2009年4月アーカイブ

ブラッセルのCartel Damage Claims (CDC) は4月23日、過酸化水素の価格カルテルで被害を蒙ったパルプ、製紙業の32社に代わって、カルテルに参加した6社をドイツの法廷に訴えた。

まず情報提供を求め、その後に損害賠償を求める。
予備的に賠償額を430百万ユーロとしており、金利を加算すると約50%増しになる。

CDC2002年に設立された会社で、独禁法違反に対して私的な損害賠償を代行する。
(ホームページ:
http://www.carteldamageclaims.com/english/introduction_engl.htm

訴えられたのは次の6社:
 
Evonik Degussa GmbH (Germany
 
Akzo Nobel N.V. (Netherlands
 
Solvay SA/N.V. (Belgium
 
Kemira Oyj (Finland
 
Arkema SA (France
 
FMC Foret SA (Spain):米国FMCの子会社

被害者の32社は欧州13カ国に94の工場を持ち、過酸化水素を各社から購入していた。
社名は公表されておらず、各社は損害賠償権をCDCに売却し、委任している。

この方式は、これまで米国流の集団訴訟を受け入れるのを渋っている欧州で、私的な損害請求を進める新しい方式とされている。

ーーー

EUは2006年5月3日、過酸化水素及び過ホウ酸塩のカルテルに参加したとして、7社に合計388百万ユーロの制裁金を科したと発表した。

下記9社は1994から2000までの間、過酸化水素及び過ホウ酸塩について情報を交換、生産を制限、シェアと需要家を割り当て、価格を操作していた。

200212月に Degussa が減免を申請した。これを受けECが調査を開始し、その結果、減免を求めて情報提供が相次いだ。

社名 減額(%) 制裁金
(千ユーロ)
 
Degussa   100      0 <p>HTML clipboard</p>重犯50%加算、減免制度で  129.938→0
Solvay    10   167,062 重犯50%加算、減額
Total/Elf Aquitaine/Arkema    30   78,663 重犯50%加算、減額
Akzo Nobel    40   25,200  減額
FMC Foret     25,000  
Kemira     33,000  
Edison (now Solvay Solexis)     58,125 重犯50%加算
Snia/Caffaro      1,078  
L'Air Liquide      - 時効1998に事業中止)
合計    388,128  

発表には、この決定がカルテル被害者が損害賠償を訴えるのに利用できると付言している。

 


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GlaxoSmithKline の動き

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製薬業界は新薬の特許の期限切れなどに伴い、有望な新薬の開発に重点投資する必要に迫られており、M&Aや事業の統廃合が加速している。

現在の金融危機のなかで、手元資金の多い医薬業界だけが多額の買収資金の借り入れが出来る。

本年1月PfizerWyeth 680億ドルで買収すると発表、3月にはMerck Schering-Plough 411億ドルで買収することで合意した。

2009/1/27 PfizerWyeth を買収

2009/3/11 Merck、米Schering-Plough を買収

416日、英国のGlaxoSmithKline GSKと米国のPfizer は、それぞれの抗エイズウイルス(HIV)薬事業を統合すると発表した
GSKは主力の抗ウイルス事業を強化、Pfizer Wyeth 買収で補強するバイオ医薬品の開発に集中する。

GSKは更に、420日、皮膚薬を専門に手がける米製薬会社Stiefel Laboratories Inc. を36億ドルで買収すると発表している。

ーーー

GSKPfizerWyeth の関係は以下の通り。

ーーー

GlaxoSmithKline(GSK)/ PfizerのHIV事業統合:

GSK  PfizerHIV医薬品に特化した合弁会社を設立することで合意した。

新会社はGSKにとっては、製品の幅を広げ、将来の特許切れに対応でき、また新薬候補を追加する意味がある。
PfizerにとってはSelzentry/Celsentri や新薬候補をGSKの販売ルートで拡販できる。

当初の出資比率はGSKが85%、Pfizer15%で、GSKの連結子会社となる。
しかし、今後、新薬候補の力を勘案して見直すこととした。

全ての新薬候補が承認された場合は、GSKが75.5%、Pfizer24.5%となる。
GSKの新薬候補のみが承認された場合は、GSKが91%、Pfizer9%となる。
逆に
Pfizerの新薬候補のみが承認された場合は、GSKが69.5%、Pfizer30.5%となる。

また、いずれかの会社が拠出した製品がある基準を達成した場合には、その会社に優先配当を払う規定も入っている。

新会社は11の製品を持つ。主力はGSKCombivirKivexa、PfizerSelzentry/Celsentriである。
2008年の合計売上高は16億ポンド(23.6億ドル)に達する。新会社のシェアは19%を占める。

Product Class
Agenerase Protease inhibitor
Combivir NRTI
Epivir/3TC NRTI
Epzicom/Kivexa NRTI
Lexiva/Telzir Protease inhibitor
Rescriptor NRTI (US only)
Retrovir/AZT NRTI
Selzentry/Celsentri CCR5 antagonist
Trizivir NRTI
Viracept Protease inhibitor (N.America only)
Ziagen NRTI

Protease inhibitor:蛋白分解酵素阻害剤(エイズウィルスの増殖防止)
NRTI:ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(エイズウィルスの増殖防止)
CCR5 antagonist
HIVの侵入阻害剤

新会社は、phase II 段階で4種、phaseⅠ段階で2種の新薬候補を持っている。

Product Class Phase
GSK 1349572 Integrase inhibitor II
UK-453061 NNRTI II
GSK 2248761 (IDX899) NNRTI II
PF-232798 CCR5 antagonist II
PF-3716539 PK enhancer I
GSK706769 CCR5 antagonist I

Integrase inhibitorHIVのDNA組み込み阻害
NNRTI:非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬

既存製品を入れると、新会社は17の製品を持つこととなる。

更に新会社は両社とResearch Alliance Agreement を締結する。両社は引き続き研究開発を行い、新会社は第一に交渉する独占権を有する。

なお、Pfizerのワクチンは新会社に移さない。
同社は
Wyeth買収で幅広いワクチン事業を入手する。

2002年にFDAはネコ免疫不全症を予防する世界初のワクチンを承認した。

カリフォルニア大学とフロリダ大学が特許を持ち(発明者はJanet Yamamoto
Wyethの動物用医薬品事業部門であるFort Dodge Animal Health社がFel-O-Vax FIV として販売している。

ーーー

GSK/Stiefel Laboratories

GSK皮膚薬を専門に手がける米製薬会社Stiefel Laboratories Inc. を36億ドルで買収すると発表した。

Stiefel の全株式を29億ドルで買い取ったうえ、同社の4億ドルの借入金を肩代わりする。
更に、今後の業績しだいで、
3億ドルの現金支払いを行う。

買収後、GSKの皮膚薬はStiefel の事業と統合、GSK Groupの中でStiefel の名前で事業を続ける。

両社の皮膚薬を統合すると、2008年ベースで売上高は約15億ドルとなり、全世界の処方箋皮膚薬の市場で8%のシェアとなる。
Stiefel 製品が9億ドル、 GSK製品が5.5億ドルとなっている。

統合により、Stiefel 製品は特にブラジル、ロシア、インド、中国、日本などでGSKのグローバルな販売ルートを利用でき、GSK製品はStiefel の皮膚薬専門の販売力、医者との関係などを利用できる。


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財務省が4月28日に発表した3月の輸入通関速報によると、3月のナフサ輸入価格は28,632円/kl となった。また、1、2月の金額も修正された。

この結果、第1四半期のナフサの平均輸入価格は 24,970円/kl となり、これを基にした国産ナフサ基準価格は27,000円/kl となる。

計算根拠は以下の通り。(単位:円/kl)

  輸入平均   基準価格     修正後
輸入平均   基準価格
3Q平均  83,820  85,800      
08/10  67,110      66,923    
08/11  48,593      48,456    
08/12  29,780      29,780    
4Q平均  50,162  52,200  50,047  52,000
09/1  21,462      21,500    
09/2  23,717      23,836    
09/3  28,632      28,632    
1Q平均        24,970  27,000

基準価格は平均輸入価格に諸掛 2,000円/kl を加算(10円の桁を四捨五入)


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Rio Tinto は借入金返済のため、資産の売却を続けている。

Rio Tinto 本年2月12日、中国国有アルミ大手、中国アルミ業公司(Chinalco)から現金で195億ドルの出資を受けると発表したが、承認を決める豪州のForeign Investment Review Board レビューを6月まで延長している。    

2009/4/1 中国アルミのRio Tinto への出資のその後    

本年に入り、Alcan(2007年に買収)が持っていた中国のアルミ関連の2つのJVの持分を相次いで売却した。

Rio Tinto Alcan は本年1月、寧夏のアルミ精錬JVのAlcan Ninxgia(能力 16万トン)の50%持分をJV相手の青銅峡アルミ(Qingtongxia Aluminium)に125百万ドルで譲渡した。
同時に増設(能力 25万トン)精錬所の権利を80%まで取得するオプションを放棄する代償として13百万ドルを受け取った。

1964年設立で寧夏回族自治区に本拠を置く青銅峡アルミ外資との提携で能力拡大を図り、2004年3月にカナダのAlcan との間で合弁契約を締結した。
Alcanは150百万ドルを投資し、既存の150千トンの製錬所と所要の電力の50%の権利を得るとともに、建設中の250千トン精錬所の権利を80%まで取得するオプションを得た。

ーーー

Rio Tintoはこのたび、アルミの押出・建材製造販売のJVの深センの華加日*業有限公司:Nonfemet International(China-Canada-Japan)Aluminum Company Ltd. (*は金偏に呂)の持株27%のうち、17%をJV相手の中金嶺南有色金属公司に売却した。

Rio Tintoは持分の27%全体の売却を提案していたが、何故か、17%となった。
中金嶺南有色金属の持分は72%にアップした。

なお、中金嶺南有色金属は豪州New South Walesの亜鉛や鉛の採掘業者のPerilya 50.1%の出資を行っている。

2009/2/21 中国五鉱集団、豪州OZ Minerals を買収 に記載

ーーー

華加日は名前の通り、中国の中金嶺南有色金属が55%、カナダのAlcanが27%、日本の日本軽金属が18%出資している。

華加日は1986年に中国が55%、日軽金とAlcanが22.5%ずつで設立、1992年に日軽金がAlcanの持分を譲り受けた。

日本軽金属とAlcanは1996年にアジアのアルミ加工事業を統合、持株会社 Alcan Nikkei Asia Holdings を設立した。

タイのAlcan Nikkei Siam Reynolds Aluminumが設立、その後日軽金が70%を取得したが、Alcanとの持株会社設立で持株会社に移管した。(その後、30%を買い増し、100%とした)
華加日も持株会社に移した。

日軽金は2003年9月末にAlcanとの関係を整理した。

今後の東南アジアにおけるアルミニウムの需要拡大に対応し、より効果的かつ積極的に事業展開を推し進めるためには、タイの会社を100%出資会社として直接事業運営することが望ましいものと判断した。

この時点で中国のJV 華加日についても18%を取得した。

日軽金は中国の自動車市場への対応をはかるべく2004年4月に、華加日との合弁で、自動車部品用アルミ押出材加工販売会社「華日軽金(深セン)有限公司」を設立している。(日軽金55%出資)


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LyondellBasell 16日、米国事業とドイツの持株会社Basell Germany Holdings GmbH について米国の民事再生法 (破産法 Chapter 11)の申請を行った。

それ以外の国での活動は従来通りとしていた。

2009/1/7 LyondellBasellChapter 11 申請

しかし、同社は4月24日、欧州にある全体の持株会社 LyondellBasell Industries AF S.C.A. (以下、親会社)も米国の民事再生法の対象に加えたと発表した。

親会社は製造も販売も行っておらず、従業員もいない。   

今回の措置により、米国子会社の債権者が、親会社が米国子会社に対して行っている債務保証の実行を求めたり、親会社の長期借入金<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>(Senior Notes due in 2015 ) の繰上返済を求めるのを防ぐ。(金利の支払いが止まっており、2月に米国の裁判所が60日間の猶予を認めていた。)

同社では今回の措置は欧州の法律での破産には当たらず、米国以外の事業活動は全く影響を受けないとしている。

ーーー

同社の資本構造は以下の通り。

<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>

<p>HTML clipboard</p>

(4) The Senior Secured Credit Facilities comprise a $2,000 million term loan A facility, a $7,550 million and Euro 1,300 million term loan B facility and a $1,000 million revolving credit facility.

(5) The Asset-Based Facilities include an inventory facility of up to $1,000 million and a receivables facility of up to $1,150 million.

ーーー

これまでの経緯は以下の通り。

200916日 
  米国事業(合計81社)とドイツ持株会社Basell Germany Holdings が民事再生法を申請(図 参照)
  民事再生計画認可までの間の倒産を防ぐため、80億ドルのDIPファイナンスをアレンジ。

DIP(Debtor In Possession:占有継続債務者)ファイナンスは一時的な運転資金の手当てのこと
うち、
32.5億ドルは新規借り入れ、32.5億ドルは既存の担保付借入金の再借り入れ、
残り
15.15億ドルは既存運転資金の再借り入れ。

   
2月26日
  破産裁判所が下記に関して、60日間の禁止命令を出す。
  米国子会社の債権者が、親会社が米国子会社に対して行っている債務保証の実行を求めること。     
  親会社の長期借入金の繰上返済を求めること。 
  
利率 8.375%の2015満期の借入金(615百万ドル)の金利が未払いとなっている。 
 
2月27日
  破産裁判所がDIPファイナンスを承認
   32.5億ドルは新規借り入れ、32.5億ドルは既存の担保付借入金の再借り入れ、
<p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p>  15.4億ドル(1/6案では15.15億ドル)は既存運転資金の再借り入れ(→3月に15.7億ドルに増額)
 期間は1年
4月8日
再生計画で当初の固定費削減を上乗せ
  損益改善を13億ドルに、うち固定費削減を当初の2億ドルから7億ドルに。(2010年末 目標)
    従業員 3,000人(17%)、下請け 2,000人(30%)カット、10以上のプラント閉鎖

同社は324、昨年12中頃から休止しているChocolate Bayou のオレフィンコンプレックスを閉鎖すると発表した。
同コンプレックスは 土地をSolutia からリースしており、市況悪化に加え、リース料も負担となっていた。
Chapter 11でのオプションを行使し、リースを打ち切った。
他の6
つのコンプレックスで、需要家のニーズは十分賄えるとしている。

Equistar Chemicals のオレフィンコンプレックスは以下の通り。(能力は若干古い資料) 

立地 エチレン能力
Chocolate Bayou, Texas   545千トン
Channelview, Texas  1,750千トン
LaPorte (Deer Park), Texas   790千トン
Corpus Christi, Texas   770千トン
Lake Charles, Louisiana   385千トン
Clinton, Iowa   435千トン
Morris, Illinois   545千トン

 


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中国商務部は独禁法の規定に基づき三菱レイヨンのLucite International 買収を審査していたが、4月24日、条件付でこれを承認した。
これで独禁法上の問題は全てクリアしたこととなる。

付記
三菱レイヨンは27日、全ての関係各国で独禁法当局の認可取得を完了したと発表した。
今後、ルーサイト買収の手続きを開始し、本年5月末日頃全ての買収手続きを完了する予定。

昨年12月に一次審査を開始し、2月20日に競争上問題ありとして、二次審査に入った。

中国ではLucite 上海にACH法MMAモノマー 10万トンのプラントを稼動させている。
また、三菱レイヨン
100%子会社の恵州恵菱化成有限公司が広東省恵州市大亜湾経済技術開発区で2006年12月に直酸法MMAモノマー 7万トンで生産を開始したが、2万トンの増強を決めている。
これが問題とされた。

2009/4/14 三菱レイヨンのルーサイト買収に中国が反対?

