2011年9月アーカイブ

インドのPVCメーカー Sanmar Groupのエジプト子会社のTCI Sanmar(旧称 Trust Chemical Industries)はエジプトのSouth Port Said で年産275千トンの苛性ソーダと400千トンのPVCを新増設する。

現在のTCI Sanmarの能力は苛性ソーダ275千トン、塩素 235千トン、VCM 400千トン、PVC 200千トンで、VCMの自消分の残り200千トンはインドの200千トンPVCプラントに送っている。

駐エジプトのインド大使によると、建設費は13億ドルという。
エジプトは1月25日の革命後、多くの企業の投資対象となっており、インドの化学企業も何社かがエジプトの投資を拡大しようとしているという。

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Sanmar Groupはインドで塩ビ・塩ビ管事業と鋳造事業を中心に事業の拡大を図ってきた。

 

インドの塩ビ事業担当のChemplast Sanmarは、PVC事業を年産6千トンからスタートし、30年かけて65千トンに増やした。

1990年代後半にPVCプラントの新設を検討したが、原料問題で難航していた。当時はアルコールを原料にしていたが、価格の変動が激しかった。
2003年に政府はgasohol 計画を打ち出し、アルコール需要が急増したため、同社は原料のエチレンへの転換を決めた。

 アルコール原料のPVCなど聞いたこともなかったが、調べると「PVC - World Markets and Prospects (G. Pritchard)」に以下の記載がある。
   Chemplast in India makes VCM from biomass via alcohol instead of ethylene.

 その頃、クロルアルカリメーカーのKothari Petrochemicalが経営悪化で事業を売りに出したため、Chemplast Sanmarはこれを買収し、輸入エチレンでEDCの生産を始めた。この時点でPVCの原料の75%を自給していた。

2006年にCuddalore で年産20万トンの購入VCMベースのPVCプラントの建設を開始した。
現在のこのプラントの実能力は17万トンで、これによりインドでの合計能力は235千トンとなり、Relianceに次ぐインド2位のメーカーとなった。 

Reliance Industries は1990年12月に Hazira Petrochemical ComplexでBF Goodrich 技術で16万トンプラントを建設、その後、順次増設して、現在の能力は30万トンとなっている。

しかし、購入VCMベースでは採算がよくなく、原料問題が苦痛の種であった。

ここでエジプトでイオン交換膜で苛性ソーダ、塩素、水素を製造するTrust Chemical Industries の売却話が浮上した。
1年前に生産を開始したばかりで、苛性ソーダ能力は20万トンである。
エジプトは製造コストが安く、インドのPVC用の原料製造に最適である。

Sanmar Groupは2007年3月に275百万ドルで同社を買収し、TCI Sanmarと改称するとともに、850百万ドルを投じてVCMとPVCプラントの建設を始めた。

また、買収と同時に、Solvinが2005年12月に停止したドイツLudwigshafenの年産18万トンのPVCプラントと16万トンのVCMプラントを購入し、Port Saidに移設した。

現在のTCI Sanmarの能力は苛性ソーダ275千トン、塩素 235千トン、VCM 400千トン、PVC 200千トンで、VCMの自消分の残り200千トンはインドのCuddalore の200千トンPVCプラントに送っている。

工場がスエズ運河の入り口からわずか3kmの地中海沿いにあり、製品の輸送に最適であることから、TCI SanmarでのPVC増設が検討されていた。

 

 

李明博大統領は9月19日、「政府は来年、幹細胞(Stem Cell) 関連研究に1000億ウォン(約70億円)ほど投資する計画で、グローバルスタンダードに合うよう各種臨床・許可手続きを簡素化する制度をつくる」と述べた。
大統領は、「国家幹細胞バンク」の設立を推進していることを明らかにした。

大統領は「10年ほど前まで韓国は米国とともに世界の幹細胞研究をリードしたが、残念な事件(黄禹錫博士の論文ねつ造事件)で打撃が避けられなかった」とし「最近、心筋梗塞治療剤が公式許可され、世界で初めて幹細胞治療剤の商業化に成功した」と述べ、「幹細胞強国として再起しなければいけない」と強調した。

黄禹錫元ソウル大獣医部教授はヒトの胚性幹細胞(ES細胞)の研究を世界に先駆け成功させたと報じられ、韓国人で自然科学部門では初のノーベル賞を期待され、「韓国の誇り」と称された。

しかし、教授は2004-05年に、サイエンス誌に胚性幹細胞(ES細胞)研究過程で実用化の可能性を膨らませた捏造論文を発表し、企業から約28億ウォン(約2億円)の研究費を受け取り、卵子を不法に売買した容疑で2006年5月に在宅起訴された。

控訴審は2010年12月に被告に対し、懲役1年6月、執行猶予2年を言い渡した。

大統領が述べたのは、倫理上と拒絶反応の問題のある胚性幹細胞(ES細胞)ではなく、成人の臍帯・骨髄・脂肪・口内粘膜などから幹細胞を抽出して治療剤とするもので、本年7月に韓国のFCB-Pharmicellの心筋梗塞幹細胞治療剤(Hearicellgram-AMI)が世界で初めて市販許可を受けた。

同社では、「今月に入って病院が10件を処方し、患者の骨髄から幹細胞を分離して培養している。2週間後に初めて患者の心臓筋肉に注入する予定」と説明した。1回の投与費用は1800万ウォンとされる。

FCB-Pharmicellはこの他にも幹細胞を利用した急性脳梗塞、慢性脊髄損傷の治療剤の開発を進めている。

韓国では現在、バイオ関連の5社が幹細胞を利用した14種の治療剤の開発を進めている。


FCB-Pharmicellは2002年に設立された。

同社の事業は3つ。
①幹細胞治療

以下を開発中

②幹細胞バンク
   
   ・成人幹細胞バンク
  ・
臍帯血バンク
   ・脂質細胞バンク(Lipocyte bank)

③その他(研究サービス・コンサルタント、製造受託、その他)

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韓国の新聞の社説には以下のものもある。

世界の幹細胞を巡る研究方向は、遺伝子を組み替え、すでに分化した体細胞から幹細胞を誘導する誘導万能幹細胞(iPS)に変わっているが、我々はいまだ、倫理を巡る議論の余地のある胚性幹細胞や市場の限られた成体幹細胞の研究に止まっている。

日本のハイテク企業が韓国に生産拠点や研究所を相次いで設置している。

地理的に日本と近く、人件費、電気料金、税金などのコストが日本より割安なことが理由だ。

東レは本年6月に、韓国・慶尚北道の亀尾国家産業団地で炭素繊維工場の起工式を行ったが、日覚昭広社長は「日本では電気料金がどれだけ上がるか分からないので、積極的に韓国への投資を増やすことにした」と説明した。

    エネ庁  電気料金 国際比較
      

朝鮮日報によると、2010年の韓国の家庭用電気料金は、kwh当たり0.083ドルで、OECD加盟国の平均0.156ドルのおよそ半分。商業用の電気料金は0.058ドルで、日本の0.154ドルに比べおよそ3分の1。

2001年以降、灯油価格は125.7%、軽油価格は172.2%上昇した。(都市ガスは52.5%)
しかし、電気代だけはわずか8.8%の上昇にとどまっている。(2011/6基準)

しかし、韓国の電力事情は複雑で、今後、停電の恐れ、電気料金値上げの可能性がある。

韓国の全国各地で9月15日午後3時ごろ、大規模な停電が相次ぎ発生した。首都ソウルや釜山、光州などの大都市、ソウル近郊の京畿道や仁川、全羅北道をはじめとする地方都市など約162万戸に影響が出た。

韓国知識経済省と韓国電力によると、停電の原因は想定外の残暑。南東部の大邱では34℃を超すなど、平年より5℃以上高い残暑に見舞われた。

この日の電力需要を6400万kwと想定していたが、気温が上がり需要は6726万kwに急上昇した。余裕電力が5%を下回ったため、全面停電を避ける措置として、地域ごとに循環する計画停電を実施したという。

当時の予備電力は韓国電力公社側が説明していた343万kwを大きく下回る24万kwにすぎなかったことが分かった。供給予備率でみると、わずか0.36%で、ブラックアウトになる寸前だったことを意味しており、ずさんな供給体制が改めて浮き彫りになった。

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韓国の電気代が安い第一の理由は、発電単価の安い石炭と原子力で発電電力量の約8割をまかない、かつ韓国の寒冷な気候のため日本と比べて原子力の設備利用率が高い(95%以上)ことである。

原子力発電所の発電容量は合計1.75ギガワットを超え、韓国の総電力消費量のうち45%を占める。

これに加えて、韓国の電気料金は「政策的料金」という位置づけのもと、料金をコスト以下に設定している。
電気料金が原価割れしている国は、OECD加盟国のうち韓国だけである。


 

韓国の新聞各紙は、このままでは誰もが油ではなく、電気を使うようになるのは当然のことだとし、以下のような状況を報告している。

・釜山市の子城台コンテナ埠頭は2008年、コンテナ運搬用クレーンの燃料を軽油から電気に変更した。

・忠清北道陰城のイチゴのハウス栽培業者は昨年春にハウスのボイラーを重油式から電気式に交換した。

・停電の翌日にソウル市内では、多くの店がエアコンの温度を下げ、ドアを開けたまま営業していた。

・昨年の冬、暖房用の電気温風器や電気ストーブは760万台売れた。
 新しい高級マンションでは最初からガスコンロではなく IHクッキングヒーターが設置されている。

・電気使用量 
  2001年 285,200GWh
  2010年 474,600GWh

韓国の電気料金は、家庭用・一般用(商業用)・産業用・教育用・農業用・街灯・深夜用という7つの料金体系に分けられている。家庭用・商業用に比べほかの分野の電気料金を安くして、恩恵を与える構造になっている。

韓国政府は1960‐70年代から、企業の原価負担を減らして国内の物価を安定させ、輸出競争力を強化する目的で、産業用電気料金をほかの用途(家庭用・商業用)に比べ安くしてきた。

昨年基準で見ると、産業用電気料金は1kw当たり4.99円で、家庭用は7.81円。

最近は、安い産業用電気料金の恩恵が少数の大企業に集中していると指摘されている。

サムスン電子や現代自動車など大企業30社が、電気の生産コスト相当の料金を払うとしたら、最近3年間で追加で支払うべき金額は1924億円にもなる。

ポスコが昨年納付した電気料金は168億円だったが、日本の電気料金制度なら447億円を支払わなければならない計算になる。

産業用電気料金を国際比較すると、韓国企業はかなり恩恵を受けており、電気を多く使う大企業ほどその恩恵が大きい。

付記 

9月30日付の朝鮮日報も「GDPを1ドル増やすのに日本の2倍電力を要する韓国・・・・電力の無駄遣いを減らせ」との記事を掲載した。

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韓国でも電力産業について2001年に「市場原理導入」「民営化」の方向がいったん決まり、国有の韓国電力公社の民営化が決まり、さらに同公社の発電部門が分社化された。

送電・配電・変電事業を担当して電力販売を事実上独占する韓国電力が、5つの火力発電会社と1つの原子力・水力発電会社から電力を購入して販売するようになっている。

しかし、合理化を恐れる電力関連企業の労組の反発を受け、民営化・自由化計画は、中途半端のまま、「先送り」の状態になっている。

韓国電力は政府が51%出資する半国営会社で、5つの火力発電会社と韓国水力原子力会社(KHNPはいずれも韓国電力の子会社のままである。

電気料金は事実上政府が決めており、産業用電気料金については、輸出の拡大という大義名分の下で低料金が容認されてきた。

この結果、韓国電力は2008年に2800億円の営業赤字を記録し、公的資金による約500億円の補填を受けた。
2009年には営業赤字は440億円にまで縮小したが、2010年は1375億円に再び急増した。

2007年末に2.9兆円だった負債額は、2010年末に4.5兆円に急増している。

2008年8月に韓国電力の社長として、LG電子のCEOであった金双秀氏が22人の公募候補の中から「韓国電力の改革をできる切り札」として起用されたが、赤字の責任を取り、わずか1期3年の任期満了に伴い退任した。

韓国の経済界では、「今の構造では誰がやっても巨額の赤字は避けられない」として、金社長の留任を求める根強い声があったという。

停電の際には社長が不在で、後任の金重謙氏(現代建設CEO)の就任は停電の翌日であった。

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電気料金が発電にかかる費用以下の低価格に抑えられているため、電気の無駄遣いをあおり、長期的には韓国のエネルギー需給に大きなひずみをもたらしている。

停電騒動も、低価格の電気料金が電気機器の急増をもたらし、それによって電力消費の急増と供給不足という悪循環によって発生したもので、上述の通り、本来なら軽油やガソリン、重油などを使用すべき状況でも、あえて電気を使うケースが相次いでいる。

さらに大きな問題は、軽油や石炭を利用して作られた電力の効率は、軽油や石炭を使用した場合のわずか半分にとどまっているという点で、安く電気を使うことで、電気以外のエネルギーが2倍以上も浪費されているわけだ。

また、韓国の大企業は、すでに安い電気料金に頼らなくてもよいほど成長している。

エネルギー経済研究院では、「メンテナンス費用まで考えると、電気料金を最低でも生産原価の105%までは引き上げなければならない。物価の問題を考慮しても、原価の100%ほどまではすぐにでも引き上げるべきだ」と主張する。

