LG と Dow Chemical、量子ドット技術で提携

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Dow Chemical は1月8日、LG Electronicsにカドミウムフリーの量子ドット(Quantum dot) を供給すると発表した。

LGは1月6日にLas Vegasで開かれた2015 Consumer Electronics Show で量子ドット技術により色再現性や視野角などを向上させた4K対応テレビを発表した。
2015年の液晶テレビや有機ELテレビに順次対応を拡大していく。

液晶バックライトの前に量子ドットのフィルムを加えることで、映像の色再現性や彩度、全体の明るさなどを大幅に向上する。 「広色域で表現でき、4Kコンテンツに理想的」としている。
量子ドットのフィルムにより、IPSパネルの色再現性は既存のLEDバックライト液晶テレビに比べ30%以上改善され、IPSの特徴である広視野角性も向上するとしている。

サムスン電子も量子ドット技術使用の新型テレビ「SUHDテレビ」をブース入り口に掲げた。

2014年9月にベルリンのエレクトロニクスショー「IFA2014」で、中国のTCLと海信グループ(Hisense)が量子ドットテレビを発表し、TCLは間もなく発売するとしている。

LGはDowとの提携により、安定的に必要な量子ドットの供給を受けることが出来ることとなる。

量子ドットとは、数n~数十nmの大きさを持つ化合物半導体や酸化物半導体の微粒子で 、青色LEDからの光の波長変換を行い、望む光の色を得ることができる。
大きさが一様にそろった量子ドットを用意すれば、スペクトルのピークの鋭い、色純度の高い発光が得られ、これによって、ディスプレーの色再現性の向上や低消費電力化が実現可能にな る。

量子ドット技術はもともと1970年代に開発されたが、これまで実用化されていないのは、量子ドット素材として、毒性の強いカドミウムが使われていたため である。

たとえば、Quantum Designの量子ドットの中心核(コア)は、セレン化カドミウム(CdSe)でできており、その外側を硫化亜鉛(ZnS)の被覆層(シェル)が覆っている構造で、この金属化合物の直径を変えることで、発する蛍光波長が変わる特長を持っている。

例えば
直径3.0nmの場合:530nm(緑色の蛍光)
直径8.3nmの場合:620nm(赤色の蛍光)
この間も直径を変えることで任意の蛍光波長を作製可能

量子ドットの蛍光は非常にシャープなバンドを描くため、他色への波長の重なりが少ないという特長を持つ。

しかし、最新のRoHS 指令では、カドミウムの最大許容値は0.01%となっており、これが障害となる。

英国の Nanoco Group PLCはカドミウムや重金属を全く使用しない量子ドットを開発した。
同社は量子ドットの製法として分子シーディング法を開発したが、この方法は他の化合物半導体材料(III族~V族元素など)にも適用することが可能で、CdSeと同等の光学特性を有するにもかかわらず重金属を含まない半導体材料が作られる。

。 Nanoco社の分子シーディング法は他の化合物半導体材料(III族~V族元素など)にも適用することが可能で、CdSeのQDと同等の光学特性を有するにもかかわらず重金属を含まない半導体材料が作られています。 - See more at: http://www.sigmaaldrich.com/japan/materialscience/nano-materials/lumidots/quantumdot-commercial.html#sthash.HXg1xlkE.dpuf
。 Nanoco社の分子シーディング法は他の化合物半導体材料(III族~V族元素など)にも適用することが可能で、CdSeのQDと同等の光学特性を有するにもかかわらず重金属を含まない半導体材料が作られています。 - See more at: http://www.sigmaaldrich.com/japan/materialscience/nano-materials/lumidots/quantumdot-commercial.html#sthash.HXg1xlkE.dpuf

Dow Chemicalは2013年1月28日、Nanoco Groupと、カドミウムフリーの量子ドット技術に関するグローバルライセンス契約を締結したと発表した。
この契約により、ダウはNanocoの持つカドミウムフリーの量子ドットを販売、マーケティングおよび製造する全世界での完全独占権を得た。

Nanocoは契約期間中、製品改良のための技術供与を続けるとともに、Dowと共同で製品のマーケティングおよび技術サービスを顧客に提供 する。

Nanocoは2001年創業の量子ドットの開発と商業生産における世界的なメーカーで 、同社の量子ドットは重金属を含まず、RoHS規制に適合しており、照明、太陽電池、生体画像など、さまざまな分野で使われている。(太陽電池では光を電気エネルギーに変換する「光電素子」として使われる)

Nanocoは研究開発レベルから少量の量産レベルに拡大させつつあるが、市場のニーズに応えるためには、大規模な生産体制が必要であり、そのためにDow と提携した。

Dowは以下の通り述べた。

Nanocoのカドミウムフリーの量子ドットがディスプレー産業における新基準になると確信してい る。
Nanocoの量子ドットはコスト効率が良く、LCDディスプレーの色彩を向上させ、同時に重金属の使用を避けることができる。Nanocoの技術とDowのフィルム、LCD、LED、有機ELディスプレー産業における知見が一つになることにより、顧客に対して強力な材料技術を提供することができる。

Dow Chemical は2013年1月に韓国の天安(Cheonan)市 に100万ドルを投資し、世界初の大規模、カドミウムフリー量子ドット製造工場を建設すると発表した。

同社は2014年9月30日に製造開始を発表した。年間数百万台のテレビに供給可能な量子ドット素材を生産する計画。

Dowは2012年3月、韓国の京畿道器興区にディスプレイ・テクノロジーおよび半導体関連の技術向上に注力したグローバル研究開発センター Dow Seoul Technology Center を開設している。

京畿道器興区は、ダウの顧客である半導体企業やディスプレイ企業も数多く所在し、戦略上重要な地区となっている。

Centerでは主にリソグラフィ、有機EL、ディスプレイ材料、半導体パッケージングなどの用途で、先端技術の研究開発に取り組 む。

なお、Nanocoは2014年10月、一般照明でのナノコ量子ドット利用に関連して、ドイツのOsramとの共同開発契約を締結した。


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日本メーカーは量子ドット以外の技術に注力しているとされる。

ソニーはTRILUMINOUS Displayで量子ドット技術を採用していたが、「コスト的に高く付く量子ドット光学シートをあえて使わなくても、同等の広色域は新世代のLEDバックライトシステムで実現出来る」としている。

  http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dg/20150109_683147.html

 

 

 

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