B型肝炎訴訟、和解へ

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乳幼児期の集団予防接種でB型肝炎ウイルスに感染したとして、患者らが全国10地裁で国に損害賠償を求めているB型肝炎訴訟で、札幌地裁の石橋俊一裁判長は1月11日、和解協議で国側、原告側双方に初の和解案を示した。 

石橋裁判長は、「集団予防接種などに関する厚生行政上の過誤による被害の救済策として、双方に受け入れられることを希望する」と見解を示した。

付記

細川厚生労働相は1月14日の閣議後会見で「司法の判断を重く受け止め前向きに対応する」などと述べ、政府として受け入れる方針を事実上表明した。

1月22日、B型肝炎訴訟の全国の原告団が東京都内で代議員大会を開き、札幌地裁が示した和解案を受け入れる方針を決めた。

次の問題が残る。(毎日新聞)

民法では、損害賠償請求権は20年が経過すると消滅すると定められているが、2006年の最高裁判決で、慢性肝炎患者の起算点は「発症した時点」とされた。
原告団は、慢性肝炎発症後20年以上経過した患者について、全員の救済を求めていく。
   
和解案では、予防接種でB型肝炎に感染した親から2次感染した子供の立証方法は「改めて協議する」とされ、原告と国の双方が継続協議する。

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全国B型肝炎訴訟のうち北海道訴訟の第5回和解協議が201010月札幌地裁であり、国側は補償額を、症状に応じて500万~2500万円支払う具体案を初めて提示した。
同じ肝炎でもC型肝炎と差をつけた理由として、国側は「薬害肝炎と比較して因果関係の根拠が乏しく、同水準とするのは不適当」とした。

これに対し患者側は、「B型もC型もウイルスとの闘いに差はない。命に差をつけるのは納得がいかない」と非難していた。

2010/10/15 B型肝炎で政府が補償案を提示

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今回の和解案は、未発症者(キャリアー)の救済について、法的賠償責任の有無は明示しなかったが、原告がこれまでに支払った検査費用代などとして、国に50万円の支払いを求めた。これまで国側は「法的賠償責任は認められない」と主張し、「差別・偏見による精神的被害を受けてきた」と賠償を求める原告側と対立していたが、双方の主張をくみ取った形。また、50万円とは別に、将来の検査費用なども国の政策上の対応として盛り込んだ。

発症者への和解金は、国側の提示額に上乗せして原告側が主張する薬害C型肝炎並みに近づけた。

和解案の概要と双方の主張との対比は下記の通り。

和解金は
▽死亡、肝がん、重度の肝硬変の原告に3600万円
▽軽度の肝硬変に2500万円
▽慢性肝炎に1250万円
未発症者(キャリアー)には、過去の定期検査などに要した費用として和解金50万円を支払うほか、今後の検査費や交通費、将来生まれた子や新たに同居する家族への検査費を上限つきで助成する
予防接種を受けた証明は、母子手帳や市区町村の予防接種台帳、接種痕などがない場合は、本人や医師の陳述書などで裁判所が総合的に判断する
2次感染者は基本合意の対象とせず、協議を継続する
国側 原告側=C型同様 和解案
死亡・肝がん・肝硬変(重症)  2500万円  4000万円  3600万円
肝硬変(軽症)  1000万円  2500万円
慢性肝炎   500万円  2000万円  1250万円
無症候性キャリアー  検査費助成
 発症時に賠償
 1200万円 和解金50万円
今後の検査費や交通費
和解に要する総額
(国の試算:今後30年間で
発症する患者分を含む)
 約2兆円
  現状 3100億円
  30年間病状進行
      1.2兆円
  検査費 5000億円
 約8.2兆円
  現状    6.8兆円
  病状進行 1.4兆円
今後30年間で3兆円超
救済対象の証明方法  母子手帳
 腕の注射痕など
  (予防接種以外の
   感染の可能性)
 国内居住歴
 (国民のほぼ全員が
  予防接種を受けている)
本人や医師の陳述書などで
裁判所が総合的に判断

C型肝炎については 2008/1/16 薬害肝炎救済法 成立

政府は1月12日、関係閣僚の協議を首相官邸で行い、和解案を受け入れる方向で検討を進めて早期の全面解決を目指す方針を確認した。

但し、和解案の実現には30年で最大3兆円超の財源が必要との試算があり、財源の確保策が最大の焦点となる。
政府内では所得税の特別増税で賄う案なども浮上している。

細川厚生労働相は、「司法が示したことに対し、真摯に検討していくことで一致した」と述べた

原告側は「持続感染者の救済内容は十分でないが、全体としては被害者全員の救済につながる」と評価している。


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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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