電気料金が10%上がれば、年間の電力消費は4%ほど減る。
年間190億kwで、金額では970億円の節約になり、100万kw規模の原発用原子炉2.5基分をストップさせることができる計算になる。

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電力の供給予備率は15‐17%が適正水準とされるが、韓国では2003年の18%をピークに低下を続け、昨年は6.7%、今年は 4.1%となった。
昨年末、知識経済部が発表した第5次長期電力需給計画案では、これまでの電力需要の伸びがこのまま続くと仮定した場合、供給予備率が2012年には 4.8%、13年には3.7%に低下する。

電力供給が不足するのは、電力需要の予測がでたらめだったことに加え、発電所の建設が計画通りに進まなかったり、計画が中止されたため。

2006年に韓国政府が発表した第3次電力需給基本計画(2006‐20年)は、今年の最大電力需要を6594万キロワットに設定した。しかし、今年の最大需要は7313万キロワットだった。これは、20年時点の需要予測(7180万キロワット)よりも多い。

第3次電力需給基本計画に盛り込まれた発電所建設事業のうち、建設が遅延しているか中止された事業は716万キロワット規模に上る。

このままでは、今後数年は大停電のリスクがあるとみられている。
発電所建設には時間がかかるため、電力料値上げによる需要抑制が行われる可能性が大きい。

トヨタグループの豊田中央研究所は9月20日、太陽光エネルギーを利用し、水とCO2のみを原料にして有機物を合成する人工光合成の実証に、世界で初めて成功したと発表した。

人工光合成の実現に対する関心が高くなっているが、従来の技術では、以下のような何らかの付加的要素が必要で、水とCO2と太陽光だけで有機物を合成することは困難とされていた。

 ・ 犠牲薬と呼ばれる酸化剤や還元剤を添加する
    H2O + CH3OH → 3H2 + CO2
    H2O + 硫黄化合物→ H2 + S, SO42-

 ・ 太陽光には含まれない波長域の紫外線を利用する

太陽光にも含まれていない300nm以下の紫外線で、量子収率が50%を超える光触媒も見つかっているが、可視光では非常に難しく、長年成功していなかった。
産総研では2種類の光触媒をヨウ化ナトリウムの水溶液に混合して懸濁し、可視光を照射するシステムを構築した。

 ・ 外部から電気エネルギーを加える

今回開発した技術は、
①水から電子を抽出する酸化反応と、
②抽出した電子でCO2 を還元して有機物を合成する還元反応
の二つの反応を組み合わせ、それを光エネルギーで促進させる。


研究チームは、リン化インジウムの半導体にルテニウムなどを塗布した新しいコンセプトのCO2還元光触媒を開発した。


水から電子を抽出し、光を吸収する半導体で太陽光を受けて抽出した電子を活性化させ、希少金属の一種を触媒に使って、その電子とCO2から、「ギ酸」をつくる。

酸化チタン光触媒とこの触媒をプロトン交換膜を介して組み合わせることで、太陽光を利用して有機物であるギ酸を合成できることを実証した。

今回は原理の実証を行った段階で、太陽光エネルギー変換効率は現在0.04%であり、これは一般的な植物の光合成効率の1/5 程度。

研究チームは今後、植物を越える効率の実現と、メタノールなどのより付加価値の高い有機物の合成技術の実現に取組む予定。

本成果は9月7日付Journal of the American Chemical Society 電子版に掲載された。


エジプトのスエズ湾に面したAin Sokhnaで大規模な石油化学計画が進められている。

エジプトの私企業のCarbon Holdings社がエチレン・PE計画と、メタノール・アンモニア・硫安計画を並行して進めている。
メタノール・アンモニア計画は三菱商事と千代田化工のJVが担当する。


(エチレン・PE計画)

Carbon Holdingsは2010年10月、Foster Wheeler USA Corp. との間でポリエチレン設備建設のコンサルタント契約を締結した。

Unipol法PE技術を導入し、45万トン3系列(1系列はHDPE、2系列はLLDPE/HDPEのスイング)の合計135万トンのプラントを建設、2015年のスタートを目指している。

原料エチレンについては、2009年にUS Trade and Development Agencyが、Carbon Holdingsの子会社のEgypt Hydrocarbon Corporationのナフサ分解コンプレックス建設のFSに264千ドルの補助金を出した。

ナフサ分解で、エチレン90万トンとプロピレン40万トンを生産、エチレンはPEの生産に使用、プロピレンはOriental Petrochemicals CompanyのPP用に供給する計画であった。

Oriental Petrochemicals はエジプト唯一のPPメーカーで、2001年にSuezで第一期としてUNIPOL法で16万トンの生産を開始している。

この計画は取り止めになった模様で、Carbon Holdingsは本年9月20日、韓国のSK Engineering & Construction と米国のShaw Group Inc.の合弁会社との間で、年産135万トンのエチレンコンプレックスをAin Sokhnaに建設する契約を締結した。

建設費は約32億ドルで、2012年に建設開始、2016年に完成の予定。

これにより、Carbon Holdingsはエチレン 135万トン、PE 135万トン(45万トンx 3系列)を建設することとなる。
(言及はないがナフサ分解と思われ、プロピレンについては外販するものと考えられる。)


(メタノール・アンモニア・硫安計画)

日本での発表はないが、三菱商事と千代田化工が合弁でEgypt Japan Petrochemical Corporation (EJPC)を設立している。

三菱商事は2010年3月に千代田化工建設の608億円の第三者割当増資を引き受け、同社への出資比率を10.3%から33.4%と引き上げて、持ち分法適用会社と した。

EJPCがAin Sohknaでメタノールとアンモニアを生産し、Carbon Holdingsの子会社のEgypt Hydrocarbon Corporationが硫酸と硫安を生産する計画を進めている。

メタノール能力は2系列合計日量6000トン(年産2040千トンで世界最大)で、副産物として日量2000トンのアンモニアを生産する。
2012年に建設を開始し、2015年央に建設完了の予定。
総投資額は25億ドルとされる。

EJPCは2011年3月、Johnson Mattheyの100%子会社のDavy Process Technology との間でMethanol Operating Licence Agreementを締結した。
Davy Process が天然ガスの熱改質によるメタノール製造の技術供与と基礎設計を行い、詳細設計と購買は千代田化工が行う。
水素リッチのパージガスからアンモニアを製造するが、これについてはUhdeが技術供与する。

メタノールは三菱商事が日本を含む世界市場で販売、アンモニアは硫安プラントに供給する。

Egypt Hydrocarbonの硫酸能力は日量925トン、硫安は日量1060トンで、2011年に建設を開始、2013年スタートの予定。

Egypt Hydrocarbon は2010年12月に、本計画のために298百万ドルの借入契約を締結した。
Uhde との間でライセンス契約と設計・購買・建設契約を締結した。

EJPCのプラント完成までの間はTransammonia 社から原料アンモニアの供給を受ける。

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これとは別に、世界最大のメタノールメーカーのMethanexはDamietta(上の地図のディムヤート)で年産130万トンのメタノールプラントを建設している。

Methanex のメタノール能力は以下の通り。(千トン)

工場 能力  備考
Canada Kitimat     0 2005/11停止
Trinidad Point Lisas   850  
Atlas Methanol  1,700 BP 36.9%/Methanex 63.1%
Chile Cabo Negro  3,800 4 plants
New Zealand Motunui and Waitara Valley  2,400 2 plants
合計    8,750  
建設中
Egypt

Damietta

 1,300
Methanex 60%
エジプト政府機関 33%
Arab Petroleum Investment  7%
再計   10,050  

 

対抗する三菱ガス化学のメタノール事業は以下の通り。(単位:千トン)

場所 現能力  計 画
中国重慶    850
 → 0
MGC 51%/重慶化医49%
2009/10/13 三菱ガス化学、重慶のメタノール計画撤回
ベネズエラ  1,600   2006/12/27 「三菱ガス化学、ベネズエラのメタノール合弁増設 2010年850千トン稼働
ブルネイ 850    2007/4/23 三菱ガス化学、ブルネイのメタノール事業決定 2010年850千トン稼働
サウジ  5,000   2006/3/31 サウジ・メタノール計画 2008年1700千トン稼働
合計  7,450     0 総計 7,450千トン 


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エジプトでは石油化学の振興のため、2002年1月に法令に基づき Egyptian Petrochemicals Holding Company (ECHEM)が設立された。

ECHEM傘下に以下の企業がある。

  立地 製品
Egyptian Petrochemicals Amreya
(Alexandria近郊)
PVC Resin            80 千トン
PVC Compounds        30 千トン
Caustic Soda (liquid, Flakes)   72 千トン
Sidi Kerir Petrochemicals 同上 Ethylene             300 千トン
                                      (倍増計画あり)
HDPE & LLPE                    225 千トン
Butane -1                                  10 千トン
Amreya Petroleum Refining 同上 Linear Alkyl Benzene (LAB)      50 千トン
Heavy Alkyl Benzene (HAB)        3 千トン
Egyptian Linear Alkyl Benzene El-Max
(Alexandria近郊)
Linear Alkyl Benzene (LAB)     100 千トン
Heavy Alkyl Benzene (HAB)      6.5 千トン
Misr Fertilizers Production Damietta Ammonia                              日量 1200 トン
Urea                                  日量 1925 トン
Urea Granulation             日量 2000トン

ブラジルの鉄鋼大手CSN (Companhia Siderurgica Nacional SA) は、同業のウジミナス (Usinas Siderurgicas de Minas Gerais SA) の株主2社に対し、ウジミナスの議決権株式26%分の買い取りを正式に提案した。

地元紙の報道では、CSNのCEOが、ウジミナス株主の
VotorantimとCamargo Correa Group社に総額で約29億ドルで株式の買い取りを提案したという。

CSNは1969年設立で、生産能力は年間560万トンに達し、粗鋼のみならず、鉄板、亜鉛めっき、スズの生産も行っている。
CSNは自らの鉄鉱石鉱山NAMISAを保有しており、2008年に日韓企業連合がこれに参加している。

ウジミナスは、両社と新日本製鉄グループ、ウジミナス従業員年金基金が株主間協定(下記)を締結して共同で経営しており、両社が保有株を売却する場合、新日鉄に先買権がある。

CSNは8月末に、市場で同社株を購入し、現在、ウジミナスの普通株11.29%、優先株15.1%を保有していると発表した。

本件に関して、ブラジル政府の競争監視担当の法務省経済法制局が、事実関係の報告を求めていることが明らかになった。

CSNは市場で11%強(議決権ベース)のウジミナス株を取得済みで、同局はCSNがウジミナスに対して影響力を行使できる立場にあると判断。「両社合わせた国内シェアが一部鉄鋼製品で70%に達する」と指摘し、報告と審査が必要としている。

新日鉄では、事業戦略の違いなどにより、ナミザ鉄鉱山の経営でCSNとの提携を解消しているとしており、CSNと共同で事業を行う可能性は少ない。

また、新日鉄がブラジル最大の製鉄会社Gerdau S.A.とこの提案を阻止するため協議を進めていることが分かった。

新日鉄が株式先買権を行使した場合、購入株の一部をGerdau S.Aに転売するとされている。

Gerdau S.Aは、ブラジルの鉄鋼メーカーで、南北アメリカ各地に生産拠点をもち、ブラジルのほかアルゼンチン、カナダ、チリ、コロンビア、ドミニカ共和国、グアテマラ、メキシコ、ペルー、アメリカ、ウルグアイ、ベネズエラ、スペインなどにも工場を持つ。
2007年の粗鋼生産量は約1860万トン。

 

付記

新日鉄は11月28日、協定株購入に関する契約および同社に関する新たな株主間協定を締結したと発表した。

1) 新日鉄が、ウジミナスの従業員年金基金から、全議決権の約1.69%相当を購入。
2) 中南米を拠点とする大手鉄鋼会社Ternium Groupが、VotorantimとCamargo Correa及び従業員年金基金から
全議決権の約27.66%相当を22億ドルで購入。
3) 新日鉄グループ(新日鉄、日本ウジミナス、三菱商事グループ)、テルニウム・グループ、従業員年金基金の間で、  新たな株主間協定を締結。

  * テルニウム・グループ
     Ternium Investments S.à r.l.社(ルクセンブルグの投資会社)、Confab 社(ブラジルの鋼管・機器製造会社)、
       Siderar 社(アルゼンチン鉄鋼会社)およびProsid 社(ウルグアイの投資会社)

付記

CSNはその後の買い増しで議決権株の16%とした。

ブラジル司法省は、ウジミナス株の16%を保有する同業のナショナル製鉄(CSN)に対して、ウジミナス株の買い増しを禁止する通達を出した。一部製品での両社のシェアは7割を超えており、寡占状態を防ぐための措置との見方が多い。

買い増し禁止は普通株に加え優先株も対象。司法省はCSNがウジミナスの取締役や監査役を任命する権利も制限した。
鋼板の販売価格など経営情報にアクセスすることも禁じた。違反には1000万レアル(約4億4000万円)の罰金が科される。
 

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ウジミナスについて

1956年4月、ブラジル政府より日本政府に一貫製鉄所建設協力の申し入れがあり、1957年6月に協定が調印された。

同年12月、日本側投資会社として日本ウジミナスが設立され、1958年1月にウジミナスが設立された。
 (当時の八幡・富士鉄が日本ウジミナスに合計 30.1%を出資、日本ウジミナスはウジミナスに40%を出資)

