは現在、新潟工場でFC-BGAの生産能力拡大を進めているが、旺盛な需要に対して将来的には新潟工場のみでは拡張余地がなく、新たな生産拠点の確保を検討していた。JOLED能美事業所は、次世代半導体パッケージの製造工程に求められる条件を満たしており、売買契約の締結となった。

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JOLEDは有機 EL ディスプレイの量産開発加速及び早期事業化を目的として、ソニー及びパナソニックの有機EL ディスプレイの開発部門を統合して、2015 年1 月に事業を開始した。


ジャパンディスプレイはJOLEDの設立時に株式15%を取得したが、2020年3月に全株式を譲渡し、現在は資本関係がない。

JOLEDは2019 年11月には、能美事業所において、世界初の印刷方式有機 EL ディスプレイ量産ラインの稼働を開始し、高性能・高品質な有機 ELディスプレイを、ハイエンドモニター、医療用モニター、車載向け等に生産するとともに、フレキシブルディスプレイやフォルダブルディスプレイの実用化に向けた研究開発も進めてきた。

しかしながら、安定した生産に想定以上のコスト・時間を要したほか、世界的な半導体不足による影響に加え、高性能・高品質ディスプレイ需要の伸び悩みや価格競争の激化により同社を取り巻く状況は厳しさを増した。

2020年6月、中国ハイテク企業TCL Tech傘下のディスプレイパネルメーカー、TCL華星光電技術(TCL CSOT)と資本業務提携契約を締結したが、収益が伸び悩むとともに、資金流出が続いた。

JOLEDの業績推移
売上高営業利益純利益利益剰余金
2018/3 5600万円 -149.19億円 -147.84億円
2019/3 14.42億円 -247.53億円 -259.04億円
2020/3 18.57億円 -284.07億円 -372.53億円
2021/3 59.08億円 -310.65億円 -877.85億円
2022/3 56.55億円 -211.18億円 -239.26億円 -1197.87億円

このまま自力で事業継続した場合、能美事業所や千葉事業所の撤退費用を捻出することも困難となるため、裁判所の関与の下で事業の再生を図ることがもっとも適切であると判断し、2023年3月27日、東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てを行ったと発表した。負債総額は約337億円。

JOLEDが培った有機発光ダイオード(OLED)ディスプレーの技術や知的財産権はジャパンディスプレイが継承することなどで合意 、7月18日、10億円で取得した。

技術開発ビジネス事業については、ジャパンディスプレイの支援の下、再建を図る。

他方、製品ビジネス事業(製造・販売部門)についてはこれ以上継続することは困難であることから、能美事業所(石川県能美市)、千葉事業所(千葉県茂原市)は閉鎖し、同事業から撤退することとした。

2023/3/29 有機EL事業のJOLED、民事再生手続き

能美事業所は元々、ジャパンディスプレイ(JDI)の工場であったが、2017年2月に停止、2018年6月に産業革新機構が200億円で買収し、7月1日付でJOLEDに売却されたもの。

2018/4/3  ジャパンディスプレイ、550億円を調達 

今回、TOPPANがこれを購入した。買収額やその後の設備投資額は明らかにされていない。

ーーー

なお、JOLEDから有機EL事業を引き継いだジャパンディスプレイ(JDI)は、元々液晶パネルメーカーで、AppleのiPhone向けが中心だが、液晶パネルの販売不振で稼働が低迷し、債務超過となったが、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントの救済で累損を一掃した。

2022/1/14 JDI、減資で累損一掃

2023/4/13 ジャパンディスプレイ、世界第3位のディスプレイメーカー惠科股份(HKC)との戦略提携覚書締結 

Dowは11月28日、カナダ・アルバータ州Fort Saskatchewanにおいて、世界初のScope 1 and 2 emission がネットゼロのエチレンクラッカーと誘導品工場を建設する「Path2Zero」(path to zero) プロジェクトへの最終投資を決定したと発表した。

Scope 1 は、燃料の燃焼や、製品の製造などを通じて企業・組織が「直接排出」するGreen House Gas
Scope 2 は他社から供給された電気・熱・蒸気を使うことで間接的に排出されるGreen House Gas

政府の補助金等を除き、65億ドルを投資するもので、エチレンクラッカーを新設、PEを200万トン増設するのに加え、既存の製造装置をネットゼロのスコープ1および2の排出量に改修することを含んでいる。この投資により、Dowの世界的なエチレン生産能力の20%を脱炭素化する見込み。