その後、三菱レイヨン、Lucite International と協議を行い、今回の結論に至った。公告28号で経緯を説明している。

条件は以下の通り。

1.能力除去

中国Lucite5年間、生産能力の50%を第三者に原価(製造コスト+管理費、利益なし)で供給する。原価は独立した監査人の監査を受ける。(買収後6ヶ月以内に行う。正当な事情があれば、更に6ヶ月延長。)

期間内にこれが出来ない場合は、商務部は独立した受託者を指名、中国Luciteを第三者に売却させる。

2.上記期間中の扱い

上記の期間中は、中国Luciteは三菱レイヨンからは独立した管理体制で運営する。

その間、両社は価格や顧客について情報交換しない。

この約束に反した場合、25万~50万元の罰金を課す。

3.5年間の新事業禁止

商務部の許可なしで次の行為を行わない。 

1)中国でMMAモノマー、PMMAレジン・板のメーカーの買収

2)中国で新しくMMAモノマー、PMMAレジン・板の製造

 


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豪州3位の鉱業会社で世界2位の亜鉛メーカーのOZ Minerals と、中国の国有企業五鉱集団(Minmetals)の子会社の五鉱有色金属Minmetals Non-ferrous Metals)は2月16日、Minmetals OZ Minerals を約17億米ドルで全株式を取得する実現案契約を締結したと発表した。

2009/2/21 中国五鉱集団、豪州OZ Minerals を買収  

しかし、豪州財務相は3月27日声明を発表、OZ Minerals Prominent Hill 鉱山は南豪州のWoomera Prohibited Area (豪軍の武器テスト場)にあり、これが含まれる限り、本案は承認できないとした。

実際には、鉱山は武器テスト場から150km離れており、安全保障上の懸念はないという。

Sydney Morning Herald は、政府は恣意的な投資障壁をつくり、「中国に立ち向かっている」ように見せかけているが、これは中国マネーは危険だとのメッセージを国民に与えるもので、「赤禍ヒステリア」を起こしかねないとしている。

両社は協議の結果、Prominent Hill 鉱山を買収対象から除外し、買収額を12.1億米ドルに修正した。

ーーー

豪州財務相は423日、条件付でこの買収を承認した。

条件は以下の通り。

五鉱集団は取得した鉱山を別会社で運営する。
鉱山運営会社は豪州に本社を置き、豪州人の経営陣で運営する。CEOとCFOは豪州在住とする。
五鉱集団との取引価格は国際市況に沿った市価基準とする。
Century, Rosebery, Golden Grove 各鉱山の生産と雇用を維持又は増やし、Avebury鉱山を復活、Dugald Riverを開発する。(経済状況にもよるが)

五鉱集団はこの決定を歓迎、中国/豪州の相互投資にとって重要な一里塚であると評価した。

今後、中国政府の承認を受け、6月のOZ Minerals の株主総会にかける。

OZ Minerals は今後も上場を続け、Prominent Hill 鉱山の開発、運営に携わる。


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公正取引委員会は4月20日、日立アプライアンス(日立製作所の100%子会社で、総合空調及び家電製品の開発・製造・販売)に対して、不当景品類及び不当表示防止法第6条第1項の規定に基づく「排除命令」を出した。

「冷蔵庫総合カタログ」及びウェブサイト、新聞広告、ポスターの表示内容について、需要家に対して、実際よりも著しく優良と誤認させる恐れがあると判断した。

昨年9月に発売した冷蔵庫R-Y6000(「栄養いきいき真空チルドV」シリーズについて、
「フレックス真空断熱材」の芯材の原材料に
廃棄された冷蔵庫の棚等からリサイクルした樹脂を使用しており、また、この樹脂を使用することにより、「フレックス真空断熱材」の製造工程において排出する二酸化炭素の量を、当該樹脂を使用しない場合と比べて約48パーセント削減しているかのように表示した。

実際にはリサイクル樹脂の使用は一部機種・期間においてのみのものであり、また、実際の二酸化炭素の削減率も表示の数値より小さかった。
約48%という削減率は、4年前に採用していた製造工程との比較で、直近の新しい工程とではゼロから数%程度削減したに過ぎなかったという。

また同社が新聞各紙に掲載した新聞広告及び取引先販売店舗等に掲示したポスターにて、「栄養いきいき真空チルドV」シリーズ及び「ビッグ&スリム60」シリーズの計9機種の冷蔵庫全てにおいて、「フレックス真空断熱材」の芯材の原材料として、廃棄された冷蔵庫の棚等からリサイクルした樹脂を使用しているように表示した。

実際には一部機種においてのみ使用していた。

製品の設計から試作段階に移った2008年夏ごろには開発設計部門でリサイクル材活用が技術的に間に合わないことが分かったが、宣伝部門などに状況が伝わらなかったという。

同製品は3月末までに15万台を販売、300億円を売り上げたという。

本年2月10日に、この冷蔵庫9機種で「平成20年度省エネ大賞省エネルギーセンター会長賞」を受賞しているが、同社では自ら取り下げを申し出た。

なお、同社では、本件はカタログ及びウェブサイト、新聞広告、ポスターの表示に関する問題の指摘を受けたものであり、対象の冷蔵庫「栄養いきいき真空チルドV」シリーズならびに「ビッグ&スリム60」シリーズ計9機種の年間消費電力量や2010年省エネ基準達成率等、冷蔵庫の性能・機能自体には問題はないとしている。

ーーー

今回、公取委が排除命令を出した根拠の「不当景品類及び不当表示防止法」の条文は下記の通り。<p>HTML clipboard</p>

違反に対しては公取委は排除命令を出せるが、罰金などはない。

(不当な表示の禁止)

第4条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号に掲げる表示をしてはならない。

一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示

二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示

三 前2号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認めて公正取引委員会が指定するもの

 


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シノペックの2008年アニュアルレポートが発表された。

2008年上半期は原油価格が高騰したが、中国では石油製品価格は政府が統制している。

このため、精製部門は営業損益が大幅な赤字となった。
化学部門も赤字となっている。

参考  2008/8/29 シノペックの上期損益、過去最悪に

                                                単位:百万元
03 04 05 06 07 08
Sales 429,949 597,197 799,115 1,034,888 1,173,869 1,420,321
Operating profit   38,883   63,069   66,814     80,632     81,010 - 22,292
Net Profit   24,396   41,791   44,776     55,038     58,721    26,115

これに対して政府は補助金を出して、この赤字を補填している。

補助金は2005年から始まった。
 
 2005年:9,415百万人民元
  2006年:5,000百万人民元
  2007年:
4,900百万人民元

2008年の補助金は50,300百万人民元の多額となった。
 (うち、精製部門で40,500百万人民元、販売部門で 9,800百万人民元) 

営業損益内訳 百万人民元
03 04 05 06 07 08
Exploration and production 19,160 25,614 46,871 63,182 49,111 66,839
Refining   6,073   5,943 - 3,505 -25,710 -13,666 -102,084
Marketing and distribution 11,943 14,716 10,350 30,234 33,597 28,308
Chemicals    3,543 18,721 14,296 14,458 13,416 -13,352
Others  - 1,836 - 1,925 - 1,198 - 1,532 - 1,448 -2,003
合計 38,883 63,069 66,814 80,632 81,010 -22,292
補助金    9,415   5,000   4,900 50,300
再計 38,883 63,069 76,229 85,632 85,910 28,008
(うちRefining) ( 6,073) ( 5,943) ( 5,910) (-20,710) (-8,766) (-61,584)

精製部門は補助金を入れても、まだ多額の赤字となっている。 

ーーー

これに対して、PetroChina の場合は石油開発の比重が大きく、原油価格高騰によるメリットをフルに受けている。
精製では赤字が大きいが、補助金は出ていない。

04 05 06 07 08
Sales 397,354  552,229  688,978  810,432 1,039,674
Profit from operation 152,434  193,765  199,897  200,771  159,300 
Net profit 107,646  139,642  149,397  154,311  125,946 

Chemicals は若干の赤字となった。

ーーー

両社の損益を対比すると以下の通りで、石油開発の差が全社損益に反映している。


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SABICは21日、第1四半期の損益速報を発表した。

それによると、純損益は前年同期の69.24億リアルの黒字に対し、9.74億リアルの赤字となった。
これにはノレン償却 11.81億リアルを含むが、それを除いても2.07億リアルの黒字に過ぎない。

なお、昨年の第4四半期は3.11億リアルの黒字(2007年同期は68.7億リアルの黒字)であった。

営業損益も3.8億リアルの黒字で、2008年第1四半期の108.91億リアルに対し、97%の減となった。

SABIC業績                (単位:10億SAR、1SAR≒26円)
        1Q       4Q      年間
2009年 2008 前年比   2008 2007 前年比 2008 2007 前年比
Gross profit          3.51  13.35  -74%  48.1  47.73  
Operating profit   0.380  10.891  -97%    1.61  11.11  -86%  37.27  41.0   -9%
Net profit  -0.974*   6.924  -    0.311   6.87  -95%  22.0  27.0  -19%

 * ノレン償却 1.181SARを含む     

CEOのMohamed Al-Mady は、グローバルな金融危機、経済危機により、需要家が資金繰りに苦しんでおり、特に自動車、建設、電機産業が影響を受け、エンプラなど石化製品の需要減となり、これが価格低下につながったと述べた。

しかしSABICでは操業を維持しており、第1四半期の生産量は前年同期を若干上回り、販売数量も5%伸びたとし、同社の財務状況は健全であり、競争力を更に強化するとしている。


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日本GTL技術研究組合に加わる6社は4月16日、新潟市の日産500バーレルのGTLGas To Liquids)の実証プラントの建設を完了し、竣工式を行ったと発表した。

今後は2年間の実証運転を行い、商業規模で適用可能な日本独自の技術を確立する。

GTLは、世界に広く存在する天然ガスから、化学反応によってナフサ、灯油、軽油等の石油製品を製造する技術で、石油代替の燃料ソースの確保と多様化を可能にする極めて有効な手段であり、また、GTLによって製造される燃料は、硫黄分や芳香族分などを含まないため、環境に優しいクリーン燃料としても期待されている。

海外企業(SasolShellExxonMobil など)はGTL技術の商業化を先行しているが、他社へ技術供与は行わない方針のため、独自技術の開発が必要となる。

Sasol:カタールのOryx (34B/D)Oryx (74B/D) が稼動中
   2006/6/22 
南ア・サソールの石炭液化技術 に記載

Shell:マレーシア Bintulu (15B/D)が稼動中、カタール Pearl (140B/D)は設計段階

ExxonMobil:カタール計画取り止め
   2006/2/27 
ExxonMobil、カタールのGTL計画取り止め

ConocoPhillipsBP:いずれも実証段階

国際石油開発帝石、新日本石油、石油資源開発、コスモ石油、新日鉄エンジニアリング、千代田化工建設の6社は2006年10月25日に日本GTL技術研究組合を設立し、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同で実証研究を行なってきた。
(これに先立ち、北海道・勇払でパイロットスケール 7B/D のテストを行った)

実証研究の概要
(1) 目的:
商業規模の前段となる500B/D規模の実証プラントでGTL技術の実証、ならびに商業化へ向けたスケールアップの検討等を行い、商業規模(2万B/D)で技術的・経済的に競争力をもつGTL技術を開発する。
   
(2) 研究体制:JOGMECと日本GTL技術研究組合の共同研究
   
(3) 研究予算:総事業費 約360億円(補助金約240億円、日本GTL組合の負担額 約120億円*)
   
      * 国際石油開発、新日本石油、石油資源開発 各約30億円、残り3社 各約10億円
   
(4) 期間:2006~2010年度 (5年間)
実証プラントの概要
(1)所在地:新潟市北区太郎代2881-45
(2)プラント能力:日量500バーレル(日量80キロリットル)
(3)主要プロセス設備
合成ガス製造設備:天然ガスを合成ガス(H2とCO)に転換。
FT(
Fischer-Tropsch)合成設備:H2とCOから炭化水素を合成する反応で液体燃料粗油を合成。
アップグレーディング設備(水素化処理設備):液体燃料粗油からナフサ、灯油、軽油等を製造。

今回のプロセスは、炭酸ガスを含む天然ガスをそのまま利用することが可能な、世界初の画期的な技術である。

天然ガスにはCO2を20%含有するため、従来プロセスではCO2を除去し、その上で、合成ガス製造のため、別途酸素を製造して供給する必要があった。このプロセスはCO2除去不要で、酸素製造プラント不要のため、CO2を含むために開発されずに放置されたガス田の有効活用が可能となる。

 


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三井化学は4月21日、平成21年3月期の通期の業績予想について、1月30日公表の内容を再修正した。
今回は一般的な経済環境悪化に加え、将来の損益を悲観的にみた繰延税金資産の取崩しの影響が大きい。

連結決算(単位:百万円)
売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
前回予想(A)
(1月30日発表)
 1,450,000  -25,000  -30,000  -13,000
今回予想(B)  1,500,000  -46,000  -51,000  -95,000
増減額(B-A)    50,000  -21,000  -21,000  -82,000
前期実績  1,786,680   77,176   66,146   24,831

営業損益と経常損益の修正は事業環境及び世界的な経済環境の更なる悪化による。

セグメント別営業利益 (単位:億円)
前回予想 今回予想 差異
機能材    -60   -160   -100
先端化学     80    70    -10
基礎化学   -210   -320   -110
その他     -     -    -
全社    -60    -50     10
合計   -250   -460   -210

当期純利益は、これに加え、繰延税金資産の取崩しにより多額の税金費用が発生したことなどにより、950億円の赤字と、前回予想比で820億円の大幅減益となった。

同社は税効果会計に係わる会計基準に従って繰延税金資産を計上しているが、当期の業績及び厳しい経営環境を考慮し、繰延税金資産の回収可能性を慎重に検討した結果、当期末において繰延税金資産を取崩すこととした。
これにより、連結において
447億円(単独では391億円)を法人税等調整額に計上する。(当期純損益の減少となる)

