2022年12月アーカイブ

ロシアのプーチン大統領は12月27日、同国産原油の輸入価格に上限を設けた国に対し、原油の輸出を禁止する大統領令に署名した。

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ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対し、G7、オーストラリア、EUが12月5日にロシア産原油の国際的な取り引きの上限価格を1バレル=60ドルに設定するなどとした新たな制裁措置を発動した。

ロシアの戦費を削ることが狙いで、価格の急騰など市場の混乱を避け、ロシア産原油が国際市場に供給される流れを保つ目的もある。

上限価格60ドルを超えて取引する場合には、海上輸送に欠かせない保険契約ができないようにした。

G7、オーストラリア、EUの管轄下にある者は、プライスキャップ価格以下で販売されていない限り、ロシア産原油および石油製品の輸送、あるいは輸送を可能にする保険、最保険を含むサービスの提供は禁止されることになった。

禁止は、G7、オーストラリア、EU以外の第三国からの、または第三国への輸送にまで及ぶ。多くのグローバルな石油輸送、保険企業はG7諸国に本部を置いている。 上限価格措置の発動により、中国やインドについても、原油の海上輸送の保険枠組みに巻き込むことで、ロシア産原油の輸入を減少・抑制させる思惑がある。

日本政府はG7の合意に基づき、ロシア産原油の上限価格を超えた輸入を禁じた。但し、日本企業が参画するロシアの資源開発事業「サハリン2」で産出する原油は制裁の対象外としている。サハリン2プロジェクトからの原油の日本への輸入に関連するサービスの提供については、同志国間で例外とすることで合意しており、当該購入の価格が上限価格を上回っていても、再保険サービス等については、各国(米、英、EU)の規制対象とはならない。

政府 ロシア産原油等に係る上限価格措置(プライス・キャップ制度)のQ&A


これに対しプーチン大統領は、「我々はそのような決定をする国には原油を売らない」と述べ、「必要であれば減産の可能性についても考えていく」とも発言し、西側諸国をけん制した。


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この発言の通り、輸入価格に上限を設けた国に対し、2023年2月1日から7月1日まで5カ月、原油輸出を禁じる。石油製品も対象とし、同年2月以降で政府が定めた日から適用する。プーチン氏の特別な決定があれば、禁輸を解除できる。

「米国やその他の国のほか、こうした国に賛同する国際機関による非友好的で国際法に反する行動」への直接的な対応としてロシア産原油と原油製品の供給を禁止するとし、「最終購入者に至るまでのすべての供給段階に適用される」と表明した。

日本は「サハリン2」で産出する原油は制裁の対象外としているが、これに対するロシア側の反応は明確になっていない。


ロシアのUrals oil は12月27日時点で上限以下の $56 で取引されている。




三井物産と伊藤忠商事、JERAは、12月27日、オマーンとの間で10年程度の長期契約を結び、2025年以降、年間で235万トンのLNGを新たに輸入することで基本合意した。

このうち JERAは2025年から10年間、年間最大80万トンを調達する。

Oman Liquefied Natural Gas LLC (Oman LNG) は1994年に設立された。2013年にQalhat LNGを統合した。


現在の株主は以下の通り。

オマーン政府 51.00%
Shell 30.00%
Total 5.54%
Korea LNG 5.00%
三菱商事 2.77%
三井物産 2.77%
PTTEP Oman E&P 2.00%
伊藤忠 0.92%

伊藤忠商事はオマーンLNGと2006年から25年の20年間で年間70万トンの売買契約を結んでいる。

これに先立って現地を訪れている西村経済産業大臣は「LNGの需給が引き続きひっ迫すると見込まれる中、日本のエネルギー安全保障にとって極めて有意義なものだ」と強調した。

オマーン産のLNGをめぐっては三井物産や伊藤忠商事などが権益の一部を保有していて、日本は現在、LNGの輸入量全体の2.6%にあたる年間190万トン余りをオマーンから輸入している。

オマーンの輸出拠点は、ペルシャ湾のホルムズ海峡の外側にあることから、紛争などの影響を受けにく、日本としては今後の安定調達につながる重要な輸入先と位置づけている。

オマーンとはほかの日本企業も交渉を行っており、仮に合意すれば将来的な輸入量は最大で年間300万トン以上に増える可能性がある。

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ロシアのウクライナ侵攻を受け、LNGは取り合いになっているが、それまでは日本企業はLNGの長期契約には消極的であった。

2021年11月にJERAはカタールとのLNGの大型長期契約の更新をせず、2021年末で終了した。

2022年9月に日本が主催するLNGの国際会議で、世界屈指の輸出国であるカタールのエネルギー相が自国との大型LNG売買契約を打ち切った日本を皮肉る一幕があった。

東京電力ホールディングスと中部電力の火力・燃料合弁会社のJERAは2021年11月25日、2021年が契約期間の最終年であるカタールとの年間550万トン規模の液化天然ガス(LNG)長期売買契約について、延長しない方向で検討していることを明らかにした。

JERAの小野田聡社長はオンライン記者会見で、世界的なLNG市場の発展や国内の電力・ガス市場自由化によるLEGの位置付け変化などにより、従来のような長期間の大型LNG契約を継続することが難しくなっていると語った。

LNG輸入者国際グループによると、2021年末に満了となる契約のほか、カタールとの間には2028年までの年間70万トンの契約も残る。小野田氏は同国と「友好な関係は継続していきたい」と話した。

契約打ち切りの背景には脱炭素化の流れなどを受けてLNGの中長期的な需要が見通しにくい状況となってることがある。LNG契約では定められた向け先以外の場所への転売を制限する条項が根強く残っており、日本の電力・ガス各社は余剰を抱えることになりかねない長期契約の締結に及び腰となっている。また、契約更新見送り時には、ウクライナ侵攻などでこれほどLNG需給が厳しくなることを予見することも難しかった。

公正取引委員会が2017年に「仕向け地条項」は独占禁止法違反の疑いがあるとの報告書をとりまとめたのを機に、国内の電力・ガス会社は供給者側に同条項の緩和を働きかけてきた。ただ、カタール側は制限緩和に難色を示していたとされており、柔軟性を求めるJERAと物別れに終わった一因となった可能性がある。

経産省の保坂伸資源エネルギー庁長官は、脱炭素化の時代の中で、LNGの売り手側が求める契約期間が20-30年間に及ぶ長期契約を締結することは容易ではない、との見方を示した。

LNG長期契約の終了に伴いカタールからのLNG輸入は激減。貿易統計によると2022年1-8月期のカタールからの輸入量は、前年同期比6割以上減少し約216万トンにまで落ち込んている。その一方で、ロシア・ウクライナ危機によってLNGの需給は世界的に逼迫しており、世界有数のLNG輸出国であるカタールは急速に存在感を高めている。


 

参考 オマーン、カタールのガス田

公正取引委員会は12月27日、原燃料費や人件費などコスト上昇分を下請け企業などとの取引価格に反映しなかった企業として佐川急便や全国農業協同組合連合会(JA全農)、デンソーなど13社の社名を公表した。


2021年12月27日に中小企業等が労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に転嫁できるようにし、賃金引上げの環境を整備するため、関係省庁において「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」が取りまとめられた。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/partnership_package_set.pdf

この取組の一環として、公正取引委員会は、2022年1月26日、下請法運用基準を改正するとともに、同年2月16日、独占禁止法Q&Aに、労務費、原材料費、エネルギーコスト等のコストの上昇分を取引価格に反映せず、従来どおりに取引価格を据え置くことは、優越的地位の濫用の要件の1つに該当するおそれがあることを明確化した。

公正取引委員会ウェブサイト独占禁止法

Q20 労務費,原材料費,エネルギーコストが上昇した場合において,その上昇分を取引価格に反映しないことは,独占禁止法上の優越的地位の濫用として問題となりますか。


独占禁止法上,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商習慣に照らして不当に,取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定すること(第2条第9項第5号ハ)は,優越的地位の濫用として禁止されています。

このため,取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方に対し,一方的に,著しく低い対価での取引を要請する場合には,優越的地位の濫用として問題となるおそれがあり,具体的には,

1 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について,価格の交渉の場において明示的に協議することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと

2 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストが上昇したため,取引の相手方が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず,価格転嫁をしない理由を書面,電子メール等で取引の相手方に回答することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと

は,優越的地位の濫用として問題となるおそれがあります。

この判断に当たっては,対価の決定に当たり取引の相手方と十分な協議が行われたかどうか等の対価の決定方法のほか,他の取引の相手方の対価と比べて差別的であるかどうか,取引の相手方の仕入価格を下回るものであるかどうか,通常の購入価格又は販売価格との乖離の状況,取引の対象となる商品又は役務の需給関係等を勘案して総合的に判断することとなります。


公取委はその後、適正な価格転嫁の実現に向けて、独占禁止法違反事件の審査ではなく、事業者間取引における上記の①又は②に該当する行為が疑われる事案に関する実態を把握するため、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関する緊急調査を実施してきた。

本日、下記の通り、結果を取りまとめたもの

独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関する緊急調査の結果について


公取委は、これらの独占禁止法Q&Aの①又は②に該当する行為が認められた発注者4,030社に対し、具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書を送付した。

また、個別調査の結果、受注者からの値上げ要請の有無にかかわらず、引価格が据え置かれており、事業活動への影響が大きい取引先として受注者から多く名前が挙がった発注者であって、かつ、多数の取引先について占禁止法Q&Aの①に該当する行為が確認された事業者については、価格転嫁の円滑な推進を強く後押しする観点から、取引当事者に価格転嫁のための積極的な協議を促すとともに、受注者にとっての協議を求める機会の拡大につながる有益な情報であること等を踏まえ、独占禁止法第43条の規定に基づき、その事業者名を公表することとした

(事業者名は五十音順によるもの)

番号 事業者名
佐川急便株式会社
三協立山株式会社
全国農業協同組合連合会
大和物流株式会社
株式会社デンソー
株式会社東急コミュニティー
株式会社豊田自動織機
トランコム株式会社
株式会社ドン・キホーテ
10 株式会社日本アクセス
11 株式会社丸和運輸機関
12 三菱食品株式会社
13 三菱電機ロジスティクス株式会社


※ 独占禁止法Q&Aに該当する行為を行っていたか否かを調査したものであり、この公表が独占禁止法又は下請法に違反すること又はそのおそれを認定したものではない

※ 発注者の中には、今回の調査期間中に、一部の受注者との間では価格転嫁を進めていた事例や、今回の緊急調査の実施等を受けて、調査対象期間後において、受注者との間で価格転嫁を行うための協議の場を設けた事例又は今後設けることとする旨の方針を明らかにしている事例、取引の相手方に対して適正な取引体制の構築、援助等を行っている事例等も確認された。




これにより、上下両院合同会議は投票結果を正式に承認する形式的なものとなる。

これまで2度のつなぎ予算で賄ってきた本年度の予算がようやく成立した。

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米議会は今回も、10月1日からの新年度予算を9月末までに合意できなかった。

米上院は9月27日夜、つなぎ予算案に関する手続き上の採決を行い、72対25の賛成多数で可決した。

12月16日まで前年度水準の歳出を可能にするもので、124億ドル規模のウクライナへの軍事・経済支援、光熱費補助の10億ドル、 西部の山火事やケンタッキー州の洪水、南東部のハリケーンなどの天災への緊急支援188億ドルが盛り込まれている。

下院は9月30日、賛成多数で可決、バイデン大統領は同日これにサインし、 政府機関の閉鎖は回避された。


つなぎ予算は12月16日までのものであるが、それまでに本予算の合意に達せず、二度目のつなぎ予算を12月14日に下院(賛成224、反対201、棄権5)、翌15日に上院(賛成71、反対19、棄権10)で通した。

今回のつなぎ予算の延長期間は12月23日までの1週間で、この間に2023年度本予算の与野党間の最終合意、成立を目指すこととした。

米議会の予算交渉担当者は12月19日、来年9月30日の会計年度末までの政府資金を手当てする包括的歳出法案を発表した。政府機関の閉鎖につながる予算の期限切れを12月23日に控え、民主党と共和党の一部が優先的に実現したい政策を持ち寄った「包括予算案」で合意したもの。

歳出規模は1兆7000億ドルで、法案にはウクライナやNATO同盟国向けの追加の緊急支援449億ドルが盛り込まれている。軍事費は過去最高の8580億ドルで、前年度の7400億ドルから増額され、バイデン大統領の要求額も上回った。民主党は共和党の賛成を得るため、軍事費の増大を認めた。