Dowによると、本プロジェクトに約15億ドルの補助金が国や地方政府から供与される見込み。

2024年に建設を開始する。2027年にエチレン、ポリエチレンの能力を1,285千トン/年増やし、2029年に更に600千トン増やす。

net-zero Scope 1 and 2 emissions の達成のため、Linde社の空気分離および自己熱改質技術を活用する。

エタンクラッカーのオフガスを水素に変換する。この水素は、炉へ供給されるクリーンな燃料として使用される。さらに、排出される二酸化炭素量が捕捉され、貯蔵される。既存の排出量を約100万トンCO2相当削減し、現地の新たな生産能力の追加によるすべての排出を抑制する。

米連邦議会下院は12月1日、経歴詐称や選挙資金の不正利用などが指摘され、複数の刑事事件でも訴追されている共和党のGeorge Santos下院議員の除名処分を、超党派の賛成で可決した。

付記

10月に史上初めて下院議長職を解任されたマッカーシー下院議員(共和党)は12月6日、年末に議員を辞職すると表明した。共和党議員が2名減ることになる。

共和党 民主党 合計 欠員
賛成 105 206 311  
反対 111+本人 2 114  
棄権 5 5 10  

 合計

222 213 435 0
今後 220 213 433 2


下院による Santos 議員の除名決議はこれで3回目。

今回の下院の採決で超党派の311票が賛成し、初めて、憲法が議員除名に必要と規定する3分の2の賛成に達した。反対票は本人を含め114票だった。倫理委員会の調査で新たな窃盗などの疑惑が出てきたことを受け、過去に除名に反対してきた共和党議員の多くが賛成に回った。

米国憲法 第5条[議会手続]
[第2 項]両議院は、各々その議事規則を定め、秩序を乱した議員を懲罰し、3分の2の同意によって議員を除名することができる。

空席を埋める特別選挙は来年2月ごろに行われる見通し。

下院議員が除名となるのは2002年以来で、史上6人目。

過去に除名された5人のうち3人は、南北戦争で南軍を支持したのが理由だった。他の2人は、刑事事件で連邦法違反罪に問われて有罪判決を受けていた。

なお、上院は15人で、うち14人は南北戦争で南軍を支持。1人は土地投機にからみ、スペイン領であったフロリダとルイジアナを英領にすべく策略した件で1798年に議員として最初に除名。


Santos議員は2022年の中間選挙で、ニューヨーク州ロングアイランドから初当選した。しかし、当選後には複数の経歴詐称や詐欺疑惑が浮上した。

2022年11月の当選から間もなく、New York Timesが経歴詐称の疑惑を報道。議員は詐称を認めたが「犯罪者ではない」として当選を辞退しなかった。

これを機に、大学のバレーボールチームのチャンピオンであったとか、ゴールドマン・サックスやシティグループで働き、富を築いたとか、彼の母親が9/11のテロ攻撃でワールドトレードセンターにいたと主張するなど、数多くの誇大広告と事実に反する主張をしていたことが発覚した。

その後も、犬のブリーダーに対する詐欺行為など、議員に関する疑惑が相次いで明らかになった。

今年5月には、資金洗浄や公金横領など23件の犯罪について連邦検察に訴追された。本人は無罪を主張し、公判開始を控えている。司法取引を交わさずに有罪となった場合、約20年の実刑判決を受ける可能性がある。

11月に公開された下院倫理委員会の報告書では、「下院候補としてのあらゆる側面を自分個人の経済的利益のために」悪用したと断定された。

倫理委は、美容目的のボトックス治療や私的なクレジットカード支払い、ポルノなどを含む有料コンテンツサイト「OnlyFans」の代金、ニューヨーク郊外のリゾート通いなどに、選挙資金を使っていたと結論した。

バイデン米大統領は2022年8月16日にインフレ対策法案:Inflation Reduction Act of 2022 に署名し、法案は成立した。大統領は「気候変動に関するこれまでで最大の前進だ」と強調した。

エネルギーコスト引き下げ、クリーンな生産、2030年までにカーボン排出の40%削減を狙い、3,690億ドルを投じる。

新法では、

低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に1台当たり最大7500ドルの税控除を受けられる。

既存のEV減税は適用対象を自動車メーカーごとに20万台と定めていたが、台数の上限を撤廃する。  

ただ、EV減税の対象となる新車について、北米地域での最終組み立てを義務付けた。さらにEV用電池の原材料である重要鉱物の調達先を、米国か、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に事実上制限する。世界シェアの高い中国製品をサプライチェーン(供給網)から排除する狙い。

