2014年1月アーカイブ


中国商務部は1月20日、米国から輸入の太陽光パネル用多結晶シリコンの反ダンピング及び反補助金調査でクロの最終決定を行った。
反ダンピング調査については、韓国からの輸入品も同様となった。

中国が輸入している多結晶シリコンの約4割が米国製で、2割は韓国製とされている。

この結果、下記のダンピング課税が行われる。(  )は仮決定時点での保証金

  ダンピング 反補助金
米国企業
   Hemlock Semiconductor 53.3% (53.3%) 2.1% (6.5%)
REC Solar Grade Silicon 57.0% (57.0%) 0% (0%)
REC Advanced Silicon Materials 57.0% (57.0%) 0% (0%)
MEMC Pasadena 53.6% (53.7%) 0% (0%)
AE Polysilicon 57.0% (57.0%) 2.1% (6.5%)
All Others 57.0% (57.0%) 2.1% (6.5%)
韓国企業
  Woongjin Polysilicon 12.3% (12.3%)  
OCI   2.4% (2.4%)
Hankook Silicon  2.8% (2.8%)
KAM Corp.  48.7% (48.7%)
Innovation Silicon    48.7% (48.7%)
All Others  12.3% (12.3%)

他方、商務部は1月24日、EUから輸入の太陽光パネル用多結晶シリコンの反ダンピング及び反補助金調査でクロの仮決定を行った。

発表では、ダンピングと補助金の損害を認め、被害で出ているとみなした。
ダンピング率も多くの企業が 68.9%としている。

しかし商務部は、「特殊な市場状況を勘案し」、ダンピング税・反補助金税(仮決定のため「保証金」)を課さないとした。

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これを受け(?)、米商務省は2014年1月23日、中国製の結晶シリコン太陽電池製品などに対して、再度、反ダンピング・反補助金調査を実施する決定を下した。

今回調査対象となった結晶シリコン太陽電池製品には、バッテリー、モジュール、合板、パネル、建築一体化材料などが含まれる。
中国大陸から輸入される同製品の調査のほか、台湾製も反ダンピング調査の対象となる。

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米国とEUは中国製の太陽光パネルに対し、反ダンピング、反補助金調査を行い、中国はこれに対抗して、太陽光パネル用の多結晶シリコンについて反ダンピング、反補助金調査を行い、対抗した。

2012/11/14 太陽光パネルを巡る貿易戦争

中国はEUに対しては、EU産ワインの反ダンピング、反補助金調査を行った。EUの反ダンピング課税を強く支持したフランスを標的にした報復である。

2013/7/5   中国、EU原産の輸入ワインで反ダンピング&反補助金調査を開始

これまでの経緯は下記の通り。(ADは反ダンピング、CVDは反補助金)

米国 対 中国

  対中国 太陽光パネル 対米国 同左用ポリシリコン 
  (ADは韓国も)
2011/11/9 AD、CVD調査開始  
2012/3/20 CVD仮決定  
2012/5/17 AD仮決定  
2012/7/20   AD、CVD調査開始
2012/10/10 商務部AD、CVD決定  
2012/11/7 ITC 被害認定
AD、CVD最終決定
 
2013/7/18   AD仮決定
2013/9/16   CVD仮決定
2014/1/20   AD、CVD最終決定
2014/1/23 AD、CVD調査実施の決定  


米国による中国製太陽光パネルのダンピング税率は下記の通り。

  最終決定
AD CVD 合計
Wuxi Suntech 21.19 14.78 35.97
Trina Solar 7.78 15.97 23.75
他の59社  15.42 15.24 30.66
他の全て 239.42 15.24 254.66


今回のポリシリコンへの課税は上記に対抗するものである。

EU 対 中国

  対中国 太陽光パネル 対EU 同左用ポリシリコン 
2012/9/6 AD調査開始  
2012/11/1   AD、CVD調査開始
2012/11/8 CVD調査開始  
2013/6/4 AD課税暫定適用
6/6から平均11.8%
8/6
までに改善がみられなければ 47.6%に引き上げ
 
2013/7/1   (ワインのAD、CVD調査開始)
2013/7/23 和解合意  
 
 
2013/8/6 価格協定メーカーは免税
非協定メーカーは47.6%
 
2014/1/24   AD、CVDクロの仮決定
(保証金はなし)

EUのDe Gucht委員(通商担当)は2013年6月21日、北京で中国の高商務相と会談し、太陽光パネル問題の解決に向け協議を続ける方針を確認した後、「中国製太陽光パネル摩擦をめぐり中国と合意できれば、欧州産ワインに対する反ダンピング調査をめぐる問題も解消される」との見解を示した。

EUは7月23日、中国の太陽光パネルのダンピング問題で中国側と和解に達したと発表した。
欧州委員会は8月2日、これを承認、これにより価格協定に参加する中国メーカーは8月6日以降、ダンピング課税を免れることとなった。

2013/7/28 EUと中国、太陽光パネルダンピング問題で和解

今回、中国はダンピングと補助金の存在とそれによる被害を認定する仮決定を行ったが、太陽光パネルでの和解を理由に仮課税を免除した。

おそらく、最終決定までの間にEUとの間で、価格協定その他による和解が行われると思われる。
合わせて、ワインについても妥協が行われると思われる。


米国が対中強攻策を採るのに対し、EU内部ではドイツなど中国との貿易を重視する穏健派の意見が強い。

和解合意前の2013年6月10日付の英Financial Times は「EUは中国への制裁課税を撤回せよ」と題する以下の内容の社説を掲載した。

欧州の多くの国は再生可能エネルギーを優先するため多額の補助金を支給している。そんな状況で太陽光パネルの価格を引き上げるのは、自らの不利益にしかならない。加えて欧州の消費者や中国への供給業者、報復措置による被害者も打撃を受ける。

当然のごとく中国は欧州産ワインの販売に標的を絞った調査で報復した。EU最大のワイン生産国であるフランスはDe Gucht 委員を支持した。対抗制裁は個人を狙ったものでもある。De Gucht 委員自身がワイン醸造業者だった。

現時点での最善策は、De Gucht委員はひとまず方針を撤回し、地に足のついた対応を考えるべきだろう。

 


2014年1月21日付けのBloomberg BusinessWeekの記事が波紋を呼んでいる。

インドの特許局(特許意匠商標総局)は2012年3 月、Bayerと米国のOnyx Pharaceuticalsが共同開発した腎臓がん・肝臓がん治療薬 Sorafenib(ブランド名Nexavar )の特許に関し、初の強制実施権を与えた。

同紙によると、インド政府指名のパネルが、癌に加え、HIVや糖尿病にも強制実施権の適用を検討している。インドには糖尿病患者が65百万人、HIVが210万人いるとされている。

パネルの提案を受け、Department of Industrial Policy and Promotionが強制実施権を与えるかどうかを決定、特許局が手続きを行う。

検討されているのは、MerckのJanuvia とBristol-MyersのOnglyzaの2つの糖尿病薬と、MerckのHIV薬 Isentress、及びBristol-Myersの関節炎薬のOrenciaであるとされ、各社はインドでの特許保護に苦労することになるというもの。

同紙によると、BayerのMarijn Dekkers CEOは、本件について2013年12月3日のロンドンでの会議で以下の通り述べた。

基本的に窃盗だと思う。

これがBayerのビジネスモデルに大きな影響を与えるか? そうではない。本当のところ、Bayerは本製品をインド市場のために開発したのではない。全く正直なところ、この薬を買うことができる西欧の患者のために開発したのだ。
癌の薬だから、高価なのだ。

(同紙は記事が注目されたため、1月28日付けでDekkers発言を当初の要約から全文引用に改めた。)

現在、Nexavarのインド国内での価格は患者1人1年分で6万5千ドルである。

Bayerは現在、 Nexavarの強制実施権に関し、インドで訴訟しているが、インドの最高裁に対し、この価格は無理なく買えるもの("reasonably affordable")と主張しており、矛盾する。今後、裁判に不利な影響を与えると思われる。

The Times of India は「医薬品の開発は金持ち国のためだけか?」というタイトルでこれを報じている。

記事のなかで次のように報じている。
国境なき医師団は声明を出し、この発言は多国籍医薬産業の問題点全てを表している。Bayerは金持ちだけのために医薬品を開発していると認めており、医薬会社は利益だけを追求していると述べた。
利益を生まない病気は無視され、支払えない患者は無視されるとも述べている。

Bayerはこの発言を認め、Dekkersのコメントを配布した。

この発言は業界のフォーラムでのとっさの発言(quick response) であったとし、Bayer は全ての人々が、住む国や所得にかかわりなく、医学の進歩の成果を受けられることを望んでいると付け加えた。
 (「とっさの発言」であるということは本音であることを示している。)

ただし、インドの強制実施権については苛立っていると述べている。

Dekkersはオランダ国籍とともに、知的財産権で厳しい立場をとる米国の市民権も持っている。

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1995年に発効した貿易関連知的財産権(TRIPS:Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)協定で、医薬品に限らず、政府や政府と契約関係にある機関が非商業目的のために生産するのであれば、特許権者の事前の承諾を得ることなく、その技術を使うことができると定めている。 (強制実施許諾)

背景には、国内外の特許所有者に配慮することなく、宇宙開発や軍事開発を進めたい米国政府の思惑があったとされる。

TRIPS協定では「主として国内市場への供給のために許諾される」旨定めているが、2005年12月に知的所有権の貿易関連の側面に関する協定を改正する議定書が採択された。

開発途上国における公衆の健康の問題に対処するため、特許権者以外の者が感染症に関する医薬品を生産し、これら諸国に輸出することを可能とするよう、加盟国がこのような生産等を認めるための条件を緩和する規定を追加した。

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インド特許法では強制実施権について以下の通り定めている。

当該特許の付与から3年以上経っており、以下の三つの条件のうち一つでも満たされている場合に申請が受理される。

 (a)特許発明に関する公衆の適正なニーズ(reasonable requirements)が満たされていないこと。

(i)特許製品の需要が十分に満たされていない状態
(ii)特許発明がインド国内において商業スケールで十分に実施されていない状態
(iii)特許製品の輸入により、特許発明がインド国内において商業スケールで実施されるのが妨げられている状態

 (b)特許発明に基づく製品が公衆にとって適正に手頃な(reasonably affordable)価格で入手可能でないこと。

 (c)特許発明がインド国内で実施されていないこと。

特許意匠商標総局長は上記条件のうち一つでも満たされていると認めた場合に、適当と思われる契約内容(ライセンス料率等)のもとで強制実施権を設定できる。

Bayerは、2008年にインドでNexavarの特許を取得し、2009年にインド市場で発売した。

地場の有力な後発医薬品メーカー Natco Pharma は、これの製造販売に関するライセンスをBayerに求めたが、交渉が決裂したことを受け、2011年7月に特許局に対して強制ライセンスの設定を請求した。