以来、新日鉄は製鉄所建設に尽力し、1962年10月の第一高炉火入れ以降も、継続的に一貫操業指導契約を締結し、実行してきた。

1999年6月には、新日鉄とウジミナスとの間で溶融亜鉛めっき鋼板合弁事業「UNIGAL社」を設立した。

2006年12月に新日鉄は日本ウジミナスの株式を追加取得し、出資比率50.9%で子会社化し、ウジミナスは新日鉄の持分法適用関連会社となった。

ウジミナスの現在の株主は以下の通り。

  現協定(~2016年11月) 新協定(2016年11月~) 付記
改正新協定
議決権 普通株+
 優先株
協定内 議決権 協定内 議決権 協定内
当社・日本ウジミナス社 26.14   40.93 26.1 48.6 27.83 43.57
三菱商事・メタルワン
                   (商事・双日)
1.62   2.54 1.6 3.0 1.62 2.54
日本グループ合計 27.76 13.8 43.47 27.8 51.7 29.45 46.12
Votorantim 13.0   20.3 13.0 24.2    
Camargo Correa Group 13.0   20.3 13.0 24.2    
V/Cグループ合計 25.97 12.9 40.67 26.0 48.3 0 0
ウジミナス社年金基金 10.13 5.0 15.86 - - 6.75 10.57
Ternium Group           27.66 43.31
協定株主計 63.86   100.00 53.7 100.0 63.86 100.00
Previ 10.4 5.9          
一般株主(株式市場)
 (うち CSN)
25.7
(11.29)  
50.2
 
         

 

ブラジルでは、上場会社の議決権の過半を有する株主が、会社の意思決定、株式譲渡等につき協定を締結することができ、ブラジル証券取引所にも登録される。

協定株主は、議決権株式の過半数を確保した上で、株主総会・経営審議会(日本の取締役会)において議決権を統一的に行使することを取り決めており、協定株主間の合意は、会社の意思決定事項となる。

2006年11月に日本グループ、V/Cグループとウジミナス社年金基金が株主協定を締結した。
2011年2月に年金基金を除外して新協定を締結した。

ウジミナスはミナスジェライス州イパチンガ市とサンパウロ州クバタン市 (コジッパ社)に製鉄所を持つ。

2008年の粗鋼生産量は8百万トンで、ブラジルの鉄鋼メーカーの中ではGerdau に次ぐ第2位。

粗鋼生産量のシェアはブラジル国内では23.8%(2008年)。厚板や熱延・冷延薄板などの鋼板を製造する。

1999年にウジミナス 70%、新日鉄 30%出資で溶融亜鉛めっき鋼板製造のUNIGAL Ltdaを設立している。

2010年に高級厚板製造設備が稼働し、本年はウニガル社の第2メンキ鋼板設備、新連続熱延設備等が稼働予定となつている。

ーーー

日韓企業連合の日伯鉄鉱石(新日鐵・JFEスチール・住友金属工業・神戸製鋼所・日新製鋼、伊藤忠商事、韓国鉄鋼最大手POSCO)は2008年10月、CSNの100%子会社の鉄鉱石生産・販売会社であるNAMISA社に資本参加し、同社株式の40%を取得することで合意した。
日韓共同事業体の投資額は3,120百万ドル。

鉄鉱山はミナス・ジェライス州(鉄四角地帯)にあり、2009年の予定販売数量は1800万トン、拡張を経て2013年の販売数量を3,800万トンまで拡大する予定。

その後、2011年6月に新日鉄が日伯鉄鉱石から撤退、住友金属工業も出資比率を引き下げた。

  当初   2011/6
伊藤忠 40.00 56.12
JFEスチール 16.20 21.60
新日本製鉄 16.20 0
住友金属工業 6.57 1.25
神戸製鋼所 3.08 3.08
日新製鋼 1.75 1.75
韓国POSCO 16.20 16.20
合計 100.00 100.00
 

 

住友商事は2010年末、米国のMountain Pass鉱山の再開を準備中のMolycorp, Inc に投融資することを決めた。
Molycorp
Mountain Pass鉱山の生産を年内にも一部再開し、2012年末までには新精製設備を完成させ、約2万トンを生産する計画で、住商からの資金はこのための投資に使用するもの。

構想は以下の通りであった。
2011年
2月に、Molycorpの普通株を100百万ドル購入、別途、30百万ドルを低利で融資し、2017年まで希土類の供給を受ける長期契約を結ぶ。
住友商事は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
に資金援助を求める。

Molycorp 住友商事に既存の設備から年に2,500トンのセリウムとランタン、250トンの酸化ジジミウム(ネオジムとプラセオジムの混合物)を供給し、新しい最新鋭の精製設備完成後は年3,000トンのセリウムとランタン、250トンの酸化ジジミウムを供給する。  

2010/12/14 豊田通商、インドでレアアース製造工場建設、住商は米マウンテン・パス鉱山に出資 

その後、住友商事は出資を50百万ドルずつ2回に分割するとともに、レアアースの価格の値引きを求めていた。

Molycorpは9月16日、住友商事との間で上記の交渉を打ち切ることで合意したと発表した。

Mountain Pass鉱山の拡張・近代化のための781百万ドルの資金が増資や売上収入で完全に確保でき、住友商事の出資融資が必要ではなくなったとし、当初交渉した時と状況が著しく変わり、両社の株主にとり価値のある取引ではなくなったため、交渉打ち切りを決めたとしている。

製品購入契約も取りやめとなる。値引き交渉で折り合いが付かなかったとみられる。

ーーー

Molycorpは6月16日、鉱山の拡張・近代化計画(Project Phoenix)のための 781百万ドルの最後の資金を確保したと発表した。
2016年満期の230百万ドルの転換社債(利率3.25%)の発行が完了した。

同社は11500千株(586.5百万ドル)の増資も行っている。

これにより、レアアースメタルやネオジム・鉄・ホウ素(NdFeB)合金、サマリウム‐コバルト合金など下流製品の生産も可能となり、'Mine-to-Magnets' 計画達成に近づく。

同社では来年の第一期完成時にはMountain Pass設備は世界初の統合レアアースサプライチェーンとなり、輸送、ハイテク、クリーンエネルギー、防衛、その他産業に広く使用されるレアアース酸化物、メタル、アロイ、ネオジム・鉄・ホウ素(NdFeB) 永久磁石などを供給するとしている。

来年初めには10種の高純度レアアース酸化物(軽希土類と重希土類)と下流製品の生産量を著しく増やすとしている。

ーーー

Molycorpは本年4月、エストニアのレアアース加工会社 Silmet の経営権を約89百万ドルで取得した。

Silmet は欧州で2つあるレアアース加工施設の1つで、レアアースを年最大で3000トン、レアメタルを同700トン加工している。
Molycorpはこれにより、欧州への足がかりを得るとともに、生産能力が倍増する。

Molycorpはまた、本年4月に、日本の希土類合金大手、三徳の米国アリゾナ州の子会社Santoku America, Incを現金1750万ドルで買収したと発表した。

Santoku Americaは、高純度レアアース金属・合金を生産しており、買収によりMol.ycorpは原料鉱石から希土類合金まで一貫生産できる体制を整えた。

三徳がレア・アース分野に乗り出したのは世界の先進国がほぼ時を同じくして新材料の可能性を求め、動きはじめた1948年で、三徳は、原料から高純度化合物、各種合金まで一貫生産するレア・アース総合メーカーとして世界をリードする存在に成長した。

世界で初めてレア・アースの溶融塩電解並びにレア・アース急冷合金の量産化に成功したことを始めとし、独自に製造プロセスのノウハウを積み重ねる事で、特に合金組織制御技術を磨いてきた。

製造品目は、ネオジム磁石合金、サマリウム磁石合金、水素吸蔵合金、負極コイル、マグネシウム・リチウム合金、その他。

ーーー

Molycorpは8月12日、日立金属との間でレアアース磁石材料(ジジミウムメタルとアロイ、ランタン酸化物を含む)の長期供給契約を締結したと発表した。
既存の契約を延長・拡大する3カ年契約で、生産量の拡大に合わせ、供給量を大幅に増やす。

しかし、これとは別に、両社は2010年に覚書を締結したネオジム・鉄・ホウ素(NdFeB)合金や永久磁石を製造するJVの設立交渉を打ち切ることで合意した。

日立金属は2010年12月、Molycorpとの間で、ネオジム磁石用合金とネオジム磁石を生産する2つの合弁会社の設立に向けて検討を開始することに合意したと発表した。
この合弁会社の設立により、日立金属とMolycorpは、米国内における鉱山からマグネットまでのサプライチェーン(
"Mine-to-Magnets" を構築し、HEV・EV、風力発電、産業用モーター向け磁石の拡大する需要に着実に対応することを目指す。
2010年12月に合弁会社設立に向けたフィージビリティスタディーを開始、2011年第1四半期に合弁会社の設立を合意する予定。

両社はJVの価値に関係する重要な事項について合意に達しなかったとしている。

Molycorp は日立金属以外の企業とJVの協議を行っていることを明らかにしている。

付記

日立金属は12月21日、米国のフェライト磁石生産拠点であるHitachi Metals North Carolinaに、ハイブリッド自動車、電気自動車向けネオジム磁石の工場を単独で新設すると発表した。2013年4月の量産開始を目指す。

 

 

 

 

バージニア州Richmondの連邦裁判所の陪審は9月14日、韓国のKolonに対し、DuPontのアラミド繊維(Kevlar)に関する商業秘密と秘密資料を盗んだとして、919.9百万ドルの損害賠償を支払うよう命じた。

DuPontは判決後、裁判長に対し、追加の懲罰賠償と裁判費用の支払い、Kolonの米国資産の凍結、DuPont技術の使用禁止の命令を求めた。これらは11月のヒアリングで審議される。 

付記

米地裁は11月22日、懲罰賠償として35万ドル、合計920.3百万ドルの支払いを命じた。
Kolonは控訴するとしている。

Kolonは、今回の判決は、DuPontによるアラミド繊維市場からのKolon追い出しの長年にわたるキャンペーンの結果であるとし、控訴するとしている。

ーーー

Kolonは1979年にアラミドの基礎研究を開始、1994年に完成させ、2005年末から商業生産を開始した。

DuPontとKolonは長期間争っている。

DuPont2007年に、同社を2006年初めに退職し、その後Kolonのために Aramid Fiber Systems LLCを設立した技術者の行動に疑念を持ち、FBIと商務省に懸念を伝え、共同で調査を続けた。

DuPont20092月にKolonを商業秘密盗用で訴えた。

KolonDuPont技術を密かに取得するため執拗に活動してきた。そのために以前のDuPontの従業員(複数)を採用し、また採用しようとしてきた」とし、「Kolonの製品のこの3年間の著しい改良はDuPont技術を違法に使用した結果である」と主張した。
問題の技術者は秘密情報を自宅のパソコンに入れており、これを
Kolonに渡したとされる。

逮捕された技術者は200912月に罪を認め、2010年3月に懲役18ヶ月の判決を受けた。

これに対し、KolonDuPont技術の盗用を否定、自社技術で生産していると反論していた。

Kolon 2010年7月、DuPontが米国の需要家にKolonのアラミドを購入しないよう、圧力をかけているとして、連邦裁判所に訴えた。

2010/8/7 韓国Kolon、アラミドの独禁法問題でDuPontを訴え

地裁はこれを認めず、またDuPontはKolonがKevlarに関する商業秘密を盗んだと主張したが、これも取り上げなかった。

米控訴裁判所は2011年3月、連邦地裁に差し戻した。

Kolonの主張するDuPontによるアラミド繊維市場の独占状況を連邦地裁では適切に考慮しなかったとした。
DuPontは米国のアラミド市場で完全なリーダーで、何年もの間、市場で唯一のメーカーであったし、現在米国のアラミド繊維の70%を販売していると述べた。

この結果、DuPontは独占について審査をされることとなるが、同時に差し戻し裁判で盗用問題が取り上げられることとなった。

DuPontの独占問題については2012年に再審議される。

ーーー

世界のアラミド繊維の状況は以下の通り。

  パラ系アラミド メタ系アラミド 2009年生産量
(新聞情報)
poly-p-phenylene-
terephthalamide
左に
ジアミノフェニレン-
テラフタルアミドを共重合
poly-m-phenylene-
isophthalamide
DuPont Kevlar®   Nomex® 28,000 t 
帝人    Twaron®
(オランダで生産)
テクノーラ®
 
コーネックス®
 
25,000 t 
Kolon Heracron®          2,000 t   
5,000tへの増設計画)


DuPontは日本では
東レ・デュポンで製造販売。

帝人Twaron
Courtauldsの繊維部門Enkaが開発した。DuPontとの特許紛争は1988和解。 

1987年に住友化学とEnkaが日本アラミドを設立した。
1998年にAkzoNobel Courtauldsを買収EnkaCourtaulds繊維、化学部門を統合してAcordis設立した。
Acordis1999CVC Capitalが買収)

2001年に帝人Acordisのアラミド事業を買収(日本アラミドも)。

韓国石油公社などが参加する韓国コンソーシアムは2008年2月、イラクの北部クルド自治区内の油田4つの鉱区Sangaw North、Sangaw South、Qush Tappa、Hawler)の開発とインフラ建設を並行して進める内容の覚書をクルド自治政府と締結した。