連邦政府職員が政府所有の端末で中国系動画投稿アプリ「TikTok」を利用することを禁じることや、Trump前大統領などが2020年の選挙の承認を阻止するために利用しようとした135年前の法律(Electoral Count Act)の見直し、地域社会の災害から復興のための約400 億ドルの緊急援助などが含まれている。


上院は12月22日、2023会計年度(2022年10月~2023年9月)の本予算案を賛成68票、反対29票で可決し、下院に送付した。

共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 18 48 2 68
反対 29 29
棄権 3 3
合計 50 48 2 100



下院はつなぎ予算が切れる12月23日に 賛成225、反対201で可決した。

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 9 216 225
反対 200 1 201
棄権 4 1 5 4
合計 213 218 431 435


バイデン大統領が同日の真夜中までに署名し、現行予算の期限切れによる政府機関の一部閉鎖は回避される。

政府は12月22日、「令和5年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」を閣議了解した。

2022年度の実質成長率見通しを前回7月の試算の2.0%から1.7%に下方修正する一方、2023年度を1.1%から1.5%に上方修正した。

名目GDPについては、2022年度を1.8%、2023年度を2.1%と予想した。

2022年度は個人消費や民間住宅の見通しを下方修正する一方、設備投資や輸出、輸入は7月の想定より改善すると試算した。

2022年度の消費者物価指数(総合)は2.6%から3.0%に引き上げた。2023年度は1.7%で前回と同じ。

2023年度の実質成長率は1.1%から1.5%に引き上げた。民間エコノミストの予想平均(1.0%)より高い。
内閣府は、春闘による賃上げ効果を大きくみており、インフレで足元マイナスが続いている実質賃金がプラスに転じると想定しているためと説明している。
GDPの半分以上を占める個人消費は賃金上昇により2.2%、
民間企業の設備投資が5.0%増えるとみている。

2023年度の実質GDPの金額は558.5兆円と2018年度(554兆円)を上回り過去最高を更新すると予想。名目GDPも前年度比2.1%増の571.9兆円と最高を見込む。

2021/12/23
予想
2021年度実績
当初→現時点
2022/7/25
予想
2022/12/22
予想
実質GDP 2021年度 2.6% 2.2% →2.5%
2022年度 3.2% 2.0% 1.7%
2023年度 1.1% 1.5%
名目GDP 2021年度 1.7% 1.2%→2.4%
2022年度 3.6% 2.1% 1.8%
2023年度 2.3% 2.1%
CPI (総合) 2021年度 -0.2%
2022年度 0.9% 2.6% 3.0%
2023年度 1.7% 1.7%

政府は12月20日、経済安全保障推進法の「特定重要物資」に関し半導体や蓄電池など11分野の指定を閣議決定した。

いずれも供給が切れると経済活動や日常生活に支障を来す。重要鉱物では特定の国に依存しすぎないよう企業による海外での権益取得なども後押しする。

11分野のうちレアアースなど中国を供給元とする物資は多い。

経産省 半導体素子及び集積回路
蓄電池
金属鉱産物重要鉱物 マンガン、ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、コバルト、ニオブ、タングステン、リチウム、ボロン、チタン、バナジウム、ストロンチウム、希土類金属、白金族、ベリリウム、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ジルコニウム、インジウム、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、レニウム、タリウム、ビスマス、グラファイト、フッ素、マグネシウム、シリコン、リン
航空機部品 航空機用原動機及び航空機の機体を構成するもの
工作機械・産業用ロボット
永久磁石
可燃性天然ガス
クラウドプログラム インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機を他人の情報処理の用に供するシステムに用いるプログラム
国土交通省 船舶部品 船舶用機関、航海用具及び推進器
厚労省 抗菌性物質製剤


特定重要物資の指定は5月に成立した経済安保推進法の4本柱のうちの1つ。

経済安保推進法:

法制上の手当てが必要な喫緊の課題に対応するため、
(1)重要物資の安定的な供給の確保、(2)基幹インフラ役務の安定的な提供の確保、(3)先端的な重要技術の開発支援、(4)特許出願の非公開に関する4つの制度を創設するもの。

政府は指定にあたり4つの要件を掲げた。①国民の生存に必要不可欠②外部に過度に依存する③供給が途絶する可能性がある④安定供給の確保の取り組みが特に必要――のすべてを満たすことを条件とした。

対象分野で国内での生産体制を強化し、備蓄も拡充する。 企業にも中国依存から脱却できる新技術開発、生産体制やサプライチェーン(供給網)づくりを促し、調達先の多角化につなげる。

有事に海外から供給が途絶えても安定して物資を確保できる体制を整える。

そのための企業の取り組みには国が財政支援する。

安定供給に必要な設備投資や備蓄、研究開発などにかかった費用の一部を補助する。

事業者は、支援を受けるための計画を事前に国へ申請し、認定を受ける。申請の受け付けは、来年3月から順次始まる予定。

政府は22年度第2次補正予算で経済安保推進法に基づく支援に充てる費用として合計1兆358億円を計上した。

高市経済安全保障担当大臣は、「国民の生存や生活、経済活動を守るため、我が国にとって重要な物資のサプライチェーンの強靭化を進める取り組みの第一歩となった。物資の安定供給の確保に向け、すみやかに取り組みを進めてまいりたい」と述べた。


以下、2022年11月の政府説明 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keizai_anzen_hosyohousei/r4_dai4/siryou1.pdf

元の原料が日本になく、海外に頼らざるを得ないものが多く、対策は容易ではない。


1.抗菌性物質製剤

注射用抗菌薬に多く用いられるβラクタム系抗菌薬は、その原材料のほぼ100%を海外依存

原薬等について、2023年から国内での製造及び備蓄設備構築を開始し、2030年までに、βラクタム系抗菌薬について、供給途絶時においても医療現場において必要な量を切れ目なく安定供給できる体制を整備する。

2. 肥料

肥料の原料は、資源が特定の地域に偏在しており、日本はそのほとんどの供給を輸入に依存

3.半導体

世界市場における日本企業のシェアは低下し続けており、また原料については、黄リン・誘導品や希ガス等、海外に大きく依存する物資も存在。今後、更に外部依存が進むおそれがあり、早急に措置を講ずることが必要

4.蓄電池

日本は電池セル・部素材において高いレベルで開発・製造できる技術を保有しているが、日本のシェアは大幅に低下。今後、蓄電池の外部依存が更に進むおそれが大きく、早急に措置を講ずることが必要

5.永久磁石

電化・デジタル化の進展に伴い、半導体(脳)、電池(心臓)とともに重要な要素を握るのがモーター(筋肉)であり、その性能を決定付けるのが永久磁石

日本企業のシェアが低下(
23(2013)→15%(2021))する中、外部依存が更に高まる見込み。また、レアアース原料のうち一部の種類は全量外部に依存
国内安定供給確保への対応に加え、
安全保障上の関心が高く、経済安全保障の観点からも、早急に措置を講ずることが必要。

6.重要鉱物

重要鉱物のほぼ全量を海外からの輸入に依存

資源の獲得競争が激化する中、
海外の巨額投資による資源権益の囲い込みや、サプライチェーンの寡占化に対抗るため、早急に安定供給の確保を実現する必要

7.工作機械・産業用ロボット

足元では、日本メーカーは高い国際競争力を有し、安定供給を実現している。

他方、デジタルトランスフォーメーション(DX)やカーボンニュートラル(CN)等のメガトレンドを踏まえて拡大するニーズへの対応が、今後の国際競争力の維持・強化、ひいては安定供給確保のカギ

安全保障の観点からも重要な物資であり、我が国としても将来にわたる安定供給の確保に向けて、競争力確保
のための措置を早急に講ずることが必要

8.クラウドプログラム

基盤クラウドプログラムや基盤クラウドサービスを海外事業者に依存。国内に事業基盤を有する事業者が撤退すれば、さらに依存が高まるおそれ。

情報システムの重要性が高まる中、我が国が重要なデータを自律的に管理するには、国内に事業基盤を有する事業者が基盤クラウドサービス事業を提供することが不可欠であり、早急に措置を講ずることが必要

9.天然ガス



このほか、10.航空機の部品、11.船舶関連機器(船舶用機関、航海用具、推進器)

日本銀行は12月20日の金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の運用の一部見直しを決定した。
国債買い入れ額を大幅に増額しつつ、0%程度に誘導している長期金利の許容変動幅を従来の上下0.25%程度から同0.5%程度に拡大する。
金利のより自由な変動を許容することで市場機能の改善を促し、金融緩和の持続性を高める狙い。

長期金利は足元で変動幅の上限近くで推移しており、事実上の利上げとなる。

マイナス金利政策や上場投資信託の買い入れ方針、政策金利のフォワードガイダンス(先行き指針)は据え置いた。

日銀の黒田総裁は、「市場機能改善に向けたもので、利上げではない」と強調。今回の政策修正について「出口戦略の一歩ではない。さらなる変動幅拡大は必要ない」と述べた。

10月のコアCPIは 1982年2月以来、40年8か月ぶりの水準となる前年比3.6%上昇となった。日銀が目標とする2%を大きく上回る 。しかし日銀では、コストプッシュによる物価上昇は持続性が乏しいとして、目標実現には相応の賃上げが不可欠と位置付けている。

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日銀は、2016年9月「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き・量的・質的金融緩和」の導入を決定した。

短期金利、および10年物国債金利の操作目標の2つの金利水準を提示する。

  1. 短期金利は日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス金利を適用(従来通りマイナス0.1%)
  2. 長期金利は10年物国債金利が0%程度で推移するように長期国債の買い入れ

  詳細は 2016/9/27 バーナンキ氏、日銀の新政策は「ヘリコプターマネー政策に似ている」

日銀は長期金利については、0%からプラスマイナス0.1%程度の範囲で動くようにしていた。

「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」

その後、日銀は上記の原則を変更しないままで、許容変動幅の変更により長期金利の実質変更を認めてきた。「長期金利を0%にする」という方針を動かすと、出口戦略への着手だと受け取られ、政治的摩擦が生じるので、それを避けようとして許容変動幅の上限を広げていると見られた。

日銀は2018年7月の金融政策決定会合で、強力な金融緩和策の持続性を強化する措置を決定した。長期金利を「ゼロ%程度」に誘導する目標自体は維持しつつ、変動幅の拡大を容認、黒田東彦総裁は、従来の「プラスマイナス0.1%」の倍程度を念頭としていることを明らかにした。

日本銀行は2021年3月の金融政策決定会合で、ゼロ%程度に誘導する長期金利(10年物国債金利)の変動許容幅をプラスマイナス0.25%ポイント程度と決定した。

黒田総裁によると、2018年7月にそれまで上下0.1%だった変動幅を倍程度に広げるとしていたのを、数値で示してはっきりさせたのだという。プラスマイナス0.25%は0.1%の倍程度であり、方針を変えたわけではないとの説明である。

各国が大幅利上げを行うなか、日本でも金利上昇の圧力が高まり、長期金利は0.25%を超えて上昇するようになった。日銀は利回りを0.25%に指定して国債を無制限に買い入れる指値オペを連日実施し、金利を抑え込んできた。

その結果、円安が進み、輸入品価格が急上昇、物価を押し上げた。


今回の金融政策決定会合で、従来0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大する。12月20日から適用する。長期金利は足元で変動幅の上限近くで推移しており、事実上の利上げとなる。


発表を受け、12月20日の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが急上昇(価格は急落)し、一時0.460%と2015年7月以来の高水準を付けた。20日午前は0.25%で取引を終えていた。



韓国産業通商資源部は12月14日、東部の慶尚北道蔚珍郡で新ハヌル原子力発電所1号機の完工式を開催した。

国内27基目の原発で、韓国が独自技術で開発した次世代型の原子炉「APR1400」を採用している。2010年の着工から12年を経て、今月7日に営業運転を開始した。

新ハヌル原発1号機は、課題として残っていた原子炉冷却材ポンプや計測制御システムなどのコア技術を国産化した。今後チェコなどに輸出されるAPR1400は韓国を代表する原子炉モデルとして、尹錫悦政権が国政課題の一つに掲げる「2030年までに10基の原発輸出」の達成に貢献する見通し 。


尹大統領はこの日の竣工式祝辞を通じて、前政府で推進していた脱原発政策の白紙化を公式化した。「独自の小型モジュール原子炉(SMR)の開発に合計4000億ウォンを投資し、未来の原発市場の主導権を確保していく」とも述べた。

