中国のAI 国家プロジェクト「東数西算」

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「2023世界人工知能大会」が7月に上海市で開催され た。上海市政府が国家発展改革委員会、工業・情報化部、科学技術部、国家インターネット情報弁公室、科学院、工程院、科学技術協会などと共催した。

工業・情報化部の徐副部長は開幕式で、中国はAIインフラの整備を加速させ、世界2位の計算力規模を形成しているとし、 東部地域のデータを西部地域で演算処理する国家プロジェクト「東数西算」などの重点プロジェクトが加速度的に進み、第5世代移動通信システム(5G)基地局が280万カ所を超え、2500カ所以上のデジタル工場とスマート工場が完成していると語った。

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2022年2月17日、中国国家発展・改革委員会ハイテク局は、8カ所の国家コンピューティング中枢拠点と10カ所の国家データセンタークラスターの全体的なレイアウト設計を終え、「東数西算」プロジェクトとしての全面的な実施を承認したとの発表を行った。

中国においても年々コンピューティング需要とそれに伴う電力需要が増大しており、それは特に中国沿岸部(東部)に偏在している。これを比較的再生エネルギー電力(風力・太陽光・水力発電等)が豊富な内陸部(西部)で分担することにより、コンピューティング電力の需給バランスを改善するとともに、カーボンニュートラルへの対処・国土の均衡ある発展を両立することを目的としている。

中国では広大な国土に偏在する需給バランスを解消するため、これまでも以下のような国家級プロジェクトが実施されてきた。

「南水北調」:南部(主に長江)の水を北部に移動。
「西電東送」:西部の電力を東部に送電。
「西気東輸」:西部の天然ガスを東部に輸送。

今回:
「東数西算」:東部の
数」(デジタルデータ )を西部で演算


東数西算の概要は以下の通り。

全国8カ所にコンピューティングに求められるネットワーク資源およびエネルギー資源を集約させた中枢拠点を設け、省エネと東西のデータ流通を促進させる。 東部地区のデータ処理業務を西部地区へ移転し、データセンターの配置を最適化することで、両地区の連携を促進する。データの長距離伝送にはタイムラグが伴うため、タイムラグを許容できない高度な演算業務については東部地域に建設する中枢拠点が担い、タイムラグの影響を受けないバックグラウンド処理やデータのバックアップなどの業務を優先して西部の中枢拠点に移す。

8地域・省区のハブ・ノードに10カ所のデータセンターのクラスターを形成する。データ処理の規模を拡大し処理効率を高めるとともに、川上から川下までの関連産業の発展を目指す。

今後は、ハブ・ノード間のデータネットワーク強化や再生可能エネルギーを利用した電力の活用、イノベーションの促進のほか、産業エコシステムを育成し、西部地区ではデータ加工やデータクレンジングなどの労働集約的産業の発展を支援する。

分担 8大ハブ(Computing Hub) 10大集積地 (Data Center)
東部 工業インターネット、金融証券、災害予測・警報、遠隔医療、ビデオ通話、AI等のタイムラグを許容できない業務を処理 京津冀(北京・天津・河北) 張家口
長江デルタ地域 長江デルタ生態緑色一体化発展モデル区
蕪湖
粤港澳大湾区
(Greater Bay Area)
韶関
中部 東部と西部両方の役割を担う。 成渝(成都・重慶) 重慶
天府
西部 バックグラウンド加工、オフライン分析、ストレージバックアップ等の業務 内モンゴル 和林格爾
寧夏 中衛
甘粛 慶陽
貴州 貴安

 



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