オバマ米大統領、Keystone XL パイプライン建設計画を却下

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オバマ米大統領は11月6日、カナダと米メキシコ湾をつなぐ原油パイプライン Keystone XLの建設計画について、環境に悪影響を与える懸念から却下したと発表した。

米国務省が入念な調査の結果、パイプラインは「米国の国家的利益に沿わない」との結論に達したのを受けたもので、大統領は「この決定に同意する」と述べた。

大統領はホワイトハウスでの記者会見で、COP21に向け環境対策が国際的課題となる中、計画を承認すれば気候変動対策での「米国の国際的指導力を損ないかねない」と説明。業界などが主張する建設のメリットに関しては、ガソリン価格下落やエネルギー安全保障の強化につながらず、「米経済に意義ある効果はない」と退けた。

建設を申請したカナダのエネルギー企業 TransCanadaは、大統領の決定を受けて、あらゆる選択肢を見直す考えを示した。

TransCanadaが建設計画中のKeystone XL Pipelineは、カナダのOil sandを採掘・処理した合成原油の輸入拡大を目指す取組みで、既に操業中のKeystone パイプライン(Phase 1-2)が、カナダ産合成原油を米国中西部製油所に輸送するのに対し、Keystone XL パイプライン(Phase 3-4)はメキシコ湾岸製油所まで輸送する。

問題になっているのは、Phase 4 で、ネブラスカ州の1/4を占めるSand Hills 地域は湿原地帯で、Ogallala Aquifer (帯水層)の上にある。
ネブラスカ州の責任者や住民はSand Hills 地域への懸念に加え、Great Plains 諸州の飲用水のソースであるOgallala 帯水層を横切ることに懸念を表していた。

2015年1月9日に下院が建設を推進する法案を可決し、上院は別の法案を1月29日に可決した。これを受け、下院は2月11日に上院が通した法案を可決し、大統領に送った。

Obama大統領は2月24日、この建設推進法案に拒否権を発動した。

大統領は拒否権発動に当たり、国境を越えるパイプラインの建設承認は国務省の権限であることを踏まえ、「法案は行政上の手続きに違反し、パイプラインが国益にかなうかどうか判断する手続きを回避しようとしている」と米議会を批判し、地球温暖化や安全保障など国益への影響を考慮すべきだとの意向を改めて訴えた。

2015/3/2 Obama大統領、パイプライン法案に拒否権

米上院は3月4日、大統領の拒否権を覆すための採決を行ったが、62票の支持に対し反対票が37票と、大統領の拒否権を覆すために必要な3分の2に届かなかった。これにより、下院での採決は行われないこととなった。

カナダのハーパー首相は7月29日のインタビューで、「非常に長期にわたり前向きな決定が下されておらず、期待できる兆候でないのは明らかだ」と述べ、オバマ大統領と最近この問題を話し合ったとした上で、「この政権特有の政治があると私は考えている」と述べた。

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John Kerry国務長官は11月6日、調査結果の結論を発表した。

綿密なレビューの結果、パイプラインの承認却下が米国の国益に最も資するとの結論に達した。
大統領はこれに同意し、協議した8省庁はこれを受け入れた。

キイとなる事実は下記の通り。
・計画は米国のエネルギー安保にマイナスの影響を与える。
・米国の消費者にガス価格低下を導かない。
・米国の経済への長期的な貢献は限定的である。
・地域コミュニティや水の供給、文化遺産への影響に懸念がある。
・ダーティな燃料を米国に輸送する。

決定的な要素は、この計画の推進で気候変動への対応で世界のリーダーとなろうとしている立場を著しく弱めることである。

この計画は、一般に言われているような米国経済の牽引力にはならない。

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