インドの特許局(特許意匠商標総局)は2012年3 月、初の強制実施権を認めた。

これにより、Natco Pharma は製造販売が可能となり、Bayerの約3パーセントという超低価格で販売する。
Bayerは特許局が決定した6%のロイヤリティを受け取るが、通常得られる利益と比べれば微々たるものである。

なお、Nexavarの模倣品が2010年からCipla社によって正規品の1/10の価格で販売されている。

  詳細はJETROアジア経済研究所 海外研究員レポート(2012/7) 医薬品特許の強制実施権設定に関する考察

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国境なき医師団は声明で、利益を生まない病気は無視され、支払えない患者は無視されるとも述べている が、全ての医薬会社がそうではない。

エーザイは2013年10月1日、インド子会社のEisai Pharmaceuticals India が抗がん剤Halavenを新発売したと発表した。

同社が自社開発した新規抗がん剤で、日米欧を初めとする50カ国以上で承認を受けており、インドでは‎乳がん向けで承認を得た。
インドでは毎年約11万5千人の女性が新たに乳がんとして診断されている。

エーザイでは所得に係わらず本剤にアクセスできるよう、患者の所得水準に応じて全額負担から無償まで複数の負担価格を設定する Tiered Pricing を導入した。第三者機関が所得別に患者を5グループに分け、段階的に負担額を増やす仕組みで、最も所得が低い階層は無料となる。

同社ではアルツハイマー型認知症薬アリセプトと胃酸分泌抑制薬パリエットを2005年の発売時より、インドの経済状況や医療環境を考慮した患者の購入しやすい価格(affordable price)で供給している。
 

エーザイは2012年1月30日、世界製薬大手13社の一員として、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、WHO、米国および英国政府、世界銀行、および顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NTDs)の蔓延国政府とともに、過去最大の国際官民パートナーシップを構築し、2020年までにNTDの10疾患の制圧に向けて共闘していくという共同声明「ロンドン宣言」を発表した。

エーザイは30億円を負担し、リンパ系フィラリア症制圧のため、WHOにDEC(ジエチルカルバマジン)22億錠を無償で提供する。

エーザイの内藤晴夫社長は、「価格はゼロ。究極のaffordable priceだ」と宣言したが、「これはCSR(企業の社会的責任)の枠組みで実施するのではない」、「新興国の健康福祉を向上して経済発展や中間所得者層の拡大に寄与することは、将来の市場形成への長期的な投資である」と主張した。

ロンドン宣言にはPfizer、Sanofi、Merck、Novartis、GlaxoSmithKlineなどが加わっている。
Bayerもこれに
参加しており、シャーガス病治療のニフルチモクスの無償提供を現在の倍量にまで増やす。
 


Rosneft は1月23日、TNK-BPの少数株主の大半の持ち株を買収すると発表した。

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ロシアのRosneftは2013年3月21日にTNK-BPの買収を完了した。

Rosneftは2012年10月22日、BPとロシアの投資家グループAlfa-Access-Renova(AAR) の合弁のロシアの石油会社TNK-BPを、双方から合計550億ドルで買収することを明らかにした。

2012/10/24 ロシアのRosneft、TNK-BPを買収 

しかし、問題が残った。

TNK-BPはBPとロシアの3つの財閥の連合のAlfa Access Renova group(AAR)の50/50JVだが、両グループの合意により、子会社のTNK-BP Holdingをモスクワの証券市場に上場しており、その5%を一般株主が保有している。
一般株主はロシアの投資家と
東欧を対象とする国際的な投資ファンドである。

TNK-BP HoldingはRosneftの買収後、RN-Holdingに改称した。

2011年1月に、BPがRosneftとの間でグローバルな戦略的提携で合意した際に、AARが、この提携にTNK-BPを除外しているのはTNK-BPの株主契約に違反するとしてロンドンの高等法院に訴え、最終的に白紙となったが、この時に少数株主の一人がTNK-BPの役員でもあるBPの役員を訴えている。

TNK-BP Holdingの一般株主は、RosneftがBPとAARから買い取った価格での保有株式の買い取りを要望した。
AARからの買収価格は1株
$3.70 とされる。

それに対し、RosneftはTNK-BP Holding の少数株主の持分の購入は検討しておらず、この件についていかなる義務も有していないと発表した。
また、TNK-BP Holding の株主には配当を支払わないとした。

一般株主はこれに反発、政治問題にもなった。株価も下落した。

2013年9月末にRosneft の取締役会はRN Holding (旧称 TNK-BP Holding) の少数株主の持ち株買収を決議した。

買い取り価格は普通株 1株 67ルーブル ($2.06) 、優先株 55ルーブルで、これは9月26日以前18ヶ月の平均株価と独立した鑑定人の鑑定に基づく。ロシアの株価はロシアに対する国際投資家のいろいろの懸念から、このところ下落している。

これに対し、少数株主側はAARが売却したとされる1株 $3.70 と比べ安すぎるとして反発した。

しかし、Rosneftは 、売却の応募がない場合は上場廃止にすると述べ、2013年11月に2014年1月20日を期限とする少数株主保有株全ての買取の公告を行った。

今回のRosneftの発表では、少数株主の保有株式の98.23%に相当する株の売却申し込みがあった。2月19日に支払いを行う。

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これとは別にRosneftは2013年10月、RN-Holdingの株の9.989%を 2013年7-9月期中に第3者の投資家に970億ルーブル(約30億ドル)で売却したことを明らかにした。 証券市場で時価で売却したとしている。

なお、TNK-BPの7-9月期決算の純利益は、前年同期の350億ルーブル(約1050億円)から8倍増の2800億ルーブル(約8400億円)となった。
これには、TNK-BPの資産の再評価益 1670億ルーブル(約5000億円)が含まれる。




財務省は1月27日に2013年の貿易統計(速報、通関ベース)を発表した。

輸出は自動車、有機化合物等が増加し、対前年比 9.5%の増加となった。また、輸入は原粗油、液化天然ガス等が増加し、15.0%の増加となった。その結果、差引額は▲11兆4745億円となった。

  輸出 輸入 差引
2010 67兆3996億円 60兆7650億円 6兆6347億円
2011 65兆5465億円 68兆1112億円 -2兆5647億円
2012 63兆7476億円 70兆6886億円 -6兆9411億円
2013 69兆7877億円 81兆2622億円 -11兆4745億円



地域別には以下の通り。



   
 


   
 
   



地域別の貿易収支は下記の通り。


2013年の平均為替レートは1ドル=96.91円となり、2012年の1ドル=79.55円から21.8%下落した。

輸出金額は前年比で9.5%の増となったが、数量指数は逆に1.5%の減である。
輸入金額は15.0%増えたが、数量指数は0.4%の伸びに止まっている。

鉱物性燃料の輸入額は前年の24兆782億円から27兆4353億円に3兆3571億円の増加となった。

原油の輸入量は前年比0.6%減ったものの、輸入額は16.3%増加した。
LNGも輸入量が同0.2%の微増だったが、額は17.5%膨らんだ。


 

 


東邦チタニウムは1月22日、サウジでスポンジチタンを製造販売するJVを設立する基本合意の覚書を締結したと発表した。

JVの相手は、サウジの酸化チタンメーカーのCristal(The National Titanium Dioxide)とその親会社のTasnee(The National Industrialization Company)で、Yanbu 工業団地のCristal の酸化チタン工場の隣に、年産15,600トンのスポンジチタン製造工場を建設する。
投資額は約420 百万米ドルで、2016年末の完成を目指す。

JV名:未定
株主:東邦チタニウム 35.0%
             Cristal  32.5%
             Tasnee 32.5%

原料の四塩化チタンは隣接するCristalの酸化チタン工場から安定的に供給を受ける。
東邦チタニウムのスポンジチタン製造における先進的な技術の供与と、サウジアラビア国内の安価な電力代により、世界的に卓越したコスト競争力を有する。

製造したスポンジチタンは、Cristal を通じて湾岸協力会議加盟国内での淡水化プラント、発電所、化学プラント等の一般工業向け需要へ販売するとともに、東邦チタニウムが同社の顧客の需要に向けても販売する。

当事業は、日サ両国政府が推進する「日本・サウジアラビア産業協力事業」(実施機関は中東協力センター)の支援対象となって いる。

東邦チタニウムは、永年に亘りサウジアラビアにおける知見・信頼関係を培って いるJXグループの支援を受けつつこれらを最大限活用し、当事業を推進する。(東邦チタニウムにはJXホールディングスが50.31%出資している。)

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スポンジチタンは多孔質の中間原料で、管や板の形に加工してプラントの熱交換器などの素材になる。

東邦チタニウムの製法は、生成したスポンジチタン中に含まれている金属マグネシウム及び塩化マグネシウムを分離除去するために高真空蒸留法を採用しており、高品質のスポンジチタンが得られる。

製造工程は以下の通り。

(1)塩化:チタン鉱石(ルチル)の中の酸化チタンを塩素ガスと反応させて四塩化チタン(TiCl4)を製造。

(2)蒸留:四塩化チタンを蒸留により精製

    ガス状の四塩化チタンを冷却して液状にした後、高温で酸素と反応させ、
         
塩素ガスを分離すると酸化チタンとなる。

(3)還元・分離:精製された四塩化チタンに溶融金属マグネシウムを反応させ,多孔質で塊状のスポンジチタンを製造。

 

 

なお、酸化チタンの製法には上記の塩素法のほかに、硫酸法がある。欧米では塩素法、日本では硫酸法が主流である。

硫酸法は原料(イルメナイト鉱石)を濃硫酸に溶解させ、不純物である鉄分を硫酸鉄(FeSO4)として分離し、一度オキシ硫酸チタン(TiOSO4)にする。これを加水分解し、沈殿したオキシ水酸化チタン(TiO(OH)2)を洗浄・乾燥し、焼成することによって酸化チタンを得る。


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National Titanium Dioxide  (Cristal) 世界第2位の酸化チタンメーカーで、Tasnee66%、湾岸6カ国が均等出資する Gulf Investment CorporationGIC33%出資している。残り1%は個人投資家。

Yanbu Al-Sinaiyah 工場で酸化チタンを1991年から生産しており、2002年に3万トン増強して10万トンになった。設計能力は18万トン。

2007年5月にLyondell から酸化チタンメーカーMillennium Inorganic Chemicals を負債込み12億ドルで買収した。

生産能力は67万トンで、米国に2箇所(Ashtabula, OH と Baltimore, MD)、ブラジル(Salvador, Bahia)、英国(Stallingborough)、フランス(Thann)及び豪州(Bunbury)に工場を、ブラジルのParaibaにチタン鉱山を持つ。