「過去の政権で無理に推進された脱原発政策を廃棄して、原発政策を正常化した」とし「脱原発で萎縮した韓国の原発産業が活力を帯びて再び飛躍するだろう」と自評した。「政府は原発産業を我が国の輸出を導いていく支えにして、大韓民国が世界的な原発強国としての地位を今一度誇れるように積極的に支援する」とし、今年を「原発再飛躍元年」とした。

ウクライナ戦争とエネルギー価格の急騰で最近原発の重要性が大きく高まった。これについて尹大統領は大統領選挙でも「脱原発廃棄」を公約に掲げた。

2022年5月に発足した韓国の尹錫悦政権は7月5日、同政権による初のエネルギー政策を決定したと発表した。

文在寅前政権が定めた脱原子力政策を正式に撤回し、総発電量における原子力発電のシェアを上方修正すると表明。2030年に原子力で少なくとも総発電量の30%を賄う方針であることや、白紙撤回された新ハンウル3、4号機(各PWR、140万kW)建設計画の再開方針などを明確に示した。

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文在寅前大統領は選挙運動中に「新規の原発建設を全面中断し、建設計画を白紙化する」と公言していた。

2017年5月17日に、老朽火力発電の一時停止を命じたが、原発についても、老朽のものを閉鎖、建設中のものは見直し、今後40年で原発に頼らないエネルギー政策に切り替えると述べた。

同氏は大統領選挙前の2017年4月14日、脱原発市民団体6団体と反原発についての政策協定を結んだ。

2017/6/1 韓国、建設予定の原発の設計を中断、新大統領の脱原発方針の一環

しかし、文在寅大統領は2017年10月22日、建設途中の新古里原発5、6号機(蔚山市)の工事再開を有識者らでつくる公論化委員会が勧告したことを受け「建設を早期に再開する」と表明した。

建設中の5基(上記に加え、新古里4号機、新ハヌル1号機、2号機)は認め、計画中のものは白紙に戻した。

大統領は、脱原発政策を支障なく進める考えを強調した。「これ以上の新規の原発建設計画を全面中止し、エネルギー需給の安定性を確認次第、設計寿命を延長し、稼動中の月城1号機の運転を中止する」とした。

2017/10/26 韓国大統領、新古里原発5、6号機の建設再開を表明

新古里原発4号機は2019年4月22日、初めて送電網に接続され、送電を開始した。

原子力関連団体と保守政界が政府の脱原発政策に反対する国民署名運動に本格的に突入した。

署名運動本部は、2018年12月から脱原発政策反対と新ハヌル3・4号機の建設再開を要求して署名運動を開始した。2019年1月21日に国民33万人の署名をそろえ、大統領に宛てた5枚の手紙と一緒に、大統領府に渡した。(政府は無視)

原子力安全委員会は2019年12月24日、韓国水力原子力が2019年2月28日に申請した月城原発1号機の永久停止運営変更案を賛成5、反対2で承認した。月城原発1号機は古里原発1号機に続き、国内で2番目の永久停止原発となる。

2019/12/30 韓国の月城原発1号機、ようやく永久停止決定 

今回、尹大統領はこの日の竣工式祝辞を通じて、前政府で推進していた脱原発政策の白紙化を公式化した。

 

 

運転開始 原子炉形式 容量
 kW
文大統領の政策協定 新政権
ハヌル
(
蔚珍)

1

1988/9/10 加圧軽水炉 (PWR) 95万
2 1989/9/30 加圧軽水炉 (PWR) 95万
3 1998/8/11 加圧軽水炉 (PWR) 100万
4 1999/12/31 加圧軽水炉 (PWR) 100万
5 2004/7/29 加圧軽水炉 (PWR) 100万
6 2005/4/22 加圧軽水炉 (PWR) 100万
新ハヌル 1 (2018/4) KSNP (APR-1400) 140万

建設を暫定的に中止し、 社会的合意を通じて運転の是非を決定→建設

2022/12/14  完工式
2 (2019/2) KSNP (APR-1400) 140万
3 KSNP (APR-1400) 140万 許可を取り消す。→ 「取消」への反対運動 2024着工を目指す。
4 KSNP (APR-1400) 140万
ハンピッ

(霊光)

1

1986/8/25 加圧軽水炉(PWR) 95万
2 1987/6/10 加圧軽水炉(PWR) 95万
3 1995/12 加圧軽水炉(SYSTEM80) 100万
4 1996/3 加圧軽水炉(SYSTEM80) 100万
5 2002/5/21 KSNP(OPR-1000) 100万
6 2002/12/24 KSNP(OPR-1000) 100万
月城

1 1983/4/22 CANDU 67.9万 運転延長取り消し判決の控訴を取り下げ、即時閉鎖
2 1997/7/1 CANDU 70万
3 1998/7/1 CANDU 70万
4 1999/10/1 CANDU 70万
新月城

1 2012/7/31 KSNP(OPR-1000) 100万
2 2015/7 KSNP(OPR-1000) 100万
3 KSNP(OPR-1000) 100万 (未認可)
4 KSNP(OPR-1000) 100万
古里

1 1978/4 加圧水型(PWR) 58.7万 (2017年6月停止決定)
2 1983/7 加圧水型(PWR) 65万
3 1985/9 加圧水型(PWR) 95
4 1986/4 加圧水型(PWR) 95万
新古里

1 2011/2 加圧水型(PWR) 100万
2 2012/7 加圧水型(PWR) 100万
3 2017/1 加圧水型(PWR) 140万
4 2019/5 加圧水型(PWR) 140万

建設を暫定的に中止し、社会的合意を通じて運転の是非を決定
建設継続→ 2019/4 稼働

5 加圧水型(PWR) 140万 許可を取り消す。
2017/10/26 韓国大統領、新古里原発5、6号機の建設再開を表明
6 加圧水型(PWR) 140万
三陟 4基 白紙に戻す。
盈徳 4基

米製薬会社Amgen Inc.は同業のHorizon Therapeutics Plc を約278億ドルで買収することで合意した。両社が12月12日に発表した。

Horizon は11月29日に、Amgen Inc、Janssen Global Service、Sanofi の3社との間で、それぞれ売却の初期的な交渉を行っていると発表した。

Amgenは他の2社との買収合戦に勝利した。

同社にとって過去最大規模の買収で、Amgenは1株当たり116.5ドルの現金を支払う。これは11月29日のHorizonによる発表時の終値を約48%上回る。

同社は、Citigroup とBank of America による285億ドル規模のつなぎ融資の与信枠を通じ、買収資金を調達する。

Amgenは買収を通じて、Horizon Therapeuticsの持つ甲状腺眼症治療薬「Tepezza」と痛風治療薬「Krystexxa」という2つの成長製品を手に入れる。いずれも米FDAからオーファンドラッグの指定を受けており、通常の新薬より長い市場独占期間が付与されている。

Amgenの主力の関節リウマチ治療薬「Enbrel」が競争激化に直面し、乾癬治療薬「Otezla」などの主要製品も今後数年で特許切れを迎えようとする中、新たに獲得する製品が防波堤になることを期待している。

買収の目玉は、目の周りの組織が腫れて損傷する希少疾患の甲状腺眼症の治療薬「Tepezza」で、治療薬として米国で唯一承認されており、年間20億ドル近くの売上高を上げている。
Horizonは11月にこの治療薬の売上高見通しを上方修正し、米国外での販売拡大と国内の成長により、ピーク時の売上高が40億ドル以上になると予想した。

但し、Tepezzaの売上高は2021年第3四半期に6億1600万ドルの過去最高を記録して以降、3四半期連続で減少し、22年第3四半期には4億9100万ドルとやや回復している が、売り上げが停滞しているという懸念を完全に払拭することはできない。

Horizon のもう1つの主力品であるKrystexxaの2021年の売上高は5億6550万ドルだった。2028年には13億6000万ドルまで伸びると予測されている。


Amgenにとっては、8月に行った米ChemoCentryx Inc, 買収に続くM&Aとなる。

Amgenは8月4日に米同業のChemoCentryx Inc, を37億ドルで買収することで合意したと発表した。昨年遅くに承認されたChemoCentryxの期待の血管炎薬「TAVNEOS」が狙い である。別の少なくとも2種類の免疫障害治療薬候補も入手できる。

中国は12月12日、米国の中国に対する半導体などの製品をめぐる輸出規制措置について、WTOの紛争解決制度に提訴した。

商務部は、「これは中国が自国の合法的権利を守り抜くために必要なことだ。米国には直ちに誤ったやり方を是正してほしい」と述べた。

「米国はここ数年、国家安全保障の概念を絶えず汎用化し、輸出規制措置を乱用して、半導体をはじめとする製品の正常な国際貿易往来を阻害し、グローバル産業チェーン・サプライチェーンの安定に脅威を与え、国際的な経済貿易秩序を破壊し、国際的な経済貿易ルールに違反し、基本的な経済の法則に背き、世界の平和・発展の利益を損なってきたのは、典型的な保護貿易主義のやり方だ」とし、「提訴は法的手段を通じて中国が関心を抱く問題を解決するためであり、自国の合法的権利を守り抜くために必要なやり方だ」と述べた。

また、「中国は米国がゼロサム思考を捨て去り、誤ったやり方を直ちに是正し、半導体などのハイテク製品の貿易を混乱させることをやめ、中米の正常な経済貿易往来を維持し、世界の半導体などの重要な産業チェーン・サプライチェーンの安定を維持することを願う」と述べた。


バイデン米政権は10月7日、中国への半導体先端技術の新しい輸出規制を実施すると発表した。 その後、日本など同盟国に対中規制に追随するよう要求した。 

対中規制のポイントは次のとおり。

 ・スーパーコンピューターなどの先端技術の輸出は商務省の許可制に

 ・先端半導体の製造装置やソフトウェア、設計ソフトも規制の対象

 ・14nm 以下のロジック半導体などをつくる中国工場に部品や技術を提供を厳しくする。

 ・中国企業で働いたり、取引する米国人も審査対象

 ・外国企業でも米国技術を使っておれば輸出を原則認めない。

 ・申請しても原則拒否。ただし商務省が許可すれば一定の猶予期間を認める。

2022/10/10 米国、半導体の対中輸出制限を拡大


中国によるWTO提訴後の12月15日、バイデン政権は中国半導体大手・紫光集団傘下の長江存儲科技(YMTC)を含む36の中国系企業・団体に対する輸出を事実上禁止すると発表した。
商務省が安全保障を脅かすと見なした外国企業を列挙するEntity Listに36社を16日付で追加する。

YMTCの日本子会社のYangtze Memory Technologies (Japan) Inc.も含まれている。

これらの企業・団体に対する米国製品・技術の輸出には商務省の許可が必要となるが、申請は原則却下される。 

YMTCは中国政府系ファンドから多額の資金を受け、データ保存に使う「NAND型フラッシュメモリー」などの量産で急成長した。低価格で大容量のNAND型フラッシュメモリーの製造に強みがある。米政権は10月に先端半導体の対中輸出規制を強化した際、米国製品の最終用途が検証できない輸出先リストにYMTCを加えた。Huawei TechnologiesやHikvisionなどに米製品を横流ししているとの指摘が米議会などから強まっていた。

人工知能向けの半導体などをてがける中科寒武紀科技(Cambricon )、露光装置に強みを持つ上海微電子装備集団(SMEE)も対象になった。

ーーー

世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)は12月9日、トランプ前大統領が課した鉄鋼・アルミニウムの輸入に対する関税はWTOのルールに違反しているとし、米国に対しWTOのルールに適応させるよう勧告した。

これを受け、米国側はパネルの「不備のある」解釈と結論を強く拒否すると表明した。中国の過剰生産能力が米国の鉄鋼・アルミセクターと国家安全保障の脅威になっている中で米国は黙って見守るつもりはないと指摘し、「紛争の結果として米通商拡大法232条に基づく関税を撤廃する意向はない」とし、今回のパネルの判断はWTO改革の必要性を強調したとした。

米国はパネルの判断を不服として控訴することが可能だが、米国は紛争処理機関の最終審に当たる上級委員会の新たな委員の選任を拒否し上級委は機能不全に陥っているため、控訴された場合には法的効力が失われることになる。

米国は、中国政府による産業補助金や知的財産権の侵害といった問題で、WTOが疑わしきは罰せずという原則に基づき中国に有利な判断を下したことを問題視し 、WTOを機能不全にした。