これに先立ち、コンソーシアムは2007年11月にクルド自治政府との間で5億バレル程度の原油埋蔵が予想されBazian 陸上探査鉱区の生産物分配契約を締結している。

コンソーシアムは石油公社 38%、SKエナジー 19%、デソン産業、三千里(サムチョンリ)ボムア資源開発(各 9.5%)、GSホールディングス、マジュコ通商(各 4.75%)、ユーアイエナジー(5%)などが構成している。

油田探査とは別に、双龍建設、斗山建設、極東建設などで構成された建設コンソーシアムは、2兆ウォン規模の4車線高速道路(450km)を建設する一方、上下水道施設、石油化学プラントなど、10兆ウォン規模の社会基盤施設建設にも参加する予定。

 2008/2/20 韓国エネルギーコンソーシアム、イラク油田開発

イラク政府は2009年に37年ぶりに油田権益を外資企業に開放したが、この中で、韓国の韓国石油公社とSKエナジーが除外された。

イラクのシャハリスタニ石油相は、イラク駐在の韓国大使に、「韓国石油公社やSKエナジーなどの韓国企業がクルド自治政府と締結した油田開発事業は、中央政府との協議を経ずに行われた違法なものだ。そのため両社は今後、イラクでの油田開発に関する入札に参加できない」と通知した。

2009/4/7 イラクの油田開放、クルド人自治政府と契約の韓国企業を除外

ーーー

試掘を開始した当時、これらの鉱区で期待されていた原油埋蔵量は合計72億2300万バレルで、韓国企業が入手できると見込んでいた持ち分は19億8500万バレルだった。

韓国石油公社は契約調印時にクルド自治政府に211.4百万ドルを支払い、掘削に188.68百万ドルを支出している。

しかし、今年8月までに行われた探査試掘の結果、これらの鉱区では原油が発見されておらず、発見されたとしても当初の推定埋蔵量を大幅に下回っているという。

 

  期待埋蔵量
 百万バレル
韓国取り分
 百万バレル
ボーリング 結果
Sangaw North 786 157 終了 水と少量の天然ガスのみ
Sangaw South 320 192 作業中
(地下3000‐4500m)
原油発見の可能性少ない
Qush Tappa 1,008 806 終了 事業性なし
Hawler 3,837 576 未実施 事業性なし
Bazian 1,272 254 終了 事業性なし(日量200バレル)


契約では、探査に成功した場合、韓国側は5つある鉱区から19.85億バレルの原油を受け取り、その見返りとして21億ドルとされるクルド地域での社会基盤整備を行うというものだった。

韓国石油公社はクルド地域の社会基盤整備に向け、現代建設や双竜建設など7社のゼネコンと共同でコンソーシアムを立ち上げたが、ゼネコン7社は2008年10月に、2兆ウォン(約1400億円)の資金を調達する方法がないという理由でコンソーシアムから脱退した。

その結果、石油公社は社会基盤整備を単独で行うことになったが、ノウハウも技術もないため、資金調達計画も取りまとめられることなく、事業は一向に進んでいない。

韓国石油公社は2008年の契約当時、5つの鉱区全てで原油が発見されなかった場合、6500万バレルの原油を見返りとして受け取るという条項を入れた。

しかしクルド自治政府は社会基盤整備事業が進展していないことを口実に譲渡する原油を2000万バレルにまで減らし、さらに社会基盤整備に関しても事業規模を7億ドルにまで縮小する代わりに、12億ドルの現金を支払うという内容へと契約の変更を求めてきたという。

石油公社は今年7月末から8月初めに行われたイラク政府による油田開発事業入札資格の事前審査で脱落していたことも分かった。

韓国の国会議員は以下のように批判している。

原油探査の失敗、社会基盤整備事業の縮小、イラク政府とのギクシャクした関係など、石油公社は数千億ウォンもの巨額を投じながら何一つ手にしていない。

今回の原油開発で政府と石油公社は、事業の妥当性を確認する前から、資源外交の成果を誇示することばかりに力を入れた。今回の失敗は、このような性急さがもたらした、まさに典型的なケースだ。

(ソース:朝鮮日報)

鹿島コンビナートの電解・塩化ビニルチェーン再構築の枠組みが固まったと報じられている。

旭硝子、ADEKA、カネカの3社が2012年3月末に鹿島電解、鹿島塩ビモノマーから撤退し、信越化学が3社の出資分を引き受ける。
鹿島電解、鹿島塩ビには三菱化学も出資しているが、これはコンビナート運営者としての参加であり、製品の引取は行っていないため、両社は実質的に信越化学の子会社となる。

日本のPVCとVCMの需給は以下の通り。(2010暦年:千トン)

  年末能力 生産 内需
PVC 2,115  1,642 78% 1,031 49%
VCM 3,541 2,935 83% 1,110 31%

VCMの内需は輸出PVC用を除いたもので、VCMの純国内用需要は能力比では31%に過ぎない。

鹿島コンビナートの電解・VCMも5-6割の低稼働が常態化しているとされ、製品引き取りはほぼ信越化学だけとなっているとされる。

このため3月の東日本大震災で止まった設備を復旧せず、能力を削減して稼働率を高める。
撤退する3社は設備縮小などには協力し、70億~100億円の費用を負担する。
また、これに合わせ、鹿島北共同発電の能力を削減する。 

カネカはVCMからの撤退で、鹿島のPVCも停止する。
   付記 VCMを高砂から送り、特殊品とペーストのみを生産するとの説もある。

 

両JVの状況は以下の通り。


 

ーーー

三菱油化は1964年に、四日市に次ぐ第2の工場立地として鹿島地区進出を決定した。

三菱油化は当初、エチレン15万トンを計画したが、これを修正して1966年に年産30万トン計画を通産省に提出、VCM、食塩電解、塩ビ樹脂およびアンモニアを企業化するために有力企業を誘致した。

翌年の1967年2月に石油化学協調懇談会は「エチレン製造設備の新設の場合の基準」を30万トン以上と決めた。

しかし、既存のポリエチレン等だけでは、30万トンのエチレンを充たすわけにはいかない。たまたま、VCMがこの問題解決のキイとなった。

日本では塩ビの製造にカーバイドアセチレン法が使用されていたが、1960年頃に電気の価格の上昇でカーバイドのコストが上がり、採算が苦しくなった。
その頃、EDC法が導入され、各社がこれを採用しようとした。

1966年12月に通産省は「塩化ビニルモノマーセンター構想」を発表した。
今後の塩化ビニルモノマー設備は石油化学方式を採用することとし,カーバイド・アセチレンを原料とする設備はできるだけ早く転換する。
立地は石油化学工業のエチレンセンター隣接地とし,規模は年産10万トン以上とする。
塩化ビニルモノマー計画は,塩化ビニル樹脂の裏づけがあるものとする。
塩素源の電解設備は塩素とか性ソーダのバランスがとれること


この結果、日本のPVCの原料が全てエチレンに切り替わることとなった。

塩化ビニルモノマーセンター計画  単位:千t/年
 (VCMのエチレン原単位は0.5)

地区 会社名 生産能力 完成時期 エチレンセンター 供給先
鹿島 鹿島塩ビモノマー   220 1970年8月 三菱・鹿島 信越化学、日信化学、鐘淵化学
千葉 千葉塩ビモノマー   160 1971年4月 住化・千葉 住友化学、群馬化学、チッソ、電気化学
川崎 セントラル化学    60 1970年4月 東燃・川崎 東亜合成化学
泉北 三井泉北石油化学   120 1970年3月 大阪石化・大阪 三井東圧化学
水島 水島有機   200 1970年9月 化成水島 日本カーバイド、三菱モンサント化成、
韓国化成
水島 山陽モノマー   120 1970年7月 山陽エチレン・水島 日本ゼオン、チッソ、旭化成
南陽 東洋曹達   150 1968年7月 出光・徳山
新大協和・四日市
日信化学、信越化学、東亜合成化学、
徳山積水
徳山 サン・アロー化学   110 1970年4月 出光・徳山 自消、輸出、その他
呉羽化学   150 1970年10月 (原油分解法) 自消

三菱油化はソーダおよび塩化ビニル企業に働きかけたが、それらの企業は独自計画を優先して部分的参加となったので、塩ビモノマーセンターの規模は縮小せざるをえない状況となった。

三菱油化は1966年夏に三菱商事を通じて信越化学に鹿島計画参加の打診を行った。1967年5月にトップ会談が行われ、信越の参加が決まった。

1968年2月に鹿島電解と鹿島塩ビモノマーが現在と同じ出資比率で設立された。
(ADEKAは旭電化、カネカは鐘淵化学、三菱化学は三菱油化。なお、三菱油化はコンビナート運営者として参加)

当初能力は苛性ソーダが264千トン、VCMが220千トンで、VCMは信越化学、鐘化、旭硝子が引取り、信越と鐘化は鹿島にPVC工場を建設した。

その後、鹿島塩ビは能力を、270千トン→340千トン→450千トンと増強した。

信越化学は当初、VCMのフル操業のため、鹿島電解の信越枠を超えて塩素を引き取った。("優先塩素")

しかし、その後、PVCの需要は激減し、また原油価格の高騰による発電コストの急上昇で塩素価格が引き上げられたのに対し1980年代に入り低廉なEDCの輸入が急増したことにより、優先塩素は信越にとって大きな負担となった。

このため、信越化学は1980年秋に"優先塩素"を含む基本契約改定の申し入れを行ったが、他社は猛反対した。

1982年に金川・現会長(当時シンテック社長)が塩ビ事業本部長を兼務することとなった。
同氏は、米国からのVCM、PVCの直接輸入の準備と、万一訴訟等になった場合の対策についても万全の備えを行い、各社と交渉を行い、1983年7月に新契約を締結した。(信越社史から)

1994年10月に三菱油化と三菱化成が合併し、三菱化学が誕生した。

それまで三菱油化はPVCとは無関係であったが、三菱化成はPVC事業を昔からやっており、新生の三菱化学はPVCメーカーになった。

信越化学にとってはこれは一大事で、PVCの競合相手のエチレンを購入してVCMを生産することとなる。
このため、信越化学ではエチレンタンクを設置して他のエチレンソースも使用することを検討、慌てた三菱化学はエチレンの特別価格の設定を提案して、これを防止したとされる。

鹿島塩ビモノマーは1996年末に600千トンへの増強を決定した。これを機に三菱化学は40千トンの引取権を確保した。

三菱化学は(ヴィテック設立に先立ち)1996年に東亜合成と提携し、東亜合成の川崎工場での年産100千トンの設備新設に参画し、製品を引き取ることとしたが、鹿島のVCMは川崎に持ち込んだ。

2000年に入り、塩ビ業界の状況が悪化、旭硝子(引取枠105千トン)と三菱化学(同40千トン)は鹿島塩ビからの撤退を決め、引取枠を信越化学と鐘淵化学に譲渡した。
それ以降、引取枠は信越化学が492千トン、カネカが108千トンとなった。

旭硝子は1998年に旭ペンのVCMを停止、1999年に千葉塩ビモノマー(住化とのJV)を解散、2002年12月末にPVC事業から撤退した。
VCM事業では京葉モノマーを存続させ、VCMを輸出している。

三菱化学は鹿島塩ビ分のVCMを水島からの輸送に切り替えた。
その後、東亜合成とヴィテックを設立したが、2011年3月末で停止、東亜合成は川崎工場のPVCプラントを引取り、カネカから製造受託を行っている。

  2009/4/13 三菱化学、PSとPVC事業から撤退
  2011/2/23  ヴイテック、2011年9月末に解散

カネカは高砂にVCM 540千トン、PVC 295千トンを持ち、PVCについては上記の通り、東亞合成の川崎に年間70~100千トンの製造委託を行っている。

鹿島から撤退しても、関東に拠点を有する。

ーーー

鹿島電解、鹿島塩ビモノマーは実質的に信越化学の子会社となったが、信越化学が将来にわたってここで事業を継続する保証はない。

ShintechのVCM2期が完成すれば、同社の能力はVCM 1,600千トン、PVC 2,640千トンとなる。米国の需要が伸びないなか、同社はPVCの輸出に励んでいる。

鹿島のコスト次第では、将来、PVCをShintechから輸入する可能性もあろう。

立地    PVC   VCM  カ性ソーダ  
現状 計画 現状 計画 現状 計画
Texas州 Freeport  1,450     -     -    
Louisiana州
Addis   590     -     -    
PlaquemineⅠ   600     800     530    
PlaquemineⅡ       800   530 2011年完成予定
合計  2,640    800 800   530 530  

三菱化学はあらゆる事態を想定するとしており、中期経営計画の期間内にエチレン需要減少に備えた対策案をまとめる考えと報道されている。

 

ーーー

現在の日本のVCMの能力は以下の通り。(2010年12月末、千トン)

会社名 工場 能力 備考
ヴィテック 水島

391

→2011/3 停止                               

鹿島塩ビモノマー 

鹿島

600

→能力減へ

カネカ

高砂

540

 

京葉モノマー

千葉

200

引取枠:旭硝子(75%)、クレハ(25%)
 旭硝子は輸出
 クレハは塩化ビニリデン用を除き、大洋塩ビに譲渡

東ソー

四日市

250

 

南陽

1,230

 

合計

(1,480)

 

トクヤマ

徳山

330

合計

 3,541

 

