2012年7月アーカイブ

"Nuclear 'hard to justify', says GE chief" 

7月30日付の英 Financial Times は、このタイトルでGeneral ElectricのCEOのJeff Immeltのインタビュー記事を掲載した。

シェールガス革命で天然ガスが豊富に供給され、再生可能エネルギーの選択肢も増えたことから、原子力発電を正当化することは難しくなったというもの。

Jeff Immelt氏の発言:

原子力発電は他のエネルギー源と比べて高くなり、正当化は本当に難しくなった( "really hard" to justify)。

天然ガスは安くなり("permanently cheap")、これからは天然ガスと風力発電だ。("It's really a gas and wind world today.")

天然ガスが非常に安くなり、いずれかの時点で経済原則が効いてくる。
Gas is so cheap and at some point, really, economics rule.)

世界の多くの国が天然ガスと、風力か太陽光のいずれかとの組み合わせ(some combination of gas, and either wind or solar)に向かっている。

背景には、シェールガス革命による天然ガスの10年来の安値と、福島第一原発事故後の原発の追加コストと不確実性がある。

更に太陽光パネルの価格が過去3年で75%も下落しており、ある報告では昼間電力コストと競合可能となってきている。
海上風力発電タービンの価格も着実に下落している。

なお同氏は、GE自体は全てのエネルギー源の製品を扱っているため、こうした変化が業績に与える影響は限定的との見方を示した。
"We've got them all, so in some ways when you have them all you don't have to be so smart about anything," he said.

アナリストの分析では、GEの原発関連(日立製作所と提携)の売上高は約10億ドルで、同社の全世界の売上高の1%弱に過ぎない。



1.CNOOCによる Nexen買収

中国海洋石油(CNOOC)は7月23日、カナダのエネルギー大手Nexenを約151億ドルで買収することで合意したと発表した。

Nexenの普通株1株につき27.50米ドルを支払う。これは、7月20日の終値に61%のプレミアムを上乗せした水準。
Nexenの現在の借入金、約43億ドルはそのまま。

CNOOCは買収資金を手元資金と外部調達によって確保する。

これまでに実現した中国企業の海外買収としては最大規模となる。
既に、Nexenの取締役の満場一致の賛成を得ている。

外資によるカナダ企業の買収は、投資金額が3億3000万カナダドルを上回る場合、政府が国益に反すると判断すれば阻止することができる。
(2010年にはBHP Billitonによる加Potashの買収案が阻止された経緯がある。)

カナダの産業相は7月B23日、CNOOCの買収案に対する審査を行う意向を確認した。
ただアナリストは、Nexenの資産の大半がカナダ国外にあることが審査を通過しやすくする可能性があるとの見方を示した。

また、カナダ政府はアルバータ州北部のオイルサンド開発に外資を呼び込みたい意向で、同政府の承認を得られそうとの見方もある。

Nexenはカナダに本拠を置くグローバルなエネルギー企業で、トロントとNew Yorkに上場している。

カナダでオイルサンドやシェールガス資産を保有しているほか、北海やメキシコ湾、西アフリカ沖で生産・探査を行っている。

Conventional Oil & Gas Onshore Canada、Yemen、Colombia
Offshore UK North Sea 
West Africa
Gulf of Mexico
Oil Sands Long Lake oil sands in Canada
Shale Gas Northeastern British Columbia, Canada
開発中 Poland、Colombia

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2.Sinopec、カナダのTalisman の英国子会社に出資、北海油田進出

Sinopecは7月24日、カナダのTalisman Energy の英国子会社Talisman Energy (UK) の49%を15億ドルで取得することで合意した。
Talisman Energy (UK)を両社のJVとし、事業を拡大する。

Talisman Energy (UK)は、北海で石油・天然ガス田51カ所を保有し、うち油田35カ所の運営を担当する。既存の油田を中心に、権益を保有する探査区域の面積は約1800平方キロメートル。

Talismanは北海で探査の成功例が少なく、高い税金でコストも膨らんでいたことから、以前から権益の縮小を目指していたとされる。

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Talisman Enegy は主に、北米、北海、東南アジアで活動している。

2010年の生産量は、417,000 boe/dで、石油とガスが半々となっている。,

North Seaでは英国とノルウェーに子会社を持つが、今回はTalisman Energy (UK)が対象なので、英国部分のみとなる。

 

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中国の海外石油への進出状況は以下の通り。

なお、CNOOCは2005年に米Unocalを185億ドルで買収する提案を行ったが、米議会がCNOOCよる買収阻止条項を含むエネルギー法案を可決したため、断念した。

Unocalは、当初165億ドルでの買収を提案していたChevronが170億ドルで買収した。

2005 CNOOC 米 Unocal 〔米議会の反発で断念〕 185億ドル
2008 CNOOC ノルウェー海底石油開発 Awilco Offshore  約25億ドル
2009 Sinopec スイス Addax Petroleum 約75.6億米ドル
2010 CNPC Australia Arrow Energy Ltd.
(Shell との50/50JV=CS CSG (Australia) Pty Ltd.)
35億豪ドル
Sinopec Repsol Brazilに40%出資 71億ドル
2011 Sinopec ポルトガルのGalp Energiaのブラジル子会社の30% 約52億ドル
2012 CNOOC Nexen Inc.〔本件〕 151億ドル
Sinopec Talisman UKの49%〔本件〕 15億ドル


非在来型

2005/4 中国海洋石油 カナダのオイルサンド開発企業・MEGエナジーの株式の16.69%を買収
2009/9/10 PetroChina、カナダのオイルサンド事業に参加 Athabasca Oil Sands
2005/6 SinopecNorthern Lightsにおけるオイルサンド事業の権益の40% をSynenco Energy から買収
2009年に50%にアップ
2010/4/16 Sinopec、カナダのオイルサンドに投資 ConocoPhillipsのオイルサンド事業会社 Syncrude Canada
2010/10/18 CNOOC、テキサス州のEagle Ford Shale projectに参加   Niobrara shaleを追加
2011/2/16 PetroChina、カナダの天然ガス権益取得 →交渉中止
2011/7/22 中国海洋石油、カナダのオイルサンド企業を買収 OPTI Canada
2012/1/9 PetroChina、カナダのオイルサンド権益を100%にアップ、Sinopecは米のシェールガスの権益取得
2012/2/7 Shell とPetroChina、非在来型ガス開発での提携強化 


 



欧州司法裁判所は7月19日、浙江新安化工集団が除草剤・グリホサートに関する反ダンピング措置をめぐって欧州連合を訴えていた裁判の最終判決を下した。

同裁判所はEUが同公司に対して取った反ダンピング措置は無効であると認定し、欧州理事会の上告をすべて棄却した。

判決 http://curia.europa.eu/juris/document/document.jsf?text=&docid=125218&pageIndex=0&doclang=en&mode=lst&dir=&occ=first&part=1&cid=159052

 

EUは1998年に同社の除草剤グリオサートの輸入をダンピングと認定した。

問題は、中国がEUで市場経済国待遇(market economy treatment:MET) を受けていないことである。

WTO協定では「貿易の完全な又は実質的に完全な独占を設定している国ですべての国内価格が国家により定められているものからの輸入の場合には、規定の適用上比較可能の価格の決定が困難であり、また、このような場合には、輸入締約国にとって、このような国における国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないことを考慮する必要があることを認める。」と規定している。

但し、「非市場経済国」の定義はなされておらず、どのような場合に輸出国を「非市場経済国」として認めるかについては各国の裁量にゆだねられている。

「市場経済国」との認定を受けていない国の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。
EUは中国に市場経済国待遇を適用せず、しかも
中国よりコスト水準の高い国を代替国に採用するケースが多く、この結果、ダンピングと判定される確率も高くなっているといわれている

2006/2/27  EU、中国・ベトナムの革靴に反ダンピング税

但し、EUの規則には例外規定がある。

Article 2(7)(b)
反ダンピング調査を受けた非市場経済国の製造者が、当該製品に関しては市場経済環境が存在するということを証明した場合、一般ルールが適用される。

具体的には、
原材料コスト、技術や労務費、生産量、価格、投資などが国家の重要な関与なしで、需要と供給を反映した市場のシグナルに対応して決められる場合、等々。

新安化工はこの規定の適用を求めたが、EUは中国政府が新安化工に出資(少数株主)していることを理由に、国家の関与があるとしてこれを拒否した。

このため、新安化工は訴訟に持ち込んだ。

General Court in Luxembourgは2009年に、この例外規定を勘案し、ダンピングでないとの判決を下した。

今回の欧州司法裁判所の判決は、EUがこの判決に対して控訴したもの。

判決では、下級審の判決を支持し、政府が出資しているだけで市場経済国待遇を適用しないのは経済の実態に合っていないとした。

政府の出資と、国家の重要な関与とは同じではないとし(
State control ... cannot be equated to 'significant State interference')、全てのState interferenceが問題なのではなく、 prices, costs, inputsに関する決定でのsignificant interferenceだけが問題であるとしている。

この判決は、今後のEUの中国品の反ダンピング調査に大きな影響を与えることとなる。

EUでは、判決は当該輸出者の実情を基にしたものに過ぎず、今後もケースバイケースで対応するとしている。


   

公取委は7月20日、ビールなどの販売を巡り、大手スーパー「イオン」に仕入れ値を下回る価格で卸した疑いがあるとして、大手卸売3社に警告する方針を固め、事前通知した。

警告を受けるのは、三菱食品、伊藤忠食品、日本酒類販売で、独禁法上の「警告」は、違反と認定するまでの証拠はないものの、違反の疑いが残る行為をやめさせるために行う行政指導。

ビール大手が安売り合戦を抑制するために、販売数量に応じて支払う報奨金(リベート)を2005年に廃止した際、反発したイオンが店頭価格を引き上げなかったことから、食品卸3社が原価を下回る価格でビール類をイオンに卸さざるをえなくなった。
「イオン周辺の酒販店が販売価格面で不利な状況に立たされている」との指摘から、公取委が調査を進めてきた。

報道では、公取委は、ビール大手4社とイオンにも不当廉売の原因があるとして、適正な価格で取引するよう異例の協力要請を行う。

ーーー

この報道を受け、イオンは7月23日に「見解」を発表した。
http://www.aeon.info/news/important/pdf/120723R_2_1.pdf

同社は以下の通り述べている。
・原価を下回る価格での納入を要請した事実はない。

・公取委から、独禁法違反(優越的地位の濫用)の疑いで調査を受けたが、その事実は認められなかった。

・公取委から事実上の値上げ要請があっても、取引条件を変更し、仕入れ価格の値上げに応じる意向はない。

概要は以下の通り。

(取引価格)
 ・卸売3社と十分に協議の上、合意した条件にて取引をしている。
 ・一方的に取引の条件を決定するなどした事実は一切ない。
 ・3社に対して、原価を下回る価格での納入を要請した事実もなく、
  3社が原価割れの状態で販売していた商品があるか否かについて確認できる立場にない。

 ・値上げ要請に対して真摯に交渉を重ねて根拠を確認し、やむを得ない事情があれば、応じてきた。
  (2006/4 酒税法改正、2007~2008 原材料価格高騰など)

(リベート削減による原価割れ)
 ・リベートはメーカーと卸との間のもので、内容は知らない。
 ・リベート削減は卸が自らの経営判断で合意したもの。
 ・イオンとしては、リベート削減はやむを得ないコスト増ではないため、値上げに応じていない。

 ・当時の公取委事務総長も2005年の新取引制度導入時に以下の発言をしている。

応量リベートが廃止されたから値上がりするというようなことではないと思います。
要するに、応量リベートがなくなるということは、それを織り込んだ出荷価格の交渉が行われるわけですので、市場の需給を反映しつつ、従来リベートとして支給されていた部分が出荷価格に反映されていくものと思われます。
(2004/12/15定例会見)

リベートがなくなったから高くなるといったことは、私どもには理解できないことでありまして・・・
当然これまでのリベート分を考慮しながら、交渉がなされ、・・・
 (2005/2/2会見)

(優先的地位の乱用)
 公取委からも、メーカーの販売奨励金の削減を理由とした値上げ要請について、優先的地位の乱用の疑いがあるのではとの調査があったが、事実は認められなかった。

(結論)
 公取委が、交渉により決定された取引条件を変更し、事実上の値上げとするよう協力要請がされるとすれば、
 事業者の契約内容決定の自由に対する大きな萎縮効果をもたらす結果となり、
 自由かつ活発な経済活動の根幹を揺るがしかねない。

 公取委から3社との間の価格調整をするよう協力要請がなされても、値上げに応ずる意向はない。

 今後も小売業の社会的使命として"消費者代位機能"を果たすべく、合理化によるコスト削減や商品価値の最大化を図っていく。

ーーー

リベート削減でビールの小売価格が上がったのは事実であるが、公取委事務総長の発言をもとにすると、ビール会社が、「従来リベートとして支給されていた部分を出荷価格に反映」させなかったのが問題ということになる。

