2007年5月アーカイブ

マレー半島を横断する石油パイプラインの建設計画が実現に向けて動き出した。

マレーシアの石油輸送会社 TRANS-Peninsula Petroleum Sdn Bhd は28日、建設工事を担当するマレーシアのエンジニアリング会社Ranhill Bhd 及び計画をマネージするインドネシアのPT Tripatra Engineers & Consultants と提携契約(Master alliance agreement )を締結した。今後、土地取得を行い、来年央に着工する。

調印式にはAbdullah首相、Yudhoyono インドネシア大統領のほか、スチールパイプを供給するインドネシアのPT Bakrie & Brothers Tbk、原油供給側としてサウジのAl-Banader International Group も出席した。

本計画は5月7日にマレーシア政府の承認を得た。

パイプラインはKedah州のYan からKelantan州 Bachok までの全長312キロで、貯蔵タンクはYan、Jeli、Bachokの3か所に建設される。

第1期(20億ドル)では、1日当たり200万バレルの輸送を目指す。
その後、第2期(25億ドル)、第3期(25億ドル)と総額70億ドルを投じ、2014年の完成時には600万バレルに拡大する。

完成すると中東から東アジアへの石油輸送で、海賊事件やタンカー渋滞が問題となっているMalacca海峡を回避し、かつ輸送期間も短縮できる。

TRANS-Peninsula Petroleum では「中東の主要な生産国からイスラム基金、東アジアの利用企業まで、投資はすべて歓迎だ」としている。

 


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キヤノンは5月25日、今年10-12月に予定していた新型薄型テレビ、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display:表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)テレビの発売を当面見送ると発表した。

キヤノンが1986年から研究を開始。1999年からはキヤノンの電子源と微細加工技術、東芝のブラウン管技術と液晶・半導体量産技術を結集して共同開発に着手し、200410月、合弁会社「SED」を設立。東芝姫路工場を量産拠点とし1800億円の投資を計画した。
2005
年8月から月産3,000台を生産し、同年中に両社別々のブランドのテレビとして発売する計画であった。

しかし、ライバルの液晶、プラズマの価格が急落したため、当初の想定より低コストで量産できる技術開発が必要になり、両社は発売時期を2006年春に延期したが、2006年に入り、発売時期を再延期していた。

 

SEDは薄型テレビ市場の大半を占める液晶やプラズマとは、仕組みが大きく異なる。

液晶は、白い光をカラーフィルターに通して色を表現。
プラズマは、気体を光らせ、その光に反応する蛍光体で色を出す。

SEDはブラウン管と同じ発光原理で、赤緑青の蛍光体に電子線を当てて画像を表示する。
ブラウン管は一つの電子銃が出す電子を偏向ヨークで曲げるために奥行きが厚くなるが、SEDは1つの蛍光体ごとに1つの電子をぶつけるため薄型にできる。画素を区切るワイヤーも不要で、無駄な発熱も防げる。
画質はブラウン管並みに明るく、高コントラストで、原理上は液晶、プラズマより低消費電力とされる。

キヤノン ホームページから

ーーー

発売延期には2つの理由がある。

第一は売価下落への対応。
両社は
重要技術の特許出願をせず、技術を社外に一切出さない方針を徹底したため、主要部品などを外注できず、開発スピードが思うように上がらなかったといわれる。

その間、ライバルの液晶、プラズマは価格が急落、当初1インチ1万円のテレビが最近では3千円に下がっている。
松下は2,800億円をかけて尼崎市にブラズマパネルの国内第5工場を新設し、液晶のシャープも高水準の投資を続け、巨額投資によるコスト削減に突き進んでいる。

第二の問題は、キヤノンに対するSEDの技術に関連する米国訴訟問題である。

キヤノンは1999年に米国の Nano-Proprietary から関連技術のライセンスを受けているが、東芝とのJVの「SED」の扱いに関してNP社は2005年4月にテキサス連邦地裁に提訴した。

訴状では
・SEDカラーテレビは特許ライセンス契約の範囲外である。
・東芝とのJVのSED社はライセンス可能な子会社ではない。
としている。

キヤノンは、同社がSED社株を東芝より1株多く持つため子会社であり、契約に基づいてSED社にもライセンスを移せると主張。
これに対し、NP社は「SED社の意思決定には東芝の同意が必要で、実質的には子会社ではない」と反論した。
キヤノンは「子会社」との判決を求める訴えを米連邦地裁に出したが、棄却された。

このため、キヤノンと東芝は本年1末に、キヤノンが東芝保有のSED株を買い取り、完全子会社とすることを決定した。東芝・姫路工場での量産計画も白紙に戻した。

しかし、NP社が契約違反として契約を破棄したため、これでNP社との問題は解決とはならなかった。
5月3日、NP社は訴訟で勝訴したと発表した。陪審は契約違反による当初のライセンス契約の終了を認めた。

これと同時に、NP社は新しい仕組みでキヤノンに対して再ライセンスすることを示唆している。

キヤノンはライセンス契約の終了を認めたことに関して控訴するとし、訴訟の解決と低コスト化技術の確立を早期に進めて、発売時期を改めて決定するとしている。

Nano-Proprietary, Inc.は、100%所有の2つの事業子会社を持つ持株会社で、200以上の特許(申請中を含む)を持ち、技術ライセンスを業としている。
・Applied Nanotech Inc. :カーボンフィルム/ナノチューブから電子放射への応用分野。
・Electronic Billboard Technology, Inc.:electronic digitized sign 技術。

2006年5月、同社は三井物産との間で、カーボンナノチューブ技術の商業化のための戦略的提携を発表している。

付記

2007年12月30日の朝日新聞報道

次世代の薄型テレビ「SEDテレビ」について、キヤノンが独自技術で開発に乗り出した。すでに試作段階に入っており、量産技術の開発を経て商品化を目指す。

キヤノンが開発したのは、映像を映し出すために電子を放出する部分を製造する基幹技術。
これまで使うことにしていたナノ・プロプライアタリーの特許では、ガラス基板上に電子を放出する膜を形成し、カーボンで覆っていたが、安定性に問題があることもわかり、キヤノンはカーボン以外を使う手法を開発した。

今年5月の地裁判決はキヤノンが契約違反をしていると判断、現在は控訴審で審理中。

ーーー

SEDテレビがモタモタしている間に次世代の目玉として有機ELが台頭してきた。

ソニーは本年4月、表示装置に有機ELエレクトロ.・ルミネッセンスを使い、液晶やブラズマよりも大幅に薄いテレビを世界で初めて年内に発売することを発表した。まず11型で商品化する。
豊田自動織機と折半出資のディスプレー製造会社、エスティ・エルシーディ
愛知県東浦町でパネルを量産する。

有機ELは電圧をかけると光を放つ有機化合物から成るパネル向け電子材料。
明暗がはっきりとした画面表示が可能で、応答速度が速い。材料そのものが発光するため、画面の背後から光を当てる必要がある液晶や、発光するための空間が要るプラズマに比べて大幅に薄型化できる。

東芝も2009年度末までに有機ELテレビを商品化することを表明、32型で発売を検討する。

先発する液晶TVとプラズマTVも競争は激しい。
2007年の液晶の出荷台数(37インチ以上)は2,270万台と前年の2.2倍となるに対し、プラズマは1,230万台と3割強の伸びに止まる見通し。2005年はプラズマが大きく上回り、2006年はいずれも1,000万台程度で液晶が若干上回った。

キヤノンがSEDの事業化に時間をかけるほど、状況は苦しくなる。 

 

付記

同社の社名は「キノン」ではなく、「キノン」である。

同社のホームページに以下の記載がある。 http://web.canon.jp/about/mark/index.html 

「ヤ」の字が大きく表記された「キヤノン」が生まれたのは、1947年に、社名を「精機光学工業株式会社」から「キヤノンカメラ株式会社」と変更したときでした。当時の登記簿や株主総会後に発表される営業報告書、朝日新聞に掲載した広告など、すべて「ヤ」が大きくなっています。では、なぜ「キャノン」ではなく「キヤノン」にしたかというと、全体の見た目の文字のバランスを考え、きれいに見えるようにしたからなのです。
「キャノン」では、「ャ」の上に空白が出来てしまい、穴が空いたように感じてしまうので、それを避けたのです。

 


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SABICARAMCOのトップが上海でのフォーラムで24、両社がそれぞれSinopecJV交渉を進めていることを明らかにした。
いずれも間もなく発表される予定。

SABICSinopec天津の新しい100万トンエチレン計画に10億ドルを投資して参加する。

本計画は当初、ダウケミカルと中国側(SINOPEC/天津市)の50/50 JVとして検討されたが、ダウが経済性を理由に撤退した。
その後、天津市は外資企業の参加を求め、
SaudiAramcoやSABICも検討対象となったが、進展はなかった。

SINOPEC天津分公司2005年末、政府から単独での大拡張計画の承認を受け、昨年6月26日、天津浜海新区の大港石油化学基地で着工した。2009年9月スタートの予定。

既存の500万トンの製油所を1250万トンに拡張し、エチレン100万トンを新設するもので、既存エチレンと合わせ、エチレン能力は120万トンとなる。誘導品は以下の通り。
 LDPE 300千トン
 HDPE 300千トン(INEOS 
Innovene S Process
 PP   450千トン
 EOG  420千トン(ダウ技術)
 その他

  2006/7/3 SINOPEC天津分公司の100万トンエチレン計画着工 

SABICはその後、参加に熱意を示し、昨年1月のサウジのアブドゥッラー国王の最初の公式訪中を機に、交渉を再開したといわれている。

 

SABICこのほか、2004年6月に大連実徳グループと50/50のJVで、大連市の旅順港に50億ドルをかけて、年産1千万トンの製油所と年産130万トンのエチレンコンプレックスをつくる計画をたてた。(その後、エチレン能力を100万トンに落とした。)
  2007/1/4 
SABIC、大拡張計画  

大連の計画は中国の11次5ヵ年計画(2006-2010)にも含まれておらず、当面承認の可能性がない。


中国政府がSaudiAramco の福建計画の承認で、とりあえずはサウジはお終いとしたとの見方もあった。
天津、大連のいずれの進出計画も一向に進展をみなかったため、SABICの会長のPrince Saud bin Thunayan Al-Saud は2月25日にメディアの取材に対し、「中国政府が出来るだけ早くプロジェクトを承認することを希望する」「わが社の投資先は中国だけではない。他にもたくさん投資先がある」と述べた。
但し、一方で「中国市場には未来がある。中国への投資は大きなチャンスだ」とも語っている。
 

なお、SABICはこのたび、北京と深センに事務所を開いた。既存の上海、香港を加え、4事務所となる。
SABIC会長は、中国はSABICにとって戦略的に最も重要な輸出国であり、世界で最も成長力のあるポリマーの市場であるとし、今回の事務所の開所は中国へのコミットメントを示すもので、SABICの新しい石化プラントの製品のほとんどは中国を中心とするアジアに輸出されると述べた。

SABICはこのたびGE Plasticsの買収を決めたばかりで、SABICの大拡張計画は着々と進展している。

ーーー

SaudiAramco はSinopecの山東省青島の製油所に参加する契約書を間もなく締結する。

Sinopecは青島製油所の持分の25%をSaudiAramcoに譲渡するといわれている。

青島製油所は第一期の能力10百万トンで、来年末に商業生産開始の予定。

本年4月に両社は、Aramcoが2010年まで、100万バレル/日の原油を毎年Sinopecとその子会社に供給する覚書を締結している。

今回の青島製油所への参加はAramcoにとっては福建石化計画に次ぐもので、潜在需要の大きい中国への進出を意味し、Sinopecにとっては原油の安定供給の確保に大きな意味がある。

    

次の買収は?

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SABICによるGE Plastics 買収が決まり、次の買収の噂がいろいろ出ている。

1)Dow/DuPont

びっくり仰天のニュースである。

5月25日のNew York Times は、米国証券取引委員会(SEC)が、ダウを解雇された2人の役員が会社を買収対象とすることで株価の操作をしたのではないかどうか調査を開始するが、同時に、昨年秋の件も調査する模様と伝えた。

表面には出ていないが、昨年秋にDowがDuPont に対し買収提案をしたとのこと。
買収額は400億ドル以上で、実現すれば米国1位と3位の化学会社の合併となる。(2位はExxonMobil)

この提案に対し、DuPontは拒否し、交渉に入らなかったと伝えられている。

本件は表面に出ていないにかかわらず、9月から12月にかけて両社の株は変動し、DuPont株は15%上昇した。

これが事実なら、今後どんなことが起こるか、想像がつかない。

2)Basell/Lyondell

Basell を買収したAccess Industries の会長 Leonard (Len) Blavatnik Lyondell Chemical の株式 8.3%を「戦略的投資」として購入する契約を締結した。
  2007/5/16 Access Industries の会長、Lyondell Chemical の株式を購入

これにより、Blavtnik が Lyondell を買収し、Basell と合併させるのではないかとの噂が出ている。

Lyondell CEO はもし買収の提案があれば検討するとしながらも、景気の悪化したときのことを考えると、買収のために80億ドルから100億ドルも資金を貸す側は大変だろうとコメントしている。

ロイターはBasell GE Plastics 買収から離脱したと報じ、その結果として、(Blavtnik or Basell が GE Plastics と Lyondell の両方の買収はさすがに無理だが、GE Plastics を諦めたことから)Basell Lyondell の合併の可能性が出てきたともしている。

エチレンやPO/SMに強いLyondell とポリオレフィン世界一のBasell との組み合わせは強力である。

Access Industries 2005年に57億ドルでBasell を買収している。
 
2006/6/15  Basellの買収」 参照 

Lyondell Chemical については下記を参照。
 
2007/2/26 Lyondell とシノペック鎮海煉油化工、寧波で PO/SM 生産」 

3)Lanxess/Degussa

以前からLanxess が Degussa を買収するという噂が流れていたが、第1四半期決算発表の席で会長が、2005年1月のBayer からのスピンオフの後、業績が改善し、今や買収により成長する時期にきたとし、買収の候補の幾つかの中にDegussa があることを認めた。

両社には重複事業があまりなく、理想的な相手であり、合併で新しい強力なグローバルプレーヤーとなり、BASFに次ぐ欧州第二の化学会社になると述べている。

会長は更に、Degussaの企業価値は100~130億米ドルだが、年金や負債等を勘案すると買収額は50~80億米ドルであろうとしている。

これに対してRAGは、Degussa売却の考えはないとしている。

Lanxess2004年7月にBayer Chemicalsの大半と Polymersの一部を新会社として分離し、2005年に上場した。
  2006/9/6 Bayer と Lanxess  

Degussaについては下記参照。
  2006/12/14 Degussa、上海にMMAコンプレックス建設 

 

4)ICI

DowがICIを買収するという噂が流れた。

  2007/4/7 DowICIを買収? 