2022/12/13 WTO、米国の鉄鋼・アルミ関税はWTOルール違反  

今回も、WTOはおそらく 米の半導体製品輸出規制を批判し、米国がそれを無視するという事態が予想される。

各国が米国を説得し、WTOの改革を通じて機能の回復を図ることが必要である。

ーーー

米議会下院は2月4日、中国に対抗するため先端技術の競争力向上をめざす包括法案 The America COMPETES Act of 2022 を賛成多数で可決した。

下院民主党が1月25日に公表した法案で、上院は2021年6月8日に同様の法案 United States Innovation and Competition Act を異例の超党派で可決している。

いずれも、中国政府が巨額の産業補助金を投じるハイテク産業政策「中国製造2025」に対抗するもので、今回の中国に対する半導体などの製品をめぐる輸出規制措置もこれに対応するものである。

このままでは中国に追い抜かれるという恐怖感が強く、この進展を妨害しようとしているように見える。


中国製造2025(
Made in China 2025)は2015年5月に公表された。

ステップ1で、2025年までに、格差縮小、十点突破で製造強国の仲間入りを果たし、
ステップ2で、2035年までに工業化の実現により製造強国の中位レベルに到達する。
ステップ3で、建国100周年の2049年までにイノベーション先導で製造強国の先頭グループに入るとの目標を掲げている。

2022/2/7 米下院、「対中競争法案」可決 

米国エネルギー省(DOE)は12月12日、GMとLG Energy Solution のJVのUltium Cells LLCのオハイオ州とテネシー州、ミシガン州のリチウムイオンバッテリーセル製造施設の建設資金として、最高25億ドルの融資を承認したと発表した。

このバッテリーセル製造施設の建設によって約1万1,000人以上の雇用が創出される見込み。

ーーー

GMとLG Chemは2019年12月5日、オハイオ州Lordstown の近辺に23億ドルを投資してEV用バッテリー工場を建設する計画を発表した。
折半出資の合弁会社Ultium Cells LLCを通じて最大で総額23億ドルを投資する。

Ultium Cells LLCは2021年4月16日、テネシー州スプリングヒルに約23億ドルを投資し、新型電池Ultiumバッテリーの工場を建設すると発表した。

GMは2022年1月25日、EVの生産能力の強化に向けて、米国で3つ目となる新たな電池工場の建設を発表した。

LG Energy Solution との50/50 JVのUltium Cells LLCが26億ドルを投じ、ミシガン州 Lansing に第3工場を建設する。

本年夏に土地の整備を始め、電池生産の開始は2024年後半となる。

2022/1/28 GM、米国で3つ目の電池工場を建設、電気自動車生産投資も

ーーー

今回の融資は、融資プログラム局(LPO)が「先端技術車両製造ローンプログラム」(Advanced Technology Vehicles Manufacturing Loan Program)の下で、米国内のバッテリーセル製造計画に融資を実行した最初の例となる。

2007年のエネルギー自立・安全(Energy Independence and Security Act of 2007EISA)によって認められた融資プログラムで、これまでにフォード、日産、テスラなどが同プログラムによる融資を受けており、直近では4月にオーストラリアの鉱物探査会社シラーテクノロジーズがリチウムイオン電池材料のルイジアナ州での生産拡大に対して承認を受けた。

同プログラムは、先進技術を利用した自動車やそれらの部品を製造する国内設備の整備・拡張、また新工場の建設に対して DOE が融資を行うものであり、これらの設備で製造される自動車は、燃費性能の大幅な向上が見込めるものでなければならない。

20096月、オバマ政権は、国家の海外石油依存の危険を減少させるとともに、何千人ものグリーン・ジョブを作る革新的で先進な輸送技術の開発に対して、80 億ドルの条件付き貸付予約を公表した。

・フォード自動車に対する 59 億ドル:イリノイ、ケンタッキー、ミシガン、ミズーリおよび、オハイオ州の工場で、燃料効率の良いモデル用に工場製造ラインを改造
・北米日産に対する 16 億ドル:先進的な電気自動車の組み立てと先進的なバッテリー製造設備を設置するために、テネシー州のスマーナ工場の機械設備を更新
・テスラ社に対する 4.65 億ドル:カリフォルニアでの電気のドライブトレーン(動力伝達装置)および電気自動車の製造

エネルギー省の融資プログラム局は2022年4月18日、米電気自動車(EV)メーカーのテスラへのサプライヤーであるオーストラリアの鉱物探査会社Syrah Technologies, LLCに対し、最大1億700万ドルの融資を承認したことを発表した。
融資は「先端技術車両製造(ATVM)ローンプログラム」の枠組みを通じたもので、米ルイジアナ州Vidaliaの同社施設でのリチウムイオン電池材料の生産拡張に向けた資金として利用される。

LPOが177億ドルの融資権限を持つが、これまでフォード、日産、テスラに対し合計約80億ドルが融資されたが、2011年以降は利用されておらず、今回10年以上ぶりに活用されることとなる。

今回の融資は、リチウムイオン電池の負極材に利用されるグラファイト(黒鉛)の生産拡張に対するもの。Syrah は2040年までにEV約250万台分のグラファイトを生産する計画で、そのほとんどは2021年12月に4年間の供給契約を結んだテスラに供給される。原材料の天然黒鉛は、同社の親会社が所有するモザンビークのバラマの鉱山から採掘したもので、原材料から生産まで同社による一括管理が行われており、環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からも評価されている。


米連邦準備理事会(FRB)は12月13-14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.50%ポイント引き上げ、4.25─4.50%とした。

金融引き締めが景気に与える悪影響などに配慮する。利上げペースの緩和は、今年3月から始まった今回の利上げ局面では初めて。

パウエル議長は、「10月と11月のデータで物価上昇ペースが減速していることは歓迎している」としつつ、物価の上昇率が持続的に抑えられていると確信するにはさらに根拠が必要だとして継続的な利上げが適切だとした。

 
2018/12 2.25%~2.50% +0.25%
2019/7

2.00%~2.25%

-0.25%
2019/9

1.75%~2.00%

-0.25%
2019/10

1.50%~1.75%

-0.25%
2020/3

1.00%~1.25%

-0.50%
2020/3

0.00%~0.25%

-1.00%
2022/3 0.25%~0.50% +0.25%
2022/5 0.75%~1.00% +0.50%
2022/6 1.50%~1.75% +0.75%
2022/7 2.25%~2.50% +0.75%
2022/9 3.00%~3.25% +0.75%
2022/11 3.75%~4.00% +0.75%
2022/12 4.25%~4.50% +0.50%



11月(PCEは10月)の物価は下図の通り。

 

付記  これを受け、EUと英国も12月15日に0.5%引き上げた。


現代自動車グループとSK Onは米ジョージア州Bartow Countyに電気自動車用バッテリーの生産設備を建設する。ジョージア州政府が12月8日、発表した。

Bartow Countyは、ジョージア州の州都アトランタ北西部にある。ジョージア州政府は、「両社は、約40億~50億ドルを投資する。2025年の稼動を目標にしている」と明らかにした。

両社は11月29日にMOUを締結したが、JVの詳細は未定。現代自動車グループは同日、「両社は詳細について検討しているが、現在具体的に決定された事項はない」と明らかにした。

50/50 JV とされる。初期の生産規模は年間20GWhで、年間最大30万台の電気自動車を生産できる。 米国での生産で、北米製造バッテリーを搭載している電気自動車にのみ補助金を与える米国のインフレ抑制法(IRA)に対応する。

ーーー

現代自動車は2022年5月21日、米ジョージア州に電気自動車(EV)の専用工場を新設すると発表した。

投資額は55億ドルで、生産能力は年産30万台規模、2025年の稼働を目指す。

ジョージア州Bryan CountyにHyundai Motor Group Metaplant America (HMGMA) 工場を来年着工し、2025年上半期から稼動する。生産量を次第に増やし2030年に年産30万台とする。

ジョージア州政府は税制優遇などインセンティブを提供し、持続的な諸般の支援を約束した。

電気自動車工場の近くにバッテリーセル工場も建設する予定としており、「バッテリーセル工場は合弁形態で設立するだろう。合弁対象は確定しておらず検討中」と説明した。
SK On、LGエネルギーソリューション、サムスンSDIの韓国企業3社のうち1社が有力という。

2022/5/24 現代自動車、米にEV工場  

ーーー

5月の発表では、Bryan Countyに新設するHyundai Motor Group Metaplant America (HMGMA) 工場の近くにバッテリーセル工場を建設するとしていたが、今回、Bartow Countyに建設すると決めた。

この地域には子会社起亜のジョージア工場(KaGA)、現代自動車のスポーツ用多目的車(SUV) GENESIS GV 70の電気自動車モデルを生産するモンゴメリー工場 (HMMA) があり、これら3工場すべてにバッテリーを供給するものと予想される。



SK Onは、ジョージア州に二つのバッテリーセル工場、ケンタッキーとテネシー州にFordとのJVのバッテリー工場をもっている。

現代自動車の電気自動車 IONIQ 5とIONIQ 6には、すでにSKオンのバッテリーが搭載されており、2024年に生産される予定のIONIQ 7にもSKオンのバッテリーが搭載される予定。

社名 工場 能力 操業開始
SK Battery America Georgia No.1 9.8 GWh 2022
Georgia No.2 11.7 GWh 2023
BlueOval SK
 (JV wjth Ford)
Kentucky No.1, 2 86 GWh 2025~
Tennessee 43 GWh



2021/10/1 Ford Motor、114億ドルを投じ、電動ピックアップトラックと3つの電池工場を建設

米中間選挙は11月8日に投開票された。

上院については、既報の通り、ジョージア州で過半数を得た候補者がいないため、12月6日に決選投票を行った。

その結果、現役の民主党のRaphael Warnckが僅差で勝った。

Raphael Warnock 民主党 50.5%
Herschel Walker 共和党 49.5%


民主党系は無所属を含め51票となり、仮にWest Virginia州選出のManchin議員の反乱があっても、副大統領の最終票で勝つことが出来る。

と、思ったところ、
アリゾナ州選出のKyrsten Sinema上院議員(非改選、グループ①)が12月9日、民主党を離党し無所属に切り替えたと発表した。「ワシントンの壊れた党派システムからの独立を宣言し、アリゾナで増える政党政治を拒否する人々に加わった」と述べた。ホワイトハウスは
同議員とも良好な関係を継続できるとの認識を示した。

現在無所属の"Bernie" Sanders議員とAngus King議員は民主党会派に属している。

Sinema議員は民主党会派に残るかどうかは明言しなかったが、民主党が割り当てる委員会の席は維持したい考えを示した。

ケースバイケースと思われるが、50対50で副大統領(上院議長)の票で決まるという現在と同じ状況になる可能性がある。

再度、Manchin議員の反乱があれば議案が通らないことも起こり得る。

共和党 民主党 民主系
無所属
無所属 合計
選挙前 50 48 2 100
非改選 30-1 34-1 2 1 65
改選 20 14 34
引退補選 1 1
選挙結果 20 15 35
合 計 49 48 2 1 100

50

Manchin議員は West Virginia州選出で、以前は石炭産業で栄えた地域で民主党の地盤であったが、現在は共和党 支持が強い「Red State」となっ ており、議員の生き残りには保守層を取り込むしかない。石油・ガス、石炭などエネルギー業界からの献金が上院議員のなかで最高を誇る。

バイデン大統領肝いりの「10年で3.5兆ドルの予算案」は、Manchin議員の主張で1.75兆ドルの「Build Back Better Act」に修正したが、Manchin議員は最終的にこれにも反対し、潰した。

2022/1/4 米国民主党の混乱 

最終的には、Joe Manchin 上院議員がChuck Schumer上院院内総務と合意し、バイデン大統領が公約に掲げていた大企業と富裕層への増税案がInflation Reduction Act of 2022として成立した。

2022/7/30 米民主党のインフレ対策法案:Inflation Reduction Act of 2022


下院については、12月3日時点で 2選挙区が接戦で未確定であったが、その後、

カリフォルニア第13区は共和党候補の勝利が決まった。

コロラド州第3区は僅差のため、州法により、再計算となった。その結果、12月12日に共和党候補 の勝利が確定した。

なお、今回当選したバージニア州の民主党 Donald McEachin が11月28日に死去した。当面 欠員で、追って特別選挙を実施する。

この結果、共和党は過半数を4票上回る僅差の勝利となった。

  共和党 民主党 欠員 合計
選挙前 212 220 3 435
結果 222 213 435
死亡 1 1
再計 222 212 1 435
増減 10 -8 -2
過半数 218