そもそも、ビールのリベート廃止は公取委の指導で行われた。

「公正取引委員会としては、ビールメーカーが、卸売業者や、場合によっては小売業者に対して支払っている各種リベートのうち、明確な供与基準に基づいていない、あるいは、そもそも基準を作っていない、あるいは、それを裁量的に支給している場合には、しかもそのリベートの占める金銭的割合が大きいということになりますと、独占禁止法上の取引条件等における不当な差別取扱いの問題を生じさせるおそれがあるとして、当委員会として、ビールメーカーに対してこういった明確な基準に基づかない裁量的なリベートの適正化に向けての働きかけをしてきたことは事実であります。」
(2004/12/15 事務総長定例会見)


リベート削減は全体としてのコストアップではなく、イオンの言い分は理解できる。

この状態で立場の弱い卸を責めても、イオンがリベート問題による値上げを全面拒否している以上、問題は解決しない。

「リベートがなくなったから高くなるといったことは、私どもには理解できない」と言いながら、値上げをしないといって卸3社に警告するというのは、公取委としておかしいのではないか。

リベートがなくなったのに出荷価格を変えないというのは、メーカー側の「優先的地位の乱用」ではないのか。

また、公取委の「不当廉売」の定義もおかしい。イオンが値上げを呑まないから、卸3社とも原価を割った販売をしているが、これが不当廉売だろうか。
化学業界でも、需要家がコストアップの転嫁を認めてくれず、赤字になっているケースは多くある。


現在は卸3社への事前通知の段階だが、公取委がどう動くかが見ものである。

とにかくビールの価格を下げてほしい。


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不当廉売に関する独占禁止法上の考え方(公取委)

① 独占禁止法第2条第9項第3号

 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

② 不公正な取引方法第6項

 法第2条第9項第3号に該当する行為のほか、不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。

(いずれにせよ問題なのは、ある目的の達成のために自己の判断で廉価販売をすることであり、今回のように、仕入れ先も販売先も価格変更に応じないために止むを得ず廉売することは対象にならない筈)

 他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ

通常の場合,廉売対象商品について当該廉売を行っている者と競争関係にある者を指す。
廉売の態様によっては、競争関係にない者が含まれる場合もあり得る。

例えば、有力な事業者が、他の事業者を排除する意図の下に、可変的性質を持つ費用を下回る価格で廉売を行い、その結果、急激に販売数量が増加し、当該市場において販売数量で首位に至るような場合

(本件の場合は、該当しないと思われる)

 正当な理由

廉売を正当化する特段の事情があれば、公正な競争を阻害するおそれがあるものとはいえず、不当廉売とはならない。

例えば、需給関係から廉売対象商品の販売価格が低落している場合、廉売対象商品の原材料の再調達価格が取得原価より低くなっている場合において、商品や原材料の市況に対応して低い価格を設定したとき、商品の価格を決定した後に原材料を調達する取引において、想定しがたい原材料価格の高騰により結果として供給に要する費用を著しく下回ることとなったときは、「正当な理由」があるものと考えられる。

(本件の場合、想定しがたい「リベートの廃止」により結果として供給に要する費用を下回ることとなったと言えるのでは? しかも、リベート廃止は公取委の指導によるもの。





北朝鮮に埋蔵されたレアアースを開発するため、韓国と北朝鮮が昨年末に、北朝鮮の提案で開城工業団地で2回にわたって秘密協議を行ったことが明らかになった。

北朝鮮のレアアース共同開発提案は、2010年の天安艦沈没事件以降、韓国政府が対北朝鮮事業を事実上中断した「5.24措置」の後に出たもので、南北経済協力に突破口が開かれる契機になるかに注目が集まっている。

韓国政府は2010年5月24日に対北朝鮮措置を発表した。
 ・韓国海軍の哨戒艦沈没問題を国連安全保障理事会に提起。
 ・開城工業団地と金剛山地区を除き、韓国民の北朝鮮訪問を不許可。
 ・開城工業団地を除く南北間の交易と交流を中断。
 ・開城工業団地を含む北朝鮮に対する新たな事業投資を不許可。開城工業団地の滞在人員縮小。
 ・北朝鮮商船に開放されている釜山と済州島間を含む韓国側海域の航行を24日から不許可。
 ・韓国の領海、領空、領土を武力侵犯した場合は自衛権発動。
 ・南北非武装地帯周辺で大音量スピーカーを通じた対北朝鮮宣伝放送を24日から再開。
 ・米軍と合同で対潜水艦軍事演習を近く実施。
 ・大量破壊兵器拡散防止構想に基づく海上封鎖訓練を今年後半に実施。

報道によると、韓国鉱物資源公社が2011年9月に自社が投資した黄海南道延安郡の黒鉛鉱山開発問題を協議するため 、北朝鮮の民族経済協力連合会(民経連)の関係者と開城工業団地で接触し、この過程で北朝鮮がレアアース共同開発を提案してこれを議論した。
北朝鮮側はレアアースだけでなく、石炭鉱山の共同開発も強く提案したとされる。

南北は2002年3月に黄海南道延安郡の黒鉛鉱山の共同開発で合意し、大韓鉱業振興公社と北朝鮮の光明星総会社が折半の現物投資で2004年3月から開発を開始した。
同鉱山は埋蔵量が約625万トンで、生産量は年間3,000トン。公社側は15年間にわたり、毎年1,830トンを韓国側に搬入する計画で、2007年11月に初出荷された。

その後2011年11月に民族経済協力連合会関係者からレアアース鉱石のサンプル4個が渡され、サンプルを分析した結果、軽レアアースであることが確認された。
鉱物公社側は、サンプル分析結果を北朝鮮側に説明しようとしたが、金正日総書記の突然の死亡による情勢変化で追加協議は中断した。しかし、鉱物公社は北朝鮮側とホットラインを維持しているという。

金信鍾鉱物公社社長は本年2月に李明博大統領にレアアースサンプルの分析結果を報告した。大統領は「うまく進めてもらいたい」と激励したという。

鉱物公社では、同社が中国に投資した西安と北京のレアアース工場2カ所で北朝鮮のレアアースを精製することを検討している。
また、「共同生産に中国が参加すれば南北関係の変動にともなうリスクを減らすことができる」としている。

現在は韓国政府は北朝鮮への入国を許可しておらず、南北関係の改善が前提となる。

韓国の資源開発業界は、北朝鮮が開発中の鉱山696ヵ所にレアアースを含め42種の鉱物が埋蔵されているとみており、とくにレアアースは北朝鮮に最大で2000万トンほどが埋蔵されていると見込んでいる。
(アメリカ地質調査所の調査では、2010年の中国のレアアース埋蔵量は5500万トン)

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なお、2011年5月の金正日総書記の中国訪問時に、中国から肥料とトウモロコシの支援を受ける代わりに、中国に北朝鮮のレアアース開発を認めたと報道されている。

中国側は、北朝鮮の咸鏡道茂山のレアアース採掘設備を支援し、積み出すための道路の拡張と舗装費用を負担する。
レアアースの半分は中国側が受取り、残り半分は中国が国際相場で販売して収益を北朝鮮に支払うとされた。


 



京都大の山中伸弥教授は7月17日、日本赤十字社と連携し、「iPS細胞ストック」を構築する意向を明らかにした。


山中教授は2012年5月のフォーラムで、iPS細胞による再生医療について「2020年まで全力疾走で研究を進め、新しい医学を確立させたい」と述べ、iPS細胞をタイプ別に準備する「iPS細胞ストック」の構築事業に今年から取り組む方針も明らかにしている。

2012/5/22 米国で3件目のiPS特許成立、iPS研究の現状

iPS作成には1人当たり1千万円程度がかかり、作製に半年が必要で急場の間に合わない。このため、厳重に品質管理されたiPS細胞ストックを構築するもの。

iPS細胞ストックの利用に際しては拒絶反応対策が必要で、白血球の血液型といえるHLA(ヒト白血球型抗原:Human Leukocyte Antigen)の合致が求められる。

HLAは白血球だけにあるのではなく、ほぼすべての細胞と体液に分布していて、組織適合性抗原(ヒトの免疫に関わる重要な分子)として働いていることが明らかになっている。

HLA抗原はヒトの第6染色体の上にある遺伝子群(DNA)によって決定されるタンパクで、核を持った細胞の表面上に存在する。

タンパクの構造によってクラスⅠ抗原(A、B、C)とクラスⅡ抗原(DR、DQ、DP)に分けられる。

移植には原則としてA座ーB座ーDR座の3座の適合が必要。(父母から各1の組み合わせを引き継ぐため、計6座)

Aは237種類、Bは472種類、DRは304種類で、理論的には34百万の組み合わせとなる。
兄弟姉妹の間では4分の1の確率でHLAが一致する。


父のAa-Bb-DRc(その父から)と Ad-Be-DRf(その母から)のいずれか
母のAg-Bh-DRi(その父から)と Aj-Bk-DRm(その母から)のいずれかの組み合わせ

HLA型は父母ごとに何百種で、合わせて何万もあり、全てのストックは無理だが、HLAホモドナー(父母が同型)のものは、片方が合えば使用できる。

HLA型が例えば [Ax-By-DRz & Ax-By-DRz〕のドナーのものは、片方が[Ax-By-DRz〕の人すべてに移植可能

民族によりHLA型の分布が異なるが、日本人の場合は、ある1名のホモドナーで全体の20%75名のホモドナーで80%をカバーできる。

ホモドナーを探すためにボランティアから血液を提供してもらう選択肢があるが、1例ずつ型を調べると費用が膨大になる。
赤十字との提携で、赤ちゃんのへその緒の臍帯血や骨髄などをバンクに登録する際に調べてあるHLA情報が利用できる。

iPS細胞研究所では、「提供者のプライバシーに配慮したうえで、再来年には臨床研究などで必要な人がいれば提供できるよう準備を進めたい」と話している。

 

 

 

ロシアのプーチン大統領は7月21日、ロシアが世界貿易機関(WTO)に加盟する批准法に署名した。

WTOは2011年12月16日の公式閣僚会議で、ロシアのWTO加盟を正式に承認した。
1993年のロシアの加盟申請以来、18年後の承認となった。

2011/12/22 ロシアがWTO加盟 

ロシア下院は7月10日に賛成多数で批准を承認した。

採決の賛否は真っ二つに割れ、賛成238票、反対208、棄権1で、与党第一党「統一ロシア」だけの賛成票で、議定書は批准された。

野党3党は国内産業への打撃を懸念して断固反対の立場をとり、加盟すればロシア経済が崩壊すると警告した。

共産党:我々が売れるのは武器と肥料だけ。WTO加盟は破滅への道。

公正ロシア:経済が現代化していないうちに開放するのは大きな誤り。
       WTO加盟が有利に働くのは、国内市場が活発で、競争力のある商品を生産している国だけ。

自由民主党(極右):ロシアはWTOに無縁。ロシアはモノを作ることはできても、売ることが下手。

これに対し、経済発展相は、WTOに加盟した場合の経済効果を2年で5000億ルーブル(約1兆2000億円)の歳入増になるとし、一方、輸入関税の減額による予算の直接損失額は、2013年で1880億ルーブル(約4600億円)、2014年で2570億ルーブル(約6300億円)とした。

上院は7月18日、法案を可決した。

プーチン大統領の署名完了をWTOに通知してから30日後 の8月22日にロシアは156カ国目の加盟国となる。

中国は10年前の2001年12月11日に加盟しており(加盟申請は1995年10月)、それ以来の大型加盟となる。
  2011/12/13 中国、WTO加盟から10年

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ロシアは加盟後、輸入関税の引き下げと経済の一部の外資開放が求められる。

輸入関税については、現在の平均 9.5%から2015年までに6%へと段階的に引き下げることで合意しており、ロシア政府は9月1日から引き下げを開始する方針を示している。


一方、米国は、対ロ貿易の障壁となっている冷戦時代からの通商規制である「ジャクソンバニック修正条項」の撤廃が議会で認められなければ、ロシアのWTO加盟に伴う恩恵を受けられない可能性もある。

Jackson‐Vanik amendment はアメリカ合衆国通商法第4編の通称で、アメリカによる共産圏諸国への経済制裁と、共産圏諸国に在住するユダヤ人の移住を援助した法律。

ソ連は在ソユダヤ人の海外移住を制限し、高率の税金を掛けていたため、米国は1974年に通商法に本条項を盛り込んだ。
・共産圏については基本として最恵国条項としない。
・移民を阻害しない場合のみ、最恵国条項を適用する。

ソ連はこれに反発して1975年1月、最恵国待遇の付与を規定していた米ソ通商協定を破棄した。
1990年になり、ソ連もユダヤ人の出国を全面解禁した。

オバマ米大統領は2011年11月にハワイでロシアのメドベージェフ大統領と会談した後、記者団に対し、ロシアのWTO加盟決定を受けて、ロシアとの通商取引を制限する「ジャクソン・バニック修正条項」の適用を除外するよう議会に働きかける方針を表明した。

米国議会はWTO加盟を目前にしたロシアに対し、同国からの輸入製品への差別を永久に撤廃する内容の「恒久的正常貿易関係」(PNTR)を付与するかどうかの議論を進めている。
   * 米国では1998年に最恵国(MFN)からPNTRに名称を変更した。