更に、Akzo Nobel のトップが Coatings 事業で大規模な買収を検討していると述べた。
買収候補がICIでないのかという質問にはノーコメントであった。

これに対してICIの会長は5月23日の株主総会で次のように述べ、Dow やAkzo Nobel による買収説を打ち消した。

2006年はICIにとり80周年であったが、好業績であった。2003年に設定した目標、売上伸び率、利益率向上、資本利益率向上、キャッシュフロー増加、を全て達成した。

2003年の業績悪化に対応するため4年間の長期の縮小均衡策を取ったが、今後は成長路線に転じる。
特に、アジア、東欧、ラテンアメリカの成長市場で積極的に事業を拡大する。
又、コア事業を買収により拡大を図る。

Profit before taxation, exceptional items and goodwill amortisation

2006/5  油脂化学、界面活性剤を扱う Uniqema部門 Croda International に売却
2006/11 Quest部門をGivaudanに売却

  2006/11/30 ICI、Quest部門をGivaudanに売却 

なお、ICIの抜本的構造改革については下記参照
  2006/3/7 
ICIの抜本的構造改革 

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アメリカのクロルアルカリメーカーのOlin Corporation 21日、同業のPioneer の買収を発表した。取得価額はネットで411百万ドル。
これにより、
Olin は北米クロルアルカリの4位から3位にアップするとともに、カナダ東部やアメリカ西部などにも地域を拡大する。

また、Pioneer は北米最大の工業用漂白剤メーカーでもある。

両社の電解工場と能力は以下の通り。(地図にはPioneer の漂白剤工場所在地も表示)
Nevada Henderson工場は元 Stauffer Chemical の工場)

  塩素能力
Short Tons
Niagara Falls, NY      281
Charleston, TN      270
Augusta, GA      120
McIntosh, AL      401
McIntosh, AL
(50% Sunbelt*)
     146
Olin 計)    (1,218)
Dalhousie, NB      36
Becancour, Quebec      340
St. Gabriel, LA      246
Henderson, NV      152
Pioneer 計)     (774)
Total     1,992

* Sunbelt Chloralkali PolyOne(旧 Geon) とOlin の50:50 JV

Olin社はクロルアルカリのほかに、銅合金とWinchester印のスポーツ用銃弾の事業を行っている。
クロルアルカリについては塩素、苛性ソーダとも外販している。

Olinは以前はTDIの米国でのトップメーカーであったが、MDIを持たず、ポリオールのためのPOも持たないため、1997年にTDI と ADI イソシアネート事業をARCOに565百万ドルで売却した。
Olin はこの売却収入で自社株購入、借入金返済を行ったほか、DuPont との50/50JV(Niachlor)であったNiagara Falls 工場を買取った。このほか、アラバマ工場内に、PVC分野での主需要家のGeonとの50/50JV(Sunbelt)を設立している。

なお、同社は日本では旭硝子とのJVの旭オーリンを設立して旭硝子 鹿島工場内でPPGを生産していたが、Olin の事業売却に伴い、旭硝子100%の旭硝子ウレタンとした。

1999年にはスペシャリティケミカル事業をスピンオフし、Arch Chemicals として独立させた。  

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同社の発表によると、北米のクロルアルカリメーカーの状況は以下の通り。

1位はダウ。
なお、2位のOccidental3位のPPGや、Olin 等、未だに水銀法電解が残っている。

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INEOS は21日、Norsk Hydro からポリマー事業のKerling 社(旧称 Hydro Polymer)を670百万ユーロで買収する契約を締結したと発表した。

Norsk Hydro はエネルギーとアルミを中心事業と考え、Hydro Polymer については切り離して上場するか、又は売却するかを考えていた。

2005年5月の株主総会の承認を得て、上場を前提にHydro Polymerの社名をKerling ASA と改称した。kerling は古代ノルウェー語で老女の意で、バイキングの船のマストを支える大きな木の塊のことである。

しかし、その後も上場の決断が出来ず、現在もNorsk Hydro の100%子会社である。従業員は1200人。

電解からVCM、PVC、コンパウンドを中心事業としており、欧州で4位のPVCメーカーである。

買収したINEOSは2001年にICIとEniChemの塩ビJVのEVCの過半を買収、2005年にEVCを100%買収している。

 2006/6/14  事業買収で急成長した化学会社 

今回の買収で、INEOSはクロルアルカリ、PVC、コンパウンド分野の強化を図る。

欧州のPVC能力
Norsk Hydro 2007/2報告 単位:千トン)
EVC  1,340
Solvin  1,195
Atofina   905
Hydro Polymer   625
Vinnolit   620
LVM   450
Shinetsu   400
Vestolit   360
Cires   200
Aragonesas   190
Hellenic Petrol   100

Kerlingの生産拠点は以下の通り。(能力:千トン 若干古く、現状と異なっている可能性がある)

社名 塩素 ソーダ VCM e-PVC s-PVC コンパウンド
ノルウエー Kerling  130  140  470   25  125  
スエーデン Kerling  116  131  140   58  144  
Hydro Sydplast            ◎
英国 Kerling          245  125
(JV)
中国 Suzhou Huasu Plastics         130→330  
カタール Qatar Vinyl Company  300  336  279      
ポルトガル CIRES          200  

他に、ノルウエーにBorealis との50/50JVのエチレンメーカー Noretyl AS を持つ。
エチレン 550千トン、プロピレン 80 千トン)

Suzhou Huasu Plastics
 
Westlake Chemical のオーナーの台湾のT.T. Chao Group とNorsk Hydro その他のJV。
 江蘇省太倉にPVC、PVCフィルムの工場を運営。
 Norsk Hydro 31.8% 出資。
 2004/12にPVC 200千トンの増設計画を発表した。

Qatar Vinyl Company (電解、EDC、VCMのJV)
 株主 
The Qatar Petrochemical Company (QAPCO)  31.9%.
     Norsk Hydro 29.7%
     Elf Atochem  12.9%.
     Qatar General Petroleum Corporation (QGPC)   25.5%
      (QAPCO80%、Elf Atochem 10%Enichem 10%

CIRES
 信越化学とのPVCのJVで、
Norsk Hydro 26%出資

ーーー

なお、同日、INEOS ChlorVinyls はエマルジョンPVC事業をVinnolit GmbH & Co. KG. に譲渡する契約を締結した。

英国のHillhouseとドイツのSchkopauのe-PVC工場を併せ譲渡し、イタリアのPorto Torres 工場で生産するe-PVC全量の引取り権も譲渡した。

英国のRuncorn Barry、ドイツのWilhelmshaven Schkopau、イタリアのPorto Marghera, Porto TorresRavenna 各工場のVCMとサスペンジョンPVC事業は当然維持する。

Vinnolit はヘキストとワッカーのJVであったが、2000年に投資会社のAdvent International Corporation 買収した。


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中国核工業集団公司は、江蘇省の田湾原子力発電所の2号プラントが14日夜試運転に成功したと発表した。年末に商業運転を開始する予定。
1号プラントは既にフル稼働に入っており、17日に本格的な商業運転を開始した。

田湾原発は、これまでに中国とロシアが協力した最大の技術経済提携事業で、ロシアのAES-91式加圧水型炉PWRを採用し、1、2号機それぞれ106万kw と、単体では中国最大の出力を持つ。

 

中国の原子力開発は1955年に中ソ原子力協力協定の締結で始まったが、中ソ対立のため、ソ連は1960年に中国から引き上げた。これを契機に中国は独力で原爆開発を進め、原子力の軍事利用技術を確立した。

中国最初の原子力発電所である秦山1号機は31万kWのPWRで、中国が独自に設計・建設し、1994年4月に営業運転を開始した。
広東の大亜湾原子力発電所はフランスのフラマトムに発注したもので、1994年に営業運転を開始した。

第9次5カ年計画に基づき、広東嶺澳発電所、秦山第2期・第3期工事、田湾発電所を建設し、田湾を除いて全て2005年までに営業運転を開始した。2005年12月末現在運転中の原子炉は合計9基、700万kW。
このうち、泰山第3のみCANDU
(カナダ型重水炉)で、タービンは日立が供給した。他はすべてPWR(加圧水炉)。

このほか、広東省の嶺澳第2と陽江が着工しており、浙江省の三門と泰山第2の3号機、4号機が計画されている。

なお、2004年の中国における発電の内訳は次の通り。

 石炭火力   82.6%
 水力  15.0%
 原子力   2.3%
 再生可能エネルギー   0.1%

中国の原子力発電所は以下の通り。  

名称 ユニット
番号
出力
千KW
着工 営業運転
浙江 泰山   CN-1   310  1985/3/21 1994/4/1
広東 大亜湾 1号 CN-2   984  1987/8/7 1994/2/1
2号 CN-3   984  1988/4/7  1994/5/6
浙江 泰山第2 1号 CN-4   650  1996/6/2 2002/4/15
2号 CN-5   650  1997/4/1 2004/5/3
3号     650  未定  
4号     650  未定  
広東 嶺澳 1号 CN-6   990  1997/5/15 2002/5/28
2号 CN-7   990  1997/11/28 2003/1/8
浙江 泰山第3 1号 CN-8   720  1998/6/8 2002/12/31
2号 CN-9   720  1998/9/25 2003/7/24
江蘇 田湾 1号 CN-10  1,060  1999/10/20 2007/5/17
2号 CN-11  1,060  2000/9/20 2007/末
広東 嶺澳第2 1号    1,000  2005/12  
2号    1,000  2005/12  
広東 陽江 1号    1,000  2005  
2号    1,000  2005  
浙江 三門 1号    1,000  未定  
2号    1,000  未定  

 資料
 http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/14020303_1.html
 
http://www.fnca.jp/pi/workshop2005_img/2005_02.pdf

 

付記

2007/5/22、原子力発電技術を統括する国家核電技術公司が国務院の正式認可を経て発足した。

国務院、中国核工業集団公司、中国電力投資公司、中国広東核電集団公司の4者共同出資で、資本金40億元のうち60%を国家が出資した。

国務院に代わり、国家を代表して外国との契約を行い、第3世代の先進的原子炉技術の移転を受け、関連プロジェクトの設計や管理を行う。また、技術を吸収し、新たな中国の原子力発電技術ブランド形成で主体的役割を担う。


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PetroChina は13日、陝西省政府との間で延安(Yan'an)での大規模エチレン計画の契約を締結した。

延安のエチレン計画は能力100万トンで、建設費は26億ドル。PetroChina と陝西省政府のJVが建設・運営する。
PetroChinaがマジョリティを持つが、出資比率やスケジュール、誘導品能力は明らかにされていない。

PetroChina総経理と陝西省の省長はともに、本協定は両者が石油産業一本化戦略を進めていく重要な一部で、陝西省の資源優位を活用し、国家経済成長によるエチレン需要を満たし、同省とその周辺部の関係産業をけん引することに重要な意義をもつと評価した

陝西省北部は石炭、石油、天然ガス、塩の資源が豊富で、石油化学工業を進めていく基盤を築き上げている。

協定により、双方は延安で企業登録を扱い、「公司法」により進める。詳細は双方が話し合って決定するがPetroChinaが持株会社にする。


PetroChina は陝西省の延安近郊に長慶(Changqing)油田を、また咸陽(Xianyang)に製油所・長慶石油化学を持っている。

一方、陝西省政府は2005年10月に、陝西省北部地域における石油資源の統合を推進するため、石油探鉱開発企業21社(陝西省の所管する石油開発会社7社、陝西省北部各区・県の所管する石油開発会社14社)ならびに製油所3社(延煉集団、永坪精油所、楡林製油所)を統合し、全額出資企業「
陝西延長石油(集団)有限責任公司Shaanxi Yanchang Petroleum Group Co.)」を設立した。
統合により同社は、PetroChina, Sinopec、CNOOCに次ぐ中国第4位の石油会社となった。

中国における原油生産シェア(2004年ベース)
PetroChina  59%
Sinopec  22%
CNOOC   9%
陝西延長     4%
外資ほか    6%

