2021年12月アーカイブ

塩野義製薬は12月27日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する予防ワクチン(開発番号:S-268019)について、グローバル第3相臨床試験をベトナムで開始した と発表した。

今回のベトナムでのグローバル第3相臨床試験では、成人を対象に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が確定したCOVID-19の発症率を主要評価項目として、S-268019 の2回接種後におけるCOVID-19の発症予防効果および安全性について、偽薬投与群との比較で評価 する。

現在も、ワクチンの供給が十分ではない国・地域が多く存在する中で、同社では今後のグローバルヘルスへの貢献を見据えて本臨床試験を実施 するもので、本主旨ならびにアジアにおける大規模臨床試験基盤構築に賛同するベトナム政府支援の下、臨床試験の開始に至った。


同社が2020年
4 月より開発に取り組んでいるワクチン(開発番号:S-268019)は、グループ会社 UMN ファーマが有する BEVS を活用した遺伝子組換えタンパクワクチン。

UMNファーマは2004年設立で、2006年に米のベンチャーProtein Sciences Corporationから、SF+細胞により製造する遺伝子組換えインフルエンザワクチンの日本における独占的事業化権を取得した。

その後、各社と提携して各種ワクチンの開発を続けてきたが、2017年に塩野義と提携、2019年に塩野義がTOBを行ない、2020年に100%子会社とした。

BEVS: Baculovirus Expression Vector Systemは昆虫細胞などを用いたタンパク発現技術で、UMNファーマが有する技術ではバキュロウイルスや昆虫細胞由来の成分・病原ウイルスの混入なしに抗原タンパクの精製が可能 である

遺伝子組換えタンパクワクチンは、ウイルスの遺伝子情報から目的とする抗原タンパクを発現 、精製後に投与に供され る。

遺伝子情報そのものを投与し、
体内にて抗原タンパクを合成させる
mRNA クチン等の新規技術と比べて、抗原発現や精製に一定の開発期間を要する一方で、インフルエンザ予防ワクチンをはじめ、複数の製品がその効果と安全性を基に承認・実用化されている確立された技術で ある。

これまでに、選択した抗原タンパクおよびアジュバント (免疫を活性化させ、ワクチンの効果を補強する物質 を用いた非臨床試験において、安全性と有効性を示唆する結果が得られており、冷蔵条件下での製剤中の安定性が一定期間確認されてい る。

同社はこれまで、安全性の観点から2種類のヘルパーT細胞のバランスを重視して選択したアジュバント を用いて、2020年12月より第1/2相臨床試験を実施してきた。

その後の種々の検討結果や集積された知見を踏まえ、2021年7月末より、2種類のヘルパーT細胞のバランスを維持しつつもより高い中和抗体価の誘導が必要と判断し、アジュバントを変更した新製剤を用いて国内における第1/2相臨床試験を新たに開始した。

日本人成人60例を対象に、忍容性、安全性および免疫原性の評価が行われており、これまでに本ワクチンの忍容性を確認するとともに、安全性についても大きな問題は見られていない。さらに、良好な中和抗体価の上昇を確認した。

これを受け、国内第2/3相臨床試験 を10月20日に開始した。

12月3日には国内において、追加接種による臨床試験を開始した。

ワクチン接種後、時間の経過に伴い徐々に効果が低下していくことが示唆されており、感染拡大防止および重症化予防を目的に、初回免疫を完了した接種者に対して追加の接種を行う。

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同社は、追加免疫試験とともに、S-268019の初回免疫(1回目・2回目)時の安全性および有効性の検証を目的に、海外でのプラセボ投与群を対照とした発症予防試験および国内外での既承認ワクチンを対照とした中和抗体価比較試験の開始準備を進めて いる。

同社は11月25日、ベトナム保健省及びハノイのAdvanced International Joint Stock Companyとの間にCOVID-19を含む感染症対策に関する基本合意書を締結した 。

塩野義製薬が開発中のCOVID-19ワクチン(S-268019)および経口治療薬(S-217622)のベトナムでの臨床試験促進ならびに塩野義製薬によるベトナムへのS-268019の製造技術移管への協力などについて、3者による具体的な協議に移行する。

塩野義製薬は7月26日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬(開発番号:S-217622)について、経口投与の抗ウイルス薬として国内で第1相臨床試験を開始し、7月22日に初回投与を行ったと発表した。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有しているが、本治療薬は、塩野義が創製した3CLプロテアーゼ阻害薬で、SARS-CoV-2の3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制する。

2021/7/28 塩野義製薬、COVID-19治療薬の臨床試験開始

同社では、第3相臨床試験として、COVID-19ワクチンの新たな評価方法である既承認ワクチンを対照とした中和抗体価比較試験の準備も進め ており、2022年1月の開始を予定している。

プラセボ試験はワクチン投与群と偽薬投与群との比較である。しかし偽薬投与群は病気にかかる恐れがあり、倫理的問題を抱える。(今回のベトナムでのプラセボ試験は、ワクチン2回接種後の試験で、倫理的問題は少ない。)

中和抗体比較試験は、当該ワクチンによる中和抗体と、既存の承認済みワクチンによる中和抗体の比較で有効性を判断するもの。

国内の承認申請に向けては、現在実施中の国内第2/3相臨床試験および追加免疫臨床試験の結果も含めて、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)等と協議を行って いくとしている。

韓国半導体大手SK Hynixと米Intel Corpは2020年10月20日、Intelの半導体メモリー事業をSK Hynixが買収すると発表した。買収額は約90億ドル。
買収は2025年にかけて段階的に実施する。2021年末までに70億ドル、25年3月までに残りの金額を支払う。

買収対象にはNAND ソリッド・ステート・ドライブ(SSD) 事業、NAND型フラッシュメモリー単品およびウエハー事業、中国大連の NAND型フラッシュメモリー生産施設が含まれる。
(Solid-state Drive=SSDは、NAND型フラッシュメモリを搭載したストレージ)

PCを高速化するIntel Optane™ メモリー・テクノロジーは 買収対象外で、Intelに残る。

2020/10/22 SK Hynix、IntelのNAND事業買収

その後、SK Hynixは韓国、米国、EU、台湾、ブラジル、英国、シンガポールの監督官庁から認可を得た。

中国が問題とみられていたが、SK側が中国の条件を受け入れ、2021年12月21日に中国から承認を得た。

米中間の緊張の中で、この取引が中国の許可を得られないのではないかという懸念があった。SK Hynixは、この取引が韓米中の3カ国すべてにとって「相互に有益と考えられる」ため、大幅な遅延なしに適切なタイミングで承認されたと述べている。

年内めどに工場取得手続きを進めている。

付記

SK Hynixは12月30日、事業買収の第1段階の手続きを完了したと発表した。
買収対象は、NAND型フラッシュメモリー基盤のデータ保存装置(SSD)事業や中国大連のファブ(工場)などで、この代金として買収契約の総額90億ドルのうち70億ドルを支払う。

2025年3月に残りの20億ドルを支払い、NAND型フラッシュウェハーR&D組織や大連ファブの経営人材をはじめとする有形無形資産の移転を受ける。

同日、インテルSSD事業を運営する米新設子会社の社名を「Solidigm」に決めたと発表した。
Solid-state」と「Paradigm」を合成した言葉で、技術革新と差別化したサービスでメモリーソリューション産業のパラダイム変化を導くという意味が込められている。


中国の国家市場監督管理総局は、同日に発表した声明の中で、承認はしたが、5年間続くいくつかの条件付きでもあると述べた。

その条件とは、SK HynixがPCIe EnterpriseクラスとSATA EnterpriseクラスのSolid-stateハードディスク製品の生産量を拡大し、製品を公正、合理的、無差別的な価格で供給することであると発表している。
また、SK Hynixは中国の顧客にSK HynixまたはSK Hynixが支配する会社から製品を独占的に購入するよう強制してはならないとしている。

1)PCIe EnterpriseクラスのSolid-state Drive製品およびSATA EnterpriseクラスのSolid-stateDrive 製品を中国国内市場に不当な価格で供給しない。

国内市場に販売されるPCIe EnterpriseレベルのSolid-state Drive製品およびSATA EnterpriseレベルのSolid-state Drive製品の価格は、発効日の前の24か月以内の平均価格を超えてはならない。

2)発効日から5年以内に、PCIe EnterpriseクラスのSolid-state Drive製品およびSATA EnterpriseクラスのSolid-state Drive製品の供給を拡大し続けること。

3)公平性、合理性、無差別の原則に従い、引き続きすべての製品を中国国内市場に供給する。

4)中国市場の顧客に、SK HynixまたはSK Hynixが管理する会社からのみ製品を購入するように強制または偽装してはならない。

 PCIe EnterpriseレベルのSolid-stateハードディスク製品とその他の製品、SATA Enterprise レベルのSolid-stateハードディスク製品とその他の製品をひも付きとしてはならない。

5)サードパーティの競合他社がPCIe EnterpriseクラスのSolid-state DriveおよびSATA EnterpriseクラスのSolid-state Drive市場に参入するのを支援する。

6)販売価格、生産量、または販売量に関して、中国の主要な競合他社と書面または口頭での合意、決定、またはその他の調整された行動(暗黙の調整を含む)をしてはならない。


これらに加えて、2021年12月7日に市場監督の州管理局に提出されたSKハイニックスの追加の制限条件コミットメント計画は、対象事業であるSKハイニックスを法的に拘束する。

https://www.samr.gov.cn/fldj/tzgg/ftjpz/202112/t20211222_338317.html

バイデン政権は12月20日、自動車の燃費規制の強化を発表した。トランプ前政権が緩めた規制を再び厳格化し、2026年製車で平均燃費をガソリン1ガロン当たり55マイル(1リットルあたり約23km)まで向上させるよう、メーカーに求める。8月に公表した従来案からさらに5%の改善を求める。


バイデン米政権は8月5日、トランプ前政権が実施した自動車の燃費規制緩和の見直しを提案すると発表した。新たな計画では、2023年(モデル年)に燃費を10%向上させ、2026年までに1ガロン当たり52マイルの平均燃費を目指す。

乗用車やSUV(スポーツ用多目的車)など小型トラックを対象とした燃費規制は、2023年製から年ごとに厳しくなるよう設定し、2026年製の平均燃費で前政権時に比べ3割近い改善を求める。オバマ政権が掲げた目標に近い水準で、EPA長官は、「史上最も野心的な基準だ」と強調した。

バイデン政権は2030年に新車販売の半分を「排ガスゼロ車」にする目標を掲げており、これに向けてメーカーが電動化の努力を進めることで、規制対応も進むとみる。

今回の規制では、2020年製車で年間2%ほどの電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)が、2026年製車では17%まで増えると織り込んだ。

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オバマ政権は2012年8月28日、54.5 mpg の燃費規制を正式に発表した。

CO2排出基準(g/mi) と燃費(mpg) は下記の通り。

202020212022202320242025

g/mi

Passenger Cars 182 172 164 157 150 143
Light Trucks 269 249 237 225 214 203
Combined Cars & Trucks 213 199 190 180 171 163
mpg Combined Cars & Trucks 40.0 41.7 46.8 49.4 52.0 54.5

この時点では、2022年から2025年にかけての平均燃費値について2018年4月までに再審査するとしていたが、EPAはトランプ政権発足の直前の2017年1月13日、再審査をしない方針を突然決めた。
これにより、
54.5 mpg の燃費規制の維持が決まった。

トランプ米政権は2018年8月2日、オバマ前政権下で定められた自動車の燃費基準を撤回すると発表した。2021~2026年型車の基準値を、2020型車の目標値である37マイル(リッター換算15.6キロ)に据え置く。

2018/8/8 トランプ政権、車燃費基準を撤回 


米EPAと運輸省道路交通安全局は2020年3月31日、乗用車と小型トラックの二酸化炭素(CO2)排出基準と、達成手段となる企業平均燃費(CAFE:Corporate Average Fuel Economy)基準を定めた新規則「Safer Affordable Fuel-Efficient (SAFE) Vehicles Rule(SAFE車両規則)を発表した。

2021年から2026年製車に対する基準について、2020年をもとに、CAFE基準値は毎年1.5%ずつ上昇、CO2排出量は毎年1.5%ずつ低減させるとした。
最終年の2026年製車では、CAFE基準値をガソリン1ガロン当たり40.4マイル、CO2排出量を1マイル当たり199グラムとした。

いずれの製造年も、2012年に制定された現行の基準値であるCAFÉ基準値、CO2排出量、より緩い基準となった。

2020202120222023202420252026
mpg Combined Cars & Trucks 36.8 37.3 37.9 38.5 39.1 39.8 40.4




今回、 バイデン政権2026年までに米国で自動車を販売するメーカーの平均燃費を1ガロン当たり55マイル(1リットル当たり約23キロメートル)に改善するよう義務付ける。

韓国鉄鋼大手POSCOはアルゼンチンでのリチウム生産プロジェクトに総額8億3000万ドル(約950億円)を投じると発表した。

2018年に同地の塩湖権益を買収しており、2022年上半期に塩湖そばにリチウム抽出工場を着工する。生産能力は年2万5000トン規模で、 需要動向を見極めた上で新工場の生産能力を2倍に引き上げる追加投資も検討する。


POSCOは2018年8月27日、
豪州の資源開発企業 Galaxy Resources Limited との間でアルゼンチンのSalar del Hombre Muerto(オンブレ・ムエルト塩湖)の鉱業権売買契約を締結したと発表した。POSCOはこのプロジェクトを「Sal de Oro(黄金の塩)」と名付けている。2億8000万米ドルを投資する。


