HIV治癒とみられた米女児、血液検査でウイルスを確認

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米ミシシッピ州でエイズウイルス(HIV)に感染した母親から生まれ、その直後の治療開始により治癒したとみられていた4歳の女児が、7月初めの検査で血液に検知可能なレベルのウイルスが確認されたことが分かった。

女児に対する治療は2013年3月に公表され、新生児のHIV治療法に新たな知見を与える画期的なケースになる可能性があるとみられていた。

米国立アレルギー感染症研究所の所長は10日の記者会見で、「女児、医療スタッフ、HIV研究者らにとって、残念な結果となった」と述べた。

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後天性免疫不全症候群(AIDS : Acquired Immune Deficiency Syndrome)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす免疫不全症で、完治・治癒に至ることは現在でも困難である。

抗HIV薬は様々なものが開発され、著しい発展を遂げてきているが、抗HIV薬治療は一生継続する必要がある。

抗HIV薬には、「逆転写酵素阻害薬」、「プロテアーゼ阻害薬」「インテグラーゼ阻害薬」「CCR5阻害薬」があるが、これらは、あくまでウイルスが増えるのを抑える薬であって、ウイルスを死滅させる薬ではない。このため、飲み続ける必要がある。

しかし、これまで治癒したとみられた人が2人だけいた。

一人は当時ドイツ在住の米国人男性Timothy Ray Brownで、2007年にベルリンで白血病治療のため骨髄移植を受けた
移植したのは、遺伝的にエイズへの免疫力を持つ人の幹細胞で、2%程度の人がこうした遺伝子を持っているとされる。

手術により、白血病だけでなくエイズも治癒した。あらゆる機関で血液検査や内視鏡検査を受けたが、HIVは見つからなかった。

ただし、これは極めて例外的なケースとされている。
 

もう一人が母親の胎内でHIVに感染したこの女児で、母親は出産の直前になってHIVの陽性反応が確認され、母子感染を防ぐための治療も受けていなかった。

治療に当たったミシシッピ大学医療センターのHIV専門医は、感染のリスクが高いと判断し、出生後約30時間で女児に抗ウイルス薬の投与を開始 した。

女児は数日のうちに、HIV感染が確認されたが、治療の結果、女児の血中のウイルスは減少し続け、治療開始から29日以内に、通常の血液検査では検出できないレベルに到達した。

18カ月間にわたり治療を受けた後、治療は停止された。
その後、
定期的な検査を受けているが、これまでHIVは検出されていなかった。

米国の研究チームは2013年3月、この女児が「機能的な治癒」に至ったと発表した。
機能的な治癒とは、ウイルスが通常の血液検査では検出されないレベルにまで抑制された状態を指す。
ウイルスが完全に消滅したわけではないものの、生涯にわたって治療を受け続ける必要はなくなる。

これまでの治療では、母子感染の疑いのある乳児には6週間にわたって予防薬を投与し、HIV感染が確認された時点で治療を開始するのが一般的だった 。
このケースでは、出生直後、まだHIVの陽性反応が確認されないうちから抗ウイルス薬を投与したのが重要で、新生児のHIV治療法に新たな知見を与える画期的なケースと期待されていた。

 

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