米連邦地裁、AT&Tによる TimeWarner の買収を承認

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米連邦地裁は6月12日、通信大手AT&Tによるメディア大手TimeWarnerの買収計画を承認する判決を下した。

判決は、AT&Tに対して一部の資産売却なども求めず、米司法省の主張を全面的に却下するかたちとなり、「通信とメディアの融合」を無条件で認める司法判断である。

判事は、政府側は買収が独占禁止法に違反するということを証明できなかったと述べた。司法省が、上告を検討する間、判決を保留してほしいと要請したのに対し、そんな要請は買収を kill することとなり、明らかに unjust であるとして拒否した。 

AT&T は6月20日までに取引を完了するとしている。 司法省は次の手を考えると述べた。

付記 AT&Tは6月14日、Time Warnerの買収手続きを完了したと発表した。

付記 司法省は7月12日、買収を承認した米連邦地裁の判断を不服として上訴すると発表した。買収はすでに手続きを終えており、AT&Tは上訴に反発している。

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AT&Tは2016年10月22日、TimeWarnerを約854億ドルで買収すると発表した。負債の引き受け分を含めると1,087億ドルになる。
半分を現金で、半分をAT&T株で支払い、2017年末までの買収を目指す。

TimeWarnerは、ハリーポッター、スーパーマン、バットマンなど、数多くの映画をヒットさせているWarner Brothersや、ニュース専門局CNN、人気ドラマを有するPay TVのHBOなど多様なコンテンツ事業を傘下に持つ。

TimeWarner は2000年にインターネット大手AOLと統合したが、ITバブル崩壊でAOLの業績が悪化し、2009年にAOLをスピンオフしている。
2014年には出版事業のTime を手放し、映像コンテンツ事業に特化したメディア企業になった。

AT&Tは米2位の携帯電話事業者(1位はVerizon )で、携帯電話事業が伸び悩むなか、買収によりモバイル端末サービス契約者にTimeWarnerの映画やニュースまで幅広いコンテンツを動画配信できるようになる。

AT&TのCEOは、「世界的に優れたコンテンツを映画、テレビ、モバイル端末すべてで提供できるようになる」と買収の意義を述べた。

AT&Tは2015年にプロフットボールリーグなど人気番組の放映権を持つ衛星テレビ大手のDirecTVを485億ドルで買収している。


司法省は調査の後、2017年7月に合併を承認する条件について、両社と協議を開始した。

メディアや有料テレビの競合他社は、AT&T が買収で取得するコンテンツの配信を優遇するのではないかとの不安を伝えていた。民主党議員らは、料金引き上げと選択肢の縮小につながりかねないと指摘、トランプ大統領もメディアの権力集中化を招くとして、選挙運動で批判していた。大統領はCNNを"Fake News"だと繰り返し非難している。

司法省はTimeWarner のTurner部門やAT&TのDirecTV部門の売却を求めたが、AT&Tは拒否した。CNNの売却を求めたともされる。

司法省は2017年11月20日、 買収を阻止するため提訴した。「合併が実現すれば米消費者に多大な損害を与えるだろう。テレビの月額視聴料の上昇につながるほか、消費者が享受し始めている新しい革新的な選択肢が減ることになる」とした。

事業内容が直接競合しない2社による「垂直統合」の阻止を米司法省が提訴するのは約40年ぶり。

司法省当局者は、両社が競争を阻害しない案を提示すれば、提訴を取り下げる可能性もあると述べたが、AT&Tは、当局から承認を得るための解決策を提供するのに前向きではあるものの、CNNを売却するつもりはないとして、法廷で争う姿勢を示した。

コンテンツの提供会社と配信会社の垂直的統合を司法省はこれまで数十年にわたって承認して おり、なぜ競争を阻害し阻止すべきなのかを判事が納得するように説明するのは困難になるとの見方もあった。


2018年3月に審理が始まった。

司法省は、買収によって年間4億ドル超、契約者1人当たりで平均で月 0.45ドルの値上がりにつながる、AT&TによるTimeWarnerのコンテンツ利用は革新への妨げ になる、と主張した。
AT&Tは、政府側の主張を「時代遅れ」で「現実からかけ離れている」と批判し、契約者が支払う料金は0.50ドル下がると説明、「司法省は、買収によって競争が低下することを証明できない」と主張した。

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今回の判決で、メディアの大規模買収に青信号が出たとして、動き出すと見られている。

早速、Comcastが21st Century Fox の資産を買収に動き出した。

これについては、Walt Disney Companyが2017年12月14日に買収を決めているが、直後にComcastがDisneyに対抗してオファーする用意を始めた。AT&T-TimeWarner の買収の司法省の決定を待って行動するとしていた。

Walt Disney Companyは2017年12月14日にRupert Murdochから21st Century Foxの複数の主要事業を524億ドルで買収すると発表した。買収総額は、負債137億ドルを含めて661億ドル相当となる。

買収対象は、映画製作を手がけるTwentieth Century Fox、テレビ製作のTwentieth Century Fox Television、FX Productions とFox21、更に、FX Networks、National Geographic Partners、Fox Sports Regional Networks、Fox Networks Group International、Star Indiaなど。

また21st Century Fox が持つ下記の持ち株も含まれる、

映像サービス事業のHuluの30%(Disney所有の30%に加え60%となる)、英国の大手放送局 Sky plcの持ち株(39.1%、残りも取得の方針とされる)、インドのTata Sky の持ち株、オランダのテレビ制作会社 Endemol Shine Group の持ち株

Comcastは本年5月に、Disneyを上回る金額で買収する用意があると述べている。

(追記)

本記事の掲載後、Comcastは21st Century Fox に対し、映画・テレビ事業の大半を650億ドルで買収すると提案した。Walt Disneyが買収で合意した524億ドルを上回る。両社による買収合戦が始まる可能性が高まった。


付記

Walt Disneyは6月20日、21st Century Fox のテレビ・映画関連事業の買収額を713億ドルに引き上げたと発表した。従来の524億ドルを約36%上回る内容。従来は1株当たり28ドルを自社株のみで支払うとしていたが、1株当たり38ドルを現金もしくは自社株で支払う。

Comcastは35ドルを現金で支払うと表明していた。

付記

Walt Disneyは6月20日、上記改定案で21st Century Fox と合意、調印した。

米司法省は6月27日、買収計画を承認した。Disneyは傘下にスポーツ専門局ESPNを持つため、Foxの持つ地方スポーツ局を買収から外す。

付記
Comcastは7月19日、21st Century Fox のテレビ・映画関連事業の買収を断念すると発表した。Walt Disneyによる買収が決定的となった。

付記

Comcastは7月19日、21st Century Fox のテレビ・映画関連事業の買収を断念すると発表した。Walt Disneyによる買収が決定的となった。

Walt Disneyと21st Century Foxは7月27日、それぞれ株主総会を開催し、事業の売買を承認した。今後、米国を除く各国の独禁法当局の承認が必要。


付記

Walt Disney が取得することになる21st Century Fox 資産に英国の大手放送局 Sky plcの持ち株(39.1%)が含まれ、残りも取得の方針とされる。

Comcastは21st Century Fox 資産取得をギブアップし、Sky買収に意欲を示している。21st Century Fox (Disney)も残り株全ての買収に動いている。


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