2007/3/5 Lyondell、酸化チタン事業をサウジ社に売却

2008年には豪州の鉱山会社 Bemax and International Titanium Powder を買収、Cristal Miningと改称した。
leucoxene、rutile、zircon などを生産する。




 

ビール世界最大手のAnheuser-Busch InBev(AB InBev)は1月20日、過去にいったん売却した韓国ビール最大手のOBビールOriental Brewery) を再買収することで合意したと発表した。

OBビールを同社の株主のKKR とAffinity Equity Partnersから58億ドルで買収することで合意した。
AB InBevは2009年に18億ドルで売却しており、5年前の売却時の3.2倍に相当する金額で買い戻すことになる。

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OBビールはアジア通貨危機の1998年にベルギーのInterbrew が斗山グループから買収した。

2004年にベルギーのInterbrew とブラジルのAmBev が合併してInBev となった。

InBev は2008年11月に、Budweiser で知られる世界3位のAnheuser Busch を520億ドル買収し、AB InBevとなった

AB InBev はこの合併後の資金不足を解消するため、2009年7月にOBビールを18億ドルで売却した。

当時、アサヒビールが韓国ロッテグループと組み、買収に乗り出したほか、韓国の国内外の酒類メーカーやプライベートファンド約10陣営が名乗りを上げた。

売却に当たり、AB InBev 持分を再び買い入れるコールオプションを得ており、その契約満期は2014年7月となっていた。

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その後、AB InBevでは財務体質が改善したのを受け、買収を進めており、昨年にはメキシコのGrupo Modelo を201億ドルで買収している。

他方、OBビールは2009年の売却後、市場シェアも2009年の40%から60%となり、利益も倍増、2011年にハイト真露を抜き韓国最大手となった。
また、
韓国のビール市場は2009年から12年までが毎年約2%のペースで成長している。

このため、AB InBevはアジア事業を強化するため、高値での買い戻しも妥当と判断した。買収には手元資金を使うとしている。

同社のCEOは「OBビールを通じ、急速に成長するアジア太平洋市場での地位をさらに強化したい」と述べた。
アナリストは、同社はOBビールの売り上げ増に加え、BudweiserやCoronaなどの製品の韓国での売り上げ増を狙っているとみている。

INEOS は1月20日、ベトナムのPhu Yen省のHoa Tam Industrial Zoneで製油所建設を計画しているVung Ro Petroleum が年産90万トンのポリプロ計画でInnovene PP プロセスを選択したと発表した。

Vung Ro Petroleum は2013年11月にLummus Technologyとの間で、エチレン回収とOCT(エチレンとブチレンからプロピレンを製造)に関するライセンス・エンジニアリング・技術サービス契約を締結している。

Vung Ro Petroleum は英国の投資会社Technostar Management とロシアのTelloil GroupとのJVで、Hoa Tam Industrial Zoneに40億ドルを投じて、製油所(LPG, Gasoline, Jet Fuel, Diesel, Fuel Oil) と石化プラント(BTXと年産90万トンのPP)の建設を計画している。

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ベトナム政府は2007年9月に製油所の建設計画を明らかにした。9つの製油所を建設し、2025 年までに国内需要の90%を自国内の製油所でカバーするとし、原油処理能力の目標値を日量 111~121万バレルとした。

 

しかし、確定したのは3つのみ。

① 現在稼働しているのはPetroVietnam のズンクワット(Dung Quat)製油所で、2009年に稼働した。
能力は日量14.8万バレルで、同社は増設を検討中。

② 出光興産と三井化学は6月6日、両社とクウェート国際石油、ペトロベトナムとの合弁事業である総投資額約90億米ドルのNghi Son 製油所・石油化学コンプレックス建設プロジェクトの最終投資決定を行ったと発表した。

 石化計画:
 パラキシレン   70万トン/年
 ポリプロピレン 37万トン/年


   2013/6/11 出光興産と三井化学、ベトナムのNghi Son 製油所・石油化学コンプレックスへの最終投資決定

Lon Son製油所はタイのSiam Cementグループとベトナム側のJV。

この製油所に隣接し、タイのSiam Cementグループとベトナム側のJVのLong Son Petrochemical が石化コンプレックスを建設する。
2012年1月、Qatar Petroleum がこれに参加することが明らかになった。

報道によると、コンプレックスはオレフィン 165万トン、ポリオレフィン(HDPE、LDPE、PP) 145万トン、苛性ソーダ 28万トン、EDC 33万トン、VCM 40万トンなどからなる。

2008/8/25 ベトナム最大の石化コンプレックス、9月に建設着工

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Vung Ro Petroleum は2007年11月に製油能力 400万トンで投資ライセンスを取得した。

2013年12月初めに、同社の能力は400万トンから800万トンにアップした。
Nguyen Tan Dung 首相がPhu Yen省から要請を受け、承認した。
最終ライセンス取得までには、環境安全面の条件を満たす必要がある。

Vung Ro Petroleum は開発中の Hoa Tam Industrial Zoneに538ヘクタールの土地を確保した。
Vung Ro Bayの10km北、Tuy Hoa Airportの15 km 南にあり、Bai Goc deepwater seaport に近い。

 





ベトナムのグエン・タン・ズン首相は1月15日、国営石油会社ペトロベトナムとの会合 で、今年中に予定していた第一原発の着工が2020年ごろまで延期される可能性があるとし、4基計4000MWの原発の代替 として5000MWの発電所用の天然ガスを確保するよう指示した。

ベトナムでは福島原発の事故後、原発の安全性強化を求める声が強まり、事業化調査に時間がかかっている。人材育成や法整備も遅れ、関係者の間では着工時期がずれ込むことは確実視されていた。

首相は「原発建設は安全が最優先で、基準を満たさなければ実行しない」と語った。

日本が受注した第二原発は同省のビンハイに予定されており、総事業費は1兆円規模で、2021年と22年の稼働を目指していたが、炉型の選定も済んでいない。 この建設計画にも影響が出ると思われる。

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ベトナム政府の電力マスター・プランによると、ベトナム国内の電力需要は2005年から20年までの間で年率10%で増加し続け、電力供給は逼迫する。
(アジア開発銀行では、2015年までは年率14%で、以降は11%で増加するとみている。)

現在、総発電量の3割以上を占める水力発電は建設可能な水域が少なくなり、火力発電は資源価格の高騰や二酸化炭素排出の問題を考慮すると増設は困難となっている。


このため、ベトナム政府は2010年6月、2030年までに原子力発電所を計14基(計1500 万~1600万キロワット)建設・稼働するとした原発開発方針を承認した。

立地   タイプ 能力 MWe 建設 運転開始
Ninh Thuan省 
  Phuoc Dinh
1号機 VVER-1000/428 1060 ロシア 2020
2号機 VVER-1000/428 1060 2021
3号機 VVER-1000 1000   2023
4号機 VVER-1000 1000   2024
Ninh Thuan省 
  Vinh Hai
1号機 未定 850-1000 日本 2021
2号機 850-1000 2022
3号機   850-1000   2024
4号機   850-1000   2025
3~4箇所 6基       2026~ 2030

6基の候補地(3~4箇所)は、Quang Ngai省Duc Thang 又はDuc Chanh、Phu Yen省Xuan Phuong、Binh Dinh省Hoai My、Ha Tinh省Ky Xuanとなっている。

このうち、計4基(計400万キロワット)が国会が承認済みである。建設予算は4基で約200 兆ドン(約1兆円)と言われている。

同国初の原発となる予定のフォック・ディン地区の2基はロシアへの発注が決まっており、2014年に着工し、1号機が2020年、2号機が2021年に運転を開始する計画であった。

2010年10月31日、グエン・タン・ズン首相と当時の菅直人首相がハノイ市で会談し、ビンハイ地区で計画されている原子力発電所第2基の建設について、日本を戦略パートナーとすることを発表した。

続いて、日本原子力発電は2011年2月にベトナム電力公社との間で原子力発電導入に関する協力協定を結んだ。

当初の計画によると、2011年度中に事業化調査の請負契約を締結し、その後1年から1年半程度かけて調査を行い、建設候補地の地盤調査、環境影響調査の結果のほか、必要な発電容量の試算、原子炉のタイプの選択肢なども提示するとされている。

同年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原発の事故発生を受けて、日本側で海外への原発輸出及び技術支援の前提となる原子力協定の国会承認プロセスに遅れが生じたが、2011年12月9日、第179回国会でベトナム、ヨルダン、ロシア、韓国との原子力協定が承認され、2012年1月21日に発効した。


特定非営利活動法人メコン・ウォッチは、以下の「懸念される問題点」を挙げ、これに反対している。

・原子力発電所が内在している事故のリスク

・日本で解決されてない問題の輸出
   放射性廃棄物、特に使用済み燃料の処理問題

・税金投与の正当性
   一部の企業への利益誘導

・ベトナムの社会状況に起因する問題
   民主的な議論 情報公開の不足
   地元の住民、少数民族は情報アクセスが困難
   施工・運転リスク
   汚職・腐敗・ガバナンス

・日本のエネルギー大量消費の構造の輸出

 


 

ブラジルのBraskemの親会社のOdebrecht は2013年末に、SABIC Innovative PlasticsからWest Virginia州 WashingtonにあるSABIC Innovative Plasticsの工場用地を11百万ドルで購入し、最近登記された。

工場はOhio州との州境のオハイオ川沿いに立地し、Marcellus Shaleエリア内にある。


SABIC Innovative Plastics は2013年11月にこの工場を2015年に閉鎖すると発表している。
同社では熱可塑性樹脂の米国での生産統合を図っており、この工場での生産は2015年にイリノイ州Ottawaとミシシッピー州Bay St. Louisに移す。


Odebrecht は2013年11月に同州知事と共同で、同地にエタンクラッカーと3つのPEプラント及び水処理、コジェネレーションなどの付帯設備を建設する計画を発表した。この計画はAppalachian Shale Cracker Enterprise(略称 Ascent)と呼ばれる。

この計画は最終決定されていないが、土地の買収が明らかになったことで、今後計画が進行すると期待されている。

Odebrechtが全体の計画と資金及び水処理、コジェネレーションを担当し、Braskemが石油化学関連を担当する。

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Braskem2010年に米国の石油会社Sunocoからポリプロ事業を買収し、ペンシルベニア州Marcus Hook、テキサス州La Porte、ウエストバージニア州Neal3工場を取得した。

2010/2/3 Sunoco、ポリプロ事業をブラジルのBraskemに売却

Braskemは2011年7月にはDowからポリプロ事業(米国の2工場とドイツの2工場、および、在庫、事業ノウハウ、特定の技術、需要家リスト)を340百万ドルで買収した。
米国の工場はテキサスの
Freeport Seadriftにあり、合計能力は50万トン。(後者は100%子会社のUCCの工場)
ドイツの工場は
Schkopau Wesselingにあり、合計能力は54.5万トンとなっている。

