アステラスの眼疾治療薬、米で承認

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アステラス製薬の米国子会社 IVERIC bio,Inc.は8月4日、地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性の治療薬として開発中の IZERVAY™ (一般名:avacincaptad pego )硝子体内注射液について米国食品医薬品局(FDA)から承認を得た。

米国における適応症は地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性で、この適応症に対して唯一承認されている補体因子C5 阻害剤である。欧州でも承認申請中。

補体因子C5 阻害剤は、免疫系の一部である補体系を標的とする薬物であり、炎症や組織損傷を制御するために使用される。IZERVAY™は、硝子体内注射液として投与され、加齢黄斑変性症の進行を抑制することが期待されている。

アステラス製薬では、年間売上高10億ドルを超える大型薬「ブロックバスター」になることを期待している。


2023年2月,FDAはApellis Pharmaceuticals Inc
のSYFOVRE™(ペグセタコプラン注射)を加齢黄斑変性症に続発する地図状萎縮の治療薬として承認した。SYFOVREは補体C3 を標的とするペグ化ペプチドで、加齢黄斑変性症(GA)に伴う二次性地理的萎縮の治療薬として承認された。成分薬剤のペグセタコプランは、発作性夜間ヘモグロビン尿症に対する皮下注薬剤としてもFDAに承認されている。

しかし、発売後に重度の目の炎症や視力喪失の症例が出現、世界最大の網膜専門医の組織である米国網膜専門医協会は、医師らが閉塞性網膜血管炎の複数の症例を報告したことを受けて、安全性に関する通知を発表した。

これらの副作用のためにApellisの株価は3分の2 以上下落した。

IZERVAY™は、アステラス製薬が2023年7月11日に買収完了(4月29日に買収契約を締結)、同社の子会社となった米国のバイオ医薬品企業 IVERIC bio, Inc.が開発したもの。

IVERIC bio, Inc.は眼科領域において新規治療薬の研究開発に注力しており、
IZERVAY™について米国食品医薬品局(FDA)から優先審査指定を受け、8月19日がFDAによる審査終了目標日であった。


黄斑は網膜の中心部にあるわずかな領域で、中心視力をつかさどっている。

加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration: AMD)は、高齢者における中等度から重度の中心視力低下の主な原因であり、患者の大半は両目を侵されている。
滲出型加齢黄斑変性と萎縮型加齢黄斑変性がある。

AMD が進行すると黄斑部の網膜色素上皮細胞とその下部にある血管が失われ、網膜組織が著しく薄くなったり、萎縮したりする地図状萎縮(GA)を伴う 萎縮型AMD は、患者の視力を不可逆的に低下させる。


   . https://www.kurachi-ganka.com/disease/age-related-macular-degeneration


    .... https://www.healios.co.jp/development/ipsc/amd/

地図状萎縮(GA)は米国で約150 万人に影響を及ぼしているが、米国で GA を患っている人の約75%は未診断と考えられている。適切なタイミングでの治療がなければ、GA 患者の推定 66%が失明または重度の視覚障害になる可能性がある。

今回の承認取得は、GA を伴う AMD 患者を対象に、IZERVAY を毎月 2 mg ずつ硝子体内投与し、安全性と有効性を評価した 2 つのピボタル試験の結果に基づいている。投与後 12 カ月時点での一次解析では、偽処置対照群と比較して、IZERVAY 投与群で GA の進行速度が統計学的に有意に抑制していることが示された。GA の進行速度の抑制は、早ければ投与後 6 カ月時点で見られ、最初の 1 年間で最大 35%抑制した。

GATHER 試験における ACP 2 mg 投与群で投与 12 カ月後に報告された最も一般的な有害事象(発生率 5%以上)は、結膜出血(13%)、眼圧上昇(9%)、かすみ目(8%)で、眼圧の上昇は一過性であり、次の診察までに投与前の水準に回復した。

なお、滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)には抗VEGF薬の硝子体注入が標準治療である。

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アステラス製薬IVERIC bio, Inc.との間で1株当40.00米ドル、総額約59ドルの現金を対価としてIVERICを買収することで合意し、429日に契約を締結した。(2023/7/11 買収

合意した取得価格はIveric Bio株式の2023331終値(24.33米ドル/株)に対して64%同日から過去30日間の売買高加重平均価格に対しては75%のプレミアムを加えた価格となる。

アステラス製薬は、VISION「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの『価値』に変える」の実現に向け、最先端の「価値」駆動型ライフサイエンス・イノベーターを目指している。研究開発戦略であるFocus Areaアプローチとして、多面的な視点でバイオロジーとモダリティ/テクノロジーの独自の組み合わせを見出し、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する革新的な医薬品の創出に取り組んでいる。

本買収は、アステラス製薬が掲げる重点領域における製品ポートフォリオ構築のための重要なステップとなる。

Iveric Bio社のリードプログラムである IZERVAY™を獲得することが、アステラス製薬の経営計画2021で定める2025年度までの売上目標に貢献するだけでなく、IZERVAY™は fezolinetant(閉経に伴う中等度から重度の血管運動神経症状の治療薬)やPADCEV(抗体-薬物複合体)とともに収益を生み出す柱として、2020年代後半に控える前立腺がん治療剤 XTANDI ®の独占期間満了による売上減少を補うことが期待されている。

また、IVERIC bio社の買収により、アステラス製薬は、コマーシャルチームや、専門家との広範なネットワーク、医療機関とのパートナーシップを含む、眼科領域における基盤ケイパビリティを獲得する。このようなケイパビリティ獲得を通じて、アステラス製薬は、Primary Focus「再生と視力の維持・回復」における目標達成に向け、臨床開発・市場アクセスを加速させていく。

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