2022/8/24 米「インフレ抑制法案」成立 電気自動車補助金で波紋 


IRAが成立して以来、米国のクリーン車両およびバッテリー供給チェーンにおいて約1,000億ドル近くの民間投資が発表されている。

ルールでは、2024年から対象のクリーン車両は「懸念される海外企業」(FEOC)が製造または組み立てたバッテリー部品を含んではならず、 2025年からは、「懸念される海外企業」が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならない。

しかし、この定義が明らかにされていなかった。

主な要件(控除額は個人の場合)
税額控除額
価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)未満であること 必須 -
車両の最終組み立てが北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること 必須 -

電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること(日本については下の注を参照)

2023
2024
2025
2026
2027ー
40%
50%
60%
70%
80%

2025年からは、「懸念される海外企業」が抽出、加工、またはリサイクルした重要鉱物を含んではならない。

どちらか
必須
3,750ドル

電池用部品の50%が北米で製造されていること

2024-25
2026
2027
2028
2029-
60%
70%
80%
90%
100%

2024年から、「懸念される海外企業」が製造または組み立てたバッテリー部品を含んではならない。

3,750ドル

注)2023年3月28日に「重要鉱物のサプライチェーンの強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(日米重要鉱物サプライチェーン強化協定:日米CMA)が署名され、即日発効となった。米国は、同協定をインフレ抑制法(IRA)上のFTAとみなす。


「懸念される海外企業」の定義が明らかでなかったが、財務省は12月1日、
「懸念される海外企業」と見なされるエンティティを定義する提案ガイダンスを公表した。
     https://public-inspection.federalregister.gov/2023-26513.pdf

それによると、「懸念される海外企業」は、懸念国(中国、ロシア、イラン、北朝鮮)の企業 及びその企業が25%以上所有、またはコントロールする企業とされる。

In general, an entity incorporated in, headquartered in, or performing the relevant activities in a covered nation would be classified as a FEOC.
For purposes of these rules, an entity would be "owned by, controlled by, or subject to the direction" of another entity if 25 percent or more of the entity's board seats, voting rights, or equity interest are cumulatively held by such other entity.

ライセンスその他の契約も"control" しているとみなされる可能性がある。
  In addition, licensing agreements or other contractual agreements may also create control.

バッテリー部品が条件を満たすかどうかは、該当する重要鉱物の抽出、加工、およびリサイクルのすべての段階のレビューによって決定される。

例えば、懸念外国法人でない企業によって抽出された鉱物が、懸念外国法人によって加工された場合、準拠していないと見なされる。


自動車メーカー各社は新ルールでどうなるか検討しているが、Fordは同社のMustang Mach-E EV が適用外になりそうだとしている。


Ford は2月13日、ミシガン州Marshall近郊に35億ドルを投じて電気自動車(EV)用のリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池製造工場 BlueOval Battery Park Michigan を建設する計画を発表した。
Fordの単独事業で、中国の大手電池メーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)から技術のライセンス供与や技術支援を受ける。CATLは出資はしない。

2023/11/23 フォード、バッテリー工場計画を縮小

工場自体はフォードが全額出資で運営するため、フォードはこの工場でつくった電池を積むEVも税優遇の対象になりうるとしてきた。だが、今回の規制では、ライセンスその他の契約も"control" しているとみなされる可能性があり、そうなれば控除対象外となる。
コントロールの有無をどう政府当局が判断するかは不透明。

米政府は規制を巡り、1カ月程度、企業から要望を聞き取り、最終案を決める予定だが、野党・共和党は、今回のルール案にも「抜け穴が多い」として批判を強めており、最終案はさらに厳格になる可能性もある。

OPECプラスは11月30日、オンライン形式で閣僚級会合を開き、現行の協調減産態勢を維持することで合意した。

半年に1回の閣僚級会合では加盟国の生産枠を引き下げる追加の協調減産に踏み切れるかどうかが焦点だった。事前の折衝でサウジなどが中心となり追加の協調減産を模索していた。