中国に関しては、米国は1979 年7 月に米中貿易協定を締結し、中国に最恵国待遇を付与した。しかし、非民主主義国には恒久的な最恵国待遇を与えないというジャクソン・バニック修正条項により、最恵国待遇は1 年更新を繰り返す形とした。
その後、
2001 年の中国のWTO 加盟の直前に「恒久的正常化通商関係(PNTR)」を付与した。
 



中国商務省は7月20日、米国製の太陽光発電パネル向け多結晶シリコンについて反ダンピング調査、反補助金調査を開始したと発表した。合わせて韓国製の多結晶シリコンについても反ダンピング調査を開始した。

いずれも7月2日に、中国の国内メーカーを代表して、江蘇中能矽業科技發展有限公司、江西賽維LDK光伏矽科技有限公司、洛陽中矽高科技有限公司大全新能源有限公司から調査の要請を受けたとしている。

中国が輸入している多結晶シリコンの約4割が米国製で、2割は韓国製とされる。
中国メディアは安価な製品の流入で多結晶シリコンを生産する中国企業は生産停止や倒産に追い込まれ、多数の失業者が出たと報じている。

対象となる多結晶シリコンメーカーは、米国のHemlockやMEMC Electronic Materials、韓国のOCI Corp.など。

今回のダンピング調査の対象期間は2011年7月1日から2012年6月30日まで、損害調査の対象期間は2008年1月1日から2012年6月30日までとなっている。

反補助金調査の対象としては、以下を挙げている。

 連邦政府:先進的エネルギー生産に対する税額控除制度

 地方政府;
  ミシガン州 各種の税額控除、融資制度
  テネシー州 工場建設のためのインフラ、従業員訓練費用補助、土地の安価提供
  ワシントン州 当該メーカーへの税率引き下げ、その他
  アイダホ州 無償土地代

今回の措置は、米政府による中国製のソラーパネルへの相殺関税、ダンピング関税の仮決定に対する対抗措置とみられ、中国向け輸出の多い韓国は巻き添えを食ったもの。

ーーー

米商務省は2011年10月、米国のソラーパネルメーカーから「中国メーカーは政府支援を受けて生産・販売コストより安くパネルを販売している」として、関連調査と100%超の関税適用をするよう請願を受けた。
中国からのソラーパネルの輸入は2009年の640百万ドルから2010年に1,500百万ドルに急増した。

ダンピング課税に賛成するグループは、免税、安い原料、安い土地代や電気水道代、有利な借入金、輸出保険、輸出支援など、中国政府による実質的な補助金に対し、相殺関税を課するよう求めた。

他方、中国からの安い輸入パネルで太陽発電を推進している米国のメーカー25社はこれに反対し、太陽電池の価格上昇で米国の需要は減少し、10万人の職が失われるとし、反対した。

これを受け、米商務省は11月9日、反ダンピング課税と相殺関税について調査すると発表した。

米商務省の調査開始発表に反発した中国商務部は11月25日、米政府による自国の再生可能エネルギー業界への政策支援や補助金拠出が貿易障壁に当たるかどうか、調査を始めたと発表した。
(今回の措置はこれに基づくもの。)

米商務省は3月20日、中国のソラーパネルメーカーが中国政府から不当な補助金を受けているとして、相殺関税を課す仮決定を下した。
相殺関税の対象となるのは中国製の結晶シリコン型ソラーパネルで、税率は2.90~4.73%。業界要求の100%と比べると非常に低率となっている。

更に、米商務省は5月17日には中国製太陽電池を対象に、31.14-249.96%の反ダンピング関税を課す仮決定を下した。

日程表によると、米商務省は今回の仮決定に続き、今年10月上旬に反ダンピング・反補償金関税に関する最終決定を下す見通しで、その場合、米国際貿易委員会も今年11月下旬に肯定的な最終決定を下し、これを受けて、米商務省は中国製太陽電池に反ダンピング・反補助金関税を課することになる。

2012/3/24   米商務省、中国製ソラーパネルに相殺関税 

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米国は今回の措置に遺憾の意を表しており、USTRでは、「中国が、貿易相手国の取った法的措置に対する報復措置として、反ダンピング調査等を利用していることに懸念をしている」と述べた。

なお、米紙は「中国のジレンマ」と報じている。

実際に反ダンピング課税が行われると、中国のソラーパネルメーカーのコストが上がる。更に米国(と恐らくEU)からのソラーパネルに対する反ダンピング、反補助金課税も受ける可能性があり、下流と上流からダブルでコストアップとなる。


全原発廃炉を目指す民主、自民両党などの有志議員が3月27日、超党派の勉強会「原発ゼロの会」を立ち上げた。

発足趣意書では、① 超党派で原子力政策の大転換をはかる、② 原発ゼロへの国民の思いの受け皿となるとし、
具体的政策として、① 原発依存ゼロ、② 再処理ゼロ、③ 再生可能エネルギーへの大胆な転換を挙げた。

原発ゼロの会は6月27日、政策提言を行った。
6月28日には「原発危険度ランキング」を発表した。

政策提言、ランキングは 2012/6/29 原発危険度ランキング


「原発ゼロの会」はこのたび、国会議員のメンバーの募集を始めた。

東京電力福島第一原発事故を踏まえて、我が国の政治がなすべき第一は、「原発ゼロ」に向かうという決断であるとし、7月下旬までには最終的な政策提言をとりまとめ、国民的論議に付したいとしている。

参加議員に対しては以下の点を求めている。

明確に「原発ゼロ」、すなわち今あるすべての原子炉の廃炉と使用済み核燃料の再処理を行なわないという政治的意思を持つ
   
有権者たる国民にそれを自らの政治的公約とするとともに、その所属政党を問わず信念を持って実現させることに全力をあげる
   
「国会エネルギー調査会(準備会)」への積極的な参加によって、議論の活性化をはかることに努める

 

河野太郎議員は以下の通り述べている。

あなたの地元の衆議院議員、参議院議員は「原発ゼロの会」のメンバーになっていますか。

ぜひ、あなたの地元の国会議員事務所に電話をして、国民と未来を創る側に立つのか、原子力ムラの利権を守る側に立つのか、尋ねてみて下さい。

河野太郎公式ブログ  ごまめの歯ぎしり 「原発ゼロの会 メンバー募集中」

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枝野幸男経済産業相は7月21日、民主党栃木県連が宇都宮市内で開いた集会で、原発について「わたし個人の心情で言えば、明日にでも全部止めたい」と語った。ただ、電力不足や料金の高騰などが起きるため、実際には難しい点も指摘。関西電力大飯原発の再稼働に理解を求めた。

原発に代わる電源を確保するため、再生可能エネルギーや安いシェールガスの割合を増やしたり、省エネを進めたりするには「時間がかかる」と強調した。

 



福島第一の原発事故が「異常に巨大な天災地変」によるものかどうかを争う裁判の判決が7月20日、東京地裁であった。

東電の株主である弁護士が、国に対して東電の株価の下落で受けた損失150万円の損害賠償を求めた裁判。

「東日本大震災は『異常に巨大な天災地変』で原子力損害賠償法の免責規定にあたるのに、国が東京電力に賠償責任を負わせたことで株価が下落した」として訴えていた。

原子力損害賠償法には「異常に巨大な天災地変」で損害が生じた場合、原発事業者は免責されるとの規定がある。

第三条 (無過失責任、責任の集中等) 原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。

政府は、東日本大震災は異常な天災とはいえず、原発事故を起こした東京電力は事故による被害の賠償責任を免れないとしてきた。

これに対し原告は、「日本の歴史上最大の震災で、規定に該当するのは明らか」と訴えたもの。


地裁は、「国の判断には相当の根拠がある」として男性の訴えを棄却した。

判決はまず「免責が軽々と認められるようでは、被害者の保護が図れない」と基本的な考え方を示した。

続いて、今回の東日本大震災では東電は免責されないとした政府の見解が違法かどうかを検討した。

第三条のただし書きの解釈について、「関東大震災の3倍以上」などの表現がある国会審議や文献を踏まえ、「『異常に巨大な天災地変』の定義はさまざまな解釈があり、一義的に導くことは困難」と指摘した。

そのうえで地震の規模(マグニチュード 9.0)や津波被害を原賠法施行後に起きた過去の大地震と比較し、規模や津波の高さが1964年のアラスカ地震や2004年のスマトラ沖大地震を上回っていないと指摘 、「免責されるのは、人類がいまだかつて経験したことのない全く想像を絶するような事態に限られる」とした政府の見解には合理性があると結論づけた。




 

三菱化学とBASFは7月17日、三菱化学 のビニレンカーボネートに関する特許をBASFに使用許諾するためのライセンス契約を締結したと発表した。

BASFは本年2月にMerckから高機能バッテリー用電解液事業を買収した。
MerckがSelectilyte®ブランドで販売していた電解液材料の全製品、リチウムイオン・バッテリーの製造に使われる各種添加剤のほか、新規電解質や添加剤関連のメルクの研究ポートフォリオも対象となる。

Merckは三菱化学からこの特許の使用許諾を受けていたが、BASFによるMerckの事業買収に伴い、改めてBASFとして使用許諾を受けるもので、BASFはリチウムイオン・バッテリー関連の電解液事業を強化する。

 

三菱化学の電池材料事業については
  
2010/9/13 三菱化学、リチウムイオン二次電池用負極材の製造能力増強 

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BASFはバッテリー材料の研究、開発、製造に今後5年間で総額数億ユーロの投資を計画している。
リチウムイオン・バッテリー用材料の開発ほか、リチウム硫黄電池やリチウム空気電池といった新しいコンセプトのバッテリーについても研究を進めている。

BASFのこの分野での昨年来の動きは急である。

1)   BASFは2011年5月、 リチウムイオン電池用電解質の生産事業に進出することを明らかにした。
有機カーボネートに基づいた高品質の電解液フォーミュレーションを開発し、バッテリー・メーカーに販売するグローバルな電解液チームを設置した。
     
2)   同社は2012年1月1日付でグローバルな "Battery Materials"ユニットを触媒事業本部に新設した。
これまで触媒事業本部でやっていた正極材料開発、中間体事業本部の電解液フォーミュレーション、子会社のBASF Future Businessの次世代リチウムバッテリーを統合した。
     
3)   1月12日にはリチウム硫黄 (Li-S)電池開発のグローバルリーダーの米国のSion Power Corporationに50百万ドルを投じて株主となった。Sion とBASF Future Businessは2009年から共同開発契約を結んでいたが、関係を強化する。
     
4)   BASFは2月14日には太陽光パネルなどを製造する米Energy Conversion Devices子会社のOvonic Batteryを買収したと発表した。
OvonicはNickel-Metalhydride (NiMH:ニッケル水素)電池のグローバルリーダーで、正極活物質(CAM) の製造も行っている。
NiMH技術で多くの特許を取っており、ニッケル水素電池メーカーはほとんど同社からライセンスを受けている。


なお、親会社のEnergy Conversion Devicesは同日、子会社の太陽光発電のUnited Solar Ovonic LLCやSolar Integrated Technologies, Inc.とともに、 破産法第11条の適用を申請したと発表した。

     
5)   2月21日にはBASFは上記のMerckの高機能バッテリー用電解液事業買収を発表した。
6)   これに伴い、7月17日に三菱化学のビニレンカーボネートに関する特許 の使用許諾のライセンス契約を締結したと発表した。
     
7)   BASFは3月14日、Clariant AGの関係会社であるLiFePO4+C Licensing AGとの間で、 Lithium Iron Phosphate (LFP:リン酸鉄リチウム)バッテリー材料技術のグローバルな製造・販売権の取得を目的とした長期的なライセンス契約を締結したことを発表した。

Lithium Iron Phosphate技術を独占的・世界的に保護するものであり、LFP材料の基本的な材料に関する特許、LFP材料製造に用いる炭素被覆に関する特許、炭素被覆のプロセスに関する特許を対象としている。

LiFePO4+C Licensing AGは、Hydro-Québec (Montréal); Université de Montréal; Centre National de la Recherche Scientifique (CNRS:フランス国立科学研究センター)で構成されるこの技術の特許権者が代表する組織。

LFPは、革新的なリチウムイオン電池の製造で使用される画期的な正極材料で 、あらゆる種類のリチウムイオン電池で使用することができ、ハイブリッド車のような高出力用途や定置型電池などにも最適である。

BASFは現在、リチウムイオン電池向けのNickel-Cobalt-Manganese (NCM) 正極材料を提供しているが、今後はLFPの知的財産権が加わることにより、活動がさらに強化される。

BASFはNickel-Cobalt-Manganese技術で世界をリードするアルゴンヌ国立研究所と、Lithium Iron Phosphate技術で最先端の特許ポートフォリオのライセンスを持つLiFePO4+Cの双方から、リチウムイオン電池の材料の製造・販売に関するライセンスを取得した世界で唯一の企業とな る。

     
8)   BASFは4月26日、リチウムイオン電池用電解液フォーミュレーションおよびスペシャリティケミカルのメーカーのNovolyte Technologiesを米国の投資会社Arsenal Capital Partnersから買収したと発表した。

