BPの原油流出事故のその後

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4月20日夜に米南部ルイジアナ州沖のメキシコ湾で起きた原油の流出は今も続いている。

2010/5/4  米の原油流出、環境や漁業に影響

米政府は5月27日、原油流出量を日量12千~19千バレルと発表した。これまでの推定の2倍以上。
単純計算ではこれまでに42万~66.5万バレルが油井から噴出、アラスカ沖原油流出事故をはるかに上回る。

BPは6月4日、油井の元の機能しなかった噴出防止バルブ(blow-out preventer)の先からパイプを切り取り、キャップをかぶせるのに成功し、そこから石油のくみ上げを開始したと発表した。

仕組みは http://bp.concerts.com/gom/lmrp6_060310.htm の通りで、5日までに16,000バレルの石油が回収され、32.7百万立方フィートの天然ガスが燃やされた。

但し、まだ大量の石油が回収されずに漏れている。遠隔操作のロボットでキャップのバルブを閉め、漏れを防ぐ必要がある。
5000フィートもの深海での経験はなく、成功するかどうかはまだ不明。

沿岸警備隊では、「成功したとしても、一時的・部分的な解決にすぎない」としている。

付記 

BPは6月8日、くみ上げて回収した原油の売却代金を、4州の海岸の野生動物生息環境の回復、改善、維持のためのファンドをつくるため寄付すると発表した。

これまで、折れたパイプの先端にロボットでバルブをつける作業は成功したが、ROVによるBOP起動やContainment chamberでの油の汲み上げ、その後のTop Kill (漏れている箇所に泥などを流し込んで原油を封じ込める)などの作業は全て失敗しており、別の井戸を掘る作業(図の③)は、あと2ヶ月かかるとされている。

Containment chamberの失敗の原因は、温度と圧力と海水が作用してシャーベット状のgas hydrates が生成し、詰まったこと。
(このため、今回は小さなキャップとした。)

BP6月2日、米政府が決めた6箇所の Louisiana barrier islands計画を支持すると発表、費用360百万ドルを負担するとしている。
Louisiana州の沿岸に列をつくる砂州と砂州の間に浚渫した砂を投入して繋ぎ、防壁とする計画。

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米政府は6月3日、原油流出事故を巡り、流出停止や汚染拡大防止の作業などに使った6909万ドルの請求書をBPなどの関係者に送付したと発表した。
事故の責任がBPなど当事者側にあると主張している米政府は米国民の税金を対策に使わないことを重視している。

オバマ米大統領は3日、CNNテレビとのインタビューで、メキシコ湾で続く原油流出事故に「激怒している」と述べ、流出原因をつくったBPなどの対応の遅れを批判し「自分たちの行動がどういう結果を招くか考えていなかった」と指摘した。

大統領は4日に事故発生から3回目の現地視察を実施し、メキシコ湾の原油流出事故でBPに対し、株主への配当やテレビ広告よりも、被害を受けた地元住民への補償を優先すべきだと非難した。

「BPはこの危機の最中、自社のイメージアップのため5000万ドル相当のテレビ広告を契約した」と非難。「それに加え、今四半期(正しくは年間配当)に105億ドルの株主配当を予定しているとの報道もある」と述べた。

原油流出事故について「BPが被害について道徳的、法的責任があることを明言して欲しい」とし、「聞きたくないのは、彼らが株主のためやテレビ広告にそうした資金を投じる一方、メキシコ湾の漁業関係者や中小企業向けには出し渋ることだ」と述べた。

大統領は今月に予定していたオーストラリア、インドネシア歴訪の延期を決めた。

米司法長官は6月1日、「法律違反の及ぶ範囲内で起訴する」と明言、民事・刑事の両面で法的責任を追及する方針を明確にした。

なお、オバマ大統領は5月27日、新規の海底油田掘削許可を6ヶ月間凍結することを明らかにした。メキシコ湾の33地点で行われている試掘作業の停止も決定した。

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BPは個人や事業者に対し、所得補償の仮払いを行っている。
5月に最初の支払いを行い、6月に入り、2度目の支払いを始めた。