 METI報告では能力合計 3,515千トン(東ソー 1,454千トン)

  以下のプラントは停止済
   旭ペンケミカル(旭硝子、PPG) 1998/7
   山陽モノマー(日本ゼオン、チッソ、旭化成) 2000/3
   千葉塩ビモノマー(住友化学、旭硝子。電気化学は先に離脱) 1998/9
   セントラル化学(
セントラル硝子、東亞合成、東燃化学) 2003/3
   三井化学  1999/12


 

Moodys Japanは8月29日、信越化学のAa3 の長期発行体格付を据え置いたことを発表した。

2011年5月に日本政府と邦銀の格付が引き下げ方向で見直しとされたことに伴って、同社も引き下げ方向での見直しとされていた。

Moodysは8月24日に日本政府の格付をAa2 からAa3 に格下げ、ほとんどの邦銀の格付を平均で1ノッチ格下げした。
政府については、東日本大震災で政府支出の増加が見込まれるなか、財政赤字削減の具体策が見えないと指摘。債務返済の可能性が低下したと判断した。

今回、信越化学の格付を据え置いた理由は、日本政府や邦銀の格付は格下げされたものの、同社の単独の信用力はAa3 の格付水準を維持するのに十分高いと考えられたため。

Moodysでは、信越化学は、リーマンショック後の景気低迷期を含む過去数年間の収益性に示されているように、強固な財務体質を維持してきており、景気後退期における同社の抵抗力の高さを証明しているとしており、今後も景気サイクルを通して優れた財務内容を維持していくであろうとみている。

更に信越化学は、強靭なバランスシートや優れた流動性を備えており、海外事業からの利益貢献も大きく、国内の減速傾向にあるマイナスの影響を軽減することができるであろうとした。

今後については、 PVC、半導体シリコン、シリコーンといったコア事業における市場地位と、景気循環を通じてさらに高い収益性と収益の安定性が見込める場合、ポジティブな格付アクションが検討される可能性が出てくる。

逆に、PVC や半導体シリコン事業の市場変動をうまくコントロールすることができず、収益とキャッシュフローが大幅に落ち込んだ場合や、流動性の悪化が見られた場合などは、ネガティブな格付アクションが検討される可能性があるとしている。

 

Moodysの2011年8月末の発行体(長期)格付けは以下の通り。 *は引下げの方向での見直し中。

Aaa  
Aa1 武田薬品*
Aa2  
Aa3 日本政府(8/24 引下げ)、日本たばこ、信越化学、アステラス製薬、富士フィルム
A1 クラレ、第一三共
A2 旭化成、キリン*
A3 帝人、住友化学*、エーザイ
Baa1 JXホールディングス
Baa2  
Baa3 コスモ石油、日本板硝子、DIC

引下げ検討:

 武田薬品   スイス製薬大手  ナイコメッドの買収で6千億~7千億円程度を借り入れることにより、財務の健全性が低下。
 キリン   ブラジルの飲料会社スキンカリオールの50.45%を取得、資金の一部を借り入れのため信用力を弱める。
 住友化学   設備投資水準は引き続き高水準にあり、積極的なM&Aを進めており、財務の柔軟性が低下。

 

BPは9月14日、ブラジルの砂糖とエタノールのメーカーのCompanhia Nacional de Açúcar e Álcool (CNAA)の株式をLDC Bioenergia S.A.から追加で3%取得することで合意した。

BPは2011年4月にCNAAの株式の83%を買収し、その後CNAAへの長期債権を株式に転換しているため、これで同社の99.97%を取得することとなる。

CNAAはGoiás 州ItumbiaraとMinas Gerais州Ituiutabaに農場と工場を持つ。

BPは製品のエタノールをブラジル及び国際市場に供給する。

ーーー

BPは同日、ブラジルのバイオ燃料JVのTropical BioEnergia S.A.の株の50%をJV相手から71百万ドルで買い増し、100%子会社にすると発表した。既存の負債も肩代わりする。

JV相手はMaeda S.A. Agroindustrial (25%)と LDC-SEV Bioenergia S.A. (25%)で、前者はBrasil Ecodiesel Industryの子会社。

Tropical BioEnergiaはGoiás州Edéiaに工場を持つが、BPでは能力を倍増し、砂糖キビの圧搾能力を年500万トン、エタノール換算で450百万リットルとする。
工場はまた、年間250GWh の電力を外部に供給する能力を有する。

これにより、BPはブラジルに3か所の工場を持つこととなる。
ブラジル政府はAgro-Ecological Zoning of Sugarcane の設定を計画しているが、いずれもこのゾーンに位置する。

Agro-Ecological Zoningは以下を考慮して、生産拡大を図るもの。
1.農業政策
   灌漑設備なしで砂糖キビ栽培に適した(土壌、気候面)土地
   収穫の機械化に適した傾斜12%以下の土地

2.環境面
   現在農業用に使用されている土地を除く
   Amazon、Pantanalの耕作用地を除く

3.食料安保
   食料生産地域との直接競合を減らす。


BPは2006年以降、バイオ燃料の研究開発と事業化に20億ドル以上を投資すると発表、欧州、ブラジル、米国に製造設備を建設してきた。米国San Diegoにグローバルバイオ燃料技術センターを持ち、Energy Biosciences Instituteにも10年間で5億ドルを投じている。

Energy Biosciences InstituteはUniversity of California, Berkeley、Lawrence Berkeley National Laboratory、University of Illinois at Urbana-ChampaignとBPで構成する研究機関で、バイオテクノロジーのエネルギーへの適用を研究している。

 BPは2005年11月にBP Alternative Energy を設立し、バイオ燃料、風力発電、太陽光発電などに80億ドルを投じ、合わせてカーボンの捕捉・貯蔵などの研究も続けている。既に60億ドルが支出されている。

Chevron Phillips Chemical は9月13日、住友化学の子会社のSumika Polymers AmericaとのポリプロピレンのJVのPhillips Sumika Polypropylene Company (PSPC) の工場を永久停止し、JVを解散することで住友化学と合意したと発表した。住友化学も同様の発表を行った。
需要家に迷惑をかけないよう、スムースな移行を行うとしている。

PSPCはテキサス州法によるジェネラル・パートナーシップの形で1992年5月に設立された。
出資比率はChevron Phillips Chemical が60%、Sumika Polymers Americaが40%。

住友化学の当初の合弁相手はPhillips Petroleumであった。

Phillip Petroleum は2000年に、オレフィン、ポリマー、芳香族事業をChevronの同事業と統合し、50/50出資でChevron Phillips Chemical を設立、PSPCのJV相手はChevron Phillips Chemical となった。

なお、Phillips Petroleumの本体は2002年にConocoと合併し、ConocoPhillipsとなっている。

日本の自動車メーカーの米国進出に伴い、日本のPPメーカーは相次いで米国でPPコンパウンド会社を設立した。

宇部興産は1985年、宇部興産 60%、丸紅 40% ATC Inc設立。
(その後、日本でのPP撤退で、持分を三井化学に譲渡)

三井化学は1986年6月に当時の三井東圧が65%出資、三井物産30%、東洋インキ5%出資で Color & Composite Technologies, Inc. を設立した。

2002年5月に宇部興産からATC持分を購入し、2003年1月に両社を統合して Advanced Composites, Inc. を設立。
出資は三井化学が
62.8%、三井物産が27.0%、丸紅が10.2%となっている。
メキシコにも工場を持つ。

三菱化学(当時の三菱油化)は1987年2月にエクソンとの均等出資で Mytex Polymer General Partnership を設立した。シンガポールに子会社を持つ。
2006年5月に
三菱化学は、Exxon持分を買い取り、100%子会社とした。

いずれも現地のPPを購入してコンパウンドにしている。

これに対し、住友化学は米国メーカーと組んで自社技術のPPのプラント建設し、これによるコンパウンド製造を考えた。

同社はSolvayの米国子会社(Soltex)やカナダのポリサーと交渉したが、まとまらず、1987年頃からPhillips との交渉を始めた。

Phillips はシンガポールで共同でHDPE事業を行っている相手だが、Houston にHDPE 54万トン、PP 22万トン、Kレジン 12万トンのプラントを持っていた。PPの触媒を住化触媒に切り替えるのを機に、PPを切り離して住友化学とのJVとし、住化法のPPを新設するという案で交渉を進めた。

1992年5月、両社はPhillips Sumika Polypropylene Co. を設立、1994年8月にフィリップスのバルク法3系列計220千トンを引継ぎ、19968月に住化気相法技術で1系列120千トンをスタートさせた。

現在の能力は住化気相法を増強し、バルク法1系列と合わせ、合計320千トンとなっている。

最近は事業環境の悪化から厳しい経営が続いていたとされており、下記の事情も勘案し、両社協議で解散を決めたとみられる。

ーーー

Chevron Phillips Chemical は間もなくスタートするサウジのJVのSaudi Polymers Companyの製造するPPを米国で販売する。

Saudi Polymers CompanyはChevron Phillips Chemicalとサウジの投資会社 Saudi Industrial Investment Group の子会社National Petrochemical Company (Petrochem)とのJVで、ジュベイルに下記のコンプレックスを建設している。
Chevron Phillipsは当初50%出資だが、最終的には35%となる。

製品   能力 EPC担当 技術
エチレン エタンクラッカー  1,200千トン 日揮 Lummus
プロピレン metathesis   200千トン 日揮 Lummus OCT(Olefins Conversion Technology)
1-hexene     100千トン 日揮 Chevron Phillips
PE     550千トン 2系列 Daelim  
PP     400千トン Daelim  
PS     100千トン 2系列 Daelim  


2008/1/25
 Chevron Phillips のサウジ石化事業

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なお、コンパウンドについては、住友化学は2007年に、住化55%、東洋インキ45%出資でジョージア州にSumika Polymer Compounds Americaを設立、PSPCからPPの供給を受けてコンパウンドの製造受託を行っている。

Sumika Polymer Compounds Americaは今後も北米地域における製品供給を継続する。

住友化学では、自動車用PPコンパウンドをコア事業と位置づけ、グローバル化が進む自動車業界の需要家からの要望に対応するために、日本、欧米、中国、東南アジアに生産・販売拠点を設置し、製品の供給を行っているとし、この事業戦略は今後も堅持し、北米を含む世界各地域において、需要家のニーズをふまえた製品の安定供給体制を維持、拡大するとしている。

 

ダイムラーとBASFは9月1日、電気自動車全般に適応可能な、両社のアイデアを結集した最新のコンセプトカー「smart forvision」を開発したと発表した。

2011/9/5 ダイムラーとBASF、先駆的な電気自動車を開発

 

東レは9月9日、次世代型の電気自動車(EV)「TEEWAVE AR1」を試作したと発表した。
試作車は2人乗りで、屋根のないスポーツカー。最高時速は147kmで、公道を走るための車両登録も可能。

東レが取り組む次世代自動車向けグリーンイノベーション戦略を体現するフラッグシップとして自動車メーカーに向けて提案する。

車体基本構造には熱硬化炭素繊維複合材料(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)製のRTM(Resin Transfer Molding)一体成型モノコックとCFRP製衝撃吸収体を採用、車体重量は846kgと、鋼板主体の従来型のEVに比べて4割以上軽量化し、同時に高い車体剛性と衝突安全性を実現した。
また、ボンネットハッチやルーフには、1分程度のハイサイクル成形が可能な熱可塑CFRP適用する。 

付記 主な適用素材・技術

ユーザー向けには高い衝突安全性(衝突エネルギーの吸収量は約2.5倍)と軽量化による低燃費、自動車産業向けには熱可塑性樹脂の活用による部品点数の削減(車体の基本構造に使われる部品点数は約1/20)、高生産性車体と塗装代替技術を提案する。

炭素繊維は価格が高く、製作費用は約3億円。
同社では「炭素繊維でどれだけの乗用車をつくれるか、極限を試すための実験」としているが、「2015年以降には普通車の価格帯で、こうした自動車の実現を目指していきたい」とする。

9月14、15日に東京国際フォーラムの展示ホールで開催される「東レ先端材料展2011」で初公開する。

「東レ先端材料展2011」では、同社のバイオマス由来繊維の製品、開発品を一斉出展し、その総合力を紹介する。
米国Gevo社と共同で試作した世界初の完全バイオマス原料由来PETのチップ、およびフィルムを初公開する。

東レは2008年に名古屋事業場にオートモーティブセンター(AMC)を開所し、炭素繊維、熱可塑性樹脂、製造プロセス、評価・分析技術等を融合した、自動車向けの最適材料の開発を続けている。

同社は2011年1月、ダイムラーAGとの間で、東レが開発した炭素繊維複合材料 (CFRP)の革新的成形技術である「ハイサイクルRTM成形技術」を活用してCFRP製自動車部品を製造・販売する合弁会社(東レ 50.1%、ダイムラー 44.9%、その他 5.0%)を設立する契約を締結した。

同社は2011年6月、オランダのTenCate Advanced Compositesとの間で、航空機用途向け熱可塑性樹脂複合材料用の炭素繊維の長期供給基本契約を締結したが、合わせて、自動車に使用される熱可塑性複合材料における市場開拓および製品の共同開発を検討していくことにも合意した。

炭素繊維については 2006/9/9 炭素繊維

SABICは9月8日、欧州の自動車用技術開発会社 Inpro に出資することで合意した。当局の承認を得て年内(10月にも)実施する。

INPROの社名はInnovation company for advanced production systems in the automotive industryから取られた。