買収対象にはリチウムイオン電池向け電解液フォーミュレーションの開発・製造・マーケティングを中心としたノボライト社のでのエネルギー貯蔵関連の事業と、アリルホスフィン類、高機能溶剤、カスタムメードのスペシャリティ製品などの高機能製品事業が含まれる。

更に、Novolyteと韓国のFoosung Co.(厚成)との中国での合弁会社も継承する。
Foosungは、リチウムイオン電池の性能を左右する電解液フォーミュレーションの製造に不可欠な材料である高純度特殊塩「LiPF6(Lithium Hexafluorophosphate)」のグローバルメーカー。

Novolyteは、米国ルイジアナ州Baton Rougeと中国蘇州に製造拠点を所有している。また、FoosungとBASFの合弁会社が操業を行う予定のLiPF6製造工場は、現在中国の南通に建設中。

BASFでは、「今回の買収により、BASFは欧州、米国、アジア太平洋地域に製造拠点を持つリチウムイオン電池用電解液フォーミュレーションのグローバルサプライヤーとなった。BASFはアミン類、ジオール類、有機酸類、ポリアルコール類、スペシャリティ製品を提供しているが、今回の買収はこれらを補完するとともに、北米市場におけるBASFの存在感を強化してくれるものだと言える」としている。

 


アラブ首長国連邦(UAE) は7月15日、ホルムズ海峡を迂回し原油を出荷できる陸上パイプラインAbu Dhabi Crude Oil Pipeline の完成式典を行い、稼働を開始した。

パイプラインは、UAEの首都Abu Dhabi 南西のHabshan油田とオマーン湾に面する同国東部Fujairah港の約370kmを結び、最大で日量150万バレル (将来は180万バレル)を送ることができる。UAEの原油生産量は6月は日量約261万バレルであった。

同港には計800万バレルの原油を貯蔵するタンクも設置された。

アブダビ政府系ファンドのInternational Petroleum Investment Company (IPIC)が2008年から建設を進めてきたもので、2010年12月に完成し、試運転を行っていた。

2010/12/3 Abu Dhabi Crude Oil Pipeline 完成 



パイプラインの操業はAbu Dhabi Company for Onshore Oil Operations (ADCO) が担当する。IPICはパイプライン使用料としてバレル当たり数セントを取る。

稼働初日の15日は約50万バレルが送られ、 パキスタン政府とIPICのJVのパキスタンのPak Arab Refineryに向けてFujairah港からタンカーが出発した。

Pak Arab Refinery Ltd (PARCO)は1974年設立で、パキスタン政府が60%、IPICが40%出資している。
MultanにあるMid-Country製油所の能力は日量10万バレルで、パキスタン全体の能力の35%を占める。

現在はRuwais港から100万バレル級のタンカーで運んでいたが、Fujairahからは200万バレルの輸送が可能な最大級のVLCCの利用が可能となる。
パイプライン稼働はRuwais港の混雑回避とともに、需要家にもVLCC利用による輸送費削減のメリットを与える。

IPICではFujairahで40~50億ドルを投じて日量25万バレル程度の能力の製油所の建設も検討している。

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イラン側は、パイプラインの能力は限られているため、湾岸国は依然としてホルムズ海峡を利用せざるを得ない。これはホルムズ海峡の戦略的重要性を少なく見せるための西側、特に米国主導によるプロパガンダに過ぎないとしている。



JX日鉱日石エネルギーは7月13日、水島製油所で、高圧ガス保安法に基づく保安検査において不備があることが判明した と発表した。

本年6月に水島製油所B工場において、LPガス球形タンクの過去の補修工事の記録に疑義が生じたことから、これまでの同製油所内のLPガス球形タンクの補修工事について調査を開始した。

その結果、2000年からこれまでの間、同製油所B工場のLPガス球形タンク26基中の18基において、虚偽の保安検査記録の作成が行われていたことが判明した。また、一部の製造装置においても、不備を確認した。

不備が判明したLPガス球形タンクの使用およびB工場の関連装置を順次停止し、安全性を完全に確認するまでは、運転を見合わせる。
また、本件について、継続して調査を進め、グループ全製油所において同様の事例がないか確認・調査を行うとともに、再発防止に全力を傾注するとしている。

同社によると、内容は以下の通り。

劣化で鉄板の厚みが薄くなったタンクについて、補修工事をしながら県に「問題なかった」と虚偽報告(13件)
・検査で安全基準を下回る厚さが検出されながら操業していた(2件)
・厚みを水増しするなどし、補修の内容を過少報告したケース(7件)

県に問題を報告すると、補修後に3、4日間の耐圧検査が必要になる。
操業の遅れを避けるため、県に届け出ずに補修し、耐圧検査を免れた。
(これについて議論した内部の勉強会の資料が見つかったという)

安全基準を満たさず操業していたケースは「故意でなく過失」としている。

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新日本石油と新日鉱ホールディングスは2010年4月に統合持株会社 JXホールディングス を設立、同年7月に両グループの全事業を統合持株会社の傘下に統合・再編・整理した。

JX日鉱日石エネルギーの水島製油所は新日本石油精製とジャパンエネジーの製油所を統合したもので、前者がA工場、後者がB工場となっている。

問題を起こしたB工場はジャパンエナジーの製油所。

 



EUは6月25日の外相理事会で、7月1日から域内保険会社がイラン産原油輸送タンカーに損害保険を販売することを禁止することを決めた。

韓国は、欧州の保険会社の再保険がなければイラン産原油を運ぶタンカーを運航することができないため、7月からイラン産原油の輸入を全面的に停止した。

韓国は米国の要求により2010年からイランとの金融取引を停止しており、韓国の石油各社はイランからの原油の輸入代金を国内のウリィ銀行と中小企業銀行に開設された口座に入金し、韓国の輸出企業はイランから受け取るべき代金をその口座から引き落とす形で決済している。

イラン産原油の輸入停止が長期化すれば、残高がなくなり、輸出代金が受け取れず、韓国のイラン向け輸出にも影響を与える。

2012/7/3     韓国、7月からイラン産原油の輸入を全面停止;日本は輸入継続 

 

韓国政府の高官は7月12日、「イラン産原油の輸入を停止した直後、イラン政府が自国籍のタンカーで韓国まで直接原油を輸送すると提案してきた。省庁間での協議を踏まえ、これを受け入れることを暫定的に決定した」と語った。

イランはEUの制裁措置で閉ざされた販路を開くため、こうした提案をしてきたとみられる。
韓国政府は関係者をイランに派遣し、同国の提案を確認した。

船舶保険がなければタンカーは入港できないが、イラン政府は自国のタンカーに10億ドル規模の船舶保険をかける方針だという。

韓国政府の関係者は、「現在の国内法では、タンカー1隻当たり1億3000万ドルの保険に加入していれば入港に問題がない。イラン政府が高額の船舶保険まで提供することを決めたため、輸入を再開する方向で意見をまとめた」と説明している。

韓国政府は既に米国に輸入再開方針を伝えたという。

韓国は自発的にイランとの金融取引を中止しており(韓国の輸入金額と輸出金額の相殺という抜け道で輸出入は行ってきた)、かつ、米国による追加金融制裁から除外されたため、米国による制裁の問題はなくなった。

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米国は2011年12月、核開発を加速するイランへの資金流入防止を目的に、イラン中央銀行と取引関係のある外国金融機関に事実上の制裁を科す条項を盛り込んだ国防権限法を成立させた。
これには、原油輸入を大幅に削減していれば例外とすることも盛り込まれている。

米国務省は3月20日、核開発疑惑を強めるイランへの追加金融制裁の適用対象から日本と欧州10か国の合計11か国を除外する方針を決め、米議会に伝達した。除外期間は180日間。

適用除外したのは、日本、ベルギー、チェコ、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリー、オランダ、ポーランド、スペイン、英国。

2012/3/21 対イラン制裁法、日本は適用除外 

米国は6月11日、韓国やインド、台湾、南ア、マレーシア、スリランカ、トルコの7か国・地域を、6月28日には中国とシンガポールも除外した。

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米政府は7月12日、制裁対象の追加を行った。

その中で、National Iranian Tanker Company (NITC)と同社所有の58隻の船舶、関連27社をイラン政府の機関と認定した。
同社はイラン国営石油会社の元子会社で、表向きには12年前に民営化されたことになっている。

 「イランがトンネル企業を利用することで制裁回避を試みているほか、塗り替えや船籍の変更、GPS装置の無効化によりタンカーの隠蔽を試みようとしていることが浮き彫りになった」と言明している。

米市民はこれらの企業との取引は禁止される

韓国がイランのこれらのタンカーで原油を輸入する場合、なんらかの影響が出る可能性がある。

 

 



三菱樹脂は7月10日、同社の管材事業を積水化学工業に譲渡することを決めたと発表した。
公取委の承認を得た後に譲渡する。譲渡額は公表していない。

塩ビ管を中心とする管材事業は、住宅着工件数の減少や公共投資の縮減などによって厳しい状況が続いている。
同社では、今後の厳しい事業環境を勘案すると、自社の枠を超えた取り組みが不可欠であるとの認識に至り、管材製品の生産面で重要なパートナーである積水化学に譲渡することとした。

両社の管材事業を統合し、積水化学が管材のトップメーカーとして本事業を継承していくことが、市場への安定供給と、管材事業の将来の発展のためには最善の策であると判断した。

下水管や給水管に使う汎用タイプの塩ビ管の国内シェアで積水化学は2位、三菱樹脂は3位。

積水化学は今回の事業取得で、首位のクボタシーアイを追撃する態勢を整え、管材事業の収益力強化を急ぐ。

事業譲渡の内容は以下の通り。

①同社の管材事業に関わる人員、資産、契約、知的財産権 等

対象は上水道や下水、農水用の塩ビ管、水道やガス用のポリエチレン管などで、住宅の給水給湯管として使う架橋ポリエチレン管(冷熱管材事業)は除く。

2012年3月期の売上高は約230億円で、三菱樹脂の連結売上高の約6%を占める。

②三菱樹脂販売、菱樹商事(いずれも三菱樹脂100%)の管材事業に関わる人員、契約 等

③菱琵テクノ(三菱樹脂100%)の管材事業に関わる機械設備の一部

④同社が保有する以下の管材関連会社の株式
  ・東洋化学産業(射出・押出・ブロー成型品の製造・販売、三菱樹脂グループ100%)
  ・羽生プラスチック(押出成形品の製造・販売、三菱樹脂99.8%)
  ・無錫積菱塑料(樹脂継手等の生産・販売、積水化学51% 三菱樹脂49%)
  ・M&Aパイプシステムズ(管・継手の生産出荷に関するコンサルティング、積水化学51% 三菱樹脂49%)

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塩ビ管の出荷推移は以下の通りで、住宅着工件数が年間120万戸時代に50万トン弱あったのが、最近(住宅着工が80万戸程度)は30万トン程度となっている。


公共投資は低迷したままである。

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塩ビ管業界は産構法時代には以下の4つのグループをつくっていた。

Aグループ: 積水化学、小松化成(小松製作所)、日本ロール製造
Bグループ: 旭有機材、シーアイ化成(伊藤忠)、アロン化成(東亜合成)
Cグループ: クボタ、日本プラスチック(クボタ)、前澤化成
Dグループ: 三菱樹脂、信越ポリマー

業界は2000年頃から構造改革を始めた。

(積水化学/小松化成)

1997年、積水化学はコマツから小松化成を買収、子会社とし、ヴァンテックと改称した。
(その後、改称し、現在は千葉積水。)

(業界)

2001年11月に、経済産業省の主導の塩ビ管メーカー11社の勉強会が、過剰設備問題等をもとに、設備廃棄や業務提携の必要性を提言する報告書を出した。

(クボタ/シーアイ化成)

2001年11月にクボタとシーアイ化成が塩ビ管での提携で合意、2002年4月に公取委の同意を得て、包括提携契約を締結した。
生産委託、生産集約、設備削減、共同購買、仕様の統一、等々を決めた。

2005年4月、両社は本事業を分離し、共同出資会社クボタシーアイ(クボタ 70%、シーアイ化成 30%)を設立した。

2009年4月にクボタ堺工場の塩ビ管・継手の製造を全て中止し、同工場を閉鎖

(積水化学/三菱樹脂)

2001年12月、塩化ビニル管事業での提携を発表

2002年4月、M&Sパイプシステムズを設立
        生産工程計画の立案・生産管理・出荷業務管理などの業務を統括
2002年6月、共同で無錫積菱塑料有限公司を設立

 

今回の三菱樹脂の撤退で、塩ビ管業界はクボタシーアイと積水化学の2トップ体制となる。

ーーー

原料PVCメーカーとの関連

三菱樹脂:ヴィテック(三菱化学/東亜合成) 2011年3月に生産を停止、9月末に解散

アロン化成:同上

積水化学:徳山積水工業(積水化学 70%/東ソー 30%)

信越ポリマー:信越化学

ーーー

本業界は違法な価格カルテルの容疑で2007年に公取委の調査を受け、2009年2月に公取委から排除措置命令と課徴金納付命令を受けている。

  事業者名 排除措置
命令
 課徴金
 納付命令
積水化学工業  ○   79億6532万円
三菱樹脂  ○   37億2137万円
クボタシーアイ  -     -
アロン化成  -     -
クボタ  -     -
シーアイ化成  -     -
合 計  2社  116億8669万円