陝西省は中国で最も古い産油地帯であり、中華人民共和国設立前から石油の生産が行われていた。

延長油田は、陝西省北東部部(延安市東方約50Km)に位置しており、延長(Yanchang)油田の他、小規模油田群の総称である。

長慶油田は、オルドス盆地中・西部に位置しており、陝西省だけではなく、甘粛省、寧夏回族自治区に位置している。馬嶺(Maling)油田の他、小規模油田群の総称である。

なお、PetroChina の製油所・長慶石油化学は西安の西の咸陽にあるが、PetroChina長慶油田公司は昨年11月に北は甘粛省慶陽市の西峰油田から、南は咸陽の長慶石化までの慶咸原油輸送パイプラインの利用を開始した。
同社は陝西、甘粛、寧夏を結ぶ陝西靖辺-咸陽、陝西靖辺-寧夏恵安堡の原油輸送パイプラインの建設を終えており、隴東、安塞、靖安、靖綏など長慶油田公司の中堅油田の原油が、
環状パイプラインを通じて、北の寧夏、西の蘭州、南の陝西まで送られることとなる。

PetroChina陝西延長の石油生産量は以下の通り。

2004年 石油生産量 (単位:万トン)
長慶    811
延長    653
陝西省計   1,464
   
大慶(黒龍江省)   4,640
勝利(山東省)   2,674
中国計  17,473

原油処理については、PetroChinaの長慶石油化学は昨年290万トンの原油を処理しており、陝西延長石油グループは970万トンの原油を処理している。

このため、新エチレン計画の原料ナフサは両社の既存製油所から供給を受けることが出来る。


本計画は中国の現在の5ヵ年計画には含まれておらず、次期計画に含まれることとなるため、スタートは2010年以降となる。
本計画については、(1)中国政府が陝西省を含む西部地域の開発を重視していること、(2)PetroChinaがSinopec に対抗して石油化学事業拡大に熱意を持っていることから、本計画の承認は間違いないと見られている。


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信越化学は21日、3月に事故を起こした直江津工場のセルロース製造設備について、安全対策工事を完了し、監督官庁の許可を得られたものから、順次操業を再開すると発表した。
設備の調整や製品の品質試験などを経て、6月初めにも顧客に製品の出荷を始める。

[1]操業再開のセルロース製造設備:
 5月21日付けで使用停止命令解除
 以下の製造設備より順次操業を再開。
  ・HP工場
  ・L-HPC工場
 
・MC-Ⅳ工場

[2]上記以外のセルロース製造設備:
  ・事故が発生したMC-Ⅱ工場については操業再開の目途は立っていない。
  ・MC-Ⅲ工場は、監督官庁への手続きなど、操業再開に向けた準備を進めている。

なお、現在のところ、事故原因の特定には至っていないとのこと。

参考:

  2007/3/22 信越化学 爆発事故 

  2007/4/16 信越化学 爆発事故のその後 

 

 

GEは21日、子会社のGE Plastics をサウジのSABICに現金116億ドル+借入金で売却する契約を締結したと発表した。今後、当局の承認などの手続きを経て、本年第3四半期に取引完了する。

GEは売却で税引き後に約90億ドル(1兆円超)の収入を得るが、同社はこれを主に自社株購入に当て、2007年の60億ドルの購入計画を70~80億ドルに増やす。

2007/5/19の速報では以下のように伝えた。

17付けのWall Street Journal GEがGE Plastics をSABICに110億ドルで売却間近と伝えた。
同紙はまた、昨年に
Dubai の会社が米国の港湾設備を買収する計画が安全保障の観点で潰されたが、本件については政治問題にはならないとしている。

ロイターはBasell GE Plastics 買収から離脱していると報じた。
また、その結果として、
Basell Lyondell の合併の可能性が出てきたともしている。
(既報の通り、Basell のオーナーのAccess Industries の会長が Lyondell 株式を購入したが、今後、同氏 or Basell が GE Plastics と Lyondell の両方の買収はさすがに無理である。)

10日付けのBloomberg は、GE Plastics の売却先がApollo, Sabic Basell 3社に絞られたと報じていた。

本件については下記を参照。

 2006/9/21 GE、シリコーン事業を売却 

 2007/1/11 GEがGEプラスチックスを売却か? 

 2007/1/22 GEについて 

 2007/2/13 GE Plastics、中国のPC計画延期 (売却と関連か?) 

 2007/4/2 GE Plastics 争奪戦にSABICも参戦 

GEプラスチックス:
GEプラスチックスは、Jeff Immelt 現会長やJack Welch Jr. 前会長の出身事業部で、製品には変性PPE、PC、PBT、PEI (polyetherimide)、ABSやそれぞれのアロイ、及びLNP コンパウンド(川鉄から買収)がある。
1953年にポリカーボネート樹脂を開発して以来、エンプラ・トップメーカの地位を維続するとともに、現地化を積極的に推進している。
日本では日本GEプラスチック(GE 51%、三井化学 41%、長瀬産業 8%)が変性PPO、ポリカーボネートなどを製造、販売している。

GE:
GEは1月19日に第4四半期結果を発表したが、その中でプラスチックス事業の処分を検討していることを正式に明らかにした。
発表のなかで、GEのJeff Immelt 会長兼CEOは次のように述べている。
「我々はleadership businessへの投資戦略を継続して実行する。我々の狙いはより速い成長、より高い利益である。本年に入り、原油・ガス、ヘルスケア、航空という成長プラットフォームでの150億ドルの買収を発表した。逆に成長が遅く、変動の激しい事業からの撤退を続ける。現在、プラスチック事業の処分を検討中である。」 

2006年9月14日、GEはシリコーン事業のGE Advanced Materials Apollo Management, L.P.38億ドルで売却すると発表した。
GE
1971年に東芝と設立したGE Toshiba Silicones1998年にBayerと設立したGE Bayer Silicones 2つのJVを持つが、両社からJV持分を買い取ってGE 100%とした上で、本体とともにApollo に売却する。
   
GEは今年に入り、1月8日にJPモルガン・パートナーズなどの投資ファンドから、原油・ガス採掘関連機器のVetco Gray を19億ドルで買収すると発表した。石油・ガス産業でのGEの存在を拡大するもので、インフラストラクチャー部門の強化となる。
   
1月15日には自動車・航空部品大手の英スミス・グループの航空宇宙部門Smiths Aerospace を48億ドルで買収することも決めた。この買収はGE Aviation 部門の民間機及び軍用機用エンジンに、Smith の飛行管理システムその他を加えることにより、この分野での活動を高める効果がある。
   
さらに1月18日に米医薬大手のアボット・ラボラトリーズの診断機器部門の一部を81億3千万ドルで買収すると発表した。アボットの診断事業のうち試験管を使った血液検査機器などで、アボットの糖尿病治療ビジネスやエイズ検査に使う分子診断薬などは含まれない。
   

売却候補:
GE Plastics 売却情報で多くの会社が買収を希望した。

投資会社では、Blackstone はKoch Industries (DuPontのTextiles & Interiors 部門のINVISTAを買収)と組み、Carlyle は投資会社のTexas Pacific Group と、KKR もBain Capitals(Rhodia のフェノール事業を買収、イスラエルDor Chemicalsに出資)と組んだ。昨年、GE Silicones を買収したApollo Management も買収に手を挙げた。
化学会社ではBasell、SABICのほか、インドの Reliance Industries も手を挙げた。
5月10日付けのBloomberg は、GE Plastics の売却先がApollo、Sabic と Basell の3社に絞られたと報じていた。

SABIC:
SABIC は2002年にSABICが22.5億ユーロでDSMの石化部門を買収しているが、昨年には7億ドルでHuntsman の欧州汎用品事業を買収した。
その際、SABIC副会長は、それがSABICがグローバルに拡大する意思を示すものであるとしていた。

今回の買収で同社は欧州に次ぎ、北米に進出するとともに、エンプラなどの高機能樹脂も手に入れることとなる。
同社はまた、中国とインドへの進出を狙っている。

米化学物質安全性委員会(U.S. Chemical Safety Board CSB )のMerritt 委員長は516日の下院の小委員会で、BPTexas City 工場の爆発事故と同社のPrudhoe Bay のパイプライン腐蝕、原油漏れ事故とには驚くほどの類似点があると証言した。
CSB自体はPrudhoe Bay については調べていないが、BPの内部報告書をレビューした。

証言の詳細: http://www.csb.gov/news_releases/docs/MerrittEnergyCommerceTestimony5.16.07.pdf

ーーー

2005年3月23日、Texas City, TexasBP Texas City 製油所で爆発・火災事故が起き、15名が死亡、100名以上が負傷した(内70名が従業員及び請負業者。残りが周辺住民で、飛散したガラスやタイルによる負傷)。

事故はガソリンのオクタン価を上げる設備を2週間かけて補修した後の再スタート時に発生した。
アイソマーのラフィネートスプリッターのベントスタック先端から透明な液体が噴き出し、蒸気が地表近くに蓄積し爆発した。

瓦礫の中に、トレーラーと乗用車やトラックを含む約 30台の車の残骸があった。製油所の補修工事に従事している多くの請負業者が、爆発に無防備なトレーラを仮事務所等に使用していた。

ーーー

2006年8月、BPはアラスカのプルドー湾油田のパイプラインに深刻な腐食と小さな原油漏れを発見し、プルドー湾の油田の操業を停止した。
20万ガロン以上の原油が漏れたが、パイプラインは数年間にわたってメンテナンスを行わず、広範な腐蝕が見つかった。
同油田はBPがConocoPhillips、ExxonMobil と所有権を共同保有するもので、日量40万バレル、米国内原油生産量の約8%を占める。

   2006年8月28日 プルドー湾油田の操業停止ーBPとStandard Oil 
     

ーーー

CSBの委員長によると、Prudhoe Bay 事故で明らかにされた7つの根本原因はTexas City事故でも見られる。中でも、BPの意思決定に予算と生産の圧力が強く反映され、安全性が極めて損なわれているとしている。

Prudhoe Bay事故では「逸脱」が常習化し、リスクレベルが次第に上がっていったが、Texas Cityでも異常なスタートアップが調査されないまま常習化し、重要な機器の故障も放置された。
事故の当日も蒸留装置の重要なアラーム(
6つ)、機器、コントロール機器が正常ではなかった。安全性のレビューなしに多くのトレーラーが危険な場所に置かれていた。

Prudhoe Bay事故の内部報告書の指摘後も、補修やメンテナンスの改良は見られない。

その他、共通する問題点として、過去の教訓が正しく伝えられていない、安全性に関しての過度の分権化、トップの頻繁な交代などを挙げている。また、BPはこれまで人的安全には熱心であったが、プロセスの安全には注目せず、結果として大事故が発生したとする。

ーーー

CSBは米国の化学品事故の調査のための独立政府組織で、本ブログではFormosa Plastics の2つの爆発事故の報告を取り上げている。

 2006/8/7 米工場爆発事故の調査結果 

 2007/3/12 米国Formosa PlasticsのPVC工場爆発事故の調査結果 


* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

ダウの海外進出

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ダウは5月21日、中国の国有石炭最大手・神華集団との間で、陜西省楡林市にワールドスケールのCoal-to-Chemicals コンプレックスを建設するための詳細FS実施の契約を締結した。

2004年12月に神華集団との間でFS共同実施の契約を結んでいる。
神華集団は1995年に設立された国有企業で、世界8大炭田の一つとされている神府東勝鉱区の開発・運営を担当しており、関連事業として鉄道、発電、貯炭設備、輸送設備を運営している。

計画では "clean coal" technologies を使用し、石炭からメタノール、メタノールからエチレンとプロピレンを生産する。電解設備も建設し、苛性ソーダ、VCM、有機塩素等を生産する。
このほか、誘導品としてグリコール類、アミン、溶剤、界面活性剤、アクリル酸と誘導品、プロピレン誘導品などが計画されている。

ダウの中国での活動については
  
2006/8/23 中国でのダウの活動 

ーーー

このところ、ダウは相次いで海外の大プロジェクトを発表している。

ダウ418日、リビアの国営石油会社(NOC)とJVを設立し、NOCのRas Lanuf コンプレックスの石化コンプレックスを拡張・運営すると発表した。
 
2007/4/25 Dow、リビアに石化JV設立 

5月12日にはダウとサウジアラムコは、世界最大級の化学品・合成樹脂のコンプレックス(ラスタヌラ総合計画)の建設・運営についての詳細覚書を締結したと発表した。
 2007/5/15  
アラムコとダウ、世界最大級の石油化学コンプレックス建設 

ーーー

ダウは昨年3月に、基礎部門の強化を”Asset Light"戦略(JV化)を通して行う方針を明らかにした。他社と新しいJVをつくるだけでなく、場合によっては既存の設備を出してJVにすることも行うとした。
  
2007/2/3 ダウ、PSとPP事業のJV化を検討 

Kuwait Petroleum Corporation と50/50JVのMEGlobalを設立してダウの設備を出したのが例である。
   2006/5/31 「湾岸諸国の石油化学ー1」 参照
タイでのサイアム・セメントとのJVもこの一環である。
   2006/10/24 「ダウ、アジア進出を促進 参照 

国内では4月10日に、既存のPS事業をJV化する計画を発表した。
Chevron Phillips Chemical との間で北南米のSM/PSの50/50JV設立のMOUを締結した。今後、Due diligenceを行う。
   2007/4/11  
Dow、Chevron PhillipsSM/PSのJV設立 