2018/8/31 韓国 POSCO、アルゼンチンのリチウム湖の採掘権を取得


権益買収後の探査の結果、同塩湖は当初想定の6倍以上となる1350万トンの埋蔵量が確認されたという。

POSCOは買収後、水酸化リチウムの商用化を準備、現地にモデル生産工場を建設し、1年以上稼動させながらリチウム生産のノウハウを蓄積した。

試作プラントで生産ノウハウを蓄積しており、本格的な投資を決断した。

POSCOは世界で唯一、リチウムを塩水、鉱石、廃バッテリーの3つの方法で抽出できる企業とな る。
 △塩湖に溶けている炭酸リチウムから抽出
 △鉱山での採掘と加工されたリチウム精鉱から抽出
 △捨てられた廃二次電池から抽出など。

POSCOは2018年2月、豪州の鉱山開発企業Pilbara Mineralsから年間3万トンのリチウムを生産できる分量の毎年最大24万トンのリチウム精鉱(自然鉱石加工品)の供給を受ける長期契約を締結した。
子会社、POSCOリチウムソリューションを通じ、2023年、全羅南道光陽に鉱石基盤の水酸化リチウム工場を建設する予定。

中国華油コバルト社と合弁し、廃バッテリーからリチウムを抽出するリサイクル工場も、全羅南道栗村産業団地に建設している。

「2030年までにリチウム分野グローバルトップ3に入るのが目標」としている。
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POSCOは電池材料を次の成長の柱と位置付けて、鉱山権益の確保から正極材、負極材の工場建設まで一貫供給体制を整えている。

韓国南部の光陽市で正極材工場、中部の世宗市では負極材工場の拡張を進めている。

さらに12月2日には米ゼネラル・モーターズ(GM)と合弁で北米に電池材料工場を建設すると発表した。

2021/12/8 POSCO Chemical、GMと合弁で北米でバッテリー正極材料を生産

ロシアがウクライナ国境付近に軍の大部隊を集結させているため、西側諸国との間で緊張が続いている。


こうした中でロシアは先週、西側諸国との交渉に際して安全保障上の要求項目を示し、NATOが東欧とウクライナで軍事行動を放棄することなどを 求めた。

12月7日の米ロ首脳協議では、撤退を求めるバイデン米大統領に対し、ロシアの プーチン大統領は自国に対するNATOの脅威を主張、ロシアの安全をめぐる「信頼できる法的な保証」を求めた。
ロシア政府は12月20日、ウクライナ問題に絡んで提示した安全保障要求について、米国からの速やかな回答を求め、自国の不安を和らげる政治行動が見られない場合、軍事力行使も辞さないと改めてけん制した。


米国はこのロシアの提案の一部は明らかに受け入れられないと反発しつつ、今週中に何らかの協議を通じてより具体的な対案を出す意向も打ち出した。

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ロシア外務省は米露首脳会談でプーチン大統領が提案していた新しい安全保障条約の草案内容を12月17日に公開した。

NATOに対してウクライナの加盟を拒否、1997年5月以降にNATOに加盟した旧ソ連圏諸国に他のNATO加盟国から兵力や装備を派遣して駐留することを制限するよう求めている。

  • NATOはこれ以上の拡大を停止し、ウクライナの加盟を排除する
  • 1997年5月時点で駐留していた国以外に追加で兵力や装備を駐留させない
  • NATOはウクライナ、東欧、南コーカサス、中央アジアにおける軍事活動を一切行わない
  • NATOとロシアは互いの安全保障の脅威となる地域への兵力・装備の配備を行わない
  • 核兵器や非核兵器を搭載した爆撃機を自国の空域外に飛ばして相手を攻撃することを控える
  • 中距離~短距離ミサイルを配備して互いの国を攻撃するような行為を行わない
  • 相手国の領土内目標を攻撃可能な水域に軍艦を保有することを控える
  • 核兵器の使用を前提にした軍事演習を行わない
  • 核兵器を保有していない国に核兵器を使用する演習を行わない
  • 合意した国境地帯で旅団規模を超える演習などは実施しない
  • 定期的に演習内容について情報交換を行う
  • 当事者同士が互いに敵視せず紛争解決に武力を用いないことで合意することを確認する
  • NATOとロシアはホットラインを開設する
  • 米国はさらなる東への拡大をNATOが追求せず旧ソ連諸国を同盟に加盟させないことを約束する
  • 米国は旧ソ連諸国に軍事基地を建設したり兵力を駐留させたりしないことを約束する


旧ソ連諸国でNATO加盟国の東欧13ヶ国、未加盟の旧ソ連圏諸国でNATOが軍事的活動や支援などを行うことを制限、モスクワを直接狙えるICBM以下の射程を備えたた兵器を陸海空の全てから遠ざけろとNATOに要求しており、これをNATOではなく米国に保証を求めている。

1997年5月以降にNATOに加盟した旧ソ連圏諸国: 13カ国
チェコ、ハンガリー、ポーランド、ブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、アルバニア、クロアチア、モンテネグロ

NATO非加盟の旧ソ連圏諸国:
ウクライナ、ジョージア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン

名前が挙がっていないベラルーシは、ルカシェンコ大統領とプーチン大統領が盟友関係にある。

これらは交渉を始めるための叩き台で、プーチン大統領が本当に狙っているのは、NATOの東への拡大停止(ウクライナやジョージアの加盟拒否)、東欧加盟国の中でロシアと国境を接するエストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、黒海に面するルーマニア、ブルガリアへの兵力展開を制限であろうと見られている。

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NATOとEUの加盟状況は下記の通り。旧ソ連

NATO EU
原加盟国 米国 対象外
カナダ
イタリア 1952
オランダ
フランス
ベルギー
ルクセンブルク
英国 加盟→離脱 1973
2020/1/31
デンマーク 1973
ポルトガル 1986
アイスランド

非加盟

ノルウェー
1952/2

ギリシャ

1981
トルコ 非加盟
1955/5 ドイツ(西ドイツ) 1952
ソ連崩壊 1991/12/26
1982/5 スペイン 1986
1999/3  チェコ 2004/5
 ポーランド
 ハンガリー
2004/3  エストニア 2004/5
 ラトビア
 リトアニア 
 スロバキア
 スロベニア
 ブルガリア 2007/1
 ルーマニア
2009/4 アルバニア 非加盟
 クロアチア 2013/7
2017/6 モンテネグロ 非加盟
2019 マケドニア
非加盟 アイルランド 1973
オーストリア 1995
フィンランド
スウエーデン
キプロス 2004/5
マルタ
非加盟 スイス 非加盟
ボスニア・ヘルツェゴビナ
セルビア
コソボ
ベラルーシ
モルドバ
ウクライナ
30か国

28→27

米上院は12月16日、中国・新疆ウイグル自治区からの輸入品について、強制労働で生産されていないという証明を義務付ける法案(Uighur Forced Labor Prevention Act)を1票の反対のみで可決した。

同法案については、新疆地域での取引があるCoca ColaやNike、Appleといった大企業が ビジネスへの影響を懸念し、反対していた。

当初はバイデン政権も支持せず、ホワイトハウスはこの法案について立場を示していなかったが、大統領報道官はバイデン大統領が署名する方針だと発表した。

上院では、 法案を2021年7月に満場一致で可決していたが、今回、下院が類似法案を可決したため、これを再審議し可決した。

付記 12月23日、法律成立。

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米下院は12月8日、中国・新疆ウイグル自治区におけるイスラム教徒の少数民族ウイグル族への弾圧を巡り、同国に制裁を科すことを目的とするウイグル強制労働防止法案"Uighur Forced Labor Prevention Act" を賛成428、反対1の圧倒的賛成多数で可決した。

新疆ウイグル自治区 からの全ての産品が強制労働で製造されていると見なす「反証を許す推定」規定が含まれており、製品が強制労働によって生産されたものではないと証明できなければ、米税関・国境警備局(CBP)が輸入を差し止められるようにする内容 。

輸入禁止措置は法律成立から180日後に発効する。


米国は中国による新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル人弾圧をめぐり、中国への圧力を強めてきた。

トランプ前大統領は2020年6月17日、新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル人弾圧をめぐり、中国政府の高官らに制裁を科すよう トランプ大統領に求める「2019年ウイグル法案(Uighur Act of 2019)」に署名し、同法は成立した。

2019/12/7 下院「ウイグル人権法案」可決

米政府は2020年12月、新疆ウイグル自治区に拠点を置く組織「新疆生産建設兵団(XPCC)」が製造する綿製品に対して、禁輸措置を発動した。
2021年1月、米税関・国境警備局(CBT) は新疆ウイグル自治区の強制労働をめぐる輸入禁止措置に違反したとして、ロサンゼルス港でユニクロの男性用シャツの輸入を差し止めた。「新疆生産建設兵団(XPCC)」が原材料の生産に関わった疑いがあるとしている。
綿の原材料は生産過程が複雑で、原産地の特定が困難とされるが、輸入する企業に、強制労働の製品を使っていないと証明する義務を課していた。

米税関・国境取締局は2021年1月13日、少数民族による強制労働で製造されていることを理由に新疆ウイグル自治区で生産された綿とトマト関連製品全ての輸入を禁じると発表した。これまで特定企業を対象に実施していた禁輸措置を全域に広げた。

バイデン米政権は2021年7月13日、中国政府による新疆ウイグル自治区での人権侵害や強制労働問題を巡り、 国が広く関与する強制労働、監視、強制的な人口抑制策、子供の家族からの隔離、大量拘留、その他の人権侵害を挙げ、「新疆と結びついた供給網や事業、投資から退出しない企業や個人は、米国法違反に問われる高いリスクを冒すことになりうる」とする勧告を発表した。

2021/7/15  ウイグル関連の取引は「米国法違反リスク」


今回、同地区の全ての製品について、強制労働によって生産されたものではないと証明できなければ、 輸入を差し止められる。

しかし、下図(毎日新聞)のとおり、強制労働によらないとの証明は困難である。


綿花やトマトの主要産地であるほか、太陽電池用多結晶シリコンの生産でも世界の供給の4割超を占めるとされ、 影響が大きい。

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バイデン政権は12月6日、新疆などでの人権侵害を理由に、来年2月の北京冬季五輪に外交使節団を派遣しない「外交ボイコット」を発表した。 多くの国が追随している。

必ずしもウイグル問題だけではないが、財務省、商務省も中国への圧力を強めている。

米財務省は2021年12月10日、中国の人工知能(AI)関連スタートアップ企業、商湯科技(Sensetime)を「中国軍産複合体企業」のリストに掲載し、米国人による投資を禁止したが、12月16日、ドローン大手DJIなど中国企業8社を米国人による証券投資の禁止対象に追加した。

2020/11/13 米国、中国軍支援企業への投資を禁止 付記

米商務省は11月26日、中国とパキスタン企業及び中国企業の日本とシンガポール子会社27社をEntity list に追加したが、12月16日に中国など37事業体の40拠点をEntity Listに追加した。

2020/12/19 米国、半導体SMICなど中国企業77社をEntity Listに追加 付記

世界保健機関(WHO)は12月17日、米バイオ医薬品会社 Novavaxが開発し、製造パートナーのインドのSerum Institute of India が製造する新型コロナウイルスワクチンについて、緊急時使用リスト(Emergency Use Listing :EUL)に登録したと発表した。

これにより、コロナワクチンの公平分配の国際的枠組み「COVAX」に出荷する道が開かれる。

COVAX については 2021/1/25 貧困国へのCOVID-19 ワクチン供給

Serum Institute of Indiaは英AstraZeneca開発したワクチンも製造し、EULに登録されており、同社製のワクチンがWHOのEULに登録されるのは2例目となる。

AstraZenecaは2010年6月4日、ワクチンを増設し、開発途上国にも供給すると発表したが、インドのワクチン大手Serum Institute of India (SII) とライセンス契約を締結、10億回分を低・中所得国に供給する。このうち、一定量(発表なし)はインド向けで、残りはGAVI によって他の低所得国に配られる。

2020/6/8 AstraZeneca、新型コロナウイルスワクチン増産、開発途上国に供給 


コロナワクチンでWHOがEULに登録したのはこれが9つ目。中国が開発したものが2件、インド開発が1件ある。

EUL holder 開発者 製品名
2020/12/31 BioNTech Pfizer/ NioNTech Comirnaty®
2021/2/15 AstraZeneca AB / SK Bioscience AstraZeneca Vaxzevria(ChAdOx1-S)
2021/2/15 Serum Institute of India AstraZeneca CovishieldTM ChAdOx1-S)
2021/3/12 Janssen-Cilag Janssen(Johnson & Johnson) Ad26COVS1
2021/4/30 Moderna Moderna Spikevax
2021/5/7 Beijing Institute of Biological Products 同左 (Vero Cell)
2021/6/1 Sinovac Life Sciences 同左 CoronaVac(Vero Cell)
2021/11/3 Bharat Biotech 同左 COVAXIN
2021/12/17 Serum Institute of India Novavax Covovax

欧州中央銀行(ECB)は12月16日の理事会で、コロナ危機で導入した緊急買い取り制度(Pandemic Emergency Purchase Programme:PEPP)による新規資産購入を2022年3月末で打ち切ると決めた。総額1兆8500億ユーロ(約240兆円)の同制度の終了で、2022年4月以降の資産購入額は大きく減少する。

ECBのラガルド総裁は、経済と物価が改善するなか、緩やかに緩和縮小を進めていく方針を示した。ただ物価を2%程度で安定させるためには「まだ金融緩和が必要だ」とも述べ、2022年の利上げは「とてもありそうにない」とした。