「繰延税金資産」とは、企業会計上の費用が税務上の「将来減算一時差異」(当期には税務上の損金と認められないが、将来時点では損金と認められる費用)として課税される場合に、「<p>HTML clipboard</p>税金の仮払いで、将来の会計期間に払い戻される」と考え、これを繰延処理することにより生じる資産のこと。その分だけ当期純損益が増加する。

三井化学の主要な繰延税金資産は、退職給付引当金と投資有価証券評価損についての一時差異等である。
投資有価証券評価損は
当該有価証券の売却や投資先会社の清算などの時に税務上も損金として扱われる。

繰延税金資産の計上にあたっては、損金と認められる将来時点で、十分な利益が確保される<p>HTML clipboard</p>(払い戻されるべき税金がある)ことが条件である。
今回、同社は当期の業績及び厳しい経営環境を考慮し、それが確実とは言えないと判断したことになる。
石油化学品などの収益回復に時間がかかると判断した。

(実際には、その時点で当該費用を引いても黒字であればその分の税金が減るし、仮に赤字でも赤字の繰越が出来るため、将来的に税金が減る可能性はあるが、保守的に考え、過去に払った「前払税金」ではあるが、当期の損益に反映させる。)

同社は大幅な業績修正に対応し、既に実施中の緊急対策(既発表済)に加え、更なる緊急対策を実施する。

重点事業における事業構造改革、収益構造改善に向けた全社施策で、詳細は5月12日に発表する。

ーーー

三菱ケミカルも4月20日、前回(2月4日)発表の損益予想を再修正した。

連結決算(単位:億円)
売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
前回予想(A)
(2月4日発表)
 29,700  220  60   -580
今回予想(B)  29,090  80    -20   -680
増減額(B-A)  -610   -140   -80   -100
前期実績  29,298  1,250  1,289   1,641

営業利益は、経営環境の更なる悪化による大幅な販売数量の減少及び棚卸資産の低価法による評価損の拡大等による業績悪化を織り込んだ。

当期純利益は、減損損失の計上(約70億円)、投資有価証券評価損の悪化(約50億円)、田辺三菱製薬おけるHCV引当金の繰入額計上(88億円)といった特別損失の拡大を織り込んだ。


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中国のレアアース(希土類)の過度な開発問題について、全国人民代表大会(全人代)代表の周洪宇氏が全人代に提出した「レアアース生産・輸出の厳格な規制を求める建議」が、中国で幅広い注目を集めている。

同氏によると、中国のレアアース生産量は2005年に世界の96%を占め、輸出量で世界一となったが、乱開発されており、無秩序な開発で採掘現場での回収率も低効率の状態にある。

国家発展改革委員会の報告によると、中国は世界の需要量の2倍以上に相当する年間20万トン以上のレアアースを生産しており、価格も低水準にとどまっている。乱開発がこのまま続けば、20~30年で中国のレアアースは枯渇するとする。

中国で生産されるレアアースの60%は輸出されている。中国は毎年50%以上のレアアースを日本と韓国に輸出している。

レアアースの埋蔵量が世界第二の米国は早くから国内最大のレアアースが埋蔵するMountain Pass鉱山を封鎖、モリブデンの生産も停止し、毎年中国から大量のレアアースを輸入している。

周氏はレアアースの生産・販売・輸出入を専門に管理する国家機関を立ち上げ、統一の関連政策や法規を制定し、厳格な管理を実施しなければならないと指摘する。
生産量、輸出量・輸出先を規制する政策を厳格に実施し、レアアース資源が戦争目的に利用されるのを防ぐ必要がある。
特に核兵器やミサイル、軍用機、原子力潜水艦など軍事装備を有する国へのレアアースの輸出を制限するとしている。

周氏はまた、「レアアース業界を規範化し、中国での個人採掘に対する有力な対策を立て、閉鎖すべきところは閉鎖し、合併すべきところは合併し、無断での輸出行為を打撃しなければならない。3年以内に、レアアースの輸出量を現在の10万トン前後から2、3万トン前後に減らし、レアアース金属の高利潤と持続可能な発展維持に向け、中国は長期的なレアアースの価格決定権を確保しなければならない」と強調している。

ーーー

レアアース(希土類元素)はレアメタルの一つで、原子番号57番のランタン(La)から71番のルテチウム(Lu)までのランタノイドと、21番のスカンジウム、39番のイットリウム(Y)を加えた計17種類の元素のこと。

レアメタルは「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属」のうち、工業需要が現に存在する(今後見込まれる)ため、安定供給の確保が政策的に重要であるもの(鉱業審議会の定義)で、現在、31種類。

レア・アースの用途例

磁石-高効率高性能モーター用 ネオジム、サマリウム、プロセオジム、ジスプロシウム、テルビウム
研磨剤 セリウム
光学ガラス ランタン
ニッケル水素電池 ミッシュメタル、ランタン
蛍光体 イットリウム、ユウロピウム、テルビウム、ランタン、セリウム

ーーー

中国のレアアースの埋蔵量は世界の31%だが、周氏の言うとおり、世界の供給の97%を占めるという特異な状態となっている。

  埋蔵量
中国  27千トン  31%
CIS  19千トン  22%
米国  13千トン  15%
豪州   5千トン   6%
インド    1千トン   1%
 23千トン  25%
 88千トン
 
2007年
供給量(酸化物量)  
中国  120.0千トン  97%
インド    2.7   2%
その他    1.3   1%
合計  124.0
 
2007年
日本の輸入量
(酸化物量)
中国  34,312t  91%
その他   3,340t   9%
合計  37,652t
 石油天然ガス・金属鉱物資源機構
  「レアアース、インジウム、ガリウム、リチウムの需給状況等」から             
   
http://www.jogmec.go.jp/mric_web/koenkai/090304/briefing_090304_3.pdf

ーーー

レアアースの国内需要の9割を依存する中国に輸出規制強化の動きがあることから、日本のメーカーは対応策を検討し始めている。

昭和電工は2008年10月、ベトナムのハーナム省に、90%出資の子会社「昭和電工レアアースベトナム」を設立した。
2010年4月から高性能ネオジム系磁石合金の原料であるジジムメタル(ネオジムとプラセオジムを主成分とする合金)ならびにジスプロシウムメタル、あわせて年800トンの生産を開始する。

ベトナム国内外のレアアース混合原料やレアアース酸化物など複数種類の原料に対応可能な分離精製工程と、ジジムメタルやジスプロシウムメタル生産のための電解工程から構成される工場を建設し稼動させることにより、高性能ネオジム系磁石合金用主原料の安定調達を図る。

すでに秩父事業所、中国モンゴル自治区、江西省の3拠点で年間8,000トンのレアアース磁石用合金設備を有しており、今般の新会社を、原料供給の拠点として新たに加える。

   ーーー

トヨタ自動車グループはハイブリッド車などに不可欠なレアアース(希土類)の自力調達に乗り出す。

豊田通商は2008年12月、レアアースの専門商社である和光物産の全株式を取得し、豊通レアアースに改称した。
また、金属資源部を新たに設置し、レアアースを含む希少金属の安定供給に本格的に取り組む。

和光物産の持つインド産レアアースの商権及び販売チャンネルを譲り受け、非自動車分野への販売を含めた取引先への安定した供給体制を整える。2010年後半より年間4千トンを輸入する。

また、ベトナムにおいても、採掘権を持つベトナム国営鉱物公社とレアアース鉱山開発に関するJVを設立し(日本側49%)、2011年より年間5千トンを生産する。

ーーー

他の鉱石でも中国に依存するものが多い。

2007年の主要資源(鉱石)の産出国は以下の通り。

1位 2位 3位
レアアース 中国  97% インド  2% ブラジル 0.6%
バナジウム 南ア  39% 中国  32% ロシア  27%
タングステン 中国  86% ロシア  5% カナダ   3%
白金 南ア  80% ロシア 12% カナダ   4%
インジウム 中国  49% 韓国  17% 日本   10%
モリブデン 米国  32% 中国  25% チリ    22%
マンガン 南ア  20% 豪州  19% 中国   14%
       (Mineral commodity Summeries 2008)

 

付記

中国国土資源部は57資源保護のため、2009年のタングステン、アンチモニー、レアアースの生産量を下記の通りに制限すると発表した。

タングステン鉱  68,555トン
アンチモニー鉱 90,180トン
レアアース鉱   82,320トン

国土資源部ではまた、これら3の資源に関しては2010630までは、新しい掘削ライセンスの申請を受け付けない。


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住友化学は4月19日、サウジ・アラムコとの間で「ラービグ第2期計画」について、両社が共同してFSを実施するための基本的な枠組みを定めた覚書を締結した。

FSは2010 年第3四半期に完了する予定で、事業性が確認できた場合には、ペトロ・ラービグ社が本計画実施の主体者となり、2014年第3四半期までの操業開始を目途に、建設に着手する。

付記

住友化学とサウジ・アラムコは6月23日、「ラービグ第2期計画」について、両社が共同して行うFSのプロジェクト・マネジメント・コントラクターとして、日揮を起用すると発表した。

「第2期計画」では、新たに確保する30百万立方フィート/日のエタンと、約300万トン/年のナフサ(既存のトッパーから産出)を主原料に、エタンクラッカーの増設や芳香族プラントの新設を通して、さまざまな高付加価値な石油化学製品を生産する。

検討する主な石油化学製品は次の通り。

 EPR(エチレン・プロピレンゴム)
 TPO(熱可塑性エラストマー)
 MMA モノマー(メチルメタクリレート)、PMMA(メタクリル樹脂)
 LDPE/EVA(低密度ポリエチレン/エチレン酢酸ビニール共重合樹脂)
 カプロラクタム、ナイロン6樹脂
 ポリオール
 キュメン、フェノール/アセトン
 アクリル酸、SAP(高吸水性樹脂)

ラービグ計画の全体像は以下の通り。

 参考  2006/3/25 ペトロラービグ起工式

 2009/4/10 Petro-Rabigh スタート・アップ

 


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Invista は4月13日、DuPont 時代の環境面の法令違反に関してEPA、司法省、その他関係当局との間で、連邦裁判所で和解したと発表した。

ーーー

Invista はDuPont の繊維部門であったが、2004年に Koch Industries が42億ドルで買収した。

Invistaは2008年3月、DuPont が工場を所有していた際に安全面、環境面で広範かつ重大な違反があったとして8億ドルの補償と懲罰的賠償を求め、マンハッタンの連邦地裁に訴訟をおこした。

これに対してDuPont側は、対象工場で誰一人として負傷しておらず、不当なリスクにさらされたこともないとし、買収後4年も経っての主張は契約上の文言を利用して増強資金を得ようとしているのではないかと非難、根拠のない批判に徹底的に争うとしていた。

2008/4/2 DuPontに8億ドル以上の損害賠償請求

ーーー

Invista は買収後に以前のDuPont の7州の12工場で680件以上の違反を見つけた。
同社は既に大部分を是正しており、残りの約50件については今回、対応策が決められた。

残っているものにはClean Air Act programs に関するものがあり、複雑な処理を要し多額の設備投資が必要となる。期限と基準が決められ、州と連邦の当局がチェックする。

過去及び今後の同社の投資は合計で5億ドルに達する。

同社では、今回の和解は同社がこれまでやってきた環境基準に従うための是正策を確認するものであり、新しいオーナーとして以前の持ち主の違反の是正を完了させるものであるとしている。

EPAの報道官は、680以上の違反の圧倒的な部分はDuPont 時代のものだとしている。違反は、大気、水、危険廃棄物、農薬、緊急時の計画と準備などの規則に関連している。

EPAの評価では、Invista による過去及び将来の対策により、有害な大気汚染が年間1万トンはカットされる。その結果、30人の死亡、2000日の病欠、9000件の呼吸器障害が防止されるとみている。

EPAは新しいオーナーに買収した設備の監査を奨励している。
EPAでは今回の和解はこの監査ポリシーでの過去最大のものとしている。

EPAはまた、同社に対して170万ドルの罰金(Economic benefit penalty)を課した。これは買収時点から是正策が取られるまでの間に、違反により得られた利益を取り上げるという趣旨のもの。

ーーー

同社は昨年3月にニューヨークの連邦裁判所に DuPont を訴えたが、DuPont がこの訴えを却下するよう求めたのに対し、裁判所は330日、DuPont のこの動議を却下した。裁判は懲罰的賠償要求を含め、今後も続く。

ーーー

DuPont はこれまで、違反は一切ないとしていたが、EPAや司法省がInvista の主張を認めたこととなり、裁判で苦しい立場になった。

今回の和解に関しては、DuPont は同社と関係のないこととしている。
DuPont はInvista EPA、司法省が法定で和解したこと、各州の環境当局がInvista を訴えていることは知っている。DuPont はこの和解の当事者でないし、これまでの訴訟で被告として名前が挙がったこともない」としている。

付記

米国EPAは4月20日、DuPont Lucite International Clean Air Act 違反で国に100万ドル、 West Virginia 州に100万ドルの罰金を払うとともに、問題となった硫酸工場を自発的に停止することになったと発表した。

West Virginia 州にある硫酸工場はLucite が所有、DuPont が操業している。
Lucite ICIからMMA事業を買収したが、ICIDuPont MMA事業を取得している)

両社は1996年にClean Air Actで求められている許可を得ずに、また必要な公害防止設備を備えずに、改造を行ったもの。


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サウジアラムコはサウジの東海岸のアルジュベイル南東のラスタヌラの製油所(55万バレル/日)を95万バレル/日に増設する計画であったが、この計画の延期を決めた。ロイターが伝えた。
サウジアラムコが入札企業に対して計画延期の正式レターを出したという。

サウジアラムコは業者に対して、延期の理由も、延期の期間も明らかにしていない。

この増設は80億ドルを投じるもので、需要増に対応するとともに、隣接して建設される予定のサウジアラムコとダウとの投資額200億ドル以上の単一では世界最大の石油化学計画に原料を供給するもの。

2007/5/15  アラムコとダウ、世界最大級の石油化学コンプレックス建設 

情報筋によると、この石化計画も延期される。
基礎設計は当初2009年末に完成の予定であった。

ーーー

サウジアラムコは2008年11月6日に、ConocoPhillips とのJVでYanbu Industrial City に日量40万バレルの重質油完全改質製油所を新設する計画の延期を発表した。

同じく11月末には、フランスのTotal とのJVJubail に日量40バレルの製油所を建設する計画の入札を金融市場の不安定を理由に延期した。

2008/12/10 サウジアラムコ、石油開発計画を延期

ーーー

サウジアラムコのCEOのKhalid A. Al-Falih 3月23日にサウジの商工会議所でスピーチし、現下のグローバルな経済危機とエネルギー部門が直面する問題に拘わらず、同国は石油・ガス部門を拡大するという長期投資計画を維持すると述べていた。