引き続き、PP事業についてもJV化を検討している。

ーーー

Dowには買収説基礎部門の分離・JV化説が飛び交っていたが、基礎部門での大プロジェクトが次々と発表されるのから見ると、そのような話は消えてしまったように思われる。
   2007/3/2 
Dow 買収説  
   
2007/3/19 Dow JV 

 

なお、ダウは4月12日に、役員2人が、Dowの行動基準に極めて不適切に、また明らかに違反し、会社の被買収に関して第三者に話をしたとして解雇したと発表した。

Dow買収説で、Kohlberg Kravis Roberts が半分、中東のSaudi ArabiaKuwaitBahrainQatarUAEOman の投資家が残り半分を出資して過去最高の500億ドルで買収するという報道がなされた直後である。

   2007/4/13 
速報 Dowが買収情報漏えいで役員を解雇 

これに関して5月8日、会社側、役員側がともに訴訟を行った。

会社側は報道の翌日にその役員が中東資本の代理人を務める銀行のCEOと会談したことが分かったとしており、会社の規則に違反したとして、株オプション等の返却と、雇用契約不存在の確認を求めている。

役員側はそれを否定し、何ら規則に違反していないとして、損害賠償を求めている。

 


* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

17日付けのWall Street Journal はGEがGE Plastics をSABICに110億ドルで売却間近と伝えた。

同紙はまた、昨年にDubai の会社が米国の港湾設備を買収する計画が安全保障の観点で潰されたが、本件については政治問題にはならないとしている。


ロイターはBasell がGE Plastics 買収から離脱していると報じた。
また、その結果として、Basell と Lyondell の合併の可能性が出てきたともしている。
(既報の通り、Basell のオーナーのAccess Industries の会長が Lyondell 株式を購入したが、今後、同氏 or Basell が GE Plastics と Lyondell の両方の買収はさすがに無理である。)

10日付けのBloomberg は、GE Plastics の売却先がApollo, Sabic と Basell の3社に絞られたと報じていた。


 参考 2007/4/2 GE Plastics 争奪戦にSABICも参戦
 

中国外務省などは8日、パナマ向けに輸出された薬用シロップのグリセリンと、米国とカナダへ輸出されたペットフードにそれぞれ毒性物質が混入していたと発表した。同省の姜瑜副報道局長は8日の会見で「グリセリンの代わりに医薬品には使用できない化学薬品が使われた」と述べ、因果関係を認めた。

一方、中国の国家品質監督検査検疫総局は8日、江蘇省と山東省の2社が製造して北米に輸出されたペットフードからも、樹脂などに使われるメラミンが違法に添加されていたと発表した。
米国とカナダでは今年3月、これらのペットフードを食べた数百匹の犬と猫が原因不明で死亡。FDAが中国側に調査を依頼していた。同総局は2社の責任者らを立件する方針。(以上 朝日新聞から)

 

6日付のニューヨーク・タイムズ紙はパナマで365名の死亡が伝えられ、うち100名が確認されたとし、以下のように詳細に報道している。

昨年5月、長い雨季が始まり、パナマ政府は風邪や咳の患者増大を予想して26万本の咳止め薬を製造した。

9月に Panama City の公衆病院は不思議な症状の患者の増大に気がついた。身体の一部の機能が停止または麻痺し、中には呼吸困難に陥った患者までいた。死亡者も続出したが、はっきりとした原因は分からないままだった。

調査の結果、病院の患者の半数が高血圧薬を処方されていたことが分かったが、それを飲んでいない患者もいた。
たまたま、ある患者が、その薬を飲んだが、咳が出たので咳止め薬を飲んだと話したので、咳止め薬に注目が集まった。

支援のために訪問していた米国疾病管理・予防センター(CDC)調査員が咳止め薬を持ち帰り、調べた結果、Glycerin ではなくDiethylene glycol であることが判明した。

死亡者数の確認が難航した。既に埋葬されており、多数が医者にもかかっていなかった。被害者の大半は幼い子供だった。
アルゼンチンの病理学者が埋葬された死体からの毒物分析方法を開発した。
(現在確認されたのが上記の100名)

その後の調査で次のことが判明した。

咳止め薬に使われたシロップは 「99.5% pure glycerin」と表示されていた。
   
製造したのは江蘇省泰興市(Taixing)恒祥( Hengxiang)のTaixing Glycerine Factoryである。グリセリンの代わりに遥かに安価なジエチレングリコールを使用した。
   
北京の商社 CNSC Fortune Way がこれを スペインのRasfer International に販売、同社はパナマのブローカーの Medicom Business Group に販売した。どの社も製品テストはせず、メーカーの社名を消していた。(需要家が直接メーカーと契約をするのを防ぐため、しばしば行われる) メーカーの品質証明も購入者に渡すのがルールだが、それも行われていない。
   
パナマでは2年間以上、使われず、Medicom はシロップの有効期間を変更していた。
パナマ政府もこれを使用する際に品質検査を実施していない。
   

グリセリンの偽者は本物に似ており、極めて安いため、しばしば使用され、事故を起こしている。

70年前には米国でジエチレングリコールの入った薬品で100人以上が死亡、これが厳しい薬事法の制定と現在のFDAの設立のきっかけとなった。
その後、ハイチ、バングラデッシュ、アルゼンチン、ナイジェリアなどで事故が発生しているという。
中国でも昨年
4月に少なくとも18名が死亡している。

これまでのところ、中国政府の反応は非常に鈍いものであった。

薬事当局は、工場は医薬品製造の登録をしていないので管轄権はないとし、商社についても医薬品を業としていないとして、両社とも違法な行為をしていないとしていた。

付記

中国の国家品質監督検査検疫総局(国家質検総局)は5月31日、「中国の出荷側に落ち度があったとしても、直接原因はパナマの業者の不正行為にある」とした見解を明らかにした。

発表によると、
北京の中服嘉運貿易会社は、輸出の際にスペインの貿易会社に、同製品は工業原料TDグリセリンで中国薬典規格に合っていないと説明したほか、製品の有効期間は1年とすることも伝えたという。
しかし、パナマの商社は、米国薬局方(USP)の純グリセリンと偽って同国の製薬会社に販売、さらに有効期間1年を4年に改ざんした。2006年製造開始の時点ですでに使用期限が2年前に切れていた。

ーー

米国とカナダでは今年3月、メラミンが違法に添加されていたペットフードを食べた数百匹の犬と猫が原因不明で死亡した。

FDAは史上最大の製品リコールを行い、中国の2社、江蘇省徐州市の Xuzhou Anying Biologic Technology Development Co. と山東省の Futian Biology Technology Co. Ltd.を突き止めた。

メラミンの添加された両社の製品は成分が小麦グルテンと米プロテインと表示されていたが、実際には単なる小麦粉であった。

米国ではメラミン添加は禁止されているが、中国では、メラミンには栄養価はないが、検査で蛋白質が入っているように見せかける安価な添加物として、動物飼料生産者は何年もの間メラミンを飼料に添加してきたという。

オンタリオの研究者は、小麦グルテンに含まれるシアヌル酸とメラミンが混合すると、動物の腎機能を妨害する結晶を形成するとしている。

 

なお、FDAと米国農務省は7日、メラミンが添加されたエサを食べた豚やチキンを食べても、人間の健康へのリスクは非常に少ないとの共同発表を行った。


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化学会社決算まとめ

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化学会社の決算がほぼ出揃った。

各社の営業損益(前期及び当期)の対比は以下の通り。
うち昭和電工は12月決算)

 

昨秋のナフサ値下がりで製品値下がりが懸念されたが、その後ナフサ価格は1月17日に503ドルまで下がってから値上がりに転じ、5月14日には史上初めて700ドルを超え、5月16日には722ドルを記録した。
これを受け、逆に製品値上げが浸透し、各社とも好調な決算となった。

 

円安も損益向上に大きな影響を与えている。

(既報の通り、武田薬品は為替の影響で前期比 228億円の増収となったが、トヨタ自動車の場合は円安効果は2,900億円。欧米の自動車企業は「円安で日本の自動車は1台当たり2,400ドルの価格競争力を得ている」と反発しているという。)

ーーー

しかし、中国向け中心のPTAやVCMなどは値下がりの影響で前々期に比して利益は大きく下がっている。
電子材料が各社好調ななかで、液晶テレビの価格下落を受け、住友化学の情報電子化学の大幅減益が目立つ。

営業損益変動の主な例は以下の通り。(問題製品を含む事業部門の営業損益、単位:億円)

中国向け中心のPTA、VCM、PVCなど値下がり
 
  部門 05/3 06/3 07/3 前々年比
三菱化学 石油化学
(PTA、エチレングリコール等)
 586  309  282  48%
三井化学 基礎化学品
(PTA、PET、フェノール、
ビスフェノールA、EO/EG)
 360  219  110  31%
東ソー 基礎原料
(苛性ソーダ、VCM、PVC、セメント)
 204   56   61  30%
 
同じPVCでも、信越化学は米国の塩ビ会社 Shintech が好調で増益。
 
コエンザイムQ:競争激化による大幅な減収、減益
 
  部門 06/3 07/3 前年比
カネカ ライフサイエンス  190   57  30%
三菱瓦斯化学 天然ガス系   54   25  46%
    三菱瓦斯化学の同部門のメタノールは好調
   
液晶フィルム値下がり
 
  部門 06/3 07/3 前年比
住友化学 情報電子化学  217   35  16%
日東電工 電子材料部門  587  314  53%
 

薄型テレビ価格下落で、韓国・台湾の液晶パネルメーカー(プラズマパネルも)が赤字に転落した。
1-3月期決算で、韓国の液晶パネルメーカー7社のうち、5社が赤字、プラズマパネルメーカーも2社が赤字となった。
台湾でも液晶パネルメーカー大手5社のうち、4社が赤字転落。

上記の各製品の状況は一時的なものでなく、今後も回復の可能性は少ない。
   
逆に、半導体シリコンのように大増益の部門もある。
 
  部門 05/3 06/3 07/3 前々年比
信越化学 電子材料
(半導体シリコンなど)
 537  653 1,066  199%
トクヤマ 特殊品
(多結晶シリコンなど)
  92  161  258  280%
   
   
ーーーー
   
好調な石油化学も大きな問題を抱えている。
   
  原油価格は現在 65ドル近辺だが、ファンダメンタルは 40~45ドルと言われており、現状価格はいろいろな思惑やイラン情勢その他を加味したものである。(1/19には 48.85ドルまで下がっている)
ナフサ価格はその原油価格のレベルを遥かに上回る状況で、中国の需要、台湾・韓国のエチレン増設、米国のガソリン価格上昇、その他を加味したものであるが、これまでの原油価格との相関関係から見て、異常な値上がりである。
   
ナフサ価格がいつまでも高い水準で推移する保証はない。
中国バブルがはじけ、ナフサ価格が下がった場合の反動は大きい。

医薬大手 決算

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医薬大手の3月決算がまとまった。

各社の連結営業損益は以下の通り。(単位:億円、中外製薬のみ12月決算)

各社とも薬価改定による国内事業の採算悪化や研究開発費の増大などで減益要因があるが、その中で武田薬品の大増益が目立つ。

武田薬品については既報の通り。
 2007/5/14 注目会社、3月決算概要ー4

エーザイは北米でアルツハイマー型認知症治療薬が好調(29%の増収)

第一三共、アステラス製薬、中外製薬は研究開発費の増加で減益となった。
大日本住友製薬は
2005/10月合併で、前年上期は大日本製薬単独のため、実質的には微増。

大正製薬は主力のドリンク剤の異常気象などにともなう市場の落ち込みが響き、医療用医薬品も引き続き厳しい事業環境で大幅減益となった。


セルフメディケーション事業:一般用医薬品、特定保健用食品、食品、医療用品、
                衛生用品、不動産の賃貸・管理、ホテル経営
医薬事業:医療用医薬品

 

なお、三菱ウェルファーマと田辺製薬は本年10月に合併するが、合併後の姿は下記の通り。
'08/3予想は上期は田辺、下期は合併会社のため、三菱の上期を加算した。(三菱の上期単独予想は不明)

配当は各社とも増やしているが、エーザイが武田薬品にほぼ並んでいるのは驚きである。
(エーザイは2003/3が32円、2004/3が36円であったが、その後56円、90円と増やし、今回は120円で、次期は130円を予定している。武田は次期は160円を予定。)

 

 

 

Access Industries の会長 Leonard (Len) Blavatnik Lyondell Chemical の株式 8.3%を購入する契約をMerrill Lynch との間で締結した。
21百万株で653百万ドルにのぼり、「戦略的投資」としている。

同時に、Occidental Petroleum Lyondell の株式7百万株をMerrill Lynchに売却し、残りについても(合計でBlavatnikの購入分に相当)処分するスワップ契約を結んだことが判明した。

Len Blavatnikロシア生まれの大富豪で、Access Industries のオーナー。
Access Industries
2005年に57億ドルでBasell を買収している。
 
2006/6/15  Basellの買収」 参照 

Lyondell Chemical については下記を参照。
 
2007/2/26 Lyondell とシノペック鎮海煉油化工、寧波で PO/SM 生産」 
 

同社は1997年に、同社41%出資でMillennium Chemicals Occidental がそれぞれ29.5%を出資するオレフィンおよぴポリオレフィンJVEquistar Chemicals を設立した。
2001年にOccidental が持株をLyondell に売却し、その代金でLyondell 株を購入している。
その後、
2004年12月にLyondell とMilleniumが合併し、Millenium と Equistar が Lyondell の子会社の形をとっている。