ECBは毎月、緊急買い取り制度で約700億ユーロ、従来型の量的緩和制度で約200億ユーロの資産を購入しているが、2022年1~3月に緊急買い取り制度による購入量を現在より減額したうえで、3月末で新規購入を打ち切る。ただ し、新型コロナウイルスの感染状況次第で「再開することもあり得る」としている。

なお、激変緩和措置として、量的緩和制度による購入額を2022年4~6月は月400億ユーロ、7~9月は月300億ユーロ とし、10月以降は月200億ユーロに戻す。


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欧州中央銀行(ECB)は2018年6月14日、理事会を開き、量的緩和政策を年内に終了することを決めた。2018年10月以降は150億ユーロに減らし、年末で打ち切る。すでに保有している国債については満期を迎えた分を再投資に回して当面は残高を維持する。


2018/6/18 欧州中銀、量的緩和政策を年内終了
 

しかし、ECBは2019年9月12日に開いた理事会で、2018年12月に打ち切ったばかりの量的緩和政策を再開した。
さらに銀行が中央銀行に余剰資金を預ける際の金利をマイナス0.4%からマイナス0.5%に引き下げた。

量的緩和政策(Asset Purchase Programm:APP)は2019年11月から月200億ユーロのペースで国債などを買い入れる。ドラギ総裁は「必要なだけ長く」買い入れを続けるとして、粘り強く緩和を続ける姿勢を示した。

2020年3月12日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ECBは現行の月200億ユーロペースでの国債等の資産買い入れ(年2,400億ユーロ)に加え、2020 年末までに 1,200 億ユーロの社債等資産の追加購入を決定した。(2020年総額 3,600億ユーロ)

更に2020年3月18日に、資産買取プログラムの拡大を発表した。コロナ危機緊急買い取り制度(Pandemic Emergency Purchase Programme:PEPP)に基づき、7,500憶ユーロの追加購入を行う。期間は「2020年末まで」とした。

2020年6月のECBの会合でPEPPは更に6,000億ユーロ拡大され、合計で1兆3,500億ユーロという巨額なものとなるとともに、買入期間も少なくとも2021年6月まで継続することが決定され た。

ECBは2021年9月9日、 政策理事会後の記者会見で、新型コロナウイルス緊急対策として打ち出したPandemic Emergency Purchase Programme:PEPP を1兆8,500億ユーロの規模で少なくとも2022年3月末まで、あるいは政策理事会が新型コロナ危機が収束したと判断するまで継続する方針を維持すると 発表していた。

現在は、Pandemic Emergency Purchase Programme(PEPP)で約700億ユーロ、従来型のAsset Purchase Programm(APP)で約200億ユーロの資産を購入している 。

今回ECBは、経済と物価が改善するなか、「段階的な資産購入ペースの縮小が許されると判断した」。

2022年3月末でPandemic Emergency Purchase Programme(PEPP)の新規購入を打ち切る。

ただ し、激変緩和措置として、Asset Purchase Programm(APP)の購入額で調整し、10月以降はAPPを月200億ユーロとし、2019年11月の量的緩和政策再開時のレベルとする。

ーーー

一方英国では、イングランド銀行(中央銀行)が12月16日、政策金利を0.15%引き上げて同日付で年0.25%にすると発表した。
利上げは2018年8月以来3年4カ月ぶり。供給制約やエネルギー価格の高騰で物価上昇率が急拡大するなか、金融緩和からの脱却を決めた。

また、米連邦準備制度理事会(FRB)は12月15日、物価上昇が勢いを増していることから、景気過熱に歯止めをかけるため、11月から始めた「量的緩和の縮小」のペースを加速させることを決めた。

2021/12/16 FRB、量的緩和策の前倒し終了決定  

欧米では消費者物価指数が急騰している。エネルギー価格上昇が大きいが、食品とエネルギーを除いたコア部分でも上昇が大きい。

これに対し、日本はコアCPIがようやくプラスに転じた状態である。生鮮食品とエネルギーを除くコアコアは-0.7%であり、目標とする2%は視野に入らない。
黒田日銀総裁は12月17日、「(物価が)
2%に及ぶとか超えることはまずない。欧米のように金融政策の正常化に向けて動き出すことにはならない」としている。

今後、EUや米国が英国に並んで金利を引き上げると思われるが、日本は取り残されることとなる。

ーーー

建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込んだ元建設作業員と遺族が、国と建材メーカーに損害賠償を求めた4件の訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は5月17日、規制を怠った国の対応は違法と認め、「違法状態が続いた1975~2004年の被害に賠償責任が生じる」との初判断を示した。被害原因となった建材を製造した可能性が高い複数のメーカーの連帯責任も認めた。


横浜、東京、京都、大阪の4つの地裁に起こされた裁判で、一連の集団訴訟では初めて、最高裁判所が判決を言い渡した。

判決後の会見で、原告の弁護団長は最高裁判決を受けて政府が示す和解案を受け入れる方針を明らかにし、被害者の救済が前進することになった。

2021/5/19  最高裁、建設アスベスト訴訟で 国と企業の責任認める

また、国家賠償請求訴訟を起こしていない被害者らを補償する「給付金制度」に関する新法が、6月9日の参院本会議で全会一致で可決、成立した。

訴えを起こした九州の労働者ら116人のうち第2陣の20人も11月10日に福岡地裁で国側との和解が成立してい る。国は和解金として計約9140万円を支払う。

残る90人超の原告についても一部を除き、順次和解が成立する見込み。建材メーカーに対する訴訟は継続する 。

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厚生労働省は12月16日、Modernaワクチンについて18歳以上を対象に3回目の接種に使用することを特例承認した。


Modernaワクチンは日本では武田薬品工業が扱っている。11月10日に武田が申請していた。


3回目では、2回目までの半分の量を接種し、時期は2回目から6か月以降となる。

2022年3月から始める職域接種のほか、これまでPfizerのワクチンを使っていた自治体の個別接種や大規模接種でも使用し、2回目までと異なるメーカーのワクチンを使う「交互接種」を進める。


Pfizerワクチンについては11月11日に特例承認している。


日本でのワクチン承認状況は下記の通り。

接種対象 1回の接種量 接種
Pfizer 1~2回目 2021/2/14 16歳以上 30マイクログラム 3週間間隔、2回 
2021/5/31  12歳以上
2021/11/10 申請
2022/1/20了承 
 
5~11歳 1/3(10マイクログラム)
3回目 2021/11/11 18歳以上 30マイクログラム 2回目から6カ月以上経過



接種対象 1回の接種量 接種
Moderna 1~2回目 2021/5/21 18歳以上 100マイクログラム 4週間間隔、2回
未承認* 12歳以上
3回目 2021/12/16 18歳以上 半量(50マイクログラム) 2回目から6か月以上経過

  * FDAは、まれな炎症性心疾患のリスクを高める可能性を評価するために若年層での承認判断を先送りしている。



接種対象 1回の接種量 接種
AstraZeneca 1~2回目 2021/5/21  18歳以上 4~8週間の間隔、2回

米国ワシントン大学医学部のCecilia S. Lee教授(韓国生まれ、アルゼンチン育ちの女性)の研究陣は12月7日、米国医師会雑誌 JAMA Internal Medicine に「年を取って白内障の手術を受けた人は他の人より30%も認知症になりにくい」と発表した。

https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2786583

白内障は、目の水晶体が白く濁ってしまうことにより視力が低下する疾患で、手術は、損傷した水晶体を人工の水晶体に変えるもの。

研究陣は65歳以上の3038人を対象に長期間の追跡調査を行った。調査期間中、853人が認知症にかかった。

白内障の手術を受けていた参加者(ほぼ半数)は、手術を受けていない白内障患者のグループより認知症発症リスクが29%低かった。

白内障は青色の光を遮断する。睡眠の周期を調節する生体時計は青色の光に対し敏感に反応する。

Lee 教授は「白内障は、青色光をはじめ網膜に届く全ての光の質に影響を及ぼすので、白内障手術が神経細胞を再活性化させて認知能力の減少を防いだ、とみることができる」と説明した。


なお、緑内障手術を受けた人は、認知症の発症が減るということはなかった。

緑内障は視神経の異常や眼圧の増加で視野が狭くなるもので、手術は視力の改善にはならない。

ーーー

2018年2月に奈良県立医科大学が奈良県在住の地域高齢住民を対象とした研究で、白内障手術を受けた人では軽度認知機能障害(認知症の前段階)が有意に少なかったが、認知症とは有意な関連を認められないと発表している。

視力と独立して白内障手術が軽度認知機能障害と関連することが明らかとなったとしている。

物質・材料研究機構 (NIMS) は12月15日、ソフトバンクと共同で、現行のリチウムイオン電池の重量エネルギー密度(単位重量当たりの電池の容量)を大きく上回る500Wh/kg 級リチウム空気電池を開発し、室温での充放電反応を実現したと発表した。

エネルギー密度ならびに、サイクル数の観点で世界最高レベルであることを示している。

リチウム空気電池は、正極活物質として空気中の酸素を用い、負極にはリチウム金属を用いることによって、理論重量エネルギー密度が現行のリチウムイオン電池の数倍に達する「究極の二次電池」とされる。
軽くて容量が大きいことから、ドローンや電気自動車、家庭用蓄電システムまで幅広い分野への応用が期待されている。

空気中の酸素(正極活性物)とリチウム金属(負極活性物)が化学反応することで電力を生成する。

放電反応では、負極から溶け出したリチウムイオンが正極で酸素および電子と反応して過酸化リチウム(Li2O2)に変化し、充電反応では正極の過酸化リチウムが酸素とリチウムイオンに分解され、負極にリチウム金属が析出する。

また、正極活性物である酸素は常に大気中から取り込まれるというのが最大の特徴。電池内をほぼ負極活性物が占めることができる。

物質・材料研究機構は、科学技術振興機構 (JST) の高容量蓄電池の研究開発の加速を目的とするALCA次世代蓄電池プロジェクトの支援のもと基礎研究を進めてきた。
2018年にソフトバンクと共同で「先端技術開発センター」を設立し、携帯電話基地局やIoT、成層圏プラットフォーム などに向けて実用化を目指した研究を行っている。

リチウム空気電池は理論的には非常に高いエネルギー密度を示す一方で、従来のリチウム空気電池はセパレータや電解液といった電池反応に直接関与しない材料が電池重量の多くの割合を占めているため、実際に高いエネルギー密度のリチウム空気電池を作成・評価した例は限られていた。

研究チームは、これまでのALCA次世代蓄電池プロジェクトでの研究により、リチウム空気電池の持つ高いポテンシャルを最大限に引き出すことができる独自材料(多孔性カーボン電極、レドックスメディエーター含有電解液等)を開発してきた。さらに、研究チームは、「先端技術開発センター」で開発した高エネルギー密度リチウム空気電池セル作製技術を、これら材料群に適用することで、現行のリチウムイオン電池のエネルギー密度を大きく上回る500Wh/kg級リチウム空気電池の室温での充放電反応を世界で初めて実現した。

両者は、今後2025年ごろの実用化を目指して、さらなる研究開発を重ねていく予定。

米連邦準備制度理事会(FRB)は12月15日、物価上昇が勢いを増していることから、景気過熱に歯止めをかけるため、11月から始めた「量的緩和の縮小」のペースを加速させることを決めた。

量的緩和による資産買い入れは従来の想定より3カ月早く2022年3月をめどに終える。
その後、ゼロ金利の解除(利上げ)に踏み切り、2022年中に計3回の利上げを進める見通しも示した。

FRBの保有資産縮小に関しては「まだ何も決めていない」としている。

FRBは11月3日、11月にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始すると発表した。

2020年3月にコロナウイルス対策で資産買入を再開し、毎月、国債を800億ドル、住宅ローン担保証券を400億ドル、計1200億ドルを購入している。

11月から毎月の購入額を国債を100億ドル、住宅ローン担保証券を50億ドルの合計150億ドルずつ減らしていく計画を正式に決定した。順調にいくと8カ月で購入はゼロとなり、2022年6月でテーパリングは終了する。

2021/11/5 FRB、11月から量的緩和の縮小開始


今回、これを変更し、2022年1月からは削減額を2倍の計300億ドルとし、同3月に購入額をゼロにする。


その後、ゼロ金利を解除し、2022年中に計3回の利上げを進める。

2018/3  1.50%~1.75%
2018/6  1.75%~2.00%
2018/9  2.00%~2.25%
2018/12  2.25%~2.50%
2019/7 2.00%~2.25%
2019/9  1.75%~2.00%
2019/10

1.50%~1.75%

2020/3/3

1.00%~1.25%

2020/3/15

 0.00%~0.25%



米国の物価は急上昇している。エネルギー価格の上昇が大きいが、食品とエネルギーを除いたコアも上昇している。

失業率も下がっている。

米連邦公開市場委員会(FOMC)は2021年4月28日の時点では、物価上昇は一時的とした。

ワクチン接種の進捗と力強い政策支援を受け、経済活動と雇用の指標は強さを増した。パンデミックによる打撃がもっとも大きかった産業は依然弱いが、回復し始めている。
物価上昇率は、主に一時的な要因を反映して上昇した。経済および米国の家計と企業の信用の流れを支える政策措置もあり、金融情勢は全般に依然として緩和的だ。