そして、近いうちにPetro Rabigh の2次計画について住友化学と覚書を締結すると明言し、合わせてダウとのJVでのRas Tanura の石油化学計画についても述べていた。

ーーー

JVの相手のダウ側にとっては、Rohm & Haas 買収のための借入金返済と本計画への投資資金獲得の目途が立つまでは、この計画を前進させることは難しいのは確かである。


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中国商務部は15日、3月の家電の販売が前月比 70%以上の増加になったと発表した。「家電下郷」政策の効果が出た。
商務部によると、3月だけで 330百万ドル相当の149万セットの家電が販売された。

「家電下郷」は「家電を地方へ」という運動で、中国政府が2007年末に策定し、2008年1月に導入した農村市場の消費刺激策である。

特定の家電製品を購入する農村部の消費者に対し
一律13%の補助金を出すという内容で、当初は3つの省でのみ行われ、対象商品はテレビ、洗濯機、冷蔵庫、携帯電話の4種類だけであった。

2009年2月1日以降は不況対策として、これにオートバイ、パソコン、温水器、エアコンを追加し、対象地域を全国の農村(対象 9億人)に拡大した。

更に国務院が2月19日に発表した軽工業の景気刺激策の1つとして、電子レンジとIH 調理器が対象に加えられた。 


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米商務省は4月16日、3月の住宅着工件数を発表した。

前月は8ヶ月ぶりに前月比増となったが、3月は季節調整済みの年率換算で510千戸と再び下落し、1959年の統計開始以来、過去最低の1月に続いた。

 

米国 住宅着工件数推移(季節調整済み年換算:千戸)

  2008 2009 前月比 前年同月比
1  1,064   488  -12.5%  -54.1%
2月  1,107   572  +17.2%  -48.3%
3月   988   510  -10.8%  -48.4%
4月  1,004      
5   982      
6  1,089      
7   949      
8   854      
9   824      
10   767      
11   655      
12   558      
年合計   905.5      

注) 数値は過去2ヶ月分を常時見直している。
   このため、本年1月及び2月は前回発表から変わっている。


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Abu Dhabi Polymers Company Limited Borouge)はこのたび、第三期計画(BorougeⅢ)のFSを完了し、基礎設計エンジニアリング(Front-end engineering and designFEED) に入ることを決めた。

Borouge Abu Dhabi National Oil CompanyADNOC)が 60%Borealis 40% 出資するが、Borealis は実質的にADNOCの子会社。(Borealis ADNOC50%Abu Dhabi Investment Authority/National Bank of Abu DhabiのJVが50%出資するIPIC65%、オーストリアのOMV35%出資)

Borouge Abu Dhabi 市の 250 km西にあるRuwais BorougeⅠを運営、BorougeⅡを建設中で、後者は2010年に完成の予定。

Borouge
 エチレン          600千トン
 Borstar PE 600千トン HDPE/LLDPE (当初 450千t)
 ブテン-1 27千トン
Borouge
 エチレン 1,400千トン
 olefin conversion  752千トン
 Borstar PE   540千トン   HDPE/LLDPE
 Borstar PP     800千トン  400千トンx2
    * Borstar Borealis技術によるポリオレフィンのブランド

2006/6/2 湾岸諸国の石油化学ー3 アラブ首長国連邦(UAE)

BorougeⅢはADNOC の製油所・ガス処理工場の拡張で利用可能となる原料を使い、2013年第4四半期に生産を開始する。

エタンクラッカーと第二世代の
Borstar PP Borstar PEHDPE/LLDPE)、LDPEとブテン、及び用役・出荷設備からなる。
今回、
LDPEを加えることにより、wire and cable 市場の需要増に対応する。

個別の能力は明らかにされていないが、250万トンのポリオレフィンを生産、既存設備と合わせるとポリオレフィン能力は2013年末には450万トンとなり、中東とアジアの需要増に応える。

生産能力の拡大に合わせ、販売面での増強も図っている。

同社は現在、上海と広州に大規模物流センター(上海は年60万トン、広州は年30万トン)を建設中で、上海では物流センターに隣接しコンパウンド工場(当初能力5万トンで、8万トンまで拡張可能)を建設している。

本年1月末には、東南アジア物流センター設立のため、Singapore CWT Logistics とサービス契約を締結した。2010年から10年間、アジアの需要家にローカルサービスを提供する。


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韓国の産業政策の中枢である知識経済部(知経部)は本年1月、「主要業種別構造調整の方向」(10大業種別構造調整案)という対外秘の報告書を作成、その一部がすでに具体的な政策として実施されていることが分かった。4月14日付けの韓国東亜日報が伝えた。

自動車、石油化学、造船、鉄鋼、セメント、一般機械、繊維、半導体、ディスプレイ、携帯電話の10大品目に対する構造調整の原則や展望が盛り込まれている。

政府は、産業的側面や財務的側面を総合し、特定産業の構造調整を実施する。知経部は全産業の構造調整の方向付けを決める役割を担う。また、金融委員会や金融機関は、個別企業の財務的側面を分析する役割を担う。

構造調整の大原則として、「市場での自律を尊重」や「早期の構造調整」を取り上げている。
市場での自律を尊重することにより、経営不振企業が淘汰されていく環境を作り出し、再生見込みのない経営不振、限界に達した企業は、速やかに淘汰を促していく方針。

早期の構造調整の詳細原則として、
 ・グローバル的な核心の力量の強化
 ・業界の自主努力
 ・適切な競争維持
という、3つの項目を決めた。

報告書によると、自動車については、中長期的にメーカーを5社から3社又は4社にし、育成していく方針。
「選択と集中」という支援策により、自動車生産台数基準で世界5位の韓国自動車産業のプレゼンスを4位へと跳躍させる。

現代自動車と傘下の起亜自動車を除き、GM大宇、ルノーサムスン、双竜自動車のうち1~2社を育成対象から外し、自然な構造調整を促す考えと解釈されている。

石油化学については、蔚山、麗水、大山の3つの産業団地に分かれているが、「企業同士の独立志向」という形で誘導し、事業転換により団地別に特化させる。
ポリスチレンやテレフタル酸など収益性が悪化した品目を中心に事業交換、品目別統合をサポートし、規模の経済を確保するとともに品目別の専門化を促す。

例えば、ポリスチレンのメーカーは、蔚山に3社、麗水に2社あるが、これを各団地別に1社へ統合するという。

PSメーカー
立地 会社名 能力
千トン
蔚山 錦湖石油化学 227
東部韓農 100
BASF 240
麗水 LG化学 232
第一毛織 162
合計   961

また、PTAも構造調整の対象となっている。

PTAメーカー
立地 会社名 能力
千トン
蔚山 KP Chemical 1,080
泰光産業 1,000
SK Chemicals 520
暁星 410
Samsung Atofina 1,100
大山 Samsung Atofina 700
麗水 三南石油化学 1,700
合計   6,510

政府の10大業種別構造調整案に対しては、業界の専門家や各企業では概ね、構造調整の必要性や方向性には共感を示している。
しかし、政府主導の人為的な構造調整は副作用を招きかねないとし、長期的な政策課題で、ショックを最小限に食い止めながら推進したほうが望ましいという意見もある。

石油化学業界でも構造調整は不可欠だと指摘する専門家が多いが、構造調整の対象になりうる企業は、反発を強めている。

ーーー

韓国政府は通貨危機のさなかの1998年に「Big deal」と呼ばれる構造改革を行っている。

1998年2月に財閥の構造改革に関する5大課題が発表され、5大財閥(現代、三星、大宇、LG、SKのこと。このうち大宇は1999年8月に倒産・解体した)およびその取引先銀行はこの方針に沿って構造改革を進める方向で合意した。

基幹産業における過剰設備・重複投資を解消し、効率化を図る観点から、5大財閥における事業の再編成を行うもので、通称ビッグディールと呼ばれた。

半導体、石油化学、自動車、航空、鉄道車両、発電設備・船舶用エンジン、精油が対象となった。

石油化学については、大山にある三星総合化学と現代石油化学を統合し、外資を誘致する予定であった。
外資企業としては三井物産の可能性がたびたび報じられた。
しかし、出資額で調整がつかず、実現しなかった。

最終的に三星総合化学はTotal が参加し、Samsung Total となった。

現代石油化学はLG化学/湖南石化連合が買収、2005年1月に2系列を分け合い、LG Daesan PetrochemicalLotte Daesan Petrochemical とし、前者は20061月にLG化学が、後者は20091月に湖南石油化学が吸収合併した。

LG化学/湖南石化連合の買収に先立ち、現代石化のVCM、PVC事業はLG化学が買収している。

精油については、現代精油がハンファエナジーを買収、ハンファエナジーは仁川精油と改称した。

その後、仁川精油は現代グループから離脱、2004年に中国のSinochem が買収を決めたが、白紙に戻り、最終的にSKエナジーが買収した。

ーーー

日本では政府による産業構造調整への関与は1988年に終了した産構法が最後とされており、各社の自主的な決断によるしかない。


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三菱化学とシノペックは4月14日、相互の技術、原料、市場における優位性を活かし両社の提携をより一層強化して事業を拡大加速することを目的とする戦略提携パートナー関係を確立するための基本合意に至ったと発表した。

今回の基本合意による提携は共同研究、プロジェクト提携、原料及び製品の供給、工事・物流サービス、技術交流、人材交流等の多分野で行うもので、また、CO2 削減やその有効利用、再生可能エネルギーとしての有機太陽電池などの地球環境関係のテーマにも、両社共同で積極的に取り組むとしている。

両社はこのような将来を見据えた幅広い分野での戦略提携パートナー関係を確立する新しいビジネスモデルを活用して、事業化の加速、高付加価値分野への事業拡大、およびアジアにおける化学産業の今後の発展に貢献することを期待するとしている。

三菱化学とシノペックは、自動車用PPコンパウンド事業では10年以上の合弁事業での協力関係の歴史があり、両社は新たな合弁事業としてビスフェノールA、ポリカーボネート事業の新社設立を現在取り進めている。 

自動車用PPコンパウンド事業

 会社名:北京聚菱燕塑料有限公司
 場所  :
北京市佛山市三水工業区
 設立  :1998/10
 出資者:三菱化学55%、シノペック燕山石油化工40%、豊田通商5%
 能力  :
北京市 12,000t/年(当初 3000t/年)+6,000t/年
      
広東省佛山市 10,000t/年

PC樹脂・BPA事業

 会社名:未定 
 場所  :北京市・房山地区 (
シノペック燕山石化敷地内)
 出資者:
PCR Investments Japan Corporation 50%
        (
三菱化学:80%、三菱エンジニアリングプラスチックス:20%
      
シノペック 50%
 能力  :PC樹脂  6 万トン
      
BPA   15 万トン
 設立  :手続き中
 完成時期:2010年春

  2008/4/12 三菱化学、中国でビスフェノールAとPCの合弁会社設立申請

  なお、三井化学が既に上海でSinopecとのJVでBPAの工場を建設中。

ーーー

問題は上記2件以外で、どんな事業でどういう形で提携するかである。

小林社長は「バイオプラスチックや有機太陽電池の共同開発といった環境・エネルギー分野のほか、合成ゴム原料などだ。
今回の提携は石化事業から始め、ライフサイエンスなどはその後に検討する」としている。
「原料ナフサが安く手に入る中国にプラントを持つシノペックは三菱化学の技術をもとに、より製品に近い事業を強化できる。ウィンウィンの関係を築きたい」とする。

シノペックの王天普総裁は「当社は石化製品で汎用品の比率が大きかったが、付加価値の高い機能製品の比率を高めていきたい」とし、「中長期的には創薬やバイオ分野にも興味があり、検討を進めていきたい。三菱化学が持つ省エネ、環境技術にも関心がある」としている。なお、資本提携については「現時点では検討していない」とした。(日本経済新聞)

小林社長発言の「合成ゴム原料」は同社が開発したブテン類からブタジエンを製造する新技術のことと思われる。

同社はブタジエンを原料とする1,4-ブタンジオール製法技術を持っており、1,4-ブタンジオールとその誘導品(C4 ケミカル製品)事業を成長戦略のための集中事業の一つに位置付けている。
浙江省寧波市の大しゃ開発区で同社100%出資のMCC 高新聚合産品寧波有限公司が
PTMG 2.5 万トン/年プラントを建設中で、2009年3Qに完成する。

2008/12/16 三菱化学、ブタジエンの新規製造技術を開発    

付記

三井化学も4月15日にシノペックとの間で協力関係拡大の覚書を締結した。

両社は2006年4月に折半出資により、ビスフェノールA合弁会社「上海中石化三井化工有限公司」を設立し、本年1月に年産12万トンのプラントを稼動し、順調に推移している。

今回、両社が合意した主な内容は、以下の通り。
①フェノール・アセトン、ビスフェノールA及びその誘導品(例えばMIBK)等の協力関係について検討すること
②以下の事項に関し協力の可能性を検討すること
 a) 技術交流並びに共同研究開発
 b) その他のプロジェクト合弁
 c) エンジニアリングサービス


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厚生労働省は4月10日付の官報に告示260号を出し、薬害肝炎救済法に基づく給付金の負担割合を発表した。

ーーー

2008年1月8日、薬害肝炎救済法(特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法)が衆院本会議で全会一致で可決、1月11日、参院院本会議で全会一致で可決、成立した。

2008/1/16 薬害肝炎救済法 成立

薬害C型肝炎救済法の骨子は以下の通り。

府は甚大な被害が生じ、被害拡大を防止できなかった責任を認める
救済対象はフィブリノゲン製剤と第9因子製剤の投与(後天性の傷病に係る投与に限る)を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染した者及びその者の胎内または産道においてC型肝炎ウイルスに感染した者
  死亡の場合はその遺族
給付額
  慢性C型肝炎が進行して、肝硬変もしくは肝がんに罹患し、または死亡した者 4000万円
慢性C型肝炎に罹患した者 2000万円
それ以外 1200万円
投与の事実、因果関係の有無、症状は裁判所が認定
請求期限は5年以内、10年以内に症状が進行すれば追加給付金を支給
給付金支給のため、独立行政法人医薬品医療機器総合機構に基金を設置
費用の負担の方法及び割合について、製造業者等と協議し、あらかじめ基準を定める

原告・弁護団と政府は20081月15日、和解基本合意書を締結した。

田辺三菱製薬は9月29日に「基本合意書」を締結、日本製薬も12月14日に基本合意書を締結した。

2008/9/22 薬害肝炎訴訟、田辺三菱製薬が和解

ーーー

給付金の国と企業との負担割合については、舛添厚生労働相は2008年1月、これまでの薬害事例などを参考に「企業が2:国がという比率になる」と説明している。

これまでの訴訟での企業と国の負担割合は次のとおり。

サリドマイド訴訟
キノホルム(スモン)訴訟
薬害ヤコブ訴訟
 2:1(企業負担 66.7%)
薬害エイズ訴訟  3:2企業負担 60%

2008/1/24 資料 薬害エイズ事件

昨年1月に国が和解合意した後、国側は200億円の基金を拠出し、企業側負担分も肩代わりしていた。
本年3月末までに1,532人が提訴、905人が和解。2月末時点で約160億円が払われた。