両院で共和党が圧倒するという当初予想を覆す結果となったが、下院が僅差ではあるが野党支配となった。

バイデン大統領は11月9日の記者会見で、「私は共和党議員と協力する用意があるし、国民が共和党議員に対して私と協力することを期待しているのは明らかだ」と述べている。


中間選挙結果   上院の
クラス①は2024年改選、クラス②は2026年改選で、クラス③が今回の改選。

上院 下院
改選前 改選後 改選前 議席増減 改選後
共和 民主 共和 民主 共和 民主 共和 民主
New England Maine

0 2 0 - 2 -
New Hampshire ②③ 0 2 0 - 2 -
Vermont 0 1 0 - 1 -
Massachusetts ①② ①② 0 9 0 - 9 -
Connecticut ①③ 0 5 0 - 5 -
Rhode Island ①② ①② 0 2 0 - 2 -
Mid-Atlantic New Jersey ①② ①② 2 10 3 +1 9 -1
New York ①③ 8 19 -1 11 +3 15 -4
Pennsylvania 9 9 -1 8 -1 9 -
Delaware ①② ①② 0 1 0 - 1 -
Maryland ①③ 1 7 1 - 7 -
The South Arkansas ②③ 4 0 4 - 0 -

Alabama

②③ 6 1 6 - 1 -
West Virginia 3 0 -1 2 -1 0 -
Florida ①③ 16 +11-2 +1 20 +4 8 -1
South Carolina ②③ 6 1 6 - 1 -
Georgia ②③   8 6 9 +1 5 -1
Texas ①② ①② 23 13 +2 25 +2 13 -
Tennessee ①② ①② 7 2 8 +1 1 -1
Kentucky ②③ 5 1 5 - 1 -
North Carolina ②③ 8 5 +1 7 -1 7 +2
Virginia ①② ①② 4 7 5 +1 6 -1
Mississippi ①② ①② 3 1 3 - 1 -
Louisiana ②③ 5 1 5 - 1 -
Great Plains Oklahoma ②③ 5 0 5 - 0 -
Kansas ②③ 3 1 3 - 1 -
South Dakota ②③ 1 0 1 - 0 -
North Dakota ①③ 1 0 1 - 0 -
Nebraska ①② ①② 3 0 3 - 0 -
The Midwest Iowa ②③ 3 1 4 +1 0 -1
Indiana ①③ +7-1 2 7 +1 2 -
Illinois ②③ 5 13 -1 3 -2 14 +1
Ohio 12 4 -1 10 -2 5 +1
Wisconsin 5 3 6 +1 2 -1
Michigan ①② ①② 7 7 -1 6 -1 7 -
Missouri ①③ 6 2 6 - 2 -
Minnesota ①② ①② 4 4 4 - 4 -
Rocky Mountains Idaho ②③ 2 0 2 - 0 -
Colorado ②③ 3 4 +1 3 - 5 +1
Montana 1 0 +1 2 +1 0 -
Wyoming ①② ①② 1 0 1 - 0 -
The Southwest Arizona ①③ 4 5 6 +2 3 -2
New Mexico ①② ①② 1 2 0 -1 3 +1
Nevada ①③   1 3 1 - 3 -
Uta ①③ 4 0 4 - 0 -
Pacific Oregon ②③ 1 4 +1 2 +1 4
Washington ①③ 3 7 2 -1 8 +1
California ①③ 11 42 -1 12 +1 40 -2
Alaska ②③ 1 0 0 -1 1 +1
Hawaii  ①③ 0 2 0 - 2 -
合計 50

50

49

50

1 212 220 ±0 222 +10 213 -7

  上院の「他」は無所属。2名は民主系のため、合計で民主に加算。

 選挙後、バージニア州の民主党下院議員が死去したため、現在は民主党は212名

 
下院議員の州別結果は下図の通り。Wyoming やAlaska は定員がたった1名だが、カリフォルニアは52名にもなる。
 New England、西海岸、五大湖は民主党、他の地方は共和党が強い。 

世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)は12月9日、トランプ前大統領が課した鉄鋼・アルミニウムの輸入に対する関税はWTOのルールに違反しているとし、米国に対しWTOのルールに適応させるよう勧告した。

https://www.wto.org/english/news_e/news22_e/544_552_556_564r_e.htm

ーーー

トランプ大統領は2018年3月8日、鉄鋼とアルミニウムに輸入制限の発動を命じる文書に署名した。 

それぞれ25%、10%の関税を課す。
15日後に発効する。
全ての国に適用するが、カナダとメキシコは当面猶予する。

2018/3/9 トランプ大統領、鉄鋼・アルミの輸入制限発動を命令

米政府は2018年5月31日、カナダ、メキシコ、EUに対し鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税を適用すると発表した。適用は午前0時からで、税率は鉄鋼が25%、アルミニウムが10%。

2018/6/2 米、EU・カナダ・メキシコに鉄鋼・アルミ関税発動 

2018/6/23 米国の鉄鋼・アルミ関税問題のその後 

米国は2019年5月17日、カナダ、メキシコとの間で、安全保障を理由とした鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税措置を停止することで合意した。

2019/5/20 米、カナダ・メキシコへの鉄鋼・アルミ関税を撤廃

ーーー

米国の鉄鋼・アルミ関税を巡っては、複数のWTO加盟国が提訴しており、今回は中国、ノルウェー、スイス、トルコの訴訟について判断された。

WTOの結論:

In conclusion, the Panel does not find, based on the evidence and arguments submitted in this dispute, that the measures at issue were "taken in time of war or other emergency in international relations" within the meaning of Article XXI(b)(iii) of the GATT 1994. Therefore, the Panel finds that the inconsistencies of the measures at issue with Articles I:1 and II:1 of the GATT 1994 are not justified under Article XXI(b)(iii) of the GATT 1994.

本件は1962 年通商拡大法 (修正を含む) の第232 条に基づいて、米国が鉄鋼およびアルミニウム製品に課す追加の関税および関連措置に関するもの。

米国は、問題となっている措置に関連して、1994 年GATT 第21 条(b)を「自国の本質的な安全保障上の利益を保護するために必要と考えるあらゆる行動」として援用した。
米国はさらに、その措置は第21条(b)(iii)の下で「戦争時または国際関係におけるその他の緊急時にとられた」と主張した。

この論争で提出された証拠と議論を検討した結果、パネルは、問題の措置がGATT第21条(b)(iii))の意味する「戦争時または国際関係におけるその他の緊急時にとられた」ものではないと判断した。したがって、パネルは、問題となっている措置と 1994 年の GATT の特定の規定との不一致は、1994 年の GATT の第 21 条(b)(iii)の下では正当化されないと判断した。

これを受け、米国側はパネルの「不備のある」解釈と結論を強く拒否すると表明した。中国の過剰生産能力が米国の鉄鋼・アルミセクターと国家安全保障の脅威になっている中で米国は黙って見守るつもりはないと指摘し、「紛争の結果として米通商拡大法232条に基づく関税を撤廃する意向はない」とし、今回のパネルの判断はWTO改革の必要性を強調したとした。

米国はパネルの判断を不服として控訴することが可能だが、米国は紛争処理機関の最終審に当たる上級委員会の新たな委員の選任を拒否し上級委は機能不全に陥っているため、控訴された場合には法的効力が失われることになる。

中国は米国がパネルの判断を尊重し「可能な限り早期に不当な行為を正す」ことを望むとしている。

ーーー

世界貿易機関(WTO)の上級委員会が2019年12月10日、新規案件の審理を開始できない事態に陥った。

WTO紛争解決制度は、いわゆる二審制をとっており、第二審として最終的な裁定を行う上級委員会(Appellate Body)は、7名の委員で構成され、3名で一事案の審理を担当する。

委員の任期が到来する中、上級委員の任命の在り方など、WTOにおける紛争解決制度や上級委員会の在り方に不満を持ち、これらについて議論するまでは選考プロセスの開始に賛成できないとする米国と、これに反発するその他の国の間での意見の不一致が生じ、後任が選べず、空席が続いていた。

米国は、中国政府による産業補助金や知的財産権の侵害といった問題で、WYOが疑わしきは罰せずという原則に基づき中国に有利な判断を下したことを問題視している。
従前より、加盟国が紛争解決手続をコントロールすべきとする見解を主張している。
紛争解決機関の承認もなく上級委員が自ら、委員の任期延長を決定していること批判している。

2019年12月10日に、残る3名のうち2名の任期が切れて1名だけになり、委員3名で一つの紛争案件を担当する規定により、新規案件の審理が事実上不可能な状況となった。
案件を審理する小委員会(パネル)は存続するが、パネルの判断に不満がある場合に上級委員会が開けず、機能不全となる。

米国は12月9日、上級委員の選任を改めて拒否した。上級委がWTO規則を超越したり度外視した判断を下していると批判した上で、委員の新たな選任を支持しないと表明した。

2020/1/27 WTO紛争処理の暫定組織設置へ 

エンビジョンAESCグループは12月7日、米サウスカロライナ州フローレンス郡に電気自動車(EV)に使うリチウムイオン電池の工場を建設すると発表した。

投資額は8億1000万ドルで、生産能力は年間30ギガワット時。EV換算で数十万台規模になる。2026年に稼働し、独BMWなどに供給する。

同社は10月19日に、BMWグループとEV用リチウムイオンバッテリーを複数年にわたり供給する契約を締結したと発表した。

供給される最新のリチウムイオンバッテリーは、米国のBMWスパータンバーグ工場で生産される次世代EVへの搭載が予定されており、従来のバッテリーよりエネルギー密度を20%高くし、充電速度を30%向上し、航続距離が30%拡大している。

この契約に基づき、同社は新工場の建設を計画していると発表していた。

現在稼動中のテネシー州の工場、建設中のケンタッキー州の工場と合わせると、エンビジョンAESCの米国での生産能力は年間で70GWhとなる。


エンビジョンAESCエナジーデバイス(Envision AESC Energy Devices Ltd.)は、中国の再生可能エネルギー関連企業のEnvision Group(遠景能源集団)が80%、日産自動車が20%を出資する。

日産が売却したオートモーティブエナジーサプライ(AESC)を前身とする新会社エンビジョンAESCジャパン、日産がエンビジョングループに譲渡した米英のバッテリー会社や、NECが同グループに売却した電池の電極を製造するNECエナジーデバイスも加わる。

2017/8/15 日産自動車とNEC、バッテリー事業を譲渡


エンビジョンAESCグループは2022年4月14日、米ケンタッキー州Bowling GreenのKentucky TransparkでEV向けリチウムイオン電池の新工場を建設すると明らかにした。
投資額は20億ドルで、生産能力は立ち上げ時で年30ギガワット時を想定、年内にも着工し、2025年の稼働を目指す。 オプションとして +10ギガワット時。

同社では、「現在稼動中のテネシー州の工場、建設中のケンタッキー州の工場と合わせると、エンビジョンAESCの米国での生産能力は年間で70GWhとなる。さらなる競争力向上を行うとともに安定的なサプライチェーンを確立し、同国でのEVの普及促進に貢献して いく」としている。


同社の能力(現状及び計画)は下記の通り。

日本 神奈川

2.6GWh/yr

茨城 6→18GWh/yr
英国 Sunderland 1.9GWh/yr
9→25→35GWh/yr
米国 Smyrna/TN 3.0GWh/yr
Kentucky 30GWh/yr
+ option 10GWh/yr
今回発表 30GWh/yr
中国 無錫 20GWh/yr
フランス Douai 9→24GWh/yr

2022/4/15 エンビジョンAESC、米国に2番目の電池工場建設 


米国は8月、インフレ抑制法を可決し、EV購入時の税控除を盛り込んだが、リチウム・ニッケル・コバルトなど中国産の核心鉱物とバッテリーを使用した電気自動車を対象から除外し、北米で組立・生産した電気自動車に限定するなどの条件を付けている。

エンビジョンAESC製をEVに搭載した場合、税控除の対象にならない可能性がある。BMWは税控除の対象にならないリスクを考慮しても、北米での車載電池の確保を優先した可能性が高いとされる。

南米のウルグアイ政府は11月30日、TPP=環太平洋パートナーシップ協定への加入を申請する文書を、協定のとりまとめ役を務めるニュージーランド政府に提出したと発表した。