しかし、その後も上昇が続き、FRBのパウエル議長は11月30日、高インフレを「一時的」とする表現を事実上撤回した。

今回、パウエル議長は「物価上昇は想定より持続的なもので、勢いも強く、そのリスクも高まってきた」と述べた。 インフレ率が目標の2%を大きく上回っている」と述べ、物価の安定を守るとした。

今回のFOMCは正副議長や理事、地区連銀総裁ら参加者18人がそれぞれ中期の経済・政策見通し(SEP)を提示した。2022年にゼロ金利を解除し、計3回利上げするとの予想が中央値となった。

次いで2023年3回、2024年2回と3年間で計8回の利上げを想定た。景気を冷やしも熱しもしない長期的な政策金利は2.5%と前回と同水準を見込んだ。

米国の債務上限問題がようやく解決した。

議会は米政府の債務上限を2兆5千億ドル引き上げ、31.4 兆ドルにする法案を可決した。来年の中間選挙の先まで、恐らく2023年までは債務不履行にはならないと見られる。

まず上院が12月14日午後、この法案を可決し、下院に送った。

下記の手続きにより、今回限り過半数での可決となったが、共和党議員1名が棄権したため、50対49での可決となった。
(50対50の場合は、上院議長である副大統領が投票するため、いずれにしても可決となる。)

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 48 2 50
反対 49 49
棄権 1 1
合計 50 48 2 100


下院は同日の夜9時に本件を優先議題にすることを決め、議論に入り、15日0時23分に可決した。

  共和党 民主党 合計
賛成 1 220 221
反対 209 209
棄権 3 1 4
合計 213 221 434

共和党は、実際にはこれを否決してデフォルトが起こることは避けたいが、民主党単独で決めたとの実績をつくるべく、例外的に上院での多数決での議決を認める法案を通してまで、引き上げに反対の姿勢を続けた。

共和党のLindsey Graham 上院議員は、「民主党は債務上限を2兆5千億ドル引き上げた。政府を膨張させ続けようとする民主党の望みは社会主義アメリカへの道だ」と述べた。

ーーー

米上下両院は12月2日、翌日で期限切れとなるつなぎ予算を来年2月18日まで延長する法案を賛成多数で可決した。バイデン大統領は12月3日、これに署名、同予算が成立した

2021/12/4 米議会、つなぎ予算案を可決 

しかし、債務上限については未解決で、イエレン財務長官は、12月15日までの財政資金を確保しているが、その先は資金繰りが行き詰まる恐れがあると警告している。

債務残高に上限を定める法律の適用停止措置が7月31日に期限を迎えた。 28兆4010億ドルが上限となった。

2021/7/26 米国、債務上限復活 

そのため、議会は当面、債務上限を4,800億ドル引き上げる法案 を通し、大統領は10月14日に署名、成立した。

2021/10/12 米上院、債務上限の一時引き上げ可決 

しかし、これでは上限が28兆8800億ドルになるだけで、間もなく資金繰りに行き詰まる。


実際には共和党も民主党も、政府の資金繰りが行き詰まってデフォルトに陥ることは望んでいない。

しかし共和党は、債務が増えるのはバイデン大統領の1.75兆ドルの税制・支出法案などのためであるとし、共和党としては債務引き上げ法案に賛成しないとする。他方民主党は、これまでの共和党政権の支出増も債務増の原因であり、共同で債務引き上げを行なうべきだと主張し、単独での引き上げには反対してきた。

時間稼ぎのため、とりあえず4800億ドル引き上げて時間稼ぎをしたが、それも期限がきた。

このため、民主党単独で引き上げることとしたが、上院では議決に60票が必要であり、民主党単独では可決できない。

このため、両党の協議で、本件に限り上院で過半数で議決することが出来る法案を通すというやり方を考案した。共和党幹部はこれまで、バイデン政権が掲げる大型歳出法案への反発から協力を拒んできたが、民主党単独での上限引き上げ法案可決は容認した。

共和党の思惑通り、共和党が反対したのに民主党が債務を増やしたという実績が残ることとなる。全くの茶番である。

ーーー

米下院は12月7日夜、連邦政府債務の法定上限引き上げ案の単純過半数票での上院通過を可能にする迅速承認(fast-track)プロセスを設ける法案を賛成222、反対212の賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 合計
賛成 1 221 222
反対 212 212
合計 213 221 434

上院は12月8日、この法案を通した。手続き上、この法案を票決するかどうかを60票以上の賛成で通し、そのうえで多数決で通した。

民主党のSchumer上院院内総務と共和党のMcConnell上院院内総務は債務上限引き上げを後押しする打開策で合意したとしている。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 14 48 2 64≧60
反対 36 36
合計 50 48 2 100
  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 10 48 1 59>50
反対 35 35
棄権 5 1 6
合計 50 48 2 100

法案には共和党から10名が賛成した。上院共和党トップのMcConnell 院内総務も賛成した。

バイデン大統領が署名し、上院民主党会派は単純過半数で債務上限を引き上げる1回限りの権限を得た。

連邦政府の借入限度額である現在の28兆9000億ドルを実際に引き上げるための別の法案が間もなく可決される見通しとなった。

引き上げ幅はまだ決まっていないが、2022年末までの支払いをカバーできる額(2~3兆ドル程度とされる)になる公算が大きい。

ペロシ下院議長は迅速承認プロセス法案が成立した後に上院が債務上限引き上げ案を通過させれば、下院はこれを採決のため審議すると述べた。

中国国家薬品監督管理局は12月8日、騰盛博薬生物科技(Brii Biosicences)傘下の騰盛華創医薬技術の新型コロナウイルス感染症に対する中和抗体薬治療(抗体カクテル療法)を承認したと発表した。

成人および12~17歳の未成年者で入院や死亡に至るリスクの高い軽度および「通常型」の患者を対象に承認された。

中国当局が新型コロナ治療薬を承認するのは初めて。

騰盛博薬は英製薬大手GlaxoSmithKlineの元幹部、洪志・最高経営責任者(CEO)らが2017年に設立したバイオ企業で、中国と米国に本拠を置く。B型肝炎、COVID-19などの重大な感染症の治療法の進歩に取り組んでいる。2021年7月に香港取引所に上場した。

2020年3月31日にCOVID-19の治療薬開発のため、清華大学及び深圳市第三人民病院が開発したモノクローナル抗体の共同開発契約を締結した。

この薬は共同開発したamubarvimabモノクローナル抗体注射液「BRII-196」及びromlusevimabモノクローナル抗体注射液「BRII-198」によるカクテル療法で、騰盛博薬によると、 新型コロナウイルスのオミクロン株、デルタ株、デルタプラス株に対する中和活性を維持することが検証されたという。

発表文 https://www.briibio.com/news-detial.php?id=512#news

米国や南アフリカ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、フィリピンの6か国で行った最終段階の臨床試験で、重症化する危険性の高い患者が入院したり死亡したりするリスクが80%減少したと説明した。臨床試験では、重症化リスクのある患者847人を薬を投与するグループと、プラセボ(偽薬)を投与するグループに分けて経過を比較。投薬後28日以内に死亡した人はゼロだった。

臨床試験を行った国を重点に世界中で申請を進めるとしている。 米国でこの療法の緊急使用許可を申請しているという。

騰盛博薬の関係責任者は、「中国国内の価格はまだ未定だが、生産能力には弾力性があり、ニーズを踏まえて調整されるだろう」と述べた。


騰盛博薬生物科技(Brii Biosicences)のパイプラインは 下図の通りで、米FDAに申請しようとしているものが多い。


https://www.briibio.com/upload/BriiBio-Corporate-Presentation.pdf

米南部テキサス州で施行された人工妊娠中絶を大幅に制限する州法をめぐる訴訟で、連邦最高裁は10月10日、8対1で同法の効力を容認する判断を下した。
同法の合憲性については判断を回避した。

また、同法の効力停止を求めたバイデン政権の訴えを8対1で却下した。

最高裁は、同法の効力継続を認める半面、中絶医療関係者らが医療機関の許認可権を持つ州当局を相手取って提訴することを認めるとした。

現在の最高裁は、保守派6名、リベラル派3名であり、同法を8対1で容認したのは驚きである。中絶を合憲とした1973年の最高裁判例が骨抜きとなる可能性が高まっている。

ーーー

米連邦最高裁は9月1日、妊娠6週目以降の中絶を禁じたテキサス州の法律に対する差し止め請求を退け、同法は同日施行された。

同法は、

胎児の心拍が確認できる妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を禁止する。(「ハートビート(心臓音)法」とも呼ばれる)

妊娠は「最後の生理が始まった初日」を0週のはじめと数えるが、6週目ごろでは妊娠に気づいていない女性も多い。 妊娠に気が付いた時点では、中絶は出来ないことになる。

レイプや近親相姦による妊娠の場合も例外を認めない。 事実上の全面禁止である。

中絶の手術を行った人に加え、手術費や処方薬の支払いを援助したり、女性をクリニックまで乗せたタクシーの運転手さえも、たとえわずかでも中絶に関わった人は訴えられる可能性がある 。

州内外の民間人は誰でも違反者を訴えることができる。(民事訴訟の私訴を許可)
告発した人が勝訴した場合は1万ドルが与えられ、裁判費用もカバーされる。

バイデン米政権は9月9日、妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を原則禁止するテキサス州法に異議を唱え、テキサス州西部地区連邦地方裁判所に同州を提訴した。

2021/9/14 バイデン米政権、中絶禁止法でテキサス州を提訴 

テキサス州の連邦地裁は10月6日、テキサス州が「憲法で保障された重要な権利を市民から奪おうと、前例のない攻撃的な企てを追求した」とし、「重要な権利の剥奪を一日たりとも認めることはできない」として一時的に効力を停止する命令を出した。

しかし、州側は「民間人が提訴することを禁じるのは誤りだ」などと主張して上訴、2日後の10月8日に第5巡回控訴裁判所は、同法の一時差し止めを命じた連邦地裁の判断は出されるべきではなかったと指摘し、差し止めを解除し、同法を巡る訴訟の手続きを「迅速に」進める間、州法は効力を維持するとの判断を示した。

米司法省は10月18日、テキサス州法の差し止めを求め、連邦最高裁に上訴した。

司法省は訴状で、控訴裁の差し止め解除が「テキサス州における市民の憲法上の権利の無効化を可能にする」と強調。「問題の重要性と緊急性を踏まえ」、下級審がそれぞれの最終判断を下す前に、最高裁が審理することは可能と主張した。

米連邦最高裁は11月1日、人工妊娠中絶の大半を禁止した南部テキサス州の州法を巡り口頭弁論を開き、審理した。
口頭弁論では、同州法が一般市民に法の執行を事実上委ねていることについて保守派判事の一部からも懐疑的な声が出た。

中絶実施施設や司法省側は、テキサス州法は最高裁が合憲と認めた女性の中絶する権利を侵害し、市民に「報奨金」を与えて法を執行させることで司法審査を逃れていると主張した。
テキサス州側は、法の執行に関与していない州政府を連邦裁判所が裁くことはできないと反論した。

今回連邦最高裁は、テキサス州の州法について存続を認める判断を示し、一方で、中絶クリニックが連邦裁判所で同法に異議を申し立てる権利も認めた。

この結果、本件は連邦地裁に戻ってさらなる訴訟が行われることになる。

法廷で争うことが可能になった中絶クリニックは辛うじて勝利した形だが、最高裁は中絶クリニックが提訴できる対象者を制限したことで、中絶提供者が最終的に有利な判決を勝ち取っても、一部の州当局者による法執行を差し止めるだけとなる。

中絶の手術を行った人に加え、手術費や処方薬の支払いを援助したり、女性をクリニックまで乗せたタクシーの運転手さえも、たとえわずかでも中絶に関わった人は訴えられる可能性がある。

クリニックの中絶再開につながるかは不透明である。

理化学研究所は12月8日、ヒトの体内に存在する季節性コロナウイルス(風邪をおこすウイルス)に対する「記憶免疫キラーT細胞」が認識する抗原部位を発見し、その部位が新型コロナウイルスのスパイクタンパク質領域にも強く交差反応することを示したと発表した。

発表文 https://www.riken.jp/press/2021/20211208_1/index.html

解説ビデオ https://www.youtube.com/watch?v=OuBG3JySa-0

今回、研究グループは、日本人に多いヒト白血球型抗原(HLA)タイプのHLA-A*24:02に結合する新型コロナウイルスのSタンパク質中のエピトープの同定に成功した。
季節性コロナウイルス(風邪のウイルス)に対する記憶免疫キラーT細胞は、このエピトープを交差認識し、新型コロナウイルスに対して抗ウイルス効果を示す。

風邪のウイルスと新型コロナウイルスのSタンパク質の部分に共通のものがあり、日本人に多い白血球の場合に、 それに対しキラーT細胞が働き、ウイルスの入り込んだ細胞を破壊する。
以前に風邪にかかった時に働いたキラーT 細胞が眠った状態で存在するため、 新型コロナウイルスが細胞に侵入した場合、それへの抗体を持っていなくても、
従来のコロナウイルスの記憶を持つキラーT細胞が速やかに活性化して新型コロナウイルスを攻撃するため、感染や重症化が防げたのではないかと いうもの。

免疫反応を強く引き起こすエピトープの発見は、より効果的なワクチンの開発や治療薬の開発につながる。

ーーー

ウイルス感染症では、抗体がウイルスの体内侵入を防御する。

しかしウイルスが体内に侵入した場合は、免疫細胞の「キラーT細胞」が 感染した細胞を破壊してウイルスを除去する。

ヒトの全身のほぼ全ての細胞にヒト白血球型抗原(HLA)というタンパク質がある。細胞がウイルスに感染すると、ウイルスの一部(エピトープ :抗原決定基)が細胞表面に出てくる。エピトープがHLAに結合すると、キラーT細胞はこれを敵と認識し、細胞そのものを破壊する。更キラーT細胞が活性化して増殖する。