これに対し、アフリカの産油国、ナイジェリアとアンゴラが反発した。

ナイジェリアの2024年の生産枠(138万バレル)は2023年の174万バレルから大幅に削減されることが決まっているが、足元の生産量はすでに枠の上限に迫っており、これ以上の減産には同意できない状況である。

アンゴラも状況は似ており、OPEC脱退も辞さないほど激しく反発していたという。

付記

減産に反発したアンゴラは12月21日にOPEC 脱退を決めた。「OPECにとどまっても何も得られない。自国の利益を守るために脱退を決断した」としている。

アンゴラの脱退によって、OPECの加盟国は12か国となる。

アンゴラの原油生産量は日量およそ110万バレルとOPECの中でのシェアは大きくないため、生産量全体への影響は限定的とみられる。

サウジアラビアの要請を受け、OPECプラス全体の協調減産が議論されたが、各国の足並みが整わず、見送りとなった。「減産で価格下支えを図りたいサウジアラビアなどと、今の価格で多く売りたい一部産油国の思惑のずれが大きい」とされる。


協調減産は見送りになったが、サウジアラビアなど有志国は現状の国際石油市場と原油価格の動向、今後の国際石油需給バランスの展望を踏まえ、2024年1~3月期に日量計約220万バレルの自主減産を行うことを決めた。

220 万B/D 減産の内訳は次の通りで、減産は来年1月1日から3月末まで実施されることとなっている。

Saudi Arabia:1,000千バレル/日、Iraq:223千バレル/日、UAE:163千バレル/日、Kuwait:135千バレル/日、Kazakhstan:82千バレル/日、Algeria:51千バレル/日、Oman:42千バレル/日、合計 1,696千バレル/日

加えて、ロシアは2023年5~6月の輸出水準から500千バレル/日分の輸出を削減する。内訳は原油が200千バレル、精製油が200千バレルとなっている。

合計で約220万バレル/日となる。

これはOPECプラスとしての発表ではなく、各国の個別の発表で、あくまで加盟国が自主的な取組みとして追加減産を行う意思を表明したものである。

また、4月以降は市場の状況を見据えつつ、徐々に自主減産量を縮小していく方向性も同時に示されている。


なお、OPECプラスは、産油国トップ10入りしているブラジル(生産量は日量約320万バレル)を加盟国として招待することを決めた。OPECプラスの減産をOPECプラスに属していない産油国の増産が打ち消す構図になっていることが背景にある。

ブラジルの鉱業・エネルギー相は、ブラジルが来年1月に協力憲章に参加すると述べた。憲章は全ての産油国に開かれているもので、加盟国に対する拘束力はなく、対話と意見交換のためのプラットフォームを提供するもの 。OPECプラスに参加することになったブラジルが協調減産に応じるかどうかも未知数である。

OPECとロシアなど11の非加盟の主要産油国(ロシア、メキシコ、オマーン、アゼルバイジャン、カザフスタン、バーレーン、ブルネイ、赤道ギニア、マレーシア、スーダン、南スーダン)は2016年12月10日、ウィーンのOPEC本部で閣僚会合を開き、協調減産で合意した。

ーーー

「OPECプラス」は2022年10月5日に閣僚級会合を開き、11月の日量200万バレル減産で合意した。

OPECプラスは新型コロナウイルス禍の2020年5月、世界需要の1割に当たる日量970万バレルの協調減産に踏み切った。その後、減産量を減らしてきて、9月には10万バレルの増産としたが、景気減速などで需要が減るとの見方が強まり、前回の9月会合で10月に日量10万バレル減産することを決めた。

当初、100万バレルの減産と噂されたが、一気に200万バレルとした。200万バレル減産は世界需要の2%に当たり、2020年の970万バレル減産以来の規模になる。

2022/10/6 OPECプラス、11月は日量200万バレル減産

OPECプラスは2023年4月2日、5月から日量115万バレルの減産を実施すると発表した。市場の安定を維持するために供給を据え置くとこれまで約束していたため、協調減産は意表を突く格好となった。ロシアが3月から単独で実施している減産を加えると、昨年末比で日量 165万バレルの減産となる。