1983年の設立で、現在の株主は、自動車メーカーのDaimler とVolkswagen、電機・電子のSiemens、鉄鋼のThyssenKrupp とBerlin特別市で、設立当初の株主にはBMW とBerlin Technical Universityがいた。
また、BASF Coatings が2001年から2010年に参加しており、機械メーカーで子会社にロボット専業メーカーのKukaを持つIWKA groupもかつては株主だった。

事業目的は生産技術のイノベーションを推進し、研究開発の結果を産業に移すことで、プロジェクトに参加するパートナーは結果を自社の生産に活用できる。

主なプロジェクトは以下の4分野:
 • Process simulation
 • Production systems and information processes
 • Manufacturing and automation technology
 • Layering and fastening technologies

最近のプロジェクトでは、電気自動車やバッテリー、燃料電池などが中心となっている。

同社のホームページは:http://www.inpro.de/index_en.php

SABICの参加について株主のDaimlerは、特に樹脂製窓と軽量化(特にカーボンファイバー関係)への貢献を期待していると述べた。カーボンファイバー複合樹脂のシミュレーションソフトウェアの欠如が自動車でのもっと幅広い利用を妨げているとしている。

ThyssenKruppではプラスチックとメタルのハイブリッドの研究開発に期待を示した。

SABIC側は、同社が従来のポリオレフィンなどから、アクリル樹脂、カーボンファイバー、エラストマーなどに活動の幅を広げていると述べた。

SABICCelanese2010年4月、サウジのJubail Industrial City National Methanol Co. (IBN SINA)で年産5万トンのポリアセタール(polyoxymethylene:POM)を建設する契約を締結したと発表した。

2010/4/7 SABIC、ポリアセタールに進出

三菱レイヨンは2011年5月、SABICとの間でMMAモノマーとアクリル樹脂成形材料の合弁会社設立を目的とする契約を締結することで合意したと発表した。

2009/8/7 三菱レイヨン、サウジでMMA合弁会社 

SABICは2011年6月、イタリアのMontefibreとの間でカーボンファイバーの技術導入契約を締結したと発表した。

2011/6/17 SABIC、カーボンファイバーの技術導入

旭化成は2011年4月、サウジにおけるアクリロニトリル及び青化ソーダの共同事業化の詳細検討を行うため、SABIC及び三菱商事と、合弁会社Saudi Japanese Acrylonitrile Company(仮称)の設立を決定したと発表した。

2011/4/28  旭化成、サウジでのアクリロニトリル事業化のため合弁会社設立 

SABICでは、アクリロニトリルと青化ソーダは、自動車、建材、水処理等々の産業に使われるABS、カーボンファイバー、アクリル繊維、アクリルアマイドなど、川下分野に多角化するための重要な原料であるとしている。

米上院は9月8日、特許法の包括的な改正法案を89対9で可決した。下院では6月23日に可決されており、オバマ大統領の承認後、公布される。

変更の中心は、先進国では米国のみが採用していた「先発明主義」から世界共通の「先願主義」への移行であるが、このほか、米国特許商標庁が新規特許出願に対し独自の料金を設定し徴収できること、特許付与後の異議申立て制度の導入などがある。

米国は2007年には先願主義への改正法案が下院で可決されたが、個人発明家や中小企業団体などの反対で、最終的に法律が成立しなかった。

 

付記 9月16日に大統領が署名、成立した。2013年春以降に申請する特許から適用される見通し。

ーーー

米国の特許が先発明主義であるため、長期間経ってから出現する「サブマリーン特許」がある。

モンテカチーニ技術を導入した日本のPPメーカーは二度にわたってこの被害を受けている。

モンテからの技術導入に際して、日本での製造販売のほかに、PPを使った製品の米国等への輸出について許可を得ているが、モンテへの特許料の支払い完了後に、米国への輸出製品について2社(そのうち1社はモンテ技術の承継社)に特許料を払わされた。

1)米国での物質特許
米国ではフィリップスが1953年に特許を出願したが、モンテが1955年に出願し、先発明であるとして1973年に特許を取得した。
しかし、フィリップスは自社の先発明を主張して争い、最終的に最高裁でフィリップスの特許が認められた。
このため1983年にモンテ特許は取り消され、フィリップスが特許を取得、それから17年間、2000年まで特許が生きることとなった。

この結果、日本の全PPメーカーはPPを使った製品の米国への輸出についてフィリップスに特許料を支払わざるを得なくなった。
(本来は自動車メーカー等に支払い義務があるが、日本ではPPメーカーは需要家に特許保証をしており、PPメーカーに支払い義務を振られた)

2)米国での Ziegler特許
当初、米国では以下の触媒使用特許が申請された。
  ①1953 Ziegler     TiCl2/TEA
  ②1954 Ziegler/Natta TiCl2/(TEA or DEAC)
  ③1955 Ziegler     TiCl2/DEAC

米国特許庁は③の審議に当たり、これが②の後願であるとして拒絶した。
これに対しDr.Ziegler及びその死後その権利を受け継いだMax Plancの特許管理会社 Studiengesellschaft Kohle (SGK)が先発明を理由に再申請し、23年かけて争い、1978
11月にこの特許が認められた。

この結果、②の特許が既にとっくの昔に期限切れになっているのに、③のTiCl2/DEAC は1995年11月14日まで米国で有効ということになった。

198611月、モンテから導入したZiegler特許のライセンス契約が全て(米国向け製品輸出の免責条項も含めて終了した時点で、SGKは日本の自動車メ-カ-に対し、米国向け輸出自動車に使用されるPPに対してライセンスフィの支払いを要求した。

日本のPPメーカーは、この触媒を使用しているPPに関して、米国向け輸出自動車に使用されている分に相当するライセンスフィを支払わざるを得なかった。(三井石油化学や住友化学等の「担持型触媒」は対象外)

2006/4/20 ポリプロピレン特許係争

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米国の企業では、先発明を立証するための証拠として、毎日の研究結果を書類に残し、他の人が証明のため署名している。

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京都大学は2011年2月1日、米国のiPierian Inc.にiPS細胞関連特許のライセンスを許諾し、iPierian Inc.から同社保有のiPS細胞特許を譲り受けたと発表した。

米国では、米国特許庁がどちらが先に発明したかを選定する審判Interference)の開始を宣言する可能性が高まったが、米国では先発明主義のため、係争になると、どちらが先に発明したかの調査などに膨大な時間と多額の費用がかかる。

このため、iPierianは、山中教授の発明を尊重し、将来想定される京大との特許係争を回避するため同社保有特許を京大に譲渡したいと申し出た。

2011/8/15  京大のiPS細胞特許、米で成立

 

浙江聚龍石油化工( Zhejiang Julong Petrochemical ) は8月26日、浙江省嘉興市独山港区でプロピレン工場の第1期建設工事を開始した。投資額は16.3億人民元、年産能力45万トンで、2013年の生産開始を予定している。
第2期は投資額28.5億人民元で、能力は75万トンの予定。現在FSの実施中。

同社は8月2日にUOPのOleflex法プロパン脱水素技術を導入した。UOPによると、この技術は1990年に完成、これまでに世界で9つの設備が稼働しているが、中国では今回が最初となる。
(UOPは本年6月にAbu Dhabi Oil Refiningに本技術を供与している。能力は50万トン。)

原料のプロパンは海外、特に中東から輸入する。
製品のプロピレンは国内需要家に販売する。今のところプロピレンの誘導品の計画はない。

浙江聚龍石油化工(本社:浙江省嘉興市平湖市)は浙江長江能源発展有限公司(Zhengjiang Changjiang Energy Development 、本社:浙江省温州市)の100%子会社。
長江能源の主業務はLPGの輸送、貯蔵、販売で、今回のプロピレン計画の原料プロパン輸入に同社の経験を活かす。


天津渤海化工集団(Bohai Chemical Industry Group )の子会社、天津渤化石油化工 (Tianjin Bohua Petrochemical )は本年6月末、天津市濱海新区でプロパン脱水素プラントの建設を開始した。
海外のプロパンを使用する計画で、2013年6月にスタートする予定

2010年8月にCB&I Lummus TechnologyからCATOFIN®法脱水素技術を導入した。触媒はズードケミーが供給する。
能力は60万トンで、Lummusによれば、これは世界最大で、中国では最初の脱水素プラント。

 

CB&I Lummus はまた2011年8月に寧波海越新材料(Ningbo Haiyue New Material)からCATOFIN®プロパン脱水素技術を受注した。
寧波市に60万トン設備を建設するもので、2014年にスタートの予定。

寧波海越新材料はガソリンやLPGの販売会社の浙江海越(Zhejiang Haiyue Co.)の子会社で、主製品はプロピレン、メチルエチルケトン、イソオクタン。

 

中国は年間150万トンのプロピレンを輸入しているが、今後、プロピレンの代わりにプロパンの輸入が増える可能性がある。

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中国ではポリプロピレンの新設も多い。

浙江鴻基石化(Zhejiang Hongji Petrochemical)は8月17日、浙江省嘉興市の乍浦工業パークでPPの生産を開始した。
2期合計300千トンの第1期の120千トンで、国産技術のZHG法を使用し、原料プロピレンは韓国など海外で調達する。
第2期180千トンの詳細スケデュールは明らかにされていない。

製品は同じオーナーの会社で湖北省宜昌市でコメ袋、小麦粉袋、セメント袋などの製造販売を行う宜昌雙龍塑料公司(Yichang Shuanglong Plastics )に供給され、一部は外販される。

   
青海省の青海塩業 (Qinghai Salt Lake Industry) はこのたび、年産16万トンのPP計画でDowのUNIPOL法を採用した。 
原料プロピレンはMTOで生産する。

2011/9/2 青海塩業、金属マグネシウム・石炭化学統合コンプレックスのPP計画でUNIPOL法を採用

   
陝西延長石油Shaanxi Yanchang Petroleum)は、2010年3月に子会社の榆林能源化工Yulin Energy and Chemical)用にIneosからInnovene PP 技術を導入した(能力は30万トン)。

同社はこのたび、子会社の延安能源化工(Yanan Energy and Chemical)用に同じくIneosのInnovene PP 技術を導入した(能力は30万トン)

陝西延長石油延安・榆林・永平(Yongping)の3か所に製油所をもっており、延安と榆林にはMTOプラントを持つ。

2011/9/9 陝西延長石油(集団)石炭化学を含む石油化学事業に重点 

   
寧夏省の寧夏寶豐能源集団(Ningxia Baofeng Energy Groupは9月7日、IneosからInnovene PP 導入した。
能力は30万トンで、原料プロピレンは石炭を原料に
Methanol-to-Olefins (MTO)
で生産する


 



 

本年2月に開かれた武田計測先端知財団の武田シンポジウムの講演をまとめたものです。

  テーマ:新たな世界観をうみだす
    ― はやぶさの帰還・宇宙の誕生・生命のゆらぎ -

「ゆらぎをテーマとして、異なる分野の三人の講師に、このような新しい発見のお話と、人間の意志の働きが大きな役割を果たしたお話をお願いいたしました。」

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「ゆらぎ」の力 -はやぶさの帰還 宇宙の始まり 高次な生命機能ー

  第1章 「はやぶさ」が地球に持ち帰ったもの

川口 淳一郎 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所
         宇宙航行システム研究系 研究主幹 教授

  第2章 「ゆらぎ」が宇宙をつくる

佐藤 勝彦 大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 機構長

  第3章 「ゆらぎ」を使うあいまいな動きと高次な生命機能

柳田 敏雄 大阪大学大学院 生命機能研究科 教授

  第4章 新たな世界観をうみだす

「総合質疑」 新たな世界観をうみだす
  司会: 唐津 治夢 財団理事/SRIインターナショナル日本支社 代表


 

陝西延長石油Shaanxi Yanchang Petroleum)はこのたび、Ineos からInnovene PP 技術を導入した。

子会社の延安能源化工(Yanan Energy and Chemical)に建設するもので、能力は30万トン。

陝西延長石油は2010年3月にIneosからInnovene PP 技術と、Innovene S HDPE 技術を導入している。
いずれも
能力は30万トンで、子会社の榆林能源化工Yulin Energy and Chemical)に建設する。

陝西延長石油延安、榆林、永平(Yongping)の3か所に製油所をもっており、延安と榆林にはMTOプラントを持つ。 

付記

陝西延長石油延安能源化工は2012年2月、イタリアのFasTech Srl からEPDM技術を導入した。

陝西省延安市にEPDM年産5万トンの設備を建設する。2014年第2四半期に生産開始の予定。
原料のエチレン、プロピレンは同地に建設中の新しいMethanol to Olefins(MTO)プラントから供給を受ける。

ーーー

陝西延長石油(集団)有限責任公司(Shaanxi Yanchang Petroleum Group Co.陝西省政府の100%出資会社。

省政府は2005年10月に、陝西省北部地域における石油資源の統合を推進するため、石油探鉱開発企業21社(陝西省の所管する石油開発会社7社、陝西省北部各区・県の所管する石油開発会社14社)ならびに製油所3社(延煉集団、永坪精油所、楡林製油所)を統合し、陝西延長石油を設立した。