今回、負担割合は3:2(企業負担 60%となった。
厚生労働省試算では田辺三菱製薬と日本製薬の2社が6割(約180億円)、国が4割(約120億円)を負担することとなる。
同省では「薬害エイズ事件と同じ血液製剤による薬害である点を考慮した」としている。

具体的には以下のとおり負担する。

1)2007年に大阪高裁が示した和解案で企業と国の責任が認定された期間分については、和解案通りの負担とする。

  対象企業 期間 企業負担 国負担
フィブリノゲン製剤 田辺三菱製薬 85/8/21-87/4/21 10分の10  -
87/4/22-88/6/23  3分の2  3分の1
第Ⅸ因子製剤 田辺三菱製薬
日本製薬
84/1/1- 10分の10  -

2)上記以外の期間分

田辺三菱製薬  5,186,725千円
日本製薬   155,775千円
  残額

       総額が確定できないのに、なぜ千円単位で決められるのか、不明。

3)合計額(厚生労働省試算)

田辺三菱製薬
及び 日本製薬
 約180億円  60%
 約120億円  40%

ーーー

田辺三菱製薬は20083月期決算において、HCV訴訟損失引当金として 112億円を計上していた。

同社は4月13日、給付金支給対象者見込数等を勘案して、同社負担に帰する費用の額を見積った結果、計上すべき引当金の額が200億円になったとし、2009年3月期連結損益計算書で 88億円を特別損失に計上すると発表した。上記の厚生労働省試算より増えている。

合わせて、同社は遺伝子組換え人血清アルブミン製剤の製造販売承認の取下げおよび自主回収にともなう製品の回収費用、廃棄損等をメドウェイ関連損失として、650 百万円を特別損失に計上すると発表した。

2009/3/26 田辺三菱製薬、試験データ改竄、承認取下げ、自主回収 

ーーー

日本製薬は武田薬品の連結子会社(87.5% 所有)。

1921年にはじめて画期的なアミノ酸の製剤化に成功(ポリタミン発売)、1951年には我が国で初めてエタノール分画法によるガンマグロブリンの製造に成功し、以後日本の栄養輸液製剤及び血漿分画製剤のパイオニアとして事業基盤を固めた。
武田薬品グループの中で、血漿分画製剤、栄養輸液製剤、殺菌消毒剤、ドリンク剤の製造販売事業に事業領域を特化したスペシャリティファーマ。
ポリタミンに始まる滋養強壮剤の日本における先駆的企業として、アリナミンV等ドリンク剤の製造を行っている。


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三菱レイヨンは2008年11月11日、世界最大手のMMAメーカー、Lucite International の発行済み株式の全てを取得し、連結子会社化するための株式売買契約を締結すると発表した。

2008/11/14 三菱レイヨン、Lucite を買収 

三菱レイヨンは3月6日、買収手続きの進捗について、以下の通り発表した。

当社は本件買収に関して、関係各国における独占禁止法当局認可以外の全ての準備作業を完了いたしました。また独占禁止法に関しましても、ほとんどの関係各国の認可を取得いたしました。 いまなお審査を継続している一部関係国の状況につきましては、認可取得に関わる進捗が判明次第、改めてお知らせいたします。

同社は3月中の買収手続き完了の場合は、2009年3月期から連結貸借対照表に載せるとしていた。

412日付のFinancial Times は関係筋の話として、中国商務部がこの合併に反対していると伝えた。

これに対し三菱レイヨンは、この報道が同社の認識している内容と異なると発表した。一部関係国では独禁法審査が継続中であることは認めている。

中国商務部は昨年、ベルギーのビール会社 InBev Budweiser で知られる世界3位のAnheuser Busch を買収する案件では、海外での合併案件であるが、厳しい条件をつけて承認した。

2008/12/1 中国の独禁法、初の海外での合併ケース

しかし、米コカ・コーラによる中国最大の果汁メーカー中国匯源果汁集団買収については、本年3月、市場での競争を阻害するとして不承認とした。中国は否定しているが、保護主義の傾向との批判がある。

2009/3/24  中国、コカ・コーラの果汁大手買収を承認せず

中国ではLucite 上海にACH法モノマー 10万トンのプラントを稼動させている。

三菱レイヨンは広東省恵州市大亜湾経済技術開発区に100%子会社の恵州恵菱化成有限公司で2006年12月に直酸法モノマー 7万トンで生産を開始したが、2万トンの増強を決めている。
同社はまた、MMAの誘導品であるブチルメタクリレートを「蘇州三友利化工有限公司」にて、アクリル樹脂成形材料(4万トン)を「南通麗陽化学有限公司」にて、さらにアクリル樹脂板と塗料用アクリル樹脂を「三菱麗陽高分子材料(南通)有限公司」にてそれぞれ稼働させている。

両社の統合で世界一のMMAメーカーとなるが、中国商務部は国内市場への影響を懸念していると思われる。

コカ・コーラの場合と異なり、中国企業の買収ではないため、不承認とはならないが、在中国の2工場の1つの売却などの条件がつくかも分からない。

ーーー

三菱レイヨンでは買収の目的として4点を挙げている。

①MMA市場におけるリーディング企業の実現

MMAモノマー能力シェア
  2007/末 2010/末
三菱レイヨン   12%   14%
Lucite   23   22
(合計)  (35)  (36)

②米欧アジアでのバランスの取れた三極生産体制を確立

Lucite:欧州(旧 ICI)、米国(旧 DuPont)、上海、シンガポール(アルファ法)
三菱レイヨン:日本、タイ(サイアムセメント
JV)、中国恵州、韓国(湖南石化JV)、米国(計画)

東欧、ロシア、南米など成長の期待される新興市場への展開を加速

③MMA製造技術の拡幅(新エチレン法の獲得)

④買収シナジーの発現


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日本経済新聞(4月10日)は三菱化学が年内にもPSとPVC事業から撤退すると報じた。
PSについては事業統合会社のPSジャパンへの出資を引き揚げ、PVCについてはヴィテックを解散する方針としている。

内需縮小とアジア勢などの生産拡大で採算が悪化、国内で過当競争となっている事業を切り離し、太陽電池向けなどの新素材、医薬品など成長分野を中心にした構造に転換するもの。

これに関して三菱化学は発表はしていないが、時事通信も「三菱化学は、年内にも塩化ビニール樹脂と汎用プラスチックであるポリスチレンの2事業からの撤退を検討していることを明らかにした」と報じている。
需要家への影響が大きいため、もし事実でないなら、即刻否定の発表をするはず。

三菱化学は本年3月末でABS事業から撤退したほか、テレフタル酸事業の構造改革も発表している。

2008/11/28 三菱化学、ABS事業から撤退

2009/2/24  三菱化学、テレフタル酸事業の事業構造改革

ーーー

付記

三菱化学は5月7日、ヴイテックが全製造設備を2011年3月末までには停止することを決定したと発表した。

  カ性ソ-ダ VCM PVC
水島工場 180千トン 400千トン  
四日市工場     100千トン
川崎工場     120千トン

顧客やコンビナート内との調整次第では前倒しで実施する。

ただ、東亞合成の川崎工場内に位置する川崎の設備については、ヴイテックとしては停止するものの、その後については東亞合成が方向性を検討する。

ーーー

PS事業:

三菱化学は四日市に188千トンのプラントを有していたが、1998年10月に旭化成との50/50JVのA&Mスチレンを設立し、両社のPS事業を統合した。

統合に当たり、両社は設備処理を行った。

統合前 処理 統合後
旭化成 371 - 56 315
三菱化学 188 -103 85
合計 559 -159 400

旭化成、三菱化学と出光石油化学は2002年7月、A&Mスチレンと出光のPS事業を再編・統合、合弁会社を設立することで合意したと発表した。

2003年4月、PSジャパンが営業開始した。

統合前 処理 統合後 出資比率
A&M
スチレン
旭化成・水島   108   108   45.0%
旭化成・千葉   207   207
三菱化学・四日市    85    85   27.5%
合計    400    400
出光石化・市原   130  -85    45   27.5%
合計   530  -85   445   100.0%

2006/10/7 日本のPS業界の変遷

今回、三菱化学はPSジャパンの持株を旭化成と出光興産に売却する。

PS業界では4月2日に、住友化学と三井化学が共同出資会社の日本ポリスチレンのプラントを9月末を目途に停止し、その後解散すると発表したばかり。PS業界の状況については下記を参照。

2009/4/4 日本ポリスチレン 2009年9月末に操業停止、解散へ

四日市のプラントは除却すると思われる。現在、原料のスチレンモノマーは鹿島工場から輸送している。

日本ポリスチレンと同様に、PSジャパンも2008年3月期決算までは黒字を続けている。
PS事業の将来性を考えてのものと思われる。

                                         単位:百万円
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 前期繰越 利益処分 次期繰越
06/3 58,600    2,700  2,700  1,600  1,200   826  2,800
07/3 67,334  1,224  1,233   709  1,974     385  2,298
08/3 77,167  1,851  1,846   933  2,298  3,231

ーーー

PVC事業:

三菱化学は1996年に東亜合成と塩ビ事業で業務提携を行なった。

三菱化学は1996年末にS&Bにより水島で100千トンプラントを建設した。
 (その後、既存の老朽設備を停止)
東亜合成はセントラル硝子、東燃化学とのJVの川崎有機で年産80千トン設備を稼働させているほか、徳島工場に同20千トン設備を持っていたが、徳島の老朽化した20千トン設備を廃棄し、川崎に三菱化学の技術で100千トン設備を新設した。
 (その後、旧川崎有機のPVCプラントは停止した。)

その後の業績悪化を受け、両社は事業統合を決め、200041日、統合会社がスタートした。

会社名 ヴイテック㈱
資本金 60億円 
 出資比率 三菱化学 60%、東亞合成 40%
事業 電解製品(水島)の製造、VCM(水島)及びPVCの製造・販売及び研究開発
  電解製品の販売は三菱化学100%のダイアケミカルに委託
能力 電解(水島) 135千トン(苛性ソーダ97%換算) 
VCM(水島) 300千トン 
  *セントラル化学はVCM(132千トン)生産を継続、ヴイテックに供給→その後停止
PVC 合計 390千トン(三菱化学水島 100、四日市 110、東亞合成川崎 100+80

2005年3月、ヴイテックは再編を行い、出資比率を三菱60%、東亜40%であったのを、三菱 85.1%、東亜 14.9%に変更した。
2003年末には累積損失が162億円にも達しており、水島工場の拡大等で事業の中心となる三菱化学が主導権を取り、東亞合成が実質的に撤退した。

2006/9/13 日本のPVC業界の変遷と現状-1 (前史)
2006/9/14 日本のPVC業界の変遷と現状-2 (事業統合時代以降)

2008年4月、ヴイテックは、5月末でPVCの輸出を停止するとともに、水島のPVCプラントを停止し、国内販売に集中した体制に移行すると発表した。国内需要減少を補うため、輸出を行なってきたが、輸出の採算改善が見られないため。
なお、川崎工場では7月の定期修理時に一部手直し増強を行なう。

工場別能力は以下の通りとなる。(単位:トン)

2000/4/1
(設立時)
2006年末 2007年末  新体制
川崎(東亞合成内)   180,000 115,000 95,000 121,000
四日市(三菱化学内)   110,000 104,000 99,000 99,000
水島(三菱化学内)   100,000 115,000 110,000 0
 (390,000) (334,000) (304,000) (220,000)

2008/4/15 ヴイテック、PVC生産体制見直し

同社は設立以来、大幅赤字が続き、2004年度から3年間は若干の黒字となったが、2007年度に再び赤字に転落、2008年末の累積損失は資本金の60億円をはるかに上回る170億円の巨額に達している。
固定資産残高は51億円となっている。

今回、ヴィテックを解散し、水島の電解、VCM(現在の能力は391千トン)と四日市のPVCは除却すると思われる。
VCM停止は20万トン近いエチレンの使用減となるが、三菱化学と旭化成が水島のエチレン統合の交渉を行っており、三菱化学のエチレン(定修スキップ年 496千トン)を休止すると伝えられており、符合する。

川崎のPVCについては東亞合成との交渉がどうなっているのか分からないが、昨年秋に手直しをしており、場合によっては他社への売却の可能性があるかも分からない。

ーーー

PVC業界は2000年以降の「選択と集中」時代に撤退企業が相次いだ。

現在は実質5社体制となっている。

                単位:千トン/年
会社名 2007/12/末 備考
ヴィテック   304 → 220
カネカ   466
信越化学   550
新第一塩ビ   292
大洋塩ビ+東ソー   586 東ソーのペースト 28
徳山積水   115 積水化学自消
合計 2,313 2,229

PVCの内需は一時200万トンを超えたこともあったが、その後毎年減少し、2008年は1,174千トンと産構法時代の水準にまで落ち込んでいる。
内需の落ち込みを輸出で補ってきたが、2008年はそれも減少した。

2008年の能力2,229千トンに対し、内需は50%に過ぎない。
内需、輸出ともに、今後大幅に増加する見込みはなく、輸出採算の悪化も予想されることから、大幅な設備削減が必要である。

2007 2008
内需 1,279 1,174
輸出   839   551
合計 2,118 1,725
能力 2,313

PVC業界の変遷は以下の通り。


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石油コンビナート高度統合運営技術研究組合(RING)は4月1日、経済産業省からの補助金に係る平成21年度「コンビナート連携石油安定供給対策事業」について、補助金交付対象となる3事業を選定したと発表した。

RINGについては 2006/5/24 RING 第三次事業計画 発表 

コンビナート連携により、石油精製業を中心とするコンビナート域内外の連携設備の効果的設置による拡大融合を促進して製油所の競争力を強化するとともに、石油資源の有効活用を図り原油処理量を減らすことを通じ、エネルギーセキュリティを確保するための事業について必要経費を補助するもの。

対象事業 原油処理量の削減、製油所における主要製品の製造コストの削減等、
各地区石油コンビナートの特長ある展開を目指す事業
目指す効果 ①石油製品需要の充足に必要な原油処理量の削減
②製造コスト低減、又は付加価値の向上。
実施期間 平成21年度の単年度事業、又は複数年度事業
対象事業者 石油精製業同士、又は石油精製業と連携した業種で構成する複数事業者
補助率 補助対象経費の1/2を限度に補助
予算 平成21年度の補助金予算額は17億円(業務管理費を含む)

 

選定された3事業は以下の通り。

事業名称 コンビナート水素回収・燃料連携事業
事業者名 ジャパンエナジー/出光興産
事業期間 平成21~22年度
実施場所 愛知県 知多地区
実施内容 ジャパンエナジー知多製油所で自家燃料としている水素を回収・高純度化し、
出光興産愛知製油所へ供給。
また、これにより不足となる自家燃料を補うため、出光から分解重油、ブタンを供給する。