2023/4/3 サウジ、日量50万バレルの減産を表明、クウェートやUAEも追随、OPECプラスとして昨年末比 165万バレル(計365万バレル)の減産 

「OPECプラス」は2023年6月4日、今後の原油の生産量を決める会合を開き、日量200万バレルの協調減産を2024年末まで延長することで合意した。

サウジアラビアは自主的に7月に日量100万バレルを追加で削減すると表明した。5月からの50万バレル減産に追加するもの。

2023/6/6 OPECプラス、協調減産を2024年まで延長

これらにより、現状は下記のとおりとなっている。

2022/11
 協調減産
2023/5 2023/7

2024/1-3

自主減産

自主減産

サウジアラビア OPEC+ 全体 500 +1,000 1,000
イラク 211 223
UAE 144 163
クウェート 128 135
カザフスタン 78 82
アルジェリア 48 51
オマーン 40 42
ガボン 8
小計 1,157
ロシア (輸出削減) 500 500
合計 2,000 1,657 2,657 2,196
総計 2,000 3,657 4,657

2022 年11 月から実施されている 200 万B/D の協調減産は市場の状況に鑑み、2024 年末まで延長することが定まっていた。今回、それを確認した。

原油価格をさらに下支えするものとして、追加の自主減産が行われているが、自主減産の期間は 2023 年末までとなっており、その行方が市場関係者の注目するところとなっていた。

中国の新興のEVメーカーで、中国版Teslaと呼ばれる上海蔚来汽車(NIO Inc.)は11月21日、大手自動車メーカーの重慶長安汽車とバッテリー交換事業で協力協定を締結したと発表した。交換型バッテリーの標準規格化や、バッテリー交換ネットワークの構築と共有、交換型バッテリー搭載車種の研究開発、バッテリー資産管理メカニズムの構築などに共同で取り組む。


NIOの李斌CEOは「バッテリー交換事業に着手した時から、業界全体に事業領域を拡大することを試みていた。NIOの電池交換ネットワークと、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)を掛け合わせた『AIoT』技術を採用したパワークラウドは、5年の発展を経て、研究開発や建設、運営などで豊富な経験を積み重ねており、電池交換業務を業界向けに開放する準備が整った」と説明した。今回の協力によって長安汽車と提携し、新エネルギー車産業の質の高い発展と自動車業界の低炭素化を推進していくと述べた。


更に、蔚来汽車(NIO)は11月29日、浙江吉利控股集団との間で、バッテリースワップに関する戦略的パートナーシップ契約を締結したと発表した。電池の標準化や技術、モデル開発で提携し、効率的なバッテリー資産管理メカニズムの確立や電池交換可能な車両の開発などを目指すとしている。


電池交換により、ドライバーは車両を充電ポイントに接続するのではなく、消耗したパックをフル充電されたパックに素早く交換することが可能になる。

NIOは2023年5月、第3世代となる新たなバッテリー交換システムを発表した。同社のEVの駆動用バッテリーを5分以内に交換できるようになり、欧州市場にも導入される。

この時点でNIOは、中国で1,300か所以上のバッテリー交換ステーションを稼働させ、累計2,000万回以上の交換作業を完了させている。

(10月26日時点でNIOは中国全土で2,000カ所のバッテリー交換ステーションと、3,281カ所の充電ステーションを建設・運営している。)

欧州ではノルウェー、オランダ、ドイツでサービスを開始し、13か所のステーションですでに1万2000回以上の交換が完了しているという。

NIOは、同社のEVの「充電」の56%以上がバッテリー交換によるものであるとしている。NIOの全車種はバッテリー交換が可能で、交換ステーションでは車両下部からバッテリーを取り出し、フル充電されたユニットに入れ替えることができる。一般的な急速充電よりも手軽で素早い交換作業を特徴とする。

第1世代の交換ステーションは2017年に導入され、2021年には第2世代が登場した。最新の第3世代では、第2世代よりも交換にかかる時間が1分短縮され、約4分40秒で完了するという。実際の機械的な交換作業は約2分30秒で行われ、残りの時間は安全確認と車両の位置決めによるもの。

ーーー

バッテリー交換ステーションにはバッテリーユニットが保管されている。電池を交換するためには、車体床下の電池位置とステーションの機器の位置を正確に合わせる必要があり、この位置合わせのために、NIOの車両は自動運転での駐車を利用している。自動運転でも調整できない位置ずれは、ステーション側の設備で微調整が行われる。

車を持ち上げ、横からマシーンが動いてきて古い電池 を自動的に取り外し、新しい電池を取り付ける。



https://www.youtube.com/watch?v=kBY6nkkyD7M

自動的に使用済みの車載バッテリーを取り外し、新しいバッテリーを取り付ける。

   https://hasimoto-soken.com/archives/3536

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