Braskemは今回の買収で米国の能力は5割増しの140万トンになるとしている。

2011/7/28 Dow、ポリプロ事業をブラジルのBraskemに売却 

BraskemのCEOは2011年4月、シェールガスを利用して米国でエチレンとポリエチレンの製造を行いたいと述べた。

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本件とは別に、Braskemは2014年1月15日、Siluria Technologies との間で、天然ガスのなかのメタンを直接エチレンに変換するSiluria のメタン酸化結合(OCM:oxidative coupling of methane) 技術を展開するための幅広い協力関係を締結した。

Siluria Technologies のCEO Edward J. Dineenは 2013年1月にバイオ燃料会社LS9のCEOを退任し、マサチューセッツ工科大学(MIT)Dr. Angela Belcher が開発したメタンをエチレンに変換するOCM技術の商業化に取り組んでいる。

OCM技術:

Siluria TechnologiesのOCM技術は、Steam cracking とは異なり、触媒プロセスであり、メタンを直接エチレンに転換する。

2CH4 + O2 → C2H4  + 2H2O

Crackingするのではなく Coupling することにより、エネルギーを使わず、逆にエネルギーを産み出す。

触媒製造に当たってはBiomaterial templating、Nanowire Synthetic という独自の技術を使用する。通常、触媒のスクリーニングに当たっては、触媒ごとに1~2日かかるが、同社の High-throughput screening では同じ時間で数百の触媒のスクリーニングが可能である。
同社ではこの3つの技術を組み合わせ、新しい触媒を次々に手に入れている。

両社はBraskemの テキサス州La Porteの工場にデモンストレーションプラントを建設し、2014年第4四半期から共同で メタンからのエチレン製造のテストを行う。Braskemが土地、インフラ、操業でサポートする。

また、Siluriaの技術をBraskemが利用する非独占権利を与えるとともに、将来の SiluriaのプラントからBraskemがエチレンを購入するオプション、OCM技術を使用するBraskemの計画に Siluriaが資本参加する可能性などのことが含まれている。

 

現在、Braskemを初め、各社が計画しているシェール由来のエチレン計画は、シェールガスに付随して出るNGL(天然ガス液)のなかのエタンを原料にする 。

OCM技術が完成すれば、シェールガスのメタン(殆どが燃料として使用される)からエチレンが製造できることとな り、更に大幅にコストダウンできることとなる。


 


 




 

中国国家統計局が1月20日発表した2013年の国内総生産(GDP)成長率は物価上昇分を除いた実質で 7.7%となった。
政府目標の7.5%を上回った。

    四半期 年間 目標
2012 1Q 8.1 7.8 7.5
2Q 7.6
3Q 7.4
4Q 7.9
2013 1Q 7.7 7.7 7.5
2Q 7.5
3Q 7.8
4Q 7.7


会見した国家統計局の馬建堂局長は、「中国経済は、安定して前進し、よい方向に向かって発展していることを示している」と述べ、中国経済は政府の意図どおりに成長しているという見方を示した。

2014年の見通しについては、投資は省エネや環境保護事業、それに内陸部で必要とされる交通インフラの整備などに支えられて比較的高い成長が維持され、消費もゆるやかに拡大するとした。
その一方で、中国経済の課題として、技術の遅れた生産施設を廃棄することや、地方政府の債務のリスクへの備えを強化することなどを挙げ、「中国経済は依然として解決しなければならない問題を抱えている。1に改革、2に改革。改革こそが経済を安定的に成長させていくために重要だ」と述べた。
 

GDPは名目で56兆8845億元(約980兆円)となり、現在の為替レート換算で日本のGDP(480兆~490兆円)の約2倍に達する見通し。
 




 

BPは1月15日、2035年までのエネルギーの需給予想 "BP Energy Outlook 2035" を発表した。
http://www.bp.com/content/dam/bp/pdf/Energy-economics/Energy-Outlook/Energy_Outlook_2035_booklet.pdf

グローバルのエネルギー需要は伸びるが、伸びは緩やかになり、主に途上国主導となっている。

エネルギー需要は2012年から2035年までの間に41%増加する(年率1.5%)。過去23年間では55%の伸びであった。
2020年までは年率2%だが、それ以降は年率1.2%に減る。

需要の伸びの95%は non-OECD諸国のものであり、中国とインドが増加分の半分以上を占める。
2035年には
non-OECD諸国のエネルギー消費は2012年の消費より69%増える。
北米・欧州・アジアの先進国(OECD諸国)の伸びは非常に緩やか(5%増)で、2030年以降は経済は成長するがエネルギー消費は下落し始める。

エネルギーソース別では2035年時点で化石燃料(石油、天然ガス、石炭)はそれぞれが全体のほぼ27%を占め、原子力、水力、再生可能エネルギーは5~7%となっている。

化石燃料のなかでは、天然ガスの伸びが大きい。発電やその他部門で、よりクリーンなものとして石炭に置き換わっている。

 

 石油:

石油の需要の伸びは平均して年率0.8%の伸びと、主要燃料では最も伸びが少ない。
需要の伸びの殆どは中国、インド、中東である。

石油の供給増は主に米大陸と中東で、半分以上はnon-OPEC である。
米のタイトオイル、カナダのオイルサンド、ブラジルの深海油田とバイオ燃料が他のソースの減少を補う。
OPECのシェアは早い時点で減少する。


 天然ガス:

天然ガスは化石燃料のなかで最も伸びが大きく、需要は年率1.9%で増える。
 Non-OECD諸国が需要の伸びの78%を占める。
産業用と発電用の需要が大きい。

LNGでの輸入はガスの消費の2倍以上の伸び(年率3.9%)で増え、2035年までのガスの需要増の26%を占める。


シェールガス供給は天然ガスの需要の伸びのうちの46%をカバーする。2035年には世界の年々ガスの21%、米国の天然ガス生産の68%を占める。
北米のシェールガスの生産の伸びは2020年以降は緩やかになり、他の地域の生産が増えるが、それでも、2035年時点で北米のシェールガスは全世界のシェールガス生産の71%を占める。


 石炭:
石炭は石油に次いで伸びは緩やかで、2035年までの需要の伸びは年率1.1%である。
2020年以降の伸びは0.6%にとどまる。
需要の伸びは中国とインドのみにとどまる。両国の需要の合計は2012年で世界の58%、2035年では64%にも及ぶ。

 その他:

核エネルギーは2035年まで年率1.9%で伸びる。
中国、インド、ロシアが増加分の96%を占め、米国やEUはプラント停止で減少する。

水力発電は年率1.8%で増加、増加の半分が中国、インド、ブラジルである。

 

部門別の需要推移は下記の通り。


BP のCEOのBob Dudleyは3つの大きな問題点を指摘する。
1)需要の伸びに応じた供給があるか? (Supply sufficient ?)
2)確実に供給できるか? (Secure?)
3)供給した後は?(Sustainable ?)

Bob Dudleyの答えは以下の通り。

1)の答えは Yes であるとする。

需要の伸びが過去よりも緩やかなのは省エネのお陰である。
技術、投資、政策の動向を見ると、供給はついてくると言える。
シェールガス、タイトオイル、再生可能エネルギーのような新しいタイプのエネルギーが供給の伸びの大きな部分を占める。

2)についてはいろいろな見方があるが、明るい見通しの方が強い。

米国はエネルギー輸入国から自給国に変わりつつあるが、欧州や中国、インドの輸入依存度は増える。
アジアはエネルギー輸入で大きな割合を占める。
大消費地域に向けた新しいサプライチェーンができ、市場が機能すれば心配はない。

3)sustainabilityについては、

グローバルな二酸化炭素排出量は29%増加し、伸びの全ては途上国である。
天然ガスや再生可能エネルギーが石炭や石油に取って代わる、欧州や北米の排出量は減少が見込まれるなど、明るい兆しがある。
多くの先進国で経済は伸びるがエネルギー消費は減ると思われる。

 

 


第一三共は1月14日、連結子会社のインドのRanbaxy Laboratoriesが、原薬工場であるToansa工場(Punjab州)に関して、米国FDAによる査察の結果、何らかの問題があることを指摘する Form483 を受理したと発表した。

現在、Ranbaxyは指摘された内容を精査中で、FDAに対し問題解決に必要な手順に則った適切な回答をするとしている。

FDAが施設の査察を行った結果は施設査察報告書 (EIR :Establishment Inspection Report)で報告され、指摘事項は 「Form 483」に記載されて企業に提示される。

「Form 483」を受け取った企業は、指摘事項に対する回答をFDAへ提出する。

「Form 483」に対する企業側の対応が不十分である場合、FDAは Warning Letter(警告書) を企業へ送付する。

Ranbaxyは下記の事情で米国へのインドからの製剤輸出が出来ない状況にある。

Ranbaxyは米国ニュージャージー州に製剤子会社 Ohm Laboratories を持っており(1995年取得)、現在、米国向け後発薬はToansa工場の原体をここで製剤している。

もし、Toansa工場からの輸出が禁止された場合、これも出来なくなる。

なお、Ohm Laboratories は、2012年12月の監査についてのEstablishment Inspection ReportをFDAから2013年10月に受領したが、FDAはここについては問題なしとしている。


付記

米国FDAは1 月23 日付で、Toansa工場で製造された原薬を医薬品用に製造および流通させることを禁止する旨発表した。

ーーー

第一三共は2008年6月11日、インドのジェネリック医薬品大手 Ranbaxy Laboratories 及び創業家一族との間で、同社の議決権総数の50.1%以上を取得する契約を締結したと発表、11月7日にRanbaxy株の63.9%を取得したと発表した

株式買収中の2008年9月16日、米国FDAはRanbaxyの医薬品30種以上の輸入を一時停止した。

医薬品の安全性に問題はないが、ランバクシーのインドのDewasPaonta Sahib にある2つの工場で、製造器具の洗浄状況、生産管理、品質管理などに関する記録の保存に関して問題が改善されていないためとしている。

また、FDAが1月から3月にかけて問題の2工場を査察した際、抗生物質の取り扱い方法にも問題が発見されたという。

2009/1/8 第一三共、ランバクシーの評価損計上

Ranbaxy Laboratoriesは2011年11月に、高コレステロール血症治療剤アトルバスタチン(Atorvastatin ) 「リピトール」の後発薬を米国で発売した。
同社は当初、
インドでの原体生産を検討していたが、米国への輸入が認められていないため、Teva Pharmaceuticalに原体の生産を委託せざるを得なかった。

