米国債、再びデフォルト懸念

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米国のJacob Lew 財務長官は8月26日、議会指導部に書簡を送り、10月半ばに米政府の資金が底をつくと警告した。

最新の見積もりでは、現在取っている特別措置は10月半ばには枯渇するし、借入上限に達するため、手持ちの現金でしか運営できなくなる。現在の予想では現金残高は約500億ドルに過ぎない。
不確定要素が多く、現金をいつ使い切るかは見積もれない。
投資家が期限のきた国債について再投資をしなければ、政府は現金不足に陥る。

借入上限引き上げは政府の支出を増やすことではなく、議会が以前に認めた支出を実施できるようにすることである。

議会のみが借入上限を引き上げられるため、米国の信用力を守るのは議会の責任である。それが出来なければ米国経済に取り返しのつかない害を与える。

議会は国に対する責任を果たし、デフォルトの危険を取り除くため、出来るだけ早く行動すべきだ。10月半前に行動すべきだ。

米国の政府債務の動きは下記の通り。

2011年に連邦政府の債務が上限の14.3兆ドルに達した。

同年7月31日、
米与野党指導者は、債務上限を2.1兆ドル引き上げて16.4兆ドルにするとともに、その条件として今後10年間で2.5兆ドルの財政赤字を削減することで合意に達した。

2011/8/3  米国、債務上限引き上げ、デフォルト回避 

与野党が具体的な削減案に合意できなかったため、2013年1月から10年間1.2兆ドルの予算カット条項が発動されることとなった。
2012年末には連邦債務は見直し後の上限16.4兆ドルに達した。
更に、2012年末で大型減税が期限切れを迎えた。

これが「財政の崖Fiscal Cliff)」である。

米与野党幹部は2012年12月31日夜、 2012年末から2013年初頭にかけて米国で減税の期限切れと政府支出の強制削減がほぼ同時に訪れる「財政の崖」への対応で、当面の回避案で合意した。

2013/1/4   米国、「財政の崖」問題を当面回避

その後の動き:

2013/2/4 米国の国債発行の法定上限を暫定的に引き上げる法案成立
  2013年5月18日までに限って
向こう3か月分の歳出に相当する額の国債の発行を政府に認める。
2013/3/1 政府予算の強制削減措置 発効

 ・ 米政府の支出を今後10年間で計1兆2千億ドルを強制的に削減
    ・ 2013会計年度(2012/10-2013/9)で850億ドルを削減
      国防費が13%、国防費以外が約9%削減

2013/3/21 暫定予算案を承認
 850億ドルの歳出強制削減を維持、削減に一定の裁量
2013/5 (2月に上限越えを認めた)約16兆7000億ドルの債務上限に達した。

現在は、デフォルトを回避するためさまざまな緊急措置を実施し、資金をやりくりしている。
年初からの富裕層向け増税、3月からの強制的歳出削減で財政状況が改善、景気回復による連邦税の増加なども役立っている。

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民主党と共和党の考え方は、税金と社会福祉について全く異なる。
2012年の大統領選挙の選挙公約となる政策綱領は以下の通り。

民主党 「成長する中間層に投資し、強い米経済を再生する」

  中間層以下には年末に期限を迎える包括減税「ブッシュ減税」を延長
  富裕層の減税は打ち切り

共和党 「アメリカンドリーム」は危機にある。政府を適切な役割に戻し、より小さく、より賢くしなくてはならない。

  最善の雇用創出計画は経済成長だ。政府による助成や一時的・人為的な雇用は提供しない。
  ブッシュ減税を延長する。中低所得者層の金利や配当、株式売却益への課税を廃止する。
  オバマ政権の医療保険改革を撤廃する。
  高齢者や低所得者向け医療保険を現在の「確定給付型」から「確定拠出型」に移行する。


オバマ米大統領は4月10日、2014会計年度(2013年10月─2014年9月)の予算教書を議会に提出した。

富裕層に対する増税や社会保障費の抑制などを通して、財政赤字を10年かけて1兆8000億ドル削減する。

大統領は、赤字削減のため民主、共和両党の妥協が必要であるとし、両党に聖域(Sacred cow)はあってはならないと述べ、富裕層に対する増税とともに、大統領としては通常なら提案しない年金の物価調整方式の変更も折り込んだ。

2013/4/13 オバマ大統領、予算教書を議会に提出

昨年末の「財政の崖」協議で富裕層増税を受け入れた共和党は、次は民主党が譲る番だとして、一段の歳出削減や社会保障制度改革を要求している。

下院多数派の野党共和党は、債務上限を引き上げる条件として大幅な歳出カットを掲げている。一部議員はオバマ政権が推進する医療保険制度改革の撤廃を求めている。

一方、オバマ大統領はいかなる取引にも応じない」と述べ、この問題を政治的駆け引きの材料とはさせない決意を示しており、大統領報道官は「議会が積み上げてきた請求書を支払う議会の責任をめぐり、議会で共和党と交渉するつもりはない」と断言した。


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なお、米国の債務残高は2000年以降、急増しているが、残高がGDPを超えたのは2011年になってからである。
GDP比でみると、イタリアでさえ130%であり、日本が突出している。


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