ゼロックス大株主、富士フイルム以外への身売り提案

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Xeroxの大株主で「物言う株主」として知られる著名投資家 Carl Icahn と同じく大株主のDarwin Deason は富士フィルムによる買収に反対し、株主に訴え続けている。

Darwin Deason は差し止めを求める訴えをニューヨーク州の裁判所に起こした。

2018/2/15   富士フイルムによる買収、ゼロックス大株主が差し止め提訴  


Carl Icahn とDeasonは2月20日、
Xeroxの株主に対し「競合他社との合併や身売り」や「買収ファンドへの身売り」を提案する書簡を公開した。

http://carlicahn.com/joint-statement-with-darwin-deason-regarding-xerox-3/

ゼロックスが敵対的買収で株式の30%を売却する場合、アジア太平洋の360億ドルの市場でのゼロックスの知的財産権と製造権を富士フィルムに渡すという企業買収防衛策としての重要資産の売却条項("crown jewel" lock-up right)があり、このため、他社への身売りは出来ないとされているが、これに対しては手があるとする。

一つは、富士ゼロックスの経理スキャンダルを理由に契約違反としてJV契約を打ち切ることで、それが出来ない場合でも、これまで明らかにされていないが、2020年には契約上、Xeroxは2020年に契約を終息するプロセスを始める権利を持つとしている。Xeroxは富士ゼロックスから製品の供給を受けているが、それまでに供給ソースを探すべきだとしている。

概要は次の通り。

今回の富士フィルムによるXeroxの50.1%買収の案に対し、最善の代替案は競争相手との統合又は売却か、ファンドへの売却だ。
富士ゼロックスJVの契約の縛りを避け、最終的に、Xeroxの商標、特許を使ってアジア市場で事業が出来るということを理解すれば、大きなプレミアムを払うだろう。

直ぐに行動する必要がある。さもないと、49.9%となる我々株主の投票権は無くなってしまう。

富士フィルムが50.1%を取得するのは、合併のシナジー効果を信じているからではなく、我々株主がXeroxに影響を持ち続けた場合の大被害を防ぐためだ。彼らは17億ドル (2020年までに12億ドル)のシナジー効果など信じていない。もし信じているなら、何故、現在のオファーよりも高いプレミアムを払って全体を買わないのか。

会社側の主張は嘘だらけだとし、7点を列挙している。その一部。

Xeroxが富士を必要とするのではなく、富士がXeroxを必要としている。

富士ゼロックスJVは富士フィルムの売上高の50%近く、損益の約40%を占める。またXeroxは富士ゼロックスの最大の需要家だ。

Xeroxが(技術契約が切れるまでの)次の3年間でサプライチェーンを広げ、富士ゼロックスから距離を置けば、Xeroxのアジアでの販売を妨げている技術契約を更新しないこともできる。富士はこれを恐れる。

CEOは恐らく、サプライチェーン拡大は競争相手から安く買うのは無理なため馬鹿げているというだろう。しかし、Hewlett-Packardは印刷ではCanonの競争相手だが、レーザー関連ではCanonから購入している。業界はそういったものだ。

富士ゼロックスのJV契約はひどいものだが、Xeroxにとって打つ手は多くある。

取締役会はJV契約は法的書類であり、打ち切ったり修正したりできないとしているが、事実でない。

昨年の富士ゼロックスの経理スキャンダルはJV契約の重大違反であり、契約を終息できる。

それが出来ない場合でも、契約上、Xeroxは2020年に契約を終息するプロセスを始める権利を持つ。その場合、Xeroxは世界で唯一の成長市場であるアジア太平洋市場でXerox商標で事業ができる。

既存株主は強力なマイナリティ株主保護を受けるとするが、富士フィルムが少数株主を圧迫するのを避ける手はない。

例えば、富士の子会社にFUJIFILM Specialty Ink Systems という会社があり、Xeroxの高性能インクジェット製品と直接競合する。この分野でXeroxが犠牲になる可能性もある。

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これに対し、Xeroxも反論の声明を出した。

2人の公開状は「富士フイルムによる買収計画を邪魔する活動の一環だ」と指摘し、「取締役会と経営陣が幅広く選択肢を精査した結果、富士フイルムと一緒になることが最善策と判断した」と説明した。

2人の指摘するポイントについては、なんら触れていない。

Icahn等は富士フィルムによる買収発表前に、CEOと取締役会の問題を指摘し、退任を要求した。

富士フィルムによる買収については、「富士フィルムが一銭も使わずに ゼロックスの支配権を得る」こと、「我々自身の資産を処分して行われる」一時的な特別配当を不満とした。 シナジー効果については、合併しなくても可能と主張した。

更に、富士ゼロックスJVの契約に、実質的にXeroxの外部への売却を禁じる"crown jewel" lock-up right項目があることを、17年間隠していたことを批判。

今回は、この項目があっても、Xeroxがアジア市場を取り戻し、外部に高く売却できると主張した。

これらについては全く触れず、二人が退任を要求している取締役会と経営陣が最善と判断したというだけでは、説得力はない。

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