トクヤマ、マレーシアの多結晶シリコン事業を売却

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トクヤマは多結晶シリコンを生産する Tokuyama Malaysia を韓国のOCI Company に売却すると発表した。

Tokuyama Malaysia はサラワク州のサマラジュ工業団地に第一期(半導体用)、第二期(太陽電池用)の多結晶シリコンプラントを持つが、下記の通り、前者は品質問題で出荷不能、後者は大幅値下がりで、ほぼ簿価全額の2千億円の減損損失を計上している。

その後、事業継続に向け、設備の改良や生産性向上の努力を重ねるとともに、他社との提携も視野に入れ、あらゆる検討を行ってきたが、多結晶シリコン製造を含めた太陽電池事業をグローバルに展開している韓国の OCI に譲渡することが最善の選択であるとの結論に至った。

売却は下記の手続きで行う。トクヤマの売却額は98百万ドルで、OCI は 、増資引き受けを含め、建設費約 2千億円のプラントを約 1割の価格で取得することとなる。

時期 出資比率 金額
2016年10月7日 増資引受  17% 24百万ドル
2017年3月31日 増資引受 51% 78百万ドル
2017年3月31日 売買 100% 98百万ドル
合計 100% 200百万ドル


韓国のOCI Companyは1959年に東洋化学工業 (Oriental Chemical Industry) として設立された。(2009年に改称)
ソーダ灰からスタート、2000年には石炭化学に進出、2008年にポリシリコンの生産を開始した。

群山工場で年間5万2000トンのポリシリコンを生産しており、ポリシリコン生産量では韓国で最大で世界3位。

世界3位を維持するためにグローバル生産基地を追加で確保する必要があった。

OCI は「工場近隣の大型水力発電所から安く電気が供給されるうえ、工場が貿易紛争の第3地隊であるアジアにあり、中国や米国などに輸出する場合に規制が少ないという長所を考慮し、株式取得を決めた」と説明した。

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トクヤマは徳山製造所に半導体用途を中心に年産 8,200トンの多結晶シリコン設備を持っていたが、2009年8月に太陽電池用途の増産対応とリスク分担の面から、マレーシアのサラワク州のサマラジュ工業団地に総工費約800億円をかけて太陽電池向け多結晶シリコンの年産 6,000トンの大型プラント建設を決めた。

2008/12/5 トクヤマ、マレーシアに多結晶シリコン第二製造拠点

しかし、同社は2012年11月に、これを主として半導体向けグレードを生産・販売する計画に変更、2013年2月に一部設備を除き建設が完了、その後試運転を開始した。

更に、2011年には第二期として太陽電池向けに年産13,800トンの建設を決めた。合わせて徳山製造所の能力を11,000トンとした。

全て完成後は、日本11,000トン、マレーシア20,000トンで合計31,000トンとなるが、同社はこれにより、半導体用途は世界シェア20%を維持し、太陽電池用途では5%程度のシェアを10%程度に引き上げるとしていた。

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半導体向けグレードは、非常に高い純度をはじめとする高品質が求められる。

第一期プラント(太陽電池向けから途中で半導体用に変更)については試運転を行ってきたが、品質・生産安定性が達成出来ず、更に、析出装置に関する問題が存在し、当面顧客認定用サンプルの出荷が事実上不可能であると判断した。

トクヤマは2014年10月31日、第一期プラントの製造設備に関して、減損損失 748億20百万円と事業計画の見直しに伴う関連費用 112億7百万円の合計 860億27百万円の減損損失を計上した。

2014/11/3 トクヤマ、マレーシアの多結晶シリコン計画で特別損失計上 
 

第二期プラントは、2014年10月に営業運転を開始し、太陽電池向けグレードの生産を行ってきたが、世界的な供給過剰を背景とした販売価格の著しい下落が続き、今後の価格見通しが事業計画における想定を大きく下回ることとなった。

このためトクヤマは、将来の投資回収可能性を検討した結果、1,234億86百万円の減損損失を計上すると発表した。

2016/2/3 トクヤマ、マレーシアの多結晶シリコン事業で再度、減損損失を計上 

まとめると下記のとおりとなる。徳山工場についても2013年度に減損処理をしている。

用途 能力 状況 減損
マレーシア1期 当初、太陽電池用
その後、
半導体用に変更
6,200トン 品質問題で出荷不能 2014年度 減損損失 748億20百万円
関連費用 112億 7百万円
合計 860億27百万円
マレーシア2期 太陽電池用 13,800トン 価格の大幅下落 2015年度  減損損失  1,234億86百万円
参考
徳山工場 半導体用、太陽電池用 11,000トン 2013年度 設備全額減損処理  275億円
原材料評価損    20億円

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