RING 第三次事業計画 発表

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石油コンビナート高度統合運営技術研究組合RING)は18日、第3次事業計画を発表した。

RINGは、石油及び石油化学産業等の20社により2000年5月に設立され、コンビナートの国際競争力強化と再生を目指して「コンビナート・ルネッサンス事業」を開始した。

同事業の狙いは添付Ringroadmapの通り。

現在の組合員25社で、以下の通り。
旭化成ケミカルズ、出光興産、ヴイテック、大阪ガス、鹿島石油、コスモ石油、山陽石油化学、ジャパンエナジー、昭和シェル石油、新日本石油、新日本石油精製、住友化学、大陽日酸、帝人ファイバー、東亜石油、東ソー、東燃ゼネラル石油、トクヤマ、徳山オイルクリーンセンター、日本ゼオン、日本ポリウレタン工業、丸善石油化学、三井化学、三井武田ケミカル、三菱化学

第1次事業は2000年度から02年度までの3カ年で、コンビナート内設備の共同運用による製品や原材料の最適融通等を高効率に行うことを可能とする高度統合運営技術開発を全国5地区で行った。

第2次事業は03年度から
05年度までの3カ年計画で、コンビナートにおける新たな環境負荷低減対策技術の確立、更なる合理化・高度化を図るための副生成物高度利用及びエネルギー統合回収・利用に関わる高度統合技術の開発を、全国5地区にて行った。

今回の第3次事業計画は06年度から09年度の4年間で、事業は以下の通り。06年度の総事業費は約78億円。

【鹿島地区】「石油・石化原料統合効率生産技術開発」

 コンデンセートをスプリッターにかけ、C5留分など他の副生成物と一括して脱硫し、芳香族やガソリン、エチレン、プロピレンの原料として効率的に利用する。参加企業は鹿島石油、三菱化学、JSR、鹿島アロマティックスの4社。
 

【千葉地区】「コンビナート副生成物・水素統合精製技術開発」

 コンビナート内で副生する未利用C4留分を原料として高効率でプロピレンを生産する技術を開発する。また、全域の副生水素を集め、大規模に活用するための高純度回収技術、安定供給システムを開発する。参加企業は出光興産、コスモ石油、極東石油工業、三井化学、住友化学、丸善石油化学、大陽日酸の7社。
 

【水島地区】「コンビナート原料多様化最適供給技術開発」

 原料多様化のためコンデンセートを精製処理し、エチレンやガソリン、芳香族生産のための原料として安定的に製造・供給する技術を開発する。参加企業は新日本石油精製、ジャパンエナジー、三菱化学、旭化成ケミカルズ、山陽石油化学の5社。

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第1次~第3次の事業計画は以下の通り。Ringimage_1

 

石油コンビナート高度統合運営技術研究組合についてはホームページ参照
http://www.ring.or.jp/

図は同ホームページから(第3次は当方で追加)。

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なお、「コンビナート高度統合研究会」(伊丹敬之・一橋大学教授を委員長に産官学の委員14氏で構成)は23日、報告を発表した。

伊丹委員長は「海外の工場も訪ねて日本のコンビナートが抱えている課題や今後のあり方などを整理してみた。日本のコンビナートは原料調達や利用、コスト競争力など、いくつかの点で弱みをもっている。しかし、こうした弱みは克服すればいいわけで、逆の見方をすれば将来の強みにもなる」と述べた。

第8回 コンビナート高度統合研究会(2006/3/1)では以下の発言がある。
「エチレン生産750万トンのうち、内需は500万トン、輸出は250万トンである。今後、中国での新たな新プラント稼動等により競争環境が激化することが予測されているが、わが国石化産業も、このアジア市場でどう戦えるのかということを考えていかないと、国内の内需さえも一気に食われてしまうことにもなりかねない。」

報告書では、日本の弱みとして
・コンビナートの構成企業が統合されていない
・コンビナートが全国各地に分散し、小規模
・原料多様化が不十分、
などの点を指摘、「
コンビナートが連携・統合をはかることで原料の有効利用、中間品やエネルギーの相互融通、コスト削減と付加価値生産性の向上等を通じ、問題解決と競争力強化を同時達成していくことが喫緊の課題である」と強調している。 

コンビナート統合の実現に向けた「提言」として、以下の7項目を挙げている。
(1)アクションプログラムの策定
(2)技術課題の研究開発
(3)広域的パイプラインの敷設・整備
(4)社会的規制の最小化
(5)運営・組織形態制度の改善
(6)人材育成
(7)総合的な行政支援体制 

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RING 第三次事業計画はそれ自体結構なことだ。しかし、これは今のコンビナートの存続を前提に、やれることをやるというものである。

研究会の提言にあるコンビナートの連携・統合がどういう形のものを目指しているのかはっきりしないが、日本の石化の根本問題は過剰能力である。
今後は輸出に期待できない以上、この過剰能力の解消が必須である。
今のままなら、過剰能力→過当競争による値下がり→赤字となるのは必至である。

最終的には誘導品が弱いコンビナートをつぶすしかないと思われるが、産構法の時のように全体で相談してやることではない。下手をすれば共倒れになりかねない。

結局は各社が独自に判断すべきであろう。

コメント(3)

どうもご無沙汰しております。
でもちゃんと毎日拝見して勉強させてもらってます。
RING、昔からある話ですが、ご指摘のとおりですね。一時期は皆が協力すれば何とかなると思った時期はありましたが、やはり過剰供給問題は何ともならない話ですよね。
となると・・・どこかがエチレンセンターをやめるとかの選択肢になるのですかね。な訳ないですね。やっぱりマテリアルフローを含めたコンビの構成員の体力勝負か地政学的な優劣で決まるということですかね・・・

ヘッドコ-チです。Ring3委員長以下、結論をきれいな形で教科書的にまとめられておりますが,管理人さんのご指摘どおり、各社独自にそれぞれ提携するしかないと思います.分解炉更新も各社計画を発表してますし、中国需給バランスで先が見えてくるでしょうね. 過去のやり方をなかなか変えられない官僚制度…。業界でイノベーション起こしましょう。

ところで以前からわからなかったのですが輸出250万トンは、ポリマーとそれ以外の多々の化学品も入っているのでしょうか?? 換算が複雑かと思いますが。

昨年のエチレン換算輸出量は227万トンでした。
内訳は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/ethylene-kanzan.htm

をご覧ください。各誘導品の輸出量にそれぞれの原単位をかけて計算しています。

なお、METIは「世界の石油化学製品の今後の需給動向」では
中国の塩ビに関しては、カーバイド法の存在を理由に2005年~2010年の原単位をPVC:0.25、VCM:0.25 としています。

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