このための設備を設置することで、水素製造装置の稼動低減、分解重油の有効活用ができ、
原油処理量削減、石油の安定供給が図れる。

 水素回収装置、水素・燃料供給受入関連設備
 パイプライン(敷設距離:約5km)

 

事業名称 コンビナート間のブタンおよびブチレンの供給・受入配管の新設事業
事業者名 富士石油/住友化学
事業期間 平成21~22年度
実施場所 千葉地区
実施内容 富士石油袖ケ浦製油所で生産されるブタンおよびブチレンを、
住友化学千葉工場(姉ヶ崎)のエチレン原料として供給するための配管および関連設備を設置。
  LPG配管 2.6km (従来は内航船で輸送、成分調整不可)
  住友化学の製造品目変動に応じて成分調整して供給

これにより、流動接触分解装置を有効に活用することが可能になるとともに、
エチレンプラントを効率的に操業することができ、原油処理量削減、石油の安定供給が図れる。

 

千葉地区コンビナート立地

事業名称 コンビナートナフサ供給連携事業
事業者名 出光興産/三井化学
事業期間 平成21~22年度
実施場所 千葉地区
実施内容 出光興産・千葉工場および三井化学市原工場で使用する原料ナフサを共同で調達するための設備を設置
  ナフサ配管 6km、投資額 約20億円(折半)

これにより、フルレンジナフサ、ライトナフサの有効な活用ができ、
製油所における白油増産、石化工場におけるオレフィン収率の向上が可能となり、
原油処理量削減、石油の安定供給が図れる。

しかし、これらを見ると、果たして国が補助金を出す必要があるのだろうか。

メリットがあれば補助金なしでもやる筈で、そうでないとすれば、財政難のなかで補助金を出してまでやる程の社会的なニーズがあるとは思えない。

日本に 14もの(小規模の)エチレンセンターが必要でないことははっきりしており、現実に水島では2つのセンターを統合する案が進行しているという。このような案件を支援して、日本の石油化学の新しい体制をつくることの方が必要ではないか。


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Rabigh Refining and Petrochemical CompanyPetro-Rabigh4月8日、サウジアラビアのRabighで建設している石油精製・石油化学コンプレックスの基幹設備の一つであるエタンクラッカー設備が、本格的に稼動を開始したと発表した。

本計画については 2006/3/25  ペトロラービグ起工式

エタンクラッカーは年産130万トンのエチレンを生産、EPPE(次世代型ポリエチレン)、LLDPE、HDPE、EGにエチレンを供給する。

なお、ハイオレフィン流動接触分解装置(HOFCC)を稼動させるための、減圧蒸留装置(VDU)や、水素化処理装置(VGOHDT)といった、新規の精製関連設備も、既に稼動準備が整っている。

HOFCC は減圧軽油(VGO)を分解し、年産90 万トンのプロピレン、日産59 千バレルのガソリンを生産する。
プロピレンはPPとPOに使用する。
PP2系列設備のうちの一つは、すでに、輸入プロピレンを原料として、本年2月、試運転を完了している。
なお、POはサウジで初めてで、住友化学の新法(単産法)を採用した。

当初は2008年秋に稼動する予定であったが、同社は2008年9月7日に、98億ドルと見込んでいた総事業費が101億ドルに膨らみ、一部設備の稼動開始が2009年第1四半期にずれ込む可能性があると発表した。
石油精製設備(簿価:2億3千万ドル)は予定通り 200810月1日にSaudiAramco からPetroRabigh に全面的に移管された。

製油所の原油はYanbuからタンカーで輸送されている。
エタンは東部のガス田とYanbuを結ぶEast-West Pipelineの原油パイプの1本をエタン用に転用しRabighまでの支線を新設した。

ーーー

Petro-Rabigh 2005年9月に住友化学 50%/Saudi Aramco 50%で設立された。
2008年1月に新規株式公開(IPO)を実施した結果、現在の出資は住友化学 37.5%/
Saudi Aramco 37.5%/サウジ一般投資家 25%となっている。

同社では「第二期合弁事業案」をサウジ政府当局に申請して、承認を得ている。
Saudi AramcoCEO Khalid A. Al-Falih 3月23日、サウジの商工会議所でのスピーチで、第二期計画について間もなく住友化学と覚書を締結すると述べた。

なお、Saudi Aramcoと住友化学がスポンサーとなって PetroRabigh に隣接して、面積は240ヘクタールのプラスチック加工団地 Rabigh Conversion Industrial Park設されており、住友化学は東洋インキとの合弁で年産10千トンのPPコンパウンド設備を建設している。

2008/6/27 住友化学、サウジでPPコンパウンドを生産


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韓国食品医薬品安全庁(食薬庁)は4月1日、徳山(トクサン)薬品工業が、ベビーパウダーを製造する一部のメーカーに発ガン性物質のアスベスト(石綿)が含まれたタルクを供給したと発表した。

食薬庁はその後、徳山薬品工業が原料を供給したと確認された会社が304社で、うち約100社は製薬会社、残りは医療機器のメーカーや病院・医院であることを明らかにした。

食薬庁はまた、国内でタルクの原料を製造・輸入するすべてのメーカーを調べたところ、徳山薬品工業のほか7社の原料からアスベストが追加で検出されたこと明らかにした。

タルクはアスベストを含有している蛇紋岩とともに地中に埋まっているため、自然状態でアスベストを含有するケースが多いといわれている。

トクサン薬品工業は国内タルク需要の20%以上を輸入している。

食薬庁は6日、アスベストに汚染されたタルク成分を原料として作った化粧品に対し、販売禁止の措置を取った。

タルクはベビーパウダーやおしろいなど粉状の化粧品に使われ、医薬品の製造過程でも医薬品がお互いにくっ付かないようにするためにも使われる。

全体の原料でタルクが占める割合はベビーパウダーが70~90%、フェイスパウダーが40~50%に上る。薬品に入っているタルクの量は錠剤の重さの1%ぐらいでごく微量。

付記

医薬品については当初は含有量が少ないため問題ないという意見が強かったが、その後食品医薬品安全庁がアスベストを含むタルクを使った製薬メーカー120社の医薬品1122品目を販売禁止したため、製薬業界が反発している。

最終製品からアスベストが検出されたかどうかを確認せず、含まれている可能性があるというだけでリストを発表した。製薬大手では自社製品をDAの基準に合わせ自主調査したとこ ろ、アスベストは全く検出されなかったとし、検査もせずに発表し、製薬メーカー各社のイメージを低下させたと批判している。

世界90ヵ国以上で使われている乳首・哺乳びんのメーカーのドイツのNUK(ヌーク)のブランドでベビーパウダーをライセンス生産しているボリョンメディアンス(Boryung Medience) も、製品が汚染されていることが分かり、「24時間相談センターを稼動し、石綿が検出されていない製品に交換するか、購買金額の全額を返している」としている。

しかし、一部メーカーはきちんとリコールを行わないか責任を回避するなど、不真面目な態度で一貫し、消費者から批判を受けている。特に、製造メーカーと販売会社が異なる場合は責任を擦り付け合っているため、消費者の混乱がさらに深まっている。被害を受けた消費者らの集団訴訟の動きも本格化している。

一方、有名化粧品会社では、原料のタルクをアスベストの規制が厳しいアメリカや日本から輸入しているため、問題なしとしている。

<p>HTML clipboard</p>

付記

食品医薬品安全庁は4月3日、タルク基準を改正して、アスベスト基準の他に鉄分の含有量基準試験法を新しく定め、タルク鉄分基準0.25%とした。

日本産タルクの需要が高まっているなかで、最近輸入された日本産タルクが鉄分含有量が0.29%で非適合判定を受け、需要家が混乱している。

ーーー

韓国でNUKブランドのベビーパウダーから発ガン性物質が出たとの報道を受け、中国国家質量監督検験検疫総局は44日、蘇州徳宝嬰童用品有限公司(Suzhou Debao Baby Supplies )の蘇州新興保健品工場に立ち入り検査を行い、加工済みのNUKブランドのベビーパウダー40キロを現場で押収した。製品は市場から回収された。

同社は2008年3月以降、蘇州市シルク輸出入公司を通じて韓国のBoryung Medienceから5回にわたってベビーパウダーの半製品計11.6トンを輸入し、蘇州新興保健品工場で加工を行い、NUKブランドで国内で販売していた。

中国では昨年、汚染ミルク問題が起こったばかりであり、消費者、特に若い母親の間に不安が高まっている。

2008/9/17 中国で粉ミルク汚染

ーーー

NUKはフランスの自動車部品などゴムやプラスチック製品のコングロマリットHutchinson Worldwide のドイツ子会社 MAPA GmbH のブランドで、乳首・哺乳びんは世界90ヵ国以上で使われている。

今回の報道を受け、同社は以下の声明を発表した。

我々はこれまでベビーパウダーを製造販売したことはない。
我々は50
以上にわたり、乳首や哺乳瓶などのベビー製品を製造してきたが、これらは我々の工場で開発・製造され、厳重なチャックを受けている。我々の全ての製品は安全です。

例外的に特定のメーカーにNUKブランドでライセンス生産することを認めている。
韓国の
BORYUNG MEDIENCE はその一つで、クリームやパウダーなどのベビー製品を扱っている。
ライセンシーは製品の製造販売に唯一 責任を持ち、我々はライセンサーとして、製品の処方の開示と、規則やルールに完全に合致することの保証を求めている。

BORYUNG MEDIENCE は過去20年間、全く問題がなかった。

現在、韓国の当局とライセンシーに連絡をとっている。

BORYUNG MEDIENCEのこの製品はドイツやEU、(韓国と中国以外の)他の諸国では販売されていない。

ーーー

日本では労働安全衛生法施行令等の一部改正により、2006年9月1日から、石綿をその重量の0.1%を超えて含有する製剤その他の物の製造、輸入、譲渡、提供又は使用が禁止されている。

しかし、その後、石綿をその重量の0.1%を超えて含有する粉状のタルクが製造されている可能性があるとの情報を受け、厚生労働省が同年10月、タルクの製造を行っている33事業場に対し、緊急調査を行い、その結果、1事業場で石綿を含有するタルクが製造されていたことが判明した。

この結果を受け、厚生労働省では都道府県労働局に対し、関係事業者に対して指導を徹底するよう指示するとともに、関係事業者団体に対しても、法令の遵守の徹底について要請した。


なお、ベビーパウダーについては1987年に原料のタルクにアスベストが不純物として微量混入していたとして社会問題になった。
1987年11月に当時の厚生省が「ベビーパウダーに用いられるタルク中のアスベスト試験法」を公表している。


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Ineosは3月25日、インドのBrahmaputra Cracker and Polymer Limited (BCPL) LLDPE/HDPE技術をライセンスしたと発表した。能力は22万トン。

2006年4月にGAILの主導でアッサム州のLepetkata, District Dibrugarh に石油化学コンプレックスを建設するAssam Gas Cracker Project がインド政府の承認を得た。

アッサム州はインド北東部に位置し、ブータンおよびバングラデシュと国境を接している。
アッサム州は天然自然に恵まれており、1901年にはインド初の石油精製所が州内ディグボイに設置された。アッサム石油機構(AOD)のディグボイ精油所は、現在操業している石油精製所としては世界で2番目に古い。

Assam Gas Cracker Project のために2007年1月にBCPLが設立された。出資は以下の通り。

  GAIL  70%
  Oil India Ltd (OIL)   10
  Numaligarh Refinery Ltd(NRL)  10
  Government of Assam  10

天然ガスとナフサを原料にクラッカーと誘導品プラントを建設する。

  エチレン  220千トン
  プロピレン  60
  HDPE/LLDPE  220
   PP  60
  Pyrolysis Gasoline  55
  Fuel oil  12.5

OIL NRL 600万m3/日の天然ガスと16万トン/年のナフサをそれぞれ供給する。不足の天然ガスはONGC Ltd.から供給を受ける予定。

今回、HDPE/LLDPE技術が発表されたが、PP Lummus Technologies とされており、エチレン技術はまもなく発表される。

GAILでは杭打ちをした2007年4月9日から60ヶ月での完成を目指している。

 

参考   2006/6/5  インドのエチレン計画 


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信越化学も減益予想

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信越化学は4月7日、3月決算の業績予想の修正を発表した。

同社は2008年12月に、2008年4月28日に公表した業績予想の達成は困難である旨を発表しているが、見直し数値は発表していなかった。但し、証券取引所上場規定による開示義務(損益が0.7以下)が生じるほどの落ち込みは想定していないとしていた。

各社の実績予想は 2009/2/10 2009年3月期損益予想 

今回の連結業績予想は以下の通り。(単位:億円)

米国金融危機に端を発した世界規模での市場環境悪化により、同社を取り巻く事業環境は昨年11月以降急速に悪化しており、同社の業績も半導体シリコンウエハー等電子材料事業を中心にその影響を受けてきているとしている。

  売 上 高 営業利益 経常利益 当期純利益
前期実績   13,764   2,871   3,000   1,836
         
2008/4/28 予想    14,000   3,070   3,200   2,000
今回修正予想    12,000   2,400   2,600   1,600
(予想増減)  (-2,000)   (-670)   (-600)   (-400)
(前期比増減)  (-1,764)   (-471)   (-400)   (-236)

同社の損益の推移は以下の通りで、これまで長期間にわたり増収増益が続いていたが、今回減収減益となる。
報道によると、経常損益の減益は10年ぶり、最終損益は16年ぶりとのこと。

ただし、期末配当予想の1株当たり50円(年間配当予想100円)には変更なしとしている。


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イラク政府は37年ぶりに油田権益を外資企業に開放し、増産体制を整備して、2013年に原油生産能力を現状の日量250万バレルから460万バレルに引き上げる。

現在、第一次、第二次開放対象が発表され、一次、二次審査で入札資格社が選ばれている。

第一次開放対象は北部の主要油田キルクークや南部の大油田ズベイル、ルメイラなど油田6カ所と、西部のアッカスなど天然ガス田2カ所。

  発見 埋蔵量
(億バレル)
現状
(千b/d)
北ルメイラ油田(Rumaila)
南ルメイラ油田
1953      92
    73
    470
    585
キルクーク油田(Kirkuk) 1927     65     360
西クルナ油田(Qurna) 1973     74     300
ズベイル油田(Zubair) 1949     40     240
ミサン油田群(Missan)
(アブギラブ、ブズルガン、
ジャバルファウキ)
1969
1971
1974
    25     114
バイハッサン油田(Bai Hassan) 1953     23      7.5
アッカス ガス田(Akkas)     7tcf  
マンスーリヤ ガス田(Mansuriyah)     5tcf  

<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>

<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>

 

               

  

