米ファイザー、消炎鎮痛剤の健康被害訴訟で和解

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米ファイザーは1017日、消炎鎮痛剤の副作用で健康被害を受けたとして患者などから訴えられていた問題について、原告側の大半と和解したと発表した。
和解金の総額は894
百万ドルにのぼる見込み。640万ドルの関連費用(税引き後)を2008年7―9月期決算で損失処理する。

対象は消炎鎮痛剤の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)のBextra Celebrex を巡る訴訟で、
(1)患者か
らの、服用に伴う副作用で心臓発作になったなどという訴訟(Personal Injury Cases)で 745万ドル、
(2)米33州とコロンビア特別区の司法長官らが起こしていた、販売促進に絡み安全性リスクに関する情報を消費者に示さなかったことについての訴訟(
State Attorneys General Claims)で60万ドル、
(3)販売促進に絡み虚偽の宣伝で消費者をだまし、経済的損失を与えたとする集団訴訟(
Consumer Fraud Cases)で89万ドル、
の和解金がそれぞれ原告側に支払われる見通し。

同社Bextra については2005年に自発的に撤退している。

昨年末から本年初めにかけて連邦裁判所及びニュヨーク州裁判所が、原告側は一般的な用量(1日200mg)でCelebrexが心臓発作を与えるという科学的証拠を出せなかったとする判決を下したのを受けて和解を行なった。
これは
2004年にFDAが、適正な用量では患者にとってCelebrex のメリットがリスクを上回るとした結論と合致しているとしている。

Pfizerは今回の和解で、裁判が延々と続くのを打ち切り、患者の治療のための革新的医薬品を供給するという同社の事業のコアに集中できると述べた。
また、医者が純粋に臨床データに基づいて
Celebrex の効力を考え、患者の苦しみに対処できるようになるとしている。

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リウマチは、手足などの関節が破壊されて痛む病気だが、痛みには、細胞内で作られるシクロオキシゲナーゼ(COX:Cyclooxygenase)と呼ばれる酵素が関係しており、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)はこの酵素の働きを妨げて痛みや炎症を抑える。

アスピリンは代表的なNSAIDである。

COXには、胃腸の粘膜を守るCOX1と、炎症を促すCOX2の2種類がある。
NSAIDの多くは、両方の働きを抑えるので、胃腸が荒れやすくなる副作用が表れる。

そこで、痛みに関係するCOX2だけを狙う「COX2阻害薬」が開発された。胃かいようの発生率が従来の薬に比べ半分ほどに減った。<p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>
アスピリンを超える「スーパーアスピリン」と呼ばれる。

しかし、この薬の一つ、Merck Rofecoxib(商品名Vioxx)を飲んだ患者は、一般的なNSAIDの服用者に比べ、約4倍も多く心筋梗塞を起こしたことが、2000年に米国で発表された。

Vioxx は年間25億ドルを売上げ、米国だけで患者が2000万人に達するという大型薬だが、Merckは2004年9月、Vioxxの自主回収を発表した。

Merckは200711月、Vioxx の副作用に関する訴訟で、和解金48億5000万ドルを支払うことで原告側の大半と和解の合意に至ったと発表した。

Celecoxib(Celebrex)、Valdecoxib(Bextra)についても、FDAは「心筋梗塞や脳梗塞の危険性を高める恐れがある」として、心臓病患者への処方や多量の長期使用を避けるよう勧告した。

2005年4FDAはBextra の販売停止をPfizer社に要請、Pfizerはこの要請を受け入れた。
心血管疾患リスクや中毒性表皮壊死症(
Stevens-Johnson syndrome)のような皮膚に関する重篤な副作用のリスクが、他の非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID)と比べて高く、またBextraならではの優位性にも欠けることが理由。

FDAは、同社のCOX2阻害薬であるCelebrex や、その他の処方薬のNSAIDについては、注意書きを改め、心血管疾患リスクや胃腸出血に関する記述を強調し、またそれらのリスクに関して患者の理解を促す「Medication Guide」を加えるよう求めた。

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日本では2007年1月にアステラス製薬とファイザー製薬が、2002年末に申請していた非ステロイド性消炎・鎮痛剤(COX-2選択的阻害剤)「セレコックスR錠(一般名:Celecoxib)」について、「関節リウマチ、変形性関節症の消炎・鎮痛」を効能・効果として、製造承認を取得した。


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