BP事故に関する米化学物質安全性委員会報告

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米化学物質安全性委員会(U.S. Chemical Safety Board CSB )のMerritt 委員長は516日の下院の小委員会で、BPTexas City 工場の爆発事故と同社のPrudhoe Bay のパイプライン腐蝕、原油漏れ事故とには驚くほどの類似点があると証言した。
CSB自体はPrudhoe Bay については調べていないが、BPの内部報告書をレビューした。

証言の詳細: http://www.csb.gov/news_releases/docs/MerrittEnergyCommerceTestimony5.16.07.pdf

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2005年3月23日、Texas City, TexasBP Texas City 製油所で爆発・火災事故が起き、15名が死亡、100名以上が負傷した(内70名が従業員及び請負業者。残りが周辺住民で、飛散したガラスやタイルによる負傷)。

事故はガソリンのオクタン価を上げる設備を2週間かけて補修した後の再スタート時に発生した。
アイソマーのラフィネートスプリッターのベントスタック先端から透明な液体が噴き出し、蒸気が地表近くに蓄積し爆発した。

瓦礫の中に、トレーラーと乗用車やトラックを含む約 30台の車の残骸があった。製油所の補修工事に従事している多くの請負業者が、爆発に無防備なトレーラを仮事務所等に使用していた。

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2006年8月、BPはアラスカのプルドー湾油田のパイプラインに深刻な腐食と小さな原油漏れを発見し、プルドー湾の油田の操業を停止した。
20万ガロン以上の原油が漏れたが、パイプラインは数年間にわたってメンテナンスを行わず、広範な腐蝕が見つかった。
同油田はBPがConocoPhillips、ExxonMobil と所有権を共同保有するもので、日量40万バレル、米国内原油生産量の約8%を占める。

   2006年8月28日 プルドー湾油田の操業停止ーBPとStandard Oil 
     

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CSBの委員長によると、Prudhoe Bay 事故で明らかにされた7つの根本原因はTexas City事故でも見られる。中でも、BPの意思決定に予算と生産の圧力が強く反映され、安全性が極めて損なわれているとしている。

Prudhoe Bay事故では「逸脱」が常習化し、リスクレベルが次第に上がっていったが、Texas Cityでも異常なスタートアップが調査されないまま常習化し、重要な機器の故障も放置された。
事故の当日も蒸留装置の重要なアラーム(
6つ)、機器、コントロール機器が正常ではなかった。安全性のレビューなしに多くのトレーラーが危険な場所に置かれていた。

Prudhoe Bay事故の内部報告書の指摘後も、補修やメンテナンスの改良は見られない。

その他、共通する問題点として、過去の教訓が正しく伝えられていない、安全性に関しての過度の分権化、トップの頻繁な交代などを挙げている。また、BPはこれまで人的安全には熱心であったが、プロセスの安全には注目せず、結果として大事故が発生したとする。

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CSBは米国の化学品事故の調査のための独立政府組織で、本ブログではFormosa Plastics の2つの爆発事故の報告を取り上げている。

 2006/8/7 米工場爆発事故の調査結果 

 2007/3/12 米国Formosa PlasticsのPVC工場爆発事故の調査結果 


* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

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