北京「鳥の巣」、天井の膜は日本製

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北京五輪が終了した。

8月23日の朝日新聞は、上記のタイトルの記事で、北京五輪の主会場「鳥の巣」の天井に中興化成工業が作った約6万m2の膜材が使われていること、屋根には旭硝子のフィルム素材が使われていることを報じている。

「鳥の巣」の屋根は2重になっており、外側の屋根は旭硝子の高機能フッ素樹脂ETFEフィルムが、内側の屋根および垂直面(聖火最終ランナーが走ったところ)は中興化成工業の膜材スカイトップが使われた。

また、旭硝子の高機能フッ素樹脂ETFEフィルムは、水泳会場のウォーターキューブ [H2O]3にも使用されている。

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中興化成工業の前身は長崎県の福島炭鉱などを経営した中興鉱業で、1963年にフッ素樹脂専門の加工メーカー(当初名は中興ファイバーズ)として設立された。

現在はフッ素樹脂製品の総合メーカーとして、国内はもとよりアジアを中心とした海外へもビジネスフィールドを広げている。
また、産業用ファブリックへのフッ素樹脂コーティング技術を他の樹脂にも応用し、シリコーンコーティングなど新技術、新用途の開発を行っている。
更に、生分解性プラスチックやバイオマスプラスチックの開発も行なっている。

「鳥の巣」で採用されたスカイトップは、グラスファイバー(Bヤーンクロス)フッ素樹脂PTFE(四フッ化エチレン)を含浸、焼成したもの。
Bヤーンはスチールより優れた比強度、700~800℃の耐熱性、低温や紫外線の影響を受けない、などの特性を有し、フッ素樹脂には耐熱性、耐候性に加え、非粘着性、撥水性などのユニークな特性がある。

スカイトップはこれらの特性を複合させた高機能性建築材料で以下の特長をもつ。
  不燃性、強靭性、透光性、熱的特性、耐候性、セルフクリーニング性、吸音性

スカイトップは東京ドームやタイ・バンコクの空港など、多くの場所で使われており、2010年に開催されるサッカーのワールドカップ南アフリカ大会のスタジアムでも採用された。

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旭硝子は2006年10月、同社の高機能フッ素樹脂ETFEフィルムが北京五輪のメインスタジアム(鳥の巣)及び水泳会場の国家遊泳中心(ウォーターキューブ=[H2O]3)に採用され、供給を開始したと発表している。

ETFE は四フッ化エチレン・エチレン共重合体。ETFE フィルムは旭硝子が原料から一貫生産している高機能フィルムで、可塑剤等の添加剤、粘着剤などを一切含まず、フッ素樹脂の優れた特徴がそのまま生かされている。

このフィルムの特長である、(1)透明で光を十分に透過する、(2)軽量であり構造への負担が小さい、(3)劣化しにくく寿命が長い、 (4)意匠上、曲線的な加工が可能である、(5)特にメインスタジアムではフィルム表面に印刷を施すことにより光・熱を制御しながら意匠性を高められること等が認められ、採用された。
水泳会場については、水色に着色したフィルムも採用することで意匠面での様々な工夫が可能となることが評価された。

鳥の巣(フィルム加工・施工Covertex Gmbh)では約5万m2、ウォーターキューブ(フィルム加工・施工Vector-Foiltec)では約30万m2のフッ素樹脂フィルムが使用された。

このフィルムはミュンヘン市のサッカースタジアム「Allianz-Arena」でも採用されている。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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