第一三共は2011年12月に、Ranbaxy Laboratoriesが米国FDAと同意協定書を締結したと発表した。

Ranbaxyは、データの信頼性を確実にするための手段や方針を更に強化し、現行の適正製造基準を遵守することを確約した。

また、これまでの行為に対し、5億ドルの罰金支払いで米国司法省と和解した。

2011/12/28 ランバクシー、米FDAと同意協定書締結

FDAは2013年9月、Ranbaxyのインドのパンジャブ州のMohali 工場で生産された医薬品の輸入を差し止めるという輸入警告(import alert)を発表した。

FDAは2012年の9月と12月のMohali工場の検査で、製造上の問題点を適切に調査しなかった、品質確保のために適切な手順を作らなかった等の、重大なCGMP違反を発見した。

FDAはまた、2012年1月のRanbaxyの終局的差止の同意にMohali工場を含めることを命じた。
この結果、Mohali工場での医薬品製造の方法、設備、管理がCGMPに従って確立、運営、管理されるまでの間は、Mohali 工場でFDA承認医薬品の製造や、同工場から米国に医薬品を輸出することを禁止される。

Ranbaxyは2012年4月、高コレステロール血症治療剤アトルバスタチンカルシウム錠(アトルバスタチン錠:PfizerのLipitorの後発品) を「最先端技術を結集した」Mohali経済特区の工場から米国向けの輸出を開始したことを発表したが、これが出来なくなった。

2013/9/21  米FDA、第一三共子会社Ranbaxyに再び輸入差し止め 

 


日揮は1月14日、米国Fluor と共同で、ChevronがカナダのBritish Columbia州で推進しているKitmat LNG Project に係わるLNGプラント建設の発注内示を受けたと発表した。


ChevronとApacheの50/50JV (Chevronが運営) が、Summit LakeからKitimat港まで直接結ぶパイプライン(Pacific Trail Pipelines )計画と、Kitimat 郊外のBish CoveでのLNG輸出ターミナル建設の計画を進めている。

LNG輸出ターミナルでは、550万トンx 2系列(合計年産1100万トン)のLNGプラントおよび付帯設備を建設する。
カナダ政府から年間1000万トンのLNG輸出のライセンスを受けている。

発注内示はLNGプラントおよび付帯設備に係る設計、機材調達、建設工事役務で、契約形態、受注金額、納期は 非公表。

日揮と米国大手エンジニアリング会社であるFluor がジョイントベンチャーを形成 (日揮がリーダー) し、日揮は主にLNGプラントの中核となる液化プロセス設備等を、Fluorはユーティリティやオフサイトを主に担当する。

日揮は、世界のLNGプラント全生産量のうち、約30%のLNGプラントの建設実績を有し、現在も計6件のLNGプラント建設プロジェクトを遂行している。

なお、シェール開発については、日揮は2011年6月にテキサス州Eagle Ford シェールのChesapeake Energy運営の鉱区の10%の権益をTriTech I, LLCから取得した。

2011年11月には国際石油開発帝石(INPEX)と共同でカナダの石油・天然ガス開発会社NexenがカナダのBritish Columbia州北東部のHorn River、CordovaおよびLiardの各地域に保有するシェールガス鉱区に40%の権益を取得することで合意したと発表している。
(40%を取得するINPEX Gas British Columbia にはINPEXが82%、日揮のカナダ子会社が18%を出資する)

  

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千代田化工建設は1月14日、米国CB&Iと北米のLNG製造・出荷関連諸設備に関する設計、建設の協業覚書を締結したと発表した。
LNG案件ごとにCB&Iと協業して取り組む。

両社は豪州、ロシア、西アフリカのLNG案件の協業を通じて良好な関係を構築しており、それを北米市場に発展させた。

千代田はLNG生産能力換算で世界の40%以上のLNG設備の建設実績があり、CB&Iは同分野で貯蔵タンクを主に50年以上取り組んでおり、45カ国350以上の実績を有している。

千代田化工は2013年12月11日、テキサス州のFreeport LNGの液化基地建設プロジェクトでCB&I 及び Zachry とともにEPC業務を遂行することとなったと発表した。

Freeport LNGは年間440万トンの能力の液化設備3系列を建設し、2017年に液化事業を開始することを目指している。

米エネルギー省は2013年5月に、Freeport LNGに対し、日本などFTA非締結国への輸出を承認したと発表した。
この時点では2系列分880万トンの輸出承認であったが、2013年11月に増量を承認、1320万トンとなった。

大阪ガスと中部電力は2012年7月31日、Freeport LNGと天然ガス液化加工契約に関する契約を締結、それぞれ年間約220万トンずつの天然ガス液化能力を確保している。

2013/5/20 米エネルギー省、日本へのLNG輸出を許可

今回のCB&I との米国での協業について、千代田化工は緩やかな提携を模索したが「相手からきっちり組みたいと要請があった」とされる。

LNG設備は千代田化工、日揮を含め、世界で5社程度しか実績がない。北米市場は地元企業優先の伝統が根強く、これまではBechtel、KBRの2社が突出していた。



インドネシア政府は1月12日、国内での加工推進を目的とする未加工の鉱石の輸出禁止措置を導入した。

インドネシアで採掘された鉱石を国内で加工・精錬することを義務付ける「鉱物・石炭鉱業法」(2009年制定)に基づくもので、
加工製品の輸出増加を通じて、鉱物資源からの収益を長期的に拡大する狙いがある。

ただし、当局の間でも、未加工の鉱石の輸出禁止により、短期的には外貨収入が落ち込み、経常赤字が拡大し、通貨ルピーを圧迫する、大量の失業が発生するとの懸念があり、長時間の協議の末、加工・精錬を実施または計画している企業に2017年まで精鉱あるいは加工鉱石を輸出することを認めるという鉱物省の提案が採用された。

加工・精錬を行うことの出来ない数百社に及ぶ国内の中小鉱山への影響は大きい。

2017年からは全ての企業が金属製品あるいは鉱石の精製品のみ輸出可能となる。

詳細は近く発表されるが、諸情報によると、

1) Freeport-McMoRan Copper and Gold やNewmont Mining Corporation、その他加工・精錬を実施または計画している企業は2017年まで、銅、マンガン、鉛、亜鉛、鉄鉱石を輸出できる。


現状では製錬所の建設提案を125件受けており、そのうち28件は着工しているという。

   
2) ニッケル鉱石とボーキサイトについては、国内に十分な数の製錬所があるため、輸出禁止措置
  (年間20億ドル以上の輸出が影響を受ける)
   
3) 石炭とスズの輸出は規制対象外
   

日本はニッケル鉱石の全体輸入量の4割超をインドネシアに依存する。
日本の非鉄各社は在庫積み増しや他国からの輸入増で乗り切る構えだが、代替確保は容易でなく、禁輸が長引けばステンレス鋼の原料となるフェロニッケルの減産を強いられるとの懸念も出ている。

現在の日本のニッケル輸入は、インドネシアが44%、フィリピンが32%、ニューカレドニアが24%となっている。

ーーー

1945年憲法第33条では、「天然の資源は、国家の管理の下に置かれ、国民が公共の福祉を最大限享受できるように活用されなければならない」とされている。

2009年1月に公布・施行された鉱物・石炭鉱業法(2009年法律第4号)の内容は以下の通り。

① 鉱業権は、国又は地方政府から発給される鉱業事業許可制度に一本化(鉱業事業契約制度は廃止)
② 鉱業事業許可は、鉱業事業許可(鉱業事業区域)と特別鉱業事業許可(特別鉱業事業区域)に分類
③ 事業許可は、探鉱許可(入札により付与)と生産許可の2段階制
④ 許可取得可能者はインドネシア法人又は自然人(内国資本、外国資本の差別無し)
    ただし、外国資本の場合、生産開始後に、国、地方政府、インドネシア民間企業等への資本委譲の義務
インドネシア国内での生産物高付加価値化(精製・製錬)義務
  2014年以降に鉱物資源の輸出禁止措置を実施する

⑥ 政府に生産量、輸出量をコントロールする権限を付与
⑦ 国内鉱業サービス会社使用義務

鉱物・石炭鉱業法実施のための細則が2012年2月6日にエネルギ-・鉱物資源省大臣令として発表された。
このなかで、2014年からを前倒しして2012年5月6日からの輸出禁止令を公布するとしていた。

しかし、インドネシア内部の鉱山業者の猛反対、政府内部の見解不統一もあって土壇場で20%輸出関税賦課で内部の折り合いを付けた。

商業省貿易局が指定した鉱物生産の登録輸出業者だけに金属鉱石21品目と非金属鉱石44品目の輸出を認可。
輸出関税は一律2割とした。

インドネシアの鉱石禁輸で日本にとって影響が懸念されるのがニッケル鉱石で、フェロニッケルの原料となり、全体輸入量の約5割をインドネシアに依存しているため、供給が途絶すれば製錬業界、ステンレス業界など関連業界への影響が懸念される。

2012年5月の輸出禁止は撤回されたが、2014年以降に未加工の鉱石輸出の禁止を予定している問題で、経済産業省の製造産業局長は2012年6月、一方的に禁輸を実施した場合にはWTOへの提訴も検討すると述べた。

「一方的な輸出禁止は輸入国である日本の製錬産業の根幹に関わる。輸出税についても輸出国の自由で行うようであれば日本からの投資にも影響がある。日本政府としてはインドネシア政府に対していずれの措置も受け入れることは難しく、引き続き撤回を求めていく」

日本政府は、制度の見直しを強く働きかけてきたが、インドネシア国内では資源採掘による収入が「地元経済に十分還元されていない」との不満が強く、4月の総選挙や7月の大統領選挙を考慮して、今回、部分的に緩和策をとったうえで、法律の規定どうり禁輸に踏み切った。

ニッケルについては鉱石での輸出は禁止される。




 

韓国のS-Oilに35%出資しているSaudi Aramcoが、韓国の韓進 グループが所有するS-Oilの株式28.4%を買い取ることが分かった。
最近の株価では買収額は22億ドルになる。買収後のAramcoの出資比率は63.4%となる。

韓進グループは、傘下に海運会社の韓進海運、航空会社の大韓航空(KAL)、陸運会社の韓進などを持つ財閥で物流を中心に事業を展開している。
韓進重工業も元は同一グループであったが、2005年に別グループとして独立した。

韓進グループは2007年に韓進エナジーを設立し、S-OiLの株式28.4%を取得した。

KALと韓進海運の使用する燃料を安価に入手することを狙った。
両社の燃料購入先はGSカルテックスとSKの2社が65%以上を占めていたため、S-Oilにとっても安定供給先の確保ができ、メリットがあった。

2007/3/9  韓国の石油精製 S-Oil に韓進グループが参加


2008年のグローバル経済危機で、海運業は大きな打撃を受け、韓国3、4位企業だったSTX Pan Oceanは2013年6月、大韓海運は2011年1月に法定管理に入り、"2強"の韓進海運と現代商船も2010年から赤字が続いている。