一方、ウルグアイとともに関税同盟 Mercosur を構成する南米のブラジル、アルゼンチン、パラグアイの3か国は、域外との貿易交渉は加盟国が共同で行う規定が存在することから、ウルグアイの加入申請は「単独行動だ」と反発、今後、ウルグアイへの対応を検討するとし、制裁も辞さない構えを見せている。


Mercosur について:

  • 加盟国:アルゼンチン,ブラジル,パラグアイ,ウルグアイ,及びボリビアベネズエラ全6か国

        
        ボリビアは2012年12月加盟議定書に署名し,各国議会の批准待ちで、現在議決権はない。
        ベネズエラについては、2016年12月にアルゼンチン,ブラジル,ウルグアイ,パラグアイが加盟資格停止を通知。

  • 準加盟国:チリ,コロンビア,エクアドル,ガイアナ,ペルー,スリナム(全6か国)

Mercosur の準加盟国であるペルーとチリはTPPに加盟しており、同じく準加盟国のエクアドルは加盟を申請している。


Mercosur加盟国の最大の特徴は、対外共通関税を加盟国全てが採用する一方、域内における品目別原産地規則をクリアすることを条件に、域内の輸入関税が免除されている点にある。


EUとMercosur(
アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ4か国) は2019年6月28日、自由貿易協定(FTA)について基本合意に達した。足掛け約20年の交渉がようやく実を結んだ。

なお、Mercosur加盟4か国は欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国(アイスランド、スイス、ノルウェー、リヒテンシュタイン)との間でもFTA交渉を行っており、ほぼ合意に達しているとされる。

2019/7/4 EUと南米南部共同市場(Mercosur)、FTAで 基本合意 

EUとMercosurのFTA交渉はその後、難航した。

フランスのマクロン大統領やオランダのマルク・ルッテ首相などが、アマゾン熱帯地域の森林保護に消極的だとして、ブラジルを批判した。

Mercosur側でも、保護主義的な政策を推進する左派政権率いるアルゼンチンと、交渉を前に進めたいブラジルが相いれないなど、足並みがそろっていなかった。

ただ、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受け、EUは、Mercosurなどと戦略的な提携を強化するべく、停滞しているFTA交渉を前に進めたい意向を示している。

ーーー

TPPをめぐっては、加入を目指す動きが活発化している。

TPP加盟申請
英国 2021/2/1 2020/1/30 EU正式離脱
中国 2021/9/16 2021/9/18 中国、英国に続き、TPPへの加入を正式申請
台湾 2021/9/22
エクアドル 2021/12/17
コスタリカ 2022/8/10
ウルグアイ 2022/11/30 Mercosur メンバーが異議
韓国 2021/12/13 手続き開始

  

 

EUと西バルカン諸国(Western Balkans)は12月6日、アルバニアの首都ティラナで首脳会議を開催した。EU首脳は会議後、「西バルカン諸国のEU加盟という観点に対する完全かつ明確なコミットメントと加盟手続きの加速要請」を再確認した。

6カ国はアルバニア、モンテネグロ、北マケドニア(以上3カ国はNATO加盟)と、セルビア、コソボ、ボスニア・ヘルツェゴビナ。

宣言ではロシアのウクライナ侵攻について「欧州と世界の平和と安全を危険にさらしている」と非難。EUと西バルカン諸国の「戦略的パートナーシップの重要性」に言及した。

EU側は汚職対策などEU加盟に向けた内政改革の加速も6カ国に促した。


2022年3月現在、アルバニア、北マケドニア、モンテネグロ、セルビア、トルコの5カ国が加盟候補国で、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボの2カ国が潜在的加盟候補国となっている。

アルバニアと北マケドニア、モンテネグロ、セルビアは正式な加盟候補国となって数年がたっているが、手続きは滞っている。トルコも1999年に加盟候補国となったものの、人権侵害への懸念があることから、加盟交渉は中断したままである。

欧州連合(EU)は2022年6月23日開いた首脳会議で、ウクライナとモルドバに加盟候補国の地位を付与することを承認した。全27加盟国が同意し、認定に必要な全会一致で決まった。

2022/6/27 EU、ウクライナとモルドバを加盟候補国に認定

付記 EU首脳らは2022年12月15日、ボスニア・ヘルツェゴビナを「加盟候補国」として正式に認めることで合意した。


2018年1月に安倍総理(当時)が南東欧諸国を訪問した際に、EU加盟を目指す西バルカン諸国に対する経済社会改革の支援と西バルカン地域内の協力促進を目的とした、日本が主導する取り組み「西バルカン協力イニシアティブ」が発表された。

EU加盟を目指す当該諸国の経済社会改革を支援。
地域における各国間の協力及びユーゴスラビア紛争後の諸民族間の和解・協力の促進。



EU加盟候補、潜在的加盟候補国 



NATOとEUの加盟状況は下記の通り。

フィンランドとスウェーデンは2022年5月18日、NATO加盟を正式に申請し、NATOの加盟各国は2022年7月5日、スウェーデンとフィンランドの正式加盟を承認する議定書に署名した。すべての加盟国が国内での批准手続きを終えればNATOは32カ国体制となる。

NATO EU
原加盟国 米国 対象外
カナダ
イタリア 1952
オランダ
フランス
ベルギー
ルクセンブルク
英国 加盟→離脱 1973
2020/1/31
デンマーク 1973 
ポルトガル 1986
アイスランド

非加盟

ノルウェー
1952/2

ギリシャ

1981
トルコ 非加盟
1955/5 ドイツ(西ドイツ) 1952
ソ連崩壊 1991/12/26
1982/5 スペイン 1986
1999/3  チェコ 2004/5
 ポーランド
 ハンガリー
2004/3  エストニア 2004/5
 ラトビア
 リトアニア 
 スロバキア
 スロベニア
 ブルガリア 2007/1
 ルーマニア
2009/4 アルバニア 非加盟
 クロアチア 2013/7
2017/6 モンテネグロ 非加盟
2019 マケドニア
非加盟 アイルランド 1973
オーストリア 1995
2022年加盟へ フィンランド *
スウエーデン*
非加盟 キプロス 2004/5
マルタ
非加盟 スイス 非加盟
ボスニア・ヘルツェゴビナ
セルビア
コソボ
ベラルーシ
モルドバ
ウクライナ
30→32 フィンランド、スウェーデン

28→27



フィンランドとスウェーデンは2022年5月18日、NATO加盟を正式に申請した。

NATOの加盟各国は2022年7月5日、スウェーデンとフィンランドの正式加盟を承認する議定書に署名した。NATOは32カ国体制となる。

2021/12/22 ロシアの安全保障条約草案に付記

実際の加盟には、EU加盟の30カ国全部の批准が必要である。

10月までに既存の全30カ国中、28カ国が国内の批准手続きを終え、10月12~13日の国防相理事会に両国は招待国として参加した。

しかし、トルコとハンガリーのみが批准をしていない。

ーーー

ハンガリーのオルバン首相は、内政や外交ではリベラリズムに難色を示し、EUやウクライナのゼレンスキー大統領に批判的な姿勢を打ち出していた。

しかし、首相は11月24日、スロバキアで開かれた中欧の地域経済枠組みV4の会合後の記者会見で、ハンガリー政府はすでにフィンランドとスウェーデンのNATO加盟支持を決定しており、議会は来年の初回会合でこの件を議題として取り上げると表明、「政府の支持決定を受け、議会も支持すると予想される」と述べた。ハンガリー議会の会期は通常2月中旬に始まる。

ーーー

トルコのエルドアン大統領は、トルコ政府と対立する国内のクルド分離主義組織「クルド労働者党(PKK)」を両国が支援しているとして難色を示していた。

両国の加盟を決めるNATO首脳会合中の2022年6月28日、スウェーデン首相、フィンランド大統領とトルコのエルドアン大統領はNATO事務総長とともに会談し、3国はスウェーデン、フィンランドのNATO加盟に関連して、覚書に合意した。

ストルテンベルグ事務総長は、今回の覚書はトルコの懸念に対応するもので、武器輸出やテロリズムへの対処に関する内容が盛り込まれたと説明した。スウェーデンとフィンランドがトルコの国家安全保障の脅威への対処を支援することを約束したほか、PKKの活動に対して厳しい処置をとり、トルコとの間で引き渡し協定を締結するとした。

覚書によると、北欧2国はクルド人武装組織の「クルド労働者党(PKK)」と「人民防衛隊(YPG)」、トルコが2016年のクーデター未遂事件の首謀者とみる在米イスラム指導者ギュレン師の関連組織を支援しないことなどを約束した。身柄引き渡しの対象者は特定されていない。

これに先だつ6月27日には、スウェーデン首相がNATO事務総長と会談後の記者会見で、PKKに関しテロ組織とみなしているとはっきりと述べた。また、トルコ側が求める引き渡しに関しては、欧州犯罪人引き渡し条約に従い、スウェーデンの法制度の下で迅速かつ慎重に扱うとした。

これらを踏まえ、トルコも両国のNATO加盟を支援することに合意した。

ーーー

クルド人は、中東のクルディスタンに住むイラン系山岳民族で、トルコ・イラク北部・イラン北西部・シリア北東部等、中東の各国に広くまたがる形で分布する。人口は3,500万~4,800万人といわれている。

トルコの独立戦争後、トルコ国内においてトルコ政府とクルド人の武力を伴う紛争が続いている。

トルコは、クルド人の民族自決が分離独立運動に結び付きかねないとの懸念から常にその動きに神経質であり、過剰にクルド人を弾圧する傾向がある。


スウェーデンは人道主義を尊重し人権を擁護するとの立場から、これまでも難民や政治的亡命者を多数受け入れてきているが、クルド人についてはトルコ国内政治における左右両派の対立先鋭化や1980年代の軍事クーデターを契機とする弾圧によって生まれた政治難民と認めて自国に受け入れて来た。

トルコのエルドアン大統領は、2022年5月16日の会見で スウェーデンをテロ組織の「揺籃の中心地」であると呼び、スウェーデンに(クルド労働者党 PKKと結びつきがある)クルド系国会議員がいることや、クルド系の活動家らがスウェーデンの国会に招致されたことなどを強い口調で非難した。

ーーー

エルドアン大統領は6月30日、フィンランドとスウェーデンが約束を守らなければ、国内の批准手続きを行わないと述べた。

北欧2国はテロリストに関する法改正を早期に終える必要がある。

トルコがテロリストと見なす73人の引き渡しをスウェーデンが約束した。
(覚書では引き渡しについて具体的な約束はなく、北欧2国がトルコの要請に対処するとだけ記されている。)

覚書の項目が履行されるか注視し、それに応じて行動する。

両国はまず文書に記された義務を果たすべきだ。さもなければ批准文書を議会に送付するなど問題外だ。

スウェーデンの議会は10月17日、9月の総選挙で第3党となった中道右派・穏健党のクリステション党首を、新たな首相に選んだ。

前政権は連立政権維持のためクルド系議員の協力を得ていたが、新政権は前政権と比べてもトルコ寄りの姿勢を鮮明にしている。

クリステション新首相は、スウェーデンのNATO加盟を支持するようトルコのエルドアン大統領を説得すべく、新しい中道右派政権はクルド人グループに距離を置くと述べた。

ビルストロム外相は、スウェーデンはシリアのクルド人民兵組織YPG(クルド人民防衛隊)およびその政治組織PYD(クルド民主統一党)に対する見方を変えるだろうと述べた。

多くの西側諸国はシリアの北東部でISIS(イスラム国)を打倒する上で助力を得たYPGを支持して来た。トルコはPKK(クルド労働者党)との密接な関係の故にYPGを直接的な脅威と見做している。

ビルストロム外相は11月5日、「これらの組織とPKKの間にはあまりに密接な関係があり‐‐‐‐われわれとトルコとの関係にとっては好ましくない」と述べた。

しかし、トルコ側は覚書の完全履行を求めている。 覚書には「(両国は)懸案のトルコによるテロ容疑者の国外追放あるいは本国送還の要請に迅速かつ完全に対応する」と書かれている。

トルコが引き渡しを求める「テロリスト」はクルド系の活動家など数十人に及ぶとされる。

トルコ側から見ればテロリストであるが、スウェーデン側からは政治的迫害を理由に受け入れた難民で、多くは既にスウェーデン国民となっている。人権国家のスウェーデンとしては、犯罪の証拠がない政治亡命者を引き渡す ことは出来ない。

これまで引き渡し対象となったのは詐欺罪が確定していた人物など数人に限られる。

12月2日、反政府武装組織クルド労働者党(PKK)メンバー1人の身柄が、逃亡先のスウェーデンからトルコ政府に引き渡された。引き渡されたメンバーは、トルコで禁錮6年10月の判決を受け、2015年にスウェーデンへ逃亡したが、亡命申請は認められなかった。

NATO加盟と人権擁護との板挟みとなっており、このままでは解決しそうにない。


付記 スウェーデンの最高裁は12月19日、トルコのエルドアン大統領が名指しで身柄移送を求めるトルコ人記者の送還は人道上の理由から「認められない」と判断した。


最終的には、米国がトルコを説得するのではないかと見られている。

なお、フィンランドについては、トルコは、同国の協力には満足しているが批准はスウェーデン、フィンランド両国分を同時に行う予定だとしている。

台湾のTSMCは12月6日、2024年の操業開始を目指してアメリカ西部アリゾナ州に建設している工場のそばに、新たに別の工場を建設すると発表した。

TSMC today announced that in addition to TSMC Arizona's first fab, which is scheduled to begin production of N4 process technology in 2024, TSMC has also started the construction of a second fab which is scheduled to begin production of 3nm process technology in 2026. The overall investment for these two fabs will be approximately US$40 billion, representing the largest foreign direct investment in Arizona history and one of the largest foreign direct investments in the history of the United States.