クボタシーアイとクボタ、シーアイ化成の3社は違反行為を自主申告した。
アロン化成は他のメンバーから排除され、その後は参加していない。

2009/2/18 塩化ビニル管及び同継手で排除措置命令及び課徴金納付命令

積水化学と三菱樹脂は両命令について審判請求を行い、現在も審判手続が続いている。


 

 

 

 

中国の6月の経済統計が順次発表されているが、中国経済の変調が見られる。

1)消費者物価指数と生産者物価指数

中国国家統計局が7月9日に発表した6月の 消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)はともに予想を下回る結果で、需要減退の兆候が見られる。

消費者物価指数は前年同月比2.2%上昇で、市場予想の同2.3%上昇を下回った。伸び率は3カ月連続で縮小した。

うち、食品は3.8%、非食品は1.4%であった。
食品のうち、豚肉は12.2%(前月は-0.6%)。




同時に発表された6月の生産者物価指数(PPI) は前年同月比2.1%の下落となった。伸び率は11か月連続で縮小している。

エコノミストは、「中国にとって、インフレはもはや脅威ではなくなった」と指摘、「物価の下落ペースが速過ぎ、デフレ観測が高まれば、当局はさらに金利を引き下げるだろう」との見方を示し ている。

温家宝首相は8日、「中国の景気は現在おおむね安定しているが、引き続き大きな下振れ圧力に直面している。政策の微調整をさらに進めるべきだ」と指摘。「信用の構造的ひっ迫を効果的に解決するため慎重な金融政策を維持する一方で、構造的な減税政策の改善に注力しながら、積極的な財政政策を引き続き行うべき」と述べた。

但し、「現在、不動産市場の調整は依然として重要な段階にあり、われわれは断固たる姿勢で抑制策を続け、投機的な不動産投資との戦いを長期的な政策としなくてはならない」と述べ、住宅価格の「妥当な後退」を達成する方針をあらためて表明した。

2)輸出入

中国税関総署は7月10日、貿易統計を発表した。

2010年、2011年は輸出入とも大きな伸びを示したが、本年上半期(1~6月)は急減速し、輸出は前年同期比9.2%増、輸入は6.7%増と、いずれも1桁の伸びにとどまった。

欧州の債務危機が中国を直撃した。内需不振で輸入も低迷した。

上半期のEU向け輸出は前年同期比0.8%の減。
米国向けは13.6%増、ASEAN向けは16.8%増、日本向けは8.1%増。

6月単月では輸出は前年同月比11.3%伸びを示したが、前月は15.3%であった。
輸入は前月の12.7%の伸びに対し、6.3%の伸びにとどまった。

 

3)GDP

中国国家統計局は7月13日、2012年第2四半期の国内総生産(GDP)伸び率が前年比 7.6%になったと発表した。
2009年第1四半期以来の低水準。

上半期の伸びは 7.8%。

 

4)人民元

2月29日の終値6.2936元/$を最高値とし(一時高値は2月10日の6.2884元/$)、その後下降を続けている。

4月16日からは変動幅を基準値の±1.0%に拡大したが、最近は従来の -0.5% の変動幅を超えている。

中国の経済成長が鈍化する中、輸出促進に向けて中国人民銀行が元高を抑制するとの観測が強まった。


ーーー

中国人民銀行は7月5日、前回の6月7日に続き、2カ月連続で利下げを行った。実施は7月6日。

2012/7/6    中国、2カ月連続で利下げ




韓国の高位の外交筋は7月4日、「朝鮮半島から伸びた大陸棚が、自然な延長により沖縄海溝まで伸びているというのが韓国政府の立場」と述べ、近くこれを立証する地質学・海洋科学・法的情報を含む資料を大陸棚限界委員会に提出すると述べた。

韓国領海200海里の外側から日本の沖縄近くまで広がる大陸棚について、科学的・技術的な権利を認めるよう要請書を提出するというもの。

韓国外交通商省当局者は「国連への大陸棚画定に関する文書提出は(加盟国の)義務だ。日本との排他的経済水域(EEZ)境界画定交渉は別途行っていく予定だ」としている。


1970年に地図の青線部分を当時の朴正煕大統領が大韓民国の領海として公式宣言した。

日本との外交紛争となり、交渉の結果、1974年に2つの協定(合わせて通称 日韓大陸棚協定)が締結され、1978年6月に発効した。

①「日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の北部の境界画定に関する協定」(略称:北部協定)

  北緯33度付近から36度付近にかけての両国の大陸棚の境界を画定したもの。
  境界線は対馬海峡西水道を通過するが、両国の領海基線に対してほぼ中間線となっている。

②「日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定」(略称:南部協定)

  境界画定を棚上げして石油・天然ガス資源の共同開発についてのみ細目にわたり協定した。
  開発費用と収益を折半するという条件で、期限は2026年までの50年間。

締結から発効まで4年かかったのは日本側の事情。
南部協定の共同開発区域が完全に日韓中間線以南の"日本側"大陸棚に設定されていること
・中国からの自国大陸棚への侵犯とする激しい抗議

日本主張の「中間線原則」と、韓中両国の「大陸棚自然延長論」との衝突。
(当時は200海里の
排他的経済水域の概念はなかった)

なお、国際司法裁判所の「北海大陸棚事件」(1969年)では、国際司法裁判所は、衡平な原則」でドイツの大陸棚を中間線ではなく、等距離原則より広く決めた。「衡平な原則」とは当事者間同士が合意できることとした。

 

韓国政府は今回、この共同開発区域全体を朝鮮半島から伸びた大陸棚と主張する。  

ーーー

韓国紙は今回の動きの背景を以下の通り説明している。 

①共同開発は2028年までだが、1986年に日本側が経済的効果が不十分という理由で開発拒否を宣言した。
 それ以降、探査が中断され、共同開発の原則のため独自開発は不可能となっている。

②韓国側は日本の突然の宣言を、国際法の変更によるものと解釈している。

協定締結当時は、大陸棚で領海を分け合った。
1982年に国際海洋法で200海里までの主権を認める排他的経済水域の概念が採択された。

この結果、共同開発区域の多くが日本の排他的経済水域になるため、2028年の共同開発の効力が切れた後に、独自開発を行う考えであろう。

③日韓共同で実施した調査では、この地域には石油と天然ガスの埋蔵量は72億トンに達する。

④この地域の一部は中国の主張する領海とも重なる。

国連海洋法条約は、排他的経済水域を200カイリと定めているが、東シナ海は海域が狭く日中両国のEEZが重なるため、日本は国際司法裁判所の判例などに照らして「重なる場合は中間線が境界」と主張。
一方、中国は、同条約の「大陸棚自然延長論」を主張。

2008年5月の日中首脳会談で東シナ海のガス田共同開発で一致した。
  白樺ガス田(中国名・春暁)の共同開発は両国の共同投資とし、収益分は先行投資した中国側に重点配分。
  翌檜ガス田(同・龍井)周辺の日中中間線にまたがる海域を共同開発区域とする。(日韓共同開発区域に隣接)
  合意対象外の日中中間線付近のガス田や、周辺海域の取り扱いについては継続協議。

⑤韓国はこれらの動きに反発、2009年に大陸棚の境界についての予備情報を大陸棚限界委員会に提出した。

  まもなく提出される韓国の科学的・技術的権利の要求は、この予備情報の正式文書となる。



米連邦地裁の裁判で7月3日、陪審から東芝に対し、87百万ドルの損害を認定する評決が出された。

東芝が1999~2006年にかけて液晶パネルの価格を決める際、ほかの企業と話し合い、違法な協定を結んだとして、米国の消費者が集団で損害賠償を求めていた。

10人の陪審員は、東芝が液晶パネルの価格を決めるため、他の企業とホテルで会合を持ったと認め、パネルを使用するメーカーに17百万ドル、最終製品を購入した消費者に70百万ドル、合計87百万ドルの損害を認定した。

原告側は、共謀による損害は867百万ドルと主張した。陪審員は、グレイな部分が多く、決定的な証拠がないため、原告側の言うような多額の損害は認められないと述べている。

米独禁法は損害認定額の3倍(今回の場合は261百万ドル)の 賠償額を認めている。

但し、東芝では、本集団訴訟における他の被告の和解額の合計が本評決に基づき決定される損害賠償額(3倍賠償でも261百万ドル)を超えているため、東芝が罰金を支払う必要はない としている。(下記)

しかし東芝では、無罪を主張、あらゆる法的手段を用いて対応を進めるとしている。

ホテルでの同業者との会合は合法的なものであり、ホテルの会合で価格について話し合われたというタイプの製品は生産していないとしている。

「米国における液晶パネル事業について一切の違法行為はないと主張しており、違法性および損害を認定した今回の陪審による評決は不当であると考えています。今後、当社の主張が認められるよう、あらゆる法的手段を用いて対応を進めます」。

「東芝が罰金を支払う必要がない」点について、東芝では次のように述べている。 

「今回の評決で認定された損害額は、当社がかかわったと認定された共謀行為全体によって、原告である液晶パネル関連製品等の直接購入者が被った損害の額とされています。」

即ち、パネルを使用するメーカーに17百万ドル、最終製品を購入した消費者に70百万ドル、合計87百万ドルの損害という認定は、東芝単独のものではなく、昨年12月に和解したシャープ等を含めた全体のものという。

「3倍賠償」となっても合計で261百万ドルに過ぎない。(陪審員の意見から見ると、悪質ではないとして3倍賠償が適用されない可能性もある。)

昨年12月には液晶ディスプレーの直接需要家に対し合計388百万ドル 、消費者に対し総額538百万ドルの和解金で和解しているため、完全に支払い済みとなる。

和解の場合は、各社の判断でしたものであり、裁判の結果の如何にかかわらず返還しないとの条項が入っている筈で、各社は払い損となるが、東芝にとっては原告に対しこれ以上の支払い不要となる。

これは、シャープ等、既に和解した企業にとっては、新たな問題を抱える。

和解に当たっては、米国での裁判は陪審員裁判のため、企業対消費者の裁判では企業に不利となり、また3倍賠償の制度があるということを前提に、「自社は違法行為はしていないが、裁判になると時間も費用もかかるため、和解した」というコメントが多い。


しかし、今回、東芝は和解に応じず、裁判に持ち込み、グレイな部分が多いとして、損害は極めて少ないという評決を得た。
各社は結果として、評決額よりもはるかに高い和解金を払ったこととなる。

もし、違法行為がないなら、何故、堂々と争わなかったかとの批判が出る。

付記

東芝は9月11日、原告との間で和解し、和解金30百万ドルを支払うと発表した。

7月の87百万ドルの損害認定の評決を不服として対応を進めてきたが、訴訟の長期化の影響等を総合的に勘案したとしている。

「東芝が罰金を支払う必要はない」としながら、何故払うのか、これも不思議な話である。
(本当に払う必要がないなら、裁判をすぐに決着させればよい。)

ーーー

液晶ディスプレイカルテルでは、2008年にLG Display、 中華映管(台湾)とシャープの3社が国際カルテルを認め、罰金支払いで司法省と合意して以来、日本・韓国・台湾のメーカーは司法省に罰金を払うほか、役員22人が起訴された(そのうち多くが禁固刑と罰金刑を受けた)。

Samsung ElectronicsLeniencyで 法的には免責となった。
東芝は司法省による訴追は受けていない。

これに加え、直接の需要家からの集団訴訟と、最終消費者を代表する各州からの集団訴訟が行われた。

2011年12月に、Samsungを含む8社が液晶ディスプレーの直接需要家に対し、合計388百万ドルの和解金の支払いで合意した。
また、7社が、消費者に対し総額538百万ドルの和解金の支払いで合意した。(他に罰金支払い)

残る韓国のLG Displayは5月1日に消費者との間で和解、更に新しく台湾のAU Optronics も4月に消費者との間で和解した。いずれも金額は非公開。

2012/1/6   米国の液晶ディスプレイ価格カルテル、民事訴訟でも多額の和解金

最後に残ったのが東芝で、今回の陪審による評決となった。

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シャープは7月9日、TFT液晶事業に関し、北米・欧州において提起されている損害賠償を求める民事訴訟のうち、Dell, Inc.ほか2社からの民事訴訟について、総額198.5百万米ドルの和解金で和解することに合意したと発表した。

同社は上記の通り、多額の和解金で和解したが 、これは別の訴訟である。
 「カルテルに関する欧州委員会の調査が続いているほか、民事訴訟もまだ残っている」としている。




東京電力の福島第一原発事故を検証する国会の「事故調査委員会」(黒川清委員長)は7月5日、最終報告書を決定し、衆参両院議長に提出した。

報告書は、計641ページに及び、事故原因の分析のほか、「政府の危機管理体制の見直し」など7つの提言から構成されている。

ダイジェスト版 

要約版  本編  

英語版はExecutive summary のみが公開されている。本篇は現在翻訳中で、完成後に公開される。

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福島原発事故から9か月後に、国会は以下の目的で、憲政史上初の独立委員会を設置した。

