中国、日本からの輸入食品や化粧品に禁止物質発見

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中国の国家質量監督検験検疫総局はこのたび、日本からの輸入食品や化粧品に禁止物質や基準値を超える物質が続々と発見されていると発表した。

国家質量監督検験検疫総局 (AQSIQ)は中国全土で販売される商品全般の品質検査・管理、輸出入衛生検疫、輸出入動植物検疫、認証認可、品質管理の基準化作業などを行う国務院の直属機関。中国語の「質量」は「品質」の意味。

深セン検験検疫局では、日本から輸入された魚肉ソーセージに中国の最高基準値の17.3倍に当たる1キロ当たり1.3グラムのソルビン酸が検出された。このほか、九州地方で生産された大根の漬物からも基準値を上回るソルビン酸を検出した。

山東省の検験検疫機関で、日本から輸入された冷凍タチウオから微量のリステリア菌が検出された。リステリア菌はヒトや家畜に敗血症、脳膜炎、単核細胞の増加などを引き起こすなど、人々の安全を脅かす。

天津市の検験検疫局で基準値を超える細菌を含む日本産コーヒーが見つかった。また遼寧省の検験検疫局で、日本からの冷凍タコ1181ケースから黄色ブドウ球菌が検出された。

広東省の検験検疫局で日本製ケーキから基準値を上回るアルミニウムが検出された。日本製のデンプン粉18トンから基準値を大きく上回る二酸化硫黄が、冷凍カキから基準値の約5倍のカドミウムが検出されている。

広東省の境検験検疫局又、プロクター・アンド・ギャンブルグループのマックスファクター社が製造した「SK―II」ブランドの化粧品から、配合が禁止されているクロム、ネオジムなどを検出した。
クロムはアトピー性皮膚炎や湿疹などのアレルギー反応を引き起こす可能性があり、発病すれば治癒までに時間がかかるうえ、大変治りにくい。ネオジムは目や粘膜に強い刺激を与えるほか、皮膚にも刺激を与え、吸い込むと肺血栓塞栓症や肝機能障害をもたらす可能性がある。いずれも中国や欧州などの関連規定では、化粧品への配合が禁止されている化学物質。
北京ではSK―IIの返品ラッシュ始まったという。

検総局はこうした問題について、日本政府の主管部門と駐中国大使館に書簡を送り、日本の関連部門が対中輸出食品の管理を強化し、中国の国家基準に合致させることを保証するよう求めた。
また同局は各地の検験検疫機関に通知を出し、日本からの輸入食品の検査を強化し、食品の安全を確保するよう求めている。

日本経済新聞(9/15)は、「日本政府による残留農薬規制の強化に対抗し、日本製品への検査を厳格化している可能性が高い」としている。

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日本ではこれまで、食品残留基準にネガティブリスト制度を採用していた。

厚生労働省が食品衛生法に基づいて残留農薬基準を設定しており、残留農薬基準を超えるような農薬が残留している農産物は、食品衛生法により販売禁止などの措置がとられる。
この場合、規制するものをリスト化(ネガティブリスト)し,リストに記載された農薬のみに残留基準が定められたが、残留農薬基準が設定されている農薬等は約250農薬に過ぎなかった。
「不検出」(検出されてはいけない物質)は、2,4,5-T など15物質。

このため,残留基準が定められてない農薬では,残留が検出されても基本的に規制対象外となり流通することが出来た。輸入農産物に、国内で使用されていない農薬の残留があってもリストに無い農薬であれば,流通を規制することが出来なかった。Positivelist_1

厚生労働省は2003年に食品衛生法を改正し、基準が設定されていない農薬等が、一定量を超えて残留する食品の流通を原則禁止するポジティブリスト制度に、3年以内に移行することを決定、本年5月29日から施行された。
(添付図参照 クリックすると拡大)

規制の対象
 規制対象物質 … 農薬、動物用医薬品、飼料添加物
 規制対象食品 … 加工食品を含むすべての食品

ポジティブリスト制では、国内や海外で使用されるすべての農薬や動物薬、飼料添加物(799成分)について、国際基準であるCodexや農薬登録保留基準、先進諸外国の基準を参考として暫定的に基準値(暫定基準)が設定され、基準値をオーバーする食品(加工食品を含む)については流通が禁止される。
残留基準が定められていないものについては「人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が一定量を告示する」こととなっており、0.01ppm と告示された。
なお、「人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるもの(特定農薬等)」として厚生労働大臣が指定する物質は本制度の対象外となり、65物質が指定されている。
(例)コメの残留基準(単位:ppm)
農薬等 従来基準 改正基準 
2,4,5-T 不検出 不検出
2,4-D 0.1 0.1
アセフェート 基準なし 基準なし→0.01適用
アセキシノル 基準なし 暫定基準0.02

この制度により、農薬の飛散による影響などが懸念されるが、日本への農産物の輸出が多い中国が大きな影響を受け、日本向け輸出量が減少した。

5月30日には中国商務部の報道官は以下の通り述べている。
日本が「食品に残留する農薬等に関するポジティブリスト制度」を実施すれば、中国の対日農産物輸出に対するハードルは引き上げられることになり、両国の農産物貿易に大きな影響を与えるだろう。
   
29日から実施されているポジティブリスト制度は技術基準問題にとどまらず、貿易の公平さにもかかわってくる。中国は消費者の健康と安全を守ろうとする日本政府の立場を尊重するが、ポジティブリスト制度が中国の農産物企業と農民の利益に与える利益にも大きな関心を寄せている。
   
日本政府が食品の品質保証を前提に、正常な貿易が影響を受けないよう必要な措置を講じることを中国は望んでいる。また広範な中国の農産物輸出企業が関係省庁と業界組織の指導のもと、生産管理を強化し、自主検査能力と自主規制能力を高め、主体的に措置を講じて輸出リスクを回避するよう望んでいる。
   

食品衛生法では輸入食品に関して以下の規定がある。

厚生労働大臣は、食品衛生上の危害を防止するため必要があると認めるときは、生産地の事情、過去の違反事例等その他の事情からみて食品衛生法に違反するおそれがあると認められる食品、添加物、器具又は容器包装を輸入する者に対し、当該食品、添加物、器具又は容器包装について、厚生労働大臣又は登録検査機関の行う
検査を受けるべきことを命ずることができるとされており、命令を受けた者は、当該検査を受け、その結果の通知を受けるまで、当該食品等の販売又は営業上の使用が禁止される(検査命令)。

検査の結果、食品衛生法違反であることが判明した食品等については、
廃棄、積み戻し等の措置が行われることとなる。

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食品輸入をめぐる争いに関しては、中国と韓国のキムチ問題があった。

昨年、韓国政府が中国からの大量のキムチ輸入への対応として製品検査をしたところ、寄生虫卵が発見され、発表した。
これに対して中国側は、韓国製のキムチからも寄生虫卵が発見されたと発表、韓国側で調べたところ16社の製品から検出され、中国の発表が事実であると確認された。(日本も輸入していた)

付記 (9/23)

国家質量監督検験検疫総局は21日再び緊急通知を出し、各地方の検験検疫部門に対して、日本産輸入食品の検査を強化し、問題のある食品の国内流入を断固として防ぎ、輸出入食品の安全性を確保するよう求めた。

関連の検験検疫機関は問題のある食品について、「中華人民共和国輸出入食品検験法」とその実施条例の規定に基づき、すでに輸入禁止措置を発動している。

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