When complete, TSMC Arizona's two fabs will manufacture over 600,000 wafers per year, with estimated end-product value of more than US$40 billion.


この工場では、現在、世界で量産されている半導体のなかでも最先端の、回路の幅が3ナノメートルの製品を2026年から生産する。TSMCにとっては、海外で先端品をつくる初の拠点となる。


なお、建設中の工場は当初、5ナノを生産する計画であったが、アップルなど米顧客の要請で、4ナノを生産する。

2つの工場の建設で、TSMCのアリゾナ州への投資額は、従来計画比3倍強の400億ドルにのぼることになる。

バイデン政権は、中国に対抗するため、本年8月には527億ドルを投じて半導体の国産化を促進する法律
「The CHIPS and Science Act of 2022」(「CHIPS法」)を成立させている。

2022/7/29 米議会、「CHIPS法」を可決 


なお、TSMCの創業者、張忠謀(Morris Chang)は4月14日に「半導体の生産は米国に戻り得るか」"Can semiconductor manufacturing return to the US?" という米国での生産に否定的なスピーチを行い、波紋を呼んだ。人材難、製造コスト高、補助金の少なさを問題としている。

2022/4/23 TSMCの創業者、米国での半導体生産に否定的見解

今回バイデン大統領などが出席した式典で、張忠謀は、アリゾナ州で採用した600人近くの技術者が台湾に研修を受けに行っていると述べ、米国で半導体を生産するという「25年来の夢がかないつつある」と語った。


TSMCは台湾では台南で3nm、5nmの工場を建設中で、新竹では2nmの新工場を計画している。

中国では前世代型の工場(南京は28nm)を稼働させている。

日本の計画は下記の通りで最先端のものではない

当初発表 今回追加、変更
少数持分出資 ソニーセミコンダクタソリューションズ
 約5億米ドル(20%未満)
デンソー  追加
 約3.5億米ドル(10%超)
製品 22nm、28nm半導体 12nm、16nm半導体追加
(高度は演算処理に使用)
月間生産能力 45,000枚(300mmウェーハ換算) 55,000枚(300mmウェーハ換算)
当初設備投資 約70億米ドル 約86億米ドル


2022/2/16 
台湾積体電路製造の熊本工場にデンソーが出資 


TSMCは現在、台湾内外に17の製造工場を持つ。海外での大規模工場は、稼働中の中国と建設中の米国(2021年から建設開始、2024年の稼働)に続き日本が3カ国目となる。

米国にはテキサス州Austin とカリフォルニア州San Joseに設計センターを持つ。

なお、同社は7月に、ドイツ政府から工場誘致の話があり、検討を開始していると述べた。
工場建設がドイツ国内の主要クライアントにとって重要かつ効果的かどうかを確認している段階で、まだ何かを公表できる段階には至っていないとした。

  台湾 中国 USA 日本
12-inch GIGA FABs
  (300mm)
本部/R&D:Fab 12A/B(新竹Science Park) TSMC Nanjing Company, Fab 16
(南京)
建設中
アリゾナ州 Phoenix
「5ナノ」→「4ナノ」

熊本
Fab 14(台南Science Park)
Fab 15(中部Science Park:台中市) 新工場「3ナノ」
Fab 18(台南Science Park)
8-inch wafer
Fabs
  (200mm)
Fab 3(新竹Science Park)  TSMC China Company, Fab 10
(上海)
WaferTech L.L.C., Fab 11 
(ワシントン州 Camas) 
Fab 5(新竹Science Park) 
Fab 6(台南Science Park) 
Fab 8(新竹Science Park) 
6-inch Fabs
  (150mm)
Fab 2(新竹Science Park)    
Backend Fabs Advanced Backend Fab 1(新竹Science Park)    
Advanced Backend Fab 2(台南Science Park)
Advanced Backend Fab 3(桃園市)
Advanced Backend Fab 5(中部Science Park:台中市)
 Backend Fab:半導体製造における2番目の工程で、それぞれのデバイス(トランジスタ、キャパシタ、抵抗など)がメタル層によって配線される。

三洋化成はバイポーラ積層型のリチウムイオン電池の「全樹脂電池」開発のAPBの株式の44.2%を保有し、APBに対し全樹脂電池のキーマテリアルとなる被覆活物質を供給している。

バイポーラ構造は負極集電体(青)と正極集電体(赤)を積層したシンプルな構造で、安全性に加えて生産コスト面でも大きな優位性を持つ。電気を集電体の長手方向に流すのではなく、面に対して垂直方向に流す。


同社は今回、持株44.2%のうち34.2%を半導体の設計・開発や最先端技術を活用したデジタルインフラ構築事業を行い、最先端プロセスの開発に実績を有しているTRIPLE-1に対し譲渡する契約を締結した。
残りの10%は引き続き保有し、
被覆活物質の供給も続ける。

なお、負極材料のハードカーボンのメーカーのJJFEケミカルが2019年4月にAPBに出資したが、2020年3月にAPBが量産工場設立を主たる目的として約80億円の資金調達を実施した際にJFEケミカルと他6社が引き受け、JFEケミカルは現在、三洋化成に次ぐ第二位の株主となっている。

ーーー

APBは、日産自動車でEVリーフの電池開発を行っていた堀江英明氏が1998年にポリマー電解質を適用したバイポーラ電池を構想2012年に三洋化成樹脂集電体と3次元電極用ゲルポリマーに関する共同開発を始め、2018年10月に低コストの大量生産技術を確立するためのスタートアップ企業 APB㈱を設立した。

2019年2月、三洋化成が出資、子会社とした。

2020年3月に、全樹脂電池の量産検証の開始のため、福井県越前市において用地及び建物を新たに取得した。

2020/3/5 三洋化成子会社、次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」の量産第一工場を建設  (経緯、事業概要など記載)

三洋化成は当初、全樹脂電池の開発フェーズにおいては、APBの経営を支援しつつ、同社と連携し、全樹脂電池のキーマテリアルとなる被覆活物質を供給、全樹脂電池開発を進めて きた。

開発フェーズの終了後は、三洋化成は全樹脂電池のキーマテリアルである被覆活物質の開発、供給体制の確立に専念している。

他方、APBは武生工場を設立し、人員の拡充を進めるなど経営体制の整備を着実に進め、量産化、製品化フェーズを全面的に担うに至るとともに、将来的な事業成長のための新たなパートナー企業との提携を模索して いた。

今回、先端半導体の開発を手がけるユニコーン企業(評価額が 10 億ドル以上の未上場のスタートアップ企業)であり、海外のテクノロジー関連企業とも提携しているTRIPLE-1 よりAPBを通じて三洋化成に株式取得の申し入れがあったもの。

三洋化成としては、APBの技術開発を加速させ、将来的な事業成長に資することができ、また被覆活物質の開発・供給に注力するという 三洋化成の方針にも合致すると判断し、譲渡を決めた。

同社は、「全樹脂電池」は画期的な事業であるが、リスクを避け、原料供給に徹することにしたと思われる。

ーーー

TRIPLE-1 の事業内容は、半導体設計・開発事業、電気通信事業 、最先端技術を活用したデジタルインフラ構築事業で、工場を持たずに半導体を設計開発するファブレス半導体スタートアップとして2016年に創業した。

ビットコインなどの暗号通貨マイニングやディープラーニング向けの最先端の半導体設計開発を行ってきた。

2018年には世界で初めて、7nmプロセス技術を採用した暗号通貨マイニング向けASICチップ「KAMIKAZE」の製造を開始して注目を集めた。従来のASICチップと比べて50%以上の省電力化と4倍の処理速度を実現し、環境負荷を大幅に低減しつつ高性能化にも成功した。

APBの筆頭株主となり、将来的に全樹脂電池を活用した事業の展開を想定している。

企業向けの特別高圧電力および高圧電力の供給を巡る大手電力のカルテル問題で、公正取引委員会は独占禁止法違反(不当な取引制限)で、中国電力、中部電力、九州電力の大手電力3社などに課徴金納付を命じる処分案を通知した。

課徴金総額は約1000億円で、1977年の制度開始以来、過去最高額となる。過去最高額は2019年の道路舗装8社へのアスファルト合材価格カルテルでの計約398億円。

過去の主な課徴金

2019年 道路舗装材(アスファルト合材)カルテル 8社 398億円
2007年 ごみ焼却炉談合 5社 269億円
2019年 飲料缶カルテル 3社 257億円
2014年 自動車輸出海運カルテル 4社 227億円
2010年 光ファイバーケーブルカルテル 5社 160億円
2006年 橋梁談合 44社 129億円


電力各社は燃料高や円安により経営環境が悪化しており、巨額の課徴金がさらなる収益の圧迫につながる可能性がある。

松野官房長官は、「課徴金は規制料金の原価に含まれない」とし、電気料金値上げの審査に関係がないとしている。


各社は12月1日に通知を受けたことを公表した。

対応 公取委の立入検査
中国電力 独禁法関連損失引当金繰入額として707億円 を特別損失に計上(12/5発表) 2021年4月13日および
7月13日
中部電力&
中部電力ミライズ
独禁法関連損失引当金繰入額として275.55億円を特別損失に計上 2021年4月13日
九州電力&
九電みらいエナジー
内容をチェックし、対応を検討 (報道では課徴金27億円) 2021年7月13日

中部電力ミライズは中部電力の販売事業会社
九電みらいエナジーは九州電力の再生可能エネルギー発電と電気を一般の需要家に販売・供給する100%子会社


各社はオフィスビルや大規模工場向けの「特別高圧電力」、中小ビルや中規模工場向けの「高圧電力」の販売で、互いに他社の区域での営業を控え顧客獲得を制限していたとされる。

電力小売りは事業者向けから順次自由化が始まり、2016年に家庭向け電力も対象となり全面自由化 し、新電力の参入や大手電力のエリアを超えた営業が認められるようになった。

産業界で電力を広域で一括して調達し、コストを引き下げる動きが出てきた。セブンイレブン・ジャパンは中部地方や西日本のコンビニエンスストア3000店超で地元の大手電力などから、関西電力に切り替える。電力自由化を受けて大手電力が地元以外で攻勢を掛け、新電力を含めた競争が激しくなっている。

関係者によると、一部の大手電力から「過当競争はたまらない」との声が出て、 関西電力の企画部門幹部が2018年秋ごろに3社を訪問し協議を提案した。

中国電力、中部電力、九州電力は2018年秋以降、関電と大規模工場向けの「特別高圧電力」や企業向けの「高圧電力」の供給で互いに相手の管轄区域で営業しないよう、互いの顧客獲得を制限するカルテルにそれぞれ合意 、企業向け電力市場の競争を実質的に制限していたとされる。(下図は読売新聞)

関西電力はカルテルを発議、3社とそれぞれカルテルを結び、カルテルの中心であるが、公取委に最初に違反を申告したため課徴金減免(リーニエンシー)制度で納付を免れると見られる。

独禁法では、談合・カルテルの主導的役割を果たした主導的事業者に対し、課徴金を5割増にするルールがあり、大企業・製造業の場合、一般の10%が15%になる。

関西電力はカルテルを発議、3社すべてとカルテルを結んでおり、本来なら膨大な課徴金になるところであった。


中国電力と中部電力で課徴金に大きな差がある。

中部電力は、中部電力と東京電力のJVのJERAが発電した電力を販売しているため、「卸売業」とみなされ、課徴金は売上高の2%であるのに対し、中国電力は製造業で、売上高の10%が課せられた。