韓進海運の負債総額は急増し、負債比率は2010年末に261%であったのが、2013年6月には775%にもなった。金融機関から背を向けられ、債務返済資金が調達できず、大韓航空に支援を要請した。

大韓航空は2013年12月19日、公開経営説明会を開き、グループの「自救計画」を発表した。

韓進グループは株式、不動産、航空機を売却し、3兆5000億ウォン(33億ドル)を調達、韓進海運への支援資金とする。

売却対象:
 韓進エナジー保有のS-Oil株 28.4% 全て(時価22億ドル)
 
航空機13機ボーイング747-400、ボーイング777-200など機齢が高く燃料の消耗が多い旧型航空機
 
栗島(ユルド)備蓄油基地や教育院などの不動産

S-Oil株はS-Oilの株主であるSaudi Aramcoに売却する。


SaudiAramcoはS-Oilに1991年以降 35%出資している。
(SaudiAramcoは日本では昭和シェル石油に15%の出資をしている。)


 


以前に本ブログで、友人で化学会社OBの中原洋氏の 「腐敗と寛容 インドネシア・ビジネス」 (東洋経済新報社)を紹介した。

中原洋氏の本 「腐敗と寛容 インドネシア・ビジネス」 (東洋経済新報社)が面白い。
本ブログのチャンドラ・アスリの項で「インドネシア特有の理由で建設費が異常に高いと言われていた」としたが、この辺の事情も詳しく書かれている。
インドネシア全般に蔓延する汚職については止むを得ない点もあるとするが、政府関連の大規模なものは区別して批判的である。


中原氏が今度は13世紀のジャワ島を舞台とする小説「苦い花梨・マジャパヒト 元軍襲来・ジャワ戦記」を書いた。

モンゴル・元軍は東方および南方戦線に限っても二度、大敗北を喫することとなった。初めは日本。二度目は越南(ベトナム)である。

だが、モンゴル・元軍が、三度目の敗北を喫したことはあまり知られていない。フビライ・ハーンが命じたジャワ遠征の失敗である。遠く南海の波濤を越え、はるばるジャワ島までやってきたモンゴル・元の遠征艦隊は、ジャワ人の巧みな策略に乗せられ、逃げるように去らざるをえなかった。

ジャワ人が強力なモンゴル・元軍の侵略とどう戦ったか、このあまり知られていない一大冒険絵巻をひもとき、その面白さを知ってもよいと思う。日本では元寇がひとつの時代を変えるきっかけとなった。同様にインドネシアのジャワ島でも、元寇は新しい時代を生む契機となり、歴史を推し進めたからである。

(同書まえがきより)


非常に面白いので、ご関心をお持ちの方はどうぞ。(右の本紹介トップをクリックするとアマゾンに飛びます。)

なお、ウィキペディアにこの歴史事実が書かれている。


付記

中原 洋氏は以前にChemnet Tokyoに随筆 風の音 を連載していた。

2006年08月07日に「 マジャパヒトの実」がある。

 東南アジアで奇異に感じたことのひとつに、都会に住む一般の人々が花や木の名前を知らないということがあった。咲き乱れる美しい花の名を訊いても、ほとんどの人が知らない。自分の家の庭に咲く花の名を知らない人さえいる。花や木に興味がないのか、それともあまりに豊富なのでいちいち憶えていられないのか。

 もちろん有名な花、たとえば火焔樹やブーゲンビリア、ハイビスカスなどは知っている。ちなみにハイビスカスはインドネシア語でブンガ・スパトゥ、靴の花と呼ぶ。どうして靴の花なのか不思議だが、小林英治氏の「熱帯植物散策」によると、むかしこの花でよく靴をみがいたのでそう呼ぶようになったらしい。そういえば英語でもシュー・フラワーというのは、靴の花を直訳したのだろうか。

 だが少しばかり変わった花木になるともうだめだ。たとえばインドネシアで歴史上有名なマジャパヒトの木。その名が中世ジャワに栄えた最大の王国の名になっている。だから誰でも知っていると思っていた。ところがマジャパヒトの木を探しても、ほとんどの人が知らない。名前を聞いたことがあるというだけだ。

 マジャパヒトとは苦いマルメロの意味。西洋カリンの一種である。王国の建設者ラーデン・ウィジャヤが開拓した土地にたくさん生えていたので王国の名になったという。どんな実か探しまわったあげく、思いがけぬ身近な庭に発見したときは感動だった。

 ゆたかに葉を茂らせた木の幹に直接、つやつやと輝く緑の、みごとにまん丸いサッカーボールほどの実がなっている。思わず撫でたくなるようなすばらしい果実だった。熟して黄褐色になったころ実を採取し、殻を割ってみようとした。それがひどく堅い。大きな包丁でも歯がたたず、のこぎりでぎしぎし切ってやっと割ることができた。

 でてきた中味は灰色のぶよぶよゼリー。見ていたインドネシア人が、これがマジャパヒトかといいながら指ですくって舐めた。すぐペッと吐きだし、パヒト(苦い)という。名前のとおりマジャパヒトは、みかけは美しくとも中味は苦い果実だった。

 花や木の名前に興味がないのはシンガポールでもおなじだ。都会で科学技術教育だけに専念すると、自然との対話を忘れがちになる。経済的繁栄を求める国々が、マジャパヒトの実のような国にはなってほしくないものである。

 

 


環境省は水俣病の患者認定について、メチル水銀との因果関係が認められれば、手足の先のしびれなどの感覚障害だけでも認める方針を固め、近く、熊本、新潟両県など関係自治体に通知する。


水俣病の認定については、環境庁は「手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせ」(52年基準)を条件としているが、2013年4月16日に、水俣病未認定患者の遺族が熊本県に認定を求めた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁は、裁判所が患者認定を独自に審査しうるとするとともに、「52年判断条件」に基づく高裁判決を破棄した。

「52年基準」についての最高裁判断:

手足の先の感覚障害だけの水俣病が存在しないという科学的な実証はない。

「52年基準」は、複数の症状が認められる場合には通常水俣病と認められ、個別的な因果関係について立証の必要がないとするもので、多くの申請について、迅速かつ適切に判断するための基準として定めたという限度で合理性を有する。

「52年基準」の症状の組み合わせが認められない場合でも、諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、水俣病と認定する余地を排除するものとはいえない。

2013/4/17  水俣訴訟、最高裁判決 

最高裁判決を受け、石原伸晃環境相は2013年4月19日の閣議後記者会見で、「判決の趣旨をしっかり踏まえ、(運用改善の)具体化を急ぐよう指示した」と述べ、検討を始めたことを明らかにした。



今回の決定はこれを受けたものであるが、認定基準そのものの変更ではなく、「補足」と位置付けた。

通知案のポイントは以下の通り。

・感覚障害のみでも認定できる

52年基準では、手足のしびれや視野狭さく、運動障害など複数の症状の組み合わせが必要

・魚介類の多食時期や入手方法に加え、体内水銀濃度や居住歴、職歴などを確認する

有機水銀に汚染された魚介類をたくさん食べた時期や、魚介類の入手方法から認定申請者のばく露状況を確認、その上で(1)メチル水銀を摂取した当時の毛髪やへその緒などによる体内の有機水銀濃度 (2)汚染地域での居住歴 (3)家族の認定状況 (4)漁業などの職業歴−−を確かめる。

・水俣病に特徴的な症状か確認する

・水銀ばく露から発症までの期間は通常約1カ月、長くて約1年以内と考えられる

「時期が近くない場合は別の病因や加齢の影響が高まる」との見方。

・できる限り客観的資料の裏付けが必要

さまざまな機関が行った疫学調査などでも「適切な手法」で得られた結果であれば資料として取り扱えるとしたが、個別具体的な本人情報が記載されていることが条件。

・過去の処分の再審査はしない

過去の審査結果は見直さず、棄却された人も再審査をしない。


この認定条件は非常に厳しく、多くの被害者にとって水銀ばく露を証明する書類を今から確保するのは極めて困難で、これが救済対象の拡大につながる可能性は低いとみられている。

被害者団体では、「毛髪やへその緒の水銀値などの記録が残っている人は少ない。この内容で審査したら、最高裁判決や不服審査会の裁決を受けて水俣病と認定 された人たちが、認定されないことになる。「52年基準」よりも認定しにくくするもので、環境省は最高裁判決を全く無視したと言わざるを得ない。被害の実 態に反するごまかしだ」と厳しく批判している。

 「52年基準」では、複数の症状が認められる場合には通常水俣病と認められ、個別的な因果関係について立証の必要がない

 


中国税関総署が1月10日に発表した2013年の中国の貿易統計によると、貿易総額は前年比7.6%増の4兆1603億ドルと初めて4兆ドルを突破した。

中国の輸出額は2009年に世界一となったが、輸入額では米国に次ぐ2位にとどまっていた。
2013年の輸出入はいずれも過去最高を記録、貿易総額で米国を抜いて世界貿易で首位に立ったと見られる。

    単位:億ドル
  輸出 輸入 貿易総額 貿易黒字 前年比伸び率 (%)
輸出 輸入 貿易総額
2012年 20,489 18,178 38,668 2,311 7.9 4.3 6.2
2013年 22,100 19,503 41,603 2,598 7.9 7.3 7.6

しかし、輸出入の伸び率を見ると、輸出は7.9%増、輸入は7.3%増で、2年連続で1桁台に止まっている。
貿易総額の伸びも政府目標の8%増には届かなかった。

人件費増や人民元の上昇などによる競争力の低下で、今後も伸びは緩やかになると見られている。

輸出入相手をみると、日中関係の悪化により、主要貿易相手のなかで対日貿易だけが減少している。

ASEANへの輸出、米国からの輸入の伸びが大きい。

輸出先別輸出額 (億ドル)
  2010 2011 2012 2013 前年比
日本 1,211 1,483 1,516 1,503 99%
ASEAN 1,382 1,701 2,043 2,441 119%
EU 3,112 3,560 3,340 3,390 101%
USA 2,833 3,245 3,518 3,684 105%
 
輸入元別輸入額 (億ドル)
  2010 2011 2012 2013 前年比
日本 1,767 1,946 1,778 1,623 91%
ASEAN 1,546 1,928 1,958 1,995 102%
EU 1,685 2,112 2,121 2,201 104%
USA 1,020 1,222 1,329 1,526 115%

 


それにしても、いつものことながら、年間統計がこんなに早く発表できるのは驚きである。

ーーー

中国の人民元は上昇を続けている。

中国人民銀行が決める基準値は12月27日から31日まで3日連続で最高値を更新した。
終値も同様に3日連続で最高値を更新、年明け後も1月2日に最高値を更新 (6.0506元/ドル)、同日は一時高値も更新した。