統合により同社は、PetroChina, Sinopec、CNOOCに次ぐ中国第4位の石油会社となった。
上位3社が国有なのに対し、同社は唯一の省所有の企業。
ただし、活動範囲はあくまで陝西省に限られ、今後、他省あるいは国外において、石油の探鉱開発や精製事業を行うなどの事業規模拡大を行う可能性は極めて少ない。


陝西延長石油は2011年7月、石油・ガス資源が三大国有石油会社に抑えられているため、石油・ガス関連事業の比率を落とし、石炭化学を含む石油化学事業を強化する方針を明らかにした。

石油・ガス関連事業の売上高比率は2006-10年は約80%だが、これを60%に落とし、石炭化学を含む石油化学部門の比率を40%に引き上げる。

同社は現在年産300万トンのコールタールを生産しているが、今後5年で倍増する。
同社は豊富な石炭を活用し、成長の道を探る。
2011年~15年に1500億人民元を投資して、石炭・石油・ガス・塩を統合したプロジェクトを推進する。

ーーー

陝西省政府PetroChina は2007年5月、延安での大規模エチレン計画の契約を締結した。
陝西延長石油とPetroChinaの合弁で、100万トンのナフサクラッキングのほか、75万トンのPEや35万トンのPPも含まれる。
投資額220億元で陝西省延安市の洛川に建設される。

しかし、国家発展改革委員会は同事業を第12次5ヵ年計画期(2011~2015年)に先送りした。具体的な建設スケジュールは未定のまま。

               2007/5/23 PetroChina、陝西省延安でエチレン100万トン計画


陝西延長石油集団と大連市は2010年10月、協力枠組協定に調印した。
延長石油集団は長興島臨港工業区に超大型石油化学コンビナートを建設するものだが、詳細は明らかにされていない。 

 

陝西延長石油(集団)は2011年6月、KBRKellogg Brown & Root )との合弁会社を中国に設立する契約を締結した

この合弁事業の目的は、Veba Combi Cracker(VCC)技術のマーケティング、販売、提供、サポートを実施すること。

VCC技術は水素添加技術で、石油精製、油田現場における改質石炭液化の過程において、精製残留物、コールタール、石炭石油混合物を高品質の蒸留物または合成原油へと処理するのに適した技術。

この技術はドイツのVebaが開発した。
VebaDegussaに買収され、2002年にDegussa 親会社のE.On がBPに売却した。
2010年1月にBPとKBRがこの技術の販売のための
Collaboration Agreementを締結した。

合弁事業の運営は、延長石油集団が51%出資する北京石化工程有限責任公司とKBRの技術事業部門が行う。

三井化学は8月29日、フェノール・チェーン事業の強化・拡大の一環として、大阪工場のプロピレン法IPA(イソプロピルアルコール)プラント(年産28千トン)を停止し、アセトン法IPAプラント(60千トン)を新設すると発表した。
2013年4月に営業運転開始の予定。

同社はフェノール・チェーンをグローバルに拡大させる競争優位5事業の1つと位置付けている。
  ・フェノール・チェーン(フェノール、BPA)
  ・PO系コンパウンド(PPコンパウンド/アドマー)
  ・エラストマー(タフマー/EPT)
  ・メタロセンポリマー(エボリュー)
  ・高屈折率メガネレンズ

IPAは塗料・インキ分野を中心に使用される基礎的な汎用溶剤で、環境負荷の少ない溶剤として、アジア各国で需要の伸張が見込まれている。

今回の原料転換によるS&Bの背景は以下の通り。

フェノールの製法
  
ベンゼンプロピレン→フェノールアセトン

  原料プロピレンは需給が逼迫。
  フェノールに副生するアセトンは需要が少なく、フェノール増産のネックとなる。

IPAの製法
  従来法
(プロピレン法):プロピレンと水を高温高圧下で水和し、
                粗イソプロピルアルコール水溶液を分離し、精製
  

  新法(アセトン法):アセトンと水を気相反応(独自開発の高活性触媒を使用)

原料転換によりフェノールの原料で需給が逼迫するプロピレンの使用を止め、フェノールの副生品で余剰のアセトンを使用することで、両面からフェノールチェーンを強化しつつ、IPAを国内及びアジア市場に安定的に供給する体制を構築する。

なお、同社はこの触媒を使用したアセトンリサイクルシステム(ARS)をJVの千葉フェノールに導入している。
フェノール副生のアセトンをIPAを経由してプロピレンとし、再度フェノールの原料として使用している。

同社は現在、千葉、大阪、シンガポールの3拠点でフェノール92万トン、アセトン54万トンを生産しているが、うちアセトン14万トンをプロピレンに再生しており、アセトン販売量は40万トンにとどめている。

ーーー

三井化学は2009年4月15日にシノペックとの間で協力関係拡大の覚書を締結した。

その一環として2010年8月にフェノールの合弁事業化で合意した。

両社はビスフェノールAの合弁の上海中石化三井化工で、BPA原料のフェノールの合弁事業を行う。
既設の
上海中石化高橋分公司のフェノールプラントも合弁会社に統合する。

1. 所在地   上海市・上海化学工業区
2. 出資比率 50:50
3. 生産能力
   フェノール  アセトン  BPA
今回新設  25万トン  15万トン  
既設(上海中石化三井化工)      12万トン
既設(上海中石化高橋分公司)  12.5万トン   7.5万トン  
合計  37.5万トン  22.5万トン  12万トン
4. 新プラントプロセス 三井化学技術
5. 営業運転開始時期 2013年第2四半期

同社の誘導品事業(ビスフェノールA、MIBK)を含めたフェノール事業は、フェノール92万トン、誘導品54万トン、合計146万トンで2位だが、中国のフェノールを加え、世界トップを目指す。

2009/11/4  三井化学、シノペックとの合弁事業の基本合意

三井化学の中国以外のフェノールの状況は以下の通り。(単位:千トン)

三井化学(大阪)    200
    (千葉) 190
千葉フェノール  230
シンガポール  300
合計 920

2006/4/25 フェノール業界 
  

中国で工場の環境汚染問題が多発している。

江西省萍郷市蓮花県にある アロイ等を生産する隆森實業公司で8月16日、鉛やクロムなどの有害物質を排出しているとして操業停止を求めた住民数千人が出入り口をふさいで抗議し、警官隊との衝突で20人以上が負傷した。

雲南省曲靖市陸良県では化学会社 陸良化工実業公司が4月から6月までの間、重金属であるクロムを含む汚泥を曲靖市内3カ所で、計5000トンを不法投棄したことが明らかになった。

2011/8/22 中国で工場の環境汚染相次ぐ

 

雲南省曲靖市の不法投棄事件を受け、中国の環境保護部は9月1日、曲靖市がクロムのスラグを処分し、汚染された土壌を浄化するまで、曲靖市の全ての新産業計画の審査を中止すると発表した。

Greenpeace の調査では、問題の陸良化工には14万トン以上のクロムのスラグが放置されている。工場周辺の地下水は高濃度の発がん性の六価クロムで汚染されており、周辺の住民に平均より高い確率で癌が発生している。

中国では新規プロジェクトは環境審査を受ける必要があり、曲靖市は上記事件の咎めを受け、経済発展にブレーキがかけられることとなる。

環境保護部はまた、年末までに危険廃棄物の不法投棄や貯蔵をターゲットにした全国的なキャンペーンを実施する準備をしている。
クロムや多結晶シリコンの製造や、下水汚泥や電子機器廃棄物の処分に従事する企業は厳重にチェックする。

 

環境保護部では曲靖市の不法投棄事件は一企業の問題ではなく、国全体の危険廃棄物の扱いの状況を反映したものとみている。
「大量の危険な産業廃棄物が土壌や水を汚染し、国民の健康への脅威となっている」としている。

2007年の最新の調査では、中国全体で4,574万トンの危険な廃棄物が排出されたが、12次5カ年計画(2011-15)期間中に年率5~7%で増えると見込まれている。
しかし、適切に処理されているのは約800万トンで、全体の20%以下である。
環境保護部では処理設備の不足、処理費用の高さ、環境当局の規制の緩みを理由として挙げている。

環境保護部は、クロム工場が貯蔵しているスラグ全てを適切に処理する期限を2012年末までと決めた。これまでに処理できない企業は生産停止を命じられる。

 

Greenpeace では環境保護部の対応を歓迎しつつ、保護部が関連情報を開示し、住民が監視に参加するのが重要であるとしている。

 

ーーー

別件だが、渤海湾の原油流出事故で、ConocoPhillipsは期限として決められた8月31日に、原油流出が止まったと発表した。

しかし、国家海洋局は流出が完全に止まっていないと判断し、9月2日に蓬莱19-3の生産停止を命じ、ConocoPhillipsはこの命令に従った。

丸紅は9月2日、デンマークの大手総合エネルギー会社 DONG Energy A/Sとの間で、2010年春に完工し、現在DONGが100%出資する172MWの発電容量を有する英国のGunfleet Sands洋上風力発電の権益49.9%を取得する事で、基本合意したと発表した。
権益取得対価は約2億ポンド。

日本企業として初の、商業運転中の洋上風力発電事業への本格出資参画となる。

丸紅は、洋上風力の分野で世界シェア第1位(28%)の実績を持つDONGをパートナーとする事で、洋上風力発電の開発及び操業のノウハウを吸収し、今後、同分野での欧州における事業参画を積極的に進めると同時に、北米や日本など、将来洋上風力発電事業が本格的に進められる可能性のある市場への投資を検討していく。

丸紅は、本件を加えると、日本国内を含む全世界23ヶ国においてネット保有発電容量が合計8,796MWに達し、このうち、水力発電所を含む再生可能エネルギー資産450MWを保有することになる。 最近のトピックスは以下の通り。

インドネシア・チレボン石炭火力IPPプロジェクト

660MWの新規石炭火力IPPプロジェクトをインドネシア西ジャワ州のチレボンにて建設中

蓼科小水力発電所

茅野市蓼科のビーナスライン沿線で休止中だった発電設備を2010年6月に買収

カナダRaleigh風力発電事業権益の取得

2010年12月、オンタリオ州の風力発電所78MWを保有するRaleigh Wind Power Partnershipの事業権益49%を米国Invenergy社から取得

豪州Hallett 4 風力発電事業

2010年12月、丸紅、豪州APA社、大阪ガス共同出資の132MW・豪州最大級の風力発電所が南オーストラリア州に完工

洋上風力発電用の大規模海底送電線事業(後記)

 

付記

丸紅は2012年3月、産業革新機構と共同で、Seajacks Internationalの事業を、米国投資ファンドのRiverstone Holdings LLCより100%買収することに合意したと発表した。
北海地域において洋上据付サービス専用の特殊船を保有し、洋上風力タービン発電機の据付ならびにオイル&ガス洋上プラットフォーム設備へのサービスを主要業務としている。

ーーー

Gunfleet Sands洋上風力発電と、その隣でDONGが建設中のLondon Array洋上風力発電の概要は以下の通り。

  Gunfleet Sands London Array
Owner Dong          50.1%
Marubeni  49.9%
DONG   50%
E-On      30%
Masdar (Abu Dhabi) 20%
所在地 英国Essex州の沖合7km 英国Essex州の沖合20km
設備概要 Ⅰ 3.6MW x 30基
Ⅱ 3.6MW x 18基
計 3.6MW x 48基:172MW
最終 1GW
Phase 1 
 3.6MW x 175基:630MW
稼働開始 2010年春 Phase 1   2012年末
供給世帯数 英国の約125,000世帯 480,000世帯

          周辺には他に3つの洋上発電がある。

  Greater Gabbard Thanet   Kentish Flats
能力 500MW (建設中) 300MW 90MW
Owner Scottish and Southern Energy
RWE Npower Renewables
Vattenfall Vattenfall

 

DONG Energy A/Sは2006年にデンマークのエネルギー会社6社、DONG、Elsam、ENERGI E2、Nesa, Copenhagen Energy、Frederiksberg Forsyningが合併して設立された。

デンマーク政府が74%を出資する。

6社の統合により、下記の事業を幅広く行うこととなった。

 ・石油と天然ガスの開発・生産

 ・火力発電、再生可能エネルギー(水力発電、風力発電)

   水力発電はスウェーデンのIvdalsalvenに7基(JV)

   風力発電は下記(単独及びJV)       一部は陸上だが、大半は洋上

 ・ガス及び電力の配送

 ・エネルギーのコンサルタント

ーーー

丸紅の洋上風力発電用の大規模海底送電線事業の概要は以下の通り。

米Googleは2010年10月、中部大西洋沖の風力発電所と本土を結ぶ大規模な海底送電網建設プロジェクト Atlantic Wind Connection を発表した。

Googleが37.5%を出資し、残りを 丸紅、スイスのプライベート・エクイティ・ファンドのGood Energies Investment Corp.、米国の規制送電線開発企業であるAtlantic Grid Development, L.L.C.が出資する。

今後中部大西洋岸4州(ニュージャージー州、デラウェア州、メリーランド州、バージニア州)沿岸に建設が予定されている洋上風力電源と同州内陸電力系統を接続するもので、将来的には約6,000 MW相当の洋上風力電源を接続する見通し。
送電線開発・建設は5つのセグメントに分けて順次推進し、約1,500 MWの送電容量を持つ第1セグメントの開発を今後2年に亘り行い、2013年中の建設着工、2016年中の操業開始を目指す。