事故に係わる経緯・原因の究明
今後の原発事故の防止及び事故被害の軽減のための施策または措置について提言

「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」は、2011年10月30日に施行され、委員長及び委員の10名は、国会の承認を得て同年12月8日、両議院の議長より任命された。

【委員長】黒川 清(政策研究大学院大学アカデミックフェロー、元日本学術会議会長)
【委員】
     石橋 克彦(理学博士、地震学者、神戸大学名誉教授)
     大島 賢三(独立行政法人国際協力機構顧問、元国際連合大使)
     崎山 比早子(医学博士、元放射線医学総合研究所主任研究官)
     櫻井 正史(弁護士、元名古屋高等検察庁検事長、元防衛省防衛監察監)
     田中 耕一(分析化学者、株式会社島津製作所フェロー)
     田中 三彦(科学ジャーナリスト)
     野村 修也(中央大学法科大学院教授、弁護士) 
     蜂須賀 禮子(福島県大熊町商工会会長)
     横山 禎徳(社会システム・デザイナー)

調査の概要は以下の通り。
●ヒアリング: 延べ1167人(900時間超)
●原発視察(福島第一および第二、女川、東海):9 回
●タウンミーティング:3回(合計400超)
●被災住民アンケート回答者数:住民10633人(自由回答コメント8066人)
●作業従業員アンケート回答者数:2415人
●東電、規制官庁および関係者に対する資料請求:2000件以上

資料と映像は全て公開されている。http://naiic.go.jp/resources/

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黒川委員長によると、委員会の使命を、
  「国民による、国民のための事故調査」
  「過ちから学ぶ未来に向けた提言」
  「世界の中の日本という視点(日本の世界への責任)」
 とした。

そして調査に当たり、以下の認識を共有化した。

事故は継続しており、被災後の「福島第一原発」の建物と設備の脆弱性及び被害を受けた住民への対応は急務であると認識する。

この事故報告が提出されることで、事故が過去のものとされてしまうことに強い危惧を覚える。

日本全体、そして世界に大きな影響を与え、今なお続いているこの事故は、今後も独立した第三者によって継続して厳しく監視、検証されるべきである。


事故の根源的原因:

本事故の根源的原因は歴代の規制当局と東電との関係について、「規制する立場とされる立場が『逆転関係』となること(規制当局は電力事業者の「虜」となっていた)による原子力安全についての監視・監督機能の崩壊が起きた点に求められる」と認識する。

黒川委員長は以下の通り述べている。
そこには、ほぼ50 年にわたる一党支配と、新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった官と財の際立った組織構造と、それを当然と考える日本人の「思いこみ(マインドセット)」があった。経済成長に伴い、「自信」は次第に「おごり、慢心」に変わり始めた。入社や入省年次で上り詰める「単線路線のエリート」たちにとって、前例を踏襲すること、組織の利益を守ることは、重要な使命となった。この使命は、国民の命を守ることよりも優先され、世界の安全に対する動向を知りながらも、それらに目を向けず安全対策は先送りされた。そして、日本の原発は、いわば無防備のまま、3.11 の日を迎えることとなった。

何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことに鑑みれば、今回の事故は「自然災害」ではなくあきらかに「人災」である。

事故の直接的原因:

事故が実際にどのように進展していったかに関しては、重要な点において解明されいないことが多いのに、東電は、事故の主因を早々に津波とし、「安全上重要な機器は地震で損傷を受けたものはほとんど認められない」と中間報告書に明記している。

委員会は、事故の直接的原因について、「安全上重要な機器の地震による損傷はないとは確定的には言えない」、特に「1号機においては小規模の小破口冷却材喪失事故が起きた可能性を否定できない」とし、これについて引き続き第三者による検証が行われることを期待する。

このほか、
「運転上の問題の評価」:東電の組織的な問題である
「緊急時対応の問題」:危機管理体制が機能しなかった、事業者と政府の責任境界が曖昧
「被害拡大の要因」:危機管理体制が機能しなかった
「住民の被害状況」:被災地住民に事故の状況は継続。政府側の住民の健康と安全を守る意思の欠如、対策の遅れ・・・
「問題解決に向けて」:規制される側とする側の逆転関係の解決なしには再発防止は不可能
「事業者」:東電経営陣の姿勢は原子力を扱う事業者としての資格があるのか?
「規制当局」:内向きの態度を改め、国際社会から信頼される規制機関への脱皮が必要
「法規制」:抜本的見直しが必要。世界の最新の技術的知見等を反映、これを担保するための仕組みの構築

提言

1.規制当局に対する国会の監視
2.政府の危機管理体制の見直し
3.被災住民に対する政府の対応
4.電気事業者の監視
5.新しい規制組織の要件
6.原子力法規制の見直し
7.独立調査委員会の活用

 

「ここにある提言を一歩一歩着実に実行し、不断の改革の努力を尽くすことこそが、国民から未来を託された国会議員、国権の最高機関たる国会及び国民一人一人の使命であると当委員会は確信する。
福島原発事故はまだ終わっていない。被災された方々の将来もまだまだ見えない。国民の目から見た新しい安全対策が今、強く求められている。これはこの委員会の委員一同の一致した強い願いである。」

 

 

みずほコーポレートなどは7月9日、長期プライムレートを1.25%にすると発表した。7月10日から適用される。
2003年6月の過去最低水準に並んだ。

 



Carlyle Groupは2012年7月2日、Sunocoとの間で合弁会社 Philadelphia Energy Solutionsを設立することで合意したと発表した。

8月に停止予定であったSunocoのPhiladelphia Refinery をJVに移し、稼働を続ける。

CarlyleはJVのマジョリティを持ち、運営責任に当たる。
Sunocoは現物出資でマイノリティシェアを得るが、経営には参加しない。

同製油所は東海岸で連続稼働する最古の製油所で、能力は日量330千バレル。

Carlyleでは、米北東部でのエネルギーのハブとして重要であるとともに、 Marcellus Shaleの天然ガスに関し、新しいビジネスチャンスがあるとしている。

ーーー

Sunocoは2011年8月16日、オハイオ州HaverhillのFrankford のフェノール工場を売却すると発表、これにより、同社の石油化学は消滅した。

2011/8/25 Sunoco、石油化学の売却を完了 

Sunocoは2011年9月6日、Refinery事業からも撤退し、Marcus HookとPhiladelphiaの製油所の売却手続きを開始したと発表した。
事業の収益性悪化によるもので、収益性の高いRetail とlogisticsに経営資源を集中させたいとしている。

同社のBusiness Unit は以下の通り。
  Refining & Supply 撤退検討
  Chemicals    撤退完了
  Coke      スピンオフ(SunCoke Energy)
  Retail Marketing
  Logistics
  

製油所のうち、Pennsylvania州のMarcus Hook refineryは2011年12月に停止した。

しかし、現在のところ、製油所としての買い手は見つかっていない。
このため、Marcellus Shale の副産品を含む燃料の貯蔵、加工などの多目的プラントとして使用するとの見方がある。

 

付記
ブラジルのBraskemの米子会社Braskem America は7月11日、Marcus Hook製油所のプロピレン スプリッターを取得することを明らかにした。隣接のポリプロ工場にプロピレンを供給する。

ペンシルバニア州は、同社が少なくとも56百万ドルを投資し、雇用を維持・増加することを条件に、15百万ドルを供与する。

ーーー

東海岸ではConocoPhillips も2011年9月に、フィラデルフィア近郊のTrainer製油所を直ちに生産を停止し、6か月以内に売却できない場合は永久に停止すると発表した。

2012年4月30日、Delta Air LinesはPhillips 66との間でTrainer refinery complex を買収する契約を締結したと発表した。

2012/5/10 Delta Air Lines、製油所を買収 




 

6月27日付ブログで「三菱化学が今後進めるべきものは、ポリオレフィンの構造改革である」と述べた。

三菱化学の子会社の日本ポリエチレンと日本ポリプロは6月29日、川崎市川崎区千鳥地区のHDPE及びPP工場各1系列を2014年4月に停止すると発表した。
(なお、後記の通り、プライムポリマーもPP 90千トンの停止を発表している)

停止するのは次のプラント。

  日本ポリエチレン 日本ポリプロ
停止プラント HDPE 第二系列(スラリー法) PP 第3系列(バルクー気相法)
元の所有者 東燃化学(昭電より譲受) 東燃化学
能力 52,000トン/年 89,000トン/年

これにより、東燃化学の川崎工場のPE、PPは全てなくなることとなる。
但し、構内には東燃化学のJVの日本ユニカーの工場は残る。(LDPE 180,000t、LLDPE/HDPE 120,000t)

東燃化学は下記の事情で日本ポリケムの株を三菱化学に売却し、日本ポリエチレン、日本ポリプロに参加していない。
上記のPE、PPのプラントは三菱化学が日本ポリケムの株とともに買収していると思われる。

ーーー

日本ポリエチレンは2003年9月に、日本ポリケムのPE事業を分離、日本ポリオレフィンのPE事業と統合し、設立された。

当初の出資比率は日本ポリケム50%、日本ポリオレフィン42%、三菱商事プラスチック8%であったが、
2008年3月に、日本ポリケム58%、日本ポリオレフィン42%
となった。

なお、この合併には公取委が反対した。

公取委は、統合会社のLDPEの合算販売シェアは約30%で第1位、上位3社累積シェアは約70%だが、東燃化学を通じて日本ユニカーとの結び付きがあり、これを前提にすればグループの合算販売数量シェア・順位は約45%・第1位、上位3社累積シェアは約80%になるとして問題視した。

このため三菱化学と東燃化学が交渉の結果、2003年1月に三菱化学が東燃化学所有の日本ポリケム株式を買取り、日本ポリケムを三菱の100%子会社とすることで合意、これを受けて公取委は日本ポリエチレンの設立を承認した。

三菱化学が同社の58%の株主となる。

日本ポリプロは、2003年9月に日本ポリケムのPE事業を分離した後、10月に残るPP事業をチッソのPP事業と統合した。

  出資比率は日本ポリケム(三菱化学 100%)が65%、チッソが35%である。

日本ポリケムの株主の昭和電工と日石化学(JX日鉱日石エネルギー)はPPではサンアロマーの株主である。

ーーー

日本ポリエチレンと日本ポリプロは上記の設備停止後も下記の多くのプラントを有している。(能力:トン)
三菱化学が今後も設備停止に踏み切るかどうか注目される。

    日本ポリエチレン

日本
 ポリプロ

LDPE LLDPE HDPE PP
三菱化学 鹿島  62,000 261,000  10,000 556,000
水島 66,000 53,000 94,000 100,000
四日市(停止済) (75,000)     (37,000)
東燃化学 川崎     50,000 89,000
JX日鉱日石 川崎 94,000   50,000 121,000  
昭和電工 大分 123,000   200,000  
チッソ 千葉
(丸善石化内)
      250,000
四日市
(東ソー内)
      80,000
不明 2,000      
合計 347,000 364,000 475,000 1,075,000

 注 LDPEの内訳で 2,000トンが不明(合計と合わない)
   東燃化学のHDPE能力はこれまで 50,000トンとされている。

 

参考 川崎の両社及び日本ユニカー、サンアロマーのプラントの立地は以下の通り。


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日本ポリエチレンと日本ポリプロの業績は以下の通り。



なお、三井化学 65%、出光興産 35%のプライムポリマーの業績は以下の通り。


プライムポリマーの能力は以下の通り。(単位:トン)

    LDPE LLDPE LL/HD併産 HDPE PP  
LL HD
プライムポリマー 出光・千葉   60,000     130,000 400,000  
三井・千葉   85,000 11,000 87,000 116,000 223,000  
三井・大阪           448,000  
日本エボリュー 三井・千葉   240,000         増強後 300,000
うち住化 50,000
三井デュポン 千葉 110,000            
岩国・大竹 60,000            
三井化学 岩国・大竹         3,000    
徳山ポリプロ 徳山           200,000 50/50製造JV
出光
/トクヤマ
合計 170,000 385,000 11,000 87,000 249,000 1,271,000  

なお、プライムポリマーは三井化学市原工場のPP製造設備1系列90千トンを2013年6月に停止する。

 

 

 

新日本製鐵と住友金属工業は、2012年4月27日に株式交換契約と合弁契約を締結したが、両社は6月26日の株主総会で、その承認を得た。

この結果、2012年10月1日に両社は経営を統合し、新日鐵住金が発足する。

両社は、経営統合後3年程度を目途に、年率1,500億円規模の統合効果の実現を目指す。

うち調達関連では、
①原料調達・輸送効率向上による原料コスト削減
②設備仕様共通化、発注と契約の効率化による設備費・修繕費・資材費削減
③グループ会社の統合・連携(原料・工事・修繕・作業 等)
により、400億円程度を目指すとしている。

合理化策の一つが住友金属小倉製鉄所のコークスである。

住友金属では小倉製鉄所向けのコークスを三菱化学の坂出事業所から半世紀以上にわたって調達してきた。

三菱化学坂出事業所は世界最大級のコークス炉を323門有し、高品質のコークスを年間390万トン生産している。
世界中から石炭を輸入し、年間約60~70種類もの原料を様々な組み合わせでブレンドすることで、異なる品質のコークスを造り分けている。