弾力化前の2010年6月8日終値と比較し、12.8%の元高となっている。





Braskemは2013年12月17日、SolvayからSolvay Indupa の70.59%の持ち株を290百万米ドルで買収する契約を締結したと発表した。

政府の認可を得た後、TOBを行い、一般株主の残り持ち株を買い取り、100%子会社にする。

2013/12/23 Braskem、SolvayからSolvay Indupa を買収


しかし、アルゼンチンの証券取引委員会は2014年1月3日、買取価格が公正な市場価格より低いとして、これを認めないと発表した。

Braskem のオファー価格は1株1.35 ペソだが、2013年9月末の会社の簿価は1株2.81ペソ、2013年第4四半期平均株価は3.92ペソ、最終取引価格は5.70ペソであったとしている。

Solvay Indupaの一般株主のうちには、アルゼンチンの国家年金基金(ANSES)(持株比率 16.71%)がある。

 

Solvay Indupa 株式の推移を見ると下図の通りで、2013年7月までは殆ど取引がなく、1月から7月末までの平均株価は1.57ペソであった。

しかし、8月に入り売買株数は急増し、株価も高騰している。

昨年12月17日の終値は5.70ペソで、この日に1株1.35 ペソでの買収が発表された。12月18日から本年1月3日までは取引がなく、1月6日の終値は3.46ペソに下がった。

Solvayは今回の売却発表にあたり、Solvay Indupaは同社にとって2012年第4四半期以降、売却対象資産であったとしているが、昨年8月からの株価高騰は、Braskemへの売却交渉の情報が漏れたためかも分からない。

証券取引委員会としてはこの異常な価格の方を調査すべきではなかろうか。

Solvayの1月9日の発表では、Braskemは2つの公正意見書に基づいて1.35ペソをオファーしたとだけ述べているが、この価格で合意し、外部に発表していることから、Solvayとしては妥当な価格と判断したと思われる。

Solvayによると、Braskemはアルゼンチンの証券取引委員会と本件について協議している。価格見直しの可能性がある。

一方で、ブラジルとアルゼンチンの公正取引委員会に申請が行われている。




欧州委員会は2013年12月18日、ドイツの再生可能エネルギー法(EEGErneuerbare-Energien-Gesetz )の2012年改正で、電力集約的な製造業者が賦課金を軽減されていることについて調査を開始すると発表した。

現在、BASF やThyssenKruppなど、ドイツの重工業の2,000社以上が恩恵を受けている。

合わせて、電力供給事業者が、供給する電力の50% 以上が再生可能エネルギーによる電力である場合、自社で消費する電力の賦課金が軽減されていること ("green electricity privilege") についても調査を行う。

欧州委員会が違法とみなせば、(これまでの分を遡及して支払いをさせる可能性が強く)、恩恵を受けていた各社は数十億ユーロを支払う必要が出てくる。
しかし、Merkel 首相は雇用に悪影響を与える法律改正は断固ブロックすると述べた。

ーーー

ドイツでは、1991 年に制定された電力供給法と、この法律を引き継いで2000 年に制定された再生可能エネルギー法(EEG)により、再生可能エネルギーによる発電を現在まで順調に伸ばしてきた。

EEGでは再生可能エネルギーの固定価格買取と、消費者の賦課金が決められている。

賦課金(2013年は1キロワットあたり5.3セント)については従来から軽減規定があるが、2012年法で一部改正された。
 

・電力集約的な製造業者
  これまでも、電力集約的な製造業者の賦課金の支払義務は軽減されてきたが、この軽減措置を受けることができる対象の範囲が拡大された。
     
  従来: 直前の事業年度の電力消費量が10ギガワット時超、かつ、企業の粗付加価値に対する電力費用の割合が15% 超である企業
  改正: 直前の事業年度の電力消費量が1ギガワット時以上、企業の粗付加価値に対する電力費用の割合が14% 以上
     
  賦課金軽減が開始されて以降、認定を受ける企業の数は上がり、軽減分の転嫁を受けて一般電気料金が上昇を続けている。
改正で条件が引き下げられた為、ますます多くの企業が免除の申請を行っている。
     
・電力供給事業者
 
  電力供給事業者は下記の場合、自社で消費する電力のすべてについて賦課金の支払いを免除されていた。
2012年からはこうした企業に対する減免の上限は1kWあたり2セントとなった。
     
  従来: 電力供給事業者が供給する電力中、50% 以上が国内の再生可能エネルギーによる電力である場合
  改正: これに加えて、20%以上が風力又は太陽光による電力である場合
     
・自家発電等
  従来: 最終消費者が自家発電した電力を消費する場合
  改正: 自家発電した電力を発電施設に近接した場所において自家消費する場合に限る。


2012年1月1日から施行された「2012年法」では、再生可能エネルギーによる発電を一層促進するために、エネルギー計画の目標が取り入れられ、再生可能エネルギーによる電力の買取価格(「補償金額」)が見直されたほか、再生可能エネルギーによる発電量が増大してきたことにかんがみて、再生可能エネルギーによる電力と従来電力との市場統合を促す規定が定められた。

2012年法での仕組みは下記の通り。


系統運用者は再生可能エネルギーによる発電施設を優先的に送配電網に連系し、その電力を買い取る。

系統運用者は、送電系統運用者にこの電力を転売する。

送電系統運用者は、再生可能エネルギーによる電力を電力市場で差別なく販売する。

従来は、再生可能エネルギーによる電力を、電力供給量の割合に応じて電力供給事業者に再販売していた。

送電系統運用者は、補償のために必要な支出と再生可能エネルギーによる電力を販売して得た収入との差額=「賦課金」を、電力供給事業者に対して要求する。

ソース:ドイツの2012 年再生可能エネルギー法

 参考  

 送電系統運用者

名称 Tennet Amprion Transnet BW 50 Hertz
管轄地域 中央部 旧西ドイツエリア 南西部 北東部
  オランダの国営TSOが買収 株式の約25%をRWEが保有 EnBWの子会社 ベルギーのTSO Eliaグループ

 
 四大電力会社

名称 E.ON AG RWE AG EnBW Energie
Baden-Württemberg
Vattenfall Europe
管轄地域 中央部 旧西ドイツエリア 南西部 北東部
  ドイツ最大の電力会社(欧州2位)
 
  株式の大半をエリアの州及び市町村が所有 スウェーデン国営会社のドイツ事業法人


欧州委員会は電力集約的な製造業者への軽減について、これまで問題視していなかったが、2012年の改正により、問題である可能性が出てきたとしている。

改正により、送電系統運用者4社が賦課金の管理を行い、政府がこれをモニターすることとなった。
軽減については多くの消費者や対象とならない業者から不満が出ているが、政府が関与する仕組みとなったため、政府の補助金の可能性が出てきた。
(以前のシステムでは単に購買契約に基づくもので、政府の補助金ではないとの欧州司法裁判所の判決がある。)

軽減は電力消費量が1ギガワット時以上で、企業の粗付加価値に対する電力費用の割合が14% 以上の企業に限定されており、EU市場内における競争を歪める恐れがあるとみている。

ただし、カーボン排出削減のために正当化できるかもしれないとの考えもあり、電力集約的な製造業者への軽減が正当化できるかどうか、不当に競争を歪めていないかを慎重に検討する。


再生可能電力に対する固定費買取価格そのものについては補助金であるが、欧州委員会は2008年のガイドラインで環境保護のための政府補助金を認めている。


"green electricity privilege" については、電力供給事業者が供給する電力中、50% 以上が再生可能エネルギーによる電力である場合に軽減されるが、国内の再生可能エネルギー(20年未満の稼動のもの)に限られるため、同様の設備であっても、国内の電力であるか輸入電力であるかの差別がある。
輸入電力が地元で同様の支援を受けていない場合に、差別があるかどうかを調査する。

 

 

サウジの紅海側の Rabighの近くのKing Abdullah Economic CityのKing Abdullah Port (第1期)が1月1日に開港し、 Petro Rabigh は1月5日、ここからポリオレフィンのコンテナー54個をシンガポールに向けて初出荷した。

Petro Rabighでは、工場の近くから出荷できることで輸送費が節減できること、世界市場に速く届けられること、これまで使用していたJeddah Islamic Port の混雑を避けられることなどの利点を挙げている。

King Abdullah Port はサウジの最も新しい港湾施設で、 Jeddah北方100kmにあるKing Abdullah Economic City (KAEC) 建設中である。

港湾地区は広さ約1500万m2で、全て完成した時の能力は2000万TEU(20フィートコンテナ単位)、世界最大のコンテナー船が停泊できる18mの深さのバースを30以上備える。

建設運営・管理を担当するのは私企業のPorts Development Companyで、2010年に建築複合企業の Saudi Binladin Group とKAECの開発を担当する開発業者のEmaar, the Economic City のJVとして設立された。サウジで唯一の私企業が所有運営する港湾施設である。

全て完成した時点で、紅海の主要港湾で世界の十大港湾の一つに入ること、世界で最も利用されるコンテナー輸送ルートの一つにおける主要積み替えハブになること、アジアと欧州を結ぶことを狙っている。


King Abdullah Economic City (KAEC)は2005年にサウジ国王が設立を発表したメガプロジェクトで、173 km² の土地に産業地区、港湾、居住地区、海浜リゾート、教育地区、ビジネス地区が建設されつつある。
教育地区にはKing Abdllah University of Science and Technology (KAUST) がある。

巡礼高速鉄道(Haramain High-Speed Railway)はメディナとメッカの444kmを2時間で結ぶ建設中の高速鉄道で、途中、ジッダ中央、ジッダ空港、KAEC駅がある。2014年開業予定。

 

   



Shellは2014年1月2日、RepsolのTrinidad & TobagoとPeruのLNG事業の買収を完了したと発表した。

買収金額は41億ドルで、他にLNG船のチャーターに係わる16億ドルの債務を引き受ける。

買収により、Shellが直接取り扱うLNGの数量は年間720万トン増え、LNG船の能力を飛躍的に増やす。
(能力持分の増加は420万トンで、Shellの全世界の能力持分は22百万トンから26百万トンに約20%増加する。)

一方でShellは本年に石油部門での売却を進める。
2013年11月にPeter Voser CEOはShell が
"a divestment phase"に入ったと述べた。2014年にも300億ドル (180億英ポンド) もの資産を売却するとしているが、背景には、精製マージンの低下やナイジェリアの石油窃盗で、純利益が大幅に減少したことがある。

売却候補は豪州のWoodside Petroleum (24%)の70億ドル、ナイジェリアの石油資産の20億ドル、その他の200億ドルと噂されている。

外資系企業にとって、ナイジェリアの最も大きな懸案事項は窃盗で、昨年の夏に、パイプラインから盗難された石油量は1日あたり190万バレルであった。同国における石油産出量は、4年連続で低下した。

