信越化学 爆発事故

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20日午後4時25分ころ、新潟県上越市の信越化学 直江津工場で爆発があった。3人がやけどなどで重体、14人が重軽傷を負った。
出火場所の4階にはメチルセルロース製造過程でパルプと薬品を反応させる機器などがあった。

爆発事故の原因は現在不明で、警察、消防などの現場検証を受けながら究明する。

同社は安全性が確認されるまで工場全体の操業を停止する方針で、「セルロース誘導体」の生産再開のめどがたたない状況。

セルロース誘導体は、建材用途や医薬用途に添加剤として用いられる水溶性高分子で、主原料のパルプのほか、メチルクロライドやプロピレンオキサイドなどを原料としている。 

信越化学の生産拠点は国内では直江津工場しかなく、あとはドイツに拠点があるだけ。今後の供給体制について同社は「ドイツからの輸入や競合他社への肩代わり依頼を検討している」という。

同社のセルロース事業については 
  2006/10/10  「
信越化学、ヨーロッパのメチルセルロース能力増強完了」 参照

セルロース事業ではダウが信越化学と首位争いをしている。
  2006/12/26 「
ダウ、Bayerからセルロース事業を買収」 参照 

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なお、直江津工場は敷地面積が約56万平方メートルで、従業員数は約千人。1973年にも爆発事故があり、死傷者が出ている。

以下 信越化学社史より:

1973年10月28日午後3時30分ころ、直江津工場の東側、ほぼ中央にある塩ビモノマー工場で爆発事故が発生し、火煙が十数mに達した。破壊されたタンクなどから流出したモノマーガスや溶剤に引火して爆発を繰り返した。
当日は日曜日であったが、直ちに自営および公設の消防車が出動して消火に当たった。しかし、火勢が強いため火元付近には近寄れず、事務室、分析室を焼いたあと火は計量タンクや球形モノマータンクに移り、2日後の30日午後1時になって鎮火した。
この事故により従業員1人が死亡、6人が重傷を負ったほか、近隣住民11人を含む17人の軽傷者があった。また、公共建物、民家約660戸の窓ガラスが割れ、瓦が落ちるなど被害範囲は半径2.2㎞にわたった。 

粗塩ビモノマーに含まれる不純物を除去するストレーナー(濾過器)の清掃が10日ごとに行われるが、事故はその作業中に起こった。このストレーナーは本来2系列あり、清掃ごとに交互に使用していたが、修理のため1系列で運転されていたことも不運につながった。清掃作業は予定通り行われたものの、作業員がストレーナー内に残留したモノマーガスを気化放散したところで、粗モノマータンク側のバルブからガスが漏洩していることに気がついた。このため作業員はバルブの締め方が不十分と考えて鉄製のハンドルまわしで力を加えたところ、バルブのヨーク部が切断されてバルブは全開状態となり、タンク内にあった粗モノマー約4トンが噴出してガスとなった。このガスは空気より重いため地上をはうようにして塩ビ工場一帯に拡散した。ガス噴出は3時15分ごろである。その後の15分間に危険を感じた塩ビ工場の作業員ができる限りスイッチを切って退去したあと3時半ごろに爆発が起こった。この時、現場確認のために戻った作業長が殉職した。

参考 2007/3/12 米国Formosa PlasticsのPVC工場爆発事故の調査結果」 
(30数年後に似たような事故が発生した)

1978年3月の新潟地方裁判所一審判決は、当社にとって厳しいものであった。現場作業員の器具取り扱いに対する過失とともに、保安・安全管理責任者としての課長および工場長の業務上過失責任を認めて、3人に対し禁固1年執行猶予2年の判決が示された。このなかで、管理者は現場の不完全な状態を予見し、作業員の安全数育を行う義務があり、安全装置の設置などにより予想される危険を回避すべき義務があることが指摘されている。

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付記 今回の事故の現場

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2007/3/21発表

セルロース誘導体全製品の出荷を22日から当分の間、停止

セルロース誘導体製品(メトローズ、hiメトローズ、土木関連製品、TC-5、HPMCP、信越AQOAT、L-HPC)の今後の製造・出荷に関しては、製造設備の一部が焼失しており現時点では製造再開の目処がたっていない。
また製品倉庫も隣接している為、出荷の早期な再開も難しいと判断。

2007/3/28発表

出荷再開について:
※ すでに製造済みの在庫品については、3/27(火)より一部の出荷を再開致しましたが、一部の倉庫が損傷していること、工場内の一部に立入り制限がかかっていること、また当面の間、一件一件在庫の状態と品質を確認しながらの出荷となりますことから、非常に限られた出荷となっております。
※新規のご注文は全て保留とさせて頂いております。

 

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