ダイムラーとBASFは9月1日、電気自動車全般に適応可能な、両社のアイデアを結集した最新のコンセプトカー「smart forvision」を開発したと発表した。

ダイムラーは、電気自動車で4つの量産モデルを発表した初の自動車メーカー。
2009年にはマイクロ・コンパクトカー「smart fortwo」の電気自動車の量産を開始している。

ダイムラーとBASFは、電気自動車の普及と日常生活への早期導入のため、幅広い研究開発に取り組んできた。

今回のコンセプトカーは、エネルギー効率、温度管理、軽量設計を特に重視した。
両社の技術力により、将来的に発生するさまざまな課題を解決する未来志向のコンセプトカーで、デザイン、ライフスタイル、テクノロジーを融合させることで、これまでにない包括的な機能性を実現した。

今回の新たなコンセプトカーで、5つの「世界初」を実装することに成功した。

・透明有機太陽電池
・透明有機発光ダイオード(OLED)
・完全プラスチック・ホイール
・新軽量ボディ部品
・赤外反射膜・塗料


特長は以下の通り

1)エネルギー効率化に貢献:ルーフからの明るさとエネルギー

ルーフの六角形の透明なエリアは、史上初の光伝達ルーフとして、エネルギーを生成する役割を担っている。
有機染料をベースとした透明な太陽電池がサンドイッチルーフに埋め込まれている。

太陽電池の透明な染料は、光で起動し、散光時や薄暗い状況下でも、マルチメディア機能および車内の温度・湿度管理をサポートする3つの換気システムを稼働するのに必要なエネルギーが生成される。
自動車が陽のあたる場所にある限り、太陽電池によって継続的な換気が可能であり、自動車の冷却状態が維持される。

透明な太陽電池の裏側に透明有機発光ダイオード(OLED)を組み合わせることで、ドアを開けた時やボタンを押した時にはOLEDが車内を照らし、スイッチがオフの状態では、外部が透けて見えるようになる。
日中はグラスルーフの効果が得られる一方、夜間には眩しすぎない快適な照明が得られる。
従来型の省エネランプと比べて、消費エネルギーは半分以下となる。

2)多機能・軽量化設計:差別化し、よりよく、スタイリッシュに

量産が可能な初の完全プラスチック・ホイールによって、大幅な軽量化と独自のデザイン性を実現している。
BASFが開発した最新の高機能素材(長繊維強化ポリアミド成形材料
Ultramid®)を活用したホイールにより、現段階でホイール1個あたり3kgの大幅な軽量化を達成した。

高機能複合材料の炭素繊維強化エポキシ樹脂をシャシー、ドアなどの部品にも使用している。
これにより、鋼との比較で50%以上、アルミニウムとの比較では30%の軽量化が実現した。
BASFの樹脂は硬化時間が短いことから、大量生産にも適している。
 

3)総合的な温度管理

 ①暖房:体の近くで、効率的に

最新の軽量・自立型のプラスチック製シートシェルがその基盤となっている。

従来型のシート暖房とは異なり、独自の導電コーティングを施した薄型繊維のe-テキスタイルが使用され、背中の中央部と腰のあたりで身体により密着した形で直接的に暖めることにより、快適な暖かさが得られる。ドアに取り付けたアームレストにも使用している。

シートフォームでもBASFの素材は、他社の素材と比べて約10~20%の軽量化を実現し、また、一度の動作工程で、クッションの部分ごとに硬さの度合いを変えることが可能。超吸収剤を含むフリース繊維をシートに織り込んだ受動的な温度・湿度管理により、シートの快適性は大幅に向上する。

 ②温度管理:熱の侵入を防ぐ

断熱材は、自動車用途では初の採用となるBASFの新赤外反射膜で構成されている。
これをフロントガラスやサイドウィンドウに採用することで、車内の温度上昇を防ぐ。
安全ガラスの窓枠の間に無金属のフィルムを取り付けることで、赤外線は効果的に反射される。

BASFの高機能発泡体を車体パネルに使用することで、車内の温度・湿度を快適に保つことができる。

 ③涼しい塗料で、車内も涼しく

赤外線を反射し、極めて傷のつきにくい塗料分野は、広範囲の温度管理システムに対するサポートと、その鮮やかで高品質な質感により、「smart forvision」独自のデザイン性を強調するという2つの機能を同時に発揮する。

ガラスフレークを用いたホワイトの特殊効果コーティングを採用しており、光り輝くメタリック調の外観となっており、重要な副次効果として、太陽からの熱線や光を極めて効果的に反射する。

BASFが誇る特殊な着色顔料により、熱放射を吸収するのではなく確実に反射し、暗色塗料の表面でも、これまでより大幅な冷却状態が維持される。
塗料表面温度は最大20℃、車内温度は最大約4℃下がる。

 

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なお、LGとGMは8月25日、LGによるChevrolet Volt やOpel Ampera用のバッテリー供給での協力関係を拡大し、電気自動車を共同で開発すると発表した。

2011/8/29 韓国LG、GMと電気自動車の共同開発へ 

ロンドン・オリンピック・パラリンピック組織委員会とスポンサー企業であるDow Chemicalは8月4日、2012ロンドン大会のスタジムを環境に優しい素材でラッピングすると発表した。

ダウは2010年7月、International Olympic CommitteeTOPThe Olympic Partnersになる契約を締結した。
スポンサー期間は2010年から2020年まで。条件は明らかにしていないが、1億ドル以上との報道もある。

1業種1社に限定されており、ダウは化学分野で契約した。
TOP
にはそれぞれの分野で、自社製品、技術、サービスの世界的マーケティング活動の独占的な機会が与えられる。

2010/7/31 ダウ、IOCのスポンサーに

ロンドン・オリンピック・スタジアムは一部の競技と開会式、閉会式の会場となる。

ラップは、高さ約25m、幅2.5mの336枚のパネルで構成され、スタジアムを視覚的に盛り上げると同時に、風除けにもなる。

 

 

Dowではこのラップは「Sustainable Olympic Games」という目標に合致するとしている。

このラップにはDowの高性能プラスチック部門が製造する樹脂が使用され、より少ない原料で生産することが可能となる。
また、最大で35%軽量化され、従来の素材に比べて二酸化炭素削減につながる。
さらに、従来のインクに代わって紫外線硬化インクが使用され、印刷工程における排出量が減少し、揮発性有機化合物(VOC)も発生しない。

Dowはオリンピック閉会後にこれを有効利用すべく、現在、使用方法を検討している。

オリンピック委員会は会場での広告を禁止しているが、Dowは開会1か月前まではラップに広告をつけることを認められた。

英国政府が建設予算を11,400千ドルカットし、この案は棚上げになったが、今回、Dowが費用を肩代わりし、実施する。

ーーー

これが報道され、インドのBhopal問題が脚光を浴びた。

Bhopal問題ではインド側が犠牲者に対する補償の追加を求めているのに対し、Dow側は既に解決済みであること、Dowは問題解決後にUCCを買収したため無関係であることを主張している。

インドの司法長官はBhopal事故(1984123日発生)の記念日に当たる2010年123日、Dow Chemicalに犠牲者に対する10億ドル以上の支払いをさせるよう求めて、インド最高裁に対して申立を行った。

2010/12/8 インド政府、Bhopal事故補償で13億ドルの追加請求

この記事では1,270百万ドルとしたが、「異なるインフレ指数などにより、請求額は666百万ドルから13億ドルまで、いくつかがある」と付記している。インド司法省の弁護士は政府は500億ルピー(11億ドル)の訴えを最高裁に提出したとしている。

今回の報道はインドの国民を激怒させた。

活動家はインド・オリンピック委員会とSingh首相に対し、ロンドンオリンピックボイコットを訴える手紙を出した。

Bhopal運動のパンフレットは以下の通り述べている。

ダウのオリンピックスポンサーはオリンピック憲章の精神に反している。
オリンピック憲章は人種差別を禁止している。しかしスポンサー企業は人種差別を行っている。
Dowはン米国でUCCの法的債務を引き継いだのに、インドでの責任は拒否している。これは人種差別でないか。

 

英国のベテラン議員のKeith Vaz は、オリンピック委員会がDowの宣伝を載せるラップの費用をDowに支出させる決定をしたことに対し驚きを表明、Dowに対して「Dowはオリンピックに出す金があるなら、11億ドルの賠償を行うべきだ」と伝えた。

青海省の青海塩業 (Qinghai Salt Lake Industry) はこのたび、年産16万トンのPP計画でDowのUNIPOL法を採用した。
ホモポリマー、ランダムコポリマー、インパクトコポリマーを製造する。

UNIPOL法PPは今回が中国での8つ目のライセンスとなる。

青海塩業は中国最大の塩湖資源利用企業で、食塩等を生産しており、子会社のQinghai Salt Lake Potash (Sinochemも出資)で塩化カリウム、炭酸カリウム、硝酸カリウム、カリウム金属などを生産している。

食塩等の生産は茶卡盐湖 (Chaka Salt Lake)などを中心に行っている。
塩化カリ等の生産は
察尔汗盐湖 (Qarhan Salt Lake)で行っている。

PP計画は青海省ゴルムド市の察尔汗盐湖での同社の金属マグネシウム・石炭化学統合コンプレックスの一環である。

金属マグネシウム・石炭化学統合コンプレックスの概要は以下の通り。

マグネシウムの製法には電解法(Dow法、IG Farben法など)やPidgeon法などがあるが、同社は電解法を採用した。
塩水からとった水酸化マグネシウムを無水塩化マグネシウムとし、これを電解して生産する。

これには塩素を使用するため、塩湖の塩水の電解で塩素と苛性ソーダを生産するが、塩素を利用してPVCの生産を行う。
PVC生産にはエチレン法とアセチレン法を併用、エチレンと塩素、及びアセチレンと塩素でPVCを生産する。

このため、石炭からメタノールを生産し、MTOプロセスでエチレンとプロピレンを生産、別途、石炭からコークスをつくり、これと生石灰でカーバイドを生産し、アセチレンをつくる。

今回のPPはMTOのプロピレンを使用する。

青海塩業は2010年7月に第一期計画を着工した。2013年下半期に生産開始の予定。

能力は以下の通り。(単位:千トン/年)
今回第一期のPPが決まったが、第二期でのプロピレンの用途は未定。

製品 第一期 最終
金属マグネシウム 100 400
メタノール 1,000  2,400
MTO エチレン 165 400
プロピレン 165 400
PP 160 160
PVC 500 2,000
苛性ソーダ 1,000 2,000
コークス 2,400 2,400
カーバイド 800 2,000
二塩化カルシウム 100 100
Source: ASIACHEM Consulting


 

ロシアのRosneft本年1月、BPとの間でグローバルな戦略的提携で合意した。

しかし、BPのロシアのJVTNK-BPの株主のAlfa Access Renovaを構成する4人の新興財閥が、BPRosneftとの取引がTNK-BPを除外しているのは、BPTNK-BPの株主契約に違反するとして 反対した。

BPRosneftの契約は5月16日に時間切れで白紙となった。

2011/5/18 BPRosneft との提携、白紙に 


RosneftはBPに代わる提携先を探していたが、8月30日にRosneftとExxonMobilは両社が北極海と黒海の開発、技術協力、米国その他での共同事業の実施で合意したと発表した。

両社はStrategic Cooperation Agreementを締結したが、ロシア、米国、その他世界中での石油資源の共同探査・開発と探査開発技術の共有化をうたっている。両社はPutin首相が同席する中で調印した。

(1) ロシア

Rosneft が66.7%、ExxonMobilが33.3%出資するJVが北極海と黒海で事業を行う。投資額は32億ドルと見込まれる。

 ① ロシアの北極海大陸棚にある3つの鉱区East Prinovozemelskiy License Block 1,2,3)の開発
     2010年に
Rosneftが権利を取得したもので、South Kara Seaの深さ 50~150m126,000km2にわたるもの。

 ②黒海のTuapse Blockの開発
   深さ 1,000~2,000m の11,200
km2の地域

両社は2011年1月にこの開発で合意している。
 
2011/2/5 RosneftExxonMobilとも海底油田開発で合意

(2) その他の探査・開発

Rosneft はExxonMobilの多くの開発計画に参加する権利を得た。
これには、メキシコ湾の深海油田、テキサス州のタイトオイル、その他海外での開発を含む。

両社はまた、西シベリアのタイトオイル開発の検討を共同で行うことでも合意した。

Tight Oil は孔隙率および浸透率の低い油層からの原油で、Shale gasと同じ手法で採掘する。
米国北部からカナダにかけて分布するBakken Shaleが代表的。

(3) Arctic Research and Design Center for Offshore Developments

深海油田開発のための研究センターをSt. Petersburgに設立する。
両社の研究員が参加し、両社の技術を持ち寄り、北極海の共同事業と他のRosneft の開発事業のための新技術を開発する。

(4) その他

技術及び経営のスタッフの交換計画


ExxonMobil は、今回の合意はサハリン1プロジェクトでの15年にわたる関係がもとになっているとしている。

サハリン1プロジェクト
事業主体 Exxon Neftegas
 (ExxonMobil子会社、オペレーター、30%)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:
SODECO
 (石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資
30%)
ONGC Videsh(インド、20%)
Sakhalinmorneftegaz-Shelf(ロシア、11.5%)
Rosneft-Astra(ロシア 8.5%)                
投 資 額 約120億ドル以上
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
①石油    約23億バレル
②天然ガス 約4,850億立方メートル

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