ルイジアナ州の7900人(個人と事業者)に2回合計で50百万ドル、アラバマ州の3000人に16百万ドル、ミシシッピー州の1900人に10百万ドル、フロリダ州の1200人に8百万ドルで、合計84百万ドルとなる。

被害者が支払いをする必要性を考慮し、要求通りの仮払いを行うもので、追って精算は行うが、払い過ぎで返金を要求することはないとしている。

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BPCarl-Henric Svanberg 会長と Tony Hayward CEO6月4日、株主に対して、本件の対処と、BPへの信頼を取り戻し、このような事故を二度と起こさないことが、同社の最優先事項であるとし、以下の説明を行った。

BPは既に直接費用として10億ドル以上を支出した。
今後も暫くはこの水準で支出が続く。更に、罰金などがこれに加わる。
油の回収やクリーンアップは2010年中に終わるが、環境回復や訴訟その他の解決には数年かかると思われる。

会社はこれら費用を負担する能力があり、従業員や株主に対する義務を果たす。
負担は大変だが、
BPは強い企業で、過去にもこれらの嵐に耐えてきた。

配当については株主の長期的な利益になるよう、あらゆる事態を考慮して決定する。
株主にとっての配当の重要性はわかっている。

流出した原油の除去作業に加え、損害賠償金、制裁金、各種補償などにかかる費用を専門家は大まかに最高200億ドルと見積もるが、それは数百億ドルに膨れあがる可能性もある。
Credit Suisseでは、BPが370億ドルの費用負担を強いられる可能性があるとの試算をしている。

同社の業績は以下の通り。

2009年 2008年
売上高   2,392.7億ドル  3,611.4億ドル
税引前損益 251.2億ドル 342.8億ドル
当期純損益 165.8億ドル 211.6億ドル

爆発事故を起こした4月20日以来、同社株価は34%下落して資産価値は大きく損なわれ、1,150億ドルまで下落し、米エクソンモービルの2,800億ドル、中国石油天然気の2,780億ドル、シェルの1,590億ドルの後塵を拝している。

格付け会社のFitchRatingは6月3日、原油流出に伴うリスクが増大していると指摘し、BPの格付けを従来の「AA+」から「AA」に引き下げた。アウトルック(長期見通し)は「Negative」とした。

Moodysも同日、「Aa1」から「Aa2」に引き下げ、一段の格下げ方向で見直す方針を示した。
S&Pは5月7日にアウトルックを「安定的」から「Negative」に引き下げている。

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事故を起こしたDeepwater Horizon rig (移動式海洋掘削プラットフォーム)はR&B Falconが設計、2001年に韓国の現代重工業 が建設した。R&B Falconを買収したTransoceanが所有し20139月 までBPにリースしている。

現代重工業の関係者は「施設が作られてから 10年以上が過ぎた。アフターサービスも終わり、10年間の運用をみると施工上の問題ではなく運用上の問題だと思われる」と事故との関係性を否定した。

一部の韓国メディアは、石油掘削施設の寿命は通常25~30年程度であり、建設してアフターサービス期間が過ぎたからといって責任が消滅したとはいえないと指摘、BPが事故の責任をほかの企業に転嫁した場合には、現代重工業にも何らかの影響が及ぶ可能性があるとしている。

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原油流出が大西洋クロマグロの産卵の海域とほぼ重なっていることを、米スタンフォード大などが5月28日発行の米科学誌PLoS ONE」で発表した。

大西洋クロマグロは、地中海で産卵する群とメキシコ湾で産卵する群に分けられる。
後者は毎年3~6月にメキシコ湾に回遊してくる。やや水温の低い湾内の二つの海域に集中して回遊しているが、特に北東側の海域は原油が広がっている海域と重なっており、回遊のピークは流出が始まった4~5月だった。

クロマグロは海面付近で産卵するため、漂っている油膜で卵や稚魚が死滅する恐れがあり、原油の油滴を小さくして分解を促す薬剤の影響も心配される。


目次、項目別目次
    
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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