今回は、Merrill Lynch を通して、Occidental がLyondell 株をLen Blavatnik に売却することとなる。

あるコンサルタントは、今回の動きは米国の石油化学の資産が、景気変動の波を受ける事業とは言え、価値のあるものということを示しているとしている。

これに対して Lyondell CEO はもし買収の提案があれば検討するとしながらも、景気の悪化したときのことを考えると、買収のために80億ドルから100億ドルも資金を貸す側は大変だろうとコメントしている。

このあと、Len Blavatnik がどう動くのか、今のところ不明だが、「戦略的投資」という以上は、Basell とのなんらかの結びつきを考えていると思われる。エチレンやPO/SMに強いLyondell とポリオレフィン世界一のBasell との組み合わせは強力である。

更に、10日付けのBloomberg は、GE Plastics の売却先がApollo, Sabic  Basell の3社に絞られたと報じている。

サウジアラムコとダウは5月12日、世界最大級の化学品・合成樹脂のコンプレックス(ラスタヌラ総合計画)の建設・運営についての詳細覚書を締結したと発表した。

昨年7月、アラムコが本計画のパートナー候補にダウを選定し、独占的に交渉すると発表し、その後交渉を続けていた。
  2006/7/18 
アラムコの新石油化学計画 

両社は今後、コンプレックスを建設・運営する合弁会社の設立について最終交渉を行う。
合弁会社は両社折半だが、株式の30%を一般公開する。
コンプレックスは 2012-13年のスタートを目指している。

コンプレックスの立地はサウジの東海岸のアルジュベイル南東のラスタヌラ。

同地にあるアラムコ所有のラスタヌラ製油所(55万バレル/日)とジュアイマ・ガス処理工場(いずれも世界最大)から原料ナフサ及びエタンの供給を受ける。

合弁会社は、広範囲の樹脂と化学品を製造する。
エチレン、プロピレン、芳香族の基礎原料のほか、当初にはワールドクラスの
LDPE、HDPE、EO/EG、PO/PG、クロルアルカリ、VCM、ポリウレタン、エポキシレジン、PC、アミン、グリコールエーテルなどを生産する。
最終的には誘導品30プラントで300種の製品を製造し、4,000 人を雇用する。
能力は明らかにされていないが、昨年7月の時点ではエチレン能力は120万トンと噂されていた。

建設費についてはアラムコ社長は 'mammoth' というだけで発表されていないが、業界筋では当初100億ドルと想定された建設費が、昨年7月には150億ドルにアップし、現在では220億ドル(2兆6千億円)に達すると見ている。
(予定では本年初めにもMOUに調印することになっていたが、その後も発表されず、実現性について懸念が生じていた。)

 2007/4/19 
中東の石化計画、建設費アップが重大問題に

 

14日のナフサの東京市場スポット価格終値は中心値が1トン715ドルと、史上初めて700ドルの大台を突破した。
(その後の状況は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/new.htm )

本年1月17日には最近での最安値503ドルを付けたが、4ヶ月で210ドルも上昇した。 
原油価格も上がってはいるが、64ドル台で、昨年8月の72ドルを下回っており、ナフサ価格が突出している。 

中国のナフサ需要増大を背景に、台湾や韓国のエチレン増設、米国のガソリン価格上昇などが理由となっている

武田薬品工業

営業利益、15年連続最高益、配当年間128円(来期は160円)!
当期利益は移転価格税制に基づく更正処分追徴税 571億円を計上し、なお前期比 増益。

                           単位:百万円(配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3 1,212,207  840,230  402,809  345,969  485,354  364,439  313,249  249,361  53.0  53.0  106.0
07/3 1,305,167  869,068  458,500  347,652  585,019  378,377  335,805  219,813  60.0  68.0  128.0
08/3 1,390,000   ー  470,000     585,000      380,000       80.0  80.0  160.0
   
売上高: 前期比 930億円の増収
   うち、為替レートが対米ドル、対ユーロで円安に推移し、為替の影響で前期比 228億円の増収
   
営業利益: 前期比 557億円の増益
   販売費・一般管理費の増 397億円を売上総利益の増で吸収
   
経常損益: 前期比 997億円の増益
   米国での金利アップで受取利息 210億円増
   持分法投資利益増加(前期比 120億円増加の662億円、うちTAPが 610億円)
   
特別損益: 前期比 78億円増益
   武田食品工業の飲料・食品事業をハウス食品とのJVに譲渡(譲渡益 190億円)
   ワイスの株式の一部と三井武田ケミカルの株式を譲渡(譲渡益 171億円)
   遊休不動産売却益 43億円
   (前期も関係会社株式売却益 120億円、厚生年金基金代行返上益 204億円あり)
   
税金: 移転価格税制に基づく更正処分追徴税* 571億円を計上
   
配当: 2007/3月期の年間配当 128円、2008/3月期予想 160円
(信越化学はそれぞれ、70円、80円)

*移転価格税制に基づく更正処分追徴税
  国税庁の更正処分に対し、同社は不服申立て中
   2006/6/29
武田薬品、移転価格税制に基づく更正 

追徴税を支払った時点では、監査法人の判断に基づき、当該追徴税を長期仮払金として処理。
その後、納付者が不服申立て等を行っている場合であっても、一律に全額費用処理する方法に監査法人が意見を変更。
  

ーーー

トクヤマ

                                    
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3  263,373  171,189  24,311  17,070  21,493  16,164  13,964  10,762  3.0  3.0  6.0
07/3  292,764  192,693  34,737  27,366  31,672  25,830  18,460  15,528  3.0  3.0  6.0
08/3  309,000  204,000  35,000  27,500  32,000  27,000  20,000  17,500  3.0  3.0  6.0

 
営業損益対比 (億円)
  06/3 07/3  差異
化学品 77 82 5
特殊品 161 258 97
セメント建材他 35 42 7
全社 -30 -35 -5
営業損益合計 243 347 104

特殊品: (05/3の営業損益は 92億円)
 多結晶シリコンの価格是正効果等が寄与

  多結晶シリコンの需要は引き続き旺盛に推移
  前期後半の輸出価格是正、当期初に国内価格是正、
        当期後半に更なる輸出価格是正を実現

ーーー

三菱瓦斯化学

                                    
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3  439,829  326,523  38,970  22,212  50,410  25,777  32,944  14,738  4.0  6.0  10.0
07/3  482,608  355,235  42,220  19,692  61,723  31,478  40,044  20,280  6.0  8.0  14.0
08/3  510,000  370,000  40,000  19,000  55,000  33,000  40,000  26,500  7.0  7.0  14.0

経理処理の変更
1.有形固定資産の減価償却を連結子会社を含め、備忘価額(1円)まで償却に変更 
   当期分 営業損益、経常損益が4億円減少
   過去分 特別損失に88億円計上

   ◎ 税法改正を先取りし、かつ、残存の5%を一括償却 文末参照

2.天然ガス等の開発費
   従来:特別損失
   改正:販売費一般管理費 「天然ガス系」の営業損益 11億円減少

   
営業損益対比 (億円)
  06/3 07/3  差異
天然ガス系 54 25 -29
芳香族 57 74 17
機能化学品 137 172 36
特殊機能材 135 145 10
その他 4 5 1
全社 4 2 -2
営業損益合計 390 422 32
   
天然ガス系化学品
  メタノールは、需給がタイトな状況の中、世界的にプラントトラブルが相次ぎ、市況が高騰。
海外メタノール生産会社の持分法利益も大幅に増加。
  酵素・補酵素類は、コエンザイムQ10の販売価格の大幅下落で減収減益 (2007/5/1 カネカ決算 参照)
  開発費の経理処理変更で従来ベースより 11億円減少
   
機能化学品
  ポリカーボネート、ポリアセタールは原料価格上昇等により若干採算が悪化
  ポリカーボネートシート・フィルムは増収増益
持分法の三菱エンジニアリングプラスチックスも、タイのPC生産会社からの特別配当も加わり増収増益

平成19年度税制改正において、減価償却制度の改正などが盛り込まれた法人税関係法令の改正が行われた。
償却可能限度額及び残存価額の廃止等
2007年4月1日以後に取得をされた減価償却資産
  償却可能限度額(取得価額の95%相当額)及び残存価額を廃止
耐用年数経過時点に「残存簿価1円」まで償却できるようになった。
   
2007年3月31日以前に取得をされた減価償却資産
  取得価額の95%相当額(従前の償却可能限度額)まで到達している減価償却資産については、
翌事業年度(2007年4月1日以後に開始する事業年度に限る)以後において、5年定額償却で残存簿価1円まで償却
 (算式)償却限度額=〔取得価額の5%相当額-1円〕x 償却月数/
60
 

 


* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

米コンパウンド会社 Teknor Apex が蘇州でコンパウンドの生産を行う。アジアではシンガポールのSingapore Polymer Corporation SPC)を買収し、コンパウンド技術を移転したのに続く。

生産するのは子会社Teknor Apex (Suzhou) Advanced Polymer Compounds Co. で、家電、自動車、建築、エレクトロニクス、医療器具、電線・ケーブル、その他向けに国際規格に合ったコンパウンド(硬質・軟質塩ビやTPE、エンプラコンパウンドなど)を生産する。当初能力は2系列計 14千トンで、2年内に増設する。

ーーー

Teknor Apex 1924年に Apex Tire Company としてスタートした。
1949年に電線・ケーブル産業がゴムから塩ビに原料転換するのを機に塩ビコンパウンド生産を始めた。塩ビホース生産から Lawn and Garden 事業が出来た。 
1959年には着色料の販売を開始している。

現在、次の7部門を持つ。
Vinyl
Thermoplastic Elastomer
Teknor Color Company
Chemicals
Specialty Compounding
Lawn & Garden
Commercial Products

ーーー

200110月、同社はシンガポールのSingapore Polymer Corporation (SPCを買収した。

SPCはNorsk Hydro とシンガポール開発銀行のJVで、以前はPVCを生産(能力28千トン)していたが、その後レジンの生産を中止し、次のようなコンパウンド等の生産を行っていた。(能力70千トン)
 硬質・軟質塩ビコンパウンド、着色料・添加剤マスターバッチ、ポリオレフィンコンパウンド、
 スチレン・ポリオレフィンコンパウンド、TPE、その他

SPCは既存製品とともに、Teknor Apex が開発した製品を合わせ供給し、アジアに拠点を持つ多国籍企業に米国と同じ製品を供給した。
Teknor Apex の7部門のうち、Lawn & Garden Commercial Products を除く 5部門がSPCを通じてアジア進出を行った。

ーーー

2004年12月、Teknor Apex は英国と米国でエンジニアリング樹脂コンパウンドを供給する英国のChem Polymer を買収した。

英国2工場、米国1工場で合計能力30千トンを持ち、自動車、家電、電子電機、その他向けに、ナイロン6 66、アセタールPBTPET 等のコンパウンドを供給する。

この買収により、Teknor Apex は技術ベースの幅と活動地域を広げるという長期戦略で一歩を進めた。
同社はまた、
Chem Polymer の英国工場で2008年に従来製品の生産を開始する。

ーーー

これらにより、Teknor Apex は米国、英国、シンガポール、中国の米・欧・アジア3極で汎用樹脂からエンジニアリング樹脂までのコンパウンドを供給することとなる。

ーーー

* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

石化大手の決算も発表になった。

昨秋のナフサ値下がりで製品値下がりが懸念されたが、その後ナフサ価格は値上がりし、5月9日には過去最高値を更新する勢いで、逆に製品値上げが浸透した。
しかし、中国向け中心のPTAやVCMなどは値下がりの影響で前々期に比して利益は大きく下がっている。
電子材料が各社好調ななかで、液晶テレビの価格下落を受け、住友化学の情報電子化学の大幅減益が目立つ。

東レ

売上高は4年連続、営業利益及び経常利益は3年連続、当期純利益は2年連続で過去最高を更新

                                  単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3 1,427,488  499,339   93,043  37,545   87,650  53,639  47,409  24,152  4.0  4.0   8.0
07/3 1,546,461  548,214  102,423  42,845   97,520  52,130  58,577  17,510  5.0  5.0  10.0
08/3 1,660,000  600,000  108,000  40,000  101,000  46,000  56,000  26,000  5.0  5.0  10.0

 2008/3予想:
   税制改正による減価償却費の増加分を除いた従来ベースは
   連結営業利益 113,000、経常利益 106,000、当期純利益 59,000百万円

営業損益対比 (億円)
  06/3 07/3  差異
繊維 207 192 -15
プラスチック・ケミカル 185 192 7
情報・通信機器 313 335 22
炭素繊維複合材料 118 181 63
住宅・エンジニアリング 49 60 10
その他 65 82 17
全社 -6 -17 -11
営業損益合計 930 1,024 94

炭素繊維複合材料が増益(118億円→181億円)
国内: 航空宇宙・スポーツ・産業各用途とも旺盛な需要に対応し、炭素繊維、
中間基材、成形品それぞれを拡販。
2007/1に稼働開始した愛媛工場増設分の増産・増販効果もあり、増収増益。
   
海外: 航空機用途・産業用途とも旺盛な需要に対応し拡販。
2006/1から増設設備が稼動した米国子会社の増産・増販効果もあり、増収増益。

 

