ChemChina、山東省で酸化チタン生産開始

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中国化工集団公司(ChemChina)の藍星グループの子会社の済南裕興化学(Jinan Yuxing Chemical は6月20日、山東省済南市の済南化学産業パークで酸化チタンの第一期の生産を開始した。

15億人民元を投じたもので、第一期の能力は年産10万トンで、原料の30万トンの硫酸プラントを含む。

酸化チタン製法には硫酸法と塩素法があるが、同社は硫酸法を採用している。

硫酸法: チタン鉱石→硫酸溶解→チタン析出→焼成→粉砕→仕上処理

硫酸法はイ ルメナイト(チタン鉄鉱 FeTiO3)を原料とする。
チタン原料鉱石は粉砕され、約300℃に加熱された濃硫酸により、酸化チタン分が硫酸塩 (TiOSO4)となる。
その後、焼成、粉砕され、仕上げ処理が行なわれる。
TiO2 50~60%のイルメナイトを大量(原単位3~4t)の硫酸で処理するため産業廃棄物が多く、公害処理費が大きい。

塩素法: チタン鉱石→塩素化→TiCl4精製→酸化→仕上処理

塩素法は ルチル鉱または合成ルチル(TiO2)を原料とする。
塩素化して四塩化チタン TiCl4とし、これを高温で酸化して、仕上げ処理が行なわれる。
TiO2 90%のルチルを塩素で処理し、塩素は90%回収するため産業廃棄物は硫酸法の1/10以下で、公害対策設備費は1/3以下といわれる。

同社は同じ済南市に年産3万トンのプラントを持っていたが、2009年末に環境問題で停止、済南化学産業パークに新設した。

同社は第二期20万トンも計画しており、完成すれば能力30万トンで中国最大のメーカーとなる。

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山東省ではDuPontがワールドスケールの酸化チタン計画を持っているが、環境問題で難航している。

同社は2005年11月に山東省東営市の経済開発地区で当初能力年産20万トンの酸化チタンを生産することで地方政府と合意書を締結した。総投資額は10億ドル。

高品質の白色顔料を生産し、中国の塗料、プラスチック、紙ラミネート業界に貢献しようというもの。
中国では自動車塗料や白物家電、その他高品質製品用の白色顔料の多くは、海外から輸入されている。

環境アセスメントは既に政府の承認を得ているが、まだ最終承認が得られていない。当初は2010年完成予定としていた。

DuPontは裕興化学と異なり、塩素法を採用しており、液体廃棄物は地下深くに注入している。

同社の立地は大慶油田に次ぐ中国第 2の油田の勝利油田の近くにあり、液体廃棄物が漏れ出すのではないかとの懸念が出ている。環境を理由にしているが、デュポン進出で影響を受ける中国のメーカーの反対も背景にある模様。

デュポンでは
塩素法は最も進んだ、環境にも優しい製法であり、中国政府も硫酸法よりも好んでいるとし、液体廃棄物処理については、50年近く、Underground Injection 技術(UI法、Deepwell 法ともよばれるで処理しており、なんら問題を起こしていないとしている。
液体廃棄物は地下深く注入されて自然の地層のなかに分散され、自然の化学反応で無害になるとしている。

DuPont Titanium Technologies は世界最大の酸化チタンメーカーで、米国ミシシッピー州、テネシー州、デラウエア州と、メキシコ、ブラジル、台湾で生産している。
全ての工場で塩素法を採用している。

Deepwell法は米国で認められた液体廃棄物の処理方法で、地下1500m以上の岩塩層の下に圧力をかけて流し込む。対象は揮発性有機化合物(VOC)、準揮発性有機化合物(SVOC)、燃料、爆薬、農薬など。
岩塩層の上部のモニター井戸で、地下水に廃棄物が漏れ出ていないかどうかをチェックする。
日本では認められていない。

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日本では石原産業が硫酸抽出法で抽出した後の廃硫酸を中和処理せずに伊勢湾に捨てたとして、四日市海上保安部から摘発され、垂れ流した廃硫酸が約1億トンに上がることが認定されて、1980年に津地裁で有罪判決を受けている。

その後、同社は使用済み硫酸を再生利用し、土壌埋戻材(「フェロシルト」)として販売したが、フェロシルト中から基準値を超える6価クロムやフッ素化合物も含まれていることが分かった。

2006/11/13 石原産業フェロシルト不法投棄事件

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2009年に中国は105万トンの酸化チタンを生産した。輸入は245千トンで、104千トンを輸出している。


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http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htmにあります。

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