Governor Sarah Palin とAlaska Gas Pipeline

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米共和党の大統領候補 John Sidney McCain (72) は8月29日、Dayton, Ohio での集会で、副大統領候補に保守派でアラスカ州の女性知事、Sarah Palin (44)を選んだことを明らかにした。
共和党全国大会は9月3日夜、McCain、
Palin をそれぞれ正副大統領候補に指名した。

Sarah Palin は1964年2月生まれ。1987年にアイダホ大を卒業後、89年までアラスカ州の地元テレビのスポーツキャスター、92年からアラスカ州の小都市 Wasilla の市議、96年から2002年まで同市長を務めた。

2002年の州知事選でMurkowski 氏に協力、同氏の当選後は知事から重用を受けたが、その後対立した。
2006年8月の共和党内のアラスカ州知事候補者予備選で、現職のMurkowski 知事らと争い、51%の圧倒的多数の得票を得て勝利した。
11月のアラスカ州知事本選では民主党候補で1994-2002年の知事
であったTony Knowles を破り、知事に就任した。

ーーー

Palin 知事はアラスカのNorth Slope の石油生産の減退が予測されるなか、天然ガスを米国本土のマーケットに輸送する Alaska Gas Pipeline の建設に力を入れている。

Murkowski 前知事時代に本パイプラインの主要供給ガス田となるPrudhoe Bayの生産者であるBP、ExxonMobil、ConocoPhillips とアラスカ州政府との間で、本パイプライン推進について合意が行われたが その合意内容がアラスカ州議会で否決された。
Palin 知事は上記合意とは別に、ゼロから新たな法案を策定し、同パイプライン計画を進めようとしている。

North Slopeには35兆立方フィートのガスの確認埋蔵量を含む200兆立方フィート以上のガスの資源があると言われている。 

ノースロープ地域のガス・石油確認埋蔵量
  石油埋蔵量 ガス埋蔵量 参加企業(* オペレーター)及び生産状況
Prudhoe Bay 30.0億バレル  24.5TCF BP*ConocoPhillips, ExxonMobil,Chevron(38b/d)
Kuparuk River 12.5億バレル  1.2TCF ConocoPhillips*, BP, Chevron, ExxonMobil (16b/d)
Point Thomson 0.3億バレル  8.0TCF 開発が遅れExxonMobil*, BP, ConocoPhillipsから
州政府はリース権剥奪
NPRA
(National Petroleum
Reserves - Alaska
0.2億バレル    -  
その他 19.5億バレル   1.7TCF  
合計 61.5億バレル  35.4TCF  

<p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p>    JOGMEC資料から

Alaska Gas Pipeline は、この天然ガスをAlaska Highway 沿いにカナダのAlberta まで送り(全長2,000 km)、そこから既存のTransCanada のパイプラインで米国各地に送るという壮大な計画である。
別途、TransCanada Mackenzie Gas Pipeline も計画している。

アラスカには1975年-77年に建設されたPrudhoe BayからValdez までのアラスカ縦断原油パイプライン(Trans Alaska Pipeline)がある。

 2006/8/28 プルドー湾油田の操業停止ーBPとStandard Oil 

しかし、現存の原油パイプラインを天然ガスパイプラインへ転用することは出来ない。

原油は+60℃に加熱され、永久凍土地域では融解を防止するために地上敷設されている。
天然ガスは冷却されるため、地下埋設が原則となる。

ーーー

1969年、アラスカの南部ガス田 Kenaiから、日本にとっては初めてのLNGが輸出された。
売り手は、
Phillips/Marathon、買い手は東京電力と東京ガスであった。
以後、年間約
100万トンのLNGが中断されることなく輸出されている。

ノーススロープの天然ガスをアラスカ南部のValdes までパイプライン輸送し、そこで天然ガスをLNGに変換して、タンカーでアジア、メキシコ等へ輸出するという計画もあるが、アラスカ州内での輸送コストが嵩むため、価格競争力の面から難しいのではないかと見られている。

 <p><p><p><p><p><p><p><p>HTML clipboard</p></p></p></p></p></p></p></p>         TransCanada homepage から

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2006年11月にアラスカ州知事選で選出されたSarah Palin知事は、ガスパイプライン建設の実現に向け、知事就任直後のアラスカ州議会 (2007年1月から開催) にガスパイプライン建設業者にインセンティブを与え、建設を促すためのAlaska Gasline Inducement Act (AGIA) を提出し、法案は可決された。

パイプライン建設のためにパイプライン事業推進者はFERC (Federal Energy Regulatory Commision) への申請を行うことが必要となるが、その際に生じる費用について上限5億ドルまで補助金を給付すること、本パイプライン向 けの天然ガスについて生産税を10年間に亘り免除するという内容になっている。

ガスパイプライン建設業者を募る一般公募が行われ、Alaska Gasline Port AuthorityAenergia LLCTransCanadaSinopec ZPEBAlaska Natural Gas Development Authority の5社が応募した。
油田の権利を有するオイルメジャーはこの設計基準に達することが出来なかった。
この5社の中から、最終的にカナダのTransCanadaが選ばれた。

ノーススロープの主要生産者であるBP、ExxonMobil、ConocoPhillipsは、現行の AGIAの元で本プロジェクトは経済性がないとして、州政府にパイプライン建設の提案書を提出しない意向を表明していた。

マッケンジーガスパイプラインの主要推進者であるExxonMobilは、コストが大幅に増加している現状では、両パイプラインは経済性がなく、本計画を留保する旨発言した。

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2008年4月、 BP ConocoPhillips 天然ガスパイプライン建設に参加することを決めた。数十億ドルを投資するとしている。
Exxon はこの発表直前に連絡を受け、あらゆるオプションを検討するとしている。

本計画は North Slope でのガス処理施設(50億ドル)を含め、総額300億ドルかかると見られており、完成までに10年を要する。
両社は
先ず3年間で6億ドルを投じて建設準備を始める。

問題は多い。
米国とカナダの国、州、地方自治体からは
1,000件以上の認可取得が必要で、何年もかかる。
沿線の原住民との交渉も必要となる。

しかし、原油価格の高騰が、この計画を推し進める要因となった。


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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