2008年12月31日に発表された第二次入札対象油ガス田は以下の通り。

  埋蔵量
 
bn bbl
生産能力
 ‘
000 b/d
現状生産量
 ‘
000 b/d
<油田>      
Majnoon(マジヌーン)  8.20  600-800  40-50
West Qurna 2(西クルナ)  13.50   600  na
Halfaya(ハルファーヤ)  4.60  250-600 ** 10-15
East Baghdad(東バグダッド)  0.80  80-350 ** 7
Gharaf(ガラフ)  1.00  100-140  -
Kifl(キフル)  0.21  28  -
West Kifl(西キフル)  *0.18  25  -
Marjan(マルジャン)  *0.15  20  -
Badrah(バドラ)  0.50  70  -
Qayara(カイヤラ)  0.80  80  -
Najmah(ナジマ)  0.85  85  -
Qarmar(カマール)  0.15  20  -
Gilabat(ギラバット)  0.20  30  -
Nauduman(ナウドマン)  0.05   >10  -
<ガス田>      
Kashm al-Ahmar(カシムアルアマール)  1,550 Bcf 150mn cf/d  -
Siba(シバ) 4,000 Bcf 300mn cf/d  -

  * 未確認、 ** パイロット生産

 

2008年10月の一次審査では日本の4社を含む35社が選ばれた。本年第2四半期に第一次開放対象の入札が行われる。

イラク石油省は
20094月1日、年内に実施する油田開発入札に参加できる外国企業9社を追加で発表した。
申請した38社から応札資格を得た。第2次入札から参加できる。
日本からは
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が選ばれている。

入札資格を得たのは次の各社。

  一次審査(2008/10) ニ次審査(2009/4)
日本  新日本石油、国際石油開発帝石、
石油資源開発、三菱商事
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
米国 AnadarkoChevronConocoPhillipsExxonMobil
HessMarathonOccidental
 
英国 BGBP Cairn Energy
豪州 BHPWoodside  
イタリア EdisonEni  
オランダ Shell  
ドイツ Wintershall  
フランス Total  
ノルウェー StatoilHydro  
スペイン  Repsol   
中国 CNOOCCNPCSinochemSinopec  
韓国 韓国ガス公社Kogas  
インド ONGC Oil India Ltd.
マレーシア Petronas  
インドネシア Pertamina  
ロシア GazpromLukoil RosneftTatneft
デンマーク Maersk  
カナダ Nexen  
トルコ TPAO  
カザフスタン   KazMunaiGas
ベトナム   Petrovietnam
アンゴラ   Sonangol
パキスタン   Pakistan Petroleum

 

新日本石油、国際石油開発帝石および日揮の日本側コンソーシアム3社は、イラクの石油開発等の入札に参加するため、各社会長が本年2月、バグダッドを訪問し、マリキ首相、シャハリスターニ石油大臣他、イラク政府首脳と会見した。マリキ首相はイラク北部のキルクーク油田などの入札に対し、応札を要請した。

ーーー

この中で、韓国の韓国石油公社とSKエナジーが除外された。

韓国石油公社などが参加する韓国コンソーシアムは2008年2月14日、イラクの北部クルド自治区内の油田4つの鉱区の開発とインフラ建設を並行して進める内容の覚書をクルド自治政府と締結した。

コンソーシアムは石油公社 38%、SKエナジー 19%、デソン産業、三千里(サムチョンリ)、ボムア資源開発(各 9.5%)、GSホールディングス、マジュコ通商(各 4.75%)、ユーアイエナジー(5%)などが構成している。

2008/2/20 韓国エネルギーコンソーシアム、イラク油田開発

イラクのシャハリスタニ石油相は4月2日、イラク駐在の河泰允(ハ・テユン)大使に会い、「韓国石油公社やSKエナジーなどの韓国企業がクルド自治政府と締結した油田開発事業は、中央政府との協議を経ずに行われた違法なものだ。そのため両社は今後、イラクでの油田開発に関する入札に参加できない」と通知した。

イラク政府は昨年の第1回油田開発入札資格審査で両社を排除、今回の第2回審査でもSKエナジーを脱落させた。
現在イラクで入札資格を得ている韓国企業は、クルドでの油田開発に参加していない韓国ガス公社だけ。

本件はコンソーシアムのクルド自治政府との契約当初からイラク政府が問題視していた。

しかし、本年2月にイラクのタラバニ大統領が韓国を訪問した際、イラク南部バスラの油田開発と現地でのインフラ整備を行うために必要な35億5000万ドルを韓国側が投資するという覚書を交わしたことで、一旦は解消するかのように思われた。

しかし、クルド族出身のタラバニ大統領とシーア派でエネルギー相を兼任するジャアファリ首相の考えが異なっていたもの。

イラク側は「クルドとの契約を取り消せば入札への参加を認める」としているが、韓国政府は「取り消すことはできない」との立場。

韓国内では政府があまりにも楽観的かつ早急に事業を進めたとの批判が出ている。韓国政府は現地調査団を派遣し、イラク国内の道路、港湾、石油精製施設の建設など、イラク再建事業への参加拡大を名目にイラク政府との再交渉に臨みたいとしている。


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BASFのCiba買収 承認

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BASF42日、米国のFTCと中国商務部がBASFによるCiba買収を、ECによる条件以外の追加条件なしで、承認したと発表した。

BASFは2008年9月15日、スイスの特殊化学薬品メーカー Ciba を買収する意向だと発表した。

2008/9/19  BASFがCiba買収へ

3月12日にはECが条件付きで承認しており、これで公開買付けの条件は満たされたこととなる。
この結果、4月9日に1株50.00スイスフランでの買付けが行われ、BASFはCibaの95.8%を取得する。

ECが問題ありと指摘した点について、BASFは以下の処理を約束した。

DMA3 (dimethylaminoethyl acrylate)BASFLudwigshafen の資産の処分
・製紙向けEEA synthetic dry strength agentCiba  事業全体を売却
bismuth vanadate(顔料):Ciba の全世界の事業を売却
・顔料
indanthrone blueCiba know-how、供給契約、需要家リスト、在庫を処分
紙用接着剤のstyrene acrylicCiba のフィンランドの事業(及びPVC、アクリレート事業)を処分
HALS (ヒンダードアミン系光安定剤)Ciba Chimassorb 119 FL事業を処分
UV filters :第三者に技術ライセンス

BASFは今回、Ciba のChimassorb 119 FL事業(HALS)をイタリアのSabo S.r.l. に売却する契約を締結したと発表した。

BASFは本年24日、Cibaの買収承認を前提に、4月1日からの新しい組織を発表している。<p>HTML clipboard</p>
Cibaの事業は Performance Products に帰属することになる。

2009/2/14 BASFCiba 統合で組織改正

ーーー

両社の業績は以下の通り。

BASF (単位:ユーロ)

  Net Sales    Income from operations
2008 2007 増減   2008 2007 増減
Chemicals  10,324   9,358   966    1,376  1,903  -527
Plastics   9,675   9,976   -301     530  1,172  -642
Performance Products   8,967   8,862   105     787   681   106
Functional Solutions   9,388   9,491   -103     151   434  -283
Agricultural Products   3,409   3,137   272     705   516   189
Oil & Gas  14,445  10,517  3,928    3,844  3,031   813
Other   6,096   6,610   -514     -930   -421  -509
合計  62,304  57,951  4,353    6,463  7,316  -853

Ciba (単位:スイスフラン)  1スイスフランは約 0.65ユーロ

  Net Sales    Operating income
before restructuring
charges
2008 2007 増減   2008 2007 増減
Plastic Additives  1,930  2,161  -231    154  323  -169
Coating Effects  1,604  1,837  -233    158  219   -61
Water & Paper Treatment  2,385  2,525  -140    96  116  -20
Corporate and others          -100  -106  6
Total  5,919  6,523  -604    308  552  -244

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三井化学と住友化学は4月2日、両社の共同出資会社である「日本ポリスチレン(JPS)」を解散し、ポリスチレン事業から撤退することを決めたと発表した。本年9月末を目途に大阪と千葉の工場の操業を停止し、その後解散する。

今後ますます厳しさを増す事業環境下においては、中長期にわたって安定的に収益を確保することは困難であると判断した。

同社の損益は2004年3月期以降、昨年までは黒字であった。
                      単位:百万円
   売上高 営業損益 経常損益 当期損益
07/3  23,443   557   531   224
08/3  24,248   919   902   675

日本ポリスチレンは三井化学(旧三井東圧)と住友化学の50/50JVとして1997年8月に設立され、199710月に営業開始した。 (同じ 1997年10月に三井化学が誕生)

三井東圧は宇部にSMプラントを持ち、大阪工業所に年産 133千トンの生産設備(GP,HI各2系列)を保有していたほか、サンスチレン(電気化学と三井東圧の合弁会社)から年間17千トンのPSを引き取っており、実質的には年産150千トンの生産設備を保有していた。
一体化に伴い、サンスチレンの株式は電気化学に譲渡した。

なお、三井化学は2004年1月、宇部のSMプラントを太陽石油に譲渡した。

住友化学は、昭和電工とのJV・日本ポリスチレン工業(
NPSのプラントが停止、同社から離脱したが、千葉に独自に建設した92千トンの設備(GP、HI各1系列)を保有していた。

現在の能力は大阪が62千トン、千葉が100千トンで、合計162千トンとなっている。

日本のポリスチレン業界は再編が進み、現在は
・PSジャパン(
旭化成  45%三菱化学 27.5%出光石油化学 27.5%)
・東洋スチレン(電気化学 50%
新日鉄化学 35%ダイセル化学 15%)、
・JPS

DIC(旧 大日本インキ化学)
4社体制となっているが、JPSの解散で3社体制となる。

2004年6月、PSジャパンの3社と大日本インキ化学(現 DIC)はポリスチレン事業を再編・統合することに基本合意したと発表した。DICのPS事業をPSジャパンに営業譲渡し、出資比率を旭化成 40%、三菱化学 20%、出光興産 20%、DIC 20% とするもの。

しかし、これに関しての公取委との交渉は難航し、予定の2004年10月の統合は延期され、2005年4月、各社は公取委の「競争を実質的に制限する恐れがある」との指摘を受け、基本合意を解消した。

この公取委判断に対する批判: 
  
2006/02/20  競争政策研究会の「企業結合審査における改革の進展状況と今後の課題」

 

PS業界の再編の推移は以下の通り。

PS業界の再編については 2006/10/7 日本のPS業界の変遷 

 

工場別能力は以下の通り (2007/12/末 単位:千トン/年)

会社名 工場 能力 備考
PSジャパン
旭化成・千葉   207 旭化成      45%
三菱化学    27.5%
出光石油化学 27.5%
三菱化学・四日市    85
旭化成・水島   108
出光・千葉    45
合計   445
DIC 四日市   131 (旧 大日本インキ化学)
東洋スチレン 電気化学・千葉    87 電気化学    50%
新日鉄化学  35%
ダイセル化学 15%
新日鉄化学・君津   138
ダイセル化学・姫路    53
合計   278
日本ポリスチレン 住友化学・千葉   100 住友化学   50%
三井化学   50%
三井化学・大阪    62
合計   162
合計    1,016 JPS撤退後は854

PS業界は2つの点で他のレジン業界と異なっている。

第一は「需要に合わせた能力」で、PSジャパンの前身のA&Mスチレンの発足時に親会社負担で老朽設備を廃棄した。
東洋スチレン発足時には電気化学が、PSジャパン発足時には出光石化が設備を廃棄している。

第二は儲からない輸出をやめたことで、2001年2月に中国がPSのダンピング調査を開始、同年12月には「損害なし」として調査が終結したが、業界では2002年頃から輸出を減らし、現在では月2千トン弱となっている。

2007年の能力が1,016千トン、内需が862千トン、輸出が44千トン、内需計906千トンとなっている。

この余剰能力がないことが、逆にPSジャパンとDICの統合時に公取委から「供給余力がない中で一層高度な寡占市場となる」とされ、不承認の理由の一つとされた。

2008年下期から内需が前年比で大きく減少、本年に入っても更に減少が続いている。

 
  2007 2008
内需   862   768
輸出   44   37
合計   906   806
能力 .1,016  

石化業界では2000年頃にようやく「選択と集中の時代」に入り、三菱化学の四日市エチレン停止や、三井と住友の合併(のちに破談)、塩ビ各社の撤退、ポリオレフィン統合会社の再再編などが相次いだ。

その後、中国バブル(と原油価格高騰化での値上げ)で石化は一転して儲かる事業となり、この動きは止まった。

今回のグローバルな経済危機の中、再び「選択と集中」が動きだしたようだ。

昨年11月には三菱化学がABS事業から撤退することを決定、ABSの統合会社テクノポリマーJSRの100%子会社とすることを発表している。

2008/11/28 三菱化学、ABS事業から撤退

 


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ダウは4月1日、Rohm & HaasR&H)の買収を完了したと発表した。

R&Hは同日付で上場廃止となり、ダウの新しい事業部門 Advanced Materials division に帰属する。

なお、当初より
売却を予定していたR&Hの製塩事業の子会社Morton Salt については、ドイツの肥料、園芸、製塩会社のK+S Aktiengesellschaft に16.75億ドルで売却することが決まったと発表した。

Morton Salt は米国の塩メーカーで、1848年創業で、1889年にJoy Morton が買収して Joy Morton & Companyに改称、更に1910年にMorton Salt Companyとなった。1999年にR&Hが買収した。

包装にあるMorton Umbrella Girl とスローガン When it rains it pours” で有名で、1914年から使用されている。

When it rains it pours は通常は「雨が降れば土砂降り」という意味だが、ここでの後の it はMorton Salt のことで、「雨が降っても、(固まらずに、図のように)さらさらとこぼれる」という意味。

ーーー

ダウ は昨年7月10日、 188億ドルでRohm and Haas (R&H)を買収する契約を締結したと発表した。
現金153億ドルで全株式を買収し、R&Hの35億ドルの借入金を引き継ぐ。

2008/7/11 速報 Dow ChemicalRohm and Haas を買収

同社はクウェートのPICとの合弁会社 K-Dow Petrochemicals 設立により、事業売却額マイナス出資で75億ドル、配当15億ドルで、合計90億ドル(税引後では70億ドル)を受け取ることとなっていた。

Dow はR&H 買収資金188億ドルを、つなぎ融資 130億ドル、Warren Buffett のBerkshire Hathaway Inc. からの投資 30億ドル、Kuwait Investment authorirty からの投資10億ドルで賄うことにしており、PICへの売却資金でつなぎ融資の一部を返済する予定であった。