ーーー

三菱ケミカルホールディングス

                                    
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3 2,408,945   1,487  133,619    438  143,575    144   85,569     81    8.00   8.00
07/3 2,622,820  36,800  128,589  34,553  141,296  33,978  100,338  55,898  7.00  7.00   15.00
08/3 2,900,000      148,000     145,000    186,000      8.00  8.00   16.00

  

営業損益対比 (億円)
  06/3 07/3  差異
石油化学 309 282 -27
機能化学 466 350 -116
機能材料 228 243 15
ヘルスケア 340 396 57
サービス 105 106 1
全社 -111 -92 20
営業損益合計 1,336 1,286 -50
   
石化: テレフタル酸、エチレングリコール等の海外市況が弱含みで推移
生産設備トラブルの影響等
 
機能化学: 炭素事業における原料炭在庫の受払差が当期は差損に転じたこと等
   
ヘルスケア: 主力医薬品の販売数量増
販売手数料や退職給付費用等販売管理費の減少
   

ーーー

三井化学

                                    
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3 1,472,435  852,955  58,705  25,552  61,989  34,246  44,125  14,967  4.0  4.0   8.0
07/3 1,688,062  991,787  91,678  31,720  95,478  38,373  52,297  20,996  4.0  6.0  10.0
08/3 1,800,000 1,050,000  90,000  26,000  87,000  31,000  43,000  22,000  6.0  6.0  10.0

国内連結子会社の一部で、建物を除く有形固定資産の減価償却の方法を、当期より定額法から定率法に変更。
三井化学に合わせるもので、従来の方法と比べ、当期の減価償却費は12億円増加。

  2006/3 2007/3 増減  内訳
数量差 価格差 比例費差 固定費差等
機能化学品   108   135    27    52   △ 3   △ 19    △ 3
機能樹脂   101   222   121     9   239   △ 138     11
基礎化学品   218   110 △ 108    44   541   △ 699      6
石油化学   159   454   295    61   662   △ 429      1
その他     6    21    15     2     2    △ 6     17
消去・全社   △ 5  △ 25  △ 20         △ 20
合計   587   917   330   168  1,441  △1,291     12

 機能樹脂:エラストマー、特殊ポリオレフィン、エンプラ。塗料用原料樹脂
       アクリルアマイド、ウレタン原料、ウレタン樹脂
 ◎ TDIの市況が東・東南アジア、特に中国で改善

 基礎化学品:PTA、PET、フェノール、ビスフェノールA、EO/EG
 ◎ 各製品とも原料価格の高騰によるコストアップ分の全てをカバーするには至らず。

ーーー

住友化学

                                    
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3 1,556,606  755,037  120,790  30,795  141,127  62,159  90,665  50,956  4.0  6.0  10.0
07/3 1,790,026  885,557  139,623  45,928  157,981  70,595  93,860  83,711  5.0  7.0  12.0
08/3 1,910,000  930,000  130,000  38,000  130,000  60,000  70,000    48,000  6.0  6.0  12.0

同社の場合、特に説明がないが、日本経済新聞 2006/9/8によると、退職年金積み立て超過が612億円あり、3年間で業績に反映させるので、本年度は約 200億円の増益要因になっている。

   
営業損益対比 (億円)
  06/3 07/3  差異
基礎化学 100 135 35
石油化学 179 236 57
精密化学 98 131 33
情報電子化学 217 35 -182
農業化学 166 233 67
医薬品 383 562 179
その他 58 80 23
全社 7 -15 -22
営業損益合計 1,208 1,396 188
情報電子化学:
   液晶ディスプレイ材料における売価の低下、減価償却費・試作開発費等の固定費の増加で前期比 182億円減益
医薬品:
  大日本住友製薬の業績が通年で寄与。

薄型テレビの競争は激しく、少し前まで1インチ 1万円だったのが、3千円を切った。今後も下がることは必至で、上がることはあり得ない。
液晶ディスプレイ材料もコスト削減でどこまで採算を維持できるかがキイであろう。
1年前の懸念が的中した。
  2006/3/4 
ハイテク材料バブル説  

付記
液晶用光学フィルム最大手の日東電工でも、「液晶テレビ用の需要が拡大したが、製品価格低下の影響を大きく受け、また液晶テレビパネルの急速な大型化の影響により、光学フィルムの歩留まりなど生産効率が悪化」したとしている。
液晶表示関連材料の属する電子材料部門の営業利益は、前期の587億円から314億円に46.4%減となった。

ーーー

東ソー

                                    
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3  648,810  444,024  47,459  26,203  49,731  31,191  27,532  16,288  3.0  3.0  6.0
07/3  781,347  520,068  60,279  33,584  57,998  38,466  28,488  22,353  3.0  5.0  8.0
08/3  840,000  550,000  59,000  33,000  54,000  36,000  28,000  22,000  4.0  4.0  8.0

売上高、営業利益、経常利益はいずれも過去最高。

 
営業損益対比 (億円)
  06/3 07/3  差異
石油化学 128 140 12
基礎原料 56 61 5
機能商品 266 372 105
サービス 24 30 6
営業損益合計 475 603 128
   
機能商品:
  無機・有機ファイン製品、計測・診断商品、水処理装置、電子材料(石英ガラス、スパッタリングターゲット)、機能材料、ウレタン原料等
日本ポリウレタン工業を連結子会社化し、ウレタン原料が新たに加わった。
   
同社の増収・増益要因の説明
(1) VCM、PVC、キュメン等の国際市況商品の輸出価格を国際需給バランスの好転を支えに底上げできたこと
(2) ポリエチレン、苛性ソーダ、PVC等の国内価格についても原燃料の上昇分を転嫁することで是正できたこと
(3) エチレンアミン、ジルコニア、石英ガラス、体外診断用医薬品など育成・強化に注力した機能商品の多くが順調に伸びたこと
(4) 日本ポリウレタン工業を連結子会社化したことによって全体の収益力を強化できたこと等

(1)のVCM、PVC価格は、大幅値下がりからの底上げで、それらの属する基礎原料部門の営業損益は前々期の204億円からは非常に下がった状況にある。 

3月決算の発表が続いている。製品により業績に差が出てきている。
また、退職給付会計の数理計算差異の処理で損益が大幅に変動した会社がある。   

旭化成

                              単位:百万円(配当:円)      
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3 1,498,620  42,649  108,726  27,410  104,166  27,013  59,668  29,010  5.0  5.0  10.0
07/3 1,623,791  42,758  127,801  28,216  126,507  29,069  68,575  28,867  5.0  7.0  12.0
08/3 1,682,000  42,500  126,000  26,500  123,500  27,500  70,000  31,000  6.0  7.0  13.0

2006/3期に発生した数理計算上の差異(益236円)は、従来法では2007/3期に計上するが、10 年定額法に変更。
これにより2007/3期は従来法に比べ、
損益は196億円減少

ケミカルズ営業損益 前年比 +115億円(数量差 +46、売価差 +522、為替差 +52、コスト差等 -505)

 汎用事業(217→315   +98)
   モノマー系は、需給逼迫で価格が急上昇したアジピン酸を始め、海外需要堅調なANM、SM などを中心に増収増益。 
ポリマー系は、ナイロン66樹脂及び繊維「レオナ」などが堅調に推移し、増収増益。
 高付加価値系事業(188→205   +17)
  リチウムイオン2次電池用微多孔膜、イオン交換膜の販売増、中国向けイオン交換膜法食塩電解プラントの輸出で増収増益。

ーーー

帝人

                                    
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3  938,082  22,457  76,757   9,223  68,162   9,257  24,852  2,025  3.5  4.0   7.5
07/3 1,009,586  25,717  75,061  12,457  60,493  13,095  34,124  6,487  4.5  5.5  10.0
08/3 1,030,000    80,000    69,000    39,000  ー   4.5  5.5  10.0

 *単独決算は関係会社配当金、経営管理料、不動産賃貸収入の収益が中心。

合成繊維
 ポリエステル繊維は増収、赤字横這い。
 高機能繊維(アラミド繊維、炭素繊維)は需給逼迫で増収・増益。

化成品
 フィルム(PET、PEN)は増収・増益
 樹脂(PC)は増収・減益
   中国ポリマー工場第2系列完成、PCシート大幅拡大・増設完了
    (中国ポリマー工場第3系列建設・コンパウンド工場増強決定)
   価格軟化(年央底打ち反転)、原料BPA価格上昇継続 

ーーー

日本触媒

                                    
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3  232,441  170,510  23,228  18,915  26,148  23,008  16,257  14,502  7.5  8.5  16.0
07/3  266,513  192,177  19,429  16,008  22,754  20,378  13,988  12,378  8.0  8.0  16.0
08/3  295,000  216,000  22,000  17,800  24,000  21,600  14,500  12,800  8.0  8.0  16.0

 

   注 2002/3は「化学品」と「その他」の2区分

基礎化学品の減益幅が大きく、減益となった。

 基礎化学品
    アクリル酸、同エステル、酸化エチレン、エタノールアミン、高級アルコールは増収。
エチレングリコールは、市況堅調だが、在庫がタイトで販売数量が減少し、減収。
基礎化学品全体では増収となったが、アクリル酸等の市況弱含み、減価償却費等の増加で、大きく減益。
   
 機能性化学品
  高吸水性樹脂は世界的に需要が拡大するなかで、販売数量増加、販売価格是正で増収。
無水マレイン酸等も増収。
販売数量の増加や一部製品の販売価格是正で、前期比 17.0%の増益。

 同社の高吸水性樹脂能力推移
Nisshokusap

ーーー

三菱レイヨン

                                    
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3 348,967 227,916  38,766  22,738  38,858  27,157  24,425  18,006  4.0  5.0  9.0
07/3 417,027 238,042  59,665  39,246  58,471  44,343  31,273  25,943  5.0  5.0 10.0
08/3 435,000 255,000  48,000  23,500  47,000  27,500  23,500  15,500  5.0  5.0 10.0

2006/3より、退職給付会計における数理計算上の差異の処理方法を、
 これまでの定額法償却での営業外費用処理から

 発生の翌年度に営業費用として一括償却する方法に変更:
  
営業損益、経常損益への影響 2007/3 142億円の益 2006/3  9億円の損
  
当期損益への影響  2007/3 約85億円の益

数理計算上の差異の影響除外の場合

化成品:(+280億円→+322億円 以下、数理計算上の差異の影響除外の場合
  ダイヤニトリックスの連結子会社化、三菱麗陽高分子材料のフル寄与が増益に貢献
  MMAモノマーも販売好調

・ダイヤニトリックス:
 アクリロニトリル、アクリルアミド、ポリアクリルアミド及び関連事業での三菱化学とのJV
 
当初50/50、2006/4/1に三菱レイヨン65%で連結子会社化
・三菱麗陽高分子材料:
 
江蘇省南通市のアクリル樹脂板、コーティングレジンの製造販売会社
 三菱レイヨン 100%
  樹脂板:20,000トン/年、塗料用樹脂 3,500トン/年
  2005/7 稼動

繊維:(+16億円→-11億円
  原燃料価格高騰に対して価格転嫁不十分で赤字に

炭素繊維・複合材料、機能膜事業その他:(+99億円→+143億円)
  炭素繊維・複合材料が産業・スポーツ用途が好調、米国Grafil社設備増強 

ーーー

住友ベークライト

                                    
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3  241,085  107,185  27,249  16,661  28,570  20,359  15,212  8,098  5.0  10.0  15.0
07/3  255,374  103,695  17,765   6,836  19,695  11,373  11,920  6,628  7.5  7.5  15.0
08/3  265,000  126,000  21,200   7,400  23,000   9,200  13,100  8,600  7.5  7.5  15.0

退職給付会計の数理計算差異による利益が、06/3の79億円から07/3は 6億円と 73億円減少

数理計算上の差異の影響除外の場合

回路製品部門が大幅減益(5億円 → -20億円
 フレキシブル・プリント回路は値下げ圧力が強く、減収。
 エポキシ樹脂銅張積層板、フェノール樹脂銅張積層板は増収。
 全体として売上高は大幅に増加したが、原料価格の高騰と製品価格の値下りから大幅減益となった。

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NPCの社長Gholam-Hossein Nejabat は、イランが第5次社会経済開発 5 ヵ年計画(2010-2015)で、27の石油化学計画に123億ドルを投資すると述べた。51日付けのイラン石油省の公式サイト Shana (http://www.shana.ir ) が伝えた。

同氏によると、2005-2010年の第4次開発計画では148億ドル、24の石化計画が含まれており、このうち、13計画が本年度にスタートする。
 (既報では本年度
11計画スタート 2007/4/12 「イランで本年度 11計画が生産開始」 )

また、現在のイランの石化製品生産高は 250億ドルで中東の石化製品生産の12%を占めるが、第5次計画により現在の生産量 55百万トンが 158百万トンとなり、2015年末までに中東での生産高シェアは 34%になるとしている。
世界では現在のシェアは 0.9%に過ぎないが、2015年までに 6.3%に上昇する。

石油化学製品はイランの石油以外の輸出のうち最大で、昨年度(2006/3/21-2007/3/20)では数量で 42.2%、金額ベースで 38.6%を占めている。

主な輸出化学製品はプロパン、ブタン、PE、メタノール、ベンゼン、タールで、これらが輸出高の 81%を占めている。

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2007/4/13 「Solvay、バイオディーゼル副生グリセリンを原料とするエピクロの生産」 でSolvayとDowがバイオディーゼル生産時に副生するグリセリンを原料にエピクロルヒドリンの生産を行うことを報告した。