HLA には数万の種類があり、HLA の型は親から子へ遺伝する。そのため HLA 型の分布には、人種によって異なる特徴が生じる。

HLAが異なると特定の抗原に対する結合の度合いが大きく異なる。HLAタイプにより、特定のウイルスにキラーT細胞が強く働く場合(エピトープがHLAに結合)と、働かない場合が出る。

人類の長い歴史で何度も致命的な感染症が流行し、特定のHLAを持つ集団が生き残り、それが繰り返されてHLAの多様性が形成されたのではとされている。

日本人に多い HLA 型の一つに HLA-A24がある。これは欧米人には非常に少ない。(報道では、日本人は6割近く、欧米では1~2割とされる。)

国立遺伝学研究所遺伝情報研究センターの今西 規氏の解説では下図の通りとなっている。
日本人は最も多いが35%となっている。韓国人も多い。 (その韓国で最近、感染者と重症者が多いのが気になる。)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/mhc/1/2/1_130/_pdf/-char/ja


今回、研究グループは、新型コロナウイルスのスパイクタンパクを調べ、「HLA-A24 に結合しキラーT 細胞を活性化するエピトープ」を発見した。

HLA-A*24:02に親和性の高い6種類のエピトープ候補を選び、6種類の中から最も有力なエピトープとして、Pep#3(QYIペプチド)を同定した。

さらに「風邪を引き起こす従来のコロナウイルス」と「新型コロナウイルス」のエピトープを調べたところ、「極めてよく似たエピトープ」があることが 分かった。

そのエピトープはいずれも日本人の6割近くが持つといわれるHLA-A24型によく結合することも 分かった。


Q:グルタミン、Y:チロシン、I:イソロイシン、K:リシン、・・・・


HLA-A24型の場合、新型コロナウイルスにも、これまでのコロナウイルスにもキラーT細胞が機能することになる。

これは、季節性コロナウイルスの既感染の結果生じた記憶免疫キラーT細胞が、新型コロナウイルス由来のQYIペプチドにも交差反応する可能性を示す。

異なるウイルスに一種類の免疫細胞が働くことを交差免疫という。

季節性コロナウイルスは、普通の「風邪」の原因ウイルスで、多くの人は風邪にかかったことがあり、体内にその時に働いた記憶免疫キラーT 細胞が眠った状態で存在する。
その後新型コロナウイルスに感染したとき、眠っていたキラーT 細胞が働き出す。

発見したエピトープで、この記憶免疫キラーT 細胞を刺激すると、活性化し増殖することが分かった。

日本人の場合HLA-A24型が多いため、新型コロナの抗体を持っていなくても、従来のコロナウイルスの記憶を持つキラーT細胞が速やかに活性化して新型コロナウイルスを攻撃するため、感染や重症化が防げたのではないかと 見られる。

なお、HLA-A*24:02を持つ健常人の多くがこの交差反応性キラーT細胞を持っているのに対し、造血器腫瘍患者では少ないことが分かった。造血器腫瘍患者では、病気の進行、あるいは化学療法によりキラーT細胞の免疫が健常人に比べて極めて低下していることを示している。

しかし、造血器腫瘍患者でも効率よくキラーT細胞を誘導できるエピトープ群が集中する「ホットスポット」があることを見つけ、世界で初めて同定した。このホットスポットエピトープでSARS-CoV-2感染細胞を刺激すると、眠っていた季節性コロナウイルスに対する記憶免疫キラーT細胞が極めてよく反応する。

「今回同定されたホットスポットは、記憶免疫キラーT細胞を新型コロナウイルスに向かわせるキラーT細胞型ワクチンになり得るため、例えばワクチン抵抗性者の治療法の開発に貢献することが期待できる」としている。

ーーー

なお、日本医療研究開発機構は6月16日に「ウイルスの感染力を高め、日本人に高頻度な細胞性免疫応答から免れるSARS-CoV-2変異の発見」を発表している。

変異株がHLA-A24による細胞性免疫から逃避し、感染力を増強するとしている。

新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の一部が「HLA-A24」という日本人に多く見られる型の細胞性免疫によってきわめて強く認識されることを免疫学実験によって実証した。

「懸念すべき変異株」に認定されている「カリフォルニア株(B.1.427/429系統)」と「インド株(B.1.617系統;デルタ型)」に共通するスパイクタンパク質の「L452R変異」が、HLA-A24を介した細胞性免疫から逃避することを明らかにした。

「L452R変異」は、ウイルスの感染力を増強する効果があることを明らかにした。

https://www.amed.go.jp/news/release_20210616.html


今回の
「HLA-A24 に結合しキラーT 細胞を活性化するエピトープ」で特異な部分が変異すれば、エピトープがHLA-A24に結合せず、キラーT細胞を活性化しなくなる可能性はあると思われる。

オミクロン株にはスパイクたんぱくで32の変異があるとされる。まるで別ウイルスである。これにもキラーT細胞が活性化するか、早急に調べて欲しい。

ーーー

日本人に新型コロナの感染者、重症者が少ない理由について、これまで諸説があった。

BCG接種の関係が取り上げられた。

  2020/5/4 COVID-19とBCG接種(その4)

国立遺伝学研究所と新潟大のチームは、10月に開かれた日本人類遺伝学会で、新型コロナウイルスの流行「第5波」の収束には、流行を引き起こしたデルタ株でゲノムの変異を修復する酵素が変化し、働きが落ちたことが影響した可能性があるとの研究結果を発表した。

2021/11/3 新型コロナウイルスの収束は「デルタ株のゲノム変異蓄積」?


韓国中央日報が、韓国の有名ラジオパーソナリティのキム・オジュン氏の主張と して次のような新説を報道している。

デルタ株は スパイクタンパク質の変異が激しい。 このスパイクタンパク質を検出部位として選択したPCR診断キットでは、少なくとも3カ所以上、別々のところから検出してみなければならない。

3カ所以上検出する診断キットのほとんどが韓国製だが、日本は韓国の診断キッ トを輸入していないほぼ唯一の国で、日本にある診断キットでは検査をしてもデルタ株を感知できないと主張している。

日本も実際は感染者は多いが、韓国製の診断キットを使わないため、感染していても分からないだけというもの。


東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授が、日本を含む東アジア人には新型コロナウイルスに対する免疫を持つのではないかとの仮説を唱えた。

「SARSの流行以来、実際にはさまざまなコロナウイルス(SARS-X)が東アジアに流行していた可能性があるのではないか。その結果として、免疫を持っていた可能性があるのではないかということも考えられる」

東京大学先端科学技術研究センターがん・代謝プロジェクトの研究によるもの。

2020/5/25 日本人などには新型コロナウイルスの免疫? 

今回の発表はこれを立証したものとなった。

米財務省は12月3日、主要貿易相手国・地域の通貨政策を分析した半期為替報告書で、大幅な対米貿易黒字を抱える日本や中国を引き続き「監視対象」に指定した。

トランプ前政権は中国やベトナム、スイスを為替操作国に認定したが、国際協調を重視する現政権は為替操作国の基準に合致しても認定を極力避け、是正を求める方針に転換した。

今回も台湾とベトナムは為替操作国・地域の認定基準を満たすが、認定は避けた。前回報告では為替操作国の認定基準を満たしていたスイスは、今回は認定基準から外れた。

上記2国以外の中国や日本、韓国、ドイツ、スイスなど12カ国・地域を監視対象に指定した。

ーーー

米財務省は為替操作国に指定する条件として(1)対米貿易黒字の規模(2)経常黒字の規模(3)継続的な通貨売り介入――を掲げている。

  従来の基準 2019/5より改正
①重大な対米貿易黒字 対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上 同左
②実質的な経常黒字 経常黒字がその国のGDPの3.0%以上 GDPの2.0%以上
③外為市場に対する介入 GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入
(12カ月のうち、8カ月
同左
(12カ月のうち、6カ月


3基準全てに該当すれば「為替操作国」となる。

次の場合、「監視リスト」に入る。
  2基準に該当 & 1基準だが前年「監視リスト」の場合
  なお、中国は常時、「監視リスト」

ーーー

今回、中国は①②の2基準で対象となった。前回3基準とも対象となったスイスは今回は①③の2基準。アイルランドは②のみだが、前回2基準のため、監視リストに入った。

③の外為市場介入は、スイス、インド、台湾、ベトナム、シンガポールの5カ国。

操作国
3基準
監視国
2基準
監視国

1つだが前年に監視対象

  日本 中国 韓国 台湾 ドイツ スイス インド アイルランド ベトナム イタリア マレーシア シンガポール タイ メキシコ
2016/4
2016/10
2017/4
2017/10
2018/4
2018/10
2019/5

①②



①②



①②

①②

①②

①②

②③
2019/8   操作国  
2020/1
①②


①②

①②

①②




①②

①②

②③
2020/12
①②


①②

①②

①②
操作国
①③
操作国
①②

①②

②③

①②
2021/4
①②


①②
操作国
非認定

①②
操作国非認定
①③

①②
操作国非認定
①②

①②

②③

①②

①②
2021/12
①②

①②

①②
操作国
非認定

①②

①③

①③

操作国非認定
①②

①②

②③

①②

①②

丸数字は問題となった項目

前期:2021/4/23 米、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表 

米食品医薬品局(FDA)は12月8日、AstraZenecaの新型コロナウイルス感染症に対する抗体カクテル療法「Evusheld」について、免疫力が弱っている人や、ワクチンに対し重い副反応を示す人に対する緊急使用許可(EUA)を与えた。

ただFDAは、同抗体カクテル療法はワクチン接種の代替にはならないとし、「ワクチン接種が新型コロナ感染症に対する最も効果的な対策になっている」とした。

抗体カクテル療法「Evusheld」はAZD7442と呼ばれていた。

日本では、厚生労働省の新型コロナ治療薬の開発支援事業に採択されており、承認時の供給について政府と交渉している。

ーーー

AstraZenecaは2020年8月25日、COVID-19の抗体医薬品AZD7442のPhase Ⅰ 治験を開始すると発表した。

AZD7442 はCOVID-19の回復期の患者から採取したモノクロナール抗体 2種類(AZD8895 + AZD1061)を組み合わせたもの。筋肉注射で投与し、体内でウイルスが増えるのを阻止する仕組み。

特定の抗原に反応するこれらの抗体は米国のVanderbilt University Medical Centerで発見されたもので、AstraZeneca は6月9日に6種類のモノクロナール抗体についてライセンスを受けた。

AstraZenecaで半減期延長やFc受容体(FcRn)への結合の引き下げなどの最適化を行なっている。

2020/8/27 AstraZeneca、COVID-19の抗体医薬品の治験開始

AstraZenecaは本年10月11日、「抗体カクテル療法」の後期臨床試験(治験)で、患者の重症化や死亡のリスクを50%減らすことが確認されたと発表した。同社は「早い段階で治療することで重症化が大幅に抑えられ、効果は6カ月以上続く」としている。

米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請していた。

Volkswagen は12月8日、バッテリー技術で3社と戦略的提携契約を締結したと発表した。

自動車メーカーの電池、更にその原料への進出が急である。

ーーー

VWは3月15日に"Power Day" を開催、2030年までのEVなどの電動車向けバッテリーとその充電に関する技術ロードマップを発表した。

最重要部品となるバッテリーについて、電池メーカーとの合弁などを通じて40 GWh の工場を2030年までに欧州で6カ所設ける。規格を統一した電池("Unified Cell")を大量生産しコストを半減、ガソリン車より安いEVを目指す。

VWはスウェーデンのバッテリーメーカー Northvoltとの間で、今後10年にわたるバッテリー製造で140億ドルの契約を結んだ。

VWはNorthvoltの株式を追加取得し、Northvoltが欧州のVWグループ向けの主要な電池サプライヤーとなる。

提携の一環として、Northvoltのスウェーデンのプラントは拡張し、40 GWh とする。NorthvoltはドイツのSalzgitterのJV持ち株をVWに売却することにも同意した。ここも40 GWh に増強する。

今後、2026年には西欧(スペインかフランスかポルトガル)に1工場、2027年には東欧(ポーランドかスロバキアかチェコ)に1工場、2030年までにあと2工場を建設し、合計6工場 240GWh の能力とする。

標準的な電池容量のEV換算で、合計500万台分相当の電池を生産できる。

2021/3/23 VWグループ、EV向け次世代電池を大量生産

ーーー

今回の戦略的提携契約は次の通り。

1)  ベルギーの素材大手Umicore と電気自動車(EV)向け電池の正極材を合弁で生産する。

2025年から欧州で生産を始め、2030年までに約220万台分の生産体制を整える。内製化を進めて安定調達を確実にする。

合弁会社はまずVWがドイツ北部Salzgitterで立ち上げ中の電池セル工場にEV約30万台に相当する20GWh 分を供給する。2030年に生産能力を160GWh 分(Battery Electric Vehicle 220万台分)まで高める。

3月に公表した欧州の6つの巨大な電池セル工場で必要となる正極材の半分以上を確保する。合弁会社は今後、正極材の原料となるコバルトやリチウムなどのリサイクルも事業範囲に含めることを検討する。