Shellは、ナイジェリアの「運用上の課題」の影響で、第2四半期に2億5,000米ドルの損失があったことを明らかにした。「運用上の課題」とは、石油泥棒や当局による天然ガス輸出封鎖の影響である。

ーーー

今回買収する事業の概要は以下の通り。

1)Atlantic LNG Company of Trinidad and Tobagoの持分

同社は1995年に設立された。
Trinidad and Tobagoの周辺の天然ガスをパイプラインで 南西端のPoint Fortinに運び、4系列の液化設備でLNGにする。

4系列合計の能力は年間 1480万トン。


同社の出資比率、製品引取比率は下記の通り。

  出資比率 引取比率
Train 1 Train 2,  Train 3 Train 4
BP (AMOCO) 34% 34% 42.5% 37.78%
BG 26% 26% 32.5% 28.89%
Repsol 20% 20% 25% 22.22%
NGC 10% 10% 11.11%
Summer Soca LNG Liquefaction 10% 10%
能力   300万トン 330万トンx2 520万トン


NGCはTrinidad and Tobagoの権益を代表する国営の National Gas Company。
Summer Socaは中国のChinese Investment Corporationの子会社で、フランスのSuezから権益を買収した。当初の株主はCabot 。
 

2)Peru LNG の持分と引取契約

本プロジェクトはペルーの首都リマから南へ約170kmの太平洋沿岸Pampa Melchorita地区で天然ガスを液化、輸出するもので、原料となる天然ガスはペルー内陸部にあるカミセア・ガス田から供給される。

生産能力は年間445万トンで、Repsol は2010年のLNG生産開始から18年にわたり、LNG生産量の全量を購入する契約を締結している。

世界のLNG供給源の中で唯一南米地域に位置する本プロジェクトは、北中米西海岸に最も近く、極東地域にもアクセスが可能という地理的特性を持ち、今後も引き続き市場拡大が期待される環太平洋地域に競争力のあるLNGを供給できるというメリットがある。

同社の出資比率、製品引取比率は下記の通り。

  出資比率 引取
Hunt Oil 50%  
SK Energy 20%  
Repsol 20% 100%
丸紅 10%  


丸紅
は2007年8月にSKエナジーが保有する持分30%のうち10%分を購入した。

ーーー

Shell は全世界でLNG計画に参加している。

  能力 参加者
Pluto, Australia 480万トン  Woodside(Shellが24%出資)90%  
東京ガス 5%、関西電力 5%
North West Shelf Venture, Australia 1,590万トン BHP Billiton、BP、ChevronTexaco、Shell、Woodside Energy、Japan Australia LNG(三井物産/三菱商事)の6社が均等出資
Brunei LNG 671万トン ブルネイ政府 50%、Shell 25%、三菱商事 25%
Malaysia LNG 2,300万トン Malaysia LNG PETRONAS(90%)、サラワク州政府(5%)、三菱商事 (5%)
Malaysia LNG Dua PETRONAS(60%)、Shell(15%)、サラワク州政府(10%)、三菱商事 (15%)
Malaysia LNG Tiga PETRONAS(60%)、Shell(15%)、サラワク州政府(10%)、JX(10%)、Diamond Gas(5%)
* Diamond Gas は三菱商事80%、石油資源開発20%のJV
Nigeria LNG 2,200万トン Nigerian National Petroleum Corporation 49%, Shell 25.6%, Total 15%、Eni  10.4%.
Oman LNG 660万トン Oman政府 51%、Shell 30%、Total 5.54%、Korea Gas 5%、Partex (Oman) 2%、三菱商事 2.77%、三井物産 2.77%、伊藤忠 0.92%
Qatargas 4 780万トン Qatar Petroleum 70%、Shell  30%
Sakhalin 2 1,000万トン Shell 27.5%-1株、Gazprom 50%+1株、三井物産 12.5%、三菱商事 10%
Hazira, India
 再ガス化
  Shell 74%、Total 26%.
Altamira, Mexico
 再ガス化
  Shell 50%、Total 25%、三井物産 25%

 

* Shell は "a divestment phase"に入ったとし、2014年にも$30bn (£18bn) もの資産を売却するとしているが、売却候補にWoodsideが入っている。


 
2012年5月16日、シェルカナダ、韓国ガス公社(Kogas)、中国石油天然気(PetroChina)と三菱商事はLNG輸出計画「LNG Canada」構想を発表した。

4社でカナダのブリティッシュ・コロンビア州 Kitimat港周辺においてLNG輸出基地を共同開発する。

2012/5/17  Shell、三菱商事等の「LNG Canada」計画 

Shellは2013年1月28日、米国のエネルギー会社 Kinder MorganとのJVを設立して、ジョージア州Savannahの近くのKinder Morgan子会社のEl Paso Pipeline の既存のElba Island LNG Terminalに 2段階で天然ガス液化プラントを建設すると発表した。

2013/1/30 Shell、LNG輸出用の天然ガス液化プラント建設 

 



LyondellBasell は1月2日、テキサス州Channelviewのメタノールプラントが2013年第4四半期に再稼動したと発表した。

主原料の天然ガス価格の高騰により2004年以来休止していたが、低コストのシェールガスを利用し、再開した。
能力は年産 780千トン。

 

LyondellBasellは2011年12月8日に投資家説明会を開催し、現状と今後の戦略を説明したが、今後の成長戦略のなかで、米国で安価なエタンを使用したエチレンの増強などとメタノール再稼働を明らかにした。

2011/12/20   LyondellBasellの成長戦略

シェール革命により、米国の石油化学は蘇生した。天然ガス価格の下落により、生産コストは激減する。

LyondellBasellの説明会資料では、エチレンやメタノールのコストの有利性は下記の通り変化した。

  エチレン
 

 

  メタノール
 


エチレンについては、2011年12月にはChannelviewとLa Porteでの増強を発表していたが、2013年3月にCorpus Christiでの増設計画を明らかにした。
いずれも2014年~2015年に完成する。

  2011年12月8日発表 現在の計画
千トン
既存能力
千トン
原料 計画(千トン)
Channelview, TX  1,750 flexible 原料エタン増強
エチレン若干増強
エチレン +110
La Porte, TX 790 Gulf Coast NGL エチレン +390 エチレン +390
Corpus Christi, TX 770 Flexible   エチレン +360   
Morris, IL 570 Midwest NGL エチレン/プロピレン
 若干増強
 
Clinton, IA 480 Midwest NGL
エチレン合計 4,360     エチレン +860
プロピレン 450 Methathesis Channelview +230  
230 Refinery grade    


ーーー

米国では安価なシェールガスを利用する 大型石化計画が相次いでいる。

 

 


Sinopec Engineering Group は2013年12月26日、 Zhong Tian He Chuang(中天合創)が内蒙古自治区オルドス市のUxin地区で計画しているCoal-to-Chemical プロジェクトの設計・調達・建設(EPC) 契約に調印した。

計画では、石炭ガス化により年産360万トンのメタノールを生産、MTOでオレフィン 120万トンを生産、更に副生C4~C6を接触分解してプロピレン等を生産、最終的にPEとPPを生産する。

総投資額は186.7億元(約31億ドル)で、引渡しは2015年10月30日となっている。

これまでで最大のCoal-to-Chemical プロジェクトである。

中天合創は、Sinopecが38.75%、国営の石炭生産大手の中国中煤能源(China Coal Energy) が38.75%出資するJVで、他に上海申能(Shenergy)が12.5%、內蒙古滿世煤炭が10%出資する。

当初は、2010年の生産開始を目指して、年産2,500万トンの石炭を採掘し、420万トンのメタノール、300万トンのDMEを生産することを計画していたが、DMEの市場性がないと判断し、MTOに切り替えた。


今回のEPC契約には下記プラントが含まれる。

石炭ガス化、精製  
メタノール 360万トン
MTO(オレフィン) 180万トン のメタノール処理施設x2系列  120万トンのエチレン、プロピレン
オレフィン接触分解 MTOで副生するC4~C6 20万トンを分解 約16万トンのプロピレン
MTBE/ブテン-1 1万トン/3万トン
PP(バルク法ループ型) 35万トン
PP(気相法 35万トン(PP 合計 70万トン)
LDPE(オートクレーブ) 12万トン
LDPE(チューブラー) 25万トン
LLDPE気相法 30万トン(PE 合計 67万トン)

Sinopec Engineeringは自社のMTO技術(SMTO)を使用する。

SMTO(Sinopec MTO)プロセスはシノペック上海石油精製研究(SRIPT)、シノペックエンジニアリング、シノペック北京燕山石化により共同で開発された。

2007 年に燕山石化が日産100トンのパイロットプラントを建設、2008年にメタノール投入ベースで年産180万トンのS-MTOプロセスの技術パッケージが完成した。

誘導品のうち、ガス法PP(35万トン)については、2012年2月にINEOSがInnovene PP processをライセンスしている。
ホモポリマー、ランダムコポリマー、インパクトコンポリマーを含むフルラインのPPを製造する。

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中国では石炭からのオレフィン製造("Coal to Olefins")が盛んで、多くのプロジェクトが進行している。
2011年11月時点で、
20件以上のCoal -to-olefins が建設中か検討段階にあった。

2011/10/26  中国の"Coal to Olefins"の現状

神華包頭石炭化学は2010年7月初め、内蒙古自治区の包頭で年産180万トンの石炭ベースのメタノールの生産を開始した。
同社はこの
180万トンのメタノールから、エチレン30万トン、プロピレン30万トンを、これから30万トンのポリエチレンと30万トンのポリプロピレンを生産する。

オレフィン製造には中国科学院大連化学物理研究所(DICP-CAS)とSINOPEC Luoyang Engineeringが開発したDMTO 技術を採用した。

これは現在稼動中の唯一のMTOによるエチレンである。

2010/7/23 神華包頭石炭化学、秋に中国最初の石炭からのポリオレフィン生産をスタート



ダウと神華集団は2009年11月3日、陜西省楡林市で大規模石炭化学JVの起工式を行った。

投資額は約100億米ドルで、陜西省楡林市に石炭と岩塩を原料とし、石炭化学・クロルアルカリ技術を使った23のプラントが建設される。

主な製品は以下の通り。(年産能力)

 メタノール 332万トン(Coal to Methanol)
 オレフィン 122万トン(Methanol to Olefins)
 クロルアルカリ 50万トン
 MEG  40万トン
 エタノールアミン/エチレンアミン 21万トン
 ポリエーテル ポリオール 34万トン
 アクリル酸 15万トン
 アクリレート 20万トン
 EDC  51万トン
 PVC  50万トン

2009/11/10 ダウと神華集団、陜西省で大規模石炭化学JVの起工式 




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