本年4月30日、Huntsman はバイオディーゼル生産時に副生するグリセリンを原料にプロピレングリコール (PG) を生産する計画を進めると発表した。

同社の先端技術センターで開発した技術を元に、先ずテキサス州のプロセス開発施設で中規模生産を行い、その後大規模生産を行う。同社では2008年までに商業生産開始を期待している。

ーーー

昨年11月には穀物メジャーのCargill がバイオディーゼルの副産品で豊富で低コストのグリセリンを使って、プロピレングリコールを初めとする一連のバイオ製品をつくるプロセスを商業化することを進めていると発表した。

設立中の新会社がいろいろな地域でつくられる再生可能原料から競争力あるPGを製造し供給する。

同社は Iowa Falls, Iowa 37 百万ガロン/年のバイオディーゼル工場と年13.6千トンのグリセリン精製工場を持ち、既に副生グリセリンを販売している。同社とミズーリ州大豆協会は昨年、 Kansas City の同社工場に隣接して、40百万ガロン/年のバイオディーゼル工場と年13.6千トンのグリセリン精製工場建設計画を発表している。
同社では同社のサプライチェーンや他のルートを通じてワールドスケールのPG生産に必要なグリセリンを入手できるとしている。

参考  グリセリン  C3H5(OH)3
   エピクロルヒドリン  C3H5CLO
   プロピレングリコール(PG)  C3H8O2

ーーー

Rohm and Haas 4月30日、植物バイオテクノロジーのCeres, Inc.と組んで、セルロース系エタノール用の植物からMMAモノマーを生産する研究を開始すると発表した。3年計画で、米国農務省から150万ドルの研究補助金を受ける。

ある種の植物はMMAモノマー類似の物質を自然に製造しているが、抽出できる量を蓄積できない。両社は、植物がこれら物質を製造する仕組みを変え、乾燥した茎、枝、葉からこれを抽出することを研究する。これを抽出した後、茎、枝、葉をバイオリファイナリーに投入し、セルロース系エタノールの製造する。

とうもろこしベースのエタノールが実(grain) からのみ作られるのと異なり、セルロース系エタノールは植物全体から作られる。

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IPCC第3部会報告書

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地球温暖化対策を話し合う国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPOC)第3作業部会は4日、バンコクで開かれていた会議で報告書をまとめた。
 
http://www.ipcc.ch/SPM040507.pdf

気候変動に関する政府間パネル(lPCC) 科学、影響、対策の3つの作業部会に分かれ、最新の分析をまとめる国連機関。130カ国以上から約4000人の専門家が参画し、発表済みの成果を評価して確度の高い情報を提供する。温暖化をめぐる各国の政策に影響を及ぼしている。最初の報告書は90年で、今回が4回目。

第1作業部会(科学)は本年2月に、今世紀末の平均気温が1.1~6.4度上昇すると予測。
 
 (ブログ http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2007-02-1.htm#ipcc 
第2作業部会(影響)は本年4月に、気温上昇が2~3度を超えれば、世界で経済的損失が生じると指摘した。

  (ブログ http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2007-04-1.htm#ipcc-2

今回の報告は対策編。

報告省では先ず、温室効果ガスがこのままでは増え続けるとし、温室効果ガスの削減は経済的にみて可能であると結論付けている。

IPCCは今回、温室効果ガスの濃度をどのレペルで安定させるかによつて、さまざまなシナリオを描いた。
先月の第2部会報告では、温度上昇が2~3度を超えれば温暖化の悪影響が顕顕著になるとの「許容限度」が示されている。

毎日新聞がIPCCの報告書などを基にまとめた「C02削減量とコスト」は以下の通り。

温室効果ガス濃度

安定レベル
(ppm)
CO2排出

ピーク年

50年の世界排出量
  (00年比、%)
温度上昇

90年比

CO2 1トン削減費用

30年時点

対GDPコスト(%)

30年まで

対GDPコスト(%)

50年まで

445~490 2000~15  -85 ~ -50       1.4~1.8      (3未満)    (5.5未満)
490~535 2000~20  -60 ~ -30 1.8~2.2      (3未満)    (5.5未満)
535~590 2000~30  -35 ~ + 5 2.2~2.6 (550ppm)
20~80ドル
 0.6(0.2~2.5)  1.3(~4)
590~710 2000~60  +10 ~ +60 2.6~3.4 (650ppm) 
0~30ドル
 0.2(0.6~1.2)  0.5(-1~2)
710~855 2000~80  +25 ~ +85 3.4~4.3 (750ppm) 
0~20ドル
   
855~1130 2000~90  +90 ~ +140 4.3~5.5      
 温室効果ガスの安定レベルは濃度でC02換算
 対GDPコストは中央値、カッコ内は範囲。気候変化被害のコストは織リ込んでいない。
 1トン削減の費用は、それぞれ550ppm、650ppm、750ppmの場合。空欄は明確な試算がない。

現在の世界の温室効果ガス濃度はCO2換算で455ppm、年間の排出量は約430億トン。
試算では、1トン削減するための費用が20米ドルなら30年には90~170億トン、100米ドルなら160億~310億トンを削減できると予測。エネルギー供給や運輸、農業、廃棄物など7部門に分け効果的な対策を提案している。

コメントの中には次のものがある。
2030年に温室効果ガス(CO2換算)を445~710ppmで安定させるための費用は、世界のGDPの3%低下から若干増の間(between a 3% decrease of global GDP and a small increase)と推定。但し、地域により大きな差がある。
どの部門でもライフスタイルや行動パターンの変更が役に立つ。
温室効果ガス削減による公害減少の健康への副次効果が大きく、削減コストのかなりの部分と相殺される可能性がある。
   
2030年までの温室効果ガス削減対策
部門 現在商業的に可能な削減技術 2030年までに商業化が可能な削減技術
Energy Supply 天然ガスヘの燃料転換・原子力発電、風力や太陽光やバイオマスなど再生可能エネルギー
Improved supply and distribution efficiency; fuel switching from coal to gas; nuclear power; renewable heat and power (hydropower, solar, wind, geothermal and bioenergy); combined heat and power; early applications of CCS (e.g. storage of removed CO2 from natural gas)
石炭を燃料とし、発電所でC02を回収・地中貯留する技術(CCS)、先進的な原子力技術・再生可能エネルギー
Carbon Capture and Storage (CCS) for gas, biomass and coal-fired electricity generating facilities; advanced nuclear power; advanced renewable energy, including tidal and waves energy, concentrating solar, and solar PV.
Transport 燃費向上、ハイブリッド車、バイオ燃料、クリーンなディーゼルエンジン、自転車
More fuel efficient vehicles; hybrid vehicles; cleaner diesel vehicles; biofuels; modal shifts from road transport to rail and public transport systems; non-motorised transport (cycling, walking); land-use and transport planning
水素燃料電池車、次世代バイオ燃料、省エネ航空機
Second generation biofuels; higher efficiency aircraft; advanced electric and hybrid vehicles with more powerful and reliable batteries
Buildings 省エネ照明、断熱材や換気装置の改善、家電などからのフロン回収と再利用
Efficient lighting and daylighting; more efficient electrical appliances and heating and cooling devices; improved cook stoves, improved insulation ; passive and active solar design for heating and cooling; alternative refrigeration fluids, recovery and recycle of fluorinated gases

統合型の太陽光発電、電力制御、高性能の計測器Integrated design of commercial buildings including technologies, such as intelligent meters that provide feedback and control; solar PV integrated in buildings

Industry 省エネ電気器具、廃熟・未利用電力の回収、原材料の再利用と代替品活用
More efficient end-use electrical equipment; heat and power recovery; material recycling and substitution; control of non-CO2 gas emissions; and a wide array of process-specific technologies
先進的な省エネ、セメント工業や鉄鋼におけるCCS利用
Advanced energy efficiency; CCS for cement, ammonia, and iron manufacture; inert electrodes for aluminium manufacture
Agriculture 耕作地や放牧地の管理方法改善、土壌修復、畜産方法や米作技術の改善によるメタン排出量の削減。省エネ
Improved crop and grazing land management to increase soil carbon storage; restoration of cultivated peaty soils and degraded lands; improved rice cultivation techniques and livestock and manure management to reduce CH4 emissions; improved nitrogen fertilizer application techniques to reduce N2O emissions; dedicated energy crops to replace fossil fuel use; improved energy efficiency
収量改善
Improvements of crops yields
Forestry/forests 新規植林、再植林。森林管理方法の改善。森林破壌の抑制。伐採後の木材製品の管理
Afforestation; reforestation; forest management; reduced deforestation; harvested wood product management; use of forestry products for bioenergy to replace fossil fuel use
バイオマス生産量を増やすための品種改良
Tree species improvement to increase biomass productivity and carbon sequestration. Improved remote sensing technologies for analysis of vegetation/ soil carbon sequestration potential and mapping land use change
Waste 埋め立て地でメタンガス回収。焼却時のエネルギー回収。廃棄物再利用、最小化
Landfill methane recovery; waste incineration with energy recovery; composting of organic waste; controlled waste water treatment; recycling and waste minimization
メタンを最適に酸化させるバイオ技術
Biocovers and biofilters to optimize CH4 oxidation

100米ドル/トン(CO2換算)以下で削減できる温暖化ガス(CO2換算)は以下の通りと想定。

Energy Supply  24~47億トン/年
Transport  16~25
Buildings  53~67
Industry  25~55
Agriculture  23~64
Forestry/forests  13~42
Waste   4~10

部門別の削減政策と問題点は以下の通り。

部門 削減政策 問題点
Energy supply Reduction of fossil fuel subsidies Resistance by vested interests may make them difficult to implement
Taxes or carbon charges on fossil fuels
Feed-in tariffs for renewable energy technologies May be appropriate to create markets for low emissions technologies
Renewable energy obligations
Producer subsidies
Transport Mandatory fuel economy, biofuel blending and CO2 standards for road transport Partial coverage of vehicle fleet may limit effectiveness
Taxes on vehicle purchase, registration, use and motor fuels, road and parking pricing Effectiveness may drop with higher incomes
Influence mobility needs through land use regulations, and infrastructure planning Particularly appropriate for countries that are building up their transportation systems
Investment in attractive public transport facilities and non-motorised forms of transport
Buildings Appliance standards and labelling Periodic revision of standards needed
Building codes and certification Attractive for new buildings. Enforcement can be difficult
Demand-side management programmes Need for regulations so that utilities may profit
Public sector leadership programmes, including procurement Government purchasing can expand demand for energy-efficient products
Incentives for energy service companies (ESCOs) Success factor: Access to third party financing
Industry Provision of benchmark information May be appropriate to stimulate technology uptake.
Stability of national policy important in view of international competitiveness
Performance standards
Subsidies, tax credits
Tradable permits Predictable allocation mechanisms and stable price signals important for investments
Voluntary agreements Success factors include: clear targets, a baseline scenario, third party involvement in design and review and formal provisions of monitoring, close cooperation between government and industry.
Agriculture Financial incentives and regulations for improved land management, maintaining soil carbon content, efficient use of fertilizers and irrigation May encourage synergy with sustainable development and with reducing vulnerability to climate change, thereby overcoming barriers to implementation
Forestry/Forests Financial incentives (national and international) to increase forest area, to reduce deforestation, and to maintain and manage forests Constraints include lack of investment capital and land tenure issues. Can help poverty alleviation.
Land use regulation and enforcement
Waste management Financial incentives for improved waste and wastewater management May stimulate technology diffusion
Renewable energy incentives or obligations Local availability of low-cost fuel
Waste management regulations Most effectively applied at national level with enforcement strategies

付記 安井先生の「市民のための環境学ガイド」に解説が出た。

  2007/5/19「IPCC第4次報告書 第3WG」
    
http://www.yasuienv.net/IPCC4thWG3.htm 

ーー

* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

松永和紀著「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」を読んだ。

安井至先生が「市民のための環境学ガイド」 2007/4/29の「メディア報道に関する2冊の本」で、2冊の本を「是非買ってお読みいただきたい」と推奨されている。
  
http://www.yasuienv.net/TwoMediaBooks.htm

1冊が松永和紀著、「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」、光文社新書。
(もう一冊は、小島正美著、「アルツハイマー病の誤解」、リヨン社)

関西テレビの「発掘!あるある大事典Ⅱ」が問題になったが、問題が発生するたびにテレビを批判する新聞や雑誌にも、科学的な誤りは山ほどあり、「○○は効果がある」という健康情報だけではなく、「△△は危ない」とか「XXは環境に悪い」などと警鐘をならす情報も誤りだらけ。全国紙にも時々驚くような記述が見られる。
共通しているのは、わかりやすい話であること。良いか悪いか一刀両断、白か黒かの二分法。そして、どの報道にも医師や科学者などが登場し、数字を駆使し、科学の衣をまとっている。
科学はそれほど単純ではなく、白か黒かではなく、グレーゾーンが大部分。
しかし、マスメデイアは、このグレーゾーンをうまく伝えることができず、多種多様な情報の中から自分たちに都合の良いもの、白か黒か簡単に決めつけられるものだけを選び出し、報道する。
メディアによる情報の取捨選択のゆがみは、米国では「
メディア・バイアス」と呼ばれている。(以上、前書きから)

Media bias is a term used to describe a real or perceived bias of journalists and news producers within the mass media, in the selection of which events will be reported and how they are covered. (Wikipedia)