Umicore は、機能材料メーカーで、その事業はエネルギー関連材料、触媒、 貴金属リサイクル、パフォーマンス材料の4つのビジネスグループに分かれており、自動車触媒、リチウムイオン電池材料、太陽電池、燃料電池、貴金属リサイクルのクリーンテクノロジー分野に注力している。

Horizon 2020戦略として、特に資源不足、排出抑制、輸送の電化という3つのメガトレンドに牽引されているビジネスにおいて、成長とパフォーマンスの加速を目標としている。

日本では、日本触媒との自動車用排気ガス浄化触媒のJVのユミコア日本触媒(Umicore 60%、日本触媒40%)を持つ。

2)  VWは電池開発スタートアップの米24M Technologies, Inc.への出資も決めた。製造プロセスの独自技術を持ち、電池生産のコストを大幅に削減できる可能性があるとしている。

24M Technologies (CEO Naoki Ota) はMIT(Massachusetts Institute of Technology )からのスピンオフで、独自の半固体プロセスを確立し、多数の技術特許を取得している。最大の特徴は、現行リチウムイオン電池の性能を維持・向上できることに加え、使用部材の削減、製造プロセスの簡略化により、価格競争力・リサイクル特性・安全性の高い製品を提供できる点にある。

半固体電極はMITのDr. Yet-Ming Chiangにより発明された。バインダーを使用せず、電解質と活物質を混合して粘土(クレイ)のようなスラリーを形成する。独自のスラリーにより、より簡単な製造プロセスを可能にしながら、より少ない体積、質量、およびコストで厚い電極を作成することができる。

greencarcongress.com


当該特許技術を複数の製造パートナーにライセンス供与することで、半固体リチウムイオン電池の普及を進めている。2020年には京セラが商業生産を開始している。

京セラは2019年10月、世界初となるクレイ型リチウムイオン電池の開発に成功するとともに、採用製品の第1弾となる住宅用蓄電システム「Enerezza」を2020年1月に少量限定発売すると発表した。クレイ型リチウムイオン電池は、粘土(クレイ)状の材料を用いて正極と負極を形成することから名付けられた。


伊藤忠商事は5月18日、リード投資家として出資ラウンドを取りまとめ、第三者割当増資を引き受け、24M Technologiesを伊藤忠商事の持分法適用会社とした。

3) VWは、Upper Rhine Valley でリチウムを生産するスタートアップの豪Vulcan Energy Resources Ltd とリチウムの購入で合意した。

水酸化リチウムを2026年から5年間調達する。二酸化炭素排出が少ないリチウム(ZERO CARBON LITHIUM™) 生産が売りのVulcanはUmicoreやStellantisとも供給契約を結んでいる。

Vulcan Energy Resourcesは9月29日、Zero Carbon Lithium™プロジェクトで計画中のCentral Lithium Plantの用地について独Frankfurt郊外のIndustriepark Höchstに確保したと発表した。

地熱とリチウム吸着装置を組み合わせた複数のプラントで塩化リチウムを処理して水酸化リチウムに変換する。

ドイツでの生産で欧州の顧客に対し、現在のリチウムサプライチェーンの輸送フットプリントを大幅に削減する形で、水酸化リチウムを提供できる。

日立とGEのJV、GE Hitachi Nuclear Energy は12月2日、カナダのOntario Power Generationより、Darlington新原子力発電所プロジェクトのテクノロジーパートナーに選ばれたと発表した。

小型モジュール炉である「BWRX-300」をDarlingtonに建設する。受注額は非公表。2022年内に建設許可を申請し、最大4基を建設する。早ければ2028年に第1号機が完成する。

日本勢の小型の商用炉の受注は初めて。既存の原発よりも工期が短く、炉が小さく理論上は安全性が高いとされる。

BWRX-300への関心は世界中で高まっており、カナダに加えて、米国、ポーランド、エストニア、チェコの電力会社や企業と、この技術の導入を検討する契約を結んでいる。

ーーー

日立GEニュークリア・エナジーは、日立製作所;80.01%、GE;19.99%で、日立市に本社をを置く。

事業内容は、発電用軽水型原子炉施設、高速炉施設、原子燃料サイクル関連施設およびその他関連製品の設計、製造、販売、据付及び保守に関する業務としている。

日立GEニュークリア・エナジーでは,ABWR(Advanced Boiling Water Reactor:沸騰水型軽水炉)建設経験と燃料サイクル技術を基に,小型化・簡素化により安全性と経済性の両立をめざした
1) 次世代小型軽水炉BWRX-300,
2) 実績豊富な軽水冷却技術を用いた高速炉RBWR(Resource-renewable BWR:資源再利用型BWR),
3) 固有安全性を有する金属燃料を採用した小型液体金属冷却高速炉PRISM(Power Reactor Innovative Small Module:革新的小型モジュール原子炉)
の三つの炉型について,オープンイノベーションを活用した国際共同開発を進めている。


1) BWRX-300の特徴は次の通り。(今回採用)

電気出力300MW小型モジュール炉(Gen III+
革新的安全技術と成熟した沸騰水型原子炉技術の融合
シンプルな構成による大幅なコスト低減(建設,運転&保守,発電)
地下設置によるセキュリティ強化

現在商用化している出力100万キロワット級の原子炉に比べて出力が小さい。
工場で部品を組み立てて現場で設置する方式で品質管理や工期の短縮ができるため、建設費が通常の原発より安くすむとされる。



2) RBWR (Resource Renewable BWR
:資源再利用型BWR) はABWRBWRX-300を含むすべてのBWR応用可能な軽水冷却高速炉である。

再処理、MOX燃料技術の進展に合わせて導入
プルトニウム利用促進からTRU(
超ウラン元素燃焼、転換比1.0までニーズに合わせて対応

米国3大学(MITUCバークレー,ミシガン大学)との共同研究を推進
英国国立研究所,英国大学など
と連携



3) PRISM
(Power Reactor Innovative Small Module)については下記の通り。

電気出力165/311MWナトリウム冷却高速炉Gen IV

小型モジュール・タンク型構造
静的安全性(空冷・自然循環)
固有安全性を有する実績ある金属燃料
予備設計完了(事前安全評価NRC/NUREG-1368, 1994

ーーー

日本企業が参画している他の小型原子炉にNuScale SMRがある。

2021/5/31 日揮とIHI、小型モジュール原子炉事業に参画 

トヨタの米国子会社 Toyota Motor North America, Inc.は12月6日、約12億9,000万ドル(約1,430億円)を投資する車載用電池工場の建設地について、ノースカロライナ州のGreensboro-Randolph Megasiteに決定したと発表した。

車載用電池工場の概要は下記の通り。
名称 Toyota Battery Manufacturing, North Carolina
設立 2021年11月
出資 TMNA 90%  豊田通商 10%
従業員数  1,750名(予定)
資本金 $468M
事業概要 車載用電池の製造(当初はハイブリッド用に生産)

車載用電池工場は、2025年の稼働開始時には4本の生産ラインでそれぞれ20万台分のリチウムイオン電池を生産する予定。また、将来、少なくとも生産ラインを6本に拡張し、合計で年間120万台分の電池を供給することを目指す。


報道(2021年11月)によると、
最終的な決定を下していないが、同工場の建設でパナソニックと協力する見通し。

ーーー

トヨタ自動車97「カーボンニュートラル実現に向けて~トヨタの電池の開発・供給」を発表した。

トヨタと寧徳時代新能源科技(CATL)は2019年7月、新エネルギー車(NEV)用電池の安定供給と発展進化に向けての包括的パートナーシップを締結した。

トヨタと比亜迪(BYD)は2020年に電気自動車(EV)の研究開発で合弁会社を設立した。


トヨタ自動車は10月18日、米国において2030年までにBEV用 (Battery Electric Vehicle)を含む車載用電池の現地生産に約3,800億円を投資することを発表した。 上記の1.5兆円の一部。

車載用電池の現地生産の第一歩として、Toyota Motor North Americaが、豊田通商とともに米国で新会社を設立し、2025年からの稼働を目指す。2031年までに約12億9,000万ドルの投資と、現地での新規雇用1,750人を見込 む。(今回の発表)


トヨタの電動化に関する概要:

  • これまでグローバルで累計1,870万台、米国で450万台の電動車を販売
  • 現在米国販売の約25%が電動車であり、2030年には約70%が電動車となる見通し
  • 需要の高まりを受け、現在グローバルで55車種のHEV(Hybrid)、PHEV(Plug-in Hybrid )、FCEV(Fuel Cell )、BEV(Battery)といった電動車のラインナップを2025年までに約70車種へと拡大
  • 上記グローバルで約70車種の電動車のうち15車種がBEV、うち7車種がbZ(beyond Zero:単なる「Zero Emission」を超えた価値を顧客に提供)シリーズとなる予定
  • Zero Emission Vehicle(Battery Electric Vehicle、Fuel Cell Electric Vehicle)について、2030年までには、グローバルで年間200万台、米国においては、年間150~180万台のZEVを含む電動車を販売する見通し

韓国のPOSCO Chemicalは12月2日、米GMと共同で北米にバッテリー正極材料を生産する合弁会社を設立し、北米市場に本格的に進出すると発表した。2024年から高ニッケル正極材料(ニッケルの含有量が高い次世代正極材料)を生産する。


新工場の生産能力は年3万トンで、投資額は数千億ウォンに達する。「インフラとインセンティブの検討を経て、最終的な建設地を決定する。建設地が決定する来年初めごろに具体的な投資額を公表する」としている。

生産された正極材料はGMとLGのバッテリー合弁会社 Ultium Cells LLCに供給される。

Ultium Cells LLCはオハイオ州 Lordstown の近辺に23億ドルを投資して生産能力30GWhの次世代グローバルEVバッテリーシステムの生産工場を建設中で、2022年の稼働を目指している。

2020/1/3 GMとLG Chem、世界最大級のEV用電池工場建設計画を発表

両社は急速なEV普及に対応するために能力35GWhの第2工場を建設する。 両社は2021年4月16日、第二工場のテネシー州Spring Hillでの建設を発表した。
GMはここで20億ドルを投資し、電気自動車(Cadillac Lyriq など)工場を建設すると発表している。

バッテリー業界関係者は「GMがバッテリーの素材・技術の内製化を推進し、POSCO Chemical と手を結んだものだ」と述べた。

POSCO Chemical閔庚浚社長は「世界最高レベルの素材技術、量産能力、コスト競争力に基づき、GMと共に世界の環境配慮型モビリティー市場の成長をリードしていく」と述べた。



POSCO Chemical
韓国鉄鋼最大手POSCOの子会社で、50年以上にわたって国内トップの耐火物会社として安定した成長を遂げ、コールタールや原油などの製品の生産の基礎となる石炭化学産業にも参入した。

2010年にLS Mtronの二次電池陰極材事業部を吸収した。

現在、石灰化学セグメントで、生石灰、陽極材料、化学製品の製造と販売を、耐火物セグメントで、耐火物の製造・販売、ならびに工業炉の保守サービスの提供を行っている。

最近、バッテリー素材分野の事業拡大を急いでいる。

全羅南道光陽市に年3万トン、慶尚北道亀尾市に年1万トンの正極材料工場を持つ。それぞれ で年6万トンの設備増設も進めている。

2018年に中国の華友鈷業 (Huayou Cobalt)とのJVで、浙江省の桐郷市に正極材を生産する浙江浦華と前駆体を生産する浙江華浦を設立し、現在それぞれ年5,000トンの生産している。
2021年8月にそれぞれ年間3万トン規模の生産ラインを新たに建設し、生産能力を3万5000トンずつに拡大する計画を承認した。

2022年には欧州、米国など主要拠点別に両極材の生産工場を建てる計画 を明らかにしていた。今回のGMとの合弁はその一環。

2025年までにグローバルトップレベルの陽極材量産能力を確保するため、現在4万5千トンの能力を、韓国で16万トン、海外では11万トンとする計画である。
光陽市 3万トン→9万トン、亀尾市 1万トン→7万トン、中国 5千トン→3.5万トン、米国 新設3万トン+アルファ、欧州 ?