しかし、同社では小倉製鉄所で使うコークスの調達の一部を三菱化学から新日鉄の持ち分法適用会社、日本コークス工業へ切り替える検討を始めた。

日本コークスは、工場が小倉製鉄所と同じ北九州市にあり物流費が安く、コークスを生産する際に発生するガスをパイプラインなどで小倉製鉄所に運び燃料として活用もできる。

日本コークスでは、コークス生産により発生するガスをクリーンエネルギー化のうえ、コークス焼成に再利用、余ったガスは新日本製鐵・八幡製鐵所に供給している。

住友金属では調達先の見直しにより、「原燃料費を年100億円以上減らせる可能性がある」としている。


三菱化学にとっては、新日鉄と住金の合併で思わぬ被害を受けることとなる。

日本コークスは旧称が三井鉱山である。

1889年 三井組が、大蔵省より官営三池炭鉱の払い下げを受ける。
1911年 三井合名会社より独立し、三井鉱山株式会社設立

1950年後半から エネルギー革命の進展の中、経営多角化を推進、コークス、セメント、機械事業へ進出

1988年 コークス炉1基を休止→2006年 休止コークス炉再稼動
1993年 三井三池化工機を合併
1997年 三池鉱業所を閉山、国内石炭採掘事業から撤退。
     (NEDO、525億円を債権放棄)
2004年 セメント事業から撤退

三井鉱山は2003年には債務超過状況を改善できないまま産業再生機構の管理下に置かれ、2006年まで事実上の国有化状態に置かれた。この間経営陣の刷新、財務体質の強化、遊休資産の売却等を進め、構造転換を図った。

 

主力のコークス事業では、北九州事業所の休止コークス炉を再稼動させ、新日本製鐵との間に長期供給契約を締結し安定供給を実現した。

年間生産能力は210万トンで、受け入れ~生産~搬送までの全工程をコンピュータ制御で無人化・合理化・高効率化を追求し、高品質な高炉用・鋳物用コークスを供給している。

2005年3月に再生機構は新日鐵、住友商事、大和証券SMBCに持株を譲渡した。(新日鉄と住友商事は各12.9%)

2008年2月に、新日鐵と住友商事は、三井住友銀行からB種優先株を取得し、普通株に転換した。
この結果、両社の持株比率は各21.7%となり、両社の持分法適用関連会社となった。

2009年4月、三井鉱山は日本コークス工業に改称した。

 

 


中国人民銀行は7月5日、前回の6月7日に続き、2カ月連続で利下げを行った。実施は7月6日。

4-6月の成長率が6四半期連続で減速するとみられることから、景気のてこ入れのため踏み切った。

1年物貸出金利は6.31%から6.00%に、1年物預金金利は3.25%から3.00%に下げた。

人民銀行はさらに、貸出金利の下限を基準金利の80%から70%に引き下げ、銀行の裁量を拡大した。

貸出金利

  基準金利

下限

従来      6.56% 基準x0.9   5.904%
6/7改正      6.31% 基準x0.8   5.048%
7/5追加 6.00% 基準x0.7 4.200%

預金金利

  基準金利

上限

従来      3.50% 基準x1.0   3.50%
6/7改正      3.25% 基準x1.1  3.575%
7/5追加

3.00%

基準x1.1  3.30%

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なお、欧州中央銀行(ECB)も7月5日、主要政策金利であるリファイナンス金利を1%からユーロ導入以来低水準となる0.75%に引き下げた。

欧州債務危機の深刻化に対し、利下げにより景気下支えを図る。



チッソの事業会社のJNCは7月3日、フランス原子力庁(CEA)の新エネルギー技術研究部門(LITEN) と自動車用リチウムイオン電池に使用される負極材料および電極の共同開発を開始すると発表した。

リチウムイオン二次電池の負極材料には一般的にグラファイト(黒鉛)などの炭素材が使用されるが、その物性から電池容量とエネルギー密度に限界があるために、これらを解決する新規材料の開発が強く望まれている。

このため、JNCはLITENとの間で、最先端のシリコン系負極材料およびそれを用いた電極の共同開発契約を締結し、開発を推進する。

LITEN ホームページではナノ構造のSi-C compounds に焦点を当てた研究をしているとしている。
なお、正極材では boron-doped LiFePO4 component の特許を取り、開発を進めている。

ーーー

JNCは、環境・エネルギー分野を新規事業ドメインとして位置づけており、その1つとしてリチウムイオン二次電池用部材の分野での開発を進めている。

2010年9月には、チッソ(当時)は正極材市場に進出することを決定し、ドイツのH.C. Starck GmbHと合弁会社を設立した。

H.C. Starckはタングステン、モリブデン等の希少金属の粉末及びコンパウンドセラミック粉末、エレクトロニクス用スペシャリティケミカル等のメーカーで1986年にBayerグループに入った。

Bayerは2006年に投資会社の Advent International Carlyle Group に売却することを決め、2007年2月に売却を完了した。

2006/12/2 Bayer、子会社 H.C. Starck を売却

合弁会社は CSエナジーマテリアルズで、チッソ 51%、Starck 49%の出資。
両社のノウハウと生産技術を併せ、リチウムイオン二次電池正極材の製造販売、研究開発を推進する。

2012年5月にJNCの水俣製造所にセミコマーシャルプラントを完成し、9月には運転を開始する。

JNCはまた、市原製造所にセパレータのパイロットプラントを建設していたが、このたび完成し、ユーザーにサンプル評価を依頼している。
年内には本プラント建設計画を具体化させたい意向。

 

今回の負極材への進出で、リチウムイオン二次電池の4材料のうち電解液を除く3材料に開発・事業化の見通しがついたことになる。

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リチウムイオン二次電池の仕組みは以下の通り。

リチウムイオン二次電池は、非水電解質二次電池の一種で、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う。

現在では、正極にリチウム金属酸化物を用い、負極にグラファイト(黒鉛)などの炭素材を用いるものが主流となっている。

電解液には非水溶液系電解質を使用する。
炭酸エチレンや炭酸ジエチルなどの有機溶媒 +ヘキサフルオロリン酸リチウム (LiPF6) といったリチウム塩を使う。

三菱化学はリチウムイオン二次電池の主要4材料(電解液・負極材・正極材・セパレータ)すべてを取扱う世界唯一の企業。

2010/9/13 三菱化学、リチウムイオン二次電池用負極材の製造能力増強 

宇部興産とDow Chemicalは2011年7月6日、リチウムイオン二次電池向け電解液の製造及び販売等を行う合弁会社を設立することで合意したと発表した。

宇部興産は、リチウムイオン二次電池の主要四部材のうち、電解液とセパレーターを事業化している。

2011/7/14 宇部興産とダウ、リチウムイオン二次電池向け電解液の合弁会社設立 

 


再生可能エネルギー買取制度が7月1日にスタートした。

このうち、風力発電は20kw以上が 23.10円/kw(税抜き22.00円)、未満が57.75/kw(税抜き55.00円)で買い取る。

2012/6/26 再生可能エネルギーの固定価格買取制度 

再生可能エネルギーは電力会社が買い取り、その送電網を使って家庭や企業に送るが、風力については、風況により出力が大きく変動するため、電力系統への連系量が増大するにつれ、周波数や需給運用など電力系統に影響を及ぼすことが懸念される。

このため、電力会社では電力品質や安定供給に影響を及ぼさない範囲で連系可能量を設定している。

電力事業連合会によると、各電力の連系可能量は以下の通りで、現在の可能量は約430万kwで、2012年3月末試算の2020年頃の見通しは約600万kwとなっている。
東京、中部、関西の3電力はそもそも風力発電に向いた場所が限られているため、枠を設けていない。

これに対し、朝日新聞の調べによると、既に建設された風力発電と今後の建設予定分の合計概数は約360万kw(枠設定分では約300万kw)に達しており、現状では残り枠は31%しかない。

電力会社の風力発電連系可能量 (万kw)
 

連系可能量

買取予定量
          (*)

残り枠

2011/9/末 2012/3/末
(2020年頃の
 見通し)
現状 2020
北海道 56 56 52 7% 7%
東北 158 200 114 28% 43%
東京 - - 35    
中部 - - 21    
北陸 25 45 15 40% 67%
関西 - - 8    
中国 62 100 49 21% 51%
四国 25 45 23 8% 49%
九州 100 150 42 58% 72%
沖縄 2.5 3.0 1.4 44% 53%
合計 428.5 599 360.4
(296.4)

(31%)

51%)
* 既に建設された風力発電と今後の建設予定分の合計概数


北海道電力は56万kwの枠のうち52万kwが埋まった。
東北電力は今年初めに30万kw分を新たに募集したところ、買い取り枠の約3倍の324万kw分の応募が殺到し、断らざるを得ない状況。

枝野経済産業相は7月1日、風力発電に適した北海道と東北地方の一部地域で、必要な送電網の整備・増強を財政支援する方針を表明した。強い風が吹く地域は過疎地が多く、送電線の容量不足が発電所建設のネックになっている。

補助金を念頭に「送電網を持つ電力会社と(恩恵を受ける)風力発電事業者の負担を前提に、国が協力する枠組みを考えたい」と述べた。

経産相は「風力が大きな柱になる」と強調、2013年度予算の概算要求に盛り込む考え。



  

(事件)

石原産業四日市工場では硫酸法と塩素法で酸化チタンの生産をしているが、1997年に硫酸法の廃棄物の減量化と酸化チタンの製造コストの低減をはかるため、製造工程から副生する使用済み硫酸を再生利用して副生品を生産・販売する研究開発に着手した。

2001年から土壌埋戻材を「フェロシルト」と命名して販売を開始し、2003年には三重県リサイクル製品利用推進条例に基づく「リサイクル製品」に認定された。

2005年4月までの間に約77万トンのフェロシルトを生産、そのうち約72万トンが販売され、委託業者を通じて東海3県や京都府加茂町など35カ所に埋設された。業者がケナフを植えるための肥料と偽って埋め捨てたケースもある。

2004年11月、大雨によって愛知県北丘地区でフェロシルトが流出し、川の水を赤く染めるという事件が発生した。
サンプル検査の過程でフェロシルト中から基準値を超える6価クロムやフッ素化合物も含まれていることが分かった。

石原産業は2006年3月決算で、フェロシルト回収費用326 億円を特別損失に計上した。

「フェロシルト」の不法投棄事件で、廃棄物処理法違反(不法投棄)の罪に問われ、1審・津地裁で懲役2年の実刑判決を受けた同社四日市工場の元副工場長、佐藤驍被告の控訴審判決(2007/12)で、名古屋高裁は「不法投棄や隠ぺい工作の中心的な役割を担っていたと認められる」と1審判決を支持し、佐藤被告の控訴を棄却した。

2006/11/13 石原産業フェロシルト不法投棄事件

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石原産業は2007年4月、株主からの請求に基づき、元取締役佐藤驍に対し、取締役の責任追及にかかる損害賠償請求訴訟を提起した。(甲事件)

撤去・回収の費用負担を余儀なくされ多額の損害を受けたとし、当面、佐藤驍の取締役在任期間である2003年6月から2005年6月までの間の行為で、廃掃法違反による起訴事実に係る行為による損害10 億円につき賠償を求めるもの。

この訴訟に2つの訴訟が共同訴訟参加した。

石原産業株主が、元取締役佐藤驍に対し、善管注意義務違反により会社に489 億円の損害を与えたとして、共同訴訟(乙事件)

②石原産業株主が、元取締役佐藤驍を除く他の取締役ら19 名に対し、善管注意義務違反の行為により、会社に489 億円の損害を与えたとして、同額の賠償を求めた株主代表訴訟(丙事件)

 

大阪地裁は2012年6月29日、これらに対する判決を言い渡した。

甲事件:被告佐藤驍に対し、会社への10 億円の支払命令。

乙事件:元取締役佐藤驍に対し、会社への475 億8400 万円の支払命令。

丙事件:元取締役Aに対し、会社への254 億5050 万円の支払命令
        (内、101 億8020 万円は、元取締役亡Bの訴訟承継人と連帯)
     元取締役亡Bの訴訟承継人3名に対し、会社への合計101億8020 万円の支払命令
        (元取締役Aと連帯して、元取締役亡Bから相続した財産の存する限度)
     その他の元取締役17 名に対する請求はいずれも棄却

なお、石原産業ではこの損害賠償金額の受領の可能性は未だ不確定であるとして、業績に与える影響を見込んでいない。

 

 

EUは6月25日の外相理事会で、7月1日から域内保険会社がイラン産原油輸送タンカーに損害保険を販売することを禁止することを決めた。

EUは1月23日、ブリュッセルで外相理事会を開き、イランへの制裁措置として、同国産原油の輸入禁止と同国中央銀行の資産凍結などを決めたが、その中に、下記の項目がある。