しかし、本年1月1日のスタートを目前にして、昨年12月28日、K-Dow Petrochemicals が破談となり、この金が入らなくなった。

2008/12/29 ダウとクウェートの石油化学合弁、一転破談に

1月23日、ダウはR&H との統合でFTCの承認を得たと発表した。ECは既に1月8日に承認しており、買収の全ての条件が満たされた。

2009/1/26 FTC、Dow と Rohm and Haas の統合を条件付で承認

契約ではすべての条件が満たされた2日後に買収を実行することとなっており、1月27日が期限となる。

しかし、DowはR&Hに対して27日に買収を実施しない旨伝えた。

つなぎ融資は1年間の契約のため、 K-Dow 破談により、このまま買収を行えば資金繰りが危うくなるとして、格付会社が投資基準以下への格下げを行うことを明言しており、格付を投資適格にとどめることが必須であるとするダウとしては資金繰りの目処をつけるまでは買収を行えない状況に陥っていた。

R&Hは1月26日、契約の履行を求め、Delaware州の裁判所にDow を訴えた。この裁判は3月9日と決まった。

そして、裁判の始まる当日、ダウはR&H 及びその大株主との間で、これまでと異なる条件で41日までに買収を行うことで合意した。

2009/3/10  ダウ、Rohm & Haas 買収で合意 

当初発表の1株 $78 でのR&H株式買収(153億ドル)のうち、$63 124億ドル)は現金で支払い、残りの$1529億ドル) は優先株で渡す。

R&H2大株主(ヘッジファンドのPaulson & Co. Inc.Haas Family Trusts はダウの出す永久優先株25億ドルを購入、更に、そのうちのHaas Family Trusts はダウのオプションでダウの株式に5ドル投資する。
(ダウはオプションを行使し、
Haas Family Trusts に追加の5億ドルの投資をしてもらうこととなった)

ダウはつなぎ融資の条件変更に成功した。
 当初契約  130億ドル 20104月まで
  
改正    合計125億ドル、うち45億ドルは2010480億ドルは20114まで(1延長)

このほか、Berkshire Hathaway Inc. から30億ドル、Kuwait Investment authorirty から10億ドルは従来どおりとなっている。

また、ダウは史上初の減配を行い、年間10億ドルの資金を節約した。
   2009/2/23 
Dow Chemical、史上初の減配

今回のMorton International の売却額は16.75億ドルで、当局の承認などを経て、年央に完了する見込み。

ダウは上記の処理を通じ、つなぎ融資の額を減らすとともに、融資期限の延長により、その間に有利な事業売却を検討できることとなった。

しかし、化学業界の不振はしばらく続くと見られており、同社の将来の資金繰りに対する懸念は依然収まっていない。

Standard & Poor's は4月1日、ダウの格付けをBBBからBBB-(ジャンクボンドの1ランクだけ上)に引き下げた。

ダウでは
K-Dow Petrochemicals PICの代わりを求めて、国営の石油・ガス会社2社と交渉しているとされるが、そのほか、
・Total Group
との合弁のオランダの石油精製 Total Raffinaderij Nederland NV のダウ持分(45%)の売却
・東南アジアのオレフィン及び誘導品JVのダウ持分の売却
の交渉をしている。

ーーー

R&H の各事業が組み込まれる Advanced Materials Division は以下の通りとなっている。

なお、FTCと同意審決で、ダウの以下の設備が売却対象として指定されている。
1) DowClear Lake, Texas のアクリルモノマー製造設備
2) Dow St. Charles, Louisiana のアクリルポリマー製造設備
3) DowAlsip, Illinois のアクリルポリマー製造設備
4) Dow Torrance, California のアクリルポリマー製造設備
5) DowSouth Charleston, West Virginia のアクリルモノマー研究開発グループ
6) Dow Cary, North Carolina のアクリルラテックスポリマー研究開発グループ
7) その他、これら事業の関連施設

 


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政府は3月27日、首相直轄の地球温暖化問題に関する懇談会の中期目標検討委員会(座長・福井俊彦前日銀総裁)を開き、2020年時点の温暖化ガス排出削減の中期目標案を公表した。 

選択肢として6つのケースを考えた。(1つは分析継続中)

  GHG   下図
05年比  90年比
 ・努力継続
  (既存技術の延長線上で機器等の効率改善に努力し、

   耐用年数の時点でその機器に入替え)
 -4%  +4%   ケース①
 ・最先端技術の最大導入
  (規制を一部行い、新規導入の機器等を
   最先端のものに入替え)
 -14%  -7%   ケース③
 ・最先端技術導入の義務付け
  (規制に加え導入の義務付け等を行い、
   新規導入の機器等を最先端に入替え。
   更新時期前の既存の機器等も
   一定割合を最先端に入替え)
 -21~
 -22%
 -15~
 -16%
  ケース⑤
       
先進国全体で -25%、国別では、      
 ・限界削減費用を均等にするケース   -6~
 -11%
 ±0~
 -3%
  ケース②
 ・GDP当たり対策費用を均等にするケース        ケース④(分析継続中)
 ・一律 -25%  -30%  -25%   ケース⑥

政府は残る1案(ケース④)の確定を急ぎ、試算を参考に国民からの意見を聴いた上で、今後10年間の温暖化対策の目標値を6月までに定める。

検討委では、これまで主に化石燃料の燃焼に伴って排出されるCO2を対象に分析していたが、今回は代替フロンなど京都議定書で定められている温室効果ガスすべてを試算に含めた。

 

それぞれのケース実現のために必要な対策は研究機関により異なるが、日本エネルギー経済研究所の分析では以下の通り。

  太陽光発電 次世代自動車 省エネ住宅 高効率給湯器
現状の4倍
住宅:130 万戸(455 万kW)
工場・ビル:120 万kW
新車販売の10% 次世代省エネ基準(平成11年基準)を
満たす住宅が、
新築住宅の70%、新築建設物の80%
現状の約70 万台から
約900 万台まで普及
③  現状の10 倍
住宅:320 万戸(1120 万kW)
(新築持家住宅の7割)、
工場・ビル:300万kW)
新車販売の50%、
保有台数の20%
新築住宅の80%、新築建築物の85% 約2800 万台まで普及
現状の約40倍
住宅:1000 万戸(3500 万
kW)
(新築持家住宅すべて、
既築も毎年60 万戸)
工場・ビル:2100 万kW
新車販売の100%
保有台数の40%
新築住宅の100%
(既築はすべて平成4年基準に改築)、
新築・既築建築物の100%
約4400万台
(全世帯の9割)まで普及
同上 同上 同上 同上

試算は、産業構造が現状のまま推移するとの仮定に基づいており、政府内でも検討している「グリーン・ニューディール」政策など低炭素社会に向けて経済・社会構造をどこまで変えられるかという点は加味していない。

ケース①をベースとし、それぞれのケースの影響は以下の通り。

  実質GDP 押下げ 民間設備投資
(2020 年で)
失業者増加 世帯当たり
可処分所得押下げ
(2020年所得)
家庭の光熱費
支出増加
(世帯当たり、年)
2020 年までの
累積
金額 失業者 失業率 金額 金額
0.5~0.6% -1~
 +3 兆円
-0.8~
 +3.4%
11~
 19 万人
0.2~
 0.3%
4~
 15 万円
0.8~
 3.1%
2~
 3 万円
13~
 20%
0.8~2.1% ±0~
 +8 兆円
-0.2~
 +7.9%
30~
 49 万人
0.5~
 0.8%
9~
 39 万円
1.9~
 8.2%
6~
 8 万円
35~
 45%
3.2~6.0% -13~
 +11 兆円
-11.9~
 +12.5%
77~
 120 万人
1.3~
 1.9%
22~
 77 万円
4.5~
 15.9%
11~
 14 万円
66~
 81%

政府内では
ケース③(90年比 7%減)と
ケース⑤(15~16%減)
の2案の実現可能性が高いとの声が多い。

ケース①(4%増)では国際交渉で他国・地域から批判されるのは確実で、
ケース⑥(
25%減)では経済への負担が大きすぎるとする。(検討委の委員からも「現実的ではない」との意見が出た。)

ーーー

これについて、地球温暖化問題に取り組むNGOの代表が同検討委員会の検討状況について、厳しく批判するコメントを発表した。

1. CO2排出量を90年より増やすオプションや京都議定書の目標値よりも低いオプションが提案されており、日本としての低炭素社会づくりへの意欲が全く見られない。科学の要請に反し、国際交渉の足を引っ張るもので、後ろ向きの提案である。
   
2. 対策費用ばかりが負担として強調されているが、対策をとらない場合の悪影響へ対応する費用との比較は全く考慮されていない。
   
3. 温暖化対策によるエネルギー削減で得をする費用が、モデルによっては過小評価されている。
   
4. 新たな温暖化対策費用追加による雇用創出効果、内需拡大の経済効果が全く考慮されていない。
   
5. そもそも温暖化防止のために何がどこまで必要なのかというバックキャスティングの発想で議論が行なわれていない。中期目標については、地球の平均気温上昇を産業革命前に比べ、2℃よりはるかに低く抑えるため科学的に整合した野心的な削減目標(1990年比25~40%削減)を掲げるべきである。
   
6. これまでの議論に市民社会の参加・関与が全く認められておらず、産業界の主張に偏った議論が行なわれている。今後のプロセスについては、市民・NGOの参加を確保すべきである。

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Rio Tinto 本年2月12日、中国国有アルミ大手、中国アルミ業公司(Chinalco)から現金で195億ドルの出資を受けると発表した。

1)Chinalco はRio が世界各地に持つアルミ、銅、鉄などの利権をJVへの出資の形で取得する。対価は合計123億ドル。
2)Chinalco
 は Rio の両本社の転換社債を72億ドルで取得する。
  全て転換されれば、Rio Tinto 全体への出資比率は現在の9%
から18.0%に増える。

2009/2/13  中国アルミがRio Tintoに出資、鉱山利権を取得

本件の現状は以下の通り。

資金問題:

Chinalco は327Rio Tinto との提携のための資金 210億ドルがアレンジできたと発表した。

China Development Bank が主導するコンソーシアムとの契約を締結したもので、今回の取引のための195億ドルの融資契約と、運転資金や本取引に関係するその他の支出のための15億ドルのスタンドバイ・ファシリティから成っている。

コンソーシアムの他のメンバーはいずれも国営銀行の、Export-Import Bank of ChinaBank of China (国営商業銀行)、Agricultural Bank of Chinaである。

ーーー

豪州政府の承認問題:

本件の成立には2つの政府承認が必要となる。

第一は豪州の独禁法当局(Australian Competition and Consumer CommissionACCC)で、 Trade Practices Act 1974 に基づき、取引が競争を制限するかどうかを審査する。

第二はForeign Investment Review Board (FIRB) で、Foreign Acquisitions and Takeovers Act 1975 に基づき、国の利益に反するかどうかで判断する。FIRBの勧告に基づき、財務相が最終決定を下す。

ACCC325日、本件に反対しないと発表した。
Chinalcoによる事業参加が競争を著しく減らす可能性が少ないと判断した。

Rio Tinto の豪州の鉄鉱石事業と中国の製鉄メーカーChinalco との垂直統合が、中国の製鉄メーカーのために鉄鉱石価格を競争レベルよりも下げるような影響力を与えることはないと判断した。

ボーキサイト、銅、アルミナについての豪州市場での競争についても、Rio Tinto Chinalco の事業の重なりは少なく、これら市場で競争を減らす可能性は少ないと判断した。

一方、FIRB316日、レビューを6月まで延長した。
(原則
30日で判断するが、重要案件については90日間の延長が可能)

Rio Tinto の第三位の株主のAustralian Foundation Investment Co (AFIC) ChinalcoRio Tintoの事業経営に参加することに対し、懸念を表明している。Chinalcoが中国の国営企業であること、需要家であるとともに競合会社でもあることを問題視した。
AFICの取締役にBHP Billiton の会長が入っている)

豪州の資源の需要家である中国が価格や生産に影響を与えるのを懸念する声がある一方、これを拒否すると中国と豪州の貿易に悪影響を与えるとの懸念もある。

2008年の調査では外国政府がコントロールする企業に対する投資規制強化を強く支持する人が85%に達する。

これに対し、Rio Tintoは、この取引で390億ドルの借入金で苦しむ同社にとって必要な金利の安い資金が手に入ると反論している。
この取引が成立しない場合、借入金返済のため資産売却を急ぐ必要が出てくるとする。
2009年に入って大手鉱山会社が世界的経済不景気を理由に多数の解雇を発表しているが、更なる解雇を示唆している。

最終的には条件付きで認めるのではないかとの見方が強い。

ーーー

豪州3位の鉱業会社で世界2位の亜鉛メーカーのOZ Minerals と、中国の国有企業五鉱集団(Minmetals)の子会社の五鉱有色金属Minmetals Non-ferrous Metals)は2月16日、Minmetals OZ Minerals 1株82.5豪セントで全株式を取得する実現案契約を締結したと発表した。

2009/2/21 中国五鉱集団、豪州OZ Minerals を買収 

これに対しては3月27日、豪州財務相が声明を発表、OZ Minerals Prominent Hill 鉱山は南豪州のWoomera Prohibited Area (豪軍の武器テスト場)にあり、これが含まれる限り、本案は承認できないとした。

Prominent Hill の銅/金プロジェクトは本年2月に生産開始した。

 Reserves 確定鉱量  1.4Moz gold, 0.95Mt copper
 Resources 埋蔵鉱量(確定鉱量+推定鉱量)  7.4Moz gold, 2.5Mt copper

これを受け、OZ Minerals は五鉱集団と協議するとしている。 

ーーー

中国の豪州進出が目立つなか、首相や国防相の姿勢を巡り、政治問題化してきた。

発端は国防相Joel Fitzgibbonとシドニー在住の豪州籍を持つ中国系ビジネスウーマンHelen Liu との関係で、軍治安当局が安全保障上の問題があるとして調査を始めた。
LiuWorld Federation of Overseas Chinese Association の副会長で、一族は中国人民軍と密接な関係をもっていると言われている。

国防相はLiuを個人的な友人としているが、2002年と2005年(野党時代)に訪中旅行の費用をLiuに出してもらっていた。しかも先週まで、議会の証言でそれを隠していた。Liuの家族の所有するタウンハウスを借り、洋服もプレゼントされていた。

Kevin Rudd 首相は中国語を話す元外交官で中国通を自負しており、政権発足以来、中国との関係強化を進め、最近では、国際通貨基金での中国の役割拡大について、G20首脳会議の場で取り上げると表明している。

野党党首のMalcolm Turnbull は国防相の辞任を要求、首相を北京の移動大使のように行動していると批判した。

これに対し財務相は野党党首が国民の間の潜在的な反中感情をあおり、黄禍論をあおっていると逆批判した。


豪州財務相が五鉱集団のOZ Minerals 買収に関し、Prominent Hill 鉱山が含まれる限り、本案は承認できないとしたことに対し、Sydney Morning Herald は、政府は恣意的な投資障壁をつくり、「中国に立ち向かっている」ように見せかけているが、これは中国マネーは危険だとのメッセージを国民に与えるもので、「赤禍ヒステリア」を起こしかねないとしている。

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鉱山は武器テスト場から150km離れており、安全保障上の懸念はないという。


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