閔庚浚社長は「急速に成長する市場に対応し、先制的に投資速度を上げてバッテリー産業のバリューチェーンをリードしていく計画だ」と述べ ている。

これまで全量輸入に頼っていたリチウムを国産化し、国内の二次電池材料産業の競争力を引き上げる戦略を描く。同事業のため、鉱石から水酸化リチウムを抽出する生産会社Posco Lithium Solution を設立した。豪州のPilbara Mineralsが18%出資する(30%まで増やすオプション)。

Pilbara Mineralsは主原料のリチウム鉱石(ケミカルグレードのリシア輝石)を年315千トン供給する。

東洋エンジニアリングは12月3日、インドネシア最大の石油化学会社であるChandra Asri Petrochemical の子会社であるChandra Asri Perkasより、インドネシア・ジャワ島西部チレゴンに新設される大型石油化学の第二期プロジェクトsecond world-scale petrochemical complex in Indonesia:CAP2) のFEED業務を受注したと発表した。 他に、Samsung Engineering、Wood、PT Haskoning Indonesiaの3社も受注している。


TOYOは本プロジェクトのPackage-A(オレフィン・芳香族回収系・ブタジエンの生産設備、ユーティリティ設備)のFEED業務を請け負う。

TOYOは1990年代に受注したエチレン製造設備を初めとし、Chandra Asriから複数の建設プロジェクトの受注実績がある。

2011/6/8  Chandra Asri の増設計画

2013/9/20 インドネシアのChandra Asri、エチレン増設


Chandra Asri の石化の現状は下記の通り。


2013/6/26 Michelin とChandra Asri 、インドネシアに合成ゴム製造JV設立


Chandra Asri の
CAP2は下図の通り。


採用技術は下記の通り。

CB&I Lummus Technology : ナフサクラッカー、ブタジエン
GTC Technology : BTX recovery
Texplore : HDPE
Lyondellbasell : LDPE、PP

国営タイ石油公社(PTT)系の石油精製大手Thaioil は2021年7月29日、Chandra Asri Petrochemical に15%出資すると発表した。9月末までに同社が発行する新株を最大914百万ドルで取得する。

タイのSiam Cement Group は2011年9月、Chandra Asriの株式30%を取得(シンガポールのTemasekから23%、Baritoから残り7%)を買収、経営に参画した。
同社も今回、Chandra Asriの新株を最大434百万ドルで取得し、出資比率を維持する。

多額の資金調達がネックとなっていたChandra Asriにとっては、タイ化学業界の二大陣営から合わせて13億ドルの投資を引き出したことで、計画実現に光明が差した。

Chandra Asriは新株発行で調達した資金をCAP2建設にあてる。プラントが5年以内に完成した 場合、Thaioil は最大270百万ドルを追加出資する。

Thaioil はナフサを供給する契約も結ぶ。


Chandra Asri
はスハルト元大統領の次男のバンバンのビマンタラ・グループ、合板王と呼ばれる彭雲鵬が率いるPT Barito Pacific林紹良が率いるサリム・グループからスピンオフしたナバン・グループが75%出資し、日本インドネシア石油化学投資(丸紅85%、昭和電工10%、TEC5%)が25%出資して設立された。 

    2006/4/26  インドネシアのエチレン計画への日本企業の参加-1

現在の株主構成は下記の通り。

Barito Pacific    34.54%    当初の株主
Temasek Holdings      シンガポールの政府系投資機関 
Siam Cement Group   30.57%    
Thaioil 15.00%
他 4社 19.89%
三菱ケミカルホールディングスのJean-Marc Gilson社長は12月1日の経営方針説明会で新経営方針「Forging the future 未来を拓く」を発表した。

2021/12/2 三菱ケミカルホールディングス、石油化学事業及び炭素事業を分離・再編へ 

席上、グループ会社の生命科学インスティテュートが開発を手掛けている再生医療Muse 細胞について、脳梗塞の適応で2021年度に承認申請、2022年度に承認取得を予定していたが、「非常に慎重に検討してきた結果、日本での限定的な臨床試験に基づく条件・期限付き承認の申請を取りやめることにした」と明かした。

日本における限定的な臨床試験のみでは、米国やEU市場でのポテンシャルが大きく制限されることを理由に挙げ、「当面はMuse細胞の作用機序に関する科学的理解を深め、準備が整った段階で完全な第3相試験に向けて取り組んでいく」と述べた。

Muse細胞の開発では、脳梗塞の他、心筋梗塞、表皮水疱症、脊髄損傷、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、新型コロナウイルス感染症に伴う急性呼吸窮迫症候群を対象とした臨床試験を行っている。(詳細下記)

しかし、 Gilson社長は「10年以内にMuse細胞が当社の収益に貢献することは期待できないだろう」と述べた。

ミューズ細胞への期待が高かっただけに、この発言が投資家の失望につながり、株価が下がった。


なお、カナダの子会社
Medicago Inc. による新型コロナワクチン(MT-2766)について「第3相試験結果の分析を終えようとしているところであり、大変有望な結果となりそうだ」と述べた。

カナダでは12月中の承認申請を予定しているが、米国、日本での申請時期はまだ確定していない。

2021/10/3 田辺三菱製薬、カナダ子会社のCOVID-19ワクチン候補の日本における臨床試験開始

北米では他に、経口ラジカヴァ製剤(MT-1186)を2022年度、赤芽球性プロトポルフィリン症およびX連鎖性プロトポルフィリン症治療薬(MT-7117)を2023年度、パーキンソン病治療薬(ND0612)を2024年度に上市を目指しており、これら4品目で2025年度に1300億円以上の売上への貢献を見込んでいる。 (但し、すべてが承認を得て上市でき、そのうえで競合品に勝てるかどうか、不明である)


新経営方針「Forging the future 未来を拓く」では、ヘルスケア(ワクチン、中枢神経、免疫炎症)を最重要戦略市場の一つに位置付けているが、
Gilson社長は「医薬品事業を現在の規模よりも大きく成長させる方法を積極的に検討しており、中長期的には日本での売上が大半を占める製薬会社のままでいるということは現実的なオプションではないと考えている。違う可能性を検討していく」と述べた。

医薬品は開発から承認取得まで時間がかかり、効能、副作用、他社との競合などで撤退せざるを得ない可能性も非常に高い。「大きく成長させる」には買収しかないが、各社とも目ぼしい買収先を探しており、買収金額は高騰している。

武田のShire 買収は6.2兆円であった。AstraZenecaは7月に希少疾患用医薬品の開発を手掛ける米バイオ製薬会社 Alexion Pharmaceuticalsを買収したが、買収額は390億ドルであった。

2019/1/5 武田薬品、1月8日にShire plcの買収完了へ
2015/5/9 米希少病治療薬メーカーのAlexion、同業のSynageva BioPharmを買収 付記

これらの場合は既に市販している製品が多いため高額になったが、新規企業で有望な開発品をもつ場合、逆に開発品が上市できないリスクを持つ。

今後に注目である。

ーーー

三菱ケミカルホールディングスは2015年5月、生命科学インスティテュートが次世代医療事業の中核と位置付ける再生医療分野への参入を図るべく、Muse細胞 (Multilineage-differentiating stress enduring cells)を利用した再生医療開発を進める㈱ Clioの全株式を取得し、連結子会社とする と発表した。

Muse細胞は、2010年に東北大学の出澤 真理教授のグループによって発見された、生体に存在する新しいタイプの多能性幹細胞で、血液や骨髄、各臓器の結合組織に存在し、内胚葉(肺や肝臓、膵臓など)、中胚葉(心臓や腎臓、骨、血管など)、および外胚葉(神経組織や表皮など)の様々な細胞に分化する能力を持っている。

もともと生体内に存在するので、安全性への懸念が低く、また、腫瘍化のリスクも低いという特徴がある。

これらの性質から、様々な疾患を対象にした再生医療にMuse細胞を応用することが注目されている。

Muse細胞による再生医療は、ドナーから採取したMuse細胞をそのまま静脈内に点滴で投与する。遺伝子の導入や事前の分化誘導が必要なく、外科手術も必要ない。

間葉系幹細胞の特徴として免疫応答が寛容なため、自分の幹細胞でなくともドナー由来の他家幹細胞を利用することが可能で、Muse細胞製剤は凍結保存しておけば、必要な時に医薬品のように使用できる。

投与されたMuse細胞は、傷ついた臓器が発するSOSシグナルに導かれて遊走し、傷害部位に集まり、傷害臓器に応じた細胞・組織に自発的に分化し、そこに生着して傷害された組織や臓器を修復していく。その結果、傷害を受けていた臓器の機能が回復する。

Muse細胞による再生医療には、次の特徴があり、患者にとって身近な治療方法となる可能性がある。

  • 遺伝子導入が不要であり、腫瘍化を含めた安全性への懸念が非常に低い
  • ドナーの細胞(他家細胞)をそのまま投与しても拒絶反応が起こりにくいため、ドナーマッチングが不要
  • 事前の分化誘導が不要なため、必要な時にすぐに投与ができる
  • 静脈内に点滴で投与するので、侵襲が少ない


素人目には素晴らしいものである。

「日本における限定的な臨床試験のみでは、米国やEU市場でのポテンシャルが大きく制限される」のであれば、欧米企業との提携で大々的に開発を進める手はないのだろうか。

米上下両院は12月2日、翌日で期限切れとなるつなぎ予算を来年2月18日まで延長する法案を賛成多数で可決した。

まず、下院が賛成221票、反対212票で同つなぎ予算を可決した。共和党から支持に回った議員は1人だけだった。

  共和党 民主党 合計
賛成 1 220 221
反対 212 212
合計 213 220 433


上院は、賛成69票、反対28票で可決した。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 19 48 2 69
反対 28 28
棄権 3 3
合計 50 48 2 100


バイデン大統領は12月3日、これに署名、同予算が成立した。

政府閉鎖はぎりぎりで回避されたが、連邦政府の借入限度額を定める債務上限問題も期限が迫っている。



バイデン大統領は10月14日に債務上限を4,800億ドル引き上げる法案に署名、成立した。

イエレン財務長官は、12月15日までの財政資金を確保しているが、その先は資金繰りが行き詰まる恐れがあると警告している。

2021/10/12 米上院、債務上限の一時引き上げ可決 

科研製薬は11月30日、国内バイオベンチャー企業 アーサム セラピューティクス(ARTham Therapeutics)を買収することを決定し、株式譲渡契約書等を締結したと発表した。

取得価額は、現金55億円で、またアーンアウト対価として、本マイルストン達成時に最大72億22百万円相当の普通株式を交付 する予定。

ARTham は未だ十分な治療法が確立されていない疾患を有する患者へ真に有効な治療薬 "Medicines that matter"を届け、患者とその家族の幸せに貢献すること」をミッションとする創薬バイオベンチャー。

2018年7月1日創業で、ARTham という名称は、「深い意味と価値というサンスクリット語の本来の意味と、「創薬はファインアート」であると言う想いの融合。

現在の大株主は下記の通り。

 みやこ京大イノベーション投資事業有限責任組合:23.62
 みやこ京大イノベーション2 号投資事業有限責任組合:10.87

 武田薬品工業:
19.29

 長袋 洋
代表取締役 CEO、共同創業者、大分大学医学部特任教授兼任):11.23  元武田薬品・創薬研究本部シニアディレクター
 Dr.
Sham Nikam(共同創業者):11.23   元武田薬品・エクストラバリュー創薬ユニット長


形成外科領域の開発品ART-001(対象疾患:難治性脈管奇形)及び皮膚科領域の開発品ART-648(同:水疱性類天疱瘡)を有している。

パイプライン 領域 適応症 ステージ
ART-001 血管疾患 難治性脈管奇形 P13Ka阻害薬 臨床第2相試験実施中
ART-648 自己免疫疾患 水疱性類天疱瘡 PDE4阻害薬 臨床第2相試験実施中
(ART-002) 低活動ボウコウ 臨床第1相試験実施中

ART-002は対象外。現CEOが設立する会社に継承する。

科研製薬は買収後、ARTham と協力し、進行中のART-001 及びART-648 の第2 相臨床試験の成功に向け開発を進める。
試験が成功した際には、科研製薬が日米欧での承
認取得に向けた第3 相臨床試験をはじめとする研究開発活動を引き継ぎ、グローバル展開を目指す。

また、本件買収により、開発パイプラインの強化に加え、ARTham の有するドラッグリポジショニングに関わる技術と経験を同社が保有する既存化合物に適用する等のシナジー効果を実現し、研究開発能力の更なる向上を図る。

9月のドイツ総選挙で第1党になった中道左派の社会民主党(SPD:党のカラーは)と、第3党のの党、第4党の自由民主党(FDP:党のカラーは)の3党は11月24日、連立政権樹立について合意に達したと発表した。「信号連立 :Traffic light coalition」 (各党のシンボルカラーから)が成立する。

3党による党内手続きを経たうえで、12月8日に開く連邦議会で社民党のOlaf Scholz 副首相兼財務相(63)が、4期16年務めたメルケル氏に代わり 新首相に選出される。

それに先立ち、メルケル首相(67)の最後の公式行事となる退任式が12月2日夜、ベルリンの国防省で開かれた。

首相以外の閣僚ポストは、社民党に内務、国防、労働・社会など6つ、緑の党に外務、新設する経済・気候など5つ、自民党に財務など4つが配分された。
外相には緑の党の
Annalena Baerbock共同党首、財務相に自民党のChristian Lindner党首が就任する可能性が高い。

3党による連立合意には下記が含まれている。

・再生可能エネルギーの比率は2030年に80%に高める。(これまでは65%が目標)

・石炭火力の廃止時期も、現在の2038年から「理想的には」2030年に前倒しすることを目指す。

・2030年までに鉄道での貨物輸送量を25%増やすとともに、国内で少なくとも1,500万台の電気自動車(EV)の投入を目指す。

・欧州域内の航空便には追加サーチャージを要求する。(ドイツは実施済み)

・移民は5年経てば市民権を申請できる。二重国籍を認める。ドイツに何十年も住んでも外人である数千人のトルコ系にとって大きなことである。

・最低賃金の12ユーロ(約1500円)への引上げ(Scholz候補が選挙戦で約束)

・大麻の合法化

・住宅不足危機対応で年に40万戸のアパート建設

・選挙権を16歳に引き下げ

・資格労働者呼び寄せのため、移民受け入れの点数制度採用

・3月にオーストリアで開かれる核兵器禁止条約の初めての締約国会議にオブザーバーとして参加、メルケル政権の姿勢を転換

NATO加盟国で、オブザーバーとして参加の意向を示したのはノルウェーに続いてドイツが2か国目で、G7では初めてとなる。他に、NATO非加盟国のスイス、スウェーデン、フィンランドが参加する。

ドイツはNATOに加盟し、国内の基地には米国の戦術核兵器が配備されているだけに、影響は大きく、他の加盟国が追随する可能性がある。NATO側の反発が予想される。

連立は問題も抱えている。

10月のG20首脳会議の合間に、メルケル首相は次期首相に就任する方向のショルツ財務相に対し、新型コロナウイルス対策の厳格化が必要になるかもしれないと注意を促した。 感染が拡大しつつあった新型コロナへの対応として、国内16州の首相を招集する会合の開催を提案した。