課徴金(不当な取引制限)

  製造業等 小売業  卸売業 
大企業  10%   3%  2%
中小企業 4% 1.2% 1%

主導的事業者は課徴金5割増

九州電力は関電と合意した販売先の範囲が最も狭く(官公庁のみ)、算定基準となる売上が少なかった。

 付記 調査開始後に公取委に全面協力し、30%が減免されたとされる。


関西電力の本来の課徴金は、
構図が上図の通りなら、単純計算で (275 x 5 + 700 + 27) x 1.5 =3,153億円となる。中部電力分は関電は製造業のため5倍となる。全体を5割増。これが自主申告でゼロになった。

  

 

米上院は11月29日、同性婚の権利を連邦レベルで保障する法案(H.R.8404 - Respect for Marriage Act)を賛成多数で可決した。下院も 今週に通過する見通しで、バイデン大統領は同日発表した声明の中で「アメリカ国民は愛する人と結婚する権利がある」として、下院での可決後に直ちに署名し、成立させる考えを示した。


成立すれば、連邦法で同性婚の権利を保障するのは初めてになる。

上院は現在、民主、共和両党が各50議席を占める。性的少数者の権利擁護を重視する民主党系議員のほか 、共和党議員の一部も賛成して超党派で可決した。

共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 12 47 2 61
反対 36 36
棄権 2 1 3
合計 50 48 2 100


付記  下院は12月8日、これを可決した。

  共和党 民主党 欠員 合計
賛成 39 219 258
反対 169 169
棄権 5 5
合計 212 220 3 435


バイデン米大統領は12月13日、この法案に署名し、同法が成立した。


米連邦裁は同性婚の権利を保障する判断をしている。

米連邦最高裁判所は2015年6月26日、同性婚の権利は男女の結婚と同様、法の下の平等をうたう合衆国憲法によって保障されており、同性婚を禁止する州法は違憲に当たるとの歴史的判断を示した。
オハイオ、ミシガン、ケンタッキー、テネシーの4州の州法が同性婚を禁じていたが、その合憲性についてオハイオの連邦高裁が2014年11月に禁止を支持する判断を下し、最高裁に判断が委ねられた。

保守4人が禁止は合憲とし、リベラル4人が違憲で、保守系中道のAnthony Kennedy 判事が違憲に回った。

Anthony Kennedy 判事は判決文のなかで「結婚を望む同性愛者は、孤独な生活を余儀なくされたり(婚姻という)文明上最古の制度の一つから締め出されるべきでないとの願いを寄せている。すなわち彼らは法の下の平等と尊厳を希求しているのであって、合衆国憲法はこれを保障するものである」と述べた。

2020/6/19 職場でのLGBT 差別は公民権法違反、米最高裁が初判断 に記載


現在の
米連邦最高裁は保守派が中心で、6月24日には中絶の権利に関して、1973年の「Roe v. Wade判決」を覆す判断を下している。

2022/5/10 米最高裁の中絶権判例を覆す意見草案 付記


同性婚に関しても、最高裁が以前の判断を覆す可能性が非常に強いとみられている。

このため、 法案を提出した与党・民主党としては連邦レベルでの法律の制定を急ぎ、機先を制した。

今回の法案では、すべての州に対し、ほかの州で認められた同性婚のカップルの権利を認めなければならないとしている。

もし連邦最高裁が判断を覆し、一部の州での同性婚禁止を認めたとしても、ほかの州で認められた同性婚のカップルの権利はその州に移っても維持されることになる。

H.R.8404 - Respect for Marriage Act

§ 7. Marriage

日本がスペインに勝ったゲームで、三笘選手が蹴り返した場面でボールがゴールラインを割っているようにも見えるため、各方面で注目を集めていたが、FIFAは12月2日に公式ツイッターでこれを説明している。

https://twitter.com/FIFAcom/status/1598702636450123777?ref_src=twsrc^tfw


「日本の2点目のボールがラインを割っているかどうかをVAR
Video Assistant Referee)で判定した。
 ゴールラインのカメラの画像で、ボールが一部でもライン上にあるかどうかをチェックした。」

* ツイッターでは画像はいずれも動画 


「カメラによっては(ラインを割っているという)ミスリーディングなものもあるが、証拠によれば、ボールの全体はライン外に出ていない。(一部はライン内に残っている)」  

見る方向により、上ではボール全体がでているように見えるが、正面からみると一部はライン内に残っている。ライン外は着色。


    
ルールでは
ボールの中心がラインの外にあっても、真上 or 真横から見てボールが少しでもラインの上にあればインプレ―となる。

下のAPの報道写真 (ほぼ真横から)では、蹴った瞬間にはボールのほんの一部がライン上にある。(上の写真とは左右が逆)

三笘選手コメント 「本当に1ミリでも中に入っていればいいなと思って足を伸ばしました」

ーーー

VARVideo Assistant Referee)では2つの技術が使われている。

上のFIFAの説明は、ソニーグループ傘下のHawk-Eye Innovation Ltd.の"Hawk-Eye"技術によるもので、テニスなど多くのスポーツで使用されている。

最大12台のカメラを使用して、映像を同期させ、さまざまな角度からの映像を確認できる。

Hawk-Eye Innovations Ltd. は2001年7月に英国で設立された。2011年3月にソニーが買収した。



VARのもう一つの技術はKINEXONが開発したチップを使ったトラッキングシステムで、公式球の中に、超広帯域無線周波数と慣性測定ユニット(IMU)の両方を利用できる軽量センサーが内蔵されている。

ボールの位置とプレイヤーがボールに触れた情報を1秒間に500回も発信し、観客席の最前列前の外周に張り巡らせたアンテナとの連動で、リアルタイムでプレイヤーのキックポイントを正確に検出できる。ボールがラインを割ったかどうか、割ってない場合はコンマ何ミリの単位でラインにかかっているかを測定できるという。

米中間選挙は11月8日に投開票された。

上院については、既報の通り、ジョージア州で過半数を得た候補者がいないため、12月6日に決選投票を行う。

共和党 民主党 民主系
無所属
合計 未定
選挙前 50 48 2 100  
非改選 30-1 34 2 65
改選 20 14   34
引退補選 1     1
選挙結果 19+1 14   34 1
合 計 49 48 2 99 1

50

ジョージア州で民主党が勝つと、無所属を含め51票となり、West Virginia州選出のManchin議員の反乱があっても、副大統領の最終票で勝つことが出来る。


下院については、現時点で2選挙区が接戦で、未確定である。

  共和党 民主党 欠員 未定 合計
選挙前 212 220 3   435
結果 220 213   2 435
増減 8 -7 -3 2  
過半数 218        

付記 

・カリフォルニア 第13区は共和党候補の勝利が決まった。

・今回当選したバージニア州の民主党 Donald McEachin が11月28日に死去した。当面 欠員で、追って特別選挙を実施する。

・この時点で、共和党221、民主党212、未定1 、欠員1



日本時間 12月2日 17時 時点

 ① カリフォルニア州· 第13区  開票率 99%
共和党 John Duarte 66,871票
民主党 Adam Gray 66,272票
差異 599票
 
 ② コロラド州 第3区 開票率 99%
共和党 Lauren Boebert 163,842票
民主党 Adam Frisch 163,292票
差異 550票

 


カリフォルニア州の場合、郵便投票の比率が非常に高い。この場合、それぞれの投票について、投票の署名が選挙人登録の署名と合致するかどうかをチェックする必要があり、非常に時間がかかる。

11月28日時点でカリフォルニア州全体で244,003株が未確定で、そのうち、184,989 票が郵便投票によるものである。カリフォルニア州では最終確定まで1カ月を認めている。

第13区の場合、差が599票しかなく、残りの票で逆転の可能性もあり、未確定である。


コロラド州の場合も大接戦である。しかし、当初、民主党のAdam Frischは敗戦を認め、投票の再計算を求めないと意見表明した。このため、本ブログではその時点で共和党勝利としていた。

しかし、コロラド州選挙管理委員会は11月30日、投票の再計算を命じた。コロラド州では、上位2者の票差が1位の票の0.5%以下の場合、再計算が必要となっている。

現在、差は0.34%しかないため、第3区の全ての票が再計算される。法律により、期限は12月13日となっている。

共和党は既に下院の過半数である218議席を超える220議席を得ており、大勢には影響しない。

中国海洋石油総公司(CNOOC)傘下の海洋石油工程がShellからのオーダーで製造した巨大スマート集積化円筒型浮体式石油生産貯蔵積出設備 「Penguins FPSO(Floating Production Storage and Offloading System)」が11月29日、山東省青島市で引き渡された。

この設備の全体の高さは118メートル、総重量は約3万2千トンに達する。 (写真は新華社)

このPenguins FPSOは北海のBrent 油田のなかのPenguins oil and gas field の掘削に使用される。

Penguins はShell 50%、ExxonMobil50%であったが、昨年、NEO Energy がExxonMobilの権利を買収した。Shellがオペレーターである。

生産量は45,000 barrels of oil equivalent per day (boe/d) である。


この油田は1974年に発見され、2002年に開発を開始、当初は4つの井戸で汲み上げ、近くのBrent Charlie platformに送られていた。
2017年にBrent Charlie platformの閉鎖を決め、Shellは2018年にPenguins をFPSOで再開発することを決めた。新たに8つの井戸が掘削され、FPSOに接続される。

FPSOで処理された原油はタンカーで製油所に送られ、ガスは Far North Liquids and Associated Gas System pipeline経由でスコットランドのSt Fergusのガスターミナルに送られる。

海洋石油工程は2018年に建設を開始、当初は2021年3月に引き渡しの予定であったが、COVID-19の影響で遅れた。

ーーー

2015年に韓国の現代重工業がノルウェーのENI Norge ASからの注文で世界最大となる100万バレル級の円筒形FPSO(浮体式生産貯蔵積出設備)を製造、ノルウェー北部ハンメルフェストから北西85km離れたGoliat海上油田に送られた。

高さ75メートル、重量5万9000トンである。

東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、三菱商事は、
①米国テキサス州・ルイジアナ州で合成メタン(e-methane:非化石エネルギー源を原料として製造された合成メタン)の製造、
②キャメロンLNG基地およびLNG船・受入基地等を活用した合成メタンの液化・輸送、
③2030年の日本への合成メタン導入開始
に向けた共同での詳細検討実施に合意し、検討に着手した。

日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」実現には、熱需要に対応するガス体エネルギーの脱炭素化が重要で、既存の都市ガスインフラや消費機器が活用でき、スムーズなカーボンニュートラル化への移行と追加的な社会コストの抑制が両立可能な合成メタンの導入が期待されている。

 

発電所等から排出されたCO2は、回収し、メタンの利用を通じて空間に排出される。メタンの使用に際して新たなCO2排出はない。

このため、2030年に13万トン/年の合成メタンを製造し、日本へ輸出することを目指す。

原料を安定的に調達するための既存インフラが揃い、早期のサプライチェーン確立を図れるという点で、現時点で米国キャメロンLNG基地近傍を4社共同で取り組む最有望地域として選定した。


<サプライチェーンイメージ>

キャメロンLNGプロジェクトは、米Sempra Infrastructure、三菱商事と日本郵船の合弁会社のJapan LNG Investment、三井物産、TotalEnergiesが参画しているLNG輸出プロジェクト。

当初はフランスガス公社(GDF)と旧Suez の合併によるGDF SUEZが参加していた。GDF SUEZは2015年4月にENGIEに改称したが、ENGIEは2018年7月にこの権益を含むLNGの上流・中流事業をフランスのTotalに売却した。


<候補地>

本詳細検討で合成メタン製造の候補地としているテキサス州およびルイジアナ州は、

①現在から将来にわたり豊富な再エネ電力の調達が期待できることに加え、
②三菱商事が事業参画するキャメロンLNG基地があり、天然ガスパイプライン網等の既存LNGサプライチェーンの活用が可能。
③さらには、既存の二酸化炭素(CO2)や水素のパイプラインが活用できる可能性もある。



日程

今後、本詳細検討の候補地において、再エネ・水・水素・CO2といった原料調達、合成メタン製造プラントの土地確保等に関する現地調査に着手
2023年度末に事業コンセプトを決定
2024年の基本設計(FEED)、2025年の投資意思決定、2029年の合成メタンの生産開始、2030年の日本への輸出開始を目指す。

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