・イラン原油及び石油製品の欧州での輸送・購入・輸入の禁止、及び関連するファイナンスと保険契約の禁止
  既に締結済の契約は6月末までは認める。

2012/1/27 EU、イラン原油禁輸を7月完全実施へ

EUは7月1日にイラン産原油の全面輸入禁止措置を発動させた。

韓国は、欧州の保険会社の再保険がなければイラン産原油を運ぶタンカーを運航することができないため、7月からイラン産原油の輸入 を全面的に停止する。

韓国は中国、日本、インドに次ぐ4番目のイラン産原油の輸入国で、昨年は原油全体の9.4%の8720万バレルをイランから輸入した。

韓国の精油4社のうちSK EnergyとHyundai Oilbankがイラン産原油を輸入してきた。
SK Energyは輸入量の約10%、Hyundai Oilbankは約20%となっている。

今年に入り、両社はイラン産原油の輸入量を削減し、その分をカタールなどほかの産油国からの輸入で補っているため、韓国政府は「国内の需給に大きな影響はない」としている。

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イラン産原油の輸入停止は韓国政府のイラン向け輸出にも影響を与える。

韓国は米国の要求により2010年からイランとの金融取引を停止している。

韓国政府は2010年9月8日、独自の対イラン制裁を発表、事前許可ないイラン金融取引を事実上禁止た。

韓国の石油各社はイランからの原油の輸入代金を国内のウリィ銀行と中小企業銀行に開設された口座に入金し、韓国の輸出企業はイランから受け取るべき代金をその口座から引き落とす形で決済している。

この口座には約1年分の決済が可能な残高があるが、イラン産原油の輸入停止が長期化すれば、残高がなくなり、輸出代金が受け取れないこととなる。

なお、米オバマ政権は6月11日、韓国やインド、台湾、南ア、マレーシア、スリランカ、トルコの7か国・地域について、イラン産原油の輸入を大幅に削減したとして、イラン制裁法の適用対象から除外すると発表した。
6月28日には中国とシンガポールも除外した。

このため、イラン制裁法の上では、金融取引は可能となる。
現在の禁止は韓国政府の方針によるものであり、イラン制裁法の適用対象からの除外で、韓国政府が方針を変えるかどうかによる。

韓国政府は6月26日、危機管理対策会議を開き、原油の代替輸入先を確保する一方、韓国の輸出企業に被害が及ばないよう対応策を講じることを申し合わせた。

イラン向け輸出をする中小企業を対象に輸出物量をそれぞれ割り当てるクォーター制を実施する一方、イラン向け輸出の比重が高い企業がトルコなど代替市場へ目を向けられるように支援する計画。

他方、韓国のイラン原油輸入停止を受け、駐韓イラン大使は、「韓国政府の類を見ないイラン産原油輸入中断決定で両国関係の損傷を避けようとしたイランの努 力が水の泡になった」とし、「韓国が今度の措置を実行すれば、イランも韓国製品の輸入を完全に中断する決定を下すこともありえる」と強調した。

ーーー

日本の場合は、以下により、当面の問題点を解決 、イラン産原油の輸入を(量を減らしながら)継続する。

(保険)

貨物保険:補償額を5割超 減額する。
船舶保険:免責条項を導入、戦争保険についてイラン関連は免責する条項を追加する。

賠償保険:6月20日「特定タンカーに係る特定賠償義務履行担保契約等に関する特別措置法」が成立 、 
     
イラン産原油を運ぶ日本のタンカーに重大な事故が起きた場合、最大で76億ドルを国が補償する。

詳細は以下の通り。

タンカーの損害保険は、対人・対物は任意だが、油濁損害については船舶油濁損害賠償保障法で強制加入が義務づけられている。

日本では海運各社でつくる日本船主責任相互保険組合がほとんどを引き受けているが、補償額は800万ドルしかないため、欧州の損保会社と再保険契約を結び、最大76億ドルまで補償できるようにしている。

今回、この再保険が出来なくなる。

特別措置法では、
・タンカー所有者と国が再保険分の保険契約に代わる特定保険者交付金交付契約を結び
・タンカー所有者から保険金相当額の年額約1500万円を徴収。
・日本船首責任相互保険組合が補償する額を上回る事故があった場合に、交付金を交付する。


(金融)

米国は2011年12月、核開発を加速するイランへの資金流入防止を目的に、イラン中央銀行と取引関係のある外国金融機関に事実上の制裁を科す条項を盛り込んだ国防権限法を成立させた。
これには、原油輸入を大幅に削減していれば例外とすることも盛り込まれている。

米国務省は3月20日、核開発疑惑を強めるイランへの追加金融制裁の適用対象から日本と欧州10か国の合計11か国を除外する方針を決め、米議会に伝達した。除外期間は180日間。

国務省当局者は「日本は福島原発事故による困難にもかかわらず、2011年下半期にイランから輸入する原油量を15~22%減らした。これは画期的な規模で、他の国にも手本になるだろう」と話した。

2012/3/21 対イラン制裁法、日本は適用除外 

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米国は6月11日、韓国やインド、台湾、南ア、マレーシア、スリランカ、トルコの7か国・地域を除外した。

6月28日には中国とシンガポールも除外した。

米国としては、中国との外交関係を悪化させたくないとの思惑もあるとみられる。

但し、中国は以下の通り述べている。
アメリカの独自制裁に強く反対
中国は、イランに対するアメリカの独自制裁に従う必要はなく、イランと通常の貿易や石油取引を行う権利を持つ
ある国が国内法によって、他国に制裁を行使しようとしたり、他の国々に対して、これらの独自制裁に従うよう求めたりすることは、我々にとって容認できない
中国は経済の発展を必要としているため、イランからの石油の輸入を続けるだろう

なお、日本のイランからの原油輸入額は年間1兆円規模にのぼり、三菱東京UFJ銀行が決済の7~8割を担っている。
NY州地裁は5月2日、米海兵隊司令部爆破テロをめぐり、被害者への賠償金確保のため、三菱東京UFJ銀にイラン政府の資産調査と口座凍結を指示した。
これに対し同行は「凍結命令は日本国内の資産にも及び、日本の法律上問題がある可能性がある」と異議を訴え、米連邦地裁が5月25日までに米国外の口座凍結は無効との判断を下したことを受けて、日本企業が関連するイランとの決済取引を再開した。

 

東京大学大学院の加藤泰浩教授(地球資源学)らの研究グループが、「レアアース」を豊富に含む泥を南鳥島周辺の海底で発見した。6月28日に資源地質学会で発表した。

加藤教授らは、国際共同研究などで採取された南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)内の海底堆積物のボーリング試料を分析した結果、南鳥島の南西約300キロメートル、水深約5600メートルの海底の泥に最大約1700ppm、平均約1100ppmの高濃度でレアアースが含まれることを突きとめた。

「レアアースを含む泥の厚さは、現在確認できるものとして10メートルほど」あり、濃度や層の厚みなどから推定されるレアアースの埋蔵量は約680万トンで、日本が1年間に消費するレアアース(約3万トン)の「約220年分が見込める」という。

「ジスプロシウム」や「テルビウム」などに富み、他のレアアースも含まれているという。

また、南鳥島の180キロメートル北方のEEZ内や、南方のEEZ外でも1000ppmを超える濃度の泥を見つけている。


レアアースが見つかったのは水深5600メートルの海底で、これまでに採掘の例はない。

しかし、加藤研究室 では下記の発表時に、「現在のテクノロジーをもってすれば、3,500~6,000メートルの深海から年間4,000万トンのレアアース資源泥を採掘・回収することは十分に可能と考えられ、さらに、回収したレアアース資源泥からは、薄い硫酸により短時間でレアアースを浸出(抽出)することが可能である」と述べている。

ーーー

加藤泰浩准教授(当時)らの研究グループは、南東太平洋や中央太平洋 の広い範囲にレアアースを高品位で含有する「レアアース資源泥」が分布していることを発見し、2011年7月4日付の英国科学誌 Nature Geoscience に発表した。

国際共同研究などで採取された太平洋海底のボーリング試料を分析し、ネオジムなどのレアアースを400ppm以上の濃度で含む泥が、水深3500~6000メートルの多くの地点に分布しているのを見つけた。

1968~1984 年に東大海洋研究所が古地磁気の研究のために太平洋全域から採取した27本のピストンコア試料と、深海掘削計画/国際深海掘削計画による掘削コア 51本から得られた試料について全岩化学組成分析を行った。

特に高濃度の泥はタヒチ付近の南東太平洋と、ハワイ付近の中央太平洋に集中し、泥の厚さはそれぞれ8メートル、23.6メートルで、両海域計約1100平方キロメートルの総レアアース量は、世界の陸埋蔵量約1億1千万トンの800倍に当たる約880億トンと分かった。

さらに、レアアース資源泥には、バナジウム、コバルト、ニッケル、モリブデンなどのレアメタルも高濃度に含有されていることも明らかとなった。

この新たなレアアース資源は、見た目は普通の泥であるにも拘らず高品位のレアアースを含有しており、"レアアース資源泥"と名付けられた。

この"レアアース資源泥"は、
(1)レアアース含有量が高いこと
(2)資源量が膨大(陸上埋蔵量の約1,000倍)かつ探査が容易なこと
(3)開発の障害となるウランやトリウムなどの放射性元素をほとんど含まないこと
(4)レアアースの回収が極めて容易なこと(薄い酸で容易に抽出可能)
などの特長を兼ね備えている。

このレアアース資源泥は大半が公海にあり、国際海底機構に申請すれば鉱区獲得は可能だが、資源としての採掘例がないため、国際的な合意形成に時間を要するとみられる。

今回、日本の排他的経済水域内の海底堆積物のボーリング試料を分析した。

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東京大学大学院 エネルギー・資源フロンティアセンターでは7月20日にレアアースのシンポジウムを開催する。

レアアースのすべてを語る
ー海底レアアース泥の探査・開発から削減技術、製錬、リサイクルまでー

詳細は http://www.frcer.t.u-tokyo.ac.jp/event/images/RareEarthSympo.pdf

 


 

OPECは6月14日、ウィーンで開催した総会で、下期の生産枠を日量3000万バレルに据え置くことで合意した。

現在、サウジの増産などにより、OPECの生産量は日量3160万バレルとなっている。

サウジは燃料価格の上昇が世界経済の成長を妨げるのを防ぐため、原油生産を30年ぶりの高水準となる日量1000万バレルに大幅拡大している。

ヌアイミ石油相は総会に先立ち、「われわれの行動は、原油価格を3月時点の128ドルから現在の約100ドルに押し下げることに役立った。欧州と世界経済へのある種の刺激策となった」との見解を示し、原油価格が下落しているにもかかわらず、OPECの生産目標を引き上げる必要があるとの見解を示した。イランの今後の減産を視野に入れている。

原油価格下落を受け、一部加盟国は生産枠の引き下げを主張した。
財政均衡を原油価格の1バレル=100ドルを上回る水準に頼る一部の国は、原油価格がさらに下落する可能性を懸念している。

サウジアラビアも国家公務員の給与引き上げ、社会保障の拡充、公共投資の増加を実施しており、アブドラ国王は2008年12月に、75ドルが原油の適正価格だと発言した。

しかし、世界経済の減速に原油高が加われば、景気をさらに冷え込ませ、一層の原油価格下落を招く恐れもある。このためOPECは目標を据え置く一方、超過生産を減らすことで合意した。

OPEC事務局長は、生産枠の据え置き合意は160万バレルの減産を意味すると指摘した。

ーーー

OPEC生産枠の推移は下記の通り。(千バレル/日)

  2007/2 2007/11 2008/1 2008/9 2008/11 2009/1 2012/1
Algeria 794 1,357 1,357 1,357    1,286






Iraq
 含まず

 

 

Iraq含む
Iran 3,788 3,817 3,817 3,817    3,618
Kuwait 2,065 2,531 2,531 2,531    2,399
Libya 1,371 1,712 1,712 1,712    1,623
Nigeria 2,123 2,163 2,163 2,163    2,050
Qatar 663 828 828 828     785
Saudi 8,399 8,943 8,943 8,943    8,477
UAE 2,257 2,567 2,567 2,567    2,433
Venezuela 2,970 2,470 2,470 2,470    2,341
Angola     ー     ー 1,900 1,900    1,801
Equador     ー     ー 520 520     493
Iraq (ー) (ー) (ー) (ー) (ー) (ー)
Indonesia 1,370 865 865

離  脱

Total 25,800 27,253 29,673 28,808   27,300 24,845 30,000
(増減) (-500) (1,450) 2,420 〔-865〕   (-1,500)    


2008年9月総会ではイラクを除く11か国の生産枠合計は、離脱したインドネシアの枠を除いた28,808千バレルであった。
2008年11月総会では1,500千バレルを減らし、27,300千バレルとした。

2008年12月総会では、2009年1月からの生産枠を24,845千バレルとした。
これは2008年9月の生産量29,045千バレルから4,200千バレルを減らしたもの。

2008/12/18 OPEC 大幅減産決定

これ以降、国別の生産枠は明らかにされていない。

2011年12月の総会で、2012年1月以降の生産枠を、イラクを含む加盟12カ国の生産枠を日量30,000千バレルとすることで合意した。
ほぼ現状の生産量に即した水準で、サウジアラビアの意向に沿った形となった。

今回はこれを据え置く。




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