しかし、ショルツ氏は不要だとして取り合わなかった。社会民主党と緑 の党、自由民主党はともに、メルケル政権が導入したパンデミック対策の緊急措置の解除を目指して動いた。

ドイツではその後、猛烈な勢いで感染が拡大し、政権発足する前から立場を弱めることになった。

ーーー

ドイツ連邦下院議会選挙(総選挙)は9月26日に投開票された。

社会民主党がメルケル首相のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)を抑えてトップとなり、環境政党の「緑の党」が第3党に躍進した。

両党が他の1党と組んでも多数決に達しないため、どちらかが主導の3党連合となる可能性が高い とみられた。

社会民主党(赤)、緑の党(緑)、自由民主党(黄)は交通信号機の色から「信号連立」、CDU/CSU(黒)、緑の党(緑)、自由民主党(黄)はジャマイカの国旗の色から「ジャマイカ連立」と呼ばれる。

第一次
2005/11
第二次
2009/10
第三次
2013/12

第四次

今回

2017/9

2018/3 2021/9 首相候補
キリスト教民主同盟 キリスト教
民主・社会同盟
(CDU/CSU)
連立 連立 連立 245 連立協議 連立 196 Armin Laschet 党首
キリスト教社会同盟
ドイツ社会民主党(SPD) 連立   連立 152 離脱

連立 206 Olaf Scholz 副首相
兼財務相
緑の党       67 協議 118 Annalena Baerbock
共同党首(女性)
自由民主党(FDP)   連立 80 協議 離脱 92
ドイツのための選択肢(AfD)     87   83 (極右政党)
左派党       69   39 (旧東独共産党系)
無所属       9   1
合計      

709 (過半数は355) 

 735(過半数 368 )


2021/9/28 ドイツ総選挙、勝者なく、連立交渉難航の可能性

キリスト教民主・社会同盟も連立を目指し動き出したが、メルケル首相が、第一党の社会民主党がまず交渉するのが筋だとし、止めた。

その結果、今回の「信号連立」の誕生となった。

中部電力はこのたび、浜岡原発で想定される巨大地震による津波について、現在の「防波壁」の高さを超える最大22.5メートルに達する可能性があるとの想定をまとめた。

浜岡原発は、原子力規制委員会による再稼働の前提となる審査が進んでいる。

中部電力はこれまで、マグニチュード8や9の地震が起きた場合に想定される最大の津波を高さ20.3メートルとしてきたが、より厳しい条件で検討した結果、巨大地震による津波の高さが最大22.5メートルに達する可能性があるとして、これまでの想定を見直し、規制委員会に報告することを決めた 。

現在、浜岡原発には津波対策として高さ22メートルの防波壁が建設されてい るが、新たな想定に基づく最大の津波が押し寄せた場合、防波壁の高さを上回ることになる。

中部電力は、「現時点では追加対策などを検討する段階ではない。まずは審査に真摯に対応し、基準津波の高さをきちんと策定することに全力を尽くしたい」とコメントした。

ーーー

浜岡原発は静岡県御前崎市にある。東海地震の予想震源域の真上である。

このため、大震災以降、問題となってきた。

2011/4/19 「浜岡原発を止めよ」
2011/4/22 浜岡原発について
2011/5/3 「再び、浜岡原発を問う」

中部電力は当初、津波に関して最大の水位上昇がおこっても敷地の地盤高(海抜6m以上)を越えることはないとしていた。

その後、東海・東南海・南海地震の3連動の地震を検討し、津波の遡上高を海抜8.3mと想定した。
その場合も、敷地前面にある砂丘堤防は海抜10~15mの高さがあり、地震後においてもこの高さはほぼ維持され、敷地内への津波の浸入を防ぐことができるとしていた。


大震災のあと、菅直人首相は2011年5月6日、中部電力の浜岡原発について、「防波壁の設置など中長期の対策が完成するまでの間」すべての原子炉を停止するよう要請したと発表した。

中部電力は2011年4月20日、原子力安全・保安院へ報告書を提出した。この中には砂丘と原子炉建屋の間に15メートルの防波壁を設置することが含まれている。(当初案は12メートル) 完成は2013年度中となっている。

2011/5/7 菅首相、浜岡原発の全炉の運転停止を要請 

その後、計画を下記の通り変更した。

海抜18mの防波壁を新たに設置するとともに、両端部は盛土で約20mにかさ上げをおこなう。

 


内閣府中央防災会議の有識者会議は2013年3月31日、東海から九州沖の「南海トラフ」で起きる地震について、「最大クラス」で津波や震度を予想した。

浜岡原発のある静岡県御前崎市には21mの津波が押し寄せるという。また、従来の震度6強から震度7になった。

2012/4/4 南海トラフの巨大地震で新想定 「浜岡」再稼働は困難に


中部電力は、マグニチュード8や9の地震が起きた場合に想定される最大の津波を高さ20.3メートルとし 、津波対策として高さ22メートルの防波壁が建設されている。


中部電力が今回まとめた最大津波予想の最大22.5メートル は現在の「防波壁」の高さを超える。

三菱ケミカルホールディングスは12月1日、新経営方針「Forging the future 未来を拓く」を策定した。

経営戦略における最重要ポイントとして下記を挙げた。


  1.市場の成長性、競争力、サステナビリティにフォーカスしたポートフォリオ
  2.分離・再編し、独立化を進める事業
  3.グループ全体におけるコスト構造改革
  4.戦略遂行のためのスリムな組織
  5.戦略的なキャピタル・アロケーション

3つの評価基準(市場の魅力度、グループの強み、カーボンニュートラル)に基づき注力事業を選別した。

 1) 最重要戦略市場

①エレクトロニクス
 EV:軽量化材料、車載電池材料、Wide Band Gap半導体
 デジタル:半導体材料、高速通信関係

②ライフサイエンス
 ヘルスケア
 食品:機能性食品材料、ニュートリション、長期保存材料


 2) 強みを有する市場は下記の通り。

①強固な機能性素材事業群 
 ケミカル:MMA、機能性モノマー

 ポリマー:バイオプラスチック、EVOH、機能性樹脂

 フィルム:光学フィルム、バリアフィルム、工業フィルム

 モールディングマテリアル:炭素繊維・複合材料、スーパーエンプラ

②産業ガス

 
 3)残る石油化学事業及び炭素事業については、分離・再編し、独立化を進めることで、国内基礎化学産業の再編を主導する。

2024年3月期をめどに分離する。他社との事業統合などを検討する。両事業とも、採算が低く、温暖化ガスを大量に排出する。業界も伸びていない。


事業部門の組織は次のようになる。

現組織 新組織 最重要戦略市場 強みを有する市場 分離・再編
機能商品 Polymers & Compounds /
MMA
エレクトロニクス
 EV
 デジタル
 
ケミカル(機能性モノマー、MMA
ポリマー(バイオプラ、EVOH、機能性樹脂)
フィルム
(光学フィルム、バリアフィルム、工業フィルム)
Molding Material
(炭素繊維・複合材料、スーパーエンプラ)
Film & Molding Materials /
Advanced Solutions
ヘルスケア Pharma ライフサイエンス
 ヘルスケア
 食品
産業ガス 産業ガス 産業ガス
ケミカルズ
(MMA /
石化 / 炭素)
石化/炭素 石化/炭素

ーーー

三菱ケミカルホールディングスでは4月1日付で社長が交代し、新社長にベルギー出身の Jean-Marc Gilsonが就任した。

1963年生まれで、1989年に米Dow Corning入社(日本に5年駐在)。2014年からに食品や医療関連素材を扱うフランスの RoquetteのCEO。

同氏はインタビューで次のように述べている。

「脱炭素」などの基準で事業の選別を始める。化学業界の事業環境が大きく変わる中で、収益構造の転換を進める。

化学産業は高付加価値化が課題だが、Well-being(健康、栄養など)、Connectivity(通信、デジタルなど)、Sustainabilityをキーワードに顧客に最高の価値を提供できる企業を目指したい。

基準とするのが、①強みがあるか②業界が伸びているか③カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)につながるか――の3点。「全てにチェックマークをつけられなければ、将来は投資引き揚げの対象とする」。

主力の石油化学事業も「ポートフォリオ改革のレビュー対象の一つ」

事業構造の見直しなどで「時価総額を数年以内に世界の競合並みにする」。

短期的には電気自動車(EV)やリチウムイオン電池、半導体製造工程向けの素材などの高付加価値品で構成する機能商品と、ヘルスケアに重点を置く。

同社は9月30日結晶質アルミナ繊維事業をApollo Global Management Inc.関連会社が投資助言するファンド保有する特別目的会社に譲渡すると発表した。

今回の結晶質アルミナ繊維事業の売却は、新社長の方針による第1号と思われる。
現時点では売れているが、ガソリン自動車が電気自動車に替わっていき、長期的にじり貧になるのを見越してであろう。

2021/10/4 三菱ケミカル、結晶質アルミナ繊維事業を譲渡 

公取委は11月26日、シリコンウェーハ大手の台湾 GlobalWafers(環球晶圓)の独子会社による独の同業のSiltronic AGの買収を承認した。

ーーー

台湾の GlobalWafers(環球晶圓)は2020年12月、業界4番手の独Siltronic AGを買収すると発表した。買収総額は37.5億ユーロで、2021年後半に取引を完了させる予定であった。
買収により、GlobalWafersは業界2位に浮上する見込み。

GlobalWafers(環球晶圓)は、1981年に台湾新竹サイエンスパークで設立されたSAS(Sino-American Silicon Products Inc)の半導体事業部であったが、独立する形で2011年に発足した。

世界各地に進出している。

中国 親会社のSASは1999年8月に中国昆山で中辰シリコンを設立した。
米国 SASは、2008年4月1日に米国 GlobiTech incorporated を買収した。
GlobalWafersは2016年には、米国のシリコンウェハ ーメーカーのSunEdison Semiconductorを買収した。
日本 SASは2012年4月に日本の大手エンジニアリング・セラミックメーカーのコバレントマテリアル(その後、世界最大のエンジニアリング・セラミックメーカーであるCoorsTek, Inc. に買収された)のシリコンウェーハ事業のコバレントシリコンを買収し、グローバルウェーハズ・ジャパンとした。
欧州 GlobalWafersは2016年7月、デンマークのTopsil Semiconductor Materials A/Sを買収した。


現在、製品ラインナップは、3インチから12インチまでのサイズ、ウェーハ種は、エピタキシャルウェーハ・アニールウェーハ・ポリッシュトウェーハ・拡散ウェーハ、最新テクノロジーを用いたSOIウェーハ、FZウェーハ等、すべてのウェーハサイズと種類を有している。

加えて、GlobalWafersは10か国(台湾・中国・アメリカ・日本・デンマーク・ポーランド・韓国・イタリア・マレーシア・シンガポール)、16拠点に工場を持つ。


Siltronic AGは1968年に独ミュンヘンに設立され、1995年からはWacker Chemie AGの子会社としてシリコンウェーハ事業を展開している。

1999年にシンガポールでの生産をスタートさせた。2015年にIPO(新規株式公開)を実施した。
生産拠点はドイツのほか、シンガポール、米オレゴン州などグローバルに広がる。

GlobalWafersはSiltronic AGの株式を1株あたり125ユーロで取得する方針で、同社株式を30.8%保有するWacker Chemie も売却に応じる。

しかし、難航した。

当初、2021年1月中にもTOBを終える予定だったが、買い付け価格に不満を持つ株主が増え、思うように株の買い付けができなかった。

このため再三にわたり、条件変更を余儀なくされた。当初、1株当たり125ユーロだった買い付け価格を、1月21日には一気に同140ユーロに引き上げた。それでも難航し、翌22日には145ユーロに引き上げた。

さらに1月25日には、最低でも65%を取得するとした当初の買い付け計画を引き下げ、同50%とした。最終的には公開買い付け期間も見直し、3月1日までTOB期間を延長した。

2021年3月4日、ようやくTOBが成立したと発表した。3月1日までにシルトロニック株の70.27%を取得した。買収金額は6千億円前後に達したもよう。

各国の独禁法当局の承認を得て、年内には買収手続きを完了する見込み。

ーーー

日本の公正取引委員会は、シンガポール競争・消費者委員会及び米国連邦取引委員会との間で情報交換を行いつつ審査を進めた。
6月15日に第二次審査を開始、10月4日に全ての報告等を受理し、11月26日に「排除措置命令を行わない」旨、通知した。

公取委は審査に当たり、対象となる市場を製品の製法・製品の口径、加工方法により区分し、重点5市場について競争上、問題がないか判断した。

製法 口径 加工方法 シェア
Global
Wafers
Siltronic 合計 他社
CZ法・MCZ法 200mm ポリッシュド 25% 5% 30% 25%、20%、--
CZ法・MCZ法 エピタキシャル 25% 15% 40% 20%、20%、--
CZ法・MCZ法 300mm ポリッシュド 15% 15% 30% 30%、20%、20%
CZ法・MCZ法 エピタキシャル 10% 15% 25% 35%、30%、--
FZ法 200mm ポリッシュド 5% 50% 55% 25%、15%、--


結論:下記により、競争を実質的に制限することとはならない。

 競争事業者からの競争圧力:有力な競争事業者の存在

 需要家からの競争圧力:需要家側に価格交渉力があり、複数購買で調達先切り替えが可能

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