韓国知識経済部は2月16日、東海(日本海)の鬱陵海盆(対馬海盆)に埋蔵されているガスハイドレート開発のため、4月末から2次ボーリング作業を始めると発表した。
3カ月間続く今回のボーリングでは、物理探査で選定された10地域に32本の試錐孔を掘削する予定で、試料を採取し、経済性を分析する。知識経済部は今回の作業のために、昨年末、英 Fugro Synergy と3,700万ドルでボーリング船レンタル契約を結んだ。
経済性が確認されれば、2015年から本格的なガス生産を行う予定。
日本政府は1978年に国際水路機関に「対馬海盆」とし登録 |
ガスハイドレート(メタンハイドレート)は、低温高圧の条件下で、水分子にメタン分子(天然ガス) が取り込まれ、氷状になっている物質で、「燃える氷」と称されている。
温度を上げる、ないしは圧力を下げるなどの変化を与えると水分子と気体のメタン分子に分離、分離されたメタン分子は非在来型の炭化水素資源として、期待されている。
韓国政府は2005年7月、韓国石油公社、ガス公社、地質資源研究院で構成されたガスハイドレート開発事業団を作り、探査を推進してきたが、2007年6月、韓国地質資源研究院の物理探査船探海2号を利用して浦項基点北東方向135キロ、鬱陵島南方向約100キロの海上で自然状態のガスハイドレートを採取するのに成功した。
知識経済部では鬱陵海盆 6-1鉱区に約8億トンが埋蔵されていることが確認されたとしている。
これは韓国の年間国内ガス使用量(2700万トン)を基準に30年ほど使用できる規模としている。特に、この地域のガスハイドレートに含まれたメタンは純度が99%以上であり、経済的な価値が大きいとしている。
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日本では2007年に経済産業省が東部南海トラフ海域(静岡県~和歌山県沖)を本格調査し、日本の天然ガス消費量の14年分にあたる約1.1兆立方メートルの埋蔵量が確認された。
経済産業省は2009年3月、「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を取りまとめ総合海洋政策本部会合で了承を得た。
本計画は、2008年3月閣議決定の海洋基本計画に基づき、メタンハイドレート及び海底熱水鉱床の実用化に向けた探査・技術開発に係るロードマップ等を示した。
独立行政法人 産業技術総合研究所は2009年4月、メタンハイドレート資源から天然ガスを商業生産するために必要な技術の研究開発を進めるため、メタンハイドレート研究センターを設立した。
海域におけるメタンハイドレート層からの安全かつ経済的なメタンガス生産技術の確立が不可欠。
陸上では石油天然ガス・金属鉱物資源機構が世界で初めて減圧法によりメタンハイドレートからメタンガスを連続的に生産することに成功した。
2008年3月、カナダ北西部のBeaufort 海沿岸陸上地域で、永久凍土の地下約1100mに存在するメタンハイドレート層からメタンガスを産出する試験を実施したと発表した。カナダの天然資源省と共同研究の形で、約6日間の産出試験に成功した。
清水建設は2009年3月、ロシア科学アカデミー陸水学研究所、北見工業大学及び北海道大学と共同で、バイカル湖水深約400mの湖底で、湖底表層に閉じ込められたメタンハイドレートから、ガスを解離・回収する実験に成功したと発表した。
深層(海底など地下100~300m)のメタンハイドレートは、温度・圧力条件をごく僅か変化させるだけで相平衡状態を崩すことができ、加熱や減圧などの方法を使って、ガスを解離・回収することができるが、海底や湖底の表層のメタンハイドレートは海底に近い分、低温で安定状態にあるため、その状態を崩して効率的にガス回収するのに工夫が必要であった。
2008年8月にバイカル湖の南湖盆の水深約400mの湖底で成功したガス回収は、「チャンバー」と呼ばれる鋼鉄製・茶筒状の反応容器内で、メタンハイドレートと水を攪拌、水に溶かしたメタンハイドレートを湖上へ運び、ガスを解離・回収した。
海底または湖底を含め、表層メタンハイドレートから、ガスの解離・回収に成功したのは、今回の実験が世界で初めて。
内部にウォータージェット・ノズル32本(水平ジェット及び垂直ジェット各16本)を装着した鋼鉄製・茶筒状のチャンバーを、湖底に着底させる。チャンバー下部は開口しており、チャンバー内は湖水が入った状態。
次に、ウォータージェットで湖底表層のメタンハイドレート層を掘削、攪拌する。これによってメタンハイドレートは水に溶解する。
この溶解水を湖上へポンプで揚水すると、揚水過程で海水圧の減少によってガスが水から分離、この分離したガスを湖上で回収する。
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Frank Schatzing の海洋サイエンスフィクション "The Swarm"(邦訳「深海のYrr」)には、北海のMethane hydrate 採掘現場で海底が大崩壊し、発生した津波で欧州の沿岸区域が壊滅する話が含まれている。
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