これらの健康情報は、商売、売名、特定の運動などの目的で流されることが多いが、大新聞までがよく調べずに報道し、間違いが分かっても訂正記事を出さない。「XX氏がこう言った」ということ自体は事実であり、そういう事実を伝えただけとの言い訳けが通る。
このため、間違った情報が事実として認識されてしまう。

本書では食品を中心に多岐にわたる例について述べている。内容については安井先生のページで詳しく紹介されている。
無農薬野菜は安全でない、セブンイレブンの保存料不使用は問題、など、えー!と驚くことも多い。一読をお奨めする。

筆者の松永和紀(まつなが わき)さんは、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)後、毎日新聞社勤務10年を経て2000年1月よりフリーランスの科学ライターとして活動している。

日経バイオテク・オンラインに「松永和紀のアグリ話」を連載している。
http://biotech.nikkeibp.co.jp/fsn/kiji_mtng_itiran.jsp
「食の安全と機能に関する情報は数々あれど、トンデモ情報がいっぱい。マスメディアも例外ではありません。
その奇抜な論理展開、飛躍のすばらしさを楽しみつつ、科学的に妥当な情報を提供して行きます。」としている。

 (これまで無料購読できたが、最近は会員制になっている。)

筆者は氾濫する科学情報を識別するための10ケ条として、以下をあげている。
 1.懐疑主義を貫き、多様な情報を収集して自分自身で判断する
 2.「○○を食べれぱ…」というような単純な情報は排除する
 3.「危険」「効く」など極端な情報は、まず警戒する
 4.その情報がだれを利するか、考える
 5.体験談、感情的な訴えには冷静に対処する
 6.発表された「場」に注目する。学術論文ならぱ、信頼性は比較的高い
 7.問題にされている「量」に注目する
 8.問題にされている事象が発生する条件、とくに人に当てはまるのかを考える
 9.他のものと比較する目を持つ
10.新しい情報に応じて柔軟に考えを変えてゆく

筆者はまた、専門家がそれら情報に問題があるのを知りながら、学問の場以外のことには関係したくないとして避けているのも問題としている。外国では国がそれら情報について解説をしている国もある。

その中で、筆者は科学者がブログで情報発信する例を挙げている。

国立医薬品食品衛生研究所安全情報部の主任研究官、畝山智香子さん
  「食品安全情報ブログ」 
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/
 世界で毎日発信されている食品安全に関する情報が、ウイークデーは毎日10本以上も掲載されている。

安井至先生の「市民のための環境学ガイド」

中西準子先生 http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/

その他、天羽(あもう)優子・山形大学助教授、渡辺正・東京大学教授、長村洋一・千葉科学大学教授、高橋久仁子・群馬大学教授。

なお、松永和紀さんのホームページ WAKILAB「メディア・バイアス  あやしい健康情報とニセ科学」の参考文献が載っている。
  
http://www.wakilab.org/page1.html

ーーー

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SABIC 2006年決算

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SABICの2006年Annual Report が発表された。
増収増益だが、増益幅は少ない。

                単位:百万サウジ・リヤル 
  2002 2003 2004 2005 2006
売上高  34,026  46,782  68,539  78,254  86,328
営業損益   5,294  10,600  23,505  29,170  30,886
税前損益   4,886  10,448  22,001  29,010  31,871
少数株主持分  -1,732  -3,451  -7,337  -9,100 .-10,528
Zakat   -305   -300   -450   -750   -1,050
純損益   2,849   6,696  14,214  19,160  20,294
注 1サウジ・リヤル=約30円(直近は31.7円)  10,000百万SR=3,000億円
   サウジの税制とZakat
については 2006/7/12 「SABIC、国内で初のイスラム債券発行」 参照 
 

 

部門別売上高

SABICSBU は石油化学の5つのSBUMetalsの合計 6SBUから成る。
従来の
Polyolefins SBU PVC/Polyester SBU が昨年11月に統合されてPolymers SBU となり、新たにSpecialty Products SBU が新設された。

新設のSpecialty Products SBU SABIC Research and Technology と密接に連携し、需要家のニーズを汲み取って高付加価値の特殊誘導品の開発・製造・販売を行い、今後世界市場に乗り出す。

Basic Chemicalshydrocarbon feedstocks
Intermediates Fiber Intermediates, Industrial Gases, Chemical Intermediates
                and Linear Alpha Olefins
Polymers
:(Polyolefins PVC/Polyester を統合)
Fertilizers
3部門ーUrea, Ammonia/Phosphates and Operations and Planning
       3子会社ーSaudi Arabian Fertilizer Company(SAFCO),
                          Jubail Fertilizer Company (AL-BAYRONI)
                         
National Chemical Fertilizer Company (IBN AL-BAYTAR)
Specialty Products
:(新設)specialist automotive, catalyst, oilfield and rubber chemicals,
                specialty polymers and polymer additives

MetalsThe Saudi Iron and Steel Company (HADEED)
     関係会社 Aluminum Bahrain (ALBA)
           Gulf Aluminum Rolling Mill Company (GARMCO) (共にBahrain
           SABAYEK Ferroalloy Smelter (Al-Jubail) 

参考 SABIC製造子会社一覧表 

ーーー

2006年の各SBUの生産数量は以下の通り。(単位:千トン)

Sabicseisan_3

 

                                                                 (単位:千トン)
 
Basic Chemicals
Ethylene  7,185
Methanol    4,129
MTBE  3,308
Propylene   870
Styrene  1,074
Benzene   374
Paraxylene   252
Pyrolysis gasoline            117
Crude industrial ethanol    70
Butadiene   121
Butene-1   151
SABIC Europe----------------  3,330
Intermediates
Mono ethylene glycol (MEG)----  3,505
Di-ethylene glycol (DEG)   332
Tri-ethylene glycol (TEG)    18
Purified terephthalic acid (PTA)   298
Ethylene di-chloride (EDC)   827
Caustic soda (NaOH)   632
2-ethylene hexanol (2EH)   166
Di-octyle phthalate (DOP)    29
Vinyl chloride monomer (VCM)     434
Gases  4,100
Polymers
Polyethylenes SABICpartners  4,095
Europe  1,264
Polypropylenes SABICpartners   774
Europe  1,162
PVC     415
Polystyrene     174
PET resin      79
Polyester fibers      8
Textile chips      51
Melamine      21
Fertilizers
Ammonia                2,451
Urea  3,105
Phosphate, compound and liquid-   256
Sulfuric acid    97
Urea formaldehyde    13
Metals
Long products---------------  2,702
Flat products  1,154

部門別 Gross Profits

  1サウジ・リヤル=約30円(直近は31.7円)  10,000百万SR=3,000億円

 

部門別純利益

 

投資の状況は次の通り。

Saudi European Petrochemical Company (IBN ZAHR)
  Al-Jubail PP 第3期計画(500千トン、10億ドル)の建設は順調で、2008年スタート予定
Yanbu National Petrochemical Company (YANSAB)
  新コンプレックス建設は順調で、
2008年スタート予定
   
LLDPE 500 千トン)、HDPE 400千トン)、PP400千トン)
Eastern Petrochemical Company (SHARQ)
  第三期拡張計画用の24.3億ドルのローン契約を締結
   
2008年スタート
   HDPE 400千トン)、 LLDPE 400千トン)
The Saudi Petrochemical Company (SADAF)
  SM増強計画(60%以上の能力増で、2010年までに世界最大の単一工場に)
The Saudi Methanol company (AR-RAZI)
  第5次増設、2008年に170万トン(合計490万トンに)
SABIC Europe
  Huntsman Petrochemicals (UK) Ltd 買収(685百万ドル)
  
LDPE新設(英国) 400千トン、2007年末スタート
・世界各地のオフィス拡張
  
Iran and Egyptnew offices
  Turkish officeto national company status
  China:近く上海オフィスを事業会社 SABIC China に変更、北京にオフィス
  
Jakarta and Melbournenew offices

 

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3月決算の発表が始まった。 以下の表の単位は百万円(配当は円)

 

JSR

                                   
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3 338,159 232,315  53,357  43,080  52,980  44,621  30,554  27,463 10.0 10.0 20.0
07/3 365,831 249,812  55,242  42,889  54,719  45,596  33,654  29,216 12.0 12.0 24.0
08/3 397,000 272,000  56,000  45,000  56,000  48,000  34,500  31,000 14.0 14.0 28.0

情報電子材料を中心とした多角化事業が好調。
 半導体製造用材料(フォトレジスト、CMP材料、実装材料、反射防止膜等)
 フラットパネル・ディスプレイ用材料(カラー液晶ディスプレイ用材料、プラズマ・ディスプレイ用材料等)
 光学材料(光ファイバー用コーティング材料、機能性コーティング材料、反射防止膜材料等、
       耐熱透明樹脂及び機能性フィルム等)
 機能化学材料(高機能コーティング材料、多機能高性能分散剤、工業用粒子、メディカル関連粒子等)
 その他

参考 子会社テクノポリマー(ABS樹脂) 決算
   
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益
06/3  49,358   3,163   3,124   1,467
07/3  50,956   2,832   2,911   1,765

ーーー

クラレ

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3 375,072 193,596  38,277  21,889  32,781  20,021  21,185  13,027 6.5 8.5 15.0
07/3 385,284 196,881  40,220  26,115  36,546  27,112  22,412  18,198 8.5 10.0 18.5
08/3 415,000 205,000  45,000  29,000  41,000  29,500  24,000  18,000 10.0 10.0 20.0

化成品・樹脂事業 増収、増益
 
液晶ディスプレイ向け光学用ポバールフィルムが好調  

ーーー

積水化学

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3 886,067 371,523  40,287  19,440  43,801  25,172  20,229   5,891 5.0 6.0 11.0
07/3 926,163 380,242  45,157  22,185  46,910  27,562  25,538  11,630 6.0 8.0 14.0
08/3 980,000   ー  57,000   ー  59,000   ー  26,000   ー 7.0 8.0 15.0

 

高機能プラスチックスカンパニー 増収増益
 
重点分野(車両・IT・メディカル)へ経営資源を集中
  メディカルでは10月に第一製薬100%子会社の第一化学薬品の全株式を取得、検査薬を中心に事業拡大
  車両分野では遮音機能を持った高機能中間膜や樹脂成型品が売上を伸ばす。
  IT分野では液晶用微粒子製品や高機能樹脂が順調に売上を伸ばした。

ーーー

カネカ

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3 464,310 293,846  47,606  36,996  47,718  39,717  28,099  24,482 8.0 8.0 16.0
07/3 473,170 296,411  36,666  27,363  36,939  31,675  18,363  13,306 8.0 8.0 16.0
08/3 490,000 306,000  40,000  30,000  39,000  32,000  22,500  20,000 8.0 8.0 16.0

ライフサイエンス事業 減収、減益
 
機能性食品素材(コエンザイムQ)は、競争激化により売上高、採算ともに大幅に悪化し、減収、減益

ーーー

信越化学 

  売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当
連結 単独 連結  単独  連結 単独  連結  単独  中間 期末 年計
06/3 1,127,915  582,426  185,320  73,685  185,040  72,115  115,045  45,065 17.5 17.5 35.0
07/3 1,304,695  697,248  241,028  81,200  247,018  80,075  154,010  51,085 25.0 45.0 70.0
08/3予 1,370,000  730,000  267,000  83,000  275,000  83,000  172,000  53,000 40.0 40.0 80.0

各分野とも好調。

塩化ビニル:国内事業は、国内需要の減少と輸出価格の低迷で営業利益は減少したが、
   シンテックは昨年10月以降は住宅投資減退の影響があったが、全世界の顧客網を生かし、伸長。
   オランダのシンエツPVC社も、東欧を含めた欧州全体の需要に支えられ、堅調に推移。

Shintech決算(円換算)
  売上高 経常利益 当期純利益
2003/12月期  1,671億円   238億円   155億円
2004/12月期  1,971億円   271億円   179億円
2005/12月期  2,330億円   373億円   248億円
2006/12月期  2,512億円   437億円   294億円

シリコーン:国内販売の増加、原料高騰分の価格転嫁で増益。
セルロース誘導体:需要堅調で、能力増強が寄与。
       (爆発事故の影響は当期にはほとんどなし)

電子材料:半導体シリコンは需要拡大、能力拡大で売上、営業利益とも大幅に増加。
          参考 2006/9/27 「信越化学、300mmウエハー生産能力の大幅増強を決定
        国内外の半導体シリコン製造設備の
減価償却の耐用年数を、5年から主として3年に短縮、
           
営業損益への影響額 22,405百万円
      電子産業用希土類磁石、フォトレジスト製品も好調 
     

信越半導体グループ決算(円換算)
  売上高 経常利益 当期純利益
2004/3月期  2,067億円   236億円   147億円
2005/3月期  2,504億円   361億円   231億円
2006/3月期  3,012億円   400億円   252億円
2007/3月期  3,999億円   810億円   500億円

Shinetsuhandotaikeijo

同社は年間配当を前年の35円から70円に倍増した。(2005年3月期は20円)
2008年3月期には更に年間10円増やし、80円にする。

ムーディーズ・インベスターズ・サービスは4月12日、信越化学工業の発行体格付けをA1からAa3に引き上げたと発表した。
Aa3は日本の化学メーカーで最も高く、独BASFと並ぶ水準。
ムーディーズは好調な業績と強固な財務構造で信用力が強化されている点を反映したとしている。

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トップ10に信越化学が4件入っています。

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